JP2015015373A - 電磁波吸収性樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】成形品の形状が限定されることなく、広帯域で電磁波を吸収する電磁波吸収性樹脂組成物を提供する。【解決手段】電磁波吸収性の樹脂組成物は、電磁波吸収性の粒子が樹脂(A)に孤立して分散していることを特徴とする。好ましくは、電磁波吸収性の粒子が樹脂(B)に分散した状態で、樹脂(A)に孤立して分散していることを特徴とする電磁波吸収性の樹脂組成物であり、分散している電磁波吸収性の粒子は、導電性粒子、誘電性粒子、磁性粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種である。【選択図】図1
Description
本発明は、電磁波吸収性の樹脂組成物に関し、とくにはGHz帯以上の高周波の電磁波を広帯域で吸収する電磁波吸収性樹脂組成物に関する。
最近、無線LANが急速に普及しており、家庭内やオフィス内あるいは公共の場における無線通信が加速度的に進んでいる。それに伴い、電磁波の混信や情報セキュリティーの問題が年々深刻になってきている。また、高度道路交通システム(ITS)の関係では、従来のETCに加えて、今後、ITSスポットの拡大や、ドライブスルー課金、さらにはミリ波レーダーの普及などが見込まれており、これらにおいても電磁波環境の改善が必要になる。電磁波への対策として、既に電磁波遮蔽を中心とした対策品が一般に使われているが、今後、電磁波の遮蔽だけでは不十分で電磁波の吸収への要望が増えてくると予想される。一般的によく用いられる電磁波遮蔽材は金属のような導電性を有する材料がほとんどであるが、一方で、電磁波を吸収するためには、金属以外の材料が必要で、フェライト等の磁性体がよく使われているが、今後増えてくる高周波の電磁波(GHz帯以上)に対しては吸収能力が劣る課題がある。高周波(GHz帯)の電磁波吸収材としては、樹脂にカーボン系粒子を添加したものなどが使われているが、吸収する帯域が狭く、目的とする周波数に応じて厚みを調整したり、帯域を広くするために形状を工夫したり(例えばピラミッド型)する必要があった。
電磁波遮蔽材や吸収材としては、樹脂に各種の粒子を添加したものが一般的であり、これらの改良研究が行われている。例えば、ポリマーブレンドの共連続構造の片方の相に導電性の粒子を添加する技術が提案されているが(特許文献1)、この技術は導電性の向上が目的で、電磁波遮蔽材としては好適だが、電磁波吸収材としては不適である。また、粒子を樹脂に混合したものを異種ポリマーに分散する技術が提案されているが(特許文献2)、この技術も電磁波遮蔽に関するものであり、電磁波吸収に関しては触れられていない。また、本技術は半導体封止用のもので絶縁性が必要のため、粒子の添加量が少なく、全般に性能が劣るものであった。電磁波吸収材としての性能向上に関する提案もされている。例えば、ゴム系の樹脂に特定のカーボン系粒子を多量に添加した技術が提案されているが(非特許文献1)、この技術では多量に添加したカーボンによる吸収能力は有するものの、その反面、導電性が高く、そのままでは電磁波の反射が大きいため、金属で裏打ちした、いわゆる共振型の電磁波吸収材として利用されている。この場合、特定の周波数の電磁波に対しては高い吸収を示すものの、それ以外の周波数では吸収能力が劣るいわゆる狭帯域型の電磁波吸収材となり、形状や用途が限られたものとなる。一方で、導電性を抑えるため粒子の表面を無機酸化物で覆ったものを用いる技術が提案されている(特許文献3)。この技術では、粒子の表面処理により工程が複雑になるとともに、表面処理した粒子と樹脂とを混合する際のせん断力で表面処理層が破壊される恐れがあった。また、高周波の電磁波を広帯域で吸収するものとして、磁性粉を樹脂中で密度分布した技術が提案されている(特許文献4)。しかるに、このような材料を作るために非常に複雑な工程を要するとともに、形状が限られ用途が限定されるという問題があった。電磁波を、とくにGHz帯以上の高周波の電磁波を広帯域で吸収し、形状の自由度がある電磁波吸収材が求められている。
日清オイリオグループ(株)ニュースリリース2008年12月1日
本発明は、上記のような従来技術の課題を克服し、形状の制約を受けず、広帯域で電磁波を吸収する電磁波吸収性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題の解決を目的に鋭意検討した結果、驚くべきことに電磁波吸収性の粒子を特定の分布で樹脂に分散することで電磁波吸収性を向上できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記〔1〕〜〔11〕に記載の事項を特徴とするものである。
〔1〕 電磁波吸収性の樹脂組成物であって、電磁波吸収性の粒子が樹脂(A)に孤立して分散していることを特徴とする樹脂組成物。
〔2〕 電磁波吸収性の粒子が樹脂(B)に分散した状態で、樹脂(A)に孤立して分散していることを特徴とする前記〔1〕に記載の樹脂組成物。
〔3〕 電磁波吸収性の粒子が、導電性粒子、誘電性粒子、磁性粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種である前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔4〕 電磁波吸収性の粒子が、カーボン系粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種である前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔5〕 樹脂(A)および樹脂(B)が、熱可塑性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔6〕 溶融成形時における樹脂(B)の溶融粘度が樹脂(A)の溶融粘度より高いことを特徴とする前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔7〕 電磁波吸収性の粒子が孤立分散している島の大きさが100nm〜1mmの範囲にあることを特徴とする前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔8〕 電磁波吸収性の粒子の添加量が5〜50質量%の範囲にあることを特徴とする前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔9〕 導電率が1X10-7S/m〜1X102S/m範囲にあることを特徴とする前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔10〕 電磁波吸収性の粒子を樹脂中に同じ量均一に分散した際の樹脂組成物の導電性よりも、導電性が低いことを特徴とする前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔11〕 前記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の樹脂組成物からなる成形品。
すなわち、本発明は、下記〔1〕〜〔11〕に記載の事項を特徴とするものである。
〔1〕 電磁波吸収性の樹脂組成物であって、電磁波吸収性の粒子が樹脂(A)に孤立して分散していることを特徴とする樹脂組成物。
〔2〕 電磁波吸収性の粒子が樹脂(B)に分散した状態で、樹脂(A)に孤立して分散していることを特徴とする前記〔1〕に記載の樹脂組成物。
〔3〕 電磁波吸収性の粒子が、導電性粒子、誘電性粒子、磁性粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種である前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔4〕 電磁波吸収性の粒子が、カーボン系粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種である前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔5〕 樹脂(A)および樹脂(B)が、熱可塑性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔6〕 溶融成形時における樹脂(B)の溶融粘度が樹脂(A)の溶融粘度より高いことを特徴とする前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔7〕 電磁波吸収性の粒子が孤立分散している島の大きさが100nm〜1mmの範囲にあることを特徴とする前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔8〕 電磁波吸収性の粒子の添加量が5〜50質量%の範囲にあることを特徴とする前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔9〕 導電率が1X10-7S/m〜1X102S/m範囲にあることを特徴とする前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔10〕 電磁波吸収性の粒子を樹脂中に同じ量均一に分散した際の樹脂組成物の導電性よりも、導電性が低いことを特徴とする前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔11〕 前記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の樹脂組成物からなる成形品。
本発明の電磁波吸収性樹脂組成物によれば、成形品の形状が限定されることなしに、電磁波を広帯域で吸収する電磁波吸収材が提供でき、電磁波による機器の誤動作や混信、情報漏れなどの諸問題を解決することに繋がる。
本発明の電磁波吸収性の樹脂組成物は、電磁波吸収性の粒子が樹脂(A)に孤立して分散していることを特徴とする。ここで、孤立して分散している状態とは、個々の粒子からなる集合体がある分散径をもって樹脂中に分布していることを意味しており、それぞれの集合体は樹脂(A)によって島状に隔てられており、樹脂中で連続した構造を持たない。より具体的には、樹脂中に、粒子の密度が高い部分と、粒子の密度が低い部分がそれぞれ存在し、粒子の密度が高い部分が島相を形成し、密度が低い部分は海相となる海島構造を形成している。島の大きさとしては、もとの粒子の大きさによっても異なるが、100nm〜1mmの範囲にあることが好ましい。島の大きさが100nmより小さいと孤立分散の効果が小さく、島の大きさが1mmを越えると連続した構造を持つものに近づき効果が小さくなる。島の大きさは、1μm〜100μmの範囲にあることがより好ましい。樹脂中の全ての島が同じ大きさである必要はなく、各種大きさの島が混在していても良い。島の形状はとくに限定はされず、球状であっても良いし、平板状や棒状であってもよいし、それら以外の複雑な形状であっても良い。球状の場合、その直径が島の大きさを意味するが、球状以外の形状の場合は、最も長い辺の長さが島の大きさを意味する。なお、樹脂組成物の中に、一部連続した構造をもつ部分があっても良い。
このような孤立分散した構造の作り方としては、とくに限定はされないが、例えば、樹脂と粒子の混合時の条件(温度やせん断力等)を調整する、粒子が樹脂中で自発的に凝集構造をとるような粒子を用いる、大きな粒子を少量用いる、粒子を強固にコーティングする、異種の樹脂を共存して用いるなどの手法が用いられる。このうち、異種の樹脂を共存して用いることが好ましい。すなわち、樹脂(A)と非相溶の樹脂(B)を用い、樹脂(B)からなる島相に選択的に電磁波吸収性の粒子が分散するようにしたものが本発明の樹脂組成物として好ましい。このような樹脂組成物の製造方法としては、樹脂(A)、樹脂(B)および電磁波吸収性の粒子を所定量同時に混ぜる方法や、予め樹脂(B)に電磁波吸収性の粒子を混ぜたマスターバッチを作成し、該マスターバッチの所定量を樹脂(A)に混ぜる方法などが用いられるが、このうち、同時に混ぜる方法が工程が簡素であり好ましい。また、混合方法としては、特に限定はされないが、一軸あるいは多軸の混練機、ラボプラストミル等のバッチ式ミキサー、ロール混練機等で所定の配合で混練した後、冷却固化する方法や、溶媒を用いて、溶解あるいは懸濁した状態で混合する方法等が用いられ、このうち混練機やミキサーで溶融状態で混合する方法が好ましい。
本発明で用いる樹脂としては、とくに限定はされないが、各種の熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、シリコーン樹脂等のゴム系樹脂などを用いることができる。このうち、本発明の樹脂としては熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。このうち、熱可塑性樹脂の使用がより好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、EVA樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ASA樹脂、AES樹脂、PMMA等のアクリル樹脂、MS樹脂、MBS樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、液晶ポリマー、PPS、PEEK、PPE、ポリサルフォン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
本発明の樹脂(A)と樹脂(B)は互いに非相溶の樹脂を選択する。樹脂(A)と樹脂(B)の組み合わせとしては、互いに非相溶の樹脂どうしであればとくに限定はされないが、樹脂(A)を、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、EVA樹脂、熱可塑性エラストマーから選択し、樹脂(B)をポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂から選択することが、電磁波吸収性の粒子が孤立して分散した構造をとり易いため好ましい。なお、樹脂(A)と樹脂(B)が同種の樹脂であっても、例えば分子量の違いなどで互いに非相溶となるものであれば、それらを組み合わせても良い。また、本発明の樹脂(A)と樹脂(B)は、溶融成形時における樹脂(B)の溶融粘度が樹脂(A)の溶融粘度より高いことが好ましい。更に、樹脂(A)の融点は樹脂(B)の融点よりも低いことが好ましい。また、樹脂(A)と樹脂(B)の添加量の割合は、90:10〜50:50の範囲であることが好ましく、80:20〜60:40の範囲にあることがより好ましい。
本発明の樹脂(A)、樹脂(B)はそれぞれ2種類以上の樹脂を併用しても良い。また、本発明の樹脂組成物には、樹脂(A)、樹脂(B)以外の樹脂が含まれていても良い。
本発明の電磁波吸収性の粒子としては、電磁波吸収能力を有する粒子であればとくに限定はされないが、導電性粒子、誘電性粒子、磁性粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
粒子の形状は、とくに限定はされず、球状、棒状、平板状、繊維状、中空状、角状、塊状のものなどを用いることができる。
導電性の粒子としては、特に限定はされないが、金属系、金属酸化物系、カーボン系の粒子や導電性高分子からなる粒子や金属被覆した粒子などを用いることができる。
金属系粒子としては、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、金、ステンレスなどからなる粒子を用いることができる。
金属酸化物系粒子としては、導電性を有する金属酸化物である酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズなどからなる粒子を用いることができる。
カーボン系粒子としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛、VGCF、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン、カーボンナノコイル、カーボンマイクロコイル、炭素繊維などを用いることができる。
導電性高分子からなる粒子としては、PEDOT、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロールからなる粒子あるいはこれらを粒子表面に被覆したものなどを用いることができる。
金属被覆した粒子としては、ニッケル被覆した炭素繊維や、銅被覆したアラミド繊維などを用いることができる。
誘電性の粒子としては、特に限定はされないが、二酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ビスマス、マグネシウムニオブ酸バリウムなどからなる粒子を用いることができる。
磁性粒子としては、特に限定はされないが、フェライト系粒子や軟磁性金属粒子、パーマロイ等の粒子を用いることができる。
フェライトとしては、スピネル型フェライトに代表されるソフトフェライトや六方晶フェライトに代表されるハードフェライトやε型フェライト等を用いることができる。
軟磁性金属粒子としては、鉄、センダスト、ケイ素鋼、アルパーム、パーメンジュール等を用いることができる。
上記した中で、本発明の電磁波吸収性の粒子としてはカーボン系の粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種が、軽量で取扱い易いため好ましい。カーボン系の粒子の中でもカーボンブラックがコストや入手のし易さから最も好ましい。
本発明の電磁波吸収性樹脂組成物は、上記した電磁波吸収性の粒子を1種類だけ含むものであっても、複数種類の粒子を含むものであっても良い。
本発明の電磁波吸収性の粒子の添加量は、5〜50質量%の範囲にあることが好ましい。添加量が5質量%より少ないと、電磁波吸収効果がほとんど発現せず、添加量が50質量%を越えると、樹脂中で孤立分散していない連続した構造をもつ部分の割合が大きくなり電磁波吸収効果が小さくなる。添加量は、7〜30質量%の範囲にあることがより好ましく。10〜20質量%の範囲にあることが更に好ましい。
本発明の樹脂組成物は、導電率が1X10-7S/m〜1X102S/mの範囲にあることが好ましい。導電率が1X10-7S/mより小さいと、電磁波吸収に寄与する粒子の量も比較的少なく電磁波吸収効果が小さい。導電率が1X102S/mより大きいとやはり電磁波吸収効果が小さくなる。導電率は、1X10-6S/m〜1X101S/mの範囲にあることがより好ましい。
本発明の樹脂組成物の導電率は、電磁波吸収性の粒子を樹脂中に同じ量だけ均一に分散した樹脂組成物の導電率よりも低いことが好ましい。ここで、均一に分散とは、樹脂中に粒子が均一に分散しているが、孤立して分散していない状態を意味する。均一に分散した樹脂組成物で用いる樹脂としては、本発明の樹脂組成物で用いる樹脂と同じものが好ましいが、必ずしも同一である必要はない。本発明の樹脂組成物の導電率は、電磁波吸収性の粒子を樹脂中に同じ量だけ均一に分散した樹脂組成物の導電率の70%以下であることがより好ましく、50%以下であることが更に好ましい。より一層好ましいのは、10%以下であることである。
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で電磁波吸収性の粒子以外の添加剤が含まれていても良い。添加剤としては、難燃剤、耐衝撃性改善剤、補強剤、相溶化剤、耐候性改善剤、酸化防止剤、顔料、染料等が使用可能である。
本発明の樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形等の成形方法で成形することができ、板状、フィルム状、シート状の他にも各種の3次元形状の成形品とすることができる。これら成形品をそのままの形状で用いても良いし、片面に金属を貼り合せて用いるなどしても良い。また、本発明の樹脂組成物を水や有機溶媒に分散した状態で塗料等として用いても良い。
以下、本発明を実施例および比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はもとよりこれらの例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例において、評価は以下のように行った。
(1)導電性
真空プレス成形した50mm角、厚み1mmの平板成形品を用いて、抵抗率計(三菱化学製ローレスタMCP-T350)にて体積抵抗率(Ωcm)を測定し、導電率(S/m)を算出した。
真空プレス成形した50mm角、厚み1mmの平板成形品を用いて、抵抗率計(三菱化学製ローレスタMCP-T350)にて体積抵抗率(Ωcm)を測定し、導電率(S/m)を算出した。
(2)電磁波吸収性
真空プレス成形した50mm角、厚み1mmの平板成形品から、円環状(内径3mmφ、外径7mmφ)の試験片を切り出したものを用いて同軸管法により測定した。該試験片2個を重ねて同軸管に挿入し、室温にてSパラメータ(S11およびS21)を測定し、1〜10GHzにおける電磁波の吸収率を計算により求めた。
真空プレス成形した50mm角、厚み1mmの平板成形品から、円環状(内径3mmφ、外径7mmφ)の試験片を切り出したものを用いて同軸管法により測定した。該試験片2個を重ねて同軸管に挿入し、室温にてSパラメータ(S11およびS21)を測定し、1〜10GHzにおける電磁波の吸収率を計算により求めた。
[実施例1]
ポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製ノバテックPP BC6DR)、ポリカーボネート(帝人化成(株)製パンライトL-1225L)およびカーボンブラック(三菱化学(株)製#3400B)を表1に示す割合にて配合し、ラボプラストミル((株)東洋精機製作所製4M150)を用いて、シリンダー設定温度230℃、スクリュー回転数30rpmにて3分間溶融混練を行った。得られた樹脂組成物を、真空プレス成形機(テスター産業(株)製SA-401-A)を用いて、減圧下230℃にてプレス成形を行い、50mm角、厚み1mmの平板の成形品を得た。該成形品を用いて導電性と電磁波吸収性の評価を行った結果を表1に示す。
ポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製ノバテックPP BC6DR)、ポリカーボネート(帝人化成(株)製パンライトL-1225L)およびカーボンブラック(三菱化学(株)製#3400B)を表1に示す割合にて配合し、ラボプラストミル((株)東洋精機製作所製4M150)を用いて、シリンダー設定温度230℃、スクリュー回転数30rpmにて3分間溶融混練を行った。得られた樹脂組成物を、真空プレス成形機(テスター産業(株)製SA-401-A)を用いて、減圧下230℃にてプレス成形を行い、50mm角、厚み1mmの平板の成形品を得た。該成形品を用いて導電性と電磁波吸収性の評価を行った結果を表1に示す。
[比較例1]
ポリカーボネート(帝人化成(株)製パンライトL-1225L)およびカーボンブラック(三菱化学(株)製#3400B)を表1に示す割合にて配合し、ラボプラストミル((株)東洋精機製作所製4M150)を用いて、シリンダー設定温度270℃、スクリュー回転数30rpmにて4分間溶融混練を行った。得られた樹脂組成物を、真空プレス成形機(テスター産業(株)製SA-401-A)を用いて、減圧下270℃にてプレス成形を行い、50mm角、厚み1mmの平板の成形品を得た。該成形品を用いて導電性と電磁波吸収性の評価を行った結果を表1に示す。
ポリカーボネート(帝人化成(株)製パンライトL-1225L)およびカーボンブラック(三菱化学(株)製#3400B)を表1に示す割合にて配合し、ラボプラストミル((株)東洋精機製作所製4M150)を用いて、シリンダー設定温度270℃、スクリュー回転数30rpmにて4分間溶融混練を行った。得られた樹脂組成物を、真空プレス成形機(テスター産業(株)製SA-401-A)を用いて、減圧下270℃にてプレス成形を行い、50mm角、厚み1mmの平板の成形品を得た。該成形品を用いて導電性と電磁波吸収性の評価を行った結果を表1に示す。
実施例1および比較例1で得られた樹脂組成物について、切片を切削し、走査型電子顕微鏡による観察を行ったところ、実施例1の樹脂組成物については、大きさが数μm〜数10μm程度の島相が観察され、拡大観察した結果から、島相にカーボンブラックの粒子が含まれ、海相にはほとんど含まれないことが確認された。また、走査型電子顕微鏡付属のエネルギー分散型X線分析装置による成分分析から、島相はポリカーボネートで形成され、海相はポリプロピレンで形成されていることが確認された。一方、比較例1の樹脂組成物については、島相は観察されず、カーボンブラックが樹脂全体に均一に分散していることが確認された。
実施例1と比較例1の結果を比較することにより、電磁波吸収性の粒子が樹脂に孤立して分散している本願発明の樹脂組成物は、該電磁波吸収性粒子を樹脂中に同じ量均一に分散した樹脂組成物よりも、導電性が低く、GHz帯の幅広い周波数にわたって電磁波吸収性に優れることが明らかである。また、本願発明の樹脂組成物は、成形品の形状が限定されることがなく、平板状の他にも各種の3次元形状の成形品とすることができる。
本発明の電磁波吸収性樹脂組成物および成形品は、パソコン、携帯電話、スマートフォン等の各種電子機器周辺や、無線LAN、ITSスポット、ETCやドライブスルー課金、およびミリ波レーダー等の周辺で電磁波吸収が必要な箇所への適用が可能である。
Claims (11)
- 電磁波吸収性の樹脂組成物であって、電磁波吸収性の粒子が樹脂(A)に孤立して分散していることを特徴とする樹脂組成物。
- 電磁波吸収性の粒子が樹脂(B)に分散した状態で、樹脂(A)に孤立して分散していることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
- 電磁波吸収性の粒子が、導電性粒子、誘電性粒子、磁性粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
- 電磁波吸収性の粒子が、カーボン系粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
- 樹脂(A)および樹脂(B)が、熱可塑性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 溶融成形時における樹脂(B)の溶融粘度が樹脂(A)の溶融粘度より高いことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 電磁波吸収性の粒子が孤立分散している島の大きさが100nm〜1mmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 電磁波吸収性の粒子の添加量が5〜50質量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 導電率が1X10-7S/m〜1X102S/mの範囲にあることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 電磁波吸収性の粒子を樹脂中に同じ量均一に分散した際の樹脂組成物の導電性よりも、導電性が低いことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物からなる成形品。
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