本発明は、上部導波体と下部導波体との間に挟まれた増幅媒体を有する半導体放射源に関する。本発明はまた、レーザ光から有効光を生成するための方法にも関する。本発明は特に有利には、指向性のビームを用いた用途に使用することができ、特にプロジェクタや車両照明器具に、特に投光器に使用することができる。
光品質が高い光源を必要とする用途は数多く存在し、このような特性には、スペクトルと、放射特性および輝度とが含まれる。特にビデオプロジェクタの場合や、指向性のビームを必要とする全ての用途(たとえば自動車投光器)では、典型的には高輝度の光源が必要となる。伝統的にはこのような用途に、ごく僅かな容積(約1mm3)で電力を光に変換するショートアーク型の高圧放電ランプが使用されてきた。発光ダイオード(LED)の輝度は限られているので、上述のような用途に発光ダイオードを使用するのが有効になることは一部のみに限られ、たとえば移動電話機におけるピコプロジェクタや、自動車におけるデイライト用等に限られている。
最近では上記用途に、青色レーザと、これに後置された波長変換色素とを組み合わせて使用するようになった(LARP、"Laser Activated Remote Phosphor")。このLARP方式では典型的には、複数のミラーおよびレンズを用いて、1つまたは複数の半導体レーザの出力ビームを色素に集束させ、出力ビームの少なくとも一部は前記色素により波長変換される。
本発明の課題は、従来技術の欠点の少なくとも一部を解消し、とりわけ、特にコンパクトかつ低コストであり、確実に使用できる半導体放射源を実現することである。
前記課題は、独立請求項に記載の特徴によって解決される。有利な実施形態は、とりわけ従属請求項から導き出すことができる。
前記課題は、増幅媒体と、当該増幅媒体に設置された少なくとも1つの導波体とを有する半導体放射源であって、少なくとも1つの導波体に少なくとも1つの光出力結合領域が設けられており、少なくとも1つの出力結合領域に少なくとも1つの波長変換蛍光体が後置されている、半導体放射源により解決される。
典型的には、増幅媒体を用いて誘導放出により、主に当該増幅媒体内に存在するかないしは増幅媒体内に伝搬する電磁波(「モード」)を生成する。従来の半導体レーザの場合には、この電磁波は大抵、レーザビームを生成するための前記増幅媒体中からそのまま、部分透過性の(共振器)ミラーを通って出力結合される。大抵の半導体レーザの場合、レーザビームは、空間的かつ時間的にコヒーレントである狭帯域の光ビームとなるのに対し、スーパールミネセンスダイオードの場合には通常、光ビームの線幅は大きく、時間的コヒーレンスは低くなるが、空間的コヒーレンスは高くなる。(スーパールミネセンスダイオードも含めた)このような半導体レーザの構造および動作は良く知られているので、これについてはここでは詳しく説明する必要はない。
また、増幅媒体内で生成された電磁波は、比較的低いが無視できる程度ではない強度で導波体に入射し、この強度は、増幅媒体からの距離が大きくなるほど低下していく。少なくとも1つの導波体に、特に光である放射を出力させるための少なくとも1つの光出力結合領域を設けることにより、通常は上述の部分透過性のミラーを通って出力結合される光ビームの他に追加的または択一的に、前記少なくとも1つの導波体の光出力結合領域において少なくとも1つの光ビーム(以下、この光ビームを簡単に「有効光ビーム」とも称する)を生成することができる。この有効光ビームはとりわけ、インコヒーレント光を含むか、ないしは、インコヒーレント光から成ることができる。
光出力結合領域において出力結合される有効光ビームの出力密度は、典型的には、従来のレーザビームの出力密度より低いので、(少なくとも1つの)波長変換蛍光体まで短距離でも、蛍光体を(英語でしばしば「phosphor」とも称される)損傷せずに、有効光ビームを入射させることができる。よって、前記出力結合領域のうち少なくとも1つに少なくとも1つの波長変換蛍光体が後置されている場合、この半導体放射源において直に、または、半導体放射源の比較的近傍の周辺領域において、増幅媒体中で伝搬する電磁波の波長と異なる少なくとも1つの波長を有する光を生成することができる。このことにより、複数の異なる波長の光を放射できる、特にコンパクトかつロバストな波長変換半導体放射源を実現することができる。また特に、半導体放射源から遠隔に設置される蛍光体(「遠隔蛍光体(Remote Phosphor)」とも称されることがある)を省略することもでき、また、これに対応する光学部品を省略することもできる。このように部品を省略できることにより、特に低コストの多色発光半導体放射源を実現することができる(無彩色発光半導体放射源も可能である)。少なくとも1つの出力結合領域に蛍光体を後置しないことにより、この出力結合領域において特に、元の波長のインコヒーレント光が出力結合されるようにした構成も可能である。
半導体放射源とは特に、動作時に電磁波を生成する全ての半導体構造体を意味することができる。この電磁波は特に光とすることができる。この光は、可視光および/または非可視光(たとえば赤外光または紫外光)とすることができる。その場合には、前記半導体放射源は特に半導体光源と称することもできる。
前記半導体放射源は、特に半導体レーザとすることができる。
前記半導体レーザはとりわけリッジレーザ(リッジ導波構造を有するレーザ)を含むことができる。その際には、前記増幅媒体は特に、上部導波体と下部導波体との間に挟み込むことができる。上部導波体と下部導波体とを一体に構成することができる。前記光出力結合領域は、上部導波体および/または下部導波体に設けることができる。
また、前記半導体放射源はたとえばディスクレーザを有することも可能である。この種のレーザでは、ディスクレーザの縁部において電磁波が円で振動する(「漏洩モード(エッジモード)」)。光帰還は内部全反射(TIR)により生じる。非常に小型のレーザの場合、所要の反射角に達することができない場合には、さらに付加的なコーティングを設けることがある。このようなディスクレーザでも、波または漏洩モードは空間的な拡がりを示す。したがって、ディスクレーザのディスク中心に光出力結合領域を設けることにより、漏洩モードの一部を出力結合させて波長変換することができる。換言すると、前記少なくとも1つの光出力結合領域は特に、ディスクレーザのディスクの中心領域に設けることができる。この少なくとも1つの光出力結合領域はとりわけ複数の光出力結合領域を含むことができ、これらの光出力結合領域は特に規則的な配置で、とりわけマトリクス状に配置される。
前記半導体放射源はレーザダイオードを、とりわけスーパールミネセンスダイオードを含むこともできる。
増幅媒体はとりわけ増幅層とすることができる。この増幅媒体は、一体部材とするか、または複数の部分から成ることができる。複数の部分から成る1つの増幅媒体は、複数の増幅媒体の集合であると解釈することもできる。
上記ですでに言及したように、前記少なくとも1つの有効光ビームは、他のレーザビームと共に追加的に出力結合することができる。
上記実施形態に代えて択一的に、レーザ光ビームの代替として前記少なくとも1つの有効光ビーム(のみ)を出力結合することも可能である。確かに、この半導体放射源でも増幅媒体内においてレーザ光が生成されるが、このレーザ光はそのままでレーザビームとして出力結合されたり使用されたりすることはない。むしろ、少なくとも1つの有効光ビームのみが生成される。こうするためにはとりわけ、増幅媒体中に存在する波またはモードを帰還させるための帰還ミラーを完全に(100%)反射性にすることができる。このような半導体放射源は特に省エネルギーであり、かつ、多色光(カラー光または無彩色光)を必要とする光分野のために半導体放射源を規定通りに構成することができる。さらに、半導体放射源からコヒーレント光が出射しないように半導体放射源を構成できるという利点も奏される。
とりわけ、前記少なくとも1つの各導波体を、(多層積層体も含めて)少なくとも1つの半導体層として構成することができる。したがって、この少なくとも1つの半導体層は少なくとも部分的に透光性とすることができる。少なくとも1つの導波体をpドープ半導体領域として構成し、少なくとも1つの他の導波体をnドープ半導体領域として構成することができ、また、その逆にすることも可能である。
前記少なくとも1つの導波体ないしは半導体層にそれぞれ、少なくとも1つの電気的接続端子を、とりわけ外側コンタクト層を設けることができる。この外側コンタクト層は、特に金属コンタクト層とすることができ、少なくとも1つの外側コンタクト層を放熱部材とすることができる。
前記半導体放射源が少なくとも1つの導波体において、所定のパターンに配置された複数の光出力結合領域を有する実施形態が可能である。たとえば、前記複数の光出力結合領域を1列に配置するか、または、マトリクス状のパターンに配置することができる。
1つの実施形態では、前記光出力結合領域は、導波体に形成された陥入部とすることができる。
この陥入部により、光出力結合領域を増幅媒体により近づけて設置することができ、このことにより、ここで出力結合される有効光ビームを集中させることができる。形状および/または深さを変えることにより、有効光の強さ、たとえば出力密度および/または強度を、および/または、有効光ビームの形状を規定通りに調整することができる。
前記陥入部は基本的に任意の適切な形状を有することができ、たとえば、断面が方形である基本形状または箱形の形状を有することができる。
また、前記陥入部が、増幅媒体の方向に漸次的に細くなっていく形状を有する構成が可能であり、特に、陥入部の基本形状の断面がV字形である構成も可能である。
上述の基本形状により、従来のエッチングプロセスによって陥入部を形成するのが容易になる。さらに、この陥入部にて生成される有効光ビームをより高指向性にすることもでき、とりわけより高度に集束させることもできる。特に、たとえば有効光ビームのビーム幅を絞ることができる。
「V」字の先端は、尖鋭にすることも、または平らにすることもできる。
1つの実施形態では、少なくとも1つの陥入部の基本形状は円錐状または円錐台状である。このような形状は特に、ディスクレーザと共に用いるのに適しているが、この用途に限定されることはない。このような実施形態により、高度に集束された、特に回転対称的な光ビームを生成することができる。
さらに、1つの実施形態では、少なくとも1つの陥入部の基本形状は角錐状または角錐台状である。このような実施形態により、半導体処理法を用いて陥入部を簡単に形成することができ、なおかつ、高度に集束された光ビームを生成することができる。
さらに、少なくとも1つの陥入部の基本形状は、一方向に長く延びたトレンチ状である実施形態も可能である。このトレンチはとりわけ、V字形の断面を有するトレンチとすることができる。このトレンチ状の基本形状によって大量の光束を実現することができ、かつ、トレンチ状の基本形状は半導体処理法により簡単に形成することができる。
基本形状がそれぞれ異なる複数の陥入部を用いることができる。
少なくとも1つの陥入部、とりわけトレンチは、導波体の全幅にわたって延在することができる。しかし有利なのは、陥入部を導波体が囲むように包囲することである。このことにより、(たとえば電気的ブリッジ等が無くなることにより)導波体の電気的コンタクトを簡略化することができる。
また、半導体放射源が、それぞれ異なる深さの複数の光出力結合領域を有する実施形態もある。
このような実施形態により、特に、合成される総有効光ビームの強度分布の調節性を改善することができる。
1つの実施形態では、少なくとも1つの陥入部が前記増幅媒体から離隔されて配置または形成されている。換言すると、このような少なくとも1つの陥入部は増幅媒体まで達しない。このようにして、陥入部にて出力結合される光ビームの強度または出力密度を小さく抑えることができ、このように強度や出力密度を小さくできることによってとりわけ、これに対応する少なくとも1つの蛍光体の長寿命性を促進させることができる。その上、増幅媒体における光生成が阻害されることが無くなるか、またはほとんど阻害されることが無くなる。
さらに他の1つの実施形態では、少なくとも1つの陥入部は少なくとも増幅媒体内まで達する。このような構成により、陥入部において出力結合された光ビームの強度または出力密度を大きく上昇させることができる。
1つの実施形態では、少なくとも1つの陥入部は少なくとも1つの増幅媒体を貫通して延在する。
このような実施形態により、その光出力結合領域の有効光ビームの数値を特に高くすること、たとえば強度および/または出力密度を特に高くすることができる。
さらに1つの実施形態では、前記陥入部には少なくとも部分的に、前記少なくとも1つの蛍光体が充填されている。
このような実施形態により、特にコンパクトかつ低コストの半導体放射源を実現することができる。陥入部に完全に蛍光体を充填することもでき、このような充填により、特に高い変換率を実現することができる。前記実施形態に代えて択一的に、たとえば、陥入部の表面にのみ蛍光体を被膜することもできる。このことにより、陥入部から送出される有効光束の方向調整および/または成形をより簡単にすることができる。特に、陥入部を漸次的に細くした構成と組み合わせると、有効光束のビーム幅を制限または維持することができる。
さらに、前記光出力結合領域が、前記導波体の露出表面上に散乱構造部を有する実施形態も可能である。
この散乱構造部は、陥入部の表面に設けるか、または、少なくとも1つの導波体の、陥入部が無い領域に設けることができる。この散乱構造部により、特に、散乱構造部が設けられた表面領域において全反射を阻止して光を出力結合させることができる。このようにして、簡単な手段で光出力結合を実現または増強することができる。
たとえば、前記散乱構造部を粗面化領域ないしは粗面部とすることができる。これに代えて択一的に、またはこれと併用して、前記散乱構造部をたとえば、導波体にコンタクトする部材とし、この部材の屈折率が、コンタクトする導波体の屈折率と格段に異なっており、この屈折率差により有効光ビームが生成されるようにした構成も可能である。
さらに、前記光出力結合領域から出射した光ビームを少なくとも1つの蛍光体へ導光するように構成された導光構造部を、当該光出力結合領域に後置した実施形態も可能である。
このような実施形態により、特に多面形の蛍光体領域を形成することができ、その上、光出力結合領域から出射した光を実に種々の形状に、かつ高精度で成形することもできる。前記導光構造部はたとえば、蛍光体をフィラーとして含む導光体とすることができる。また導光構造部は、内部の空洞内で光を導光する中空の導光体を有することも可能であり、この中空導光体の内側には蛍光体が設けられている。前記導光構造部はたとえば、光出力結合領域上に垂直に設置することができる。
また、前記出力結合領域のうち少なくとも1つの出力結合領域の少なくとも1つの蛍光体に、波長変換された光を透過して未波長変換の光を阻止する波長選択性フィルタが後置された実施形態も可能である。
この波長選択性フィルタは特に、波長変換された光を透過させて未波長変換の光を半導体放射源内に反射し戻す波長選択性反射器とすることができる。このような波長選択性反射器により、未波長変換の色成分が抑圧されるので、波長変換後の純色の有効光ビームを出力結合させることが可能になり、その上、レーザビームを利用する場合には、未波長変換の光の光損失を低減させること、ひいては、レーザビームの出力損失を低減させることもできる。それに対し、波長変換された光の出力結合量は損なわれることがなく、またはほとんど損なわれることがない。
たとえば、前記少なくとも1つの波長選択性反射器はダイクロイックミラーを有するか、または、波長選択性反射器をダイクロイックミラーとすることが可能である。また、薄い金層を被膜することもできる。この薄い金層はたとえば、青色光に対しては透過性であり、赤色光に対しては反射性となる層である。
前記課題はまた、レーザ光から有効光を生成する方法であって、前記レーザ光を生成するための増幅媒体に設置された少なくとも1つの導波体から前記有効光を出力結合させる方法によっても解決される。前記有効光はとりわけ非コヒーレント光である。このような方法により、半導体放射源と同様の利点が奏され、また、上述の方法は、半導体放射源と同様に実現することもできる。
以下、図面を参照して、実施例について詳細に説明する。この概略的な説明内容を併せて参酌すれば、本発明の上述の特性、特徴および利点と、本発明を実現する態様とを、より明確に理解することができる。全体を見やすくするため、同一または同機能の要素には同一の符号を付していることがある。
本発明の半導体放射源と比較するための従来の半導体レーザの断面を示す側面図である。
側面から見たときの、半導体レーザおよび半導体放射源内に存在する波の典型的な強度分布プロフィールを示す断面図である。
第1の実施形態の半導体放射源の断面を示す側面図である。
第2の実施形態の半導体放射源の断面を示す側面図である。
第3の実施形態の半導体放射源の一部分の断面を示す側面図である。
第4の実施形態の半導体放射源を斜め上から見た図である。
第5の実施形態の半導体放射源を上から見た図である。
第6の実施形態の半導体放射源を斜め上から見た図である。
第7の実施形態の半導体放射源を斜め上から見た図である。
第8の実施形態の半導体放射源の一部分の断面を示す側面図である。
第9の実施形態の半導体放射源の一部分の断面を示す側面図である。
第10の実施形態の半導体放射源の一部分を斜め上から見た図である。
第11の実施形態の半導体放射源の一部分を斜め上から見た図である。
図1は、第1の実施形態の半導体放射源1と比較するための従来の半導体レーザの断面を示す側面図である。従来の半導体レーザも半導体放射源1も増幅媒体2を有し、この増幅媒体2は、誘導放出によりレーザ光を生成する「活性領域」として機能する。このようなレーザ光の基本的な生成プロセスは公知である。
増幅媒体2の上面に上部導波体3が配置されている。この上部導波体3はpドープ半導体領域でもあり、たとえば、複数の層から構成したり、ないしは積層体とすることができる。増幅媒体2の下面にも下部導波体4が配置されている。この下部導波体4はnドープ半導体領域であり、複数の層から構成することができる。上部導波体3および下部導波体4の外側には、電気的コンタクトのために上部コンタクト層5ないしは下部コンタクト層6が被覆されている。たとえば、下部コンタクト層6を放熱部材としても形成することができる。増幅媒体2の相互に対向する両狭幅面に接する表側面7と裏側面8とに、当該増幅媒体2内に定常波を形成するための2つのミラー9が設けられている。
動作時には、公知のように増幅媒体2内にてレーザ光が生成される。図2中に強度分布プロフィールIで示しているように、レーザ光ないしは対応する波またはモードは増幅媒体2中に集中する。しかし、レーザ光は上部導波体3および下部導波体4にも侵入し、ここの強度Iは、増幅媒体2からの距離が大きくなるにつれて低下していく。両導波体3,4の外側の(コンタクト層5ないしは6に隣接する)表面36では、強度Iは実質的に無視できる程度に低くなっている。
従来の半導体レーザの場合、両(共振器)ミラー9のうち1つは、たとえば表側面のミラーは部分透過性となっている。それゆえ、レーザ閾値に達するとレーザ光Lがこの半透過性のミラー9を通って出射し、このレーザ光Lを有効光として使用することができる。
半導体放射源1の場合、上記レーザ光Lに代えて択一的に、またはレーザ光Lと共にさらに、両導波体3,4のうち少なくとも1つの導波体を介して光が出力される(「有効光」N。ここでは一点鎖線により示されている)。この有効光Nはとりわけ、インコヒーレント光とすることができる。この光をレーザ光Lの代替として出射させる場合には、特に、両ミラー9を非透過性ミラー(反射率100%)とすることができ、レーザ光Lが出力されずに内部のみで生成されるようにすることができる。
図3は、第1の実施形態の半導体放射源1の断面を示す側面図である。同図の上部導波体3を介して光を出力結合させるためには、この上部導波体3に、方形ないしは箱形である複数の陥入部10として形成された複数の出力結合領域が設けられている。これらの陥入部10の深さは、当該陥入部10が増幅媒体2まで達するか、または、増幅媒体2の近傍まで近づくようにされている。よって陥入部10は、上部導波体3の、(内部)レーザ光の強度Iが無視できない程度であるかないしは比較的高くなる領域内まで達する。陥入部10においてレーザ光が出力され、このレーザ光はコヒーレント性を失う。以下、このような出力結合される光を「1次光」とも称する。
陥入部10には完全に蛍光体11が充填されている。この蛍光体11(すなわち、各対応する陥入部10に光学的に後置接続された各蛍光体11)は、この陥入部10にて出力結合された1次光の少なくとも一部を別の波長の光に変換し、光ビーム(以下、「有効光ビームN」とも称する)を生成する。変換率に応じてこの光ビームは、波長変換された光のみを含むか、または、一部は波長変換された光であり一部は1次光である混合光を含む。前記蛍光体は1つの単独の蛍光体とするか、または、複数の蛍光体を含むことができ、これら複数の蛍光体はたとえば、ピーク波長がそれぞれ異なる波長変換光を生成する。
このようにして半導体放射源1は、特にコンパクトかつロバストな態様で、波長変換光を生成することができ、遠隔に配置された蛍光体へ導光するための光学系を後置する必要が無くなる。出力密度は比較的低いので、蛍光体がたとえばレーザ光線Lに設置される場合とは対照的に、蛍光体11は通常は破壊されることがない。また、寿命を損なうことなく、上部導波体3の処理と蛍光体11の被着とを実施することもできる。それに対し、表側面7に(または、表側面のファセットに)被着すると、以下の問題が生じる。表側面7における出力密度は非常に高いので、蛍光体を破壊してしまう。特に青色GaNレーザの場合、表側面7は非常に損傷しやすいので、たとえば空気中の水分や酸素と接触すると、数時間のうちに不具合が生じてしまう。また、光帰還も損なわれてしまう。
レーザ光をより高効率で出力結合させるためには、陥入部10に散乱構造部を設けることができ、たとえば陥入部10の少なくとも一部を粗面化することができる。
図4は、第2の実施形態の半導体放射源12の断面を示す側面図である。半導体放射源12は図1の実施形態の半導体放射源1と同様の構成になっており、半導体放射源12が図1の実施形態の半導体放射源1と異なる点は、陥入部13の形状である。陥入部13の断面はV字形になっている。たとえば、陥入部13を細長いトレンチ、角錐形または円錐形の凹部とすることができる。上述のようなV字形状により、開口角がより小さい有効光ビームNを実現することができる。
図5は、第3の実施形態の半導体放射源14の一部分の断面を示す側面図である。同図では、少なくとも1つの光出力結合領域が散乱構造部15の形態で、上部導波体3の露出表面36に形成されている。この散乱構造部15はたとえば、局所的な粗面部とすることができる。散乱構造部15において、光を上部導波体3から出力結合させることができる。
前記散乱構造部15には、垂直に立っている管16の形状の導光構造部が後置されている。この管16の一方の開口部は散乱構造部15により覆われており、他方の開口部は光を通すようになっている。管16の内側には蛍光体11が被覆されている。したがって、散乱構造体15において出力結合される光は管16内側の空洞17を通って導光され、その際、この光の少なくとも大部分は内壁ひいては蛍光体11に当たって波長変換される。この構成により、管16から出射する有効光ビームNを特に規定通りに、かつ十分に成形および方向調整することが可能になる。
上述の構成と、たとえば陥入部10等である陥入部とを併用することもできる。その際には、前記散乱構造部15はたとえば陥入部の底面に設けられ、その上に管16が設置される。このようにして、有効光ビームNの強度または光束を規定通りに調整すること、特に増幅させることが可能になる。
図6は、第4の実施形態の半導体放射源18を斜め上から見た図である。この半導体放射源18は細長い増幅媒体2を有し、上部導波体3および下部導波体4がこの増幅媒体2の周面を覆うように設けられている。
陥入部19および20は上部導波体の全幅bにわたって延在しておらず、ひいては、上部コンタクト層5の全幅bにわたって延在してもいない。このことにより、一続きの上部コンタクト層5を実現することができ、電気的コンタクトが容易になる。
図7は、第5の実施形態の半導体放射源21を上から見た図である。この半導体放射源21はたとえば、半導体放射源18の構成と同様の構成とすることができる。この半導体放射源21は、それぞれ形状が異なる複数の陥入部20,22を同時に併用できることを示している。同図の2つの態様の陥入部20,22は双方ともV字形の断面を有し、一方の陥入部20はたとえば角錐形であり、他方の陥入部22はたとえば円錐形とすることができる。このようにして、特に多くの形状の有効光ビームを生成することが可能になる。また同図では、光束を容易に増減可能であるように増大させるため、陥入部20,22をたとえばマトリクス状のパターンに配置されているのが示されている(同図ではそれぞれ2×2パターンに配置されている)。
図8は、第6の実施形態の半導体放射源23を斜め上から見た図であり、この実施形態の構成は、半導体放射源18の構成と同様になっている。この実施形態では、増幅媒体2の長手方向にV字形の陥入部24が延在している。このような構成により、特に簡単に製造を行うことができ、かつ高い光束を実現することもできる。同図では、単に図示を簡略化するため、蛍光体は示していない。
図9は、第7の実施形態の半導体放射源25の上部導波体3を斜め上から見た図であり、この半導体放射源25は複数の陥入部を有する。同図では一例として、5つの陥入部26a〜26eを示している。陥入部26a〜26eの深さtは一部異なっており、よって、陥入部26a〜26eから出射される有効光ビームの出力密度または光束も一部異なる。このような構成により、半導体放射源25から出力される光束を特に種々に調整することが可能になる。
図10は、第8の実施形態の半導体放射源27の上部導波体3の一部分の断面を示す側面図である。同図の陥入部13には、半導体放射源12のように完全には充填されておらず、蛍光体層28が被覆されているだけである。このような構成により、有効光ビームNの開口角をさらに小さくすることができる。
さらに、未波長変換光の割合を規定通りに調整することが可能になり、これにより、たとえば所定の混色光座標で混合光から有効光ビームNを生成することができる。たとえば、前記1次光を青色光とし、前記色素は、青色光を黄色光に変換する色素とすることができる。その際には有効光ビームNは、特に、青‐黄色光混合により生成された白色混合光とすることができる。
有効光ビームN内から未波長変換光の成分を消去する場合には、これを消去するために、蛍光体11にたとえば、右側の陥入部13に示したような、波長変換された光のみを透過するフィルタ29を後置することができる。未波長変換光はフィルタ29によって、特に上部導波体3内に戻るように反射されるようにすることができる。
図11は、第10の実施形態の半導体放射源30の上部導波体3の一部分の断面を示す側面図である。半導体放射源30の陥入部13にはそれぞれ異なる蛍光体31r,31gおよび31bが設けられている点以外は、この半導体放射源30の構成は半導体放射源27の構成と同様である。このようにして、それぞれ異なる色の有効光ビームNr,NgないしはNbを生成したり、または、それぞれ異なるスペクトル組成の有効光ビームNr,NgないしはNbを生成することができる。
たとえば、前記増幅媒体2内にて生成されたレーザ光、ひいては1次光を紫外光とすることができる。この紫外光は蛍光体31r,31gおよび31bによって可能な限り完全に、赤色光と緑色光と青色光とに、ないしは、赤色および緑色および青色の有効光ビームNr,NgないしはNbに変換される。それぞれにUVフィルタ(上図)を用いることにより、半導体放射源30が確実に紫外光を放出しないようにすることができる。
上記実施形態に代えて択一的に、または上記実施形態と併用して、1次光の波長で有効光を、たとえば混合光の色成分として出力結合できるように、少なくとも1つの陥入部13に蛍光体を後置しない構成も可能である。
図12に、半導体レーザ23と同様の半導体放射源32を示す。この半導体放射源32では、トレンチ状の陥入部33は増幅媒体2内部まで到達している。このような構成により、有効光ビームを特に高い光束で生成することができる。増幅媒体2内において生成されたレーザ光の減衰を僅かのみにするためには、陥入部33は増幅媒体2の長手方向に対して平行に延在する。同図でも、単に概観しやすくするために、(充填されているか、または層として設けられた状態の)蛍光体を示していないが、この実施形態でも蛍光体は設けられている。
1つの択一的な実施形態では、少なくとも1つの陥入部は増幅媒体2を貫通することも可能である。
図13に、半導体レーザ23と同様の半導体放射源34を示しており、この半導体放射源34では、断面がV字形であるトレンチ状の陥入部35が、2つの別個の増幅媒体2の間で貫通している。このような構成により、レーザ光の生成を阻害することなく、各有効光ビームの光束を高くすることが可能になる。同図でも、単に概観しやすくするために、(充填されているか、または層として設けられた状態の)蛍光体を示していないが、この実施形態でも蛍光体は設けられている。
図面に示した実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の保護範囲を逸脱することなく、実施例から他の変更を導き出すことが可能である。
たとえば、どの実施例においても、光出力結合領域は種々の蛍光体と協働することが可能であり、また、どの実施例においてもフィルタを用いることができる。
また、図面に示した、半導体放射源のベースを成す半導体レーザの種類と異なる種類の半導体レーザを使用することも可能であり、たとえばディスクレーザを用いることが可能である。
さらに、少なくとも1つの陥入部に、または、いずれかの陥入部の一部分に蛍光体を後置しない構成も可能である。
一般的に、複数の異なる有効光ビームを別々に、特に複数の異なる色の有効光ビームを別々に半導体放射源から出射させることも、また、混合光として出射させることも可能である。