JP2014529745A - 太陽電池の相互接続を試験する装置および方法 - Google Patents
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Abstract
ソーラーパネルにおける太陽電池の相互接続部を試験するのに特に適している、閉ループ電気接続部を無接触式に試験する装置および方法。本装置は、2つのコイルを備えている。第1のコイルは駆動コイル(11)であり、閉ループ電気接続部によって囲まれた領域(14)に、変化する磁界を発生させるための少なくとも1巻きの第1の巻線(15)を備えている。第2のコイルは検出コイル(12)であり、閉ループ電気接続部における電流によって発生する磁界を受けているときに電圧を発生させるための少なくとも1巻きの第2の巻線(16)を備えている。さらに、本装置は、第1のコイルと第2のコイルの直接的な相互誘導を内在的に補正するための補正ループ(13)を備えている。補正ループにより、相互接続部を試験するための複雑ではない電子部品を使用することができ、この電子部品は、ハンドヘルド型装置において容易に実施することができる。
Description
本発明は、閉ループ電気接続部を試験する装置および方法に関する。具体的な実施形態においては、本発明は、複数の太陽電池を備えたソーラーモジュールにおける太陽電池の電気的相互接続部を試験する装置に関する。
ソーラーパネルまたはソーラーモジュールを作製するためには、個々の太陽電池(一般にはシリコンウェハの大きさを有する)を結合しなければならない。より詳細には、異なる太陽電池の電極を互いに電気的に接続しなければならない。個々の太陽電池のこの相互接続部は、特に、ソーラーパネルにおいて異なる電池を結合する製造工程時に損傷しやすい。さらに、相互接続部は、良好ではない材料や加工によって不良であることがある。相互接続部が不良であると、場合によっては短時間の使用の後にソーラーパネルの性能が低下することがある。このような性能の低下としては、効率が下がる結果としてエネルギ出力が低減したり、パネルの寿命が短くなることがある。この理由のため、ソーラーパネルの製造工程時と製造後の両方において電気接続部を試験する装置を有することが望ましい。特に、太陽電池またはソーラーパネルに機械的に接触することなく試験を行うことのできる試験装置を有することが望ましい。
一般的なタイプの太陽電池は、金属化された裏側電極およびパターニングされた表側電極を備えている。しかしながら、他の電極構造も存在する。第1の太陽電池の裏側電極を第2の太陽電池の表側電極に接続することによって、複数の太陽電池を直列に配置することができる。太陽電池の間の配線の接触が不良であると、高い電気抵抗が生じる。したがって、周知の抵抗計によって抵抗を測定することによって、電気接触の品質を試験することができる。しかしながら、このような試験時に機械的な接触を行うと、太陽電池が損傷することがあり、あるいは、ソーラーパネルが製造された後には、太陽電池またはソーラーパネルとの機械的な接触を形成することが困難であり、場合によっては不可能なことがある。
特許文献1から、太陽電池および他の半導体素子において電流分布を測定するための装置および方法が公知である。この特許明細書によると、電気抵抗の高い部分から生じる局所的な加熱が、赤外線測定によって検出される。この方法は、均一な導体において欠陥を検出するには適しているが、パターニングされた構造において欠陥を検出する目的にこの方法を使用するには手間がかかる。
特許文献2からは、太陽電池およびソーラーモジュールにおいて欠陥を調査するための装置および方法が公知である。この公知の装置によると、ソーラーモジュールの使用時に発生する磁界を、特殊な磁界検出器によって測定する。この公知の方法によると、モジュールに光が当たる結果として電流がトラックおよび相互接続部を流れるときに調査が行われる。したがって、この試験は、試験対象のモジュールが十分な強さの光を受けており、モジュールの出力が負荷抵抗に接続されて電流が流れることのできる状態のときにのみ実行することができる。さらには、試験結果の解釈が簡単ではなく、測定される磁界と、トラックおよび相互接続部の抵抗とを相互に関連付けなければならない。
特許文献3からは、光起電力装置の不良を検出する方法が公知であり、この方法は磁界の検出に基づく。この方法では、駆動コイルによって裏側電極膜に渦電流を発生させ、誘起される磁界を検出コイルによって検出する。さらに、この特許明細書は、互いに平行に位置している2つのコイルを備えた装置も開示している。この公知の装置および方法の欠点として、2つのコイルの直接的な相互誘導に起因して、駆動コイルによって検出コイルに電流または電圧が直接誘起されてしまい、この電流または電圧は、測定構造の形状構造、特に、ソーラーパネルまでの距離とソーラーパネルの導電率とに依存する。
駆動コイルと、検出コイルと、地磁界および他の不要な磁界を補正する補正コイルとを備えた磁気計も公知である。このような磁気計は、例えば、欧州特許出願第0604810号明細書に開示されている。駆動コイルに交流電流を供給して、強磁性体コアを飽和させる。補正コイルは異なる電圧源に接続されており、電圧源は、補正コイルに直流電流を供給して補正磁界を発生させる。この磁気計は、特に、小さい磁界を正確に測定するのに適している。
一態様においては、本発明の目的は、閉ループ電気接続部を試験する装置、より詳細には、ソーラーモジュールにおける太陽電池の電気的相互接続部における欠陥を検出するのに適した装置であって、正確な非接触試験を行うことができ、複雑ではなく、かつ使いやすい装置、を提供することである。
別の態様においては、本発明の目的は、上述した最新技術の問題点および欠点を克服することである。特に、本発明の目的は、駆動コイルと検出コイルの直接的な相互誘導(結果として、たとえ閉ループ電気接続部が存在していない場合にも第2のコイルに電圧が発生しうる)の問題を克服することである。
閉ループ電気接続部を試験する装置であって、
− 閉ループ電気接続部によって囲まれた領域に、変化する磁界を発生させるための、第1のコイル領域を囲む少なくとも1巻きの第1の巻線を備えた第1のコイルと、
− 閉ループ電気接続部における電流によって発生する磁界を受けているときに電圧を発生させるための、第2のコイル領域を囲む少なくとも1巻きの第2の巻線を備えた第2のコイルと、
を備えた装置において、
第1のコイルと第2のコイルの直接的な相互誘導を補正するための補正ループであって、第1および第2のコイル領域の一方、または第1および第2のコイル領域の両方を、少なくとも部分的に覆う、補正ループ、をさらに備えていることを特徴とする、装置、が提供される。
− 閉ループ電気接続部によって囲まれた領域に、変化する磁界を発生させるための、第1のコイル領域を囲む少なくとも1巻きの第1の巻線を備えた第1のコイルと、
− 閉ループ電気接続部における電流によって発生する磁界を受けているときに電圧を発生させるための、第2のコイル領域を囲む少なくとも1巻きの第2の巻線を備えた第2のコイルと、
を備えた装置において、
第1のコイルと第2のコイルの直接的な相互誘導を補正するための補正ループであって、第1および第2のコイル領域の一方、または第1および第2のコイル領域の両方を、少なくとも部分的に覆う、補正ループ、をさらに備えていることを特徴とする、装置、が提供される。
補正ループの利点として、このようなループは、交番磁界を発生させる駆動コイルである第1のコイルと、磁界を検出する検出コイルである第2のコイルとの直接的な相互誘導を排除する、または少なくとも大幅に低減する。好ましくは、内在的補正(intrinsic compensation)を提供する補正ループが使用され、すなわち、駆動コイルを流れる電流、もしくはその電流によって誘起される磁界、またはその両方によって動作する補正ループ、または、そのような電流または磁界に応えて動作する補正ループが使用される。内在的補正を提供する補正ループのさらなる利点として、追加の電流源および電子部品が要求されない。実施形態においては、内在的補正は、追加の方策なしに動作することができる。さらに、内在的補正によって、閉ループ電気接続部を試験するときにエラーが発生する危険性が減少する。2つのコイルの相互誘導が存在しない、または小さい相互誘導のみが存在するときには、駆動コイルと検出コイルの結合は、試験対象のループの特性のみによって、または主としてループの特性によって決まる。
上述した目的は、この利点によって達成され、なぜなら、補正ループによる補正によって、試験対象のループまでの距離などの環境的な条件が測定に影響しにくくなるためである。さらには、閉ループの抵抗を容易に検出することができ、なぜなら、後から詳しく説明するように、駆動コイルの電流と検出コイルの電圧との間の位相差のみを測定すればよく、信号の振幅を測定する必要がないためである。
別の態様においては、本発明の目的は、閉ループ電気接続部を試験する方法であって、正確な非接触試験を行うことができ、複雑ではなく、かつ使いやすい方法、を提供することである。より詳細には、本発明の目的は、上述した最新技術の問題点および欠点を克服することである。
閉ループ電気接続部を試験する方法であって、
− 本発明による装置を用意するステップと、
− 第1のコイルと第2のコイルの直接的な相互誘導の補正が得られるように補正ループを調整するステップと、
− 装置と、試験される閉ループ電気接続部とを、互いに近くに配置するステップと、
− 第2のコイルによって発生する電圧に基づいて、閉ループの電気抵抗を表す信号を取得するステップと、
を含んでいる方法、が提供される。
− 本発明による装置を用意するステップと、
− 第1のコイルと第2のコイルの直接的な相互誘導の補正が得られるように補正ループを調整するステップと、
− 装置と、試験される閉ループ電気接続部とを、互いに近くに配置するステップと、
− 第2のコイルによって発生する電圧に基づいて、閉ループの電気抵抗を表す信号を取得するステップと、
を含んでいる方法、が提供される。
この方法の利点として、この方法によると、補正ループがいったん調整されれば、コイルとループの組合せのさらなる較正が要求されない。したがって、ループの適切な形状構造がいったん見つかれば、閉ループ電気接続部を試験するうえで、試験を行う人の特殊な技能は要求されない。
太陽電池またはソーラー電池は、光(より具体的には太陽光)を受けているときに電流を発生させる半導体デバイスである。このような太陽電池は、シリコン(アモルファスシリコンまたは(半)結晶シリコンのいずれか)からしばしば作製されている。一般に、このような電池の大きさは、約15×15cm(6インチ×6インチ)である。いくつかの太陽電池が組み合わさってソーラーパネルとなり、ソーラーパネルは、一般には約1〜2平方メートルの大きさを有する。太陽電池の両端に発生する電圧は、一般にはわずかに0.5Vであるが、通常ではより高い電圧が要求される。より高い電圧を得るため、パネルのいくつかの太陽電池が直列に接続される。図1Aには、2つの太陽電池を接続する方法を示してある。説明を目的として、左側の電池(1)の裏側と右側の電池(2)の表側とを示してある。太陽電池は、裏側電極を構成している金属化層(3)と、電池の表側(すなわち太陽の方に向いている電池の部分)における構造化された導電性パターンとを備えている。一般に、このような導電性パターンは、2〜3本のメイントラック(4)と、より小さい分岐線(5)とを備えていることができる。メイントラックは、太陽電池を電力消費装置に接続する、または別の太陽電池に接続してソーラーパネルを形成するために使用される。
2つの太陽電池は、第1の電池の裏側電極を第2の電池の表側電極に接続することによって、直列に接続することができる。一般には、第1の電池の裏側電極を2本のワイヤ(6),(7)を介して第2の電池の表側電極に接続することができる。このような形状構造においては、図1Bに示したように、第1の電池の裏側電極(3)と、第2の電池の表側電極トラック(4),(5)と、配線(6),(7)が、電気的に閉じたループを形成する。このループは、はんだ接続部(8)を備えていることができる。
電池が直列ではなく並列に接続される場合、2つの太陽電池の表側電極もしくは2つの裏側電極またはその両方が、閉じた導電性ループを形成する少なくとも2本の導電性トラックによって接続されるならば、閉ループが存在する。
ループの導電率は、特に、電極の構造と、電池の相互接続部の品質(例えばはんだ接続部(使用時))によって決まる。ソーラーパネルを作製するため1種類のみの太陽電池が使用されており、電池の間に1種類の接続が形成されている場合、電池の異なる対の導電率測定値の変動は、これらの電池の間の相互接続の品質に起因するものと考えることができ、なぜなら、ループの大きさ、電極の構造、使用される材料などの他の特性は、試験対象のループすべてにおいて同じであるためである。
特許文献3には、駆動コイルによって発生する交番磁界によって電極に電流を誘起することにより、太陽電池の裏側電極の導電率を無接触式に求め得ることが開示されている。発明者は、このような方法において、均一な層の導電率のみならず、閉ループの導電率も求め得ることを見出した。このような閉ループにおいては、誘起された電流は、ループを形成している導体トラックに閉じ込められるのに対して、均一な層の場合、特に駆動コイルの大きさによって決まる領域全体にわたり電流が分布する。
2つのコイルとして、変化する磁界を発生させる駆動コイルと、磁界を検出する検出コイルとを備えた装置を提供する。変化する電流が駆動コイルを流れてコイルの領域の周囲を循環するとき、このコイルは、コイルの周囲に変化する磁界を発生させ、方向は、領域の周囲の電流の循環方向に応じて右回りまたは左回りである。この変化する磁界により、コイルの近傍に配置されている導電性ループに電流が誘起される。ループは、例えば、図1Bに示したように2つの太陽電池の相互接続によって形成することができる。電流の大きさは、特に、駆動コイルおよびループの相対的な向きと、ループの電気抵抗とに依存する。相互接続ループの場合、抵抗は、特に、配線と電極との間のはんだ接続部(8)によって決まりうる。駆動コイルの領域は、試験対象のループの領域よりも小さいことが好ましく、これにより、例えばコイルの直径よりも大きい距離にループとコイルが配置されているときにも、ループが最大磁束を囲むことができる。しかしながら、コイルの領域の方が大きくてもよい。後者の場合、装置の較正に注意を払う必要があり、出力信号が、コイルとループの間の変化する距離、より詳細には試験対象のソーラーパネルモジュールと、駆動コイルを備えた装置との間の変化する距離の影響を受けやすいことがある。
試験対象のループの電流によって磁界が発生し、この磁界が検出コイルによって検出される。したがって、駆動コイルと検出コイルとが、試験対象のループを介して互いに結合されている。2つのコイルの間の結合の強さは、ループの特性(例えば太陽電池の間の接続部の抵抗など)に大きく依存する。しかしながら、直接的な結合、すなわち、試験対象のループの存在とは無関係に、2つのコイルの間に存在する結合も発生し、この直接的な結合は測定に影響する。発明者は、補正ループを適用することによって、この影響を低減する、もしくは排除できることを見出した。
図2Aは、装置の実施形態と、試験対象の閉ループ電気接続部の概略図を示している。図示した測定構造は、平面型構造であり、すなわち、駆動コイルと検出コイルの両方が試験対象のループの同じ側にある。駆動コイル(11)は、閉ループ電気接続部(10)によって囲まれている領域(14)に、変化する磁界を発生させるための2〜3巻きの巻線(15)を備えている。使用時、駆動コイルは、磁界を発生させるため電流源に接続されており、この場合、変化する磁束が、ループによって囲まれる領域(14)を介して閉ループを通過するように、試験対象のループに対して駆動コイルが配置される。このような変化する磁束は、ループに対して動く(例えば回転する)駆動コイルによって得ることができるが、静的なコイルが好ましく、なぜなら構造が単純であり、信号の解析が容易であるためである。この実施形態は、さらに検出コイル(12)も備えている。この検出コイル(12)も、2〜3巻きの巻線(16)を備えている。この検出コイルは、構造的に駆動コイルと同じにすることができるが、例えば巻線の数や大きさが異なっていてもよい。試験対象のループの電流によって発生する、変化する磁界がこの検出コイルに作用するとき、コイルの開放端部に電圧が発生する。コイルの端部は、高い入力インピーダンスを有する電圧計に接続されていることが好ましい。しかしながら、コイルの端部を短絡させてコイルの電流を測定することもできる。
駆動コイルおよび検出コイルの寸法は、試験対象のループの大きさに応じたものとすることができる。より詳細には、コイルの寸法と、コイルの互いに対する位置は、試験対象のループによって囲まれる領域上へのコイルの投影がその領域内に含まれるように選択されることが好ましい。特に、このような位置および寸法では、互いに近くに位置する相互接続部を試験することができる。
当業者には理解されるように、コイルの相互誘導が存在し、より詳細には、たとえ閉ループが存在しない場合にも検出コイルに電圧が誘起される。言い換えれば、2つのコイルの間に電磁結合が存在する。この結合の強さは、特に、2つのコイルの相対的な位置と向きに依存する。この結合を低減するため、本装置は、駆動コイルおよび検出コイルの直接的な相互誘導を補正するための補正ループ(13)をさらに備えている。図2Aにおいては、この補正ループは駆動コイルの一部として示してある。しかしながら、後から詳しく説明するように、補正ループのいくつかの別の実施形態が存在する。
本装置の使用時、試験対象のループは、図2Aに示したようにコイルに面していることができ、または、ループは、図2Bに示したように補正ループに面していることができる。すなわち、補正ループは、試験対象のループとコイルの間に位置していることができる(図2Bを参照)、または、試験対象のループと補正ループとの間にコイルが位置していることができる(図2Aを参照)。
図2Aおよび図2Bに示したように、使用時に本装置が試験対象のループの片側に位置する形状構造では、特に、装置がハンドヘルド型装置として使用されるとき、試験を容易に行うことができる。しかしながら、図3に示したように、サンドイッチ形状として、試験対象のループを駆動コイル(11)と検出コイル(12)との間に配置することもできる。このようなサンドイッチ形状では、平面型の形状構造よりも、駆動コイルと検出コイルの相互誘導を補正することがより困難になり、なぜなら、2つのコイルの間の相対距離が大きいことに起因して補正ループ(13)が雑音信号を拾いやすいためである。しかしながら、このようなサンドイッチ形状は、特殊な状況下、例えば、大きさの異なる相互接続ループを試験しなければならない、ソーラーモジュールの自動製造工程において有用であり得る。
図4は、平面型の形状構造の好ましい実施形態の概略図を示している。この装置は、平行な2つのコイルとして、駆動コイル(11)および検出コイル(12)を備えている。「平行な」とは、2つのコイルの軸線(17,18)が現実的に可能な限り小さい角度を有し、軸線に垂直な平面上への2つのコイルの投影が少なくとも実質的に重ならないことと理解されたい。したがって、理想的な状況下ではこの角度は0度であるが、実際にはこの角度は例えば5度未満とすることができる。コイルのそれぞれが、少なくとも1巻きの巻線(15,16)を備えている。2つのコイルは、平面(19)内に互いに隣接して位置していることが好ましく、なぜなら、このような形状構造においては、試験対象のループと駆動コイルとの間の距離と、試験対象のループと検出コイルとの間の距離とが同じであるためである。この場合、コイルの領域とは、平面内の領域であって、その周囲をコイルに電流が流れる領域である。しかしながら、コイルの一方を、平面(19)に垂直な軸線(17,18)の方向に変位させることもできる。この場合、コイルの領域とは、コイルの平面内の領域であって、その周囲をコイルに電流が流れる領域である(または等価的に、これらの平面に平行な共通の平面上への投影)。
使用時、変化する電流が駆動コイル(11)を流れ、軸線(17)の方向に磁界が発生する。変化する電流は、交流電流(AC)であることが好ましい。変化する磁界によって、駆動コイルの近傍にある閉じた導電性ループに電流が誘起される。太陽電池の相互接続部を試験する場合、この閉じたループは、例えば図1Bに示したように、トラック、ワイヤ、およびはんだ結合部によって形成されている。検出コイル(13)の両端の電圧は、試験対象のループにおける電流の測度、すなわちループの電気抵抗の測度である。
図4の実施形態では、駆動コイルと検出コイルとが互いに平行に配置されているが、これら2つのコイルの間には直接的な電磁結合が存在する。一般的には、コイルは、コイルに隣接して、コイルの領域内の磁界方向とは反対方向に、いくらかの強さの双極子状の磁界を生成し、結果として、隣接するコイルとの結合が生じる。この結合により、検出コイルの出力電圧は、試験対象のループの特性のみならず、別の要因によっても決まる。直接的な結合を排除する、または少なくとも大幅に低減するため、本装置は補正ループ(13)をさらに備えており、補正ループ(13)については後から詳しく説明する。使用時、補正ループは、図2Bに示したようにコイルと試験対象のループとの間に位置することができ、または、図2Aに示したように、コイルの上側と下側に補正ループと試験対象のループを位置させることができる。
一実施形態においては、補正ループは、検出コイルの一部または駆動コイルの一部である。補正ループはコイルの延長部を備えており、この延長部は他方のコイルの領域を少なくとも部分的に覆っている。すなわち、コイルの軸線に垂直な平面上に補正ループおよび他方のコイルを投影させたとき、2つの投影には重複部分が存在する。したがって、図5に概略的に示したように、延長部(113)が検出コイル(112)の一部である場合、この延長部は駆動コイル(111)を少なくとも部分的に覆う。延長部(113)が駆動コイルの一部である場合、この延長部は検出コイルを少なくとも部分的に覆う。当業者には理解されるように、延長部と、延長部がその一部ではない方のコイルとの間には、ガルバニック接触が存在しないべきである。検出コイルおよび駆動コイルが、電気的絶縁層を有するワイヤから形成されていない場合、延長部と、延長部がその一部ではない方のコイルとの間のガルバニック接触を回避するため、特別な方策を行わなければならない。
駆動コイルまたは検出コイルと重なる補正ループは、駆動コイルおよび検出コイルの相互誘導を補正する。重なっている延長部を電流が流れ、延長部の領域の周囲の循環方向は、延長部が属するコイルの領域の周囲と同じである(平面において右回りまたは左回り)ため、延長部における磁界は、延長部が属するコイルにおける磁界に対して補正効果を有する。延長部の正確な寸法および形状構造と、重複の大きさは、例えば、試験対象のループと、他の任意の閉じた導電性経路が存在しないときの検出コイルにおける信号を最小にすることによって、実験的に求めることができる。
この実施形態の有利な特性は、構造が単純であり、したがって容易に製造されることである。より詳細には、一方のコイル(111)を、例えば基板(例えばプリント基板または箔)の一方の面に取り付けることができ、延長部(113)を含む他方のコイル(112)を反対側の面に取り付けることができる。2つのコイルを基板の同じ面に取り付けることもできるが、延長部はコイルから基板を貫いて基板の他方の面に延び、他方のコイルを少なくとも部分的に覆う。この実施形態においては、基板はコイルを支持し、一方のコイルの延長部と他方のコイルとを電気的に分離する。
本装置の別の実施形態においては、図6Aに概略的に示したように、ループは個別の閉じた巻線である。この実施形態においては、巻線は、第1の巻線部と第2の巻線部を有する交差巻線(turned winding)(例えば数字の8の字に似た形状)であり、ループの領域の第1の部分と第2の部分の周囲を循環しており、第1の巻線部と第2の巻線部は、領域の第1の部分および第2の部分の周囲の相互に反対の循環方向(平面における右回りおよび左回り)に電流が流れるように構成されている。したがって、交差巻線は、巻線に磁束が作用するときに正味電流が存在しないように構成されており、なぜなら、ループの一方の部分に誘起される電流と、ループの他方の(交差した)部分における電流とが打ち消し合うためである。駆動コイルおよび検出コイルの平面上に交差巻線を垂直に投影するとき、投影が2つのコイルにほぼ一致するように、補正ループが駆動コイルおよび検出コイルの近傍に位置している。これにより、交差補正ループが最大磁束を囲むことができる。好ましくは、領域の第1の部分および第2の部分の垂直投影は、それぞれ駆動コイルおよび検出コイルと重なるのみである、またはほぼ一致する。図6Aは、コイルの軸線の方向における上面図または下面図を示している。図6Bは、正面図または側面図である。駆動コイルと検出コイルとが同じである場合、交差巻線の2つの部分も同じであるべきである、すなわち、ループの2つの交差した部分の領域が同じであるべきである。ループは、例えばワイヤから作製することができ、または、例えばプリント基板または箔の上の導電性パターンとすることができる。適切に機能させるため、ワイヤを電気的絶縁材料によって被覆することができる。この絶縁体は、ワイヤ全体を被覆する、またはループの2つの部分が互いに交差する位置(219)において、交差位置における電気的接触を回避できるように部分的に被覆することができる。
相互誘導の問題を解決する別の装置においては、第1の補正ループが駆動コイルと直列の巻線であり、第2の補正ループが、検出コイルと直列の複数の巻線を備えた巻線またはコイルである。図7は、このような実施形態を示している。第1の補正ループ(313’)および第2の補正ループ(313’’)は、駆動コイル(311)および検出コイル(312)と同じように互いに対して位置している。しかしながら、補正ループは、本装置が使用されるとき、2つの補正ループが導電性経路を介して結合されないように位置しており、より詳細には、2つの補正ループが、試験対象の相互接続ループ(310)を介して結合されないように位置している。駆動コイルと直列の補正ループの1本または複数の巻線の方向は、検出コイルと直列の補正ループの1本または複数の巻線の方向と反対であり、したがって、試験対象のループまたは他の任意の閉じた導電性経路が存在しないとき、検出コイルに誘起される電圧の大きさと、検出コイルと直列の補正コイルに誘起される電圧の大きさが同じであり(ただし符号が逆)、直列の2つのコイルに誘起される電圧が0である。
実施形態においては、本装置は、駆動コイルにおける電流と、検出コイルの両端電圧との間の位相の差を求めることのできる特定の電子回路を備えていることができる。図8は、このような実施形態を示している。この実施形態では、交差ループ(413)が補正ループとして使用されている。しかしながら、特定の電子回路を別の補正ループと組み合わせて適用することもできる。より詳細には、コイルとループの組合せ(430)は、図5に示した組合せであることが好ましく、延長部は駆動コイルの一部である、または検出コイルの一部である。電流源(424)は、駆動コイル(411)に、周波数fの交流電流を供給する。電流は、抵抗器(425)を介して電圧に変換される。電圧は増幅器(426)によって増幅され、増幅器が生成できる最大振幅にクリップされる(428)。これにより、コイル(411)における電流の位相に関する情報を備えたブロック波が生じる。検出コイル(412)に誘起される電圧は、高インピーダンス入力増幅器(427)によって増幅され、増幅器が生成できる最大振幅にクリップされ(429)、これにより、検出コイルの両端電圧の位相に関する情報を備えたブロック波が生じる。駆動コイルの位相情報を有する信号と検出コイルからの位相情報を有する信号とが位相比較器(423)に供給され、位相比較器(423)は、位相差を表す出力信号を提供する。この位相差は、後から説明するように、試験対象のループの電気抵抗の測度である。
インダクタンスL1の駆動コイルと、インダクタンスL2の検出コイルと、インダクタンスL3の相互接続ループにおける電流と電圧の間の関係は、次式によって与えられ、式中、添字1は駆動コイルに関連し、添字2は検出コイルに関連し、添字3は相互接続ループに関連する。
これらの式において、ωは角周波数であり、Mは、コイルおよびループの相互誘導である。駆動コイルおよび検出コイルの相互誘導が補正ループによって無効化されるため、誘導M12(駆動コイル−検出コイル)および誘導M21(検出コイル−駆動コイル)を省くことができる。さらに、増幅器の入力の高インピーダンスによって、検出コイルにおける電流I2が抑制される。
さらに、相互接続ループにおける電流は、そのループの抵抗Rによって求められる。
したがって、検出コイルの両端電圧U2と、駆動コイルにおける電流I1との間の関係は、次式によって与えられる。
この時間依存の電圧は、振幅および位相を有する。電圧の位相は次式によって与えられる。
この位相は、相互接続ループのインダクションL3によって、すなわち、ループの寸法と、印加される電流の周波数と、相互接続ループの抵抗とによって求められる。この等式が示すように、相互接続部のインダクタンスが既知である場合、駆動コイルにおける電流の位相と検出コイルの両端電圧の位相の差を測定することのみによって、相互接続部の抵抗Rを求めることができる。
予測される抵抗範囲および与えられるインダクタンスの最適な測定値が得られるように、周波数を選択することができる。ソーラーパネルにおける相互接続部を試験する場合、抵抗の値が既知であることは必ずしも本質的ではない。試験対象の相互接続部がプリセット値よりも高い抵抗を有することが、異なる位相差の形で示されるならば十分であることがある。したがって、例えば、自動化された品質制御において、相互接続部が合格するための臨界位相差を設定することができる。
さらなる実施形態においては、本装置は、接続部を試験するためのハンドヘルド型とすることができる。図9は、このような軽量・携帯型の実施形態の概略的な例を示している。このようなハンドヘルド型装置は、例えば容易にはアクセスできない場所(例えば家の屋根の上)におけるソーラーパネルの接続部を試験する目的で、バッテリ(503)を保持するための空間と、バッテリ(503)との接続のための電極とを備えていることが有利である。バッテリ(503)は、充電式または非充電式とすることができる。装置を使用しないときにバッテリを節約するため、装置のオン/オフをオン/オフボタン(502)によって切り替えることができる。さらに、本装置はディスプレイ(501)を備えていることができ、このディスプレイは、試験対象の接続部が、あらかじめ設定された特性を満たしているかを単に示す、または、試験対象のループの特性パラメータ、例えば、ループの抵抗や、駆動コイル(511)における電流と検出コイル(512)の両端電圧との間の位相差を示す。ディスプレイに代えて、またはディスプレイに加えて、本装置は、試験対象のループがあらかじめ設定された条件を満たしているかを示すための光学インジケータ(例えば発光ダイオード)または音響インジケータを備えていることができる。本装置は、図8に示した電子回路または他の任意の適切な回路を備えていることができ、さらに、情報および測定データを格納するための電子メモリを備えていることができる。
さらなる実施形態においては、本装置は、ソーラーパネルを生産するための自動生産ラインの一部である。このような実施形態においては、本装置は、接続部の自動制御のための電子部品を備えていることができる。例えば、本装置が不良な接続部を検出したことを示すアラーム信号を、光学信号または音響信号として出力することができる。品質の安全防護対策のため、本装置は、後から検討できるように、相互接続部の測定された特性を含むデータベースのためのメモリを備えていることができる。
図10は、閉ループ電気接続部を試験する方法の流れ図を示している。この方法は、図1〜図9を参照しながら説明した装置を使用することが有利である。上述したように、コイルとループの組合せの最適な形状構造は、調整ステップ602において実験的に決定することができる。最適な形状構造を見つけるためのこの調整(602)は、モデル計算によって行う、または、コイルとループの組合せの形状構造を変化させることによって物理的に行うことができる。この調整ステップは、装置の設計ステップの一部であることが好ましい。最適な形状構造を決定するため、図8に示した上述した電子部品を使用することができる。しかしながら、当業者には、コイルの相互誘導を測定するための別の方法が明らかであろう。
コイルとループの組合せの形状構造が決まると、本装置は使用できる状態である。使用時、第1のステップ603を行い、このステップでは、装置が適切に機能するように、すなわち、試験されるループに駆動コイルによって電流を誘起することができ、ループによって発生する磁界を検出コイルが拾うことができるように、装置と、試験する閉ループ電気接続部とを互いに近くに配置する。電流を駆動コイルに供給する。結果として、補正ループを使用して、生成される磁界の一部を拾う、または、補正磁界を生成して相互誘導を補正する。第2のステップ604において、本装置を使用して、第2のコイルによって発生する電圧に基づいて、閉ループの電気抵抗を表す信号を取得する。実施形態においては、この信号は、上述した位相とすることができ、または、任意の他の信号(例えば光学信号)とすることができる。
例
駆動コイルにおける電流の周波数は1MHzである。駆動コイルと、延長部の形での補正ループを備える検出コイルは、それぞれ、691nHおよび706nHのインダクタンスを有する。試験対象のループと駆動コイルとの間の一般的な距離は、5mmである。この構造によると、3mmの一般的な寸法を有する相互接続部において、良好な結果が得られた。
駆動コイルにおける電流の周波数は1MHzである。駆動コイルと、延長部の形での補正ループを備える検出コイルは、それぞれ、691nHおよび706nHのインダクタンスを有する。試験対象のループと駆動コイルとの間の一般的な距離は、5mmである。この構造によると、3mmの一般的な寸法を有する相互接続部において、良好な結果が得られた。
Claims (13)
- 閉ループ電気接続部(10)を試験する装置であって、
− 前記閉ループ電気接続部によって囲まれたループ領域(14)に、変化する磁界を発生させるための、第1のコイル領域を囲む少なくとも1巻きの第1の巻線(15)を備えた第1のコイル(11)と、
− 前記閉ループ電気接続部における電流によって発生する磁界を受けているときに電圧を発生させるための、第2のコイル領域を囲む少なくとも1巻きの第2の巻線(16)を備えた第2のコイル(12)と、
− 前記第1のコイルと前記第2のコイルの直接的な相互誘導を補正するための補正ループ(13)であって、前記第1および第2のコイル領域の一方、または前記第1および第2のコイル領域の両方を、少なくとも部分的に覆う、補正ループと、
を備えている、装置。 - 前記補正ループ(13)が、前記第1のコイルと前記第2のコイルの直接的な相互誘導を内在的に補正するように構成されている、
請求項1に記載の装置。 - 前記補正ループ(13)が、前記第1のコイル(111)と重なる、前記第2のコイル(112)の部分(113)、を備えている、
請求項1に記載の装置。 - 前記第1のコイル(11)と前記第2のコイルが、同じ平面内に、または間にオフセットを有する平行な平面内に、互いに隣接して位置しており、前記補正ループ(13)が、前記第1または第2のコイル(111,112)の部分(113)を備えており、前記補正ループが前記第1または第2のコイル(111,112)の部分(113)を備えているとき、前記部分(113)が、前記第1または第2のコイル(111,112)の主部から前記第1または第2のコイル(111,112)の平面内に延びて、前記第2または第1のコイル(112,111)と重なる、
請求項1に記載の装置。 - 前記補正ループ(13)が、前記第1のコイル(211)および前記第2のコイル(212)と重なる交差ループ(213)を備えている、
請求項1に記載の装置。 - 前記第1のコイル(11)と前記第2のコイルが、同じ平面内に、または間にオフセットを有する平行な平面内に、互いに隣接して位置しており、前記補正ループ(13)が、前記平面に平行なさらなる平面内に交差ループ(213)を備えており、前記交差ループ(213)が、前記交差ループの領域の第1および第2の部分の周囲の少なくとも一部分に延在する第1および第2の部分を有し、前記領域の前記第1および第2の部分の周囲の第1および第2の部分を流れる電流の循環の方向が互いに逆であり、前記領域の前記第1および第2の部分が、それぞれ、前記第1のコイル(211)および前記第2のコイル(212)と重なっている、
請求項1に記載の装置。 - 前記第1のコイルにおける電流と前記第2のコイルの両端電圧との位相差を求めるための電子回路、をさらに備えている、
請求項1から請求項6のいずれかに記載の装置。 - バッテリの電力によって動作するように構成されている、
請求項1から請求項7のいずれかに記載の装置。 - 請求項1から請求項8のいずれかに記載のハンドヘルド型装置。
- 前記少なくとも1巻きの第1の巻線(15)に垂直な第1の軸線(17)と、前記少なくとも1巻きの第2の巻線(16)に垂直な第2の軸線(18)とが、平行である、
請求項1から請求項9のいずれかに記載の装置。 - 前記第1の巻線(15)と前記第2の巻線(16)とが同じ平面(19)に位置している、
請求項1から請求項10のいずれかに記載の装置。 - 閉ループ電気接続部を試験する方法であって、
− 前記閉ループ電気接続部によって囲まれるループ領域(14)に、第1のコイル領域を囲む少なくとも1巻きの第1の巻線(15)を備えた第1のコイル(11)を使用して、変化する磁界を発生させるステップと、
− 前記閉ループ電気接続部に誘起される電流によって発生する磁界を第2のコイル(12)に作用させることによって、前記第2のコイル(12)から電圧を発生させるステップであって、前記第2のコイル(12)が、第2のコイル領域を囲む少なくとも1巻きの第2の巻線(16)を備えている、ステップと、
− 前記第1および第2のコイル領域の一方、または前記第1および第2のコイル領域の両方を、少なくとも部分的に覆う補正ループ(13)を使用して、前記第1のコイルと前記第2のコイルの直接的な相互誘導を補正するステップと、
− 前記第2のコイルによって発生する電圧に基づいて、前記閉ループ電気接続部の電気抵抗を表す信号を取得するステップ(604)と、
を含んでいる、方法。 - 前記閉ループ電気接続部が、複数の太陽電池を備えたソーラーモジュールにおける太陽電池の電気的相互接続部である、
請求項12に記載の方法。
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