生殖腺毒性は、生殖腺、すなわち精巣又は卵巣の機能障害、疾患又は障害を包含する。したがって、生殖腺毒性は、性別に基づいて卵巣毒性又は精巣毒性のいずれかを含む。前記生殖腺毒性は、化学的に誘導、増大、又は駆動された生殖腺毒性であり得る。
卵巣は対臓器であり、生殖系及び内分泌系の統合部である。卵巣は、3つの主要な機能、すなわち受精能のある卵母細胞の産生、ステロイドホルモンの合成及び調節タンパク質の合成を有する複合的な器官である。こうした複合的機能は、構造及びそれを構成する細胞型の多様性、卵母細胞を有する卵胞、黄体並びに間質腺に反映される。原始卵胞は胚発生の間に形成され、貯蔵型に相当する。種依存的な数の卵胞が各発情周期の間に成熟して、排卵される。形態は、発情周期の様々な段階、年齢及び内分泌機能の変化に応じて変化する。排卵後に、黄体が形成され、これは一過性の内分泌腺であるが、妊娠がない場合は退行する。卵巣は、周期的な形態変化を受け、ステロイド産生細胞及びアンドロゲン分泌細胞のいくつかの異なる形態型に分類される細胞を有する、間質腺組織も含む。
化学的障害のいくつかの潜在的部位を提供する機能的多様性及びそのホルモン調節の複雑さに関しては、種々の障害、疾患又は医学的状態によって、対象において卵巣毒性が明らかとなり得る。検出可能な形態変化の幅は多様であり、形態的特徴を反映する。損傷は、その表面上皮、卵胞、黄体及び/又は間質腺にある。多くの非腫瘍性の卵巣病変は、様々な主要組織構成要素、すなわち黄体、発達卵胞のステージ変動及び間質腺における増大又は低下に特徴づけられる。それとは対照的に、腫瘍性病変は、卵巣組織の多能性特質、及び成熟した卵巣では通常は見られない幅広い細胞型、例えばセルトリ細胞腫及び胚細胞腫瘍として顕在化し得ることが原因となり、必ずしも明瞭に区別されるとは限らない。
上皮(中皮)過形成及び管状過形成、卵母細胞の破壊、卵胞閉鎖までの卵胞発達の停止、卵胞及び間質の萎縮、過排卵(supraovulation)、卵胞黄体化、卵胞嚢胞、黄体の縮小/欠損、黄体の増大/残存、黄体の空胞変性、セルトリフォーム(sertoliform)管状過形成、間質腺の肥大/過形成萎縮(interstitial gland hypertrophy/hyperplasia atrophy)、発情周期障害並びに卵巣間膜(mesovarial)平滑筋過形成からなる広範囲におよぶ非腫瘍性病変が存在する。
卵巣腫瘍は5つの大区分に細分することができ、これらには、上皮性腫瘍、性索間質腫瘍、胚細胞腫瘍、卵巣の非特殊化軟組織に由来する腫瘍及び遠位部位から卵巣への転移性腫瘍が含まれる。卵巣の上皮性腫瘍としては、嚢腺腫及び嚢胞腺癌、管間質腺腫並びに中皮腫が挙げられる。管状腺腫はマウスの卵巣腫瘍中で最も重要であるが、ラットでは珍しく、他の動物種ではまれであり、女性の卵巣では認められない。卵巣腫瘍の別の重要な群は、性索及び/又は卵巣間質に由来するものである。これらとしては、顆粒膜細胞腫、黄体腫、莢膜細胞腫、セルトリ細胞腫、卵巣間質が一因となる管状腺腫及び未分化性索間質腫瘍が挙げられる。顆粒膜細胞腫はこの群の中で最も一般的であり、遺伝子欠損、放射線照射、卵母細胞毒性化学物質及び新生児胸腺摘出に付随する長期の内分泌機能撹乱の後に、ある種の管状又は管間質腺腫内に発生する可能性がある。
卵巣毒性を誘導する薬剤の可能性のある作用が多様であるため、障害の評価はかなり複雑なプロセスである。現行方法は、臨床的検討、病理学的及び病理組織学的検討並びに生化学的及びホルモン分析を通常含む。病理組織学的評価の主な欠点は、病理組織学的評価が侵襲的であり、評価が、検討する、又はホルモン測定のために選択した方法を行う毒物学者の個々の解釈にある程度基づくので、臨床病理学測定又はホルモン分析と組み合わせた場合でさえも信頼性が低いことである。
卵巣は生殖系及び内分泌系の統合部であり、それ自体が化学的に誘導された病変によって障害を受ける可能性があることを考えれば、卵巣の障害を調査する重要性は明らかとなり得る。さらに、欧州共同体のあらゆる種類の産業で使用されている化学化合物は、例えば、現在、REACH(化学物質の登録、評価、認可(Registration, Evaluation and Authorisation of Chemicals))を順守する必要がある。化学化合物が副腎皮質障害を誘導する可能性は、その化合物についてリスクが高いと見なされ、その結果、その化合物は、限られた用途且つ高い安全基準に従う場合のみ利用可能であることを理解されたい。(Capen CC (2001) Overview of structural and functional lesions in endocrine organs of animals、Toxicol. Pathol.、29、8〜33; Capen CC (2008) Toxic responses of the endocrine system、第21章: Casarett & Doull's Toxicology, The basic science of poisons、Klaassen CD (編)、McGraw-Hill P、改訂第7版、New York (2008); Capen CC、Martin SL (1989) Mechanisms that lead to disease of the endocrine system in animals、Toxicol. Pathol.、17、234〜249; Lewis DJ、Gopinath C (1998) The female reproductive system、第13章、407〜428: Target organ pathology, a basic text、Turton J及びHooson J (編) Taylor & Francis、London、United Kingdom、1998; Mattison DR、Thomford PJ (1989) The mechanisms of action of reproductive toxicants、Toxicol. Pathol.、17、364〜376; Foster PMD、Gray LE (2008) Toxic responses of the reproductive system、第20章、761〜806: Casarett & Doull's Toxicology, The basic science of poisons、Klaassen CD (編)、McGraw-Hill P、改訂第7版、New York (2008)を参照されたい。
精巣は対臓器であり、生殖系及び内分泌系の統合部である。精巣は、2つの形態的及び機能的に異なる領域として、管状区画及び間質区画からなる。精細管は、テストステロン産生ライディッヒ細胞、マクロファージ、リンパ及び血管を含む結合組織から構成される間質組織で取り囲まれている。精細管は、重層上皮で覆われており、重層上皮は、種々の発達ステージの生殖細胞から、及び構造的及び栄養的支持を提供するセルトリ細胞からなる。精巣の主要な機能は、雄性生殖細胞、精子並びにテストステロン及びジヒドロテストステロンを含めた男性ステロイドホルモンの産生、さらに少量のエストロゲンの産生である。両機能は、垂体で産生される性腺刺激ホルモンの制御下にある。
精巣の精子形成は、精原細胞の有糸分裂、精母細胞の減数分裂及び特殊化した運動精子への未分化精子細胞の形態転換を含む生殖細胞のいくつかの世代が、同調的に発達することを含む。この発達全体を通して、生殖細胞は、セルトリ細胞の細胞質プロセスに組み込まれている。セルトリ細胞は、生殖細胞の代謝にとって必須の分子を間質液から生殖細胞へ運搬し、生殖細胞の代謝に必須の基質を合成し、一般に、精子形成の進行を最後まで調節する。精子の放出は、セルトリ細胞及び精子細胞の間の特殊化した接合部の分離を必要とする活動的なプロセスである。新しく形成された精子は、精細管液中に放出され、輸出管中及び精巣上体中に精巣網を介して輸送される。精子形成は、生殖細胞、セルトリ細胞、ライディッヒ細胞、管周細胞、間質マクロファージ及び血管系の協調的な支持及び相互作用に依存している。このプロセスの全体的な調節は、視床下部-下垂体-ライディッヒ細胞内分泌軸によって媒介されるが、パラクリン因子による細胞機能の局部的な調節も同様に重要である。
雄の生殖系の機能的多様性及びそのホルモン調節の複雑さが、化学的障害に関するいくつかの潜在的な部位を提供するので、精巣毒性は、種々の障害、疾患又は医学的状態によって、対象において明らかとなり得る。損傷は、精子生産の低減又は精巣からのテストステロン分泌の低減及び管系を通る精子輸送の妨害をもたらす恐れがあり、受精に利用可能な精子の質も障害を受ける可能性がある。精子形成におけるその役割ゆえに、毒性の最も一般的な標的細胞の1つはセルトリ細胞である。この細胞のいかなる機能的支障も、依存性生殖細胞の生存に対して、迅速な二次的影響がある。生殖細胞の特定集団の死滅は、有糸分裂に影響を及ぼす細胞傷害性薬剤の場合に、又は太糸期精母細胞及び分裂精母細胞のみに影響を及ぼすグリコールエーテルの場合に見ることできる。ライディッヒ細胞の機能は、ステロイド産生経路、又はその調節ホルモン、黄体形成ホルモン(LH)及びプロラクチンの循環レベル若しくは受容体への結合を妨害するいかなる薬剤にも感受性が高い。
毒性損傷の原発部位にかかわらず、大抵の精巣毒物は、多かれ少なかれ、生殖細胞の変性及び枯渇を引き起こす。損傷に対するセルトリ細胞の最も一般的な形態的応答の1つは空胞化であり、生殖細胞の変性、組織崩壊又は剥脱が続いて起こる。セルトリ細胞のダメージの重症度及び持続期間に応じて、生殖細胞の枯渇は部分的又は完全なものであり得るが、セルトリ細胞は、細胞死に抵抗性であるので、インタクトなままである。精子形成に影響を及ぼす多くの化学物質は、生殖細胞に直接的に働くというよりはむしろ、セルトリ細胞に対するその作用によって間接的に働く(例えばDBCP、MEHP)。テトラヒドロカンナビノール(THC)は、セルトリ細胞を含めた生殖器系のいくつかの部位で働く。
精巣での液体分泌は、重要な機能を果たす。間質液の組成は精巣の血漿のものと類似しているが、ライディッヒ細胞によって分泌される高レベルのテストステロン及びアンドロステンジオンが加わる。液体分泌の低減及び管収縮は、多くの精巣毒物で見られる。
間質ライディッヒ細胞の主要な機能はステロイド産生であり、この経路を妨害する任意の毒物によって、ホルモンバランスの機能障害がもたらされる。間質ライディッヒ細胞は、加齢とともに又は大用量の化学物質への慢性曝露に続いて、増殖変化(過形成/新形成)を頻繁に受ける。いくつかの非遺伝毒性薬剤は、ライディッヒ細胞の過形成をもたらすことができる(アンドロゲン受容体アンタゴニスト、還元酵素阻害剤、テストステロン生合成阻害剤、アロマターゼ阻害剤、ドーパミンアゴニスト、エストロゲンアゴニスト/アンタゴニスト及びGnRHアゴニスト)。ヒトはラットよりも量的な感受性が低いので、ラットでライディッヒ細胞腫を誘導する非遺伝毒性化合物は、ほとんどの場合、大抵の曝露条件下でヒトとほとんど関連性がない。ライディッヒ(間質)細胞腫は、慢性毒性/癌原性試験において、げっ歯類でより頻繁に生じる内分泌腫瘍の1つである。げっ歯類の精巣腫瘍は5つの一般的なカテゴリーに分類され、これらには、生殖腺間質の細胞に由来する腫瘍、生殖細胞起源の新生物、付属器構造物又は漿膜に由来する腫瘍並びに支持結合組織及び精巣の血管に由来する一群の腫瘍が含まれる。生殖腺間質の新生物としては、ライディッヒ(間質)細胞に由来する良性及び悪性の腫瘍、精細管のセルトリ細胞並びに両細胞型の混合物のまれな混合腫瘍が挙げられる。
精巣毒性を誘導する薬剤の可能性のある作用が多様であるため、精巣障害の評価はかなり複雑なプロセスである。現行方法は、臨床的検討、病理学的及び病理組織学的検討並びに生化学分析及びホルモン分析を通常含む。しかし、バイオマーカーはかなり複雑に調節されており、かなり進行したステージでさえも時々変化が生じ得る。病理組織学的評価の主な欠点は、病理組織学的評価が侵襲的であり、評価が、検討する毒物学者の個々の解釈又は選択されたホルモン測定方法にある程度基づくので、臨床病理学測定又はホルモン分析と組み合わせた場合でさえも信頼性が低いことである。
精巣は生殖系及び内分泌系の統合部であり、それ自体が化学的に誘導された病変によって障害を受ける可能性があることを考えれば、精巣障害を調査する重要性は明らかとなり得る。さらに、欧州共同体のあらゆる種類の産業で使用されている化学化合物は、例えば、現在、REACH(化学物質の登録、評価、認可)を順守する必要がある。化学化合物が副腎皮質障害を誘導する可能性は、その化合物にとってリスクが高いと見なされ、その結果、その化合物は、限られた用途且つ高い安全基準に従う場合のみ利用可能であることを理解されたい(Capen CC (2001) Overview of structural and functional lesions in endocrine organs of animals、Toxicol. Pathol., 29、8〜33; Creasy DM (1998) The male reproductive system、第12章、371〜405: Target organ pathology, a basic text、Turton J及びHooson J (編) Taylor & Francis、London、United Kingdom、1998; Creasy DM (2001) Pathogenesis of male reproductive toxicity、Toxicol. Pathol.、29、64〜76; Foley GL (2001) Overview of male reproductive pathology、Toxicol. Pathol.、29、49〜63; Foster PMD、Gray LE (2008) Toxic responses of the reproductive system、第20章、761〜806: Casarett & Doull's Toxicology, The basic science of poisons、Klaassen CD (編)、McGraw-Hill P、改訂第7版、New York (2008); Heindel JJ, Treinen KA (1989) Physiology of the male reproductive system: Endocrine, paracrine and autocrine regulation、Toxicol. Pathol.、17, 411〜445; Mattison DR、Thomford PJ (1989) The mechanisms of action of reproductive toxicants、Toxicol. Pathol.、17、364〜376; Utiger RD (2010) Anatomy of the testis in Encyclopedia Britannica(これは、2010年10月26日にEncyclopedia Britannica Online: http://www.britannica.com/EBchecked/topic/588769/testisから取得した。)を参照されたい)。
化学化合物の毒物学的な性質、特に生殖腺毒性を効率的且つ信頼できる様式で評価するための感受性が高く且つ特異的な方法は、まだ利用可能でないが、それにもかかわらず高く評価されるであろう。
したがって、本発明の根底にある技術的課題は、前述のニーズに応じる手段及び方法を提供することと考えることができる。この技術的課題は、特許請求の範囲で特徴づけられ且つ本明細書の以下に記載される実施形態によって解決されている。
したがって、本発明は、生殖腺毒性を診断するための方法であって、
(a)生殖腺毒性を被っていることが疑われる対象の試験サンプルにおいて、表1a、1b、3a、3b、4a、4b、5a、5b、6a又は6bのうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカーの量を測定するステップと、
(b)ステップ(a)で測定した量をリファレンスと比較するステップであり、それにより生殖腺毒性が診断されることになるステップと
を含む、方法に関する。
前述の方法の好ましい実施形態では、前記対象は、生殖腺毒性を誘導する能力があることが疑われる化合物と接触させた。
本発明は、対象において化合物が生殖腺毒性を誘導する能力があるかどうかを判定するための方法であって、
(a)生殖腺毒性を誘導する能力があることが疑われる化合物と接触させた対象のサンプルにおいて、表1a、1b、3a、3b、4a、4b、5a、5b、6a又は6bのうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカーの量を測定するステップと、
(b)ステップ(a)で測定した量をリファレンスと比較するステップであり、それにより化合物の生殖腺毒性を誘導する能力が判定されるステップと
を含む、方法にも関する。
前述の方法の好ましい実施形態では、前記化合物は、17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール(Lysmeral)、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン、2,5-ヘキサンジオン、ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
本発明の方法の別の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、(i)生殖腺毒性を被っている対象若しくは対象群、又は(ii) 17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン、2,5-ヘキサンジオン、ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群に由来する。前記方法のより好ましい実施形態では、試験サンプル及びリファレンスにおいて本質的に同じである、バイオマーカーの量が、生殖腺毒性を示す。
本発明の方法の別の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、(i)生殖腺毒性を被っていないことが分かっている対象若しくは対象群、又は(ii) 17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン、2,5-ヘキサンジオン、ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来する。前記方法のより好ましい実施形態では、リファレンスと比較して試験サンプル中において異なる、バイオマーカーの量が、生殖腺毒性を示す。
本発明の方法のさらに別の実施形態では、前記リファレンスは、対象集団のバイオマーカーについて計算されたリファレンスである。前記方法のより好ましい実施形態では、リファレンスと比較して試験サンプル中において異なる、バイオマーカーの量が、生殖腺毒性を示す。
本発明は、生殖腺毒性を治療するための物質を同定する方法であって、
(a)生殖腺毒性を治療できると推測される候補物質と接触させた生殖腺毒性を被っている対象のサンプルにおいて、表1a、1b、3a、3b、4a、4b、5a、5b、6a又は6bのうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカーの量を測定するステップと、
(b)ステップ(a)で測定した量をリファレンスと比較するステップであり、それにより生殖腺毒性を治療する能力がある物質が同定されることになるステップと
を含む方法も企図する。
前述の方法の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、(i)生殖腺毒性を被っている対象若しくは対象群、又は(ii) 17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン、2,5-ヘキサンジオン、ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群に由来する。前記方法のより好ましい実施形態では、試験サンプルとリファレンスとの間で異なるバイオマーカーの量が、生殖腺毒性を治療する能力がある物質を示す。
前述の方法の別の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、(i)生殖腺毒性を被っていないことが分かっている対象若しくは対象群、又は(ii) 17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン、2,5-ヘキサンジオン、ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来する。前記方法のより好ましい実施形態では、試験サンプル及びリファレンスにおいて本質的に同じである、バイオマーカーの量が、生殖腺毒性を治療する能力がある物質を示す。
前述の方法のさらに別の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、対象集団におけるバイオマーカーについて計算されたリファレンスである。前記方法のより好ましい実施形態では、試験サンプル及びリファレンスにおいて本質的に同じである、バイオマーカーの量が、生殖腺毒性を治療する能力がある物質を示す。
本発明は、対象のサンプルにおいて生殖腺毒性を診断するための、表1a、1b、3a、3b、4a、4b、5a、5b、6a又は6bのうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカー又は前記バイオマーカー用の検出剤の使用にも関する。
さらに、本発明は、生殖腺毒性を被っていることが疑われる対象のサンプルにおいて生殖腺毒性を診断するための装置であって、
(a)サンプル中に存在するバイオマーカーの量の測定を可能にする、表1a、1b、3a、3b、4a、4b、5a、5b、6a又は6bのうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種の前記バイオマーカー用の検出剤を備える分析ユニットと、それと作動可能に連結された、
(b)分析ユニットで測定された前記少なくとも1種のバイオマーカーの量を格納されたリファレンスと比較することを可能にし、それによって生殖腺毒性が診断される、格納されたリファレンス及びデータ処理装置を備える評価ユニットと
を具備する装置に関する。
本発明の装置の好ましい実施形態では、前記格納されたリファレンスは、生殖腺毒性を被っていることが分かっている対象若しくは対象群に由来するリファレンス、又は17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン、2,5-ヘキサンジオン、ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群に由来するリファレンスであり、前記データ処理装置は、分析ユニットで測定された少なくとも1種のバイオマーカーの量を格納されたリファレンスと比較するための指示を実行し、リファレンスと比較して本質的に同じである、試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカー量が、生殖腺毒性が存在することを示し、又はリファレンスと比較して異なる、試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、生殖腺毒性が存在しないことを示す。
本発明の装置の別の好ましい実施形態では、前記格納されたリファレンスは、生殖腺毒性を被っていないことが分かっている対象若しくは対象群に由来するリファレンス、又は17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン、2,5-ヘキサンジオン、ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来するリファレンスであり、前記データ処理装置は、分析ユニットで測定された少なくとも1種のバイオマーカーの量を格納されたリファレンスと比較するための指示を実行し、リファレンスと比較して異なる、試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、生殖腺毒性が存在することを示し、リファレンスと比較して本質的に同じである、試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、生殖腺毒性が存在しないことを示す。
さらに本発明は、生殖腺毒性診断のためのキットであって、少なくとも1種のバイオマーカー用の検出剤、及び濃度が生殖腺毒性を被っていることが分かっている対象若しくは対象群に由来する又は生殖腺毒性を被っていないことが分かっている対象若しくは対象群に由来する、少なくとも1種のバイオマーカー用のスタンダードを含むキットに関する。
特に、卵巣毒性を診断するための方法であって、
(a)卵巣毒性を被っていることが疑われる対象の試験サンプルにおいて、表6a又は6bから選択される少なくとも1種のバイオマーカーの量を測定するステップと、
(b)ステップ(a)で測定された量をリファレンスと比較するステップであり、それにより卵巣毒性が診断されることになるステップと
を含む方法が、本発明に包含される。
前述の方法の好ましい実施形態では、前記対象は、卵巣毒性を誘導する能力があることが疑われる化合物と接触させた。
本発明は、対象において化合物が卵巣毒性を誘導できるかどうかを判定する方法であって、
(a)卵巣毒性を誘導する能力があることが疑われる化合物と接触させた対象のサンプルにおいて、表6a又は6bから選択される少なくとも1種のバイオマーカーの量を測定するステップと、
(b)ステップ(a)で測定された量をリファレンスと比較するステップであり、それにより化合物の卵巣毒性を誘導する能力が判定されるステップと
を含む方法にも関する。
前述の方法の好ましい実施形態では、前記化合物は、ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
本発明の方法の別の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、(i)卵巣毒性を被っている対象若しくは対象群、又は(ii)ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群に由来する。前記方法のより好ましい実施形態では、試験サンプル及びリファレンスにおいて本質的に同じである、バイオマーカーの量が、卵巣毒性を示す。
本発明の方法の別の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、(i)卵巣毒性を被っていないことが分かっている対象若しくは対象群、又は(ii)ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来する。前記方法のより好ましい実施形態では、リファレンスと比較して試験サンプル中において異なる、バイオマーカーの量が、卵巣毒性を示す。
本発明の方法のさらに別の実施形態では、前記リファレンスは、対象集団のバイオマーカーについて計算されたリファレンスである。前記方法のより好ましい実施形態では、リファレンスと比較して試験サンプル中において異なる、バイオマーカーの量が、卵巣毒性を示す。
本発明は、卵巣毒性を治療するための物質を同定する方法であって、
(a)卵巣毒性を治療できると推測される候補物質と接触させた卵巣毒性を被っている対象のサンプルにおいて、表6a又は6bから選択される少なくとも1種のバイオマーカーの量を測定するステップと、
(b)ステップ(a)で測定された量をリファレンスと比較するステップであり、それにより卵巣毒性を治療する能力がある物質が同定されることになるステップと
を含む方法も企図する。
前述の方法の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、(i)卵巣毒性を被っている対象若しくは対象群、又は(ii)ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群に由来する。前記方法のより好ましい実施形態では、試験サンプル及びリファレンスにおいて異なる、バイオマーカーの量が、卵巣毒性を治療できる物質を示す。
前述の方法の別の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、(i)卵巣毒性を被っていないことが分かっている対象若しくは対象群、又は(ii)ミフェプリストン、及びラロキシフェン塩酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来する。前記方法のより好ましい実施形態では、試験サンプル及びリファレンスにおいて本質的に同じである、バイオマーカーの量が、卵巣毒性を治療できる物質を示す。
前述の方法のさらに別の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、対象集団におけるバイオマーカーについて計算されたリファレンスである。前記方法のより好ましい実施形態では、試験サンプル及びリファレンスにおいて本質的に同じである、バイオマーカーの量が、卵巣毒性を治療できる物質を示す。
本発明は、対象のサンプルにおいて卵巣毒性を診断するための、表6a若しくは6bから選択される少なくとも1種のバイオマーカー又は前記バイオマーカー用の検出剤の使用にも関する。
さらに本発明は、卵巣毒性を被っていることが疑われる対象のサンプルにおいて卵巣毒性を診断するための装置であって、
(a)サンプル中に存在する前記バイオマーカーの量の測定を可能にする、表6a又は6bから選択される少なくとも1種のバイオマーカー用の検出剤を備える分析ユニットと、それと作動可能に連結された、
(b)分析ユニットで測定された前記少なくとも1種のバイオマーカーの量を格納されたリファレンスと比較することを可能にし、それによって卵巣毒性が診断される、格納されたリファレンス及びデータ処理装置を備える評価ユニットと
を具備する装置に関する。
本発明の装置の好ましい実施形態では、前記格納されたリファレンスは、卵巣毒性を被っていることが分かっている対象若しくは対象群に由来するリファレンス、又はミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群に由来するリファレンスであり、前記データ処理装置は、分析ユニットで測定された少なくとも1種のバイオマーカーの量を格納されたリファレンスと比較するための指示を実行し、リファレンスと比較して本質的に同じである試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、卵巣毒性が存在することを示し、又はリファレンスと比較して異なる試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、卵巣毒性が存在しないことを示す。
本発明の装置の別の好ましい実施形態では、前記格納されたリファレンスは、卵巣毒性を被っていないことが分かっている対象若しくは対象群に由来するリファレンス、又はミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来するリファレンスであり、前記データ処理装置は、分析ユニットで測定された少なくとも1種のバイオマーカーの量を格納されたリファレンスと比較するための指示を実行し、リファレンスと比較して異なる、試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、卵巣毒性が存在することを示し、又はリファレンスと比較して本質的に同じである試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、卵巣毒性が存在しないことを示す。
さらに本発明は、卵巣毒性診断のためのキットであって、少なくとも1種のバイオマーカー用の検出剤、及び濃度が卵巣毒性を被っていることが分かっている対象若しくは対象群に由来する、又は卵巣毒性を被っていないことが分かっている対象若しくは対象群に由来する、少なくとも1種のバイオマーカー用のスタンダードを含むキットに関する。
さらに、精巣毒性を診断するための方法であって、
(a)精巣毒性を被っていることが疑われる対象の試験サンプルにおいて、表1a、1b、3a、3b、4a、4b、5a又は5bのうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカーの量を測定するステップと、
(b)ステップ(a)で測定された量をリファレンスと比較するステップであり、それにより精巣毒性が診断されることになるステップと
を含む方法が、本発明に包含される。
前述の方法の好ましい実施形態では、前記対象は、精巣毒性を誘導する能力があることが疑われる化合物と接触させた。
本発明は、対象において化合物が精巣毒性を誘導する能力があるかどうかを判定するための方法であって、
(a)精巣毒性を誘導する能力があることが疑われる化合物と接触させた対象のサンプルにおいて、精巣毒性を誘導する能力があることが疑われる化合物と接触させた対象の試験サンプル中の、表1a、1b、3a、3b、4a、4b、5a又は5bのうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカーの量を測定するステップと、
(b)ステップ(a)で測定された量をリファレンスと比較するステップであり、それにより化合物の精巣毒性を誘導する能力が判定されるステップと
を含む方法にも関する。
前述の方法の好ましい実施形態では、前記化合物は、17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン及び2,5-ヘキサンジオンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
本発明の方法の別の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、(i)精巣毒性を被っている対象若しくは対象群、又は(ii)17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン及び2,5-ヘキサンジオンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群に由来する。前記方法のより好ましい実施形態では、試験サンプル及びリファレンスにおいて本質的に同じである、バイオマーカーの量が、精巣毒性を示す。
本発明の方法の別の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、(i)精巣毒性を被っていないことが分かっている対象若しくは対象群、又は(ii)17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン及び2,5-ヘキサンジオンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来する。前記方法のより好ましい実施形態では、リファレンスと比較して試験サンプル中において異なる、バイオマーカーの量が、精巣毒性を示す。
本発明の方法のさらに別の実施形態では、前記リファレンスは、対象集団のバイオマーカーについて計算されたリファレンスである。前記方法のより好ましい実施形態では、リファレンスと比較して試験サンプル中において異なる、バイオマーカーの量が、精巣毒性を示す。
本発明は、精巣毒性を治療するための物質を同定する方法であって、
(a)精巣毒性を治療できると推測される候補物質と接触させた精巣毒性を被っている対象のサンプルにおいて、表1a、1b、3a、3b、4a、4b、5a又は5bのうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカーの量を測定するステップと、
(b)ステップ(a)で測定された量をリファレンスと比較するステップであり、それにより精巣毒性を治療する能力がある物質が同定されることになるステップと
を含む方法も企図する。
前述の方法の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、(i)精巣毒性を被っている対象若しくは対象群、又は(ii)17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン及び2,5-ヘキサンジオンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群に由来する。前記方法のより好ましい実施形態では、試験サンプル及びリファレンスにおいて異なる、バイオマーカーの量が、精巣毒性を治療できる物質を示す。
前述の方法の別の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、(i)精巣毒性を被っていないことが分かっている対象若しくは対象群、又は(ii)17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン及び2,5-ヘキサンジオンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来する。前記方法のより好ましい実施形態では、試験サンプル及びリファレンスにおいて本質的に同じである、バイオマーカーの量が、精巣毒性を治療できる物質を示す。
前述の方法のさらに別の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、対象集団におけるバイオマーカーについて計算されたリファレンスである。前記方法のより好ましい実施形態では、試験サンプル及びリファレンスにおいて本質的に同じである、バイオマーカーの量が、精巣毒性を治療できる物質を示す。
本発明は、対象のサンプルにおいて精巣毒性を診断するための、表1a、1b、3a、3b、4a、4b、5a又は5bのうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカー又は前記バイオマーカー用の検出剤の使用にも関する。
さらに本発明は、精巣毒性を被っていることが疑われる対象のサンプルにおいて精巣毒性を診断するための装置であって、
(a)サンプル中に存在する前記バイオマーカーの量の測定を可能にする、表1a、1b、3a、3b、4a、4b、5a又は5bのうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカー用の検出剤を備える分析ユニットと、それと作動可能に連結された、
(b)分析ユニットで測定された前記少なくとも1種のバイオマーカーの量を格納されたリファレンスと比較することを可能にし、それによって精巣毒性が診断される、格納されたリファレンス及びデータ処理装置を備える評価ユニットと
を具備する装置に関する。
本発明の装置の好ましい実施形態では、前記格納されたリファレンスは、精巣毒性を被っていることが分かっている対象若しくは対象群に由来するリファレンス、又は17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン及び2,5-ヘキサンジオンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群に由来するリファレンスであり、前記データ処理装置は、分析ユニットで測定された少なくとも1種のバイオマーカーの量を格納されたリファレンスと比較するための指示を実行し、リファレンスと比較して本質的に同じである試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、精巣毒性が存在することを示し、又はリファレンスと比較して異なる試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、精巣毒性が存在しないことを示す。
本発明の装置の別の好ましい実施形態では、前記格納されたリファレンスは、精巣毒性を被っていないことが分かっている対象若しくは対象群に由来するリファレンス、又は17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン及び2,5-ヘキサンジオンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来するリファレンスであり、前記データ処理装置は、分析ユニットで測定された少なくとも1種のバイオマーカーの量を格納されたリファレンスと比較するための指示を実行し、リファレンスと比較して異なる試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、精巣毒性が存在することを示し、又はリファレンスと比較して本質的に同じである試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、精巣毒性が存在しないことを示す。
さらに本発明は、精巣毒性診断のためのキットであって、少なくとも1種のバイオマーカー用の検出剤、及びその濃度が精巣毒性を被っていることが分かっている対象若しくは対象群に由来する、又は精巣毒性を被っていないことが分かっている対象若しくは対象群に由来する、少なくとも1種のバイオマーカー用のスタンダードを含むキットに関する。
以下の定義及び説明は、前記の本発明の実施形態全て及び以下に記載する実施形態に準用する。
本発明に従って言及される方法は、基本的に前述のステップから構成されてもよいし、さらなるステップを含んでもよい。さらなるステップは、サンプルの前処理又はこの方法によって得られた診断結果の評価に関し得る。好ましいさらなる評価ステップは、本明細書の他の個所に記載される。この方法は、ある程度又は完全に自動化により補助することができる。例えば、バイオマーカー量の測定に係るステップは、ロボット化及び自動化読取装置によって自動化することができる。同様に、量の比較に係るステップも、実行の際に、自動的に比較するプログラムコードを備える、コンピューターなどの適切なデータ処理装置によって自動化することができる。そうした場合のリファレンスは、格納されたリファレンスから、例えばデータベースから提供される。好ましくは、この方法は、対象のサンプルについてex vivoで行われる方法であり、すなわちヒト又は動物の体について実施しない方法であることを理解されたい。
本明細書で使用する用語「診断」は、対象が、本明細書で言及する中毒、疾患若しくは障害などの状態を被っている、又はそうした状態に関する素因を有する確率を評価することを指す。素因の診断は、対象がその後に既定の時間窓内にその状態を発症する見込みの予後又は予測と時には称される場合もある。当業者に理解されるように、そうした評価は、診断される対象の100%について正確であることが好ましいが、通常はそうではない可能性がある。しかし、この用語は、統計的に有意な一部の対象を、その状態を被っている又はその状態に関する素因を有すると特定できることを必要とする。ある一部が統計的に有意かどうかは、様々な周知の統計的な評価ツール、例えば、信頼区間の決定、P値の決定、スチューデントのt検定、マンホイットニー検定などを使用して、当業者であれば容易に判定することができる。詳細は、Dowdy及びWearden、Statistics for Research、John Wiley & Sons、New York 1983に見出される。好ましい信頼区間は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%である。P値は、好ましくは、0.2、0.1、0.05である。
本発明による診断は、ある状態又はその症状及びそれらの素因のモニタリング、確認及び分類も含む。モニタリングは、既に診断された状態又は素因の経過を追うことを指す。モニタリングは、例えば、その状態若しくは素因の進行の判定、その状態の進行に対する特定治療の効果の判定、又は素因を有する対象における、その状態の発症に対する予防的治療若しくは食事療法などの予防策の効果の判定を包含する。確認は、既に判定された状態又はその状態の素因の診断を、他の指標又はマーカーを使用して強化すること又は実証することに関する。分類は、(i)例えばその状態に付随する症状の強さに応じて、その状態を様々なクラスに割り当てること、又は(ii)その状態に付随する、様々なステージ、疾患若しくは障害を区別することに関する。状態の素因は、リスクの程度、すなわち対象が後でその状態を発症する確率に基づいて分類することができる。さらに、分類は、好ましくは、本発明の方法によって試験化合物に作用様式を割り当てることも含む。具体的には、本発明の方法によって、作用様式がまだ知られていない化合物の特異的な作用様式の判定が可能になる。これは、好ましくは、少なくとも1種のバイオマーカーに関して測定された量又は前記化合物の代表的なバイオマーカープロファイルを、リファレンスとして作用様式が知られている化合物に関して測定されたバイオマーカーの量又はバイオマーカープロファイルと比較することによって達成される。化合物の分子標的が同定されるので、作用様式の分類によって、より一層信頼できる化合物の毒性評価が可能になる。
本明細書で使用する用語「生殖腺毒性」は、生殖腺機能障害をもたらす、生殖腺、すなわち卵巣又は精巣の任意のダメージ又は障害に関する。好ましくは、生殖腺毒性の影響を受けるものは、生殖腺の生殖関連機能である。好ましくは、本明細書で使用する生殖腺毒性は、化学化合物又は薬物の投与で誘導されるか、その投与の結果であり、すなわち、いわゆる毒素誘導性生殖腺毒性である。より好ましくは、生殖腺毒性は、卵巣毒性又は精巣毒性である。好ましくは、生殖腺毒性は、生殖腺の細胞死及び/又は細胞機能障害を伴う。
好ましくは、卵巣毒性は、以下の群の1つ以上の疾患又は障害によって顕在化される:上皮(中皮)過形成及び管状過形成からなる非腫瘍性病変、卵母細胞の破壊、卵胞閉鎖までの卵胞発達の停止、卵胞及び間質の萎縮、過排卵、卵胞黄体化、卵胞嚢胞、黄体の縮小/欠損、黄体の増大/残存、黄体の空胞変性、セルトリフォーム管状過形成、間質腺の肥大/過形成萎縮、発情周期障害、卵巣間膜平滑筋過形成又は卵巣腫瘍。好ましくは、卵巣腫瘍は5つの大区分に細分することができ、これらには、上皮性腫瘍、性索間質腫瘍、胚細胞腫瘍、卵巣の非分化軟組織に由来する腫瘍及び遠位部位から卵巣への転移性腫瘍が含まれる。卵巣の上皮性腫瘍としては、嚢腺腫及び嚢胞腺癌、管間質腺腫並びに中皮腫が挙げられる。管状腺腫はマウスの卵巣腫瘍中で最も重要であるが、ラットでは珍しく、他の動物種ではまれであり、女性の卵巣では認められない。卵巣腫瘍の別の重要な群は、性索及び/又は卵巣間質に由来するものである。これらとしては、顆粒膜細胞腫、黄体腫、莢膜細胞腫、セルトリ細胞腫、卵巣間質が一因となる管状腺腫及び未分化性索間質腫瘍が挙げられる。顆粒膜細胞腫はこの群の中で最も一般的であり、遺伝子欠損、放射線照射、卵母細胞毒性化学物質及び新生児の胸腺摘出に伴う長期の内分泌機能撹乱の後に、ある種の管状又は管間質腺腫内に発生する可能性がある。
好ましくは、本明細書で使用する卵巣毒性は、内分泌性の卵巣毒性を指す。そうした毒性は、エストロゲン及び/又はプロゲステロン産生障害及び関連する障害を伴い得る。
好ましくは、精巣毒性は、以下の群の1つ以上の疾患又は障害によって顕在化される:間質ライディッヒ細胞の過形成若しくは新形成又はライディッヒ細胞腫。ライディッヒ(間質)細胞腫は、慢性毒性/癌原性試験において、げっ歯類でより頻繁に生じる内分泌腫瘍の中の1つである。げっ歯類の精巣腫瘍は5つの一般的なカテゴリーに分類され、これらには、生殖腺間質の細胞に由来する腫瘍、生殖細胞起源の新生物、付属器構造物又は漿膜に由来する腫瘍並びに支持結合組織及び精巣の血管に由来する一群の腫瘍が含まれる。生殖腺間質の新生物としては、ライディッヒ(間質)細胞及び精細管のセルトリ細胞に由来する良性及び悪性の腫瘍並びに両細胞型の混合物のまれな混合腫瘍が挙げられる。
好ましくは、本明細書で使用する精巣毒性は、精巣毒性、リスメラールに基づく毒性、精巣毒性及び/又は精巣変性を指す。
好ましくは、精巣毒性は、表1a又は1bから選択されるバイオマーカーが測定される場合に診断される。
好ましくは、リスメラールに基づく毒性は、表3a又は3bから選択されるバイオマーカーが測定される場合に診断される。
好ましくは、精巣毒性は、表4a又は4bから選択されるバイオマーカーが測定される場合に診断される。
好ましくは、精巣変性は、表5a又は5bから選択されるバイオマーカーが測定される場合に診断される。
生殖腺毒性の前述の発現の症状及び臨床徴候は、当業者に周知であり、毒性学の標準的な書籍、例えば、H. Marquardt、S. G. Schafer、R. O. McClellan、F. Welsch (編)、「Toxicology」、第13章: The Liver、1999、Academic Press、Londonに詳細に記載されている。
各バイオマーカーが、診断について見かけ上統計的に独立した予測因子であるので、表に列挙されているバイオマーカーのうちの2種以上の組み合わせは、さらに診断を強化することが本発明によって見出された。さらに、マーカー存在量に対する他の組織からの影響が相殺されるので、生殖腺毒性に対する特異性も有意に増大する。したがって、本明細書で使用する用語「少なくとも1」は、好ましくは、添付の表のうちのいずれか1つで言及されるバイオマーカーの、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9又は少なくとも10の組み合わせを指す。好ましくは、それらの表のうちのいずれか1つで列挙される全てのバイオマーカーが、本発明の方法に従って組み合わせて測定される。
以下に述べる単一のバイオマーカー又は組み合わせとして測定される特に好ましいバイオマーカーを、以下のように列挙する。
卵巣毒性を診断するためのバイオマーカーの好ましい群又は組み合わせは、以下のバイオマーカーを含む、本質的にそれらからなる又はそれらから選択される:コレステロール、ドコサペンタエン酸(C22:cis[7,10,13,16,19]5)、アラキドン酸(C20:cis[5,8,11,14]4)、myo-イノシトール、脂質画分又はドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16,19]6)。
リスメラールに基づく毒性を診断するためのバイオマーカーの好ましい群又は組み合わせは、以下のバイオマーカーを含む、本質的にそれらからなる又はそれらから選択される:リグノセリン酸(C24:0)、セラミド(d18:1、C24:0)、3-O-メチルスフィンゴシン(d18:1)、リジン又はスフィンゴミエリン(d18:1、C24:0)。
精巣毒性を診断するためのバイオマーカーの好ましい群又は組み合わせは、以下のバイオマーカーを含む、本質的にそれらからなる又はそれらから選択される:リグノセリン酸(C24:0)、セラミド(d18:1、C24:0)、スフィンゴミエリン(d18:1、C24:0)、エリスロ-スフィンゴシン又はセラミド(d18:1、C24:1)。
精巣毒性を診断するためのバイオマーカーの好ましい群又は組み合わせは、以下のバイオマーカーを含む、本質的にそれらからなる又はそれらから選択される:リグノセリン酸(C24:0)、コレステロール、ステアリン酸(C18:0)、リジン又は3-O-メチルスフィンゴシン(d18:1)。
精巣変性を診断するためのバイオマーカーの好ましい群又は組み合わせは、以下のバイオマーカーを含む、本質的にそれらからなる又はそれらから選択される:ウラシル、グルコース、myo-イノシトール、リンゴ酸又はオレイン酸(C18:cis[9]1)。
したがって好ましくは、少なくとも1種のバイオマーカーは、好ましくは、各疾患に対する前述の群から選択されるバイオマーカーであり、又は少なくとも1種のバイオマーカーは、各疾患のための前述のバイオマーカーからなる若しくはそれを共に含むバイオマーカーの組み合わせである。前述のバイオマーカー及びバイオマーカーの組み合わせは、より詳細に付属の実施例で記載されるように、特に高い診断価値を有する重要なバイオマーカーとして同定された。
さらに、他のバイオマーカー又は既知の代謝物、遺伝子変異、転写産物及び/若しくはタンパク質の量若しくは酵素活性を含めた臨床的パラメーターをさらに加えて測定してもよい。そうした、本発明の方法によって測定することができる追加的な臨床的又は生化学的パラメーターは、当技術分野で周知である。
本明細書で使用する用語「バイオマーカー」は、サンプル中の存在又は濃度が、ある状態、好ましくは本明細書で言及する生殖腺毒性の有無又は強さの指標になる化学化合物を指す。好ましくは、化学化合物は、代謝物又はそれに由来するアナライトである。アナライトは、生物で見出される実際の代謝物と同一であり得る化学化合物である。しかし、この用語は、内因的に生成される、又は単離若しくはサンプルの前処理の間、若しくは本発明の方法の実施の結果として、例えば、精製及び/若しくは測定ステップの間に生成されるそのような代謝物の誘導体も含む。特定の場合では、アナライトは、溶解度などの化学的性質によりさらに特徴づけられる。前記性質のため、アナライトは、精製及び/又は測定プロセス中に得られる極性又は脂質画分中に生じ得る。したがって、化学的性質、好ましくは溶解度は、精製及び/又は測定プロセス中に得られる極性又は脂質画分のいずれかの中にアナライトを生じる。したがって、前記化学的性質、特に、精製及び/又は測定プロセス中に得られる極性画分又は脂質画分のいずれかの中のアナライトの発生として考慮される溶解度は、アナライトをさらに特徴づけ、その同定を補助する。こうした化学的性質を判定及び考慮することができる方法についての詳細は、以下に記載される付属の実施例に見出される。好ましくは、アナライトは、定性的及び定量的な様式で代謝物を表し、これによって、対象又は少なくとも前記対象の試験サンプル中の代謝物の有無又は量に関する決定が必然的に可能になる。バイオマーカー、アナライト及び代謝物は、本明細書では単数形で言及されるが、これらの用語の複数形も含み、すなわち、同一分子種の複数のバイオマーカー、アナライト又は代謝物分子を指す。さらに、本発明によるバイオマーカーは、必ずしも1つの分子種に対応するとは限らない。むしろ、バイオマーカーは、化合物の立体異性体又は鏡像異性体を含み得る。さらに、バイオマーカーは、異性体分子のある生物学的クラスの異性体の総和を表すこともできる。前記異性体は、場合によっては同一の分析的特徴を示すものとし、したがって、以下に記載される付属の実施例で適用されるものを含めた種々の分析方法によって区別できない。しかし、異性体は、少なくとも同一の和式パラメーターを有するので、例えば脂質の場合には、脂肪酸及び/又はスフィンゴ塩基部分において、同一の鎖長並びに同一の二重結合数を有する。
本明細書で使用する用語「試験サンプル」は、本発明の方法による生殖腺毒性の診断に使用されるサンプルを指す。好ましくは、前記試験サンプルは生物サンプルである。生物源からのサンプル(すなわち生物サンプル)は、複数の代謝物を通常含む。本発明の方法で使用する好ましい生物サンプルは、体液、好ましくは、血液、血漿、血清、唾液、胆汁、尿若しくは脳脊髄液からのサンプル、又は例えば生検によって、細胞、組織若しくは臓器から、好ましくは肝臓から得られるサンプルである。より好ましくは、サンプルは、血液、血漿又は血清サンプルであり、最も好ましくは、血漿サンプルである。生物サンプルは、本明細書の他の個所で明記される対象に由来する。前述の様々な種類の生物サンプルを得るための技術は、当技術分野で周知である。例えば、血液サンプルは採血によって得ることができるが、組織又は臓器サンプルは、例えば生検によって得ることになる。
好ましくは、前述のサンプルは、前処理してから本発明の方法で使用する。より詳細に以下に記載するように、前記前処理は、化合物を遊離若しくは分離する又は過剰な材料若しくは廃物を除去するのに必要となる処理を含み得る。適切な技術は、遠心分離、抽出、分画、限外濾過、タンパク質沈殿、それに続く化合物の濾過及び精製並びに/又は濃縮を含む。さらに、化合物の分析に適した形状又は濃度で化合物を提供するために、他の前処理が行われる。例えば、ガスクロマトグラフィー連結質量分析を本発明の方法で使用する場合は、前記ガスクロマトグラフィーより前に化合物を誘導体化することが必要となる。適切且つ必要な前処理は、本発明の方法の実施に使用する手段に依存し、当業者に周知である。先に記載したように前処理されたサンプルも、本発明によって使用される用語「サンプル」に含まれる。
本明細書で使用する用語「対象」は、動物、好ましくは哺乳動物、例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ハムスター、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、サル又はウシなど、さらに、好ましくはヒトに関する。より好ましくは、対象はげっ歯類であり、最も好ましくはラットである。本発明の方法を適用して診断することができる他の動物は、魚類、鳥類又は爬虫類である。好ましくは、前記対象は、生殖腺毒性を誘導する能力があることが疑われる化合物と接触したか、又は接触させたものである。生殖腺毒性を誘導することが疑われる化合物と接触させた対象は、例えば化合物の毒性に関するスクリーニングアッセイで使用する、例えばラットなどの実験動物でもよい。生殖腺毒性を誘導することができる化合物と接触したことが疑われる対象は、適切な療法を選択するために診断される対象でもあり得る。好ましくは、本明細書で使用する生殖腺毒性を誘導することができる化合物は、17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン、2,5-ヘキサンジオン、ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩である。
本明細書で使用する用語「量を測定する」は、バイオマーカー、すなわち代謝物又はアナライトの少なくとも1つの特徴的な特性を測定することを指す。本発明による特徴的な特性は、生化学的性質を含めた、バイオマーカーの物理的及び/又は化学的性質を特徴づける特性である。そうした性質としては、例えば、分子量、粘性、密度、電荷、スピン、光学活性、色、蛍光、化学発光、元素組成、化学構造、他の化合物と反応する能力、生物学的読み取りシステムで応答(例えばレポーター遺伝子の誘導)を惹起する能力などが挙げられる。前記性質に関する値は、特徴的な特性としての役割を果たすことができ、当技術分野で周知の技術によって測定することができる。さらに、特徴的な特性は、標準的な操作、例えば乗算、除算又は対数計算などの数学的計算によってバイオマーカーの物理的及び/又は化学的性質の値から導かれる任意の特性でもよい。最も好ましくは、少なくとも1つの特徴的な特性によって、バイオマーカー及びその量の測定及び/又は化学的な同定が可能になる。したがって、特性値は、好ましくは、特性値が導かれるバイオマーカーの存在量に関する情報も含む。例えば、バイオマーカーの特性値は、質量スペクトルのピークでもよい。そうしたピークは、バイオマーカーの特徴的な情報、すなわちm/z(質量電荷比)情報及びサンプル中の前記バイオマーカーの存在量(すなわちその量)に関する強度値を含有する。
先に論じたように、好ましくは、本発明の方法によって測定される少なくとも1種のバイオマーカーは、定量的に又は半定量的に測定することができる。定量的な測定については、バイオマーカーの絶対量又は正確な量のいずれかが測定されるか、又は本明細書の上記で言及した特徴的な特性(複数可)に関して測定された値に基づいて、バイオマーカーの相対量が測定される。相対量は、バイオマーカーの正確な量が測定できない又は測定すべきでない場合に、測定することができる。前記の場合では、バイオマーカーの存在量が第2の量で前記バイオマーカーを含む第2のサンプルに対して増大又は低下しているのかを判定することができる。したがって、バイオマーカーの定量分析は、バイオマーカーの半定量分析と呼ばれることもある分析も含む。
さらに、本発明の方法で使用される測定は、好ましくは、先に言及された分析ステップより前に、化合物分離ステップの使用を含む。好ましくは、前記化合物分離ステップによって、サンプルに含まれる少なくとも1種のバイオマーカーの時間分解分離がもたらされる。したがって、本発明に従って好んで使用される適切な分離技術には、全てのクロマトグラフィー分離技術、例えば、液体クロマトグラフィー(LC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、薄層クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー又はアフィニティークロマトグラフィーが含まれる。こうした技術は、当技術分野で周知であり、当業者であれば容易に適用することができる。最も好ましくは、LC及び/又はGCが本発明の方法で想定されるクロマトグラフィー技術である。バイオマーカーのそうした測定に適切な装置は、当技術分野で周知である。好ましくは、質量分析が使用され、特に、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)、直接注入質量分析若しくはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT-ICR-MS)、キャピラリー電気泳動質量分析(CE-MS)、高速液体クロマトグラフィー連結質量分析(HPLC-MS)、四重極質量分析、MS-MS又はMS-MS-MSなどの任意の逐次連結質量分析、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)、熱分解質量分析(Py-MS)、イオン移動度質量分析又は飛行時間型質量分析(TOF)が使用される。最も好ましくは、以下で詳細に記載されるように、LC-MS及び/又はGC-MSが使用される。前記技術は、例えば、Nissen 1995、Journal of Chromatography A、703: 37〜57、US 4,540,884又はUS 5,397,894に開示されており、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。質量分析技術の代わりとして又はそれに加えて、以下の技術を化合物の測定に使用することができる:核磁気共鳴(NMR)、磁気共鳴画像(MRI)、フーリエ変換赤外分析(FT-IR)、紫外(UV)分光、屈折率(RI)、蛍光検出、放射化学的検出、電気化学的検出、光散乱(LS)、分散ラマン分光法又は炎イオン化検出(FID)。こうした技術は当業者に周知であり、容易に適用することができる。好ましくは、本発明の方法は、自動化によって補助されるものとする。例えば、サンプルの処理又は前処理は、ロボットによって自動化することができる。好ましくは、データの処理及び比較は、適切なコンピュータープログラム及びデータベースによって補助される。先に本明細書に記載した自動化によって、ハイスループット法で本発明の方法を使用することが可能になる。
さらに、バイオマーカーは、特異的な化学的又は生物学的アッセイによって測定することもできる。前記アッセイは、サンプル中のバイオマーカーの特異的な検出を可能にする手段を含むものとする。好ましくは、前記手段は、他の化合物と反応するバイオマーカーの能力、又は生物学的読み取りシステムにおいて応答(例えばレポーター遺伝子の誘導)を惹起するその能力に基づいて、バイオマーカーの化学構造を特異的に認識することができるか、又はバイオマーカーを特異的に同定することができる。バイオマーカーの化学構造を特異的に認識することができる手段は、好ましくは、バイオマーカーに特異的に結合する検出剤、より好ましくは、化学構造物と特異的に相互作用する抗体又は他のタンパク質、例えば受容体又は酵素又はアプタマーである。例えば、特異的な抗体は、抗原としてバイオマーカーを使用して、当技術分野で周知の方法によって得ることができる。本明細書で言及する抗体には、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の両方、及びそれらのフラグメント、例えば、抗原又はハプテンと結合することができるFv、Fab及びF(ab)2フラグメントが含まれる。本発明は、所望の抗原特異性を示す非ヒトドナー抗体のアミノ酸配列をヒトアクセプター抗体の配列と組み合わせた、ヒト化ハイブリッド抗体も含む。さらに、単鎖抗体が包含される。ドナー配列は、少なくともドナーの抗原結合アミノ酸残基を通常含むが、他の構造的及び/又はドナー抗体の機能的に関連性のあるアミノ酸残基もまた含んでもよい。そうしたハイブリッドは、当技術分野で周知のいくつかの方法によって調製することができる。代謝物を特異的に認識することができる適切なタンパク質は、好ましくは、前記バイオマーカーの代謝変換に関与する酵素である。前記酵素は、バイオマーカー、例えば代謝物を基質として使用してもよいし、基質をバイオマーカー、例えば代謝物に変換してもよい。さらに、前記抗体は、バイオマーカーを特異的に認識するオリゴペプチドを生成するための基礎として使用することができる。こうしたオリゴペプチドは、例えば、酵素の結合ドメイン又は前記バイオマーカーに対するポケットを含むものとする。適切な抗体及び/又は酵素に基づくアッセイは、RIA(放射免疫測定法)、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、サンドイッチ酵素免疫試験、電気化学発光サンドイッチ免疫測定法(electrochemiluminescence sandwich immunoassays)(ECLIA)、解離促進ランタニド蛍光免疫測定法(dissociation-enhanced lanthanide fluoro immuno assay)(DELFIA)又は固相免疫試験でもよい。バイオマーカーに特異的に結合するアプタマーは、当技術分野で周知の方法で生成することができる(Ellington 1990、Nature 346:818〜822; Vater 2003、Curr Opin Drug Discov Devel 6(2): 253〜261)。さらに、バイオマーカーは、他の化合物と反応するその能力に基づいて、すなわち特異的な化学反応によって、同定することもできる。さらに、バイオマーカーは、生物学的読み取りシステムで応答を惹起するその能力のため、サンプル中で測定することができる。生物学的な応答は、サンプルに含まれる代謝物の存在及び/又は代謝物の量を示す読み取り値として検出されるものとする。生物学的な応答は、例えば、細胞又は生物の遺伝子発現誘導又は表現型応答でもよい。
用語「リファレンス」は、少なくとも1種のバイオマーカーの特徴的な特性の値を指し、好ましくは、生殖腺毒性と相関し得る前記バイオマーカーの量の指標になる値を指す。
好ましくは、そうしたリファレンスは、生殖腺毒性を被っている対象若しくは対象群に由来するサンプル、又は17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン、2,5-ヘキサンジオン、ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩に接触させた対象若しくは対象群に由来するサンプルから得られる。対象又は対象群は、化合物が生物学的に利用可能である限り、局所又は全身の各投与様式で前記化合物に接触させることができる。前記化合物の好ましい投与様式は、以下の付属の実施例に記載される。
或いは、とはいえ同様に好ましいことであるが、リファレンスは、17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン、2,5-ヘキサンジオン、ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩に接触させていない対象若しくは対象群に由来するサンプル、又は生殖腺毒性に関して、より好ましくは他の疾患に関しても、健康な対象若しくはそうした対象の群に由来するサンプルから得ることができる。
リファレンスは、バイオマーカーの量について上で記載したように測定することができる。特に、好ましくは、リファレンスは、本明細書で言及する一群の対象のサンプルから得られ、これは、その群の各個体由来のサンプル中の少なくとも1種のバイオマーカー(複数可)それぞれの相対量又は絶対量を別々に測定し、その後に、本明細書の他の個所で言及される統計的技術を使用して、前記相対量若しくは絶対量に対する中央値若しくは平均値又はそれらから得られる任意のパラメーターを決定することによって得られる。或いは、好ましくは、本明細書で言及するように、リファレンスは、対象群のサンプル混合物由来のサンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーそれぞれに対する相対量又は絶対量を測定することによって得ることができる。好ましくは、そうした混合物は、前記群の各個体から得られるサンプル由来の等容量の部分からなる。
さらに、また好ましくは、リファレンスは計算されたリファレンスでもよく、最も好ましくは、個体集団に由来する少なくとも1種のバイオマーカーのそれぞれの相対量又は絶対量に対する平均値又は中央値でもよい。前記個体集団は、本発明の方法によって調査される対象が生じる集団である。しかし、計算されたリファレンスを決定するために調査する対象集団は、好ましくは、見かけ上健康な対象(例えば未処理)からなるか、又は前記集団内に試験対象(複数可)が存在することに起因する平均値又は中央値の有意な変化に対して統計的に耐えるのに十分な大きさの、見かけ上健康な多数の対象を含むことを理解されたい。前記集団の個体の少なくとも1種のバイオマーカーの絶対量又は相対量は、本明細書の他の個所で明記されるように判定することができる。適切なリファレンス値、好ましくは平均値又は中央値を計算する方法は、当技術分野で周知である。適切なリファレンスを計算するための他の技術としては、受信者動作特性(ROC)曲線計算を用いる最適化が挙げられ、これは、当技術分野で同様に周知であり、対象の所与のコホートに基づく所与の特異性及び感受性を有するアッセイ系について、容易に実施することができる。先に言及した集団又は対象群は、複数の対象、好ましくは、少なくとも5、10、50、100、1,000又は10,000の対象、最大で集団全てまでを含む。より好ましくは、この文脈において言及される対象群は、所与の集団を統計的に代表する大きさを有する対象群、すなわち統計的に代表的なサンプルである。本発明の方法によって診断される対象及び前記複数の対象の対象は同一種であり、好ましくは同じ性別であることを理解されたい。
より好ましくは、リファレンスは、データベースなどの適切なデータ記憶媒体に格納されるので、その後の診断にも利用可能である。これによって、生殖腺毒性の素因を効率的に診断することが可能になる。なぜなら、対応するリファレンスサンプルが得られた対象が(実際に)生殖腺毒性を発症したことが、(その後に)一度確認されれば、適切なリファレンス結果をデータベース中で特定することができるからである。
用語「比較する」は、少なくとも1種のバイオマーカーの定性的又は定量的な測定量が、リファレンスと同じであるか又はそれと異なるかを評価することを指す。
リファレンス結果が、生殖腺毒性を被っている対象若しくは対象群に由来するサンプル、又は17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン、2,5-ヘキサンジオン、ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩と接触させた対象若しくは対象群に由来するサンプルから得られた場合は、生殖腺毒性は、試験サンプル及び前述のリファレンスから得られる量の間の同一度又は類似度に基づいて、すなわち、少なくとも1種のバイオマーカーに関する同一の定性的又は定量的な組成に基づいて診断することができる。同じ量は、統計的に有意な様式で異ならない量を含み、好ましくは、少なくともリファレンスの1〜99パーセンタイル、5〜95パーセンタイル、10〜90パーセンタイル、20〜80パーセンタイル、30〜70パーセンタイル、40〜60パーセンタイルの区間内、より好ましくは、リファレンスの50、60、70、80、90又は95パーセンタイルである。生殖腺毒性を被っている対象若しくは対象群に由来するサンプルから得られるリファレンス、又は17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン、2,5-ヘキサンジオン、ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩と接触させた対象若しくは対象群に由来するサンプルから得られるリファレンスは、生殖腺毒性を診断するために、又は対象において化合物が生殖腺毒性を誘導することができるかどうかを判定するために、本発明の方法で適用することができる。そのような場合では、好ましくは、リファレンスと本質的に同じである、少なくとも1種のバイオマーカーの量が、生殖腺毒性又は生殖腺毒性を誘導することができる化合物が存在することを示し、一方で、リファレンスと異なる、少なくとも1種のバイオマーカーの量が、生殖腺毒性又は生殖腺毒性を誘導することができる化合物が存在しないことを示す。さらに、生殖腺毒性を被っている対象若しくは対象群に由来するサンプルから得られるリファレンス、又は17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン、2,5-ヘキサンジオン、ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩と接触させた対象若しくは対象群に由来するサンプルから得られるリファレンスは、生殖腺毒性を治療するための物質を同定するのに適用することができる。そのような場合では、好ましくは、リファレンスと異なる、少なくとも1種のバイオマーカーの量が、生殖腺毒性を治療するのに適した物質を示し、一方で、リファレンスと本質的に同じである、少なくとも1種のバイオマーカーの量が、生殖腺毒性を治療できない物質を示す。
リファレンス結果が、17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン、2,5-ヘキサンジオン、ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩に接触させていない対象若しくは対象群のサンプル、又は生殖腺毒性を被っていない対象若しくは対象群のサンプルから得られる場合は、前記生殖腺毒性は、試験サンプルから得られる試験量と前述のリファレンスの差異、すなわち、少なくとも1種のバイオマーカーに関する定性的又は定量的な組成における差異に基づいて診断することができる。
上で明記した計算されたリファレンスが使用される場合も、同じことが当てはまる。
差異は、少なくとも1種のバイオマーカーの絶対量又は相対量の増大(バイオマーカーのアップレギュレーションと称されることもある。実施例も参照されたい。)であってもよいし、前記量のいずれかの低下若しくは検出可能なバイオマーカーの量が存在しないこと(バイオマーカーのダウンレギュレーションと称されることもある。実施例も参照されたい。)であってもよい。好ましくは、相対量又は絶対量の差異は有意であり、すなわち、リファレンスの45〜55パーセンタイル、40〜60パーセンタイル、30〜70パーセンタイル、20〜80パーセンタイル、10〜90パーセンタイル、5〜95パーセンタイル、1〜99パーセンタイルの区間外である。
17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン、2,5-ヘキサンジオン、ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩に接触させていない対象若しくは対象群に由来するサンプルから得られるリファレンス、又は生殖腺毒性を被っていない対象若しくは対象群に由来するサンプルから得られるリファレンスは、生殖腺毒性を診断するために、又は対象において化合物が生殖腺毒性を誘導することができるかどうかを判定するために、本発明の方法で適用することができる。そのような場合では、好ましくは、リファレンスと異なる、少なくとも1種のバイオマーカーの量が、生殖腺毒性又は生殖腺毒性を誘導することができる化合物が存在することを示し、一方で、リファレンスと本質的に同じである、少なくとも1種のバイオマーカーの量が、生殖腺毒性又は生殖腺毒性を誘導することができる化合物が存在しないことを示す。さらに、17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン、2,5-ヘキサンジオン、ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩に接触させていない対象若しくは対象群に由来するサンプルから得られるリファレンス、又は生殖腺毒性を被っていない対象若しくは対象群に由来するサンプルから得られるリファレンスは、生殖腺毒性を治療するための物質を同定するのに適用することができる。そのような場合では、好ましくは、リファレンスと本質的に同じである、少なくとも1種のバイオマーカーの量が、生殖腺毒性を治療するのに適した物質を示し、一方で、リファレンスと異なる、少なくとも1種のバイオマーカーの量が、生殖腺毒性を治療するのに適さない物質を示す。
好ましいリファレンスは、付属の表で言及されるもの又は以下の付属の実施例で生成することができるものである。さらに、相対的差異、すなわち個々のバイオマーカーに対する量の増大(アップレギュレーション)又は低下(ダウンレギュレーション)は、好ましくは、以下の表に列挙されるものである。さらに、好ましくは、観察される差異の程度、すなわち増大又は低下は、好ましくは、以下の表に示される因子による増大又は低下である。
好ましくは、表1a、3a、4a、5a又は6aから選択される場合の少なくとも1種のバイオマーカーは、17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン、2,5-ヘキサンジオン、ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩に接触させていない、対象又は対象の群に由来するサンプルから得られたリファレンス、又は生殖腺毒性を被っていないリファレンスに対して、より好ましくは、以下の表に示されるリファレンスに対して増大する。
好ましくは、表1b、3b、4b、5b又は6bから選択される場合の少なくとも1種のバイオマーカーは、17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン、2,5-ヘキサンジオン、ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩に接触させていない、対象又は対象の群に由来するサンプルから得られたリファレンス、又は生殖腺毒性を被っていないリファレンス、より好ましくは、以下の表に示されるリファレンスに対して低下する。
好ましくは、比較は自動化によって補助される。例えば、2つの異なるデータセット(例えば、特徴的な特性(複数可)の値を含むデータセット)を比較するためのアルゴリズムを含む適切なコンピュータープログラムを使用することができる。そうしたコンピュータープログラム及びアルゴリズムは、当技術分野で周知である。上記にもかかわらず、手動で比較することもできる。
用語「生殖腺毒性を治療するための物質」は、本明細書の他の個所で言及される生殖腺毒性を誘導する生物学的機序を直接的に妨げることができる化合物を指す。或いは、生殖腺毒性に付随する症状の発症又は進行を妨げることができる化合物も好ましい。本発明の方法によって同定される物質は、有機及び無機化学物質、例えば、低分子、ポリヌクレオチド、siRNA、リボザイム若しくはマイクロRNA分子を含めたオリゴヌクレオチド、ペプチド、抗体を含めたポリペプチド又は他の人工的若しくは生物学的な高分子、例えばアプタマーなどでもよい。好ましくは、この物質は、薬物、プロドラッグ又は薬物若しくはプロドラッグを開発するためのリード物質として適する。
本発明の方法が、生殖腺毒性の療法のための薬物の同定、又は化合物の毒物学的評価(すなわち、化合物が生殖腺毒性を誘導することができるかどうかの判定)のために使用されることになる場合は、統計的理由のために、複数の対象の試験サンプルが調査され得ることを理解されたい。好ましくは、試験対象のそうしたコホートの内メタボロームは、例えば調査化合物以外の因子によって引き起こされる差異を回避するために、できるだけ類似しているものとする。前記方法に使用する対象は、好ましくはげっ歯類などの実験動物、より好ましくはラットである。前記実験動物は、好ましくは、本発明の方法が終了した後で屠殺するものとすることをさらに理解されたい。コホート試験の対象及びリファレンス動物の全ては、いかなる特異な環境上の影響も回避するために、同一条件下で維持されるものとする。そうした動物を提供する適切な条件及び方法は、WO2007/014825に詳細に記載されている。前記条件は、参照により本明細書に組み込まれる。
好ましくは、本発明の方法は本発明の装置に実装され得る。本明細書で使用する装置は、少なくとも前述のユニットを備えるものとする。装置のユニットは、互いに作動可能に連結される。作動的にユニットを連結する方法は、装置中に備えられるユニットの種類に依存する。例えば、少なくとも1種のバイオマーカーを定性的又は定量的に自動的に測定するための手段が分析ユニット中に適用される場合は、前記自動的な作動ユニットによって得られるデータは、診断を容易にするために、評価ユニットによって、例えば、データ処理装置であるコンピューターで動作するコンピュータープログラムによって処理することができる。好ましくは、そのような場合は、これらのユニットは単一装置に備えられる。しかし、分析ユニットと評価ユニットは、物理的に離れていてもよい。そのような場合では、作動的な連結は、データ伝達を可能にする、ユニット間の有線接続及び無線接続によって達成することができる。無線接続は、無線LAN(WLAN)又はインターネットを使用することができる。有線接続は、ユニット間の光及び非光ケーブル接続によって達成することができる。好ましくは、有線接続に使用するケーブルは、ハイスループットなデータ転送に適する。
少なくとも1種のバイオマーカーを測定するための好ましい分析ユニットは、本明細書の他の個所で明記されるような、少なくとも1種のバイオマーカーを特異的に認識する検出剤、例えば抗体、タンパク質又はアプタマーなど、及び前記検出剤を試験サンプルと接触させるゾーンを備える。検出剤は、ゾーン上に固定化して接触させてもよいし、サンプルを負荷した後に前記ゾーンに加えてもよい。好ましくは、分析ユニットは、検出剤と少なくとも1種のバイオマーカーの複合物の量を定性的及び/又は定量的に測定するように適合させるものとする。検出剤が少なくとも1種のバイオマーカーへ結合する際に、少なくとも1種のバイオマーカー、検出剤のいずれか又は両方の少なくとも1つの測定可能な物理的又は化学的性質が変化し、その結果、好ましくは分析ユニットに備えられる検出器によって前記変化を測定できることを理解されたい。しかし、試験ストライプなどの分析ユニットを使用する場合は、検出器及び分析ユニットは、測定のためだけに結合させられる分離したコンポーネントでもよい。少なくとも1つの測定可能な物理的又は化学的性質において検出された変化に基づいて、分析ユニットは、本明細書の他の個所で明記される少なくとも1種のバイオマーカーに関する強度値を計算することができる。次いで、さらに処理及び評価するために、前記強度値を評価ユニットに伝達することができる。最も好ましくは、本明細書の他の個所で明記される検出剤を使用して、少なくとも1種のバイオマーカーの量をELISA、EIA又はRIAに基づく技術によって判定することができる。或いは、本明細書で言及する分析ユニットは、好ましくは、クロマトグラフィー装置などのバイオマーカーを分離するための手段、及び分光測定装置などのバイオマーカーを測定するための手段を備える。適切な装置は、詳細に先に記載されている。本発明のシステムで使用する化合物分離用の好ましい手段としては、クロマトグラフィー装置、より好ましくは液体クロマトグラフィー装置、HPLC装置及び/又はガスクロマトグラフィー装置が挙げられる。化合物測定用の好ましい装置は、質量分析装置、より好ましくは、GC-MS、LC-MS、直接注入質量分析装置、FT-ICR-MS、CE-MS、HPLC-MS、四重極質量分析装置、(MS-MS若しくはMS-MS-MSを含めた)逐次連結質量分析装置、ICP-MS、Py-MS又はTOFを含む。好ましくは、分離及び測定の手段は互いに連結される。最も好ましくは、LC-MS及び/又はGC-MSが、本発明によって言及される分析ユニットで使用される。
好ましくは、本発明の装置の評価ユニットは、本明細書の他の個所で明記されるように、比較を実施するためのルールを実行するように適合させたデータ処理装置又はコンピューターを備える。さらに、好ましくは、評価ユニットは、リファレンスを格納したデータベースを備える。本明細書で使用するデータベースは、適切な記憶媒体のデータ集合を備える。さらに、データベースは、好ましくはデータベース管理システムをさらに備える。好ましくは、データベース管理システムは、ネットワーク型、階層型又はオブジェクト指向型データベース管理システムである。さらに、データベースは、連邦データベースでもよいし、統合データベースでもよい。より好ましくは、データベースは、分散(連邦)システムとして、例えばクライアントサーバシステムとして実装される。より好ましくは、データベースは、検索アルゴリズムが、試験データセットをデータ集合に含まれるデータセットと比較できるように構築される。具体的には、そうしたアルゴリズムを使用することによって、生殖腺毒性の指標になる類似又は同一のデータセットについてデータベースを検索することができる(例えばクエリ検索)。したがって、同一又は類似のデータセットをデータ集合中に特定することができる場合は、試験データセットは生殖腺毒性と関係があることになる。評価ユニットは、好ましくは、生殖腺毒性の確定診断に基づく治療的若しくは予防的な介入又は生活習慣の適応に対する助言を有するさらなるデータベースを備えてもよいし、それに作動可能に連結されてもよい。好ましくは、生殖腺毒性を治療又は予防するために、試験サンプルを得た対象に対する適切な助言を特定する目的で、評価ユニットによって得られた診断結果を用いて前記のさらなるデータベースを自動的に検索することができる。
本発明の装置の好ましい実施形態では、前記格納されたリファレンスは、生殖腺毒性を被っていることが分かっている対象若しくは対象群に由来するリファレンス、又は17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン、2,5-ヘキサンジオン、ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群に由来するリファレンスであり、前記データ処理装置は、分析ユニットで測定された少なくとも1種のバイオマーカーの量を格納されたリファレンスと比較するための指示を実行し、リファレンスと比較して本質的に同じである、試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、生殖腺毒性が存在することを示し、又はリファレンスと比較して異なる、試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、生殖腺毒性が存在しないことを示す。
本発明の装置の別の好ましい実施形態では、前記格納されたリファレンスは、生殖腺毒性を被っていないことが分かっている対象若しくは対象群に由来するリファレンス、又は17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン、2,5-ヘキサンジオン、ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来するリファレンスであり、前記データ処理装置は、分析ユニットで測定された少なくとも1種のバイオマーカーの量を格納されたリファレンスと比較するための指示を実行し、リファレンスと比較して異なる、試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、生殖腺毒性が存在することを示し、又はリファレンスと比較して本質的に同じである、試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、生殖腺毒性が存在しないことを示す。
したがって、助言を行うエキスパートシステムが含まれる場合は特に、メディカルスタッフ又は患者が特別な医学知識なしで装置を使用することもできる。この装置は、携帯型に適合させることができるので、患者の近くでの用途にも適する。
用語「キット」は、好ましくは別々に又は単一の容器内に提供される、前述のコンポーネントの集合を指す。容器は、本発明の方法の実施に関する指示も備える。こうした指示は、取扱説明書の形でもよいし、コンピューター又はデータ処理装置上に実装される場合には、本発明の方法で言及される比較を実施でき、それに応じて診断を確定するためのコンピュータープログラムコードによって提供されてもよい。コンピュータープログラムコードは、データ記憶媒体若しくは装置、例えば光若しくは磁気記憶媒体(例えば、コンパクトディスク(CD)、CD-ROM、ハードディスク、光記録媒体若しくはディスケット)上に、又はコンピューター若しくはデータ処理装置上に直接的に提供することができる。本発明のキットに関して言及される「スタンダード」は、表1a、1b、3a、3b、4a、4b、5a、5b、6a又は6bのうちのいずれか1つから選択された、少なくとも1種のバイオマーカーの量であり、これは、溶液中に存在する又は既定の溶液量中に溶解されている場合は、(i)生殖腺毒性を被っていることが分かっている対象若しくは対象群、若しくは17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン、2,5-ヘキサンジオン、ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群中に存在する少なくとも1種のバイオマーカーの量、又は(ii)生殖腺毒性を被っていないことが分かっている対象若しくは対象群、若しくは17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン、2,5-ヘキサンジオン、ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来する少なくとも1種のバイオマーカーの量に類似している。
好都合なことに、本明細書に明記される少なくとも1種のバイオマーカーの量によって、生殖腺毒性、具体的には17-α-エチニルエストラジオール、リスメラール、2-メトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メチルイミダゾール、フェニルブタゾン、2,5-ヘキサンジオン、ミフェプリストン及びラロキシフェン塩酸塩によって誘導される生殖腺毒性の診断が可能になることが、本発明の根底となる研究において見出されている。本方法の特異性及び正確性は、前述のバイオマーカーの数を増加させて測定することによって又はさらにその全てを測定することによって、より一層向上する。こうした特異的なバイオマーカーに関するメタボロームの定量的及び/又は定性的組成の変化は、生殖腺毒性の他の徴候が臨床的に明らかになる前でさえ、生殖腺毒性の指標になる。生殖腺毒性を診断するのに現在使用されている形態的、生理的及び生化学的なパラメーターは、本発明で提供するバイオマーカー測定と比較すると、特異性及び感受性が低い。本発明によって、化合物の生殖腺毒性を、より効率的且つ確実に評価することができる。さらに、前述の知見に基づいて、生殖腺毒性の療法に有用な薬物のスクリーニングアッセイが実行可能である。概して、本発明は、生殖腺毒性を診断するために、化合物が生殖腺毒性を誘導する能力があるかどうかを判定するために、又は生殖腺毒性を治療する能力がある物質を同定するために、表1a、1b、3a、3b、4a、4b、5a、5b、6a又は6bのうちのいずれか1つから選択される対象のサンプルの少なくとも1種のバイオマーカー又は前記バイオマーカー用の検出剤の使用を企図する。さらに、本発明は概して、生殖腺毒性の治療に対して感受性である対象を同定するために、対象のサンプルの少なくとも1種のバイオマーカー、又はそのバイオマーカーの検出剤の使用を企図する。本発明のこの文脈において使用するのに好ましい検出剤は、本明細書の他の個所で言及されるものである。さらに好都合なことに、発明の方法は装置中に実装することができる。さらに、本方法を実施できるようにするキットを提供することができる。
本発明は、表1a、1b、3a、3b、4a、4b、5a、5b、6a、又は6bのうちのいずれか1つに列挙されるバイオマーカーに対する特性値を含むデータ集合にも関する。用語「データ集合」は、物理的及び/又は論理的にグループ化され得るデータの集合を指す。したがって、データ集合は、単一のデータ記憶媒体又は互いに作動可能に連結された物理的に別個のデータ記憶媒体に実装することができる。好ましくは、データ集合は、データベースによって実装される。したがって、本明細書で使用するデータベースは、適切な記憶媒体上にデータ集合を備える。さらに、好ましくは、データベースはデータベース管理システムをさらに備える。好ましくは、データベース管理システムは、ネットワーク型、階層型又はオブジェクト指向型のデータベース管理システムである。さらに、データベースは、連邦データベースでも統合データベースでもよい。より好ましくは、データベースは、分散(連邦)システムとして、例えばクライアントサーバシステムとして実装される。より好ましくは、データベースは、検索アルゴリズムが試験データセットをデータ集合に含まれるデータセットと比較できるように構築される。具体的には、そうしたアルゴリズムを使用することによって、生殖腺毒性の指標になる類似の又は同一のデータセットについてデータベースを検索することができる(例えばクエリ検索)。したがって、同一又は類似のデータセットをデータ集合中に特定することができる場合は、試験データセットは生殖腺毒性と関係があることになる。結果として、データ集合から得られる情報を使用して、対象から得られる試験データセットに基づいて生殖腺毒性を診断することができる。
さらに、本発明は、前記データ集合を備えるデータ記憶媒体に関する。本明細書で使用する用語「データ記憶媒体」は、CD、CD-ROM、ハードディスク、光記録媒体又はディスケットなどの単一の物理エンティティに基づくデータ記憶媒体を包含する。さらにこの用語は、好ましくはクエリ検索に適切なやり方で、前述のデータ集合を提供するように互いに作動可能に連結された、物理的に別個の実体からなるデータ記憶媒体をさらに含む。
本発明はまた、
(a)サンプルに含まれる表1a、1b、3a、3b、4a、4b、5a、5b、6a又は6bのうちのいずれか1つに挙げられたバイオマーカーから選択された、少なくとも1種のバイオマーカーの特性値を比較するための手段と、それに作動可能に連結された、
(b)本発明のデータ記憶媒体と
を含むシステムに関する。
本明細書で使用する用語「システム」は、互いに作動可能に連結される異なる手段に関する。前記手段は、単一装置に実装されてもよいし、互いに作動可能に連結された物理的に別個の装置に実装されてもよい。好ましくは、バイオマーカーの特性値を比較するための手段は、上で言及したような比較アルゴリズムに基づいて作動する。好ましくは、データ記憶媒体は、前述のデータ集合又はデータベースを備え、各記憶データセットが生殖腺毒性の指標になる。したがって、本発明のシステムによって、試験データセットがデータ記憶媒体に格納されるデータ集合に含まれるかどうかを特定することが可能になる。結果として、本発明のシステムは、生殖腺毒性診断の診断手段として適用することができる。本システムの好ましい実施形態では、サンプルのバイオマーカーの特性値を測定するための手段が含まれる。用語「バイオマーカーの特性値を測定するための手段」は、好ましくは、質量分析装置、ELISA装置、NMR装置又はアナライトについて化学的若しくは生物学的アッセイを実施するための装置などの、バイオマーカーを測定するための前述の装置に関する。
先に言及した全ての参考文献は、その開示内容全体及び先の記述で明確に言及したその具体的な開示内容に関して、参考により本明細書に組み込むものとする。
以下の実施例は、本発明を説明する目的のためにすぎない。これらは、いかなる観点においても本発明の範囲を限定するものと何ら解釈されるべきでない。
実施例:生殖腺毒性に関連するバイオマーカー
各5匹の雄及び雌ラットの群に、示した化合物(化合物、投与量及び投与詳細について以下の表10を参照のこと)を28日間にわたって1日1回投与した。
本研究の各投与群は、性別あたり5匹のラットからなっていた。それぞれ5匹の雄及び雌の動物の追加的な群を対照とした。処理期間の開始前に、供給時に62〜64日齢の動物を、居住及び環境条件に7日間順応させた。動物集団の全ての動物を、同一の一定温度(20〜24±3℃)及び同一の一定湿度(30〜70%)下で維持した。動物集団の動物は、不断給餌させた。使用する餌には、化学物質又は微生物の混入物は基本的に含まれていなかった。飲料水も自由に与えた。したがって、欧州飲料水指令(European Drinking Water Directive)98/83/EGに規定されている通り、水には、化学物質及び微生物の混入物は含まれていなかった。照明期間は、12時間明期、続いて12時間暗期(6:00から18:00までの12時間明期及び18:00から6:00までの12時間暗期)とした。本研究は、ドイツ動物保護法及び欧州理事会指令86/609/EEに従って、AAALACに認可された実験室で実施した。試験系は、げっ歯類での28日間反復投与経口毒性試験について化学物質を試験するために、OECD 407指針に従ってアレンジした。以下の表1〜9の試験物質(化合物)を、上の表10に記載されるように用量決定し、投与した。
7日目、14日目及び28日目の朝に、絶食させた麻酔下の動物の眼窩後静脈叢から採血した。抗凝血剤としてEDTAを用いて、各動物から1mlの血液を採取した。このサンプルを遠心分離して、血漿を生成した。全ての血漿サンプルをN2雰囲気で覆い、次いで分析まで-80℃で保管した。
質量分析に基づく代謝物プロファイリング分析のために、血漿サンプルを抽出し、極性及び非極性(脂質)画分を得た。GC-MS分析のために、非極性画分を酸性条件下でメタノールで処理して、脂肪酸メチルエステルを得た。O-メチル-ヒドロキシアミン塩酸塩及びピリジンを用いて両画分をさらに誘導体化してオキソ基をO-メチルオキシムに変換し、その後にシリル化剤を用いて誘導体化してから分析した。LC-MS分析では、両画分を適切な溶媒混合液中で再構成した。HPLCは、逆相分離カラムによって勾配溶出で実施した。WO2003073464に記載されるように、フルスクリーン分析と並行して、標的及び高感度MRM(多重反応モニタリング)プロファイリングを可能にする質量分析検出を適用した。
ステロイド及びその代謝物は、オンラインのSPE-LC-MS(固相抽出LC-MS)によって測定した。カテコールアミン及びその代謝物は、Yamadaら(Yamada 2002、Journal of Analytical Toxicology、26(1): 17〜22))によって記載されるように、オンラインのSPE-LC-MSによって測定した。
総合的な分析検証ステップに続いて、各アナライトに関するデータを、プールサンプル由来のデータに対して標準化した。これらのサンプルは、プロセス変動を説明するために、全プロセスを通して並行して処理した。性別、処理期間及び代謝物に対して特異的な処理群値の有意性を、処理群の平均と対応する未処理の対照群の平均をWELCH試験を用いて比較することによって判定し、対照に対する処理比及びP値を用いて定量化した。
毒性パターン毎の最も重要なバイオマーカーを、以下の表のアナライトの序列化によって同定した。したがって、所与のパターンのリファレンス処理における代謝変化(表に示す)を、関係のない処理における同一代謝物の変化と比較した。各代謝物について、リファレンス及び対照処理からT値を得て、Welch試験によって比較して、これら2群に有意差があるかどうかを評価した。それぞれのT値の最大絶対値を選んで、そのパターンに対する最も重要な代謝物を示した。
ラットを処理した後の、生殖腺毒性を示す血漿代謝物群の変化を以下の表に示す。