JP2014001746A - 電気自動車の変速制御方法および変速制御装置 - Google Patents

電気自動車の変速制御方法および変速制御装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2014001746A
JP2014001746A JP2012135342A JP2012135342A JP2014001746A JP 2014001746 A JP2014001746 A JP 2014001746A JP 2012135342 A JP2012135342 A JP 2012135342A JP 2012135342 A JP2012135342 A JP 2012135342A JP 2014001746 A JP2014001746 A JP 2014001746A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
shift
speed
stage
gear
target
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2012135342A
Other languages
English (en)
Inventor
Guodong Li
国棟 李
Fumihiro Isobe
史浩 磯部
Keisen Itakura
慶宜 板倉
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NTN Corp
Original Assignee
NTN Corp
NTN Toyo Bearing Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NTN Corp, NTN Toyo Bearing Co Ltd filed Critical NTN Corp
Priority to JP2012135342A priority Critical patent/JP2014001746A/ja
Publication of JP2014001746A publication Critical patent/JP2014001746A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02TCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO TRANSPORTATION
    • Y02T10/00Road transport of goods or passengers
    • Y02T10/60Other road transportation technologies with climate change mitigation effect
    • Y02T10/7072Electromobility specific charging systems or methods for batteries, ultracapacitors, supercapacitors or double-layer capacitors

Abstract

【課題】 ローラクラッチの締結時間を短縮させると共に、ショックトルクと異音を低減することができる電気自動車の変速制御方法および変速制御装置を提供する。
【解決手段】 目標変速段への変速指令に応答して、変速切換アクチュエータによりシフト部材を動作させ、電動モータのトルクを除荷して現変速段のローラクラッチの係合を解除する(S2:現変速段クラッチ解除過程)。次に電動モータを回転数制御することにより、目標変速段のローラクラッチの外輪と内輪の回転数が同期するようにシンクロさせる(S3:シンクロ過程)。次に目標変速段の摩擦板と外輪を当接させた後、電動モータの回転数を回転数制御し、この回転数制御を複数段に分けて行うことにより、目標変速段のローラクラッチを締結させる(S4:目標変速段クラッチ締結過程)。
【選択図】 図10

Description

この発明は、電動モータの回転を変速して車輪へ伝達する電気自動車の変速制御方法および変速制御装置に関し、ローラクラッチの締結時間を短縮させると共に、ショックトルクと異音の低減を図る技術に関する。
電気自動車の駆動装置として、電動モータ、変速機、および差動装置(ディファレンシャル)を介し駆動輪に動力を伝達する車両用モータ駆動装置がある。変速機の変速段の切換には、例えば2ウェイ型のローラクラッチが用いられる。
この車両用モータ駆動装置を使用すると、走行条件に応じて変速機の変速比を切り換えることにより、駆動および回生時において、効率の高い回転数およびトルク領域で電動モータを使用することが可能となる。また、適切な変速比とすることで、高速走行時の変速機の回転部材の回転速度が下がり、変速機の動力損失が低減して車両のエネルギ効率を向上させることができる。このような車両用モータ駆動装置として、例えば特許文献1や特許文献2に記載のものが知られている。
特開2011−57030号公報 特開平8−168110号公報
特許文献1等に記載の車両用モータ駆動装置においては、変速切換を行う際に、変速機の目標変速段のローラクラッチ係合時、大きな変速ショックトルクと異音が生じる課題がある。特に、目標変速段の摩擦板と外輪間の当接完了時に、変速機の第2シャフトの回転数と外輪の回転数に大きな回転数差があると、大きな変速ショックトルクと異音が生じる。そこで、変速ショックトルクを低減するための変速制御方法が提案されている。
このような変速制御方法として、変速切換時の車速と選択された目標変速段の変速比に基き、電動モータの目標回転数を算出して、電動モータの目標回転数に応じて電動モータの出力を制御する技術が提案されている(例えば、特願2011−123433号)。この提案例は、トルク制御と回転数制御の二つのフィードバック制御を切り換える制御法である。しかし、この提案例では、ローラクラッチ締結時の締結時間を短縮させるために、大きな制御電流を電動モータに流す必要がある。その結果、ローラが高速で駆動側の楔空間に入り込むことにより、ローラクラッチ部のローラと外輪間でショックトルクと異音が生じやすくなる。逆に、小さな制御電流を電動モータに流すことで、ショックトルクと異音は生じにくくなる一方、ローラクラッチの締結時間が長くなる欠点がある。
この発明の目的は、ローラクラッチの締結時間を短縮させると共に、ショックトルクと異音を低減することができる電気自動車の変速制御方法および変速制御装置を提供することである。
この発明の電気自動車の変速制御方法は、互いに変速比が異なる複数の変速段のギヤ列LA,LBと、走行用の電動モータ3の出力軸であるモータ軸4に連結された入力軸7と前記各変速段のギヤ列LA,LBとの間にそれぞれ介在し断続の切換が可能な各変速段の2ウェイ型のローラクラッチ16A,16Bと、これら各ローラクラッチ16A,16Bの断続の切換を行う変速比切換機構40とを有する変速機5を備え、
前記各ローラクラッチ16A,16Bは、内輪18A,18Bのカム面19と外輪23,23間に設けられた各楔状空間Sにローラ20が介在し、各ローラ20が楔状空間Sの狭まり部分に係合することで接続状態となり、保持器21A,21Bにより各ローラ20を楔状空間Sの広がり部分に位置させることで切断状態となる構成であり、
前記変速比切換機構40は、保持器21A,21Bに連結されて回転する摩擦板35A,35Bの外輪23,23への接触と離間とを変速切換アクチュエータ47によるシフト部材45の進退によって切り換える機構である、
電気自動車における変速制御方法において、
目標変速段への変速指令に応答して、前記変速切換アクチュエータ47により前記シフト部材45を動作させ、前記電動モータ3のトルクを除荷して現変速段のローラクラッチ16A,16Bの係合を解除する現変速段クラッチ解除過程と、
前記目標変速段の摩擦板35A,35Bと外輪23,23を当接させた後、前記電動モータ3の回転数を回転数制御し、この回転数制御を複数段に分けて行うことにより、目標変速段のローラクラッチ16A,16Bを締結させる目標変速段クラッチ締結過程と、
を有することを特徴とする。
この構成によると、現変速段クラッチ解除過程では、目標変速段への変速指令に応答して、変速切換アクチュエータ47により前記シフト部材45を動作させ、前記電動モータ3のトルクを除荷して現変速段のローラクラッチ16A,16Bの係合を解除する。目標変速段クラッチ締結過程では、目標変速段の摩擦板35A,35Bと外輪23,23を当接させた後、前記電動モータ3の回転数を回転数制御する。この回転数制御を複数段に分けて行うことにより、目標変速段のローラクラッチ16A,16Bを締結させる。このように回転数制御を複数段に分けて行うことで、目標変速段の摩擦板35A,35Bと外輪23,23を当接後、ローラクラッチ16A,16Bが締結するまでの時間を短縮し、且つ締結時のショックトルクと異音の低減を図ることができる。
前記目標変速段クラッチ締結過程は、複数段の回転数制御にて、前記電動モータ3を加速して、前記目標変速段のローラクラッチ16A,16Bの外輪23,23と内輪18A,18Bの回転数差を、定められた回転数差よりも大きくする加速段階と、この加速段階の後、前記電動モータ3を減速して前記外輪23,23と前記内輪18A,18Bの回転数差を、前記加速段階の回転数差よりも小さくする減速段階とを含んでも良い。前記のように加速段階で電動モータ3を加速することで、目標変速段の摩擦板35A,35Bと外輪23,23の当接完了後、ローラクラッチ16A,16Bが締結するまでの時間を短縮することができる。その後、減速段階で、電動モータ3を減速して前記外輪23,23と前記内輪18A,18Bの回転数差を、加速段階の回転数差よりも小さくすることで、ローラクラッチ締結時のショックトルクと異音の低減を図ることができる。
前記目標変速段クラッチ締結過程では、回転数制御に使われる前記回転数差と電流制限値とを、予め設定した制御マップから取り込み、目標変速段のローラクラッチ16A,16Bを締結させても良い。
前記制御マップは、シフトダウン用とシフトアップ用各々設定されていても良い。
シフトダウンとは、変速機の現変速段を、この現変速段よりも減速比の大きい目標変速段へ移すことであり、シフトアップとは、現変速段を、この現変速段よりも減速比の小さい目標変速段へ移すことである。
前記制御マップは、車速に応じて設定されていても良い。ローラクラッチ締結時のショックトルクと異音の低減を図ると共に、クラッチ締結時間をできるだけ短縮するために、例えば、実車走行を行う、車速毎に、制御マップのデータをチューニングする。
前記目標変速段クラッチ締結過程では、前記電動モータ3の回転数に使われる電流の制限値を、徐々に変化させる過程を含んでも良い。この場合、電動モータ3の回転数の変化率を小さくすることができ、これにより、歯車間のバックラッシュに起因する異音の低減を図ることができる。
前記目標変速段クラッチ締結過程での回転数制御を2段階で行い、1段階目における目標変速段の目標回転数の閾値Aを、2段階目における目標変速段の目標回転数の閾値Bよりも大きく設定しても良い。1段階目の回転数制御実施時、目標変速段の目標回転数の閾値Aを前記のように高く設定すると、ローラ20の移動速度が高くなるために、ローラ20を移動させる時間を短縮することができる。2段階目の回転数制御実施時、目標変速段の目標回転数の閾値Bを前記のように低く設定すると、ローラ20の移動速度が1段階目よりも相対的に低くなる。このため、前記ローラ20を楔状空間Sの狭まり部分に押し込んで締結させるときに、ショックトルクと異音が生じにくくなる。
この発明の電気自動車の変速制御装置は、
互いに変速比が異なる複数の変速段のギヤ列と、走行用の電動モータの出力軸であるモータ軸に連結された入力軸と前記各変速段のギヤ列との間にそれぞれ介在し断続の切換が可能な各変速段の2ウェイ型のローラクラッチと、これら各ローラクラッチの断続の切換を行う変速比切換機構とを有する変速機を備え、
前記各ローラクラッチは、内輪のカム面と外輪間に設けられた各楔状空間にローラが介在し、各ローラが楔状空間の狭まり部分に係合することで接続状態となり、保持器により各ローラを楔状空間の広がり部分に位置させることで切断状態となる構成であり、
前記変速比切換機構は、保持器に連結されて回転する摩擦板の外輪への接触と離間とを変速切換アクチュエータによるシフト部材の進退によって切り換える機構である、
電気自動車における変速制御装置において、
目標変速段への変速指令に応答して、前記変速切換アクチュエータにより前記シフト部材を動作させ、前記電動モータのトルクを除荷して現変速段のローラクラッチの係合を解除する現変速段クラッチ解除手段と、
前記目標変速段の摩擦板と外輪を当接させた後、前記電動モータの回転数を回転数制御し、この回転数制御を複数段に分けて行うことにより、目標変速段のローラクラッチを締結させる目標変速段クラッチ締結手段と、
を有することを特徴とする。
この構成によると、目標変速段クラッチ締結手段が回転数制御を複数段に分けて行うことで、目標変速段の摩擦板と外輪を当接後、ローラクラッチが締結するまでの時間を短縮し、且つ締結時のショックトルクと異音の低減を図ることができる。
この発明の電気自動車の変速制御方法は、互いに変速比が異なる複数の変速段のギヤ列と、走行用の電動モータの出力軸であるモータ軸に連結された入力軸と前記各変速段のギヤ列との間にそれぞれ介在し断続の切換が可能な各変速段の2ウェイ型のローラクラッチと、これら各ローラクラッチの断続の切換を行う変速比切換機構とを有する変速機を備え、前記各ローラクラッチは、内輪のカム面と外輪間に設けられた各楔状空間にローラが介在し、各ローラが楔状空間の狭まり部分に係合することで接続状態となり、保持器により各ローラを楔状空間の広がり部分に位置させることで切断状態となる構成であり、前記変速比切換機構は、保持器に連結されて回転する摩擦板の外輪への接触と離間とを変速切換アクチュエータによるシフト部材の進退によって切り換える機構である、電気自動車における変速制御方法において、
目標変速段への変速指令に応答して、前記変速切換アクチュエータにより前記シフト部材を動作させ、前記電動モータのトルクを除荷して現変速段のローラクラッチの係合を解除する現変速段クラッチ解除過程と、前記目標変速段の摩擦板と外輪を当接させた後、前記電動モータの回転数を回転数制御し、この回転数制御を複数段に分けて行うことにより、目標変速段のローラクラッチを締結させる目標変速段クラッチ締結過程とを有する。このため、ローラクラッチの締結時間を短縮させると共に、ショックトルクと異音を低減することができる。
この発明の電気自動車の変速制御装置は、互いに変速比が異なる複数の変速段のギヤ列と、走行用の電動モータの出力軸であるモータ軸に連結された入力軸と前記各変速段のギヤ列との間にそれぞれ介在し断続の切換が可能な各変速段の2ウェイ型のローラクラッチと、これら各ローラクラッチの断続の切換を行う変速比切換機構とを有する変速機を備え、前記各ローラクラッチは、内輪のカム面と外輪間に設けられた各楔状空間にローラが介在し、各ローラが楔状空間の狭まり部分に係合することで接続状態となり、保持器により各ローラを楔状空間の広がり部分に位置させることで切断状態となる構成であり、前記変速比切換機構は、保持器に連結されて回転する摩擦板の外輪への接触と離間とを変速切換アクチュエータによるシフト部材の進退によって切り換える機構である、電気自動車における変速制御装置において、
目標変速段への変速指令に応答して、前記変速切換アクチュエータにより前記シフト部材を動作させ、前記電動モータのトルクを除荷して現変速段のローラクラッチの係合を解除する現変速段クラッチ解除手段と、前記目標変速段の摩擦板と外輪を当接させた後、前記電動モータの回転数を回転数制御し、この回転数制御を複数段に分けて行うことにより、目標変速段のローラクラッチを締結させる目標変速段クラッチ締結手段とを有する。このため、ローラクラッチの締結時間を短縮させると共に、ショックトルクと異音を低減することができる。
この発明の一実施形態に係る変速制御方法,変速制御装置を適用する電気自動車の概略図である。 同変速制御方法,変速制御装置を適用するハイブリッド車の概略図である。 図1,図2に示す車両の車両用モータ駆動装置の断面図である。 同車両用モータ駆動装置の減速比切換機構の断面図である。 同車両用モータ駆動装置を制御する変速制御システムの概略ブロック図である。 同車両用モータ駆動装置のインバータ装置の構成図である。 同車両のレバー操作パネルの説明図である。 同車両用モータ駆動装置のインバータ制御装置のブロック図である。 同車両用モータ駆動装置の変速制御装置の概念構成を示すブロック図である。 同変速制御方法の概要を示すフローチャートである。 同変速制御方法における変速時、電動モータを駆動させるトルクと、各動作時間との概略特性を示す図である。 同変速制御方法でローラクラッチを締結させる制御における、目標変速段の目標回転数の特性図である。 同変速制御方法でローラクラッチを締結時の回転数制御用の制御マップを示す図である。 同変速制御方法でローラクラッチを締結させる制御における、制御電流の特性図である。 図4の一部の拡大断面図である。 図4のA−A線に沿った断面図である。 図4のB−B線に沿った断面図である。 図4のC−C線に沿った断面図である。 同車両用モータ駆動装置のシフト機構を示す断面図である。 図4の減速比切換機構におけるローラクラッチ等の分解斜視図である。
以下、この発明の実施形態にかかる電気自動車の変速制御方法を説明する。なお以下の説明は、変速制御装置の説明をも含む。図1は、左右一対の前輪1を車両用モータ駆動装置Aで駆動される駆動輪とし、左右一対の後輪2を従動輪とした電気自動車EVを示す。
図2は、左右一対の前輪1をエンジンEによって駆動される主駆動輪とし、左右一対の後輪2を車両用モータ駆動装置Aで駆動される補助駆動輪としたハイブリッド自動車HVを示す。ハイブリッド自動車HVには、エンジンEの回転を変速するトランスミッションTと、トランスミッションTから出力された回転を左右の前輪1に分配するディファレンシャルDとが設けられている。この実施形態の変速制御方法および変速制御装置は、図1,図2の車両用モータ駆動装置Aに適用される。
図3に示すように、車両用モータ駆動装置Aは、走行用の電動モータ3と、電動モータ3の出力軸4の回転を変速して出力する変速機5と、その変速機5から出力された回転を図1に示す電気自動車EVの左右一対の前輪1に分配し、または、図2に示すハイブリッド車の左右一対の後輪2に分配するディファレンシャル6とを有する。
変速機5は、変速段数が2段であって、図3に示すように、互いに変速比が異なる複数(この例では2列)の変速段のギヤ列LA,LBと、電動モータ3の出力軸であるモータ軸4に連結された入力軸7と前記各変速段のギヤ列LA,LBにそれぞれ介在し断続の切換が可能な各変速段の2ウェイ型のローラクラッチ16A,16Bと、これら各ローラクラッチ16A,16Bの断続の切換を行う変速比切換機構40とを有する。
変速機5および変速比切換機構40については、ここでは変速制御方法・装置の理解に必要な範囲で簡単に説明し、変速制御方法・装置の説明の後に、詳細に説明する。
変速機5は、モータ軸4の回転が入力される入力軸7と、入力軸7に対して間隔をおいて平行に配置された出力軸8と、上記各ギヤ列LA,LBとを有する平行軸常時噛合型変速機である。1速ギヤ列LAの入力ギヤ9Aおよび2速ギヤ列LBの入力ギヤ9Bが入力軸7に一体に設けられ、1速ギヤ列LAの出力ギヤ10Aおよび2速ギヤ列LBの出力ギヤ10Bが出力軸8の外周に回転自在に設置されている。これら各出力ギヤ10A,10Bと出力軸8の間に、前記ローラクラッチ16A,16Bが介在させてある。
各ローラクラッチ16A,16Bは、図16に示す2速のローラクラッチ16Bの例で説明するように、外周面が多角形状とされた内輪18Bの外周の平面状の各カム面19と外輪23の内周の円筒面間に設けられた各楔状空間Sにローラ20が介在する。楔状空間Sは、円周方向の両側が狭まり、円周方向の中央が広がり部分となる。各ローラクラッチ16A,16Bは、各ローラ20が楔状空間Sの狭まり部分に係合することで接続状態となり、保持器21Bにより各ローラ20を楔状空間Sの広がり部分に位置させることで切断状態となる構成である。
変速比切換機構40は、図4に示すように、ローラクラッチ16A,16Bの保持器21A,21Bに連結されて回転する環状の摩擦板35A,35Bの外輪23への接触と離間とを変速切換アクチュエータ47による、シフト部材であるシフトフォーク45の進退によって切り換える機構である。シフト機構41は、変速比切換機構40のうちの、摩擦板35A,35Bを動作される機構部分であり、変速切換アクチュエータ47とシフトフォーク45により構成される。
変速切換アクチュエータ47は、シフト用の電動モータであり、その出力軸47aの回転を、送りねじ機構48によりシフトロッド46の直動運動に変換し、シフトロッド46に取り付けたシフトフォーク45を軸方向に移動させる。シフトフォーク45の移動により、シフトスリーブ43およびシフトリング34が移動する。シフトリング34が摩擦板35A,35Bを、クラッチ外輪23(出力ギヤ10A,10B(図15))の側面に押し付ける。これにより、カム面付きの内輪18A,18B(図15)と外輪23とが相対回転する場合に、摩擦板35A,35Bと外輪23との間に摩擦力(トルク)が作用し、保持器21A,21Bを介してローラ20を楔状空間S(図16)の狭まり部分に押し込むことができる。
なお、保持器21A,21Bは内輪18A,18B(図15)に対して回転自在であるが、スイッチばね22A,22B(図15)により、内輪18A,18Bのカム面19(図15)の中央、つまり楔状空間Sの広がり部分である中立位置とポケット21aの円周方向中央とが一致するように付勢される。摩擦板35A,35Bは、上記スイッチばね22A,22Bにより、保持器21A,21Bと共に回転可能なように連結されている。
図5は、車両用モータ駆動装置Aを制御する制御システムを示すブロック図である。この制御システムは、統合ECU60、変速ECU61、およびインバータ装置62を有する。統合ECU60、変速ECU61、およびインバータ装置62の3者間の信号転送はCAN通信(コントローラー・エリア・ネットワーク)で行われる。
統合ECU60は、車載全ての電子制御装置間の協調制御を行う電子制御装置であり、アクセルペダル63のアクセル開度センサ63a、ブレーキペダル91のブレーキ開度センサ91a、ステアリングホイール92の操舵角センサ92a、変速段を手動で切り替えるシフトレバー93のレバー位置センサ93aに接続されている。統合ECU60は、これらアクセル開度センサ63a、ブレーキ開度センサ91a、操舵角センサ92a、レバー位置センサ93aの検出したアクセル開度信号、ブレーキ開度信号、操舵角信号、およびレバー位置信号を、変速ECU61に送信する機能、並びにこれらの4種の信号および他の各種のセンサ等の信号によって前記協調制御を行う機能を備える。
変速ECU61は、ECU60から送信された各種信号や、直接に変速ECU61に入力された各種信号により、自動変速の制御を行う電子制御装置であり、各種入力信号に基づいて変速判断を行ない、変速機5の変速切換アクチュエータ47とインバータ装置62に指令を出す。
変速ECU61は、次の各機能(1)〜(8)を備える。
(1)車速度センサ94および加速度センサ95から、車速と車両の加減速度の検出信号を受け、統合ECU60からアクセル開度信号を受け取り、自動変速の判断を行う。
(2)急ブレーキと判断した場合は、自動変速を行わない。
(3)急ハンドルと判断した場合は、自動変速を行わない。
(4)統合ECU60からシフトレバー93の位置信号を受け取り、電動モータ3のクリープ制御を実施する。
(5)運転者により操作される第1〜第3の操作スイッチ96〜98の操作に応じた制御を行う。
第1の操作スイッチ96:自動/手動変速の切換用トグルスイッチである。
第2の操作スイッチ97:タクトスイッチであり、上記の第1の操作スイッチ96が手動変速で設定された場合のみ、有効とする。第2の操作スイッチ97を押すと、シフトアップ変速が実施される。
第3の操作スイッチ98:タクトスイッチであり、上記の第1の操作スイッチ96が手動変速で設定された場合のみ、有効とする。第3の操作スイッチ98を押すと、シフトダウン変速が実施される。
(6)表示部99へ、車速、電動モータ回転数、トルク指令値等を表示させる。表示部99は、液晶表示装置等の画像を表示する装置、または指針で表示する装置である。
(7)変速切替アクチュエータ47のシフト位置を、変速機5に付けられたシフト位置センサ68から検出する機能とインバータから電動モータ3の回転数を取得する機能を備える。
(8)インバータ装置62にトルク指令または回転数指令と変速指令を送信する機能、および変速機5に付けられた変速切替アクチュエータ47を駆動する機能を備える。
変速ECU61には、自動変速モードと手動変速モードの変速モードがプログラムされており、自動変速モードと手動変速モードは、運転者による前記第1の操作スイッチ96の操作によって切り替えられる。
この実施形態の変速制御方法および変速制御装置は、変速ECU61による自動変速モードにおける制御に係る。変速ECU61は、図9に示す各種の機能達成手段(81〜86)を有しているが、これらの手段については後に説明する。
図5において、インバータ装置62は、バッテリ69から直流電力が供給されて、電動モータ3に交流のモータ駆動電力を供給するとともに、その供給電力を変速ECU61からの信号に基づいて制御する。インバータ装置62には、電動モータ3に設けられた回転検出装置である例えばレゾルバ66から、電動モータ3の回転数を示す信号が入力される。
インバータ装置62は、電動モータ3を駆動する機能、およびレゾルバ66から電動モータ3の回転角信号を得る機能を備える。インバータ装置62は、図6に示すように、インバータ71と、このインバータ71を制御するインバータ制御回路72とで構成される。インバータ71と、U,V,W相の上側アームスイッチング素子Up,Vp,Wpと、U,V,W相の下側アームスイッチング素子Un,Vn,Wnの接続点に電動モータ3の各相(U,V,W相)の端子を接続したものである。インバータ71には、3相の交流電力を出力するように、インバータ制御回路72から各スイッチング素子Up,Vp,Wp,Un,Vn,Wnに開閉指令が与えられる。
電動モータ3は、3相の正弦波通電により、転流を行っている。電動モータ3を駆動するためには大電流が必要である。
図7は、シフトレバー操作パネル75の構成を示す。運転手がシフトレバー93(図5)を手動操作することによって、周知の例と同様に、P(パーキング)、R(リバース)、N(ニュートラル)、D(ドライブ)、2速(セカンド)、1速(ロウ)の各レンジを切り換えることができる。シフトレバー操作パネル75は、このように切り換えられるどのレンジに現在あるかを示す表示装置である。シフトレバー操作パネル75におけるレンジ選択情報は統合ECU60(図5)に入力される。1速レンジは1速段状態である。なお、シフトレバー操作パネル75は、タッチパネル形式の入力手段を兼ねて、シフトレバー93(図5)に代えて運転者により操作される操作手段としても良い。
図8は、電動モータ3と、インバータトルク制御、インバータ回転数制御のブロック図を示す。このインバータ制御回路72は、トルク制御と回転数制御とに切り換えて制御可能としてあり、トルク制御と回転数制御とも、フィードバック制御で、かつベクトル制御である。変速時はトルク制御と回転数制御とを行い、変速時以外のときはトルク制御を行う。詳細な記述をここで省略する。
電力変換部62aは、PWMデューティVu,Vv,Vwに従ってインバータ71をPWM制御し、電動モータ3を駆動する。
同図のインバータ制御回路72による回転数制御を説明する。
速度指令部106は、インバータ制御回路72に対して速度指令を与える手段であり、変速ECU61に設けられている。速度指令部106は、変速時の車速と選択された目標変速段の変速比に基づき、電動モータ3の目標回転数を算出する。算出した目標回転数は、速度指令としてインバータ装置62(図6)のインバータ制御回路72に指示される。
また、電動モータ3の回転子角度をレゾルバ66から取得し、実際の電動モータ3の回転数を速度計算部108で算出する。速度指令部106の速度指令と、速度計算部108で算出した実際の電動モータ回転数の差分を比較部109で求め、その差分に対つき、制御部107でPID制御(比例積分微分制御)、あるいはPI制御(比例積分制御)を行い、制御量をトルク指令として、電流指令部101に入力する。回転数制御時、この速度計算部108の速度指令に基づくトルク指令が、トルク指令部110からのトルク指令に代えて電流指令部101に入力される。
回転数制御では、電動モータ3の目標回転数は一定の時間間隔で計算され、変速中に車速が急に変化しても、変速の目標回転数は車速の変化を追及できる特徴をもつ。それによって、変速ショックを低減することができる。
なお、図8において、インバータ制御回路72は、速度制御部73と、トルク制御部74とに分けて説明している。
トルク制御部74は、インバータ制御回路72のうち、トルク制御により電動モータ3の制御の機能を果たす部分であり、図8の電流指令部101、電流PI制御部102、2相・3相変化部103、3相・2相変化部104、速度計算部108、および予測部111を含む。
速度制御部73は、インバータ制御回路72のうち、速度制御により電動モータ3の制御の機能を果たす部分であって、比較部109と、制御部107とを有し、トルク制御部74の電流制御部101へトルク指令を与え、その後の制御をトルク制御部74で行わせる。
次に、電気自動車における車両用モータ駆動装置の変速制御装置につき、図9のブロック図を参照して説明する。制御対象となる電気自動車は、上記実施形態の変速制御方法を適用する図1〜図7と共に前述した電気自動車である。
この電気自動車の変速制御装置は、上記実施形態の変速制御方法を実施する装置であって、上記変速ECU61に、次の変速指令生成手段81、現変速段クラッチ解除手段82、シンクロ制御手段83、目標変速段クラッチ締結手段85、回転数・トルク制御切換手段86、およびメモリ84を備える。変速ECU61は、自動変速時以外の電動モータ3の制御はトルク制御として、トルク指令をインバータ制御装置72へ出力し、変速時にトルク制御と回転数制御を切換る。
変速指令生成手段81は、アクセル開度信号、車速の検出値、および車両の加減速度から、定められた規則に従って目標変速段への変速指令を生成する。この変速指令は変速ECU61等が出す。
図4,図9に示すように、現変速段クラッチ解除手段82は、目標変速段への変速指令に応答して、変速切換アクチュエータ47によりシフト部材45を動作させ、現変速段の摩擦板35A,35Bと外輪23,23の当接を解除し、トルク制御により電動モータ3のトルクを除荷して現変速段のローラクラッチ16A,16Bの係合を解除する。
シンクロ制御手段83は、電動モータ3を回転数制御することにより目標変速段のローラクラッチ16A,16Bの外輪23,23と内輪18A,18Bの回転数が同期するようにシンクロさせる。
目標変速段クラッチ締結手段85は、目標変速段の摩擦板35A,35Bと外輪23,23を当接させた後、電動モータ3を回転数制御し、この回転数制御を複数段に分けて行うことにより、目標変速段のローラクラッチ16A,16Bを締結させる。
回転数・トルク制御切換手段86は、電動モータ3の制御を回転数制御からトルク制御に切換えて電動モータ3のトルクを入力する。
メモリ84は例えばROM等からなり、このメモリ84の記憶領域84aには、後述する制御マップなどを記憶させている。
変速指令生成手段81、現変速段クラッチ解除手段82、シンクロ制御手段83、目標変速段クラッチ締結手段85、および回転数・トルク制御切換手段86は、より具体的には、図10の各ステップS1,S2,S3,S4,S5の処理をそれぞれ行う機能を有する。
図10は、変速制御方法の概要を示すフローチャートである。実行手順を説明する。
例えば、車両のイグニッションスイッチ等をオンすることで本処理が開始する。本処理開始後、ステップS1において、アクセル開度、車速、車両の加減速度を検出して、変速ECU61が目標変速段への変速指令を出す。次に、ステップS2に移行し、前記目標変速段への変速指令に応答して、変速切換アクチュエータ47によりシフト部材45を動作させ、電動モータ3のトルクを除荷して現変速段のローラクラッチ16A,16Bの係合を解除する(現変速段クラッチ解除過程)。
次にステップS3では、電動モータ3を回転数制御することにより、前記目標変速段のローラクラッチ16A,16Bの外輪23と内輪18A,18Bの回転数が同期するようにシンクロさせる(シンクロ過程)。
次にステップS4では、前記目標変速段の摩擦板35A,35Bと外輪23を当接させた後、電動モータ3の回転数を回転数制御し、この回転数制御を複数段に分けて行うことにより、目標変速段のローラクラッチ16A,16Bを締結させる(目標変速段クラッチ締結過程)。その後、ステップS5において、回転数・トルク制御切換手段86は、電動モータ3の制御を回転数制御からトルク制御に切換える。
図11は、前記変速制御方法における変速時、電動モータ3を駆動させるトルクと、各動作時間との概略特性を示す図である。変速ECU61は、車両がDレンジ(図7)走行時に、自動変速判断を行い、変速機5の変速切換アクチュエータ47とインバータ装置62に指令を出す。
本変速制御装置における電気自動車の変速制御方法において、電動モータ3を駆動させる動作は主に下記の動作(1)→動作(5)になっている。
動作(1)→動作(5)における電動モータトルクの概略特性を説明する。
t0→t1間(動作(1)):車両が現変速段走行トルクで走行している。
現変速段のローラクラッチが正方向に締結している状態で、トルク制御により、電動モータ3を駆動している。このとき電動モータ3のトルクは、変速機5および差動装置6を介して駆動輪に伝達されている。
前記ローラクラッチの「正方向」とは、電動モータ3を駆動するとき、ローラクラッチが締結している方向とする。これに対してローラクラッチの「負方向」とは、電動モータ3を回生するとき、ローラクラッチが締結している方向とする。以下同じ。
t1→t2間(動作(2)):変速ECU61における現変速段クラッチ解除手段82が、現変速段のローラクラッチを解除させる。
t2→t3間(動作(3)):変速ECU61におけるシンクロ制御手段83が、電動モータ3をシンクロさせる。
t3→t4間(動作(4)):変速ECU61における目標変速段クラッチ締結手段85が、目標変速段のローラクラッチを締結させる。
t4→(動作(5)):車両が目標変速段走行トルクで走行している。
目標変速段のローラクラッチが正方向に締結している状態で、トルク制御により、電動モータ3を駆動している。このとき電動モータ3のトルクは、変速機5および差動装置6を介して駆動輪に伝達されている。
図12は、この変速制御方法でローラクラッチを締結させる制御における、目標変速段の目標回転数の特性図である。この図12は、図11中の動作(4)の詳細説明である。
目標変速段の摩擦板と外輪の当接完了後、ローラクラッチが締結するまでの時間を短縮させること、およびクラッチ締結時のショックトルクと異音を低減させることを目的として、回転数制御を複数段に分けて行う。図12の例では、回転数制御を2段階に分けて行っている。この2段階制御の回転数は、目標回転数の閾値Aと、目標変速段の閾値Bからなる。閾値A,Bは以下のように設定する。なお目標変速段の目標回転数とは、回転数制御により、電動モータを駆動させるときの目標回転数を言う。
シフトダウン時:
目標変速段の目標回転数の閾値A=Ngo×r1+rot1i (i=1,2,…,20); Ngi = Ngo×r1
目標変速段の目標回転数の閾値B=Ngo×r1+rot2i (i=1,2,…,20)
ただし、
Ngi:入力回転数(ローラクラッチ外輪)
Ngo:出力回転数(ローラクラッチ内輪)
r2:2速減速比
r1:1速減速比(入力回転数:電動モータの回転数;出力回転数:車速と歯車比から換算)である(シフトアップ時も同じ)。
rot1iとrot2iの値はローラクラッチ締結時の回転数制御用制御マップ(シフトダウン用)に格納されている値である。回転数制御を実行する時に、メモリ84に設定された制御マップからデータを取り込み、ローラクラッチを締結させる。
シフトアップ時:
目標変速段の目標回転数の閾値A=Ngo×r2+rot1i (i=1,2,…,20); Ngi = Ngo×r2
目標変速段の目標回転数の閾値B=Ngo×r2+rot2i (i=1,2,…,20)
rot1iとrot2iの値はローラクラッチ締結時の回転数制御用制御マップ(シフトアップ用)に格納されている値である。制御マップはシフトダウン用とシフトアップ用二つのマップがある。閾値Aと閾値Bは車速に応じて、リアルタイムで更新される。
t0→t1間:1段目の回転数制御。
t1→t2間:2段目の回転数制御。t1からt2までの間で、ローラを、駆動側における楔状空間の狭まり部分に押し込んで締結できるよう、電動モータを回転数制御にて駆動する。
本発明の発想:ローラクラッチを締結する時、1段目の回転数制御により、2段目よりも高い速度でローラを駆動側における楔状空間側に移動させ、その後に、2段目の回転数制御により、1段目よりも低い速度でローラを駆動側における楔状空間の狭まり部分に押し込んで締結させる。
1段目の回転数制御実施時、目標変速段の目標回転数の閾値Aを高く設定すると、ローラの移動速度が高くなるために、ローラを移動させる時間を短縮することができる。一方、2段目の回転数制御実施時、目標変速段の目標回転数の閾値Bを低く設定すると、1段目の回転数制御実施時よりもローラの移動速度が低くなる。このため、ローラを駆動側における楔状空間の狭まり部分に押し込んで締結させる時に、ショックトルクと異音が生じにくくなる。
図13は、この変速制御方法でローラクラッチを締結時の回転数制御用の制御マップを示す図である。この制御マップは、シフトダウン用とシフトアップ用の二つのマップがある。2つの制御マップ中のデータは、それぞれ変速ECU61のメモリ84(図9)に格納されている。
データ:車速毎(例えば5km/h毎)に、回転数制御に使われる2段の回転数差と2段の制御電流である。なお車速は5km/h毎に限定されるものではない。
ローラクラッチ締結時のショックトルクおよび異音の低減と、締結時間をできるだけ短縮するために、車速毎に、制御マップのデータをチューニングする必要がある。
図14は、この変速制御方法でローラクラッチを締結させる制御における、制御電流の特性図である。
目標変速段の摩擦板と外輪の当接完了後、ローラクラッチが締結するまでの時間を短縮するため、1段目の回転数制御により、電動モータを急加速させる必要がある。シフトダウンとシフトアップともに、電動モータを急加速させる。そのため、従来技術では、電動モータの回転数の変化率(Δrot/Δt)が大きい。それによって、歯車間のバックラッシュに起因する異音が生じやすくなる。また、電動モータの回転数が目標変数段の回転数に一致した時点でも、同じ問題が生じる。
本発明の目的:目標変速段クラッチ締結過程において、1段目の回転数制御を実施する目的は、変速時間を短縮しながら、歯車間のバックラッシュに起因する異音を低減することである。同過程において、2段目の回転数制御を実施する目的は、クラッチ締結時のショックトルクとクラッチ締結時の異音を低減することである。
本発明の発想:ローラクラッチを締結する動作において、電動モータの回転数制御に使われる電流の制限値が大きいほど、ローラクラッチの締結時間が短くなる。しかし、電動モータの回転数の変化率(Δrot/Δt)が大きい。それによって、歯車間のバックラッシュに起因する異音が生じやすくなる。逆に、電流の制限値が小さいほど、歯車間のバックラッシュに起因する異音が生じにくくなる。しかし、ローラクラッチを締結する時間が長くなる欠点がある。
そこで本発明では、ローラクラッチの締結時間の短縮と異音の低減の両方を達成するために、1段目の回転数制御に使われる電流の制限値を徐々に変化させることにした。
図14の特性図の概要説明:
t0→t4:1段目の回転数制御に使われる制御電流を示す;t4→t5:2段目の回転数制御に使われる制御電流を示す。
同特性図の詳細説明:
t0→t1間:回転数制御に使われる電流の制限値を、時間経過と共に変化させながら、回転数制御を行うことによって、歯車間のガタを詰めていく動作を行う。このt0→t1間の時間において、電流の制限値を0A→電流の制限値の閾値Aまで徐々に増加させる。この間における電流の制限値の増加率を、増加率aとする。
t1→t2間:電流の制限値を継続的に増加させる動作を行う。このt1→t2間の時間において、電流の制限値の閾値A→電流の制限値の閾値Bまで、増加率bで徐々に電流の制限値を増加させる。ただし増加率a<増加率bとする。
増加率a<増加率bに設定する理由:増加率aで歯車のガタを詰めてから、増加率aより大きな増加率bで電流の制限値を増加させながら、電動モータ3を継続的に駆動する。それによって、ローラクラッチの締結時間を短縮することができる。しかし、増加率bを大きく設定し過ぎると、また歯車間のバックラッシュに起因する異音が生じやすくなる。増加率bの設定は、実車走行試験により、変速機中の歯車間のバックラッシュに起因する異音が気にならないレベルまで最大増加率として、設定すれば良い。
t2→t3間:電流の制限値を閾値Bにして、回転数制御により、電動モータ3を駆動させる動作を行う。ローラクラッチの締結時間は、閾値Bの大小に大きく左右される。閾値Bの値は、メモリ84(図9)の制御マップからデータを取り込み、ローラクラッチを締結させる制御を行う。閾値Bは、図13中のI1i(i=1,2,…,20)である。
t3→t4間:電流の制限値を徐々に減少させる動作を行う。
電流の制限値を急激に減少させると、歯車間で詰められたガタが解放されることに起因する異音が生じやすくなる。そこでt3→t4間において電流の制限値を徐々に減少させる。
t3時:電動モータ3の回転数は目標変速段の目標回転数との回転数差が数回転数差の閾値以内に入ったら、電流の制限値を閾値Bから閾値Cまで減少率cで徐々に減少させるスタート地点である。
t4時:1段目の回転数制御から2段目の回転数制御へ切換える時点である。
t4→t5:2段目の回転数に使われている電流の制限値の状況を示している。電流の制限値を閾値Cにして、回転数制御により、ローラクラッチを締結させる動作を行っていく。閾値Cの値は、メモリ84の制御マップからデータを取り込み、ローラクラッチを締結させる制御を行う。閾値Cは図13中のI2i(i=1,2,…,20)である。
t4→t5間にローラクラッチを締結させる動作が完了する。
t5→変速制御は図11の動作(5)に入り、継続して変速制御を行っていく。
次に、図3,図4の車両用モータ駆動装置の詳細を、図15〜図20と共に説明する。
図3において、モータ軸4は、入力軸7と同軸上に直列に配置されており、ハウジング11に固定された電動モータ3のステータ12で回転駆動される。入力軸7は、ハウジング11内に組込まれた対向一対の軸受13により回転可能に支持され、入力軸7の軸端はスプライン嵌合によってモータ軸4に接続されている。出力軸8は、ハウジング11内に組込まれた対向一対の軸受14により回転可能に支持されている。
1速入力ギヤ9Aと2速入力ギヤ9Bは軸方向に間隔をおいて配置され、入力軸7を中心として入力軸7と一体に回転するように入力軸7に固定されている。1速出力ギヤ10Aと2速出力ギヤ10Bも軸方向に間隔をおいて配置されている。
図4に示すように、1速出力ギヤ10Aは、出力軸8を貫通させる環状に形成され、軸受15を介して出力軸8で支持されており、出力軸8を中心として出力軸8に対して回転可能となっている。同様に、2速出力ギヤ10Bも、軸受15を介して出力軸8で回転可能に支持されている。
1速入力ギヤ9Aと1速出力ギヤ10Aは互いに噛合しており、その噛合によって1速入力ギヤ9Aと1速出力ギヤ10Aの間で回転が伝達するようになっている。2速入力ギヤ9Bと2速出力ギヤ10Bも噛合しており、その噛合によって2速入力ギヤ9Bと2速出力ギヤ10Bの間で回転が伝達するようになっている。2速入力ギヤ9Bと2速出力ギヤ10Bの減速比は、1速入力ギヤ9Aと1速出力ギヤ10Aの減速比よりも小さい。
1速出力ギヤ10Aと出力軸8の間には、1速出力ギヤ10Aと出力軸8の間でトルクの伝達と遮断の切換えを行なう1速の2ウェイローラクラッチ16Aが組込まれている。また、2速出力ギヤ10Bと出力軸8の間には、2速出力ギヤ10Bと出力軸8の間でトルクの伝達と遮断の切換えを行なう2速の2ウェイローラクラッチ16Bが組込まれている。
1速の2ウェイローラクラッチ16Aと2速の2ウェイローラクラッチ16Bは、左右対称の同一構成なので、2速の2ウェイローラクラッチ16Bを以下に説明し、1速の2ウェイローラクラッチ16Aについては、2速の2ウェイローラクラッチ16Bに対応する部分に同一の符号または末尾のアルファベットBをAに置き換えた符号を付して説明を省略する。
図15〜図17に示すように、2速の2ウェイローラクラッチ16Bは、2速出力ギヤ10Bの内周に設けられた円筒面17と、出力軸8の外周に回り止めした環状の2速カム部材18Bに形成されたカム面19と、カム面19と円筒面17の間に組み込まれたローラ20と、ローラ20を保持する2速保持器21Bと、2速スイッチばね22Bとからなる。カム面19は、円筒面17との間で周方向中央から周方向両端に向かって次第に狭くなる楔状空間Sを形成するような面であり、例えば、図16に示すように円筒面17と対向する平坦面である。
図4、図20に示すように、2速保持器21Bは、ローラ20を収容する複数のポケット21aが周方向に間隔をおいて形成された円筒部24と、円筒部24の一端から径方向内方に延び出す内向きフランジ部25とを有する。内向きフランジ部25の径方向内端は、2速カム部材18Bの外周で周方向にスライド可能に支持され、この周方向のスライドによって、2速保持器21Bは、カム面19と円筒面17の間にローラ20を係合させる係合位置とローラ20の係合を解除する中立位置との間で出力軸8に対して相対回転可能となっている。また、2速保持器21Bの内向きフランジ部25は軸方向両側への移動が規制され、これにより2速保持器21Bが軸方向に非可動とされている。
図16に示すように、各カム面19は、回転中心を含む仮想平面に対して対称に形成され、これにより、各カム面19と円筒面17の間に配置されたローラ20は、正転方向と逆転方向の両方向で係合可能となっている。すなわち、電動モータ3が発生するトルクにより車両を前進させるときは、2速保持器21Bを出力軸8に対して正転方向に相対回転させることにより、2速保持器21Bに保持されたローラ20を、カム面19と円筒面17の間の正転方向側の空間狭まり部分に係合させ、そのローラ20を介して2速出力ギヤ10Bと出力軸8の間で正転方向のトルクを伝達することが可能となっており、一方、電動モータ3が発生するトルクにより車両を後退させるときは、2速保持器21Bを出力軸8に対して逆転方向に相対回転させることにより、2速保持器21Bに保持されたローラ20を、カム面19と円筒面17の間の逆転方向側の空間狭まり部分に係合させ、そのローラ20を介して2速出力ギヤ10Bと出力軸8の間で逆転方向のトルクを伝達することが可能となっている。
図17、図20に示すように、2速スイッチばね22Bは、鋼線をC形に巻いたC形環状部26と、C形環状部26の両端からそれぞれ径方向外方に延出する一対の延出部27,27とからなる。C形環状部26は、2速カム部材18Bの軸方向端面に形成された円形のスイッチばね収容凹部28に嵌め込まれ、一対の延出部27,27は、2速カム部材18Bの軸方向端面に形成された径方向溝29に挿入されている。
径方向溝29は、スイッチばね収容凹部28の内周縁から径方向外方に延びて2速カム部材18Bの外周に至るように形成されている。2速スイッチばね22Bの延出部27は、径方向溝29の径方向外端から突出しており、その延出部27の径方向溝29からの突出部分が、2速保持器21Bの円筒部24の軸方向端部に形成された切欠き30に挿入されている。径方向溝29と切欠き30は同じ幅に形成されている。
延出部27,27は、径方向溝29の周方向で対向する内面と、切欠き30の周方向で対向する内面にそれぞれ接触しており、その接触面に作用する周方向の力によって2速保持器21Bを中立位置に弾性保持している。
すなわち、2速保持器21Bを出力軸8に対して相対回転させて、図17に示す中立位置から周方向に移動させると、径方向溝29の位置と切欠き30の位置が周方向にずれるので、一対の延出部27,27の間隔が狭まる方向にC形環状部26が弾性変形し、その弾性復元力によって2速スイッチばね22Bの一対の延出部27,27が径方向溝29の内面と切欠き30の内面を押圧し、その押圧によって2速保持器21Bを中立位置に戻す方向の力が作用するようになっている。
図4に示すように、1速カム部材18Aと2速カム部材18Bの出力軸8に対する回り止めは、スプライン嵌合によって行なわれている。1速カム部材18Aのカム面19と2速カム部材18Bのカム面19は同数かつ同位相となっている。また、1速カム部材18Aと2速カム部材18Bは、出力軸8の外周に嵌合した一対の止め輪31によって軸方向に非可動となっている。1速カム部材18Aと2速カム部材18Bの間には間座32が組み込まれている。
1速の2ウェイローラクラッチ16Aと2速の2ウェイローラクラッチ16Bは、変速アクチュエータ33により選択的に係合することができるようになっている。
図15に示すように、変速アクチュエータ33は、1速出力ギヤ10Aと2速出力ギヤ10Bの間に軸方向に移動可能に設けられたシフトリング34と、1速出力ギヤ10Aとシフトリング34の間に組み込まれた1速摩擦板35Aと、2速出力ギヤ10Bとシフトリング34の間に組み込まれた2速摩擦板35Bとを有する。
ここで、1速摩擦板35Aと2速摩擦板35Bは、左右対称の同一構成なので、2速摩擦板35Bを以下に説明し、1速摩擦板35Aについては、2速摩擦板35Bに対応する部分に同一の符号または末尾のアルファベットBをAに置き換えた符号を付して説明を省略する。
2速摩擦板35Bには、2速保持器21Bの切欠き30に係合する突片36が設けられ、この突片36と切欠き30の係合によって、2速摩擦板35Bが2速保持器21Bに回り止めされている。2速保持器21Bの切欠き30は、2速摩擦板35Bの突片36を軸方向にスライド可能に収容しており、このスライドによって、2速摩擦板35Bは、2速保持器21Bに回り止めされた状態のまま、2速出力ギヤ10Bの側面に接触する位置と離反する位置との間で、2速保持器21Bに対して軸方向に移動可能となっている。
2速摩擦板35Bの突片36の先端に凹部37が形成されて、間座32の外周には、凹部37に係合する凸部38が形成されている。そして、凹部37と凸部38は、2速摩擦板35Bが2速出力ギヤ10Bの側面から離反した位置にある状態では、凹部37と凸部38が係合することで、2速摩擦板35Bを間座32を介して出力軸8に回り止めし、このとき、2速摩擦板35Bに回り止めされた2速保持器21Bが中立位置に保持されるようになっている。また、2速摩擦板35Bが2速出力ギヤ10Bの側面に接触する位置にある状態では、凹部37と凸部38の係合が解除することで、2速摩擦板35Bの回り止めが解除されるようになっている。
2速摩擦板35Bと2速カム部材18Bの間には、軸方向に圧縮された状態で2速離反ばね39Bが組み込まれており、この2速離反ばね39Bの弾性復元力によって2速摩擦板35Bが2速出力ギヤ10Bの側面から離反する方向に付勢されている。
2速離反ばね39Bは、間座32の外周に沿って巻回されたコイルスプリングであり、その一端が2速ワッシャ39Bを介して2速カム部材18Bの軸方向端面で支持されている。2速ワッシャ39Bは、2速カム部材18Bの軸方向端面の径方向溝29を覆うように環状に形成されている。
シフトリング34は、1速摩擦板35Aを押圧して1速出力ギヤ10Aの側面に接触させる1速シフト位置SP1fと、2速摩擦板35Bを押圧して2速出力ギヤ10Bの側面に接触させる2速シフト位置SP2fとの間で軸方向に移動可能に支持されている。また、シフトリング34を1速シフト位置SP1fと2速シフト位置SP2fの間で軸方向に移動させるシフト機構41が設けられている。シフト機構41は、前述のように変速比切換機構40の一部を構成する。
図18、図19に示すように、シフト機構41は、シフトリング34を転がり軸受42を介して回転可能に支持するシフトスリーブ43と、そのシフトスリーブ43の外周に設けられた環状溝44に係合する二股状のシフトフォーク45と、シフトフォーク45が固定されたシフトロッド46と、シフトモータである変速切換アクチュエータ47と、変速切換アクチュエータ47の回転をシフトロッド46の直線運動に変換する運動変換機構48(送りねじ機構等)とからなる。
図19に示すように、シフトロッド46は、出力軸8に対して間隔をおいて平行に配置され、ハウジング11内に組み込まれた一対の滑り軸受49で軸方向にスライド可能に支持されている。シフトリング34とシフトスリーブ43の間に組み込まれた転がり軸受42は、シフトリング34とシフトスリーブ43のいずれに対しても軸方向に非可動となるように組み付けられている。
このシフト機構41は、変速切換アクチュエータ47の回転が運動変換機構48により直線運動に変換されてシフトフォーク45に伝達し、そのシフトフォーク45の直線運動が転がり軸受42を介してシフトリング34に伝達することにより、シフトリング34を軸方向に移動させる。
図15に示すように、シフトフォーク45と環状溝44の間の両側の軸方向隙間には、軸方向に圧縮可能な予圧ばね50が組み込まれている。これにより、シフトリング34で1速摩擦板35Aを押圧して1速出力ギヤ10Aの側面に接触させるときに、シフトスリーブ43に対するシフトフォーク45の軸方向の相対位置を調節することによって予圧ばね50のばね力を調節し、1速摩擦板35Aと1速出力ギヤ10Aの接触面間の摩擦力を調整することが可能となっている。また、シフトリング34で2速摩擦板35Bを押圧して2速出力ギヤ10Bの側面に接触させるときも、2速摩擦板35Bと2速出力ギヤ10Bの接触面間の摩擦力を調整することが可能となっている。
図3に示すように、出力軸8には、出力軸8の回転をディファレンシャル6に伝達するディファレンシャル駆動ギヤ51が固定されている。
ディファレンシャル6は、一対の軸受52で回転可能に支持されたデフケース53と、デフケース53の回転中心と同軸にデフケース53に固定され、ディファレンシャル駆動ギヤ51に噛合するリングギヤ54と、デフケース53の回転中心と直角な方向にデフケース53に固定されたピニオン軸55と、ピニオン軸55に回転可能に支持された一対のピニオン56と、その一対のピニオン56に噛合する左右一対のサイドギヤ57とからなる。左側のサイドギヤ57には、左側の車輪に接続されたアクスル58の軸端部が接続され、右側のサイドギヤ57には、右側の車輪に接続されたアクスル58の軸端部が接続されている。出力軸8が回転するとき、出力軸8の回転はディファレンシャル駆動ギヤ51を介してデフケース53に伝達され、そのデフケース53の回転がピニオン56とサイドギヤ57を介して左右の車輪に分配される。
以下に、車両用モータ駆動装置Aの動作例を説明する。
まず、図15に示すように、1速摩擦板35Aが1速出力ギヤ10Aの側面から離反し、かつ、2速摩擦板35Bも2速出力ギヤ10Bの側面から離反した状態では、1速保持器21Aは1速スイッチばね22Aの弾性力により中立位置に保持され、2速保持器21Bも2速スイッチばね22Bの弾性力により中立位置に保持されるので、1速の2ウェイローラクラッチ16Aはローラ20の係合が解除された状態となり、2速の2ウェイローラクラッチ16Bもローラ20の係合が解除された状態となる。
この状態では、図3に示す電動モータ3の駆動により入力軸7が回転しても、1速の2ウェイローラクラッチ16Aと2速の2ウェイローラクラッチ16Bによって回転の伝達が遮断されるので、1速出力ギヤ10Aおよび2速出力ギヤ10Bは空転し、入力軸7の回転は出力軸8に伝達されない。
次に、シフト機構41を作動させて、図15に示すシフトリング34を1速出力ギヤ10Aに向けて移動させると、1速摩擦板35Aが1速出力ギヤ10Aの側面に接触し、その接触面間の摩擦力によって1速摩擦板35Aが出力軸8に対して相対回転し、この1速摩擦板35Aに回り止めされた1速保持器21Aが1速スイッチばね22Aの弾性力に抗して中立位置から係合位置に移動するので、1速保持器21Aに保持されたローラ20が、円筒面17とカム面19の間の楔状空間Sの狭まり部分に押し込まれて係合した状態となる。
この状態では、1速出力ギヤ10Aの回転は、1速の2ウェイローラクラッチ16Aを介して出力軸8に伝達され、出力軸8の回転が、ディファレンシャル6を介してアクスル58に伝達される。その結果、図1に示す電気自動車EVにおいては、駆動輪としての前輪1が回転駆動され、図2に示すハイブリッド車HVにおいては補助駆動輪としての後輪2が回転駆動される。
次に、シフト機構41の作動により、シフトリング34を1速シフト位置から2速シフト位置に向かって軸方向移動させると、1速摩擦板35Aと1速出力ギヤ10Aの接触面間の摩擦力が小さくなるので、1速スイッチばね22Aの弾性力により1速保持器21Aが係合位置から中立位置に移動し、この1速保持器21Aの移動によって1速の2ウェイローラクラッチ16Aの係合が解除される。
シフトリング34が2速シフト位置に到達すると、2速摩擦板35Bがシフトリング34で押圧されて2速出力ギヤ10Bの側面に接触し、その接触面間の摩擦力によって2速摩擦板35Bが出力軸8に対して相対回転し、2速摩擦板35Bに回り止めされた2速保持器21Bが2速スイッチばね22Bの弾性力に抗して中立位置から係合位置に移動するので、2速保持器21Bに保持されたローラ20が、円筒面17とカム面19の間の楔状空間Sの狭まり部分に押し込まれて係合した状態となる。
この状態では、2速出力ギヤ10Bの回転は、2速の2ウェイローラクラッチ16Bを介して出力軸8に伝達され、出力軸8の回転がディファレンシャル6を介してアクスル58に伝達される。
同様に、シフトリング34を2速シフト位置から1速シフト位置に軸方向移動させることにより、2速の2ウェイローラクラッチ16Bの係合を解除して、1速の2ウェイローラクラッチ16Aを係合させることができる。
ところで、1速の2ウェイローラクラッチ16Aを係合解除するときに、1速の2ウェイローラクラッチ16Aを介してトルクが伝達していると、そのトルクがローラ20を円筒面17とカム面19の間の楔状空間Sの狭まり部分に押し込むように作用し、1速の2ウェイローラクラッチ16Aの係合解除が妨げられる。そのため、シフト機構41の作動により、シフトリング34が1速シフト位置SP1fから2速シフト位置SP2fに向かって軸方向移動を開始したときに、1速摩擦板35Aが、1速出力ギヤ10Aの側面から既に離反しているにもかかわらず、1速の2ウェイローラクラッチ16Aの係合が解除されない可能性がある。
このため、1速の2ウェイローラクラッチ16Aを確実に係合解除するためには、シフト機構41の作動により、1速摩擦板35Aを1速出力ギヤ10Aの側面から離反させるだけでなく、電動モータ3の出力を制御して、入力軸7と出力軸8の間で伝達するトルクを変化させる必要がある。2速の2ウェイローラクラッチ16Bを係合解除するときも同様である。
そこで、上記制御システムでは、図8に示す変速制御装置により、電動モータ3と変速切換アクチュエータ47を制御し、この制御により1速の2ウェイローラクラッチ16Aまたは2速の2ウェイローラクラッチ16Bの係合を解除するときの動作の信頼性を確保している。
以上説明した変速制御方法によると、目標変速段クラッチ締結過程では、目標変速段の摩擦板35A,35Bと外輪35,35を当接させた後、電動モータ3の回転数を回転数制御する。この回転数制御を複数段に分けて行うことにより、目標変速段のローラクラッチ16A,16Bを締結させる。このように回転数制御を複数段に分けて行うことで、目標変速段の摩擦板35A,35Bと外輪35,35を当接後、ローラクラッチ16A,16Bが締結するまでの時間を短縮し、且つ締結時のショックトルクと異音の低減を図ることができる。
目標変速段クラッチ締結過程は、複数段の回転数制御にて、電動モータ3を加速して、目標変速段のローラクラッチ16A,16Bの外輪23,23と内輪18A,18Bの回転数差を、定められた回転数差よりも大きくする加速段階と、この加速段階の後、電動モータ3を減速して外輪23,23と内輪18A,18Bの回転数差を、前記加速段階の回転数差よりも小さくする減速段階とを含む。前記のように加速段階で電動モータ3を加速することで、目標変速段の摩擦板35A,35Bと外輪23,23の当接完了後、ローラクラッチ16A,16Bが締結するまでの時間を短縮することができる。その後、減速段階で、電動モータ3を減速して外輪23,23と内輪18A,18Bの回転数差を、加速段階の回転数差よりも小さくすることで、ローラクラッチ締結時のショックトルクと異音の低減を図ることができる。
目標変速段クラッチ締結過程では、電動モータ3の回転数に使われる電流の制限値を、徐々に変化させる過程を含む。このため、電動モータ3の回転数の変化率を小さくすることができ、これにより、歯車間のバックラッシュに起因する異音の低減を図ることができる。
目標変速段クラッチ締結過程での回転数制御を2段階で行い、1段階目における目標変速段の目標回転数の閾値Aを、2段階目における目標変速段の目標回転数の閾値Bよりも大きく設定している。1段階目の回転数制御実施時、目標変速段の目標回転数の閾値Aを前記のように高く設定すると、ローラ20の移動速度が高くなるために、ローラ20を移動させる時間を短縮することができる。2段階目の回転数制御実施時、目標変速段の目標回転数の閾値Bを前記のように低く設定すると、ローラ20の移動速度が1段階目よりも相対的に低くなる。このため、ローラ20を楔状空間Sの狭まり部分に押し込んで締結させるときに、ショックトルクと異音が生じにくくなる。
3…電動モータ
4…モータ軸
5…変速機
7…入力軸
16A,16B…ローラクラッチ
18A,18B…内輪
19…カム面
20…ローラ
21A,21B…保持器
23…外輪
35A,35B…摩擦板
40…変速比切換機構
45…シフト部材
47…変速切換アクチュエータ
82…現変速段クラッチ解除手段
85…目標変速段クラッチ締結手段

Claims (8)

  1. 互いに変速比が異なる複数の変速段のギヤ列と、走行用の電動モータの出力軸であるモータ軸に連結された入力軸と前記各変速段のギヤ列との間にそれぞれ介在し断続の切換が可能な各変速段の2ウェイ型のローラクラッチと、これら各ローラクラッチの断続の切換を行う変速比切換機構とを有する変速機を備え、
    前記各ローラクラッチは、内輪のカム面と外輪間に設けられた各楔状空間にローラが介在し、各ローラが楔状空間の狭まり部分に係合することで接続状態となり、保持器により各ローラを楔状空間の広がり部分に位置させることで切断状態となる構成であり、
    前記変速比切換機構は、保持器に連結されて回転する摩擦板の外輪への接触と離間とを変速切換アクチュエータによるシフト部材の進退によって切り換える機構である、
    電気自動車における変速制御方法において、
    目標変速段への変速指令に応答して、前記変速切換アクチュエータにより前記シフト部材を動作させ、前記電動モータのトルクを除荷して現変速段のローラクラッチの係合を解除する現変速段クラッチ解除過程と、
    前記目標変速段の摩擦板と外輪を当接させた後、前記電動モータの回転数を回転数制御し、この回転数制御を複数段に分けて行うことにより、目標変速段のローラクラッチを締結させる目標変速段クラッチ締結過程と、
    を有することを特徴とする電気自動車の変速制御方法。
  2. 請求項1において、前記目標変速段クラッチ締結過程は、複数段の回転数制御にて、前記電動モータを加速して、前記目標変速段のローラクラッチの外輪と内輪の回転数差を、定められた回転数差よりも大きくする加速段階と、この加速段階の後、前記電動モータを減速して前記外輪と前記内輪の回転数差を、前記加速段階の回転数差よりも小さくする減速段階とを含む電気自動車の変速制御方法。
  3. 請求項2において、前記目標変速段クラッチ締結過程では、回転数制御に使われる前記回転数差と電流制限値とを、予め設定した制御マップから取り込み、目標変速段のローラクラッチを締結させる電気自動車の変速制御方法。
  4. 請求項3において、前記制御マップは、シフトダウン用とシフトアップ用各々設定されている電気自動車の変速制御方法。
  5. 請求項3または請求項4において、前記制御マップは、車速に応じて設定されている電気自動車の変速制御方法。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記目標変速段クラッチ締結過程では、前記電動モータの回転数に使われる電流の制限値を、徐々に変化させる過程を含む電気自動車の変速制御方法。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、前記目標変速段クラッチ締結過程での回転数制御を2段階で行い、1段階目における目標変速段の目標回転数の閾値Aを、2段階目における目標変速段の目標回転数の閾値Bよりも大きく設定する電気自動車の変速制御方法。
  8. 互いに変速比が異なる複数の変速段のギヤ列と、走行用の電動モータの出力軸であるモータ軸に連結された入力軸と前記各変速段のギヤ列との間にそれぞれ介在し断続の切換が可能な各変速段の2ウェイ型のローラクラッチと、これら各ローラクラッチの断続の切換を行う変速比切換機構とを有する変速機を備え、
    前記各ローラクラッチは、内輪のカム面と外輪間に設けられた各楔状空間にローラが介在し、各ローラが楔状空間の狭まり部分に係合することで接続状態となり、保持器により各ローラを楔状空間の広がり部分に位置させることで切断状態となる構成であり、
    前記変速比切換機構は、保持器に連結されて回転する摩擦板の外輪への接触と離間とを変速切換アクチュエータによるシフト部材の進退によって切り換える機構である、
    電気自動車における変速制御装置において、
    目標変速段への変速指令に応答して、前記変速切換アクチュエータにより前記シフト部材を動作させ、前記電動モータのトルクを除荷して現変速段のローラクラッチの係合を解除する現変速段クラッチ解除手段と、
    前記目標変速段の摩擦板と外輪を当接させた後、前記電動モータの回転数を回転数制御し、この回転数制御を複数段に分けて行うことにより、目標変速段のローラクラッチを締結させる目標変速段クラッチ締結手段と、
    を有することを特徴とする電気自動車の変速制御装置。
JP2012135342A 2012-06-15 2012-06-15 電気自動車の変速制御方法および変速制御装置 Pending JP2014001746A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012135342A JP2014001746A (ja) 2012-06-15 2012-06-15 電気自動車の変速制御方法および変速制御装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012135342A JP2014001746A (ja) 2012-06-15 2012-06-15 電気自動車の変速制御方法および変速制御装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2014001746A true JP2014001746A (ja) 2014-01-09

Family

ID=50035120

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012135342A Pending JP2014001746A (ja) 2012-06-15 2012-06-15 電気自動車の変速制御方法および変速制御装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2014001746A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN107514456A (zh) * 2017-08-21 2017-12-26 合肥翔望智能科技有限公司 一种自动挡电动汽车换挡系统
CN108454613A (zh) * 2018-03-28 2018-08-28 重庆长安汽车股份有限公司 一种混合动力汽车及用于混合动力汽车的换挡控制方法
CN109340324A (zh) * 2018-12-19 2019-02-15 绍兴前进齿轮箱有限公司 一种用于轮式挖掘机的动力换档齿轮箱

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN107514456A (zh) * 2017-08-21 2017-12-26 合肥翔望智能科技有限公司 一种自动挡电动汽车换挡系统
CN108454613A (zh) * 2018-03-28 2018-08-28 重庆长安汽车股份有限公司 一种混合动力汽车及用于混合动力汽车的换挡控制方法
CN109340324A (zh) * 2018-12-19 2019-02-15 绍兴前进齿轮箱有限公司 一种用于轮式挖掘机的动力换档齿轮箱

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP2897827B1 (en) Hybrid vehicle including a control device
JP5580217B2 (ja) 車両用モータ駆動装置および自動車
WO2011030670A1 (ja) 車両用モータ駆動装置および自動車
JP5947086B2 (ja) 車両の変速制御装置
JP5822615B2 (ja) 自動クラッチ制御装置およびその変速制御方法
JP2015007459A (ja) 電気自動車の変速制御装置
WO2013058238A1 (ja) 電気自動車の変速制御方法および変速制御装置
WO2012165146A1 (ja) 車両用モータ駆動装置の変速制御方法および自動車の変速制御方法
WO2012137812A1 (ja) 車両用モータ駆動装置および自動車
JP2014121225A (ja) 電気自動車の変速制御装置および変速制御方法
WO2013176074A1 (ja) 電気自動車の変速制御方法および変速制御装置
JP2014001746A (ja) 電気自動車の変速制御方法および変速制御装置
JP2013087800A (ja) デュアルクラッチ式自動変速機およびその変速制御方法
JP5387967B2 (ja) 車両用モータ駆動装置および自動車
JP2013152001A (ja) 電気自動車の変速制御方法および変速制御装置
JP2013130266A (ja) 車両用モータ駆動装置
JP5376154B2 (ja) ハイブリッド電気自動車の変速制御装置
JP2014047817A (ja) 電気自動車の変速制御方法および変速制御装置
JP2013255329A (ja) 電気自動車の変速制御方法および変速制御装置
JP4616625B2 (ja) 自動変速制御装置
JP2014023415A (ja) 電気自動車の変速制御方法および変速制御装置
JP2013087778A (ja) デュアルクラッチ式自動変速機およびその変速制御方法
WO2013183482A1 (ja) 電気自動車の変速制御方法および変速制御装置
JP2014045561A (ja) 電気自動車の変速制御方法および変速制御装置
JP2013225955A (ja) 電気自動車の変速制御方法および変速制御装置