JP2015008078A - 電子レンズ及び荷電粒子線装置 - Google Patents

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【課題】励磁コイルを流れる励磁電流が変化しても電子レンズの磁路の温度を変えることなく、磁路の変形を防いで、画像ボケや視野位置のドリフトの影響が少ない電子レンズ及び荷電粒子線装置を提供する。【解決手段】電子レンズ40の、励磁コイル41と磁路42との間に介在して励磁コイル41覆う非磁性体金属覆い48に加熱部としての温媒循環パイプ51ou、51do、51ui、51idを設け、試料観察の開始当初は、使用頻度が高い励磁電流を励磁コイル41に流した場合に磁路42が熱平衡状態となる温度以上で、電子レンズ40の各構成部の耐熱温度よりも低い温度からなる目標設定温度Tsetで、非磁性体金属覆い48を加熱し、磁路42の温度を予め設定された試料観察条件の励磁電流で磁路42が熱平衡状態となる温度以上の目標温度にする。【選択図】図2

Description

本発明は、荷電粒子ビームを集束させる電子レンズ、及び電子レンズにより集束した荷電粒子ビームを試料上に照射する荷電粒子線装置に関する。
荷電粒子線装置の一態様である電子ビーム照射装置としての走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)は、電子銃から放出される電子ビーム(1次電子線)を複数の電子レンズにより集束し、偏向コイルによって試料上で走査する構成となっている。
走査型電子顕微鏡は、電子ビームの照射走査によって試料から放出される2次電子(Secondary Electron)や後方散乱電子(BSE:Backscattered Electron)を、試料上方に備えられた検出器で捉える構成になっており、その検出信号の出力を電子ビームの走査信号と同期させることで試料の表面画像やラインプロファイルに変換し、試料の形状観察や寸法計測を行うことができる。
このような走査型電子顕微鏡を含む荷電粒子線装置では、試料観察(像観察)の性能面から、電子ビーム等の荷電粒子ビーム(1次ビーム)はできる限り細く集束させて試料上に照射することが要求される。荷電粒子線ビームの集束性を向上させるためには、その構成要素の一つである電子レンズによって、ビーム路に非常に強い磁場を発生させる必要がある。そのため、荷電粒子線装置で試料観察を高倍率で行う場合、電子レンズの励磁コイルには数アンペア程度の大電流を流すのが一般的であるが、その大電流により励磁コイルから発生する熱は、電子レンズやその周辺構造を温度変化させ、熱膨張させる。
その結果、励磁コイルを含む電子レンズの各構成部や電子レンズの周辺構造は、熱伝導率及び熱膨張率が互いに異なる様々な部材を用いて構成されているため、電子レンズでは構成部間やその周辺構造との間で熱膨張量に差が生じることになり、試料観察の際、電子レンズの磁路が変形若しくは変位してしまうことになる。
荷電粒子線装置において、試料観察の際に起きる電子レンズの磁路の変形や変位は、1次電子線の焦点ずれ(画像ボケ)や照射位置のずれ(視野位置のドリフト)を引き起こし、試料観察時における分解能の劣化や観察位置のずれを生じさせる。そのため、通常、荷電粒子線装置では、磁路の温度変化による画像ボケや視野位置のドリフトを回避するため、試料観察の際は、使用開始時点から電子レンズの磁路が熱平衡状態に達するまでの間、数時間程度のウォーミングアップが必要であった。
このような荷電粒子線装置の問題に対し、例えば、特許文献1には、試料観察が行われていない際も、試料観察時と同等の励磁電流を電子レンズに流し、電子レンズの磁路を常に試料観察時と同等の熱平衡状態に保っておくことで、その後の試料観察時での磁路の変形や変位による画像ボケや視野位置のドリフトを抑制する方法が開示されている。具体的には、荷電粒子線装置に、電子レンズを冷却水によって冷却する冷却手段を設け、試料観察の際は、冷却手段は電子レンズに冷却水を供給し、試料観察が行われていない際は、冷却手段が電子レンズに冷却水を供給しないことにより、電子レンズの磁路を常に試料観察時と同等の熱平衡状態に保っておくことが開示されている。
また、特許文献2には、巻数の異なる励磁コイルを複数個、電子レンズに設けることで、電子レンズに発生させる磁界強度を変えても、それぞれの励磁コイルに流す励磁電流の絶対値の総和は一定に保ち、励磁コイルから発生する熱量を一定に保つことで、電子レンズやその周辺構造の温度変化を抑制して、磁路の変形や変位による画像ボケや視野位置のドリフトを軽減する方法が開示されている。
特開2007−335134号公報 特開2006−210035号公報
しかしながら、特許文献1では、試料観察の前に電子レンズの磁路の熱平衡状態を作り出すために、試料観察で使用する試料観察条件を予め観察前に詳細に把握しておく必要がある。そのため、試料観察条件の予測がつかない場合、試料観察時の熱平衡状態を予め観察前に電子レンズに励磁電流を流して作り出しておくことは困難である。
また、試料観察中に大幅に試料観察条件を変更する必要がある場合、それに合わせて電子レンズの励磁コイルに流す励磁電流も変更する必要がある。この場合も、結局、変更後の試料観察条件で電子レンズの磁路の熱平衡状態を得るまでの間、画像ボケや視野位置のドリフトが収まるまでの安定待ちを行う必要がある。
一方、特許文献2では、複数個の励磁コイルを設け、それぞれの励磁コイルに流す励磁電流の絶対値の総和は変えずに各励磁コイルに流す励磁電流の電流方向のみ変更することで、電子レンズに発生させる磁界強度を変更する方法を採用している。
この方法の場合、励磁コイルそれぞれに流す励磁電流の絶対値の総和が常に一定に保たれるため、試料観察条件変更時の電子レンズの磁路の温度変化が抑制可能となるが、変更可能な磁界強度が励磁コイルの個数やそれぞれの励磁コイルの巻き数、励磁コイルに流す電流の絶対値の総和に依存してしまうため、電子レンズの磁界強度を観察に最適な値に設定することが困難である。
また、適切な磁界強度を得るために電流の総和を変更した場合には、励磁コイルそれぞれで発生する熱量が変わるため、結局、磁路の温度の安定待ちが必要となる。
本発明は、上述した問題点を鑑みなされたものであって、励磁コイルに流れる励磁電流が変化しても電子レンズの磁路の温度を変えることなく、磁路の変形や変位を防いで、画像ボケや視野位置のドリフトの影響が少ない非常に安定した電子レンズ及び荷電粒子線装置を提供することを目的とする。
本発明に係る電子レンズ及び荷電粒子線装置は、上記した課題を解決するため、荷電粒子ビームを集束させるための磁場をビーム路に発生させる電子レンズが、励磁電流の流れにより磁界を生成する励磁コイルと、ビーム路に荷電粒子ビームを集束させる磁場を発生させるための磁路と、励磁コイルと磁路との間に介在して励磁コイルを覆う非磁性体金属覆いと、非磁性体金属覆いを加熱する加熱部と、非磁性体金属覆い及び/又は励磁コイルを冷却する冷却部と、励磁電流が流れる励磁コイルの発熱に基づく電子レンズの温度を検出する温度検出部とを備え、試料観察の際、磁路の温度を予め設定された試料観察条件に対応した目標温度にすべく、前記加熱部に目標設定温度を逐次設定して、当該目標設定温度及び前記温度検出部の検出信号を基に前記加熱部及び前記冷却部を作動制御することを特徴とする。
本発明によれば、試料観察開始時や試料観察条件を変更した際に、励磁コイルの励磁電流の値変化に伴って生じる磁路の温度変化を抑えることができ、磁路の変形や変位による画像ボケや視野位置のドリフトの影響を抑制して、装置状態が非常に安定した状態で試料観察を行うことができる。また、画像ボケや視野位置のドリフトが収まるまでの安定待ちの必要性やその待ち時間を削減可能なので、試料観察のスループットも向上する。
上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
本発明に係る荷電粒子線装置の一実施の形態としての走査型電子顕微鏡の構成図である。 本発明の第1の実施例に係る電子レンズの断面構成図である。 本発明の第2の実施例に係る電子レンズの断面構成図である。 本発明の第3の実施例に係る電子レンズの断面構成図である。 本発明の第4の実施例に係る電子レンズの断面構成図である。
電子レンズにより集束した荷電粒子ビームを試料上に照射する荷電粒子線装置としては、走査型電子顕微鏡、イオンビーム装置、電子線描画装置、電子線検査装置、イオンビーム検査装置、等がある。これら装置は、それぞれの用途によって装置全体としての機能や構成が相違することは既知であるが、いずれの装置の場合であっても、その構成要素としての電子レンズやその周辺構造自体については変わることなく、同様である。
そこで、以下では、荷電粒子線装置としての走査型電子顕微鏡を例に、本発明に係る電子レンズ及び荷電粒子線装置の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る荷電粒子線装置の一実施の形態としての走査型電子顕微鏡の構成図である。
走査型電子顕微鏡1は、本体10と、電子光学系制御部20と、対物レンズ温度管理部30とを有する構造になっている。そして、本体10は、SEM(Scanning Electron Microscope)カラム11と、試料室16と有し、試料観察時はどちらも真空状態に維持される。
SEMカラム11には、電子銃12、集束レンズ13、偏向コイル14、対物レンズ15が設けられている。電子銃12は、電子ビーム2を生成する。集束レンズ13は、電子銃12から導出された電子ビーム2を集束させる。偏向コイル14は、偏光器として、電子ビーム2の進行方向をその光軸方向に対して偏向走査する。対物レンズ15は、磁界型電子レンズにより構成され、電子ビーム2を試料上に照射するに当たって、ビーム路に非常に強い磁場を発生させて電子ビーム2を試料上で集束させる。
試料室16には、試料3を移動自在に保持して、試料上における観察範囲(観察位置)を規定する試料ステージ17と、電子ビーム2の照射によって試料3から放出される2次電子等の二次粒子を検出する二次粒子検出器(図示略)が設けられている。
電子光学系制御部20は、試料観察条件に応じて、電子銃12、集束レンズ13、偏向コイル14、対物レンズ15といったSEMカラム11の各部を制御する。試料観察条件は、試料観察の実行を制御するとともに、二次粒子検出器の検出信号に基づき試料3の表面画像の画像生成等を行う図示せぬコンピュータ部に対して、入出力部の操作等により設定される。電子光学系制御部20は、コンピュータ部から設定された試料観察条件の指示を受け、電子銃12、集束レンズ13、偏向コイル14、対物レンズ15といったSEMカラム11の各部に対し、制御信号を出力する。
対物レンズ温度管理部30は、対物レンズ15に設けられた対物レンズ温度検出部35、対物レンズ加熱部36、対物レンズ冷却部37とそれぞれ接続され、後述する励磁コイル41を備えた電子レンズ40からなる対物レンズ15の温度を検出し、対物レンズ15の磁路42の温度が予め定められた目標温度になるように対物レンズ15を加熱又は冷却して、対物レンズ15の磁路の温度を制御管理する。そのために、対物レンズ温度管理部30は、対物レンズ温度制御部31、及び加熱・冷却制御部32を有する。
対物レンズ温度制御部31は、対物レンズ温度検出部35が検出する対物レンズ15の温度を随時取得し、その値から対物レンズ15の磁路の温度を目標温度にするための対物レンズ加熱部36、対物レンズ冷却部37それぞれによる加熱量、冷却量に関する制御信号を生成し、加熱・冷却制御部32に供給する。加熱・冷却制御部32は、対物レンズ温度制御部31から供給される加熱量、冷却量に関する制御信号に基づいて、対物レンズ加熱部36、対物レンズ冷却部37を制御作動し、対物レンズ15を加熱、冷却する。
対物レンズ加熱部36,対物レンズ冷却部37は、図示の例では、温媒供給源,冷媒供給源が生成する温媒,冷媒で、対物レンズ15を加熱,冷却する構成になっている。この場合、温媒供給源,冷媒供給源は、本体10の内部に設けなくても済むので、温媒供給源,冷媒供給源が対物レンズ15の励磁コイル41が発生する磁界に対して影響を与えることはない。なお、対物レンズ加熱部36,対物レンズ冷却部37の構成は、温媒,冷媒で対物レンズ15を加熱,冷却する構成以外でも、対物レンズ15の励磁コイル41が発生する磁界に対して影響を与えずに加熱,冷却できる構成であればよい。
次に、図1に示した走査型電子顕微鏡1の対物レンズ15に適用される、本発明に係る電子レンズの実施の形態としての磁界型電子レンズ40の構造について、図面に基づいて説明する。
[実施例1]
図2は、本発明の第1の実施例に係る電子レンズの断面構成図である。
図2に示した電子レンズ40の断面図は、図1において、電子銃12で生成された電子ビーム2の光軸oを含む面に沿った対物レンズ15の断面図に該当する。
本実施例では、電子レンズ40は、励磁コイル41及び磁路42を有する。磁路42は、例えば継鉄等といった磁気抵抗の小さい磁性体により構成され、光軸oの軸方向に沿って眺めた、光軸oに垂直な平面形状が、光軸oを中心に取り囲むような枠体形状(例えば、ドーナツ形状)になっている。これに伴い、光軸oと垂直な平面形状において、磁路42の枠体形状の内周側に形成されて軸方向に沿って延びる中空部は、光軸oに沿って延びる荷電粒子線通路43を形成する。
また、磁路42は、その光軸oを含む面に沿って切断した断面形状が、図2に示すように、光軸oを中心線にして線対称な一対の磁路管構造になっており、その磁路管断面部44で現れる磁路42の枠体周方向に沿って延びる中空部は、巻回された励磁コイル41等が収容されるボビン収容空間になっている。そして、荷電粒子線通路43を形成する磁路42の内周面には、その枠体周方向に沿って延びるギャップ45が切り欠き形成されている。
磁路42の磁路管断面部44内で、磁路42の枠体周方向に沿って延びるボビン収容空間には、光軸oに沿って眺めた平面形状が、磁路42と同様な枠体形状を有する励磁コイルボビン46が収容可能になっている。励磁コイルボビン46も、その光軸oを含む面に沿って切断した断面形状が、図2に示すように光軸oを中心線にして線対称な一対の、磁路42よりも小さな角管形状になっており、その角管断面部47に現れる励磁コイルボビン46の枠体周方向に沿って延びる中空部は、励磁コイル41が巻回されて実装されるコイル巻装空間になっている。そして、磁路42のボビン収容空間の大きさは、磁路42の磁路管断面部44の断面中心に励磁コイルボビン46の角管断面部47の断面中心を合わせて励磁コイルボビン46を収容した場合に、磁路42の磁路管断面部44の内面部に励磁コイルボビン46の角管断面部47の外面部が当接せず、磁路42の内面部と励磁コイルボビン46の外面部との間に、隙間部が形成される大きさになっている。
励磁コイル41は、励磁コイルボビン46のコイル巻装空間に沿って巻回されて実装される。励磁コイル41が内部に実装された励磁コイルボビン46の外面は、非磁性体金属覆い48によって覆われている。非磁性体金属覆い48は、励磁コイル41が発生する熱の伝熱性を高めつつ、励磁コイル41が発生する磁界に影響を与えないようにするため、例えばアルミニウム又は銅により形成されている。さらに、非磁性体金属覆い48で覆われた励磁コイルボビン46の外面には、図1に示した対物レンズ加熱部36の構成要素に相当する非磁性体金属覆い用温媒循環パイプ51、及び図1の対物レンズ冷却部37の構成要素に相当する非磁性体金属覆い用冷媒循環パイプ52が設置されている。
本実施例では、励磁コイルボビン46の角管断面部47を磁路42の周方向に沿って眺めて、励磁コイルボビン46の周面上面側の非磁性体金属覆い部分48uには、内周側に温媒循環パイプ51ui、外周側に冷媒循環パイプ52uoが、励磁コイルボビン46の周面下面側の非磁性体金属覆い部分48dには、内周側に冷媒循環パイプ52di、外周側に温媒循環パイプ51doが、励磁コイルボビン46の内周面側の非磁性体金属覆い部分48iには、上方側に冷媒循環パイプ52iu、下方側に温媒循環パイプ51idが、励磁コイルボビン46の外周面側の非磁性体金属覆い部分48oには,上方側に温媒循環パイプ51ou、下方側に冷媒循環パイプ52odが、それぞれ設けられた構成になっている。
すなわち、図示の例では、非磁性体金属覆い48の周面上面部分48u,内周面部分48i,周面下面部分48d,外周面部分48oといった一連の、励磁コイルボビン46の角管断面部47の外面に沿って、温媒循環パイプ51と冷媒循環パイプ52とが交互に配置された形態になっている。また、非磁性体金属覆い48の周面上面部分48uと周面下面部分48d、内周面部分48iと外周面部分48oといった、励磁コイル41が実装された励磁コイルボビン46を間に挟んだ対向関係においても、上下方向,内外方向で、温媒循環パイプ51と冷媒循環パイプ52とが互いに対向するように配置された形態になっている。
これにより、温媒循環パイプ51及び冷媒循環パイプ52が接し、励磁コイルボビン46を覆う非磁性体金属覆い48は、この温媒循環パイプ51と冷媒循環パイプ52との交互配置や対抗配置によって、偏熱しにくく、全体として一様に加熱又は冷却され易くなっている。
なお、非磁性体金属覆い48に設置された温媒循環パイプ51ui,51id,51do,51ouについては、それぞれ個別のパイプ部材を並列設置して構成したり、1本又は2本のパイプ部材を途中で折り曲げて設置して構成する等、種々の設置方法が適宜採用される。冷媒循環パイプ52uo,52iu,52di,52odの非磁性体金属覆い48に対する設置方法も同様である。
そして、温媒循環パイプ51(51ui,51id,51do,51ou),冷媒循環パイプ52(52uo,52iu,52di,52od)は、図示せぬ温媒供給源,冷媒供給源に連通接続されて、温媒供給源,冷媒供給源からそれぞれ温度管理された温媒,冷媒がそれぞれ供給量(流量)を管理されて供給されるようになっている。
すなわち、温媒循環パイプ51は、温媒供給源とともに、図1に示した対物レンズ加熱部36を構成し、冷媒循環パイプ52は、冷媒供給源とともに、図1に示した対物レンズ冷却部37を構成する。なお、温媒供給源及び冷媒供給源の設置場所は、本体10の外部が好ましい。
その上で、温媒循環パイプ51及び冷媒循環パイプ52を備えた非磁性体金属覆い48で外面が覆われ、励磁コイル41がコイル巻装空間に実装された励磁コイルボビン46は、その角管断面部47の断面中心を磁路42の磁路管断面部44の断面中心に一致させるようにして配置された状態で、磁路42のボビン収容空間に収容される。その際、磁路42の内面と、温媒循環パイプ51及び冷媒循環パイプ52を備えた非磁性体金属覆い48との間に形成される隙間部は、モールド等を用いて作製されたコイル位置固定部53によって埋められ、励磁コイルボビン46は、磁路42のボビン収容空間に一体的に固定保持される。コイル位置固定部53は、例えば樹脂等、対物レンズ15の励磁コイル41が発生する磁界に対して影響を与えない材料によって構成されている。
その結果、励磁コイルボビン46は、その外面に備えられた非磁性体金属覆い48や、またこの非磁性体金属覆い48に備えられた温媒循環パイプ51及び冷媒循環パイプ52が、介在するコイル位置固定部53によって、磁路42の内面と直接接触しないようになっている。また、この状態で、光軸oに沿って延びる荷電粒子線通路43の中心と、励磁コイルボビン46のコイル巻装空間に沿って巻回されて実装された励磁コイル41の巻回中心とは、同軸に保持されるようになっている。
これにより、電子光学系制御部20による制御によって、励磁コイル41へ試料観察条件に応じた励磁電流が印加されると、磁路42には、その磁路管断面部44の上面,内周面,下面,外周面といった連設した断面の、途中にギャップ45を有する磁路経路に沿って、印加された励磁電流の大きさ及び向きに応じた磁界が発生する。図1に示した走査型電子顕微鏡1の対物レンズ15に電子レンズ40を適用した場合、磁気抵抗の小さい磁性体からなる磁路42を通して、ビーム路としての荷電粒子線通路43には、励磁コイル41が発生させる磁界に応じた磁場が生じる。
一方、図1に示した対物レンズ温度検出部35に該当する温度センサ54は、磁路42に形成された検知孔55を介して、その検知片がコイル位置固定部53に当接させて設けられている。すなわち、本実施例では、温度センサ54は、コイル位置固定部53の温度を検出することによって、磁路42に伝達される、電子レンズ40における発熱源の励磁コイル41が実装された励磁コイルボビン46の温度を検出する。
温度センサ54により検出されるコイル位置固定部53の温度は、温度検出信号として、対物レンズ温度管理部30の対物レンズ温度制御部31に出力供給される。対物レンズ温度制御部31は、温度センサ54からの温度検出信号を随時取り込み、その温度検出信号によるコイル位置固定部53の温度に基づき、発熱源である励磁コイルボビン46に実装された励磁コイル41の発熱を磁路42に伝達することになるコイル位置固定部53の温度を、磁路42の目標温度にするため、温媒循環パイプ51を流れる温媒、冷媒循環パイプ52を流れる冷媒それぞれについての加熱量、冷却量に関する制御信号を生成し、加熱・冷却制御部32に供給する。この加熱量、冷却量に関する制御信号としては、例えば、温媒供給源,冷媒供給源それぞれが生成する温媒,冷媒の温度指示や供給量指示が該当する。加熱・冷却制御部32は、対物レンズ温度制御部31から供給される加熱量,冷却量に関する制御信号に基づいて、対物レンズ加熱部36,対物レンズ冷却部37の温媒供給源,冷媒供給源それぞれを制御作動し、コイル位置固定部53と共に励磁コイル41と磁路42との間に介在し、発熱源である励磁コイル41、及びこの励磁コイル41の熱を磁路42に伝達する非磁性体金属覆い48を加熱,冷却して、励磁コイル41の温度、及びこの励磁コイル41の熱が伝達される磁路42の温度を、磁路42の変形や変位による画像ボケや視野位置のドリフトの影響の少ない非常に安定した目標温度に保つようにする。
図示の例では、対物レンズ温度制御部31は、より具体的に、非磁性体金属覆い温度制御部として、励磁コイル41の熱が伝達される磁路42の温度を、励磁コイル41の発熱によらず、磁路42の変形や変位による画像ボケや視野位置のドリフトの影響の少ない試料観察条件に応じた非常に安定した目標温度にするため、コイル位置固定部53と共に励磁コイル41と磁路42との間に介在する非磁性体金属覆い48の目標設定温度を決定する。
そして、対物レンズ温度制御部31は、非磁性体金属覆い48の温度をその決定した目標設定温度にするため、温媒循環パイプ51を流れる温媒,冷媒循環パイプ52を流れる冷媒それぞれの、決定した非磁性体金属覆い48の目標設定温度に対応する温度指示や供給量指示を求め、非磁性体金属覆い48の外周に備えられた温媒循環パイプ51,冷媒循環パイプ52に流す温媒,冷媒の温度やそれぞれの供給量を制御する。
ここで、対物レンズ温度制御部31では、励磁コイル41の温度が伝達される磁路42の温度を磁路42の変形や変位による画像ボケや視野位置のドリフトを起こさない試料観察条件に応じた非常に安定した目標温度にするため、発熱源である励磁コイル41の熱を磁路42に伝達するコイル位置固定部53と共に励磁コイル41と磁路42との間に介在する非磁性体金属覆い48の目標設定温度Tsetを、次のようにして設定する。
対物レンズ温度制御部31は、非磁性体金属覆い48の温度を制御する際の目標とする目標設定温度Tsetの設定を、次の設定条件(i),(ii)の下で行っている。
<目標設定温度Tsetの設定条件>
(i)対物レンズ加熱部36の温媒循環パイプ51による非磁性体金属覆い48の加熱がオフになっている状態。
(ii)対物レンズ冷却部37の冷媒供給源から冷媒循環パイプ52に供給される冷媒の温度及び/又は供給量が設定可能な温度範囲の略中間値付近の温度に設定されている状態。
このような設定条件(i),(ii)の下で、非磁性体金属覆い48の目標設定温度Tsetは、まず、電子レンズ40の装置使用者が頻繁に使用する励磁電流範囲における最大励磁電流を電子レンズ40の励磁コイル41に流して電子レンズ40の磁路42が熱平衡状態を得られているとき、すなわち、図1に示した走査型電子顕微鏡1では、試料観察者が頻繁に使用する試料観察条件の中で、対物レンズ15(電子レンズ40)の励磁コイル41に流れる励磁電流が最大になる試料観察条件が選択されて電子レンズ40の磁路42が熱平衡状態を得られているときの、励磁コイル41から磁路42に伝達される励磁コイル41の発熱で温度が十分に安定している状態での非磁性体金属覆い48の飽和温度Tmax以上に設定される。
かつ、非磁性体金属覆い48の目標設定温度Tsetは、非磁性体金属覆い48、コイル位置固定部53をはじめとする電子レンズ40の各構成部や電子レンズ40の周辺構造の中で、耐熱性が最も低い構成部又は周辺構造の耐熱温度Tsよりも低い温度に設定される。
すなわち、目標設定温度Tsetは、これら飽和温度Tmax、耐熱温度Tsとの間で、
[数1]
Tmax ≦ Tset < Ts …(1)
の関係になる。
ここで、この飽和温度Tmaxは、励磁コイル41に流す励磁電流の大きさがそれぞれ違う試料観察条件の中での頻繁に使用する試料観察条件で、かつその中の励磁電流が最大になる試料観察条件で励磁コイル41から磁路42に伝達される励磁コイル41の発熱で温度が十分に安定している状態での非磁性体金属覆い48の温度なので、予め検証可能な所定温度である。本実施例の電子レンズ40では、この飽和温度Tmaxを、装置使用者が頻繁に使用する励磁電流範囲における励磁電流の大きさの相違、すなわち試料観察者が頻繁に使用する試料観察条件の相違にかかわらず、電子レンズ40の使用時における磁路42の目標温度とする。
本実施例の電子レンズ40では、磁路42の温度をこの目標温度にするため、発熱源である励磁コイル41の熱を磁路42に伝達する非磁性体金属覆い48に、冷媒循環パイプ52及び冷媒供給源からなる対物レンズ冷却部37に加えて、温媒循環パイプ51及び温媒供給源からなる対物レンズ加熱部36を備えていることを特徴とする。
これにより、励磁コイル41に励磁電流が流れているか否かにかかわらず、電子レンズ40の装置使用者が頻繁に使用する励磁電流範囲における最大励磁電流を電子レンズ40の励磁コイル41に流して磁路42が熱平衡状態を得たときの非磁性体金属覆い48の飽和温度Tmax以上の非磁性体金属覆い48の温度を、温媒循環パイプ51を流れる温媒により得られるようになっている。
したがって、走査型電子顕微鏡1では、試料観察作業を開始する際、発熱源である励磁コイル41の熱を磁路42に伝達する非磁性体金属覆い48は、励磁コイル41に励磁電流を流した際に発生する熱だけではなく、対物レンズ加熱部36から、飽和温度Tmax以上の目標設定温度Tsetの熱の伝達を受けることができる。磁路42の温度をいち早くこの目標温度にするため、発熱源である励磁コイル41よりも磁路42に近く、励磁コイル41の熱を磁路42に伝達する非磁性体金属覆い48の温度を、対物レンズ加熱部36によって飽和温度Tmax以上の目標設定温度Tsetにすることができる。
その一方で、本実施例の電子レンズ40では、対物レンズ加熱部36によって非磁性体金属覆い48の温度を飽和温度Tmax以上の目標設定温度Tsetにして磁路42の温度をこの目標温度にする際に、例えば、外気の温度変化等の外乱によって磁路42の温度にオーバーシュートが生じて磁路42の温度が目標温度を超えてしまったような場合でも、冷媒循環パイプ51を流れる冷媒により非磁性体金属覆い48の目標設定温度Tsetを飽和温度Tmaxよりも下げてオーバーシュート分の熱を吸熱できるようにもなっている。
このように、本実施例の電子レンズ40では、磁路42の温度を、対物レンズ加熱部36及び対物レンズ冷却部37それぞれを制御して、非磁性体金属覆い48の温度制御によって直接制御できる。これにより、電子レンズ40に使用する励磁電流の大きさの違い、すなわち試料観察条件の違いにかかわらず、磁路42の温度を熱平衡状態に保ち易くなる。この結果、試料観察条件の変更や外乱による磁路42の温度変化を抑えることができ、磁路42の変形や変位による画像ボケや視野位置のドリフトの影響を抑制して、装置状態が非常に安定した状態で試料観察を行うことができる。また、画像ボケや視野位置のドリフトが収まるまでの安定待ちの必要性やその待ち時間も削減できるので、試料観察のスループットも向上する。
すなわち、従来の電子レンズ40の磁路42の温度制御では、励磁コイル41からの発熱以外の加熱を用いずに、冷却水等による冷却方法のみを用い、磁路42の温度を下げて磁路42の温度を熱平衡状態に保つようにしている。そのため、荷電粒子線装置で使用可能な全励磁電流範囲において、冷却によって磁路42の温度を一定に制御するための目標設定温度Tsetは、励磁電流が低い範囲で制御可能な、比較的低い温度に限られてしまう。この結果、励磁コイル41に流す励磁電流の範囲は、一般的に1〜数A程度の非常に大きい電流まで変化させるため、励磁電流が大きい領域においては、励磁コイル41から発生する熱量が使用する冷却方法の冷却性能を超えてしまい、磁路42の温度を目標設定温度Tsetに制御できなかった。これに対し、本実施例に係る電子レンズ40によれば、対物レンズ加熱部36及び対物レンズ冷却部37をそれぞれ制御して、磁路42の温度を、頻繁に使用する励磁電流範囲における最大励磁電流を電子レンズ40の励磁コイル41に流して電子レンズ40の磁路42が熱平衡状態を得られているときの目標温度に調整するので、励磁電流が小さな範囲でも大きな範囲でも対応できる。
また、本実施例の電子レンズ40では、制御の際における非磁性体金属覆い48の目標設定温度Tsetを、設定条件(i),(ii)の下で、対物レンズ冷却部37のみが冷媒供給源から冷媒循環パイプ52に供給される冷媒の温度及び/又は供給量が設定可能な温度範囲の略中間値付近の温度に設定されている状態で、装置使用者(試料観察者)が頻繁に使用する励磁電流範囲の最大励磁電流を励磁コイル41に流した際や、荷電粒子線装置で頻繁に使用する試料観察条件の中の最大励磁電流を励磁コイル41に流した際の飽和温度Tmax以上とすることで、励磁コイル41の励磁電流が大きい範囲での、対物レンズ冷却部37を使用した非磁性体金属覆い48の冷却による磁路42の温度制御が可能となる。
また、励磁コイル41の励磁電流が小さい範囲では、目標設定温度Tsetに対しては対物レンズ加熱部36を使用した非磁性体金属覆い48の加熱による温度制御ができ、全励磁電流に対して一定の温度制御を行うことが可能である。その際、目標設定温度Tsetが比較的高温での制御となるため、外気温の変化などの外乱に対して制御性がよい。
特に、設定条件(ii)の下で、目標設定温度Tsetを決定することで、励磁電流が大きい場合に外気の温度変化等の外乱による磁路42の温度にオーバーシュートが生じても、目標設定温度Tset付近における対物レンズ冷却部37による電子レンズ40の冷却能力は十分な余裕を持っているため、オーバーシュートに対する対応が可能である。
次に、図1に示した走査型電子顕微鏡1の対物レンズ15に図2に示した電子レンズ40を適用した場合を例に、試料観察作業を開始する際の、対物レンズ温度管理部30による対物レンズ15(電子レンズ40)の温度管理の実施例について説明する。なお、説明にあたっては、試料観察作業が開始される当初は、対物レンズ加熱部36及び対物レンズ冷却部37は、対物レンズ温度管理部30より加熱も冷却もされていないものとする。
走査型電子顕微鏡1では、試料観察条件が設定され、試料観察作業が開始されると、電子光学系制御部20は、設定された試料観察条件に該当する励磁電流を電子レンズ40の励磁コイル41に流す。励磁コイル41及び励磁コイル41を収容した励磁コイルボビン46は、励磁電流の流れによって発熱し、その温度が上昇する。
対物レンズ温度管理部30は、上述した電子光学系制御部20による電子レンズ40励磁電流の制御と並行して、試料観察条件が設定されると、前述した目標設定温度Tsetの設定条件(ii)で、対物レンズ冷却部37の冷媒供給源から冷媒循環パイプ52に冷媒を供給するとともに、前述した目標設定温度Tsetの設定条件(i),(ii)に基づいて決定された非磁性体金属覆い48の目標設定温度Tsetで、対物レンズ加熱部36の温媒供給源から温媒循環パイプ51に温媒を供給する。
この場合、目標設定温度Tsetは、試料観察開始当初は、飽和温度Tmax以上に設定される。この場合、飽和温度Tmaxは、前述した目標設定温度Tsetの設定条件(i),(ii)で、試料観察者が頻繁に使用する試料観察条件の中で、対物レンズ15の励磁コイル41に流れる励磁電流が最大になる試料観察条件が選択されて電子レンズ40の磁路42が熱平衡状態を得られているときの、励磁コイル41から磁路42に伝達される励磁コイル41の発熱で温度が十分に安定している状態での非磁性体金属覆い48の温度を指す。すなわち、試料観察者が頻繁に使用する試料観察条件の中で、対物レンズ15の励磁コイル41に流れる励磁電流が最大になる試料観察条件で発熱している励磁コイル41を、前述した目標設定温度Tsetの設定条件(ii)で冷却した熱平衡状態の温度に該当する。
したがって、目標設定温度Tsetは、試料観察開始当初は、設定条件(i),(ii)で、頻繁に使用する試料観察条件の中で、対物レンズ15の励磁コイル41に流れる励磁電流が最大になる試料観察条件が選択された場合の、磁路42の変形や変位による画像ボケや視野位置のドリフトの影響が抑制された、装置状態が非常に安定した状態の磁路42の目標温度よりも高い温度が設定される。
その後は、対物レンズ温度検出部35から供給される非磁性体金属覆い48の温度に係る検出信号を参照しながら、励磁コイル41の発熱により励磁コイル41及び励磁コイルボビン46の温度が上昇するとともに、非磁性体金属覆い48の温度が磁路42の目標温度、すなわち設定条件(i),(ii)の下での飽和温度Tmaxに近づくにつれて、目標設定温度Tsetは、当初の対物レンズ15の目標温度よりも大きな値が減少されて更新され、最終的には非磁性体金属覆い48の温度が磁路42の目標温度に維持されるように、目標設定温度Tsetは調整される。
これにより、対物レンズ15の磁路42は、励磁電流による励磁コイル41の発熱だけによって励磁コイル41及び励磁コイルボビン46の温度が対物レンズ15の目標温度に達するよりも前に、目標設定温度Tsetに基づく加熱によって先に磁路42の目標温度以上になった非磁性体金属覆い48から目標設定温度Tsetの熱の伝達を受けることができるので、磁路42の目標温度での熱平衡状態をいち早く実現することができる。
また、仮に、目標設定温度Tsetに基づいて調整された非磁性体金属覆い48の温度が磁路42の目標温度に対してオーバーシュートを生じてしまったような場合であっても、設定条件(ii)で作動制御されている対物レンズ冷却部37によって冷却することができるので、磁路42の目標温度での熱平衡状態を維持することができる。
その後、対物レンズ15の励磁コイル41及び励磁コイルボビン46の温度が励磁コイル41の発熱によるだけで磁路42の目標温度で安定すると、対物レンズ温度管理部30は、対物レンズ加熱部36における温媒供給源から温媒循環パイプに供給する温媒の温度及び供給量を、設定された試料観察条件と、試料観察者が頻繁に使用する試料観察条件の中で、対物レンズ15の励磁コイル41に流れる励磁電流が最大になる試料観察条件との間での励磁コイル41の発熱量の差分を補充するような温度及び供給量に維持する。
以上は、対物レンズ15(電子レンズ40)の温度管理の一例であって、温度管理の実施例は上述したような対物レンズ温度検出部35の検出出力を基にしたフィードバック方式に限定されないが、いずれの温度管理方法を採用しても、励磁電流による励磁コイル41の発熱だけによって励磁コイル41及び励磁コイルボビン46の温度が対物レンズ15の磁路42の目標温度に達するのを待つのではなく、励磁コイル41の発熱をコイル位置固定部53を介して磁路42に伝達する非磁性体金属覆い48の目標設定温度Tsetを、随時、対物レンズ温度検出部35から供給される非磁性体金属覆い48の温度に係る検出信号に応じて決定して制御することにより、磁路42の目標温度での熱平衡状態をいち早く実現することができる。
本実施例は、以上、述べたとおりであるが、電子レンズ40における磁路42の磁路管断面部44を含む形状・構造や、励磁コイルボビン46の角管断面部47を含む形状・構造は、図示した形状・構造に限定されるものではなく、したがって、対物レンズ加熱部36の温媒循環パイプ51や対物レンズ冷却部37の冷媒循環パイプ52の励磁コイルボビン46に対しての配置も図示の例に限定されない。
特に、上記説明では、非磁性体金属覆い48が熱の伝熱性が高い材料で形成されていることから、対物レンズ加熱部36の温媒循環パイプ51や対物レンズ冷却部37の冷媒循環パイプ52は、上記説明では、非磁性体金属覆い48に当接し、非磁性体金属覆い48を加熱又は冷却するものとして説明したが、上記説明では樹脂製であるとして説明したコイル位置固定部53を、仮に非磁性体金属覆い48と同様な伝熱性を有するもので構成すれば、コイル位置固定部53を非磁性体金属覆い48として構成することもできる。この場合、図2に示す構成例おいては、非磁性体金属覆い48とコイル位置固定部53としての非磁性体金属覆いとの2種類の非磁性体金属覆いが励磁コイルボビン46の外周に備えられていることになる。そして、温媒循環パイプ51や冷媒循環パイプ52は、非磁性体金属覆い48に当接している必要もない。さらには、非磁性体金属覆い48とコイル位置固定部53としての非磁性体金属覆いとを一体化して構成し、非磁性体金属覆い48を省略することも可能になる。このようなことから、対物レンズ加熱部36を構成する温媒循環パイプ51や対物レンズ冷却部37を構成する冷媒循環パイプ52の配置も、図示の例に限定されず、適宜、磁路42の構成に合わせて変更可能である。
[実施例2]
図3は、本発明の第2の実施例に係る電子レンズの断面構成図である。
図3に示した電子レンズ40の断面図も、図2と同様に、図1において、電子銃12で生成された電子ビーム2の光軸oを含む面に沿った対物レンズ15の断面図に該当する。また、その説明に当たっては、図1に示した走査型電子顕微鏡、及び図2に示した第1の実施例に係る電子レンズ40と同一又は同様な構成部については、同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施例に係る電子レンズ40は、図2に示した第1の実施例の電子レンズ40に対して、発熱源である励磁コイル41に近接する非磁性体金属覆い48の温度制御を行うだけでなく、磁路42の温度制御も独立して行える構成になっている。
そのため、本実施例に係る電子レンズ40を対物レンズ15に適用した走査電子型電子顕微鏡1では、対物レンズ温度管理部30の対物レンズ温度制御部31は、非磁性体金属覆い用の温度制御部に加えて磁路温度制御部としても機能し、加熱・冷却制御部32は、非磁性体金属覆い用の加熱・冷却制御部に加えて磁路用の加熱・冷却制御部としても機能する構成になっている。また、対物レンズ15には、対物レンズ温度検出部35として非磁性体金属覆い用の温度検出部に加えて磁路用の温度検出部が備えられ、対物レンズ加熱部36として非磁性体金属覆い用の加熱部に加えて磁路用の加熱部が備えられ、対物レンズ冷却部37として非磁性体金属覆い用の冷却部に加えて磁路用の冷却部が備えられている。
本実施例では、電子レンズ40は、非磁性体金属覆い48の外面だけでなく、磁路42の枠体部分の外面にも、磁路42の周方向に沿って、磁路用温媒循環パイプ61及び磁路用冷媒循環パイプ62が備えられた構造になっている。
本実施例では、磁路42の磁路管断面部44を磁路42の周方向に沿って眺めて、磁路42の周面上面側の磁路枠体部分42uには、内周側に冷媒循環パイプ62ui、外周側に温媒循環パイプ61uoが、磁路42の周面下面側の磁路枠体部分42dには、内周側に温媒循環パイプ61di、外周側に冷媒循環パイプ62doが、磁路42の外周面側の磁路枠体部分42oには、上方側に冷媒循環パイプ62ou、下方側に温媒循環パイプ61odが、それぞれ設けられた構成になっている。
すなわち、図示の例では、磁路42の周面上面側の磁路枠体部分42u,外周面側の磁路枠体部分42o,周面下面側の磁路枠体部分42dといった一連の、磁路42の磁路管断面部44の外面に沿って、温媒循環パイプ61と冷媒循環パイプ62とが交互に配置された形態になっている。
また、非磁性体金属覆い48の外面に設けられた非磁性体金属覆い用温媒循環パイプ51や非磁性体金属覆い用冷媒循環パイプ52との関係においても、上下方向、内外方向で、非磁性体金属覆い用温媒循環パイプ51には磁路用冷媒循環パイプ62が、非磁性体金属覆い用冷媒循環パイプ52には磁路用温媒循環パイプ61が、互いに対応するように配置されている。
これにより、磁路用温媒循環パイプ61及び磁路用冷媒循環パイプ62が枠体部分の外面に備えられた磁路42は、この磁路用温媒循環パイプ61と磁路用冷媒循環パイプ62との交互配置や、非磁性体金属覆い48の非磁性体金属覆い用温媒循環パイプ51若しくは非磁性体金属覆い用冷媒循環パイプ52との対応配置によって、偏熱しにくく、全体として一様に加熱又は冷却され易くなっている。
そして、温媒循環パイプ61(61uo,61di,61od),冷媒循環パイプ62(62ui,62do,62ou)は、図示せぬ温媒供給源,冷媒供給源に連通接続されて、温媒供給源,冷媒供給源からそれぞれ温度管理された温媒,冷媒がそれぞれ供給量(流量)を管理されて供給されるようになっている。
温媒循環パイプ61は、温媒供給源とともに磁路加熱部を構成する。冷媒循環パイプ62は、冷媒供給源とともに磁路冷却部を構成する。磁路温度検出部に該当する温度センサ64は、磁路42の枠体部分の外面に設けられている。
温度センサ64により検出される磁路42の枠体部分の温度は、温度検出信号として、対物レンズ温度管理部30の対物レンズ温度制御部31における磁路温度制御部に出力供給される。磁路温度制御部は、温度センサ64からの温度検出信号を随時取り込み、磁路42の枠体部分の温度を対物レンズ15の磁路42の目標温度にするため、温媒循環パイプ61を流れる温媒,冷媒循環パイプ62を流れる冷媒それぞれについての加熱量,冷却量に関する制御信号を生成し、加熱・冷却制御部32における磁路加熱・冷却制御部に供給する。磁路加熱・冷却制御部は、磁路温度制御部から供給される加熱量,冷却量に関する制御信号に基づいて、磁路加熱部,磁路冷却部の温媒供給源,冷媒供給源それぞれを制御作動し、磁路42の枠体部分を加熱,冷却して、磁路42の枠体部分の温度を、磁路42の変形や変位による画像ボケや視野位置のドリフトの影響の少ない非常に安定した目標温度に保つようにする。
ここで、対物レンズ温度制御部31の非磁性体金属覆い用温度制御部及び磁路温度制御部では、非磁性体金属覆い48の温度及び磁路42の枠体部分の温度を、磁路42の変形や変位による画像ボケや視野位置のドリフトを起こさない非常に安定した目標温度にするため、非磁性体金属覆い48の温度及び磁路42の枠体部分の温度をそれぞれ制御する際の目標とする目標設定温度Tset,Tset'の設定を、次の設定条件(i'),(ii')の下で設定する。
<目標設定温度Tset,Tset'の設定条件>
(i')対物レンズ加熱部36の非磁性体金属覆い用温媒循環パイプ51による非磁性体金属覆い48の加熱、及び磁路用温媒循環パイプ61による磁路42の枠体部分の加熱が、共にオフになっている状態。
(ii')対物レンズ冷却部37の非磁性体金属覆い用冷媒供給源から非磁性体金属覆い用冷媒循環パイプ52に供給される冷媒の温度及び/又は供給量、及び磁路用冷媒供給源から磁路用冷媒循環パイプ62に供給される冷媒の温度及び/又は供給量が、共に設定可能な温度範囲の略中間値付近の温度に設定されている状態。
このような設定条件の下で、例えば、磁路42の枠体部分の目標設定温度Tset'の場合は、まず、電子レンズ40の装置使用者が頻繁に使用する励磁電流範囲における最大励磁電流を電子レンズ40の励磁コイル41に流したときに、すなわち図1に示した走査型電子顕微鏡1では、試料観察者が頻繁に使用する試料観察条件の中で、対物レンズ15(電子レンズ40)の励磁コイル41に最大の励磁電流が流れる試料観察条件が選択され、この試料観察条件で電子レンズ40の磁路42が熱平衡状態を得たときの、励磁コイル41の発熱が伝達されている磁路42の枠体部分の温度が十分に安定している状態での磁路42の枠体部分の飽和温度Tmax'以上に設定される。
かつ、磁路42の枠体部分の目標設定温度Tset'は、非磁性体金属覆い48、コイル位置固定部53をはじめとする電子レンズ40の各構成部や電子レンズ40の周辺構造の中で、耐熱性が最も低い構成部又は周辺構造の耐熱温度Tsよりも低い温度に設定される。
すなわち、磁路42の枠体部分の目標設定温度Tset'は、これら飽和温度Tmax'、耐熱温度Tsとの間で、
[数2]
Tmax' ≦ Tset' < Ts …(2)
の関係になる。
なお、非磁性体金属覆い48の目標設定温度Tsetの場合も、設定条件(i'),(ii')の下で、実施例1で説明した場合と同様にして設定する。
本実施例の電子レンズ40によれば、例えば、試料観察途中で当初設定した試料観察条件に変更して励磁電流が急速に変化する場合等、非磁性体金属覆い48の温度制御のみで追従しきれない励磁コイル41の発熱変化が磁路42に伝熱されてしまうような場合には、それによる磁路42の温度変化を磁路42の枠体部分の温度制御により補償し、磁路温度を一定に制御することができる。
[実施例3]
図4は、本発明の第3の実施例に係る電子レンズの断面構成図である。
図4に示した電子レンズ40の断面図も、図2と同様に、図1において、電子銃12で生成された電子ビーム2の光軸oを含む面に沿った対物レンズ15の断面図に該当する。また、その説明に当たっては、図1に示した走査型電子顕微鏡、及び図2に示した第1の実施例に係る電子レンズ40と同一又は同様な構成部については、同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施例に係る電子レンズ40は、図2に示した第1の実施例の電子レンズ40に対して、発熱源である励磁コイル41に近接する非磁性体金属覆い48の温度制御だけでなく、励磁コイル41が巻回されて実装されている励磁コイルボビン46のコイル巻装空間に励磁コイル用の冷媒循環パイプ72を備えることで、電子レンズ40の発熱源である励磁コイル41の冷却を効率的に行い、試料観察時における消費電力を抑えるようにした電子レンズ40の一実施例である。
本実施例では、冷媒循環パイプは、非磁性体金属覆い48の外面に設けられた冷媒循環パイプ52に加えて、励磁コイルボビン46の角管断面部47に現れるコイル巻装空間にも、励磁コイル用の冷媒循環パイプ72が備えられた構造になっている。図示の例では、冷媒循環パイプ72は、角管断面部47に現れるコイル巻装空間の断面中央部にその周りを励磁コイル41で取り囲まれるように、励磁コイルボビン46の枠体周方向に沿って延びるように配置されている。冷媒循環パイプ72は、冷媒循環パイプ52と同様、図示せぬ冷媒供給源に連通接続され、図1に示した走査電子型電子顕微鏡1では、これら冷媒循環パイプ52、冷媒供給源とともに、対物レンズ冷却部37を構成する。これに伴い、走査電子型電子顕微鏡1の対物レンズ温度管理部30では、対物レンズ温度制御部31は、非磁性体金属覆い用の温度制御部に加えて励磁コイル用の温度制御部としても機能し、加熱・冷却制御部32は、非磁性体金属覆い用の加熱・冷却制御部に加えて励磁コイル用の冷却制御部としても機能する構成になっている。なお、図示の例では、冷媒循環パイプ72は一本のパイプとしたが、その断面形状、本数、コイル巻装空間における配置は、図示の例に限定されるものではない。
これにより、励磁コイルボビン46のコイル巻装空間に備えられた冷媒循環パイプ72の表面全体から励磁コイル41の発熱を吸熱することができ、励磁コイル41自体の温度変化を抑制できるので、非磁性体金属覆い48の外面に設けられた温媒循環パイプ51及び冷媒循環パイプ52による磁路42の目標温度での熱平衡状態の達成を、より正確かつ効率的に行うことができる。
さらに、本実施例の電子レンズ40を図1に示した走査電子型電子顕微鏡1の対物レンズ15に適用した場合は、励磁コイル41の温度上昇を抑えることができるので、温度上昇に伴う励磁コイル41の抵抗値増加を小さくすることができ、荷電粒子線装置としての電力消費を抑制できる。
具体的には、励磁コイル41に励磁電流を流すことで、励磁コイル41で消費されるエネルギーP[W]は、励磁電流をI[A]、励磁コイル41の抵抗をR[Ω]、温度上昇による励磁コイル41の抵抗値増加量ΔR[Ω]とすると、次式のようになる。
[数3]
P ∝I2×(R+ΔR) …(3)
本実施例の電子レンズ40では、励磁コイル41を効率的に冷却することで、(3)式における励磁コイル41の抵抗値増加量ΔRを低く抑えることができ、試料観察時における走査電子型電子顕微鏡1の消費電力を低減することが可能となる。
本実施例の電子レンズ40では、発熱源である励磁コイル41の効率的な冷却制御が可能になるため、非磁性体金属覆い用の冷媒循環パイプ52については、例えばパイプ本数を減らす等してその冷却能力を下げることができる。その結果、減少したパイプ部分の余ったスペースを用いて、励磁コイルボビン46のコイル巻装空間の拡大をはかり、励磁コイル41のターン数(巻回数)を増やすことも可能になる。また、励磁コイル41自体も、より径が小さく抵抗の大きいコイル線材を選定できるようになるため、励磁コイル41のターン数(巻回数)を増やすことも可能である。
ここで、励磁コイル用の冷媒循環パイプ72により冷却する励磁コイル41の温度は、対物レンズ温度制御部31の励磁コイル用温度制御部の制御により変化させても、一定温度のままでもよい。
励磁コイル用温度制御部の制御により冷媒循環パイプ72により励磁コイル41の温度を変化させる場合、対物レンズ温度制御部31の非磁性体金属覆い用温度制御部及び励磁コイル用温度制御部では、非磁性体金属覆い48の温度及び励磁コイル41の温度を、磁路42の変形や変位による画像ボケや視野位置のドリフトを起こさない非常に安定した目標温度にするため、それぞれの目標設定温度Tset,Tset"を、次の設定条件(i"),(ii")の下で設定する。
<目標設定温度Tset,Tset"の設定条件>
(i")対物レンズ加熱部36の温媒循環パイプ51による非磁性体金属覆い48の加熱がオフになっている状態。
(ii")対物レンズ冷却部37の冷媒供給源から非磁性体金属覆い用冷媒循環パイプ52に供給される冷媒の温度及び/又は供給量、及び冷媒供給源から励磁コイル用冷媒循環パイプ72に供給される冷媒の温度及び/又は供給量が、共に設定可能な温度範囲の略中間値付近の温度に設定されている状態。
このような設定条件の下で、例えば、励磁コイル41の目標設定温度Tset"の場合は、まず、電子レンズ40の装置使用者が頻繁に使用する励磁電流範囲における最大励磁電流を電子レンズ40の励磁コイル41に流したときに、すなわち図1に示した走査型電子顕微鏡1では、試料観察者が頻繁に使用する試料観察条件の中で、対物レンズ15(電子レンズ40)の励磁コイル41に最大の励磁電流が流れる試料観察条件が選択され、この試料観察条件で電子レンズ40の磁路42が熱平衡状態を得たときの、励磁コイル41の発熱が十分に安定している状態での励磁コイル41の飽和温度Tmax"以上に設定される。
かつ、励磁コイル41の目標設定温度Tset"は、非磁性体金属覆い48、コイル位置固定部53をはじめとする電子レンズ40の各構成部や電子レンズ40の周辺構造の中で、耐熱性が最も低い構成部又は周辺構造の耐熱温度Tsよりも低い温度に設定される。
すなわち、励磁コイル41の目標設定温度Tset"は、これら飽和温度Tmax"との間で、
[数4]
Tmax" ≦ Tset" < Ts …(4)
の関係になる。
なお、非磁性体金属覆い48の目標設定温度Tsetの場合も、設定条件(i"),(ii")の下で、実施例1で説明した場合と同様にして設定する。
本実施例の電子レンズ40によれば、図2に示した第1の実施例に対し、発熱源としての励磁コイル41の温度を低く抑えることができ、励磁コイル41自体の温度変化を抑制できるので、非磁性体金属覆い48の外面に設けられた温媒循環パイプ51及び冷媒循環パイプ52による磁路42の目標温度での熱平衡状態の達成を、より正確かつ効率的に行うことができる。
[実施例4]
図5は、本発明の第4の実施例に係る電子レンズの断面構成図である。
図5に示した電子レンズ40の断面図も、図2と同様に、図1において、電子銃12で生成された電子ビーム2の光軸oを含む面に沿った対物レンズ15の断面図に該当する。また、その説明に当たっては、図1に示した走査型電子顕微鏡、及び図2に示した第1の実施例に係る電子レンズ40と同一又は同様な構成部については、同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
本実施例に係る電子レンズ40は、図2に示した第1の実施例の電子レンズ40に対して、発熱源である励磁コイル41に近接する非磁性体金属覆い48の外面には、非磁性体金属覆い用の温媒循環パイプ81のみを備え、励磁コイルボビン46の角管断面部47に現れるコイル巻装空間に励磁コイル用の冷媒循環パイプ82が備えられた構造になっている。
また、図1に示した対物レンズ温度検出部35に該当する温度センサ84は、磁路42に形成された検知孔85を介して、その検知片が非磁性体金属覆い48の外面に当接させて設けられている。すなわち、本実施例では、温度センサ84は、非磁性体金属覆い48の温度を検出することによって、磁路42に伝達される、電子レンズ40における発熱源の励磁コイル41が実装された励磁コイルボビン46の温度を検出する。
これらに伴い、走査電子型電子顕微鏡1の対物レンズ温度管理部30では、対物レンズ温度制御部31は、非磁性体金属覆い用の温度制御部に加えて励磁コイル用の温度制御部としても機能し、加熱・冷却制御部32は、非磁性体金属覆い用の加熱制御部、及び励磁コイル用の冷却制御部として機能する構成になっている。なお、図示の例では、冷媒循環パイプ82は一本のパイプとしたが、その断面形状、本数、コイル巻装空間における配置は、図示の例に限定されるものではない。
これにより、非磁性体金属覆い48の外面には、温循環パイプと冷媒循環パイプとが共存しないので、非磁性体金属覆い48の外面における温度の偏りを減らすことができる。
ここで、励磁コイル用の冷媒循環パイプ82により冷却する励磁コイル41の温度は、対物レンズ温度制御部31の励磁コイル用温度制御部の制御により変化させても、一定温度のままでもよい。
励磁コイル用温度制御部の制御により冷媒循環パイプ82により励磁コイル41の温度を変化させる場合、対物レンズ温度制御部31の非磁性体金属覆い用温度制御部及び励磁コイル用温度制御部では、非磁性体金属覆い48の温度及び励磁コイル41の温度を、磁路42の変形や変位による画像ボケや視野位置のドリフトを起こさない非常に安定した目標温度にするため、それぞれの目標設定温度Tset,Tset"を、次の設定条件(i'''),(ii''')の下で設定する。
<目標設定温度Tset,Tset"の設定条件>
(i''')対物レンズ加熱部36の温媒循環パイプ81による非磁性体金属覆い48の加熱がオフになっている状態。
(ii''')対物レンズ冷却部37の冷媒供給源から励磁コイル用冷媒循環パイプ82に供給される冷媒の温度及び/又は供給量が、共に設定可能な温度範囲の略中間値付近の温度に設定されている状態。
このような設定条件の下で、目標設定温度Tset,Tset"は、例えば、励磁コイル41の目標設定温度Tset"の場合は、まず、電子レンズ40の装置使用者が頻繁に使用する励磁電流範囲における最大励磁電流を電子レンズ40の励磁コイル41に流したときに、すなわち図1に示した走査型電子顕微鏡1では、試料観察者が頻繁に使用する試料観察条件の中で、対物レンズ15(電子レンズ40)の励磁コイル41に最大の励磁電流が流れる試料観察条件が選択され、この試料観察条件で電子レンズ40の磁路42が熱平衡状態を得たときの、励磁コイル41の発熱が十分に安定している状態の非磁性体金属覆い48の飽和温度Tmax及び励磁コイル41の飽和温度Tmax"や、電子レンズ40の各構成部や電子レンズ40の周辺構造の中で耐熱性が最も低い構成部又は周辺構造の耐熱温度Tsを基に、同様にして設定される。
本実施例の電子レンズ40によれば、図4に示した第3の実施例の場合と同様に、発熱源としての励磁コイル41の温度を低く抑えることができるので、励磁コイル41自体の温度変化を抑制でき、また、非磁性体金属覆い48の外面における温度の偏りも生じないので、非磁性体金属覆い48の外面に設けられた温媒循環パイプ81と、励磁コイルボビン46のコイル巻装空間に設けられた冷媒循環パイプ82とによって、磁路42の目標温度での熱平衡状態の達成をより正確かつ効率的に行うことができる。
以上、本発明に係る電子レンズ及び荷電粒子線装置の実施の形態並びに実施例について説明したが、電子レンズ40の発熱源である励磁コイル41に流れる励磁電流が変化しても、対物レンズ加熱部36及び対物レンズ冷却部37を用いて、電子レンズ40の磁路42の温度を変えることなく、磁路42の変形を防ぐものであるならば、本発明に係る具体的な構成及び機能については、て様々な変更が可能である。
1 走査型電子顕微鏡、 2 電子ビーム、 3 試料、 10 本体、
11 SEMカラム、 12 電子銃、 13 集束レンズ、
14 偏向コイル、 15 対物レンズ、 16 試料室、
17 試料ステージ、 20 電子光学系制御部、
30 対物レンズ温度管理部、 31 対物レンズ温度制御部、
32 加熱・冷却制御部、 35 対物レンズ温度検出部、
36 対物レンズ加熱部、 37 対物レンズ冷却部、 40 電子レンズ、
41 励磁コイル、 42 磁路、 43 荷電粒子線通路、
44 磁路管断面部、 45 ギャップ、 46 励磁コイルボビン、
47 角管断面部、 48 非磁性体金属覆い、
51 温媒循環パイプ(非磁性体金属覆い用)、
52 冷媒循環パイプ(非磁性体金属覆い用)、
53 コイル位置固定部、 54 温度センサ、 55 検知孔、
61 温媒循環パイプ(磁路枠体部分用)、
62 冷媒循環パイプ(磁路枠体部分用)、
64 温度センサ、 72 冷媒循環パイプ(励磁コイル用)
81 温媒循環パイプ(非磁性体金属覆い用)、
82 冷媒循環パイプ(励磁コイル用)、 84 温度センサ、
85 検知孔、

Claims (4)

  1. 荷電粒子ビームを集束させるための磁場をビーム路に発生させる電子レンズであって、
    励磁電流の流れにより磁界を生成する励磁コイルと、
    前記ビーム路に荷電粒子ビームを集束させる磁場を発生させるための磁路と、
    前記励磁コイルと前記磁路との間に介在して前記励磁コイルを覆う非磁性体金属覆いと、
    前記非磁性体金属覆いを加熱する加熱部と、
    前記非磁性体金属覆い及び/又は前記励磁コイルを冷却する冷却部と、
    励磁電流が流れる前記励磁コイルの発熱に基づく電子レンズの温度を検出する温度検出部と、
    を備えていることを特徴とする電子レンズ。
  2. 前記加熱部は、試料観察の開始当初は、使用頻度が高い励磁電流を励磁コイルに流した場合に前記磁路が熱平衡状態となる温度以上で、前記電子レンズの各構成部の耐熱温度よりも低い温度からなる目標設定温度で、前記非磁性体金属覆いを加熱する
    ことを特徴とする請求項1に記載の電子レンズ。
  3. 荷電粒子ビームを集束させるための磁場をビーム路に発生させる電子レンズを有し、試料上に前記電子レンズにより集束した荷電粒子ビームを照射する荷電粒子線装置であって、
    前記電子レンズは、
    励磁電流の流れにより磁界を生成する励磁コイルと、
    前記ビーム路に荷電粒子ビームを集束させる磁場を発生させるための磁路と、
    前記励磁コイルと前記磁路との間に介在して前記励磁コイルを覆う非磁性体金属覆いと、
    前記非磁性体金属覆いを加熱する加熱部と、
    前記非磁性体金属覆い及び/又は前記励磁コイルを冷却する冷却部と、
    励磁電流が流れる前記励磁コイルの発熱に基づく電子レンズの温度を検出する温度検出部と、
    を備え、
    試料観察の際、前記磁路の温度を予め設定された試料観察条件に対応した目標温度にすべく、前記加熱部に目標設定温度を逐次設定して、当該目標設定温度及び前記温度検出部の検出信号を基に前記加熱部及び前記冷却部を作動制御する制御手段と
    を備えていることを特徴とする荷電粒子線装置。
  4. 前記制御手段は、試料観察の開始当初は、使用頻度が高い励磁電流を前記励磁コイルに流した場合に前記磁路が熱平衡状態となる温度以上で、前記電子レンズの各構成部の耐熱温度よりも低い温度からなる目標設定温度を前記加熱部に設定して、前記加熱部及び前記冷却部を作動制御する
    ことを特徴とする請求項3に記載の荷電粒子線装置。
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