JP2015013459A - インクジェット印刷用塗工紙 - Google Patents

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Shinichi Asano
晋一 浅野
長嶋 茂
Shigeru Nagashima
茂 長嶋
鈴木 由紀子
Yukiko Suzuki
由紀子 鈴木
戸谷 和夫
Kazuo Totani
和夫 戸谷
荒井 康宏
Yasuhiro Arai
康宏 荒井
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Abstract

【課題】白紙光沢度が高く、かつ優れたインク吸収性、インク定着性、塗工層強度を有し、インクジェット商業印刷機を用いて高品質の印刷物が得られるインクジェット印刷用塗工紙を提供する。
【解決手段】基紙2上の少なくとも一方の面2aに、顔料及びバインダーを含有する塗工層3を有するインクジェット印刷用塗工紙1において、顔料が、針状軽質炭酸カルシウムを70質量%以上含有し、前記バインダーが、ラテックスバインダーと澱粉とを含有し、前記ラテックスバインダーの質量と前記澱粉の質量との比(ラテックスバインダーの質量/澱粉の質量比)が0.3以上25以下であり、前記塗工層の前記顔料の質量と前記バインダーの質量との比(顔料の質量/バインダーの質量比)が3以上30以下であるインクジェット印刷用塗工紙1とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、インクジェット印刷用塗工紙に関し、詳しくは、白紙光沢度が高く、かつ優れたインク吸収性、インク定着性、塗工層強度を有するインクジェット商業印刷機に適したインクジェット印刷用塗工紙に関する。
インクジェット方式を用いて印刷するインクジェット印刷の用途は、フォトプリント、端末PC(パーソナルコンピュータ)用プリンター、ファックスまたは複写機に留まらない。インクジェット印刷は、多品種小ロット印刷、可変情報印刷を可能とする、いわゆるオンデマンド印刷分野でも実用化が進んでいる。近年、インクジェット方式では、印刷速度の高速化および画質の向上が図られている。このため、インクジェット方式を用いる印刷は、印刷ロットあたりの印刷部数が5000部以下の、オフセット印刷が用いられていた分野にも広がりを見せている。この他、従来グラビア印刷で印刷されていた分野についても、インクジェット商業印刷の適用が検討されている。
インクジェット方式では、各種の方法により、インクの微小液滴を印刷用紙の表面に射出して、印刷用紙の表面に画像や文字を形成する。インクジェット方式は、高速化、フルカラー化が容易である上、出力時の騒音が低く、装置が低価格であることから、多方面で利用されている。
インクジェット商業印刷では、連続して印刷を行なうことが好ましい。インクジェット商業印刷では、通常、インクジェットインクを射出するインクジェットヘッドとして、ラインヘッドが採用されている。従来のインクジェットヘッドとしては、端末PC用プリンターに多く用いられているシリアル型ヘッドもある。しかし、シリアル型ヘッドを用いる場合には、印刷用紙の搬送を止めて印刷を行なう必要がある。このため、シリアル型ヘッドは、印刷用紙を搬送しながら印刷する場合には使用できない。これに対し、ラインヘッドは、印刷用紙を連続的に搬送しながら印刷できるので、輪転方式などのインクジェット商業印刷に適している。
最近、インクジェット商業印刷市場では、印刷速度のさらなる高速化が進められている。現在、インクジェット商業印刷機として、印刷用紙の搬送速度が60m/min以上のもの、更に高速では200m/minを超えるものが登場している。
インクジェット商業印刷機では、インクジェットヘッドから印刷用紙の表面にインク液滴を射出し、画像を形成した後、印刷物を乾燥している。インクジェット商業印刷機に用いられている乾燥装置としては、いろいろな種類のものがある。例えば、乾燥装置として、UV(紫外線)ランプ、ハロゲンランプ、LEDランプ、熱風乾燥装置の他、印刷用紙を搬送する搬送ロール(ヒートロール)の表面を熱して印刷物を乾燥させるものなどがある。インクジェット商業印刷機において印刷物を乾燥させる温度は、印刷スピードや、印刷物のインク量などに応じて調整している。
インクジェット商業印刷機で印刷する場合に使用される印刷用紙としては、高いインク吸収性が求められる。印刷用紙のインク吸収性が不十分であると、インクの吸収ムラが生じたり、印刷物の異なる色の境界線ににじみが発生したりして、印刷品質が低下する。また、印刷用紙のインク吸収性が不十分であると、印刷用紙にインクが定着しにくくなる。このため、印刷後に印刷用紙の表面を擦ると、印刷物からインクが脱落するといる不都合が生じる。
また、インクジェット印刷機は、無版印刷方式であるため、可変情報の印刷に適している。このため、インクジェット商業印刷機は、顧客情報を取り扱うドキュメントプロセッシングサービス(DPS)や、ダイレクトメール(DM)の印刷にも広く用いられている。この用途では、文字情報などの可変情報に加えて、宣伝効果を高める写真画像や図柄の印刷も実施されている。インクジェット方式を用いて写真画像や図柄を印刷する場合、可変情報のみを印刷する場合と比較して、印刷用紙に射出されるインク量が非常に多くなる。したがって、写真画像や図柄を印刷する場合、使用される印刷用紙には、より高いインク吸収性が要求される。
最近、広告やカタログなどにおける宣伝効果をさらに高めるために、グロスタイプの印刷用塗工紙に、インクジェット方式を用いて写真画像や図柄を含む印刷物の印刷を行ないたいという要求が高まってきている。
従来、オフセット印刷、グラビア印刷に使用されるグロスタイプの印刷用塗工紙として、例えば、特許文献1に記載の印刷用塗被加工紙がある。この印刷用塗被加工紙は、顔料としてカオリンと重質炭酸カルシウムとを含有し、接着剤としてラテックスと澱粉とを含有する塗被液を塗工してなるものである。
しかし、従来、オフセット印刷などで用いられているグロスタイプの印刷用塗工紙は、インクジェット商業印刷機を用いて高速で連続して写真画像や図柄を印刷する場合には、インク吸収性が十分でない。
このため、上記の要求に対して、現在、以下に示す(1)〜(3)のいずれかの対応を行っている。
(1)グロスタイプの印刷用塗工紙を用いず、インク吸収性が良好な非塗工タイプの印刷用紙を用いてインクジェット印刷を行う。
(2)グロスタイプの印刷用塗工紙を使用して、所謂、コンポジット印刷を行なう。具体的には、写真画像や図柄は、インクジェット印刷機を用いて印刷せず、オフセット印刷機を用いて印刷する。その後、射出されるインク量の少ない可変情報のみを、インクジェット印刷機を用いて印刷する。
(3)グロスタイプの印刷用塗工紙を使用して、インクジェット印刷機のみで、写真画像や図柄を含む印刷物を超低速で印刷する。
(1)の対応を選択した場合、印刷物の品質が不十分となる。(2)(3)の対応を選択した場合、印刷物の品質は良好となるが、生産性が不十分となる。
従来、インクジェット方式を用いて写真画像を印刷する場合に使用される印刷用紙として、多孔質顔料を含むインク受容層が表面に設けられた印刷用紙がある。この印刷用紙は、高いインク吸収性を有している。しかし、多孔質顔料を含むインク受容層を有する印刷用紙は、表面の白紙光沢度が低い。このため、所謂マット調の印刷物しか得られなかった。
表面の白紙光沢度の高いインクジェット印刷用の印刷用紙としては、所謂キャスト加工を行って平滑な表面を形成したものがある。例えば、基紙上に形成した多孔質顔料を含む塗工液の塗工面に、クロムメッキ加工を施した金属ロールの平滑面を密着させる方法により製造された印刷用紙がある。
また、表面の白紙光沢度の高い他のインクジェット印刷用の印刷用紙としては、基紙上にポリエチレン樹脂を塗工し、その上に多孔質顔料を含む塗工液を塗布することにより、光沢性を発現させた所謂RC(レジンコート)ベースのものもある。
しかし、キャスト加工を行った印刷用紙もRCベースの印刷用紙も、製造に手間がかかり、費用が高いという問題がある。
また、インクジェット印刷適性を有する印刷用塗工紙としては、以下に示すように、これまで様々な研究がなされている。
例えば、特許文献2には、オフセット印刷用紙であって、高速・連続印刷するインクジェット印刷適性を併せ持つ印刷用塗工紙において、支持体に隣接する塗工層の接着剤の質量比率とスムースター透気度の範囲を規定したものが記載されている。
特許文献3では、原紙の少なくとも一方の面に顔料とバインダーを主成分とする塗工層を設けた印刷用塗工紙において、その塗工層に塩化カルシウムを含有させることを提案している。
特許文献4では、印刷用塗工紙の塗工層上に、炭酸カルシウム以外のカルシウム化合物を含有するオーバーコート層を設けることが記載されている。また、特許文献4では、オーバーコート層のカルシウム化合物の含有量を規定している。
特許文献5には、顔料とバインダーを主成分とする塗工層を設けた印刷用塗工紙が記載されている。特許文献5では、原紙にカルシウム化合物を含有すること、ならびにそのカルシウム化合物の含有量を規定している。
特許文献6には、塗工層に用いる顔料として炭酸カルシウムを規定し、その比率、および最適な坪量および表面電気抵抗値範囲を規定したフォーム用紙が記載されている。また、特許文献6には、フォーム用紙を、電子写真印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷のいずれの印刷方式にも利用できることが記載されている。
特許文献7では、インクジェット記録方式及び電子写真記録方式共用の用紙において、カルボン酸を含有させることを規定している。
特許文献8には、平均二次粒子径を規定した凝集軽質炭酸カルシウムを含有させ、その最適添加量を規定した塗工液を塗工してなる多目的記録用紙が記載されている。
特開昭59−30992号公報 特開2011−246838号公報 特開2012−77395号公報 特開2012−77393号公報 特開2012−77392号公報 特開2008−297679号公報 特開2005−8993号公報 特開2005−8992号公報
しかしながら、特許文献2〜特許文献8に記載の印刷用塗工紙は、インク吸収性が十分でなかった。このため、特許文献2〜特許文献8に記載の印刷用塗工紙では、インクジェット商業印刷機を用いて、高速で写真画像や図柄を含む印刷物を印刷する場合に、満足できる品質の印刷物を得ることはできなかった。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、白紙光沢度が高く、かつ優れたインク吸収性、インク定着性、塗工層強度を有し、インクジェット商業印刷機を用いて高品質の印刷物が得られるインクジェット印刷用塗工紙を提供することを課題とする。
本発明は、以下の発明を含む。
〔1〕基紙上の少なくとも一方の面に、顔料及びバインダーを含有する塗工層を有するインクジェット印刷用塗工紙において、前記顔料が、針状軽質炭酸カルシウムを70質量%以上含有し、前記バインダーが、ラテックスバインダーと澱粉とを含有し、前記ラテックスバインダーの質量と前記澱粉の質量との比(ラテックスバインダーの質量/澱粉の質量比)が0.3以上25以下であり、前記塗工層の前記顔料の質量と前記バインダーの質量との比(顔料の質量/バインダーの質量比)が3以上30以下であることを特徴とするインクジェット印刷用塗工紙。
〔2〕前記針状軽質炭酸カルシウムのX線透過式沈降法粒度分布装置で測定された粒子径が0.3μm以上0.9μm以下である〔1〕記載のインクジェット印刷用塗工紙。
〔3〕前記顔料が、焼成カオリンを5質量部以上30質量部以下含有する〔1〕または〔2〕記載のインクジェット印刷用塗工紙。
本発明のインクジェット印刷用塗工紙は、白紙光沢度が高く、かつ優れたインク吸収性、インク定着性、塗工層強度を有している。このため、本発明のインクジェット印刷用塗工紙は、インクジェット商業印刷機を用いて、高速で写真画像や図柄を含む印刷物を印刷した場合に、高品質の印刷物が得られる。
本発明のインクジェット印刷用塗工紙の一例を説明するための概略断面図である。 本発明のインクジェット印刷用塗工紙の他の例を説明するための概略断面図である。
「第1実施形態」
図1は、本発明のインクジェット印刷用塗工紙の一例を説明するための概略断面図である。図1に示すインクジェット印刷用塗工紙1は、基紙2上の一方の面2aおよび他方の面2bに、塗工層3、3を有するものである。
[塗工層]
塗工層3は、塗工層3は、顔料及びバインダーを含有している。塗工層3は、以下に示す条件(a)〜(c)を満たすものである。
条件(a)顔料が、針状軽質炭酸カルシウムを70質量%以上含有する。
条件(b)バインダーが、ラテックスバインダーと澱粉とを含有し、ラテックスバインダーの質量と澱粉の質量との比(ラテックスバインダーの質量/澱粉の質量比(以下「ラテックス/澱粉比」という場合がある。))が0.3以上25以下である。
条件(c)塗工層の顔料の質量とバインダーの質量との比(顔料の質量/バインダーの質量比(以下「P/B比」という場合がある。))が3以上30以下である。
塗工層3が上記条件(a)〜(c)を満たすことにより、白紙光沢度が高く、かつ優れたインク吸収性、インク定着性、塗工層強度を有するインクジェット印刷用塗工紙1が得られる。塗工層3が上記条件(a)〜(c)を満たすことにより、上記効果が得られるメカニズムについては、定かではないが、以下に示す理由(1)〜(5)の相乗効果によるものと推定される。
理由(1)
塗工紙を製造する際には、通常、塗工層3となる塗工液を塗工して、ドライヤーなどの乾燥機を用いて温風で乾燥している。乾燥中の塗工液は、温風によって流動する。塗工液中の針状軽質炭酸カルシウムは、立方状など他の形状のものと比較して、塗工液を乾燥するための温風による塗工液の流れに沿って配列しやすい。このため、塗工層3の顔料が、針状軽質炭酸カルシウムを70質量%以上含有していると、配向ムラが生じにくく、高い白紙光沢度が得られる。
理由(2)
針状軽質炭酸カルシウムが、塗工層3中において適度な空隙を形成する。このため、インクが塗工層3の表面に付着した際に、所謂毛管現象によって瞬時にインクが吸収されるものとなり、高いインク吸収性およびインク定着性が得られる。
理由(3)
バインダーがラテックスバインダーを含有するため、高い塗工層強度が得られる。ラテックスバインダーは、軽質炭酸カルシウムとの決着力が大きいものであるため、少量の使用で高い塗工層強度が得られる。
理由(4)
バインダーが、所定のラテックス/澱粉比で澱粉を含有し、かつ所定のP/B比を有しているため、塗工層3を形成する際に用いる塗工液の粘度を適正なものとすることができる。粘度調整が適性になされた塗工液を塗布すると、良好な塗工面が形成されるので、これを乾燥することにより、優れた白紙光沢度および塗工層強度を有する塗工層3が得られる。
理由(5)
バインダーに含まれているラテックスバインダーも澱粉も、塗工層強度を向上させるものである。このため、塗工層3中のバインダーの含有量を少なくしても、優れた塗工層強度が得られる。その結果、相対的に塗工層3中の顔料の含有量を多くすることができ、塗工層3のインク吸収性およびインク定着性が向上する。
[顔料]
(軽質炭酸カルシウム)
塗工層3の顔料は、針状軽質炭酸カルシウムを70質量%以上含有している。
軽質炭酸カルシウムの形状は、針状、立方状、紡錘状等がある。これらの軽質炭酸カルシウムのうち、針状の軽質炭酸カルシウムを70質量%以上顔料に含有させることで、上述したように、白紙光沢度が高く、かつ優れたインク吸収性、インク定着性を有するインクジェット印刷用塗工紙1が得られる。なお、本発明における針状軽質炭酸カルシウムは、柱状の軽質炭酸カルシウムを含むものである。
顔料中の針状軽質炭酸カルシウムの含有量が、70質量%未満であると、針状軽質炭酸カルシウムを含むことによる上述した白紙光沢度を向上させる効果が十分に得られない。また、顔料中の針状軽質炭酸カルシウムの含有量が、70質量%未満であると、塗工層3中の空隙が不足して、インク吸収性およびインク定着性が不十分となる。顔料中の針状軽質炭酸カルシウムの含有量は、白紙光沢度、インク吸収性およびインク定着性をより一層向上させるために、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
針状軽質炭酸カルシウムとしては、長径と短径との比であるアスペクト比(長径/短径)が5以上のものであることが好ましく、6以上のものであることがより好ましい。針状軽質炭酸カルシウムのアスペクト比が5以上であると、塗工層3において毛管現象によるインク吸収性向上効果が得られやすくなる。また、上記アスペクト比が5以上であると、塗工層3に空隙が形成されやすくなる。これらのことから、インクジェット印刷用塗工紙1のインク吸収性、インク定着性がより一層向上する。また、針状軽質炭酸カルシウムのアスペクト比は、10以下であることが好ましい。針状軽質炭酸カルシウムのアスペクト比が10以下であると、塗工液の粘度が高くならず良好な塗工面が得られる。
針状軽質炭酸カルシウムとしては、X線透過式沈降法粒度分布装置レーザー回折装置で測定された粒子径が0.3μm以上0.9μm以下であるものを用いることが好ましい。針状軽質炭酸カルシウムの粒子径を0.3μm以上とすることにより、塗工層3中での針状軽質炭酸カルシウム同士の接触面積が多いものとなり、優れた塗工層強度が得られる。針状軽質炭酸カルシウムの粒子径は0.4μm以上とすることがより好ましい。また、針状軽質炭酸カルシウムの粒子径を0.9μm以下とすることにより、塗工層3において毛管現象による表面張力が発生しやすくなり、優れたインク吸収性およびインク定着性が得られる。針状軽質炭酸カルシウムの粒子径は0.6μm以下とすることがより好ましい。
なお、本発明でいう、X線透過式沈降粒度分布装置レーザー回折装置で測定される粒子径とは、50体積%粒子径(D50)である。
なお、針状軽質炭酸カルシウムの短径および長径は、以下のようにして測定されたものである。
(短径)
試験体である針状軽質炭酸カルシウムを含有するスラリーを調製し、該スラリーをカーボン膜被覆グリッド上にキャストして透過型電子顕微鏡(TEM)観察用試料とする。幅広の試験体を含む場合には、ガラス上にキャストした表面の操作型電子顕微鏡(SEM)像を観察してもよい。試験体の大きさに応じて適切な倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は、下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の試験体が交差する。
(2)同じ画像内で該直線Xと垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の試験体が交差する。
上記のような電子顕微鏡観察画像に対して、直線Xに交錯する試験体、直線Yに交錯する試験体の各々について少なくとも20本(すなわち、合計が少なくとも40本)の最大幅(短径の最大値)を読み取る。こうして上記のような電子顕微鏡画像を3組以上観察し、少なくとも40本×3組(すなわち、少なくとも120本)の試験体の最大幅を読み取る。このように読み取った試験体の最大幅を平均して平均短径を求める。この平均短径を針状軽質炭酸カルシウムの短径とする。
(長径)
針状軽質炭酸カルシウムの長径は、短径を測定する際に使用した電子顕微鏡観察画像を解析することにより求める。すなわち、上記のような電子顕微鏡観察画像に対して、直線Xに交錯する試験体、直線Yに交錯する試験体の各々について少なくとも20本(すなわち、合計が少なくとも40本)の最大長さ(長径の最大値)を読み取る。こうして上記のような電子顕微鏡画像を3組以上観察し、少なくとも40本×3組(すなわち、少なくとも120本)の試験体の最大長さを読み取る。このように読み取った試験体の最大長さを平均して平均長径を求める。この平均長径を針状軽質炭酸カルシウムの長径とする。
このようにして測定した針状軽質炭酸カルシウムの長径と短径とを用いて、アスペクト比(長径/短径)を算出する。
顔料中に含まれる針状軽質炭酸カルシウムの製造方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の製造方法を用いて製造できる。針状軽質炭酸カルシウムの製造方法としては、水酸化カルシウム(消石灰)と炭酸ガスを反応させる方法、塩化カルシウムと炭酸ナトリウム無水物(ソーダ灰)を反応させる方法、消石灰とソーダ灰を反応させる方法等が挙げられる。
上述した針状軽質炭酸カルシウムの製造方法の中でも、製造原価が安価であるため、消石灰と炭酸ガスとを反応させる方法を用いることが好ましい。
消石灰と炭酸ガスとを反応させる方法としては、例えば、以下に示す方法を用いることができる。まず、消石灰と水とからなる消石灰スラリーを作成する。次に、消石灰スラリーに、炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスを吹き込んで消石灰を炭酸化し、針状軽質炭酸カルシウムを生成する。炭酸化後、得られた針状軽質炭酸カルシウムを含むスラリーを脱水して、針状軽質炭酸カルシウムを得る。
上記の製造方法では、消石灰の炭酸化開始の際の消石灰スラリー温度と、消石灰を炭酸化する際に吹き込む炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスの流量とによって、軽質炭酸カルシウムの形状を制御できる。
より詳細には、炭酸化開始の際の消石灰スラリー温度が20℃未満であると、炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスを吹き込むことにより、微細な針状の軽質炭酸カルシウムが凝集して生成される。炭酸化開始の際の消石灰スラリー温度を20℃以上にすると、針状軽質炭酸カルシウムの凝集が抑制され、分散状態の針状軽質炭酸カルシウムが生成されやすくなる。炭酸化開始の際の消石灰スラリー温度を30℃以上にすると、より一層針状軽質炭酸カルシウムが生成されやすくなる。しかし、炭酸化開始の際の消石灰スラリー温度を、50℃を超えて高くしていくと、針状軽質炭酸カルシウムの生成量が徐々に減少し、紡錘状軽質炭酸カルシウムの生成量が徐々に増加する。したがって、炭酸化開始の際の消石灰スラリー温度を、50℃以上にすると、針状と紡錘状の軽質炭酸カルシウムが混在して生成する。
以上のことにより、針状軽質炭酸カルシウムを製造するためには、炭酸化開始の際の消石灰スラリー温度を20℃以上50℃以下とすることが好ましく、30℃以上50℃以下とすることがより好ましい。
消石灰を炭酸化する際の炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスは、針状の軽質炭酸カルシウムを得るには、反応開始前の消石灰1kg当たり、100%炭酸ガス(1気圧、20℃換算)を10L/min以下の流量で吹き込むことが好ましい。紡錘状の軽質炭酸カルシウムの生成を抑制し、針状軽質炭酸カルシウムを選択的に生成するためには、上記の炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスの流量を5L/min以下とすることがより好ましい。上記の炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスの流量は、針状軽質炭酸カルシウムの生産性を確保するため、1.5L/min以上であることが好ましい。
このように消石灰の炭酸化開始の際の消石灰スラリー温度と、消石灰を炭酸化する際に吹き込む炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスの流量とを制御することによって、軽質炭酸カルシウムの形状を制御できる。したがって、上記の方法を用いて、針状軽質炭酸カルシウムを、選択的に製造できる。
また、上記の方法を用いて、針状軽質炭酸カルシウムを製造する場合には、消石灰を炭酸化する際に用いる反応槽として、攪拌機を備えるものを用いることが好ましい。反応槽内の消石灰スラリーを攪拌機で攪拌しながら、消石灰スラリーに炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスを吹き込んで炭酸化を行なうと、消石灰スラリー中の炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスが微細になる。このため、消石灰スラリーと炭酸ガスまたは炭酸ガス含有ガスとが接触しやすくなる。その結果、軽質炭酸カルシウムの中でもアスペクト比の高い針状の軽質炭酸カルシウムの生成が促進される。
反応槽に備えられる攪拌機の攪拌翼の周速度は、2.0m/s以上であることが好ましく、2.5m/s以上であることがより好ましい。攪拌機としては、一軸型または二軸型のタンク用攪拌機、コーレスミキサ、高速攪拌式ディスパーザーなどを用いることができる。
また、反応槽中には、邪魔板を設置してもよい。反応槽中に邪魔板を設置することで、消石灰スラリーのせん断力を高めることができる。
このようにして得られた針状軽質炭酸カルシウムは、必要に応じて、好ましい粒子径および粒度分布になるように粉砕、分級してもよい。
(併用可能な顔料)
顔料は、針状軽質炭酸カルシウムのみからなるものであってもよいし、針状軽質炭酸カルシウムに加えて、他の材料を含有してもよい。塗工層3の顔料に使用する針状軽質炭酸カルシウム以外の材料としては、カオリン、重質炭酸カルシウム、凝集炭酸カルシウム、立方状の軽質炭酸カルシウム、紡錘状の軽質炭酸カルシウム、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、無定形シリカ、微粒子シリカ、コロイダルシリカ、アルミノ珪酸マグネシウム、微粒子状珪酸カルシウム、微粒子状炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、サチンホワイト、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の無機顔料や、ポリスチレン樹脂、スチレン・アクリル共重合樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、並びにこれらの微小中空粒子や貫通孔型の有機材料からなる有機顔料粒子等が挙げられ、これらの中から1種類又は2種類以上を適宜選択して使用できる。
顔料が、針状軽質炭酸カルシウムに加えて、無定形シリカ、微粒子シリカ、アルミナ、焼成カオリン等の嵩比重の小さいものを含有する場合、インクジェット印刷用塗工紙1のインク吸収性およびインク定着性が更に向上する。
また、顔料が、針状軽質炭酸カルシウムに加えて、カオリンおよび/または有機顔料粒子を含有する場合、白紙光沢度がさらに向上する。
また、顔料が、針状軽質炭酸カルシウムに加えて、カオリンを高熱処理して得られる焼成カオリンを含有する場合には、優れたインク吸収性向上効果が得られ、しかも比較的高い白紙光沢度向上効果が得られる。
顔料が焼成カオリンを含む場合に、白紙光沢度とインク吸収性の両方が高くなる理由は定かではないが、以下に示す理由によるものと推定される。すなわち、焼成カオリンは、製造時のカオリンの高熱処理により、カオリンに含まれていた結晶水が放出されたため、多孔質構造となっている。このため、顔料が焼成カオリンを含むことにより、カオリンによる白紙光沢度向上効果がより一層高くなるとともに、インク吸収性およびインク定着性がより一層向上すると考えられる。
焼成カオリンは、顔料に焼成カオリンが含まれていることによる上記効果が得られやすいように、5質量部以上含有することが好ましく、10質量部以上含有することがより好ましい。また、顔料中の針状軽質炭酸カルシウムの含有量を確保するため、焼成カオリンの含有量は30質量部以下とし、25質量部以下とすることが好ましい。
[バインダー]
塗工層3に使用するバインダーは、ラテックスバインダーと澱粉とを含有する。塗工層3に使用するバインダーにおけるラテックスバインダーの質量と澱粉の質量との比(ラテックス/澱粉比)は0.3以上25以下である。
ラテックスバインダーとしては、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート・ブタジエンラテックス共重合体等の合成ゴム系が挙げられる。ラテックスバインダーとしては、軽質炭酸カルシウムとの決着力が強いものであるので、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを用いることが好ましい。
また、澱粉は、塗工層3の強度を高めるとともに、塗工層3を形成する際に用いる塗工液の粘度調整を行う作用が高い。澱粉としては、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン化澱粉、リン酸エステル化澱粉、デキストリン等の澱粉系化合物などが挙げられる。
バインダーにおけるラテックス/澱粉比が25を超えると、塗工層3となる塗工液を塗工する際に良好な塗工面が得られ難くなる。その結果、白紙光沢度が低下するとともに、インクジェット印刷後の印刷面が不均一になる。また、ラテックス/澱粉比が0.3未満になると、ラテックスの量が少ないため、インクジェット印刷用塗工紙の白紙光沢度が低下する。ラテックス/澱粉比を25以下とすることにより、ラテックスを含有することによる十分な塗工層強度と、澱粉を含有することによる塗工液の粘度調整機能とが両立できる。したがって、塗工層3となる塗工液を塗工することにより良好な塗工面が得られ、優れた白紙光沢度が得られる。澱粉を含有することによる塗工液の粘度調整機能を向上させるためには、ラテックス/澱粉比を20以下とすることが好ましい。また、バインダーにおけるラテックス/澱粉比を0.3以上とすることにより、ラテックスバインダーを含有することによる塗工層強度向上効果が十分に得られる。したがって、塗工層3中の顔料の含有量を多くすることができ、優れたインク吸収性およびインク定着性が得られる。ラテックスバインダーを含有することによる塗工層強度向上効果をより一層向上させるためには、ラテックス/澱粉比を1.5以上とすることが好ましい。
バインダーは、ラテックスバインダーと澱粉のみからなるものであってもよいし、その他のバインダーを含有するものであってもよい。他のバインダー材料としては、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白等の蛋白系、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールの合成物、酢酸ビニル系共重合体、アクリル系共重合体等のビニルポリマー系等が挙げられ、これらの中から1種類又は2種類以上を適宜選択して使用することができる。
他のバインダー材料の中では、ポリビニルアルコールを用いることが好ましい。塗工層3を形成するバインダーが、ポリビニルアルコールを含む場合、インク吸収性および塗工層強度がより一層良好なものとなる。ポリビニルアルコールとしては、1種類のもののみを用いてもよいし、異なる鹸化度の複数種のポリビニルアルコールを使用してもよい。バインダーに含有するポリビニルアルコールの鹸化度が低すぎると、ポリビニルアルコールを含有することによる塗工層強度の向上効果が低下する。このため、鹸化度80%以上のポリビニルアルコールを使用することが望ましい。
塗工層3のP/B比(顔料/バインダー比)は、3以上であり、5以上であることが好ましく、8以上がさらに好ましい。P/B比が高いほど、塗工層3に顔料が含まれていることによるインク吸収性およびインク定着性の向上効果が高くなる。P/B比が5以上であると、インク吸収性およびインク定着性の向上効果が顕著となる。
また、塗工層3のP/B比は、30以下であり、27以下であることが好ましく、25以下であることがさらに好ましい。P/B比が低いほど、塗工層3にバインダーが含まれていることによる白紙光沢度および塗工層強度の向上効果が高くなる。P/B比が27以下であると、ギロチン断裁時の紙粉発生を抑制でき、各種加工適性が高めやすくなる。
[助剤]
塗工層3には、その他必要に応じて各種助剤が含有されていてもよい。
本発明に使用する助剤としては、ポリエチレンエマルジョン、脂肪酸の塩類やその誘導体、マイクロクリスタリンワックス等の離型剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、粘性改良剤、着色剤、潤滑剤、耐水化剤等が挙げられ、これらの中から、1種類又は2種類以上を適宜選択して使用できる。
[基紙]
本発明に使用する基紙2としては、シート状のものであればよく、例えば通常のインクジェット記録用紙、印刷用塗工紙、板紙に用いられる坪量30〜500g/m程度の紙支持体を、基紙2として好適に使用することができる。基紙2として使用する紙支持体のパルプ原料も、特に限定されるものではなく、脱墨パルプ、機械パルプ、化学パルプ等、通常の製紙方法で製造される紙のパルプ原料として一般的に用いられるパルプ原料の中から、1種類又は2種類以上を適宜選択して使用することができる。
基紙2を得るために使用する抄紙機は、特に限定されるものではなく、長網式抄紙機、短網式抄紙機、円網式抄紙機、オントップフォーマー抄紙機、ギャップフォーマー抄紙機、ヤンキー抄紙機等の従来公知の抄紙機で適宜抄紙することができる。基紙2として使用する紙支持体は、1層抄きでも多層抄きでも構わない。
但し、安価品を目指すのであれば、塗工層3のコート量を削減する目的で、コップ吸水度(JIS P 8140 Cobb30)が50cc/m以上に調整された基材を、基紙2として使用するとよい。
さらに、基紙2として使用する紙支持体には、必要に応じてクリア塗工層を施して表面処理することもできる。前記紙支持体にクリア塗工層を施す場合、塗工装置としてはロッドメタリングサイズプレスコーター、ゲートロールコーター、インクラインドサイズプレスコーター等の従来公知の装置を適宜使用することができる。
このクリア塗工層は、接着剤を主成分とする。接着剤として、酸化澱粉、酵素変性澱粉、リン酸エステル化澱粉、カチオン化澱粉等の澱粉系、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白系、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系、ポリビニルアルコール等の合成物、スチレン・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体等の合成ゴム系、酢酸ビニル系共重合体、アクリル系共重合体等のビニルポリマー系が挙げられ、これらの中から、1種類又は2種類以上を適宜選択して使用できる。
また、基紙2として使用する紙支持体は、塗工層3となる塗工液を塗工する前に、予めカレンダー処理を施して紙支持体の表面を平滑化したものであってもよい。
[インク定着剤]
インクジェット商業印刷機用インクには、水性顔料インクや水性染料インクなどの水性インクが使われる。これらの水性インクでの印刷物のインク定着性や発色性を向上させる目的で、塗工層3や基紙2に、インク定着剤を含有させることができる。
インク定着剤には、有機系と無機系がある。
有機系インク定着剤としては、例えば、水溶性或いは水性エマルジョンタイプなどが使用される。
具体的には、カチオン性樹脂として、ポリエチレンアミン、ポリプロピレンポリアミン、カチオン性ポリビニルピロリドン、ポリ−トリメチルアンモニウムメタクリレート、ビニルイミダゾリウムメタクロライド−ビニルピロリドン共重合体、ジアリルジメチル4級アンモニウム塩酸塩、ジシアンジアミド−ポリエチレンポリアミン、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド共重合体、ポリアルコキシジアルキル第4級アンモニウム塩、モノアリルアミン−ジアルルアミン塩酸塩共重合体、ポリアリルアミン塩酸塩、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合体、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド・SO共重合体、ジアリルアミン塩・SO共重合体、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、アリルアミン塩の重合物、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩重合物、アクリルアミド−ジアリルアミン塩共重合体等が挙げられ、1種あるいは2種以上を併用しても良い。これらカチオン性樹脂の分子量は、特に限定するものではないが、高分子量となるとインク吸収性が低下するため、分子量30,000以下のものの使用が望ましい。
無機系インク定着剤としては、例えば、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ストロンチウム、イットニウム、ジルコニウム、モリブデン、インジウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジミウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ジスロプロシウム、エルビウム、イッテルビウム、ハフニウム、タングステン、ビスマスから選択される金属塩または錯体が挙げられる。
インク定着剤の使用量は、基紙2に内添する場合、基紙2に使用するパルプ100質量%に対して、0.1質量%以上1質量%以下であることが望ましい。インク定着剤を基紙2の表面に塗工する場合には、インク定着剤の付着量が0.02g/m以上5.0g/m以下であることが望ましい。どちらの場合も、インク定着剤の使用量を下限値以上とすることで、インク定着剤を含有させることによる効果が十分に得られる。また、どちらの場合もインク定着剤の使用量が上限値以下であると、インク定着剤の基紙表面のプロファイルムラに起因するインク吸収ムラの発生を抑制できる。
また、インク定着剤を塗工層3に含有させる場合には、顔料100質量%に対して1質量%以上15質量%以下の範囲とすることが好ましい。インク定着剤の含有量を1質量%以上とすることにより、インク定着剤によって得られる効果を確実にすることができる。一方、インク定着剤の含有量を15質量%以下とすることにより、インク定着剤を含有させることによるインク吸収性の低下を防ぎ、優れた印字品質が得られる。
[塗工および仕上]
図1に示すインクジェット印刷用塗工紙1は、基紙2の一方の面2aおよび他方の面2b上にそれぞれ、塗工層3となる塗工液を塗工して、乾燥する方法を用いて製造できる。
塗工液は、顔料と、バインダーと、水などの溶媒とを混合し、一般的に固形分濃度が10〜65質量%程度となるように調製することにより得られる。
塗工液は、基紙2上に好ましくは乾燥重量で3〜40g/m、より好ましくは5〜20g/mになるように塗工する。塗工層3を形成する装置としては、ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、バーコーター、グラビアコーター、ゲートロールコーター、ダイコーター等の従来公知の塗工装置の中から適宜選択して使用することができる。
塗工後、基紙2上の湿潤状態の塗工層を乾燥させる方法としては、熱風乾燥、蒸気乾燥、ガスヒーター乾燥、電気ヒーター乾燥、赤外線ヒーター乾燥等の従来公知の乾燥方法の中から適宜選択して使用することができる。
また、塗工層3を形成した後、カレンダー処理により、平滑化しても良い。カレンダー処理装置としては、グロスカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダーなどが挙げられ、熱を加えながら平滑化処理する熱カレンダーを用いることもできる。
図1に示すインクジェット印刷用塗工紙1は、基紙2上に、上記条件(a)〜(c)を満たす塗工層3を有している。このため、白紙光沢度が高く、かつ優れたインク吸収性、インク定着性、塗工層強度を有するものとなる。
したがって、図1に示すインクジェット印刷用塗工紙1は、インクジェット商業印刷機を用いて、高速で写真画像や図柄を含む印刷物を印刷する場合に、好ましく利用できる。例えば、図1に示すインクジェット印刷用塗工紙1に、インクジェット商業印刷機を用いて印刷することで、広告やカタログ、パッケージ分野や物流分野で使用される箱や封筒等となる高品質な印刷物が得られる。
また、図1に示すインクジェット印刷用塗工紙1は、写真画像や図柄をオフセット印刷した後、可変情報のみをインクジェット印刷機を用いて印刷するコンポジット印刷を行なう場合にも、好適に使用できる。
「第2実施形態」
図2は、本発明のインクジェット印刷用塗工紙の他の例を説明するための概略断面図である。図2に示すインクジェット印刷用塗工紙11は、基紙12上の一方の面12aおよび他方の面12bに、それぞれ塗工層13、13を有するものである。
図2に示すインクジェット印刷用塗工紙11において基紙12は、図1に示すインクジェット印刷用塗工紙1の基紙2と同じものであるので、説明を省略する。
図2に示す塗工層13は、基紙12上に形成された最表面塗工層13bと、最表面塗工層13bと基紙12との間に形成された1層の下塗り塗工層13aとからなる。最表面塗工層13bおよび下塗り塗工層13aは、それぞれ顔料及びバインダーを含有している。
塗工層13は、以下に示す条件(a)〜(c)を満たすものである。
条件(a)顔料が、針状軽質炭酸カルシウムを70質量%以上含有する。
条件(b)バインダーが、ラテックスバインダーと澱粉とを含有し、ラテックスバインダーの質量と澱粉の質量との比(ラテックス/澱粉比)が0.3以上25以下である。
条件(c)塗工層の顔料の質量とバインダーの質量との比(P/B比)が3以上30以下である。
塗工層13を形成している最表面塗工層13bおよび下塗り塗工層13aの厚みや材料は、それぞれ異なっていてもよいし、同じであってもよい。
また、塗工層13が条件(a)〜(c)を満たすものであればよく、最表面塗工層13bおよび下塗り塗工層13aは、条件(a)〜(c)を満たすものでなくてもよい。最表面塗工層13bが条件(a)〜(c)を満たすものであることが好ましい。
図2に示すインクジェット印刷用塗工紙11において、最表面塗工層13bの含有する針状軽質炭酸カルシウムの含有量が多いほど、優れたインク定着性、インク吸収性および白紙光沢度が得られる。
図2に示すインクジェット印刷用塗工紙11において、最表面塗工層13bの下層に形成された下塗り塗工層13aの含有する針状軽質炭酸カルシウムの含有量が多いほど、優れたインク吸収性が得られる。
図2に示すインクジェット印刷用塗工紙11を製造する方法としては、塗工層13を形成する工程以外は、図1に示すインクジェット印刷用塗工紙1と同様の方法を用いることができる。
図2に示すインクジェット印刷用塗工紙11は、例えば、基紙12の一方の面12aおよび他方の面12b上に、それぞれ下塗り塗工層13aとなる塗工液を塗工して乾燥し、その後、最表面塗工層13bとなる塗工液を塗工して乾燥する方法を用いて製造できる。
下塗り塗工層13aまたは最表面塗工層13bとなる塗工液を塗工して乾燥する方法としては、図1に示すインクジェット印刷用塗工紙1における塗工層3となる塗工液を塗工して乾燥する方法を用いることができる。
図2に示すインクジェット印刷用塗工紙11は、基紙12上に、上記条件(a)〜(c)を満たす塗工層13を有している。したがって、図2に示すインクジェット印刷用塗工紙11は、図1に示すインクジェット印刷用塗工紙1と同様に、白紙光沢度が高く、かつ優れたインク吸収性、インク定着性、塗工層強度を有するものとなる。
「他の例」
本発明のインクジェット印刷用塗工紙は、上述した第1実施形態および第2実施形態に記載のものに限定されない。
例えば、塗工層3、13は、図1および図2に示すように、基紙2、12の一方の面2a、12aと他方の面2b、12bの両面に存在していてもよいし、一方の面2a、12aのみに存在していてもよい。
また、図1および図2に示すように、基紙2、12の両面に塗工層3、13を設ける場合、一方の面2a、12と他方の面2b、12bに形成した塗工層3、13は同じものであってもよいが、異なるものであってもよい。
また、図2に示すインクジェット印刷用塗工紙11では、下塗り塗工層13aが1層である場合を例に挙げて説明したが、下塗り塗工層13aは2層以上であってもよい。すなわち、塗工層13は、2層からなるものであってもよいし、3層以上の層からなる積層体であってもよい。
また、本発明のインクジェット印刷用塗工紙は、印刷後の表面に接着剤層を設けるダイレクト葉書(4面や6面等)用として使用することもできる。
また、本発明のインクジェット印刷用塗工紙が、塗工層の設けられていない面を有する場合、塗工層の設けられていない面に対して、公知の加工を適宜行なってもよい。具体的には例えば、本発明のインクジェット印刷用塗工紙の塗工層の設けられていない面側に、各種の粘着剤層を設けたり、擬似接着層を設けたり、接着剤層を介して別のシートを張り合わせて積層体を形成したりしてもよい。
以下に、具体例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらによって制約を受けるものではない。なお、製造例、実施例、比較例において%および部とあるものはすべて質量%および質量部を示す。
「粒子形状観察」
走査型電子顕微鏡(日立社製S−3500N)による写真撮影を行い、倍率7000倍にて粒子形状を観察した。
「粒径測定」
X線透過式沈降法粒度分布装置(SediGraph5100 マイクロメリテックス社製)による粒度分布を測定した。累積体積が10%、50%、90%に相当する粒径をD10、D50、D90として、50体積%(D50)の粒子径を平均粒子径とした。
「軽質炭酸カルシウムの短径・長径の測定」
軽質炭酸カルシウムの短径・長径は、上述した測定方法により測定した。
「材料」
以下に示す実施例および比較例においてバインダーおよび顔料に使用した材料は、以下の通りである。
「顔料」
(a1)針状軽質炭酸カルシウム(商品名:TP123CS、奥多摩工業社製、粒子径=0.45μm、短径0.29μm、長径2.4μm、アスペクト比8.3)
(a2)針状軽質炭酸カルシウム(商品名:オパカーブ3000、スペシャリティーミネラルズ社製、粒子径=0.27μm、短径0.25μm、長径1.54μm、アスペクト比6.2)
(a4)カオリン(商品名:アマゾンプラス、CADEM社製、粒子径=0.26μm)
(a5)焼成カオリン(商品名:アルファテックス、イメリスミネラルズジャパン社製、粒子径=0.48μm)
(a6)紡錘軽質炭酸カルシウム(商品名:TP221F、奥多摩工業社製、粒子径=0.49μm、短径0.41μm、長径1.1μm、アスペクト比2.7)
(a7)立方体軽質炭酸カルシウム(商品名:ブリリアントS−15、白石カルシウム工業社製、粒子径=0.42μm)
(a8)重質炭酸カルシウム(商品名:セタカーブHG、備北粉化工業社製、粒子径=0.46μm)
(a9)無定形シリカ(商品名:ファインシールX−45、(株)トクヤマ製)
「バインダー」
(b1)酸化澱粉(商品名:エースC、王子コンスターチ社製)
(b2)スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:OJ3000H、JSR社製)
(b3)シリル変性ポリビニルアルコール(商品名:Rポリマー1130、クラレ社製)
実施例1
「基紙の作成」
LBKP(CSF460ml)100%からなるパルプスラリーに、填料としてタルクを支持体灰分が5%となるように添加した。その後、パルプ固形分に対して硫酸アルミニウム0.95%、カチオン澱粉0.2%、アルキルケテンダイマーサイズ剤(商品名:サイズパインK−287、荒川化学社製)0.1%、ポリアクリルアミド(商品名:リアライザーR−300、ソーマル社製)0.05%を順次添加し、紙料を調製した。得られた紙料をオントップツインワイヤー抄紙機で抄紙し、さらにゲートロールサイズプレス装置で酸化澱粉(商品名:エースA、王子コーンスターチ社製)を両面で2.0g/m(固形分)塗布・乾燥し、クリア塗工層を形成した。その後、マシンカレンダーで平滑化処理を施して坪量81g/mの基紙を得た。
「塗工液の調製」
下記顔料に下記バインダーと水を加えて、固形分濃度が50%の塗工液を調製した。なお、以下に示すバインダー材料の添加部数は、固形物換算の顔料100質量部に対する添加部数を意味する。
顔料として、(a1)針状軽質炭酸カルシウム100部を用いた。
バインダーとして、(b1)酸化澱粉2部と(b2)スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス3.5部とを用いた。
「インクジェット印刷用塗工紙の作製」
前記基紙上にブレードコーターを用いて、片面の乾燥重量で9g/mになるように前記塗工液を両面に塗工、乾燥した。この後、スーパーカレンダーを用いて、線圧60kg/cm、2ニップの条件で平滑化処理を施して、坪量99g/mのインクジェット印刷用塗工紙を得た。
実施例2
(a1)針状軽質炭酸カルシウムに代えて(a2)針状軽質炭酸カルシウムを用いる以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用塗工紙を得た。
実施例3
(a1)針状軽質炭酸カルシウムに代えて、下記の(a3)針状軽質炭酸カルシウムを用いる以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用塗工紙を得た。
「顔料」
(a3)針状軽質炭酸カルシウム
攪拌機付容器に60℃の消和水9kgを仕込み、攪拌しながら工業用生石灰(酸化カルシウム(CO含有率0.3%))を1kg添加して、120分間消化した。得られた消石灰(水酸化カルシウム)を330メッシュ(45μm)の篩で分級した後、遠心分離機を用いて、微粒消石灰スラリーと粗粒消石灰スラリーに分離した。分離した粗粒消石灰スラリーを40℃まで冷却し、12%の消石灰スラリー10kgを調製した。
次に、消石灰スラリーに種結晶として針状軽質炭酸カルシウム(商品名:TP123CS、奥多摩工業社製)を固形分換算で消石灰と針状軽質炭酸カルシウムとの質量比(消石灰:針状軽質炭酸カルシウム)が99:1となる比率で添加した。その後、攪拌周速3m/sで攪拌しながら、反応開始前の消石灰1kg当たり、炭酸ガス(ガス濃度100%)を5L/minの流量で吹き込み、pH=7〜8となるまで炭酸化させ、針状軽質炭酸カルシウム(粒径=0.98μm、短径0.53μm、長径4.1μm、アスペクト比7.7)を得た。
実施例4
バインダーとして、(b1)酸化澱粉1部と(b2)スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス20部とを用いる以外は、実施例1と同様にインクジェット印刷用塗工紙を得た。
実施例5
バインダーとして、(b1)酸化澱粉5部と(b2)スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス2部とを用いる以外は、実施例1と同様にインクジェット印刷用塗工紙を得た。
実施例6
顔料として、(a1)針状軽質炭酸カルシウム80部と、(a4)カオリン20部とを用いる以外は、実施例1と同様にインクジェット印刷用塗工紙を得た。
実施例7
バインダーとして、(b1)酸化澱粉1部と(b2)スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス2.5部とを用いる以外は、実施例1と同様にインクジェット印刷用塗工紙を得た。
実施例8
実施例1において作成した基紙上に、実施例1と同様にして片面の乾燥重量で9g/mになるように、実施例1と同様の塗工液を両面に塗工、乾燥した後、更に、ロッドブレードコーターにて、片面の乾燥重量で5g/mになるように、実施例1と同様の塗工液を両面に塗工、乾燥した。その後、スーパーカレンダーを用いて、線圧60kg/cm、2ニップの条件で平滑化処理を施して、坪量109g/mのインクジェット印刷用塗工紙を得た。
実施例9
顔料として、(a1)針状軽質炭酸カルシウム80部と、(a5)焼成カオリン20部とを用いる以外は、実施例1と同様にインクジェット印刷用塗工紙を得た。
比較例1
(a1)針状軽質炭酸カルシウムに代えて、(a6)紡錘軽質炭酸カルシウムを用いる以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用塗工紙を得た。
比較例2
(a1)針状軽質炭酸カルシウムに代えて、(a7)立方体軽質炭酸カルシウムを用いる以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用塗工紙を得た。
比較例3
(a1)針状軽質炭酸カルシウムに代えて、(a4)カオリンを用いる以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用塗工紙を得た。
比較例4
(a1)針状軽質炭酸カルシウムに代えて、(a8)重質炭酸カルシウムを用いる以外は、実施例1と同様にしてインクジェット印刷用塗工紙を得た。
比較例5
バインダーとして、(b1)酸化澱粉7部と(b2)スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス28部とを用いる以外は、実施例1と同様にインクジェット印刷用塗工紙を得た。
比較例6
バインダーとして、(b1)酸化澱粉1部と(b2)スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス2部とを用いる以外は、実施例1と同様にインクジェット印刷用塗工紙を得た。
比較例7
バインダーとして、(b1)酸化澱粉5部と(b2)スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス1部とを用いる以外は、実施例1と同様にインクジェット印刷用塗工紙を得た。
比較例8
バインダーとして、(b1)酸化澱粉0.7部と(b2)スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス20部とを用いる以外は、実施例1と同様にインクジェット印刷用塗工紙を得た。
比較例9
バインダーとして、(b1)酸化澱粉5.5部を用い、(b2)スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを配合しなかった以外は、実施例1と同様にインクジェット印刷用塗工紙を得た。
比較例10
バインダーとして、(b2)スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス5.5部を用い、(b1)酸化澱粉を配合しなかった以外は、実施例1と同様にインクジェット印刷用塗工紙を得た。
比較例11
顔料として、(a1)針状軽質炭酸カルシウム50部と、(a4)カオリン50部とを用いる以外は実施例1と同様にインクジェット印刷用塗工紙を得た。
比較例12
塗工液として下記の下塗用塗工液と上塗り用塗工液を用い、下記に示す方法によりインクジェット印刷用塗工紙を得た。
実施例1のインクジェット印刷用塗工紙の作製において、支持体上にロッドブレードコーターを用いて、片面の乾燥重量で14g/mになるように下記下塗用塗工液を両面に塗工し、乾燥した。その後、更に、ロッドブレードコーターにて、乾燥重量で8g/mになるように下記上塗用塗工液を両面に塗工し、乾燥した。その後、スーパーカレンダーを用いて、線圧60kg/cm、2ニップの条件で平滑化処理を施して、坪量125g/mのインクジェット印刷用塗工紙を得た。
「下塗用塗工液の調製」
顔料として、(a4)カオリン30部と、(a8)重質炭酸カルシウム40部と、(a6)紡錘軽質炭酸カルシウム30部とを用い、バインダーとして(b1)酸化澱粉3部および(b2)スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス10部を用いて、固形分濃度が53%の下塗用塗工液を調製した。
「上塗用塗工液の調製」
顔料として、(a8)重質炭酸カルシウム100部(固形分換算)を用い、バインダーとして(b1)酸化澱粉3部および(b2)スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス10部を用いて、固形分濃度が53%の上塗用塗工液を調製した。
比較例13
「基紙の作成」
LBKP(CSF470ml)100%からなるパルプスラリーに、填料としてタルクを支持体灰分が4%となるように添加した。その後、パルプ固形分に対して硫酸アルミニウム0.88%、カチオン澱粉0.35%、アルキルケテンダイマーサイズ剤(商品名:サイズパインK−287、荒川化学社製)0.3%、ポリアクリルアミド(商品名:リアライザーR−300、ソーマル社製)0.04%を順次添加し、紙料を調製した。得られた紙料をオントップツインワイヤー抄紙機で抄紙し、さらにゲートロールサイズプレス装置で酸化澱粉(商品名:エースC、王子コーンスターチ社製)を両面で1.8g/m(固形分)塗布・乾燥し、クリア塗工層を形成した。その後、マシンカレンダーで平滑化処理を施して坪量90g/mの基紙を得た。
「塗工液の調製」
顔料として(a9)無定形シリカ100部を用い、バインダーとして(b1)酸化澱粉3部と、(b2)スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス5部と、(b3)シリル変性ポリビニルアルコール12部を加え、固形分濃度が15%の塗工液を調製した。
「インクジェット印刷用塗工紙の作製」
前記基紙上にエアーナイフコーターを用いて、片面の乾燥重量で20g/mになるように前記塗工液を両面に塗工、乾燥した。この後、マシンカレンダーを用いて、線圧20kg/cm、2ニップの条件で平滑化処理を施して、坪量130g/mのインクジェット印刷用塗工紙を得た。
実施例1〜9、比較例1〜13において使用した材料および添加量、「SBR/澱粉比」「P/B比」を表1に示す。表1において「SBR」は、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスである。「SBR/澱粉比」は、ラテックスバインダーの質量と澱粉の質量との比である。「P/B比」は塗工層の顔料の質量とバインダーの質量との比である。表1に示す顔料およびバインダーの添加量は、固形分換算したものである。表1に示す顔料に使用した各材料の添加量は、顔料中の含有量(%)である。
Figure 2015013459
実施例、比較例で得られたインクジェット印刷用塗工紙について、下記の評価を行い、その結果を表2に示した。
「白紙光沢度」
JIS P8142に準拠して、75度における白紙面の光沢度を測定した。
「インクジェット印刷適性」
(インク吸収性の評価)
得られたインクジェット印刷用塗工紙にラインヘッド搭載カラーラベルプリンター(LX−P5500顔料インクモデル、Canon製)でブラックベタ印刷と文字印刷を行ない、その印刷部分を目視評価した。
◎:ベタ印刷部分にムラなし。文字と白紙部にニジミなし。良好。
○:ベタ印刷部分にムラ、文字部から白紙部にインクのニジミが若干みられるが、使用上問題のないレベル。
△:ベタ印刷部分にムラ、文字部から白紙部にインクのニジミが見られるレベル(使用するプリンターの設定を変更すれば使用可能なレベル)。
×:ベタ印刷部分全面にムラ、文字そのものが潰れ文字の形状が判別できないレベル(使用するプリンターの設定を変更しても使用不能なレベル)。
(インク定着性の評価)
上記インク吸収性の評価と同様にして、インクジェット印刷用塗工紙に、ラインヘッド搭載カラーラベルプリンター(LX−P5500顔料インクモデル、Canon製)でブラックベタ印刷と文字印刷を行なった。印刷終了後、1分後に、1×5cmサイズのゼロックス用紙を人差し指に巻きつけ、一定の力で、印刷面を擦り取った。
◎:擦りとった印刷部のインク剥がれが、まったく見られないレベル。良好。
○:擦りとった印刷部のインク剥がれが、少量見られるものの極僅かで、使用上問題のないレベル。
△:擦りとった印刷部のインク剥がれがあるが、下地の白紙部が露出するまでには至らないレベル(評価には乾燥機を有さないプリンターで評価しているが、印刷後に乾燥機を有する状態で使用する場合、乾燥の条件を調節すれば使用可能なレベル)。
×:擦りとった印刷部のインクが殆ど剥がれ取られ、下地の白紙部が露出しているレベル。
(塗工層強度)
得られたインクジェット印刷用塗工紙を用いて、RI印刷試験機(明製作所製)で、印刷インキ(商品名:FusionG EZ 墨 N、DIC Corporation社製)を、1ml使用して印刷を行い、印刷面のピッキングの程度を目視評価した。
◎:ピッキングが全く発生せず、良好。
○:ピッキングが少し発生するが、実用上問題ないレベル。
△:ピッキングが発生し、断裁等の処理時に負担が大きいが、実施上問題のないレベル。
×:ピッキングが多く発生し、劣る。
Figure 2015013459
表2から明らかなように、本発明のインクジェット印刷用塗工紙は、白紙光沢度に優れ、インクジェット印刷適性に優れるものであった。
より詳細には、実施例1と実施例2とを比較すると、実施例2では、針状軽質炭酸カルシウムの粒子径が実施例1よりも小さいため、インク吸収性、インク定着性および塗工層強度が低下した。
実施例1と実施例3とを比較すると、実施例3では、針状軽質炭酸カルシウムの粒子径が実施例1よりも大きいため、塗工層強度が向上した。
また、焼成カオリンを含む実施例9では、白紙光沢度、インク吸収性、インク定着性および塗工層強度のいずれも非常に良好であった。
針状軽質炭酸カルシウムを含まない比較例1〜4は、インク定着性が不十分であった。
P/B比の小さい比較例5では、相対的に顔料が少ないため、インク吸収性およびインク定着性が不十分であった。また、P/B比の大きい比較例6では、相対的にバインダーが少ないため、白紙光沢度および塗工層強度が不十分であった。
SBR/澱粉比の小さい比較例7では、相対的にSBRが少ないため、白紙光沢度が不十分であった。また、SBR/澱粉比の大きい比較例8では、相対的に澱粉が少ないため、白紙光沢度が不十分であった。
SBRを含まない比較例9では、白紙光沢度および塗工層強度が不十分であった。また、澱粉を含まない比較例10では、白紙光沢度が不十分であった。
針状軽質炭酸カルシウムが少ない比較例11は、インク吸収性およびインク定着性が不十分であった。
針状軽質炭酸カルシウムを含まない比較例12は、インク吸収性およびインク定着性が不十分であった。
針状軽質炭酸カルシウムを含まない比較例13は、白紙光沢度が不十分であった。
1、11:インクジェット印刷用塗工紙、2、12:基紙、2a、12a:一方の面、2b、12b:他方の面、3、13:塗工層、13a:下塗り塗工層、13b:最表面塗工層。

Claims (3)

  1. 基紙上の少なくとも一方の面に、顔料及びバインダーを含有する塗工層を有するインクジェット印刷用塗工紙において、
    前記顔料が、針状軽質炭酸カルシウムを70質量%以上含有し、
    前記バインダーが、ラテックスバインダーと澱粉とを含有し、前記ラテックスバインダーの質量と前記澱粉の質量との比(ラテックスバインダーの質量/澱粉の質量比)が0.3以上25以下であり、
    前記塗工層の前記顔料の質量と前記バインダーの質量との比(顔料の質量/バインダーの質量比)が3以上30以下であることを特徴とするインクジェット印刷用塗工紙。
  2. 前記針状軽質炭酸カルシウムのX線透過式沈降法粒度分布装置で測定された粒子径が0.3μm以上0.9μm以下である請求項1記載のインクジェット印刷用塗工紙。
  3. 前記顔料が、焼成カオリンを5質量部以上30質量部以下含有する請求項1または2記載のインクジェット印刷用塗工紙。
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