JP2015016160A - マイクロニードル - Google Patents

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Abstract

【課題】複数の突起部の各々が適切な深さの孔を形成することのできるマイクロニードルを提供する。
【解決手段】マイクロニードルは、基体11の表面にて複数の突起部12が突き出た形状を有し、高硬度を有する第1部分と、低硬度を有する第2部分と、から構成される。第1部分は、突起部12の先端を含み、第2部分は、基体11を含む。第1部分には、第2部分に含まれる水溶性高分子よりも高い硬度を有した水溶性高分子が含まれる。
【選択図】図2

Description

本開示の技術は、基体の表面にて複数の突起部が突き出た形状を有するマイクロニードルに関する。
マイクロニードルは、薬剤等の送達物を皮膚から体内に投与する際に用いられる。マイクロニードルは、例えば、特許文献1に記載されるように、針形状を有する複数の突起部と、複数の突起部の基端を支持する基体とを備えている。こうしたマイクロニードルが使用される際には、まず、突起部の先端が皮膚に向けられた状態で、基体が皮膚に向かって押される。そして、複数の突起部が皮膚に刺さることによって、皮膚に複数の孔が形成され、皮膚に形成された孔から体内へ送達物が送り込まれる。
国際公開第2008/020632号
ところで、突起部が皮膚に形成する孔は、送達物の送り込みの可能な程度の深さを必要とする。互いに硬さの異なる皮膚に対してこうした深さの孔が形成されるためには、マイクロニードルは硬質であるほど好ましい。一方で、マイクロニードルによる穿孔の対象である皮膚の表面は、通常、平坦ではない複雑な曲面から構成されている。こうした皮膚の表面に複数の突起部の各々が穿孔するためには、マイクロニードルは軟質であるほど好ましい。結局のところ、マイクロニードルの硬さが高まれば、1つの突起部の形成する孔の深さが確保されやすくなる一方で、複数の突起部による送り込みの確実性は低くなる。反対に、マイクロニードルの硬さが低くなれば、複数の突起部による送り込みの確実性は高まる一方で、1つの突起部の形成する孔の深さが確保されにくくなる。
本開示の技術は、複数の突起部の各々が適切な深さの孔を形成することのできるマイクロニードルを提供することを目的とする。
上記課題を解決するマイクロニードルは、基体の表面にて複数の突起部が突き出た形状を有し、高硬度を有する第1部分と、低硬度を有する第2部分と、から構成され、前記第1部分は、前記突起部の先端を含み、前記第2部分は、前記基体を含む。
上記構成によれば、突起部の先端が基体よりも硬いため、マイクロニードルのうち硬い部分によって皮膚が切り開かれる。そのため、突起部の高さに応じた深さまで、1つの突起部で孔が形成されやすい。また、突起部の先端よりも基体が柔らかいため、マイクロニードルが皮膚の表面に沿いやすい。そのため、複数の突起部の各々の先端は、皮膚に沿って並びやすく、複数の突起の各々が適切な深さで孔を形成できる。
上記マイクロニードルにて、前記第1部分、および、前記第2部分は、それぞれ水溶性高分子を含み、前記第1部分は、前記第2部分に含まれる水溶性高分子よりも高い硬度を有した水溶性高分子を含むことが好ましい。
上記構成によれば、第1部分と第2部分とが水溶性高分子を含むため、皮膚に差し込まれた突起部は、自身の溶解、あるいは、基体の溶解によって、送達物を体内へ送り込みやすい。そして、こうした機能を有する水溶性高分子が、第1部分の硬度と第2部分の硬度との差に準じた硬度を有するため、第1部分の硬度と第2部分の硬度との差が形成されやすくもなる。
上記マイクロニードルは、前記突起部の延びる方向において区画される複数の層から構成され、前記突起部の先端を含む層は、前記基体を含む層よりも高い硬度を有した水溶性高分子を含むことが好ましい。
上記構成によれば、マイクロニードルが多層構造を有し、各層に含まれる水溶性高分子の硬度の差が、第1部分の硬度と第2部分の硬度との差に準じた硬度を有する。そのため、第1部分の硬度と第2部分の硬度との差が形成されやすくもなる。
上記マイクロニードルにて、前記第1部分が含む水溶性高分子は、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キトサン、キトサンサクシナミド、アルギン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
上記構成によれば、マイクロニードルのうちの硬度の高い部分が、適切な硬度に形成される。また、マイクロニードルが生体に対して用いられる場合には、マイクロニードルにて溶解する材料と生体との親和性が高まる。
上記マイクロニードルにて、前記第2部分が含む水溶性高分子は、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、ペクチンからなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
上記構成によれば、マイクロニードルのうちの硬度の低い部分が、適切な硬度に形成される。また、マイクロニードルが生体に対して用いられる場合には、マイクロニードルにて溶解する材料と生体との親和性が高まる。
上記マイクロニードルにて、前記複数の層のうち、前記突起部の先端を含む層は、前記水溶性高分子に加えて、突起部の穿孔する先に送られる送達物を含むことが好ましい。
突起部の先端を含む層は、突起部のなかで最も深い位置まで皮膚に差し込まれる。したがって、上記構成によれば、皮膚の内部のより深い位置から送達物が徐放される。
上記課題を解決するマイクロニードルは、基体の表面にて複数の突起部が突き出た形状を有し、高硬度を有する第1部分と、低硬度を有する第2部分と、から構成され、前記第1部分、および、前記第2部分は、それぞれ水溶性高分子を含み、前記第1部分が含む水溶性高分子は、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キトサン、キトサンサクシナミド、アルギン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つを含み、かつ、前記第2部分が含む水溶性高分子は、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、ペクチンからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
上記構成によれば、突起部の先端が基体よりも硬いため、マイクロニードルのうち硬い部分によって皮膚が切り開かれる。そのため、突起部の高さに応じた深さまで、1つの突起部で孔が形成されやすい。また、突起部の先端よりも基体が柔らかいため、マイクロニードルが皮膚の表面に沿いやすい。そのため、複数の突起部の各々の先端は、皮膚に沿って並びやすく、複数の突起の各々が適切な深さで孔を形成できる。そして、上記の材料が用いられることによって、第1部分および第2部分の各々が適切な硬度に形成されるため、こうした効果が高められる。
本開示の技術によれば、複数の突起部の各々が適切な深さの孔を形成できる。
本開示の技術における一実施形態でのマイクロニードルの斜視構造を示す斜視図である。 一実施形態でのマイクロニードルの断面構造の一部を示す断面図である。 一実施形態でのマイクロニードルの製造工程を模式的に示す図であって、マイクロニードルを製造するための型を示す図である。 一実施形態でのマイクロニードルの製造工程を模式的に示す図であって、先端層形成溶液の充填工程を示す図である。 一実施形態でのマイクロニードルの製造工程を模式的に示す図であって、先端層形成溶液の固化工程を示す図である。 一実施形態でのマイクロニードルの製造工程を模式的に示す図であって、基端層形成溶液の充填工程を示す図である。 一実施形態でのマイクロニードルの製造工程を模式的に示す図であって、基端層形成溶液の固化工程を示す図である。
図1〜図7を参照して、本開示におけるマイクロニードルの一実施形態について説明する。
[マイクロニードルの構成]
図1および図2を参照して、マイクロニードルの構成について説明する。
図1に示されるように、マイクロニードルは、基体11と、基体11の上面から突き出た複数の突起部12とを備えている。突起部12の底面は、基体11の上面と一体に形成され、基体11は、複数の突起部12の各々の基端を支持している。
基体11の形状は、平坦な板状であってもよいし、曲板状であってもよいし、直方体形状であってもよい。なお、基体11の可撓性が得られやすいことから、基体11は平坦な板状であることが好ましい。
突起部12の形状は、角錐形状であってもよいし、円錐形状であってもよい。また、突起部12は、例えば、円柱状や角柱状のように、先端が尖っていない形状であってもよい。また、突起部12は、例えば、円柱に円錐が積層された形状のように、2以上の立体が結合した形状であってもよい。要は、突起部12は皮膚を刺すことが可能な形状であればよい。なお、突起部12の数は任意である。
複数の突起部12の各々は、基体11の表面に規則的に並んでもよいし、不規則に並んでいてもよい。また、複数の突起部12は、基体11の上面における複数の箇所に偏って配置されてもよい。例えば、複数の突起部12は、格子状や同心円状に配列される。
マイクロニードルが使用されるとき、突起部12の先端が皮膚に向けられた状態で、基体11の下面は皮膚に向かって押圧される。このとき、マイクロニードルの位置や向きを固定するためのアプリケータがマイクロニードルに取り付けられてもよい。
図2に示されるように、突起部12の高さHは、10μm以上1000μm以下であることが好ましい。突起部12の高さHは、基体11の上面から突起部12の先端までの長さである。突起部12の高さHは、穿孔の対象に必要とされる孔の深さに応じて決定される。穿孔の対象が人体の皮膚であって、孔の底が角質層内に設定される場合、高さHは10μm以上300μm以下であることが好ましく、30μm以上200μm以下であることがより好ましい。孔の底が角質層を貫通し、かつ、神経層へ到達しない深さに設定される場合、高さHは200μm以上700μm以下であることが好ましく、200μm以上500μm以下であることがより好ましく、200μm以上300μm以下であることがさらに好ましい。孔の底が真皮に到達する深さに設定される場合、高さHは200μm以上500μm以下であることが好ましい。孔の深さが表皮に到達する深さに設定される場合、高さHは200μm以上300μm以下であることが好ましい。
突起部12の幅Dは、基体11の上面と平行な方向における突起部12の長さの最大値である。突起部12の幅Dは、1μm以上300μm以下であることが好ましい。例えば、突起部12が四角錐形状や四角柱形状を有するとき、基体11の上面には、突起部12における底部の外形として、正方形が区画されている。突起部12の底部によって区画されたこの正方形における対角線の長さが、突起部12の幅Dである。また、例えば、突起部12が円錐形状や円柱形状を有するとき、突起部12の底部によって区画された円の直径が、突起部12の幅Dである。
突起部12の高さHに対する幅Dの比であるアスペクト比A(A=H/D)は、1以上10以下であることが好ましい。
突起部12の先端が尖った形状に形成され、孔を角質層を貫通する深さに形成する場合、突起部12の先端角θは5°以上30°以下であることが好ましく、10°以上20°以下であることがより好ましい。先端角θは、基体11の上面と直交する断面において、突起部12の先端が形成する角度の最大値である。例えば、突起部12が四角錐形状を有するとき、突起部12の先端角θは、突起部12の底面の正方形の対角線を底辺とし、正四角錐の頂点を頂点とする二等辺三角形の頂角である。
突起部12の幅D、アスペクト比A、および、先端角θは、孔が必要とする容積等に応じて決定される。高さH,幅D、アスペクト比A、および、先端角θが上記の範囲内であれば、突起部12の形状が、皮膚に対する孔の形成に適した形状となる。
マイクロニードルは、高硬度を有する第1部分と、低硬度を有する第2部分とから構成されている。第1部分は、突起部12の先端を含み、第2部分は、基体11を含む。第1部分と第2部分とは、それぞれ突起部12の延びる方向において区画された層であることが好ましい。
第1部分の一例である先端層22と、第2部分の一例である基端層21とは、突起部12の高さ方向に沿って積層されている。基端層21は突起部12の基端と基体11とを含む。先端層22は、突起部12の先端を含む。基端層21と先端層22との境界は、突起部12の高さ方向における突起部12の中央部に位置する。
穿孔の対象が人体であるとき、マイクロニードルは、基剤である水溶性高分子を含む材料から形成されることが好ましく、体内に送り届けられることを目的とする送達物を含むことがより好ましい。送達物は、水溶性高分子に保持された状態で、マイクロニードルに含まれている。基端層21と先端層22とが、皮膚の水分によって溶解することによって、各層に含まれる送達物が体内に拡散される。
先端層22に含まれる水溶性高分子は、基端層21に含まれる水溶性高分子よりも硬質な高分子である。したがって、先端層22の硬度は、基端層21の硬度よりも高い。硬度とは、JIS−K6253に準じたショアD硬度である。
基端層21に含まれる水溶性高分子としては、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、ペクチンからなる群から選択されるいずれか1つを用いることが好ましい。
先端層22に含まれる水溶性高分子としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キトサン、キトサンサクシナミド、アルギン酸塩からなる群から選択されるいずれか1つを用いることが好ましい。
送達物としては、薬理活性物質や化粧品組成物を用いることができる。送達物の種類は、目的に応じて選択される。基端層21と先端層22には、同じ種類の送達物が含まれてもよいし、互いに異なる種類の送達物が含まれてもよい。
薬理活性物質としては、例えば、インフルエンザ等のワクチン、癌患者等のための痛み止め薬、生物製剤、遺伝子治療薬、注射剤、経口剤、または、皮膚適用製剤等が挙げられる。マイクロニードルを用いた経皮投与では、皮膚に形成された孔に薬剤が投与される。そのため、マイクロニードルを用いた経皮投与は、従来の経皮投与に用いられる薬理活性物質以外に、皮下注射が必要な薬理活性物質の投与にも利用できる。特に、マイクロニードルを用いた経皮投与は、投与の際に痛みを伴わないため、小児に対するワクチン等の注射剤の投与に適している。また、マイクロニードルを用いた経皮投与は、投与の際に薬剤を飲む必要がないため、経口剤を飲むことが困難な小児に対する経口剤の投与に適している。
化粧品組成物は、化粧品あるいは美容品として用いられる組成物である。化粧品組成物としては、例えば、保湿剤、色料、香料、または、シワやニキビや妊娠線等に対する改善効果や脱毛に対する改善効果等の美容効果を示す生理活性物質等が挙げられる。送達物として芳香を有する材料を用いると、マイクロニードルに匂いを付与することができるため、美容品に適したマイクロニードルが得られる。
マイクロニードルに含まれる送達物と水溶性高分子との割合は、体内への投与が必要な送達物の量とマイクロニードルの成形に必要な水溶性高分子の量とを考慮して決定される。
[マイクロニードルの製造方法]
図3〜図7を参照して、マイクロニードルの製造方法について説明する。なお、図3〜図7では、マイクロニードルが有する突起部12の数が簡略化されている。
<型の作成工程>
図3に示されるように、型の作成工程では、マイクロニードルの形状に合わせた凹部を有する型31が作成される。まず、マイクロニードルの原版が作成される。原版の形状は、製造されるマイクロニードルの形状を決定する。原版は、マイクロニードルの形状に応じた方法で作成される。原版は、例えば、微細加工技術を用いて作成される。微細加工技術としては、例えば、リソグラフィ法、ウェットエッチング法、ドライエッチング法、サンドブラスト法、レーザー加工法、または、精密機械加工法等が挙げられる。
次に、原版を用いて型31が作成される。型31は、公知の形状転写法によって作成される。形状転写法としては、例えば、Ni電鋳法によってNi製の型を形成する方法や、溶融した樹脂を用いて転写成形を行う方法等が挙げられる。
<先端層の形成材料の調整工程>
先端層の形成材料の調整工程では、先端層の形成材料を含む先端層形成溶液が調整される。先端層形成溶液は、硬質な水溶性高分子と送達物とが水に溶解されることにより作成される。先端層形成溶液は、先端層形成溶液を型31に流入させることが可能な程度に流動性を有することが好ましい。
<先端層形成溶液の充填工程>
図4に示されるように、先端層形成溶液の充填工程では、先端層形成溶液が型31に充填される。先端層形成溶液が充填される量は、先端層22の厚みに応じて決定される。先端層形成溶液は、型31の大きさや形状に応じた方法で、型31に注入される。型31への先端層形成溶液の注入方法としては、例えば、スピンコート法、ディスペンサーを用いる方法、キャスティング法、または、インクジェット法等を用いることができる。また、先端層形成溶液を注入する際に、減圧下、または、真空下の環境に型31が配置されてもよい。
<先端層形成溶液の固化工程>
図5に示されるように、先端層形成溶液の固化工程では、型31に充填された先端層形成溶液が乾燥されることにより、先端層形成溶液が固化される。先端層形成溶液は、常温で乾燥されてもよいし、加熱環境下で乾燥されてもよい。先端層形成溶液を加熱しながら乾燥させると、固化工程に要する時間を短縮することができる。加熱温度は、マイクロニードルの内部に気泡が形成されることを抑えるために、水溶液が沸騰しない程度の温度であることが好ましい。具体的には、加熱温度は50℃以上90℃以下であることが好ましい。加熱の方法としては、公知の加熱方法を用いることができる。例えば、先端層形成溶液が充填された型31がホットプレートの上に配置されることによって、先端層形成溶液が加熱される。先端層形成溶液が固化されることによって、先端層22が形成される。
<基端層の形成材料の調整工程>
基端層の形成材料の調整工程では、基端層の形成材料を含む基端層形成溶液が調整される。基端層形成溶液は、軟質な水溶性高分子と送達物とが水に溶解されることにより作成される。基端層形成溶液は、基端層形成溶液を型31に流入させることが可能な程度に流動性を有することが好ましい。
<基端層形成溶液の充填工程>
図6に示されるように、基端層形成溶液の充填工程では、基端層形成溶液が型31に充填される。基端層形成溶液は、型31の内部に形成された先端層22の上に充填される。基端層形成溶液が充填される量は、基端層21の厚みに応じて決定される。基端層形成溶液は、型31の大きさや形状に応じた方法で、型31に注入される。型31への基端層形成溶液の注入方法としては、例えば、スピンコート法、ディスペンサーを用いる方法、キャスティング法、または、インクジェット法等を用いることができる。基端層形成溶液の注入方法は、先端層形成溶液の注入方法と同じであってもよく、異なっていてもよい。また、基端層形成溶液を注入する際に、減圧下、または、真空下の環境に型31が配置されてもよい。
<基端層形成溶液の固化工程>
図7に示されるように、基端層形成溶液の固化工程では、型31に充填された基端層形成溶液が乾燥されることにより、基端層形成溶液が固化される。基端層形成溶液は、常温で乾燥されてもよいし、加熱環境下で乾燥されてもよい。基端層形成溶液を加熱しながら乾燥させると、固化工程に要する時間を短縮することができる。加熱温度は、マイクロニードルの内部に気泡が形成されることを抑えるために、水溶液が沸騰しない程度の温度であることが好ましい。具体的には、加熱温度は50℃以上90℃以下であることが好ましい。加熱の方法としては、ホットプレートによる加熱等、公知の加熱方法を用いることができる。基端層形成溶液が固化されることによって、基端層21が形成される。
<マイクロニードルの脱離工程>
マイクロニードルの脱離工程では、固化された成形物が型31から脱離される。脱離された成形物がマイクロニードルである。マイクロニードルを脱離する方法としては、例えば、物理的な力で成形物を型31から剥離する方法や、化学的な性質を利用して選択的に型31を溶解する方法等を用いることができる。
[作用]
本実施形態のマイクロニードルがもたらす作用について説明する。
突起部12の先端を含む第1部分が、基体11を含む第2部分よりも硬度が高いため、マイクロニードルのうちの硬度の高い部分で孔が形成される。結果として、突起部12の高さに応じた深さまで孔が形成されやすい。また、第2部分は、穿孔の対象に沿いやすいため、複数の突起部12の各々の先端が、穿孔の対象に沿って並びやすい。それゆえに、複数の突起部12の各々にて適切な深さの孔が形成される。
具体的な例としては、先端層22は、基端層21に含まれる水溶性高分子よりも硬質な水溶性高分子を含む。したがって、マイクロニードルを構成する層のうち、突起部12の先端に近い方に配置されている層である先端層22の硬度は、基体11の下面に近い方に配置されている層である基端層21の硬度よりも高い。すなわち、基体11の下面から突起部12の先端に向けて硬度が高くなっている。その結果、マイクロニードルのうちの硬度の高い部分で皮膚が切り開かれるため、突起部12の高さに応じた深さまで孔が形成されやすくなる。
また、突起部12の基端と基体11が、突起部12の先端よりも柔軟性を有しているため、マイクロニードルが皮膚の表面に沿いやすくなる。したがって、複数の突起部12の各々が皮膚の表面と向かい合わせられるため、突起部12が皮膚に刺さりやすくなる。結果として、孔を適切に形成することが可能となる。
また、基端層21は、皮膚の表面に沿いやすいため、基端層21は、皮膚の表面付近の水分を吸収しやすい。したがって、基端層21が溶解する速度は、先端層22が溶解する速度よりも速くなる。その結果、基端層21が溶解していれば、先端層22が溶解する前にマイクロニードルが皮膚から除去されても、先端層22が皮膚内に留められる。そのため、マイクロニードルやマイクロニードルの使用時に用いられる付属品を皮膚の上に留めておく時間が短縮される。
また、基端層21が溶解する速度と先端層22が溶解する速度とが異なるため、基端層21に含まれる送達物が徐放される速度と、先端層22に含まれる送達物が徐放される速度とが異なる。すなわち、基端層21に含まれる送達物が徐放される速度は、先端層22に含まれる送達物が徐放される速度よりも速くなる。したがって、基端層21が含む送達物と先端層22が含む送達物とを異ならせることによって、送達物の効果的な投与が可能となる。例えば、基端層21が、短時間に徐放されることによって効果を発揮する送達物を含み、先端層22が、長時間に渡って徐放されることによって効果を発揮する送達物を含む。この構成によれば、送達物の特性に応じた投与が可能となる。
なお、基端層21と先端層22との溶解速度の違いによる効果を高めるためには、基端層21に含まれる水溶性高分子が、先端層22に含まれる水溶性高分子よりも水への溶解性が高いことが好ましい。
(実施例)
上述したマイクロニードルが有する機能について、以下に挙げる具体的な実施例、および、比較例を用いて説明する。
[実施例1]
<型の作成>
まず、精密機械加工によって、シリコン基板からマイクロニードルの原版を形成した。突起部の形状は、正四角錐(高さ:150μm、底面:60μm×60μm)であり、基体上に、1mm間隔で6列6行の格子状に36本の突起部を配列した。
次に、メッキ法によって、マイクロニードルの原版に500μmの厚さのニッケル膜を形成した。そして、90℃に加熱した重量パーセント濃度30%の水酸化カリウム水溶液を用いて、シリコンからなるマイクロニードルの原版をウェットエッチングにより除去し、ニッケル製の型を作成した。
<先端層の形成>
アルギン酸ナトリウムを水に溶解させて、先端層形成溶液を調整した。そして、インクジェット法によって、型の凹部に先端層形成溶液を充填した。次に、先端層形成溶液を充填した型を90℃で10分間加熱し、先端層形成溶液を乾燥、固化させた。加熱の熱源としては、ホットプレートを用いた。
<基端層の形成>
ペクチンを水に溶解させて、基端層形成溶液を調整した。そして、先端層が形成された型に基端層形成溶液を流し込み、型に基端層形成溶液を充填した。次に、基端層形成溶液を充填した型を90℃で10分間加熱し、基端層形成溶液を乾燥、固化させた。加熱の熱源としては、ホットプレートを用いた。
<マイクロニードルの脱離>
固化した成形物を型から剥離し、実施例1のマイクロニードルを得た。
[比較例1]
実施例1と同様に形成した型に、アルギン酸ナトリウムを水に溶解させた溶液のみを充填した。そして、アルギン酸ナトリウム水溶液を充填した型を90℃で10分間加熱し、溶液を乾燥、固化させた。固化した成形物を型から剥離し、比較例1のマイクロニードルを得た。
[比較例2]
実施例1と同様に形成した型に、ペクチンを水に溶解させた溶液のみを充填した。そして、ペクチン水溶液を充填した型を90℃で10分間加熱し、溶液を乾燥、固化させた。固化した成形物を型から剥離し、比較例2のマイクロニードルを得た。
[確認実験]
実施例1のマイクロニードルをブタ皮膚に穿刺し、10分後に皮膚から除去した。光学顕微鏡を用いてマイクロニードルの観察を行った結果、突起部が溶解していることが確認された。また、ブタ皮膚表面に孔が形成されていることが確認された。
比較例1のマイクロニードルをブタ皮膚に穿刺した結果、穿刺時の押し圧によってマイクロニードルが割れてしまった。
比較例2のマイクロニードルをブタ皮膚に穿刺し、10分後に皮膚から除去した。光学顕微鏡を用いてマイクロニードルの観察を行った結果、突起部が溶解していることが確認されたが、ブタ皮膚表面に孔の形成は見られなかった。
確認実験の結果から、硬度が異なる2つの層を有するマイクロニードルは、孔を適切に形成できることが示された。
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)突起部12の先端を含む第1部分の方が、基体11を含む第2部分よりも硬度が高い。したがって、マイクロニードルのうちの硬度の高い部分で皮膚が切り開かれるため、突起部12の高さに応じた深さまで孔が形成されやすくなる。また、第2部分が第1部分よりも柔らかいため、複数の突起部12の先端の各々が皮膚の表面に沿いやすくなる。その結果、複数の突起部12の各々で適切な深さの孔が形成される。
(2)基体11の上面が皮膚の表面から水分を吸収して溶解するため、複数の突起部12の各々を基体11の上面から離して穿孔の対象に残すことも可能である。
(3)マイクロニードルが、突起部12の延びる方向において区画された複数の層からなる多層構造を有するため、突起部12の延びる方向にて硬度が異なるマイクロニードルを容易に製造することができる。
(4)突起部12の先端を含む層である先端層22が、送達物を含む。先端層22は、突起部が挿入される範囲のうちの最も深い位置まで皮膚に挿入される。したがって、先端層22が送達物を含むことによって、皮膚の内部のより深い位置から送達物が徐放される。
(5)先端層22に加えて、基端層21も送達物を含む。したがって、マイクロニードルの全体としての送達物の含有量を増やすことができる。
上記の各実施形態は、以下のように変更して実施することが可能である。
・突起部12は、突起部12の外部から送達物を供給され、突起部12には、その送達物を体内に向けて通す孔が形成されていてもよい。この際に、突起部12に形成される孔は、突起部12の先端から基体11の下面まで貫通する孔であってもよく、貫通しない孔であってもよい。また、孔を有するか否かにかかわらず、突起部12の周囲には、送達物を穿孔の対象に向けて通す溝が形成されていてもよい。
・マイクロニードルは、マイクロニードルの外部から送達物を供給され、基体11には、その送達物を突起部12に向けて通す孔が形成されていてもよい。この際に、基体11に形成される孔は、基体11の上面から基体11の下面まで貫通する孔であってもよいし、貫通しない孔であってもよい。
・基体11の下面に、基体11とは異なる材料から形成された支持層が積層されていてもよい。例えば、基体11よりも可撓性の高い材料や、基体11よりも展性の大きい材料や、基体11よりも収縮率の小さい材料から支持層が形成される構成であれば、硬度の高い支持体にマイクロニードルが支持される構成と比べて、マイクロニードルの撓曲性が高められる。そして、ロール状に巻かれた状態でマイクロニードルを管理することも可能である。
・基端層21と先端層22のいずれか一方のみが送達物を含んでいてもよい。先端層22のみが送達物を含む場合には、皮膚の内部に入らない基体11に送達物が含まれない。したがって、不必要な送達物の消費が抑えられる。基端層21のみが送達物を含む場合には、先端層22の構成が、それの硬さを高めることに特化しやすい。
・送達物がマイクロニードルの外部からマイクロニードルに供給されるか否かは、マイクロニードルの利用の態様によって異なる。また、水溶性高分子が送達物として機能してもよい。送達物がマイクロニードルの外部から供給される態様や、水溶性高分子が送達物として機能する態様であれば、基端層21と先端層22とが水溶性高分子とは別に送達物を含まなくともよい。
・先端層22には、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キトサン、キトサンサクシナミド、アルギン酸塩からなる群から選択される2以上の水溶性高分子の混合物が含まれてもよい。また、先端層22は、上記以外の水溶性高分子を含んでもよい。要は、先端層22に含まれる水溶性高分子は、基端層21に含まれる水溶性高分子よりも硬質な水溶性高分子であればよい。
・基端層21には、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、ペクチンからなる群から選択される2以上の水溶性高分子の混合物が含まれてもよい。また、基端層21は、上記以外の水溶性高分子を含んでもよい。要は、基端層21に含まれる水溶性高分子は、先端層22に含まれる水溶性高分子よりも柔軟な水溶性高分子であればよい。
・基端層21と先端層22とは、水溶性高分子とは異なる材料から形成されてもよい。要は、先端層22を含む第1部分の硬度が、基端層21を含む第2部分の硬度よりも高ければよい。
・第1部分と第2部分との境界は、突起部12の高さ方向における突起部12の中央部でなくてもよい。第1部分と第2部分との境界は、基体11と突起部12との境界、もしくは、基体11と突起部12との境界よりも突起部12の先端に近い位置であればよい。すなわち、基体11の全体が第2部分に含まれ、突起部12の少なくとも一部である先端が第1部分に含まれる構成であればよい。ただし、第1部分と第2部分との境界が、突起部12の高さ方向における突起部12の中央である構成のように、突起部12の基端の周囲が基端層21に含まれると、突起部12が基端の周囲で柔軟性を有する。そのため、複数の突起部12の各々の先端が、皮膚の表面に沿って並びやすい。
・マイクロニードルは、突起部12の高さ方向において区画される3層以上の層から構成されてもよい。この場合、突起部12の先端に近い層ほど、層ごとの硬度が高くなればよい。
・第1部分は、均一な硬度を有さず、突起部12の延びる方向に沿って突起部12の先端に向けて硬度が高くなる構成であってもよい。第2部分は、均一な硬度を有さず、突起部12の延びる方向に沿って突起部12の先端に向けて硬度が高くなる構成であってもよい。要は、第1部分での各部位の硬度が、第2部分での各部位の硬度よりも高ければよい。
・マイクロニードルは、多層構造を有さず、その組成や密度などがマイクロニードルの高さ方向に沿って徐々に変わり、突起部12の高さ方向において、基体11から突起部12の先端に向けて硬度が徐々に高くなる構成であってもよい。こうした構成においても、突起部12の先端を含む第1部分の硬度は、基体11を含む第2部分の硬度よりも高くなる。
11…基体、12…突起部、21…基端層、22…先端層、31…型。

Claims (7)

  1. 基体の表面にて複数の突起部が突き出た形状を有し、
    高硬度を有する第1部分と、
    低硬度を有する第2部分と、から構成され、
    前記第1部分は、前記突起部の先端を含み、
    前記第2部分は、前記基体を含む
    マイクロニードル。
  2. 前記第1部分、および、前記第2部分は、それぞれ水溶性高分子を含み、
    前記第1部分は、
    前記第2部分に含まれる水溶性高分子よりも高い硬度を有した水溶性高分子を含む
    請求項1に記載のマイクロニードル。
  3. 前記マイクロニードルは、前記突起部の延びる方向において区画される複数の層から構成され、
    前記突起部の先端を含む層は、前記基体を含む層よりも高い硬度を有した水溶性高分子を含む
    請求項2に記載のマイクロニードル。
  4. 前記第1部分が含む水溶性高分子は、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キトサン、キトサンサクシナミド、アルギン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つを含む
    請求項2または3に記載のマイクロニードル。
  5. 前記第2部分が含む水溶性高分子は、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、ペクチンからなる群から選択される少なくとも1つを含む
    請求項2〜4のいずれか一項に記載のマイクロニードル。
  6. 前記複数の層のうち、前記突起部の先端を含む層は、前記水溶性高分子に加えて、突起部の穿孔する先に送られる送達物を含む
    請求項3に記載のマイクロニードル。
  7. 基体の表面にて複数の突起部が突き出た形状を有し、
    高硬度を有する第1部分と、
    低硬度を有する第2部分と、から構成され、
    前記第1部分、および、前記第2部分は、それぞれ水溶性高分子を含み、
    前記第1部分が含む水溶性高分子は、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キトサン、キトサンサクシナミド、アルギン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つを含み、かつ、
    前記第2部分が含む水溶性高分子は、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、ペクチンからなる群から選択される少なくとも1つを含む
    マイクロニードル。
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