JP2015016528A - 回転部にシール構造部を有する工作機械 - Google Patents

Abstract

【課題】回転部の定速回転数が変化するときに、変化前の定速回転数から変化後の定速回転数（０を含む）に至る過渡状態時における切削液や切削液のミストを含む雰囲気のシール構造部への侵入を防ぐ構造を備えた工作機械を提供する。
【解決手段】シャフト１などの回転部にシール構造部を持つ工作機械において、前記回転部周辺に配置された気体供給口６にエアシール用の気体を供給する気体供給手段１１と、前記回転部の回転を検出する検出手段からの信号を入力し、前記回転部の回転速度が減速状態にあるか否かを判別する回転状態判別手段９と、回転状態判別手段９によって回転部が減速状態にあると判断しているときのエアシール用の気体の供給量を、回転状態判別手段９が減速状態ではないと判断しているときのエアシール用の気体の供給量よりも多くする制御を行う気体供給量制御手段１０とを備える。
【選択図】図１

Description

本発明は、回転部にシール構造部を有する工作機械に関する。

工作機械の主軸等の回転部には切削液や切削液のミストを含む雰囲気等の侵入を防止するため、シール構造が採用されている。シール構造は、オイルシールやラビリンスシール等の方式がある。

特許文献１の技術は、ラビリンスシールとエアシールを組み合わせ、シール構造を構成することで切削液等の侵入を防止している。
特許文献２の技術は、ラビリンスシールを構成する形状を複雑化することでシール構造を強化している。
特許文献３の技術は、ラビリンスシールとエアシールを組み合わせ、さらに、複数段の異物侵入防止手段を設けることによりシール構造を強化している。

実開昭５８−１４９６５５号公報 実開昭６２−１８５４５０号公報 実用新案登録第２５２１４５５号公報

図２は、従来の技術による送り軸の回転部周辺の断面図である。シャフト１は軸受２とハウジング３により支えられている。シール構造としてラビリンスシール４とエアシール７を併用している。ラビリンスシール４は、シャフト１と板状の遮蔽部材８とで形成される。シャフト１は電動機等の動力源により回転させられる。

回転部が定速回転中はラビリンスシール４により切削液や切削液のミストを含む雰囲気のシール構造部への侵入が防がれる。停止中はエアシール７により切削液や切削液のミストを含む雰囲気のシール構造部への侵入が防がれる。

しかし、回転部がある定速回転数から別の定速回転数に至る減速状態である過渡状態になると、ラビリンスシール４がシール周辺の気体を吸引するようになる。このとき、先ずエアシール７として供給される清浄な雰囲気がラビリンスシール４に吸引される。

ここで従来、減速状態である過渡状態において、ラビリンスシール４が周辺の気体を吸引するとの認識がないことから、清浄な雰囲気の供給量はラビリンスシールが吸引する気体の量よりも少ない場合がある。結果、清浄な雰囲気の供給量が足りないため、エアシール用の清浄な雰囲気と共に切削液や切削液のミストを含む雰囲気もラビリンスシール４が吸収してしまう。これによって、電動機などの動力源の内部に切削液や切削液のミストが侵入する。

図３は、従来技術であるオイルシール５とエアシール７をシール構造として併用した送り軸の回転部周辺の断面図である。シャフト１は軸受２とハウジング３により支えられている。オイルシール５では、回転数が高くなると回転部とオイルシールが離れシール効果が薄れる。このとき、エアシール７がオイルシール５のシール効果を補う。しかし回転部とオイルシール５が離れた状態から定速回転数が別の定速回転数に至る過渡状態時になった場合、離れた回転部とオイルシール５が元に戻る時にエアシール７による清浄な雰囲気の供給量が足りず、切削液や切削液のミストを含む雰囲気を吸引してしまう恐れがある。

工作機械において、切削液や切削液のミストを含む雰囲気の侵入を防ぐため、回転部にシール構造部を設けることが一般に行われている。しかし、これらのシール構造は回転中や停止中の動作に着目したシール構造であり、回転から停止に至るまでの過渡状態及び停止から回転に至るまでの過渡状態に関して考慮していない。

実際には、回転部の回転状態から停止状態に至る回転の減速状態である過渡状態時に切削液や切削液のミストを含む雰囲気がシール構造部へ引き込まれ侵入することがある。侵入した切削液は軸受の潤滑不良等の悪影響を与え、工作機械の信頼性の低下を招く。回転中や停止中の動作に着目したシール構造だけでは、切削液や切削液のミストのシール構造部への侵入を防ぐことができない。

この状況を鑑み、本発明の目的は、回転部の定速回転数が変化するときに、変化前の定速回転数から変化後の定速回転数（０を含む）に至る過渡状態時における切削液や切削液のミストを含む雰囲気のシール構造部への侵入を防ぐ構造を備えた工作機械を提供することにある。

本願の請求項１に係る発明は、回転部にシール構造部を持つ工作機械において、前記回転部周辺にエアシール用の気体を供給する気体供給手段と、前記回転部の回転速度が減速状態にあるか否かを判別する回転状態判別手段と、前記回転状態判別手段が減速状態にあると判断しているときのエアシール用の気体の供給量を、該回転状態判別手段が減速状態ではないと判断しているときのエアシール用の気体の供給量よりも多くする気体供給量制御手段と、を有することを特徴とする工作機械である。
請求項２に係る発明は、前記回転状態判別手段は、所定時間毎に回転数の変化率を算出し、該算出された回転数の変化率が予め定められた基準値を超えたとき、減速状態であると判断することを特徴とする請求項１に記載の工作機械である。

本発明により、回転部の定速回転数が変化するときに、変化前の定速回転数から変化後の定速回転数（０を含む）に至る減速状態である過渡状態時における切削液や切削液のミストを含む雰囲気のシール構造部への侵入を防ぐ構造を備えた工作機械を提供できる。

つまり、本発明によれば、回転部の定速回転数が変化する減速状態時に回転部に備えられたシール構造部が回転部周辺の雰囲気を吸引することを考慮し、変化前の定速回転数から変化後の定速回転数に至る減速状態にあることを判断し、回転部に供給されるエアシール用の気体の供給量を増やす。回転部に備えられたシール構造部がエアシール用の気体を専ら吸引する状態になり、シール構造部に切削液や切削液のミストを含む雰囲気を吸引しない。これにより軸受の潤滑不良等の悪影響が防がれ、信頼性の高い工作機械が提供される。

本発明による送り軸のシール構造を説明する図である。 従来技術による送り軸のシール構造（ラビリンスシール＋エアシール）を説明する図である。 従来技術による送り軸のシール構造（オイルシール＋エアシール）を説明する図である。

ワークの加工を行う従来公知の工作機械には、ワークを載置するテーブルや工具が装着された主軸を移動するための回転駆動力を発生する複数の電動機等の動力源が備わっている。動力源の回転部あるいは動力源から回転駆動力として伝達される連結部などの回転部の単位時間あたりの回転数が変化する減速状態である過渡状態時には、回転部周辺の雰囲気が回転部に備えられたシール構造部に吸引されることが実験によって確かめられた。

回転部周辺にエアシール用の清浄な気体を供給していても、回転部のある定速回転数での定速回転中（停止を含む）に着目して決めた清浄な気体の供給量では、回転部に備えられたシール構造部に吸引される量として充分でない場合があり、このときエアシール用の清浄な気体と共に、切削液や切削液のミストを含む雰囲気が回転部に備えられたシール構造部に吸引されてしまう。

そこで、ある定速回転数が別の低速の定速回転数に変化する減速状態である過渡状態時にあるか否かを判断し、減速状態である過渡状態と判断された場合、回転部周辺に供給する清浄な気体の供給量を増やすことで、回転部に備えられたシール構造部に吸引される雰囲気の量として充分な量の清浄な気体を供給する。回転部に備えられたシール構造部に吸引される量として充分な量の清浄な気体を供給することにより回転部に備えられたシール構造部への切削液や切削液のミストを含む雰囲気の侵入を防ぐ。

本発明によれば、回転部の回転数が高速から低速に変化するときに、変化前の定速回転数から変化後の定速回転数に至る減速状態である過渡状態時であることを判断し、減速状態である過渡状態と判断された場合、切削液や切削液のミストを含む雰囲気がシール構造部に吸引されないように、回転部周辺へのエアシール用の清浄な気体の供給量を増やすことで、切削液のミストの侵入を防ぐことができるため軸受の潤滑不良等の悪影響を極力抑えることが可能な工作機械が実現される。

以下、本発明の実施形態を送り軸を例として図面と共に説明する。なお、従来技術と同様の構成については同じ符号を用いて説明する。シャフト１は軸受２とハウジング３により支えられている。シール構造としてラビリンスシール４を採用し、かつ、回転部周辺にエアシール用の清浄な気体を供給するための気体供給口６を具備している。ラビリンスシール４は、シャフト１と板状の遮蔽部材８とで形成される。

回転状態判別手段９はシャフト１（回転部）の回転数を検出する図示しない回転検出器からの回転検出信号を受信する。回転状態判別手段９は回転部の回転数が別の低速回転の定常回転数に変化する減速状態である過渡状態にあるか否かを判別する。回転状態判別手段９はシャフト１（回転部）の回転状態の判別結果を気体供給量制御手段１０に送る。気体供給量制御手段１０は気体供給手段１１に指令し、配管１２を介して気体供給口６に供給するエアシール量の清浄なエアの供給量を調節することができる。

回転状態判別手段９によって回転部の回転が減速状態にあると判別されると、回転状態判別手段９は気体供給量制御手段１０に対して回転部の回転が減速状態であることを通知する。気体供給量制御手段１０は回転状態判別手段９の判別結果に従って、単位時間あたりのエアシール用のエアの供給を多くするように気体供給手段を制御する。これによって、エアシール用の清浄な気体の単位時間あたりの供給量を増やすことができる。

シャフト１は電動機等の動力源により回転させられる。回転部が定速回転あるいは増速回転している間はラビリンスシール４により切削液や切削液のミストを含む雰囲気の動力源内部への侵入が防がれる。回転部が停止している間は気体供給口６から供給されるエアシール用の清浄な気体により切削液や切削液のミストを含む雰囲気の侵入が防がれる。

回転部の単位時間あたりの回転数が変化するときに、変化前の定速回転数が変化後の定速回転数に至る減速状態である過渡状態であるか否かを判別し、気体供給口６から供給されるエアシール用の清浄な気体の供給量を、変化前の定速回転数で回転中の清浄な気体の供給量（０でもよい）や変化後の定速回転数で回転中の清浄な気体の供給量（０でもよい）に関わらず、減速状態である過渡状態のエアシール用の清浄な気体の供給量を変化前の定速回転数で回転中の気体の供給量よりも多くする。減速状態である過渡状態においてエアシール用の清浄な気体の供給量を、変化後の定速回転数で回転中のエアシール用の清浄な気体の供給量よりも多くすることで、ラビリンスシール４のシール構造部が吸引する雰囲気の量として充分な量のエアシール用の清浄な気体を供給する。

減速状態である過渡状態で清浄な気体の供給量を増加させることが重要で、これによって充分に効果を発揮する。減速状態である過渡状態での清浄な気体の供給量は、減速状態である過渡状態にシール構造部が吸引する雰囲気の量よりも多いとさらに効果的である。結果、シール構造部への切削液や切削液のミストを含む雰囲気の侵入が防がれる。

なお、回転状態判別手段９は、回転数が変化しているものの、その変化が小さい場合（例えば、１００００ｍｉｎ^−１から９９９９ｍｉｎ^−１への変化等）は、減速状態である過渡状態ではなく、定速回転状態と判断するようにしてもよい。すなわち、例えば、回転数の変化量（上記の例では１ｍｉｎ^−１）あるいは回転数の変化率（上記の例では０．１％）に減速状態である過渡状態と判断する基準値を設け、回転数の変化量あるいは回転数の変化率が基準値を上回ったら減速状態である過渡状態と判断するようにしてもよい。

また、説明のため回転部に備えるシール構造としてラビリンスシール４を例示したが、本発明で併用するシール構造としては、ラビリンスシール４に限定されない。さらに供給する気体として、空気や窒素ガス等を供給することができる。

なお、本発明の適用範囲であるが、回転部にシール構造を有する工作機械に適用できるが、回転数が減速状態において、エアシール用のエアを吸引する形態のものに適用できる。減速状態においてエアシール用のエアを吸引するか否かは、通常の知識を有する当業者が実験によって容易に確認できる。

１ シャフト
２ 軸受
３ ハウジング
４ ラビリンスシール
５ オイルシール
６ 気体供給口
７ エアシール
８ 遮蔽部材
９ 回転状態判別手段
１０ 気体供給量制御手段
１１ 気体供給手段
１２ 配管

Claims (2)

1. 回転部にシール構造部を持つ工作機械において、
   前記回転部周辺にエアシール用の気体を供給する気体供給手段と、
   前記回転部の回転速度が減速状態にあるか否かを判別する回転状態判別手段と、
   前記回転状態判別手段が減速状態にあると判断しているときのエアシール用の気体の供給量を、該回転状態判別手段が減速状態ではないと判断しているときのエアシール用の気体の供給量よりも多くする気体供給量制御手段と、
   を有することを特徴とする工作機械。
2. 前記回転状態判別手段は、所定時間毎に回転数の変化率を算出し、該算出された回転数の変化率が予め定められた基準値を超えたとき、減速状態であると判断することを特徴とする請求項１に記載の工作機械。

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