JP2014530019A - グリシルtRNA合成酵素及びカドヘリンを利用した癌予防又は治療剤のスクリーニン方法(methodforscreeninganagentpreventingortreatingcancerusingglycyl−tRNAynthetaseandcadherin) - Google Patents
グリシルtRNA合成酵素及びカドヘリンを利用した癌予防又は治療剤のスクリーニン方法(methodforscreeninganagentpreventingortreatingcancerusingglycyl−tRNAynthetaseandcadherin) Download PDFInfo
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Abstract
Description
(a)試験製剤の存在下又は非存在下で、GRS(glycyl-tRNAynthethase)又はこの断片と、CDH(cadherin)を接触させる段階;
(b)試験製剤の存在下又は非存在下で、前記GRSとCDHの結合水準を測定する段階;
(c)試験製剤が存在する場合のGRS又はこの断片とCDH間の結合水準と、試験製剤が存在しない場合のGRS又はこの断片とCDH間の結合水準を比較する段階;及び
(d)GRS又はこの断片とCDH間の結合水準を変化させた試験製剤を確認する段階を含む癌の予防又は治療剤のスクリーニング方法を提供することである。
(a)試験製剤の存在下又は非存在下で、GRS又はこの断片、CDH及び試験製剤を接触させる段階;
(b)試験製剤の存在下又は非存在下で、前記GRSとCDHの結合水準を測定する段階;
(c)試験製剤が存在する場合のGRS又はこの断片とCDH間の結合水準と、試験製剤が存在しない場合のGRS又はこの断片とCDH間の結合水準を比較する段階;
(d)GRS又はこの断片とCDH間の結合水準を変化させた試験製剤を確認する段階;
(e)前記(d)段階で確認された試験製剤をCDH発現細胞に接触させる段階;及び
(f)CDH発現細胞のアポトーシス(apoptosis)を測定する段階を含むことを特徴とする、癌の予防及び治療剤のスクリーニング方法を提供することである。
(a)試験製剤の存在下又は非存在下で、GRS又はこの断片と、CDHを接触させる段階;
(b)試験製剤の存在下又は非存在下で、前記GRSとCDHの結合水準を測定する段階;
(c)試験製剤が存在する場合のGRS又はこの断片とCDH間の結合水準と、試験製剤が存在しない場合のGRS又はこの断片とCDH間の結合水準を比較する段階;及び
(d)GRS又はこの断片とCDH間の結合水準を変化させた試験製剤を確認する段階を含む癌の予防又は治療剤のスクリーニング方法を提供する。
(a)試験製剤の存在下又は非存在下で、GRS又はこの断片、CDH及び試験製剤を接触させる段階;
(b)試験製剤の存在下又は非存在下で、前記GRSとCDHの結合水準を測定する段階;
(c)試験製剤が存在する場合のGRS又はこの断片とCDH間の結合水準と、試験製剤が存在しない場合のGRS又はこの断片とCDH間の結合水準を比較する段階;
(d)GRS又はこの断片とCDH間の結合水準を変化させた試験製剤を確認する段階;
(e)前記(d)段階で確認された試験製剤をCDH発現細胞に接触させる段階;及び、
(f)CDH発現細胞のアポトーシスを測定する段階を含むことを特徴とする癌の予防及び治療剤のスクリーニング方法を提供する。
他の定義がない限り、本明細書における全ての技術的及び科学的用語は、当業者により一般的に理解されるものと同一の意味を有する。下記の参考文献は、本発明の明細書で使用された用語の一般的な定義を有する技術の一つを提供する。Singleton et al.,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOTY(2d ed. 1994); THE CAMBRIDGE DICTIONARY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY(Walker ed.,1988); and Hale & Marham,THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY。また、次の定義は、本発明の実施のため、読者に役立つように提供する。
(a)試験製剤の存在下又は非存在下で、GRS又はこの断片と、CDHを接触させる段階;
(b)試験製剤の存在下又は非存在下で、前記GRSとCDHの結合水準を測定する段階;
(c)試験製剤が存在する場合のGRS又はこの断片とCDH間の結合水準と、試験製剤が存在しない場合のGRS又はこの断片とCDH間の結合水準を比較する段階;
(d)GRS又はこの断片とCDH間の結合水準を変化させた試験製剤を確認する段階を含む癌の予防又は治療剤のスクリーニング方法を提供する。
(a)試験製剤の存在下又は非存在下で、GRS又はこの断片と、CDHを接触させる段階;
(b)試験製剤の存在下又は非存在下で、前記GRSとCDHの結合水準を測定する段階;
(c)試験製剤が存在する場合のGRS又はこの断片とCDH間の結合水準と、試験製剤が存在しない場合のGRS又はこの断片とCDH間の結合水準を比較する段階;
(d)GRS又はこの断片とCDH間の結合水準を変化させた試験製剤を確認する段階を含む癌の予防又は治療剤のスクリーニング方法を提供することができる。
(a)試験製剤の存在下又は非存在下で、GRS又はこの断片と、CDHを接触させる段階;
(b)試験製剤の存在下又は非存在下で、前記GRSとCDHの結合水準を測定する段階;
(c)試験製剤が存在する場合のGRS又はこの断片とCDH間の結合水準と、試験製剤が存在しない場合のGRS又はこの断片とCDH間の結合水準を比較する段階;
(d)GRS又はこの断片とCDH間の結合水準を変化させた試験製剤を確認する段階;
(e)前記(d)段階で確認された試験製剤をCDH発現細胞に接触させる段階;及び
(f)CDH発現細胞のアポトーシスを測定する段階を含むことを特徴とする癌の予防又は治療剤のスクリーニング方法でもある。
(ii)GRS又はCDHの活性を測定して、これの活性を変化させる試験製剤を選別する段階;
1次アッセイ段階では、GRS又はCDHの多様な生物学的活性に対する調節製剤がアッセイされることもある。試験製剤は、発現水準、例えば、転写又は翻訳を調節する活性があるかについてアッセイされることもある。さらに、前記試験製剤は、細胞内水準又は安全性、例えば、翻訳後修飾又は加水分解を調節する活性があるかについてアッセイされることもある。
1.分泌アッセイ
RAW264.7細胞を調整培地で培養した。10%TCAを使用して、培地を集めて蛋白質を沈殿させた。沈殿した蛋白質は、SDS-PAGEを通じて分離し、免疫ブロッティングをするためにPVDFに移した。
U937又はRAW264.7細胞(0.125×106 cells〜1×106 well)を、H460又はHCT116細胞のために接種して、6-well platesで12時間培養した。次に、血清のない培地に移して6時間培養した。GRSの分泌可否を調べるため、培養した培地を集めて10%TCAを利用して蛋白質を沈殿させた。共同培養した大食細胞/単核球と腫瘍間で生理的相互作用がGRS分泌に必須的であるか否かを証明するために、0.4μmの孔を有する挿入物が挿入できる24-well transwell細胞培養チャンバを使用した。H460細胞をこのチャンバに接種して、U937細胞は挿入物内に接種して、H460:U937を1:2の比でそれぞれ別々に12時間培養した。挿入物をH460が培養されているチャンバに移した。培養24時間後、挿入物を除去して分泌物分析のために培地を集めた。
テストされた細胞を定められた時間に、多様な濃度の組替えGRSで処理後、回収した。回収した細胞をPBSで洗浄後、70%エタノールで1時間固定させ、PBSに溶かした50μg/ml propidium iodide溶液で染色した。CellQuestプログラムを利用したFACSを使用して、サンプル当り20,000個の細胞を読んだ。MTT分析のため、5mg/ml濃度のMTT溶液20μlを培養培地に添加した。4時間培養後、200μlのDMSOを添加した。570nMnの吸光度をmicroplate reader(TECAN,Mannedorf,Swiss)で測定した。pro-caspase 3からの活性化されたcaspase 3の生成は、それぞれの抗体を利用した免疫ブロット法で検出した。
GRSの受容体を確認するため、Maxisorp plate(Nunc,Rochester,NY)をELISA検出に使用した。plateに、PBSに溶かした精製されたhis-タグGRS(1μg/ml)又はBSA(1μg/ml)でコーティングして、4%脱脂乳を処理した。1μg/mlの融合cadherinファミリー蛋白質をplateに添加して、0.05%のPBST(PBS-tris)で洗浄後、抗-human IgG1 Fc-HRPを入れて培養した。培養後、洗浄して、TMB(tetramethylbenzidine)溶液を添加して、450nMで吸光度を測定した。相互作用を確認するために、1μg/mlの精製されたFc-CDH2,6,18に1μg/mlのHis-GRSを入れて2時間培養した。この反応は、蛋白質A/GアガロースとFc-融合cadherinsの免疫学的沈殿を起こして、複合体検出のために抗-GRSを利用して、免疫ブロッティングを行った。
動物実験は、ソウル大学校大学動物管理及び使用委員会指針を遵守して行った。BALB/cヌード雌性マウスに20-gauge注射を使用して、皮下に3×107細胞のHCT116,SN12とRENCAを注入して、発癌を誘導した。2週毎に腫瘍の成長を確認して、腫瘍形成が観察されるとキャリパスで大きさを測定した(腫瘍の量は長さ×幅2×0.52で計算した)。伸長腫瘍細胞であるSN12とRENCAを5日間育てながら、His GRS蛋白質を腹膜内部に4日間毎日注入した。復帰モデルを作るため、腫瘍細胞を9日間育てて、His GRS蛋白質を腫瘍内に注入した。His GRS蛋白質を腫瘍細胞に注入するか又は注入せずに成長モデルを作った。犠牲にした後、腫瘍の重さを測定して、免疫蛍光染色のために、最適の切断温度(OCT)混合物に深く差込んだ。10μmに切断された凍結切片をスライドに付着させて、PBSを処理後、4%パラホルムアルデヒドで固定させた。2%CASが含有されたPBSを処理して、Yo-Pro-1(Invitrogen)で37℃で2時間染色した。0.1%Tween20が含有されたPBSでスライドを洗浄して、DAPIで核を37℃で30分間染色した。付着した切片を共焦点免疫蛍光顕微鏡で観察した。
RAW264.7,SH-SY5Y,HSF(ヒトの皮膚繊維芽細胞)、HEK293、BV2,MCF-7,SN12,SK-BR-3,BT474、HeLa細胞を、15%牛胎兒血清,50μg/mlストレプトマイシン,ペニシリンを添加したDulbecco's modified Eagle's medium(DMEM)培地で培養した。A549,H322,H469,Caki-1,RENCA,HT1080とJurkat細胞の培養のため、前記の通り、添加物を添加したRPM1640培地を使用した。full-length human GRS(Abcam,Cambrage,UK)に対して、ウサギの多重クローン抗体を使用して、ウェスタンブロッティング分析をした。CDH6を標的とするSi-RANs(5'UUUCAUAGAACUCAGCAAAUUCUGG-3'(配列番号18)と5'-UAAUAAUGAAGAGAUCUCCUGCUCC-3'(配列番号19))をInvitrogen(Carlsbad,CA)から購入して使用した。陰性対照群にStealth universal RNAi(Invitrogen)を使用した。
685個のアミノ酸を符号化するHuman GRS cDNAをpET-28のEcoRIとXhoI制限酵素位置にクローニングして、E.coli RosettaでIPTG誘導により過発現を確認した。nickel affinity chromatography(Invitrogen)を利用して、マニュアル指示の通りにHIS-タグGRSを精製した。GST-GRS切片も、E.coli RosettaでIPTG誘導により発現を確認した。GRS-fusion蛋白質は、glutathione-セファロースに0.5%Triton X-100を含有するPBS緩衝溶液を使用して精製した。lipopolysaccharide(LPS)を除去するために、100mM NaClを含有した10mM pyrogen-free potassium phosphate緩衝溶液(pH6.0)に蛋白質溶液を希釈した。希釈後、GRS含有溶液を、同じ緩衝溶液で予め平衡にしたpolymyxin resin(Bio-Rad)に入れて、2時間放置後除去した。LPS残余物を除去するために、溶液に20%グリセロールを含有したPBSを入れて希釈し、Mustang E membrane(Pall Gelman Laboratory,Ann Arbor,USA)のAcrodisc unitを通過させてろ過した。
RAW264.7細胞は、培地の70%程度に増殖するまで培養した。細胞を2回洗浄して、血清とグルコースの無いDMEM培地で培養した。アドリアマイシン(1mg/ml,Calbiochem,San Diego,CA),シクロヘキシミド(1ug/ml,Sigma St. Louis,MO)を含有したTNF-a(1ng/ml,BD Pharmingen,San Diego,CA),Fas-リガンド(10ng/ml,Millipore)又は抗-Fas抗体(5μg/ml,clone CH11,Millipore,Billerice,MA)を血清の無い培地に追加添加した。定められた時間毎に培養培地を集めて、500gで10分間遠心分離し、汚染物を除去するために、20,000gで15分間遠心分離した。4℃で12時間10%TCAを処理した上澄液を、18,000gで15分間遠心分離して蛋白質を得た。得られた沈殿物を100mM HEPES緩衝液(pH8.0)に溶かして、10%SDS/PAGEで分離した後、蛋白質をPVDF membraneでトランファーさせて多重クローン抗体で免疫ブロッティングを行った。上澄液中の一部を抗-IgGで予め除去して、抗 -GRSを入れて4℃で2時間放置した。これにProtein A アガロース(Invitrogen)を添加してその混合物を4℃で4時間放置した。Protein A アガロース ビーズを沈殿させて、150mM NaCl,1%Triton X-100,10mMNaF,1mM sodium orthovanadate,10%グリセロールとprotease阻害剤(Calbiochem)を含有した50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.5)で3回洗浄後、結合した蛋白質を同じ緩衝液を使用して除去した。
RAW264.7細胞を6-well皿に接種して12時間培養した。細胞を2回洗浄後、表示した条件の培地で培養した。培地内のLDH含量を測定するために、培地を集めて2,000gで15分間遠心分離した。上澄液を回収し、LDH-cytotoxicity assay kit(BioVision viw,CA)を使用して、指示された方法によりLDH酵素活性を測定した。全体細胞の内のパーセンテージでLDH放出の程度を示し、細胞生存率を計算した。免疫蛍光染色法で膜保存の程度を観察するために、22×22mm cover glassesに細胞を接種して24時間培養した。培養皿をPBSで2回洗浄して、表示した条件の培地で培養した。細胞を4%パラホルムアルデヒドで10分間固定させて、冷たいPBSで2回洗浄した。カバーガラスにPBSに溶かした3%CASを添加して30分間培養後、PBSに50μg/ml propidium iodide,5uM Yo-Pro-1(Invitrogen)を入れて溶かした溶液を添加して、1時間培養した。核は4',6-diamidino-2-phenylindole dihydrochloride(DAPI)を使用して染色した。細胞を蛍光顕微鏡に固定させて観察した。
6-well皿に細胞を接種して12時間培養した。ビオチンが添加されたGRSを培養培地に入れて定められた時間培養した。細胞を冷たいPBSで4回洗浄後、150mM NaCl,2mM EDTA,1%Triton X-100,1%sodium deoxycholate,10mM NaF,1mM sodium orthovanadate,10%グリセロールと蛋白質分解酵素阻害剤が含有された50mM Tris-HCl(pH7.4)緩衝液で溶解させて、18,000gで15分間遠心分離した。抽出された蛋白質(30μg)をSDS/PAGEで分解し、ストレプトアビジン-附Horseradish peroxidase(HRP)(Pierce,Rockford,IL)を使用して検出した。組替えGRS(1.5mg)をビオチン化させるために、PBSに溶かした0.25mg sulfo-NHS-SS-biotin(Pierce)を入れて4℃で2時間放置した。免疫蛍光染色法でGRSの細胞との結合を確認するために、22×22mmカバーガラスに細胞を接種して12時間培養した。培養皿にビオチン添加GRS又はBSAを入れて1時間培養した。細胞に4%パラホルムアルデヒドを入れて10分間固定後、冷たいPBSで2回洗浄した。PBSに溶かした3%CASをカバーガラスに添加して30分間培養し、Alexa488-付着ストレプトアビジン(invitrogen)でビオチン結合GRSを表示した。細胞は共焦点免疫蛍光顕微鏡に固定して観察した。fiow cytometryでGRSの細胞結合程度を観察するために、特異的si-RNAを細胞に感染させて48時間培養した。前記の方法で処理した細胞をPBSで3回洗浄し、FACS緩衝液(2%BSA含有PBS)に溶かしたAlexa488-付着ストレプトアビジン(invitrogen)で1時間染色した。次いで、細胞をPBSで3回洗浄した。cellQuest software(BD Biosciences,Mountain view.CA)プログラムを利用したflow cytometryで細胞を分析した。
Cadherin-Fcfusion蛋白質とGRSの結合は、ProteOn XPR36蛋白質相互作用Array System(BioRad)を利用したSPR技術により確認した。CDH6、18 and IgG(陰性対照群)を製造社の指示によるアミン結合方法により、GLCゴールドチップに固定させた。精製したGRSを多様な濃度で0.005%Tween 20を含有したPBSに溶かした流動細胞に、100μl/minで60秒間入れて600秒間分離させた。結合程度は共鳴単位(RU)の変化で確認し、共鳴単位は1pg/mm2に定義した。Sensogramは対照群表面から記録された反応を差引いたものにした。平衡分解定数はProteon ManagerTM software(ver2.1)を利用して計算した。資料はLangmuir 1:1結合モデルを使用して評価した。
細胞を6-well皿で12時間培養した後、2回洗浄して刺戟を与えた。random hexzmerと共にRNeasy mini kit(QIAGEN,Valencia,CA)を使用して総RNAsを抽出し、GRS特異的プライマーとGAPDHを入れてRT-PCRを行った。
シトクロム Cの転移はウェスタンブロットで確認した。HeLa細胞に150nM GRSを入れて定められた時間培養した後、細胞を集めて、10mM 塩化カリウム,1.5mM MgCl2、0.5mM EDTA,1mM DTTと20mM蛋白質分解酵素阻害剤を入れたHEPES(PH7.5)貯蔵性緩衝液(氷に5分間入れておいた)で溶かして6回均質化した。均質化したサンプルを10,000gで10分間遠心分離した。上澄液から得た蛋白質でSDS-PAGEを実施して、シトクロム Cとチューブリンに対する多重クローン抗体を探針に使用した。
<実験結果>
1.大食細胞からGRSの分泌
3人の別々の人の血清と2匹の別々のCL57BL/6の血清からGRSが検出された。β-チューブリン、LHD又はGAPDHでもない細胞溶解の不足は、一括して同じサンプルから検出された。このような結果は、分泌されたGRSの生理学的機能についてより多く知るきっかけとなった。癌の微細的環境から分泌されたGRSの生理学的機能に対する手掛かりを掴むために、GRSの分泌が、培養された細胞から検出できるのか、もし検出できるとすれば、そのような分泌が細胞のタイプによって特異的なものであるのか否かについて実験した。6種の相異する細胞株(H322,A549,HEK293、HCT116,RAW264.7,HeLa)を血清の無い培地で12時間培養して、TCAを使用した培地から分泌された蛋白質を沈殿させた。沈殿された蛋白質を抗GRS多重抗体(α-GRS)を利用してウェスタンブロットで検出した。実験に使用した6種の細胞の内、ただ、マウスの大食細胞細胞株であるRAW264.7でのみGRSが検出された。同じ条件下でチューブリンは、培地に放出されず、培地に存在するGRSは、細胞溶解によるものでないことが観察された(図1A)。
飢餓条件下で、GRS分泌が他の刺戟によって生じるか否かを知るために、RAW264.7細胞にシグナル分子を処理した。これらには、大食細胞からサイトカイン生産を調節するエストロゲン、大食細胞分化に影響を及ぼすTNF-α、大食細胞と腫瘍細胞から分泌されるEGF、追加してDNA損傷を通じた細胞死滅を誘導するアドリアマイシンが含まれる。これら4種のリガンドそれぞれに6時間かけて処理した後、アドリアマイシンだけがGRS分泌を誘導した(図8B)。このような結果は細胞死滅ストレスがGRSの分泌に重要であることを示した。このような機能性を有するRAW264.7細胞に、他の細胞死滅ストレスを処理して、時間別にGRS分泌を比較した。アドリアマイシン処理時に、グルコース欠乏とシクロヘキシミドを入れたTNF-αを処理した結果、RAW264.7からGRSが時間依存的に分泌されたが、ヒトの大腸癌細胞であるHCT116と子宮頸部癌細胞であるHeLaでは分泌されなかった(図8C)。このような3種の細胞死滅ストレスはU937細胞からもGRS分泌を誘導した(図8D)。GRSと対照的に、KRS,YRS,他に知られたAARSサイトカインは、アドリアマイシンを処理したU937細胞からは検出されなかった(図8E)。
多様な機能の内、大食細胞は癌細胞微細環境の免疫監視において重要な役割をする。大食細胞が腫瘍細胞に接近することが、GRS分泌に影響を及ぼすかを確認するために、H460(human large cell lung tumor)とU937細胞を共同培養した。GRSの分泌のみが有意に観察され、KRSとYRSとWRSの分泌は観察されなかった。U937細胞の増加に従って、その分泌量も増加した(図2A)。
HCT116とU937細胞、H460とRAW264.7細胞の共同培養でもGRS分泌を確認することができた(図2BとC)。追加して共同培養で骨髄由来大食細胞を使用して実験し、生体外アッセイでもGRSが分泌されることを確認した(図2D)。次に、GRS分泌に腫瘍と大食細胞間の物理的接触が求められるかを確認するため、上述した通り、条件培地とTranswell培養皿を使用した(Khodarev et al.,2002.J.Cell.Sci.116,1013-1022)。H460細胞から回収した条件培地は、RAW264.7とU937細胞からのGRS分泌を有意に誘導した(図2E)。Transwell皿チャンバにあるH460と挿入物で培養していたU937細胞をそれぞれ分離した。U937細胞数が増加するにしたがって、GRS分泌量も増加した(図2F)。このような結果は、GRS分泌に癌と大食細胞間の物理的接触が求められないことを示す。
Fasリガンド分泌により、腫瘍細胞が免疫監視網を避けて、細胞周期ストレスと共同培養された腫瘍細胞によりGRS分泌が起り得るので、FasリガンドがGRS分泌に関与するか否かを調べた。このような可能性を確認するために、条件培地にU937細胞に対するFas-抗体を過量添加して、これがGRS分泌を誘導するかを調べた。この処理後、時間に従って培地にGRSが蓄積されることを確認した(図2G)。FasリガンドとGRS分泌間の相関関係を確認するために、共同培養システムに過量の拮抗するFas-抗体を添加した。効果を中和させた後には、培地でGRS分泌が減少した(図2H)。しかしながら、RT-PCR分析法で確認した結果、GRSに該当する遺伝子の転写に、Fasが影響を及ぼすか否かに対する証拠はなかった(図9E)。さらに、シクロヘキシミドとde novo蛋白質合成酵素の封鎖は、GRSの分泌を阻害しなかった(図9F)。これらの結果は、癌細胞由来のFasリガンドによりGRSが分泌するモデルと一致した。
分泌されたGRSの標的細胞を確認するために、ビオチンが添加されたGRSを多様な濃度で処理したヒトの乳房癌細胞であるMCF7,HeLa,HCT116とRAW264.7を培養した。実験の結果、ビオチンが添加されたGRSがHCT116、HeLaとRAW264.7細胞では用量依存的に検出されたが、MCF7では検出されなかった(図3A)。同じ条件でビオチンが添加されたBSAは、4種のどの細胞からも検出されなかった。HeLaとHCT116細胞において時間別にGRSの結合程度を観察した。ビオチンが添加されたGRSの結合は、細胞と共に培養して5分後から検出されて、15〜30分で最高に増加した(図10A)。GRSによる細胞結合特異性を確認するため、標識されていないGRSと共に細胞を15分間培養した後、ビオチンが添加されたGRSを添加した。細胞に標識されていないGRSが予め処理された時、ビオチンシグナルが目立って抑制された(図10B)。GRSの細胞結合は免疫蛍光染色で観察した。染色の強度はGRSの量によって増加したが、標識されていないGRSが添加された時は減少した(図10C)。従って、染色の強度はGRS結合の程度によって特異的である。このような結果から見て、分泌されたGRSは、特に腫瘍細胞と大食細胞を標的としたことが分かる。
GRS分泌がFasのようなアポトーシスリガンドにより誘導されて、腫瘍細胞と結合したGRSが、大食細胞から分泌されるので、GRSが前アポトーシス効果を示すか否かを調べた。細胞生存率と死滅をMTT法で観察し、sub-G1細胞増殖をflow cytometryで確認した。GRSを処理した時、RAW264.7では現れなかったが、HCT116細胞の生存率が投与量依存的に減少した(図3B)。RAW264.7で現れなかったHCT116でのsub-G1の増殖は、GRSの処理によって増加した(図3C)。GRS処理によるアポトーシス細胞死滅は、caspase 3の活性によって確認された(図3D)。BaxとBcl-2の細胞的水準、及びシトクロムCの放出の観察により、GRSのアポトーシス活性を実験した。GRSはBAXの細胞的水準には影響を及ぼさなかったが、anti-アポトーシス mediator Bcl-2のレベルを減少させ(図10D)、細胞死滅のシグナルとして知られるシトクロムCの放出を増加させた(図10E)。加熱不活性化されたGRSは、如何なる前アポトーシス効果をも発揮できず(図3CとD)、基本形態のGRSは、前アポトーシスに重要な影響を及ぼすことが示された。
GRSが生理学的環境で細胞死滅を誘導するかを確認するために、Transwellチャンバに抗-GRS抗体を入れるか又は入れないままで、HCT116とU937を共同培養した。HCT116細胞の生存率は、U937との共同培養により減少した。しかしながら、α-GRSの添加は、U937細胞の生存率において、GRSの効果を損なわせた(図3E)。追加実験で、GRSは、ヒトの肺胞腺癌であるA549とH460,HCT116、HeLaを含むさまざまな腫瘍細胞株の生存率を減少させた。しかし、GRSは、MCF-7,neuroblastomaSH-SY5Y細胞、ヒトの皮膚繊維芽細胞、ヒトの胎児腎臓、RAW264.7細胞の生存率には、影響を及ぼさなかった(図3F)。従って、GRSは、癌細胞特異的に前アポトーシス活性を示した。
GRSの前アポトーシス活性にドメインが及ぼす影響を確認するために、4個の異なる切片の構造物を示す、ヒトのGRSの知られたx-ray crystal構造を使用した(図11Aと11B)。4個の異なる切片の内、3個の可溶性形態(F2〜4)を得た。低い安全性と可溶性のため、GRSのN-terminal切片を得ることは失敗した(F1)。F2〜4切片をそれぞれHeLaとRAW264.7細胞に添加した。150nM濃度のGRSと175アミノ酸C-terminalアンチコドン結合域(ABD)は、HeLa細胞の生存率を減少させた。これとは対照的に、F2とF3切片では、GRS又はABDの活性を比較できなかった。このような結果は、ABDが、GRSの前アポトーシスサイトカイン活性を有する個所であることを示した(図11C)。
分泌されたN-terminal-truncated WRSが血管生成を阻害するためにVE-cacadherinと結合することを勘案して(Tzima et al.,2005.J.Biol.Chem.80,2405-2408)、さまざまなcadherins(CDHs)が腫瘍細胞の生存と悪性に関連のあることが知られているので(Cavallaro and Chrostofori,2004.Net.Rev.Cancer 4,118-132)、GRSが11種の相異するCDH蛋白質と結合できるかを実験した。個別にヒトのIgG1のFc切片と融合する11種の異なるcadherinsの細胞の域とHis GRSの相互作用をELISAアッセイ法で確認した。このスクリーニングは、GRSのCDH6とCDH18との特異的結合を確認するためのものであり、その他のCDHに関するものではない(図4A)。GRのCDH6とCDH18との結合(CDH2とではなく)の可否は、in vitro pull-down assayで確認した(図4B)。
GRSのCDH6とCDH18との結合親和力を表面プラスモン共鳴アッセイ法で測定した。GRSはCDH6とCDH18にそれぞれKD=3.4と1.25nM程度で結合し(図4Cと12A)、IgG蛋白質とは結合しなかった(図12B)。次の研究では、F2とF3でないF4切片で符号化されたABD域でのみ、CDH6と結合することをpull-downアッセイで確認した(図4D)。また、F2とF3でないF4切片のみが、CDH6と結合することをELISAアッセイで確認した(F1切片は解明できない)(図4I)。
CDH6は肝癌、腎臓癌、小さい肺癌細胞(SCLC)の病因と関連があるので(Shimoyama et al.,1995.Cancer Res.55,2206-2211,Li et al.,2005.Anticancer Res.25,377-381)、CDH6が腫瘍細胞からGRSの機能的受容体として作用することができるか、否かを調べた。まず、実験した腫瘍細胞株の内、CDH6蛋白質の発現の程度を確認した。CDH6発現がGRS-非感受性癌細胞(MCF7,SH-SY5Y)ではそうではなかったが、GRS-感受性癌細胞(HCT116、H460,HeLa)の内で、上向調節されたことを確認した(図4E)。ウェスタンブロット分析(図4F)とflow cytometryを利用して、GRSとHCT116との結合が、CDH6転写が非特異的対照群si-RNAではない特異的なsi-RNAによって抑制される時、減少することを確認した(図4Gと12C)。次に、CDH6の可溶性細胞の外部域が、GRSのアポトーシス活性を相殺できるか否かについて実験した、HCT116細胞の生存率から、可溶性CDH6受容体蛋白質の添加により、GRSの影響が減少することを確認した(図4H)。このような結果は、CDH6が腫瘍細胞においてGRSの機能的受容体であることを示す。
GRS処理が誘導する細胞死滅メカニズムを調べるために、HCT116細胞にGRSを処理して、3mitogen-activated蛋白質キナーゼであるERK、p38、MAPK、JNKにおける効果を観察した。リン酸化されたERKとp38MAPKの水準がGRS処理用量と時間によって減少することが確認され、JNKでは確認されなかった(図5Aと13A)。ERKの活性が癌細胞の増殖と生存に関連があることが知られているので(Warner and Mclntosh,2009.Mol.Cell 34,3-11)、癌細胞のGRSに対するアポトーシス敏感性が、ERKの活性状態により決定されるかを実験した。GRS-感受性HCT116、H460、HeLa癌細胞は、ERKのリン酸化が増加された状態であり、一方、GRS-非感受性SH-SY5YとMCF7癌細胞はそうではなかった(図5B)。このような結果は、ERKの活性状態と癌細胞のGRS敏感性とに、量の相関関係があることを示す。
3種のGRS-感受性細胞株の内で、HCT116とH460細胞はERKの活性を導くKRAS変異を含んでいるものとして知られている。Ras-Raf-MEK-ERK經路は癌細胞増殖と活性に重要なシグナル経路である。従って、腫瘍Ras変異によるERKの活性化が、GRS処理に対するアポトーシス敏感性を与えるかを実験した。このような目的で、一般的にGRS処理に無感覚なHEK293細胞を選択した。3種のRas-active突然変異をHEK293で誘導して確立された細胞株を作った。選択された安全な細胞株から染色されたRas突然変異がそれぞれ発現されて、突然変異誘導後、ERKリン酸化が急激に増加した。細胞株にGRSを処理してERKリン酸化での効果を観察した。3種の細胞株において、GRSは顕著にERKのリン酸化を抑制した(図5C)。GRS処理が、Rasを感染させたHEK293細胞の生存率と死滅に影響を及ぼすかを実験した。MTTアッセイとflow-cytometryを使用して、GRS処理が細胞生存を抑制して、3種のRas-transfectantsの死滅を増加させることを確認した。一方、対照群のHEK293細胞ではGRS処理効果が観察されなかった(図5Dと13B)。このような結果は、活性化されたERKの脱リン酸化により、GRSがRas活性化された腫瘍細胞のアポトーシスを誘導できるとの仮説と一致する。
CDH6によるERKリン酸化の陰性的調節が、普遍的に全ての細胞タイプに適用されるかを実験した。実験した細胞株の内、HCT116、renal carcinoma SN12、breast carcinoma cell SK-BR-3、及びrenal carcinoma Caki-1は、高い水準のCDH6とリン酸化されたERK発現を示した(図13C)。しかし、腎臓癌細胞株RENCAと繊維肉腫細胞株(fibrosarcoma cell line)HT1080では、高い水準のERKリン酸化を示したが、CDH6は検出できない水準であった。これとは逆に、breast carcinoma cell line BT474では、高い水準のCDH6を示したにも拘らず、ERKリン酸化は低い水準を示した。HEK293にK,NとHRASを感染させたことは、CDH6の細胞的水準には影響を及ぼさなかった(図13D)。このような全ての結果は、CDH6の細胞的水準がERKの活性と直接的な関連がないことを示した。
多様な細胞株におけるGRS処理によるアポトーシスストレスに対する敏感性をテストした。高い水準のCDH6とERKリン酸化を示す細胞でのみGRS-inducedアポトーシスに敏感性を示した(図5D)。高い水準のCDH6蛋白質とERKリン酸化のGRS-inducedアポトーシスとの相関関係については、8種の細胞株で拡張実験をした。
ERKリン酸化は、upstrean MEK 1と2キナーゼだけでなく、リン酸化酵素によっても調節される(Keyse,2000.Curr.Opin.Cell.Biol.12,186-192,Gronda et al.,2001.Mol.Cell Biol.21,6851-6858,Wang et al.,2003.EMBO J.22,2658-2667)。しかし、MEKのリン酸化は、GRS処理により減少しなかった(data not shown)。GRSがリン酸化酵素の活性化により、ERKのリン酸化を抑制するか否かを調べるために、4種のホスファターゼ阻害剤をHCT116細胞に処理して、ERKのGRS誘導リン酸化にどれ程の影響を及ぼすかを確認した。4種のホスファターゼの内、okadaic acid phosphatase 2A(PP2A)阻害剤が特にERKのGRS依存的阻害を防いだ(図5E)。GRS処理はCDH6とPP2A間の相互作用を弱化させ(図5FとG)、PP2Aの非活性化形態のPP2Aのリン酸化を減少させた(図13E)(Chen et al.,1992.Science 257,1261-1264,Janssens and Goris,2001.Biochem.J.53,417-439)。付随的に、PP2AとERKの相互作用が増加した(図5H)。このような結果から、GRSがCDH6からPP2Aを放出させ、PP2Aの活性を誘導して、ERKを脱リン酸化することが分かる。
GRSが生体内でも活性を有するかについて、その可能性を調べるために、HCT116細胞を利用した異種移植モデルでGRSをテストした。1番目の実験では、HCT116細胞をBalb/C ヌードマウスに注入して、腫瘍の大きさが平均100mm2程度になるまで育てた。9日目に腫瘍細胞にvehicle単独又は10μg又は20μgのGRSを腫瘍に直接注入した。21日目の腫瘍量はvehicleを処理した群において、ほぼ2.5倍増加した。対照的に、GRSの注入は、投与量に従って腫瘍の量を減少させた(図6AとB)。腫瘍の重さは10μgと20μgのGRS処理後、それぞれ56%と34%減少した(図6C)。マウスの体重と体型の変化が殆どないのは、GRSの投与による過毒性が発生しなかったことを示した(図6BとD)。免疫蛍光分析を用いて、腫瘍に20μgのGRSを投与することによって、アポトーシスが誘導されるかを調べた。control組織よりは、GRSを処理した腫瘍組織において、より多い数のYo-Pro-1-positive腫瘍細胞が現れた(図6E)。
腫瘍形成の初期段階で、GRSの効果を実験した。HCT116細胞をヌードマウスに、GRS(20μg)と共に又は無しで注入した。Vehicle controlにおいて、腫瘍量が185mm2にまで増加し、細胞GRSが共に注入された実験群では、腫瘍が成長しなかった(図6FとG)。Vehicle controlと比べた時、GRS処理後の腫瘍の重さは46%まで減少した。GRS処理した動物のHCT116細胞でアポトーシスが明らかに観察された(図6J)。さらに、マウスの体重と体型の変化が殆どないのは、GRS投与による過毒性が発生しなかったことを証明する(図6GとI)。
GRSの触媒域(F2)ではないABD(F4)は、細胞基盤(cell based)アッセイでアポトーシス活性を誘導するに十分であった。生体内でもGRSの二つの域間での区別ができるかを調べるために、Balb/C ヌードマウスにHCT116細胞を20μgの触媒域又はABD切片と共に注入した。F4切片は腫瘍の成長を阻害したが、F2は阻害しなかった(図14AとB)。GRS単独で注入したものと比べると、腫瘍の重さの減少は37%と46%であった(図14C)。二つの切片全てを注入した結果、殆ど毒性を与えなかった(図14D)。従って、in vitro細胞基盤アッセイで示したABDのアポトーシス活性は、生体内でも繰返し確認された。
CDH6及びERKのリン酸化マーカーを導出する腫瘍形成細胞における、GRSにより誘導された強力なアポトーシス活性は、生体内のGRSの抗腫瘍活性が、CDH6依存的であり得る可能性をもたらした。このような可能性を実験するために、腎臓癌細胞におけるGRSの細胞結合の可否とCDH6との関連性を確認した。GRSはCDH6の高い発現率を示す腎臓癌細胞のSN12のみに結合して、低い水準のCDH6発現率を示すRENCA細胞とは結合せず(図7AとC)、これはGRSの活性が、CDH6の発現程度に依存的であることを示す。このような理解は、2種の細胞株から異種移植モデルを使用したGRSの抗腫瘍活性実験により確認された。SN12とRENCA細胞をヌードマウスに移植して、2種の用量(2mg/kgと6mg/kg)でGRS蛋白質を毎日1回全4回腹膜注入した。この二つのモデルにおいて、GRSはSN12の成長だけを阻害し(図7B)、RENCA細胞の成長は阻害できなかった(図7D)。SN12の腫瘍の重さは、2mg/kgと6mg/kg用量のGRS注入後、それぞれ36%と58%程度減少した。しかし、RENCAの腫瘍の重さは同じ条件で、7%と15%減少した(図7E)。動物の体重変化が殆どないのは、2種の異種移植マウスモデルで過毒性が発生しないことを示す(図14EとF)。ERKを処理した状態でGRSの効果を確認するために、ウェスタンブロッティングでERKのリン酸化を観察した。SN12の異種移植サンプルにおいて、ERKの脱リン酸化は、GRS処理群において明らかに観察され(図7F)、GRSのCDH6依存的アポトーシス活性は、in vitroで細胞基盤アッセイにより証明され、in vivoで繰返して確認された。
Claims (9)
- (a)試験製剤の存在下又は非存在下で、GRS(glycyl-tRNAynthethase)又はこの断片、CDH(cadherin)を接触させる段階;
(b)試験製剤の存在下又は非存在下で、前記GRSとCDHの結合水準を測定する段階;
(c)試験製剤が存在する場合のGRS又はこの断片とCDH間の結合水準と、試験製剤が存在しない場合のGRS又はこの断片とCDH間の結合水準を比較する段階;及び
(d)GRS又はこの断片とCDH間の結合水準を変化させた試験製剤を確認する段階を含む癌の予防又は治療剤のスクリーニング方法。 - 前記癌は、黒色腫、白血病、大腸癌、肺癌、肝癌、胃癌、食道癌、膵臓癌、胆嚢癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、睾丸癌、子宮頸部癌、子宮内膜癌、絨毛癌、卵巣癌、乳房癌、甲状腺癌、脳癌、頭頸部癌、皮膚癌、リンパ腫、再生不良性貧血であることを特徴とする請求項1記載のスクリーニング方法。
- 前記GRSは、配列番号1、配列番号5乃至配列番号10からなる群より選ばれたアミノ酸配列からなることを特徴とする請求項1記載のスクリーニング方法。
- 前記断片は、配列番号2又は配列番号11のアミノ酸配列からなることを特徴とする請求項1記載のスクリーニング方法。
- 前記CDHは、CDH6又はCDH18であることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 前記CDH6は、配列番号12,13及び14からなる群より選ばれたアミノ酸配列であることを特徴とする請求項5記載の方法。
- 前記CDH18は、配列番号15,16及び17からなる群より選ばれたアミノ酸配列であることを特徴とする請求項5記載の方法。
- (e)前記(d)段階で確認された試験製剤をCDH発現細胞に接触させる段階;及び
(f)CDH発現細胞のアポトーシスを測定する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。 - 前記CDH発現細胞は、腎臓癌細胞、肝癌細胞、肺癌細胞及び大腸癌細胞からなる群より選ばれたものであることを特徴とする請求項8記載の方法。
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