本発明は、CXCR4を標的とする抗体に関して特定されたことのない新規な特性に関する。
実際に、本発明者らは、CXCR4に対するヒトまたはヒト化抗体がCXCR4発現細胞に対してエフェクター機能を誘導することができ、従って、前記細胞に対して細胞傷害作用をもたらすことを見出した。
より詳しくは、本発明は、CXCR4発現癌細胞に対するエフェクター機能の誘導のための方法に関する。
従来技術で記載されているように、転移性CXCR4発現腫瘍の処置は、遊走、浸潤、増殖または血管新生の阻害は含んでいたが、CXCR4発現細胞の直接的な死滅は含んでいなかった。これとは著しく対照的に、本発明は、CXCR4発現標的細胞の死滅をもたらす細胞傷害作用の誘導に関する。特に、本発明は、CXCR4発現癌細胞に対して1以上のエフェクター機能を誘導し、従って、前記細胞の死滅を達成することができるヒトまたはヒト化モノクローナル抗体を提供する。よって、本発明は、ヒトまたはヒト化モノクローナル抗体により、CXCR4発現癌細胞に対して1以上のエフェクター機能を誘導することによる癌治療の方法を提供する。
第1の面において、本発明は、CXCR4と結合するヒトもしくはヒト化抗体、またはそのCH2含有結合フラグメントを用いてCXCR4発現癌細胞を死滅させる方法に関し、該ヒトまたはヒト化抗体は、それぞれ配列番号1、2および3の配列を含んでなるCDR領域CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3を含んでなる重鎖可変ドメイン;ならびにそれぞれ配列番号4、5および6の配列を含んでなるCDR領域CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3を含んでなる軽鎖可変ドメインを含んでなり;前記方法は、エフェクター細胞または補体成分の存在下で前記ヒトまたはヒト化抗体の少なくとも1つのエフェクター機能を誘導する工程を含んでなる。
別の面では、本発明は、エフェクター細胞または補体成分の存在下で少なくとも1つのエフェクター機能を誘導することによりCXCR4発現癌細胞を死滅させるための組成物を製造するための、CXCR4と結合するヒトもしくはヒト化抗体、またはそのCH2含有結合フラグメントの使用に関し;該ヒトまたはヒト化抗体は、それぞれ配列番号1、2および3の配列を含んでなるCDR領域CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3を含んでなる重鎖可変ドメイン;ならびにそれぞれ配列番号4、5および6の配列を含んでなるCDR領域CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3を含んでなる軽鎖可変ドメインを含んでなる。
さらに別の面では、本発明はまた、エフェクター細胞または補体成分の存在下で少なくとも1つのエフェクター機能を誘導することによりCXCR4発現癌細胞を死滅させることに使用するための、CXCR4と結合するヒトもしくはヒト化抗体、またはそのCH2含有結合フラグメントに関し;該ヒトまたはヒト化抗体は、それぞれ配列番号1、2および3の配列を含んでなるCDR領域CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3を含んでなる重鎖可変ドメイン;ならびにそれぞれ配列番号4、5および6の配列を含んでなるCDR領域CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3を含んでなる軽鎖可変ドメインを含んでなる。
より具体的には、本発明は、CXCR4と結合するヒトもしくはヒト化抗体、またはそのCH2含有結合フラグメントを用いてCXCR4発現癌細胞を死滅させることにより癌を治療する方法に関し;該ヒトまたはヒト化抗体は、それぞれ配列番号1、2および3の配列を含んでなるCDR領域CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3を含んでなる重鎖可変ドメイン;ならびにそれぞれ配列番号4、5および6の配列を含んでなるCDR領域CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3を含んでなる軽鎖可変ドメインを含んでなり;前記方法は、エフェクター細胞または補体成分の存在下で前記ヒトまたはヒト化抗体の少なくとも1つのエフェクター機能を誘導する工程を含んでなる。
別の面では、本発明は、エフェクター細胞または補体成分の存在下で少なくとも1つのエフェクター機能を誘導することによりCXCR4発現癌細胞を死滅させることによって癌を治療するための組成物を製造するための、CXCR4と結合するヒトもしくはヒト化抗体、またはそのCH2含有結合フラグメントの使用に関し;該ヒトまたはヒト化抗体は、それぞれ配列番号1、2および3の配列を含んでなるCDR領域CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3を含んでなる重鎖可変ドメイン;ならびにそれぞれ配列番号4、5および6の配列を含んでなるCDR領域CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3を含んでなる軽鎖可変ドメインを含んでなる。
さらに別の面では、本発明はまた、エフェクター細胞または補体成分の存在下で少なくとも1つのエフェクター機能を誘導することによりCXCR4発現癌細胞を死滅させることによって癌を治療することに使用するための、CXCR4と結合するヒトもしくはヒト化抗体、またはそのCH2含有結合フラグメントに関し;該ヒトまたはヒト化抗体は、それぞれ配列番号1、2および3の配列を含んでなるCDR領域CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3を含んでなる重鎖可変ドメイン;ならびにそれぞれ配列番号4、5および6の配列を含んでなるCDR領域CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3を含んでなる軽鎖可変ドメインを含んでなる。
用語「抗体」は、本明細書において、最も広い意味で使用され、具体的には、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEなどの任意のアイソタイプのモノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、ならびに抗体フラグメントを包含する。特定の抗原と反応性のある抗体は、ファージもしくは類似のベクターにおける組換え抗体ライブラリーの選択などの組換え法によるか、または動物を抗原もしくは抗原をコードする核酸で免疫することによって作製することができる。
「ポリクローナル抗体」は、同一でない他の1以上の抗体の中で、またはその存在下で生産された抗体である。一般に、ポリクローナル抗体は、同一でない抗体を産生する数種の他のBリンパ球の存在下であるBリンパ球から生産される。通常、ポリクローナル抗体は、免疫動物から直接得ることができる。
「モノクローナル抗体」は、本明細書において、実質的に均一な抗体集団から得られた抗体であり、すなわち、この集団を形成する抗体は、自然界に存在し得る突然変異が少数存在してよいこと以外は本質的に同一である。言い換えれば、モノクローナル抗体は、単細胞クローン(例えば、ハイブリドーマ、均一な抗体をコードするDNA分子でトランスフェクトされた真核宿主細胞、均一な抗体をコードするDNA分子でトランスフェクトされた原核宿主細胞など)の増殖により生じる均一な抗体からなる。これらの抗体は、単一のエピトープに対するものであるので、特異性が高い。
「エピトープ」は、抗体が結合する抗原上の部位である。エピトープは、連続する残基によって形成されてもよく、または抗原タンパク質の折り畳みによって近接するようになる不連続の残基によって形成されてもよい。連続するアミノ酸によって形成されるエピトープは一般に変性溶媒に曝されても保持されるが、不連続アミノ酸により形成されるエピトープは一般に変性溶媒に曝されると失われる。
好ましくは、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。
典型的な抗体は、ジスルフィド結合によって連結された、2本の同一の重鎖と2本の同一の軽鎖から構成される。各重鎖および軽鎖は、定常領域と可変領域を含む。各可変領域は、「相補性決定領域」(「CDR」)または「超可変領域」と呼ばれる3つのセグメントを含み、これらが抗原のエピトープの結合を主として担っている。相補性決定領域は通常、N末端から順番に番号を付けてCDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれる(Lefranc M.-P., Immunology Today 18, 509 (1997) / Lefranc M.-P., The Immunologist, 7, 132-136 (1999) / Lefranc, M.-P., Pommie, C., Ruiz, M., Giudicelli, V., Foulquier, E., Truong, L., Thouvenin-Contet, V. and Lefranc, Dev. Comp. Immunol., 27, 55-77 (2003)参照)。これらの可変領域の中で保存性の高い部分は「フレームワーク領域」と呼ばれる。
本明細書において「VH」または「VH」は、Fv、scFv、dsFv、Fab、Fab’、またはF(ab’)2フラグメントの重鎖を含め、抗体の免疫グロブリン重鎖の可変領域を意味する。「VL」または「VL」という場合には、Fv、scFv、dsFv、Fab、Fab’、またはF(ab’)2フラグメントの軽鎖を含め、抗体の免疫グロブリン軽鎖の可変領域を意味する。
抗体定常ドメインは、抗体と抗原の結合には直接関与しないが、様々なエフェクター機能を発揮する。異なるクラスの免疫グロブリンに相当する重鎖定常領域は、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列に応じて、抗体または免疫グロブリンは、異なるクラス、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMに割り付けることができ、これらのいくつかはサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgGl、IgG2、IgG3、およびIgG4;IgAlおよびIgA2にさらに細分することができる(W. E. Paul, ed., 1993, Fundamental Immunology, Raven Press, New York, New York参照)。
抗体のパパイン消化により、Fabフラグメントと呼ばれる、それぞれ単一の抗原結合部位を含む2つの同一の抗原結合フラグメントと、残りの「Fc」フラグメントが生じる。免疫グロブリン重鎖のFcドメインの境界は様々であり得るが、ヒトIgG重鎖Fcドメインは通常、ヒンジ領域の、EUインデックスによるCys226またはPro230の位置のアミノ酸残基から、重鎖のCH2およびCH3ドメインを含むそのカルボキシル末端にわたると定義される(Edelman et al., The covalent structure of an entire gammaG immunoglobulin molecule, PNAS 1969; 63:78-85)。明瞭にするために、EUインデックスによるCys226/Pro230残基は、KabatナンバリングシステムではCys239/Pro243残基に相当し、また、IMGTではヒンジ残基Cys11/Pro15に相当することを述べておくべきであろう。
用語「ヒンジ領域」は一般に、ヒトIgG1のGlu216からPro230にわたると定義される(Burton, Mol Immunol, 22: 161-206, 1985)。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、重鎖内S−S結合を形成している最初と最後のシステイン残基を同じ位置に置くことによってIgG1配列とアラインすることができる。ヒトIgG Fc部分の「CH2ドメイン」(「Cγ2」ドメインとも呼ばれる)は通常、アミノ酸231付近からアミノ酸340付近にわたる。CH2ドメインは、別のドメインと密接に対合しないという点でユニークである。むしろ、完全な天然IgG分子の2つのCH2ドメインの間には2つのN−結合分岐糖鎖が挟まれている。この糖鎖がドメイン−ドメイン対合の代替となり、CH2ドメインの安定化を助けると推測されている(Burton, Mol Immunol, 22: 161-206, 1985)。「CH3ドメイン」は、C末端残基からFc部分のCH2ドメインまでの広がり(すなわち、IgGのアミノ酸残基341付近からアミノ酸残基447付近)を含んでなる。
モノクローナル抗体を含め、IgG免疫グロブリンは、各重鎖の定常領域がN−グリコシル化されていることが示されている。IgG免疫グロブリンは、その2本の重鎖それぞれのCH2ドメインのAsn297に単一のN−結合グリカンを含む。本明細書において、用語「N−グリカン」は、N−結合オリゴ糖、例えば、ポリペプチドのアスパラギン残基にアスパラギン−N−アセチルグルコサミン結合により付加されたものを意味する。N−グリカンは、Man3GlcNAc2(「Man」はマンノースを意味し、「Glc」はグルコースを意味し、「NAc」はN−アセチルを意味し;GlcNAcはN−アセチルグルコサミンを意味する)の一般的な五糖類コアを有する。
N−グリカンは、Man3コア構造に結合している側鎖糖(例えば、GlcNAc、ガラクトース、フコース、およびシアル酸)を含んでなる分岐(アンテナ)の数および性質が異なる。N−グリカンは、それらの分岐成分に応じて分類される(例えば、高マンノース型、複合型またはハイブリッド型)。「複合2アンテナ(complex bi-antennary)」型N−グリカンは一般に、三マンノースコアの1,3マンノース分岐に結合した少なくとも1つのGlcNAcと、1,6マンノース分岐に結合した少なくとも1つのGlcNAcを有する。複合2アンテナN−グリカンはまた、「バイセクト型(bisecting)」GlcNAcとコアフコース(「Fuc」)を含んでなる鎖内置換を持っていてもよい。「バイセクト型GlcNAc」は、成熟コア糖鎖構造のβ−1,4−マンノースに結合したGlcNAc残基である。
複合2アンテナN−グリカンはまた、場合によりシアル酸で修飾されているガラクトース(「Gal」)残基を有してもよい。オリゴ糖鎖へのシアル酸の付加はシアリルトランスフェラーゼにより触媒されるが、事前に、ガラクトシルトランスフェラーゼにより末端N−アセチルグルコサミンに1以上のガラクトース残基が付加されている必要がある。本発明によれば「シアル酸」は、5−N−アセチルノイラミン酸(NeuNAc)と5−グリコリルノイラミン酸(NeuNGc)の両方を包含する。
オリゴ糖は、0(G0)、1つ(G1)または2つ(G2)のガラクトース残基を含むとともに、最初のGlcNacと結合した1つのフコースを含むまたは含まない場合がある。これらの形態はそれぞれG0/G0F、G2/G2F、G1/G1Fとして示される(Theillaud, Expert Opin Biol Ther., Suppl 1: S15-S27, 2005の図1参照)。言い換えれば、オリゴ糖鎖の両腕がガラクトース残基を含んでなる場合、重鎖1モル当たりのガラクトースの最大モルは2であり、その構造は、コアがフコシル化されている場合にはG2F、フコシル化されていない場合にはG2と呼ばれる。一方の腕が末端ガラクトースを有する場合、その構造は、それがフコシル化されているかどうかによってG1FまたはG1と呼ばれ、末端ガラクトースが存在しない場合には、それぞれG0FまたはG0と呼ばれる。
従って、分泌されたIgG免疫グロブリンは、様々な糖残基フコース、ガラクトース、シアル酸、およびバイセクト型N−アセチルグルコサミン付加を示す糖型の不均一な混合物である。
Fcドメインは、免疫グロブリンの生物学的機能を決定する上で中心となり、これらの生物学的機能は「エフェクター機能」と呼ばれる。これらのFcドメイン介在活性は、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、および活性化マクロファージなどの免疫エフェクター細胞、また様々な補体成分によって媒介される。これらのエフェクター機能は、前記受容体または補体成分への抗体のFcドメインの結合を介した、前記エフェクター細胞の表面での受容体の活性化を含む。
「抗体依存性細胞媒介型細胞傷害作用」、「抗体依存性細胞傷害作用」または「ADCC」という表現は、特定の細胞傷害性エフェクター細胞上に存在するFc受容体(FcR)に結合したIgが、これらの細胞傷害性エフェクター細胞を抗原担持標的細胞に特異的に結合させ、かつ、その後、細胞毒素によって標的細胞を死滅させることができるという細胞傷害作用の一形態を意味する。標的細胞の溶解は細胞外であり、細胞と細胞の直接的接触が必要であり、補体は関与しない。
細胞破壊は、例えば、溶解または食作用によって起こすことができる。「細胞傷害性エフェクター細胞」は、1以上のFcRを発現してエフェクター機能を遂行する白血球である。好ましくは、これらの細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を遂行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞および好中球が挙げられ、PBMCおよびNK細胞が好ましい。エフェクター細胞はそれらの天然源、例えば、血液またはPBMCから単離することができる。細胞溶解により細胞破壊を行うことができる細胞傷害性エフェクター細胞としては、例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好酸球、マクロファージおよび好中球が挙げられる。
様々なヒト免疫グロブリンクラスのうち、ヒトIgGlおよびIgG3は、IgG2およびIgG4よりも効果的にADCCを媒介する。
有利には、本発明のヒトもしくはヒト化抗体、またはそのCH2含有フラグメントは、抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)を誘導することによりCXCR4発現癌細胞を死滅させることができる。
よって、本発明の方法の第1の好ましい態様では、前記エフェクター機能は、抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)からなる。
言い換えれば、本発明による使用は、前記エフェクター機能が抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)からなることを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、前記エフェクター機能が抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)からなることを特徴とする。
非限定例として、in vitroにおいてADCCを評価または定量するための以下の方法を挙げることができる:ヨウ化プロピジウム(PI)またはカルセイン、51Crもしくは蛍光色素、例えば、カルセイン−AM、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)、2’,7’−ビス−(2カルボキシエチル)−5−(および−6)−カルボキシフルオレセイン(BCECF)もしくはユウロピウムを用いたサイトメトリー、または乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)もしくはATPなどのサイトゾル酵素の放出の測定による。これらの方法は当業者によく知られ[例えば、Jiang et al., “Advances in the assessment and control of the effector functions of therapeutic antibodies”, Nat Rev Drug Discov., 10: 101-110, 2011およびその中の参照文献を参照]、ここでさらに詳しく述べる必要はない。
「補体依存性細胞傷害作用」または「CDC」は、本明細書において、細胞表面の抗原に抗体が特異的に結合することによって誘発された補体活性化が、血中の補体関連タンパク質群を含む一連のカスケード(補体活性化経路)を介して標的細胞の溶解を引き起こす機構を意味する。さらに、補体の活性化によって生成されたタンパク質フラグメントが免疫細胞の遊走および活性化を誘導することができる。補体依存性細胞傷害作用(CDC)の活性化の第一段階は、抗体の少なくとも2つのFcドメインにC1qタンパク質が結合することからなる。「C1q」は、免疫グロブリンのFc領域に対する結合部位を含むポリペプチドである。C1qは2つのセリンプロテアーゼC1rおよびC1sとともに、補体依存性細胞傷害(CDC)経路の第1の成分である複合体C1を形成する。
本発明のもう1つの有利な態様では、ヒトもしくはヒト化抗体、またはそのCH2含有フラグメントは、補体依存性細胞傷害作用(CDC)を誘導することによりCXCR4発現癌細胞を死滅させることができる。
よって、本発明はまた、エフェクター機能が補体依存性細胞傷害作用(CDC)からなる、上記のような方法に関する。
言い換えれば、本発明による使用は、前記エフェクター機能が補体依存性細胞傷害作用(CDC)からなることを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、前記エフェクター機能が補体依存性細胞傷害作用(CDC)からなることを特徴とする。
CDCによる有核細胞の細胞傷害作用は、トリパンプルー排除、ヨウ化プロピジウム(PI)を用いたフローサイトメトリー、51Cr放出、テトラゾリウム塩MTTの還元、酸化還元色素アラマーブルー、細胞内ATPの損失、CellTiter−Glo、LDH放出またはカルセイン−AM放出などのいくつかの方法によってin vitroで定量することができる。これらの方法は当業者によく知られ[例えば、Jiang et al., “Advances in the assessment and control of the effector functions od therapeutic antibodies”, Nat Rev Drug Discov., 10: 101-110, 2011およびその中の参照文献を参照]、ここでさらに詳しく述べる必要はない。
本発明のさらに有利な態様では、抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)と補体依存性細胞傷害作用(CDC)の両方が誘導され、すなわち、ヒトもしくはヒト化抗体、またはそのCH2含有フラグメントは、抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)と補体依存性細胞傷害作用(CDC)の両方を誘導することによりCXCR4発現癌細胞を死滅させることができる。
好ましい態様では、本発明の方法のエフェクター機能は、抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)および補体依存性細胞傷害作用(CDC)からなる。
言い換えれば、本発明による使用は、前記エフェクター機能が抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)および補体依存性細胞傷害作用(CDC)からなることを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、前記エフェクター機能が抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)および抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)からなることを特徴とする。
抗体のこれらの2つのエフェクター機能は、ADCCの場合には、免疫細胞表面の特異的受容体、本質的には、NK細胞、マクロファージ、単球上で発現されるFcγRIIIa(FcγRIIIAとも呼ばれる)およびFcγRIIa(FcγRIIAとも呼ばれる)、ならびにCDCの場合には補体カスケードタンパク質C1qへの、抗体Fc部分の結合に直接的に関連している。
抗体のFc部分とFcγRおよびC1qとの間の厳密な相互作用は厳密にマッピングされており、この相互作用に関与する主要なFcドメインは、CH2ドメインに相当する。このFc部分とFc受容体の間の親和性は、誘発される免疫応答の程度と直接関連している。
上記のように、CXCR4に対するヒトまたはヒト化抗体は、CXCR4発現細胞に対してエフェクター機能を誘導することができ、従って、前記細胞に対して細胞傷害作用をもたらす。エフェクター機能の誘導が高いほど、CXCR4発現細胞に対する細胞傷害作用が大きいことは明らかである。抗体によっては自然に高いADCCおよび/またはCDC活性を示すものがあるが、そうでない場合には、抗体免疫応答、より詳しくは、ADCCおよび/またはCDCを増強するためにCXCR4に対するヒトまたはヒト化抗体を操作する必要があるかもしれない。このような操作された抗体も本発明の範囲に包含される。
抗体の免疫応答、より詳しくは、ADCCおよび/またはCDCを操作および増強するためにはいくつかの方法があるが、それらのほとんどは、ADCCに関しては、同族FcγRに対するFc部分の結合を直接増加させることに基づく。主要な目標は、ヒトFcγRaおよびヒトFcγRIIaに対する結合を増加させ、かつ、ヒトFcγRIIb(免疫応答を低下させる阻害的受容体)に対する結合を低下させることである。これは、Fc部分内の個々のアミノ酸残基を変異させるか、または無フコシル化グリカン部分を増やすためにCH2ドメインのアスパラギン297に結合しているグリカン部分を改変するかのいずれかによって達成することができる。糖鎖工学は、例えば、抗体を産生する宿主細胞においてFUT8遺伝子を遮断すること(siRNA、KO,など; Toyohide Shinkawa et al., The absence of fucose but not the presence of galactose or bisecting N-acetylglucosamine of human IgG1 complex-type oligosaccharides shows the critical role of enhancing antibody-dependent cellular cytotoxicity. J. Biol. Chem 2003; 278: 3466-3473)、または抗体産生細胞においてGlcNAc IIIトランスフェラーゼを過剰発現させること(例えば、Pablo Umana et al. Engineered glycoforms of an antineuroblastoma IgG1 with optimized antibody-dependent cellular cytotoxicity activity. Nat Biotechnol 1999;17:176-180参照)によって達成することができる。
このような抗体は、抗体の定常ドメインにおいて単一置換または多重置換を行ってFc受容体とその相互作用を高めることによって得ることができる。このような突然変異体を設計するための方法は、Lazar et al. (2006, PNAS, 103(11): 4005-4010)およびOkazaki et al. (2004, J. MoI. Biol. 336(5): 1239-49)に見出すことができる。
改良型の抗体の生産のためには、特に操作を行った細胞株を使用することもできる。特に、これらの細胞株はグリコシル化経路の調節が変更されており、フコシル化の低い、またさらには完全に脱フコシル化された抗体が得られる。このような細胞株およびそれらを操作するための方法は例えばShinkawa et al. (2003, J. Biol. Chem. 278(5): 3466-3473), Ferrara et al. (Biotechnol. Bioeng. 93(5): 851-61)に開示されている。
ADCCを高める他の方法は、Li et al. (2006, Nat Biotechnol. 24(2):210-5)、Stavenhagen et al. (2008, Advan. Enzyme Regul. 48:152-164)、Shields et al. (2001, J. Biol. Chem., 276(9):6591-6604)およびWO2008/006554にも記載されている。
CDCを高める方法は、Idusogie et al. (2001, J Immunol. 166(4):2571-5)、Dall'Acqua et al. (2006, J Immunol, 177(2):1129-38)、Michaelsen et al. (1990, Scand J Immunol, 32(5):517-28)、Brekke et al. (1993, Mol Immunol, 30(16):1419-25)、Tan et al. (1990, Proc; Natl. Acad. Sci. USA, 87:162-166)およびNorderhaug et al. (1991, Eur J Immunol, 21(10):2379-84)に記載されている。
十分に記載されている技術として、協和が開発した、CDCが増強されたキメラヒトIgG1/IgG3 Fc部分を作製することからなる補体技術がある(例えば、WO2007/011041参照)。
ADCCおよびCDCを増強する方法を記載している参照文献としては、Natsume et al. (2008, Cancer Res. 68(10): 3863-3872)がある。これらの各参照文献の開示は、本発明の相互参照に含まれる。
ADCCおよび/またはCDCの増強は、それがCXCR4発現癌細胞の死滅をもたらし、それ自体、癌の再発の危険性を明らかに制限するので癌治療の分野で特に注目され、CXCR4標的治療が中止されるべきであることは当業者に自明である。
「CH2含有結合フラグメント」という表現は、親抗体の6つのCDRと、エフェクター機能の誘導を担っていることが知られている少なくともCH2ドメインとを含んでなる抗体の任意のフラグメントまたは部分と理解しなければならない。最も好ましい実施形態では、このCH2は二量体でなければならず、すなわち、2コピーのCH2を含んでなる。
別の態様では、CH2含有結合フラグメントは、親抗体の6つのCDRと少なくともCH2およびヒンジドメインとを含んでなる。
別の態様では、CH2含有結合フラグメントは、親抗体の6つのCDRと少なくともCH1、ヒンジおよびCH2ドメインとを含んでなる。
別の態様では、CH2含有結合フラグメントは、親抗体の6つのCDRと少なくともCH1およびCH2ドメインとを含んでなる。
別の態様では、CH2含有結合フラグメントは、親抗体の6つのCDRと少なくともCH1、CH2およびCH3ドメインとを含んでなる。
さらに別の態様では、CH2含有結合フラグメントは、親抗体の6つのCDRと少なくともCH1、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインとを含んでなり、すなわち、全長Fcである。
より好ましくは、本発明は、遺伝子組換えまたは化学合成により得られたヒト化抗体、それらのCH2含有結合フラグメントを含んでなる。
好ましい態様によれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、モノクローナル抗体からなることを特徴とする。
言い換えれば、本発明の方法は、IMGTに従い、以下の3つのCDR、それぞれCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3を含んでなる、ヒトもしくはヒト化抗体またはCH2含有結合フラグメントの使用を含んでなり、ここで、
・CDR−H1は、配列番号1の配列、または配列番号1の配列と最適なアラインメントの後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列を含んでなり;
・CDR−H2は、配列番号2の配列、または配列番号2の配列と最適なアラインメントの後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列を含んでなり;および
・CDR−H3は、配列番号3の配列、または配列番号3の配列と最適なアラインメントの後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列を含んでなる。
いっそうより好ましくは、本発明の方法は、IMGTに従い、以下の3つのCDR、それぞれCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3を含んでなる軽鎖を含んでなる、ヒトもしくはヒト化抗体、またはCH2含有結合フラグメントの使用を含んでなり、ここで、
・CDR−L1は、配列番号4の配列、または配列番号4の配列と最適なアラインメントの後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列を含んでなり;
・CDR−L2は、配列番号5の配列、または配列番号5の配列と最適なアラインメントの後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列を含んでなり;および
・CDR−L3は、配列番号6の配列、または配列番号6の配列と最適なアラインメントの後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列を含んでなる。
本明細書において、用語「ポリペプチド」、「ポリペプチド配列」、「ペプチド」は互換性がある。
IMGT独自ナンバリングは、抗原受容体、鎖型、または種に関わらず可変ドメインを比較するために定義されたものである[Lefranc M.-P., Immunology Today 18, 509 (1997) / Lefranc M.-P., The Immunologist, 7, 132-136 (1999) / Lefranc, M.-P., Pommie, C, Ruiz, M., Giudicelli, V., Foulquier, E., Truong, L., Thouvenin-Contet, V. and Lefranc, Dev. Comp. Immunol., 27, 55-77 (2003)]。IMGT独自ナンバリングでは、保存されているアミノ酸は常に同じ位置になる:例えばシステイン23(1st−CYS)、トリプトファン41(CONSERVED−TRP)、疎水性アミノ酸89、システイン104(2nd−CYS)、フェニルアラニンまたはトリプトファン118(J−PHEまたはJ−TRP)である。IMGT独自ナンバリングは、フレームワーク領域(FR1−IMGT:1〜26位、FR2−IMGT:39〜55位、FR3−IMGT:66〜104位およびFR4−IMGT:118〜128位)および相補性決定領域:CDR1−IMGT:27〜38、CDR2−IMGT:56〜65およびCDR3−IMGT:105〜117の標準化された境界を与える。ギャップは非占有位置を表すので、CDR−IMGT長(かぎ括弧中に示されドットで区切られる。例えば[8.8.13])は重要な情報となる。IMGT独自ナンバリングは、IMGT Colliers de Perlesと呼ばれる2次元グラフィック表示[Ruiz, M. and Lefranc, M.-P., Immunogenetics, 53, 857-883 (2002) / Kaas, Q. and Lefranc, M.-P., Current Bioinformatics, 2, 21-30 (2007)]およびIMGT/3Dstructure−DBの3次元構造[Kaas, Q., Ruiz, M. and Lefranc, M.-P., T cell receptor and MHC structural data. Nucl. Acids. Res., 32, D208-D210 (2004)]に用いられる。
本発明の意味において、核酸またはアミノ酸の2つの配列間の「同一性パーセンテージ」とは、最適なアラインメントの後に得られる、比較される2つの配列間で同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基のパーセンテージを意味し、このパーセンテージは完全に統計的なものであり、2つの配列の間の差はその全長にわたってランダムに分布する。2つの核酸またはアミノ酸配列の比較は、従来、それらを最適にアラインした後に配列を比較することによって行われ、該比較は、セグメントによってまたは「アラインメントウィンドウ」を用いることによって行うことができる。比較のための配列の最適なアラインメントは、手作業での比較の他に、Smith and Waterman (1981) [Ad. App. Math. 2:482]のローカルホモロジーアルゴリズムの手段、Neddleman and Wunsch (1970) [J. Mol. Biol. 48:443]のローカルホモロジーアルゴリズムの手段、Pearson and Lipman (1988) [Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444]の類似性検索法の手段、またはこれらのアルゴリズムを用いたコンピューターソフトウェア(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIのGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA、または比較ソフトウェアBLAST NRもしくはBLAST P)の手段によって行うことができる。
2つの核酸またはアミノ酸配列間の同一性パーセンテージは、2つの最適にアラインされた配列を比較することにより決定され、ここで、比較する核酸またはアミノ酸配列は、2つの配列間での最適なアラインメントのための参照配列と比較して付加または欠失を持ち得る。同一性パーセンテージは、2つの配列間で、好ましくは2つの完全配列間で、アミノ酸ヌクレオチドまたは残基が同一の箇所の数を決定し、この同一箇所の数をアラインメントウィンドウ中の箇所の総数で割り、その結果に100を掛けて2つの配列間の同一性パーセンテージを得ることにより計算される。
例えば、サイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.htmlで利用可能なBLASTプログラム「BLAST 2 Sequences」(Tatusova et al., "Blast 2 sequences - a new tool for comparing protein and nucleotide sequences", FEMS Microbiol., 1999, Lett. 174:247-250)をデフォルトパラメーター(特にパラメーター「オープン・ギャップ・ペナルティ」:5、「エクステンション・ギャップ・ペナルティ」:2について;選択されるマトリックスは、例えばプログラムによって提案される「BLOSUM62」マトリックス)とともに使用することができ、このプログラムにより、比較する2つの配列間の同一性パーセンテージが直接計算される。
参照アミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を示すアミノ酸配列の好ましい例として、参照配列、特定の修飾、特に少なくとも1つのアミノ酸の欠失、付加もしくは置換、末端切断または伸張を含むものが挙げられる。1以上の連続または不連続アミノ酸の置換の場合、置換は、被置換アミノ酸が「同等な」アミノ酸により置換される置換が好ましい。ここで、「同等なアミノ酸」という表現は、対応する抗体および以下に定義される具体例の生物活性を改変することなく、構造的アミノ酸の1つを置換し得る任意のアミノ酸を示すものとする。
同等なアミノ酸は、置換されるアミノ酸とのそれらの構造的相同性に基づくか、または生成される種々の抗体間の生物活性の比較試験の結果に基づいて決定することができる。
非限定的例として、下表1に、対応する修飾抗体の生物活性に有意な改変を生じずに実施し得る置換をまとめる。なお、同じ条件下で逆の置換も当然可能である。
当該技術分野の現状では、6つのCDR間で最大の可変性(長さおよび組成)は3つの重鎖CDR、より具体的にはこの重鎖のCDR−H3に見られることが当業者に知られている。従って、本発明の抗体の、またはそれらの誘導化合物もしくは機能的フラグメントの1つの、好ましい特徴的CDRが重鎖の3つのCDRとなることは明らかであろう。
本発明の別の実施形態は、ヒトもしくはヒト化抗体、またはCH2含有結合フラグメントの使用を開示し、それは、
以下の3つのCDR:
配列番号1の配列、または配列番号1の配列と最適なアラインメントの後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−H1;
配列番号2の配列、または配列番号2の配列と最適なアラインメントの後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−H2;
配列番号3の配列、または配列番号3の配列と最適なアラインメントの後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−H3
を含んでなる重鎖と;
以下の3つのCDR:
配列番号4の配列、または配列番号4の配列と最適なアラインメントの後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−L1;
配列番号5の配列、または配列番号5の配列と最適なアラインメントの後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−L2;
配列番号6の配列、または配列番号6の配列と最適なアラインメントの後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する配列のCDR−L3
を含んでなる軽鎖
とを含んでなる。
より明瞭にするために、下表2aに本発明の抗体hz515H7のCDRに相当する種々のアミノ酸配列をまとめ、表2bに本発明のヒト化抗体の種々の変異体の可変ドメインおよび全長配列に相当する種々のアミノ酸配列をまとめる。
一例として、誤解を避けるため、「VH1」という表現は、「VH変異体1(VH Variant 1)」、「VH変異体1(VH variant 1)」、「VH Var 1」または「VH var 1」という表現と同等である。
本発明に使用される抗体は、2008年6月25日に番号I−4019としてFrench collection for microorganism cultures (CNCM, Institut Pasteur, Paris, France)に提出されたマウスハイブリドーマにより産生されたマウス抗体のヒト化から得られたものであることをここで述べることができる。前記ハイブリドーマは、Balb/C免疫マウス脾細胞と骨髄腫Sp 2/O−Ag 14株の細胞の融合によって得られたものである。
本明細書で515H7と呼ばれるマウスモノクローナル抗体は、2008年6月25日に番号I−4019としてCNCMに提出されたハイブリドーマにより分泌される。
好ましい態様では、本発明の方法で使用される抗体はヒト化抗体である。
本明細書において、用語「ヒト化抗体」は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体を意味する。「キメラ抗体」は、本明細書において、定常領域またはその一部が変更、置換、または交換されて、その結果、可変領域が異種の、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する定常領域と結合される抗体である。「キメラ抗体」はまた、可変領域、またはその一部が変更、置換、または交換されて、その結果、定常領域が異種の、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する可変領域と結合される抗体も意味する。
特定の実施形態では、抗体、もしくは抗原結合フラグメント、変異体、またはその誘導体の、可変領域および定常領域の両方が完全にヒトである。完全ヒト抗体は、当技術分野で公知の技術を用いて作製することができる。例えば、特定の抗原に対する完全ヒト抗体は、抗原刺激に応答してそのような抗体を産生するように改変されているが、その内在遺伝子座は無能にされているトランスジェニック動物に抗原を投与することによって調製することができる。このような抗体を作製するために使用可能な技術の例は、米国特許第6,150,584号、同第6,458,592号、同第6,420,140号に記載されている。他の技術も当技術分野で公知である。完全ヒト抗体も同様に、種々のディスプレー技術、例えば、ファージディスプレーまたは他のウイルスディスプレー系によって生産することができる。米国特許第4,444,887号、同第4,716,111号、同第5,545,806号、および同第5,814,318号、ならびに国際特許出願公開WO98/46645、WO98/50433、WO98/24893、WO98/16654、WO96/34096、WO96/33735、およびWO91/10741も参照(前記参照文献は引用することによりそれらの全内容が本明細書の一部とされる)。
「ヒト化抗体」は、本明細書において、非ヒト起源の抗体に由来するCDR領域を含み、その抗体分子の他の部分は1つ(または複数)のヒト抗体に由来する抗体を意味する。さらに、骨格セグメント残基(FRと呼ばれる)のいくつかは、結合親和性を保存するように改変することができる(Jones et al., Nature, 321:522-525, 1986; Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536, 1988; Riechmann et al., Nature, 332:323-327, 1988)。
ヒト化の目的は、その抗体の完全な抗原結合親和性および特異性を保持しつつ、ヒトに導入するためにマウス抗体などの異種抗体の免疫原性を軽減することである。本発明のヒト化抗体またはそのフラグメントは、当業者に公知の技術によって調製することができる(例えば、Singer et al., J. Immun., 150:2844-2857, 1992; Mountain et al., Biotechnol. Genet. Eng. Rev., 10:1-142, 1992;およびBebbington et al., Bio/Technology, 10:169-175, 1992に記載されているものなど)。このようなヒト化抗体は、in vitroにおける診断、またはin vivoにおける予防的および/もしくは治療的処置を含む方法におけるそれらの使用に好ましい。他のヒト化技術も当業者に公知であり、例えば、欧州特許第0451261号、欧州特許第0682040号、欧州特許第0939127号、欧州特許第0566647号、または米国特許第5,530,101号、米国特許第6,180,370号、米国特許第5,585,089号および米国特許第5,693,761号においてPDLにより記載されている「CDRグラフト」技術がある。米国特許第5,639,641号または同第6,054,297号、同第5,886,152号および同第5,877,293号も引用することができる。
拡大解釈すれば、本特許明細書の場合、キメラ抗体c151H7は、「ヒト化抗体」という表現に含まれる。より詳しくは、c515H7は、配列番号70の配列(配列番号72のヌクレオチドに相当)の重鎖、および配列番号71の配列(配列番号73のヌクレオチドに相当)の軽鎖を含んでなることを特徴とする。
本発明は、上記のマウス抗体515H7に由来するヒト化抗体に関し、前記抗体はそれらの重鎖および/または軽鎖可変ドメインの配列により定義される。実際に、本明細書記載のヒト化抗体は総て本発明の方法において使用可能であり、すなわち、それらはエフェクター細胞もしくは補体成分の存在下で少なくとも1つのエフェクター機能を誘導することによりCXCR4発現癌細胞を死滅させるために使用可能であり、またはエフェクター細胞もしくは補体成分の存在下で少なくとも1つのエフェクター機能を誘導することによりCXCR4発現癌細胞を死滅させることによって癌を治療するために使用可能である。
本発明の方法の好ましい態様では、ヒトまたはヒト化抗体は、配列番号7〜10の配列から選択される重鎖可変ドメインおよび配列番号11〜17の配列から選択される軽鎖可変ドメインを含んでなるヒト化抗体からなる。
言い換えれば、本発明による使用は、前記ヒトまたはヒト化抗体が、配列番号7〜10の配列から選択される重鎖可変ドメインおよび配列番号11〜17の配列から選択される軽鎖可変ドメインを含んでなるヒト化抗体からなることを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、配列番号7〜10の配列から選択される重鎖可変ドメインおよび配列番号11〜17の配列から選択される軽鎖可変ドメインを含んでなるヒト化抗体からなることを特徴とする。
本発明による好ましいヒト化抗体は、配列番号8の配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号11〜17の配列から選択される軽鎖可変ドメインを含んでなるヒト化抗体からなる。
さらに、本発明による好ましいヒト化抗体は、配列番号7〜10の配列から選択される重鎖可変ドメインおよび配列番号13の配列の軽鎖可変ドメインを含んでなるヒト化抗体からなる。
本発明はまた、上記のマウス抗体515H7に由来するヒト化抗体に関し、前記抗体は、それらの全長重鎖および/または軽鎖の配列によって定義される。
本発明の方法の好ましい態様では、ヒトまたはヒト化抗体は、配列番号18〜21の配列から選択される重鎖および配列番号22〜28の配列から選択される軽鎖を含んでなるヒト化抗体からなる。
言い換えれば、本発明による使用は、前記ヒトまたはヒト化抗体が、配列番号18〜21の配列から選択される重鎖および配列番号22〜28の配列から選択される軽鎖を含んでなるヒト化抗体からなることを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、配列番号18〜21の配列から選択される重鎖および配列番号22〜28の配列から選択される軽鎖を含んでなるヒト化抗体からなることを特徴とする。
本発明による好ましいヒト化抗体は、配列番号19の配列の重鎖および/または配列番号22〜28の配列から選択される軽鎖を含んでなるヒト化抗体からなる。
本発明による別の好ましいヒト化抗体は、配列番号18〜21の配列から選択される重鎖および/または配列番号24の配列の軽鎖を含んでなるヒト化抗体からなる。
好ましい態様では、本発明は、配列番号8の配列の重鎖可変領域、および配列番号13の配列の軽鎖可変領域を含んでなる、ヒト化抗体Hz515H7 VH1 D76N VL2、またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントに関する。
別の好ましい態様では、本発明は、配列番号19の配列の重鎖、および配列番号24の配列の軽鎖を含んでなる、ヒト化抗体Hz515H7 VH1 D76N VL2、またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントに関する。
別の好ましい態様では、本発明は、配列番号8の配列の重鎖可変領域、および配列番号14の配列の軽鎖可変領域を含んでなる、ヒト化抗体Hz515H7 VH1 D76N VL2.1、またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントに関する。
別の好ましい態様では、本発明は、配列番号19の配列の重鎖、および配列番号25の配列の軽鎖を含んでなる、ヒト化抗体Hz515H7 VH1 D76N VL2.1、またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントに関する。
別の好ましい態様では、本発明は、配列番号8の配列の重鎖可変領域、および配列番号15の配列の軽鎖可変領域を含んでなる、ヒト化抗体Hz515H7 VH1 D76N VL2.2、またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントに関する。
別の好ましい態様では、本発明は、配列番号19の配列の重鎖、および配列番号26の配列の軽鎖を含んでなる、ヒト化抗体Hz515H7 VH1 D76N VL2.2、またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントに関する。
別の好ましい態様では、本発明は、配列番号8の配列の重鎖可変領域、および配列番号16の配列の軽鎖可変領域を含んでなる、ヒト化抗体Hz515H7 VH1 D76N VL2.3、またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントに関する。
別の好ましい態様では、本発明は、配列番号19の配列の重鎖、および配列番号27の配列の軽鎖を含んでなる、ヒト化抗体Hz515H7 VH1 D76N VL2.3、またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントに関する。
別の好ましい態様では、本発明は、配列番号9の配列の重鎖可変領域、および配列番号11の配列の軽鎖可変領域を含んでなる、ヒト化抗体 Hz515H7 VH1 V48L D76N VL1、またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントに関する。
別の好ましい態様では、本発明は、配列番号20の配列の重鎖、および配列番号22の配列の軽鎖を含んでなる、ヒト化抗体Hz515H7 VH1 V48L D76N VL1、またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントに関する。
別の好ましい態様では、本発明は、配列番号9の配列の重鎖可変領域、および配列番号12の配列の軽鎖可変領域を含んでなる、ヒト化抗体Hz515H7 VH1 V48L D76N VL1 T59A E61D、またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントに関する。
別の好ましい態様では、本発明は、配列番号20の配列の重鎖、および配列番号23の配列の軽鎖を含んでなる、ヒト化抗体Hz515H7 VH1 V48L D76N VL1 T59A E61D、またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントに関する。
別の好ましい態様では、本発明は、配列番号7の配列の重鎖可変領域、および配列番号11の配列の軽鎖可変領域を含んでなる、ヒト化抗体Hz515H7 VH1 VL1、またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントに関する。
別の好ましい態様では、本発明は、配列番号18の配列の重鎖、および配列番号22の配列の軽鎖を含んでなる、ヒト化抗体Hz515H7 VH1 VL1、またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントに関する。
上記で例示されたVH/VLの組合せは限定的なものではないと理解すべきである。当然のことながら、当業者ならば、過度の負担なく、また、発明的な技術を用いずに、本明細書に開示されているVHおよびVLを総て再編成することができる。
本発明の方法のより好ましい態様では、前記ヒトまたはヒト化抗体は、配列番号8の配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号13の配列の軽鎖可変ドメインを含んでなるヒト化抗体からなる。
言い換えれば、本発明による使用は、前記ヒトまたはヒト化抗体が、配列番号8の配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号13の配列の軽鎖可変ドメインを含んでなるヒト化抗体からなることを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、配列番号8の配列の重鎖可変ドメインおよび配列番号13の配列の軽鎖可変ドメインを含んでなるヒト化抗体からなることを特徴とする。
上記の種々の配列について、好ましい抗体(排他的なものではない)は、その全長重鎖および軽鎖配列の配列によっても記載される。
本発明の方法のより好ましい態様では、ヒトまたはヒト化抗体は、配列番号19の配列の重鎖および配列番号24の配列の軽鎖を含んでなるヒト化抗体からなる。
言い換えれば、本発明による使用は、前記ヒトまたはヒト化抗体が、配列番号19の配列の重鎖および配列番号24の配列の軽鎖を含んでなるヒト化抗体からなることを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、配列番号19の配列の重鎖および配列番号24の配列の軽鎖を含んでなるヒト化抗体からなることを特徴とする。
当業者には、本発明の抗体はエフェクター機能を提示するために必要な構造エレメントを提供しなければならないことが自明であろう。より詳しくは、本抗体は、ADCCおよび/またはCDCを可能とするために好適なアイソタイプのものでなければならない。例えば、種々のヒト免疫グロブリンクラスのうち、ヒトIgGlおよびIgG3は、IgG2およびIgG4よりも効果的にADCCを媒介することが知られている。他方、CDCに関する効力の順は、IgG3≧IgG1>>IgG2≒IgG4である(Niwa et al., J Immunol Methods, 306: 151-160, 2005)。
本発明の方法の好ましい態様では、前記ヒトまたはヒト化抗体はIgG1アイソタイプのものである。
言い換えれば、本発明による使用は、前記ヒトまたはヒト化抗体はIgG1アイソタイプのものであることを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、IgG1アイソタイプのものであることを特徴とする。
特定の態様では、本発明は、IgG1 Hz515H7 VH1 D76N VL2からなる本発明の好ましい抗体のCH2含有結合フラグメントに関する。
より詳しくは、好ましいCH2含有結合フラグメントは、i)それぞれ配列番号1、2および3の配列を含んでなるCDR領域CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3を含んでなる重鎖可変ドメイン;ii)それぞれ配列番号4、5および6の配列を含んでなるCDR領域CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3を含んでなる軽鎖可変ドメイン;ならびにiii)少なくとも、配列番号60の配列を含んでなるCH2ドメインを含んでなるフラグメントからなる。
本発明の方法の好ましい態様では、CH2含有結合フラグメントは、それぞれ配列番号1、2および3を含んでなる3つの重鎖CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3;それぞれ配列番号4、5および6を含んでなる3つの軽鎖CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3;ならびに少なくとも、配列番号60を含んでなるCH2ドメインを含んでなるフラグメントからなる。
言い換えれば、本発明による使用は、前記CH2含有結合フラグメントが、それぞれ配列番号1、2および3を含んでなる3つの重鎖CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3;それぞれ配列番号4、5および6を含んでなる3つの軽鎖CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3;ならびに少なくとも、配列番号60を含んでなるCH2ドメインを含んでなるフラグメントを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、前記CH2含有結合フラグメントが、それぞれ配列番号1、2および3を含んでなる3つの重鎖CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3;それぞれ配列番号4、5および6を含んでなる3つの軽鎖CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3;ならびに少なくとも、配列番号60を含んでなるCH2ドメインを含んでなるフラグメントからなることを特徴とする。
別の好ましいCH2含有結合フラグメントは、i)それぞれ配列番号1、2および3の配列を含んでなるCDR領域CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3を含んでなる重鎖可変ドメイン;ii)それぞれ配列番号4、5および6の配列を含んでなるCDR領域CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3を含んでなる軽鎖可変ドメイン;iii)少なくとも配列番号60の配列を含んでなるCH2ドメイン;ならびにiv)少なくとも配列番号61の配列を含んでなるヒンジドメインを含んでなるフラグメントからなる。
さらに別の好ましいCH2含有結合フラグメントは、i)それぞれ配列番号1、2および3の配列を含んでなるCDR領域CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3を含んでなる重鎖可変ドメイン;ii)それぞれ配列番号4、5および6の配列を含んでなるCDR領域CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3を含んでなる軽鎖可変ドメイン;iii)少なくとも配列番号60の配列を含んでなるCH2ドメイン;iv)少なくとも配列番号61の配列を含んでなるヒンジドメイン;ならびにv)少なくとも配列番号62の配列を含んでなるCH1ドメインを含んでなるフラグメントからなる。
さらに別の好ましいCH2含有結合フラグメントは、i)それぞれ配列番号1、2および3の配列を含んでなるCDR領域CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3を含んでなる重鎖可変ドメイン;ii)それぞれ配列番号4、5および6の配列を含んでなるCDR領域CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3を含んでなる軽鎖可変ドメイン;iii)少なくとも配列番号60の配列を含んでなるCH2ドメイン;iv)配列番号61の配列を少なくとも含んでなるヒンジドメイン;v)少なくとも配列番号62の配列を含んでなるCH1ドメイン;およびvi)少なくとも配列番号63の配列を含んでなるCH3ドメインを含んでなるフラグメントからなる。
本発明のさらに別の好ましい態様では、好ましいCH2含有結合フラグメントは、i)それぞれ配列番号1、2および3の配列を含んでなるCDR領域CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3を含んでなる重鎖可変ドメイン;ii)それぞれ配列番号4、5および6の配列を含んでなるCDR領域CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3を含んでなる軽鎖可変ドメイン;ならびにiii)少なくとも配列番号64の配列を含んでなる全長Fcドメインを含んでなるフラグメントからなる。
より明確にするために、下表3に、抗体Hz515H7 VH1 D76N VL2の各ドメインの配列を示す。
これらのエレメントに基づき、本出願に記載のいずれの配列に由来するCH2含有結合フラグメントも、過度な実験を行うことなく生成することが当業者には自明である。結果として、他のいずれのCH2含有結合フラグメントも、本出願の範囲の一部とみなされるべきである。
下表4aに、本発明の抗体hz515H7のCDRに相当する最適化ヌクレオチド配列をまとめ、表4bに、本発明のヒト化抗体の種々の変異体の可変ドメインおよび全長配列に相当する種々の最適化ヌクレオチド配列をまとめる。
「最適化配列」という表現は、対象タンパク質(本明細書では抗体の可変ドメイン)の構成的アミノ酸をコードするコドンが、専用の細胞型(本明細書では哺乳動物細胞)における翻訳機構によってよりよく認識されるように改変されていることを意味する。実際に、発現に用いる遺伝子および細胞の供給源に応じ、コドンを最適化すれば、コードされる本発明のポリペプチドの発現を高める助けとなり得ることが当業者に知られている。「コドンの最適化」とは、宿主細胞におけるコドンの使用に合わせて配列を改良する、本発明のポリペプチドのコード配列に対する改変を意味する。コドン使用表は、例えばCHO細胞などの哺乳動物細胞、ならびに多様な他の生物に関して当技術分野で公知である。さらに、最適化はまた、G/C含量適応および安定なRNA二次構造の阻害を含むポリヌクレオチド配列の改変によっても達成することができる(例えば、Kim et al., 1997 Gene199(1-2):293-301参照)。
本明細書において互換的に使用される「核酸」、「核酸配列(nucleic sequence)」、「核酸配列(nucleic acid sequence)」、「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」および「ヌクレオチド配列」という用語は、改変型または非改変型である、核酸のフラグメントまたは領域を定義し、非天然ヌクレオチドを含んでも含まなくてもよく、二本鎖DNA、一本鎖DNA、または前記DNAの転写産物のいずれかである、ヌクレオチドの正確な配列を意味する。
本発明の核酸配列は総て単離および/または精製されており、すなわち、それらは例えばコピーにより直接または間接的にサンプリングされたものであり、それらの環境は少なくとも部分的に改変されている。「好ましい配列と最適なアラインメント後に少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性パーセンテージを示す核酸配列」とは、参照核酸配列に関して、特定の改変、例えば特に欠失、末端切断、伸張、キメラ融合および/または置換(特に、点での)を示す核酸配列を意味する。好ましくは、これらは、参照配列と同じアミノ酸配列をコードする配列であり、これは、遺伝コードの変性、または、好ましくは高ストリンジェントな条件(特に、以下に定義される)下で、参照配列と特異的にハイブリダイズし得る相補的配列に関連する。
高ストリンジェント条件下でのハイブリダイゼーションとは、2つの相補的DNAフラグメント間でハイブリダイゼーションが維持されるように温度およびイオン強度に関連する条件が選択されることを意味する。単に例として、上記のポリヌクレオチドフラグメントを定義するためのハイブリダイゼーション工程の高ストリンジェント条件は有利には以下の通りである。
DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションは2工程で行われる:(1)5×SSC(1×SSCは0.15M NaCl+0.015Mクエン酸ナトリウムの溶液に相当)、50%ホルムアミド、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、10×デンハー液、5%デキストラン硫酸および1%サケ精子DNAを含有するリン酸バッファー(20mM、pH7.5)中、42℃で3時間のプレハイブリダイゼーション;(2)プローブの長さに応じた温度(すなわち、長さが100ヌクレオチドを超えるプローブでは42℃)で20時間の一次ハイブリダイゼーション、続いて、2×SSC+2%SDS中、20℃で20分間の洗浄2回、0.1×SSC+0.1%SDS中、20℃で20分間の洗浄1回。最後の洗浄を、長さが100ヌクレオチドを超えるプローブでは60℃で30分間、0.1×SSC+0.1%SDS中で行う。当業者ならば、所定サイズのポリヌクレオチドについての上記高ストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、Sambrook, et al. (Molecular cloning: a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory; 3rd edition, 2001)に記載されている手順に従って、より長いまたはより短いオリゴヌクレオチドに適合させることができる。
本発明のヒトもしくはヒト化抗体の重鎖および/または軽鎖、またはそのCH2含有結合フラグメントを発現させるためには、前記重鎖および/または軽鎖をコードするポリヌクレオチドを、前記遺伝子が転写および翻訳制御配列と動作可能なように連結されるように発現ベクターに挿入する。
「動作可能なように連結される」配列には、対象遺伝子に隣接している発現制御配列とトランスでまたは遠隔で対象遺伝子を制御する働きをする発現制御配列の両方が含まれる。本明細書において、用語「発現制御配列」は、それらが連結されたコード配列の発現およびプロセシングを果たすために必要なポリヌクレオチド配列を意味する。発現制御配列には、適当な転写開始配列、終結配列、プロモーター配列およびエンハンサー配列;スプライシングシグナルおよびポリアデニル化シグナルなどの有効なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を高める配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);タンパク質の安定性を高める配列;および所望により、タンパク質分泌を高める配列が含まれる。このような制御配列の性質は宿主生物によって異なり;原核生物では、このような制御配列は一般にプロモーター、リボゾーム結合部位、および転写終結配列を含み;真核生物では、一般に、このような制御配列は、プロモーターおよび転写終結配列を含む。用語「制御配列」は、最低限、その存在が発現およびプロセシングに不可欠な総ての成分を含むものとし、また、存在すると有利である付加的成分、例えば、リーダー配列および融合パートナー配列も含むことを意図する。
本明細書において、用語「ベクター」は、それが連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を意味するものとする。ベクターの一種が「プラスミド」であり、これは、付加的DNAセグメントを連結することができる環状二本鎖DNAループを意味する。もう一種のベクターがウイルスベクターであり、この場合には、付加的DNAセグメントをウイルスゲノムに連結することができる。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞で自律的に複製することができる(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。その他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞に導入すると宿主細胞のゲノムに組み込まれ、宿主のゲノムとともに複製され得る。
ある特定のベクターは、それらが機能的に連結されている遺伝子の発現を命令することができる。このようなベクターは、本明細書には「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)として言及されている。一般に、組換えDNA技術に有用な発現ベクターはプラスミドの形態である。プラスミドは最もよく用いられるベクターの形態であるので、本明細書では「プラスミド」および「ベクター」は互換的に使用できる。しかしながら、本発明は、細菌プラスミド、YAC、コスミド、レトロウイルス、EBV由来エピソーム、および本発明の抗体の重鎖および/または軽鎖の発現を確保するのに好都合であることが当業者に知られている他の総てのベクターなどの形態の発現ベクターを含むものとする。当業者は、重鎖および軽鎖をコードするポリヌクレオチドを異なるベクターにクローニングすることも同じベクターにクローニングすることもできることを十分理解するであろう。好ましい態様では、前記ポリヌクレオチドは、同じベクターにクローニングされる。
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞内でベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択マーカー遺伝子などの付加的配列を有してもよい。選択マーカー遺伝子は、そのベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号および同第5,179,017号参照)。例えば、一般に、選択マーカー遺伝子は、そのベクターが導入された宿主細胞に、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートなどの薬剤に対する耐性を付与する。好ましい選択マーカー遺伝子としては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅とともにdhfr−宿主細胞において使用)およびneo遺伝子(G418選択)が含まれる。いくつかの選択系が本発明に従って使用可能であり、限定されるものではないが、tk、hgprtまたはaprt細胞のそれぞれにおいて、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al., Cell 11:223, 1977)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska et al., Proc Natl Acad Sci USA 48: 202, 1992)、メチオニンスルホキシミドの存在下でのグルタミン酸シンターゼ選択(Adv Drug Del Rev, 58: 671, 2006、およびLonza Group Ltd社のウェブサイトまたは文献)およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al., Cell 22: 817, 1980)が挙げられる。また、以下の遺伝子の選択の基礎として代謝拮抗物質耐性が使用可能である:メトトレキサート耐性を付与するdhfr(Wigler et al., Proc Natl Acad Sci USA 77: 357, 1980);ミコフェノール酸耐性を付与するgpt(Mulligan et al., Proc Natl Acad Sci USA 78: 2072, 1981);アミノグリコシドG−418耐性を付与するneo(Wu et al., Biotherapy 3: 87, 1991);およびハイグロマイシン耐性を付与するhygro(Santerre et al., Ge
ne 30: 147, 1984)。組換えDNA技術に関して当技術分野で公知の方法は所望の組換えクローンを選択するために慣例的に適用することができ、このような方法は、例えば、Ausubel et al., eds., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1993)に記載されている。抗体の発現レベルはベクターの増幅によって高めることができる。抗体を発現するベクター系のマーカーが増幅可能であれば、培養物中に存在する阻害剤のレベルの増加により、マーカー遺伝子のコピー数が増加する。この増幅領域は本発明のIgG抗をコードする遺伝子に関連しているので、前記抗体の生産も増加する(Crouse et al., Mol Cell Biol 3: 257, 1983)。
本発明のポリヌクレオチドおよびこれらの分子を含んでなるベクターは、好適な哺乳動物宿主細胞、または当業者に知られている他の任意のタイプの宿主細胞の形質転換に使用することができる。本明細書において、用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、組換え発現ベクターが導入された細胞を意味するものとする。このような用語は特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の後代も意味するものと理解すべきである。次世代には突然変異または環境的影響のために改変が起こることがあるので、このような後代は実際には親細胞と同一であるとは限らないが、本明細書で用いる「宿主細胞」という用語の範囲内になお含まれる。
形質転換は、ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するためのいずれの既知法によるものでもよい。このような方法は当業者によく知られ、デキストラン媒介形質転換、リン酸カルシウム沈殿法、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、ポリヌクレオチドのリポソームへの封入、微粒子銃およびDNAの核への直接マイクロインジェクションが挙げられる。本発明の組換え抗体を発現させるのに好ましい哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞が挙げられる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入し、その宿主細胞における抗体の発現、またはより好ましくはその宿主細胞が成長している培養培地への抗体の分泌を可能とするのに十分な時間、宿主細胞を培養することにより、前記抗体を生産する。
抗体は、標準的なタンパク質精製法を用いて培養培地から回収することができる。可溶型の本発明の抗体は、培養上清から回収することができる。これを次に、免疫グロブリン分子の精製、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、特に、Fcの場合にはAタンパク質アフィニティーなど)、遠心分離、示差溶解度または他の任意の標準的なタンパク質精製技術など、当技術分野で公知の任意の方法により精製することができる。好適な精製方法は当業者に自明である。
本発明者らは、CXCR4に対するヒトまたはヒト化抗体が、前記抗体の少なくとも1つのエフェクター機能を誘導することによりCXCR4発現癌細胞を死滅させることができることを示した。
「CXCR4発現癌細胞」とは、本明細書では、正常成体細胞でのCXCR4発現レベルに比べて高いCXCR4発現を示す癌の細胞を意味する。このような癌としては(限定されるものではないが)以下のものが挙げられる:膀胱、乳房、結腸、頭頸部、前立腺、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、胃、子宮頸、甲状腺および皮膚を含む癌腫および腺癌(扁平上皮癌を含む);多発性骨髄腫、白血病、急性および慢性リンパ性(またはリンパ様)白血病、急性および慢性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(例えば、バーキットリンパ腫)を含むリンパ系列の造血系腫瘍;急性および慢性骨髄性(骨髄様または骨髄球性)白血病、および前骨髄球性白血病を含む骨髄系列の造血系腫瘍;線維肉腫、骨肉腫および横紋筋肉腫を含む間葉起源の腫瘍;星状細胞腫、神経芽腫、神経膠腫、および神経鞘腫を含む中枢および末梢神経系の腫瘍;ならびに黒色腫、奇形癌、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、および精上皮腫を含むその他の腫瘍、および、CXCR4が発現されるまだ同定されていないその他の癌。
本発明で特許請求する方法の好ましい態様では、前記CXCR4発現癌細胞は悪性血液細胞からなる。
言い換えれば、本発明による使用は、前記CXCR4発現癌細胞が悪性血液細胞からなることを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、前記CXCR4発現癌細胞が悪性血液細胞からなることを特徴とする。
より詳しくは、前記CXCR4悪性血液細胞は、リンパ腫細胞、白血病細胞または多発性骨髄腫細胞を含んでなる群から選択される。
言い換えれば、本発明による使用は、前記CXCR4悪性血液細胞がリンパ腫細胞、白血病細胞または多発性骨髄腫細胞を含んでなる群から選択されることを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、前記CXCR4悪性血液細胞がリンパ腫細胞、白血病細胞または多発性骨髄腫細胞を含んでなる群から選択されることを特徴とする。
別の好ましい態様では、前記悪性血液細胞はリンパ腫細胞からなる。
言い換えれば、本発明による使用は、前記悪性血液細胞がリンパ腫細胞からなることを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、前記悪性血液細胞がリンパ腫細胞からなることを特徴とする。
上述のように、エフェクター細胞および/または補体成分が、本発明にとって特に注目されるものである。
本発明の方法のより好ましい態様では、前記エフェクター細胞は、NK細胞、マクロファージ、単球、好中球または好酸球を含んでなる。
言い換えれば、本発明による使用は、前記エフェクター細胞がNK細胞、マクロファージ、単球、好中球または好酸球を含んでなることを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、前記エフェクター細胞がNK細胞、マクロファージ、単球、好中球または好酸球を含んでなることを特徴とする。
以下の例に基づき、本発明で用いられる抗体の特に注目される特性を記載する。
本発明の方法の好ましい態様では、RAMOSリンパ腫細胞に対して4時間のインキュベーション期間後に誘導されるADCCレベルは少なくとも40%である。
言い換えれば、本発明による使用は、RAMOSリンパ腫細胞に対して4時間のインキュベーション期間後に誘導されるADCCレベルが少なくとも40%であることを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、RAMOSリンパ腫細胞に対して4時間のインキュベーション期間後に誘導されるADCCレベルが少なくとも40%であることを特徴とする。
本発明の方法の好ましい態様では、DAUDIリンパ腫細胞に対して4時間のインキュベーション期間後に誘導されるADCCレベルは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%である。
言い換えれば、本発明による使用は、DAUDIリンパ腫細胞に対して4時間のインキュベーション期間後に誘導されるADCCレベルが少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%であることを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、DAUDIリンパ腫細胞に対して4時間のインキュベーション期間後に誘導されるADCCレベルが少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%であることを特徴とする。
本発明の方法の好ましい態様では、HeLa子宮頸癌細胞に対して4時間のインキュベーション期間後に誘導されるADCCレベルは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%である。
言い換えれば、本発明による使用は、HeLa子宮頸癌細胞に対して4時間のインキュベーション期間後に誘導されるADCCレベルが少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%であることを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、HeLa子宮頸癌細胞に対して4時間のインキュベーション期間後に誘導されるADCCレベルが少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%であることを特徴とする。
本発明のもう1つの特に重要な面は、誘導されるADCCおよびCDCの特異性にある。
本発明の方法の別の好ましい態様では、NK細胞に対して有意なADCCが誘導されない。
言い換えれば、本発明による使用は、NK細胞に対して有意なADCCが誘導されないことを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、NK細胞に対して有意なADCCが誘導されないことを特徴とする。
本補体成分は少なくともC1qを含んでなる。
言い換えれば、本発明による使用は、前記補体成分が少なくともC1qを含んでなることを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、前記補体成分が少なくともC1qを含んでなることを特徴とする。
本発明の方法の別の好ましい態様では、RAMOSリンパ腫細胞に対して1時間のインキュベーション期間後に誘導されるCDCレベルは少なくとも30%、優先的には少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも70%である。
言い換えれば、本発明による使用は、RAMOSリンパ腫細胞に対して1時間のインキュベーション期間後に誘導されるCDCレベルが少なくとも30%、優先的には少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも70%であることを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、RAMOSリンパ腫細胞に対して1時間のインキュベーション期間後に誘導されるCDCレベルが少なくとも30%、優先的には少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも70%であることを特徴とする。
本発明の方法のさらに別の好ましい態様では、NIH3T3 CXCR4細胞に対して1時間のインキュベーション期間後に誘導されるCDCレベルは少なくとも30%、優先的には少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも70%である。
言い換えれば、本発明による使用は、NIH3T3 CXCR4細胞に対して1時間のインキュベーション期間後に誘導されるCDCレベルが少なくとも30%、優先的には少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも70%であることを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、NIH3T3 CXCR4細胞に対して1時間のインキュベーション期間後に誘導されるCDCレベルが少なくとも30%、優先的には少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも70%であることを特徴とする。
本発明の方法のさらに別の好ましい態様では、DAUDIリンパ腫細胞に対して1時間のインキュベーション期間後に誘導されるCDCレベルは少なくとも30%、優先的には少なくとも40%である。
言い換えれば、本発明による使用は、DAUDIリンパ腫細胞に対して1時間のインキュベーション期間後に誘導されるCDCレベルが少なくとも30%、優先的には少なくとも40%であることを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、DAUDIリンパ腫細胞に対して1時間のインキュベーション期間後に誘導されるCDCレベルが少なくとも30%、優先的には少なくとも40%であることを特徴とする。
本発明の抗体のADCC特性という意味では、前記抗体とFcγRとの結合に関して結果が得られた。
本発明のもう1つの特定の面は、本発明の抗体、またはそのCH2含有結合フラグメントの1つが、少なくとも1つのFcγRと結合し得るということに関連する。
本発明の方法の好ましい態様では、前記少なくとも1つのFcγRはFcγRIである。
言い換えれば、本発明による使用は、前記少なくとも1つのFcγRがFcγRIであることを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、前記少なくとも1つのFcγRがFcγRIであることを特徴とする。
本発明の方法の別の好ましい態様では、ラングミュアモデルに従った、本発明の抗体とヒトFc[γ]RIとの結合を特徴付ける解離定数(KD)は1〜10nMの間である。
言い換えれば、本発明による使用は、ラングミュアモデルに従った、本発明の抗体とヒトFcγRIとの結合を特徴付ける解離定数(KD)が1〜10nMの間であることを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、ラングミュアモデルに従った、本発明の抗体とヒトFcγRIとの結合を特徴付ける解離定数(KD)が1〜10nMの間であることを特徴とする。
本発明の方法の別の好ましい態様では、前記少なくとも1つのFcγRはヒトFcγRIIIaである。
言い換えれば、本発明による使用は、前記少なくとも1つのFcγRがヒトFcγRIIIaであることを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、前記少なくとも1つのFcγRがヒトFcγRIIIaであることを特徴とする。
本発明の方法のより好ましい態様では、不均一リガンドモデルに従った、本発明の抗体とヒトFcγRIIIaとの結合を特徴付ける解離定数(KD)は200〜1000nMの間である。
言い換えれば、本発明による使用は、不均一リガンドモデルに従った、本発明の抗体とヒトFcγRIIIaとの結合を特徴付ける解離定数(KD)が200〜1000nMの間であることを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、不均一リガンドモデルに従った、本発明の抗体とヒトFcγRIIIaとの結合を特徴付ける解離定数(KD)が200〜1000nMの間であることを特徴とする。
本明細書において、用語「KD」は、特定の抗体/抗原相互作用の解離定数を意味する。「結合親和性」は一般に、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合相手(例えば、抗原)の間の非共有結合的相互作用の総和の強度を意味する。そうではないことが示されない限り、本明細書において「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)間での1:1の相互作用を表す固有の結合親和性を表す。分子Xの、その相手Yに対する親和性は一般にKDで表すことができる。親和性は、本明細書に記載のものをはじめ、当技術分野で公知の常法により測定することができる。低親和性抗体は一般に抗原とゆっくり結合し、容易に解離する傾向にあるが、高親和性抗体は一般に抗原とより速く結合し、長く結合を維持する傾向にある。結合親和性を測定する多様な方法は当技術分野で公知であり、そのいずれもが本発明の目的で使用可能である。
好ましくは、解離定数は、ラングミュアモデルに従って算出される。
ラングミュアモデルは慣行に従って次のように表される。
式中、Aは分析物であり、Bはリガンドであり、ABは分析物とリガンドとの非共有結合的複合体であり、k
aおよびk
dはこの相互作用のそれぞれ結合速度および解離速度である。
同様に、リガンドが2成分の混合物とみなされる不均一リガンドモデルは次の2式系で表される。
式中、Aは分析物であり、B1はリガンドの第1の成分であり、AB1は分析物とリガンドの第1の成分の間の非共有結合的複合体であり、ka1およびkd1はこの相互作用のそれぞれ結合速度および解離速度であり、B2はリガンドの第2の成分であり、AB2は分析物とリガンドの第2の成分の間の非共有結合的複合体であり、ka2およびkd2はこの相互作用のそれぞれ結合速度および解離速度である。
BIACOREデータの処理には、BIAevaluationバージョン3.1(Biacore AB)が使用されている。
最後に、本発明はまた、有効量のヒトもしくはヒト化抗体、またはそのCH2含有結合フラグメントを投与する工程を含んでなる、CXCR4発現癌細胞の存在に関連する病態を治療または予防する方法にも関し;前記ヒトまたはヒト化抗体は、配列番号1、2および3の配列の3つのCDRを有する重鎖可変ドメインと、配列番号4、5および6の配列の3つのCDRを有する軽鎖可変ドメインとを含んでなり;前記ヒトまたはヒト化抗体の少なくとも1つのエフェクター機能が、エフェクター細胞または補体成分の存在下で誘導される。
言い換えれば、本発明は、CXCR4発現癌細胞の存在に関連する病態の治療用の組成物を製造するためのヒトもしくはヒト化抗体、またはそのCH2含有結合フラグメントの使用に関し;前記ヒトまたはヒト化抗体は、それぞれ配列番号1、2および3の配列を含んでなるCDR領域CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3を含んでなる重鎖可変ドメインと、それぞれ配列番号4、5および6の配列を含んでなるCDR領域CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3を含んでなる軽鎖可変ドメインとを含んでなり;前記ヒトまたはヒト化抗体の少なくとも1つのエフェクター機能が、エフェクター細胞または補体成分の存在下で誘導される。
さらに言い換えれば、本発明は、CXCR4発現癌細胞の存在に関連する病態を治療することに使用するための、CXCR4を特異的に認識するヒトまたはヒト化抗体、CH2含有結合フラグメントに関し;前記ヒトまたはヒト化抗体は、それぞれ配列番号1、2および3の配列を含んでなるCDR領域CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3を含んでなる重鎖可変ドメインと、それぞれ配列番号4、5および6の配列を含んでなるCDR領域CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3を含んでなる軽鎖可変ドメインとを含んでなり;前記ヒトまたはヒト化抗体の少なくとも1つのエフェクター機能が、エフェクター細胞または補体成分の存在下で誘導される。
好ましくは、本発明はまた、有効量のヒトもしくはヒト化抗体、またはそのCH2含有結合フラグメントを投与する工程を含んでなる、CXCR4発現癌細胞の存在に関連する病態を治療または予防する方法にも関し;前記ヒトまたはヒト化抗体は、配列番号7〜10の配列から選択される重鎖可変ドメインと、配列番号11〜17の配列から選択される軽鎖可変ドメインとを含んでなり;前記ヒトまたはヒト化抗体の少なくとも1つのエフェクター機能が、エフェクター細胞または補体成分の存在下で誘導される。
言い換えれば、本発明は、CXCR4発現癌細胞の存在に関連する病態の治療用の組成物を製造するためのヒトもしくはヒト化抗体、またはそのCH2含有結合フラグメントの使用に関し;前記ヒトまたはヒト化抗体は、配列番号7〜10の配列から選択される重鎖可変ドメインと、配列番号11〜17の配列から選択される軽鎖可変ドメインとを含んでなり;前記ヒトまたはヒト化抗体の少なくとも1つのエフェクター機能が、エフェクター細胞または補体成分の存在下で誘導される。
さらに言い換えれば、本発明は、CXCR4発現癌細胞の存在に関連する病態を治療することに使用するための、CXCR4を特異的に認識するヒトまたはヒト化抗体、CH2含有結合フラグメントに関し;前記ヒトまたはヒト化抗体は、配列番号7〜10の配列から選択される重鎖可変ドメインと、配列番号11〜17の配列から選択される軽鎖可変ドメインとを含んでなり;前記ヒトまたはヒト化抗体の少なくとも1つのエフェクター機能が、エフェクター細胞または補体成分の存在下で誘導される。
モノクローナル抗体は、各重鎖の定常領域においてN−グリコシル化されていることが知られている。特定のグリコシル化変異体がADCCに影響を及ぼすことが示されている。例えば、IgG1の低フコシル化がADCCの増強と相関している(Shields et al., J Biol Chem., 277(30): 26733-2640, 2002; Shinkawa et al., J Biol Chem., 278(5): 3466-3473, 2003)。
ガラクトースレベルとCDC活性の間には有意な相関が見られた。例えば、リツキシマブのCDC活性は、ガラクトース含量の低下とともに低下する(Hodoniczky et al, Biotechnol Prog. , 21(6): 1644-1652, 2005)。
ADCCおよびCDC試験に使用されるhz515H7 Mabの代表的なグリコシル化特性を下表5に示す。
驚くことに、本発明によるHz515H7 Mabは、その糖鎖の92%前後がフコース残基を含んでなっていても、CXCR4を発現する細胞に対して高いパーセンテージのADCCおよびCDCを誘導する。
よって、本発明はまた、有効量のヒトもしくはヒト化抗体、またはそのCH2含有結合フラグメントを投与する工程を含んでなる、CXCR4発現癌細胞を死滅させることにより癌を治療する方法にも関し、前記ヒトまたはヒト化抗体は、以下のようなグリカン特性を含んでなり、
この場合、前記ヒトまたはヒト化抗体の少なくとも1つのエフェクター機能がエフェクター細胞または補体成分の存在下で誘導される。
本発明はまた、CXCR4発現癌細胞を死滅させることによる癌治療の方法に使用するためのCXCR4と結合するヒト化抗体、またはそのCH2含有結合フラグメントにも関し、前記ヒトまたはヒト化抗体は、以下のようなグリカン特性を含んでなり、
この場合、前記ヒトまたはヒト化抗体の少なくとも1つのエフェクター機能がエフェクター細胞または補体成分の存在下で誘導される。
本発明はまた、CXCR4発現癌細胞を死滅させることより癌を治療するための薬剤を製造するための、CXCR4と結合するヒト化抗体、またはそのCH2含有結合フラグメントの使用にも関し、前記ヒトまたはヒト化抗体は、以下のようなグリカン特性を含んでなり、
この場合、前記ヒトまたはヒト化抗体の少なくとも1つのエフェクター機能がエフェクター細胞または補体成分の存在下で誘導される。
本明細書の実施例に示されるように、本発明のヒトもしくはヒト化抗体、またはそのCH2含有結合フラグメントは、少なくともADCCおよび/またはCDC応答の誘導を介した抗腫瘍活性を有し、従って、転移性腫瘍および癌などの疾患の治療に有用である。
用語「治療する(traeting)」または「治療(treatment)」とは、本明細書に記載の組成物を、統計的に有意な程度または当業者に検出可能な程度まで、障害に関連する病態、症状もしくはパラメーターを改善するため、または障害の進行もしくは悪化(その障害により引き起こされる二次的傷害を含む)を防ぐために有効な量、方法および/または様式での投与または投与することを意味する。
本発明のもう1つの面は、ヒトもしくはヒト化抗体、またはそのCH2含有結合フラグメントの医薬組成物に関する。
本発明の医薬組成物は、担体およびヒトもしくはヒト化抗体、またはそのCH2含有結合フラグメントに加えて、種々の希釈剤、増量剤、塩、バッファー、安定剤、可溶化剤、および当技術分野で周知の他の物質を含有し得る。
本明細書において、「薬学上許容される担体」には、生理学的に適合する溶媒、バッファー、塩溶液、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真剤、等張剤および吸収遅延剤などのいずれか、また総てが含まれる。担体のタイプは意図する投与経路に基づいて選択することができる。種々の態様において、担体は、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所、経皮または経口投与に好適なものである。薬学上許容される担体には、無菌水溶液または分散液、および無菌注射溶液または分散液の即時調合剤形用の無菌粉末が含まれる。薬学的に活性な物質に対する媒体および薬剤の使用は当技術分野で周知である。以下に詳細に示すように、本組成物に、抗癌薬および/または抗血管新生薬などの付加的な有効化合物を配合することもでき、特に、この付加的有効化合物は、抗血管新生薬、化学療法薬、または低分子量薬であり得る。典型的な静注用医薬組成物は、250mlの無菌リンゲル液と100mgの前記組合せを含有するように構成することができる。非経口的に投与可能な化合物を調製するための実際の方法は当業者にとっては既知または自明であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Science, 第17版, Mack Publishing Company, Easton, Pa. (1985)ならびにその第18版および第19版に詳細に記載されており、これらは引用することにより本明細書の一部とされる。
本組成物中のヒトもしくはヒト化抗体、またはそのCH2含有結合フラグメントは好ましくは、有効量で処方される。「有効量」とは、腫瘍細胞におけるアポトーシスの誘導などの所望の結果を達成するために必要な用量および期間において有効な量を意味する。「治療上有効な量」とは、特定の病状の治療経過に影響を与えるに十分な量を意味する。治療上有効な量はまた、治療上有益な作用がその薬剤の有毒または有害な作用にまさる量でもある。
治療適用としては、本発明のヒトもしくはヒト化抗体、またはそのCH2含有結合フラグメントは、哺乳動物、好ましくはヒトに、ボーラスとして、もしくは一定時間にわたる持続的注入によりヒト静脈内に投与され得るもの、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、関節滑液嚢内、くも膜下腔内、経口、局所、または吸入経路によるものを含む、上述のものなどの薬学上許容される投与形で投与される。前記ヒトもしくはヒト化抗体、またはそのCH2含有結合フラグメントはまた、局所的ならびに全身的治療効果を発揮するために、腫瘍内、腫瘍周辺、病巣内、または病巣周辺経路によっても好適に投与される。腹腔内経路は、例えば卵巣腫瘍の治療で特に有用であると思われる。
投与計画は最適な応答をもたらすように調整することができる。例えば、単回のボーラス投与を行ってもよく、数回の分割用量を経時的に投与してもよく、または用量を比例的に増減してもよい。本発明の組成物は、対象において細胞増殖活性を果たすために対象に投与することができる。本明細書において用語「対象」は、アポトーシスが誘導され得る生物を含むものとし、具体的には、ウサギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、サル、そのトランスジェニック種などの哺乳動物、好ましくはヒトが含まれる。
本発明のヒトもしくはヒト化抗体、またはそのCH2含有結合フラグメント、および本発明の医薬組成物は、(限定されるものではないが)以下を含む数種の癌の治療または予防において特に有用である:膀胱、乳房、結腸、頭頸部、前立腺、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、胃、子宮頸、甲状腺および皮膚を含む癌腫および腺癌(扁平上皮癌を含む);多発性骨髄腫、白血病、急性および慢性リンパ性(またはリンパ様)白血病、急性および慢性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(例えば、バーキットリンパ腫)を含むリンパ系列の造血系腫瘍;急性および慢性骨髄性(骨髄様または骨髄球性)白血病、および前骨髄球性白血病を含む骨髄系列の造血系腫瘍;線維肉腫、骨肉腫および横紋筋肉腫を含む間葉起源の腫瘍;星状細胞腫、神経芽腫、神経膠腫、および神経鞘腫を含む中枢および末梢神経系の腫瘍;ならびに黒色腫、奇形癌、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、および精上皮腫を含むその他の腫瘍、および、CXCR4が発現されるまだ同定されていないその他の癌。CXCR4発現を有する癌とは、本明細書では、正常成体細胞でのCXCR4発現レベルに比べて高いCXCR4発現を示す癌の細胞を意味する。
本発明の抗CXCR4抗体は独特な作用機序を有するので、本発明のヒトもしくはヒト化抗体、またはそのCH2含有結合フラグメント、および本発明の組成物は、主として、慣用の抗癌薬に耐性のある白血病、リンパ腫および癌を治療するのに有用である。
本発明の方法の好ましい態様では、CXCR4発現癌細胞の存在に関連する前記病態は、リンパ腫、白血病または多発性骨髄腫、優先的にはリンパ腫からなる。
言い換えれば、本発明による使用は、CXCR4発現癌細胞の存在に関連する前記病態がリンパ腫、白血病または多発性骨髄腫、優先的にはリンパ腫からなることを特徴とする。
さらに言い換えれば、本発明によるヒトまたはヒト化抗体は、CXCR4発現癌細胞の存在に関連する前記病態がリンパ腫、白血病または多発性骨髄腫、優先的にはリンパ腫からなることを特徴とする。
非限定例として、対象におけるCXCR4発現腫瘍の存在および/または場所をin vitroで検出する方法は、
(a)前記対象からのサンプルと、ヒト化抗体重鎖および/またはヒト化抗体軽鎖および/またはヒト化抗体、またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントとを、CXCR4との特異的結合能に従って接触させる工程;および
(b)前記抗体と前記サンプルとの結合を検出する工程
を含んでなる。
特に、対象からのCXCR4発現腫瘍におけるCXCR4の発現レベルをin vitroまたはex vivoで決定する方法は、
(a’)前記対象からのサンプルと、CXCR4に特異的に結合することができるヒト化抗体重鎖および/またはヒト化抗体軽鎖および/またはヒト化抗体、またはその誘導化合物もしくは機能的フラグメントとを接触させる工程;および
(b’)前記サンプルにおける抗体とCXCR4との結合レベルを定量する工程
を含んでなる。
好ましい態様では、CXCR4発現レベルは、免疫組織化学(IHC)またはFACS分析により測定することができる。
本明細書において、用語「CXCR4の発現に関連する腫瘍形成性障害」または「CXCR4発現癌細胞」は、障害を患っている対象における高レベルまたは異常に低いレベルのCXCR4(異常)の存在が、その障害の病態生理の原因であるか、またはその障害の悪化に寄与する要因であることが示されている、または疑われる疾患およびその他の障害を含むものとする。あるいは、例えば、障害を患っている対象の罹患細胞または組織の細胞表面におけるCXCR4レベルの増大により、このような障害を証明することもできる。CXCR4レベルの増大は、例えば、本発明の抗体515H7またはhz515H7を用いて検出することができる。さらに、それは、相対的に自律的な成長を示し、従って、細胞増殖の制御の著しい低下を特徴とする異常成長表現型を示す細胞を意味する。あるいは、前記細胞は正常レベルのCXCR4を発現するが、異常な増殖を特徴とする場合もある。
本発明はまた、エフェクター細胞または補体成分の存在下で少なくとも1つのエフェクター機能を誘導することによりCXCR4発現癌細胞を死滅させることに使用するための、CXCR4と結合するヒト化抗体、またはそのCH2含有結合フラグメントをスクリーニングするための方法も記載し、前記方法は、
・4時間のインキュベーション期間後にRAMOSリンパ腫細胞に対して少なくとも40%のADCCレベルを誘導する抗体を選択すること;
・1時間のインキュベーション期間後にRAMOSリンパ腫細胞に対して少なくとも30%、優先的には少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも70%のCDCレベルを誘導する抗体を選択すること;
・1時間のインキュベーション期間後にNIH3T3 CXCR4細胞に対して少なくとも30%、優先的には少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも70%のCDCレベルを誘導する抗体を選択すること;
・ラングミュアモデルに従い、1〜10nMの間の解離定数(KD)でFcγRIと結合する抗体を選択すること;
・不均一リガンドモデルに従い、200〜1000nMの間の解離定数(KD)でFcγRIIIAと結合する抗体を選択すること
から選択される、少なくとも1つの選択工程を含んでなる。
本発明の実施には、そうではないこと示されない限り、従来技術、すなわち、タンパク質化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術、および薬理学を使用し、これらは当分野の技術の範囲内である。このような技術は文献で十分に説明されている(Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Eds., John Wiley & Sons, Inc. New York, 1995; Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1985;およびSambrook et al., Molecular cloning: A laboratory manual 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press - Cold Spring Harbor, NY, USA, 1989; Introduction to Glycobiology, Maureen E. Taylor, Kurt Drickamer, Oxford Univ. Press (2003); Worthington Enzyme Manual, Worthington Biochemical Corp. Freehold, NJ; Handbook of Biochemistry: Section A Proteins, Vol I 1976 CRC Press; Handbook of Biochemistry: Section A Proteins, Vol II 1976 CRC Press; Essentials of Glycobiology, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1999)参照)。本明細書に記載の分子・細胞生物学、タンパク質化学、酵素学、および医薬品・薬化学の実験室手順および技術に関しての名称は、当技術分野で周知かつ慣用のものである。
そうではないことが定義されない限り、本明細書で使用する総ての技術用語および科学用語は、本発明の属する当業者が一般に理解しているものと同じ意味を有する。
本発明の他の特徴および利点を実施例および図面を用いた説明でさらに明らかにする。図面の凡例を以下に示す。
実施例1:ヒトCXCR4に対するモノクローナル抗体(Mab)の作製
CXCR4に対するモノクローナル抗体を作製するために、Balb/cマウスを、組換えNIH3T3−CXCR4細胞ならびに/またはCXCR4の細胞外N末端およびループに相当するペプチドで免疫した。初回の免疫誘導時に6〜16週齢のマウスを完全フロイントアジュバント中の抗原で1回皮下(s.c.)免疫した後、フロイントの不完全アジュバント中の抗原で2〜6回、皮下免疫した。免疫応答は眼窩後方採血(retroorbital bleeds)によりモニタリングした。血清をELISAによりスクリーニングし(下記の通り)、高い力価の抗CXCR4抗体を有するマウスを融合に用いた。マウス静脈に抗原を追加投与し、2日後にマウスを屠殺し、脾臓を摘出した。
ELISA
抗CXCR4抗体を産生するマウスを選択するために、免疫されたマウスの血清をELISAにより調べた。簡単に述べると、マイクロタイタープレートをBSAとコンジュゲートした精製[1−41]N末端ペプチドにて5μg当量ペプチド/mLでコーティングし、100μL/ウェルを4℃で一晩インキュベートした後、PBS中250μL/ウェルの0.5%ゼラチンでブロッキングした。CXCR4免疫マウスの血漿の希釈液を各ウェルに加え、37℃で2時間インキュベートした。これらのプレートをPBSで洗浄した後、HRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgG抗体(Jackson Laboratories)とともに37℃で1時間インキュベートした。洗浄後、プレートをTMB基質で発色させ、5分後に、100μL/ウェルの1M H2SO4を添加することにより反応を停止させた。最高力価の抗CXCR4抗体を生成したマウスを抗体作製に用いた。
CXCR4に対するMabを産生するハイブリドーマの作製
最高力価の抗CXCR4抗体を生成したBalb/cマウスから単離したマウス脾細胞を、PEGを用いてマウス骨髄腫細胞株Sp2/0と融合させた。細胞を約1×105/ウェルでマイクロタイタープレートに播種した後、ultra culture medium+2mM L−グルタミン+1mMピルビン酸ナトリウム+1×HATを含有する選択培地中で2週間インキュベートした。次いで、ELISAにより抗CXCR4モノクローナルIgG抗体についてウェルをスクリーニングした。その後、抗体を分泌するハイブリドーマを、限界希釈により少なくとも2回サブクローニングし、さらなる分析のためにin vitroで培養して抗体を作製した。
実施例2:抗CXCR4 Mab 515H7の結合特異性および癌細胞株認識のFACS分析による特性決定
本実験では、抗CXCR4 Mab 515H7のヒトCXCR4への特異的結合をFACS分析により調べた。
NIH3T3、NIH3T3−hCXCR4トランスフェクト細胞、MDA−MB−231、HelaおよびU937癌細胞株を、10μg/mLのモノクローナル抗体515H7とともにインキュベートした。その後、細胞を1%BSA/PBS/0.01%NaN3で洗浄した。次に、Alexa標識二次抗体を細胞に添加し、4℃で20分間インキュベートした。次いで、細胞を再び2回洗浄した。2回目の洗浄後、FACS分析を行った。これらの結合実験の結果を以下の表6に示す。この表は、抗CXCR4 Mab 515H7がヒトCXCR4−NIH3T3トランスフェクト細胞株に特異的に結合したが、親NIH3T3細胞での認識は見られないことを示している[FACSで得られた平均蛍光強度(MFI)]。このMabは、ヒト癌細胞株、例えば、MDA−MB−231乳癌細胞、U937前骨髄球性癌細胞およびHela子宮頸癌細胞も認識することができた。
抗CXCR4 Mab 515H7は、NIH3T3−hCXCR4トランスフェクタントを認識したが、親NIH3T3野生型細胞は認識しなかった。Mab 515H7は癌細胞株も認識することができた。
実施例3:515H7抗CXCR4マウス抗体のヒト化
一般手順
515H7抗CXCR4抗体のヒト化は、CDRグラフト法のグローバルルールを適用することにより行った。免疫原性分析ならびにCDRおよびフレームワーク(FR)領域の定義は、IMGT独自ナンバリング法ならびにIMGTライブラリーおよびツール(Lefranc, 1997-www.imgt.org)を適用することにより行った。
ヒト化プロセスの効率は、操作された抗体の機能活性を、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)アッセイにより、SDF−1により媒介されるβ−アレスチン動員を阻害するそれらの能力に関して調べることによって評価した。このアッセイでは、CXCR4をルシフェラーゼで、β−アレスチンをYFPで標識した。SDF−1により媒介されるCXCR4へのβ−アレスチンの動員は、CXCR4のシグナル伝達において重要なステップである。また、ヒトCXCR4で安定してトランスフェクトされたNIH3T3細胞株に対する515H7ヒト化変異体の結合も測定した。結合活性は、ビオチン化マウス抗体との競合アッセイにより評価した。第二の試みにおいて、ヒト化抗体を、RAMOS細胞に対するビオチン化SDF−1の結合を阻害するそれらの能力について評価した。CXCR4の発現が高く、CXCR7およびSDF−1の発現が低いことから、RAMOS細胞を選択した。
これらのアッセイを用いて抗CXCR4抗体の組換えヒト化型の特性決定を行った。ヒトIgG1/k定常ドメインを用いて可変ドメインをフォーマットし、哺乳動物発現ベクターpCEPにクローニングした。組換えIgG1/κ由来抗体をHEK293細胞で一時的に発現させた。発現培養上清を濾過し、プロテインAタンパク質セファロースを用いて抗体を精製した。精製した抗体をPBS中で再び緩衝させ、ELISAにより抗体濃度を決定した。
515H7可変ドメインのヒト化
CDRグラフトに適当なヒト生殖細胞系を選択するために、515H7 VHマウス配列に対して最大の相同性を有するヒト生殖細胞系遺伝子を特定した。IMGTデータベースおよびツールを用いて、ヒトIGHV3−49*04生殖細胞系遺伝子およびヒトIGHJ4*01 J生殖細胞系遺伝子をマウス515H7 VH CDRのヒトアクセプター配列として選択した。ヒトV−遺伝子IGHV3−49*04は、マウス515H7重鎖の可変ドメインのV−遺伝子と80.27%の相同性を有する。ヒトJ−遺伝子IGHJ4*01 Jに対する相同性は87.50%である。選択されたヒト生殖細胞系遺伝子とマウス抗体515H7のVHドメインの間では、19残基が異なる。親抗体のVHドメインと生殖細胞系配列とのアラインメントを図1に示す。
軽鎖の可変ドメインに関しては、ヒト生殖細胞系遺伝子IGKV4−1*01およびIGKJ1*01を選択した(図2)。ヒトV−遺伝子IGKV4−1*01との相同性は79.12%である。軽鎖の515H7 J−遺伝子は、ヒトJ−遺伝子IGKJ1*01と84.85%の相同性を有する。
翻訳されたヒト生殖細胞系遺伝子IGHV3−49*04およびIGKV4−1*01のアミノ酸配列を用いて相同な抗体を同定し、それらを結晶化させた。重鎖については、RCSBタンパク質データバンクにおいて受託番号1MAMの抗体をモデルとして選択し、軽鎖については、抗体1SBSを選択した。これらの2つのドメインを、コンピュータープログラムDS visualを用いてアセンブルし、ヒト化抗体515H7のモデルとして用いた。
親抗体と対応するヒト生殖細胞系配列の間で異なる各残基の位置に基づき、ヒト配列とマウス配列の間で異なる各残基について優先ランクの順位を付けた(図1および2)。これらの優先順位を用いて、それぞれVH1、VH2およびVH3と呼ばれる各ヒト化可変ドメインの3つの異なる変異体を作出した。
第1の実験系で、本発明者らは3つの第1ヒト化改変体を構築し、その抗CXCR4結合活性を分析した。VH変異体1(VH1)をマウスVLと組み合わせ、これらの構築物の、ビオチン化マウス515H7親抗体の結合を阻害する能力を評価した。総ての構築物がマウス抗体に対して同等の競合能を示した(図3A〜C)。このことは、ほとんどのヒトVH変異体が少数のヒト変異体と同等の結合能を有することを示している。従って、VH1をVLの3つの異なる変異体と組み合わせた(図3D〜F)。VH1とVL3の組合せだけはビオチン化マウス抗体との低い競合能を示したが、フレームワーク内に復帰突然変異を持たないほとんどのヒト変異体VH1 VL1は、キメラ抗体と同等の交差遮断活性を示した。
さらに、BRETアッセイにおいて、この変異体VH1 VL1の、SDF−1により媒介されるβ−アレスチンの動員を阻害する能力を調べた(図4)。親抗体の交差遮断によって判断した場合に受容体に対して望ましい結合活性であったにもかかわらず、構築物VH1 VL1は、β−アレスチンの動員については弱い阻害を示したに過ぎなかった。このように強い阻害活性がないために、ヒトフレームワーク残基をマウス残基で置換することが必要となる。VH 1に関して単一の復帰突然変異を構築した。以下の残基:V48L、E61D、D76NおよびA81L(一次アミノ酸配列に従って符番)を置換した。変異体VH1のこれらの単一復帰突然変異体を変異体VL1と組み合わせた。これらのうち、復帰突然変異D76Nだけが、BRETアッセイによって評価した場合に、シグナル伝達の阻害の増強をもたらした(図5B)。
この構築物の活性を高め、さらに他の残基の重要性を評価するために、VH 1に関して種々の二重復帰突然変異体を構築した。これらの構築物の阻害活性は若干改善された(平均阻害率約45〜50%)が、満足のいくものではなかった(図5C)。次に、単一復帰突然変異体D76Nを3つの異なるVL変異体と組み合わせた(図5D)。構築物hz515H7 VH D76N VL2は平均で88.2%の活性を示し、これはキメラ抗体と同じ範囲である。
変異体VL1ドメインに単一および二重復帰突然変異を構築し、構築物hz515H7 VH1 D76N VL2と比較した(図6)。調べた組合せの中に、この構築物と同等またはより良い活性を有するものは無かった。
hz515H7 VH1 D76N VL2について、フレームワーク中のヒト残基のパーセンテージを計算したところ、180残基のうち14の非ヒト残基を含み、これは92.2%の「ジャーミナリティ・インデックス(germinality index)」に等しい。比較として、市販のヒト化抗体ベバシズマブおよびトラスツズマブは、それらの可変ドメインにそれぞれ30および14の非ヒト残基を含む。
SDF−1により媒介されるβ−アレスチン動員の阻害に最強の有効性を示す、4つの最良のヒト化型も、ビオチン化SDF−1の結合を阻害するそれらの能力に関して調べた(図7A)。SDF−1結合とβ−アレスチン動員の阻害の密接な相関が認められた。この相関は、SDF−1結合の阻害がシグナル伝達阻害の主要な機構である可能性が最も高いことを示す。
hz515H7 VL2変異体をさらにヒト化するために、図6で評価した二重および三重突然変異体で得た情報を用いることで、さらに3つの変異体を設計した。変異体VL2.1、VL2.2およびVL2.3(VL2−1、VL2−2およびVL2−3とも呼ばれる)のそれぞれにおいて4つおよび5つの付加的残基をヒト化した。それらは残基D9、P49、D66、S69、S83、L84;V89に相当する。これら3つの変異体のアラインメントをVL2と比較して図8に示す。
これらのVL2変異体の、SDF−1により媒介されるβ−アレスチンの動員を阻害する能力を評価した。ヒト化hz515H7 VH D76N VL2、VL2.1、VL2.2およびVL2.3変異体は、キメラ抗体c515H7と同等の活性を示した(図6)。
実施例4:FACS分析による抗CXCR4ヒト化Mab 515H7の結合特異性および癌細胞株認識の特性決定
この試験では、抗CXCR4ヒト化Mab 515H7のヒトCXCR4に対する特異的結合をFACS分析により調べた。
NIH3T3、NIH3T3−hCXCR4トランスフェクト細胞およびRamos、U937癌細胞株を0〜10μg/mLのヒト化Mab 515H7(hz515H7 VH1 D76N VL2、hz515H7 VH1 D76N VL2.1、hz515H7 VH1 D76N VL2.2およびhz515H7 VH1 D76N VL2.3)とともに、100μlのFacsバッファー中、暗所にて4℃で20分間インキュベートした。Facsバッファー中で3回洗浄した後、細胞を二次抗体としてのヤギ抗ヒトAlexa 488(1/500希釈)とともに、暗所にて4℃で20分間インキュベートした。Facsバッファーで3回洗浄した後、各ウェルにヨウ化プロピジウムを加え、生存細胞だけをFacsにより分析した。少なくとも5000の生存細胞を評価し、各条件について蛍光強度の平均値を求めた。
これらの結合試験の結果を図9A〜9Cに示す。これらの図[FACSにより得られる平均蛍光強度(MFI)]は、抗CXCR4ヒト化Mab hz515H7がヒトCXCR4−NIH3T3トランスフェクト細胞株と特異的に結合し(図9A)(NIH3T3親細胞の場合MFI=2.2)、かつまたヒト癌細胞株、例えば、U937(図9B)およびRamos(図9C)を認識することを示す。
実施例5:CXCR4発現細胞に対するhz515H7VH1D76NVL2 Mabの抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)効果
ADCCは、Cytotoxicity Detection KitPLUS (Roche Applied Science, Indianapolis, IN, USA)を製造者の説明書に従って用いる乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出アッセイにより測定した。乳酸デヒドロゲナーゼは、アポトーシスまたは壊死のいずれかに起因する膜の健全性の欠如の後に培養培地中に放出される可溶性サイトゾル酵素である。従って、LDH活性は、細胞膜の健全性の指標として使用することができ、ADCCを含む細胞傷害作用を評価するための一般的手段として役立つ。
末梢血単核細胞(PBMC)は、フィコール密度勾配(Ficoll-Paque PLUS, GE Healthcare, Amersham, UK)を用い、健康なドナーから得たヒトバフィーコートから単離した。このPBMC画分から、RoboSep(登録商標)Human NK Cell Enrichment Kit製造者プロトコール(StemCell Technologies)に従ってナチュラルキラー(NK)細胞を分離した。NK細胞を96ウェル平底プレートに、50μL/ウェルでエフェクター/標的比を50:1として播種した。抗体とともに室温で10分間プレインキュベートした10000個の標的細胞(Ramos)をエフェクター細胞上に50μL/ウェルで添加した。37℃で4時間のインキュベーション後、LDHの放出量を測定することにより細胞傷害作用を求めた。細胞傷害パーセントは、次のように算出した:溶解率%=[実験的放出−エフェクターおよび標的の自然放出]/[標的の最大放出−標的の自然放出]×100。
図10は、高レベルのCXCR4を発現するRamos細胞およびNK細胞単独に対するADCCを示す[CXCR4レベル(MFI):Ramos>NK細胞]。黒い柱:Hz515H7VH1D76NVL2(hz515H7VL2)(10μg/mL)、白い柱:アイソタイプ対照hIgG1(10μg/mL)。細胞をhIgG1アイソタイプ対照とともにインキュベートした際には効果は見られなかった(図10Aおよび10B)。これに対して、hz515H7VH1D76NVL2 MabはRamos細胞に対して有意なADCC(47.9%+/−8.9)を誘導することができた(図10A)が、CXCR4の発現レベルが低いNK細胞では有意なADCC(3%+/−3)は見られなかった(図10B)。
実施例6:CXCR4発現細胞に対するc515H7 Mabの抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)効果
ADCCは、Cytotoxicity Detection KitPLUS (Roche Applied Science, Indianapolis, IN, USA)を製造者の説明書に従って用いる乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出アッセイにより測定した。
末梢血単核細胞(PBMC)は、フィコール密度勾配(Ficoll-Paque PLUS, GE Healthcare, Amersham, UK)を用い、健康なドナーから得たヒトバフィーコートから単離した。このPBMC画分から、RoboSep(登録商標)Human NK Cell Enrichment Kit製造者プロトコール(StemCell Technologies)に従ってナチュラルキラー(NK)細胞を分離した。NK細胞を96ウェル平底プレートに、50μL/ウェルでエフェクター/標的比を50:1として播種した。抗体とともに室温で10分間プレインキュベートした10000個の標的細胞(Ramos)をエフェクター細胞上に50μL/ウェルで添加した。37℃で4時間のインキュベーション後、LDHの放出量を測定することにより細胞傷害作用を求めた。細胞傷害パーセントは、次のように算出した:溶解率%=[実験的放出−エフェクターおよび標的の自然放出]/[標的の最大放出−標的の自然放出]×100。
図11は、高レベルのCXCR4を発現するRamos細胞およびNK細胞単独に対するADCCを示す[CXCR4レベル(MFI):Ramos>NK細胞]。黒い柱:c515H7(10μg/mL)、白い柱:アイソタイプ対照hIgG1(10μg/mL)。細胞をhIgG1アイソタイプ対照とともにインキュベートした際には効果は見られなかった(図11Aおよび11B)。これに対して、c515H7 MabはRamos細胞に対して有意なADCC(61.4%+/−8.1)を誘導することができた(図11A)が、CXCR4の発現レベルが低いNK細胞では有意なADCC(5.4%+/−4.6)は見られなかった(図11B)。
実施例7:CXCR4発現細胞に対するhz515H7VH1D76NVL2 Mabの補体依存性細胞傷害作用(CDC)効果
CDCアッセイは、CellTiter Glo試薬(Promega, Madison, WI, USA)を用いるATP測定に基づいた。
簡単に述べると、10000個の標的細胞を、hz515H7VH1D76NVL2の存在下、96ウェル平底プレートに播種した。室温で10分間のインキュベーションの後、健康なドナーからのヒト血清をプールしたものを終濃度10%で添加した。37℃で1時間の後、ATPの量を測定することにより生存率を決定した。細胞傷害パーセントは次のように算出した:細胞傷害率%=100−[[実験細胞/標的細胞(抗体不含)]×100]。
図12は、高レベルのCXCR4を発現するRamosおよびNIH3T3−CXCR4細胞株に対するCDCを示す。黒い柱:Hz515H7VH1D76NVL2(hz515H7VL2)(10μg/mL)、白い柱:アイソタイプ対照hIgG1(10μg/mL)。細胞をhIgG1アイソタイプ対照とともにインキュベートした際には効果は見られなかった(図12)。これに対して、hz515H7VH1D76NVL2 Mabは、 NIH/3T3CXCR4およびRAMOS細胞株の両方に対して有意なCDC(80%前後)を誘導することができた(図12)。
実施例8:高レベルのCXCR4を発現するRamos細胞に対するc515H7 Mabの補体依存性細胞傷害作用(CDC)効果
CDCアッセイは、CellTiter Glo試薬(Promega, Madison, WI, USA)を用いるATP測定に基づいた。
簡単に述べると、10000個の標的細胞を、Mabの存在下、96ウェル平底プレートに播種した。室温で10分間のインキュベーションの後、健康なドナーからのヒト血清をプールしたものを終濃度10%で添加した。37℃で1時間の後、ATPの量を測定することにより生存率を決定した。細胞傷害パーセントは次のように算出した:細胞傷害率%=100−[[実験細胞/標的細胞(抗体不含)]×100]。
図13は、高レベルのCXCR4を発現するRamos細胞株に対するCDCを示す。黒い柱:c515H7(10μg/mL)、白い柱:アイソタイプ対照hIgG1(10μg/mL)。細胞をhIgG1アイソタイプ対照とともにインキュベートした際には効果は見られなかった(図13)。これに対して、c515H7 Mabは、RAMOS細胞に対して有意なCDC(34%)を誘導することができた(図13)。
実施例9:高レベルのCXCR4を発現するRamos細胞に対するhz515H7VH1D76NVL2およびc515H7 Mabの補体依存性細胞傷害作用(CDC)容量効果
CDCアッセイは、CellTiter Glo試薬(Promega, Madison, WI, USA)を用いるATP測定に基づいた。
簡単に述べると、10000個の標的細胞を、Mabの存在下、96ウェル平底プレートに播種した。室温で10分間のインキュベーションの後、健康なドナーからのヒト血清をプールしたものを終濃度10%で添加した。37℃で1時間の後、ATPの量を測定することにより生存率を決定した。細胞傷害パーセントは次のように算出した:細胞傷害率%=100−[[実験細胞/標的細胞(抗体不含)]×100]。
図14は、高レベルのCXCR4を発現するRamos細胞株に対するCDCを示す。黒い柱:hz515H7VH1D76NVL2(hz515H7VL2)(図14A)またはc515H7(図14B)のいずれか(10μg/mL)、白い柱:アイソタイプ対照hIgG1(10μg/mL)。細胞をhIgG1アイソタイプ対照とともにインキュベートした際には効果は見られなかった(図14Aおよび14B)。これに対して、hz515H7VH1D76NVL2(図14A)およびc515H7(図14B)Mabは、Ramos細胞に対して有意なCDCを誘導することができ、CDC最大値はそれぞれ74%および34%であり、EC50はそれぞれ0.033μg/mLおよび0.04μg/mLであった。
実施例10:リアルタイム表面プラズモン共鳴によるhz515H7VH1D76NVL2 Mabとh−FcγRI、h−FcγRIIIA、m−FcγRIおよびm−FcγRIIIの間の相互作用試験
これらの試験はBiacore X装置を用いて行った。本試験に用いた可溶型の4つのFcγ受容体はR&D Systemsから購入した。
1−組換えヒトFcγRI[CD64]は、C末端6−Hisタグを有するGln16−Pro288フラグメントに相当する[カタログ番号:1257−FC]。本試験に用いた50kDaの分子量(供給者により明記)は、還元条件でのSDS−PAGEにより定義される分子量の平均値に相当する。
2−組換えヒトFcγRIIIA変異体V[CD16a]は、C末端6−Hisタグを有するGln17−Gln208フラグメントに相当する[カタログ番号:4325−FC]。本試験に用いた45kDaの分子量(供給者により明記)は、還元条件でのSDS−PAGEにより定義される分子量の平均値に相当する。
3−組換えマウスFcγRI[CD64]は、C末端6−Hisタグを有するGln25−Pro297フラグメントに相当する[カタログ番号:2074−FC]。本試験に用いた55kDaの分子量(供給者により明記)は、還元条件でのSDS−PAGEにより定義される分子量の平均値に相当する。
4−組換えマウスFcγRIII[CD16]は、C末端10−Hisタグを有するAla31−Thr215フラグメント[カタログ番号:1960−FC]に相当する。本試験に用いた37.5kDaの分子量(供給者により明記)は、還元条件でのSDS−PAGEにより定義される分子量の平均値に相当する。
他の試薬は、Biacore(GE Healthcare)により供給された。
アミンカップリングキット化学を用い、CM4センサーチップの第2フローセル(FC2)に1964RUのhz515H7VH1D76NVL2 Mabを固定した。NHSとEDCの混合物により活性化され、エタノールアミンにより不活性される第1フローセル(FC1)を、分析物(Fcγ受容体)とセンサーチップマトリックスの間の非特異的相互作用を確認して差し引くための参照表面として用いた。
動態試験は、25℃にて流速30μl/分で行った。ランニングバッファーまたは分析物溶液の調製目的のいずれかとしてHBS−EPバッファーを用いた。これらの分析物溶液を90秒注入し(結合相)、90秒待機した(解離相)。分析物としてのランニングバッファーの注入を二重参照として用いた。センサーグラムは総て、二重参照センサーグラムと相関性があった。
分析物の各注入の後に、h−FcγRIおよびm−FcγRIIIの後には20mM NaOH溶液を、またはh−FcγRIIIAおよびm−FcγRIの後には10mM NaOHを注入することによりセンサーチップを再生した。
「ラングミュア」および「不均一リガンド」モデルの2つの数学モデルを用いてこれらのセンサーグラムを解析した。
h−FcγRIで得られたセンサーグラム[図15]はラングミュアモデルに完全には適合せず(5%<Chi2/Rmax<20%)、「不均一リガンド」モデルもこの適合性の質を改善しなかった。ラングミュアモデルを用いた場合、解離定数はナノモル範囲であった(0.9±0.1nM)。
h−FcγRIIIAで得られたセンサーグラム[図16]はラングミュアモデルには明確には適合しなかった(Chi2/Rmax>20%)。「不均一リガンド」モデルはこの適合性の質を有意に改善した(Chi2/Rmax<5%)。このモデルによれば、hz515H7VH1D76NVL2 Mab Fcドメインは2成分の混合物とみなすことができる。総量の79%に当たる主成分は300〜350nMの間の解離定数を示し、副成分(21%)は27〜32nMの間の解離定数を示した。文献によれば、h−FcγRIIIAで見られる不均一性は、おそらくMab Fcドメイン上のグリコシル化の不均一性に関連している。
h−FcγRIIIA濃度(C)に対する結合相終了時の応答の平均値(RU、Reqに近似)を表すプロットは下記の数学モデル:
Req=(KA.C.Rmax)/KA.C.n+1)(ただしn=1)に適合することができる[図17]。1/KAに相当する解離定数KDは176nMに等しい。
m−FcγRIで得られたセンサーグラム[図18]はラングミュアモデルに適合することができ(5%<Chi2/Rmax<10%)、「不均一リガンド」モデルはこの適合性の質を有意に改善した(Chi2/Rmax<1%)。このモデルによれば、hz515H7VH1D76NVL2 Mab Fcドメインは2成分の混合物とみなすことができる。総量の82%に当たる主成分は75〜80nMの間の解離定数を示し、副成分(18%)は90nM前後の解離定数を示した。解離定数が接近していたとしても、反応速度は有意に異なった(結合速度は主成分では5.7倍高く、その解離速度は4.8倍速かった)。
m−FcγRI濃度(C)に対する結合相終了時の応答の平均値(RU、Reqに近似)を表すプロットは下記の数学モデル:
Req=(KA.C.Rmax)/(KA.C.n+1)(ただし、n=1)に適合することができる[図19]。1/KAに相当する解離定数KDは95nMに等しい。
m−FcγRIIIで得られたセンサーグラム[図20]はラングミュアモデルに完全には適合せず(5%<Chi2/Rmax<20%)、「不均一リガンド」モデルも適合性の質を改善することはなかった。ラングミュアモデルを用いれば、解離定数は17および18nM前後であった。
4つのFcγ受容体のランク付けを図21に示す。この図は、Kdプロットを複合体の半減期の関数として表している。文献によれば、ヒトIgG1アイソタイプ抗体のFc部分に対し、h−FcγRIは高い親和性で結合し、h−FcγRIIIAは低い親和性で結合する。m−FcγRIIIは、h−FcγRIIIAに対するhz−515H7VH1D76NVL2 Mabの主成分の親和性とh−FcγRIの場合の親和性の間の中間的な親和性で結合する。hz515H7VH1D76NVL2 Mabの両成分はm−FcγRIと、h−FcγRIIIAに対するhz515H7VH1D76NVL2の両成分の親和性間の中間的な親和性で相互作用する。
これらの試験は、hz515H7VH1D76NVL2 Mab Fcドメインが4つの供試FcγRと有意に相互作用することを明らかに示した。
実施例11:リアルタイム表面プラズモン共鳴によるc515H7 Mabとh−FcγRI、h−FcγRIIIA、m−FcγRIおよびm−FcγRIIIの間の相互作用試験
これらの試験はBiacore X装置を用いて行った。本試験に用いた可溶型の4つのFcγ受容体はR&D Systemsから購入した。
1−組換えヒトFcγRI[CD64]は、C末端6−Hisタグを有するGln16−Pro288フラグメントに相当する[カタログ番号:1257−FC]。本試験に用いた50kDaの分子量(供給者により明記)は、還元条件でのSDS−PAGEにより定義される分子量の平均値に相当する。
2−組換えヒトFcγRIIIA変異体V[CD16a]は、C末端6−Hisタグを有するGln17−Gln208フラグメントに相当する[カタログ番号:4325−FC]。本試験に用いた45kDaの分子量(供給者により明記)は、還元条件でのSDS−PAGEにより定義される分子量の平均値に相当する。
3−組換えマウスFcγRI[CD64]は、C末端6−Hisタグを有するGln25−Pro297フラグメントに相当する[カタログ番号:2074−FC]。本試験に用いた55kDaの分子量(供給者により明記)は、還元条件でのSDS−PAGEにより定義される分子量の平均値に相当する。
4−組換えマウスFcγRIII[CD16]は、C末端10−Hisタグを有するAla31−Thr215フラグメント[カタログ番号:1960−FC]に相当する。本試験に用いた37.5kDaの分子量(供給者により明記)は、還元条件でのSDS−PAGEにより定義される分子量の平均値に相当する。
他の試薬は、Biacore(GE Healthcare)により供給された。
アミンカップリングキット化学を用い、CM4センサーチップの第2フローセル(FC2)に2017RUのc515H7 Mabを固定した。NHSとEDCの混合物により活性化され、エタノールアミンにより不活性される第1フローセル(FC1)を、分析物(Fcγ受容体)とセンサーチップマトリックスの間の非特異的相互作用を確認して差し引くための参照表面として用いた。
動態試験は、25℃にて流速30μl/分で行った。ランニングバッファーとしてまたは分析物溶液の調製目的のいずれかにはHBS−EPバッファーを用いた。これらの分析物溶液を90秒注入し(結合相)、90秒待機した(解離相)。分析物としてのランニングバッファーの注入を二重参照として用いた。センサーグラムは総て、二重参照センサーグラムにより修正された。
分析物の各注入の後に、20mM NaOH、75mM NaCl溶液を注入することによりセンサーチップを再生した。
「ラングミュア」および「不均一リガンド」モデルの2つの数学モデルを用いてこれらのセンサーグラムを解析した。
h−FcγRIで得られたセンサーグラム[図22]はラングミュアモデルに完全には適合せず(Chi2/Rmax>10%)、「不均一リガンド」モデルもこの適合性の質を改善しなかった。ラングミュアモデルを用いた場合、解離定数はナノモル範囲に近かった(1.2±0.1nM)。
h−FcγRIIIAで得られたセンサーグラム[図23]はラングミュアモデルには明確には適合しなかった(Chi2/Rmax>20%)。「不均一リガンド」モデルはこの適合性の質を有意に改善した(Chi2/Rmax<5%)。このモデルによれば、c515H7 Mab Fcドメインは2成分の混合物とみなすことができる。総量の81%に当たる主成分は380〜450nMの間の解離定数を示し、副成分(19%)は32〜37nMの間の解離定数を示した。文献によれば、h−FcγRIIIAで見られる不均一性は、おそらくMab Fcドメイン上のグリコシル化の不均一性に関連している。結合相の終了時は、定常状態への到達に近い。h−FcγRIIIA濃度(C)に対する結合相終了時の応答の平均値(RU、Reqに近似)を表すプロットは下記の数学モデル:
Req=(KA.C.Rmax)/KA.C.n+1)(ただしn=1)に適合することができる[図24]。1/KAに相当する解離定数KDは160nMに等しい。
m−FcγRIで得られたセンサーグラム[図25]はラングミュアモデルに適合することができ(5%<Chi2/Rmax<10%)、「不均一リガンド」モデルはこの適合性の質を有意に改善した(Chi2/Rmax<2%)。このモデルによれば、c515H7 Mab Fcドメインは2成分の混合物とみなすことができる。総量の81%に当たる主成分は380および450nM前後の解離定数を示し、副成分(19%)は32〜37nMの間の解離定数を示した。
結合相の終了時は、定常状態への到達に近い。m−FcγRI濃度(C)に対する結合相終了時の応答の平均値(RU、Reqに近似)を表すプロットは下記の数学モデル:
Req=(KA.C.Rmax)/KA.C.n+1)(ただしn=1)に適合することができる[図26]。1/KAに相当する解離定数KDは107nMに等しい。
m−FcγRIIIで得られたセンサーグラム[図27]はラングミュアモデルには完全には適合せず(10%<Chi2/Rmax<20%)、「不均一リガンド」モデルもこの適合性の質を改善しなかった。ラングミュアモデルを用いた場合、解離定数は20nM前後であった。
4つのFcγ受容体のランク付けを図28に示す。この図は、Kdプロットを複合体の半減期の関数として表している。文献によれば、ヒトIgG1アイソタイプ抗体のFc部分に対し、h−FcγRIは高い親和性で結合し、h−FcγRIIIAは低い親和性で結合する。m−FcγRIIIは、h−FcγRIIIAに対するc515H7 Mabの主成分の親和性とh−FcγRIの場合の親和性の間の中間的な親和性で結合する。c515H7 Mabの両成分は、h−FcγRIIIAの場合と同等にm−FcγRIと相互作用する。
実施例12:CXCR4発現細胞に対するhz515H7VH1D76NVL2(hz515H7)Mabの抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)効果
ADCCは、上記(実施例5参照)の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出アッセイを用いて測定した。
簡単に述べると、フィコール密度勾配を用い、健康なボランティアドナーの血液からヒトPBMCを単離した。このPBMC画分から、Human NK Cell Enrichment Kit製造者プロトコールに従ってNK細胞を精製した。エフェクター細胞(E)として用いるNK細胞をRAMOS(リンパ腫)、DAUDI(リンパ腫)またはHeLa(子宮頸癌)腫瘍標的細胞(T)とE:T比50:1で混合し、前記標的細胞は、hz515H7VH1D76NVL2(hz515H7)抗体(10μg/ml)とともに室温で10分間事前にプレインキュベートした。37℃で4時間のインキュベーションの後、製造者の説明書に従ってCytotoxicity Detection KitPLUSを用いてLDHの放出量を測定することにより特異的細胞溶解を求めた。細胞傷害パーセントは次のように算出した:溶解率%=[実験的放出−エフェクターおよび標的の自然放出]/[標的の最大放出−標的の自然放出]×100。
図29は、CXCR4発現細胞:RAMOS、DAUDIおよびHeLa細胞に対するADCCを示す。細胞をhIgG1アイソタイプ対照(10μg/ml)とともにインキュベートした際には効果は見られなかった。これに対して、hz515H7 Mab(10μg/ml)は、RAMOS、DAUDIおよびHeLa細胞に対して有意なADCC(40%前後)を誘導することができた。
実施例13:CXCR4発現細胞に対するhz515H7VH1D76NVL2(hz515H7)Mabの補体依存性細胞傷害作用(CDC)効果
CDCアッセイは、実施例7に記載のようにCellTiter Glo試薬(Promega, Madison, WI, USA)を用いるATP測定に基づいた。
簡単に述べると、10000個の標的細胞を、hz515H7VH1D76NVL2(hz515H7)Mabの存在下、96ウェル平底プレートに播種した。室温で10分間のインキュベーションの後、健康なドナーからのヒト血清をプールしたものを終濃度10%で添加した。37℃で1時間の後、ATPの量を測定することにより生存率を決定した。細胞傷害パーセントは次のように算出した:細胞傷害率%=100−[[実験細胞/標的細胞(抗体不含)]×100]。
図30は、CXCR4発現細胞株:RAMOSおよびDAUDI細胞に対するCDCを示す。細胞をhIgG1アイソタイプ対照(10μg/mL)とともにインキュベートした際には効果は見られなかった。これに対して、hz515H7VH1D76NVL2(hz515H7−1)Mab(10μg/mL)は有意なCDC、すわなち、RAMOS細胞では58%前後、DAUDI細胞では36%前後を誘導することができた。