JP2015013907A - ポリマー結合アスファルト組成物、舗装用混合物、および舗装体 - Google Patents

ポリマー結合アスファルト組成物、舗装用混合物、および舗装体 Download PDF

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Abstract

【課題】軟化点が高く、低温でも割れにくく、かつ高強度である反応生成物が生成されるポリマー結合アスファルト組成物を提供する。【解決手段】a)アスファルトと、b)エチレン・n−ブチル(メタ)アクリレート・グリシジル(メタ)アクリレート三元共重合体と、c)スチレン系エラストマーと、を含んで構成され、e)重量平均分子量が7000以下のプラストマーのポリマー結合アスファルト組成物中の含有量が0.1質量%未満であり、前記b)が有するエポキシ基と、前記a)が有する官能基とが反応するポリマー結合アスファルト組成物である。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリマー結合アスファルト組成物、舗装用混合物、および舗装体に関する。
道路舗装や防水等の分野で広く使用されているアスファルトは、一般に、舗装体とされ、屋外で使用されるものである。屋外に置かれた舗装体は、直射日光により、また夏季等、季節によって高温(例えば、60℃以上)に加熱され軟化し易くなり、低温環境下(例えば10℃以下)では、硬化するため、機械的負荷によりひび割れが生じ易くなる。また、舗装道路は、自転車、軽自動車等から、トラック、トレーラー等の大型車両に至るまで種々の車両の往来があり、各車両の重量や、走行による機械的負荷が舗装体に加わっているため、機械的付加に対する強度も求められている。
このような高温耐性、低温耐性、及び強度を得るために、従来から、アスファルトに対して、改質剤としてスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)共重合体を添加することで、アスファルトの改質が行なわれてきた。
ところで、舗装体は、アスファルトないし改質アスファルトと、砕石や砂利に代表される骨材との混合物により構成されている。すなわち、骨材は、アスファルトないし改質アスファルトによって表面が被覆された状態になっている。また、舗装体を製造するに当たっては、目的とする舗装体の形態に応じてアスファルトの種類が選択される。
日本改質アスファルト協会のJMAAS−01:2007によれば、ポリマー改質アスファルトの種類は、I型、II型、III型、及びH型が規定されている。例えば、I型に区分されるポリマー改質アスファルトは、一般的な箇所での使用に適しており、II型に区分されるポリマー改質アスファルトは、大型車交通量が多い箇所での使用に適している。H型に区分されるポリマー改質アスファルトは、II型と同様に、大型車交通量が多い箇所での使用であって、さらに、ポーラスアスファルトという多孔性の舗装体を得るためのアスファルトとしての使用を考慮したものである。ポーラスアスファルトで構築された舗装体は、多孔性ゆえに、雨水などの液体を吸収し、水はけが良くなる性質を有する。
アスファルトと、種々の重合体とを反応させて、改良されたポリマー結合アスファルトを生成させることで、アスファルトに機能性を持たせることが知られている。
例えば、永久的変形(轍の跡)に対する抵抗性、曲げ疲労への抵抗性、水分損傷(表面剥離)への抵抗性等の効果を得ることを目的として、60℃で100〜20,000ポアズの範囲の粘度を有するアスファルト80〜99.5重量%及び0.1〜2000の範囲のメルト・フロー・インデックスを有するエポキシド含有反応物重合体0.5〜20重量%からなる反応混合物を利用することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、アスファルトと、エチレン・n−ブチル(メタ)アクリレート・グリシジル(メタ)アクリレート三元共重合体(EnBAGMA)との反応促進のために、リン酸、硫酸のような酸触媒を使用することで、酸触媒を使用していない場合と比較して同じ反応時間でより大きな剛性を示すことが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
また、高温時の耐流動性に優れ、かつ低温時の耐クラック性および耐骨材飛散抵抗性に優れた舗装用アスファルトエポキシ樹脂組成物を得ることを目的として、組成物の成分構成を、(A)アスファルト75〜93重量%、(B)エポキシ樹脂1〜5重量%、(C)マレイン酸変成された熱可塑性重合体10〜20重量%[(A)+(B)+(C)=100重量%]の割合で存在し、エポキシ樹脂のエポキシ基をマレイン酸変性された熱可塑性重合体のカルボシキル基と反応させるようにしたアスファルトエポキシ樹脂組成物において、前記(B)エポキシ樹脂が、(i)エチレン、(ii)n−ブチルアクリレートまたはメタクリレート、および(iii)グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートよりなる三元共重合体であって、その側鎖の末端にグリシジル基を有するものであり、前記(C)マレイン酸変成された熱可塑性重合体が、(iv)融点80〜105℃であるエチレン−エチルアクリレート共重合体をマレイン酸変性させた重合体と、(v)マレイン酸変性スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)とからなり、前記(iv)の重合体及び前記(v)の重合体のアスファルトエポキシ樹脂組成物に対する割合が、それぞれ8〜18重量%及び2〜6重量%であり、かつ、(iv)+(v)=10〜20重量%とすることが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
その他、バインダー組成物の接着特性を向上することを目的として、バインダー組成物を、植物由来の樹脂、植物由来の油及び重合体を含有するバインダー組成物において、該重合体がカルボン酸無水物基、カルボン酸基及びエポキシ基から選ばれた官能基を有する構成とすることが開示されている(例えば、特許文献4参照)。
また、アスファルトと、低分子量のプラストマーと、エチレン・n−ブチル(メタ)アクリレート・グリシジル(メタ)アクリレート三元共重合体と、スチレン・ブタジエン共重合体とを含むアスファルト改質組成物が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
特許第3164366号 国際公開第1996/28513号パンフレット 特許第4601302号 特表2011−506634号公報 米国特許出願公開第2008/0153945号明細書
本発明者等は、ポリマー結合アスファルト組成物が、a)アスファルトと、b)エチレン・n−ブチル(メタ)アクリレート・グリシジル(メタ)アクリレート三元共重合体と、c)スチレン系エラストマーと、から構成され、前記b)が有するエポキシ基と、前記a)が有する官能基とが反応することで、反応生成物が、高温耐性と、低温耐性と、強度とを両立し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の目的は、軟化点が高く、低温でも割れにくく、かつ高強度である反応生成物が生成されるポリマー結合アスファルト組成物、舗装用混合物、並びに、軟化点が高く、低温でも割れにくく、かつ高強度である舗装体を提供することにある。
<1> a)アスファルトと、
b)エチレン・n−ブチル(メタ)アクリレート・グリシジル(メタ)アクリレート三元共重合体と、
c)スチレン系エラストマーと、を含んで構成され、
e)重量平均分子量が7000以下のプラストマーのポリマー結合アスファルト組成物中の含有量が0.1質量%未満であり、
前記b)が有するエポキシ基と、前記a)が有する官能基とが反応するポリマー結合アスファルト組成物である。
<2> 前記c)が、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体である前記<1>に記載のポリマー結合アスファルトである。
<3> 前記a)と、前記b)と、前記c)との合計質量100質量部に対して、
前記b)の含有量が0.05質量部以上3質量部以下であり、
前記c)の含有量が0.5質量部以上15質量部以下であり、
前記a)の含有量が残部である前記<1>または前記<2>に記載のポリマー結合アスファルト組成物である。
<4> a)アスファルトと、
b)エチレン・n−ブチル(メタ)アクリレート・グリシジル(メタ)アクリレート三元共重合体と、
c)スチレン系エラストマーと、
d)酸触媒または塩基性触媒と、を含んで構成され、
e)重量平均分子量が7000以下のプラストマーのポリマー結合アスファルト組成物中の含有量が0.1質量%未満であり、
前記b)が有するエポキシ基と、前記a)が有する官能基とが反応するポリマー結合アスファルト組成物である。
<5> 前記d)が、硫酸、リン酸、塩酸、硝酸及び酢酸から選ばれる少なくとも1種である前記<4>に記載のポリマー結合アスファルト組成物である。
<6> 前記a)と、前記b)と、前記c)、前記d)との合計質量100質量部に対して、
前記b)の含有量が0.05質量部以上3質量部以下であり、
前記c)の含有量が0.5質量部以上15質量部以下であり、
前記d)の含有量が0.02質量部以上5質量部以下であり、
前記a)の含有量が残部である前記<5>または前記<6>に記載のポリマー結合アスファルト組成物である。
<7> 前記<1>〜前記<6>のいずれか1つに記載のポリマー結合アスファルト組成物と、骨材とを含む舗装用混合物である。
<8> 前記<7>に記載の舗装用混合物を用いて構築された舗装体である。
本発明によれば、軟化点が高く、低温でも割れにくく、かつ高強度である反応生成物が生成されるポリマー結合アスファルト組成物、舗装用混合物、並びに、軟化点が高く、低温でも割れにくく、かつ高強度である舗装体が提供される。
以下に、本発明のポリマー結合アスファルト組成物に係る実施形態について詳細且つ具体的に説明する。但し、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
<ポリマー結合アスファルト組成物>
本発明の第1の実施形態に係るポリマー結合アスファルト組成物は、a)アスファルトと、b)エチレン・n−ブチル(メタ)アクリレート・グリシジル(メタ)アクリレート三元共重合体と、c)スチレン系エラストマーと、を含んで構成され、e)重量平均分子量が7000以下のプラストマーのポリマー結合アスファルト組成物中の含有量が0.1質量%未満であり、前記b)が有するエポキシ基と、前記a)が有する官能基とが反応するポリマー結合アスファルト組成物である。
以下、「a)アスファルト」を『a成分』、「b)エチレン・n−ブチル(メタ)アクリレート・グリシジル(メタ)アクリレート三元共重合体」を『b成分』、「c)スチレン系エラストマー」を『c成分』、「e)重量平均分子量が7000以下のプラストマー」を『e成分』とも称する。
すなわち、本発明の第1の実施形態に係るポリマー結合アスファルト組成物は、a成分とb成分とc成分とを含んで構成され、e成分の含有量が0.1質量%未満であれば、他の成分を含有してもよい。
また、本発明の第2の実施形態に係るポリマー結合アスファルト組成物は、a)アスファルトと、b)エチレン・n−ブチル(メタ)アクリレート・グリシジル(メタ)アクリレート三元共重合体と、c)スチレン系エラストマーと、d)酸触媒または塩基性触媒と、を含んで構成され、e)重量平均分子量が7000以下のプラストマーのポリマー結合アスファルト組成物中の含有量が0.1質量%未満であり、前記b)が有するエポキシ基と、前記a)が有する官能基とが反応するポリマー結合アスファルト組成物である。
以下、「d)酸触媒または塩基性触媒」を『d成分』とも称する。
すなわち、本発明の第2の実施形態に係るポリマー結合アスファルト組成物は、本発明の第1の実施形態に係るポリマー結合アスファルト組成物を構成するa成分とb成分とc成分とに加え、更にd成分を含んで構成される。
すなわち、本発明の第2の実施形態に係るポリマー結合アスファルト組成物は、a成分とb成分とc成分とd成分とを含んで構成され、e成分の含有量が0.1質量%未満であれば、他の成分を含有してもよい。
舗装道路に代表される舗装体は、記述のように、高温耐性(高軟化点)、低温耐性(低温での割れ耐性)、及び強度等の種々の機能を満たすために、アスファルトにSBS共重合体を添加して、アスファルトの改質を行ってきた。また、近年においては、汎用的に使用されてきたSBS共重合体に換わる添加材料として、エチレン・n−ブチル(メタ)アクリレート・グリシジル(メタ)アクリレート三元共重合体(以下、単に「EnBAGMA」とも称する)が用いられている。
一般に、アスファルトに対する添加材料の量を大きくすることで、アスファルトの粘度が大きくなるため、SBS共重合体の、アスファルトに対する量を制御することで高温環境下でのアスファルトの流動を防ぐことが試みられている。
しかし、SBS共重合体の量を多くしすぎると、アスファルト組成物の調製後に貯蔵安定性が不安定となることがあり、少量であると、アスファルト組成物のタフネス(把握力)やテナシティ(粘結力)が不十分となることがあった。また、EnBAGMAの量を多くしても、効果の向上に限度があり、また、経済的にも好ましくなかった。従って、
これに対して、アスファルト組成物の構成を、アスファルト(a成分)と、EnBAGMA(b成分)と、スチレン系エラストマー(c成分)とから構成され、b成分が有するエポキシ基と、a成分が有する官能基とが反応するポリマー結合アスファルト組成物(本発明の第1の実施形態に係るポリマー結合アスファルト組成物)とすることで、反応生成物が、高軟化点であり、低温でも割れにくく、かつ高強度なものとすることができる。
本発明の第2の実施形態に係るポリマー結合アスファルト組成物は、さらに、酸触媒または塩基性触媒(d成分)を含有している。d成分により、b成分が有するエポキシ基と、a成分が有する官能基との反応が促進され、ポリマー結合アスファルト組成物の反応生成物をより短時間で得ることができ、反応の長時間化によるアスファルト劣化を防止することができる。
すなわち、本発明の第2の実施形態に係るポリマー結合アスファルト組成物は、反応生成物が、高軟化点であり、低温でも割れにくく、かつ高強度なものとすることができる上に、生産効率が高く、アスファルトの劣化も防止することができる。
このような複数の機能を同時に満たす本発明のポリマー結合アスファルト組成物を用いることで、片側二車線のような一般道で使用されるII型ポリマー改質アスファルトや、ハイドロプレーン現象への対応が必要な高速道路に使用されるポーラス度合いの大きいH型ポリマー改質アスファルトへの適用に優れる。
さらに、本発明のポリマー結合アスファルト組成物においては、アスファルト(a成分)に対して、EnBAGMA(b成分)と、SBS共重合体等のc成分とを併用することで、b成分とc成分との含有量を少量とするだけでも、アスファルトに対してSBS共重合体を多用した場合と同等の効果を得ることができる。従って、効果を損ねずに、従来のアスファルト組成物に比べ、EnBAGMAおよびSBS共重合体の使用量を減らすことができるため、経済的に好ましい上、省エネ、省資源ともなり環境性に優れる。
以下本発明のポリマー結合アスファルト組成物を構成する各成分について詳細に説明する。
〔a)アスファルト〕
本発明のポリマー結合アスファルト組成物が含有するa)アスファルトは、特に制限されず、例えば、自然石、レーキアスファルト、石油アスファルト、エアブローンアスファルト、分解アスファルト、残留アスファルト等が代表的である。道路舗装等の舗装体には、主として石油アスファルトが用いられる。
石油アスファルトは、さらにストレートアスファルトおよびブローンアスファルトに大きく分けられる。より具体的には、例えば、JIS K 2207の表1に示されている各種針入度のストレートアスファルト、「アスファルト舗装要綱」(平成9年1月13日 社団法人日本道路協会 改訂発行)第51項、表−3.3.4に示されているセミブローンアスファルト、石油学会編「新石油辞典」(1982)308頁に示されるプロパン脱れきアスファルト及び304頁のフルフラール法に示されるエキストラクト等が用いられる。
また、ストレートアスファルトは、JIS K 2207における針入度が60〜80のアスファルト(「アスファルト60/80」とも称される)がよく用いられる。
アスファルトは、種々の官能基を有することが知られており、例えば、カルボキシ基(−COOH)、ヒドロキシ基(−OH)等が代表的である。
また、アスファルトは、アスファルトを溶解させるために一般に使用されている有機溶媒に対して可溶性である。
アスファルトは、粘度などの物性や官能基の量が同じ同種のものを単独で用いてもよいし、物性や官能基の量が異なる異種のもの2種以上を併用してもよい。
ポリマー結合アスファルト組成物中のアスファルトの含有量は、ポリマー結合アスファルト組成物中の全成分の質量を100質量部としたとき、a成分以外の成分の合計量を差し引いた残部であればよい。例えば、本発明の第1の実施形態に係るポリマー結合アスファルト組成物においては、a成分の含有量=100−(b成分の含有量+c成分の含有量)である。b成分、c成分、及びd成分の各含有量の範囲については、後述する。
〔b)エチレン・n−ブチル(メタ)アクリレート・グリシジル(メタ)アクリレート三元共重合体(EnBAGMA)〕
本発明のポリマー結合アスファルト組成物が含有するb)エチレン・n−ブチル(メタ)アクリレート・グリシジル(メタ)アクリレート三元共重合体(EnBAGMA)は、b1)エチレンと、b2)n−ブチル(メタ)アクリレートと、b3)グリシジル(メタ)アクリレートとの3つの繰り返し単位の三元共重合体である。
b1繰り返し単位を「E」、b2繰り返し単位を「nBA」、b3繰り返し単位を「GMA」と称することもある。
これらEとnBAとGMAとからなる三元共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体のいずれの形態であってもよいが、入手のし易さの観点からはランダム共重合体が好ましい。
ポリマー結合アスファルト組成物において、b成分であるEnBAGMAは、GMAに含まれるエポキシ基がa成分であるアスファルトが有するカルボキシ基やヒドロキシ基等の官能基と反応することにより、一体化して機能性を発揮する化学的作用をもたらす成分であると考えられる。
具体的には、EnBAGMAとアスファルトとが一体化することにより、以下の機能を発現すると考えられる。
・永久的変形(轍の跡)に対する改良された抵抗性。
・曲げ疲労に対する改良された抵抗性。
・低温で熱的に起こされる亀裂に対する改良された抵抗性。
・水分損傷(表面剥離)に対する改良された抵抗性。
b1繰り返し単位(E)と、b2繰り返し単位(nBA)と、b3繰り返し単位(GMA)との割合は特に制限されないが、EnBAGMAの全質量に対し、次の割合で構成されていることが好ましい。
すなわち、b2繰り返し単位(nBA)は0質量%を超え40質量%以下であり、b3繰り返し単位(GMA)は1質量%〜10質量%であり、b1繰り返し単位(E)は、100質量%からb2繰り返し単位(nBA)およびb3繰り返し単位(GMA)の合計を差し引いた残部である。
EnBAGMAは、ASTM D1238−65Tの条件Eで測定したメルトフローインデックス(単位:g/10分)が、0.1〜200(分子量1,000,000〜10,000)であることが好ましく、0.5〜500(分子量650,000〜25,000)であることがより好ましく、1〜100(分子量400,000〜40,000)であることがさらに好ましい。
EnBAGMAは、E/nBA/GMAの割合やメルトフローインデックスが同じ同種のものを単独で用いてもよいし、E/nBA/GMAの割合やメルトフローインデックスが異なる異種のEnBAGMAを2種以上混合して用いてもよい。
また、EnBAGMAは、市販品を用いてもよく、例えば、商品名エルバロイAM〔E/nBA/GMA=67/28/5、MFR=12(190℃、2.16kg)〕や、商品名エルバロイ4170〔E/nBA/GMA=70/21/9、MFR=12(190℃、2.16kg)〕(いずれも、イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カムパニー社製)が挙げられる。
本発明のポリマー結合アスファルト組成物中のEnBAGMAの含有量は、第1の実施形態に係る本発明のポリマー結合アスファルト組成物においては、a成分と、b成分と、c成分との合計質量100質量部に対して、0.05質量部以上3質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上2質量部以下であることがより好ましく、0.3質量部以上2質量部以下であることがさらに好ましい。
第2の実施形態に係る本発明のポリマー結合アスファルト組成物においては、EnBAGMAの含有量は、a成分と、b成分と、c成分と、d成分との合計質量100質量部に対して、0.05質量部以上3質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上2質量部以下であることがより好ましく、0.3質量部以上2質量部以下であることがさらに好ましい。
本発明の好ましい態様における特徴の一つは、後述するようにc)成分の少ない領域と組み合わせることで、少ないb成分でもa成分、c成分、d成分とにより優れた物性バランスを示す。
〔c)スチレン系エラストマー〕
本発明のポリマー結合アスファルト組成物が含有するc)スチレン系エラストマー(c成分)は、エラストマーの重合単位(繰り返し単位)として、スチレンを含むものであれば特に制限されない。
c)スチレン系エラストマー(c成分)は、通常、a成分であるアスファルトに未反応であり、アスファルト中にc成分が存在することで、機能を発揮する物理的作用をもたらす成分であると考えられる。
具体的には、ポリマー結合アスファルト組成物中に、エラストマーであるc成分を含有することで、反応により生成した反応生成物中のアスファルトや、b成分と一体化したアスファルトの間にc成分が含まれることとなり、舗装体に弾力性や柔軟性をもたらすと考えられる。
c)スチレン系エラストマーとしては、例えば、SIS(スチレン・イソプレン・スチレン)共重合体、SBS(スチレン・ブタジエン・スチレン)共重合体等が挙げられる。また、SEBS(スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン)共重合体などの水添系のスチレン系エラストマーを用いてもよい。共重合体の形態は、特に制限されず、ブロック共重合体でも、グラフト共重合体でもよいが、通常、ブロック共重合体が用いられる。
中でも、SBS(スチレン・ブタジエン・スチレン)ブロック共重合体が最も好ましい。c)スチレン系エラストマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明のポリマー結合アスファルト組成物中のc成分の含有量は、次の量であることが好ましい。
第1の実施形態に係る本発明のポリマー結合アスファルト組成物においては、a成分と、b成分と、c成分との合計質量100質量部に対して、0.5質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
特に、第1の実施形態に係る本発明のポリマー結合アスファルト組成物を、II型のポリマー結合アスファルト組成物とする場合のc成分の含有量は、0.5質量部以上4質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上3質量部以下であることがさらに好ましい。
また、第1の実施形態に係る本発明のポリマー結合アスファルト組成物を、H型のポリマー結合アスファルト組成物とする場合のc成分の含有量は、4質量部以上15質量部以下であることがより好ましく、4質量部以上6質量部以下であることがさらに好ましい。
第2の実施形態に係る本発明のポリマー結合アスファルト組成物においては、c成分の含有量は、a成分と、b成分と、c成分と、d成分との合計質量100質量部に対して、0.5質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
特に、第2の実施形態に係る本発明のポリマー結合アスファルト組成物を、II型のポリマー結合アスファルト組成物とする場合のc成分の含有量は、0.5質量部以上4質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上3質量部以下であることがさらに好ましい。
また、第2の実施形態に係る本発明のポリマー結合アスファルト組成物を、H型のポリマー結合アスファルト組成物とする場合のc成分の含有量は、4質量部以上15質量部以下であることがより好ましく、4質量部以上6質量部以下であることがさらに好ましい。
本発明の好ましい態様における特徴の一つは、c成分の量が少ないことである。c成分は、前述したようにa成分やb成分とは反応せずに、組成物中に存在する。c成分の量が凡そ7〜8質量%以下ならば、a成分のマトリックスの中にc成分が存在する相構造を示す。凡そ7〜8質量%を超えると、アスファルト中の溶剤成分を含んで膨潤したc成分のマトリックスの中にa成分が存在する相構造に変化する。本発明の好ましい態様は、前者のc成分の少ない相構造を利用することで、a成分とb成分の反応と相俟って優れた物性バランスを示す。
〔d)酸触媒または塩基性触媒〕
本発明の第2の実施形態に係るポリマー結合アスファルト組成物は、さらに、d)酸触媒または塩基性触媒(d成分)を含有している。
ポリマー結合アスファルト組成物にd成分が含まれていることにより、b成分が有するエポキシ基と、a成分が有する官能基との反応が促進され、ポリマー結合アスファルト組成物の反応生成物をより短時間で得ることができ、反応の長時間化によるアスファルト劣化を防止することができる。
酸性触媒としては、例えば、硫酸、リン酸、塩酸、硝酸、酢酸等の無機酸が挙げられる。リン酸は、また、種々の形態のリン酸を用いることができ、例えば「ポリリン酸」(PPA)、「超リン酸」(super phosphoric acid)(SPA)等が挙げられる。
塩基性触媒としては、たとえば、下記に示すアミン系化合物が挙げられる。
さらに、低温(たとえば20℃〜100℃の範囲)におけるb成分(EnBAGMA)とa成分(アスファルト)との反応を加速する他の好適な触媒としては、有機金属化合物および第3級アミン化合物が挙げられる。有機金属触媒の例としては、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛、チタン酸テトラ−sec−ブチル、触媒陽イオン源(たとえば、Al3+、Cd2+、Ca2+、Cu2+、Fe2+、In3+、Mn2+、Sb3+、Sn2+、およびZn2+)を形成する炭化水素モノカルボン酸、またはジカルボン酸、またはポリカルボン酸の金属塩、たとえば、オクタン酸第一スズ、ステアリン酸亜鉛、およびジブチルスズジラウレートが挙げられる。第3級アミン化合物の例としては、α−メチルベンジルジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール(DMP−10)、トリエタノールアミン、トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン、s−トリアジン、m−ジエチルアミノフェノール、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、トリアリルシアヌレート、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)、ポリ(エチレン/ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、およびトリス(ジメチルアミノメチル)フェノールのトリ−2−エチルヘキサン酸塩が挙げられる。
その他、亜リン酸トリフェニル、亜硫酸エチレン、および有機ホスフィン(たとえばトリシクロヘキシルホスフィン)等を用いてもよい。
以上の中でも、d成分としては、酸触媒が好ましく、硫酸、リン酸、塩酸、硝酸及び酢酸から選ばれる少なくとも1種の酸触媒がより好ましく、リン酸がさらに好ましく、特にポリリン酸(PPA)または超リン酸(SPA)が好ましい。
第2の実施形態に係る本発明のポリマー結合アスファルト組成物において、d成分の含有量は、a成分と、b成分と、c成分と、d成分との合計質量100質量部に対して、0.01質量部以上15質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上1質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上0,5質量部以下であることがさらに好ましい。
〔e)重量平均分子量が7000以下のプラストマー〕
本発明のポリマー結合アスファルト組成物は、重量平均分子量が7000以下のプラストマー(e成分)のポリマー結合アスファルト組成物中の含有量が0.1質量%未満である。「含有量が0.1質量%未満である」とは、e成分を実質的に含まないことを意味し、e成分を全く含まないことが好ましい。
プラストマーとは、外から力を加えると歪を生じて変形し、力を除いてもそのままで、もとに戻らない物質をいう(「化学大辞典」東京化学同人社刊、1989年)。代表的な例としては、ポリオレフィンワックスが挙げられる。
〔他の成分〕
本発明の第1の実施形態に係るポリマー結合アスファルト組成物および本発明の第2の実施形態に係るポリマー結合アスファルト組成物において、本発明の効果を損なわない範囲で上記a成分、b成分、c成分及びd成分以外の他の成分、例えばアロマオイル、クルードオイル等を更に含有していてもよい。
〔各成分の反応条件〕
本発明のポリマー結合アスファルト組成物は、少なくとも、b成分が有するエポキシ基と、a成分が有する官能基とが反応する。当該反応における反応条件は、特に制限されないが、一般に、加熱環境下で反応することで、反応が促進する。
一般に、反応温度は100℃を超えており、反応時間は3時間を超える。
典型的には、反応温度は125℃〜250℃であり、反応時間は2時間〜300時間である。好ましくは、反応温度は150℃〜230℃であり、反応時間は3時間〜48時間である。さらにより好ましくは、反応温度は150℃〜200℃であり、反応時間は4時間〜24時間である。
d成分を含む第2の実施形態に係るポリマー結合アスファルト組成物では、b成分が有するエポキシ基と、a成分が有する官能基との反応を、d成分の存在により促進させることができるため、アスファルトを加熱環境下に長時間おかずに済み、過加熱によるアスファルトの劣化を防止することができ、生産効率にも優れる。
d成分を含む第2の実施形態に係るポリマー結合アスファルト組成物においては、b成分が有するエポキシ基と、a成分が有する官能基との反応の反応温度は、d成分を用いない場合よりも10℃程度小さくすることができ、115℃〜240℃であればよく、140℃〜220℃であることが好ましく、140℃〜190℃であることがより好ましい。また、反応時間は、0.5時間〜3時間であればよく、1時間〜2時間であることが好ましく、1時間〜1.5時間であることがより好ましい。
b成分が有するエポキシ基と、a成分が有する官能基との反応は、一般に、大気圧で実施される。より高い圧力またはより低い圧力を使用することもできるが、一般にあまり経済的ではない。b成分が有するエポキシ基と、a成分が有する官能基との反応においては、一般に、アスファルト(a成分)に対して、EnBAGMA(b成分)を絶え間なく混合して反応を進める。
また、反応にあたっては、被添加成分(アスファルトなど)を攪拌しながら、EnBAGMAを添加することが好ましく、その場合、攪拌速度は200rpm以上であることが好ましい。
〔ポリマー結合アスファルト組成物の調製〕
本発明のポリマー結合アスファルト組成物は、既述のa成分〜c成分、第2の実施形態においてはさらにd成分、また、さらに必要に応じて、上記他の成分を、既述の割合で混合することにより調製することができる。かかる調製において、a成分とb成分との混合態様は既述のとおりである。
<舗装用混合物>
本発明の舗装用混合物は、既述の本発明のポリマー結合アスファルト組成物と、骨材とを含んで構成される。
本発明の舗装用混合物に含まれる骨材としては、社団法人日本道路協会発行の「アスファルト舗装要綱」に記載されている舗装用の骨材であればどのようなものでも使用でき、例えば、砕石、玉石、砂利、鉄鋼スラグ等が挙げられる。また、これらの骨材にアスファルトを被覆したアスファルト被覆骨材および再生骨材などを使用してもよい。その他、これに類似する粒状材料で、人工焼成骨材、焼成発泡骨材、人工軽量骨材、陶磁器粒、ルクソバイト、アルミニウム粒、プラスチック粒、セラミックス、エメリー、建設廃材、繊維等を使用してもよい。
骨材は、一般に、粗骨材、細骨材、及びフィラーに大別され、粗骨材とは2.36mmふるいに留まる骨材であって、一般には、粒径範囲2.5〜5mmの7号砕石、粒径範囲5mm〜13mmの6号砕石、粒径範囲13mm〜20mmの5号砕石、更には、粒径範囲20mm〜30mmの4号砕石などの種類がある。
本発明においては、これら種々の粒径範囲の粗骨材の1種または2種以上を混合した骨材、或いは、合成された骨材などを使用することができる。これらの粗骨材には、骨材に対して0.3〜1質量%程度のストレートアスファルトやケロシンを被覆しておいても良い。
細骨材とは、2.36mmふるいを通過し、かつ、0.075mmふるいに止まる骨材をいい、例えば、川砂、丘砂、山砂、海砂、スクリーニングス、砕石ダスト、シリカサンド、人工砂などが挙げられる。
また、フィラーとは、0.075mmふるいを通過するものであって、例えば、スクリーニングスのフィラー分、石粉、消石灰、セメント、焼却炉灰、クレー、タルク、フライアッシュ、カーボンブラックなどであるが、このほか、ゴム粉粒、コルク粉粒、木質粉粒、樹脂粉粒、繊維粉粒、パルプ、人工骨材等であっても、0.075mmふるいを通過するものであれば、フィラーとして使用することができる。
更に、連続粒度の骨材を使用することも可能であり、例えば、粒度調整砕石、クラッシャーラン等が挙げられる。粒度調整砕石としては、粒度範囲が40mm〜0mmのM−40、粒度範囲が30mm〜0mmのM−30、粒度範囲が25mm〜0mmであるM−25等があり、クラッシャーランとしては、粒度範囲が40mm〜0mmであるC−40、粒度範囲が30mm〜0mmであるC−30、粒度範囲が20mm〜0mmであるC−20などがある。これらの連続粒度の骨材は、通常、上層路盤の安定処理用の混合物を製造する際等に使用される。
表層及び基層用の混合物には、通常、単粒骨材の複数種類を使用し、その合成粒度が所定の粒度に合致しているかどうかを確認した上で使用する。
<舗装体>
本発明の舗装体は、既述の本発明の舗装用混合物を用いて構築される。
舗装用混合物の敷き均しは、通常、アスファルトフィニッシャーを用いて行うが、レーキやスコップを用いて人力によって行っても良い。舗装厚は、表層又は基層の場合、通常約5cmであるが、基層の中に中間層を含む場合には基層厚を5cm〜15cmとすることができる。上層路盤の安定処理に使用する場合には10cm〜25cmの舗装厚とするのが普通である。
舗装用混合物を滑り止め効果や吸音効果を備えた排水性舗装或いは透水性舗装に使用する場合には、開粒度混合物に調製し、通常、基層の上に表層として約5cmの厚さに舗設する。舗装体の厚さを増して更に吸音効果を高める場合には、更に基層厚5cm分の厚さを、表層に使用する開粒度混合物に置き換えて、合計10cmの開粒度混合物を舗設して表基層としてもよい。
橋面舗装においては、床版上に塗膜やシートによる防水処理を施すと共に、滞留する降雨水等の排水処理、例えば、ドレイナー等を施した後、開粒度混合物に調製した舗装用混合物を4cm〜5cmの厚さに舗設する。また、舗装用混合物を表層上部に舗設し、凍結防止機能を有する保護層として使用する場合には、例えば、舗設厚は約1.5cm〜2cm程度とするのがよい。
舗装用混合物の敷き均しの終了後、敷き均し面上を転圧して締め固める。転圧は、通常、継目転圧、初転圧、二次転圧、仕上げ転圧の順に行うが、舗装現場の状況に応じて、いずれかの転圧を省略したり、他の転圧方法で代用したり、いずれかの転圧を複数回行うなど、適宜の変更が可能である。使用する転圧機は、通常の舗装作業において使用されているものならばどのようなものを用いてもよく、例えば、鉄輪ローラーや振動ローラー、タイヤローラー、バイブレーター、或いはこれらを組み合わせた転圧機などを使用することができる。転圧速度に特に制限はないが、鉄輪ローラーの場合は約2km/h〜3km/h程度、振動ローラーの場合は約3km/h〜6km/h、タイヤローラーの場合は約6km/h〜10km/h程度が好ましい。
初転圧は、通常、質量約10t〜12tの鉄輪ローラーで1往復〜2往復程度行い、転圧クラックが生じないように丁寧に行うのが望ましい。なお、転圧クラックとは、ローラーの線圧過大や過転圧などが原因で現れるヘアークラックである。
二次転圧は、通常、質量約8t〜20t又は6t〜10tの振動ローラーやタイヤローラーを使用する。タイヤローラーによる転圧には、交通荷重と同じような締め固め作用があり、骨材相互の噛み合わせを良くすると共に、深さ方向に均一な密度が得やすいので重交通道路や摩耗を受けやすい箇所などの転圧に適しており、振動ローラーは、ローラーの荷重や振動数並びに振幅が適切であれば、少ない転圧回数で所定の締め固め度を得ることができる転圧手段である。いずれの転圧機を用いるにしても、二次転圧は転圧作業中の最も重要な工程であるので、混合物の十分な締め固めをこの二次転圧で行うのが一般的である。
仕上げ転圧は、不陸の修正、ローラーマークの消去等の目的で行われるもので、タイヤローラー或いは鉄輪ローラーで1往復〜2往復程度転圧する。二次転圧に振動ローラーを使用した場合には、仕上げ転圧にタイヤローラーを使用するのが望ましい。
各々の転圧時には、転圧面に水を噴霧又は散布するのが望ましく、水を噴霧又は散布することによって、混合物が水と接触し、反応、硬化を促進することができる。転圧機に混合物が付着しないように、噴霧又は散布する水中に付着防止剤を添加することも適宜行うことができる。
本発明の舗装用混合物は、アスファルト(a成分)とEnBAGMA(b成分)とが一体化し、スチレン系エラストマー(c成分)がアスファルト中に存在する本発明のポリマー結合アスファルト組成物を含んでいる。そのため、弾性を備えており、それ自身が富弾性体である。従って、混合物中にゴムチップやゴム片などの弾性質の骨材を添加しなくても弾性を備えているが、更に弾性力を向上させるために、ゴムチップやゴム片、木材チップ等の弾性質の骨材を添加しても良いことは勿論である。更には、混合物中に適宜の顔料を添加して、着色し、有色舗装用の混合物としたり、光反射性骨材や、光輝性を有する骨材や、蛍光或いは蓄光性の骨材を使用して、光反射性、光輝性、蛍光性、或いは蓄光性舗装用の混合物としてもよい。
舗装用混合物には、構築される舗装体をより強固なものとするために適宜の繊維材料を添加してもよく、使用することができる繊維材料としては、ポリエステル、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリプロピレン、ビニロン、アクリル、ポリ塩化ビニリデン等の合成繊維、または半合成繊維、天然繊維、ガラス繊維、再生繊維、炭素繊維、金属繊維等、種々のものが用いられるが、中でも、ポリエステル繊維が好ましい。これらの繊維は、適当な長さに切断された短繊維として用いることもできるが、モノフィラメントや、モノフィラメントを多数集束させたマルチフィラメントとしても、あるいは、紡績糸や撚糸としても用いることが可能であるが、短繊維として使用するのが最も好ましい。短繊維の長さに特に制限はないが、あまり短いと繊維による強度維持やひび割れ追従性等に効果がないので、1.5mm以上のもの、好ましくは20mm〜35mm程度のものが好ましい。
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。但し、本発明は、これらの例によって何ら制限されるものではない。
<ポリマー結合アスファルト組成物の成分>
ポリマー結合アスファルト組成物の成分として、次のa成分〜d成分を用意した。
a成分(ベースアスファルトとも称する)
・ストレートアスファルト60/80
〔JIS K2270の針入度が60〜80のストレートアスファルト〕
b成分(EnBAGMA)
・エルバロイAM(イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カムパニー社製)
〔E/nBA/GMA=67/28/5、MFR=12(190℃、2.16kg)〕
・エルバロイ4170(イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カムパニー社製)
〔E/nBA/GMA=70/21/9、MFR=12(190℃、2.16kg)〕
c成分
・SBSブロック共重合体
d成分
・ポリリン酸(PPA)
〔和光純薬社製〕
・II型用骨材
[6号砕石(硬質砂岩):37.5質量%、7号砕石(硬質砂岩):17.5質量%、砕砂(硬質砂岩):29.3質量%、細砂(洗砂):9.7質量%、石粉(石灰岩):6.0質量%]
・H型用骨材
[6号砕石(硬質砂岩):84.0質量%、砕砂(硬質砂岩):10.5質量%、石粉(石灰岩):5.5質量%]
<ポリマー結合アスファルト組成物の調製>
用意した各成分を、表1に示す組成で混合し、ポリマー結合アスファルト組成物を調製した。なお、ベースアスファルトの含有量は、各組成物の全質量から、各組成物の調製に用いたb成分、c成分、及びd成分の全合計量を差し引いた残部である。表1に示す各成分の含有量は、各組成物の全質量に対する質量比〔質量%〕を表す。
ポリマー結合アスファルト組成物の調製にあたっては、次の処方により各成分を混合した。まず、ベースアスファルトに流動性を与えるため、ベースアスファルトを攪拌しながら175℃で加熱した。次いで、さらに200rpm以上に攪拌しながら185℃に加熱し、b成分、c成分、及びd成分を表1に示す混合比で、10g/minの供給速度により添加した。供給完了後も加熱しながら更に2時間攪拌を続けた。
以上のようにして、ポリマー結合アスファルト組成物を調製した。
<舗装用混合物の調製>
得られたポリマー結合アスファルト組成物と骨材との合計質量(100質量%)に対して、ポリマー結合アスファルト組成物の量がII型は5.5質量%、H型は5.0質量%となるように添加して、舗装用混合物を調製した。
<評価>
ポリマー結合アスファルト組成物の性能、及びポリマー結合アスファルト組成物と骨材とからなる舗装用混合物の性能は、日本道路協会発行の「舗装調査・試験法便覧」記載の方法に基づき実施した。概要を下記に示す。
JIS K 2207(石油アスファルト)、およびJMAAS-01:2007(道路舗装用ポリマー改質アスファルトの品質および試験方法)で規定する評価手法に準じた方法により、得られた舗装体の、針入度(Penetration)、軟化点(Sofening point)、7℃および15℃における伸度(Ductility)、把握力(Toughness)、粘結力(Tenacity)、及び粗骨材の剥離面積率(Stripping resistance)を評価した。評価方法の詳細は、次のとおりである。
1.針入度(Penetration)
JIS K 2207に基づき、25℃に保った試料に、規定の針が一定時間内に進入する長さを測定した。同一の条件のもとでは硬い舗装体ほど針入度は小さく、軟らかい舗装体ほど針入度は大きくなる傾向にある。
2.軟化点(Sofening point)
JIS K 2207で規定する軟化点試験(環球法)により舗装体の軟化点を測定した。すなわち、規定のリングに、舗装体を充填し、試料の中央に規定の球を置き、グリセリン浴中で浴温を上昇させ、軟化した試料が球の重みで一定の長さに垂れ下がったときの温度を軟化点とした。
3.伸度(Ductility)
定形の舗装体を、7℃の水中で、一定の速度(5cm/min)で引き伸ばし、試料が破断するまでの長さ(cm)を測定した。水中の温度を15℃に変更して、15℃における伸度も測定した。
4.把握力(Toughness)、粘結力(Tenacity)
金属半球面を舗装体中に埋め、一定速度(50cm/min)で引き抜き、舗装体の把握力〔N・m〕と粘結力〔N・m〕を求めた。
5.粗骨材の剥離面積率(Stripping resistance)
アスファルトで完全に被膜した骨材を、ガラス板に広げて80℃の水槽中に浸し,剥離状態を観察して、舗装体におけるアスファルト被膜の骨材からの剥離に対する抵抗性を評価した。アスファルト被膜の骨材からの剥離面積を百分率で表した。
6.フラース脆加点(Fraas breaking point)
フラース脆加点評価とは、舗装体の低温における性状試験の一種であり、JIS K 2207に準じた方法で、ポリマー結合アスファルト組成物を鋼板に塗布して得た試料を曲げたときに、被膜に亀裂が生じる最初の温度をフラース脆加点として測定した。
7.曲げ仕事量(Bending work)、曲げスティフネス(Bending stiffness)
JMAAS-01:2007に準じた方法により、舗装体を、2cm×2cm×12cmの大きさに加工すると共に、−20℃の試験温度で養生して供試体とした。供試体について、2点支持1点載荷方式で曲げ試験を行い、仕事量(最大曲げ応力×最大曲げひずみ)およびスティフネス(最大曲げ応力/最大曲げひずみ)を測定した。
8.マーシャル安定度試験(Marshall stability test)
円筒形混合物試験体(直径101.6mm、厚さ63.5mm)の側面を円弧型2枚の載荷板ではさみ、60℃の条件で50mm/分の載荷速度により直径方向に荷重を加え、供試体が破壊するまでに示す最大荷重とそれに対する変形量を測定した。
9.ホイールトラッキング試験(Wheel tracking test)
円筒形混合物試験体(直径101.6mm、厚さ63.5mm)上を、荷重調整した小型のゴム車輪を繰返し走行させ、そのときの単位時間あたりの変形量から動的安定度を求めた。
10.水浸ホイールトラッキング試験(Immersion wheel tracking test)
円筒形混合物試験体(直径101.6mm、厚さ63.5mm)を60℃の恒温水槽に、48時間水浸後、マーシャル安定度を測定した。通常のマーシャル安定度試験のマーシャル安定度の値と水浸後のマーシャル安定度の値より残留安定度を求め、アスファルト混合物の剥離現象に対する抵抗性を評価した。
残留安定度(%)=[60℃、48時間水浸後のマーシャル安定度(kN)/標準マーシャル安定度(kN) )×100
11.カンタブロ試験(Cantabro test)
円筒形混合物試験体(直径101.6mm、厚さ63.5mm)をロサンゼルス試験機(粗骨材のすり減り試験法に規定する機械)に入れ、鋼球を使用しないでドラムを300回転させ、試験後の損失量を測定した。
損失量(%)=[(試験前の供試体質量(g)− 試験後の供試体質量(g))/試験前の供試体質量(g)]×100
12.ダレ試験
バインダ量を変化させたアスファルト混合物を一定温度の乾燥炉で所要時間加熱養生し、ダレまたは付着によって損失したバインダ質量を測定した。
ダレ量(%)=[バットに付着したアスファルトモルタルの質量(g)/試験前の供試体質量(g)]×100
評価結果を表1に示す。なお、実施例1〜4および比較例1〜2については、II型のポリマー改質アスファルトの標準性状が、各物性評価の指標となり、実施例5〜6については、H型のポリマー改質アスファルトの標準性状が、各物性評価の目安となるので、JMAAS-01:2007(道路舗装用ポリマー改質アスファルトの品質および試験方法)に記載されているII型及びH型ポリマー改質アスファルトの標準性状も表1に示した。
表1からわかるように、実施例1〜6のポリマー改質アスファルト組成物は、軟化点が高く、低温でも割れにくく、かつ高強度であり、標準性状を上回る優れた物性を示した。
次に、表2に示す骨材と本発明のポリマー改質アスファルト組成物とを混合して、舗装体としての性能試験として、上記評価方法により、8)マーシャル安定度、9)ホイ−ルトラッキング試験、10)水浸ホイ−ルトラッキング試験、11)カンタブロ試験、及び、12)ダレ試験を行った。結果を表2に示す。
表2からわかるように、本発明のポリマー改質アスファルト組成物は、b成分、c成分の使用量が少ないにも関わらず、II型及びH型として定められた基準に合格することが分かる。

Claims (8)

  1. a)アスファルトと、
    b)エチレン・n−ブチル(メタ)アクリレート・グリシジル(メタ)アクリレート三元共重合体と、
    c)スチレン系エラストマーと、を含んで構成され、
    e)重量平均分子量が7000以下のプラストマーのポリマー結合アスファルト組成物中の含有量が0.1質量%未満であり、
    前記b)が有するエポキシ基と、前記a)が有する官能基とが反応するポリマー結合アスファルト組成物。
  2. 前記c)が、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体である請求項1に記載のポリマー結合アスファルト組成物。
  3. 前記a)と、前記b)と、前記c)との合計質量100質量部に対して、前記b)の含有量が0.05質量部以上3質量部以下であり、前記c)の含有量が0.5質量部以上15質量部以下であり、前記a)の含有量が残部である請求項1または請求項2に記載のポリマー結合アスファルト組成物。
  4. a)アスファルトと、
    b)エチレン・n−ブチル(メタ)アクリレート・グリシジル(メタ)アクリレート三元共重合体と、
    c)スチレン系エラストマーと、
    d)酸触媒または塩基性触媒と、を含んで構成され、
    e)重量平均分子量が7000以下のプラストマーのポリマー結合アスファルト組成物中の含有量が0.1質量%未満であり、
    前記b)が有するエポキシ基と、前記a)が有する官能基とが反応するポリマー結合アスファルト組成物。
  5. 前記d)が、硫酸、リン酸、塩酸、硝酸及び酢酸から選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載のポリマー結合アスファルト組成物。
  6. 前記a)と、前記b)と、前記c)、前記d)との合計質量100質量部に対して、前記b)の含有量が0.05質量部以上3質量部以下であり、前記c)の含有量が0.5質量部以上15質量部以下であり、前記d)の含有量が0.02質量部以上5質量部以下であり、前記a)の含有量が残部である請求項5または請求項6に記載のポリマー結合アスファルト組成物。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のポリマー結合アスファルト組成物と、骨材とを含む舗装用混合物。
  8. 請求項7に記載の舗装用混合物を用いて構築された舗装体。
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