JP2015517090A - 鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害に関連する障害を評価する手段及び方法 - Google Patents

鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害に関連する障害を評価する手段及び方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害診断、及び化学化合物のリスク層別化のための毒物学的評価の分野に関する。具体的には、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を診断するための方法に関する。本発明は、化合物が、対象においてそうした鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を誘導することができるかどうかを判定するための方法及び鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を治療するための薬物を同定する方法にも関する。さらに本発明は、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を診断するための装置及びキットに関する。【選択図】なし

Description

本発明は、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害の診断及び化合物のリスク層別化のための毒性評価の分野に関係する。具体的には、本発明は、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害の診断方法に関する。本発明は、対象でそのような鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を化合物が誘導することが可能かどうか判定する方法、及び鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を処置するための薬物を同定する方法にも関する。さらに、本発明は、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を診断するためのデバイス(装置)及びキットに関する。
十二指腸は複雑な胃腸系の一部で、胃の直下に位置し、脊椎動物及び哺乳動物では小腸の第1の部門である。十二指腸は非常に代謝活性のある領域であり、そこでは多くの栄養的及び化学的な消化及び吸収が起こる。解剖学的に、この小さな器官は4つの部分又はセグメントに分割され、それらは上部、下行、水平及び上行十二指腸として知られる。十二指腸はC形の器官であり、その内張りは陰窩で形成される。これらの陰窩は腸管膜の表面積を増加させる役割を担い、それによってより優れた消化を確保する。十二指腸は、物質を大腸の方へ動かす平滑筋も有する。十二指腸は、2つの異なる供給源から動脈血を受ける。十二指腸の静脈排液が動脈に続く。最終的に、これらの静脈は、脾臓又は上部腸間膜静脈を通って直接又は間接に門脈系に流出する。リンパ管は、逆行的に動脈に続く。
十二指腸は、小腸での酵素を使用する食物の分解をほとんど担う。粘液を分泌するブルンナー腺が、十二指腸で見出される。その主な機能を促進するために、すい臓、肝臓及び胆嚢からのいくつかの管が十二指腸で開く。十二指腸壁は、粘膜筋板を形成する非常に薄い層の細胞で構成される。十二指腸上皮は広範囲の能動及び受動の取り込み過程に関与し、その多くは厳密な内分泌及び代謝調節下にある。さらに、十二指腸は胃を空にする速度を調節し、及び、ホルモン経路を通して飢えシグナルを作動させる。さらなる消化のために幽門が開いて十二指腸に胃消化粥を放出するときに、そこに存在する酸及び脂肪の刺激に応じて十二指腸上皮の細胞からセクレチン及びコレシストキニンが放出される。これらは、肝臓及び胆嚢に胆汁を放出させ、すい臓に重炭酸塩及び消化酵素、例えばトリプシン、リパーゼ及びアミラーゼを十二指腸へ放出させる。
実際、十二指腸は鉄吸収の主要部位である。鉄の排出は哺乳動物では調節されないので、食事性の鉄は、体の鉄ホメオスタシスを制御する調節された過程によって近位腸で吸収される。食事性の鉄は、ヘム(主に赤肉)及び非ヘム(白身の肉、野菜及び穀類)の2つの形で存在する。非ヘム食品の鉄は胃での酸消化によって放出され、十二指腸上皮細胞による取り込みの前に第一鉄(Fe2+)イオンに還元されなければならない。第一鉄のイオンは、体の鉄要求性によって調節される二価金属輸送体(DMT-1)によって、腸細胞頂端膜を越えて輸送される。鉄は腸細胞側底膜からフェロポルチン(ferroportin)を通して流出し、膜結合フェロキシダーゼ、ヘファエスチン(hephaestin)によって酸化されて第二鉄イオンを与え、それは次に血液を介した体内分布のために血漿トランスフェリンに結合する。ヘムは、無機鉄のそれと完全に別に吸収される。この過程はより効率的で、十二指腸のpHに依存しない。ヘムは、運搬機構及び葉酸塩輸送体によって腸細胞に取り込まれる。ヘムは、フェロポルチンを介する流出のために鉄イオンを放出するヘムオキシゲナーゼによって腸細胞で分解される。吸収についての食事性鉄の利用可能性は、食事組成によって決定され、胃機能の低下の影響を受けることができる。鉄欠乏は、主要な栄養問題である。腸細胞による鉄の吸収速度は、適当な膜内の輸送体DMT1及びフェロポルチンの活性によって制御される。不適当な鉄吸収が起こるヒト疾患には、遺伝子ヘモクロマトーシス、一部の遺伝性貧血、慢性疾患の貧血及び鉄欠乏の遺伝型が含まれる。
いくつかの食事性因子が、鉄吸収に影響する。不十分な吸収は、貧血などの鉄欠乏障害をもたらし得る。他方、哺乳動物はその排出のための生理的経路を有しないので、過剰な鉄は有毒である。アスコルビン酸塩及びクエン酸塩は、一部、十二指腸でその金属を可溶化するのを助ける弱いキレーターとして働くことによって、鉄の取り込みを増加させる。鉄は、これらの化合物から粘膜内膜細胞に容易に移る。反対に、鉄吸収は、植物のフィチン酸塩及びタンニンによって阻害される。毒性状況での十二指腸傷害の解釈はかなり複雑であり、毒性及び/又は薬理学的応答の局所的並びに全身的出現を含むことがある。一般的に、刺激物(植物、化学物質、重金属)は粘膜への表面的な損傷、絨毛の減少、出血及び炎症を一般的に引き起こす。したがって、十二指腸毒性に影響を及ぼすことができる因子には、投与溶液のpH、製剤中の賦形剤の存在、親薬物又は代謝産物の可能な腸肝再循環、給餌又は空腹状態の動物への投与、腸ミクロフローラの状態及び食事組成が含まれる。十二指腸上皮は、急速細胞増殖部位であり、放射線又は細胞毒性薬物に感受性である。腸管の腸細胞の短寿命を考慮すると、傷害は、絨毛の急速な裸出、出血、潰瘍及び二次性の腸ミクロフローラ浸潤につながる。腐食性の薬剤は表面的で速やかに修復される病変だけを一般的に生成するが、細胞毒性薬物は、修復のために必要とされる増殖幹細胞コンパートメントを消失させることができる。腸管潰瘍は、NSAIDを含む広範囲の化合物の投与の後、齧歯動物及びイヌの両方で起こり得る。分解されない生体外物質による蓄積性腸疾患は、多大な空胞状膨潤をもたらし、粘膜固有層の炎症につながることがある。吸収不全症候群も、吸収経路の干渉若しくは過負荷、特定の腸管酵素欠損症、又は胆汁若しくは膵液中の消化酵素分泌の減少から生じることがある。
様々な薬物及び毒素への曝露は、十二指腸損傷を誘導し、鉄の取り込みを変化させる。フェニルヒドラジン(PZ)によって誘導される溶血性貧血は、拡張された吸収表面及び十二指腸刷子縁を越える鉄の取り込みのための強化された電気的推進力のために、ラットの小腸全体での鉄吸収を促進する。鉄をヘムに取り込むことの失敗は、鉄芽球性貧血をもたらし、赤血球中に鉄含有顆粒が存在する。この状態は鉛毒性で見られ、そこでは、ヘム合成経路の酵素のいくつかの阻害が起こる。
可能な作用の多様性のために、鉄の取り込みに関する十二指腸毒性の評価は、かなり複雑な過程である。現在の方法は、血液学的調査、病理学的及び組織病理学的調査並びに生化学分析を通常含む。しかし、バイオマーカーはかなり複雑に調節され、かなり進行した段階でさえ時には変化が起こることがある。組織病理学的評価の主要な欠点は、それらが侵襲性であること、及び臨床病理学/血液学的測定と組み合わせたときでさえ、それらが調査を実行する毒物学者の個々の解釈に一部基づくのでより信頼できないことである。(Conrad ME、Umbreit JN (2002) Pathways of Iron Absorption、Blood cells, Molecules and Diseases 29巻(3号)、336〜355頁; Dunn LL、Rahmanto YS、Richarson DR (2006) Iron uptake and metabolism in the new millennium。Trends in cell biology 17巻(2号)、93〜100頁; Fenton JJ (編、2001) 第18章Metals Toxicology - A case-oriented approach、CRC Press、Boca Raton、USA;Graham RB (1998) The Digestive System I: The Gastrointestinal Tract and Exocrine Pancreas、出典Target organ pathology, a basic text、Turton J and Hooson J (編) Taylor & Francis、London、United Kingdom、1998年; Miret S、Simpson RJ、McKie (2003) Physiology and molecular biology of dietary iron absorption、Annu. Rev. Nurt. 23巻、283〜301頁; O'Riordan DK、Debnam ES、Sharp PA、Simpson RJ、Taylor EM、Srai SKS (1997) Mechanisms involved in increased iron uptake across rat duodenal brush-border membrane during hypoxia、J. Physiol.、500巻、379〜384頁; O'Riordan DK、Sharp P、Sykes RM、Srai SK、Epstein O、Debnam ES (1995) Cellular mechanisms underlying the increased duodenal iron absorption in rats in response to phenylhydrazine-induced haemolytic anaemia、Eur. J. Clin. Invest.、25巻、722〜727頁)。
鉄取込み障害、特にその初期発生に関して十二指腸毒性を効率的及び確実に判定するための高感度で特異的な方法は利用できないものの、それにもかかわらず高く評価される。十二指腸毒性の重要性は、鉄取込みに関するその結果を考慮すると明白になり得る。さらに、欧州共同体のあらゆる種類の産業で使用されている化学化合物は、例えば、現在、REACH(化学物質の登録、評価、認可(Registration, Evaluation and Authorisation of Chemicals))に順守する必要がある。
エネルギー代謝とは、細胞生存力及び全ての細胞機能(合成、細胞増殖、輸送過程、生理活性など)を維持するために生物体の細胞にエネルギーを供給する、生体内の過程を言う。エネルギー代謝は、つまり熱力学的にエネルギー発生性である様々な専門化された酵素によって触媒される化学反応からなる。
それとともに、これらの反応に続いて、物質からエネルギーが放出され、それらの物質はより低いエネルギー含量の化合物に変換され、高エネルギー化学誘導体に変換され、それらは細胞で必要なエネルギーを貯蔵し、細胞生理に供給するために用いることができる。全ての哺乳動物種は、(他の全ての化学合成生物のように)それらの生理機能の維持のために他の天然供給源(例えば、日光)からエネルギーを変換することができないので、そのような化学合成エネルギー代謝反応に依存する。
化学合成エネルギー代謝2つの主要な形、発酵及び酸化的エネルギー代謝を区別することが可能である。発酵とは、酸素還元をもたらさない過程を言い、例えば細菌及び酵母で見ることができる。しかし、哺乳動物生物は、高エネルギー基質を低エネルギー最終生成物に変換する(例えば、CO2及びH2Oへの炭水化物の変換)酸化的反応に依存する。そのような反応のために、電子受容体として酸素が必要である。
そのような高エネルギー誘導体は、ヌクレオシドリン酸であってもよい。ヌクレオシドへの(ポリ)リン酸のエステル結合は、高エネルギー結合である。運搬ヌクレオシド分子からのリン酸塩の加水分解性の酵素触媒開裂を通して、貯蔵エネルギー(32.3kJ/mol)が分子から放出されて、細胞で生理反応のために用いられる。対抗反応として、リン酸イオンをヌクレオシドに再び結合するのに、上述のエネルギー代謝を通して放出されるエネルギーを用いることができる。それとともに細胞内の貯蔵及び輸送系が存在し、それは、細胞の生理機能を維持するために必須である。エネルギーの貯蔵及び輸送のために最も重要なヌクレオシドは、アデノシン及びグアノシンの二及び三リン酸(ADP、ATP、GDP、GTP)である。
ATPの再生のために、生細胞に2つの一般に異なる方法が存在する。基質リン酸化を通して、リン酸はエネルギー代謝の中間体に転移され、さらなる変換の後にADPに転移される。基質リン酸化の例は、解糖の間のピルビン酸へのホスホエノールピルビン酸の変換(リン酸アクセプターとしてADP)、又はリン酸アクセプターとしてGDPを用いるクエン酸回路(クレブス回路とも)の反応としてのコハク酸へのスクシニルリン酸の変換である。
電子伝達リン酸化では、炭水化物などの基質の上での酸化的反応から生じる電子は、異なるタンパク質及びタンパク質複合体の鎖に沿って、膜封入コンパートメントから他のコンパートメントに転位される。真核生物では、この電子伝達鎖は、内部のミトコンドリア膜に位置する。電子は、最後に分子酸素をO2-に還元するために用いられる。これらの転位過程を通して、陽子は膜の片側から反対側に送り出され、この膜の両側で陽子勾配をもたらす。この陽子勾配は、同じく膜に位置する特定の酵素、ATP-シンターゼによって用いられ、ADPに1リン酸部分を結合する。2つの陽子とO2-は、1水分子を最後に形成する。全過程は、制御された水素酸素反応として熱力学的に記載することができる。
化学合成生物体では、電子は、高エネルギー基質、例えば炭水化物又は脂肪酸の酸化的分解の間に形成される、NADH、NADPH又はFADH2などの還元同等物を通して、ミトコンドリアの電子伝達鎖に供給される。
それらの機械的活動のために非常に多量のエネルギーを必要とする筋細胞では、細胞内のATPは、数秒間エネルギーを供給するのに十分なだけである。他方、酸化的リン酸化はかなり遅い過程である。他のリン酸運搬分子、例えばクレアチンリン酸が、ATP再生のために用いられる。このエネルギー貯臓も、数秒後に消耗される。より長い期間の機械的活動のために筋細胞でエネルギー供給を維持するためには、筋細胞にATPを速やかに供給するために、グルコースが乳酸に発酵される。乳酸は肝臓へ輸送され、グルコースを再合成するために用いられる(糖新生)。
エネルギー代謝反応の乱れは、様々な程度の影響をもたらすことができる。最初に、細胞機能が乱され、細胞生理障害、細胞生理混乱及び最終的に細胞死につながることがある。再生修復機構がなお活性である限り、単独の細胞への影響は、生物体全体にとって軽微な結果を伴う。しかし、器官又は組織のレベルでは、エネルギー代謝の低下は、生理障害、又は最終結果として器官機能の完全な不全につながることがある。そのような影響は生物体全体の有害反応につながり、それは生物体の急性死(例えば、肝臓昏睡誘導死)を最後にもたらすかもしれない。高率の単独の細胞死が組織又は器官で起こる場合は、これは再生性の炎症性応答につながるかもしれない。結果として、器官組織は変性して、器官障害(例えば、肺線維症)につながることがある。最終的に、高率の新生細胞増殖に炎症性反応が明白に付随する場合は、DNA及び遺伝子突然変異が細胞で誘導されるかもしれない。結果として、罹患器官で発がんが起こることがある。
ミトコンドリアでの電子伝達鎖の阻害は、生物体で急性作用を死まで直接導くことができる(例えばシアン化物による中毒)。エネルギー代謝の、より詳しくはミトコンドリアの遺伝性機能不全は、後代において、死、平均余命の短縮、軽度ないし重度の生理的及び心因性の障害(例えば、リー症候群)からの致命的な転帰につながることがある。
エネルギー代謝障害、特にその初期発生を効率的及び確実に判定するための高感度で特異的な方法は利用できないが、それにもかかわらず高く評価される。エネルギー代謝障害の重要性は、その結果を考慮すると明白になる。さらに、ヨーロッパ共同体のいかなる種類の産業で用いられる化合物も、例えば、今ではREACH (Registration, Evaluation and Authorisation of Chemicals)に適合する必要がある。
化学化合物の毒物学的な性質、特に鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を効率的且つ信頼できる様式で評価するための感受性が高く且つ特異的な方法はまだ利用可能でないが、それにもかかわらず高く評価されるであろう。
したがって、本発明の根底にある技術的課題は、前述のニーズに応じる手段及び方法を提供することと考えることができる。この技術的課題は、特許請求の範囲で特徴づけられ且つ本明細書の以下に記載される実施形態によって解決される。
したがって、本発明は、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を診断するための方法であって、
(a)鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を患っていることが疑われる対象の試験サンプルにおいて、表1a、1b、1c、1d又は2のうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカーの量を測定するステップと、
(b)ステップ(a)で測定した量をリファレンス(参照)と比較して、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を診断するステップと
を含む、方法に関する。
本発明の方法の特定の実施形態では、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害の診断方法であって、
(a)鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を起こすことが疑われる雄(男性)又は雌(女性)対象を選択するステップ、
(b)前記選択された対象から試験サンプルを得るステップ、
(c)分析に備えて前記サンプルを前処理するステップ、
(d)前記試験サンプル中の表1a、1b、1c、1d又は2のいずれか1つから選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を判定するステップ、及び
(e)ステップ(d)で判定された量を参照と比較するステップ、及び
(f)ステップ(e)の比較に基づいて、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害又はその症状のモニタリング、確認又は分類により鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を診断するステップ
を含む、方法が提供される。
前述の方法の好ましい実施形態では、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を誘導できることが疑われる化合物と前記対象を接触させた。
本発明は、対象において化合物が鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を誘導することができるかどうかを判定するための方法であって、
(a)鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を誘導できることが疑われる化合物と接触させた対象のサンプルにおいて、表1a、1b、1c、1d又は2のうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカーの量を測定するステップと、
(b)ステップ(a)で測定した量をリファレンスと比較して、化合物の鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害誘導能力を判定するステップと
を含む、方法にも関する。
本発明の方法の特定の実施形態では、化合物が対象で鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を誘導することが可能かどうか判定する方法であって、
(a1) (i)雄又は雌対象を選択するステップ、
(ii)前記対象を、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を誘導することが可能であることが疑われる化合物と接触させるステップ、又は
(a2)鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を誘導することが可能な化合物と接触させた雄又は雌対象を選択するステップ、
(b)前記選択された対象から試験サンプルを得るステップ、
(c)分析に備えて前記サンプルを前処理するステップ、
(d)前記試験サンプル中の表1a、1b、1c、1d又は2のいずれか1つから選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を判定するステップ、及び
(e)ステップ(d)で判定された量を参照と比較するステップ、及び
(f)ステップ(e)の比較に基づき、化合物が鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を誘導することが可能かどうかについて確認するステップ
を含む、方法が提供される。
前記の方法の好ましい実施形態では、前記化合物は、オリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1つの化合物である。
本発明の方法の別の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、(i)鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患う対象若しくは対象群、又は(ii)オリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群に由来する。前記方法のより好ましい実施形態では、試験サンプル及びリファレンスにおいて本質的に同一である、バイオマーカーの量が、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害の指標になる。
本発明の方法の別の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、(i)鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患っていないことが分かっている対象若しくは対象群、又は(ii)オリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来する。前記方法のより好ましい実施形態では、リファレンスと比較して試験サンプル中において異なるバイオマーカーの量が、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害の指標になる。
本発明の方法のさらに別の実施形態では、前記リファレンスは、対象集団のバイオマーカーについて計算されたリファレンスである。前記方法のより好ましい実施形態では、リファレンスと比較して試験サンプル中において異なるバイオマーカーの量が、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害の指標になる。
本発明は、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を治療するための物質を同定する方法であって、
(a)鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を治療できると推測される候補物質と接触させた鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を患う対象のサンプルにおいて、表1a、1b、1c、1d又は2のうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカーの量を測定するステップと、
(b)ステップ(a)で測定した量をリファレンスと比較して、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を治療できる物質を同定するステップと
を含む方法も企図する。
本発明の方法の特定の実施形態では、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を治療するための物質の同定方法であって、
(a1) (i)雄又は雌対象を選択するステップ、
(ii)前記対象を、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害が誘発されるように鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を誘導することが可能であることが疑われる化合物と接触させるステップ、又は
(a2)鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を起こしている雄又は雌を選択するステップ、
(b)前記選択された対象から試験サンプルを得るステップ;
(c)分析に備えて前記サンプルを前処理するステップ;
(d)前記試験サンプル中の表1a、1b、1c、1d又は2のいずれか1つから選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を判定するステップ、及び
(e)ステップ(d)で判定された量を参照と比較するステップ;及び
(f)ステップ(e)の比較に基づいて、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を治療するための物質を同定し、選択するステップ
を含む、方法が提供される。
前述の方法の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、(i)鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患う対象若しくは対象群、又は(ii)オリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群に由来する。前記方法のより好ましい実施形態では、試験サンプルとリファレンスとの間で異なるバイオマーカーの量が、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を治療できる物質の指標になる。
前述の方法の別の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、(i)鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患っていないことが分かっている対象若しくは対象群、又は(ii)オリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来する。前記方法のより好ましい実施形態では、試験サンプル及びリファレンスにおいて本質的に同一である、バイオマーカーの量が、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を治療できる物質の指標になる。
前述の方法のさらに別の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、対象集団におけるバイオマーカーについて計算されたリファレンスである。前記方法のより好ましい実施形態では、試験サンプル及びリファレンスにおいて本質的に同一である、バイオマーカーの量が、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を治療できる物質の指標になる。
本発明は、対象のサンプルにおいて鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を診断するための、表1a、1b、1c、1d又は2のうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカー又は前記バイオマーカー用の検出剤の使用にも関する。
さらに、本発明は、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を患っていることが疑われる対象のサンプルにおいて鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を診断するための装置であって、
(a)サンプル中に存在するバイオマーカーの量の測定を可能にする、表1a、1b、1c、1d又は2のうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種の前記バイオマーカー用の検出剤を備える分析ユニットと、それと作動可能に連結された、
(b)分析ユニットで測定された前記少なくとも1種のバイオマーカーの量を格納されたリファレンスと比較することを可能にし、それによって鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害が診断される、格納されたリファレンス及びデータ処理装置を備える評価ユニットと
を具備する装置に関する。
本発明の装置の好ましい実施形態では、前記格納されたリファレンスは、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患っていることが分かっている対象若しくは対象群に由来するリファレンス、又は1オリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群に由来するリファレンスであり、前記データ処理装置は、分析ユニットで測定された少なくとも1種のバイオマーカーの量を格納されたリファレンスと比較するための指示を実行し、リファレンスと比較して本質的に同一である、試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカー量が、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害が存在することの指標となり、又はリファレンスと比較して異なる、試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害が存在しないことの指標になる。
本発明の装置の別の好ましい実施形態では、前記格納されたリファレンスは、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患っていないことが分かっている対象若しくは対象群に由来するリファレンス、又は1オリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来するリファレンスであり、前記データ処理装置は、分析ユニットで測定された少なくとも1種のバイオマーカーの量を格納されたリファレンスと比較するための指示を実行し、リファレンスと比較して異なる、試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害が存在することの指標となり、リファレンスと比較して本質的に同一である、試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害が存在しないことの指標になる。
さらに本発明は、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害診断のためのキットであって、表1a、1b、1c、1d又は2のうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカー用の検出剤、及び濃度が鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患っていることが分かっている対象若しくは対象群に由来する又は鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患っていないことが分かっている対象若しくは対象群に由来する、少なくとも1種のバイオマーカー用のスタンダード(標準)を含むキットに関する。
詳細には、本発明は、鉄吸収障害の診断方法であって、
(a)鉄吸収障害を患っていることが疑われる対象の試験サンプルにおいて、表1a、1b、1c、又は1dのうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカーの量を測定するステップ;及び
(b)ステップ(a)で測定された量をリファレンスと比較して、鉄吸収障害を診断するステップ
を含む、方法に関する。
本発明の方法の特定の実施形態では、鉄吸収障害の診断方法であって、
(a)鉄吸収障害を起こすことが疑われる雄又は雌対象を選択するステップ、
(b)前記選択された対象から試験サンプルを得るステップ、
(c)分析に備えて前記サンプルを前処理するステップ
(d)前記試験サンプル中の表1a、1b、1c又は1dのいずれか1つから選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を判定するステップ、及び
(e)ステップ(d)で判定された量を参照と比較するステップ;及び
(f)ステップ(e)の比較に基づいて、鉄吸収障害又はその症状のモニタリング、確認又は分類により鉄吸収障害を診断するステップ
を含む、方法が提供される。
前述の方法の好ましい実施形態では、前記対象は、鉄吸収障害を誘導できることが疑われる化合物と接触させた。
本発明は、対象において化合物が鉄吸収障害を誘導できるかどうかを判定する方法であって、
(a)鉄吸収障害を誘導できることが疑われる化合物と接触させた対象のサンプルにおいて、表1a、1b、1c、又は1dのうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカーの量を測定するステップ、及び
(b)ステップ(a)で測定された量をリファレンスと比較して、化合物の鉄吸収障害誘導能力を判定するステップ
を含む、方法にも関する。
本発明の方法の特定の実施形態では、化合物が対象で鉄吸収障害を誘導することが可能かどうか判定する方法であって、
(a1) (i)雄又は雌対象を選択するステップ、
(ii)前記対象を、鉄吸収障害を誘導することが可能であることが疑われる化合物と接触させるステップ、又は
(a2)鉄吸収障害を誘導することが可能な化合物と接触させた雄又は雌対象を選択するステップ、
(b)前記選択された対象から試験サンプルを得るステップ、
(c)分析に備えて前記サンプルを前処理するステップ、
(d)前記試験サンプル中の表1a、1b、1c又は1dのいずれか1つから選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を判定するステップ、及び
(e)ステップ(d)で判定された量を参照と比較するステップ;及び
(f)ステップ(e)の比較に基づき、化合物が鉄吸収障害を誘導することが可能かどうかについて確認するステップ
を含む、方法が提供される。
前記の方法の好ましい実施形態では、前記化合物は、オリザストロビン、ジモキシストロビン及び鉄欠乏食からなる群から選択される少なくとも1つの化合物である。
本発明の方法の別の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、(i)鉄吸収障害を患っている対象若しくは対象群、又は(ii)オリザストロビン、ジモキシストロビン及び鉄欠乏食からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群に由来する。前記方法のより好ましい実施形態では、試験サンプル及びリファレンスにおいて本質的に同一であるバイオマーカーの量が、鉄吸収障害の指標となる。
本発明の方法の別の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、(i)鉄吸収障害を患っていないことが分かっている対象若しくは対象群、又は(ii)オリザストロビン、ジモキシストロビン及び鉄欠乏食からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来する。前記方法のより好ましい実施形態では、リファレンスと比較して試験サンプル中において異なるバイオマーカーの量が、鉄吸収障害の指標となる。
本発明の方法のさらに別の実施形態では、前記リファレンスは、対象集団のバイオマーカーについて計算されたリファレンスである。前記方法のより好ましい実施形態では、リファレンスと比較して試験サンプル中において異なるバイオマーカーの量が、鉄吸収障害の指標となる。
本発明は、鉄吸収障害を治療するための物質を同定する方法であって、
(a)鉄吸収障害を治療できると推測される候補物質と接触させた鉄吸収障害を患っている対象のサンプルにおいて、表1a、1b、1c、及び1dのうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカーの量を測定するステップと、
(b)ステップ(a)で測定された量をリファレンスと比較して、鉄吸収障害を治療できる物質を同定するステップと
を含む方法も企図する。
本発明の方法の特定の実施形態では、鉄吸収障害を治療するための物質の同定方法であって、
(a1) (i)雄又は雌対象を選択するステップ、
(ii)前記対象を、鉄吸収障害が誘発されるように鉄吸収障害を誘導することが可能であることが疑われる化合物と接触させるステップ、又は
(a2)鉄吸収障害を起こしている雄又は雌を選択するステップ、
(b)前記選択された対象から試験サンプルを得るステップ、
(c)分析に備えて前記サンプルを前処理するステップ、
(d)前記試験サンプル中の表1a、1b、1c又は1dのいずれか1つから選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を判定するステップ、及び
(e)ステップ(d)で判定された量を参照と比較するステップ;及び
(f)ステップ(e)の比較に基づいて、鉄吸収障害を治療するための物質を同定し、選択するステップ
を含む、方法が提供される。
前述の方法の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、(i)鉄吸収障害を患っている対象若しくは対象群、又は(ii)オリザストロビン、ジモキシストロビン及び鉄欠乏食からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群に由来する。前記方法のより好ましい実施形態では、試験サンプル及びリファレンスにおいて異なるバイオマーカーの量が、鉄吸収障害を治療できる物質の指標となる。
前述の方法の別の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、(i)鉄吸収障害を患っていないことが分かっている対象若しくは対象群、又は(ii)オリザストロビン、ジモキシストロビン及び鉄欠乏食からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来する。前記方法のより好ましい実施形態では、試験サンプル及びリファレンスにおいて本質的に同一であるバイオマーカーの量が、鉄吸収障害を治療できる物質の指標となる。
前述の方法のさらに別の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、対象集団におけるバイオマーカーについて計算されたリファレンスである。前記方法のより好ましい実施形態では、試験サンプル及びリファレンスにおいて本質的に同一であるバイオマーカーの量が、鉄吸収障害を治療できる物質の指標となる。
本発明は、対象のサンプルにおいて鉄吸収障害を診断するための、表1a、1b、1c、又は1dのうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカー又は前記バイオマーカー用の検出剤の使用にも関する。
さらに本発明は、鉄吸収障害を患っていることが疑われる対象のサンプルにおいて鉄吸収障害を診断するための装置であって、
(a)サンプル中に存在する前記バイオマーカーの量の測定を可能にする、表1a、1b、1c、又は1dのうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカー用の検出剤を備える分析ユニットと、それと作動可能に連結された、
(b)分析ユニットで測定された前記少なくとも1種のバイオマーカーの量を格納されたリファレンスと比較することを可能にし、それによって鉄吸収障害が診断される、格納されたリファレンス及びデータ処理装置を備える評価ユニットと
を具備する装置に関する。
本発明の装置の好ましい実施形態では、前記格納されたリファレンスは、鉄吸収障害を患っていることが分かっている対象若しくは対象群に由来するリファレンス、又はオリザストロビン、ジモキシストロビン及び鉄欠乏食からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群に由来するリファレンスであり、前記データ処理装置は、分析ユニットで測定された少なくとも1種のバイオマーカーの量を格納されたリファレンスと比較するための指示を実行し、リファレンスと比較して本質的に同一である試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、鉄吸収障害が存在することの指標となり、又はリファレンスと比較して異なる試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、鉄吸収障害が存在しないことの指標となる。
本発明の装置の別の好ましい実施形態では、前記格納されたリファレンスは、鉄吸収障害を患っていないことが分かっている対象若しくは対象群に由来するリファレンス、又はオリザストロビン、ジモキシストロビン及び鉄欠乏食からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来するリファレンスであり、前記データ処理装置は、分析ユニットで測定された少なくとも1種のバイオマーカーの量を格納されたリファレンスと比較するための指示を実行し、リファレンスと比較して異なる試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、鉄吸収障害が存在することの指標となり、又はリファレンスと比較して本質的に同一である試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、鉄吸収障害が存在しないことの指標となる。
さらに本発明は、鉄吸収障害診断のためのキットであって、表1a、1b、1c、又は1dのうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカー用の検出剤、及び濃度が鉄吸収障害を患っていることが分かっている対象若しくは対象群に由来する、又は鉄吸収障害を患っていないことが分かっている対象若しくは対象群に由来する、少なくとも1種のバイオマーカー用のスタンダードを含むキットに関する。
詳細には、本発明は、エネルギー代謝障害の診断方法であって、
(a)エネルギー代謝障害を患っていることが疑われる対象の試験サンプルにおいて、表2のうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカーの量を測定するステップ;及び、
(b)ステップ(a)で測定された量をリファレンスと比較して、エネルギー代謝障害を診断するステップ
を含む、方法に関する。
本発明の方法の特定の実施形態では、エネルギー代謝障害の診断方法であって、
(a)エネルギー代謝障害を起こすことが疑われる雄又は雌対象を選択するステップ、
(b)前記選択された対象から試験サンプルを得るステップ、
(c)分析に備えて前記サンプルを前処理するステップ、
(d)前記試験サンプル中の表2のいずれか1つから選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を判定するステップ、及び
(e)ステップ(d)で判定された量を参照と比較するステップ;及び
(f)ステップ(e)の比較に基づいて、エネルギー代謝障害又はその症状のモニタリング、確認又は分類によりエネルギー代謝障害を診断するステップ
を含む、方法が提供される。
前述の方法の好ましい実施形態では、前記対象は、エネルギー代謝障害を誘導できることが疑われる化合物と接触させた。
本発明は、対象において化合物がエネルギー代謝障害を誘導できるかどうかを判定するための方法であって、
(a)エネルギー代謝障害を誘導できることが疑われる化合物と接触させた対象のサンプルにおいて、表2のうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカーの量を測定するステップ、及び
(b)ステップ(a)で測定された量をリファレンスと比較して、化合物のエネルギー代謝障害誘導能力を判定するステップ
を含む、方法にも関する。
本発明の方法の特定の実施形態では、化合物が対象でエネルギー代謝障害を誘導することが可能かどうか判定する方法であって、
(a1) (i)雄又は雌対象を選択するステップ、
(ii)前記対象を、エネルギー代謝障害を誘導することが可能であることが疑われる化合物と接触させるステップ、又は
(a2)エネルギー代謝障害を誘導することが可能な化合物と接触させた雄又は雌対象を選択するステップ、
(b)前記選択された対象から試験サンプルを得るステップ、
(c)分析に備えて前記サンプルを前処理するステップ、
(d)前記試験サンプル中の表2のいずれか1つから選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を判定するステップ、及び
(e)ステップ(d)で判定された量を参照と比較するステップ;及び
(f)ステップ(e)の比較に基づき、化合物がエネルギー代謝障害を誘導することが可能かどうかについて確認するステップ
を含む、方法が提供される。
前述の方法の好ましい実施形態では、前記化合物は、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
本発明の方法の別の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、(i)エネルギー代謝障害を患っている対象若しくは対象群、又は(ii)2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群に由来する。前記方法のより好ましい実施形態では、試験サンプル及びリファレンスにおいて本質的に同一であるバイオマーカーの量が、エネルギー代謝障害の指標となる。
本発明の方法の別の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、(i)エネルギー代謝障害を患っていないことが分かっている対象若しくは対象群、又は(ii)2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来する。前記方法のより好ましい実施形態では、リファレンスと比較して試験サンプル中において異なるバイオマーカーの量が、エネルギー代謝障害の指標となる。
本発明の方法のさらに別の実施形態では、前記リファレンスは、対象集団のバイオマーカーについて計算されたリファレンスである。前記方法のより好ましい実施形態では、リファレンスと比較して試験サンプル中において異なるバイオマーカーの量が、エネルギー代謝障害の指標となる。
本発明は、エネルギー代謝障害を治療するための物質を同定する方法であって、
(a)エネルギー代謝障害を治療できると推測される候補物質と接触させたエネルギー代謝障害を患っている対象のサンプルにおいて、表2のうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカーの量を測定するステップ、及び
(b)ステップ(a)で測定された量をリファレンスと比較して、エネルギー代謝障害を治療できる物質を同定するステップ
を含む、方法も企図する。
本発明の方法の特定の実施形態では、エネルギー代謝障害を治療するための物質の同定方法であって、
(a1) (i)雄又は雌対象を選択するステップ、
(ii)前記対象を、エネルギー代謝障害が誘発されるように、エネルギー代謝障害を誘導することが可能であることが疑われる化合物と接触させるステップ、又は
(a2)エネルギー代謝障害を起こしている雄又は雌を選択するステップ、
(b)前記選択された対象から試験サンプルを得るステップ、
(c)分析に備えて前記サンプルを前処理するステップ、
(d)前記試験サンプル中の表2のいずれか1つから選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を判定するステップ、及び
(e)ステップ(d)で判定された量を参照と比較するステップ;及び
(f)ステップ(e)の比較に基づいて、エネルギー代謝障害を治療するための物質を同定し、選択するステップ
を含む、方法が提供される。
前述の方法の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、(i)エネルギー代謝障害を患っている対象若しくは対象群、又は(ii)2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群に由来する。前記方法のより好ましい実施形態では、試験サンプル及びリファレンスにおいて異なるバイオマーカーの量が、エネルギー代謝障害を治療できる物質の指標となる。
前述の方法の別の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、(i)エネルギー代謝障害を患っていないことが分かっている対象若しくは対象群、又は(ii)2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来する。前記方法のより好ましい実施形態では、試験サンプル及びリファレンスにおいて本質的に同一であるバイオマーカーの量が、エネルギー代謝障害を治療できる物質の指標となる。
前述の方法のさらに別の好ましい実施形態では、前記リファレンスは、対象集団におけるバイオマーカーについて計算されたリファレンスである。前記方法のより好ましい実施形態では、試験サンプル及びリファレンスにおいて本質的に同一であるバイオマーカーの量が、エネルギー代謝障害を治療できる物質の指標となる。
本発明は、対象のサンプルにおいてエネルギー代謝障害を診断するための、表2のうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカー又は前記バイオマーカー用の検出剤の使用にも関する。
さらに本発明は、エネルギー代謝障害を患っていることが疑われる対象のサンプルにおいてエネルギー代謝障害を診断するための装置であって、
(a)サンプル中に存在する前記バイオマーカーの量の測定を可能にする、表2のうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカー用の検出剤を備える分析ユニットと、それと作動可能に連結された、
(b)分析ユニットで測定された前記少なくとも1種のバイオマーカーの量を格納されたリファレンスと比較することを可能にし、それによってエネルギー代謝障害が診断される、格納されたリファレンス及びデータ処理装置を備える評価ユニットと
を具備する装置に関する。
本発明の装置の好ましい実施形態では、前記格納されたリファレンスは、エネルギー代謝障害を患っていることが分かっている対象若しくは対象群に由来するリファレンス、又は2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群に由来するリファレンスであり、前記データ処理装置は、分析ユニットで測定された少なくとも1種のバイオマーカーの量を格納されたリファレンスと比較するための指示を実行し、リファレンスと比較して本質的に同一である試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、エネルギー代謝障害が存在することの指標となり、又はリファレンスと比較して異なる試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、エネルギー代謝障害が存在しないことの指標となる。
本発明の装置の別の好ましい実施形態では、前記格納されたリファレンスは、エネルギー代謝障害を患っていないことが分かっている対象若しくは対象群に由来するリファレンス、又は2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来するリファレンスであり、前記データ処理装置は、分析ユニットで測定された少なくとも1種のバイオマーカーの量を格納されたリファレンスと比較するための指示を実行し、リファレンスと比較して異なる試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、エネルギー代謝障害が存在することの指標となり、又はリファレンスと比較して本質的に同一である試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、エネルギー代謝障害が存在しないことの指標となる。
さらに本発明は、エネルギー代謝障害診断のためのキットであって、表2のうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカー用の検出剤、及び濃度がエネルギー代謝障害を患っていることが分かっている対象若しくは対象群に由来する、又はエネルギー代謝障害を患っていないことが分かっている対象若しくは対象群に由来する、少なくとも1種のバイオマーカー用のスタンダードを含むキットに関する。
詳細には、本発明は以下の具体的な方法、使用、デバイス及びキットも企図する。
以下の定義及び説明は、前記の本発明の実施形態全て及び以下に記載する実施形態に準用する。
本発明に従って言及される方法は、基本的に前述のステップから構成されてもよいし、さらなるステップを含んでもよい。さらなるステップは、サンプルの前処理又はこの方法によって得られた診断結果の評価に関し得る。好ましいさらなる評価ステップは、本明細書の他の個所に記載される。この方法は、ある程度又は完全に自動化により補助することができる。例えば、バイオマーカー量の測定に係るステップは、ロボット化及び自動化読取装置によって自動化することができる。同様に、量の比較に係るステップも、実行の際に、自動的に比較するプログラムコードを備える、コンピューターなどの適切なデータ処理装置によって自動化することができる。そうした場合のリファレンスは、格納されたリファレンスから、例えばデータベースから提供される。好ましくは、この方法は、対象のサンプルについてex vivoで行われる方法であり、すなわちヒト又は動物の体について実施しない方法であることを理解されたい。
本明細書で使用する用語「診断」は、対象が、本明細書で言及する中毒、疾患若しくは障害などの状態を患っている、又はそうした状態に関する素因を有する確率を評価することを指す。素因の診断は、対象がその後に既定の時間窓内にその状態を発症する見込みの予後又は予測として時にはみなされる場合もある。当業者に理解されるように、そうした評価は、診断される対象の100%について正確であることが好ましいが、通常はそうではない可能性がある。しかし、この用語は、統計的に有意な一部の対象を、その状態を患っている又はその状態に関する素因を有すると特定できることを必要とする。ある一部が統計的に有意かどうかは、様々な周知の統計的な評価ツール、例えば、信頼区間の決定、P値の決定、スチューデントのt検定、マンホイットニー検定などを使用して、当業者であれば容易に判定することができる。詳細は、Dowdy及びWearden、Statistics for Research、John Wiley & Sons、New York 1983に見出される。好ましい信頼区間は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%である。P値は、好ましくは、0.2、0.1、0.05である。
本発明による診断は、ある状態又はその症状及びそれらの素因のモニタリング、確認及び分類も含む。モニタリングは、既に診断された状態又は素因の経過を追うことを指す。モニタリングは、例えば、その状態若しくは素因の進行の判定、その状態の進行に対する特定治療の効果の判定、又は素因を有する対象における、その状態の発症に対する予防的治療若しくは食事療法などの予防策の効果の判定を包含する。前記治療、予防的措置又は食事療法は調整することができ、調整の影響はモニタリングの態様として調査することができる。さらに、状態又はその素因の進行をモニタリングする場合は、前記モニタリングは、モニタリング頻度を決定すること、並びにさらなるモニタリング措置、例えばさらなる生化学的又は他の健康パラメータの測定を推奨及び/又は実行することを含むこともできる。
確認とは、他の指標又はマーカーを用いて既に判定されている状態又は状態の素因の診断を強化又は立証することに関する。確認は、確認された状態又はその素因に基づく、治療的措置の投与又は調節を一態様に含むこともできる。分類とは、(i)状態を、例えば状態に付随する症状の強度に対応する異なるクラスに割り付けること、又は(ii)状態に付随する異なる段階、疾患若しくは障害を識別することに関する。分類は、分類された状態、症状又はその素因に基づく、治療的措置の投与又は調節を一態様に含むこともできる。状態の素因は、リスクの程度、すなわち対象が後でその状態を発症する確率に基づいて分類することができる。さらに、分類は、好ましくは、本発明の方法によって試験化合物に作用様式を割り当てることも含む。具体的には、本発明の方法によって、作用様式がまだ知られていない化合物の特異的な作用様式の判定が可能になる。これは、好ましくは、少なくとも1種のバイオマーカーに関して測定された量又は前記化合物の代表的なバイオマーカープロファイルを、リファレンスとして作用様式が知られている化合物に関して測定されたバイオマーカーの量又はバイオマーカープロファイルと比較することによって達成される。化合物の分子標的が同定されるので、作用様式の分類によって、より一層信頼できる化合物の毒性評価が可能になる。疾患又は状態を診断することを目指す本発明の方法は、毒性作用について化合物をスクリーニングするため及びそれに関して報告するために、並びに化合物の開発で、例えば安全性を向上されること、又は薬物を開発するか有効な濃度を特定することにおいて用いることができる。
本発明に従って、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を誘導することが可能であると、化合物を特定することもできる。好ましくは、そのような特定は、化合物の製造、取扱い、保管及び/又は輸送並びにその用途に関する提案も含む。そのような提案には、製造、取扱い、保管、輸送及び/又は用途のための安全プロトコルを確立すること、その潜在毒性に従って化合物を表示すること、ヒト、動物及び/又は環境への曝露を制限することが含まれる。さらに、化合物が鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を誘発すると特定される場合は、LD50/LC50及び/又はED50/EC50値などの安全性レベル及び派生閾値が好ましくは決められる。
本明細書で用いられる用語「鉄吸収障害」は、外来性栄養源からの鉄の吸収のいかなる障害にも関する。好ましくは、本用語は十二指腸の鉄吸収欠陥に関する。実際、十二指腸は鉄吸収のための主要な部位である。鉄の排出は哺乳動物では調節されないので、食事性の鉄は、体の鉄ホメオスタシスを制御する調節された過程によって近位腸で吸収される。食事性の鉄は、ヘム(主に赤肉)及び非ヘム(白身の肉、野菜及び穀類)の2つの形で存在する。非ヘム食品の鉄は胃での酸消化によって放出され、十二指腸上皮細胞による取り込みの前に第一鉄(Fe2+)イオンに還元されなければならない。第一鉄のイオンは、体の鉄要求性によって調節される二価金属輸送体(DMT-1)によって、腸細胞頂端膜を越えて輸送される。鉄は腸細胞側底膜からフェロポルチンを通して流出し、膜結合フェロキシダーゼ、ヘファエスチンによって酸化されて第二鉄イオンを与え、それは次に血液を介した体内分布のために血漿トランスフェリンに結合する。ヘムは、無機鉄のそれと完全に別に吸収される。この過程はより効率的で、十二指腸のpHに依存しない。ヘムは、運搬機構及び葉酸塩輸送体によって腸細胞に取り込まれる。ヘムは、フェロポルチンを介する流出のために鉄イオンを放出するヘムオキシゲナーゼによって腸細胞で分解される。吸収についての食事性鉄の利用可能性は、食事組成によって決定され、胃機能の低下の影響を受けることができる。鉄欠乏は、主要な栄養問題である。腸細胞による鉄の吸収速度は、適当な膜内の輸送体DMT1及びフェロポルチンの活性によって制御される。したがって、鉄吸収障害には、好ましくは、遺伝子ヘモクロマトーシス、一部の遺伝性貧血、慢性疾患の貧血及び鉄欠乏の遺伝型が含まれる。いくつかの食事性因子が、鉄吸収に影響する。不十分な吸収は、貧血などの鉄欠乏障害につながることがある。他方、哺乳動物はその排出のための生理的経路を有しないので、過剰な鉄は有毒である。アスコルビン酸塩及びクエン酸塩は、一部、十二指腸でその金属を可溶化するのを助ける弱いキレーターとして働くことによって、鉄の取り込みを増加させる。鉄は、これらの化合物から粘膜内膜細胞に容易に移る。反対に、鉄吸収は、植物のフィチン酸塩及びタンニンによって阻害される。毒性状況での十二指腸傷害の解釈はかなり複雑であり、毒性及び/又は薬理学的応答の局所的並びに全身的出現を含むことがある。一般的に、刺激物(植物、化学物質、重金属)は粘膜への表面的な損傷、絨毛の減少、出血及び炎症を一般的に引き起こす。したがって、十二指腸毒性に影響を及ぼすことができる因子には、投与溶液のpH、製剤中の賦形剤の存在、親薬物又は代謝産物の可能な腸肝再循環、給餌又は空腹状態の動物への投与、腸ミクロフローラの状態及び食事組成が含まれる。十二指腸上皮は、急速細胞増殖部位であり、放射線又は細胞毒性薬物に感受性である。腸管の腸細胞の短寿命を考慮すると、傷害は、絨毛の急速な裸出、出血、潰瘍及び二次性の腸ミクロフローラ浸潤につながる。腐食性の薬剤は表面的で速やかに修復される病変だけを一般的に生成するが、細胞毒性薬物は、修復のために必要とされる増殖幹細胞コンパートメントを消失させることができる。腸管潰瘍は、NSAIDを含む広範囲の化合物の投与の後、齧歯動物及びイヌの両方で起こり得る。分解されない生体外物質による蓄積腸疾患は、多大な空胞状膨潤をもたらし、粘膜固有層の炎症につながることがある。吸収不全症候群も、吸収経路の干渉若しくは過負荷、特定の腸管酵素欠損症、又は胆汁若しくは膵液中の消化酵素分泌の減少から生じることがある。様々な薬物及び毒素への曝露は、十二指腸損傷を誘導し、鉄の取り込みを変化させる。フェニルヒドラジン(PZ)によって誘導される溶血性貧血は、拡張された吸収表面及び十二指腸刷子縁を越える鉄の取り込みのための強化された電気的推進力のために、ラットの小腸全体での鉄吸収を促進する。鉄をヘムに取り込むことの失敗は、鉄芽球性貧血をもたらし、赤血球中に鉄含有顆粒が存在する。この状態は鉛毒性で見られ、そこでは、ヘム合成経路の酵素のいくつかの阻害が起こる。
好ましくは、本明細書で言及される鉄吸収障害は、化学化合物又は薬物の投与で誘導されるか、その投与の結果であり、すなわち、いわゆる毒素誘導性鉄吸収障害である。
鉄吸収障害の前述の発現の症状及び臨床徴候は、当業者に周知であり、毒性学の標準的な書籍、例えば、H. Marquardt、S. G. Schafer、R. O. McClellan、F. Welsch (編)、「Toxicology」、第13章: The Liver、1999、Academic Press、Londonに詳細に記載されている。
好ましくは、鉄吸収障害を診断するために、本発明の方法によって測定されるべき少なくとも1つのバイオマーカーは、表1a、1b、1c又は1dのいずれか1つから選択される。
本明細書で用いられる用語「エネルギー代謝障害」は、エネルギー代謝、すなわち、生物体の細胞でATPを生成する代謝のいかなる障害にも関する。好ましくは、本明細書で用いられるエネルギー代謝障害は、化合物又は薬物の投与によって誘導されるかその結果であり、すなわち、いわゆる毒素誘導エネルギー代謝障害である。
エネルギー代謝障害の前記出現の症状及び臨床徴候は当業者に周知であり、毒物学の標準図書、例えば、H. Marquardt、S. G. Schafer、R. O. McClellan、F. Welsch(編)、「Toxicology」、第13章:The Liver、1999年、Academic Press、Londonで詳述されている。
好ましくは、エネルギー代謝障害を診断するために、本発明の方法によって測定されるべき少なくとも1つのバイオマーカーは、表2から選択される。
各バイオマーカーが、診断について見かけ上統計的に独立した予測因子であるので、表に収載されているバイオマーカーのうちの2種以上の組合せは、さらに診断を強化することが本発明によって見出された。さらに、マーカー存在量に対する他の組織からの影響が均衡されるので、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害に対する特異性も有意に増大する。したがって、本明細書で使用する用語「少なくとも1」は、好ましくは、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9又は少なくとも10の、添付の表のうちのいずれか1つで言及されるバイオマーカーの組合せを指す。好ましくは、それらの表のうちのいずれか1つで列挙される全てのバイオマーカーは、本発明の方法に従って組み合わせて測定される。
個々の表からの鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害のための、及び表に記載の適応症のためのバイオマーカーの好ましい群又は組合せは、以下の通りである:
表1a及び1b(十二指腸鉄欠乏):コリンプラスマローゲン(C18、C20:4)、プロリン、DAG(C18:1、C18:2)、メチオニン又はコール酸。
表1c及び1d(十二指腸鉄欠乏):セリン、グルタミン酸、クエン酸、メチオニン又はアラニン。
表2(エネルギー代謝低下):3-ヒドロキシ酪酸、クエン酸、ピルビン酸又はコハク酸。
したがって好ましくは、少なくとも1種のバイオマーカーは、前述の群から選択される少なくとも1種のバイオマーカーであり、又は少なくとも1種のバイオマーカーは、前述のバイオマーカーの群からなる若しくはそれを含むバイオマーカーの組合せである。前述のバイオマーカー及びバイオマーカーの組合せは、より詳細に付属の実施例で記載されるように、特に高い診断価値を有する重要なバイオマーカーとして同定された。
さらに、他のバイオマーカー又は既知の代謝物、遺伝子変異、転写産物及び/若しくはタンパク質の量若しくは酵素活性を含めた臨床的パラメータをさらに加えて測定することができる。そうした、本発明の方法によって測定することができる追加的な臨床的又は生化学的パラメータは、当技術分野で周知である。
本明細書で使用する用語「バイオマーカー」は、サンプル中の存在又は濃度が、ある状態、好ましくは本明細書で言及する鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害の有無又は強さの指標になる化学化合物を指す。好ましくは、化学化合物は、代謝物又はそれに由来するアナライトである。アナライトは、生物で見出される実際の代謝物と同一であり得る化学化合物である。しかし、この用語は、内因的に生成される、又は単離若しくはサンプルの前処理の間、若しくは本発明の方法の実施の結果として、例えば、精製及び/若しくは測定ステップの間に生成される代謝物の誘導体も含む。特定の場合では、アナライトは、溶解度などの化学的性質によりさらに特徴づけられる。前記性質のため、アナライトは、精製及び/又は測定プロセス中に得られる極性又は脂質画分中に生じ得る。したがって、化学的性質、好ましくは溶解度は、精製及び/又は測定プロセス中に得られる極性又は脂質画分のいずれかの中にアナライトを生じさせるものとする。したがって、前記化学的性質、特に、精製及び/又は測定プロセス中に得られる極性画分又は脂質画分のいずれかの中のアナライトの発生として考慮される溶解度は、アナライトをさらに特徴づけ、その同定を補助するものとする。こうした化学的性質を判定及び考慮することができる方法についての詳細は、以下に記載される付属の実施例に見出される。好ましくは、アナライトは、定性的及び定量的な様式で代謝物を表し、これによって、対象又は少なくとも前記対象の試験サンプル中の代謝物の有無又は量に関する決定が必然的に可能になる。バイオマーカー、アナライト及び代謝物は、本明細書では単数形で言及されるが、これらの用語の複数形も含み、すなわち、同一分子種の複数のバイオマーカー、アナライト又は代謝物分子を指す。さらに、本発明によるバイオマーカーは、必ずしも1つの分子種に対応するとは限らない。むしろ、バイオマーカーは、化合物の立体異性体又は鏡像異性体を含み得る。さらに、バイオマーカーは、異性体分子のある生物学的クラスの異性体の和を表すこともできる。前記異性体は、場合によっては同一の分析的特徴を示すものとし、したがって、以下に記載される付属の実施例で適用されるものを含めた種々の分析方法によって区別できない。しかし、異性体は、少なくとも同一の和公式パラメータを有するので、例えば脂質の場合には、脂肪酸及び/又はスフィンゴ塩基部分において、同一の鎖長並びに同一の二重結合数を有する。
本明細書で使用する用語「試験サンプル」は、本発明の方法による鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害の診断に使用されるサンプルを指す。好ましくは、前記試験サンプルは生物サンプルである。生物源からのサンプル(すなわち生物サンプル)は、複数の代謝物を通常含む。本発明の方法で使用する好ましい生物サンプルは、体液、好ましくは、血液、血漿、血清、唾液、胆汁、尿若しくは脳脊髄液からのサンプル、又は例えば生検によって、細胞、組織若しくは臓器から、好ましくは肝臓から得られるサンプルである。より好ましくは、サンプルは、血液、血漿又は血清サンプルであり、最も好ましくは、血漿サンプルである。生物サンプルは、本明細書の他の個所で明記される対象に由来する。前述の様々な種類の生物サンプルを得るための技術は、当技術分野で周知である。例えば、血液サンプルは採血によって得ることができるが、組織又は臓器サンプルは、例えば生検によって得ることになる。
好ましくは、前述のサンプルは、前処理してから本発明の方法で使用する。より詳細に以下に記載するように、前記前処理は、化合物を遊離若しくは分離する又は過剰な材料若しくは廃物を除去するのに必要となる処理を含み得る。適切な技術は、遠心分離、抽出、分画、限外濾過、タンパク質沈殿、それに続く化合物の濾過及び精製並びに/又は濃縮を含む。さらに、化合物の分析に適した形状又は濃度で化合物を提供するために、他の前処理が行われる。例えば、ガスクロマトグラフィー連結質量分析を本発明の方法で使用する場合は、前記ガスクロマトグラフィーより前に化合物を誘導体化することが必要となる。適切且つ必要な前処理は、本発明の方法の実施に使用する手段に依存し、当業者に周知である。先に記載したように前処理されたサンプルも、本発明によって使用される用語「サンプル」に含まれる。
本明細書で使用する用語「対象」は、動物、好ましくは哺乳動物、例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ハムスター、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、サル又はウシなど、さらに、好ましくはヒトに関する。より好ましくは、対象はげっ歯類であり、最も好ましくはラットである。本発明の方法を適用して診断することができる他の動物は、魚類、鳥類又は爬虫類である。好ましくは、前記対象は、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を誘導できることが疑われる化合物と接触したか、又は接触させたものである。鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を誘導することが疑われる化合物と接触させた対象は、例えば化合物の毒性に関するスクリーニングアッセイで使用する、例えばラットなどの実験動物でもよい。鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を誘導することができる化合物と接触したことが疑われる対象は、適切な療法を選択するために診断される対象でもあり得る。好ましくは、本明細書で使用する鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を誘導することができる化合物は、1オリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.である。
好ましくは、対象が雌(女性)である場合は、本発明の方法によって測定されるべき少なくとも1つのバイオマーカーは、表1a又は1bのいずれか1つから選択される。
好ましくは、対象が雄(男性)である場合は、本発明の方法によって測定されるべき少なくとも1つのバイオマーカーは、表1b、1c又は2のいずれか1つから選択される。
本明細書で使用する用語「量を測定する」は、バイオマーカー、すなわち代謝物又はアナライトの少なくとも1つの特徴的な特性を測定することを指す。本発明による特徴的な特性は、生化学的性質を含めた、バイオマーカーの物理的及び/又は化学的性質を特徴づける特性である。そうした性質としては、例えば、分子量、粘性、密度、電荷、スピン、光学活性、色、蛍光、化学発光、元素組成、化学構造、他の化合物と反応する能力、生物学的読み取りシステム(例えばレポーター遺伝子の誘導)で応答を惹起する能力などが挙げられる。前記性質に関する値は、特徴的な特性としての役割を果たすことができ、当技術分野で周知の技術によって測定することができる。さらに、特徴的な特性は、標準的な操作、例えば乗算、除算又は対数計算などの数学的計算によってバイオマーカーの物理的及び/又は化学的性質の値から導かれる任意の特性でもよい。最も好ましくは、少なくとも1つの特徴的な特性によって、バイオマーカー及びその量の測定及び/又は化学的な同定が可能になる。したがって、特性値は、好ましくは、特性値が導かれるバイオマーカーの存在量に関する情報も含む。例えば、バイオマーカーの特性値は、質量スペクトルのピークでもよい。そうしたピークは、バイオマーカーの特徴的な情報、すなわちm/z(質量電荷比)情報及びサンプル中の前記バイオマーカーの存在量(すなわちその量)に関する強度値を含有する。
先に論じたように、好ましくは、本発明の方法によって測定される少なくとも1種のバイオマーカーは、定量的に又は半定量的に測定することができる。定量的な測定については、バイオマーカーの絶対量又は正確な量のいずれかが測定されるか、又は本明細書の上記で言及した特徴的な特性(複数可)に関して測定された値に基づいて、バイオマーカーの相対量が測定される。相対量は、バイオマーカーの正確な量が測定できない又は測定すべきでない場合に、測定することができる。前記の場合では、バイオマーカーの存在量が第2の量で前記バイオマーカーを含む第2のサンプルに対して増大又は低下しているのかを判定することができる。したがって、バイオマーカーの定量分析は、バイオマーカーの半定量分析と呼ばれることもある分析も含む。
さらに、本発明の方法で使用される測定は、好ましくは、先に言及された分析ステップより前に、化合物分離ステップの使用を含む。好ましくは、前記化合物分離ステップによって、サンプルに含まれる少なくとも1種のバイオマーカーの時間分解分離がもたらされる。したがって、本発明に従って好んで使用される適切な分離技術には、全てのクロマトグラフィー分離技術、例えば、液体クロマトグラフィー(LC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、薄層クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー又はアフィニティークロマトグラフィーが含まれる。こうした技術は、当技術分野で周知であり、当業者であれば容易に適用することができる。最も好ましくは、LC及び/又はGCが本発明の方法で想定されるクロマトグラフィー技術である。バイオマーカーのそうした測定に適切な装置は、当技術分野で周知である。好ましくは、質量分析が使用され、特に、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)、直接注入質量分析若しくはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT-ICR-MS)、キャピラリー電気泳動質量分析(CE-MS)、高速液体クロマトグラフィー連結質量分析(HPLC-MS)、四重極質量分析、MS-MS又はMS-MS-MSなどの任意の逐次連結質量分析、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)、熱分解質量分析(Py-MS)、イオン移動度質量分析又は飛行時間型質量分析(TOF)が使用される。最も好ましくは、以下で詳細に記載されるように、LC-MS及び/又はGC-MSが使用される。前記技術は、例えば、Nissen 1995、Journal of Chromatography A、703: 37〜57、US 4,540,884又はUS 5,397,894に開示されており、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。質量分析技術の代わりとして又はそれに加えて、以下の技術を化合物の測定に使用することができる:核磁気共鳴(NMR)、磁気共鳴画像(MRI)、フーリエ変換赤外分析(FT-IR)、紫外(UV)分光、屈折率(RI)、蛍光検出、放射化学的検出、電気化学的検出、光散乱(LS)、分散ラマン分光法又は炎イオン化検出(FID)。こうした技術は当業者に周知であり、容易に適用することができる。好ましくは、本発明の方法は、自動化によって補助されるものとする。例えば、サンプルの処理又は前処理は、ロボットによって自動化することができる。好ましくは、データの処理及び比較は、適切なコンピュータープログラム及びデータベースによって補助される。先に本明細書に記載した自動化によって、ハイスループットアプローチで本発明の方法を使用することが可能になる。
さらに、バイオマーカーは、特異的な化学的又は生物学的アッセイによって測定することもできる。前記アッセイは、サンプル中のバイオマーカーの特異的な検出を可能にする手段を含むものとする。好ましくは、前記手段は、他の化合物と反応するバイオマーカーの能力、又は生物学的読み取りシステム(例えばレポーター遺伝子の誘導)において応答を惹起するその能力に基づいて、バイオマーカーの化学構造を特異的に認識することができるか、又はバイオマーカーを特異的に同定することができる。バイオマーカーの化学構造を特異的に認識することができる手段は、好ましくは、バイオマーカーに特異的に結合する検出剤、より好ましくは、化学構造物と特異的に相互作用する抗体又は他のタンパク質、例えば受容体又は酵素又はアプタマーである。例えば、特異的な抗体は、抗原としてバイオマーカーを使用して、当技術分野で周知の方法によって得ることができる。本明細書で言及する抗体には、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の両方、及びそれらのフラグメント、例えば、抗原又はハプテンと結合することができるFv、Fab及びF(ab)2フラグメントが含まれる。本発明は、所望の抗原特異性を示す非ヒトドナー抗体のアミノ酸配列をヒトアクセプター抗体の配列と組み合わせた、ヒト化ハイブリッド抗体も含む。さらに、単鎖抗体が包含される。ドナー配列は、少なくともドナーの抗原結合アミノ酸残基を通常含むが、他の構造的及び/又はドナー抗体の機能的に関連性のあるアミノ酸残基もまた含んでもよい。そうしたハイブリッドは、当技術分野で周知のいくつかの方法によって調製することができる。代謝物を特異的に認識することができる適切なタンパク質は、好ましくは、前記バイオマーカーの代謝変換に関与する酵素である。前記酵素は、バイオマーカー、例えば代謝物を基質として使用してもよいし、基質をバイオマーカー、例えば代謝物に変換してもよい。さらに、前記抗体は、バイオマーカーを特異的に認識するオリゴペプチドを生成するための基盤として使用することができる。こうしたオリゴペプチドは、例えば、酵素の結合ドメイン又は前記バイオマーカーに対するポケットを含むものとする。適切な抗体及び/又は酵素に基づくアッセイは、RIA(放射免疫測定法)、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)、サンドイッチ酵素免疫試験、電気化学発光サンドイッチ免疫測定法(electrochemiluminescence sandwich immunoassays)(ECLIA)、解離促進ランタニド蛍光免疫測定法(dissociation-enhanced lanthanide fluoro immuno assay)(DELFIA)又は固相免疫試験でもよい。バイオマーカーに特異的に結合するアプタマーは、当技術分野で周知の方法で生成することができる(Ellington 1990、Nature 346:818〜822; Vater 2003、Curr Opin Drug Discov Devel 6(2): 253〜261)。さらに、バイオマーカーは、他の化合物と反応するその能力に基づいて、すなわち特異的な化学反応によって、同定することもできる。さらに、バイオマーカーは、生物学的読み取りシステムで応答を惹起するその能力のため、サンプル中で測定することができる。生物学的な応答は、サンプルに含まれる代謝物の存在及び/又は代謝物の量を示す読み取り値として検出されるものとする。生物学的な応答は、例えば、細胞又は生物の遺伝子発現誘導又は表現型応答でもよい。
用語「リファレンス(参照)」は、少なくとも1種のバイオマーカー特徴的な特性の値を指し、好ましくは、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害と相関し得る前記バイオマーカーの量の指標になる値を指す。
好ましくは、そうしたリファレンスは、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患っている対象若しくは対象群に由来するサンプル、又は1オリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.に接触させた対象若しくは対象群に由来するサンプルから得られる。対象又は対象群は、化合物が生物学的に利用可能である限り、局所又は全身の各投与様式で前記化合物に接触させることができる。
好ましくは、前記の化合物は、下記の付随する実施例及び表に記載されているように、リファレンスが由来する対象又は対象群の個体に投与することができる。
詳細には、本明細書で言及されるオリザストロビン、ジモキシストロビン及び鉄欠乏食は、鉄吸収障害を誘導することが可能な化合物であるが、12-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.は、エネルギー代謝障害を誘導することが可能であるものとする。
或いは、とはいえ同様に好ましいことであるが、リファレンスは、オリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.に接触させていない対象若しくは対象群に由来するサンプル、又は鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害に関して、より好ましくは他の疾患に関しても、健康な対象若しくはそうした対象の群に由来するサンプルから得ることができる。
リファレンスは、バイオマーカーの量について上で記載したように測定することができる。特に、好ましくは、リファレンスは、本明細書で言及する一群の対象のサンプルから得られ、これは、その群の各個体由来のサンプル中の少なくとも1種のバイオマーカー(複数可)それぞれの相対量又は絶対量を別々に測定し、その後に、本明細書の他の個所で言及される統計的技術を使用して、前記相対量若しくは絶対量に対する中央値若しくは平均値又はそれらから得られる任意のパラメータを決定することによって得られる。或いは、好ましくは、本明細書で言及するように、リファレンスは、対象群のサンプル混合物由来のサンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーそれぞれに対する相対量又は絶対量を測定することによって得ることができる。好ましくは、そうした混合物は、前記群の各個体から得られるサンプル由来の等容量の部分からなる。
さらに、また好ましくは、リファレンスは計算されたリファレンスでもよく、最も好ましくは、個体集団に由来する少なくとも1種のバイオマーカーのそれぞれの相対量又は絶対量に対する平均値又は中央値でもよい。前記個体集団は、本発明の方法によって調査される対象が生じる集団である。しかし、計算されたリファレンスを決定するために調査する対象集団は、好ましくは、見かけ上健康な対象(例えば未処理)からなるか、又は前記集団内に試験対象(複数可)が存在することに起因する平均値又は中央値の有意な変化に対して統計的に耐えるのに十分な大きさの、見かけ上健康な多数の対象を含むことを理解されたい。前記集団の個体の少なくとも1種のバイオマーカーの絶対量又は相対量は、本明細書の他の個所で明記されるように判定することができる。適切なリファレンス値、好ましくは平均値又は中央値を計算する方法は、当技術分野で周知である。適切なリファレンスを計算するための他の技術としては、受信者動作特性(ROC)曲線計算を用いる最適化が挙げられ、これは、当技術分野で同様に周知であり、対象の所与のコホートに基づく所与の特異性及び感受性を有するアッセイ系について、容易に実施することができる。先に言及した集団又は対象群は、複数の対象、好ましくは、少なくとも5、10、50、100、1,000又は10,000の対象、最大で集団全てまでを含むものとする。より好ましくは、この文脈において言及される対象群は、所与の集団を統計的に代表する大きさを有する対象群、すなわち統計的に代表的なサンプルである。本発明の方法によって診断される対象及び前記複数の対象の対象は同一種であり、好ましくは同じ性別であることを理解されたい。
より好ましくは、リファレンスは、データベースなどの適切なデータ記憶媒体に格納されるので、その後の診断にも利用可能である。これによって、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害の素因を効率的に診断することが可能になる。なぜなら、対応するリファレンスサンプルが得られた対象が(実際に)鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を発症したことが、(その後に)一度確認されれば、適切なリファレンス結果をデータベース中で特定することができるからである。
用語「比較する」は、少なくとも1種のバイオマーカーの定性的又は定量的な測定量が、リファレンスと同一であるか又はそれと異なるかを評価することを指す。
リファレンス結果が、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患う対象若しくは対象群に由来するサンプル、又はオリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.と接触させた対象若しくは対象群に由来するサンプルから得られた場合は、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害は、試験サンプル及び前述のリファレンスから得られる量の間の同一度又は類似度に基づいて、すなわち、少なくとも1種のバイオマーカーに関する同一の定性的又は定量的な組成に基づいて診断することができる。同一の量は、統計的に有意な様式で異ならない量を含み、好ましくは、少なくともリファレンスの1から99パーセンタイル、5から95パーセンタイル、10から90パーセンタイル、20から80パーセンタイル、30から70パーセンタイル、40から60パーセンタイルの区間内、より好ましくは、リファレンスの50、60、70、80、90又は95パーセンタイルである。鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患う対象若しくは対象群に由来するサンプルから得られるリファレンス、又はオリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.と接触させた対象若しくは対象群に由来するサンプルから得られるリファレンスは、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を診断するために、又は対象において化合物が鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を誘導することができるかどうかを判定するために、本発明の方法で適用することができる。そのような場合では、好ましくは、リファレンスと本質的に同一である、少なくとも1種のバイオマーカーの量が、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害又は鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を誘導することができる化合物が存在する指標となり、一方で、リファレンスと異なる、少なくとも1種のバイオマーカーの量が、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害又は鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を誘導することができる化合物が存在しないことの指標になる。
さらに、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患う対象若しくは対象群に由来するサンプルから得られるリファレンス、又はオリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.と接触させた対象若しくは対象群に由来するサンプルから得られるリファレンスは、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を治療するための物質を同定するのに適用することができる。そのような場合では、好ましくは、リファレンスと異なる、少なくとも1種のバイオマーカーの量が、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を治療するのに適した物質の指標となり、一方で、リファレンスと本質的に同一である、少なくとも1種のバイオマーカーの量が、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を治療できない物質の指標になる。
リファレンス結果が、オリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.に接触させていない対象若しくは対象群のサンプル、又は鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患っていない対象若しくは対象群のサンプルから得られる場合は、前記鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害は、試験サンプルから得られる試験量と前述のリファレンスの差異、すなわち、少なくとも1種のバイオマーカーに関する定性的又は定量的な組成における差異に基づいて診断することができる。
上で明記した計算されたリファレンスが使用される場合も、同じことが当てはまる。
差異は、少なくとも1種のバイオマーカーの絶対量又は相対量の増大(バイオマーカーのアップレギュレーションといわれることもある。実施例も参照されたい。)でもよいし、前記量のいずれかの低下若しくは検出可能なバイオマーカーの量が存在しないこと(バイオマーカーのダウンレギュレーションといわれることもある。実施例も参照されたい。)でもよい。好ましくは、相対量又は絶対量の差異は有意であり、すなわち、リファレンスの45から55パーセンタイル、40から60パーセンタイル、30から70パーセンタイル、20から80パーセンタイル、10から90パーセンタイル、5から95パーセンタイル、1から99パーセンタイルの区間外である。
オリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.に接触させていない対象若しくは対象群に由来するサンプルから得られるリファレンス、又は鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患っていない対象若しくは対象群に由来するサンプルから得られるリファレンスは、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を診断するために、又は対象において化合物が鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を誘導することができるかどうかを判定するために、本発明の方法で適用することができる。そのような場合では、好ましくは、リファレンスと異なる、少なくとも1種のバイオマーカーの量が、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害又は鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を誘導することができる化合物が存在することの指標となり、一方で、リファレンスと本質的に同一である、少なくとも1種のバイオマーカーの量が、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害が存在しないこと又は鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を誘導することができない化合物の指標になる。さらに、オリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.に接触させていない対象若しくは対象群に由来するサンプルから得られるリファレンス、又は鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患っていない対象若しくは対象群に由来するサンプルから得られるリファレンスは、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を治療するための物質を同定するのに適用することができる。そのような場合では、好ましくは、リファレンスと本質的に同一である、少なくとも1種のバイオマーカーの量が、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を治療するのに適した物質の指標となり、一方で、リファレンスと異なる、少なくとも1種のバイオマーカーの量が、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を治療するのに適さない物質の指標になる。
好ましいリファレンスは、付属の表で言及されるもの又は以下の付属の実施例で生成することができるものである。さらに、相対的差異、すなわち個々のバイオマーカーに対する量の増大又は低下は、好ましくは、以下の表に列挙されるものである。さらに、好ましくは、観察される差異の程度、すなわち増大又は低下は、好ましくは、以下の表に示される因子による増大又は低下である。
好ましくは、表1a又は1cから選択されるときの少なくとも1つのバイオマーカーは、オリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.と接触させなかった対象若しくは対象群に由来するサンプル、又は前記表に示す健全な対象若しくは対象群から得られるサンプルから得られるリファレンスに対して増加する。
好ましくは、表1b、1d又は2から選択される場合の少なくとも1種のバイオマーカーは、オリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.と接触させなかった対象若しくは対象群に由来するサンプル、又は前記表に示す健全な対象若しくは対象群から得られるサンプルから得られるリファレンスに対して低下する。
好ましくは、比較は自動化によって補助される。例えば、2つの異なるデータセット(例えば、特徴的な特性(複数可)の値を含むデータセット)を比較するためのアルゴリズムを含む適切なコンピュータープログラムを使用することができる。そうしたコンピュータープログラム及びアルゴリズムは、当技術分野で周知である。上記にもかかわらず、手動で比較することもできる。
用語「鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を治療するための物質」は、本明細書の他の個所で言及される鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を誘導する生物学的機序を直接的に妨げることができる化合物を指す。或いは、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害に付随する症状の発症又は進行を妨げることができる化合物も好ましい。本発明の方法によって同定される物質は、有機及び無機化学物質、例えば、低分子、ポリヌクレオチド、siRNA、リボザイム若しくはマイクロRNA分子を含めたオリゴヌクレオチド、ペプチド、抗体を含めたポリペプチド又は他の人工的若しくは生物学的な高分子、例えばアプタマーなどでもよい。好ましくは、この物質は、薬物、プロドラッグ又は薬物若しくはプロドラッグを開発するためのリード物質として適する。
本発明の方法が、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害の療法のための薬物の同定、又は化合物の毒物学的評価(すなわち、化合物が鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を誘導することができるかどうかの判定)のために使用されることになる場合は、統計的理由のために、複数の対象の試験サンプルが調査され得ることを理解されたい。好ましくは、試験対象のそうしたコホートの内メタボロームは、例えば調査化合物以外の因子によって引き起こされる差異を回避するために、できるだけ類似しているものとする。前記方法に使用する対象は、好ましくはげっ歯類などの実験動物、より好ましくはラットである。前記実験動物は、好ましくは、本発明の方法が終了した後で屠殺するものとすることをさらに理解されたい。コホート試験の対象及びリファレンス動物の全ては、いかなる特異な環境上の影響も回避するために、同一条件下で維持されるものとする。そうした動物を提供する適切な条件及び方法は、WO2007/014825に詳細に記載されている。前記条件は、参照により本明細書に組み込まれる。
したがって本発明の一態様では、方法は、さらなる臨床開発のために、特定及び選択される物質、薬物、プロドラッグ又は薬物若しくはプロドラッグの候補を特定及び/又は確認することを含むステップをさらに含むことができる。そのような臨床開発は、好ましくは、物質の薬理学的研究、物質の毒性判定、全てのフェーズの臨床試験を含む動物及びヒトの薬物試験を含むことができる。
したがって、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を治療するための物質を特定することを目指す本発明の方法は、好ましくはさらなるステップを含む。好ましくは、さらなるステップには、ED50/EC50及び/又はLD50/LC50閾値などのその薬理学的及び/又は毒性学的パラメータを特定するために物質で前臨床試験を実施すること、例えば物質の治療的効能及び安全性、並びに特定された物質の薬学的に許容される形の製剤を判定するための臨床試験を実施することが含まれる。
物質は、好ましくは、局所又は全身投与のために製剤化することができる。従来通り、薬物は筋肉内又は皮下に投与される。しかし、物質の性質及び作用様式によっては、それを他の経路によっても投与することができる。物質は、好ましくは、従来の剤形での投与のために製剤化され、特定された物質を標準の薬用担体と従来の手順によって組み合わせることによって調製される。これらの手順は、所望の調製物に適するように、成分を混合、造粒及び圧縮、又は溶解することを含むことができる。薬学的に許容される担体又は希釈剤の形及び性状は、組み合わされる有効成分の量、投与経路及び他の周知の変数によって決定されることが理解される。担体は、製剤の他の成分に適合し、そのレシピエントに有害でないという意味において許容されなければならない。使用される医薬用担体には、固体、ゲル又は液体が含まれてもよい。限定されずに、固体担体の例は、乳糖、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などである。限定されずに、液体担体の例は、リン酸緩衝生理食塩溶液、シロップ、油、水、乳剤、各種の湿潤剤などである。同様に、担体又は希釈剤には、この分野において周知であるタイムディレイ材料、例えば単独又はワックスと一緒のモノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルが含まれてもよい。前記適する担体は、上記のもの、及び当技術分野で周知である他のものを含み、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、Pennsylvaniaを参照。希釈剤は、組合せの生物学的活性に影響を及ぼさないように選択される。限定されずに、そのような希釈剤の例は、蒸留水、生理食塩水、リンガー液、ブドウ糖溶液及びハンク溶液である。さらに、医薬組成物又は製剤は、他の担体、アジュバント、又は非毒性、非治療的、非免疫原性の安定剤などを含むこともできる。薬物として物質の製剤化は、品質、医薬の安全及び効果を確保するために、GMP規格の条件下などで行われることを理解すべきである。
好ましくは、本発明の方法は本発明の装置に実装され得る。本明細書で使用する装置は、少なくとも前述のユニットを備えるものとする。装置のユニットは、互いに作動可能に連結される。作動的にユニットを連結する方法は、装置中に備えられるユニットの種類に依存する。例えば、少なくとも1種のバイオマーカーを定性的又は定量的に自動的に測定するための手段が分析ユニット中に適用される場合は、前記自動的な作動ユニットによって得られるデータは、診断を容易にするために、評価ユニットによって、例えば、データ処理装置であるコンピューターで動作するコンピュータープログラムによって処理することができる。好ましくは、そのような場合は、これらのユニットは単一装置に備えられる。しかし、分析ユニットと評価ユニットは、物理的に離れていてもよい。そのような場合では、作動的な連結は、データ伝達を可能にする、ユニット間の有線接続及び無線接続によって達成することができる。無線接続は、無選LAN(WLAN)又はインターネットを使用することができる。有線接続は、ユニット間の光及び非光ケーブル接続によって達成することができる。好ましくは、有線接続に使用するケーブルは、ハイスループットなデータ転送に適する。
少なくとも1種のバイオマーカーを測定するための好ましい分析ユニットは、本明細書の他の個所で明記されるような、少なくとも1種のバイオマーカーを特異的に認識する検出剤、例えば抗体、タンパク質又はアプタマーなど、及び前記検出剤を試験サンプルと接触させるゾーンを備える。検出剤は、ゾーン上に固定化して接触させてもよいし、サンプルを負荷した後に前記ゾーンに加えてもよい。好ましくは、分析ユニットは、検出剤と少なくとも1種のバイオマーカーの複合物の量を定性的及び/又は定量的に測定するように適合させるものとする。検出剤が少なくとも1種のバイオマーカーへ結合する際に、少なくとも1種のバイオマーカー、検出剤のいずれか又は両方の少なくとも1つの測定可能な物理的又は化学的性質が変化し、その結果、好ましくは分析ユニットに備えられる検出器によって前記変化を測定できることを理解されたい。しかし、試験ストライプなどの分析ユニットを使用する場合は、検出器及び分析ユニットは、測定のためだけに結合させられる分離したコンポーネントでもよい。少なくとも1つの測定可能な物理的又は化学的性質において検出された変化に基づいて、分析ユニットは、本明細書の他の個所で明記される少なくとも1種のバイオマーカーに関する強度値を計算することができる。次いで、さらに処理及び評価するために、前記強度値を評価ユニットに伝達することができる。最も好ましくは、本明細書の他の個所で明記される検出剤を使用して、少なくとも1種のバイオマーカーの量をELISA、EIA又はRIAに基づく技術によって判定することができる。或いは、本明細書で言及する分析ユニットは、好ましくは、クロマトグラフィー装置などのバイオマーカーを分離するための手段、及び分光測定装置などのバイオマーカーを測定するための手段を備える。適切な装置は、詳細に先に記載されている。本発明のシステムで使用する化合物分離用の好ましい手段としては、クロマトグラフィー装置、より好ましくは液体クロマトグラフィー装置、HPLC装置及び/又はガスクロマトグラフィー装置が挙げられる。化合物測定用の好ましい装置は、質量分析装置、より好ましくは、GC-MS、LC-MS、直接注入質量分析装置、FT-ICR-MS、CE-MS、HPLC-MS、四重極質量分析装置、(MS-MS若しくはMS-MS-MSを含めた)逐次連結質量分析装置、ICP-MS、Py-MS又はTOFを含む。好ましくは、分離及び測定の手段は互いに連結される。最も好ましくは、LC-MS及び/又はGC-MSが、本発明によって言及される分析ユニットで使用される。
好ましくは、本発明の装置の評価ユニットは、本明細書の他の個所で明記されるように、比較を実施するためのルールを実行するように適合させたデータ処理装置又はコンピューターを備える。さらに、好ましくは、評価ユニットは、リファレンスを格納したデータベースを備える。本明細書で使用するデータベースは、適切な記憶媒体のデータ集合を備える。さらに、データベースは、好ましくはデータベース管理システムをさらに備える。好ましくは、データベース管理システムは、ネットワーク型、階層型又はオブジェクト指向型データベース管理システムである。さらに、データベースは、連邦データベースでもよいし、統合データベースでもよい。より好ましくは、データベースは、分散(連邦)システムとして、例えばクライアントサーバシステムとして実装される。より好ましくは、データベースは、検索アルゴリズムが、試験データセットをデータ集合に含まれるデータセットと比較できるように構築される。具体的には、そうしたアルゴリズムを使用することによって、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害の指標になる類似又は同一のデータセットについてデータベースを検索することができる(例えばクエリ検索)。したがって、同一又は類似のデータセットをデータ集合中に特定することができる場合は、試験データセットは鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害と関係があることになる。評価ユニットは、好ましくは、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害の確定診断に基づく治療的若しくは予防的な介入又は生活習慣の適応に対する助言を有するさらなるデータベースを備えてもよいし、それに作動可能に連結されてもよい。好ましくは、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を治療又は予防するために、試験サンプルを得た対象に対する適切な助言を特定する目的で、評価ユニットによって得られた診断結果を用いて前記のさらなるデータベースを自動的に検索することができる。
本発明の装置の好ましい実施形態では、前記格納されたリファレンスは、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患っていることが分かっている対象若しくは対象群に由来するリファレンス、又はオリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群に由来するリファレンスであり、前記データ処理装置は、分析ユニットで測定された少なくとも1種のバイオマーカーの量を格納されたリファレンスと比較するための指示を実行し、リファレンスと比較して本質的に同一である、試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害が存在することの指標になり、又はリファレンスと比較して異なる、試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害が存在しないことの指標になる。
本発明の装置の別の好ましい実施形態では、前記格納されたリファレンスは、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患っていないことが分かっている対象若しくは対象群に由来するリファレンス、又はオリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来するリファレンスであり、前記データ処理装置は、分析ユニットで測定された少なくとも1種のバイオマーカーの量を格納されたリファレンスと比較するための指示を実行し、リファレンスと比較して異なる、試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害が存在することの指標となり、又はリファレンスと比較して本質的に同一である、試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害が存在しないことの指標になる。
したがって、助言を行うエキスパートシステムが含まれる場合は特に、メディカルスタッフ又は実験室スタッフ又は患者が特別な医学知識なしで装置を使用することもできる。この装置は、携帯型に適合させることができるので、患者の近くでの用途にも適する。
用語「キット」は、好ましくは別々に又は単一の容器内に提供される、前述のコンポーネントの集合を指す。容器は、本発明の方法の実施に関する指示も備える。こうした指示は、取扱説明書の形でもよいし、コンピューター又はデータ処理装置上に実装される場合には、本発明の方法で言及される比較を実施でき、それに応じて診断を確定するためのコンピュータープログラムコードによって提供されてもよい。コンピュータープログラムコードは、データ記憶媒体若しくは装置、例えば光若しくは磁気記憶媒体(例えば、コンパクトディスク(CD)、CD-ROM、ハードディスク、光記録媒体若しくはディスケット)上に、又はコンピューター若しくはデータ処理装置上に直接的に提供することができる。本発明のキットに関して言及される「スタンダード(標準)」は、溶液中に存在する又は既定の溶液量中に溶解されている場合は、少なくとも1種のバイオマーカーの量であり、(i)鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患っていることが分かっている対象若しくは対象群、若しくはオリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群中に存在する少なくとも1種のバイオマーカーの量、又は(ii)鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患っていないことが分かっている対象若しくは対象群、若しくはオリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来する少なくとも1種のバイオマーカーの量に類似している。
好都合なことに、本明細書に明記される少なくとも1種のバイオマーカーの量によって、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害、具体的にはオリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.によって誘導される鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害の診断が可能になることが、本発明の根底となる研究において見出されている。本方法の特異性及び正確性は、前述のバイオマーカーの数を増加させて測定することによって又はさらにその全てを測定することによって、より一層向上する。こうした特異的なバイオマーカーに関するメタボロームの定量的及び/又は定性的組成の変化は、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害の他の徴候が臨床的に明らかになる前でさえ、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害の指標になる。鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を診断するのに現在使用されている形態的、生理的及び生化学的なパラメータは、本発明で提供するバイオマーカー測定と比較すると、特異性及び感受性が低い。本発明によって、化合物の鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を、より効率的且つ確実に評価することができる。さらに、前述の知見に基づいて、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害の療法に有用な薬物のスクリーニングアッセイが実行可能である。概して、本発明は、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を診断するために、化合物が鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を誘導できるかどうかを判定するために、又は鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を治療できる物質を同定するために、表1a、1b、1c、1d又は2のうちのいずれか1つから選択される対象のサンプルの少なくとも1種のバイオマーカー又は前記バイオマーカー用の検出剤の使用を企図する。さらに、本発明は概して、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害の治療に対して感受性である対象を同定するために、対象のサンプルの少なくとも1種のバイオマーカー、又はそのバイオマーカーの検出剤の使用を企図する。本発明のこの文脈において使用するのに好ましい検出剤は、本明細書の他の個所で言及されるものである。さらに好都合なことに、発明の方法は装置中に実装することができる。さらに、本方法を実施できるようにするキットを提供することができる。
本発明は、表1a、1b、1c、1d又は2のうちのいずれか1つに列挙されるバイオマーカーに対する特性値を含むデータ集合にも関する。用語「データ集合」は、物理的及び/又は論理的にグループ化され得るデータの集合を指す。したがって、データ集合は、単一のデータ記憶媒体又は互いに作動可能に連結された物理的に離れたデータ記憶媒体に実装することができる。好ましくは、データ集合は、データベースによって実装される。したがって、本明細書で使用するデータベースは、適切な記憶媒体上にデータ集合を備える。さらに、好ましくは、データベースはデータベース管理システムをさらに備える。好ましくは、データベース管理システムは、ネットワーク型、階層型又はオブジェクト指向型のデータベース管理システムである。さらに、データベースは、連邦データベースでも統合データベースでもよい。より好ましくは、データベースは、分散(連邦)システムとして、例えばクライアントサーバシステムとして実装される。より好ましくは、データベースは、検索アルゴリズムが試験データセットをデータ集合に含まれるデータセットと比較できるように構築される。具体的には、そうしたアルゴリズムを使用することによって、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害の指標になる類似の又は同一のデータセットについてデータベースを検索することができる(例えばクエリ検索)。したがって、同一又は類似のデータセットをデータ集合中に特定することができる場合は、試験データセットは鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害と関係があることになる。結果として、データ集合から得られる情報を使用して、対象から得られる試験データセットに基づいて鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を診断することができる。
さらに、本発明は、前記データ集合を備えるデータ記憶媒体に関する。本明細書で使用する用語「データ記憶媒体」は、CD、CD-ROM、ハードディスク、光記録媒体又はディスケットなどの単一の物理エンティティに基づくデータ記憶媒体を包含する。さらにこの用語は、好ましくはクエリ検索に適切なやり方で、前述のデータ集合を提供するように互いに作動可能に連結された、物理的に離れたエンティティからなるデータ記憶媒体をさらに含む。
本発明はまた、
(a)作動可能に連結されたサンプルの少なくとも1種のバイオマーカーの特性値を比較するための手段と、
(b)本発明のデータ記憶媒体と
を含むシステムに関する。
本明細書で使用する用語「システム」は、互いに作動可能に連結される異なる手段に関する。前記手段は、単一装置に実装されてもよいし、互いに作動可能に連結された物理的に離れた装置に実装されてもよい。好ましくは、バイオマーカーの特性値を比較するための手段は、上で言及したような比較アルゴリズムに基づいて作動する。好ましくは、データ記憶媒体は、前述のデータ集合又はデータベースを備え、各記憶データセットが鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害の指標になる。したがって、本発明のシステムによって、試験データセットがデータ記憶媒体に格納されるデータ集合に含まれるかどうかを特定することが可能になる。結果として、本発明のシステムは、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害診断の診断手段として適用することができる。本システムの好ましい実施形態では、サンプルのバイオマーカーの特性値を測定するための手段が含まれる。用語「バイオマーカーの特性値を測定するための手段」は、好ましくは、質量分析装置、ELISA装置、NMR装置又はアナライトについて化学的若しくは生物学的アッセイを実施するための装置などの、バイオマーカーを測定するための前述の装置に関する。
先に言及した全ての参考文献は、その開示内容全体及び先の記述で明確に言及したその具体的な開示内容に関して、参考により本明細書に組み込むものとする。
以下の実施例は、本発明を説明する目的のためにすぎない。これらは、いかなる観点においても本発明の範囲を限定するものと何ら解釈されるべきでない。
実施例:鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害に関連するバイオマーカー
5匹の雄及び雌ラットの群に、指示化合物(化合物、投与量及び投与詳細について以下の表4を参照のこと)を28日間にわたって1日1回投与した。
本研究の各投与群は、性別あたり5匹のラットからなっていた。それぞれ5匹の雄及び雌の動物の追加的な群を対照とした。処理期間の開始前に、供給時に62〜64日齢の動物を、居住及び環境条件に7日間順応させた。動物集団の全ての動物を、同一の一定温度(20〜24±3℃)及び同一の一定湿度(30〜70%)下で維持した。動物集団の動物は、不断給餌させた。使用する餌には、化学物質又は微生物の混入物は基本的に含まれていなかった。飲料水も自由に与えた。したがって、欧州飲料水指令(European Drinking Water Directive)98/83/EGに規定されている通り、水には、化学物質及び微生物の混入物は含まれていなかった。照明期間は、12時間明期、続いて12時間暗期(6:00から18:00までの12時間明期及び18:00から6:00までの12時間暗期)とした。本研究は、ドイツ動物保護法及び欧州理事会指令86/609/EEに従って、AAALACに認可された実験室で実施した。試験系は、げっ歯類での28日間反復投与経口毒性試験について化学物質を試験するために、OECD 407指針に従ってアレンジした。以下の表1及び2の試験物質(化合物)を、以下の表4に記載されるように用量決定し、投与した。
7日目、14日目及び28日目の朝に、絶食させた麻酔下の動物の眼窩後静脈叢から採血した。抗凝血剤としてEDTAを用いて、各動物から1mlの血液を採取した。このサンプルを遠心分離して、血漿を生成した。全ての血漿サンプルをN2雰囲気で覆い、次いで分析まで-80℃で保管した。
質量分析に基づく代謝物プロファイリング分析のために、血漿サンプルを抽出し、極性及び非極性(脂質)画分を得た。GC-MS分析のために、非極性画分を酸性条件下でメタノールで処理して、脂肪酸メチルエステルを得た。O-メチル-ヒドロキシアミン塩酸塩及びピリジンを用いて両画分をさらに誘導体化してオキソ基をO-メチルオキシムに変換し、その後にシリル化剤を用いて誘導体化してから分析した。LC-MS分析では、両画分を適切な溶媒混合液中で再構成した。HPLCは、逆相分離カラムによって傾斜容離で実施した。WO2003073464に記載されるように、フルスクリーン分析と並行して、標的及び高感度MRM(多重反応モニタリング)プロファイリングを可能にする質量分析検出を適用した。
ステロイド及びその代謝物は、オンラインのSPE-LC-MS(固相抽出LC-MS)によって測定した。カテコールアミン及びその代謝物は、Yamadaら(Yamada 2002、Journal of Analytical Toxicology、26(1): 17〜22))によって記載されるように、オンラインのSPE-LC-MSによって測定した。
総合的な分析検証ステップに続いて、各アナライトに関するデータを、プールサンプル由来のデータに対して標準化した。これらのサンプルは、プロセス変動を説明するために、全プロセスを通して並行して処理した。性別、処理期間及び代謝物に対して特異的な処理群値の有意性を、処理群の平均と対応する未処理の対照群の平均をWELCH試験を用いて比較することによって判定し、対照に対する処理比及びP値を用いて定量化した。
毒性パターン毎の最も重要なバイオマーカーを、以下の表のアナライトの序列化によって同定した。したがって、所与のパターンのリファレンス処理における代謝変化(表に示す)を、関係のない処理における同一代謝物の変化と比較した。各代謝物について、リファレンス及び対照処理からT値を得て、Welch試験によって比較して、これら2群に有意差があるかどうかを評価した。それぞれのT値の最大絶対値を選んで、そのパターンに対する最も重要な代謝物を示した。
ラットを処理した後の、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害の指標になる血漿代謝物群の変化を以下の表に示す。
Figure 2015517090
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Claims (20)

  1. 鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を診断するための方法であって、
    (a)鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を患っていることが疑われる対象の試験サンプルにおいて表1a、1b、1c、1d又は2のうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカーの量を測定するステップと、
    (b)ステップ(a)で測定した量をリファレンスと比較して、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を診断するステップと
    を含む、前記方法。
  2. 鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を誘導できることが疑われる化合物と前記対象を接触させた、請求項1に記載の方法。
  3. 対象において化合物が鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を誘導することができるかどうかを判定するための方法であって、
    (a)鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を誘導できることが疑われる化合物と接触させた対象のサンプルにおいて、表1a、1b、1c、1d又は2のうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカーの量を測定するステップと、
    (b)ステップ(a)で測定した量をリファレンスと比較して、化合物の鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害誘導能力を判定するステップと
    を含む、前記方法。
  4. 前記化合物が、オリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項2又は3に記載の方法。
  5. 前記リファレンスが、(i)鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患う対象若しくは対象群、又は(ii)オリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群に由来する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 試験サンプル及びリファレンスにおいて本質的に同一である、バイオマーカーの量が、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害の指標になる、請求項5に記載の方法。
  7. 前記リファレンスが、(i)鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患っていないことが分かっている対象若しくは対象群、又は(ii)オリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記リファレンスが、対象集団のバイオマーカーについて計算されたリファレンスである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  9. リファレンスと比較して試験サンプル中において異なるバイオマーカーの量が、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害の指標になる、請求項7又は8に記載の方法。
  10. 鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を治療するための物質を同定するための方法であって、
    (a)鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を治療できると推測される候補物質と接触させた、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を患う対象のサンプルにおいて、表1a、1b、1c、1d又は2のうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカーの量を測定するステップと、
    (b)ステップ(a)で測定した量をリファレンスと比較して、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を治療できる物質を同定するステップと
    を含む、前記方法。
  11. 前記リファレンスが、(i)鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患う対象若しくは対象群、又は(ii)オリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群に由来する、請求項10に記載の方法。
  12. 試験サンプルとリファレンスの間で異なるバイオマーカーの量が鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を治療できる物質の指標になる、請求項11に記載の方法。
  13. 前記リファレンスが、(i)鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患っていないことが分かっている対象若しくは対象群、又は(ii)1オリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来する、請求項10に記載の方法。
  14. 前記リファレンスが、対象集団において計算されたバイオマーカーのリファレンスである、請求項10に記載の方法。
  15. 試験サンプル及びリファレンスにおいて本質的に同一である、バイオマーカーの量が、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を治療できる物質の指標になる、請求項13又は14に記載の方法。
  16. 対象のサンプルにおいて鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を診断するための、表1a、1b、1c、1d又は2のうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカー又は前記バイオマーカー用の検出剤の使用。
  17. 鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を患っていることが疑われる対象のサンプルにおいて鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害を診断するための装置であって、
    (a)サンプル中に存在するバイオマーカーの量の測定を可能にする、表1a、1b、1c、1d又は2のうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカー用の検出剤を備える分析ユニットと、それと作動可能に連結された、
    (b)分析ユニットで測定された前記少なくとも1種のバイオマーカーの量を格納されたリファレンスと比較することを可能にし、それによって鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害が診断される、格納されたリファレンス及びデータ処理装置を備える評価ユニットと
    を含む、前記装置。
  18. 前記格納されたリファレンスが、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患っていることが分かっている対象若しくは対象群に由来するリファレンス、又は1オリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群に由来するリファレンスであり、且つ、前記データ処理装置が、分析ユニットで測定された少なくとも1種のバイオマーカーの量を格納されたリファレンスと比較するための指示を実行し、リファレンスと比較して本質的に同一である、試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害が存在することの指標になるか、又はリファレンスと比較して異なる、試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害が存在しないことの指標になる、請求項17に記載の装置。
  19. 前記格納されたリファレンスが、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患っていないことが分かっている対象若しくは対象群に由来するリファレンス、又は1オリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来するリファレンスであり、且つ、前記データ処理装置が、分析ユニットで測定された少なくとも1種のバイオマーカーの量を格納されたリファレンスと比較するための指示を実行し、リファレンスと比較して異なる、試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害が存在することの指標になるか、又はリファレンスと比較して本質的に同一である、試験サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの量が、鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害が存在しないことの指標になる、請求項17に記載の装置。
  20. 表1a、1b、1c、1d又は2のうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種のバイオマーカー用の検出剤、及び該少なくとも1種のバイオマーカーに関するスタンダードであって、その濃度が、(i)鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患っていることが分かっている対象若しくは対象群、又はオリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させた対象若しくは対象群に由来するか、又は(ii)鉄吸収障害若しくはエネルギー代謝障害を患っていないことが分かっている対象若しくは対象群、又はオリザストロビン、ジモキシストロビン、鉄欠乏食、2-メトキシエタノール及び6-アミノニコチンアミドi.p.からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と接触させていない対象若しくは対象群に由来する、スタンダードを含む、鉄吸収障害又はエネルギー代謝障害診断のためのキット。
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