これから本発明の実施形態への参照が詳細に行われる。
本発明の一態様により、DLL4の生物学的活性に拮抗する治療上有効量の抗体を、他の抗体もしくは化学療法薬または放射線療法と組み合わせて投与することによって、動物における癌を治療する方法が提供される。本方法は、癌に対する治療を必要とする動物を選択することと、動物に、DLL4の生物学的活性に拮抗する治療上有効量の抗体を投与することとを含んでもよい。一実施形態では、本発明は、電離放射線およびDLL4の生物学的活性に拮抗する治療上有効量の抗体を投与することによって、ヒトにおける癌を治療する方法を提供する。
別の態様により、DLL4の生物学的活性に拮抗する治療上有効量の抗体を、他の抗体もしくは化学療法薬または放射線療法と組み合わせて投与することによって、動物における、腫瘍細胞増殖または腫瘍血管新生を低減または阻害する方法が提供される。本方法は、腫瘍細胞増殖または血管新生を低減または阻害することを必要とする動物を選択することと、動物に、DLL4の生物学的活性に拮抗する治療上有効量の抗体を投与することとを含んでもよい。一実施形態では、本発明は、治療上有効量の電離放射線およびDLL4の生物学的活性に拮抗する抗体を投与することによって、ヒトにおける腫瘍細胞増殖または腫瘍血管新生を低減または阻害する方法を提供する。
別の態様により、DLL4の生物学的活性に拮抗する治療上有効量の抗体を、他の抗体もしくは化学療法薬または放射線療法と組み合わせて投与することによって、動物における悪性腫瘍細胞浸潤または転移を低減する方法が提供される。本方法は、悪性腫瘍細胞浸潤または転移を低減することを必要とする動物を選択することと、動物に、DLL4の生物学的活性に拮抗する治療上有効量の抗体を投与することとを含んでもよい。一実施形態では、本発明は、治療上有効量の電離放射線およびDLL4の生物学的活性に拮抗する抗体を投与することによって、ヒトにおける悪性腫瘍細胞浸潤または転移を低減する方法を提供する。
別の態様により、DLL4の生物学的活性に拮抗する治療上有効量の抗体を、他の抗体もしくは化学療法薬または放射線療法と組み合わせて投与することによって、動物における新生物を低減または阻害する方法が提供される。本方法は、新生物を治療することを必要とする動物を選択することと、動物に、DLL4の生物学的活性に拮抗する治療上有効量の抗体を投与することとを含んでもよい。一実施形態では、本発明は、治療上有効量の電離放射線およびDLL4の生物学的活性に拮抗する抗体を投与することによって、ヒトにおける新生物を低減または阻害する方法を提供する。
悪性腫瘍は、黒色腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、肝細胞(肝臓)癌、甲状腺腫瘍、胃(gastric)(胃(stomach))癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、肺癌、膠芽腫、子宮内膜癌、腎臓癌、結腸癌、直腸の癌、肛門管の癌、膵臓癌、食道癌、頭頚部癌、中皮腫、肉腫、胆汁性(胆管癌)、小腸腺癌、小児悪性腫瘍、または類表皮癌から選定されてもよい。
治療可能な増殖性または血管新生性疾患には、黒色腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、肝細胞(肝臓)癌、甲状腺腫瘍、胃(gastric)(胃(stomach))癌、胆嚢癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、肺癌、膠芽腫、子宮内膜癌、腎臓癌、結腸癌、直腸の癌、肛門管の癌、膵臓癌、卵巣、食道癌、頭頚部癌、中皮腫、肉腫、胆汁性(胆管癌)、小腸腺癌、小児悪性腫瘍、類表皮癌等の新生物疾患、および慢性骨髄性白血病を含む白血病が含まれる。
本発明の別の態様により、哺乳動物における癌の治療のための薬の製造のための、他の抗体もしくは化学療法薬または放射線療法と組み合わせた、DLL4の生物学的活性に拮抗する抗体の使用が提供される。一実施形態では、その使用は、電離放射線と組み合わされる。
本発明の別の態様により、哺乳動物における癌の治療のための薬として使用するための、他の抗体もしくは化学療法薬または放射線療法と組み合わせた、DLL4の生物学的活性に拮抗する抗体が提供される。一実施形態では、その使用は、電離放射線と組み合わされる。
別の態様により、動物における腫瘍細胞増殖または腫瘍血管新生の低減または阻害のための薬の製造のための、他の抗体もしくは化学療法薬または放射線療法と組み合わせた、DLL4の生物学的活性に拮抗する抗体の使用が提供される。一実施形態では、その使用は、電離放射線と組み合わされる。
別の態様により、動物における腫瘍細胞増殖または腫瘍血管新生の低減または阻害のための薬として使用するための、他の抗体もしくは化学療法薬または放射線療法と組み合わせた、DLL4の生物学的活性に拮抗する抗体が提供される。一実施形態では、その使用は、電離放射線と組み合わされる。
別の態様により、動物における悪性腫瘍細胞浸潤または転移を低減するための薬の製造のための、他の抗体もしくは化学療法薬または放射線療法と組み合わせた、DLL4の生物学的活性に拮抗する抗体の使用が提供される。一実施形態では、その使用は、電離放射線と組み合わされる。
別の態様により、動物における悪性腫瘍細胞浸潤または転移を低減するための薬として使用するための、他の抗体もしくは化学療法薬または放射線療法と組み合わせた、DLL4の生物学的活性に拮抗する抗体が提供される。一実施形態では、その使用は、電離放射線と組み合わされる。
別の態様により、動物における新生物を低減または阻害するための薬の製造のための、他の抗体もしくは化学療法薬または放射線療法と組み合わせた、DLL4の生物学的活性に拮抗する抗体の使用が提供される。一実施形態では、その使用は、電離放射線と組み合わされる。
別の態様により、動物における新生物を低減または阻害するための薬として使用するための、他の抗体もしくは化学療法薬または放射線療法と組み合わせた、DLL4の生物学的活性に拮抗する抗体が提供される。一実施形態では、その使用は、電離放射線と組み合わされる。
一実施形態では、本発明は、DLL4に単独でまたは一部依存する腫瘍を有する患者において、DLL4に拮抗する際の使用に好適である。
一実施形態では、本発明は、癌、腫瘍、または新生物がDLL4を発現する患者において、DLL4に拮抗する際の使用に好適である。
別の実施形態では、本発明は、癌、腫瘍、または新生物がDLL4を発現しない患者において、DLL4に拮抗する際の使用に好適である。
本発明の別の態様により、他の抗体もしくは化学療法薬または放射線療法と組み合わせた、DLL4の生物学的活性に拮抗する抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、それらから本質的になる、またはそれらからなる、薬学的組成物が提供される。一実施形態では、抗DLL4抗体は、完全ヒト抗体である。一実施形態では、抗DLL4抗体は、米国特許第2010/0196385号もしくは国際公開第2010/032060号に記載される、4B4、2H10、21F7、12A1、17F3、9G8、20G8、21H3、1E4、3A7、4B3、1D4抗体から選定されるか、またはそれらの抗体、またはそれらのDLL4結合断片の組み合わせである。一実施形態では、抗体は、抗体を電離放射線と組み合わせて投与するための指示書を含む、キット中の薬学的組成物として提供される。
一実施形態では、抗DLL4抗体またはそのDLL4結合断片は、それぞれ、配列番号1、配列番号2、および配列番号3に記載される、CDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列を含む、可変重鎖アミノ酸配列と、それぞれ、配列番号4、配列番号5、および配列番号6に記載される、CDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列を含む、可変軽鎖アミノ酸配列とを含む。
別の実施形態では、抗DLL4抗体、またはその抗原結合部分は、配列番号7の配列を含む、重鎖ポリペプチドを含む。別の実施形態では、抗DLL4抗体、またはその抗原結合部分は、配列番号8の配列を含む、軽鎖ポリペプチドを更に含む。幾つかの実施形態では、抗体は、完全ヒトモノクローナル抗体である。
別の実施形態では、抗DLL4抗体またはDLL4結合断片は、American Type Culture Collection(ATCC)にて、番号PTA−9501の下で2008年9月17日に寄託された、Mab21H3VHと表記されるプラスミドにおけるポリヌクレオチドによってコードされる抗体のCDRのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、または少なくとも3つを含む、可変重鎖アミノ酸配列を含む。
別の実施形態では、抗DLL4抗体またはDLL4結合断片は、American Type Culture Collection(ATCC)にて、番号PTA−9500の下で2008年9月17日に寄託された、Mab21H3VLOPと表記されるプラスミドにおけるポリヌクレオチドによってコードされる抗体のCDRのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、または少なくとも3つを含む、可変軽鎖アミノ酸配列を含む。
当業者がCDR決定を容易に遂行し得ることに留意する。例えば、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91−3242,Bethesda Md.(1991),vols.1−3を参照されたい。Kabatは、多数の種の抗体アイソタイプからの免疫グロブリン鎖の複数の配列アライメントを提供する。整列された配列は、単一の付番方式であるKabat付番方式に従って付番される。Kabat配列は、1991年の公開以来更新されており、電子配列データベースとして入手可能である(最新のダウンロード可能バージョンは1997年)。任意の免疫グロブリン配列を、Kabatに従って、Kabat参照配列とのアライメントを行うことによって付番することができる。したがって、Kabat付番方式は、免疫グロブリン鎖を付番するための統一方式を提供する。
幾つかの実施形態では、DLL4に特異的に結合する抗体の投与後に、過剰の循環抗体を血液から除去するために、清澄剤が投与される。
他の抗体もしくは化学療法薬または放射線療法と組み合わせた、抗DLL4抗体は、DLL4誘導性細胞接着、浸潤、血管新生、増殖、および/または細胞内シグナル伝達からもたらされる症状を治療することにおいて有用である。更なる実施形態は、本明細書に記載される抗体および方法を使用して、黒色腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、肝細胞(肝臓)癌、甲状腺腫瘍、胃(gastric)(胃(stomach))癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、肺癌、膠芽腫、子宮内膜癌、腎臓癌、結腸癌、直腸の癌、肛門管の癌、および膵臓癌等の、新生物疾患を含む、細胞接着、浸潤、血管新生、および/または増殖関連疾患を治療することを伴う。
一実施形態では、他の抗体もしくは化学療法薬または放射線療法と組み合わせた、抗DLL4抗体は、腫瘍の発達が、増殖して、更なる腫瘍幹細胞、例えば、急性骨髄性白血病(AML)および乳房腫瘍の両方を効率的に生じる能力を有する幹細胞の小集団に依存する、固形腫瘍を治療する際の治療効果を有する。
本明細書に開示される第2の治療法と抗DLL4抗体を組み合わせて使用することを含む方法に関する、更なる実施形態、特長等は、下に更に詳細に提供される。
定義
別途規定されない限り、本明細書で使用される科学用語および学術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。更に、文脈上他の解釈を要する場合を除き、単数形の用語は、複数形を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。一般に、本明細書に記載される、細胞および組織培養、分子生物学、ならびにタンパク質化学およびオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド化学、ならびにハイブリダイゼーションに関連して利用される命名法、ならびにそれらの技法は、当該技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。
標準的な技法が、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養および形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)に使用される。酵素反応および精製技法は、製造業者の仕様に従って、または当該技術分野で一般的に遂行されるように、もしくは本明細書に記載されるように行われる。前述の技法および手順は、一般に、当該技術分野で周知の従来の方法に従って、ならびに本明細書全体を通じて引用され、論じられる種々の一般のおよびより具体的な参考文献に記載されるように行われる。例えば、Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2001))を参照されたく、それは参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される、分析化学、合成有機化学、ならびに創薬および製薬化学に関連して利用される命名法、ならびにそれらの検査手技および検査法は、当該技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。標準的な技法が、化学合成、化学分析、医薬調製、製剤化、および送達、ならびに患者の治療のために使用される。
本開示に従い利用されるとき、次の用語は、別途指定されない限り、次の意味を有するように理解されるものとする:
本明細書で使用される「および/または」という用語は、他方を含むまたは含まない、2つの明記される特長または構成要素の各々の具体的な開示として受け取るべきである。例えば「Aおよび/またはB」は、ちょうどあたかも各々が個々に記載されているかのように、(i)A、(ii)B、ならびに(iii)AおよびBの各々の具体的な開示として受け取るべきである。
「DLL4」という用語は、デルタ様タンパク質4前駆体、ショウジョウバエデルタ相同体4、hdelta2、MGC126344、またはUNQ1895/PRO4341としても知られる、DLL4タンパク質である分子を指す。
「DLL4の生物学的活性のアンタゴニスト」は、DLL4の活性を排除する、低減する、または有意に低減することが可能である。「DLL4の生物学的活性のアンタゴニスト」は、DLL4シグナル伝達を排除する、低減する、または有意に低減することが可能である。「DLL4の生物学的活性のアンタゴニスト」は、血管新生および/または増殖を排除または有意に低減し得る。
例として、DLL4の生物学的活性のアンタゴニストは、DLL4に結合する抗体またはその断片であってもよい。本発明の方法の実施において使用するのに好適な抗DLL4抗体の例は、実施例に記載され、また、Vehe Bedian、David Jenkins、およびIan Foltzによる米国特許第2010/0196385号、「DLL4に向けられる標的型結合剤およびその使用」にも記載され、それはまた、国際公開第2010/032060号としても公開されている。それらの刊行物の各々は、参照によりその全体が組み込まれる。故に、DLL4の生物学的活性のアンタゴニストはDLL4に特異的に結合する、任意の単離された抗体、またはその結合断片であってもよく、その抗体は、次のものを含む、次の特性のうちの1つ以上を示す。200pM未満のKDでヒトDLL4に結合する、カニクイザル(cynomologus monkey)DLL4と交差反応する、マウスDLL4と弱く交差反応する、ほぼ同等の親和性でカニクイザル(cynomologus)DLL4に結合する、DLL1またはジャグド1に有意に結合しない、2D培養において対照と比較してHUVEC細胞増殖の85%を上回る逆DLL4刺激性阻害を示す、2D培養において0.08μg/mLの濃度で対照と比べてHUVEC細胞管形成の50%超の阻害を示す、およびt=0の対照と比べて4時間で50%未満の内在化を示す。
本発明において使用するのに好適な抗DLL4抗体の一例は、米国特許第2010/0196385号または国際公開第2010/032060号に記載される、ヒト抗体21H3RKである。21H3RKは、ヒトジャグド1またはヒトDLL1への極小の結合を示す、ヒト抗ヒトDLL4抗体である。IgG1形式で試験されたとき、それは、体外でのHUVEC増殖および内皮細胞管形成の両方の有効な阻害剤であった。21H3RKもまた、体内で血管新生のスフェロイドベースのアッセイを使用して試験されたとき、活性であった。21H3RKエピトープは、DLL4のアミノ酸147〜224(AA187〜201)内に局在化している、DLL4のDSLおよびEGF1ドメインにマッピングされた。21H3RKの重鎖の可変領域のアミノ酸配列は、米国特許第2010/0196385号の配列番号30に記載されるが、21H3RKの軽鎖の可変領域のアミノ酸配列は、配列番号50に記載される。
本発明において使用するのに好適な抗DLL4抗体またはそのDLL4結合断片の別の例は、それぞれ、配列番号1、配列番号2、および配列番号3に記載される、CDR1:NYGIT、CDR2:WISAYNGNTNYAQKLQD、およびCDR3:DRVPRIPVTTEAFDIアミノ酸配列を含む、重鎖可変ドメインと、それぞれ、配列番号4、配列番号5、および配列番号6に記載される、CDR1:SGSSSNIGSYFVY、CDR2:RNNQRPS、およびCDR3:AAWDDSLSGHWVアミノ酸配列を含む、軽鎖可変ドメインとを含む、抗DLL4抗体またはそのDLL4結合断片である。一実施形態では、抗DLL4抗体またはそのDLL4結合断片は、配列番号7に記載される重鎖可変ドメインと、配列番号8に記載される軽鎖可変ドメインとを含む。
本発明において使用するのに好適な、代替的な(または更なる)抗DLL4抗体のさらに他の例としては、米国特許第2010/0196385号または国際公開第2010/032060号に記載される、抗体4B4、2H10、21F7、21H3、12A1、17F3、9G8、20G8、1E4、3A7、4B3、1D4、またはそれらの抗体もしくはそれらの結合断片の組み合わせが挙げられる。それらの抗体または結合断片のいずれもまた、21H3RK抗体と、またはそのDLL4結合断片と組み合わせて使用され得る。
DLL4ポリペプチドに関する「活性な」または「活性」は、天然DLL4ポリペプチドの生物学的または免疫学的活性を有する、DLL4ポリペプチドの部分を指す。本明細書で使用されるとき、「生物学的」は、天然DLL4ポリペプチドの活性からもたらされる生物学的機能を指す。DLL4生物学的活性は、例えば、DLL4誘導性細胞接着および浸潤、ならびに/または血管新生および/もしくは増殖を含む。
別途明記されない限り、抗体は、オリゴクローナル、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、触媒抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全ヒト抗体であってもよい。「ヒト抗体」は、ヒトに由来する抗体、または抗原攻撃に応答してヒト抗体を産生するように操作されたトランスジェニック生物から得られる抗体である。ヒト抗体はまた、その重鎖および軽鎖がヒトDNAの1つ以上の源に由来するヌクレオチド配列によってコードされる、抗体である。完全ヒト抗体は、遺伝子もしくは染色体トランスフェクション法、ファージディスプレイ技術(例えば、米国特許第5,969,108号)、または体外活性化B細胞(例えば、米国特許第5,567,610号および同第5,229,275号)によって構築することができる。抗体は、任意の種からのものであってよい。
本明細書で使用されるとき、「抗体(単数および複数)」(免疫グロブリン)という用語は、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、ラクダ化抗体、およびキメラ抗体を包含する。「抗体(単数および複数)」という用語は、ポリペプチド、またはその内表面形状および電荷分布が抗原鎖の抗原決定基の特長に相補的である、3次元結合空間を有する、ポリペプチド鎖の折り畳みから形成される少なくとも1つの結合ドメインからなる、ポリペプチドの群を指す。天然抗体は、通常、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に連結されるが、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の間で変動する。各重鎖および軽鎖はまた、一定間隔の鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(VH)、続いて幾つかの定常ドメインを有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)および他方の端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと揃えられ、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと揃えられる。軽鎖は、軽鎖定常領域のアミノ酸配列に基づいて、ラムダ鎖またはカッパ鎖のいずれかとして分類される。カッパ軽鎖の可変ドメインはまた、VKとして本明細書で表される。「可変領域」という用語はまた、重鎖または軽鎖の可変ドメインを説明するように使用され得る。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間のインターフェースを形成すると考えられる。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。かかる抗体は、ヒト、サル、ブタ、ウマ、ウサギ、イヌ、ネコ、マウス等を含むが、これらに限定されない、任意の哺乳動物に由来してもよい。
「抗体(単数または複数)」という用語は、本発明の抗体の結合断片を含み、例となる断片には、1本鎖Fvs(scFv)、1本鎖抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン抗体、Fv断片、Fab断片、F(ab’)断片、F(ab’)2断片、所望の生物学的活性を示す抗体断片、ジスルフィド安定化可変領域(dsFv)、二量体可変領域(Diabody)、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、細胞内抗体、線状抗体、1本鎖抗体分子、ならびに上のいずれかの抗体断片およびエピトープ結合断片から形成される多重特異性抗体が含まれる。特に、抗体は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な断片、すなわち、抗原結合部位を含有する分子を含む。免疫グロブリン分子は、任意の種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)またはサブクラスのものであり得る。
「mAb」という用語は、モノクローナル抗体を指す。
全抗体の断片は、結合抗原の機能を行うことができることが示されている。結合断片の例としては、(Ward,E.S.et al.,(1989)Nature 341,544−546)VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなるFab断片;(McCafferty et al(1990)Nature,348,552−554)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(Holt et al(2003)Trends in Biotechnology 21,484−490)単一抗体のVLおよびVHドメインからなるFv断片;(iv)VHまたはVLドメインからなるdAb断片(Ward,E.S.et al.,Nature 341,544−546(1989)、McCafferty et al(1990)Nature,348,552−554、Holt et al(2003)Trends in Biotechnology 21,484−490);(v)単離されたCDR領域;(vi)F(ab’)サブ2断片、すなわち2つの連結Fab断片を含む二価の断片;(vii)2つのドメインが会合して抗原結合部位を形成することを可能にする、VHドメインおよびVLドメインがペプチドリンカーによって連結される、1本鎖Fv分子(scFv)(Bird et al,(1988)Science,242,423−426、Huston et al,(1988)PNAS USA,85,5879−5883);(viii)二重特異性1本鎖Fv二量体(国際特許出願PCT/US92/09965号);ならびに(ix)「二重特異性抗体」、すなわち遺伝子融合によって構築される多価または多重特異性断片(国際公開第94/13804号、Holliger,P.(1993)et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90 6444−6448)が挙げられる。Fv、scFv、または二重特異性抗体分子は、VHおよびVLドメインを連結するジスルフィド架橋の組み込みによって安定化されてもよい(Reiter,Y.et al,Nature Biotech,14,1239−1245,1996)。CH3ドメインに接合されるscFvを含むミニボディがまた、作製されてもよい(Hu,S.et al,(1996)Cancer Res.,56,3055−3061)。結合断片の他の例としては、Fab’があり、それは、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステイン、および定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を担持するFab’断片である、Fab’−SHを含む、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端における少数の残基の付加の分だけFab断片とは異なる。
抗体の「結合断片」は、組換えDNA技法によって、または無傷抗体の酵素開裂もしくは化学開裂によって産生される。結合断片には、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、dAb、および1本鎖抗体が含まれる。「二重特異性」または「二重機能性」抗体以外の抗体は、同一であるその結合部位の各々を有することが理解される。抗体は、過剰の抗体が、対抗受容体に結合する受容体の量を、少なくとも約20%、40%、60%、または80%、およびより通常には約85%を超えて低減するとき(体外競合結合アッセイにおいて測定される)、対抗受容体への受容体の接着を実質的に阻害する。
「エピトープ」という用語は、免疫グロブリンへの特異的結合が可能である、任意のタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は通常、アミノ酸または糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面群からなり、特定の3次元構造特性、ならびに特定の電荷特性を有し得るが、常にそうとは限らない。抗体は、解離定数が1μΜ以下、100nM以下、または10nM以下であるとき、抗原に「特異的に結合する」といわれる。
「アイソタイプ」という用語は、抗体の重鎖または軽鎖定常領域の分類を指す。抗体の定常ドメインは、抗原への結合に関与しないが、種々のエフェクター機能を示す。重鎖定常領域のアミノ酸配列に応じて、所与のヒト抗体または免疫グロブリンは、免疫グロブリンの5つの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMのうちの1つに割り当てることができる。これらのクラスのうちの幾つかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1(ガンマ1)、IgG2(ガンマ2)、IgG3(ガンマ3)、およびIgG4(ガンマ4)、ならびにIgA1およびIgA2に更に分割されてもよい。免疫グロブリンの異なるクラスの構造および3次元構成は、周知である。種々のヒト免疫グロブリンクラスのうち、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、およびIgMのみが、補体を活性化することが知られる。ヒトIgG1およびIgG3は、ヒトにおいて媒介することが知られる。ヒト軽鎖定常領域は、2つの主要なクラス、すなわちカッパおよびラムダに分類され得る。
所望される場合、DLL4に特異的に結合する抗体のアイソタイプは、例えば、異なるアイソタイプの生物学的特性を活用するために、スイッチングすることができる。例えば、幾つかの状況において、抗体が、補体を結合し、補体依存性細胞傷害性(CDC)に関与する能力を有することが望ましい可能性がある。同様の能力を有する、抗体の幾つかのアイソタイプが存在し、それには限定なしに、次のものが含まれる:マウスIgM、マウスIgG2a、マウスIgG2b、マウスIgG3、ヒトIgM、ヒトIgA、ヒトIgG1、およびヒトIgG3。他の実施形態では、抗体が、エフェクター細胞上のFc受容体に結合し、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)に関与する能力を有することが望ましい可能性がある。同様の能力を有する、抗体の幾つかのアイソタイプが存在し、それには限定なしに、次のものが含まれる:マウスIgG2a、マウスIgG2b、マウスIgG3、ヒトIgG1、およびヒトIgG3。抗体は、当該技術分野で既知である従来の技法を使用して、アイソタイプスイッチングを受けることができることが理解されるであろう。かかる技法には、とりわけ、直接組換え技法(例えば、米国特許第4,816,397号を参照されたい)、細胞間融合技法(例えば、米国特許第5,916,771号および同第6,207,418号を参照されたい)の使用が含まれる。
例として、本明細書で論じられる抗DLL4抗体は、完全ヒト抗体である。抗体が、DLL4への所望の結合を保有した場合、それは、(抗体の特異性およびその親和性のうちの幾つかを規定する)同じ可変領域を依然として保有しながら、容易にアイソタイプスイッチングを受けて、ヒトIgM、ヒトIgG1、またはヒトIgG3アイソタイプを生成することが可能であろう。するとかかる分子は、補体に結合し、CDCに関与する能力を有する、かつ/またはエフェクター細胞上のFc受容体に結合し、ADCCに関与する能力を有するであろう。
本明細書で使用されるとき、「哺乳動物」は、哺乳動物と見なされる任意の動物を指す。好ましくは、哺乳動物は、ヒトである。
本明細書で使用されるとき、「動物」は、哺乳動物と見なされる動物を包含する。好ましくは、動物は、ヒトである。
「患者」という用語は、ヒトおよび獣医学的対象を含む。
「薬剤」という用語は、本明細書で、化学化合物、化学化合物の混合物、生体高分子、または生体物質から作製される抽出物を表すように使用される。
本明細書で使用される「医薬品または医薬品(pharmaceutical agent or drug)」という用語は、患者に適切に投与されるとき、所望の治療効果を誘導可能である、化学化合物または組成物を指す。本明細書における他の化学用語は、McGraw−Hill Dictionary of Chemical Terms(Parker,S.,Ed.,McGraw−Hill,San Francisco(1985))(参照により本明細書に組み込まれる)によって例証される、当該技術分野における従来の使用法に従って使用される。
本明細書で使用される「治療上有効」量は、何らかの改善または便益を対象に提供する量である。換言すると、「治療上有効」量は、少なくとも1つの臨床的症状における何らかの緩和、軽減、および/または減少を提供する量である。本発明の方法によって治療することができる障害に関連する臨床的症状は、当業者に周知である。更に、当業者であれば、何らかの便益が対象に提供される限り、治療効果が完全または治癒的である必要はないことを理解するであろう。
本発明の実施形態は、他の抗体もしくは化学療法薬または放射線療法と組み合わせた、疾患に対する治療として有用である抗DLL4抗体の滅菌医薬製剤を含む。かかる製剤は、天然DLL4の、ノッチ1またはノッチ4受容体への結合を阻害し、それによって、例えば、血清または組織DLL4発現が異常に亢進されるような、病的状態を効果的に治療する。抗DLL4抗体は、好ましくは、ノッチ1またはノッチ4受容体への天然DLL4結合を強力に阻害するのに十分な親和性を保有し、好ましくは、ヒトにおける頻繁でない投薬を可能にするのに十分な作用持続期間を有する。長期的な作用持続期間は、皮下または筋肉内注射等の代替の非経口経路による、頻度のより低い、より利便的な投薬スケジュールを可能にするであろう。
滅菌製剤は、抗体の凍結乾燥および再構成の前または後に、例えば、滅菌濾過膜を通じる濾過によって作り出すことができる。抗体は通常、凍結乾燥形態でまたは溶液中で保管されるであろう。治療用抗体組成物は、一般に、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下注射針によって穿通可能な栓等の製剤の回収を可能にするアダプターを有する静脈内溶液バッグまたはバイアル中に、配置される。
抗体投与の経路は、例えば、静脈内、腹腔内、脳内、筋肉内、眼内、動脈内、髄腔内、吸入、もしくは病変内経路による、注射もしくは注入、腫瘍部位への直接注射、または下に注記される徐放系による、既知の方法に従う。幾つかの実施形態では、抗体は、注入によってまたはボーラス注射によって、継続的に投与される。
治療上用いられるべき抗体の有効量は、例えば、治療上の目的、投与経路、および患者の病態に依存するであろう。したがって、治療専門家は、最適な治療効果を得るために、必要に応じて、投薬量を滴定し、投与経路を修正することが好ましい。典型的に、臨床医は、所望の効果を達成する投薬量に到達するまで、抗体を投与するであろう。この治療の進行は、従来のアッセイによって、または本明細書に記載されるアッセイによって、簡便に監視される。
本明細書に記載される抗体は、薬学的に許容される担体と混合して作製することができる。
所与の患者のための抗体製剤の投薬量は、担当医師によって、重症度および疾患の種類、体重、性別、食生活、投与の時間および経路、他の薬物治療、ならびに他の関連性のある臨床的要因を含む、薬物の作用を修正することが知られる種々の要因を考慮して、決定されるであろう。治療上有効な投薬量は、体外方法または体内方法のいずれによって決定されてもよい。
治療上用いられるべき本発明の抗体の有効量は、例えば、治療上の目的、投与経路、および患者の病態に依存するであろう。したがって、治療専門家が、最適な治療効果を得るために、必要に応じて、投薬量を滴定し、投与経路を修正することが好ましい。典型的な1日投薬量は、上述の要因に応じて、患者の体重の約0.0001mg/kg、0.001mg/kg、0.01mg/kg、0.1mg/kg、1mg/kg、10mg/kgから、最大100mg/kg、1000mg/kg、10000mg/kg、またはそれを超える範囲であり得る。投薬量は、上述の要因に応じて、患者の体重の0.0001mg/kg〜20mg/kg、0.0001mg/kg〜10mg/kg、0.0001mg/kg〜5mg/kg、0.0001〜2mg/kg、0.0001〜1mg/kg、0.0001mg/kg〜0.75mg/kg、0.0001mg/kg〜0.5mg/kg、0.0001mg/kg〜0.25mg/kg、0.0001〜0.15mg/kg、0.0001〜0.10mg/kg、0.001〜0.5mg/kg、0.01〜0.25mg/kg、または0.01〜0.10mg/kgであってもよい。例えば、本発明の抗体は、約0.1〜約10mg/kgの投薬量で投与されてもよい。典型的に、臨床医は、所望の効果を達成する投薬量に到達するまで、抗体を投与するであろう。この治療の進行は、従来のアッセイによって、または本明細書に記載されるように、簡便に監視される。
本明細書における組成物および方法による治療的実体(therapeutic entities)の投与は、改善された伝達、送達、耐性等を提供するために製剤中に組み込まれる、好適な担体、賦形剤、および他の薬剤と共に行われるであろうことが理解されるであろう。Baldrick P.“Pharmaceutical excipient development:the need for preclinical guidance.”Regul.Toxicol.Pharmacol.32(2):210−8(2000)、Wang W.“Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals.”Int.J.Pharm.203(1−2):1−60(2000)、Charman W N“Lipids,lipophilic drugs,and oral drug delivery−some emerging concepts.” J Pharm Sci.89(8):967−78(2000)、Powell et al.“Compendium of excipients for parenteral formulations”PDA J Pharm Sci Technol.52:238−311(1998)、ならびに薬剤師に周知の製剤、賦形剤、および担体に関連する更なる情報については、その中の引用もまた参照されたい。
本発明の抗体の投薬は、反復されてもよく、投薬の頻度は、いずれの望ましくない作用も最小限に抑えながら、治療上の便益を最大限にするように、調整されてもよい。例えば、本発明の抗体は、毎日、隔日に、週2回、または毎週投与されてもよい。幾つかの非限定的な投薬スケジュールは、具体的な治療法の文脈において、および実施例において、本開示の別の箇所で提供される。
記載される抗DLL4抗体は、放射線療法、更なる抗体もしくは他の生物学に基づく治療法、従来の外科手術、または化学療法のうちの1つ以上と組み合わせて適用されてもよい。
本発明の一態様では、抗DLL4抗体療法は、放射線療法とも称される、放射線治療と併用される。種々の種類の放射線療法が利用可能であり、特定の放射線療法の選択は、一般に、治療対象の癌、腫瘍、または新生物の性質に依存する。放射線療法の3つの主な種類は、体外照射療法(EBRTまたはXRT)または遠隔放射線療法、近接照射療法または密封線源放射線療法、および全身放射性同位体療法(systemic radioisotope therapy)または非密封線源放射線療法である。その差異は、放射線源の位置に関係し、すなわち体外は、身体の外側であり、近接照射療法は、治療されている領域に正確に配置される密封放射性線源を使用し、全身放射性同位体は、注入または経口摂取によって与えられる。近接照射療法は、放射性線源の一時的または永続的配置を使用することができる。
体内施与される放射線療法は、放射性核種を抗体、ホルモン、もしくは他の標的分子に、またはビーズ、ロッド、シード、もしくは除去可能なカテーテル等の移植可能な物質に連結することによって、遂行することができる。使用され得る放射性核種(放射性同位体)には、3H、14C、15N、35S、89Sr、90Y、99Tc、103Pd、111In、125I、131I、153Sm、192Irが含まれる。
「電離放射線」(IR)という用語は、X線、ガンマ線(例えば、ラジウム、ウラン、またはコバルト60によって放射される)、および粒子線放射線(例えば、プロトン、中性子、パイ中間子または重イオン)を指す。放射線治療線量は、X線またはガンマ放射線を利用するとき、約0.01〜100グレイ(「Gy」)の範囲内、約0.1〜80Gyの範囲内、約1〜10Gyの範囲内、0.5〜10Gyの範囲内、または1〜5Gyの範囲内であってもよい。一般に、放射線の複数回線量投与が、治療クールにわたって患者に投与される。完全な治療クールにわたる放射線治療の総線量は、1〜100Gy、1〜90Gy、1〜80Gy、1〜70Gy、1〜60Gy、1〜50Gy、1〜40Gy、1〜30Gy、1〜20Gy、1〜10Gy、1〜5Gy、8〜100Gy、8〜90Gy、8〜80Gy、8〜70Gy、8〜60Gy、8〜50Gy、8〜40Gy、8〜30Gy、8〜20Gy、8〜10Gy、10〜100Gy、10〜90Gy、10〜80Gy、10〜70Gy、10〜60Gy、10〜50Gy、10〜40Gy、10〜30Gy、10〜20Gy、20〜100Gy、20〜90Gy、20〜80Gy、20〜70Gy、20〜60Gy、20〜50Gy、20〜40Gy、20〜30Gy、30〜100Gy、30〜90Gy、30〜80Gy、30〜70Gy、30〜60Gy、30〜50Gy、30〜40Gy、40〜100Gy、40〜90Gy、40〜80Gy、40〜70Gy、40〜60Gy、40〜50Gy、50〜100Gy、50〜90Gy、50〜80Gy、50〜70Gy、50〜60Gy、60〜100Gy、60〜90Gy、60〜80Gy、60〜70Gy、70〜100Gy、70〜90Gy、70〜80Gy、80〜100Gy、80〜90Gy、90〜100Gyの範囲内であっても、約1Gy、約5Gy、約8Gy、約10Gy、約20Gy、約30Gy、約40Gy、約50Gy、約60Gy、約70Gy、約80Gy、約90Gy、または約100Gyであってもよい。有効量は、治療されている癌の種類および病期に応じて変動する。治癒的(根治)症例について、固形上皮腫瘍に対する典型的な線量は、約60〜約80Gyの範囲である一方で、リンパ腫腫瘍は、20〜40Gyで、典型的に1.8〜2Gy分割により治療される。補助線量は、典型的に、45〜60Gy前後であり、1.8〜2Gy分割による。一時緩和的治療法について、線量は、典型的に30〜60Gy前後であり、典型的に約3〜8Gy/分割、例えば、約5Gy/分割の、5〜10分割による。例えば、一時緩和的治療法は、単回線量として投与される約8Gyの総線量を含んでもよく、またはそれは、5Gy分割により投与される20Gyの総線量を含んでもよく、またはそれは、3Gy分割により投与される30Gyの総線量を含んでもよい。患者が化学療法を受容しているかどうか、放射線療法が外科手術の前それとも後に行われているか、および外科手術の成功度合いを含む、多くの他の要因が、線量を選択するときに考慮されてもよい。
幾つかの実施形態では、放射線は、1日当たり2〜8、2〜6、3〜5、4〜6、または約5Gyの線量で送達されるであろう。更に、それは、1分当たり0.25〜6Gyの速度で送達されてもよい。電離放射線は、1日に2〜20Gyの総線量による、または1日当たり0.1〜6Gyの範囲で、最大30日間の、異なる日の分割によるものであってもよい。使用され得る分割線量の他の例は、特定の治療法の文脈において、本明細書に記載される。成人のための典型的な分割スケジュールは、1日当たり1.8〜2Gy、週5日である。小児のために、典型的な分割サイズは、1日当たり1.5〜1.8Gyであってもよい。幾つかの症例においては、治療クールの終わり近くで、特に、頭頚部腫瘍等の、それらがより小さいときにより迅速に再生する腫瘍に対して、1日当たり2分割が使用される。他の分割スケジュールには、肺癌に対する、連続過分割加速放射線療法(CHART)、および乳癌に対する、加速部分乳房照射(APBI)が含まれる。CHARTは、1日当たり3回のより小さい分割量からなる。APBIは、通常、全乳房照射と比較して、1日当たり2回の5日間にわたる高線量分割を伴い、ここで単回のより小さい分割量は、週5回、6〜7週間の期間にわたって与えられる。通常の線量が1日当たり2〜3回与えられる、加速分割もまた使用され得る。
放射線は、任意の誘導手順によって腫瘍に向けられてもよく、典型的には、治療の直前に撮られるコンピュータ断層撮影(またはCT)画像を伴う。患者の身体は、しばしば、放射線が向けられるべき場所を示すように、皮膚上に印を付けられる。幾つかの施設において、患者はまた、腫瘍が先のCT走査によって示される場所にあることを確認しようとするための追加措置として、身体の型の中に横たわるように位置付けられる。腫瘍のいずれの部分も外すことを回避するために、腫瘍の辺縁が、一般に放射線標的領域に含まれる。
Carlos A Perez&Luther W Brady:Principles and Practice of Radiation Oncology,2nd Ed.JB Lippincott Co,Phila,1992は、本発明において使用することができる放射線療法プロトコルおよびパラメータを記載する。膠芽腫について、Simpson W.J.et al.,Int J Radiat Oncol Biol Phys(1993)26:239−244は、本発明の方法において有用な臨床プロトコルを記載する。同様に、Borgelt et al.,Int J Radiat Oncol Biol Phys(1980)6:1−9は、本発明の方法において有用な臨床プロトコルを記載する。抗血管新生療法を、放射線療法を含む臨床プロトコルに組み込むための他の考慮事項は、Senan&Smit,The Oncologist,(2007)12:456−77に論じられる。
併用療法を伴う実施形態では、連帯治療は、治療の個々の構成要素の同時、順次、または別個の投薬を用いて達成されてもよい。投薬スケジュールの例が、実施例を含めて、本明細書に提示される。抗DLL4抗体が、別の産物、またはその薬学的に許容される塩と併用されるとき、それは、本明細書に記載される投薬量範囲内で使用され、その他の薬学的活性剤は、その認可される投薬量範囲内で使用される。
「並行に」という用語は、本明細書で、投与の少なくとも一部が時間的に重複する、2つ以上の治療剤の投与を指すように使用される。したがって、並行投与は、1つ以上の薬剤(複数可)の投与が、1つ以上の他の薬剤(複数可)の投与を中止した後も継続するときの投薬レジメンを含む。更に、「併用」療法または治療は、同時療法を必要としない(しかしそれを除外しない)。例えば、放射線療法が抗DLL4抗体治療と組み合わされる実施形態では、放射線療法は、抗DLL4抗体治療に先行してもよく、それは、抗DLL4抗体治療と並行して投与されてもよく、それは、抗DLL4抗体治療と同じ日に投与されてもよく、またはそれは、抗DLL4抗体治療の後に投与されてもよい。治療順序に関する更なる詳細は、具体的な治療法の文脈において、および実施例において提供される。
一実施形態では、抗DLL4抗体およびIR等の放射線療法との併用療法または治療は、相乗効果をもたらす。併用療法は、2つの治療法によってもたらされる転帰が、各治療法によって別個に達成される転帰の合計よりも大きい場合、「相乗的」である。2つの治療法が相乗的であるかどうかを決定するために使用され得る転帰は、実施例におけるものを含めて、本明細書に記載されるものである。例えば、相乗作用は、体内モデルにおいて、腫瘍が治療前のサイズに再成長するために必要とされる時間の遅延、減少した腫瘍血管新生、増加した腫瘍壊死、増加した腫瘍低酸素、減少した転移(その数またはそれまでの時間)、減少した腫瘍体積、減少した腫瘍細胞数、または増加した生存時間から選定される、1つ以上の基準を使用して評価されてもよい。
本発明の方法は、癌、腫瘍、および他の新生物疾患を治療するために有用である。
哺乳動物における「癌」は、細胞の異常な、無制御の成長によって引き起こされる、幾つかの病態のいずれかを指す。「癌細胞」と称される、癌を引き起こす能力を有する細胞は、無制御な増殖、不死性、転移能、急速な成長率および増殖率、ならびにある特定の典型的な形態的特長等の、幾つかの特徴的な特性を保有する。しばしば、癌細胞は、腫瘍の形態であろうが、かかる細胞はまた、哺乳動物内に単独で存在する場合もあり、または白血病細胞等の非腫腫瘍形成性癌細胞であり得る。転移は、癌が、それが原発腫瘍として最初に生じた場所から、体内の離れた場所まで拡散するプロセスである。原発腫瘍の拡散からもたらされる癌は、転移、または転移性癌と称されてもよい。癌は、(例えば、臨床的または放射線学的手段によって)腫瘍(単数または複数)の存在を検出すること、腫瘍内のまたは別の生体試料からの(例えば、組織生検からの)細胞を検査すること、癌を示す血液マーカー(例えば、CA125、PAP、PSA、CEA、AFP、HCG、CA 19−9、CA 15−3、CA 27−29、LDH、NSE、およびその他)を測定すること、および癌を示す遺伝子型(例えば、TP53、ATM等)を検出することを含むが、これらに限定されない、幾つかの方法のいずれにおいても検出することができる。しかしながら、上の検出方法のうちの1つ以上における陰性結果は、必ずしも癌の不在を示すわけではなく、例えば、癌治療に対する完全奏功を示した患者は、その後の再発からも明らかなように、依然として癌を有する場合がある。
本明細書で使用される「新生物」は、細胞、腫瘍、悪性腫瘍、いぼ、ポリープ、非固形腫瘍、嚢胞および他の腫瘍の任意の異常成長を指す。新生物の部位は、新生細胞、血管内皮、またはマクロファージおよび白血球等等の免疫系細胞を含むが、これらに限定されない、多様な細胞型を含有し得る。
新生物疾患には、黒色腫、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、肝細胞(肝臓)癌、甲状腺腫瘍、胃(gastric)(胃(stomach))癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、肺癌、膠芽腫、子宮内膜癌、腎臓癌、結腸癌、および膵臓癌が含まれるが、これらに限定されない。ヒトにおける例となる癌には、膀胱腫瘍、乳房腫瘍、前立腺腫瘍、基底細胞癌、胆道癌、膀胱癌、骨癌、脳癌、CNS癌(例えば、神経膠腫腫瘍)、子宮頸癌、膣癌、絨毛癌、結腸、直腸、肛門管癌、結合組織癌、消化器系の癌;子宮内膜癌、食道癌;眼癌;頭頚部の癌;胃(gastric)癌;上皮内新生物;腎臓癌;喉頭癌;白血病;肝臓癌;肺癌(例えば、小細胞および非小細胞);ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫を含むリンパ腫;黒色腫;骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔癌(例えば、唇、舌、口、および咽頭);卵巣癌;膵臓癌、網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫;直腸癌、腎臓癌、呼吸器系の癌;肉腫、皮膚癌;胃(stomach)癌、精巣癌、甲状腺癌;子宮癌、泌尿器系の癌、ならびに他の癌および肉腫が含まれる。治療することができる腫瘍および新生物の更なる例には、説明および実施例における他の箇所に記載される種類の腫瘍および新生物がある。
加えて、実施形態は、イヌ、ネコ、および他のペットにおける、癌、腫瘍、新生物、および悪性障害の治療を含む。かかる障害には、リンパ肉腫、骨肉腫、乳腺腫瘍、肥満細胞腫、脳腫瘍、黒色腫、腺扁平細胞癌、カルチノイド肺腫瘍、気管支腺腫瘍、細気管支腺癌、線維腫、粘液軟骨腫、肺肉腫、神経肉腫、骨腫、乳頭腫、網膜芽細胞腫、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、バーキットリンパ腫、小神経膠腫、神経芽細胞腫、破骨細胞腫、口腔新生物、繊維肉腫、骨肉腫および横紋筋肉腫、生殖扁平上皮細胞癌、可移植性性器腫瘍、精巣腫瘍、精上皮腫、セルトリ細胞腫瘍、血管外皮細胞腫、組織球腫、緑色腫(例えば、顆粒球性肉腫)、角膜乳頭腫、角膜扁平上皮細胞癌、血管肉腫、胸膜中皮腫、基底細胞腫瘍、胸腺腫、胃(stomach)腫瘍、副腎癌、口腔乳頭腫症、血管内皮腫および嚢胞腺腫、濾胞性リンパ腫、腸管リンパ肉腫、線維肉腫および肺扁平上皮細胞癌が含まれるが、これらに限定されない。
幾つかの実施形態では、癌、腫瘍、または新生物を有する患者は、1つ以上の従来の癌治療法が既に奏功しなかった場合があるか、または従来の治療法が禁忌となる場合がある。それらの実施形態のうちの幾つかにおいて、患者は以前に、放射線療法で治療されたことがない、化学療法で治療されたことがない、抗体療法で治療されたことがない、ホルモン療法で治療されたことがない、腫瘍または新生物減量術を受けたことがない、または抗DLL4抗体および放射線療法での最初の治療前にそれらの療法のうちの1つ以上の組み合わせを有したことがない。
他の実施形態では、癌、腫瘍、または新生物を有する患者は、以前に、癌、腫瘍、または新生物に対して治療されたことがない場合がある。これらの患者において、単独でまたは放射線療法との併用療法の一部としてのいずれかによる、抗DLL4抗体での治療は、癌、腫瘍、または新生物に対する初期の治療においてであってもよい。
放射線療法、化学療法、抗体療法、ホルモン療法、または減量術での治療に加えて、抗DLL4抗体が、癌、腫瘍、または新生物を有する患者に投与される実施形態において、抗DLL4抗体は、仮に他の治療が単独で施与された場合に得られたであろう転帰を改善する。「改善された転帰」は、増加した無病生存時間、増加した無増悪生存時間、または増加した全体的な生存時間によって判断されてもよい。「無病生存(DFS)」は、患者が、癌の復活なしに、治療の開始からまたは最初の診断から約1年間、約2年間、約3年間、約4年間、約5年間、約10年間等の規定の一定期間にわたって、生存して留まることを指す。DFSの分析に使用される事象は、癌の局所、局部、および遠隔再発、続発癌の出現、ならびに前の事象(例えば、乳癌再発または第2の原発癌)を伴わない任意の原因による患者の死亡を含むことができる。これらの基準を同様に使用して、治療法の組み合わせが相乗的であるかどうかを決定してもよい。抗DLL4抗体および放射線療法を含む併用治療の有効性を示す更なる基準は、実施例に記載される。
幾つかの実施形態では、Levin et al.,Int J.Radiat Oncol Biol Phys(2011)79(5):1487−95に記載される、神経系の放射線壊死の症状または重症度の低減もまた、IRと組み合わせた抗DLL4抗体の投与後の改善された転帰の尺度として使用され得る。
故に、一態様では、本発明は、抗DLL4抗体を電離放射線(IR)と組み合わせて投与することによって、結腸直腸癌を治療する方法を提供する。幾つかの実施形態では、抗DLL4抗体の最初の線量は、IRの最初の線量の後に投与される。他の実施形態では、抗DLL4抗体の最初の線量は、IRの前に投与される。さらに他の実施形態では、抗DLL4抗体の最初の線量およびIRの最初の線量は、同じ日に投与される。幾つかの実施形態では、抗DLL4抗体は、既存のプロトコルに組み込まれ、それは、抗血管新生剤での治療に加えて、またはその代わりに使用される。故に、一実施形態では、本明細書に記載される線量での抗DLL4抗体は、Koukouakis et al.,Clin.Cancer Res.(2009)15(22):7069−76に記載されるプロトコルにおいて、ベバシズマブの代わりに使用され、ここで結腸直腸癌は、進行性の、手術不可能な結腸直腸癌であり、治療スケジュールは、アミホスチン、カペシタビン(毎日600mg/m2、5日/週)により補助される、少分割(3.4Gy/分割×15)スプリットコース加速放射線療法(およそ67Gyの生物学的線量当量)を含む。一実施形態では、治療は、抗DLL4抗体の追加を伴わない同じプロトコルと比較して、改善された全体的な生存時間、または改善された全体的な生存率、または改善された無増悪生存時間をもたらす。
別の態様では、本発明は、抗DLL4抗体を電離放射線(IR)と組み合わせて投与することによって、膵臓癌を治療する方法を提供する。幾つかの実施形態では、抗DLL4抗体の最初の線量は、IRの最初の線量の後に投与される。他の実施形態では、抗DLL4抗体の最初の線量は、IRの前に投与される。さらに他の実施形態では、抗DLL4抗体の最初の線量およびIRの最初の線量は、同じ日に投与される。幾つかの実施形態では、抗DLL4抗体は、既存のプロトコルに組み込まれる。故に、一実施形態では、電離放射線および抗DLL4抗体は、ゲムシタビンと組み合わせて投与される。別の実施形態では、抗DLL4抗体は、抗血管新生剤での治療に加えて、またはその代わりに使用される。例えば、一実施形態では、本明細書に記載される線量およびスケジュールでの抗DLL4抗体は、Picozzi et al.,Annals Oncol.(2011)22:348〜54に記載されるプロトコルに追加され、ここで膵臓癌は、切除された膵臓腺癌であり、治療スケジュールは、5.5週周期の分割(1.8Gy/分割×28)放射線療法(およそ50Gyの生物学的線量当量)を5日/週、5.5週間にわたって;5−フルオロウラシル(5−FU)を継続的に38日間連続で175mg m2/日で注入;シスプラチン(静脈内30mg/m2)を毎週、5.5週周期の各週の最初の日に;インターフェロンアルファ−2b(3百万単位)を皮下により、5.5週周期の各週の1、3、および5日目に与えることを含む。更なる周期の5−FUが、合間に2週間の休止を用いながら追加されてもよい。一実施形態では、治療は、抗DLL4抗体の追加を伴わない同じプロトコルと比較して、改善された全体的な生存時間、または改善された全体的な生存率、または改善された無増悪生存時間をもたらす。
さらに別の態様では、本発明は、抗DLL4抗体を電離放射線(IR)と組み合わせて投与することによって、多形膠芽腫等の脳癌を治療する方法を提供する。幾つかの実施形態では、抗DLL4抗体の最初の線量は、IRの最初の線量の後に投与される。他の実施形態では、抗DLL4抗体の最初の線量は、IRの前に投与される。さらに他の実施形態では、抗DLL4抗体の最初の線量およびIRの最初の線量は、同じ日に投与される。幾つかの実施形態では、抗DLL4抗体は、既存のプロトコルに組み込まれ、それは、抗血管新生剤での治療に加えて、またはその代わりに使用される。故に、一実施形態では、本明細書に記載される線量での抗DLL4抗体は、Lai e al.,J.Clin.Oncol.(2011)29(2):142−48に記載されるプロトコルにおいて、ベバシズマブの代わりに使用され、ここで脳癌は、新たに診断された多形膠芽腫であり、治療スケジュールは、10mg/kgの隔週の抗体療法を静脈内投与、および75mg/m2テモゾロミド(TMZ)を、分割(2.0Gy/分割×30;およそ60Gy)を含む6週間の放射線療法期(外科手術の3〜6週間後に開始)中に経口投与することを含む。放射線療法の完了後、抗体療法を2週間毎で継続する。最後のTMZ用量から2週間の最低限の間隔の後、患者は、隔週、抗体で、および4週間毎に、各28日周期の最初の5日間150〜200mg/m2/日のTMZで、進行するまで、または最大で24周期にわたって治療され、その時点で、非進行患者は、抗体療法を進行するまで2週間毎で継続する。別の実施形態では、ベバシズマブが保持され、抗DLL4抗体が、本明細書に記載される線量およびスケジュールでプロトコルに追加される。さらに別の実施形態では、放射線と組み合わせた抗DLL4抗体は、再発性膠芽腫における疾患進行時に、Beal et al.,Radiat Oncol(2011)Jan 7:6:2に記載される放射線療法プロトコルのうちの1つを用いて使用される。一実施形態では、治療は、抗DLL4抗体の追加を伴わない同じプロトコルと比較して、改善された全体的な生存時間、または改善された全体的な生存率、または改善された無増悪生存時間をもたらす。
実施例
次の実施例は、行われた実験および達成された結果を含めて、例示目的のために提供されるにすぎず、本明細書の教示を限定するものとして解釈されるべきではない。
実施例1から実施例6に記載される試験は、ノッチリガンドであるDLL4を内在性で発現する、ヒト結腸直腸癌異種移植系を利用して、腫瘍灌流および成長に対する、(GSIを介した)広範囲のノッチ遮断または選択的DLL4−ノッチ遮断と、電離放射線(IR)との相互作用を探索した。
統計的分析
別途注記されない限り、データは、平均および標準誤差として提示される。統計的有意性を、一元配置分散分析を使用して、Dunnettの事後検定を用いてGraphPad Prismプログラムバージョン4.0(GraphPadソフトウェア,USA)において決定し、p<0.05の値を統計的に有意と見なした。
ノッチシグナル伝達阻害剤および細胞株
ノッチシグナル伝達阻害剤
複数の抗DLL4抗体の産生は、Vehe Bedian、David Jenkins、およびIan Foltzによる米国特許第2010/0196385号、「DLL4に向けられる標的型結合剤およびその使用」に詳述され、それはまた、国際公開第2010/032060号としても公開されている。それらの刊行物の各々は、参照によりその全体が組み込まれる。それらの抗DLL4抗体のうちの1つである、ヒト抗体2A5を、これに続く実施例において使用したが(ここでそれは「DLL4 mAb」と称される)、その使用は、例となるものにすぎない。
ジベンザゼピン(DBZ)は、事実上全てのノッチシグナル伝達を遮断するために使用され得る、γ−セクレターゼ阻害剤である。しかしながら、γ−セクレターゼは、ノッチ受容体に加えて、広範な潜在的基質を有する(Fortini ME,Nat Rev Mol Cell Biol.2002,3(9):673−84)。
細胞株
無傷ノッチシグナル伝達に対するモデル結腸直腸癌細胞株を特定および検証するために、Oncomine(www.oncomine.org)を使用して、DLL4発現に対するWooster細胞株パネルをスクリーニングした(データは示されず)。DLL4発現は、LS174T、HCT−15、およびCOLO 201を含む、複数の結腸直腸腺癌細胞株において予測された。LS174T、LS180(LS174Tをもたらす細胞株)、COLO 205(COLO 201と同じ患者に由来する細胞株)、HCT−15ヒト結腸腺癌細胞株、およびFaDuヒト下咽頭扁平上皮細胞癌細胞株を、American Type Culture Collectionから購入した(それぞれ、CL−188、CL−187、CCL−222、CCL−225、HTB−43)。細胞株を、10%ウシ胎児血清(Lonza)、およびペニシリン−ストレプトマイシン(Invitrogen)(10%DMEM)を補充した、4.5g/Lグルコース(Invitrogen)を含有するダルベッコ変法イーグル培地中で培養し、インキュベーター中で5% CO2と共に37℃で維持した。それらがおよそ80%培養密度に到達したとき、それらを継代し、それらを定期的に試験してマイコプラズマ汚染の不在を確実にした(MycoAlert,Lonza)。細胞形態を定期的に確認して、細胞株の相互汚染の不在を確実にした。
DLL4は、主要なノッチシグナル伝達リガンドである
結腸直腸腺癌株COLO 205、LS174T、LS180、およびHCT−15を、DLL4および他のノッチ受容体の発現について、ウェスタンブロッティングによって分析した。細胞を、リン酸緩衝食塩水で1回すすぎ、次いで、Complete Protease Inhibitor Cocktail(Roche)、およびホスファターゼ阻害剤(1mM NaF、2.5mMピロリン酸ナトリウム、1mMオルトバナジン酸ナトリウム)を含有する、氷冷RIPA溶解緩衝液(50mMトリス−HCl pH7.4、150mM NaCl、1mM EDTA、1%NP−40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム)中に溶解させ、1分間超音波処理し、溶解物を16,500RPMで、4℃で10分間、遠心分離によって清澄化した。タンパク質溶解物濃度を、Bradfordタンパク質アッセイ(Bio−Rad)によって決定し、25〜30μgの溶解物を、SDS試料緩衝液(58mMトリス−HCl、pH6.8、1.71%SDS、0.83%β−メルカプトエタノール、グリセロール6%、0.002%ブロモフェノールブルー)中、100℃で5分間変性させ、タンパク質を、Novex 4〜12%トリス−グリシンゲル(Invitrogen)上で電気泳動的に分解した。タンパク質を、ポリフッ化ビニリデン膜(Millipore)上に湿式転写し、膜を、TBST(10mMトリス塩基、150mM NaCl、0.05%Tween−20、pH7.4)中の5%脱脂粉乳中で、室温で1時間遮断し、次いで5%乳/TBST中の一次抗体と共に、4℃で一晩、穏やかに撹拌しながらインキュベートした。TBSTの3回の洗浄を、各々10分間行い、続いて対応する二次抗体を、5%乳/TBST中、西洋ワサビペルオキシダーゼに室温で1時間複合体化し、続いて3回の10分間のTBST洗浄を行った。ウェスタンブロットを、ECL Plus溶液(Amersham)で可視化し、続いてX線フィルム(FujiFilm)への曝露を行った。一次抗DLL4、抗ジャグド1、抗ノッチ1 ICD、抗ノッチ1、2、および3ラビットポリクローナル抗体を、1:1000希釈で使用し(Cell Signaling Technology)、抗ノッチ4ラビットポリクローナルを、1:200希釈で使用し、抗β−アクチンヤギポリクローナルを、1:6000希釈で使用した(Santa Cruz Biotechnology)。
DLL4は、COLO 205、LS174T、およびLS180中で高度に発現され、HCT−15中で、低レベルで発現された(図1A)。LS174T細胞はまた、4つ全てのノッチ受容体を発現した(図1B、左上および下パネル)。LS174T細胞を、DMSOまたはDBZ(2または20nM)と共にインキュベートし、次いでノッチ1およびノッチ1ICDについて免疫ブロットしたとき、ガンマ−セクレターゼ阻害剤DBZは、N1ICDの産生を用量依存性様態で阻害した(図1B、左パネル)。均等な負荷量を、免疫ブロッティングによりβ−アクチンについて確認した。LS174T細胞の、DBZ(20nM)またはDLL4 mAb(1μg/mL)での一晩の処置は、DLL4発現の上方調節をもたらした(図1B、右パネル)。DBZおよびDLL4 mAbは、DLL4タンパク質レベルにおける増加を引き起こしたが、それは、ノッチシグナル伝達がDLL4発現を負に調節し得ることを示唆している(図1B、右上のパネル)。LS174T細胞はまた、ジャグド1を発現するが、DLL4とは対照的に、このノッチリガンドの発現は、DBZまたはDLL4 mAbによって影響を受けない(図1B、右上のパネル)。
安定なノッチレポーター細胞株を生成するために、LS174T細胞を、複数のノッチRBP−jK応答要素がホタルルシフェラーゼ遺伝子の発現を主導する(SA Biosciences)、ミニマルプロモーターを含有するレンチウイルスに感染させた。安定なプールされた株を、ピューロマイシン選択(2μg/mL)によって樹立させた。結果として生じるLS174Tノッチluc細胞を次いで、組換えDLL4に応答したルシフェラーゼ活性について、阻害剤の存在または不在下で査定した。簡潔に述べると、ノッチルシフェラーゼレポーターを安定に発現する細胞株を、以前に記載されたように(Harrington et al.,Microvasc Res.2008,75(2):144−54)BSAまたは組換えDLL4(R&D systems)であらかじめコーティングされた24ウェル皿上で、ビヒクル(DMSO)、マウスアイソタイプIgG1(1μg/mL、R&D Systems)、DBZ(20nM)、またはDLL4 mAb(1μg/mL)を含有する、10%DMEM中に24時間播種した。ノッチルシフェラーゼ活性を査定するために、D−ルシフェリン(150μg/mL、Gold BioTechnology)を、培地に2分間添加し、発光読み取りをXenogen IVIS 200(Caliper Life Sciences)で捕捉し、Living Image 3.0ソフトウェア(Caliper Life Sciences)で分析した。
図1Cに示されるように、基底レベルおよびDLL4誘導性ノッチ活性は、DBZによっておよびDLL4 mAbによって抑止された。棒グラフは、ノッチルシフェラーゼ活性(DLL4コーティングプレートをBSAコーティングプレートに対して正規化)の倍率変化を示し、標準誤差が示される。「*」は、DMSO対照と比較した有意な差異(p<0.01)を表す。図1cの下パネルは、ノッチルシフェラーゼ活性の「ヒートマップ」を示す。DLL4 mAbは、DBZと同等の様態でノッチ活性を阻害したが、それはDLL4がこれらの細胞における主要なノッチシグナル伝達リガンドであることを示している。
ノッチ遮断は、増殖またはアポトーシスに影響を及ぼさない
ガンマ−セクレターゼ阻害剤(GSI)は、ある特定の腫瘍細胞の増殖を減少させること、およびアポトーシスを促進するが報告されている(Suwanjunee et al.,Anticancer Drugs 2008,19(5):477−86、Efferson et al.,Cancer Res.2010,70(6):2476−84、Fan X et al.,Stem Cells 2009,28(1):5−16、Rasul et al.,Br J Cancer 2009,100(12):1879−88、Curry et al.,Oncogene 2005,24(42):6333−44)。LS174T細胞を、ビヒクル、DBZ(20nM)、またはDLL4 mAb(1μg/mL)と共に三重でインキュベートし、5日後、細胞の総数をNucleocounter NC−100(ChemoMetec)により計数し、ビヒクル処置試料において計数された細胞の総数で除して、倍率変化を得た。平均および標準誤差をプロットした。この実例において、DBZは、増殖を、無処置LS174T細胞と比べておよそ25%減少させたが、これは、統計的に有意でなかった(p=0.065)(図2A)。同様に、DLL4 mAbは、増殖の統計的に有意な低減を引き起こさなかった(図2A)。
アポトーシスが培養物中で誘導されたかどうかをアッセイするために、LS174T細胞を、ビヒクル、DBZ(20nM)、またはDLL4 mAb(1μg/mL)を有する白壁96ウェル中に三重で播種し、偽照射したか、または5Gy線量のIRで照射した。アポトーシスの陽性対照として、LS174T細胞を、50nM組換えTRAIL(R&D Systems)と共に2時間インキュベートした。アポトーシスを、製造業者の指示によりCaspase−Glo 3/7アッセイ系(Promega)を使用して定量化した。TRAIL処置がアポトーシスの大幅な増加をもたらした一方で、DBZおよびDLL4 mAbによるノッチ遮断は、単独であろうとIR処置と組み合わせてであろうと、体外で有意に増加したアポトーシスをもたらさなかった(図2B)。
ノッチシグナル伝達は、電離放射線によって阻害されるが、ノッチ遮断は、放射線増感に寄与しない
GSIは、神経膠腫幹細胞を放射線感作することが報告されている(Wang et al.Stem Cells 2009,28(1):17−28)。したがって、DBZまたはDLL4遮断によるノッチ阻害を、体外でのLS174T細胞の放射線増感について試験した。クローン原性生存アッセイのために、細胞を計数し、ビヒクル(DMSO)、DBZ(20nM)、またはDLL4 mAb(1μg/mL)を含有する10%DMEM中、低密度で、三重で播種し、次いで偽照射したか、または2、4、もしくは6Gy線量のIRにより、IBL634セシウム照射器(CIS Biointernational)を使用して、0.66Gy/分の線量率で照射した。14〜21日後、コロニーをクリスタルバイオレットで染色し、計数した。以前に記載されたように(Liu et al.Radiother Oncol.2008,88(2):258〜68)、生存率をプロットし、データを線形二次方程式にモデル化した。
DBZまたはDLL4 mAb遮断によるノッチ阻害は、体外でLS174T細胞を有意に放射線増感しなかった(図3A)。平均および標準誤差バーが示される。しかしながら、24時間後に測定すると、偽IR対照と比較して、6Gy線量のIR後にノッチ活性の有意な低減が存在した(「*」は、p<0.05を表す)(図3B)。ノッチ活性の低減は、細胞数の低減に起因していなかった(データは示されず)。このIRの線量はまた、ウェスタンブロッティングによって査定されたとき、DLL4およびN1 ICDレベルの低減ももたらしたが(データは示されず)、それはIRによるノッチ活性の結果として生じる抑制を部分的に説明し得る。故に、IRはノッチシグナル伝達を下方調節するが、この経路は、LS174T結腸直腸癌細胞の関連において、IR後のクローン原性生存における関連性のある役割を果たさない。
広範囲のノッチ阻害およびDLL4遮断は、IRと協同する
この一連の実験は、腫瘍異種移植モデルにおいて、広範囲のノッチ阻害剤またはDLL4の、IRと協同する能力を検査した。マウスを伴う全ての実験を、University of Oxford機関ガイドラインに従って、英国内務省によって発行されるプロジェクトライセンスの制限内で、ならびに癌研究における動物の愛護および使用についてのガイドライン(Workman et al.,Br J Cancer.2010;102(11):1555−77)に準拠して行った。LS174Tノッチルシフェラーゼ細胞株を、皮下異種移植片として、BALB/Cヌードマウスにおいて成長させた。以前に、他の者によって、LS174T異種移植片が、患者の結腸癌試料に酷似する異種腫瘍脈管構造を有することが示されていることから(El Emir et al.Cancer Res.2007,67(24):11896−905、Folarin et al.,Microvasc Res.2010,80(1):89−98)、これは抗血管新生療法を調査するための関連性のある前臨床モデルである。ノッチ阻害は、非機能的な血管新生を促進することができ、それは、理論上、事前に与えられる場合、増加した腫瘍低酸素に起因して、IRの有効性を減少し得る。同様に、DLL4遮断は、腫瘍低酸素を増加させることが知られ、それは、IRの効果に拮抗し得る。したがって、この最初の実験のために、DBZ処置およびDLL4 mAb処置の両方を、組み合わせた群について、IRに続くように順序付けた。
簡潔に述べると、10×106 LS174Tノッチluc細胞を、マトリゲルと1:1比率で混合し、6〜7週齢のメスBALB/Cヌードマウス(HarlanまたはCharles River)の右脇腹中に皮下注射した。腫瘍体積を、変形楕円式(体積=長さ×幅2÷2)によって決定した。異種移植腫瘍がおよそ100mm3体積に到達したとき、マウスを、ビヒクル群または実験群に無作為化した。DBZを、0.5%Methocelおよび0.1%Tween−80中に溶解させ、次いで、3日毎に、1日目から開始して総計5回用量にわたって、または1日目のIRの30分後に、腹腔内注射(8.1uM/kg)した。抗DLL4遮断モノクローナル抗体(DLL4 mAb)を、1日目から開始して、または1日目のIRの30分後に、腹腔内注射(5mg/kg)し、注射を週2回継続した。照射のために、マウスを麻酔し、専用の真ちゅうジグ中に配置して、身体の残りの部分を遮蔽しながら腫瘍を曝露し、腫瘍を、Gulmay RS320(Gulmay Medical Ltd.)によって発生されるX線で、5Gyの線量まで照射した。「DBZ実験」において、群は、ビヒクル、DBZ、5Gy IR、およびDBZとの5Gy IRであった。「DLL4 mAb実験」において、群は、ビヒクル、DLL4 mAb、5Gy IR、およびDLL4 mAbとの5Gy IRであった。
体内ノッチ活性
1日目(処置前)および2日目(処置後)に、各群からの3匹のマウスに対して、体内ルシフェラーゼ画像解析を行って、異種移植腫瘍におけるノッチレポーター活性を査定した。このアッセイにおいて、マウスを2%イソフルランにより麻酔し、IVIS 200(Caliper Life Sciences)室の中に配置し、麻酔を2%イソフルランにより維持した。画像解析の5分前に、D−ルシフェリンを、腹腔内注射(150mg/kg、Gold BioTechnology)によって与えた。画像取得について、パラメータは、f/ストップ1、ビン(bin)Med、曝露時間1分間であった。シグナル強度を、腫瘍部位にわたって位置付けられる関心領域内の総光子/秒として定量化した。結果を、Living Image 3.0ソフトウェア(Caliper Life Sciences)を使用して分析した。
図4は、この実験についての画像およびグラフデータを提示する。左上のパネルは、ベースラインおよびビヒクル、DBZ、5Gy IR、または5Gy IRおよびDBZ処置の24時間後を示す。左下のパネルは、ベースラインおよびビヒクル、DLL4 mAb、5Gy IR、または5Gy IRおよびDLL4 mAb処置の24時間後を示す。各パネルにおいて、腫瘍に重なる「ヒートマップ」は、相対的ノッチ活性を表示し、それは処置後に低減される。1群当たり3〜5匹のマウスから生成される、ノッチルシフェラーゼ活性の平均倍率変化が、棒グラフ形態で示される(右パネル)。ビヒクル処置マウスは、ノッチルシフェラーゼ活性の変化を何ら示さなかった。DBZ処置またはDBZおよびIR処置は、活性を、それぞれ、ベースラインの28±9%および35±5%まで阻害し、それらは双方とも、ビヒクルと比較して有意であった(p<0.01)。単独でのIRもまた、腫瘍におけるノッチレポータールシフェラーゼを、ベースラインルシフェラーゼの44±21%まで有意に低減した(p<0.05)。ノッチシグナル伝達のより選択的な阻害剤を査定するために、異種移植片実験をDLL4 mAbにより反復した。体外データと一致して、DLL4 mAb処置またはDLL4 mAbおよびIR処置は、体内ノッチルシフェラーゼ活性を、それぞれ、ベースラインの41±14%および36±3%まで阻害した。
腫瘍成長遅延
図5は、腫瘍体積が治療クールと比べて日単位で示される、生存グラフを提示する。皮下LS174Tノッチluc異種移植片を担持するマウスを、腫瘍体積がおよそ100mm3(すなわち、1日目)であったとき、ビヒクル群または治療群に無作為化し、腫瘍体積をカリパス測定によって1〜3日毎に決定した。上のグラフに示される「DBZ実験」において、群は、ビヒクル、DBZ、5Gy IR、またはDBZとの5Gy IRであった。DBZを、1日目に、次いで3日毎に、総計5回用量にわたって投与した。下のグラフに示される「DLL4 mAb実験」において、群は、ビヒクル、DLL4 mAb、5Gy IR、またはDLL4 mAbとの5Gy IRであった。DLL4 mAbを実験の持続期間にわたって週2回与えた。図5に示される生存グラフにおいて、IRおよびノッチ阻害剤処置のタイミングが、時間軸上の矢頭によって図示される。腫瘍体積を1日目の腫瘍体積と比べて正規化し、平均正規化腫瘍体積および標準偏差を生存曲線上にプロットした。マウスを、それらの正規化腫瘍体積が、各生存曲線上の点線として示される、開始体積の4倍(RTV4)に到達したときに屠殺した。各群におけるマウスの総数が、括弧内の凡例として示される。各群についての、腫瘍がRTV4に到達する平均時間および標準偏差が、棒グラフで示される。点線は、ビヒクル処置腫瘍についてのRTV4を示し、それぞれの棒がこの線を上回る程度は、腫瘍成長遅延に対応する。
DBZ実験についての数値結果が、表1に提示される。
DBZ実験において、ビヒクル群における腫瘍体積がRTV4に到達する平均時間は、7.1±0.6日間であり、DBZで処置されたマウスについて、それは9.5±1.4日間であり、統計的に有意でない差異であった。IR群は、RTV4に到達するのに平均15.1±2.7日間かかり、その腫瘍成長遅延は8±2.8日間であり、それはビヒクルまたはDBZのいずれかよりも有意に長かった(p<0.001)。組み合わせたDBZおよびIR処置は、24.4±1.8日間でRTV4に到達した(単独で与えられた処置のいずれよりも有意に長い、p<0.001)、17.3±1.9日間の腫瘍成長遅延をもたらした。組み合わせた結果は、腫瘍成長を遅延させることにおいて、個々の処置についての相加的作用を上回った。
DLL4 mAb実験についての数値結果が、表2に提示される。
DLL4 mAb実験において、ビヒクル群における腫瘍は、6.8±0.2日間でRTV4に到達した。単剤治療として、DLL4遮断は、16.4±1.4日間でRTV4に到達し、9.6±1.4日間の成長遅延をもたらした。故に、DLL4遮断は、腫瘍成長遅延を延長することにおいて、DBZよりも有効であった。実際、この実験におけるIR処置は、17.38±0.5日間でRTV4に到達し、10.6±0.5日間の腫瘍成長遅延をもたらしたため、成長遅延におけるDLL4処置とIR処置との間の統計的に有意な差異は何ら存在しなかった。併用治療は、44.3±2.3日間でRTV4に到達し、37.5±2.3日間の著しい腫瘍成長遅延をもたらした(p<0.001)。これは、DBZおよびIR併用治療により観察された17.3±1.9日間の腫瘍成長遅延の2倍を超えた。したがって、広範囲のノッチ阻害剤および選択的DLL4阻害剤の両方が、IRと組み合わされたとき相乗的であったが、DLL4阻害剤は、より優れた効果をもたらした。
腫瘍灌流
腫瘍灌流に対する処置効果をリアルタイムで監視するために、各試験群からのLS174Tノッチluc異種移植片を担持する3匹のマウスに対して、1日目に(腫瘍がおよそ100mm3であったときの処置前)、または処置後5日目もしくは7日目に、マイクロバブル造影超音波画像解析を行った。腫瘍灌流をVevo 770 Micro−Ultrasoundプラットフォーム(Visualsonics)により、RMV−704プローブを用いて、製造業者の指示に従って造影マイクロバブル(Vevo MicroMarker Contrast Agent Kit)を使用した画像強調によって評価した。各試験のために、新鮮なバイアルを食塩水で調製した。マイクロバブル(1×108)を、ボーラスとして50μLの体積で、27ゲージの皮下注射針を介して外側尾静脈中に、直接可視化のもとで注射した。マイクロバブルの投与前に、ベースライン画像配列を、40MHzの周波数の造影モードで取得した。これに続いて、マイクロバブル注射の直前にダイナミックシーケンスを40秒間開始し、総計550フレームで取得した。関心領域(ROI)を描出し、ベースライン本来の造影強度、および定量的灌流も同様に考慮しながら、取得された画像を加工した。造影動力学分析を、組み込まれている(intrinsic)Vevo 770ソフトウェア(v.2.23)を使用して行って、マイクロバブル流入の勾配およびマグニチュードを査定した。ROIから算出された相対的腫瘍血流を、無処置(対照)群に対して正規化した。
図6、図9A、および図9Cは、各腫瘍の輪郭を描く関心領域(ROI)内のマイクロバブルの数に比例する、マイクロバブル造影剤(緑色シグナル)によって描写される灌流を示す。各組のマイクロバブル画像について、相対的腫瘍血流値を、ビヒクル(対照)群に対して正規化し、3つの独立した実験から導出した平均および標準誤差を棒グラフで示す。DBZ実験の1日目および7日目についての結果が、図9Aに示される。DLL4 mAb実験について、図6は、1日目および5日目についての結果を提示するが、図9Cは、1日目を3日目と比較する。
DBZ(図9A、7日目)またはDLL4 mAb(図6、5日目)のいずれかでの処置は、ビヒクル群と比べて、それぞれ38.9±7.4%および29.5±3.5%までの、腫瘍灌流の有意な低減をもたらした(p<0.01)。我々は、早くも48時間で、DLL4 mAb処置によって引き起こされる低減された腫瘍灌流を観察した(図9C)。3日目、DBZ実験およびDLL4 mAb実験の両方に対して、造影動力学分析を行ったとき、総造影シグナルおよび1秒当たりの造影シグナル率は、マイクロバブル流入の低減された勾配および大きさによって示されるように、双方について減少した(図9B)。IR単独で処置された腫瘍は、腫瘍灌流におけるいずれの有意な変化も示さなかった(図5、9A、および9CにおけるIR群を比較されたい)。故に、DLL4−ノッチ軸の広範囲のノッチ阻害または中断は、照射腫瘍および未照射腫瘍の両方において腫瘍灌流を顕著に妨害する。
CD31免疫組織化学、血管数、および共焦点顕微鏡
DBZ実験群およびDLL4 mAb実験群におけるLS174T異種移植片を担持するマウスを、腫瘍体積がRTV4に到達したときに屠殺し、腫瘍を、抗CD31抗体での免疫組織化学(IHC)のために切除した。微小血管計数を次いで、腫瘍切片に対して行った。IHCのために、切除された腫瘍を、4%パラホルムアルデヒド中に即座に配置して4℃で一晩、25%グルコース中(PBS中)に移して4℃で更に24時間、次いでドライアイス上で冷却されたイソペンタン中で急速冷凍し、薄片化するまで−80℃の冷凍庫で保管した。CD31染色のために、ラット抗マウスCD31(1:20希釈、クローンSZ31、Dianova)を使用した。抗原性賦活化を、標的賦活化溶液(S1700,Dako)中で、Decloaking Chamber(Biocare Medical,CA)を使用して行った。切片を、PBS中0.3%過酸化水素で20分間、続いてブロッキング緩衝液(下を参照)で30分間、およびブロッキング緩衝液中の一次抗体で1時間、前処理した。結合した抗体を、HRP複合型ラビット抗ラットIgG(1:100希釈、Dako,UK)で標識し、2,3−ジアミノベンジジン色素原を使用して可視化し、ヘマトキシリンで対比染色した。Chalkley血管計数を、Chalkleyポイントアイピースグラチクルを用いて、1腫瘍につき最低3つの血管「ホットスポット」に対して2人の観察者(S.K.LおよびS.B.)によって、以前に記載されたように行った(Fox et al,Breast Cancer Res Treat.1994,29(1):109−16)。
抗CD31抗体を使用したIHCが、200倍で、図7A、左パネルに示される。Chalkley血管計数を、1群当たり最低3つの腫瘍に対して行って、腫瘍微小血管構造を定量化し、平均値および標準誤差が、図7Aにおいて棒グラフで示される。DBZ(p<0.05)、DLL4 mAb(p<0.001)、ならびにDLL4 mAbおよびIR(p<0.05)での処置後に、血管数における有意な増加が存在した。血管数は、DBZよりも、DLL4 mAbで大幅に増加した(Chalkley血管計数は、DBZ処置についての5.9±0.2対DLL4 mAb処置についての9.9±0.5)。
腫瘍脈管構造の共焦点顕微鏡および3D再構築のために、DBZ実験からのおよびDLL4 mAb実験からのRTV4に到達したマウスに、抗CD31−フィコエリトリン複合体化抗体(0.2mg/mLの100μL、Biolegend)を外側尾静脈により、屠殺の4分間前に注射した。この分析のために、腫瘍を即座に切除し、中央部分を薄片化し、共焦点顕微鏡(Leica)を使用して即座に画像解析した。およそ100μmの共焦点zスタックを、0.5μm間隔で10倍の倍率で、複数の視野上でPEを励起するために543nmレーザーを使用して撮った。3次元血管再構築を、Amira ResolveRTソフトウェア(Visage Imaging)を使用して構築した。図7Bに示されるように、共焦点顕微鏡および3D再構築は定性的に、ビヒクルと比較して、DLL4 mAbで処置された腫瘍における、多くの更なる、より小さい、高度に分岐し、蛇行した血管を明らかにした。
腫瘍低酸素、増殖、および壊死
腫瘍における低酸素を検出するために、マウスに、Cy3蛍光体(10μL/gmの10mMを0.9%食塩水中に溶解)に直接複合体化された、低酸素細胞マーカーEF5(クローン:Elk3−51、Dr.C.Koch,University of Pennsylvaniaによって善意で提供された)に対するマウス抗体を腹腔内注射した。2.5時間後、マウスを屠殺し、腫瘍を切除した。IHCのために、抗原性賦活化を、抗CD31染色について記載されるように行った。切片を、ブロッキング緩衝液で30分間、続いて一次抗体で、4℃で24時間、前処理した。染色された切片を、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)を含有する水性封入培地に封入した。染色された腫瘍切片を、視野毎に同時に、2人の独立した観察者(S.K.L.およびS.B.)によって、150倍の倍率で観察した。各視野に0〜4のクラススコアを、EF5染色に対して陽性であった腫瘍面積の百分率に基づいて割り当てた(0、0%;1、0%超〜5%;2、5%超〜15%;3、15%超〜30%;4、30%超)。各視野についてのスコアは、意見の一致によって合意を得た。壊死の面積(下を参照)を、DAPI染色を使用して特定し、それは低酸素スコアを推定したときには含まれなかった。各視野について得たスコアを、対応する群の区間についての中央値を使用することによって、百分率に変換した。全てのスコア化された視野についての平均を、各腫瘍について算出した。
結果が、図7Cに提示される。左パネルは、150倍での腫瘍切片中の、低酸素マーカーEF5に対するIHC染色を示す。全切片を、視野毎にスコア化して、EF5免疫染色腫瘍細胞の面積を推定し、各腫瘍の平均低酸素面積を、視野全ての平均スコアとして算出した。棒グラフは、ビヒクル、DLL4 mAb、IR、およびDLL4 mAbについての低酸素パーセントを提示し、IRが右パネルに示される。アスタリスクは、ビヒクルからの有意な差異を表す(**p<0.001)。1群当たり、最低限3つの腫瘍を検査した。有意な低酸素の増加が、単独でまたはIRと組み合わせて与えられたに関わらず、DLL4 mAb処置について観察され、非機能的な血管新生および減少した灌流と一致していた。低酸素の有意な増加は、DBZでは何ら認められなかった(データは示されず)。
腫瘍内の細胞増殖を、Ki−67染色を使用して検査した。マウス抗ヒトKi−67(1:100、クローン2531、ABD Serotec)を使用した。抗原性賦活化を、10mMクエン酸ナトリウム、0.05%Tween−20、pH6.0を使用して、90℃で20分間行った。切片を、PBS中0.3%過酸化水素で20分前処理した。内在性ビオチンを、製造業者の指示に従ってアビジン/ビオチン遮断キット(Vector)を使用して遮断し、続いてM.O.M遮断試薬(Vector Laboratories Ltd.)とのインキュベーションを1時間行った。切片を、ブロッキング緩衝液と共に5分間、続いてブロッキング緩衝液中の一次抗体と共に30分間、インキュベートした。結合した抗体を、ビオチン化ヤギ抗マウスIgG抗体(1:500、Vector Laboratories Ltd.)、続いてVectastain ABC Elite試薬で標識し、2,3−ジアミノベンジジン色素原を使用して可視化し、ヘマトキシリンで対比染色した。Ki−67スコア化のために、陽核の数を、総核の割合として、高倍率顕微鏡視野(400倍)下で決定し、総計6つの無作為視野に対して行った。スコア化を、壊死の領域を回避して、生存可能な腫瘍領域において行った。
400倍での代表的なKi−67 IHC画像が、図7Dの左パネルに示される。増殖細胞は、茶(暗)色の核によって識別される。Ki−67陽性細胞の、細胞の総数に対する割合を、6つの高倍率視野から決定し、平均値および標準誤差をプロットした。DBZ実験およびDLL4 mAb実験からの各群におけるKi−67陽性細胞の割合が、棒グラフで提示される。アスタリスクは、ビヒクルと比べた統計的に有意な変化を表す(「**」は、p<0.01を表す)。1群当たり、最低限3つの腫瘍を検査した。IRを用いてまたは用いずにDBZで処置されたマウスから得られた腫瘍において、ならびにDLL4 mAb単独で処置されたマウスからの腫瘍において、増殖は有意に減少した。
腫瘍における壊死のレベルを、EF5 IHCと併せて、DAPI染色を使用して検査した。ヘマトキシリンおよびエオシン染色もまた、腫瘍切片に対して行い、低倍率下での推定される腫瘍壊死の百分率は、2つの独立した調査者(S.K.L.およびS.B.)からの意見の一致によって合意を得た。代表的なH&E染色画像が、図7Eの左パネルにおいて20倍で示される。壊死の領域は、黒で輪郭を描かれる。腫瘍壊死の百分率を、低倍率で腫瘍から推定し、平均値および標準誤差をプロットし、結果が、図7Eの棒グラフで提示される。
ビヒクル(6.7±1.7%)と比較して、DBZ(6.7±1.6%)、およびIR(15±7.6%)で、増加した腫瘍壊死の傾向が存在し、それは併用治療(28.3±4.4%)で最も高かった。DLL4 mAb処置は、ビヒクル処置腫瘍(5.0±0.3%)と比較して、腫瘍壊死における有意かつ顕著な増加(45±5.0%)をもたらした。その増加は、DLL4 mAbがIRと併用されたとき、更に増強された(63.3±11.7%)。IRは、腫瘍壊死を有意に増加させなかった(26.7±3.3%)。併用IRおよびDLL4 mAb処置で見られた腫瘍壊死は、大部分が中央に位置し、血管妨害剤で特徴的に見られる組織学的知見を回想させる。故に、Ki−67陽性細胞の割合は、ビヒクルまたはIRと比較して、DLL4 mAbおよびIR併用治療について有意に異ならなかったが、残りの生存可能な腫瘍の全体的な量はかなり減少し、それは観察された腫瘍成長遅延を説明する。
DLL4 mAb処置は、微小血管数および腫瘍低酸素を増加させた。
DLL4 mAb処置後に観察された腫瘍灌流変化を、IHCと直接相関付けるために、我々は、5日目の造影超音波後にDLL4 mAb実験からのマウスを屠殺し、腫瘍血管数、低酸素、および増殖を検査した。この比較についての結果が、図10Bに提示される。代表的なIHC画像が、記載の通り示される(抗CD31:200倍、スケールバーは100μmを示す;抗Ki−67:400倍、スケールバーは50μmを示す;抗EF5:150倍、スケールバーは200μmを示す)。図10Bにおける左下のパネルは、Chalkley血管計数の棒グラフを提示する。中央下の棒グラフは、Ki−67陽性細胞の割合を示す。低酸素領域百分率が、棒グラフで右側に表示される。
DLL4 mAb処置は、ビヒクルと比べて、微小血管数を有意に増加させ(p<0.05)、腫瘍灌流を低減し、低酸素を増加させた(p<0.05)。興味深いことに、これは、この時点で、有意に減少した腫瘍増殖につながらなかった。比較して、DLL4 mAbおよびIR併用治療は、増加した微小血管数、および増殖の有意な低減(p<0.05)の傾向をもたらしたが、腫瘍低酸素は、増加しなかった。これは部分的に、より低い腫瘍増殖、よって、より小さい腫瘍量からもたらされる、減少した酸素消費に起因し得る(すなわち、図5における、DLL4 mAb単独と比較した、DLL4 mAbおよびIR処置による5日目のより低い平均腫瘍体積に留意されたい)。併用治療による腫瘍壊死の増加は、この早期の時点で有意でなかったが(データは示されず)、それは長期的なDLL4遮断(5日間超)が、壊死を誘導するために必要とされることを示唆している。
アポトーシスは、ノッチ遮断またはIR後の細胞死のための主要な経路ではない
ノッチ遮断後の細胞死におけるアポトーシスの役割を検査するために、TUNEL染色を、Apoptag Peroxidase In Situ Apoptosis検出キット(Millipore)を使用して行った。切片を、10mMクエン酸ナトリウム、0.05%Tween−20、ph6.0を使用して、90℃で20分間、抗原性賦活化に供した。手順の残りの部分は、製造業者の指示に従って行った。陽性細胞を、2,3−ジアミノベンジジン色素原を使用して可視化し、ヘマトキシリンで対比染色した。TUNELスコア化を、Ki−67スコア化と同じ様態で、1腫瘍当たり6つの無作為視野を利用して、壊死の領域を回避して行った。
TUNEL染色のために加工された腫瘍切片からの400倍での代表的な画像が、図10Aに示される。平均して、ビヒクルまたは治療された腫瘍切片について、1視野当たり1%未満のTUNEL陽性細胞が見られた。スケールバーは50μmを示す。TUNEL陽性細胞における有意な差異は、体外での知見と一致して、いずれの処置の結果としても何ら認められなかった。これは、アポトーシスの増加が、観察された腫瘍成長遅延に関与しなかったこと、および分裂死等の他の機構が、細胞死の主要な様式であり得ることを示唆する。
腫瘍灌流変化を、IHCと直接相関付けるために、マウスは、5日目の造影超音波後に屠殺されたマウスであり、腫瘍血管数、低酸素、および増殖を検査した(図10B)。DLL4 mAb処置は、ビヒクルと比べて、微小血管数を有意に増加させ(p<0.05)、腫瘍灌流を低減し、低酸素を増加させた(p<0.05)。興味深いことに、これは、この時点で、有意に減少した腫瘍増殖につながらなかった。比較して、DLL4 mAbおよびIR併用治療は、増加した微小血管数、および増殖の有意な低減(p<0.05)の傾向をもたらしたが、腫瘍低酸素は、増加しなかった。これは部分的に、より低い腫瘍増殖、よって、より小さい腫瘍量からもたらされる、減少した酸素消費に起因し得る(すなわち、図5における、DLL4 mAb単独と比較した、DLL4 mAbおよびIR処置による5日目のより低い平均腫瘍体積に留意されたい)。我々は、この早期の時点で併用治療による腫瘍壊死の有意な増加を認めなかったが(データは示されず)、それは長期的なDLL4遮断(5日間超)が、壊死を誘導するために必要とされることを示唆している。
腫瘍切片におけるDLL4に対するIHC染色は、我々の体外データと一致して(データは示されず)、DBZまたはDLL4 mAbでのノッチ阻害後の増加したDLL4発現を明らかにした。
DLL4遮断は、IRと協同して、腫瘍DLL4から独立して腫瘍成長を遅延させる
腫瘍切片におけるDLL4に対するIHC染色は、我々の体外データと一致して(データは示されず)、DBZまたはDLL4 mAbでのノッチ阻害後の増加したDLL4発現を明らかにした。DLL4染色のために、抗DLL4モノクローナル抗体クローン242(VelocImmuneマウス(Regeneron Pharmaceuticals Inc.,USA)において生成)を使用した。この抗体の可変領域は、完全ヒトであり、Fc−ドメインは、マウスである。クローン242は、ヒトDLL4の細胞外ドメインのEGF様ドメイン3〜5におけるエピトープに結合する。抗原性賦活化を、標的賦活化溶液(S1700,Dako)中で、Decloaking Chamber(Biocare Medical,USA)を使用して行った。切片を、PBS中0.3%過酸化水素で20分間、およびM.O.M遮断試薬(Vector Laboratories Ltd.)で1時間、前処理した。切片を、5分間、ブロッキング緩衝液(0.1 Mトリス−HCI、pH7.5、150mM NaCl、0.5%TSA遮断試薬PerkinElmer))と共に、続いてブロッキング緩衝液中の1μg/mLの一次抗体と共に30分間インキュベートした。結合した抗体を、製造業者の指示に従ってEnvision+ HRPマウスキット(Dako)を使用して可視化し、ヘマトキシリンで対比染色した。
腫瘍DLL4が有意な標的であったかどうかを決定するために、我々は、DLL4 mAbの、DLL4を発現しないFaDu細胞からの異種移植片に対する効果を試験した(図8A)。DLL4発現は、FaDu細胞のウェスタンブロッティングによって検出不可能であったが、比較して、LS174T溶解物は、DLL4を大量発現した。均等な負荷量を、β−アクチンにより確認した。無処置ヒトFaDu癌細胞のウェスタンブロッティングにより、ノッチ1〜4受容体、およびジャグド1の発現が確認された(図8A)。
FaDu腫瘍を、ビヒクル、DLL4 mAb、5Gy線量のIR、またはIRとのDLL4 mAbで処置されたヌードマウスにおいて成長させた。異種移植に関する詳細は、前の実験に提示されるが、簡潔に述べると、5×106 FaDu細胞を、マトリゲルと1:1比率で混合し、6〜7週齢のメスBALB/Cヌードマウスの右脇腹中に皮下注射した。腫瘍体積を、変形楕円式(体積=長さ×幅2÷2)によって決定した。異種移植腫瘍がおよそ100mm3体積に到達したとき、マウスを、ビヒクル群または実験群に無作為化した。
図8Bに示される生存グラフにおける矢頭によって図示されるように、DLL4 mAbを実験の持続期間にわたって週2回与えた。腫瘍体積を1日目の腫瘍体積と比べて正規化し、平均正規化腫瘍体積および標準偏差を生存曲線上にプロットした。マウスを、それらの正規化腫瘍体積が、生存曲線上の点線として示される、RTV4に到達したときに屠殺した。各群におけるマウスの総数が、括弧内の凡例として示される。図8Bの右側の棒グラフは、標準偏差と共に、腫瘍がRTV4に到達する平均時間を示す。点線は、ビヒクル処置腫瘍についてのRTV4を示す。故に、それぞれの棒がこの線を上回る程度は、腫瘍成長遅延に対応する。
ビヒクル処置群についての平均RTV4は、9.8±2.2日間であり、IRで処置されたマウスについて、それは14.0±1.6日間であり、IRについての4.2±2.7日間の腫瘍成長遅延をもたらした。DLL4 mAbについてのRTV4は、28.8±2.6日間であり、19.0±3.4日間の著しい腫瘍成長遅延をもたした。DLL4 mAbおよびIRの併用療法は、42.6±4.5日間のRTV4をもたらし、それは32.8±5.0日間の相乗的な腫瘍成長遅延に対応した。
考察
DLL4−ノッチ遮断は、非生産的な腫瘍血管新生(血管密度における増加、および腫瘍灌流における逆説的減少)を促進し、腫瘍成長遅延をもたらしたが、腫瘍成長遅延の有意な相乗的増大は、それがIRと組み合わされたときに、大幅な腫瘍壊死に起因して生じた。更に、内在性DLL4を欠くヒト下咽頭扁平上皮細胞癌異種移植片を試験したとき、抗DLL4遮断抗体による効果的な成長遅延、およびIRとの相乗作用が存在し、腫瘍DLL4発現から独立した、腫瘍成長および生存を維持するためのDLL4−ノッチシグナル伝達の重要な寄与を実証している。まとめて、データは、腫瘍成長を遅延させるためにDLL4−ノッチシグナル伝達を妨害することの重要性、および腫瘍DLL4発現から独立した、異なる腫瘍型におけるこの治療アプローチに対する幅広い関連性を強調する。故に、DLL4−ノッチ遮断をIRと組み合わせて、非機能的な腫瘍血管新生および壊死を促進することは、固形腫瘍に幅広く適用可能となり、初期相臨床治験における試験のための補助を提供する。
臨床的放射線療法において、単回線量IRは、定位放射線手術を例外として、腫瘍血管新生の焼灼を引き起こすのに十分に高い線量では一般的に与えられず、故に、腫瘍血管新生を標的とすることは、臨床的状況の大部分において有用な戦略となろう。最初の動物試験に使用された5Gy線量のIRは、臨床的に一般に使用される線量範囲内に十分に入る。例えば、8Gyの範囲の照射の単回線量が、悪性脊髄圧迫、骨転移、またはかさばり圧迫病変(bulky compressive lesions)の治療のためにしばしば使用される。故に、症状および腫瘍制御は、それらの標準的な照射療法の後にノッチ阻害剤を投与することによって改善され得る。他の症例では、ノッチ阻害剤を分割放射線療法スケジュールと組み合わせること、および/または阻害剤およびIRの異なる順序付けを使用することが適切であろう。
内皮細胞と腫瘍細胞との間で開始されるノッチシグナル伝達が腫瘍微小環境を変化させ得るという証拠が存在する。ノッチリガンドであるDLL4またはジャグド1の、腫瘍細胞上での発現は、隣接した内皮細胞上でのノッチシグナル伝達を触発して、腫瘍血管新生を変化させ、腫瘍成長を増大させる(Li et al.,Cancer Cell 2005,8(1):1−3、Li&Harris、Front Biosci.2009,14:3094−110、Zeng et al.Cancer Cell 2005,8(1):13−23)。同様に、間質細胞は、腫瘍細胞におけるノッチシグナル伝達を誘導し得、それは休眠からの腫瘍エスケープ(Indraccolo et al.Cancer Res.2009,69(4):1314−23)、ならびに腫瘍血管内侵入および転移に関連付けられてきた(Sonoshita et al.Cancer Cell 2011,19(1):125−137)。Calabreseらは、血管周囲のニッチが、脳腫瘍幹細胞の維持のために重要であること、および抗血管新生薬によるこのニッチの妨害が、腫瘍成長を妨げることを報告した(Calabrese et al.Cancer Cell 2007,11(1):69−82)。同様に、トランスウェル系において成長させられた多形膠芽腫(GBM)患者からの腫瘍外植片は、GSIでの治療後に減少した腫瘍細胞増殖および自己再生を示し、これは放射線の効果を増強したが、これは、血管ニッチの妨害によるノッチ遮断の抗血管新生効果に起因して生じると仮定された(Hovinga et al.Stem Cells 2010,28(6):1019−29)。しかしながら、外植片モデルの限界は、体内異種移植系とは異なり、浸潤骨髄由来細胞、または周期的な腫瘍低酸素等の、腫瘍微小血管構造の重要な寄与因子および特性が説明され得ないということである。実際、腫瘍細胞のDBZまたはDLL4 mAbによる放射線反応の改善は、体外で何ら存在せず、代わりに、有意な腫瘍成長遅延は、体内でのみ見られた。更なる研究は、CSCおよびノッチ活性に対する体内マーカーを使用して、ノッチ阻害剤およびIRの、これらの腫瘍型に関連してCSCの結末に及ぼす影響を探索することに向けられるであろう。興味深いことに、腫瘍脈管構造へのGBM CSC分化の役割は、2つのグループによって最近実証されており(Ricci−Vitiani et al.Nature 2010,468(7325):824−28、Wang et al.Nature 2010,468(7325):829−33)、内皮前駆細胞の分化は、γ−セクレターゼ阻害剤によって遮断された(Wang et al.Nature 2010,468(7325):829−33)。
DLL4 mAbは、腫瘍成長を遅延させることにおいて、単独治療として、またはIRと組み合わせてのいずれでも、DBZよりもかなり有効である。DBZは、不十分な腹腔内吸収および/または急速な排除(12時間未満)に起因して、低い血漿中レベルを有することが報告されている(Milano et al.,Toxicol Sci.2004,82(1):341−58)。故に、モノクローナル抗体のより長い血漿半減期は、DLL4−ノッチシグナル伝達の継続的で有効な遮断を提供することが予想されるであろう一方で、DBZからもたらされるノッチ阻害は、投薬間隔の間に衰えることが予想されるであろう。更に、腫瘍DLL4発現における増加が、体外および体内の両方でのノッチ遮断に続き、腫瘍表面上のDLL4の結果として増加したレベルは、理論上、DLL4 mAbとより効果的にシグナル伝達することから遮断され得る。GSIよりもDLL4 mAbを利用することの、別の変換される利点は、それが、増殖性腺窩細胞の杯細胞への変換によって引き起こされる用量制限胃腸毒性を回避するということである(Milano et al.,Toxicol Sci.2004,82(1):341−58、van Es et al.,Nature 2005,435(7044):959−63)。現在の試験における体重減少によって測定されたとき(データは示されず)、DBZのいかなる有意な毒性も存在しなかったが、DBZは、これが安全なスケジュールであることが以前に示されたため(J.L.Li、未公開データ)、3日毎に、最大で5回用量で投与されるのみであった。より頻繁で長期的な投薬が可能であった場合、これはDBZによる改善された腫瘍成長遅延をもたらし得たかもしれない。糖質コルチコイドの並行投与を通じて等の、GSI治療からのGI毒性を低減するための試みが行われてきた(Real&Ferrando,Leukemia 2009,23(8):1374−7)。
ノッチ1またはノッチ2受容体に特異的なモノクローナル遮断抗体の開発は、強力な抗腫瘍活性を保持しながら、用量制限GI毒性を成功裏に回避してきた(杯細胞化生は、ノッチ1遮断およびノッチ2遮断の両方を必要とするように思われる)(Wu et al.,Nature 2010;464(7291):1052−7)。故に、これらの前臨床モデルにおける、IRと組み合わせた、ノッチ1もしくはノッチ2、またはノッチリガンドであるジャグド1もしくはDLL1に対する遮断mAbを含む、更なる特異的ノッチ経路阻害剤を検査する将来的な実験が重要となり、これは恐らく、腫瘍微小環境内でのノッチシグナル伝達における冗長性が実証される場合に必要となり得る。顕著なことに、本明細書における異種移植片実験は、ジャグド1を発現し、先験的に、DBZ治療を介したノッチシグナル伝達のより包括的な阻害は、腫瘍成長を遅延させることにおいてより有効であることが予想された。しかしながら、抗体は、現在の実験においてはるかにより有効であった。腫瘍上でのジャグド1発現がDLL4の不在下でノッチを活性化しなかったことは驚くべきことであるが、それは、血管新生網膜モデルにおいて見られたように、蓄積されたDLL4がジャグド1と競合し得たことによるかもしれない(Benedito et al.,Cell 2009、137(6):1124−35)。Leeらは、酸素正常状態または低酸素状態のLS174T異種移植腫瘍に対する、IR(20〜40Gy)との併用抗VEGF mAbを探索したが、腫瘍成長遅延に対する効果は、せいぜい相加的であり、例外は、最も高い線量のIR(40Gy)および低酸素状態の腫瘍のみで見られた(Lee et al.,Cancer Res.2000,60(19):5565−70)。比較して、同じ異種移植系を使用して、相乗的腫瘍成長遅延が、DLL4遮断およびIR後に得られ、これは、より低い、より臨床的に関連性のあるIR線量で生じた。DLL4遮断が、前臨床モデルにおいて抗VEGF療法への腫瘍耐性に打ち勝つことが可能であるという以前に報告された知見を考慮すると(Ridgway et al.Nature 2006,444(7122):1083−7、Li et al.,Cancer Res 2007,67(23):11244−53)、放射線療法との併用ノッチ阻害およびVEGF阻害のこのアプローチを探索することは興味深いであろう。
現在の研究は、腫瘍異種移植モデルにおける、IR療法と組み合わされたDLL4阻害剤についての体内での知見の最初の報告である。その併用は、腫瘍成長遅延を延長し、臨床的に関連性がある。結論として、IR後にDLL4阻害剤を使用して、非生産的な血管新生および大幅な腫瘍壊死をもたらすことは、腫瘍成長または再発を低減するための有効なアプローチである。
本発明の他の実施形態は、本明細書の考慮および本明細書に開示される本発明の実施から、当業者に明らかとなろう。本明細書および実施例は、例となるものにすぎないと見なされることが意図され、本発明の真の範囲および趣旨は、次の特許請求の範囲によって示される。