JP2015007459A - 電気自動車の変速制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 変速段の切換時に走行用の電動モータをシンクロさせるときに、オーバーシュート現象を避け、シンクロ時間の短縮を図ると共に、ギヤ間のバックラッシュに起因する異音を低減することができる電気自動車の変速制御装置を提供する。【解決手段】 この電気自動車の変速制御装置は、現変速段クラッチ解除手段82と、シンクロ制御手段83と、目標変速段クラッチ係合手段85とを有する。シンクロ制御手段83は、電動モータの実回転数と目標変速段の目標回転数間の差回転数と、この差回転数の変化量に基づき、電動モータを回転数制御するときに用いるPI制御ゲインを調整するゲイン調整部83aを有する。ゲイン調整部83aは、ファジイ制御でPI制御ゲインを調整する。【選択図】 図9

Description

この発明は、電動モータの回転数を変速して車輪へ伝達する電気自動車の変速制御装置に関し、特にファジー制御等で制御ゲインを調整することにより、電動モータをシンクロさせるシンクロ時間の短縮と、ギヤ間のバックラッシュに起因する異音の低減を図る技術に関する。
電気自動車の駆動装置として、電動モータ、変速機、および差動装置(ディファレンシャル)を介し駆動輪に動力を伝達する車両用モータ駆動装置がある。変速機の変速段の切換には、例えば2ウェイ型のローラクラッチが用いられる。
この車両用モータ駆動装置を使用すると、走行条件に応じて変速機の変速段を切り換えることにより、駆動および回生時において、効率の高い回転数およびトルク領域で電動モータを使用することが可能となる。また、適切な変速段とすることで、高速走行時の変速機の回転部材の回転速度が下がり、変速機の動力損失が低減して車両のエネルギ効率を向上させることができる。このような車両用モータ駆動装置を用いた電気自動車が提案されている(特願2011−227666)。
特開2004−116467号公報
前述の従来技術では、変速中、現変速段のクラッチが解除された後、電動モータのシンクロを行う。そこで、シンクロ時間を短縮するために、電動モータを急加減速させる必要がある。
シフトダウン:電動モータを急加速させる必要がある。
シフトアップ:電動モータを急減速させる必要がある。
なお、シンクロとは、電動モータの出力を増減することによって、電動モータの回転数を目標変速段の回転数に一致させるための接近動作である。
前記の電動モータのシンクロにおいて、電動モータの回転数制御に使用するPIゲイン(P:Proportional(比例), I:Integral(積分))は定数である。PIゲインを低く設定した場合は、シンクロ時間が増加する問題が生じる。そのために、PIゲインを大きく設定すると、目標変速段の回転数(シンクロの目標回転数)をオーバーしてしまう現象、いわゆるオーバーシュートが発生する。
さらには、外輪の影響、例えば負荷変動、電圧変動などで、制御系の状態を乱すことで、実測回転数は目標変速段の回転数付近を上下に振動する現象を発生する。
これらの現象には、歯車間のバックラッシュに起因する異音が発生する問題があり、これらの現象を抑制するためには、PIゲインを各々の運転状況によって調整することが必要である。
他の従来技術として、エンジン用バリアブル・ノズル・タービン(VNT)のフィードバック制御システムにおいて、フィードバック制御用PIDゲイン調整方法が提案されている(特許文献1)。この方法は、目標値に対する実値のオーバーシュート値が所定値を超えた場合に、偏差から求められるフィードバックPIDゲインの演算から小さい値に変更する方法である。
この方法は、オーバーシュートをある程度は抑えることができるが、オーバーシュートを十分に避けることはできない。
この発明の目的は、変速段の切換時に走行用の電動モータをシンクロさせるときに、電動モータの制御ゲインを調整することで、オーバーシュート現象を避け、シンクロ時間の短縮を図ると共に、ギヤ間のバックラッシュに起因する異音を低減することができる電気自動車の変速制御装置を提供することである。
この発明の電気自動車の変速制御装置は、互いに変速比が異なり共通の走行用の電動モータ3により回転駆動される複数の変速段のギヤ列LA,LBと、出力軸8と前記各変速段のギヤ列LA,LBとの間にそれぞれ介在した各変速段の2ウェイ型のクラッチ16A,16Bと、これら各クラッチ16A,16Bの断続の切換を行う変速比切換機構40とを有する変速機5を備え、前記変速比切換機構40は、前記クラッチ16A,16Bの内輪18A,18Bと外輪23A,23B間の係合子(20)の動作を規制する保持器21A,21Bに連結されて回転する摩擦板の、前記外輪23A,23Bへの接触と離間とを変速切換アクチュエータ47により切り換える機構である電気自動車を制御する装置であって、次の各手段を備える。
目標変速段への変速指令に応答して、前記変速切換アクチュエータ47を動作させ、現変速段のクラッチ16A,16Bの係合を解除する現変速段クラッチ解除手段82と、
現変速段のクラッチの係合の解除後に、前記電動モータ3を回転数制御することにより前記目標変速段の前記クラッチの外輪23A,23Bと内輪18A,18Bの回転数が同期するようにシンクロさせるシンクロ制御手段83と、
前記目標変速段の摩擦板35A,35Bと外輪23A,23Bを前記変速切換アクチュエータ47の動作により当接させ、前記電動モータ3を回転数制御することにより、目標変速段のクラッチ16A,16Bを係合させる目標変速段クラッチ係合手段85とを備え、
前記シンクロ制御手段83は、前記電動モータ3をシンクロさせる時に、前記電動モータ3の実回転数を検出手段(66,108)で検出してこの実回転数と目標変速段の目標回転数間の差回転数を求め、かつ一定タイマー間隔で前記差回転数の変化量を求め、この求めた差回転数および差回転数の変化量を元に、前記電動モータ3の前記回転数制御に使用するPI制御またはPID制御の制御ゲインを、定められた制御規則により求めて調整する制御ゲイン調整部83aを有する。
前記クラッチは、例えば、前記入力軸7および前記ギヤ列LA,LBにそれぞれ接続された内輪18A,18Bと外輪23A,23Bの間に複数の係合子(20)が介在しこれら係合子(20)の動作を前記内輪18A,18Bに対する保持器21A,21Bの周方向位置により規制することで前記内輪18A,18Bと外輪23A,23B間の回転の断続を行う形式であり、前記係合子(20)にはローラまたはスプラグが用いられる。ローラを用いた場合、前記内輪18A,18Bの外周面がカム面とされる。
この構成によると、現変速段のクラッチ16A,16Bの係合を解除した後、シンクロ制御手段83は、電動モータ3を回転数制御することにより目標変速段のクラッチ16A,16Bの外輪23A,23Bと内輪18A,18Bの回転数が同期するようにシンクロさせる。電動モータ3をシンクロさせるとき、シンクロ制御手段83のゲイン調整部83aは、前記電動モータの実回転数を検出手段(66,108)で検出してこの実回転数と目標変速段の目標回転数間の差回転数を求め、かつ一定タイマー間隔で前記差回転数の変化量を求め、この求めた差回転数および差回転数の変化量を元に、前記電動モータの前記回転数制御に使用するPI制御またはPID制御の制御ゲインを、定められた制御規則により求めて調整する。このように、時々刻々と変化する実回転数と目標変速段の目標回転数間の差回転数と、その差回転数の変化量を元に、制御ゲインを最適設定することで、電動モータ3のオーバーシュート現象を避け、シンクロ時間の短縮を図ると共に、歯車間のバックラッシュに起因する異音の低減を図ることができる。
なお、前記ゲイン調整部83aは、前記のようにして制御ゲインを調整する他に、車速と電動モータの回転数とに基づき制御ゲインを調整しても、前記オーバーシュートの抑制、シンクロ時間の短縮、ギヤ例の異音の低減が図れるが、前記のように実回転数と目標変速段の目標回転数間の差回転数と、その差回転数の変化量を元に、制御ゲインを調整することで、より一層適切に制御ゲインを調整することができる。
特に、実回転数と目標変速段の目標回転数間の差回転数だけを用いることではなく、その差回転数の変化量も用いることを特徴とする。変化量を用いると、微分成分(未来)が操作量に含まれることになる。そこで、目標回転数のオーバーシュートを事前把握することで、回転数のオーバーシュートをしないように、より一層適切に制御ゲインを調整することができる。
この発明において、前記シンクロ制御手段83の前記制御ゲイン調整部83aは、前記差回転数と前記差回転数の変化量とを入力関数として用い、前記制御ゲインをファジー制御より前記制御規則Rによって求め、その求めた制御ゲインに調整するようにしても良い。
ファジー制御によることで、時々刻々と、あるいは不測に変化する実回転数に応じて、より適切な値に前記制御ゲインを調整することができる。
前記ファジー制御に用いる前記制御規則Rは、車速の定間隔毎に定められていて、現在の車速に応じた制御規則Rを用いるようにしても良い。例えば、車速の5km間隔毎に定める。同じ制御規則Rで制御ゲインを求めても、車速が大きく異なると適切な値とならない場合がある。車速の定間隔毎に前記制御規則Rを定めることで、より一層適切な制御ゲインが得られる。
前記のようにファジー制御する場合に、前記シンクロ制御手段の前記制御ゲイン調整部は、前記電動モータ実測回転数と目標変速段の目標回転数との差回転数E、およびこの差回転数Eの変化量ECを一定のタイマー定間隔で値を取り込み、これら差回転数Eおよび差回転数の変化量ECにつき、それぞれの変動範囲|E_max|、|EC_max|に対する割合として正規化の処理を行った後に、前記ファジー制御の入力変数として使用しても良い。
正規化処理を行うことで、ファジー制御における制御ゲインの演算が簡単に行える。
この発明の電気自動車の変速制御装置において、前記シンクロ制御手段の前記制御ゲイン調整部は、前記制御ゲインにおける、比例制御ゲインKpと積分制御ゲインKiの値につき、一定の範囲を設けても良い。
すなわち、前記差回転数およびその変化量が変動しても、比例制御ゲインKpと積分制御ゲインKi値が一定の値を保つように、前記比例制御ゲインKpと積分制御ゲインKiの範囲を設けても良い。
差回転数やその変化量がある程度小さな場合や、車速等によっては、前記比例ゲインKpおよび積分ゲインKiを一定に保つ方が、制御が安定する場合がある。そのような場合は、これらのゲインKp,Kiを一定に保つことが好ましい。
この発明の電気自動車の変速制御装置は、互いに変速比が異なり共通の走行用の電動モータにより回転駆動される複数の変速段のギヤ列と、出力軸と前記各変速段のギヤ列との間にそれぞれ介在した各変速段の2ウェイ型のクラッチと、これら各クラッチの断続の切換を行う変速比切換機構とを有する変速機を備え、前記変速比切換機構は、前記クラッチの内輪と外輪間の係合子の動作を規制する保持器に連結されて回転する摩擦板の、前記外輪への接触と離間とを変速切換アクチュエータにより切り換える機構である電気自動車を制御する装置であって、目標変速段への変速指令に応答して、前記変速切換アクチュエータを動作させ、現変速段のクラッチの係合を解除する現変速段クラッチ解除手段と、現変速段のクラッチの係合の解除後に、前記電動モータを回転数制御することにより前記目標変速段の前記クラッチの外輪と内輪の回転数が同期するようにシンクロさせるシンクロ制御手段と、前記目標変速段の摩擦板と外輪を前記変速切換アクチュエータの動作により当接させ、前記電動モータを回転数制御することにより、目標変速段のクラッチを係合させる目標変速段クラッチ係合手段とを備え、前記シンクロ制御手段は、前記電動モータをシンクロさせる時に、前記電動モータの実回転数を検出手段で検出してこの実回転数と目標変速段の目標回転数間の差回転数を求め、かつ一定タイマー間隔で前記差回転数の変化量を求め、この求めた差回転数および差回転数の変化量を元に、前記電動モータの前記回転数制御に使用するPI制御またはPID制御の制御ゲインを、定められた制御規則により求めて調整する制御ゲイン調整部とを有するため、変速段の切換時に走行用の電動モータをシンクロさせるときに、オーバーシュート現象を避け、シンクロ時間の短縮を図ると共に、ギヤ間のバックラッシュに起因する異音を低減することができる。
前記制御ゲイン調整部が、前記差回転数と前記差回転数の変化量とを入力関数として用い、前記制御ゲインをファジー制御によって求め、その求めた制御ゲインに調整するようにした場合は、時々刻々と、あるいは不測に変化する実回転数に応じて、より適切な値に前記制御ゲインを調整することができる。
この発明の一実施形態に係る変速制御装置を適用する電気自動車の概略図である。 同変速制御装置を適用するハイブリッド車の概略図である。 図1,図2に示す車両の車両用モータ駆動装置の断面図である。 同車両用モータ駆動装置における変速比切換機構の断面図である。 同車両用モータ駆動装置を制御する制御システムを概略示すブロック図である。 同車両用モータ駆動装置のインバータ装置の電気回路図である。 同車両のレバー操作パネルの説明図である。 同車両用モータ駆動装置のインバータ装置のブロック図である。 同電気自動車の変速制御装置の概念構成を示すブロック図である。 同変速制御装置による制御手順の概要を示すフローチャートである。 同変速制御装置における変速時と、電動モータを駆動させるトルクと、各動作時間との関係の概略特性を示す図である。 従来技術を用いてシフトダウンを行う場合の電動モータの回転数変化を示す図である。 この発明の一実施形態に係る変速制御装置を用いてシフトダウンを行う場合の電動モータの回転数変化を示す図である。 従来技術を用いてシフトアップを行う場合の電動モータの回転数変化を示す図である。 同実施形態に係る変速制御装置を用いてシフトアップを行う場合の電動モータの回転数変化を示す図である。 同変速制御装置の制御ゲイン調整部が行うファジイ制御における前件部のEとECのメンバシップ関数を示すグラフである。 同ファジイ制御における比例制御ゲインKpの制御規則を示す説明図である。 同ファジイ制御における積分制御ゲインKiの制御規則を示す説明図である。 同ファジイ制御における後件部の前記比例制御ゲインKpと積分制御ゲインKiのメンバシップ関数を示すグラフである。 図4の一部の拡大断面図である。 図4のXXI −XXI 線に沿った断面図である。 図4のXXII−XXII線に沿った断面図である。 図4のXXIII −XXIII 線に沿った断面図である。 同車両用モータ駆動装置のシフト機構を示す断面図である。 図4の変速比切換機構におけるローラクラッチ等の分解斜視図である。
以下、この発明の実施形態にかかる電気自動車の変速制御装置を説明する。図1は、左右一対の前輪1を車両用モータ駆動装置Aで駆動される駆動輪とし、左右一対の後輪2を従動輪とした電気自動車EVを示す。
図2は、左右一対の前輪1をエンジンEによって駆動される主駆動輪とし、左右一対の後輪2を車両用モータ駆動装置Aで駆動される補助駆動輪としたハイブリッド自動車HVを示す。ハイブリッド自動車HVには、エンジンEの回転を変速するトランスミッションTと、トランスミッションTから出力された回転を左右の前輪1に分配するディファレンシャルDとが設けられている。この実施形態の変速制御装置は、図1または図2の車両用モータ駆動装置Aの制御に適用される。
図3に示すように、車両用モータ駆動装置Aは、走行用の電動モータ3と、電動モータ3の出力軸4の回転を変速して出力する変速機5と、その変速機5から出力された回転を図1に示す電気自動車EVの左右一対の前輪1に分配し、または、図2に示すハイブリッド車の左右一対の後輪2に分配するディファレンシャル6とを有する。
変速機5は、次のように複数段の変速比を有する平行軸常時噛合型変速機とされている。この変速機5は、変速段数が2段であって、図3に示すように、互いに変速比が異なる複数(この例では2列)の変速段のギヤ列LA,LBと、電動モータ3の出力軸であるモータ軸4に連結された入力軸7と前記各変速段のギヤ列LA,LBにそれぞれ介在し断続の切換が可能な各変速段の2ウェイ型のクラッチ16A,16Bと、これら各クラッチ16A,16Bの断続の切換を行う変速比切換機構40とを有する。クラッチ16A,16Bは、それぞれ係合子としてローラ20を用いたローラクラッチが適用されているが、係合子としてスプラグを用いたスプラグ型クラッチを適用してもよい。この例では、以後、クラッチ16A,16Bをそれぞれローラクラッチ16A,16Bと表記して説明する。
変速機5および変速比切換機構40については、ここでは変速制御装置の理解に必要な範囲で簡単に説明し、変速制御方法および変速制御装置の説明の後に、詳細に説明する。
変速機5は、モータ軸4の回転が入力される入力軸7と、入力軸7に対して間隔をおいて平行に配置された出力軸8と、上記各ギヤ列LA,LBとを有する平行軸常時噛合型変速機である。1速ギヤ列LAの入力ギヤ9Aおよび2速ギヤ列LBの入力ギヤ9Bが入力軸に一体に設けられ、1速ギヤ列LAの出力ギヤ10Aおよび2速ギヤ列LBの出力ギヤ10Bが出力軸8の外周に回転自在に設置されている。これら各出力ギヤ10A,10Bと出力軸8の間に、前記ローラクラッチ16A,16Bが介在させてある。
各ローラクラッチ16A,16Bは、図21に示す2速段のローラクラッチ16Bの例で説明するように、外周面が多角形状とされた内輪18Bの外周の平面状の各カム面19と外輪23Bの内周の円筒面間に設けられた各楔状空間Sにローラ20が介在する。楔状空間Sは、円周方向の両側が狭まり、円周方向の中央が広がり部分となる。各ローラクラッチ16A,16Bは、各ローラ20が楔状空間Sの狭まり部分に係合することで接続状態となり、保持器21Bにより各ローラ20を楔状空間Sの広がり部分に位置させることで切断状態となる構成である。
変速比切換機構40は、図4に示すように、ローラクラッチ16A,16Bの保持器21A,21Bに連結されて回転する環状の摩擦板35A,35Bの外輪23A,23Bへの接触と離間とを、変速切換アクチュエータ47によるシフト部材であるシフトフォーク45の進退によって切り換える機構である。シフト機構41は、変速比切換機構40のう
ちの、摩擦板35A,35Bを動作される機構部分であり、変速切換アクチュエータ47とシフトフォーク45により構成される。
変速切換アクチュエータ47は、シフト用の電動モータであり、その出力軸47aの回転を、送りねじ機構48によりシフトロッド46の直動運動に変換し、シフトロッド46に取り付けたシフトフォーク45を軸方向に移動させる。シフトフォーク45の移動により、シフトスリーブ43およびシフトリング34が移動する。シフトリング34が摩擦板35A,35Bを、クラッチ外輪23A,23B(出力ギヤ10A,10B)の側面に押し付ける。これにより、カム面付きの内輪18A,18Bと外輪23A,23Bとが相対回転する場合に、摩擦板35A,35Bと外輪23A,23Bとの間に摩擦力(トルク)が作用し、保持器21A,21Bを介してローラ20を楔状空間Sの狭まり部分に押し込むことができる。
なお、保持器21A,21Bは内輪18A,18Bに対して回転自在であるが、スイッチばね22A,22B(図20)により、内輪18A,18Bのカム面19(図21)の中央、つまり楔状空間Sの広がり部分である中立位置とポケット21aの円周方向中央とが一致するように付勢される。摩擦板35A,35Bは、上記スイッチばね22A,22Bにより、保持器21A,21Bと共に回転可能なように連結されている。
図5は、車両用モータ駆動装置Aを制御する制御システムを示すブロック図である。この制御システムは、統合ECU60、変速ECU61、およびインバータ装置62を有する。統合ECU60、変速ECU61、およびインバータ装置62の3者間の信号転送はCAN通信(コントローラー・エリア・ネットワーク)で行われる。
統合ECU60は、車載全ての電子制御装置間の協調制御を行う電子制御装置であり、アクセルペダル63のアクセル開度センサ63a、ブレーキペダル91のブレーキ開度センサ91a、ステアリングホイール92の操舵角センサ92a、変速段を手動で切り替えるシフトレバー93のレバー位置センサ93aに接続されている。統合ECU60は、これらアクセル開度センサ63a、ブレーキ開度センサ91a、操舵角センサ92a、レバー位置センサ93aの検出したアクセル開度信号、ブレーキ開度信号、操舵角信号、およびレバー位置信号を、変速ECU61に送信する機能、並びにこれらの4種の信号および他の各種のセンサ等の信号によって前記協調制御を行う機能を備える。
変速ECU61は、統合ECU60から送信された各種信号や、直接に変速ECU61に入力された各種信号により、自動変速の制御を行う電子制御装置であり、各種入力信号に基づいて変速判断を行ない、変速機5の変速切換アクチュエータ47とインバータ装置62とに指令を出す。
変速ECU61は、次の各機能(1)〜(7)を備える。
(1)車速度センサ(車速検出部)94および加速度センサ95から、車速と車両の加減速度の検出信号を受け、統合ECU60からアクセル開度信号を受け取り、自動変速の判断を行う。
(2)急ブレーキと判断した場合は、新たな自動変速制御と回生制御を行わない。
(3)急ハンドルと判断した場合は、新たな自動変速を行わない。
(4)統合ECU60からシフトレバー93の位置信号を受け取り、電動モータ3のクリープ制御を実施する。
(5)手動変速機能を備えている。
(6)変速切替アクチュエータ47のシフト位置を、変速機5に付けられたシフト位置センサ68から検出する機能とインバータ装置62から電動モータ3の回転数を取得する機能を備えている。
(7)インバータ装置62にトルク指令または回転数指令と変速指令を送信する機能、および変速機5に付けられた変速切替アクチュエータ47を駆動する機能を備えている。
この他に、変速機5内の作動油の温度を測定する油温センサ67を備えている。
この実施形態の変速制御装置は、変速ECU61による自動変速モードおよび手動変速モードの各変速モードにおける制御に用いられる。変速ECU61は、図9に示す各種の機能達成手段を有しているが、これらの手段については後に説明する。
図5において、インバータ装置62は、バッテリ69から直流電流が供給されて、電動モータ3に交流のモータ駆動電力を供給するとともに、その供給電力を変速ECU61からの信号に基づいて制御する。インバータ装置62には、電動モータ3に設けられた回転角度センサ66から、電動モータ3の回転数を示す信号が入力される。
インバータ装置62は、電動モータ3を駆動する機能、および回転角度センサ66から電動モータ3の回転角信号を得る機能を備える。インバータ装置62は、図6に示すように、インバータ71と、このインバータ71を制御するインバータ制御回路72とを有する。インバータ71は、U,V,W相の上側アームスイッチング素子Up,Vp,Wpと、U,V,W相の下側アームスイッチング素子Un,Vn,Wnの接続点に電動モータ3の各相(U,V,W相)の端子を接続したものである。インバータ71には、3相の交流電力を出力するように、インバータ制御回路72から各スイッチング素子Up,Vp,Wp,Un,Vn,Wnに開閉指令が与えられる。インバータ装置62は、電力を回生するために電動モータ3のトルクを負とする制御を行う機能も備えている。
電動モータ3は、3相の通電により、転流を行っている。電動モータ3の駆動のためには大電流が必要であり、インバータ71の前記各スイッチング素子Up,…にはスイッチング半導体素子が用いられている。
図7は、シフトレバー操作パネル75の構成を示す。運転手がシフトレバー93(図5)を手動操作することによって、周知の例と同様に、図7のP(パーキング)、R(リバース)、N(ニュートラル)、D(ドライブ)、2速(セカンド)、1速(ロウ)の各レンジを切り換えることができる。シフトレバー操作パネル75は、このように切り換えられるどのレンジに現在あるかを示す表示装置である。シフトレバー操作パネル75におけるレンジ選択情報は統合ECU60に入力される。1速レンジは1速段状態である。なお、シフトレバー操作パネル75は、タッチパネル形式の入力手段を兼ねて、シフトレバー93に代えて運転者により操作される操作手段としても良い。
図8は、電動モータ3と、インバータトルク制御、インバータ回転数制御のブロック図を示す。このインバータ制御回路72は、トルク制御と回転数制御とに切り換えて制御可能としてあり、トルク制御と回転数制御とも、フィードバック制御で、かつベクトル制御である。変速時はトルク制御と回転数制御を行い、変速時以外のときはトルク制御を行う。詳細な説明は省略する。
同図のインバータ制御回路72の構成を、トルク制御方法の概要と共に説明する。
インバータ制御回路72は、アクセル信号(トルク指令)と電動モータ回転数を取得して、電流指令部101で電流指令値を生成する。電流指令部101には、トルク制御時は、アクセル信号から変速ECU61のトルク指令部110で生成されたトルク指令が入力される。なお、図8における変速ECU61のトルク指令部110および速度指令部106は、変速ECU61の構成要素のうち、トルク指令および速度指令を出力する手段を総称して示している。
電力変換部62aは、PWMデューティVu,Vv,Vwに従ってインバータ71をPWM制御し、電動モータ3を駆動する。
同図のインバータ制御回路72による回転数制御を説明する。
速度指令部106は、インバータ制御回路72に対して速度指令を与える手段であり、変速ECU61に設けられている。速度指令部106は、具体的には、変速ECU61で設定された目標回転数に対して、速度指令をインバータ制御回路72へ送る。また、電動モータ3の回転子角度を回転角度センサ66から取得し、実際の電動モータ3の回転数を速度計算部108で算出する。速度指令部106の速度指令と、速度計算部108で算出した実際の電動モータ回転数の差分を比較部109で求め、その差分に対して、制御部107でPI制御(比例積分制御)またはPID制御(比例積分微分制御)を行い、制御量をトルク指令として、電流指令部101に入力する。回転数制御時、この速度制御部73の速度指令に基づくトルク指令が、トルク指令部110からのトルク指令に代えて電流指令部101に入力される。
なお、図8において、インバータ制御回路72は、速度制御部73と、トルク制御部74とに分けて説明している。
トルク制御部74は、インバータ制御回路72のうち、トルク制御により電動モータ3の制御の機能を果たす部分であり、図8の電流指令部101、電流PI制御部102、2相・3相変換部103、3相・2相変換部104、および速度計算部108を含む。
速度制御部73は、インバータ制御回路72のうち、速度制御により電動モータ3の制御の機能を果たす部分であって、比較部109と、制御部107とを有し、トルク制御部74の電流制御部101へトルク指令を与え、その後の制御をトルク制御部74で行わせる。
次に、電気自動車における車両用モータ駆動装置の変速制御装置につき、図9のブロック図を参照して説明する。制御対象となる電気自動車は、図1〜図8と共に前述した電気自動車である。
この電気自動車の変速制御装置は、変速ECU61に、変速指令生成手段81、現変速段クラッチ解除手段82、シンクロ制御手段83、目標変速段クラッチ係合手段85、および回転数・トルク制御切換手段86を備える。変速ECU61は、自動変速時以外の電動モータ3の制御はトルク制御として、トルク指令をインバータ制御装置62へ出力し、変速時にトルク制御と回転数制御を切換える。
変速指令生成手段81は、アクセル開度信号、車速の検出値、および車両の加減速度から、定められた規則に従って目標変速段への変速指令を生成する。この変速指令は変速ECU61が出す。
現変速段クラッチ解除手段82は、目標変速段への変速指令に応答して、変速切換アクチュエータ47によりシフト部材45を動作させ、現変速段の摩擦板35A,35Bと外輪23A,23Bの当接を解除し、トルク制御により電動モータ3のトルクを除荷して現変速段のローラクラッチ16A,16Bの係合を解除する。
シンクロ制御手段83は、電動モータ3を回転数制御することにより目標変速段のローラクラッチ16A,16Bの外輪23A,23Bと内輪18A,18Bの回転数が同期するようにシンクロさせる。
目標変速段クラッチ係合手段85は、目標変速段の摩擦板35A,35Bと外輪23A,23Bを当接させ、電動モータ3を回転数制御することにより、目標変速段のローラクラッチ16A,17Bを係合させる。
回転数・トルク制御切換手段86は、電動モータ3の制御を回転数制御からトルク制御に切換えて電動モータ3のトルクを入力する。
これら変速指令生成手段81、現変速段クラッチ解除手段82、シンクロ制御手段83、目標変速段クラッチ係合手段85、および回転数・トルク制御切換手段86は、それぞれ、図10の各ステップS1,S2,S3,S4,S5の処理を行う機能を有する。
図10は、変速制御方法の概要を示すフローチャートである。実行手順を説明する。
例えば、車両のイグニッションスイッチ等をオンすることで本処理が開始する。本処理開始後、ステップS1において、アクセル開度、車速、車両の加減速度を検出して、変速ECU61が目標変速段への変速指令を出す。次に、ステップS2に移行し、前記目標変速段への変速指令に応答して、変速切換アクチュエータ47によりシフト部材45を動作させ、電動モータ3のトルクを除荷して現変速段のローラクラッチ16A,16Bの係合を解除する(現変速段クラッチ解除過程)。
前記現変速段クラッチ解除過程により現変速段のローラクラッチ16A,16Bの係合を解除した後、ステップS3において、電動モータ3の回転数を回転数制御するときに用いるPI制御ゲインを、車速とモータ回転数とに基づき調整する(シンクロ制御過程、ゲイン調整過程)。
次に、ステップS4では、目標変速段の摩擦板35A,35Bと外輪23を当接させ、電動モータ3を回転数制御することにより、目標変速段のローラクラッチ16A,16Bを係合させる(目標変速段クラッチ係合過程)。その後、ステップS5において、回転数・トルク制御切換手段86は、電動モータ3の制御を回転数制御からトルク制御に切換える。
前記シンクロ制御手段83は、電動モータ3をシンクロさせる時に、前記電動モータ3の前記回転数制御に使用するPI制御またはPID制御の制御ゲインを、定められた制御規則により求めて調整する制御ゲイン調整部83aを有する。この制御ゲイン調整部83aは、電動モータ3をシンクロさせる時に、電動モータ3の実回転数を前記回転角センサ66および速度計算手段108からなる検出手段で検出してこの実回転数と目標変速段の目標回転数間の差回転数を求め、かつ一定タイマー間隔で前記差回転数の変化量を求め、この求めた差回転数および差回転数の変化量を元に、前記制御ゲインを調整する。制御ゲイン調整部83aは、ファジー制御部であり、前記差回転数と前記差回転数の変化量とを入力関数として用い、前記制御ゲインをファジー制御より前記制御規則によって求め、その求めた制御ゲインに調整する。ファジー制御の具体的な内容は後に説明する。
なお、前記ゲイン調整部83aにより求める制御ゲインは、シンクロ時の電動モータ回転数のオーバーシュートの抑制、シンクロ時間の短縮、および前記ギヤ列LA,LBのギヤ間のバックラッシュに起因する異音の低減を行うように、制御ゲイン求めるようにする。前記制御ゲイン調整部83aにより求める制御ゲインは、さらに、外乱の影響で制御系の状態が乱されることによる実測回転数の変動が、目標変速段の回転数付近を上下に振動する現象を抑制する作用についても生じさせる値とすることが好ましい。
図11は、この変速制御装置における変速時に電動モータ3を駆動させるトルクと、各動作時間との概略特性を示す図である。変速ECU61は、車両がDレンジ(図7)で走行時に、自動変速判断を行い、変速機5の変速切換アクチュエータ47とインバータ装置62に指令を出す。
この変速制御装置における電気自動車の変速制御方法において、電動モータ3を駆動させる動作は主に下記の動作(1)→動作(5)になっている。
動作(1)→動作(5)における電動モータトルクの出力状態について説明する。
t0→t1間(動作(1)):車両が現変速段走行トルクで走行している。
現変速段のローラクラッチが正方向に締結している状態で、トルク制御により、電動モータ3を駆動している。このとき電動モータ3のトルクは、変速機5および差動装置6を介して駆動輪に伝達されている。
t1→t2間(動作(2)):変速ECU61における現変速段クラッチ解除手段82が、現変速段のクラッチを解除させる。
t2→t3間(動作(3)):変速ECU61におけるシンクロ制御手段83が、電動モータ3をシンクロさせる。
t3→t4間(動作(4)):変速ECU61における目標変速段クラッチ係合手段85が、目標変速段のクラッチを締結させる。
t4→(動作(5)):車両が目標変速段走行トルクで走行している。
目標変速段のローラクラッチが正方向に締結している状態で、トルク制御により、電動モータ3を駆動している。このとき電動モータ3のトルクは、変速機5および差動装置6を介して駆動輪に伝達されている。
図12は、従来技術を用いてシフトダウンを行う場合の電動モータの回転数変化を示す図である。図11の動作(3)において、従来技術により電動モータをシンクロさせる場合の、電動モータの回転数の変化図である。
t0→t1:電動モータをシンクロさせる前の回転数であり、車速に即した現変速段での回転数で、電動モータを回転させている。
t1→t2:電動モータの回転数を目標変速段の回転数に一致させるため、電動モータの回転数を回転数制御により増加させる。シンクロ時間を短縮させるため、回転数制御に使用するPI制御のゲインを大きく設定する(PIゲインは定数である)。操作は、電動モータの回転数を増加させるため、トルク指令値として、正となる。
t2→t3:上記のPI制御ゲインを大きく設定することで、電動モータの回転数が目標変速段の目標回転数を上回ってしまう(オーバーシュート)。オーバーシュート後の電動モータの回転数の変動によって、歯車間のバックラッシュに起因する異音が生じ易くなる。
t3→:外乱の影響で( 例えば:負荷変動、電圧変動など) 、制御系の状態を乱すことで実測回転数は目標変速段の回転数付近を上下に振動する現象が発生する。
図13は、実施形態に係る変速制御装置を用いてシフトダウンを行う場合の電動モータ3の回転数変化、つまり図11の動作(3)において、実施形態に係る技術により電動モータ3をシンクロさせる場合の、電動モータ回転数の変化図である。
t0→t1:電動モータをシンクロさせる前の回転数であり、車速に即した現変速段での回転数で、電動モータを回転させている。
t1→t2:PI制御の制御ゲインをファジー制御より調整することで、シンクロ時間を短縮する動作である。
t2→:電動モータのシンクロがオーバーシュートせず完了し、目標変速段の回転数と同じ回転数で、電動モータを回転させている。オーバーシュートしないことで、回転数の変動が抑えられ、歯車間のバックラッシュに起因する異音が生じにくくなる。さらに実測回転数は目標変速段の回転数付近を上下に振動する現象の抑制もできた。
図14は、従来技術を用いてシフトアップを行う場合の電動モータの回転数変化を示す図11の動作(3)において、従来技術により電動モータをシンクロさせる場合の、電動モータ回転数の変化図である。
t0→t1:電動モータをシンクロさせる前の回転数であり、車速に即した現変速段での回転数で、電動モータを回転させている。
t1→t2:電動モータの回転数を目標変速段の回転数に一致させるため、電動モータの回転数を回転数制御により、増加させる。シンクロ時間を短縮させるため、回転数制御に使用するP1制御のゲインを大きく設定する(PIゲインは定数である) 。操作は回転数を減少させるため、トルク指令値として、負となる。
t2→t3:上記のP1制御ゲインを大きく設定することで、電動モータの回転数が目標変速段の目標回転数を上回って、オーバーシュートしてしまう。オーバーシュート後の回転数変動によって、歯車間のバックラッシュに起因する異音が生じ易くなる。
t3→:外乱の影響で(例えば:負荷変動、電圧変動など)、制御系の状態を乱すことで実測回転数は目標変速段の回転数付近を上下に振動する現象が発生する。
図13は、この実施形態を用いてシフトアップを行う場合の電動モータの回転数変化を示す。図11の動作(3)において、この実施形態により電動モータ3をシンクロさせる場合の、電動モータ回転数の変化図である。
t0→t1:電動モータをシンクロさせる前の回転数であり、車速に即した現変速段での回転数で、電動モータを回転させている。
t1→t2:PI制御ゲインをファジー制御より調整することで、シンクロ時間を短縮する動作である。
t2→:電動モータのシンクロがオーバーシュートせず完了し、目標変速段の回転数と同じ回転数で、電動モータを回転させている。オーバーシュートしないことで、回転数の変動が抑えられ、歯車間のバックラッシュに起因する異音が生じ難くなる。さらに実測回転数は目標変速段の回転数付近を上下に振動する現象の抑制もできた。
次に、前記ゲイン調整部83aが行うファジー制御につき説明する。
この実施形態では、次に示すMandaniが提唱した「min-max 重心法」を用いており、計算手順を下記にて示す。「min-max 重心法」につき、一般的な説明をすると、次の1〜3の過程で最終出力を求める。
1. 制御規則を決定する構成は、前件部+後件部になっており、If-then規則とされる。前件部はIfで示される条件であり、後件部は前件部の条件を充足する場合の結果であり、thenで示される。
Figure 2015007459
この実施形態では、電動モータ3をシンクロさせる時に、シンクロ制御手段83は、回転数制御による電動モータ3を駆動させている。このとき、シンクロ制御手段83のゲイン調整部83aは、次のようにPI制御ゲインを求め、その求めたPI制御ゲインにより制御部107(図8)の制御ゲインに変更する。
すなわち、PI制御ゲインを電動モータ回転A_ROT数と、
目標変速段の目標回転数O_ROT間の差回転数
E= O_ROT-A_ROTと、
差回転数Eの変化量EC=(現サンプル時刻のE )-(一つ前サンプル時刻のE)
を基に、ファジー制御により調整することで、シンクロ時間の短縮や、外乱の影響で実測回転数の振動の抑制を実現する。
調整手順の詳細を下記に示す。
ステップ1:差回転数Eと変化量ECを取得し、次のようにそれぞれの変動範囲|E_max|、|EC_max|に対する割合として正規化処理を行う。
取得したEとECの範囲:
Eの変動範囲 : E ∈[-E_max, E_max]
ECの変動範囲: EC∈[-EC_max, EC_max]
正規化処理:
E = E / |E_max|
EC = EC / |EC_max|
ステップ2:正規化処理後の差回転数Eと変化量ECに対し、比例制御ゲインKpと積分制御ゲインKiを定める制御規則Rを用いて演算する。
KpのIf-then 規則を下記に示す。
Rule 1: If E = NB, EC = NB then Kp = B
Rule 2: If E = NB, EC = NM then Kp = B
… … …
Rule 49: If E = PB, EC = PB then Ki = B
制御規則Rの決定は台上変速試験や実車変速試験のデータを基に、作成したものである。また、車速の定間隔毎に制御規則Rを作成しており、現在の車速に該当する制御規則Rを用いるようにする。例えば、5km/hごとに、制御規則Rを作成している。
ステップ3:図16に示す差回転数Eと変化量EC のメンバシップ関数に対し、min-max重心法を用い、If-then規則より前件部の適合度を求める。(前記の一般的な説明における式(2)に従う)
図示のように三角型メンバシップ関数であり、他の形状のものを使用しても良い。例えば、台形型、釣鐘型、S型などのメンバシップ関数を使用すること。
Figure 2015007459
ステップ4:図19に示す比例制御ゲインKpと積分制御ゲインKiのメンバシップ関数に対し、min-max重心法より後件部における、各ゲインKp、Kiの適合度を求め、出力を計算する。(前記の一般的な説明における式(3)に従う)
Figure 2015007459
(値の範囲:[0, 1])
ここまでの後件部におけるKpとKiの出力値は、正規化の値である。
ステップ5:比例制御ゲインKpと積分制御ゲインKi の出力値を、次のように後処理し、最終制御値を計算する。
KpとKi値の範囲設定:
Kp∈[Kp_min, Kp_max]
Ki∈[Ki_min, Ki_max]
KpとKiの最終の出力値の計算:
Kp = (Kp - Kp_min)/(Kp_max - Kp_min)
Ki = (Ki - Ki_min)/(Ki_max - Ki_min)
シンクロ制御手段83は、ゲイン調整部83aによって、このようにファジー制御により制御ゲインを調整することにより、オーバーシュートせず、回転数の変動が抑えられ、歯車間のバックラッシュに起因する異音が生じ難くなる。さらに実測回転数は目標変速段の回転数付近を上下に振動する現象の抑制もできる。
次に、図3,4の車両用モータ駆動装置の詳細を、図3、4、図20〜図25と共に説明する。
図3において、モータ軸4は、入力軸7と同軸上に直列に配置されており、ハウジング11に固定された電動モータ3のステータ12で回転駆動される。入力軸7は、ハウジング11内に組込まれた対向一対の軸受13により回転可能に支持され、入力軸7の軸端はスプライン嵌合によってモータ軸4に接続されている。出力軸8は、ハウジング11内に組み込まれた対向一対の軸受14により回転可能に支持されている。
1速入力ギヤ9Aと2速入力ギヤ9Bは軸方向に間隔をおいて配置され、入力軸7を中心として入力軸7と一体に回転するように入力軸7に固定されている。1速出力ギヤ10Aと2速出力ギヤ10Bも軸方向に間隔をおいて配置されている。
図4に示すように、1速出力ギヤ10Aは、出力軸8を貫通させる環状に形成され、軸受15を介して出力軸8で支持されており、出力軸8を中心として出力軸8に対して回転可能となっている。同様に、2速出力ギヤ10Bも、軸受15を介して出力軸8で回転可能に支持されている。
1速入力ギヤ9Aと1速出力ギヤ10Aは互いに噛合しており、その噛合によって1速入力ギヤ9Aと1速出力ギヤ10Aの間で回転が伝達するようになっている。2速入力ギヤ9Bと2速出力ギヤ10Bも噛合しており、その噛合によって2速入力ギヤ9Bと2速出力ギヤ10Bの間で回転が伝達するようになっている。2速入力ギヤ9Bと2速出力ギヤ10Bの減速比は、1速入力ギヤ9Aと1速出力ギヤ10Aの減速比よりも小さい。
1速出力ギヤ10Aと出力軸8の間には、1速出力ギヤ10Aと出力軸8の間でトルクの伝達と遮断の切換えを行なう1速の2ウェイローラクラッチ16Aが組込まれている。また、2速出力ギヤ10Bと出力軸8の間には、2速出力ギヤ10Bと出力軸8の間でトルクの伝達と遮断の切換えを行なう2速の2ウェイローラクラッチ16Bが組込まれている。
1速の2ウェイローラクラッチ16Aと2速の2ウェイローラクラッチ16Bは、左右対称の同一構成なので、2速の2ウェイローラクラッチ16Bを以下に説明し、1速の2ウェイローラクラッチ16Aについては、2速の2ウェイローラクラッチ16Bに対応する部分に同一の符号または末尾のアルファベットBをAに置き換えた符号を付して説明を省略する。
図20〜図22に示すように、2速の2ウェイローラクラッチ16Bは、2速出力ギヤ10Bの内周に設けられた円筒面17と、出力軸8の外周に回り止めした環状の2速カム部材18Bに形成されたカム面19と、カム面19と円筒面17の間に組み込まれたローラ20と、ローラ20を保持する2速保持器21Bと、2速スイッチばね22Bとを有する。カム面19は、円筒面17との間で周方向中央から周方向両端に向かって次第に狭くなる楔状空間Sを形成するような面であり、例えば、図21に示すように円筒面17と対向する平坦面である。
図4、図25に示すように、2速保持器21Bは、ローラ20を収容する複数のポケット21aが周方向に間隔をおいて形成された円筒部24と、円筒部24の一端から径方向内方に延び出す内向きフランジ部25とを有する。内向きフランジ部25の径方向内端は、2速カム部材18Bの外周で周方向にスライド可能に支持され、この周方向のスライドによって、2速保持器21Bは、カム面19と円筒面17の間にローラ20を係合させる係合位置とローラ20の係合を解除する中立位置との間で出力軸8に対して相対回転可能となっている。また、2速保持器21Bの内向きフランジ部25は軸方向両側への移動が規制され、これにより2速保持器21Bが軸方向に非可動とされている。
図21に示すように、各カム面19は、回転中心を含む仮想平面に対して対称に形成され、これにより、各カム面19と円筒面17の間に配置されたローラ20は、正転方向と逆転方向の両方向で係合可能となっている。すなわち、電動モータ3が発生するトルクにより車両を前進させるときは、2速保持器21Bを出力軸8に対して正転方向に相対回転させることにより、2速保持器21Bに保持されたローラ20を、カム面19と円筒面17の間の正転方向側の空間狭まり部分に係合させ、そのローラ20を介して2速出力ギヤ10Bと出力軸8の間で正転方向のトルクを伝達することが可能となっており、一方、電動モータ3が発生するトルクにより車両を後退させるときは、2速保持器21Bを出力軸8に対して逆転方向に相対回転させることにより、2速保持器21Bに保持されたローラ20を、カム面19と円筒面17の間の逆転方向側の空間狭まり部分に係合させ、そのローラ20を介して2速出力ギヤ10Bと出力軸8の間で逆転方向のトルクを伝達することが可能となっている。
図22、図25に示すように、2速スイッチばね22Bは、鋼線をC形に巻いたC形環状部26と、C形環状部26の両端からそれぞれ径方向外方に延出する一対の延出部27,27とを有する。C形環状部26は、2速カム部材18Bの軸方向端面に形成された環状溝であるスイッチばね収容凹部28に嵌め込まれ、一対の延出部27,27は、2速カム部材18Bの軸方向端面に形成された径方向溝29に挿入されている。
径方向溝29は、スイッチばね収容凹部28の内周縁から径方向外方に延びて2速カム部材18Bの外周に至るように形成されている。2速スイッチばね22Bの延出部27は、径方向溝29の径方向外端から突出しており、その延出部27の径方向溝29からの突出部分が、2速保持器21Bの円筒部24の軸方向端部に形成された切欠き30に挿入されている。径方向溝29と切欠き30は同じ幅に形成されている。
延出部27,27は、径方向溝29の周方向で対向する内面と、切欠き30の周方向で対向する内面にそれぞれ接触しており、その接触面に作用する周方向の力によって2速保持器21Bを中立位置に弾性保持している。
すなわち、2速保持器21Bを出力軸8に対して相対回転させて、図22に示す中立位置から周方向に移動させると、径方向溝29に対する切欠き30の位置が周方向にずれるので、一対の延出部27,27の間隔が狭まる方向にC形環状部26が弾性変形し、その弾性復元力によって2速スイッチばね22Bの一対の延出部27,27が径方向溝29の内面と切欠き30の内面を押圧し、その押圧によって2速保持器21Bを中立位置に戻す方向の力が作用するようになっている。
図4に示すように、1速カム部材18Aと2速カム部材18Bの出力軸8に対する回り止めは、スプライン嵌合によって行われている。図20に示すように、1速カム部材18Aのカム面19と2速カム部材18Bのカム面19は同数かつ同位相となっている。また、図4に示すように、1速カム部材18Aと2速カム部材18Bは、出力軸8の外周に嵌合した一対の止め輪31によって軸方向に非可動となっている。図20に示すように、1速カム部材18Aと2速カム部材18Bの間には間座32が組み込まれている。
1速の2ウェイローラクラッチ16Aと2速の2ウェイローラクラッチ16Bは、変速用伝達機構33により選択的に係合することができるようになっている。
変速用伝達機構33は、1速出力ギヤ10A(断面でない部分は図示せず。図24においても同様。)と2速出力ギヤ10Bの間に軸方向に移動可能に設けられたシフトリング34と、1速出力ギヤ10Aとシフトリング34の間に組み込まれた2速摩擦板35Bとを有する。
ここで、1速摩擦板35Aと2速摩擦板35Bは、左右対称の同一構成なので、2速摩擦板35Bを以下に説明し、1速摩擦板35Aについては、2速摩擦板35Bに対応する部分に同一の符号または末尾のアルファベットBをAに置き換えた符号を付して説明を省略する。
2速摩擦板35Bには、2速保持器21Bの切欠き30に係合する突片36が設けられ、この突片36と切欠き30の係合によって、2速摩擦板35Bが2速保持器21Bに回り止めされている。2速保持器21Bの切欠き30は、2速摩擦板35Bの突片36を軸方向にスライド可能に収容しており、このスライドによって、2速摩擦板35Bは、2速保持器21Bに回り止めされた状態のまま、2速出力ギヤ10Bの側面に接触する位置と離間する位置との間で、2速保持器21Bに対して軸方向に移動可能となっている。
2速摩擦板35Bの突片36の先端に凹部37が形成されて、間座32の外周には、凹部37に係合する凸部38が形成されている。そして、凹部37と凸部38は、2速摩擦板35Bが2速出力ギヤ10Bの側面から離反した位置にある状態では、凹部37と凸部38が係合することで、間座32を介して2速摩擦板35Bを出力軸8に回り止めし、このとき、2速摩擦板35Bに回り止めされた2速保持器21Bが中立位置に保持されるようになっている。また、2速摩擦板35Bが2速出力ギヤ10Bの側面に接触する位置にある状態では、凹部37と凸部38の係合が解除することで、2速摩擦板35Bの回り止めが解除されるようになっている。
2速摩擦板35Bと2速カム部材18Bの間には、軸方向に圧縮された状態で2速離間ばね39Bが組み込まれており、この2速離間ばね39Bの弾性復元力によって2速摩擦板35Bが2速出力ギヤ10Bの側面から離間する方向に付勢されている。
2速離間ばね39Bは、間座32の外周に沿って巻回されたコイルスプリングであり、その一端が2速ワッシャ90Bを介して2速摩擦板35Bの突片36に係合し、他端が2速カム部材18Bの軸方向端面で支持されている。2速ワッシャ90Bは、2速カム部材18Bの軸方向端面の径方向溝29を覆うように環状に形成されている。
シフトリング34は、1速摩擦板35Aを押圧して1速出力ギヤ10Aの側面に接触させる1速シフト位置SP1fと、2速摩擦板35Bを押圧して2速出力ギヤ10Bの側面に接触させる2速シフト位置SP2fとの間で軸方向に移動可能に支持されている。また、シフトリング34を1速シフト位置SP1fと2速シフト位置SP2fの間で軸方向に移動させるシフト機構41が設けられている。シフト機構41は、前述のように変速比切換機構40の一部を構成する。
図23、図24に示すように、シフト機構41は、シフトリング34(図4)を転がり軸受42を介して回転可能に支持するシフトスリーブ43と、そのシフトスリーブ43の外周に設けられた環状溝44に係合する二股状のシフトフォーク45と、シフトフォーク45が固定されたシフトロッド46と、シフトモータである変速切換アクチュエータ47と、変速切換アクチュエータ47の回転をシフトロッド46の直線運動に変換する運動変換機構48(送りねじ機構等)とを有する。
図24に示すように、シフトロッド46は、出力軸8に対して間隔をおいて平行に配置され、ハウジング11内に組み込まれた一対の滑り軸受49で軸方向にスライド可能に支持されている。シフトリング34とシフトスリーブ43の間に組み込まれた転がり軸受42は、シフトリング34とシフトスリーブ43のいずれに対しても軸方向に非可動となるように組み付けられている。
このシフト機構41は、変速切換アクチュエータ47の回転が運動変換機構48により直線運動に変換されてシフトフォーク45に伝達し、そのシフトフォーク45の直線運動が転がり軸受42を介してシフトリング34(図4)に伝達することにより、同シフトリングを軸方向に移動させる。
図20に示すように、シフトフォーク45と環状溝44の間の両側の軸方向隙間には、軸方向に圧縮可能な予圧ばね50が組み込まれている。これにより、シフトリング34で
1速摩擦板35Aを押圧して1速出力ギヤ10Aの側面に接触させるときに、シフトスリーブ43に対するシフトフォーク45の軸方向の相対位置を調節することによって予圧ばね50のばね力を調節し、1速摩擦板35Aと1速出力ギヤ10Aの接触面間の摩擦力を調整することが可能となっている。また、シフトリング34で2速摩擦板35Bを押圧して2速出力ギヤ10Bの側面に接触させるときも、2速摩擦板35Bと2速出力ギヤ10Bの接触面間の摩擦力を調整することが可能となっている。
図3に示すように、出力軸8には、出力軸8の回転をディファレンシャル6に伝達するディファレンシャル駆動ギヤ51が固定されている。
ディファレンシャル6は、一対の軸受52で回転可能に支持されたデフケース53と、デフケース53の回転中心と同軸にデフケース53に固定され、ディファレンシャル駆動ギヤ51に噛合するリングギヤ54と、デフケース53の回転中心と直角な方向にデフケース53に固定されたピニオン軸55と、ピニオン軸55に回転可能に支持された一対のピニオン56と、その一対のピニオン56に噛合する左右一対のサイドギヤ57とを有する。左側のサイドギヤ57には、左側の車輪に接続されたアクスル58の軸端部が接続され、右側のサイドギヤ57には、右側の車輪に接続されたアクスル58の軸端部が接続されている。出力軸8が回転するとき、出力軸8の回転はディファレンシャル駆動ギヤ51を介してデフケース53に伝達され、そのデフケース53の回転がピニオン56とサイドギヤ57を介して左右の車輪に分配される。
以下に、車両用モータ駆動装置Aの動作例を説明する。
まず、図20に示すように、1速摩擦板35Aが1速出力ギヤ10Aの側面から離間し、かつ、2速摩擦板35Bも2速出力ギヤ10Bの側面から離間した状態では、1速保持器21Aは1速スイッチばね22Aの弾性力により中立位置に保持され、2速保持器21Bも2速スイッチばね22Bの弾性力により中立位置に保持されるので、1速の2ウェイローラクラッチ16Aはローラ20の係合が解除された状態となり、2速の2ウェイローラクラッチ16Bもローラ20の係合が解除された状態となる。
この状態では、図3に示す電動モータ3の駆動により入力軸7が回転しても、1速の2ウェイローラクラッチ16Aと2速の2ウェイローラクラッチ16Bによって回転の伝達が遮断されるので、1速出力ギヤ10Aおよび2速出力ギヤ10Bは空転し、入力軸7の回転は出力軸8に伝達されない。
次に、シフト機構41を作動させて、図20に示すシフトリング34を1速出力ギヤ10Aに向けて移動させると、1速摩擦板35Aが1速出力ギヤ10Aの側面に接触し、その接触面間の摩擦力によって1速摩擦板35Aが出力軸8に対して相対回転し、この1速摩擦板35Aに回り止めされた1速保持器21Aが1速スイッチばね22Aの弾性力に抗して中立位置から係合位置に移動するので、1速保持器21Aに保持されたローラ20が、円筒面17とカム面19の間の楔状空間S(図21)の狭まり部分に押し込まれて係合した状態となる。
この状態では、1速出力ギヤ10Aの回転は、1速の2ウェイローラクラッチ16Aを介して出力軸8に伝達され、出力軸8の回転が、ディファレンシャル6を介してアクスル58に伝達される。その結果、図1に示す電気自動車EVにおいては、駆動輪としての前輪1が回転駆動され、図2に示すハイブリッド車HVにおいては補助駆動輪としての後輪2が回転駆動される。
次に、シフト機構41の作動により、シフトリング34を1速シフト位置から2速シフト位置に向かって軸方向移動させると、1速摩擦板35Aと1速出力ギヤ10Aの接触面間の摩擦力が小さくなるので、1速スイッチばね22Aの弾性力により1速保持器21Aが係合位置から中立位置に移動し、この1速保持器21Aの移動によって1速の2ウェイローラクラッチ16Aの係合が解除される。
シフトリング34が2速シフト位置に到達すると、2速摩擦板35Bがシフトリング34で押圧されて2速出力ギヤ10Bに側面に接触し、その接触面間の摩擦力によって2速摩擦板35Bが出力軸8に対して相対回転し、2速摩擦板35Bに回り止めされた2速保持器21Bが2速スイッチばね22Bの弾性力に抗して中立位置から係合位置に移動するので、2速保持器21Bに保持されたローラ20が、円筒面17とカム面19の間の楔状空間S(図21)の狭まり部分に押し込まれて係合した状態となる。
この状態では、2速出力ギヤ10Bの回転は、2速の2ウェイローラクラッチ16Bを介して出力軸8に伝達され、出力軸8の回転がディファレンシャル6を介してアクスル58に伝達される。
同様に、シフトリング34を2速シフト位置から1速シフト位置に軸方向移動させることにより、2速の2ウェイローラクラッチ16Bの係合を解除して、1速の2ウェイローラクラッチ16Aを係合させることができる。
ところで、1速の2ウェイローラクラッチ16Aを係合解除するときに、1速の2ウェイローラクラッチ16Aを介してトルクが伝達していると、そのトルクがローラ20を円筒面17とカム面19の間の楔状空間Sの狭まり部分に押し込むように作用し、1速の2ウェイローラクラッチ16Aの係合解除が妨げられる。そのため、シフト機構41の作動により、シフトリング34が1速シフト位置SP1fから2速シフト位置SP2fに向かって軸方向移動を開始したときに、1速摩擦板35Aが、1速出力ギヤ10Aの側面から既に離反しているにもかかわらず、1速の2ウェイローラクラッチ16Aの係合が解除されない可能性がある。
このため、1速の2ウェイローラクラッチ16Aを確実に係合解除するためには、シフト機構41の作動により、1速摩擦板35Aを1速出力ギヤ10Aの側面から離間させるだけでなく、電動モータ3の出力を制御して、入力軸7と出力軸8の間で伝達するトルクを変化させる必要がある。2速の2ウェイローラクラッチ16Bを係合解除するときも同様である。
そこで、上記制御システムでは、図8、図9等に示す変速制御装置により、電動モータ3と変速切換アクチュエータ47を制御し、この制御により1速の2ウェイローラクラッチ16Aまたは2速の2ウェイローラクラッチ16Bの係合を解除するときの動作の信頼性を確保している。
以上説明した変速制御装置および変速制御方法によると、現変速段のクラッチ16A,16Bの係合を解除した後、シンクロ制御手段83は、電動モータ3を回転数制御することにより目標変速段のクラッチ16A,16Bの外輪23A,23Bと内輪18A,18Bの回転数が同期するようにシンクロさせる。電動モータ3をシンクロさせるとき、シンクロ制御手段83のゲイン調整部83aは、車速度センサ94で検出される車速と、回転角度センサ66で検出されるモータ回転数とに基づき、電動モータ3を回転数制御するときに用いるPI制御ゲインを調整する。このように時々刻々と変化する車速とモータ回転数とに基づいてPI制御ゲインを最適設定することで、電動モータ3のオーバーシュート現象を避け、シンクロ時間の短縮を図ると共に、歯車間のバックラッシュに起因する異音の低減を図ることができる。
ゲイン調整部83aは、ROM84に記録されたPIゲイン制御用テーブル84aからPI制御ゲインを取り込み、電動モータ3を制御する。このようにROM84にPIゲイン制御用テーブル84aを記録することで、車速とモータ回転数とに基づきPI制御ゲインを最適に設定することができる。またPI制御ゲインを必要に応じて容易に書換えることができる。
PIゲイン制御用テーブル84aは、シフトダウン用とシフトアップ用各々設定され、前記各PIゲイン制御用テーブル84aは、電動モータ3の実測回転数と目標回転数の偏差の絶対値の定められた間隔毎に設けられる。このようにPIゲイン制御用テーブル84aをきめ細かく設定することで、シフトダウン,シフトアップにかかわらず、シンクロ時間の短縮をより図ると共に、バックラッシュに起因する異音をより低減することができる。
PIゲイン制御用テーブル84aは、車速全域にわたって等間隔毎または低速域,中速域,高速域に分けて設けられるものとしても良い。
ゲイン調整部83aは、前記PIゲイン制御用テーブル84aにおける比例ゲインの調整値のみ使用し、前記PIゲイン制御用テーブル84aにおける積分ゲインの調整値を使用しないものとしても良い。この場合、シンクロ制御手段83の演算処理負荷の軽減を図ることが可能となる。
3…電動モータ
4…モータ軸
5…変速機
7…入力軸
16A,16B…クラッチ
18A,18B…内輪
19…カム面
20…ローラ(係合子)
21A,21B…保持器
23A,23B…外輪
35A,35B…摩擦板
40…変速比切換機構
45…シフトフォーク(シフト部材)
47…変速切換アクチュエータ
66…回転角度センサ(回転数検出手段)
82…現変速段クラッチ解除手段
83…シンクロ制御手段
83a…ゲイン調整部85…目標変速段クラッチ係合手段
94…車速度センサ(車速検出手段)
LA,LB…ギヤ列
S…楔状空間

Claims (5)

  1. 互いに変速比が異なり共通の走行用の電動モータにより回転駆動される複数の変速段のギヤ列と、出力軸と前記各変速段のギヤ列との間にそれぞれ介在した2ウェイ型の各クラッチと、これら各クラッチの断続の切換を行う変速比切換機構とを有する変速機を備え、前記変速比切換機構は、前記クラッチの内輪と外輪間の係合子の動作を規制する保持器に連結されて回転する摩擦板の、前記外輪への接触と離間とを変速切換アクチュエータにより切り換える機構である電気自動車を制御する装置であって、
    目標変速段への変速指令に応答して、前記変速切換アクチュエータを動作させ、現変速段のクラッチの係合を解除する現変速段クラッチ解除手段と、
    現変速段のクラッチの係合の解除後に、前記電動モータを回転数制御することにより前記目標変速段の前記クラッチの外輪と内輪の回転数が同期するようにシンクロさせるシンクロ制御手段と、
    前記目標変速段の摩擦板と外輪を前記変速切換アクチュエータの動作により当接させ、前記電動モータを回転数制御することにより、目標変速段のクラッチを係合させる目標変速段クラッチ係合手段とを備え、
    前記シンクロ制御手段は、前記電動モータをシンクロさせる時に、前記電動モータの実回転数を検出手段で検出してこの実回転数と目標変速段の目標回転数間の差回転数を求め、かつ一定間隔で前記差回転数の変化量を求め、この求めた差回転数および差回転数の変化量を元に、前記電動モータの前記回転数制御に使用するPI制御またはPID制御の制御ゲインを、定められた制御規則により求めて調整する制御ゲイン調整部を有することを特徴とする電気自動車の変速制御装置。
  2. 請求項1に記載の電気自動車の変速制御装置において、前記シンクロ制御手段の前記制御ゲイン調整部は、前記差回転数と前記差回転数の変化量とを入力関数として用い、前記制御ゲインをファジー制御より前記制御規則によって求め、その求めた制御ゲインに調整する電気自動車の変速制御装置。
  3. 請求項2に記載の電気自動車の変速制御装置において、前記ファジー制御に用いる前記制御規則は、車速の定間隔毎に定められている電気自動車の変速制御装置。
  4. 請求項2または請求項3に記載の電気自動車の変速制御装置において、前記シンクロ制御手段の前記制御ゲイン調整部は、前記電動モータ実測回転数と目標変速段の目標回転数との差回転数E、およびこの差回転数Eの変化量ECを一定のタイマー定間隔で値を取り込み、これら差回転数Eおよび差回転数の変化量ECにつき、それぞれの変動範囲|E_max|、|EC_max|に対する割合として正規化の処理を行った後に、前記ファジー制御の入力変数として使用する電気自動車の変速制御装置。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電気自動車の変速制御装置において、前記シンクロ制御手段の前記制御ゲイン調整部は、前記制御ゲインにおける、比例制御ゲインKpと積分制御ゲインKiの値につき、一定の範囲を設ける電気自動車の変速制御装置。
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