JP2015012657A - 電力変換装置および電力変換方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ヒステリシス制御方式に基づいて三相の電力変換を行う場合に、従来よりもスイッチング損失の削減を図れる電力変換装置および電力変換方法を提供する。
【解決手段】直流電力と交流電力を双方向に変換する三相電力変換回路2の各相の出力電流を所定のヒステリシス幅をもつ各相の電流指令値と比較して出力電流が電流指令値のヒステリシス幅内に収まるように三相電力変換回路2の6つのスイッチング素子7U〜8Wをオン/オフ制御する場合に、各相に対応する電流指令値の正負のピーク値を含まない所定の期間にわたって、電流指令値の各相に対応した三相電力変換回路2の高圧側と低圧側の一対のスイッチング素子の内、一方のスイッチング素子を強制的にオン、他方のスイッチング素子を強制的にオフにする。
【選択図】図1

Description

この発明は、ヒステリシス制御方式に基づいて三相の電力変換を行う電力変換装置および電力変換方法に関するものである。
従来の三相の電力変換を行う場合の制御方式として、出力電圧指令値に基づく例えば正弦波等の信号波と、スイッチング周波数を定める例えば三角波等の搬送波とを比較して、信号波と搬送波との大小により所定のパルス幅を有するゲート信号を生成してスイッチング素子に出力する搬送波比較方式と、各相の出力電流の検出値と各相の正弦波の出力電流指令値とをヒステリシス特性をもたせて比較し、出力電流が所定のヒステリシス幅以内に収まるようにスイッチング素子のゲート信号を生成してスイッチング素子に出力するヒステリシス制御方式とがある。
この場合、後者のヒステリシス制御方式は、前者の搬送波比較方式に比べて電源電圧の変動の影響を受けにくく安定した電力変換を行える。また、前者の搬送波比較方式に比較して、リアクトルのインダクタンス値の電流高調波への依存度が小さく、リアクトルの小型化が可能であるという利点がある。
ところで、上記のヒステリシス制御方式に基づく電力変換装置において、スイッチング素子のスイッチング回数が多い程、スイッチング損失も増大することから、スイッチング損失を削減するために、従来技術では、次のような提案がなされている。すなわち、各相の電流指令値の正側のピーク値を含む所定期間だけ、ヒステリシス制御回路からのゲート信号に依らずに、三相のインバータ回路の上記電流指令値に対応する各相の直流電圧高圧側に接続されている上側スイッチング素子を強制的にオンさせると共に、直流電圧低圧側に接続されている下側スイッチング素子を強制的にオフさせる一方、各相の電流指令値の負側のピーク値を含む所定期間だけ、ヒステリシス制御回路からのゲート信号に依らずに、三相のインバータ回路の上記電流指令値に対応する各相の直流電圧高圧側に接続されている上側スイッチング素子を強制的にオフさせると共に、直流電圧低圧側に接続されている下側スイッチング素子を強制的にオンさせるようにしたものが提案されている(例えば、下記の特許文献1参照)。
このように、特許文献1記載の従来技術では、ヒステリシス制御方式を採用する場合において、各相の電流指令値の正負のピーク値を含む所定期間だけ各相のスイッチング素子をスイッチング動作させずに強制的にオンするので、ピーク値を含む所定期間においてスイッチング回数を低減して余分なスイッチング損失が発生するのを抑制することが可能である。
特開2011−120349号公報
上記の特許文献1記載の従来の電力変換装置は、各相の電流指令値の正負のピーク値を含む所定期間は該当相のスイッチング素子のスイッチング動作を制限し、残りの二相のスイッチング素子はスイッチング動作を継続して三相の電流を制御している。この場合、三相電流の和はゼロであることから、二相のヒステリシス制御により、電流の変動はほぼ電流指令値のヒステリシス幅内に制御される。
しかし、電力変換装置を高力率で運転する場合、各相の電流指令値の正負のピーク付近は、電力変換装置の各相の出力電圧のピーク付近にほぼ一致する。この付近の位相では、電力変換装置の直流側に設けられたリアクトルの両端に印加される直流電圧と、電力変換装置の各相の出力電圧との電圧差が小さいため、電力変換装置の出力電流の変動も小さいことから、スイッチング動作を制限しない通常のヒステリシス制御方式でもスイッチングが少ない区間である。このため、この区間のスイッチング動作を制限しても、スイッチング回数の低減は限定的であり、大幅なスイッチング損失の削減は見込めない。
この発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、ヒステリシス制御方式に基づいて三相の電力変換を行う場合において、従来よりもさらに大幅なスイッチング損失の削減を図ることができる電力変換装置および電力変換方法を提供することを目的とする。
この発明に係る電力変換装置は、直流電力と交流電力を双方向に変換して供給する三相電力変換回路を有し、この三相電力変換回路の直流側には直流コンデンサと負荷が接続され、交流側にはインダクタンス特性を持つ平滑フィルタを介して三相交流電源が接続される一方、上記平滑フィルタのリアクトルに流れる各相の検出電流と予め設定されたヒステリシス幅をもった各相の電流指令値とを比較して、上記検出電流が上記電流指令値の上記ヒステリシス幅内に収まるように上記三相電力変換回路を構成するスイッチング素子のオン/オフ制御用のゲート信号を生成するヒステリシス制御回路を備えた電力変換装置において、上記ヒステリシス制御回路は、各相に対応する上記電流指令値の正負のピーク値を含まない所定の期間にわたって、上記電流指令値の各相に対応した上記三相電力変換回路のアームを構成する高圧側と低圧側の一対の上記スイッチング素子の内、一方のスイッチング素子を強制的にオンに固定し、他方のスイッチング素子を強制的にオフに固定するゲート信号を生成する、ことを特徴としている。
また、この発明に係る電力変換方法は、直流電力と交流電力を双方向に変換して供給する三相電力変換回路を有し、この三相電力変換回路の直流側には直流コンデンサと負荷が接続され、交流側にはインダクタンス特性を持つ平滑フィルタを介して三相交流電源が接続される一方、上記平滑フィルタのリアクトルに流れる各相の検出電流と予め設定されたヒステリシス幅をもった各相の電流指令値とを比較して、上記検出電流が上記電流指令値の上記ヒステリシス幅内に収まるように上記三相電力変換回路を構成するスイッチング素子のオン/オフ制御用のゲート信号を生成するヒステリシス制御回路を備えた電力変換装置を適用し、各相に対応する上記電流指令値の正負のピーク値を含まない所定の期間にわたって、上記電流指令値の各相に対応した上記三相電力変換回路のアームを構成する高圧側と低圧側の一対の上記スイッチング素子の内、一方のスイッチング素子を強制的にオンに固定し、他方のスイッチング素子を強制的にオフに固定することを特徴としている。
この発明によれば、三相電力変換回路を構成する各相に対応したアームを構成する高圧側と低圧側の一対のスイッチング素子に対して、各相に対応する上記電流指令値の正負のピーク値を含まない所定の期間にわたって一方のスイッチング素子を強制的にオンに固定し、他方のスイッチング素子を強制的にオフに固定する二相変調制御を行うので、従来よりもスイッチング回数の大幅な低減が可能となる。また、スイッチング回数を同等としたときにはフィルタリアクトルの小型化が可能となる。なお、電流歪率に制限がある場合には、スイッチング素子のオン/オフ動作を固定する期間を短くすることで対応が可能である。
この発明の実施の形態1における電力変換装置の全体を示す構成図である。 この発明の実施の形態1の電力変換装置を構成するヒステリシス制御回路の部分を示すブロック図である。 この発明の実施の形態1の電力変換装置の三相電力変換回路における一相分の出力電圧と出力電流の関係を概念的に示す説明図である。 この発明の実施の形態1における二相変調方式の制御動作を示すフローチャートである。 この発明の実施の形態1において、二相変調制御を行う場合のU相、V相、W相の各位相の関係とスイッチング素子をオン/オフするタイミングとの関係を示す説明図である。 この発明の実施の形態3において、二相変調制御を行う場合のU相、V相、W相の各電圧位相とスイッチング素子をオン/オフするタイミングとの関係を示す説明図である。 この発明の実施の形態3における二相変調方式の制御動作を示すフローチャートである。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における電力変換装置の全体を示す構成図である。
この実施の形態1の電力変換装置1は、三相フルブリッジコンバータで構成された三相電力変換回路2を備え、この三相電力変換回路2には、その直流側に直流コンデンサ3と負荷4とが接続され、また交流側にはインダクタンス特性を持つ平滑フィルタ5を介して三相交流電源6が接続されている。そして、電力変換装置1は、三相交流電源6と負荷4との間で電力を双方向に変換するシステムとなっている。なお、接地点は三相交流電源6としている。
三相電力変換回路2は、U相、V相、W相の各相に対応した三相分のアームを備え、各アームは、上下一対のスイッチング素子7Uと8U、7Vと8V、7Wと8Wが直列に接続され、その各接続点に各相の交流端子を持つように構成されている。また、各相の上側のスイッチング素子7U、7V、7Wのコレクタ端子が直流コンデンサ3の高圧側に、各相の下側のスイッチング素子8U、8V、8Wのエミッタ端子が直流コンデンサ3の低圧側に接続されている。
この場合、各スイッチング素子7U,8U、7V,8V、7W,8Wは、IGBTからなる自己消弧型の半導体素子と、これに逆並列に接続された還流用のダイオードを備える。なお、ここでは半導体素子としてIGBTを使用しているが、これに限らず、MOSFETなどの他の自己消弧型の半導体素子を適用することも可能である。
また、直流コンデンサ3に対してはその直流電圧を検出する直流電圧検出器9が設けられ、また、平滑フィルタ5と三相交流電源6との間には、平滑フィルタ5のリアクトルに流れる三相電力変換回路2の各相の出力電圧と出力電流をそれぞれ検出する電圧検出器10U,10V,10Wと電流検出器11U,11V,11Wが設けられている。なお、ここでは、各相の検出電流は三相交流電源6側から直流側の向きを正とする。
さらに、この実施の形態1の電圧変換装置は、上記の直流電圧検出器9で検出された直流電圧、各電圧検出器10U,10V,10Wと各電流検出器11U,11V,11Wで検出された検出電圧と検出電流をそれぞれ入力して、三相電力変換回路2を構成する6つのスイッチング素子7U,8U、7V,8V、7W、8Wをオン/オフ制御するヒステリシス制御回路12を備えている。
図2は電力変換装置1を構成するヒステリシス制御回路12の部分を示すブロック図である。
この実施の形態1のヒステリシス制御回路12は、差分器21、直流電圧制御回路22、dq逆変換器23、ヒステリシスコンパレータ24、二相変調制御回路25、ゲート制御回路26、および位相検出回路27を有する。
ここで、差分器21は、直流電圧検出器9で検出された直流コンデンサ3の直流電圧と直流コンデンサ3の目標電圧との差分を求めるものである。また、直流電圧制御回路22は、直流コンデンサ3の直流電圧が目標電圧に近づくように、すなわち、差分器21の出力が零に近付くように、有効電流指令値を与える。なお、この場合の有効電流指令値は、負荷4の電力と三相電力変換回路2の電力がバランスすれば、直流電圧制御回路22によるものに限らず、外部からの電流指令値や固定値としてもよい。
位相検出回路27は、各電圧検出器10U〜10Wで検出される各相の検出電圧に基づいて位相θの情報を算出する。そして、この位相検出回路27で検出された位相θの情報は、dq逆変換器23、二相変調制御回路25、およびゲート制御回路26にそれぞれ与えられる。
dq逆変換器23は、位相検出回路27で検出された位相θの情報を用いて、直流電圧制御回路22で得られた有効電流指令値を、U相、V相、W相の各電圧位相とほぼ同位相で正弦波状の各相の電流指令値に逆変換して出力する。
ヒステリシスコンパレータ24は、dq逆変換器23で得られた正弦波状の各相の電流指令値を中心として上下に所定のヒステリシス幅±ΔIをもつ電流指令上限値と電流指令下限値をそれぞれ設定し、それらの電流指令上限値と電流指令下限値と各電流検出器11U,11V,11Wで検出された各相の検出電流とを比較して、上記検出電流が電流指令上限値と電流指令下限値の範囲内、すなわちヒステリシス幅±ΔI内に収まるように三相電力変換回路2を構成する各スイッチング素子7U,8U、7V,8V、7W,8Wのオン/オフ制御用のゲート信号を生成する。
したがって、例えばU相の検出電流が電流指令上限値に到達した場合は、負荷4側から三相交流電源6側へ電流が流れて検出電流がヒステリシス幅±ΔI内に収まるように、このU相に対応する高圧側のスイッチング素子7Uをオン、かつ、低圧側のスイッチング素子8Uをオフとするゲート信号を生成する。また、U相の検出電流が電流指令下限値に到達した場合には、三相交流電源6側から負荷4側へ電流が流れて検出電流がヒステリシス幅±ΔI内に収まるように、このU相に対応する低圧側のスイッチング素子8Uをオン、かつ、高圧側のスイッチング素子7Uをオフとするゲート信号を生成する。他の相に対応するスイッチング素子7Vと8V、7Wと8Wに関しても同様である。このようにして、三相電力変換回路2の各相の出力電流がヒステリシス幅±ΔIをもった電流指令値の範囲内に収まるようにヒステリシス制御される。
ここで、上述のヒステリシス幅ΔIは、例えば三相交流電源6の電圧と三相電力変換回路2の各相の出力電圧との電圧差をΔV、平滑フィルタ5のインダクタンス値をL、単位時間をΔtとすると、次の式(1)に基づいて決定することができる。
ΔI=(ΔV/L)×Δt ・・・(1)
二相変調制御回路25は、位相検出回路27から生成された位相θの情報を用いて、この位相θをU相の電流指令値の基準位相とし、V相およびW相については、U相の位相θからそれぞれ2π/3、4π/3(rad)位相を遅らせた位相を電流指令値の基準位相とする。そして、各相の電流指令値の基準位相の正負のピーク値を含まない後述する所定の期間にわたって、電流指令値の各相に対応したアームを構成する高圧側と低圧側の一対のスイッチング素子の内、一方のスイッチング素子を強制的にオンに固定し、他方のスイッチング素子を強制的にオフに固定した状態を継続し、それ以外の期間ではヒステリシスコンパレータ24の出力に基づいて各相のアームを構成する一対のスイッチング素子7Uと8U、7Vと8V、7Wと8Wがオン/オフ制御されるようなゲート信号を生成する。
このように、各スイッチング素子の内、一相分に対応する一対のスイッチング素子をオンまたはオフの状態に固定し、残り二相分に対応する4つのスイッチング素子のみをオン/オフ制御する制御動作を、ここでは二相変調方式と称する。
ゲート制御回路26は、各相に対応する上下一対のスイッチング素子7Uと8U、7Vと8V、7Wと8Wの短絡防止のためのデッドタイムを保持しており、二相変調制御回路25から出力されるゲート信号に対して、短絡防止用のデッドタイムを付加している。具体的なデッドタイムの付加方法は、例えばU相に対応した一対のスイッチング素子7U,8Uに着目したとき、一方のスイッチング素子7Uまたは8Uがオンからオフになった場合には、デッドタイムの期間中、他方のスイッチング素子8Uおよび7Uも強制的にオフとする。V相、W相の各スイッチング素子7Vと8V、7Wと8Wについても同様の動作とする。
図3は、三相電力変換回路2における一相分の出力電圧と出力電流の関係を概念的に示す説明図である。
図3(a)に示すように、直流電圧検出器9で検出される直流電圧と、各相の電圧検出器10U、10V、10Wで検出される三相交流電源6側の検出電圧との電圧差ΔVが大きい期間、すなわち検出電圧のゼロクロス付近では、図3(b)に示すように電流の変化量が大きくなる。このため、スイッチング後、電流指令上限値または電流指令下限値へ到達する時間が短くなるので、結果的にゼロクロス付近の平均スイッチング周波数が増加することになる。
一方、図3(a)に示すように、直流電圧と三相交流電源6側の検出電圧との電圧差ΔVが小さい期間、すなわち検出電圧の正負のピーク値付近では、図3(b)に示すように検出電流の変化量が小さくなる。このため、スイッチング後、電流指令上限値または電流指令下限値へ到達する時間が長くなるので、結果的に正負のピーク値付近の平均スイッチング周波数が減少することになる。
このように、電流指令上限値や電流指令下限値の正負のピーク値付近でスイッチング回数を低減するよりも、正負のピーク値付近を除く箇所でスイッチング回数を低減する方がスイッチング損失の削減効果が大きいことが分かる。
次に、上記構成を有するヒステリシス制御方式の電力変換装置1における動作、特にヒステリシス制御回路12を構成する二相変調制御回路25の動作に基づく二相変調方式について説明する。
前述のように、三相電力変換回路2の接地点は三相交流電源6側としているので、零相電流が流れない。このため、三相電力変換回路2の各相の出力電流をIu,Iv,Iwとすると、次の式(2)が成立する。
Iu+Iv+Iw=0 ・・・(2)
このことから、三相の内の二相が制御されれば、残りの一相は所定の電流値となる。例えば、U相に対応する一対のスイッチング素子7U、8Uの動作をオンまたはオフの状態に固定しているときには、U相の出力電流Iuは、V相とW相に対応するスイッチング素子7V,8V、7W,8Wのスイッチングに伴う出力電流Iv,Iwに依存する。
前述の特許文献1記載の従来技術では、各相の電流指令値の正負のピーク値を含む所定期間(例えば60度期間)を二相変調期間として、ピーク値を含む相のスイッチング素子をオンまたはオフの状態に固定し、残りの二相のみオン/オフ制御している。図3に示したように、各相の電流指令値のピーク値を含む相は、三相電力変換回路2に加わる直流電圧と三相交流電源6の各相の出力電圧との電圧差ΔVが小さい相であることからスイッチング回数が少ない期間であり、この期間にスイッチング素子をオンまたはオフの状態に固定しても大幅なスイッチング損失の削減は見込めない。
そこで、この実施の形態1では、二相変調制御回路25では、三相変調の一般的なヒステリシス制御方式の場合と比較して大幅にスイッチング回数を低減するために、各相に対応する電流指令値の正負のピーク値を含まない所定の期間だけ一相分に対応する一対のスイッチング素子をオンまたはオフの状態に固定し、スイッチング動作を固定しない残りの二相のスイッチング素子のみをオン/オフ制御する二相変調方式を適用する。なお、二相変調制御による強制的なスイッチングは、短絡防止のための強制的なスイッチングの前段とし、短絡防止を優先させる。
図4はこの発明の実施の形態1に係る電力変換装置1の二相変調制御動作を示すフローチャートである。なお、図4中の符号Sは各処理ステップを意味する。
まず、U相、V相、W相の各電流指令値について、位相判定により一つの相の電流指令値の基準位相が正側であり、かつピーク値を含まない所定の期間内であるかどうかを判断し(S001)、これに該当するなら、当該所定の期間にわたってその相に対応する高圧側のスイッチング素子を強制的にオンするとともに、低圧側のスイッチング素子を強制的にオフする(S002)。その際、残り二相分に対応する4つのスイッチング素子についてはヒステリシス制御方式の下でオン/オフ制御を行う。
この場合、高圧側のスイッチング素子をオンするとともに低圧側のスイッチング素子をオフする上記の所定の期間は、具体的かつ理想的には、U相、V相、W相の各基準位相についてπ/6〜2π/6(rad)の範囲と、4π/6〜5π/6(rad)の範囲とする。
また、基準位相が正側であっても、上記の所定の期間以外では、ヒステリシス制御方式に基づいて三相分の各スイッチング素子につきオン/オフ制御を行う。一方、S001で基準位相が正側でないときには、次のS003に移行する。
次に、U相、V相、W相の各電流指令値について、位相判定により一つの相の電流指令値の基準位相が負側であり、かつピーク値を含まない所定の期間であるかどうかを判断し(S003)、これに該当するなら、当該所定の期間にわたってその相に対応する、高圧側のスイッチング素子を強制的にオフするとともに、低圧側のスイッチング素子を強制的にオンにする(S004)。その際、残り二相分に対応する4つのスイッチング素子についてはヒステリシス制御方式の下でオン/オフ制御を行う。
この場合、高圧側のスイッチング素子をオフするとともに低圧側のスイッチング素子をオンする上記の所定の期間は、具体的かつ理想的には、U相、V相、W相の各基準位相について7π/6〜8π/6(rad)の範囲と、10π/6〜11π/6(rad)の範囲とする。
また、基準位相が負側であっても、上記の所定の期間以外では、ヒステリシス制御方式に基づいて三相分の各スイッチング素子につきオン/オフ制御を行う。一方、S003で基準位相が負側でないときには、先のS001に戻る。
図5は二相変調制御を行う場合の、U相、V相、W相の各位相の関係とその場合にスイッチング素子をオン/オフするタイミングとの関係を示す説明図である。この場合、各相の位相は、前述のように位相検出回路27から生成された位相θの情報を用い、この位相θをU相の基準位相とし、V相およびW相の各基準位相は、U相の位相θからそれぞれ2π/3、4π/3位相を遅らせた位相としている。
上記一相分のスイッチング素子をオンまたはオフの状態に固定する所定の期間は、図3(b)に示したように、各相の電流指令値の正負のピーク値を含む期間よりも電流変化量が大きいので、スイッチング回数が多い期間となる。この実施の形態1では、この所定の期間、スイッチング素子を強制的にオンまたはオフの状態に固定することにより、特許文献1記載の従来技術のように、各相の電流指令値の正負のピーク値を含む60度期間を強制的にオンまたはオフさせるよりも、大幅なスイッチング回数の低減を図ることができ、これに伴いスイッチング損失も削減することができる。また、スイッチング回数を同等としたときにはフィルタリアクトルの小型化が可能となる。
実施の形態2.
上記の実施の形態1では、二相変調制御を行う場合に、高圧側のスイッチング素子をオンの状態に、かつ低圧側のスイッチング素子をオフの状態に固定する期間を、各相の基準位相のπ/6〜2π/6、4π/6〜5π/6(rad)、また、高圧側のスイッチング素子をオフの状態に、かつ低圧側のスイッチング素子をオンの状態に固定する期間を各相の基準位相の7π/6〜8π/6、10π/6〜11π/6(rad)としたが、これに限らず、上記の各期間の範囲内に含まれ、かつ当該各期間より短い期間としてもよい。
このように、この実施の形態2では、二相変調制御を行う場合に、実施の形態1に示した上記の各期間の範囲内に含まれ、かつ当該各期間より短い期間としているので、スイッチング回数が許容できる場合、電流の歪率を改善することができる。また、電流の歪率に制限がある場合、二相変調期間を減らすことで歪率を改善することができる。
実施の形態3.
上記の実施の形態1では、二相変調制御を行う場合に、高圧側のスイッチング素子をオンの状態に、かつ低圧側のスイッチング素子をオフの状態に固定する期間を、各相の基準位相のπ/6〜2π/6、4π/6〜5π/6(rad)、また、高圧側のスイッチング素子をオフの状態に、かつ低圧側のスイッチング素子をオンの状態に固定する期間を各相の基準位相の7π/6〜8π/6、10π/6〜11π/6(rad)としたが、これに限らず、次のようにしてもよい。
各電圧検出器10U、10V、10Wで検出される各相の検出電圧を二相変調制御回路25に取り込み、二相変調制御回路25は、この取り込まれた各相の検出電圧の波形について、図6に示すように、各相の検出電圧の絶対値の大きさを互いに比較し、ある一相の電圧の大きさが他の二相の電圧の大きさの中間(以下、これを中間電圧相という)に相当する期間内に二相変調制御を行う。
例えば、U相の電圧波形については、他のV相、W相の電圧波形との関係から、U相の検出電圧の絶対値の大きさと、他のV相、W相の検出電圧の絶対値の大きさとを比較し、U相の電圧の大きさが他のV相、W相の電圧の大きさに対して中間電圧相に相当する期間に、U相に対応する一対のスイッチング素子7U、8Uをオンまたはオフの状態に固定し、残りのV相とW相に対応する各スイッチング素子7Vと8V、7Wと8Wのみをオン/オフ制御する二相変調制御を行う。
図7はこの発明の実施の形態3に係る電力変換装置1の二相変調制御動作を示すフローチャートである。なお、図7中の符号Sは各処理ステップを意味する。
まず、U相、V相、W相の各検出電圧について、当該検出電圧が正側で、かつ中間電圧相かどうかを判断し(S101)、これに該当する場合には、当該中間電圧相の期間にわたって、その相に対応する高圧側のスイッチング素子を強制的にオンするとともに、低圧側のスイッチング素子を強制的にオフする(S102)。その際、残り二相分に対応する4つのスイッチング素子についてはヒステリシス制御方式の下でオン/オフ制御を行う。
また、位相が正側であっても、上記中間電圧相以外の期間では、ヒステリシス制御方式に基づいて三相分の各スイッチング素子につきオン/オフ制御を行う。一方、S101で位相が正側でないときには、次のS103に移行する。
次に、U相、V相、W相の各検出電圧について、当該検出電圧が負側で、かつ中間電圧相かどうかを判断し(S103)、これに該当する場合には、当該中間電圧相の期間にわたってその相に対応する低圧側のスイッチング素子を強制的にオンするとともに、高圧側スイッチング素子を強制的にオフする(S104)。その際、残り二相分に対応する4つのスイッチング素子についてはヒステリシス制御方式の下でオン/オフ制御を行う。
また、位相が負側であっても、上記中間電圧相以外の期間では、ヒステリシス制御方式に基づいて三相分の各スイッチング素子につきオン/オフ制御を行う。一方、S103で位相が負側でないときには、先のS101に戻る。
このように、この実施の形態3では、各電圧検出器10U、10V、10Wで検出される各相の検出電圧の大きさに基づいて二相変調期間を設定しているので、位相検出回路27による位相θの検出精度が悪くても二相変調制御と三相変調制御のタイミングを適切に切替えることができる。
実施の形態4.
上記の実施の形態3では、二相変調制御を行う場合に、高圧側のスイッチング素子をオンの状態に、かつ低圧側のスイッチング素子をオフの状態に固定する期間を、三相電力変換回路2の交流出力側の検出電圧が正の期間で、かつその大きさが中間電圧相である期間とし、また、高圧側のスイッチング素子をオフの状態に、かつ低圧側のスイッチング素子をオンの状態に固定する期間を、三相電力変換回路2の交流出力側の検出電圧が負の期間で、かつその大きさが中間電圧相である期間としたが、これに限らず、上記の各期間の範囲内に含まれ、かつ当該各期間より短い期間としてもよい。
このように、この実施の形態4では、二相変調制御を行う場合に、実施の形態3に示した上記の各期間の範囲内に含まれ、かつ当該各期間より短い期間としているので、スイッチング回数が許容できる場合、電流の歪率を改善することができる。また、電流の歪率に制限がある場合、二相変調期間を減らすことで歪率を改善することができる。
なお、この発明は、上記の実施の形態1〜4の構成のみに限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、各実施の形態1〜4の各構成に変形を加えたり、構成を一部省略したり、さらに、各実施の形態1〜4を組み合わせた構成とすることが可能である。
例えば、各相の電流指令値の正負のピーク値を含まない所定の期間だけ一相分に対応する一対のスイッチング素子をオンまたはオフの状態に固定し、スイッチング動作を固定しない残りの二相のスイッチング素子のみをオン/オフ制御する二相変調方式を適用する場合の所定の期間としては、スイッチング回数を低減できる期間であれば、実施の形態1から4を適宜組み合わせた構成とすることも可能である。
1 電力変換装置、2 三相電力変換回路、3 直流コンデンサ、4 負荷、
5 平滑フィルタ、6 三相交流電源、
7U,7V,7W,8U,8V,8W スイッチング素子、9 直流電圧検出器、
10U,10V,10W 電圧検出器、11U,11V,11W 電流検出器、
12 ヒステリシス制御回路。

Claims (6)

  1. 直流電力と交流電力を双方向に変換して供給する三相電力変換回路を有し、この三相電力変換回路の直流側には直流コンデンサと負荷が接続され、交流側にはインダクタンス特性を持つ平滑フィルタを介して三相交流電源が接続される一方、上記平滑フィルタのリアクトルに流れる各相の検出電流と予め設定されたヒステリシス幅をもった各相の電流指令値とを比較して、上記検出電流が上記電流指令値の上記ヒステリシス幅の内に収まるように上記三相電力変換回路を構成するスイッチング素子のオン/オフ制御用のゲート信号を生成するヒステリシス制御回路を備えた電力変換装置において、
    上記ヒステリシス制御回路は、各相に対応する上記電流指令値の正負のピーク値を含まない所定の期間にわたって、上記電流指令値の各相に対応した上記三相電力変換回路のアームを構成する高圧側と低圧側の一対の上記スイッチング素子の内、一方のスイッチング素子を強制的にオンに固定し、他方のスイッチング素子を強制的にオフに固定するゲート信号を生成する、ことを特徴とする電力変換装置。
  2. 上記所定の期間は、各相の上記電流指令値の基準位相のπ/6から2π/6、4π/6から5π/6、7π/6から8π/6、10π/6から11π/6(rad)の各期間であり、上記ヒステリシス制御回路は、上記π/6から2π/6および上記4π/6から5π/6(rad)の各期間では、高圧側の上記スイッチング素子を強制的にオンするとともに低圧側の上記スイッチング素子を強制的にオフし、上記7π/6から8π/6および上記10π/6から11π/6(rad)の各期間では高圧側の上記スイッチング素子を強制的にオフするとともに低圧側の上記スイッチング素子を強制的にオンするゲート信号を生成するものである、請求項1に記載の電力変換装置。
  3. 上記所定の期間は、各相の上記電流指令値の基準位相のπ/6から2π/6、4π/6から5π/6、7π/6から8π/6、10π/6から11π/6(rad)の各期間の範囲内に含まれ、かつ当該各期間より短い期間である請求項2に記載の電力変換装置。
  4. 上記所定の期間は、上記三相電力変換回路の各相の出力電圧を検出してその検出電圧の絶対値の大きさを互いに比較した場合に、ある一相の上記検出電圧の大きさが他の二相の上記検出電圧の大きさの間の中間電圧相に相当する期間であり、上記ヒステリシス制御回路は、上記中間電圧相の期間の上記検出電圧が正の場合には高圧側の上記スイッチング素子を強制的にオンするとともに低圧側の上記スイッチング素子を強制的にオフし、上記中間電圧相の期間の上記検出電圧が負の場合には高圧側の上記スイッチング素子を強制的にオフするとともに低圧側の上記スイッチング素子を強制的にオンするゲート信号を生成するものである、請求項1に記載の電力変換装置。
  5. 上記所定の期間は、上記中間電圧相の期間の範囲内に含まれ、かつ当該中間電圧相の期間よりも短い期間である、請求項4に記載の電力変換装置。
  6. 直流電力と交流電力を双方向に変換して供給する三相電力変換回路を有し、この三相電力変換回路の直流側には直流コンデンサと負荷が接続され、交流側にはインダクタンス特性を持つ平滑フィルタを介して三相交流電源が接続される一方、上記平滑フィルタのリアクトルに流れる各相の検出電流と予め設定されたヒステリシス幅をもった各相の電流指令値とを比較して、上記検出電流が上記電流指令値の上記ヒステリシス幅の内に収まるように上記三相電力変換回路を構成するスイッチング素子のオン/オフ制御用のゲート信号を生成するヒステリシス制御回路を備えた電力変換装置を適用し、
    各相に対応する上記電流指令値の正負のピーク値を含まない所定の期間にわたって、上記電流指令値の各相に対応した上記三相電力変換回路のアームを構成する高圧側と低圧側の一対の上記スイッチング素子の内、一方のスイッチング素子を強制的にオンに固定し、他方のスイッチング素子を強制的にオフに固定することを特徴とする電力変換方法。
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