(発明の詳細な説明)
本発明の実施形態は、身体の様々な位置内に医薬品を送達するためのデバイス、システムおよび方法を提供する。本明細書において用いる場合、用語「医薬品」は、薬物または他の治療剤はもちろん1種もしくは複数種の医薬用賦形剤も含むことができる、任意の形態の医薬製剤を指す。多くの実施形態は、GI管内に医薬品を送達するための嚥下可能なデバイスを提供する。特定の実施形態は、小腸または他のGI器官の壁に医薬品を送達するための嚥下可能なデバイス、例えばカプセルを提供する。本明細書において用いる場合、「GI管」は、食道、胃、小腸、大腸および肛門を指し、その一方で「腸管」は、小腸および大腸を指す。本発明の様々な実施形態を、腸管はもちろん全GI管内への医薬品の送達用に構成および配列することができる。
ここで図1〜11を参照して、小腸壁などの腸管内の送達部位DSへの医薬品100の送達のためのデバイス10の実施形態は、少なくとも1本のガイドチューブ30と、前記少なくとも1つのガイドチューブ内に位置するかまたは別様に前記少なくとも1つのガイドチューブ内を前進することができる1つもしくは複数の組織貫入部材40と、送達部材50と、始動メカニズム60と、解放要素70とを備えているカプセル20を含む。本明細書に製剤100と記載することもある、医薬品100は、典型的に、少なくとも1つの薬物または治療剤101を含み、当該技術分野において公知の1種もしくは複数種の医薬用賦形剤も含むことがある。まとめると、送達部材50およびメカニズム60のうちの1つもしくは複数が、腸管壁内への医薬品100の送達用の手段を含むことがある。本明細書において企図される他の送達手段としては、1つもしくは複数の拡張可能なバルーン(例えば、送達バルーン172)または本明細書に記載する他の拡張可能なデバイス/部材が挙げられる。
液体、半液体もしくは固体形態の医薬品100または三形態すべての医薬品の送達用にデバイス10を構成することができる。医薬品/製剤100の固体形態としては、粉末またはペレットの両方を挙げることができる。半液体形態としては、スラリーまたはペーストを挙げることができる。いかなる形態であっても、製剤100は、医薬品をデバイスから進出させ、腸壁(またはGI管内の他の管腔壁)に進入させ、その後、その腸壁内で分解して薬物または他の治療剤101を放出することを可能にする、形状および材料一貫性を望ましくは有する。前記材料一貫性は、製剤の(体液中での)硬度、多孔度および溶解度のうちの1つもしくは複数を含み得る。前記材料一貫性を次のうちの1つもしくは複数によって達成することができる:i)製剤を作製するために用いる圧縮力;ii)当該技術分野において公知の1つもしくは複数の医薬用崩壊剤の使用;iii)他の医薬用賦形剤の使用;iv)製剤(例えば、微粒子化粒子)の粒径および分布;ならびにv)当該技術分野において公知の微粒子化方法および他の粒子形成方法の使用。製剤100についての好適な形状としては、円柱形、立方体、長方形、円錐形、球形、半球形およびこれらの組み合わせが挙げられる。また、製剤100の特定の表面積および体積を規定し、それに伴ってこれら2つの比を規定するように前記形状を選択することができる。また、前記表面積対体積比を用いて、GI管内の腸または他の管腔壁内で選択された分解速度を達成することができる。より大きい比(例えば、単位体積あたりの表面積のより大きな量)を用いてより速い分解速度を達成することができ、逆もまた真である。特定の実施形態において、前記表面積対体積比は、約1:1から100:1の範囲であり得、2:1、5:1、20:1、25:1、50:1および75:1の具体的な実施形態がある。製剤/医薬品100を、典型的には組織貫入部材40の管腔44内に事前にパッケージするが、カプセル20の内部24内の別の位置に、または液体もしくは半液体の場合には、密閉リザーバ27内に収容することもできる。医薬品を、管腔内に合うように事前に造形し得るか、または、例えば粉末形態でパッケージし得る。典型的に、デバイス10は、医薬品100の一部として単一薬物101を送達するように構成される。しかし、一部の実施形態では、単一または多数の医薬品100に配合することができる第一、第二または第三の薬物を含む多数の薬物101の送達用にデバイス10を構成することができる。多数の医薬品/薬物を有する実施形態については、別個の組織貫入部材40の中に、またはカプセル20内の別個の区画もしくはリザーバ27内に、前記医薬品を収容することができる。もう1つの実施形態では、第一の薬物101を含有する医薬品100の第一の用量102を貫入部材(単数または複数)40内にパッケージすることができ、(同じまたは異なる薬物101を含有する)医薬品100の第二の用量103を図1bの実施形態に示すようにカプセルの表面25に被覆することができる。2回用量の医薬品102および103での薬物101は、同じであっても異なっていてもよい。かくして、同じまたは異なる薬物の二峰性薬物動態放出(bimodal pharmacokinetic release)を達成することができる。医薬品100の第二の用量103は、それが小腸内で放出されるのを確実にし、また医薬品100の徐放を達成するために腸溶コーティング104を有することができる。腸溶コーティング104としては、本明細書に記載するかまたは当該技術分野において公知の1つのもしくは1つより多い腸溶コーティングを挙げることができる。
小腸壁またはGI管内の他の位置の壁内への医薬品100の送達のためのシステム11は、選択された状態(単数または複数)の処置用の1つのもしくは1つより多い医薬品100を収容しているデバイス10を含むことができる。一部の実施形態において、前記システムは、図1bの実施形態に示すように、デバイス10と通信するための、本明細書に記載する携帯式デバイス13を備えることができる。システム11は、図1cの実施形態に示すように、パッケージング12にパッケージされているシステム11と1セットの使用説明書15とを含むキット14として構成され得る。前記説明書は、1つもしくは複数の事象、例えば、食事の摂取または生理計測、例えば血糖、コレステロールなどに関してデバイス10を使う時を患者に知らせることができる。かかる実施形態において、キット14は、選択された投与期間にわたっての、例えば、処置すべき状態に応じて1日、1週間または何週間にもわたっての医薬品100のレジメンを収容している多数のデバイス10を備えることができる。
カプセル20は、嚥下され、腸管を通過するようなサイズである。このサイズを、送達すべき薬物の量ならびに患者の体重および成人対小児利用に応じて調整することもできる。カプセル20は、内容積24と、ガイドチューブ30用サイズの1つのもしくは1つより多いアパーチャ26を有する外面25と備えている。デバイス10の他の構成要素(例えば、始動メカニズムなど)に加えて、前記内容積は、1つもしくは複数の区画またはリザーバ27を備えることができる。当該技術分野において公知の様々な生体適合性ポリマーからカプセル20の1つもしくは複数の部分を製造することができ、この生体適合性ポリマーには様々な生分解性ポリマーが含まれ、これらの生分解性ポリマーは、好ましい実施形態ではPGLA(ポリ乳酸−co−グリコール酸)を含み得る。他の好適な生分解性材料としては、本明細書に記載する様々な腸溶性材料、ならびにラクチド、グリコリド、乳酸、グリコール酸、パラジオキサノン、カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、およびこれらのブレンドおよびコポリマーが挙げられる。本明細書中でさらに詳細に説明するように、様々な実施形態において、カプセル20は、より容易に腸管を通過させられるより小さい断片23に制御可能に分解するように生分解性材料のシーム22を備えることができる。加えて、様々な実施形態において、前記カプセルは、蛍光透視法、超音波または他の医療画像診断法を用いるデバイスの定位のための様々な放射線不透過性またはエコー源性材料を含むことができる。具体的な実施形態において、前記カプセルのすべてまたは一部分は、図1aおよび1bの実施形態に示すように、放射線不透過性/エコー源性マーカー20mを含むことができる。使用すると、かかる材料により、GI管内のデバイス10の定位が可能になるばかりでなく、該デバイスのGI管の通過時間の決定も可能になる。
好ましい実施形態において、組織貫入部材40は、ガイドチューブ30内に位置し、該ガイドチューブ30は、小腸壁またはGI管の他の部分の壁などの組織への部材40の進入を導き、支持するのに役立つ。組織貫入部材40は、典型的には中空針または他の類似の構造を含み、ならびに管腔44と腸管壁IWの選択可能な深さに貫入するための組織貫入端45とを有する。部材40は、本明細書に記載する運動変換機90との係合のためのピン41も備えることができる。貫入深度は、部材40の長さ、本明細書に記載する運動変換機90の構成、ならびに部材40上への止めまたはフランジ40sの配置によって制御することができ、前記止めまたはフランジ40sは、一部の実施形態では、本明細書に記載するピン41に対応し得る。医薬品100は、典型的には管腔44を通って組織に送達される。多くの実施形態において、管腔44には所望の医薬品100が事前にパッケージされており、該医薬品100は、送達部材50または他の前進手段を用いて(例えば、部材40のしぼめることができる実施形態に加えられる力によって)該管腔から進出させられる。代案として、医薬品100をカプセル20の別の位置/区画から管腔44に進入させることができる。一部の実施形態では、組織貫入部材40のすべてまたは一部分を医薬品100自体から製造することができる。これらの実施形態および関連実施形態において、前記医薬品は、小腸壁などの腸壁に貫入し、該腸壁内に留置されるように構成された(返しを伴うまたは伴わない)針または矢のような構造を有する場合がある。前記矢を前記医薬品、用量、および腸壁への所望の貫入深度に応じて、サイズ調整および造形することができる。製薬技術分野において公知の様々な圧縮成形法を用いて、医薬品100を矢、ペレットまたは他の形状にすることができる。
様々な実施形態において、デバイス10は、図7aおよび7bの実施形態に示すように第二42および第三43の組織貫入部材40を備えることができるが、追加の部材も企図される。各組織貫入部材40を使用して、同じまたは異なる医薬品100を送達することができる。好ましい実施形態では、医薬品100の送達中に腸壁IW上にカプセルを係留するために、組織貫入部材40をカプセル20の外周21の周囲に実質的に対称に割り当てることができる。かかる方法でのカプセル20の係留は、医薬品の送達中に発生する蠕動収縮によってカプセルが転置されるかまたは動かされる尤度を低下させる。具体的な実施形態では、係留力の量を、小腸の蠕動収縮中に加えられる典型的な力に合せることができる。湾曲した形状または弓形形状を有するように構成された組織貫入部材40の一部またはすべてによって係留をさらに助長することができる。
送達部材50は、組織貫入部材管腔44を通って医薬品100を前進させ、腸壁IWに進入させるように構成される。したがって、送達部材50の少なくとも一部分は、組織貫入部材管腔44内を前進可能であり、したがって、部材50は、送達部材管腔44に内嵌するように構成されたサイズおよび形状(例えば、ピストン様形状)を有する。
一部の実施形態において、前記送達部材の遠位端50d(組織に進入させる末端)は、プランジャ要素51を有することができ、このプランジャ要素51は、医薬品を組織貫入部材管腔44内に前進させ、また該管腔とのシールを形成する。プランジャ要素51は、送達部材50に内蔵され得るか、または送達部材50に取り付けられ得る。好ましくは、送達部材50は、針管腔44内の固定距離を進んで、固定または定量用量の薬物を腸壁IW内に送達するように構成される。これは、送達部材の直径の選択(例えば、直径を遠位方向に漸減させることができる)、組織貫入部材の直径(その遠位端で狭くすることができる)、止めの使用、および/または始動のメカニズムのうちの1つもしくは複数によって達成することができる。しかし、一部の実施形態では、GI管内での1つのもしくは複数の感知条件などの様々な因子に応答して部材50の行程または進行距離を原位置で調整することができる。原位置での調整は、始動メカニズム60の電気機械式実施形態に連結されたロジックリソース29(制御装置29cを含む)の使用によって達成することができる。これにより、医薬品の様々な用量、および/または医薬品を腸壁に注入する距離の変化が可能になる。
組織貫入部材40または送達部材50の少なくとも一方に始動メカニズム60を連結させることができる。この始動メカニズムは、組織貫入部材40を腸壁IW内の選択可能な距離に進入させるように構成されることはもちろん、送達部材を前進させて医薬品100を送達し、その後、その組織貫入部材を腸壁から退出させるようにも構成される。様々な実施形態において、始動メカニズム60は、解放要素70によって解放されるように構成されるスプリング負荷型メカニズムを含む場合がある。好適なスプリング80としては、コイル(円錐形のスプリング)とリーフスプリングの両方を挙げることができるが、他のスプリング構造も企図される。特定の実施形態では、スプリング80を実質的に円錐形にして、圧縮状態のスプリング長をさらにスプリングの圧縮長が数コイル(例えば、2もしくは3)程度またはたった1コイル程度の厚みであるポイントまで低減させることができる。
特定の実施形態において、始動メカニズム60は、図2、4および8a〜8cの実施形態に示すように、スプリング80、第一の運動変換機90、および第二の運動変換機94、および軌道部材98を含むことができる。解放要素70は、スプリング80に該スプリングを圧縮状態で保持するように連結されるので、該解放要素の分解によって該スプリングは解放される。スプリング80を解放要素70に掛け金または他の接続要素81によって連結することができる。第一の運動変換機90は、組織貫入部材40を腸壁または他の組織に進入させ、腸壁または他の組織から退出させるようにスプリング80の運動を変換するように構成される。第二の運動変換機94は、送達部材50を組織貫入部材管腔44に進入させるようにスプリング80の運動を変換するように構成される。運動変換機90および94は、スプリングによって押され、変換機90の軌道部材管腔99に内嵌しているロッドまたは他の軌道部材98に沿って進む。軌道部材98は、変換機90の経路へ導くのに役立つ。変換機90および94は、所望の運動を生じさせるように組織貫入部材40および/または送達部材50と(直接または間接的に)係合している。それらは、スプリング80のその長軸に沿った運動を組織貫入部材40および/または送達部材50の直交する運動に変換するように、形状および他の特徴が構成されているが、他の方向での変換も企図される。前記運動変換機は、くさび形状、台形形状または湾曲した形状を有し得るが、他の形状も企図される。特定の実施形態において、第一の運動変換機90は、図2、3および4の実施形態に示すように、台形形状90tを有し、および溝孔93を含み、該溝孔93は、該溝孔の中を進む前記組織貫入部材上のピン41と係合し得る。溝孔93は、変換機90の全形状と全く同じかまたは、そうでなければ該全形状に相当する台形形状93tを有する場合もある。溝孔93は、前記台形の上り勾配部分91の間は組織貫入部材40を押すのに役立ち、その後、下り勾配部分92の間はそれを引っ張り戻すのに役立つ。1つの変形実施形態おいて、運動変換機90および94の一方または両方は、カムまたはカム様デバイスを含むことができる(図示なし)。前記カムをスプリング80によって回転させて、組織貫入部材および/または送達部材40および50と係合させることができる。カプセル10に内嵌するための選択された量の小型化を可能にするために当該技術分野において公知の様々なMEMSベースの方法を用いて、運動変換機90および94をはじめとするメカニズム60の1つもしくは複数の構成要素(ならびにデバイス10の他の構成要素)を製造することができる。また、本明細書に記載するように、当該技術分野において公知の様々な生分解性材料からそれらを形成することができる。
他の変形実施形態において、始動メカニズム60は、電気機械式デバイス/メカニズム、例えば、ソレノイドまたは圧電デバイスも含むことができる。1つの実施形態において、メカニズム60に使用される圧電デバイスは、非展開状態および展開状態を有する造形された圧電素子を含むことができる。この素子が電圧の印加により展開状態になり、その後、電圧の除去または電圧の他の変化により非展開状態に戻るように、この素子を構成することができる。本実施形態および関連実施形態は、前記組織貫入部材を前進させ、その後それを引き抜くという両方をするための始動メカニズム60の往復運動を可能にする。カプセル周囲の小腸の蠕動収縮によるカプセル20の圧縮から起こる変形などの機械的変形によって電圧を発生させる圧電ベースのエネルギー変換機または電池を使用して発生させて、前記圧電素子のための電圧を得ることができる。圧電ベースのエネルギー変換機のさらなる説明は、米国特許出願第12/556,524号において見つけることができ、該米国特許出願は、あらゆる目的で参考として本明細書に完全に援用される。1つの実施形態において、組織貫入部材40の展開は、実際には圧電素子用の電圧を発生させるための機械的エネルギーを提供する小腸の蠕動収縮から誘発され得る。
解放要素70は、典型的に、始動メカニズム60および/または該始動メカニズムに連結されたスプリングに連結される;しかし、他の構成も企図される。好ましい実施形態において、解放要素70は、図2の実施形態に示すように、スプリング80に連結されており、スプリング80は、カプセル20内に該スプリングが圧縮状態85で保持されるように位置する。解放要素70の分解は、スプリング80を解放して、始動メカニズム60を始動させる。したがって、解放要素70は、かくしてアクチュエータ70aとして機能することができる(アクチュエータ70は、スプリング80、およびメカニズム60の他の要素も含むことがある)。さらに下で説明するように、解放要素70/アクチュエータ70aは、治療剤製剤100をカプセル20に収容している第一の構成、および該治療剤製剤を該カプセルから進出させて小腸壁または腸管内の他の管腔壁に進入させる第二の構成を有する。
多くの実施形態において、解放要素70は、小腸または大腸内の化学的条件、例えばpHへの曝露により分解するように構成された材料を含む。典型的に、解放要素70は、小腸内の選択されたpH、例えば、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6 8.0、またはそれより大きいpHへの曝露により分解するように構成される。前記解放要素を、例えば7.0から7.5などの特定のpH範囲内で分解するように構成することもできる。特定の実施形態では、解放要素70が分解するpH(本明細書では分解pHと定義する)を送達すべき特定の薬物について選択して、その選択されたpHに対応する小腸内の位置でその薬物を放出させることができる。さらに、多数の医薬品100を有するデバイス10の実施形態について、該デバイスは、第一のpHで分解するように構成された第一の解放要素70(第一の薬物を送達するための始動メカニズムに連結されている)、および第二のpHで分解するように構成された第二の解放要素70(第二の薬物を送達するための始動メカニズムに連結されている)を備えることができる(様々な数の薬物のためのさらなる数の解放要素が企図される)。
解放要素70を小腸(または他のGI位置)内の他の条件に応じて分解するように構成することもできる。特定の実施形態では、解放要素70を小腸内の流体における特定の化学的条件、例えば、食事(例えば、脂肪、デンプンまたはタンパク質を含有する食事)の摂取後に発生する条件に応じて分解するように構成することができる。かくして、医薬品100の放出を食事の摂取と実質的に同調させるかまたは別様にタイミングを合わせることができる。
様々なアプローチが解放要素70の生分解について企図される。特定の実施形態において、小腸(またはGI管内の他の位置)内での1つもしくは複数の条件からの解放要素70の生分解を次のアプローチのうちの1つもしくは複数によって達成することができる:i)解放要素のための材料の選択、ii)それらの材料の架橋量、およびiii)解放要素の厚みおよび他の寸法。より少ない架橋量およびまたはより薄い寸法は、分解速度を増加させることができ、逆もまた真である。解放要素のための好適な材料は、生分解性材料、例えば、腸内のより高いpHへの曝露により分解するように構成されている様々な腸溶性材料を含み得る。好適な腸溶性材料としては、次のものが挙げられるが、それらに限定されない:酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、共重合メタクリル酸/メタクリル酸メチルエステルならびに当該技術分野において公知の他の腸溶性材料。選択された腸溶性材料を1つのもしくは1つより多い他のポリマーと共重合させてまたは別様に組み合わせて、生分解に加えて多数の他の特定の材料特性を得ることができる。かかる特性としては、限定ではないが、剛性、強度、可撓性および硬度を挙げることができる。
代替実施形態において、解放要素70は、フィルムまたはプラグ70pを含むことができ、該フィルムまたはプラグ70pは、ガイドチューブ30に外嵌するかまたは別様にガイドチューブ30をブロックし、該ガイドチューブの内部に組織貫入部材40を保持する。これらの実施形態および関連実施形態において、組織貫入部材40は、解放要素が十分に分解されると該組織貫入部材を解放し、その後その組織貫入部材がガイドチューブから飛び出して腸壁に貫入するような、スプリング負荷型始動メカニズムに連結される。さらに他の実施形態では、組織貫入部材40を適所に保持する掛け金として機能するように解放要素70を造形することができる。これらの実施形態および関連実施形態において、前記解放要素は、カプセル20の外部に位置する場合もあり、内部に位置する場合もある。後者の場合、カプセル20および/またはガイドチューブ30は、解放要素の分解を可能にするために該カプセル内に腸液が入ることを可能にする。
一部の実施形態において、小腸内のカプセルの存在を検出するセンサ67、例えばpHセンサ68または他の化学的センサによって始動メカニズム60を始動させることができる。そのとき、センサ67は、始動メカニズム60に、または始動メカニズム60に連結された電子制御装置29cにシグナルを送信して、該メカニズムを始動させることができる。pHセンサ68の実施形態は、電極ベースのセンサを含み得るか、または、それは、機械ベースのセンサ、例えば、小腸内の選択されたpHもしくは他の化学的条件への曝露により縮むかもしくは伸びるポリマーであり得る。関連実施形態において、伸縮可能センサ67は、該センサの伸長または収縮からの機械的な動きを用いることによりそれ自体が始動メカニズム60を構成する場合もある。
小腸(またはGI管内の他の位置)内のデバイスを検出するためのもう1つの実施形態によると、センサ67は、腸管内の特定の位置内でカプセルが受けている蠕動収縮の数を検出するための歪ゲージなどの圧力/力センサを含むことができる(かかる実施形態において、カプセル20は、望ましくは、蠕動収縮中に小腸によって狭持されるようなサイズである)。GI管内の異なる位置は、異なる数の蠕動収縮を有する。小腸は、毎分12から9回の間の収縮を有し、小腸の長さを下るにつれてその頻度が減少する。したがって、1つもしくは複数の実施形態によると、蠕動収縮数の検出を用いて、カプセル20が小腸内にあるかどうかを決定することができるばかりでなく、小腸内の相対位置も決定することができる。使用すると、これらの実施形態および関連実施形態は、小腸内の特定の位置における医薬品100の放出を可能にする。
内部起動薬物送達(例えば、解放要素および/またはセンサの使用)の代案または補足として、一部の実施形態において、ユーザーは、当該技術分野において公知のRF、磁気または他のワイヤレスシグナル送信手段によって医薬品100を送達するための始動メカニズム60を外部から起動させることができる。これらの実施形態および関連実施形態において、ユーザーは、図1bの実施形態に示すような携帯式通信デバイス13(例えば、携帯式RFデバイス、例えば携帯電話)を使用して、デバイス10からの受信シグナル17を送信することができる。かかる実施形態において、嚥下可能なデバイスは、トランスミッタ28、例えばRFトラシーバチップまたは他の類似の通信デバイス/回路部品を含むことができる。携帯式デバイス13は、シグナル送信手段を含むばかりでなく、デバイス10が小腸にまたはGI管内の他の位置にあるときユーザーに情報を与える手段も含むことができる。後者の実施形態を、シグナル送信のためにトランスミッタ28に連結されたロジックリソース29(例えば、プロセッサ29)を使用することによって実行して、いつデバイスが小腸または他の位置にあるかを検出して(例えば、センサからの入力をシグナル送信することにより)ユーザーにシグナル送信(singe)することができる。ロジックリソース29は、そのプロセスの1つもしくは複数の態様を制御するための制御装置29cを(ハードウェアまたはソフトウェアのいずれかで)備えることができる。同じ携帯式デバイスを、始動メカニズム60が起動され、選択医薬品100が送達されたとき(例えば、プロセッサ29およびトランスミッタ28を使用して)ユーザーに警告するように構成することもできる。かくして、ユーザーに、医薬品100が送達されたことの確認が提供される。これにより、ユーザーが他の適切な薬物/治療剤を摂取することはもちろん、他の関連した決定を行うこと(例えば、糖尿病患者が食事を食べるかまたは食べないか、およびいかなる食物を食べるべきか)も可能になる。始動メカニズム60に優先して嚥下可能なデバイス10にシグナルを送信するように前記携帯式デバイスを構成することもでき、その結果、医薬品100の送達を防止するか、遅延させるか、または加速させるように前記携帯式デバイスを構成することもまたできる。使用すると、かかる実施形態により、他の症状および/または患者の行動(例えば、食事を食べること、寝入ることを決めること、運動など)に基づいて医薬品の送達を防止するか、遅延させるか、または加速させることへのユーザーの介在が可能になる。ユーザーは、カプセルを嚥下してから選択期間後に、始動メカニズム60を外部から起動させることもできる。その期間を、食物がユーザーのGI管を通って該管内の特定の位置、例えば小腸に移動するための典型的な通過時間または通過時間の範囲に相関させることができる。
特定の実施形態において、カプセル20は、図10aおよび10bの実施形態に示すように、GI管の通過を助長するような選択可能なサイズおよび形状のカプセル片23を生じさせるように制御可能に分解する生分解性材料のシーム22を備えることができる。シーム22は、図10の実施形態に示すように、生分解を加速させるために流体がシームの中に入るための細孔または他の開口部22pも含むことができる。シーム22の生分解を加速させるための他の手段としては、シームへプレストレスを加えること、および/または図10の実施形態にも示すようにシームに穿孔22fを備えさせることを挙げることができる。さらに他の実施形態では、シーム22は、外部からまたは内視鏡(または他の低侵襲法)により施される超音波を使用してカプセルをより小さい断片に分解することができる超音波エネルギー、例えば高周波超音波(HIFU)の吸収によって容易に分解される材料で構築され得、そして/または、前述のようにして容易に分解される構造を有し得る。
シーム22のための好適な材料としては、本明細書に記載する1種もしくは複数種の生分解材料、例えばPGLA、グリコール酸などを挙げることができる。ポリマー技術分野において公知の様々な接合法、例えば、成形、ホットメルト接合などを用いてカプセルボディ20にシーム22を取り付けることができる。加えて、同じく生分解性材料から製造されるカプセル20の実施形態については、シーム22のより急速な生分解を次のうちの1つもしくは複数によって達成することができる:i)より急速に生分解される材料からのシームの製造、ii)シームへプレストレスを与えること、またはiii)シームへの穿孔。GI管内で嚥下可能なデバイスの制御分解を生じさせるために生分解性シーム22を使用するという概念を他の嚥下可能なデバイス、例えば嚥下可能なカメラ(または他の嚥下可能な撮像デバイス)に応用して、GI管通過を助長し、かかるデバイスがGI管内に固着される尤度を低下させることができる。したがって、生分解性シーム22の実施形態を嚥下可能な撮像デバイスおよび他の嚥下可能なデバイスに適合させることができる。
本発明のもう1つの態様は、嚥下可能な薬物送達デバイス10の1つもしくは複数の実施形態を使用するGI管壁への薬物および他の治療剤の(医薬品100の形態での)送達方法を提供する。ここで、かかる方法の例示的実施形態を説明することにする。説明する薬物送達実施形態は、小腸SI内で行われる。しかし、これが例示的なものであること、ならびに胃および大腸をはじめとするGI管内の多数の位置における薬物の送達に本発明の実施形態を使用することができることは理解されるはずである。論述を容易にするために、嚥下可能な薬物送達デバイス10を本明細書では時としてカプセルと呼ぶことにする。上で説明したように、様々な実施形態において、デバイス10を密封パッケージング12の中にキット11としてパッケージすることができ、該パッケージング12は、デバイス10および1セットの使用説明書15を備えている。患者が携帯式デバイス13を使用している場合、該患者は、手作業で、または説明書15またはパッケージング12上にあるバーコード18(もしくは他の識別表示18)によってデバイス13にデータを入力するようにとの指示を受けることができる。バーコードを使用する場合、患者は、デバイス13上のバーコードリーダ19を使用してバーコードをスキャンすることになるだろう。パッケージング12を開け、説明書15を読み、一切の必要データを入力した後、患者は、嚥下可能な薬物送達デバイス10の実施形態を嚥下する。薬物に応じて、患者は、食事と共に(食事前、中もしくは後に)または生理計測に関連してデバイス10を使うことができる。カプセル20は、図11の実施形態に示すように、蠕動作用によってGI管を通過するようなサイズであり、患者の胃Sを通って小腸SIへと進む。本発明の1つもしくは複数の実施形態によると、小腸に入ると、解放要素70は、小腸内の塩基性pH(または小腸に特有の他の化学的もしくは物理的条件)によって分解されて、始動メカニズム60を始動させ、医薬品100を小腸SIの壁内に送達する。中空針または他の中空組織貫入部材40を含む実施形態については、始動メカニズム60を使用して針40を腸壁ISの粘膜内の選択距離に進入させることによって医薬品送達が遂行され、その後、送達部材50の前進により針管腔40を通して医薬品を注入する。(例えば、スプリングの反動により)送達部材50を退出させ、その後、針40を退出させてカプセルのボディ内に戻し、それによって腸壁から取り外す。多数の針を有するデバイス10の実施形態については、第二または第三の針42、43も使用して、追加用量の同じ薬物または別々の薬物101を送達することができる。針前進を実質的に同時に行うことができるか、または逐次的に行うことができる。多数の針を使用する好ましい実施形態では、針前進を実質的に同時に行って、薬物送達中、小腸内にデバイス10を係留することができる。
医薬品送達後に、デバイス10は、大腸LIをはじめとする腸管を通過し、最終的には排泄される。生分解性シーム22または他の生分解性部分を有するカプセル20の実施形態については、図9aおよび9bの実施形態に示すように、カプセルが腸管内でより小さい断片に分解されて、腸管通過および腸管からの排泄を助長する。生分解性組織貫入針/部材40を有する特定の実施形態では、針が腸壁に固着されるはずである場合、該針が生分解して該壁からカプセル20を放出する。
センサ67を備えているデバイス10の実施形態については、始動メカニズム60および/または該始動メカニズムに連結されたプロセッサ29/制御装置29cにシグナルを送信するセンサによってメカニズム60の始動を遂行することができる。外部始動能力を備えているデバイス10の実施形態については、ユーザーは、カプセルを嚥下してから選択期間後に、始動メカニズム60を外部から起動させることができる。その期間を、食物がユーザーのGI管を通って該管内の特定の位置、例えば小腸に移動するための典型的な通過時間または通過時間の範囲に相関させることができる。
上記方法の1つもしくは複数の実施形態を、様々な疾患および状態を処置するための治療有効量の様々な薬物および他の治療剤101を含有する製剤100の送達に用いることができる。これらには、別の方法では胃内での化学的分解に起因して注射を必要とする多数の大分子ペプチドおよびタンパク質が含まれる。患者の体重、年齢または他のパラメータについて個々の薬物の投薬量を調整することができる。また、本発明の1つもしくは複数の実施形態によって送達したとき、所望の効果または治療効果を達成するための薬物101(例えば、血糖調節のためのインスリン)の用量は、従来の経口送達によって薬物が送達された場合(例えば、胃で消化され小腸壁を通して吸収される嚥下可能なピル)に必要とされる量未満であり得る。これは、胃内の酸および他の消化液によって薬物が分解されないこと、および薬物のほんの一部分のみとは対照的に、すべてが小腸(または腸管の他の管腔、例えば大腸、胃など)の壁内に送達されることに起因する。薬物101に応じて、製剤100で送達される用量102は、所望の治療効果(例えば、血糖調節、発作調節など)を達成するために従来の経口送達(例えば、ピル)によって送達される用量の100から5%の範囲であり得るが、よりいっそう少ない量も企図される。特定の薬物、処置すべき状態ならびに患者の体重、年齢および状態に基づいて、特定の用量低減を調整することができる。(腸管内での分解レベルが分かっている)一部の薬物については、標準的用量低減を用いることができる(例えば、10から20%)。より分解されやすく、かつ吸収不良である薬物については、より大量の用量低減を用いることができる。かくして、摂取用量が低下するので、デバイス10によって送達される特定の薬物(単数または複数)の潜在的毒性および他の副作用(例えば、胃痙攣、過敏性腸、出血など)を低減させることができる。そしてまた、これは、患者の重症度と副作用発生率の両方が低減されるので、患者コンプライアンスを向上させる。薬物101の用量低減を利用する実施形態のさらなる恩恵としては、患者がその薬物に対する耐性を発現する(より高い用量を必要とする)尤度低減および、抗生物質の場合には、患者が耐性菌株を発生させる尤度の低減が挙げられる。また、小腸のセクション(複数)が除去されたかまたはその動作(例えば、消化)長が有効に短縮された、胃バイパス術および他の手技を受けている患者については、他の用量低減レベルを達成することができる。
単一薬物の送達に加えて、嚥下可能な薬物送達デバイス10およびそれらの使用方法の実施形態を用いて、多数の状態の処置または特定の状態の処置のための複数の薬物(例えば、HIV AIDS処置のためのプロテアーゼ阻害剤)を送達することができる。使用すると、かかる実施形態により、患者は、特定の状態(単数または複数)のために多数の医薬品を摂取しなければならない必要性をなしで済ませることができる。また、上記実施形態は、2種のもしくは2種より多い薬物のレジメンが小腸内に、そしてしたがってほぼ同時に血流内に送達され、吸収されることを助長するための手段を提供する。化学組成、分子量などが異なるので、薬物は、腸壁を通して異なる速度で吸収され得、その結果、異なる薬物動態分布曲線が生じ得る。本発明の実施形態は、実質的に同時に所望の薬物混合物を注射することによりこの論点に対処する。そしてまた、このことが薬物動態を向上させ、したがって、選択された薬物混合物の効力を向上させる。加えて、多数の薬物を摂取する必要性をなくすことは、認知または身体能力障害を有する者を含めて、1つもしくは複数の長期慢性状態を有する患者にとって特に有益である。
様々な用途において、上記方法の実施形態を用いて、薬物および治療剤101を含む製剤100を送達して、多数の医学的状態および疾患の処置を提供することができる。本発明の実施形態で処置することができる医学的状態および疾患としては、限定ではないが、癌、ホルモン状態(例えば、甲状腺機能低下/亢進、成長ホルモン状態)、骨粗鬆症、高血圧、高コレステロールおよびトリグリセリド、糖尿病および他のグルコース調節障害、感染(局所または敗血症)、癲癇および他の発作障害、骨粗鬆症、冠不整脈(動脈性および静脈性両方)、冠動脈虚血、貧血または他の類似の状態を挙げることができる。さらに他の状態および疾患も企図される。
多くの実施形態において、薬物または他の治療剤の注射(または他の非経口送達形態、例えば坐剤)の必要は無いものの、その代り、小腸壁またはGI管の他の部分の壁内に送達される治療剤のみに依存して、特定の疾患または状態の処置を行うことができる。類似して、患者は、従来の経口形態の薬物または他の治療剤を摂取する必要がないが、重ねて、嚥下可能なカプセルの実施形態を用いる小腸壁内への送達にしか依存しない。他の実施形態では、小腸壁内に送達される治療剤(単数または複数)を注射用量の該剤と共に送達することができる。例えば、患者は、嚥下可能なカプセルの実施形態を用いて日用量の治療剤を摂取することができるが、ただ数日ごとにまたは患者の状態(例えば、高血糖)が必要とするときに注射用量を摂取する必要があるだけである。経口形態で旧来送達されている治療剤についても同じことが言える(例えば、患者は、前記嚥下可能なカプセルを摂取することができ、そして必要に応じて従来の経口形態の剤を摂取することができる)。かかる実施形態で送達される投薬量(例えば、嚥下され注射される用量)を必要に応じて調整することができる(例えば、標準用量応答曲線および他の薬物動態法を用いて適切な投薬量を決定することができる)。また、従来の経口手段によって送達することができる治療剤を使用する実施形態については、嚥下可能なカプセルの実施形態を使用して送達される用量は、胃内でまたは腸管の他の部分の中でその剤の分解が殆どまたは全くないので、その剤の経口送達のために通常施される投薬量より下に調整することができる(この場合もまた、標準用量応答曲線および他の薬物動態法を適用することができる)。
ここで、様々な疾患および状態の処置のために1種もしくは複数種の薬物または他の治療剤101を含有する製剤100の実施形態の様々な群を投薬量に関して説明することにする。特定の治療剤およびそれぞれの投薬量を含めてこれらの実施形態が例示的なものであること、および製剤100が、デバイス10の様々な実施形態を用いて腸管における管腔壁(例えば、小腸壁)内への送達用に構成される、本明細書に記載する多数の他の治療剤(ならびに当該技術分野において公知のもの)を含み得ることは、理解されるはずである。前記投薬量は、本明細書に記載するものより多くても、少なくてもよく、そして、本明細書に記載するかまたは当該技術分野において公知の1つもしくは複数の方法を用いて前記投薬量を調整することができる。実施形態の1つの群において、治療剤製剤100は、糖尿病および他のグルコース調節障害の処置のための治療有効用量のインスリンを含むことができる。前記インスリンは、ヒト由来であってもよく、当該技術分野において公知であるように合成により誘導されてもよい。1つの実施形態において、製剤100は、2〜4、3〜9、4〜9、5〜8または6〜7の特定の範囲を伴う、約1〜10単位(1単位は約45.5μgの純粋な結晶性インスリンの生物学的等価量である)の範囲の治療有効量のインスリンを含有し得る。前記製剤中のインスリンの量を次の因子(本明細書では、「グルコース管理用量調整因子」)のうちの1つもしくは複数に基づいて用量調整することができる:i)患者の状態(例えば、1型対II型糖尿病);ii)患者の以前の総合的血糖管理レベル;iii)患者の体重;iv)患者の年齢;v)投薬頻度(例えば、1日1回対多数回);vi)時間帯(例えば、朝対夕方);vii)特定の食事(朝食対夕食);vii)患者の食事の内容/グリセミック指数(例えば、高脂肪/脂質および糖分(例えば、血糖の急上昇を生じさせる食物)対低脂肪および糖分);ならびにviii)患者の全食事内容(例えば、1日に消費される糖および他の炭水化物、脂質およびタンパク質の量)。
実施形態のもう1つの群において、治療剤製剤100は、糖尿病および他のグルコース調節障害の処置のための治療有効用量の1つもしくは複数のインクレチンを含むことができる。かかるインクレチンとしては、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)およびそれらの類似体、ならびに胃抑制ペプチド(GIP)を挙げることができる。好適なGLP−1類似体としては、エクセナチド、リラグルチド、アルビグルチドおよびタスポグルチドならびにそれらの類似体、誘導体および他の機能的等価物が挙げられる。1つの実施形態において、製剤100は、約1〜10μgの範囲(2〜4μg、4〜6μg、4〜8μgおよび8〜10μgの特定の範囲をそれぞれ伴う)の治療有効量のエクセナチドを含有し得る。もう1つの実施形態において、製剤100は、約1〜2mg(ミリグラム)の範囲(1.0から1.4mg、1.2から1.6mgおよび1.2から1.8mgの特定の範囲をそれぞれ伴う)の治療有効量のリラグルチドを含有し得る。前記グルコース管理用量調整因子のうちの1つもしくは複数を利用して、エクセナチド、リラグルチドまたは他のGLP−1類似体もしくはインクレチンの用量範囲を調整することができる。
実施形態のさらにもう1つの群において、治療剤製剤100は、糖尿病および他のグルコース調節障害の処置のための治療剤の組み合わせを含むことができる。かかる組み合わせの実施形態は、治療有効用量のインクレチンおよびビグアニド化合物を含むことができる。前記インクレチンは、本明細書に記載する1つもしくは複数のGLP−1類似体、例えばエクセナチドを含むことができ、前記ビグアニドは、メトホルミン(例えば、Merck Sante S.A.S.により製造されたGLUCOPHAGE(登録商標)の商標で入手できる)ならびにその類似体、誘導体および機能性等価物を含むことができる。1つの実施形態において、製剤100は、約1〜10μgの範囲の治療有効量のエクセナチド、および約1から3グラムの範囲の治療有効量のメトホルミンの組み合わせを含むことができる。より少ないおよびより多い範囲も企図され、前記グルコース管理用量調整因子のうちの1つもしくは複数を用いてエクセナチド(または他のインクレチン)およびメトホルミンまたは他のビグアニドのそれぞれの用量を調整する。加えて、数時間(例えば12)から1日そして何日にも及ぶ長期間(なお、さらに長い期間も企図される)にわたっての患者のグルコース管理レベル向上(例えば、正常生理レベル内での血糖の維持ならびに/または高血糖および/もしくは低血糖の事例の発生率および重症度の低減)にエクセナチドまたは他のインクレチンおよびメトホルミンまたは他のビグアニドの投薬量をマッチさせることができる。投薬量のマッチングは、前記グルコース管理調節因子の使用はもちろん、グリコシル化ヘモグロビン(ヘモグロビンA1c、HbA1c、A1cまたはHb1cとして公知)ならびに長期平均血糖値に相関する他の分析物および測定値を用いて長期間にわたって患者の血糖をモニターすることによっても達成することができる。
公知の薬物送達システムの薬物送達組成物および構成要素を、本明細書に記載する本発明の一部の実施形態において利用することおよび/または本明細書に記載する本発明の一部の実施形態での使用のために改良することができる。例えば、薬物パッチで皮膚表面を通して薬物を送達するために使用されるマイクロニードルおよび他のミクロ構造物は、改良され得、本明細書に記載するカプセル内に備えられ得、そして、代わりに胃腸管の管腔壁、例えば小腸壁に、薬物製剤を送達するために使用され得る。好適なポリマーマイクロニードル構造物、例えばMicroCor(商標)マイクロ送達システム技術は、カリフォルニアのCoriumから市販されている。処方物または成分をはじめとするMicroCor(商標)パッチ送達システムの他の構成要素も、本明細書に記載するカプセルに組み込むことができる。あるいは、望ましい薬物放出特性を有する所望の形状(例えば、本明細書に記載する放出可能な組織貫入形状)を生じさせるための、ポリマーまたは他の薬物送達マトリックスと選択薬物および他の薬物製剤成分との組み合わせを処方するために、様々なプロバイダーを商業的に利用することができる。かかるプロバイダーとしては、例えば、Corium、ミネソタのSurModics、シンガポールのBioSensors International、またはこれらに類するものを挙げることができる。
本明細書に記載する治療組成物の様々な実施形態の1つの利点および特徴は、生物学的(治療ペプチドまたはタンパク質)薬物負荷量を胃腸(GI)管内でのペプチダーゼおよびプロテアーゼの作用による分解および加水分解から保護することである。これらの酵素は、生体系のいたるところに偏在する。GI管にはプロテアーゼがとりわけ豊富であり、プロテアーゼの機能は、食事の中の複雑なタンパク質およびペプチドをより小さいセグメントに分解し、アミノ酸を放出することであり、その後、前述のアミノ酸は腸から吸収される。本明細書に記載する組成物は、これらのGIプロテアーゼの作用から治療ペプチドまたはタンパク質を保護するように、ならびに前述のペプチドまたはタンパク質負荷量を直接腸壁内に送達するように設計される。GIプロテアーゼの作用からタンパク質またはペプチド負荷量を保護するのに役立つ、本明細書に記載する組成物の様々な実施形態には2つの特徴がある。第一に、特定の実施形態において、展開エンジンおよび機械部分を収容しているカプセルシェルは、胃の低pHでのカプセルの溶解を防止するカプセルの外面のpH感受性コーティングのおかげで、それが十二指腸セグメントおよび十二指腸下腸セグメントに到達するまで溶解しない。第二に、特定の実施形態において、中空マルトース(または他の適切なポリマー)マイクロ槍が実際の治療ペプチドまたはタンパク質を収容している;これらのマルトース(または他のポリマー)マイクロ槍は、外部カプセルシェルが溶解するやいなや腸筋肉に貫入するように設計されており;そして、前述のマイクロ槍自体が腸筋肉壁にゆっくりと溶解して薬物負荷量を放出する。それ故、前記ペプチドまたはタンパク質負荷量は、GIプロテアーゼの作用に曝露されず、したがって、GI管内でタンパク質加水分解により分解されない。そしてまたこの特徴は、治療ペプチドまたはタンパク質の高いバイオアベイラビリティ(%)に寄与する。
実施形態のさらにもう1つの群において、治療剤製剤100は、1つもしくは複数の成長障害ならびに創傷治癒の処置のための治療有効用量の成長ホルモンを含むことができる。1つの実施形態において、製剤100は、約0.1〜4mgの範囲(0.1〜1mg、1〜4mg、1〜2mgおよび2〜4mgの特定の範囲を伴い、さらにいっそう多い範囲も企図される)の治療有効量の成長ホルモンを含有し得る。次の因子のうちの1つもしくは複数に基づいてその特定の用量を調整することができる:i)処置すべき特定の状態およびその重症度(例えば、妨げられた成長(stunted growth)対創傷治癒);ii)患者の体重;iii)患者の年齢;およびiv)投薬頻度(例えば、1日1回対1日2回)。
上で論じたように、本明細書に記載する実施形態は、様々な障害の処置のための治療剤を含む治療組成物を含む。かかる組成物は、望ましい薬物動態特性での治療剤の送達をもたらす。これに関連して、注目すべき薬物動態測定基準としては、Cmax、投与後の薬物のピーク血漿濃度;tmax、Cmaxに達するまでの時間;およびt1/2、薬物の血漿濃度がCmaxに達した後にそのCmax値の半分に達するために要する時間が挙げられる。これらの測定基準は、当該技術分野において公知の標準的な薬物動態測定技術を用いて測定することができる。1つのアプローチでは、嚥下可能なデバイスの使用または非血管注射のいずれかによる薬物または他の治療剤の投与を開始して投与後まで設定時間間隔(例えば、1分、5分、1/2時間、1時間など)で血漿試料を採取することができる。その後、その特定の薬物に適応させることができる1つもしくは複数の適切な分析法、例えば、GC−質量分析、LC−質量分析、HPLCまたは様々なELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)を用いて、血漿中の薬物の濃度を測定することができる。その後、血漿試料からの測定値を用いて、濃度対時間曲線(本明細書では、濃度プロファイルとも呼ぶ)を生成することができる。この濃度曲線のピークがCmaxに対応し、これが発生する時間がtmaxに対応する。濃度がCmaxに達した後にその最大値(すなわち、Cmax)の半分に達する、前記曲線における時間がt1/2に対応し、この値は、薬物の消失半減期としても公知である。Cmaxの判定の開始時間は、非血管注射の場合は注射を行った時間、および嚥下可能なデバイスの実施形態が、1つもしくは複数の組織貫入部材(薬物を収容している)を小腸にまたはGI管内の他の位置(例えば、大腸)に進入させる時点に基づき得る。後者の場合、この時間は、外部制御シグナル(例えば、RFシグナル)に応答して組織貫入部材を腸壁内に展開させる嚥下可能なデバイスの遠隔制御実施形態をはじめとする1つもしくは複数の手段、または組織貫入部材が展開されたときに体外で検出可能なRFまたは他のシグナルを送信する嚥下可能なデバイスの実施形態のための1つもしくは複数の手段を用いて決定することができる。例えば超音波または蛍光透視法をはじめとする1つもしくは複数の医療画像診断法などの、小腸内への組織貫入部材展開を検出するための他の手段が、企図される。これらの研究のいずれか一つにおいて、ヒト薬物動態応答をモデル化するために、適切な動物モデル、例えば、イヌ、ブタ、ラットなどを使用することができる。
このように、様々な実施形態は、治療剤を含む治療組成物(本明細書では製剤とも呼ぶ)を提供する。この組成物は、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、該組成物は、その腸壁から血流に治療剤を放出して、血管外注射用量の該治療剤より早くCmaxに達する。換言すると、挿入形態の治療剤のほうが、血管外注射される(injected extravaculary)ある用量の該治療剤より短期間(例えば、より小さいtmax)でCmaxに達する。これらの結果を達成するために、腸壁内に送達される組成物中の治療剤の用量と血管外注射によって送達される用量は、同等であり得るが、同等である必要はないことに留意されたい。様々な実施形態において、前記組成物は、血管外注射用量の治療剤のtmaxの約80%、または50%、または30%、または20%、または10%である(例えば、腸壁、例えば小腸の腸壁から血流への該治療剤の放出によって)該治療剤のtmaxを達成するように構成される。かかる血管外注射用量の治療剤は、例えば、皮下注射または筋肉内注射であり得る。特定の実施形態において、腸壁内への挿入による治療剤の送達によって達成されるCmaxは、該治療剤が腸壁に挿入されることなく経口送達されるときに達成されるCmax、例えば、ピル、他の従来の経口形態の治療剤または関連化合物によって達成されるCmaxより実質的に大きく、例えば、5、10、20、30、40、50、60、70、80またはさらには100倍大きい。一部の実施形態において、前記治療インスリン組成物は、インスリンの長期放出をもたらすように構成される。また、選択可能なt1/2でのインスリンの長期放出をもたらすように前記組成物を構成することができる。例えば、前記選択可能なt1/2は、6、または9、または12、または15、または18、または24時間であり得る。
一部の実施形態において、前記治療剤組成物は、糖尿病またはグルコース調節障害の処置のための治療有効用量のインクレチンを含むこともある。使用することができるインクレチンとしては、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、GLP−1類似体または胃抑制ペプチド(GIP)が挙げられる。例示的GLP−1類似体としては、エクセナチド、リラグルチド、アルビグルチドおよびタスポグルチドが挙げられる。任意の適切な用量のインクレチンを使用することができる;例えば、エクセナチドを約1から10マイクログラムの範囲の用量で使用することができるか、またはリラグルチドを約1から2mgの範囲で使用することができる。
様々な実施形態は、経口摂取後の腸壁内への挿入に適合した治療剤組成物であって、挿入されると、その腸壁から血流に該治療剤を放出して、腸壁に挿入されない経口摂取用量の該治療剤のt1/2より大きいt1/2を達成する組成物も提供する。例えば、前記腸壁に挿入される用量のt1/2は、前記腸壁に挿入されない用量より100または50または10または5倍大きいことがある。
前記治療剤は、固体形態、例えば、腸壁内で分解するように構成された固体形態組成物であることがあり、該固体形態組成物は、例えば、尖った先端などの組織貫入特徴部を有することがある。前記治療剤組成物は、少なくとも1つの生分解性材料を含むことがあり、そして/または生分解性ポリマー、例えばPGLA、もしくは糖、例えばマルトースをはじめとする、少なくとも1つの医薬用賦形剤を含むことがある。
前記治療組成物を、嚥下可能なカプセルでの経口送達に適合させることができる。特定の実施形態では、第一の構成および第二の構成を有するメカニズムであって、治療インスリン組成物を該第一の構成ではカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では該治療インスリン組成物を該カプセルから進出させ、腸壁に進入させる、メカニズムに作動可能に連結されるように、かかる嚥下可能なカプセルを適合させることができる。かかる作動可能に連結されるメカニズムは、拡張可能な部材、拡張可能なバルーン、バルブ、組織貫入部材、拡張可能なバルーンに連結されたバルブ、または拡張可能なバルーンに連結された組織貫入部材のうちの少なくとも1つを含み得る。
一部の実施形態では、前記治療組成物を組織貫入部材の管腔内に送達されるように構成することができ、そして/または前記治療組成物を腸壁に進入可能な組織貫入部材として造形することができる。前記組織貫入部材は、腸壁内に完全に収容されるようなサイズであることがあり、そして/または腸壁に貫入するための組織貫入特徴部を備えていることがあり、そして/または腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えていることがある。前記留置特徴部は、例えば返しを含み得る。一部の実施形態において、前記組織貫入部材は、該組織貫入部材の表面に力が加わることで腸壁に進入するように構成され、ならびに場合により、前記組織貫入部材は、腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有し、そして/または前記貫入部材の表面は、拡張により力を加える拡張可能なバルーンに作動可能に連結されるように構成され、そして/または前記組織貫入部材は、力の方向が変化すると、力を加えている構造物から外れるように構成される。
インスリン
本明細書に記載する実施形態は、様々な障害の処置のための治療剤を含む治療組成物を含む。かかる組成物は、望ましい薬物動態特性でのインスリンの送達をもたらす。これに関連して、注目すべき薬物動態測定基準としては、Cmax、投与後の薬物のピーク血漿濃度;tmax、Cmaxに達するまでの時間;およびt1/2、薬物の血漿濃度がCmaxに達した後にそのCmax値の半分に達するために要する時間が挙げられる。これらの測定基準は、当該技術分野において公知の標準的な薬物動態測定技術を用いて測定することができる。1つのアプローチでは、嚥下可能なデバイスの使用または非血管注射のいずれかによる薬物または他の治療剤の投与を開始して投与後まで設定時間間隔(例えば、1分、5分、1/2時間、1時間など)で血漿試料を採取することができる。その後、その特定の薬物に適応させることができる1つもしくは複数の適切な分析法、例えば、GC−質量分析、LC−質量分析、HPLCまたは様々なELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)を用いて、血漿中の薬物の濃度を測定することができる。その後、血漿試料からの測定値を用いて、濃度対時間曲線(本明細書では、濃度プロファイルとも呼ぶ)を生成することができる。この濃度曲線のピークがCmaxに対応し、これが発生する時間がtmaxに対応する。濃度がCmaxに達した後にその最大値(すなわち、Cmax)の半分に達する、前記曲線における時間がt1/2に対応し、この値は、薬物の消失半減期としても公知である。Cmaxの判定の開始時間は、非血管注射の場合は注射を行った時間に基づき得、嚥下可能なデバイスの実施形態が1つもしくは複数の組織貫入部材(薬物を収容している)を小腸にまたはGI管内の他の位置(例えば、大腸)に進入させる時点に基づき得る。後者の場合、この時間は、外部制御シグナル(例えば、RFシグナル)に応答して組織貫入部材を腸壁内に展開させる嚥下可能なデバイスの遠隔制御実施形態をはじめとする1つもしくは複数の手段、または組織貫入部材が展開されたときに体外で検出可能なRFまたは他のシグナルを送信する嚥下可能なデバイスの実施形態のための1つもしくは複数の手段を用いて決定することができる。例えば超音波または蛍光透視法をはじめとする1つもしくは複数の医療画像診断法などの、小腸内への組織貫入部材展開を検出するための他の手段が、企図される。これらの研究のいずれか1つにおいて、ヒト薬物動態応答をモデル化するために適切な動物モデル、例えば、イヌ、ブタ、ラットなどを使用することができる。
本明細書に記載する実施形態は、糖尿病または他のグルコース調節障害の処置のための、インスリンを含む治療組成物を含む。かかる組成物は、望ましい薬物動態特性でのインスリンの送達をもたらす。これに関連して、注目すべき薬物動態測定基準としては、Cmax、投与後の薬物のピーク血漿濃度;tmax、Cmaxに達するまでの時間;およびt1/2、薬物の血漿濃度がその元の値の半分に達するために要する時間が挙げられる。
したがって、1つの実施形態は、インスリンを含む治療組成物であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、その腸壁から血流にインスリンを放出して、血管外注射用量のインスリンより早くCmaxを達成する組成物を提供する。様々な実施形態において、前記治療インスリン組成物は、血管外注射用量のインスリンのtmaxの約80%、または50%、または30%、または20%、または10%であるtmaxを有する。かかる血管外注射用量のインスリンは、例えば、皮下注射または筋肉内注射であり得る。特定の実施形態において、腸壁内への挿入による治療インスリン組成物の送達によって達成されるCmaxは、該組成物が、腸壁に挿入されることなく経口送達されるときに達成されるCmaxより実質的に大きく、例えば、100、または50、または10、または5倍大きい。一部の実施形態において、前記治療インスリン組成物は、インスリンの長期放出、例えば、選択可能なt1/2でのインスリンの長期放出をもたらすように構成される。例えば、前記選択可能なt1/2は、6、または9、または12、または15、または18、または24時間であり得る。
本明細書に記載する様々な実施形態は、インスリンを含む治療剤組成物(本明細書では製剤または組成物とも呼ぶ)を提供する。この組成物は、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、該組成物は、その腸壁から血流にインスリンを放出して、血管外注射用量の該治療剤より早くCmaxに達する。換言すると、挿入形態の治療剤のほうが、血管外注射される(injected extravaculary)用量の該治療剤より短期間(例えば、より小さいtmax)でCmaxを達成する。これらの結果を達成するために、腸壁内に送達される組成物中の治療剤の用量と血管外注射によって送達される用量は、同等であり得るが、同等である必要はないことに留意されたし。様々な実施形態において、前記組成物は、血管外注射用量のインスリンのtmaxの約80%、または50%、または30%、または20%、または10%である(例えば、腸壁、例えば小腸の腸壁から血流へのインスリンの放出によって)インスリンのtmaxを達成するように構成される。かかる血管外注射用量のインスリンは、例えば、皮下注射または筋肉内注射であり得る。特定の実施形態において、腸壁内への挿入による治療剤の送達によって達成されるCmaxは、該治療剤が腸壁に挿入されることなく経口送達されるときに達成されるCmax、例えば、ピル、他の従来の経口形態の治療剤または関連化合物によって達成されるCmaxより実質的に大きく、例えば、5、10、20、30、40、50、60、70、80またはさらには100倍大きい。一部の実施形態において、前記治療インスリン組成物は、インスリンの長期放出をもたらすように構成される。また、選択可能なt1/2でのインスリンの長期放出をもたらすように前記組成物を構成することができる。例えば、前記選択可能なt1/2は、6、または9、または12、または15、または18、または24時間であり得る。
一部の実施形態において、前記治療剤組成物は、糖尿病またはグルコース調節障害の処置のための治療有効用量のインクレチンを含むこともある。使用することができるインクレチンとしては、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、GLP−1類似体または胃抑制ペプチド(GIP)が挙げられる。例示的GLP−1類似体としては、エクセナチド、リラグルチド、アルビグルチドおよびタスポグルチドが挙げられる。任意の適切な用量のインクレチンを使用することができる;例えば、エクセナチドを約1から10マイクログラムの範囲の用量で使用することができるか、またはリラグルチドを約1から2mgの範囲で使用することができる。
様々な実施形態は、経口摂取後の腸壁内への挿入に適合した治療インスリン組成物であって、挿入されると、その腸壁から血流に該治療剤を放出して、腸壁に挿入されない経口摂取用量の該治療剤のt1/2より大きいt1/2を達成する組成物も提供する。例えば、前記腸壁に挿入される用量のt1/2は、腸壁に挿入されない用量より100または50または10または5倍大きいことがある。
前記治療インスリンは、固体形態、例えば、腸壁内で分解するように構成された固体形態組成物であることがあり、該固体形態組成物は、例えば、尖った先端などの組織貫入特徴部を有することがある。前記治療インスリン組成物は、少なくとも1つの生分解性材料を含むことがあり、そして/または生分解性ポリマー、例えばPGLA、もしくは糖、例えばマルトースをはじめとする、少なくとも1つの医薬用賦形剤を含むことがある。
前記治療インスリン組成物を、嚥下可能なカプセルでの経口送達に適合させることができる。特定の実施形態では、第一の構成および第二の構成を有するメカニズムであって、治療インスリン組成物を該第一の構成ではカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では該治療インスリン組成物を該カプセルから進出させ腸壁に進入させる、メカニズムに作動可能に連結されるように、かかる嚥下可能なカプセルを適合させることができる。かかる作動可能に連結されるメカニズムは、拡張可能な部材、拡張可能なバルーン、バルブ、組織貫入部材、拡張可能なバルーンに連結されたバルブ、または拡張可能なバルーンに連結された組織貫入部材のうちの少なくとも1つを含み得る。
一部の実施形態では、前記治療インスリン組成物を組織貫入部材の管腔内に送達されるように構成することができ、そして/または前記インスリン組成物を腸壁に進入可能な組織貫入部材として造形することができる。前記組織貫入部材は、腸壁内に完全に収容されるようなサイズであることがあり、そして/または腸壁に貫入するための組織貫入特徴部を備えていることがあり、そして/または腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えていることがある。前記留置特徴部は、例えば返しを含み得る。一部の実施形態において、前記組織貫入部材は、該組織貫入部材の表面に力が加わることで腸壁に進入するように構成され、ならびに場合により、前記組織貫入部材は、腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有し、そして/または前記貫入部材の表面は、拡張により力を加える拡張可能なバルーンに作動可能に連結されるように構成され、そして/または前記組織貫入部材は、力の方向が変化すると、力を加えている構造物から外れるように構成される。
本発明によるさらなる態様および実施形態を以下の番号の節に示す。
1.インスリンを含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、インスリンを腸壁から血流に放出して、血管外注射用量のインスリンがCmaxを達成する期間より短期間でCmaxを達成する、治療製剤。
2.前記治療製剤から放出されるインスリンのtmaxが、血管外注射用量のインスリンのtmaxの約80%である、節1に記載の製剤。
3.前記治療製剤から放出されるインスリンのtmaxが、血管外注射用量のインスリンのtmaxの約50%である、節1に記載の製剤。
4.前記治療製剤から放出されるインスリンのtmaxが、血管外注射用量のインスリンのtmaxの約30%である、節1に記載の製剤。
5.前記製剤から放出されるインスリンのtmaxが、血管外注射用量のインスリンのtmaxの約10%である、節1に記載の製剤。
6.小腸壁への挿入に適合している、前記いずれかの節に記載の製剤。
7.前記血管外注射が、皮下注射または筋肉内注射である、前記いずれかの節に記載の製剤。
8.前記製剤の少なくとも一部分が固体形態である、前記いずれかの節に記載の製剤。
9.嚥下可能なカプセルで経口送達されるのに適合している、前記いずれかの節に記載の製剤。
10.第一の構成および第二の構成を有する送達手段であって、該第一の構成では前記製剤をカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では前記製剤を該カプセルから進出させて腸壁に進入させる、送達手段に作動可能に連結されるのに適合している、節9に記載の製剤。
11.前記送達手段が、拡張および非拡張状態を有する少なくとも1つの拡張可能なバルーンを含み、前記第一の構成が非拡張状態であり、前記第二の構成が拡張状態である、節10に記載の製剤。
12.インスリンを血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
13.前記生分解性材料が、PGLA、糖またはマルトースを含む、節12に記載の製剤。
14.少なくとも1つの医薬用賦形剤を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
15.前記少なくとも1つの医薬用賦形剤が、結合剤、保存剤または崩壊剤のうちの少なくとも1つを含む、節14に記載の製剤。
16.前記結合剤がPEGを含む、節15に記載の製剤。
17.腸壁に進入させたときに組織に貫入するのに適合した領域または特徴部を有する組織貫入部材として形成される、前記いずれかの節に記載の製剤。
18.前記組織貫入部材が、インスリンを血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、節17に記載の製剤。
19.前記生分解性材料が、マルトースまたはPGLAを含む、節18に記載の製剤。
20.前記組織貫入部材中のインスリンの重量パーセントが、約2から15%の間を含む、節17に記載の製剤。
21.前記組織貫入部材が、挿入後に腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えている、節17に記載の製剤。
22.前記留置特徴部が、前記組織貫入部材の返しまたは逆テーパ形状の少なくとも一方を含む、節21に記載の製剤。
23.前記インスリンが、前記組織貫入部材における造形されたセクション内に収容されている、節17に記載の製剤。
24.前記造形されたセクションが、円柱またはペレット形状を有する、節23に記載の製剤。
25.前記組織貫入部材が、該組織貫入部材に力が加わることで腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有する、節17に記載の製剤。
26.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより実質的に大きい、前記いずれかの節に記載の製剤。
27.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより少なくとも約10倍大きい、節26に記載の製剤。
28.インスリンの長期放出をもたらすように構成される、前記いずれかの節に記載の製剤。
29.選択可能なt1/2を生じさせるようなインスリンの長期放出をもたらすように構成される、節28に記載の製剤。
30.前記t1/2が、約12時間である、節29に記載の製剤。
31.前記製剤中のインスリンの用量が、インスリン約1から50単位の範囲である、前記いずれかの節に記載の製剤。
32.前記インスリンの用量が、インスリン約4から9単位の範囲である、節31に記載の製剤。
33.糖尿病またはグルコース調節障害の処置のための治療有効用量のインクレチンをさらに含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
34.前記インクレチンが、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、GLP−1類似体、エクセナチド、リラグルチド、アルビグルチド、タスポグルチドまたは胃抑制ポリペプチド(GIP)を含む、節33に記載の製剤。
35.前記インクレチンが、エクセナチドを含み、その用量が、約1から10μgの範囲である、節33に記載の製剤。
36.前記インクレチンが、リラグルチドを含み、その用量が、約0.1から1mgの範囲である、節33に記載の製剤。
37.インスリンを含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、インスリンを腸壁から血流に放出して、腸壁に挿入されない経口摂取インスリンのt1/2より大きいt1/2を達成する、治療製剤。
38.前記腸壁に挿入されるインスリンのt1/2が、前記腸壁に挿入されない経口摂取インスリンのt1/2より少なくとも約10倍大きい、節37に記載の製剤。
糖尿病または他の血糖調節障害の処置において使用するための、前記節のいずれか一節または複数の節に記載の製剤。
エクセナチド
本明細書に記載する実施形態は、糖尿病または他のグルコース調節障害の処置のためのエクセナチドを含む治療組成物を含む。かかる組成物は、望ましい薬物動態特性でのエクセナチドの送達をもたらす。これに関連して、注目すべき薬物動態測定基準としては、Cmax、投与後の薬物のピーク血漿濃度;tmax、Cmaxに達するまでの時間;およびt1/2、薬物の血漿濃度がCmaxに達した後にそのCmax値の半分に達するために要する時間が挙げられる。これらの測定基準は、当該技術分野において公知の標準的な薬物動態測定技術を用いて測定することができる。1つのアプローチでは、嚥下可能なデバイスの使用または非血管注射のいずれかによる薬物または他の治療剤の投与を開始して投与後まで設定時間間隔(例えば、1分、5分、1/2時間、1時間など)で血漿試料を採取することができる。その後、その特定の薬物に適応させることができる1つもしくは複数の適切な分析法、例えば、GC−質量分析、LC−質量分析、HPLCまたは様々なELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)を用いて、血漿中の薬物の濃度を測定することができる。その後、血漿試料からの測定値を用いて、濃度対時間曲線(本明細書では、濃度プロファイルとも呼ぶ)を生成することができる。この濃度曲線のピークがCmaxに対応し、これが発生する時間がtmaxに対応する。濃度がCmaxに達した後にその最大値(すなわち、Cmax)の半分に達する前記曲線における時間がt1/2に対応し、この値は、薬物の消失半減期としても公知である。Cmaxの判定の開始時間は、非血管注射の場合は注射を行った時間、および嚥下可能なデバイスの実施形態が1つもしくは複数の組織貫入部材(薬物を収容している)を小腸にまたはGI管内の他の位置(例えば、大腸)に進入させる時点に基づき得る。後者の場合、この時間は、外部制御シグナル(例えば、RFシグナル)に応答して組織貫入部材を腸壁内に展開させる嚥下可能なデバイスの遠隔制御実施形態をはじめとする1つもしくは複数の手段、または組織貫入部材が展開されたときに体外で検出可能なRFまたは他のシグナルを送信する嚥下可能なデバイスの実施形態のための1つもしくは複数の手段を用いて決定することができる。例えば超音波または蛍光透視法をはじめとする1つもしくは複数の医療画像診断法などの、小腸内への組織貫入部材展開を検出するための他の手段が、企図される。これらの研究のいずれか1つにおいて、ヒト薬物動態応答をモデル化するために適切な動物モデル、例えば、イヌ、ブタ、ラットなどを使用することができる。
このように、様々な実施形態は、エクセナチドを含む治療組成物(本明細書では製剤とも呼ぶ)を提供する。この組成物は、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、該組成物は、その腸壁から血流にエクセナチドを放出して、血管外注射用量のエクセナチドより早くCmaxに達する。換言すると、挿入形態の治療剤のほうが、血管外注射される(injected extravaculary)用量の該治療剤より短期間(例えば、より小さいtmax)でCmaxを達成する。これらの結果を達成するために、腸壁内に送達される組成物中のエクセナチドの用量と血管外注射によって送達される用量は、同等であり得るが、同等である必要はないことに留意されたし。様々な実施形態において、前記組成物は、血管外注射用量の該治療剤のtmaxの約80%、または50%、または30%、または20%、または10%である(例えば、腸壁、例えば小腸の腸壁から血流への該治療剤の放出によって)エクセナチドのtmaxを達成するように構成される。かかる血管外注射用量のエクセナチドは、例えば、皮下注射または筋肉内注射であり得る。特定の実施形態において、腸壁内への挿入による治療剤の送達によって達成されるCmaxは、該治療剤が腸壁に挿入されることなく経口送達されるときに達成されるCmax、例えば、ピル、他の従来の経口形態の治療剤または関連化合物によって達成されるCmaxより実質的に大きく、例えば、5、10、20、30、40、50、60、70、80またはさらには100倍大きい。一部の実施形態において、前記エクセナチド組成物は、エクセナチドの長期放出をもたらすように構成される。また、選択可能なt1/2でのエクセナチドの長期放出をもたらすように前記組成物を構成することができる。例えば、前記選択可能なt1/2は、6、または9、または12、または15、または18、または24時間であり得る。
一部の実施形態において、前記治療剤組成物は、糖尿病またはグルコース調節障害の処置のための治療有効用量のインクレチンを含むこともある。使用することができるインクレチンとしては、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、GLP−1類似体または胃抑制ペプチド(GIP)が挙げられる。例示的GLP−1類似体としては、エクセナチド、リラグルチド、アルビグルチドおよびタスポグルチドが挙げられる。任意の適切な用量のインクレチンを使用することができる;例えば、エクセナチドを約1から10マイクログラムの範囲の用量で使用することができるか、またはリラグルチドを約1から2mgの範囲で使用することができる。
体重、年齢および送達状況などの因子に応じて、特定の患者のために任意の適切な用量のエクセナチドを用いることができる。例えば、投与するエクセナチドの用量は、約1〜10μgの範囲(2〜4μg、4〜6μg、4〜8μgおよび8〜10μgの特定の範囲をそれぞれ伴う)であり得る。皮下投与すると、エクセナチドは、典型的に、約2時間の血流中でのtmaxを有する。したがって、本明細書に記載するようなエクセナチド組成物で投与すると、そのエクセナチドのtmaxは、皮下注射する場合のエクセナチドのtmaxの、例えば約80%、または50%、または30%、または20%、または10%に短縮される。経口投与すると、10μgのエクセナチドを含む治療組成物は、約200から400pg/mLのCmaxをもたらすと予想される。
もう1つの実施形態は、エクセナチドを含む治療組成物であって、経口摂取後の腸壁内への挿入に適合しており、挿入されると、その腸壁から血流にエクセナチドを放出して、腸壁に挿入されない経口摂取用量のエクセナチドのt1/2より大きいt1/2を達成する組成物を提供する。例えば、前記腸壁に挿入される用量のt1/2は、前記腸壁に挿入されない用量より100または50または10または5倍大きいことがある。
前記エクセナチド組成物は、固体形態、例えば、腸壁内で分解するように構成された固体形態組成物であることがあり、該固体形態組成物は、例えば、尖った先端などの組織貫入特徴部を有することがある。前記エクセナチド組成物は、少なくとも1つの生分解性材料を含むことがあり、そして/または生分解性ポリマー、例えばPGLA、もしくは糖、例えばマルトースをはじめとする、少なくとも1つの医薬用賦形剤を含むことがある。
前記エクセナチド組成物を、嚥下可能なカプセルでの経口送達に適合させることができる。特定の実施形態では、第一の構成および第二の構成を有するメカニズムであって、前記エクセナチド組成物を該第一の構成ではカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では該エクセナチド組成物を該カプセルから進出させ腸壁に進入させる、メカニズムに作動可能に連結されるように、かかる嚥下可能なカプセルを適合させることができる。かかる作動可能に連結されるメカニズムは、拡張可能な部材、拡張可能なバルーン、バルブ、組織貫入部材、拡張可能なバルーンに連結されたバルブ、または拡張可能なバルーンに連結された組織貫入部材のうちの少なくとも1つを含み得る。
一部の実施形態では、前記エクセナチド組成物を組織貫入部材の管腔内に送達されるように構成することができ、そして/または前記エクセナチド組成物を腸壁に進入可能な組織貫入部材として造形することができる。前記組織貫入部材は、腸壁内に完全に収容されるようなサイズであることがあり、そして/または腸壁に貫入するための組織貫入特徴部を備えていることがあり、そして/または腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えていることがある。前記留置特徴部は、例えば返しを含み得る。一部の実施形態において、前記組織貫入部材は、該組織貫入部材の表面に力が加わることで腸壁に進入するように構成され、ならびに場合により、前記組織貫入部材は、腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有し、そして/または前記貫入部材の表面は、拡張により力を加える拡張可能なバルーンに作動するように連結されるように構成され、そして/または前記組織貫入部材は、力の方向が変化すると、力を加えている構造物から外れるように構成される。
本発明によるさらなる態様および実施形態を以下の番号の節に示す。
1.エクセナチドを含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、エクセナチドを腸壁から血流に放出して、血管外注射用量のエクセナチドがCmaxを達成する期間より短期間でCmaxを達成する、治療製剤。
2.前記治療製剤から放出されるエクセナチドのtmaxが、血管外注射用量のエクセナチドのtmaxの約80%である、節1に記載の製剤。
3.前記治療製剤から放出されるエクセナチドのtmaxが、血管外注射用量のエクセナチドのtmaxの約50%である、節1に記載の製剤。
4.前記治療製剤から放出されるエクセナチドのtmaxが、血管外注射用量のエクセナチドのtmaxの約30%である、節1に記載の製剤。
5.前記治療製剤から放出されるエクセナチドのtmaxが、血管外注射用量のエクセナチドのtmaxの約10%である、節1に記載の製剤。
6.小腸壁への挿入に適合している、前記いずれかの節に記載の製剤。
7.前記血管外注射が、皮下注射または筋肉内注射である、前記いずれかの節に記載の製剤。
8.前記製剤の少なくとも一部分が固体形態である、前記いずれかの節に記載の製剤。
9.嚥下可能なカプセルで経口送達されるのに適合している、前記いずれかの節に記載の製剤。
10.第一の構成および第二の構成を有する送達手段であって、該第一の構成では前記製剤をカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では前記製剤を該カプセルから進出させて腸壁に進入させる送達手段に作動可能に連結されるのに適合している、節9に記載の製剤。
11.前記送達手段が、拡張および非拡張状態を有する少なくとも1つの拡張可能なバルーンを含み、前記第一の構成が非拡張状態であり、前記第二の構成が拡張状態である、節10に記載の製剤。
12.エクセナチドを血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
13.前記生分解性材料が、PGLA、糖またはマルトースを含む、節12に記載の製剤。
14.少なくとも1つの医薬用賦形剤を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
15.前記少なくとも1つの医薬用賦形剤が、結合剤、保存剤または崩壊剤のうちの少なくとも1つを含む、節14に記載の製剤。
16.前記結合剤がPEGを含む、節15に記載の製剤。
17.腸壁に進入させたときに組織に貫入するのに適合した領域または特徴部を有する組織貫入部材として形成される、前記いずれかの節に記載の製剤。
18.前記組織貫入部材が、インスリンを血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、節17に記載の製剤。
19.前記生分解性材料が、マルトースまたはPGLAを含む、節18に記載の製剤。
20.前記組織貫入部材中のエクセナチドの重量パーセントが、約0.1から1%の間を含む、節17に記載の製剤。
21.前記組織貫入部材が、挿入後に腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えている、節17に記載の製剤。
22.前記留置特徴部が、前記組織貫入部材の返しまたは逆テーパ形状の少なくとも一方を含む、節21に記載の製剤。
23.前記エクセナチドが、前記組織貫入部材における造形されたセクション内に収容されている、節21に記載の製剤。
24.前記造形されたセクションが、円柱またはペレット形状を有する、節23に記載の製剤。
25.前記組織貫入部材が、該組織貫入部材に力が加わることで腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有する、前記いずれかの節に記載の製剤。
26.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより実質的に大きい、前記いずれかの節に記載の製剤。
27.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより少なくとも約10倍大きい、節26に記載の製剤。
28.エクセナチドの長期放出をもたらすように構成される、前記いずれかの節に記載の製剤。
29.選択可能なt1/2を生じさせるようなエクセナチドの長期放出をもたらすように構成される、節28に記載の製剤。
30.前記t1/2が、約12時間である、節29に記載の製剤。
31.前記製剤中のエクセナチドの用量が、約1から10μgの範囲である、前記いずれかの節に記載の製剤。
32.糖尿病またはグルコース調節障害の処置のための治療有効用量のインクレチンをさらに含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
33.前記インクレチンが、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、GLP−1類似体、リラグルチド、アルビグルチド、タスポグルチドまたは胃抑制ポリペプチド(GIP)を含む、節32に記載の製剤。
34.前記インクレチンが、リラグルチドを含み、その用量が、約0.1から1mgの範囲である、節32に記載の製剤。
35.エクセナチドを含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、エクセナチドを腸壁から血流に放出して、腸壁に挿入されない経口摂取エクセナチドのt1/2より大きいt1/2を達成する、治療製剤。
36.腸壁に挿入される前記エクセナチドのt1/2が、腸壁に挿入されない経口摂取エクセナチドのt1/2より少なくとも約10倍大きい、節35に記載の製剤。
37.糖尿病または他の血糖調節障害の処置において使用するための、前記節のいずれか一節または複数の節に記載の製剤。
リラグルチド
本明細書に記載する実施形態は、糖尿病または他のグルコース調節障害の処置のためのリラグルチドを含む治療組成物を含む。かかる組成物は、望ましい薬物動態特性でのリラグルチドの送達をもたらす。これに関連して、注目すべき薬物動態測定基準としては、Cmax、投与後の薬物のピーク血漿濃度;tmax、Cmaxに達するまでの時間;およびt1/2、薬物の血漿濃度がCmaxに達した後にそのCmax値の半分に達するために要する時間が挙げられる。これらの測定基準は、当該技術分野において公知の標準的な薬物動態測定技術を用いて測定することができる。1つのアプローチでは、嚥下可能なデバイスの使用または非血管注射のいずれかによる薬物または他の治療剤の投与を開始して投与後まで設定時間間隔(例えば、1分、5分、1/2時間、1時間など)で血漿試料を採取することができる。その後、その特定の薬物に適応させることができる1つもしくは複数の適切な分析法、例えば、GC−質量分析、LC−質量分析、HPLCまたは様々なELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)を用いて、血漿中の薬物の濃度を測定することができる。その後、血漿試料からの測定値を用いて、濃度対時間曲線(本明細書では、濃度プロファイルとも呼ぶ)を生成することができる。この濃度曲線のピークがCmaxに対応し、これが発生する時間がtmaxに対応する。濃度がCmaxに達した後にその最大値(すなわち、Cmax)の半分に達する前記曲線における時間がt1/2に対応し、この値は、薬物の消失半減期としても公知である。Cmaxの判定の開始時間は、非血管注射の場合は注射を行った時間、および嚥下可能なデバイスの実施形態が1つもしくは複数の組織貫入部材(薬物を収容している)を小腸にまたはGI管内の他の位置(例えば、大腸)に進入させる時点に基づき得る。後者の場合、この時間は、外部制御シグナル(例えば、RFシグナル)に応答して組織貫入部材を腸壁内に展開させる嚥下可能なデバイスの遠隔制御実施形態をはじめとする1つもしくは複数の手段、または組織貫入部材が展開されたときに体外で検出可能なRFまたは他のシグナルを送信する嚥下可能なデバイスの実施形態のための1つもしくは複数の手段を用いて決定することができる。例えば超音波または蛍光透視法をはじめとする1つもしくは複数の医療画像診断法などの、小腸内への組織貫入部材展開を検出するための他の手段が、企図される。これらの研究のいずれか1つにおいて、ヒト薬物動態応答をモデル化するために適切な動物モデル、例えば、イヌ、ブタ、ラットなどを使用することができる。
このように、様々な実施形態は、リラグルチドを含む治療組成物(本明細書では製剤とも呼ぶ)を提供する。この組成物は、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、該組成物は、その腸壁から血流にリラグルチドを放出して、血管外注射用量の該治療剤より早くCmaxに達する。換言すると、挿入形態のリラグルチドのほうが、血管外注射される用量のリラグルチドより短期間(例えば、より小さいtmax)でCmaxを達成する。これらの結果を達成するために、腸壁内に送達される組成物中の治療剤の用量と血管外注射によって送達される用量は、同等であり得るが、同等である必要はないことに留意されたし。様々な実施形態において、前記組成物は、血管外注射用量のリラグルチドのtmaxの約80%、または50%、または30%、または20%、または10%である(例えば、腸壁、例えば小腸の腸壁から血流へのリラグルチドの放出によって)リラグルチドのtmaxを達成するように構成される。かかる血管外注射用量のリラグルチドは、例えば、皮下注射または筋肉内注射であり得る。特定の実施形態において、腸壁内への挿入によるリラグルチドの送達によって達成されるCmaxは、リラグルチドが腸壁に挿入されることなく経口送達されるときに達成されるCmax、例えば、ピル、他の従来の経口形態の治療剤または関連化合物によって達成されるCmaxより実質的に大きく、例えば、5、10、20、30、40、50、60、70、80またはさらには100倍大きい。一部の実施形態において、前記リラグルチド組成物は、リラグルチドの長期放出をもたらすように構成される。また、選択可能なt1/2でのリラグルチドの長期放出をもたらすように前記組成物を構成することができる。例えば、前記選択可能なt1/2は、6、または9、または12、または15、または18、または24時間であり得る。
一部の実施形態において、前記リラグルチド組成物は、糖尿病またはグルコース調節障害の処置のための治療有効用量のインクレチンを含むこともある。使用することができるインクレチンとしては、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、GLP−1類似体または胃抑制ペプチド(GIP)が挙げられる。例示的GLP−1類似体としては、エクセナチド、リラグルチド、アルビグルチドおよびタスポグルチドが挙げられる。任意の適切な用量のインクレチンを使用することができる;例えば、エクセナチドを約1から10マイクログラムの範囲の用量で使用することができるか、またはリラグルチドを約1から2mgの範囲で使用することができる。
様々な実施形態は、経口摂取後の腸壁内への挿入に適合したリラグルチド組成物であって、挿入されると、その腸壁から血流にリラグルチドを放出して、腸壁に挿入されない経口摂取用量のリラグルチドのt1/2より大きいt1/2を達成する組成物も提供する。例えば、前記腸壁に挿入される用量のt1/2は、前記腸壁に挿入されない用量より100または50または10または5倍大きいことがある。
前記リラグルチドは、固体形態、例えば、腸壁内で分解するように構成された固体形態組成物であることがあり、該固体形態組成物は、例えば、尖った先端などの組織貫入特徴部を有することがある。前記組成物は、少なくとも1つの生分解性材料を含むことがあり、そして/または生分解性ポリマー、例えばPGLA、もしくは糖、例えばマルトースをはじめとする、少なくとも1つの医薬用賦形剤を含むことがある。
前記リラグルチド組成物を、嚥下可能なカプセルでの経口送達に適合させることができる。特定の実施形態では、第一の構成および第二の構成を有するメカニズムであって、前記リラグルチド組成物を該第一の構成ではカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では該リラグルチド組成物を該カプセルから進出させ腸壁に進入させる、メカニズムに作動可能に連結されるように、かかる嚥下可能なカプセルを適合させることができる。かかる作動可能に連結されるメカニズムは、拡張可能な部材、拡張可能なバルーン、バルブ、組織貫入部材、拡張可能なバルーンに連結されたバルブ、または拡張可能なバルーンに連結された組織貫入部材のうちの少なくとも1つを含み得る。
一部の実施形態では、前記リラグルチド組成物を組織貫入部材の管腔内に送達されるように構成することができ、そして/または前記リラグルチド組成物を腸壁に進入可能な組織貫入部材として造形することができる。前記組織貫入部材は、腸壁内に完全に収容されるようなサイズであることがあり、そして/または腸壁に貫入するための組織貫入特徴部を備えていることがあり、そして/または腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えていることがある。前記留置特徴部は、例えば返しを含み得る。一部の実施形態において、前記組織貫入部材は、該組織貫入部材の表面に力が加わることで腸壁に進入するように構成され、ならびに場合により、前記組織貫入部材は、腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有し、そして/または前記貫入部材の表面は、拡張により力を加える拡張可能なバルーンに作動するように連結されるように構成され、そして/または前記組織貫入部材は、力の方向が変化すると、力を加えている構造物から外れるように構成される。
本発明によるさらなる態様および実施形態を以下の番号の節に示す。
1.リラグルチドを含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、リラグルチドを腸壁から血流に放出して、血管外注射用量のリラグルチドがCmaxを達成する期間より短期間でCmaxを達成する、治療製剤。
2.前記治療製剤から放出されるリラグルチドのtmaxが、血管外注射用量のリラグルチドのtmaxの約80%である、節1に記載の製剤。
3.前記治療製剤から放出されるリラグルチドのtmaxが、血管外注射用量のリラグルチドのtmaxの約50%である、節1に記載の製剤。
4.前記治療製剤から放出されるリラグルチドのtmaxが、血管外注射用量のリラグルチドのtmaxの約30%である、節1に記載の製剤。
5.前記治療製剤から放出されるリラグルチドのtmaxが、血管外注射用量のリラグルチドのtmaxの約10%である、節1に記載の製剤。
6.小腸壁への挿入に適合している、前記いずれかの節に記載の製剤。
7.前記血管外注射が、皮下注射または筋肉内注射である、前記いずれかの節に記載の製剤。
8.前記製剤の少なくとも一部分が固体形態である、前記いずれかの節に記載の製剤。
9.嚥下可能なカプセルで経口送達されるのに適合している、前記いずれかの節に記載の製剤。
10.第一の構成および第二の構成を有する送達手段であって、該第一の構成では前記製剤をカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では前記製剤を該カプセルから進出させて腸壁に進入させる送達手段に作動可能に連結されるのに適合している、節9に記載の製剤。
11.前記送達手段が、拡張および非拡張状態を有する少なくとも1つの拡張可能なバルーンを含み、前記第一の構成が非拡張状態であり、前記第二の構成が拡張状態である、節10に記載の製剤。
12.リラグルチドを血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
13.前記生分解性材料が、PGLA、糖またはマルトースを含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
14.少なくとも1つの医薬用賦形剤を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
15.前記少なくとも1つの医薬用賦形剤が、結合剤、保存剤または崩壊剤のうちの少なくとも1つを含む、節14に記載の製剤。
16.前記結合剤がPEGを含む、節15に記載の製剤。
17.腸壁に貫入し、挿入されるように構成される組織貫入部材であって、前記製剤を備えている組織貫入部材を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
18.前記組織貫入部材が、リラグルチドを血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、節17に記載の製剤。
19.前記生分解性材料が、マルトースまたはPGLAを含む、節18に記載の製剤。
20.前記組織貫入部材中のリラグルチドの重量パーセントが、約3〜6%の間を含む、節17に記載の製剤。
21.前記組織貫入部材が、挿入後に腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えている、節17に記載の製剤。
22.前記留置特徴部が、前記組織貫入部材の返しまたは逆テーパ形状の少なくとも一方を含む、節21に記載の製剤。
23.前記リラグルチドが、前記組織貫入部材における造形されたセクション内に収容されている、節17に記載の製剤。
24.前記造形されたセクションが、円柱またはペレット形状を有する、節23に記載の製剤。
25.前記組織貫入部材が、該組織貫入部材に力が加わることで腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有する、前記いずれかの節に記載の製剤。
26.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより実質的に大きい、前記いずれかの節に記載の製剤。
27.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより少なくとも約10倍大きい、節26に記載の製剤。
28.リラグルチドの長期放出をもたらすように構成される、前記いずれかの節に記載の製剤。
29.選択可能なt1/2を生じさせるようなリラグルチドの長期放出をもたらすように構成される、節28に記載の製剤。
30.前記t1/2が、約12時間である、節29に記載の製剤。
31.前記製剤中のリラグルチドの用量が、約0.1から1mgの範囲である、前記いずれかの節に記載の製剤。
32.前記リラグルチドの用量が、約0.6mgである、節31に記載の製剤。
33.前記治療製剤が、糖尿病またはグルコース調節障害の処置のための治療有効用量のインクレチンをさらに含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
34.前記インクレチンが、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、GLP−1類似体、エクセナチド、アルビグルチド、タスポグルチドまたは胃抑制ポリペプチド(GIP)を含む、節33に記載の製剤。
35.前記インクレチンが、エクセナチドを含み、その用量が、約1から10μgの範囲である、節33に記載の製剤。
36.リラグルチドを含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、リラグルチドを腸壁から血流に放出して、腸壁に挿入されない経口摂取リラグルチドのt1/2より大きいt1/2を達成する、治療製剤。
37.腸壁に挿入される前記リラグルチドのt1/2が、腸壁に挿入されない経口摂取リラグルチドのt1/2より少なくとも約10倍大きい、節36に記載の製剤。
38.糖尿病または他の血糖調節障害の処置において使用するための、前記節のいずれか一節または複数の節に記載の製剤。
プラムリンチド
本明細書に記載する実施形態は、糖尿病または他のグルコース調節障害の処置のためのプラムリンチドを含む治療剤を含む治療組成物を含む。かかる組成物は、望ましい薬物動態特性でのプラムリンチドの送達をもたらす。これに関連して、注目すべき薬物動態測定基準としては、Cmax、投与後の薬物のピーク血漿濃度;tmax、Cmaxに達するまでの時間;およびt1/2、薬物の血漿濃度がCmaxに達した後にそのCmax値の半分に達するために要する時間が挙げられる。これらの測定基準は、当該技術分野において公知の標準的な薬物動態測定技術を用いて測定することができる。1つのアプローチでは、嚥下可能なデバイスの使用または非血管注射のいずれかによるプラムリンチド治療剤の投与を開始して投与後まで設定時間間隔(例えば、1分、5分、1/2時間、1時間など)で血漿試料を採取することができる。その後、その特定の薬物に適応させることができる1つもしくは複数の適切な分析法、例えば、GC−質量分析、LC−質量分析、HPLCまたは様々なELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)を用いて、血漿中の薬物の濃度を測定することができる。その後、血漿試料からの測定値を用いて、濃度対時間曲線(本明細書では、濃度プロファイルとも呼ぶ)を生成することができる。この濃度曲線のピークがCmaxに対応し、これが発生する時間がtmaxに対応する。濃度がCmaxに達した後にその最大値(すなわち、Cmax)の半分に達する前記曲線における時間がt1/2に対応し、この値は、薬物の消失半減期としても公知である。Cmaxの判定の開始時間は、非血管注射の場合は注射を行った時間、および嚥下可能なデバイスの実施形態が1つもしくは複数の組織貫入部材(薬物を収容している)を小腸にまたはGI管内の他の位置(例えば、大腸)に進入させる時点に基づき得る。後者の場合、この時間は、外部制御シグナル(例えば、RFシグナル)に応答して組織貫入部材を腸壁内に展開させる嚥下可能なデバイスの遠隔制御実施形態をはじめとする1つもしくは複数の手段、または組織貫入部材が展開されたときに体外で検出可能なRFまたは他のシグナルを送信する嚥下可能なデバイスの実施形態のための1つもしくは複数の手段を用いて決定することができる。例えば超音波または蛍光透視法をはじめとする1つもしくは複数の医療画像診断法などの、小腸内への組織貫入部材展開を検出するための他の手段が、企図される。これらの研究のいずれか1つにおいて、ヒト薬物動態応答をモデル化するために適切な動物モデル、例えば、イヌ、ブタ、ラットなどを使用することができる。
このように、様々な実施形態は、プラムリンチドを含む治療組成物(本明細書では製剤とも呼ぶ)を提供する。この組成物は、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、該組成物は、その腸壁から血流にプラムリンチドを放出して、血管外注射用量のプラムリンチドより早くCmaxに達する。換言すると、挿入形態のプラムリンチドのほうが、血管外注射される(injected extravaculary)用量のプラムリンチドより短期間(例えば、より小さいtmax)でCmaxを達成する。これらの結果を達成するために、腸壁内に送達される組成物中のプラムリンチドの用量と血管外注射によって送達される用量は、同等であり得るが、同等である必要はないことに留意されたし。様々な実施形態において、前記組成物は、血管外注射用量のプラムリンチドのtmaxの約80%、または50%、または30%、または20%、または10%である(例えば、腸壁、例えば小腸の腸壁から血流へのプラムリンチドの放出によって)プラムリンチドのtmaxを達成するように構成される。かかる血管外注射用量のプラムリンチドは、例えば、皮下注射または筋肉内注射であり得る。特定の実施形態において、腸壁内への挿入によるプラムリンチドの送達によって達成されるCmaxは、該治療剤が腸壁に挿入されることなく経口送達されるときに達成されるCmax、例えば、ピル、他の従来の経口形態の該治療剤または関連化合物によって達成されるCmaxより実質的に大きく、例えば、5、10、20、30、40、50、60、70、80またはさらには100倍大きい。一部の実施形態において、前記プラムリンチド組成物は、プラムリンチドの長期放出をもたらすように構成される。また、選択可能なt1/2でのプラムリンチドの長期放出をもたらすように前記組成物を構成することができる。例えば、前記選択可能なt1/2は、6、または9、または12、または15、または18、または24時間であり得る。
一部の実施形態において、前記治療剤組成物は、糖尿病またはグルコース調節障害の処置のための治療有効用量のインクレチンを含むこともある。使用することができるインクレチンとしては、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、GLP−1類似体または胃抑制ペプチド(GIP)が挙げられる。
様々な実施形態は、経口摂取後の腸壁内への挿入に適合したプラムリンチド組成物であって、挿入されると、その腸壁から血流にプラムリンチドを放出して、腸壁に挿入されない経口摂取用量の該治療剤のt1/2より大きいt1/2を達成する組成物も提供する。例えば、前記腸壁に挿入される用量のt1/2は、腸壁に挿入されない用量より100または50または10または5倍大きいことがある。
上述のプラムリンチド組成物は、固体形態、例えば、腸壁内で分解するように構成された固体形態組成物であることがあり、該固体形態組成物は、例えば、尖った先端などの組織貫入特徴部を有することがある。前記プラムリンチド組成物は、少なくとも1つの生分解性材料を含むことがあり、そして/または生分解性ポリマー、例えばPGLA、もしくは糖、例えばマルトースをはじめとする、少なくとも1つの医薬用賦形剤を含むことがある。
前記プラムリンチド組成物を、嚥下可能なカプセルでの経口送達に適合させることができる。特定の実施形態では、第一の構成および第二の構成を有するメカニズムであって、前記プラムリンチド組成物を該第一の構成ではカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では該プラムリンチド組成物を該カプセルから進出させ腸壁に進入させる、メカニズムに作動可能に連結されるように、かかる嚥下可能なカプセルを適合させることができる。かかる作動可能に連結されるメカニズムは、拡張可能な部材、拡張可能なバルーン、バルブ、組織貫入部材、拡張可能なバルーンに連結されたバルブ、または拡張可能なバルーンに連結された組織貫入部材のうちの少なくとも1つを含み得る。
一部の実施形態では、前記プラムリンチド組成物を組織貫入部材の管腔内に送達されるように構成することができ、そして/または前記プラムリンチド組成物を腸壁に進入可能な組織貫入部材として造形することができる。前記組織貫入部材は、腸壁内に完全に収容されるようなサイズであることがあり、そして/または腸壁に貫入するための組織貫入特徴部を備えていることがあり、そして/または腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えていることがある。前記留置特徴部は、例えば返しを含み得る。一部の実施形態において、前記組織貫入部材は、該組織貫入部材の表面に力が加わることで腸壁に進入するように構成され、ならびに場合により、前記組織貫入部材は、腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有し、そして/または前記貫入部材の表面は、拡張により力を加える拡張可能なバルーンに作動するように連結されるように構成され、そして/または前記組織貫入部材は、力の方向が変化すると、力を加えている構造物から外れるように構成される。
本発明によるさらなる態様および実施形態を以下の番号の節に示す。
1.プラムリンチドを含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、プラムリンチドを腸壁から血流に放出して、血管外注射用量のプラムリンチドがCmaxを達成する期間より短期間でCmaxを達成する、治療製剤。
2.前記治療製剤から放出されるプラムリンチドのtmaxが、血管外注射用量のプラムリンチドのtmaxの約80%である、節1に記載の製剤。
3.前記治療製剤から放出されるプラムリンチドのtmaxが、血管外注射用量のプラムリンチドのtmaxの約50%である、節1に記載の製剤。
4.前記治療製剤から放出されるプラムリンチドのtmaxが、血管外注射用量のプラムリンチドのtmaxの約30%である、節1に記載の製剤。
5.前記治療製剤から放出されるプラムリンチドのtmaxが、血管外注射用量のプラムリンチドのtmaxの約10%である、節1に記載の製剤。
6.小腸壁への挿入に適合している、前記いずれかの節に記載の製剤。
7.前記血管外注射が、皮下注射または筋肉内注射である、前記いずれかの節に記載の製剤。
8.前記製剤の少なくとも一部分が固体形態である、前記いずれかの節に記載の製剤。
9.嚥下可能なカプセルで経口送達されるのに適合している、前記いずれかの節に記載の製剤。
10.第一の構成および第二の構成を有する送達手段であって、該第一の構成では前記製剤をカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では前記製剤を該カプセルから進出させて腸壁に進入させる、送達手段に作動可能に連結されるのに適合している、節9に記載の製剤。
11.前記送達手段が、拡張および非拡張状態を有する少なくとも1つの拡張可能なバルーンを含み、前記第一の構成が非拡張状態であり、前記第二の構成が拡張状態である、節10に記載の製剤。
12.プラムリンチドを血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
13.前記生分解性材料が、PGLA、糖またはマルトースを含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
14.少なくとも1つの医薬用賦形剤を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
15.前記少なくとも1つの医薬用賦形剤が、結合剤、保存剤または崩壊剤のうちの少なくとも1つを含む、節14に記載の製剤。
16.前記結合剤がPEGを含む、節15に記載の製剤。
17.腸壁に貫入し、挿入されるように構成される組織貫入部材であって、前記製剤を備えている組織貫入部材を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
18.前記組織貫入部材が、プラムリンチドを血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、節17に記載の製剤。
19.前記生分解性材料が、マルトースまたはPGLAを含む、節18に記載の製剤。
20.前記組織貫入部材中のプラムリンチドの重量パーセントが、約0.1から1%の間を含む、節17に記載の製剤。
21.前記組織貫入部材が、挿入後に腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えている、節17に記載の製剤。
22.前記留置特徴部が、前記組織貫入部材の返しまたは逆テーパ形状の少なくとも一方を含む、節21に記載の製剤。
23.前記プラムリンチドが、前記組織貫入部材における造形されたセクション内に収容されている、節17に記載の製剤。
24.前記造形されたセクションが、円柱またはペレット形状を有する、節23に記載の製剤。
25.前記組織貫入部材が、該組織貫入部材に力が加わることで腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有する、前記いずれかの節に記載の製剤。
26.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより実質的に大きい、前記いずれかの節に記載の製剤。
27.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより少なくとも約10倍大きい、節26に記載の製剤。
28.プラムリンチドの長期放出をもたらすように構成される、前記いずれかの節に記載の製剤。
29.選択可能なt1/2を生じさせるようなプラムリンチドの長期放出をもたらすように構成される、節28に記載の製剤。
30.前記t1/2が、約10時間である、節29に記載の製剤。
31.前記製剤中のプラムリンチドの用量が、約15から120μgの範囲である、前記いずれかの節に記載の製剤。
32.糖尿病またはグルコース調節障害の処置のための治療有効用量のインクレチンをさらに含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
33.前記インクレチンが、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、GLP−1類似体、エクセナチド、アルビグルチド、タスポグルチドまたは胃抑制ポリペプチド(GIP)を含む、節32に記載の製剤。
34.前記インクレチンが、エクセナチドを含み、その用量が、約1から10μgの範囲である、節32に記載の製剤。
35.プラムリンチドを含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、プラムリンチドを腸壁から血流に放出して、腸壁に挿入されない経口摂取プラムリンチドのt1/2より大きいt1/2を達成する、治療製剤。
36.腸壁に挿入される前記プラムリンチドのt1/2が、腸壁に挿入されない経口摂取プラムリンチドのt1/2より少なくとも約10倍大きい、節35に記載の製剤。
37.糖尿病または他の血糖調節障害の処置において使用するための、前記節のいずれか一節または複数の節に記載の製剤。
成長ホルモン
上で論じたように、本明細書に記載する実施形態は、成長ホルモン欠乏症または関連障害の処置のための、成長ホルモンを含む治療剤を含む治療組成物を含む。かかる組成物は、望ましい薬物動態特性での成長ホルモンの送達をもたらす。これに関連して、注目すべき薬物動態測定基準としては、Cmax、投与後の薬物のピーク血漿濃度;tmax、Cmaxに達するまでの時間;およびt1/2、薬物の血漿濃度がCmaxに達した後にそのCmax値の半分に達するために要する時間が挙げられる。これらの測定基準は、当該技術分野において公知の標準的な薬物動態測定技術を用いて測定することができる。1つのアプローチでは、嚥下可能なデバイスの使用または非血管注射のいずれかによる薬物または他の治療剤の投与を開始して投与後まで設定時間間隔(例えば、1分、5分、1/2時間、1時間など)で血漿試料を採取することができる。その後、その特定の薬物に適応させることができる1つもしくは複数の適切な分析法、例えば、GC−質量分析、LC−質量分析、HPLCまたは様々なELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)を用いて、血漿中の薬物の濃度を測定することができる。その後、血漿試料からの測定値を用いて、濃度対時間曲線(本明細書では、濃度プロファイルとも呼ぶ)を生成することができる。この濃度曲線のピークがCmaxに対応し、これが発生する時間がtmaxに対応する。濃度がCmaxに達した後にその最大値(すなわち、Cmax)の半分に達する前記曲線における時間がt1/2に対応し、この値は、薬物の消失半減期としても公知である。Cmaxの判定の開始時間は、非血管注射の場合は注射を行った時間、および嚥下可能なデバイスの実施形態が1つもしくは複数の組織貫入部材(薬物を収容している)を小腸にまたはGI管内の他の位置(例えば、大腸)に進入させる時点に基づき得る。後者の場合、この時間は、外部制御シグナル(例えば、RFシグナル)に応答して組織貫入部材を腸壁内に展開させる嚥下可能なデバイスの遠隔制御実施形態をはじめとする1つもしくは複数の手段、または組織貫入部材が展開されたときに体外で検出可能なRFまたは他のシグナルを送信する嚥下可能なデバイスの実施形態のための1つもしくは複数の手段を用いて決定することができる。例えば超音波または蛍光透視法をはじめとする1つもしくは複数の医療画像診断法などの、小腸内への組織貫入部材展開を検出するための他の手段が、企図される。これらの研究のいずれか1つにおいて、ヒト薬物動態応答をモデル化するために適切な動物モデル、例えば、イヌ、ブタ、ラットなどを使用することができる。
このように、様々な実施形態は、成長ホルモンを含む治療組成物(本明細書では製剤とも呼ぶ)を提供する。この組成物は、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、該組成物は、その腸壁から血流に成長ホルモンを放出して、血管外注射用量の成長ホルモンより早くCmaxに達する。換言すると、挿入形態の成長ホルモンのほうが、血管外注射される(injected extravaculary)用量の成長ホルモンより短期間(例えば、より小さいtmax)でCmaxを達成する。これらの結果を達成するために、腸壁内に送達される組成物中の成長ホルモンの用量と血管外注射によって送達される用量は、同等であり得るが、同等である必要はないことに留意されたし。様々な実施形態において、前記組成物は、血管外注射用量の成長ホルモンのtmaxの約80%、または50%、または30%、または20%、または10%である(例えば、腸壁、例えば小腸の腸壁から血流への成長ホルモンの放出によって)成長ホルモンのtmaxを達成するように構成される。かかる血管外注射用量の成長ホルモンは、例えば、皮下注射または筋肉内注射であり得る。特定の実施形態において、腸壁内への挿入による成長ホルモンの送達によって達成されるCmaxは、該成長ホルモンが腸壁に挿入されることなく経口送達されるときに達成されるCmax、例えば、ピル、他の従来の経口形態の成長ホルモンまたは関連化合物によって達成されるCmaxより実質的に大きく、例えば、5、10、20、30、40、50、60、70、80またはさらには100倍大きい。一部の実施形態において、前記成長ホルモン組成物は、成長ホルモンの長期放出をもたらすように構成される。また、選択可能なt1/2での成長ホルモンの長期放出をもたらすように前記組成物を構成することができる。例えば、前記選択可能なt1/2は、6、または9、または12、または15、または18、または24時間であり得る。ソマトロピン(組換えヒト成長ホルモン)をはじめとする、任意のタイプの許容され得る成長ホルモンを使用することができる。成長ホルモンでの処置に適する状態としては、成長ホルモン欠乏症に関連した低伸長または発育不全、ターナー症候群、特発性低身長、SHOX欠損症、不当軽小児出生後の身長の追いつきの不全を有する小児の処置、および小児期発症成長ホルモン欠乏症もしくは成人発症成長ホルモン欠乏症のいずれかを有する成人の処置が挙げられる。
様々な実施形態は、経口摂取後の腸壁内への挿入に適合した成長ホルモンを含む治療組成物であって、挿入されると、その腸壁から血流に成長ホルモンを放出して、腸壁に挿入されない経口摂取用量の成長ホルモンのt1/2より大きいt1/2を達成する、組成物も提供する。例えば、前記腸壁に挿入される用量のt1/2は、腸壁に挿入されない用量より100または50または10または5倍大きいことがある。
成長ホルモンを含む前記治療組成物は、固体形態、例えば、腸壁内で分解するように構成された固体形態組成物であることがあり、この成長ホルモンを含む固体形態組成物は、例えば、尖った先端などの組織貫入特徴部を有することがある。前記治療組成物は、少なくとも1つの生分解性材料を含むことがあり、そして/または生分解性ポリマー、例えばPGLA、もしくは糖、例えばマルトースをはじめとする、少なくとも1つの医薬用賦形剤を含むことがある。
成長ホルモンを含む前記治療組成物を、嚥下可能なカプセルでの経口送達に適合させることができる。特定の実施形態では、第一の構成および第二の構成を有するメカニズムであって、前記治療組成物を該第一の構成ではカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では該治療組成物を該カプセルから進出させ腸壁に進入させる、メカニズムに作動可能に連結されるように、かかる嚥下可能なカプセルを適合させることができる。かかる作動可能に連結されるメカニズムは、拡張可能な部材、拡張可能なバルーン、バルブ、組織貫入部材、拡張可能なバルーンに連結されたバルブ、または拡張可能なバルーンに連結された組織貫入部材のうちの少なくとも1つを含み得る。
一部の実施形態では、成長ホルモンを含む前記治療組成物を組織貫入部材の管腔内に送達されるように構成することができ、そして/または前記治療組成物を腸壁に進入可能な組織貫入部材として造形することができる。前記組織貫入部材は、腸壁内に完全に収容されるようなサイズであることがあり、そして/または腸壁に貫入するための組織貫入特徴部を備えていることがあり、そして/または腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えていることがある。前記留置特徴部は、例えば返しを含み得る。一部の実施形態において、前記組織貫入部材は、該組織貫入部材の表面に力が加わることで腸壁に進入するように構成され、ならびに場合により、前記組織貫入部材は、腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有し、そして/または前記貫入部材の表面は、拡張により力を加える拡張可能なバルーンに作動するように連結されるように構成され、そして/または前記組織貫入部材は、力の方向が変化すると、力を加えている構造物から外れるように構成される。
本発明によるさらなる態様および実施形態を以下の番号の節に示す。
1.成長ホルモンを含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、成長ホルモンを腸壁から血流に放出して、血管外注射用量の成長ホルモンがCmaxを達成する期間より短期間でCmaxを達成する、治療製剤。
2.前記治療製剤から放出される成長ホルモンのtmaxが、血管外注射用量の成長ホルモンのtmaxの約80%である、節1に記載の製剤。
3.前記治療製剤から放出される成長ホルモンのtmaxが、血管外注射用量の成長ホルモンのtmaxの約50%である、節1に記載の製剤。
4.前記治療製剤から放出される成長ホルモンのtmaxが、血管外注射用量の成長ホルモンのtmaxの約30%である、節1に記載の製剤。
5.前記治療製剤から放出される成長ホルモンのtmaxが、血管外注射用量の成長ホルモンのtmaxの約10%である、節1に記載の製剤。
6.小腸壁への挿入に適合している、前記いずれかの節に記載の製剤。
7.前記血管外注射が、皮下注射または筋肉内注射である、前記いずれかの節に記載の製剤。
8.前記製剤の少なくとも一部分が固体形態である、前記いずれかの節に記載の製剤。
9.嚥下可能なカプセルで経口送達されるのに適合している、前記いずれかの節に記載の製剤。
10.第一の構成および第二の構成を有する送達手段であって、該第一の構成では前記製剤をカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では前記製剤を該カプセルから進出させて腸壁に進入させる送達手段に作動可能に連結されるのに適合している、節9に記載の製剤。
11.前記送達手段が、拡張および非拡張状態を有する少なくとも1つの拡張可能なバルーンを含み、前記第一の構成が非拡張状態であり、前記第二の構成が拡張状態である、節10に記載の製剤。
12.成長ホルモンを血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
13.前記生分解性材料が、PGLA、糖またはマルトースを含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
14.少なくとも1つの医薬用賦形剤を含む、節1に記載の製剤。
15.前記少なくとも1つの医薬用賦形剤が、結合剤、保存剤または崩壊剤のうちの少なくとも1つを含む、節14に記載の製剤。
16.前記結合剤がPEGを含む、節15に記載の製剤。
17.腸壁に貫入し、挿入されるように構成される組織貫入部材であって、前記製剤を備えている組織貫入部材を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
18.前記組織貫入部材が、成長ホルモンを血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、節17に記載の製剤。
19.前記生分解性材料が、マルトースまたはPGLAを含む、節18に記載の製剤。
20.前記組織貫入部材中の成長ホルモンの重量パーセントが、約2から10%の間を含む、節17に記載の製剤。
21.前記組織貫入部材が、挿入後に腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えている、節17に記載の製剤。
22.前記留置特徴部が、前記組織貫入部材の返しまたは逆テーパ形状の少なくとも一方を含む、節21に記載の製剤。
23.前記成長ホルモンが、前記組織貫入部材における造形されたセクション内に収容されている、節17に記載の製剤。
24.前記造形されたセクションが、円柱またはペレット形状を有する、節23に記載の製剤。
25.前記組織貫入部材が、該組織貫入部材に力が加わることで腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有する、前記いずれかの節に記載の製剤。
26.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより実質的に大きい、前記いずれかの節に記載の製剤。
27.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより少なくとも約10倍大きい、節26に記載の製剤。
28.成長ホルモンの長期放出をもたらすように構成される、前記いずれかの節に記載の製剤。
29.選択可能なt1/2を生じさせるような成長ホルモンの長期放出をもたらすように構成される、節28に記載の製剤。
30.前記t1/2が、約12時間である、節29に記載の製剤。
31.前記製剤中の成長ホルモンの用量が、約0.1から4mgの範囲である、前記いずれかの節に記載の製剤。
32.前記成長ホルモンの用量が、約0.2から1mgの範囲である、節31に記載の製剤。
33.前記成長ホルモンがソマトロピンである、前記いずれかの節に記載の製剤。
34.成長ホルモンを含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、成長ホルモンを腸壁から血流に放出して、腸壁に挿入されない経口摂取成長ホルモンのt1/2より大きいt1/2を達成する、治療製剤。
35.腸壁に挿入される前記成長ホルモンのt1/2が、腸壁に挿入されない経口摂取成長ホルモンのt1/2より少なくとも約10倍大きい、節34に記載の製剤。
36.成長障害および/または成長ホルモン欠乏症の処置において使用するための、前記節のいずれか一節または複数の節に記載の製剤。
ソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体
かくして、様々な実施形態は、ソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体を含む治療組成物(本明細書では製剤とも呼ぶ)を提供する。この組成物は、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、該組成物は、その腸壁から血流にソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体を放出して、血管外注射用量の該治療剤より早くCmaxに達する。換言すると、挿入形態の治療剤のほうが、血管外注射される(injected extravaculary)用量の該治療剤より短期間(例えば、より小さいtmax)でCmaxを達成する。これらの結果を達成するために、腸壁内に送達される組成物中のソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体の用量と血管外注射によって送達される用量は、同等であり得るが、同等である必要はないことに留意されたし。様々な実施形態において、前記組成物は、血管外注射用量の該治療剤のtmaxの約80%、または50%、または30%、または20%、または10%である(例えば、腸壁、例えば小腸の腸壁から血流へのソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体の放出によって)ソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体のtmaxを達成するように構成される。かかる血管外注射用量のソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体は、例えば、皮下注射または筋肉内注射であり得る。特定の実施形態において、腸壁内への挿入によるソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体の送達によって達成されるCmaxは、ソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体が腸壁に挿入されることなく経口送達されるときに達成されるCmax、例えば、ピル、他の従来の経口形態のソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体によって達成されるCmaxより実質的に大きく、例えば、5、10、20、30、40、50、60、70、80またはさらには100倍大きい。一部の実施形態において、前記ソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体組成物は、ソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体の長期放出をもたらすように構成される。また、選択可能なt1/2での前記治療剤の長期放出をもたらすように前記組成物を構成することができる。例えば、前記選択可能なt1/2は、6、または9、または12、または15、または18、または24時間であり得る。
体重、年齢などの因子に応じて、特定の患者のために任意の適切な用量のソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体を用いることができる。例えば、投与するソマトスタチン類似体オクトレオチドの用量は、約10〜100μgの範囲(20〜80μg、25〜50μgおよび25〜30μgの特定の範囲をそれぞれ伴う)であり得る。皮下投与すると、オクトレオチドは、典型的に、約30分の血流中でのtmaxを有する。したがって、本明細書に記載するような治療オクトレオチド組成物で投与すると、そのオクトレオチドのtmaxは、皮下注射する場合のオクトレオチドのtmaxの、例えば約80%、または50%、または30%、または20%、または10%に短縮される。
もう1つの実施形態は、ソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体を含む治療組成物であって、経口摂取後の腸壁内への挿入に適合しており、挿入されると、その腸壁から血流にソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体を放出して、腸壁に挿入されない経口摂取用量のソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体のt1/2より大きいt1/2を達成する、組成物を提供する。例えば、前記腸壁に挿入される用量のt1/2は、前記腸壁に挿入されない用量より100または50または10または5倍大きいことがある。
前記治療ソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体組成物は、固体形態、例えば、腸壁内で分解するように構成された固体形態組成物であることがあり、該固体形態組成物は、例えば、尖った先端などの組織貫入特徴部を有することがある。前記治療ソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体組成物は、少なくとも1つの生分解性材料を含むことがあり、そして/または生分解性ポリマー、例えばPGLA、もしくは糖、例えばマルトースをはじめとする、少なくとも1つの医薬用賦形剤を含むことがある。
前記治療ソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体組成物は、固体形態、例えば、腸壁内で分解するように構成された固体形態組成物であることがあり、該固体形態組成物は、例えば、尖った先端などの組織貫入特徴部を有することがある。前記治療ソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体組成物は、少なくとも1つの生分解性材料を含むことがあり、そして/または生分解性ポリマー、例えばPGLA、もしくは糖、例えばマルトースをはじめとする、少なくとも1つの医薬用賦形剤を含むことがある。
一部の実施形態では、前記治療ソマトスタチンもしくはソマトスタチン類似体組成物を組織貫入部材の管腔内に送達されるように構成することができ、そして/または前記治療ソマトスタチンもしくはソマトスタチン類似体組成物を腸壁に進入可能な組織貫入部材として造形することができる。前記組織貫入部材は、腸壁内に完全に収容されるようなサイズであることがあり、そして/または腸壁に貫入するための組織貫入特徴部を備えていることがあり、そして/または腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えていることがある。前記留置特徴部は、例えば返しを含み得る。一部の実施形態において、前記組織貫入部材は、該組織貫入部材の表面に力が加わることで腸壁に進入するように構成され、ならびに場合により、前記組織貫入部材は、腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有し、そして/または前記貫入部材の表面は、拡張により力を加える拡張可能なバルーンに作動するように連結されるように構成され、そして/または前記組織貫入部材は、力の方向が変化すると、力を加えている構造物から外れるように構成される。
本発明によるさらなる態様および実施形態を以下の番号の節に示す。
1.ソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体を含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、ソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体を腸壁から血流に放出して、血管外注射用量のソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体がCmaxを達成する期間より短期間でCmaxを達成する、治療製剤。
2.前記治療製剤から放出されるソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体のtmaxが、血管外注射用量のソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体のtmaxの約80%である、請求項1に記載の製剤。
3.前記治療製剤から放出されるソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体のtmaxが、血管外注射用量のソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体のtmaxの約50%である、請求項1に記載の製剤。
4.前記治療製剤から放出されるソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体のtmaxが、血管外注射用量のソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体のtmaxの約30%である、請求項1に記載の製剤。
5.前記治療製剤から放出されるソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体のtmaxが、血管外注射用量のソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体のtmaxの約10%である、請求項1に記載の製剤。
6.小腸壁への挿入に適合している、請求項1に記載の製剤。
7.前記血管外注射が、皮下注射または筋肉内注射である、請求項1に記載の製剤。
8.前記製剤の少なくとも一部分が固体形態である、請求項1に記載の製剤。
9.嚥下可能なカプセルで経口送達されるのに適合している、請求項1に記載の製剤。
10.第一の構成および第二の構成を有する送達手段であって、該第一の構成では前記製剤をカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では前記製剤を該カプセルから進出させて腸壁に進入させる、送達手段に作動可能に連結されるのに適合している、請求項9に記載の製剤。
11.前記送達手段が、拡張および非拡張状態を有する少なくとも1つの拡張可能なバルーンを含み、前記第一の構成が非拡張状態であり、前記第二の構成が拡張状態である、請求項10に記載の製剤。
12.ソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体を血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、請求項1に記載の製剤。
13.前記生分解性材料が、PGLA、糖またはマルトースを含む、請求項1に記載の製剤。
14.少なくとも1つの医薬用賦形剤を含む、請求項1に記載の製剤。
15.前記少なくとも1つの医薬用賦形剤が、結合剤、保存剤または崩壊剤のうちの少なくとも1つを含む、請求項14に記載の製剤。
16.前記結合剤がPEGを含む、請求項15に記載の製剤。
17.腸壁に貫入し、挿入されるように構成される組織貫入部材であって、前記製剤を備えている組織貫入部材を含む、請求項1に記載の製剤。
18.前記組織貫入部材が、ソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体を血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、請求項17に記載の製剤。
19.前記生分解性材料が、マルトースまたはPGLAを含む、請求項18に記載の製剤。
20.前記組織貫入部材中のソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体の重量パーセントが、約0.3から8%の間を含む、請求項17に記載の製剤。
21.前記組織貫入部材が、挿入後に腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を含む、請求項17に記載の製剤。
22.前記留置特徴部が、前記組織貫入部材の返しまたは逆テーパ形状の少なくとも一方を含む、請求項21に記載の製剤。
23.前記ソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体が、前記組織貫入部材における造形されたセクション内に収容されている、請求項17に記載の製剤。
24.前記造形されたセクションが、円柱またはペレット形状を有する、請求項23に記載の製剤。
25.前記組織貫入部材が、該組織貫入部材に力が加わることで腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有する、請求項1に記載の製剤。
26.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより実質的に大きい、請求項1に記載の製剤。
27.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより少なくとも約10倍大きい、請求項26に記載の製剤。
28.ソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体の長期放出をもたらすように構成される、請求項1に記載の製剤。
29.選択可能なt1/2を生じさせるようなソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体の長期放出をもたらすように構成される、請求項28に記載の製剤。
30.前記t1/2が、約12時間である、請求項29に記載の製剤。
31.前記製剤中のソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体の用量が、約50から600mgの範囲である、請求項1に記載の製剤。
32.前記ソマトスタチン類似体が、オクトレオチドである、請求項1に記載の製剤。
33.前記製剤中のオクトレオチドの用量が、約10から100μgの範囲である、請求項32に記載の製剤。
34.ソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体を含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、ソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体を腸壁から血流に放出して、腸壁に挿入されない経口摂取ソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体のt1/2より大きいt1/2を達成する、治療製剤。
35.腸壁に挿入される前記ソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体のt1/2が、腸壁に挿入されない経口摂取ソマトスタチンまたはソマトスタチン類似体のt1/2より少なくとも約10倍大きい、請求項34に記載の製剤。
ナタリズマブ(Natilizumab)
上で論じたように、本明細書に記載する実施形態は、治療抗体、ナタリズマブを含む治療組成物を含む。ナタリズマブは、細胞接着分子アルファ−4−インテグリンに特異的なモノクローナル抗体である。ナタリズマブは、多発性硬化症およびクローン病をはじめとする多数の自己免疫疾患の処置に有用である。かかる組成物は、望ましい薬物動態特性でのナタリズマブの送達をもたらす。これに関連して、注目すべき薬物動態測定基準としては、Cmax、投与後の薬物のピーク血漿濃度;tmax、Cmaxに達するまでの時間;およびt1/2、薬物の濃度がその元の値の半分に達するために要する時間が挙げられる。これらの測定基準は、当該技術分野において公知の標準的な薬物動態測定技術を用いて測定することができる。1つのアプローチでは、嚥下可能なデバイスの使用または非血管注射のいずれかによる薬物または他の治療剤の投与を開始して投与後まで設定時間間隔(例えば、1分、5分、1/2時間、1時間など)で血漿試料を採取することができる。その後、その特定の薬物に適応させることができる1つもしくは複数の適切な分析法、例えば、GC−質量分析、LC−質量分析、HPLCまたは様々なELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)を用いて、血漿中の薬物の濃度を測定することができる。その後、血漿試料からの測定値を用いて、濃度対時間曲線(本明細書では、濃度プロファイルとも呼ぶ)を生成することができる。この濃度曲線のピークがCmaxに対応し、これが発生する時間がtmaxに対応する。濃度がCmaxに達した後にその最大値(すなわち、Cmax)の半分に達する前記曲線における時間がt1/2に対応し、この値は、薬物の消失半減期としても公知である。Cmaxの判定の開始時間は、非血管注射の場合は注射を行った時間、および嚥下可能なデバイスの実施形態が1つもしくは複数の組織貫入部材(薬物を収容している)を小腸にまたはGI管内の他の位置(例えば、大腸)に進入させる時点に基づき得る。後者の場合、この時間は、外部制御シグナル(例えば、RFシグナル)に応答して組織貫入部材を腸壁内に展開させる嚥下可能なデバイスの遠隔制御実施形態をはじめとする1つもしくは複数の手段、または組織貫入部材が展開されたときに体外で検出可能なRFまたは他のシグナルを送信する嚥下可能なデバイスの実施形態のための1つもしくは複数の手段を用いて決定することができる。例えば超音波または蛍光透視法をはじめとする1つもしくは複数の医療画像診断法などの、小腸内への組織貫入部材展開を検出するための他の手段が、企図される。これらの研究のいずれか1つにおいて、ヒト薬物動態応答をモデル化するために適切な動物モデル、例えば、イヌ、ブタ、ラットなどを使用することができる。
このように、様々な実施形態は、ナタリズマブを含む治療組成物(本明細書では製剤とも呼ぶ)を提供する。この組成物は、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、該組成物は、その腸壁から血流にナタリズマブを放出して、血管外注射用量のナタリズマブより早くCmaxに達する。換言すると、挿入形態のナタリズマブのほうが、血管外注射される(injected extravaculary)用量の該治療剤より短期間(例えば、より小さいtmax)でCmaxを達成する。これらの結果を達成するために、腸壁内に送達される組成物中のナタリズマブの用量と血管外注射によって送達される用量は、同等であり得るが、同等である必要はないことに留意されたし。様々な実施形態において、前記組成物は、血管外注射用量のナタリズマブのtmaxの約80%、または50%、または30%、または20%、または10%である(例えば、腸壁、例えば小腸の腸壁から血流への該治療剤の放出によって)治療剤のtmaxを達成するように構成される。かかる血管外注射用量のナタリズマブは、例えば、皮下注射または筋肉内注射であり得る。特定の実施形態において、腸壁内への挿入によるナタリズマブの送達によって達成されるCmaxは、ナタリズマブが腸壁に挿入されることなく経口送達されるときに達成されるCmax、例えば、ピル、他の従来の経口形態のナタリズマブまたは関連化合物によって達成されるCmaxより実質的に大きく、例えば、5、10、20、30、40、50、60、70、80またはさらには100倍大きい。一部の実施形態において、前記ナタリズマブ組成物は、ナタリズマブの長期放出をもたらすように構成される。また、選択可能なt1/2での前記治療剤の長期放出をもたらすように前記組成物を構成することができる。例えば、前記選択可能なt1/2は、6、または9、または12、または15、または18、または24時間であり得る。
体重、年齢などの因子に応じて、特定の患者のために任意の適切な用量のナタリズマブを用いることができる。例えば、投与するナタリズマブの用量は、約1から5mgの範囲(1〜4mg、2〜4mgおよび2〜3mgの特定の範囲を伴う)であり得る。静脈内投与すると、ナタリズマブは、典型的に、約10日間の血流中でのtmaxを有する。皮下投与ナタリズマブのtmaxは、より長いと予想されよう。したがって、本明細書に記載するような治療ナタリズマブ組成物で投与すると、そのナタリズマブのtmaxは、皮下注射する場合のナタリズマブまたは他の血管外注射によるナタリズマブのtmaxの、例えば約80%、または50%、または30%、または20%、または10%に短縮される。
様々な実施形態は、経口摂取後の腸壁内への挿入に適合したナタリズマブ組成物であって、挿入されると、その腸壁から血流にナタリズマブを放出して、腸壁に挿入されない経口摂取用量のナタリズマブのt1/2より大きいt1/2を達成する組成物も提供する。例えば、前記腸壁に挿入される用量のt1/2は、前記腸壁に挿入されない用量より100または50または10または5倍大きいことがある。
前記ナタリズマブは、固体形態、例えば、腸壁内で分解するように構成された固体形態組成物であることがあり、該固体形態組成物は、例えば、尖った先端などの組織貫入特徴部を有することがある。前記ナタリズマブ組成物は、少なくとも1つの生分解性材料を含むことがあり、そして/または生分解性ポリマー、例えばPGLA、もしくは糖、例えばマルトースをはじめとする、少なくとも1つの医薬用賦形剤を含むことがある。
前記ナタリズマブ組成物を、嚥下可能なカプセルでの経口送達に適合させることができる。特定の実施形態では、第一の構成および第二の構成を有するメカニズムであって、前記ナタリズマブ組成物を該第一の構成ではカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では該ナタリズマブ組成物を該カプセルから進出させ腸壁に進入させる、メカニズムに作動可能に連結されるように、かかる嚥下可能なカプセルを適合させることができる。かかる作動可能に連結されるメカニズムは、拡張可能な部材、拡張可能なバルーン、バルブ、組織貫入部材、拡張可能なバルーンに連結されたバルブ、または拡張可能なバルーンに連結された組織貫入部材のうちの少なくとも1つを含み得る。
一部の実施形態では、前記治療ナタリズマブ組成物を組織貫入部材の管腔内に送達されるように構成することができ、そして/または前記治療ナタリズマブ組成物を腸壁に進入可能な組織貫入部材として造形することができる。前記組織貫入部材は、腸壁内に完全に収容されるようなサイズであることがあり、そして/または腸壁に貫入するための組織貫入特徴部を備えていることがあり、そして/または腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えていることがある。前記留置特徴部は、例えば返しを含み得る。一部の実施形態において、前記組織貫入部材は、該組織貫入部材の表面に力が加わることで腸壁に進入するように構成され、ならびに場合により、前記組織貫入部材は、腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有し、そして/または前記貫入部材の表面は、拡張により力を加える拡張可能なバルーンに作動するように連結されるように構成され、そして/または前記組織貫入部材は、力の方向が変化すると、力を加えている構造物から外れるように構成される。
本発明によるさらなる態様および実施形態を以下の番号の節に示す。
1.ナタリズマブを含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、ナタリズマブを腸壁から血流に放出して、血管外注射用量のナタリズマブがCmaxを達成する期間より短期間でCmaxを達成する、治療製剤。
2.前記治療製剤から放出されるナタリズマブのtmaxが、血管外注射用量のナタリズマブのtmaxの約80%である、節1に記載の製剤。
3.前記治療製剤から放出されるナタリズマブのtmaxが、血管外注射用量のナタリズマブのtmaxの約50%である、節1に記載の製剤。
4.前記治療製剤から放出されるナタリズマブのtmaxが、血管外注射用量のナタリズマブのtmaxの約30%である、節1に記載の製剤。
5.前記治療製剤から放出されるナタリズマブのtmaxが、血管外注射用量のナタリズマブのtmaxの約10%である、節1に記載の製剤。
6.小腸壁への挿入に適合している、前記いずれかの請求項に記載の製剤。
7.前記血管外注射が、皮下注射または筋肉内注射である、前記いずれかの請求項に記載の製剤。
8.前記製剤の少なくとも一部分が固体形態である、前記いずれかの請求項に記載の製剤。
9.嚥下可能なカプセルで経口送達されるのに適合している、前記いずれかの請求項に記載の製剤。
10.第一の構成および第二の構成を有する送達手段であって、該第一の構成では前記製剤をカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では前記製剤を該カプセルから進出させて腸壁に進入させる送達手段に作動可能に連結されるのに適合している、節9に記載の製剤。
11.前記送達手段が、拡張および非拡張状態を有する少なくとも1つの拡張可能なバルーンを含み、前記第一の構成が非拡張状態であり、前記第二の構成が拡張状態である、節10に記載の製剤。
12.ナタリズマブを血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、前記いずれかの請求項に記載の製剤。
13.前記生分解性材料が、PGLA、糖またはマルトースを含む、前記いずれかの請求項に記載の製剤。
14.少なくとも1つの医薬用賦形剤を含む、前記いずれかの請求項に記載の製剤。
15.前記少なくとも1つの医薬用賦形剤が、結合剤、保存剤または崩壊剤のうちの少なくとも1つを含む、節14に記載の製剤。
16.前記結合剤がPEGを含む、節15に記載の製剤。
17.腸壁に貫入し、挿入されるように構成される組織貫入部材であって、前記製剤を備えている組織貫入部材を含む、前記いずれかの請求項に記載の製剤。
18.前記組織貫入部材が、ナタリズマブを血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、節17に記載の製剤。
19.前記生分解性材料が、マルトースまたはPGLAを含む、節18に記載の製剤。
20.前記組織貫入部材中のナタリズマブの重量パーセントが、約8から12%の間を含む、節17に記載の製剤。
21.前記組織貫入部材が、挿入後に腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えている、節17に記載の製剤。
22.前記留置特徴部が、前記組織貫入部材の返しまたは逆テーパ形状の少なくとも一方を含む、節21に記載の製剤。
23.前記ナタリズマブが、前記組織貫入部材における造形されたセクション内に収容されている、節17に記載の製剤。
24.前記造形されたセクションが、円柱またはペレット形状を有する、節23に記載の製剤。
25.前記組織貫入部材が、該組織貫入部材に力が加わることで腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有する、前記いずれかの請求項に記載の製剤。
26.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより実質的に大きい、前記いずれかの請求項に記載の製剤。
27.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより少なくとも約100倍大きい、節26に記載の製剤。
28.ナタリズマブの長期放出をもたらすように構成される、前記いずれかの請求項に記載の製剤。
29.選択可能なt1/2を生じさせるようなナタリズマブの長期放出をもたらすように構成される、節28に記載の製剤。
30.前記t1/2が、約40日である、節29に記載の製剤。
31.前記製剤中のナタリズマブの用量が、約1から5mgの範囲である、前記いずれかの請求項に記載の製剤。
32.前記製剤中のナタリズマブの用量が、約3mgである、節31に記載の製剤。
33.ナタリズマブを含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、ナタリズマブを腸壁から血流に放出して、腸壁に挿入されない経口摂取ナタリズマブのt1/2より大きいt1/2を達成する、治療製剤。
34.腸壁に挿入される前記ナタリズマブのt1/2が、腸壁に挿入されない経口摂取ナタリズマブのt1/2より少なくとも約10倍大きい、節34に記載の製剤。
ゴナドトロピン放出ホルモン
上で論じたように、本明細書に記載する実施形態は、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)を含む治療組成物を含む。かかる組成物は、GnRH類似体、例えばリュープロレリンを含み得る。かかる組成物は、望ましい薬物動態特性でのGnRHまたはGnRH類似体の送達をもたらす。これに関連して、注目すべき薬物動態測定基準としては、Cmax、投与後の薬物のピーク血漿濃度;tmax、Cmaxに達するまでの時間;およびt1/2、薬物の血漿濃度がCmaxに達した後にそのCmax値の半分に達するために要する時間が挙げられる。これらの測定基準は、当該技術分野において公知の標準的な薬物動態測定技術を用いて測定することができる。1つのアプローチでは、嚥下可能なデバイスの使用または非血管注射のいずれかによる薬物または他の治療剤の投与を開始して投与後まで設定時間間隔(例えば、1分、5分、1/2時間、1時間など)で血漿試料を採取することができる。その後、その特定の薬物に適応させることができる1つもしくは複数の適切な分析法、例えば、GC−質量分析、LC−質量分析、HPLCまたは様々なELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)を用いて、血漿中の薬物の濃度を測定することができる。その後、血漿試料からの測定値を用いて、濃度対時間曲線(本明細書では、濃度プロファイルとも呼ぶ)を生成することができる。この濃度曲線のピークがCmaxに対応し、これが発生する時間がtmaxに対応する。濃度がCmaxに達した後にその最大値(すなわち、Cmax)の半分に達する前記曲線における時間がt1/2に対応し、この値は、薬物の消失半減期としても公知である。Cmaxの判定の開始時間は、非血管注射の場合は注射を行った時間、および嚥下可能なデバイスの実施形態が1つもしくは複数の組織貫入部材(薬物を収容している)を小腸にまたはGI管内の他の位置(例えば、大腸)に進入させる時点に基づき得る。後者の場合、この時間は、外部制御シグナル(例えば、RFシグナル)に応答して組織貫入部材を腸壁内に展開させる嚥下可能なデバイスの遠隔制御実施形態をはじめとする1つもしくは複数の手段、または組織貫入部材が展開されたときに体外で検出可能なRFまたは他のシグナルを送信する嚥下可能なデバイスの実施形態のための1つもしくは複数の手段を用いて決定することができる。例えば超音波または蛍光透視法をはじめとする1つもしくは複数の医療画像診断法などの、小腸内への組織貫入部材展開を検出するための他の手段が、企図される。これらの研究のいずれか1つにおいて、ヒト薬物動態応答をモデル化するために適切な動物モデル、例えば、イヌ、ブタ、ラットなどを使用することができる。GnRHまたはGnRH類似体での処置に適する状態としては、ホルモン応答性癌、例えば、前立腺癌もしくは乳癌、エストロゲン依存性状態、例えば子宮内膜症もしくは子宮類線維腫の処置、思春期早発症の処置、体外受精(IVF)における卵巣刺激の制御、性欲倒錯の処置、または任意の他のGnHR応答性状態の処置が挙げられる。
このように、様々な実施形態は、GnRHまたはGnRH類似体を含む治療組成物(本明細書では製剤とも呼ぶ)を提供する。この組成物は、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、該組成物は、その腸壁から血流にGnRHまたはGnRH類似体を放出して、血管外注射用量のGnRHまたはGnRH類似体より早くCmaxに達する。換言すると、挿入形態の治療剤のほうが、血管外注射される(injected extravaculary)用量のGnRHまたはGnRH類似体より短期間(例えば、より小さいtmax)でCmaxを達成する。これらの結果を達成するために、腸壁内に送達される組成物中のGnRHまたはGnRH類似体の用量と血管外注射によって送達される用量は、同等であり得るが、同等である必要はないことに留意されたし。様々な実施形態において、前記組成物は、血管外注射用量のGnRHまたはGnRH類似体のtmaxの約80%、または50%、または30%、または20%、または10%である(例えば、腸壁、例えば小腸の腸壁から血流へのGnRHまたはGnRH類似体の放出によって)GnRHまたはGnRH類似体のtmaxを達成するように構成される。かかる血管外注射用量の前記治療剤は、例えば、皮下注射または筋肉内注射であり得る。特定の実施形態において、腸壁内への挿入によるGnRHまたはGnRH類似体の送達によって達成されるCmaxは、GnRHまたはGnRH類似体が腸壁に挿入されることなく経口送達されるときに達成されるCmax、例えば、ピル、他の従来の経口形態のGnRHもしくはGnRH類似体または関連化合物によって達成されるCmaxより実質的に大きく、例えば、5、10、20、30、40、50、60、70、80またはさらには100倍大きい。一部の実施形態において、前記GnRHまたはGnRH類似体組成物は、GnRHまたはGnRH類似体の長期放出をもたらすように構成される。また、選択可能なt1/2でのGnRHまたはGnRH類似体の長期放出をもたらすように前記組成物を構成することができる。例えば、前記選択可能なt1/2は、6、または9、または12、または15、または18、または24時間であり得る。
体重、年齢などの因子に応じて、特定の患者のために任意の適切な用量のGnRHまたはGnRH類似体を用いることができる。例えば、投与するGnRH類似体リュープロレリンの用量は、約0.1〜2mgの範囲(0.2〜1mg、0.4〜0.7mgおよび0.4〜0.6mgの特定の範囲を伴う)であり得る。皮下投与すると、リュープロレリンは、典型的に、約3時間の血流中でのtmaxを有する。したがって、本明細書に記載するような治療リュープロレリン組成物で投与すると、そのリュープロレリンのtmaxは、皮下注射する場合のリュープロレリンのtmaxの、例えば約80%、または50%、または30%、または20%、または10%に短縮される。
もう1つの実施形態は、GnRHまたはGnRH類似体を含む治療組成物であって、経口摂取後の腸壁内への挿入に適合しており、挿入されると、その腸壁から血流にGnRHまたはGnRH類似体を放出して、腸壁に挿入されない経口摂取用量のGnRHまたはGnRH類似体のt1/2より大きいt1/2を達成する、組成物を提供する。例えば、前記腸壁に挿入される用量のt1/2は、前記腸壁に挿入されない用量より100または50または10または5倍大きいことがある。
前記GnRHまたはGnRH類似体組成物は、固体形態、例えば、腸壁内で分解するように構成された固体形態組成物であることがあり、該固体形態組成物は、例えば、尖った先端などの組織貫入特徴部を有することがある。前記GnRHまたはGnRH類似体組成物は、少なくとも1つの生分解性材料を含むことがあり、そして/または生分解性ポリマー、例えばPGLA、もしくは糖、例えばマルトースをはじめとする、少なくとも1つの医薬用賦形剤を含むことがある。
前記GnRHまたはGnRH類似体組成物を、嚥下可能なカプセルでの経口送達に適合させることができる。特定の実施形態では、第一の構成および第二の構成を有するメカニズムであって、前記GnRHまたはGnRH類似体組成物を該第一の構成ではカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では該組成物を該カプセルから進出させ腸壁に進入させる、メカニズムに作動可能に連結されるように、かかる嚥下可能なカプセルを適合させることができる。かかる作動可能に連結されるメカニズムは、拡張可能な部材、拡張可能なバルーン、バルブ、組織貫入部材、拡張可能なバルーンに連結されたバルブ、または拡張可能なバルーンに連結された組織貫入部材のうちの少なくとも1つを含み得る。
一部の実施形態では、前記GnRHもしくはGnRH類似体組成物を組織貫入部材の管腔内に送達されるように構成することができ、そして/または前記GnRHもしくはGnRH類似体組成物を腸壁に進入可能な組織貫入部材として造形することができる。前記組織貫入部材は、腸壁内に完全に収容されるようなサイズであることがあり、そして/または腸壁に貫入するための組織貫入特徴部を備えていることがあり、そして/または腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えていることがある。前記留置特徴部は、例えば返しを含み得る。一部の実施形態において、前記組織貫入部材は、該組織貫入部材の表面に力が加わることで腸壁に進入するように構成され、ならびに場合により、前記組織貫入部材は、腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有し、そして/または前記貫入部材の表面は、拡張により力を加える拡張可能なバルーンに作動可能に連結されるように構成され、そして/または前記組織貫入部材は、力の方向が変化すると、力を加えている構造物から外れるように構成される。
本発明によるさらなる態様および実施形態を以下の番号の節に示す。
1.GnRHまたはGnRH類似体を含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、GnRHまたはGnRH類似体を腸壁から血流に放出して、血管外注射用量のGnRHまたはGnRH類似体がCmaxを達成する期間より短期間でCmaxを達成する、治療製剤。
2.前記治療製剤から放出されるGnRHまたはGnRH類似体のtmaxが、血管外注射用量のGnRHまたはGnRH類似体のtmaxの約80%である、節1に記載の製剤。
3.前記治療製剤から放出されるGnRHまたはGnRH類似体のtmaxが、血管外注射用量のGnRHまたはGnRH類似体のtmaxの約50%である、節1に記載の製剤。
4.前記治療製剤から放出されるGnRHまたはGnRH類似体のtmaxが、血管外注射用量のGnRHまたはGnRH類似体のtmaxの約30%である、節1に記載の製剤。
5.前記治療製剤から放出されるGnRHまたはGnRH類似体のtmaxが、血管外注射用量のGnRHまたはGnRH類似体のtmaxの約10%である、節1に記載の製剤。
6.小腸壁への挿入に適合している、前記いずれかの節に記載の製剤。
7.前記血管外注射が、皮下注射または筋肉内注射である、前記いずれかの節に記載の製剤。
8.前記製剤の少なくとも一部分が固体形態である、前記いずれかの節に記載の製剤。
9.嚥下可能なカプセルで経口送達されるのに適合している、節1に記載の製剤。
10.第一の構成および第二の構成を有する送達手段であって、該第一の構成では前記製剤をカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では前記製剤を該カプセルから進出させて腸壁に進入させる、送達手段に作動可能に連結されるのに適合している、節9に記載の製剤。
11.前記送達手段が、拡張および非拡張状態を有する少なくとも1つの拡張可能なバルーンを含み、前記第一の構成が非拡張状態であり、前記第二の構成が拡張状態である、節11に記載の製剤。
12.GnRHまたはGnRH類似体を血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
13.前記生分解性材料が、PGLA、糖またはマルトースを含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
14.少なくとも1つの医薬用賦形剤を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
15.前記少なくとも1つの医薬用賦形剤が、結合剤、保存剤または崩壊剤のうちの少なくとも1つを含む、節14に記載の製剤。
16.前記結合剤がPEGを含む、節15に記載の製剤。
17.腸壁に貫入し、挿入されるように構成される組織貫入部材であって、前記製剤を備えている組織貫入部材を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
18.前記組織貫入部材が、GnRHまたはGnRH類似体を血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、節17に記載の製剤。
19.前記生分解性材料が、マルトースまたはPGLAを含む、節18に記載の製剤。
20.前記組織貫入部材中のGnRHまたはGnRH類似体の重量パーセントが、約2から15%の間を含む、節17に記載の製剤。
21.前記組織貫入部材が、挿入後に腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えている、節17に記載の製剤。
22.前記留置特徴部が、前記組織貫入部材の返しまたは逆テーパ形状の少なくとも一方を含む、節21に記載の製剤。
23.前記GnRHまたはGnRH類似体が、前記組織貫入部材における造形されたセクション内に収容されている、節17に記載の製剤。
24.前記造形されたセクションが、円柱またはペレット形状を有する、節23に記載の製剤。
25.前記組織貫入部材が、該組織貫入部材に力が加わることで腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有する、前記いずれかの節に記載の製剤。
26.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより実質的に大きい、前記いずれかの節に記載の製剤。
27.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより少なくとも約10倍大きい、節26に記載の製剤。
28.GnRHまたはGnRH類似体の長期放出をもたらすように構成される、前記いずれかの節に記載の製剤。
29.選択可能なt1/2を生じさせるようなGnRHまたはGnRH類似体の長期放出をもたらすように構成される、節28に記載の製剤。
30.前記t1/2が、約12時間である、節29に記載の製剤。
31.前記製剤中のGnRHまたはGnRH類似体の用量が、約0.3から1.5mgの範囲である、前記いずれかの節に記載の製剤。
32.前記GnRH類似体が、リュープロレリンである、前記いずれかの節に記載の製剤。
33.前記製剤中のリュープロレリンの用量が、約0.1から2mgの範囲である、節32に記載の製剤。
34.GnRHまたはGnRH類似体を含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、GnRHまたはGnRH類似体を腸壁から血流に放出して、腸壁に挿入されない経口摂取GnRHまたはGnRH類似体のt1/2より大きいt1/2を達成する、治療製剤。
35.腸壁に挿入される前記GnRHまたはGnRH類似体のt1/2が、腸壁に挿入されない経口摂取GnRHまたはGnRH類似体のt1/2より少なくとも約10倍大きい、節34に記載の製剤。
バソプレッシンまたはバソプレッシン類似体
かくして、様々な実施形態は、バソプレッシンまたはバソプレッシン類似体を含む治療組成物(本明細書では製剤とも呼ぶ)を提供する。この組成物は、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、該組成物は、その腸壁から血流にバソプレッシンまたはバソプレッシン類似体を放出して、血管外注射用量のバソプレッシンまたはバソプレッシン類似体より早くCmaxに達する。換言すると、挿入形態のバソプレッシンまたはバソプレッシン類似体のほうが、血管外注射される(injected extravaculary)用量のバソプレッシンまたはバソプレッシン類似体より短期間(例えば、より小さいtmax)でCmaxを達成する。これらの結果を達成するために、腸壁内に送達される組成物中のバソプレッシンまたはバソプレッシン類似体の用量と血管外注射によって送達される用量は、同等であり得るが、同等である必要はないことに留意されたし。様々な実施形態において、前記組成物は、血管外注射用量のバソプレッシンまたはバソプレッシン類似体のtmaxの約80%、または50%、または30%、または20%、または10%である(例えば、腸壁、例えば小腸の腸壁から血流へのバソプレッシンまたはバソプレッシン類似体の放出によって)バソプレッシンまたはバソプレッシン類似体のtmaxを達成するように構成される。かかる血管外注射用量のバソプレッシンまたはバソプレッシン類似体は、例えば、皮下注射または筋肉内注射であり得る。特定の実施形態において、腸壁内への挿入によるバソプレッシンまたはバソプレッシン類似体の送達によって達成されるCmaxは、バソプレッシンまたはバソプレッシン類似体が腸壁に挿入されることなく経口送達されるときに達成されるCmax、例えば、ピル、他の従来の経口形態のバソプレッシンもしくはバソプレッシン類似体または関連化合物によって達成されるCmaxより実質的に大きく、例えば、5、10、20、30、40、50、60、70、80またはさらには100倍大きい。一部の実施形態において、前記バソプレッシンまたはバソプレッシン類似体組成物は、バソプレッシンまたはバソプレッシン類似体の長期放出をもたらすように構成される。また、選択可能なt1/2での前記治療剤の長期放出をもたらすように前記組成物を構成することができる。例えば、前記選択可能なt1/2は、6、または9、または12、または15、または18、または24時間であり得る。
体重、年齢などの因子に応じて、特定の患者のために任意の適切な用量のバソプレッシンまたはバソプレッシン類似体を用いることができる。例えば、投与するバソプレッシンの用量は、約0.1〜10単位の範囲(0.2〜2単位、0.4〜0.7単位および0.4〜0.6単位の特定の範囲を伴う)であり得る。バソプレッシンは、典型的に、約2から8時間の血流中でのtmaxを有する。したがって、本明細書に記載するような治療バソプレッシン組成物で投与すると、そのバソプレッシンのtmaxは、皮下注射する場合のバソプレッシンのtmaxの、例えば約80%、または50%、または30%、または20%、または10%に短縮される。
様々な実施形態は、経口摂取後の腸壁内への挿入に適合したバソプレッシンまたはバソプレッシン類似体組成物であって、挿入されると、その腸壁から血流にバソプレッシンまたはバソプレッシン類似体を放出して、腸壁に挿入されない経口摂取用量のバソプレッシンまたはバソプレッシン類似体のt1/2より大きいt1/2を達成する組成物も提供する。例えば、前記腸壁に挿入される用量のt1/2は、前記腸壁に挿入されない用量より100または50または10または5倍大きいことがある。
前記バソプレッシンまたはバソプレッシン類似体組成物は、固体形態、例えば、腸壁内で分解するように構成された固体形態組成物であることがあり、該固体形態組成物は、例えば、尖った先端などの組織貫入特徴部を有することがある。前記バソプレッシンまたはバソプレッシン類似体組成物は、少なくとも1つの生分解性材料を含むことがあり、そして/または生分解性ポリマー、例えばPGLA、もしくは糖、例えばマルトースをはじめとする、少なくとも1つの医薬用賦形剤を含むことがある。
前記バソプレッシンまたはバソプレッシン類似体組成物を、嚥下可能なカプセルでの経口送達に適合させることができる。特定の実施形態では、第一の構成および第二の構成を有するメカニズムであって、前記バソプレッシンまたはバソプレッシン類似体組成物を該第一の構成ではカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では該組成物を該カプセルから進出させ腸壁に進入させる、メカニズムに作動可能に連結されるように、かかる嚥下可能なカプセルを適合させることができる。かかる作動可能に連結されるメカニズムは、拡張可能な部材、拡張可能なバルーン、バルブ、組織貫入部材、拡張可能なバルーンに連結されたバルブ、または拡張可能なバルーンに連結された組織貫入部材のうちの少なくとも1つを含み得る。
一部の実施形態では、前記バソプレッシンもしくはバソプレッシン類似体組成物を組織貫入部材の管腔内に送達されるように構成することができ、そして/または前記バソプレッシンもしくはバソプレッシン類似体組成物を腸壁に進入可能な組織貫入部材として造形することができる。前記組織貫入部材は、腸壁内に完全に収容されるようなサイズであることがあり、そして/または腸壁に貫入するための組織貫入特徴部を備えていることがあり、そして/または腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えていることがある。前記留置特徴部は、例えば返しを含み得る。一部の実施形態において、前記組織貫入部材は、該組織貫入部材の表面に力が加わることで腸壁に進入するように構成され、ならびに場合により、前記組織貫入部材は、腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有し、そして/または前記貫入部材の表面は、拡張により力を加える拡張可能なバルーンに作動するように連結されるように構成され、そして/または前記組織貫入部材は、力の方向が変化すると、力を加えている構造物から外れるように構成される。
本発明によるさらなる態様および実施形態を以下の番号の節に示す。
1.バソプレッシンまたはバソプレッシン類似体を含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、バソプレッシンまたはバソプレッシン類似体を腸壁から血流に放出して、血管外注射用量のバソプレッシンまたはバソプレッシン類似体がCmaxを達成する期間より短期間でCmaxを達成する、治療製剤。
2.前記治療製剤から放出されるバソプレッシンまたはバソプレッシン類似体のtmaxが、血管外注射用量のバソプレッシンまたはバソプレッシン類似体のtmaxの約80%である、節1に記載の製剤。
3.前記治療製剤から放出されるバソプレッシンまたはバソプレッシン類似体のtmaxが、血管外注射用量のバソプレッシンまたはバソプレッシン類似体のtmaxの約50%である、節1に記載の製剤。
4.前記治療製剤から放出されるバソプレッシンまたはバソプレッシン類似体のtmaxが、血管外注射用量のバソプレッシンまたはバソプレッシン類似体のtmaxの約30%である、節1に記載の製剤。
5.前記治療製剤から放出されるバソプレッシンまたはバソプレッシン類似体のtmaxが、血管外注射用量のバソプレッシンまたはバソプレッシン類似体のtmaxの約10%である、節1に記載の製剤。
6.小腸壁への挿入に適合している、前記いずれかの節に記載の製剤。
7.前記血管外注射が、皮下注射または筋肉内注射である、前記いずれかの節に記載の製剤。
8.前記製剤の少なくとも一部分が固体形態である、前記いずれかの節に記載の製剤。
9.嚥下可能なカプセルで経口送達されるのに適合している、前記いずれかの節に記載の製剤。
10.第一の構成および第二の構成を有する送達手段であって、該第一の構成では前記製剤をカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では前記製剤を該カプセルから進出させて腸壁に進入させる、送達手段に作動可能に連結されるのに適合している、節9に記載の製剤。
11.前記送達手段が、拡張および非拡張状態を有する少なくとも1つの拡張可能なバルーンを含み、前記第一の構成が非拡張状態であり、前記第二の構成が拡張状態である、節10に記載の製剤。
12.バソプレッシンまたはバソプレッシン類似体を血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
13.前記生分解性材料が、PGLA、糖またはマルトースを含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
14.少なくとも1つの医薬用賦形剤を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
15.前記少なくとも1つの医薬用賦形剤が、結合剤、保存剤または崩壊剤のうちの少なくとも1つを含む、節14に記載の製剤。
16.前記結合剤がPEGを含む、節15に記載の製剤。
17.腸壁に貫入し、挿入されるように構成される組織貫入部材であって、前記製剤を備えている組織貫入部材を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
18.前記組織貫入部材が、バソプレッシンまたはバソプレッシン類似体を血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、節17に記載の製剤。
19.前記生分解性材料が、マルトースまたはPGLAを含む、節18に記載の製剤。
20.前記組織貫入部材中のバソプレッシンまたはバソプレッシン類似体の重量パーセントが、約0.1から1%の間を含む、節17に記載の製剤。
21.前記組織貫入部材が、挿入後に腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えている、節17に記載の製剤。
22.前記留置特徴部が、前記組織貫入部材の返しまたは逆テーパ形状の少なくとも一方を含む、節21に記載の製剤。
23.前記バソプレッシンまたはバソプレッシン類似体が、前記組織貫入部材における造形されたセクション内に収容されている、節17に記載の製剤。
24.前記造形されたセクションが、円柱またはペレット形状を有する、節23に記載の製剤。
25.前記組織貫入部材が、該組織貫入部材に力が加わることで腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有する、前記いずれかの節に記載の製剤。
26.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより実質的に大きい、前記いずれかの節に記載の製剤。
27.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより少なくとも約10倍大きい、節26に記載の製剤。
28.バソプレッシンまたはバソプレッシン類似体の長期放出をもたらすように構成される、前記いずれかの節に記載の製剤。
29.選択可能なt1/2を生じさせるようなバソプレッシンまたはバソプレッシン類似体の長期放出をもたらすように構成される、節28に記載の製剤。
30.前記t1/2が、約10時間である、節29に記載の製剤。
31.前記製剤中のバソプレッシンまたはバソプレッシン類似体の用量が、バソプレッシンまたはバソプレッシン類似体約2から10単位の範囲である、前記いずれかの節に記載の製剤。
32.バソプレッシンまたはバソプレッシン類似体を含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、バソプレッシンまたはバソプレッシン類似体を腸壁から血流に放出して、腸壁に挿入されない経口摂取バソプレッシンまたはバソプレッシン類似体のt1/2より大きいt1/2を達成する、治療製剤。
33.腸壁に挿入される前記バソプレッシンまたはバソプレッシン類似体のt1/2が、腸壁に挿入されない経口摂取バソプレッシンまたはバソプレッシン類似体のt1/2より少なくとも約10倍大きい、節32に記載の製剤。
副甲状腺ホルモン(PTH)
上で論じたように、本明細書に記載する実施形態は、副甲状腺ホルモン(PTH)を含む治療組成物を含む。かかる組成物は、PTH類似体、例えばテリパラチドを含み得る。PTHまたはPTH類似体での処置に適する状態としては、副甲状腺機能低下症、骨粗鬆症、または任意の他のPTH応答性状態の処置が挙げられる。特に、骨粗鬆症は、PTH類似体テリパラチドに対して応答性である。かかる組成物は、望ましい薬物動態特性でのPTHまたはPTH類似体の送達をもたらす。これに関連して、注目すべき薬物動態測定基準としては、Cmax、投与後の薬物のピーク血漿濃度;tmax、Cmaxに達するまでの時間;およびt1/2、薬物の血漿濃度がCmaxに達した後にそのCmax値の半分に達するために要する時間が挙げられる。これらの測定基準は、当該技術分野において公知の標準的な薬物動態測定技術を用いて測定することができる。1つのアプローチでは、嚥下可能なデバイスの使用または非血管注射のいずれかによる薬物または他の治療剤の投与を開始して投与後まで設定時間間隔(例えば、1分、5分、1/2時間、1時間など)で血漿試料を採取することができる。その後、その特定の薬物に適応させることができる1つもしくは複数の適切な分析法、例えば、GC−質量分析、LC−質量分析、HPLCまたは様々なELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)を用いて、血漿中の薬物の濃度を測定することができる。その後、血漿試料からの測定値を用いて、濃度対時間曲線(本明細書では、濃度プロファイルとも呼ぶ)を生成することができる。この濃度曲線のピークがCmaxに対応し、これが発生する時間がtmaxに対応する。濃度がCmaxに達した後にその最大値(すなわち、Cmax)の半分に達する前記曲線における時間がt1/2に対応し、この値は、薬物の消失半減期としても公知である。Cmaxの判定の開始時間は、非血管注射の場合は注射を行った時間、および嚥下可能なデバイスの実施形態が1つもしくは複数の組織貫入部材(薬物を収容している)を小腸にまたはGI管内の他の位置(例えば、大腸)に進入させる時点に基づき得る。後者の場合、この時間は、外部制御シグナル(例えば、RFシグナル)に応答して組織貫入部材を腸壁内に展開させる嚥下可能なデバイスの遠隔制御実施形態をはじめとする1つもしくは複数の手段、または組織貫入部材が展開されたときに体外で検出可能なRFまたは他のシグナルを送信する嚥下可能なデバイスの実施形態のための1つもしくは複数の手段を用いて決定することができる。例えば超音波または蛍光透視法をはじめとする1つもしくは複数の医療画像診断法などの、小腸内への組織貫入部材展開を検出するための他の手段が、企図される。これらの研究のいずれか1つにおいて、ヒト薬物動態応答をモデル化するために適切な動物モデル、例えば、イヌ、ブタ、ラットなどを使用することができる。
体重、年齢などの因子に応じて、特定の患者のために任意の適切な用量のPTHまたはPTH類似体を用いることができる。例えば、投与するPTH類似体テリパラチドの用量は、約0.1〜20μgの範囲(1〜5μg、2〜4μgおよび2〜3μgの特定の範囲を伴う)であり得る。皮下投与すると、テリパラチドは、典型的に、約30から60分の血流中でのtmaxを有する。したがって、本明細書に記載するような治療テリパラチド組成物で投与すると、そのテリパラチドのtmaxは、皮下注射する場合のテリパラチドのtmaxの、例えば約80%、または50%、または30%、または20%、または10%に短縮される。経口投与すると、20μgのテリパラチドを含む治療組成物は、約201から1399pg/mLのCmax、6〜24分の範囲のtmax、および11〜89分の範囲のt1/2をもたらすと予想される。
かくして、様々な実施形態は、PTHまたはPTH類似体を含む治療組成物(本明細書では製剤とも呼ぶ)を提供する。この組成物は、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、該組成物は、その腸壁から血流にPTHまたはPTH類似体を放出して、血管外注射用量のPTHまたはPTH類似体より早くCmaxに達する。換言すると、挿入形態のPTHまたはPTH類似体のほうが、血管外注射される(injected extravaculary)用量のPTHまたはPTH類似体より短期間(例えば、より小さいtmax)でCmaxを達成する。これらの結果を達成するために、腸壁内に送達される組成物中のPTHまたはPTH類似体の用量と血管外注射によって送達される用量は、同等であり得るが、同等である必要はないことに留意されたし。様々な実施形態において、前記組成物は、血管外注射用量のPTHまたはPTH類似体のtmaxの約80%、または50%、または30%、または20%、または10%である(例えば、腸壁、例えば小腸の腸壁から血流へのPTHまたはPTH類似体の放出によって)PTHまたはPTH類似体のtmaxを達成するように構成される。かかる血管外注射用量のPTHまたはPTH類似体は、例えば、皮下注射または筋肉内注射であり得る。特定の実施形態において、腸壁内への挿入によるPTHまたはPTH類似体の送達によって達成されるCmaxは、PTHまたはPTH類似体が腸壁に挿入されることなく経口送達されるときに達成されるCmax、例えば、ピル、他の従来の経口形態のPTHもしくはPTH類似体または関連化合物によって達成されるCmaxより実質的に大きく、例えば、5、10、20、30、40、50、60、70、80またはさらには100倍大きい。一部の実施形態において、前記PTHまたはPTH類似体組成物は、PTHまたはPTH類似体の長期放出をもたらすように構成される。また、選択可能なt1/2でのPTHまたはPTH類似体の長期放出をもたらすように前記組成物を構成することができる。例えば、前記選択可能なt1/2は、6、または9、または12、または15、または18、または24時間であり得る。
様々な実施形態は、経口摂取後の腸壁内への挿入に適合したPTHまたはPTH類似体組成物であって、挿入されると、その腸壁から血流にPTHまたはPTH類似体を放出して、腸壁に挿入されない経口摂取用量のPTHまたはPTH類似体のt1/2より大きいt1/2を達成する、組成物も提供する。例えば、前記腸壁に挿入される用量のt1/2は、前記腸壁に挿入されない用量より100または50または10または5倍大きいことがある。
前記PTHまたはPTH類似体は、固体形態、例えば、腸壁内で分解するように構成された固体形態組成物であることがあり、該固体形態組成物は、例えば、尖った先端などの組織貫入特徴部を有することがある。前記PTHまたはPTH類似体組成物は、少なくとも1つの生分解性材料を含むことがあり、そして/または生分解性ポリマー、例えばPGLA、もしくは糖、例えばマルトースをはじめとする、少なくとも1つの医薬用賦形剤を含むことがある。
前記治療PTHまたはPTH類似体組成物を、嚥下可能なカプセルでの経口送達に適合させることができる。特定の実施形態では、第一の構成および第二の構成を有するメカニズムであって、前記治療PTHまたはPTH類似体組成物を該第一の構成ではカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では該組成物を該カプセルから進出させ腸壁に進入させる、メカニズムに作動可能に連結されるように、かかる嚥下可能なカプセルを適合させることができる。かかる作動可能に連結されるメカニズムは、拡張可能な部材、拡張可能なバルーン、バルブ、組織貫入部材、拡張可能なバルーンに連結されたバルブ、または拡張可能なバルーンに連結された組織貫入部材のうちの少なくとも1つを含み得る。
一部の実施形態では、前記治療PTHもしくはPTH類似体組成物を組織貫入部材の管腔内に送達されるように構成することができ、そして/または前記治療PTHもしくはPTH類似体組成物を腸壁に進入可能な組織貫入部材として造形することができる。前記組織貫入部材は、腸壁内に完全に収容されるようなサイズであることがあり、そして/または腸壁に貫入するための組織貫入特徴部を備えていることがあり、そして/または腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えていることがある。前記留置特徴部は、例えば返しを含み得る。一部の実施形態において、前記組織貫入部材は、該組織貫入部材の表面に力が加わることで腸壁に進入するように構成され、ならびに場合により、前記組織貫入部材は、腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有し、そして/または前記貫入部材の表面は、拡張により力を加える拡張可能なバルーンに作動するように連結されるように構成され、そして/または前記組織貫入部材は、力の方向が変化すると、力を加えている構造物から外れるように構成される。
本発明によるさらなる態様および実施形態を以下の番号の節に示す。
1.PTHまたはPTH類似体を含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、PTHまたはPTH類似体を腸壁から血流に放出して、血管外注射用量のPTHまたはPTH類似体がCmaxを達成する期間より短期間でCmaxを達成する、治療製剤。
2.前記製剤から放出されるPTHまたはPTH類似体のtmaxが、血管外注射用量のPTHまたはPTH類似体のtmaxの約80%である、節1に記載の製剤。
3.前記治療製剤から放出されるPTHまたはPTH類似体のtmaxが、血管外注射用量のPTHまたはPTH類似体のtmaxの約50%である、節1に記載の製剤。
4.前記治療製剤から放出されるPTHまたはPTH類似体のtmaxが、血管外注射用量のPTHまたはPTH類似体のtmaxの約30%である、節1に記載の製剤。
5.前記治療製剤から放出されるPTHまたはPTH類似体のtmaxが、血管外注射用量のPTHまたはPTH類似体のtmaxの約10%である、節1に記載の製剤。
6.小腸壁への挿入に適合している、前記いずれかの節に記載の製剤。
7.前記血管外注射が、皮下注射または筋肉内注射である、前記いずれかの節に記載の製剤。
8.前記製剤の少なくとも一部分が固体形態である、前記いずれかの節に記載の製剤。
9.嚥下可能なカプセルで経口送達されるのに適合している、前記いずれかの節に記載の製剤。
10.第一の構成および第二の構成を有する送達手段であって、該第一の構成では前記製剤をカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では前記製剤を該カプセルから進出させて腸壁に進入させる送達手段に作動可能に連結されるのに適合している、節9に記載の製剤。
11.前記送達手段が、拡張および非拡張状態を有する少なくとも1つの拡張可能なバルーンを含み、前記第一の構成が非拡張状態であり、前記第二の構成が拡張状態である、節10に記載の製剤。
12.PTHまたはPTH類似体を血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
13.前記生分解性材料が、PGLA、糖またはマルトースを含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
14.少なくとも1つの医薬用賦形剤を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
15.前記少なくとも1つの医薬用賦形剤が、結合剤、保存剤または崩壊剤のうちの少なくとも1つを含む、節14に記載の製剤。
16.前記結合剤がPEGを含む、節15に記載の製剤。
17.腸壁に貫入し、挿入されるように構成される組織貫入部材であって、前記製剤を備えている組織貫入部材を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
18.前記組織貫入部材が、PTHまたはPTH類似体を血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、節17に記載の製剤。
19.前記生分解性材料が、マルトースまたはPGLAを含む、節18に記載の製剤。
20.前記組織貫入部材中のPTHまたはPTH類似体の重量パーセントが、約1から2%の間を含む、節17に記載の製剤。
21.前記組織貫入部材が、挿入後に腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えている、節17に記載の製剤。
22.前記留置特徴部が、前記組織貫入部材の返しまたは逆テーパ形状の少なくとも一方を含む、節21に記載の製剤。
23.前記PTHまたはPTH類似体が、前記組織貫入部材における造形されたセクション内に収容されている、節21に記載の製剤。
24.前記造形されたセクションが、円柱またはペレット形状を有する、節23に記載の製剤。
25.前記組織貫入部材が、該組織貫入部材に力が加わることで腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有する、前記いずれかの節に記載の製剤。
26.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより実質的に大きい、前記いずれかの節に記載の製剤。
27.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより少なくとも約10倍大きい、節26に記載の製剤。
28.PTHまたはPTH類似体の長期放出をもたらすように構成される、前記いずれかの節に記載の製剤。
29.選択可能なt1/2を生じさせるようなPTHまたはPTH類似体の長期放出をもたらすように構成される、節28に記載の製剤。
30.前記t1/2が、約12時間である、節29に記載の製剤。
31.前記製剤中のPTHまたはPTH類似体の用量が、約10から30μgの範囲である、前記いずれかの節に記載の製剤。
32.前記PTH類似体が、テリパラチドである、前記いずれかの節に記載の製剤。
33.前記製剤中のテリパラチドの用量が、約0.1から10μgの範囲である、節32に記載の製剤。
34.PTHまたはPTH類似体を含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、PTHまたはPTH類似体を腸壁から血流に放出して、腸壁に挿入されない経口摂取PTHまたはPTH類似体のt1/2より大きいt1/2を達成する、治療製剤。
35.腸壁に挿入される前記PTHまたはPTH類似体のt1/2が、腸壁に挿入されない経口摂取PTHまたはPTH類似体のt1/2より少なくとも約10倍大きい、節34に記載の製剤。
インターフェロン
上で論じたように、本明細書に記載する実施形態は、インターフェロンを含む治療組成物を含む。かかる組成物は、望ましい薬物動態特性でのインターフェロンの送達をもたらす。これに関連して、注目すべき薬物動態測定基準としては、Cmax、投与後の薬物のピーク血漿濃度;tmax、Cmaxに達するまでの時間;およびt1/2、薬物の濃度がその元の値の半分に達するために要する時間が挙げられる。各々が特定の用途を有する多数のインターフェロンが記載されており、これらのインターフェロンのいずれも、本明細書に記載する治療組成物と共に使用することができる。これらのインターフェロンとしては、例えば、インターフェロンアルファ−2a、インターフェロンアルファ−2b、ヒト白血球インターフェロン−アルファ、インターフェロンベータ−1a、インターフェロンベータ−1b、PEG化インターフェロンアルファ−2a、およびPEG化インターフェロンアルファ−2Bが挙げられる。インターフェロンベータ−1aおよびインターフェロンベータ−1bは、多発性硬化症の処置および管理に用いられる。ヘアリーセル白血病、慢性骨髄性白血病、結節性リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫および再発黒色腫をはじめとする、非常に多数の癌をインターフェロン療法で処置することができる。インターフェロンアルファを使用してB型肝炎およびC型肝炎を処置することができ、本明細書に記載する治療組成物によって投与されるインターフェロンは、該薬物が肝循環に直接行き、その結果、該薬物への肝臓のより高度な曝露が生ずるので、より良い効力を有する。本明細書に記載する治療組成物によって投与されるインターフェロンは、皮下注射によって送達されたときより少なくとも2倍高い肝曝露をもたらす。これに関連して、注目すべき薬物動態測定基準としては、Cmax、投与後の薬物のピーク血漿濃度;tmax、Cmaxに達するまでの時間;およびt1/2、薬物の血漿濃度がCmaxに達した後にそのCmax値の半分に達するために要する時間が挙げられる。これらの測定基準は、当該技術分野において公知の標準的な薬物動態測定技術を用いて測定することができる。1つのアプローチでは、嚥下可能なデバイスの使用または非血管注射のいずれかによる薬物または他の治療剤の投与を開始して投与後まで設定時間間隔(例えば、1分、5分、1/2時間、1時間など)で血漿試料を採取することができる。その後、その特定の薬物に適応させることができる1つもしくは複数の適切な分析法、例えば、GC−質量分析、LC−質量分析、HPLCまたは様々なELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)を用いて、血漿中の薬物の濃度を測定することができる。その後、血漿試料からの測定値を用いて、濃度対時間曲線(本明細書では、濃度プロファイルとも呼ぶ)を生成することができる。この濃度曲線のピークがCmaxに対応し、これが発生する時間がtmaxに対応する。濃度がCmaxに達した後にその最大値(すなわち、Cmax)の半分に達する前記曲線における時間がt1/2に対応し、この値は、薬物の消失半減期としても公知である。Cmaxの判定の開始時間は、非血管注射の場合は注射を行った時間、および嚥下可能なデバイスの実施形態が1つもしくは複数の組織貫入部材(薬物を収容している)を小腸にまたはGI管内の他の位置(例えば、大腸)に進入させる時点に基づき得る。後者の場合、この時間は、外部制御シグナル(例えば、RFシグナル)に応答して組織貫入部材を腸壁内に展開させる嚥下可能なデバイスの遠隔制御実施形態をはじめとする1つもしくは複数の手段、または組織貫入部材が展開されたときに体外で検出可能なRFまたは他のシグナルを送信する嚥下可能なデバイスの実施形態のための1つもしくは複数の手段を用いて決定することができる。例えば超音波または蛍光透視法をはじめとする1つもしくは複数の医療画像診断法などの、小腸内への組織貫入部材展開を検出するための他の手段が、企図される。これらの研究のいずれか1つにおいて、ヒト薬物動態応答をモデル化するために適切な動物モデル、例えば、イヌ、ブタ、ラットなどを使用することができる。
このように、様々な実施形態は、インターフェロンを含む治療組成物(本明細書では製剤とも呼ぶ)を提供する。この組成物は、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、該組成物は、その腸壁から血流にインターフェロンを放出して、血管外注射用量のインターフェロンより早くCmaxに達する。換言すると、挿入形態のインターフェロンのほうが、血管外注射される(injected extravaculary)用量のインターフェロンより短期間(例えば、より小さいtmax)でCmaxを達成する。これらの結果を達成するために、腸壁内に送達される組成物中のインターフェロンの用量と血管外注射によって送達される用量は、同等であり得るが、同等である必要はないことに留意されたし。様々な実施形態において、前記組成物は、血管外注射用量のインターフェロンのtmaxの約80%、または50%、または30%、または20%、または10%である(例えば、腸壁、例えば小腸の腸壁から血流へのインターフェロンの放出によって)インターフェロンのtmaxを達成するように構成される。かかる血管外注射用量のインターフェロン剤は、例えば、皮下注射または筋肉内注射であり得る。特定の実施形態において、腸壁内への挿入によるインターフェロンの送達によって達成されるCmaxは、インターフェロンが腸壁に挿入されることなく経口送達されるときに達成されるCmax、例えば、ピル、他の従来の経口形態のインターフェロンまたは関連化合物によって達成されるCmaxより実質的に大きく、例えば、5、10、20、30、40、50、60、70、80またはさらには100倍大きい。一部の実施形態において、インターフェロン組成物は、インターフェロンの長期放出をもたらすように構成される。また、選択可能なt1/2でのインターフェロンの長期放出をもたらすように前記組成物を構成することができる。例えば、前記選択可能なt1/2は、6、または9、または12、または15、または18、または24時間であり得る。
体重、年齢などの因子に応じて、特定の患者のために任意の適切な用量のインターフェロンを用いることができる。例えば、投与するインターフェロンアルファ−2bの用量は、約0.5x106から5x106単位の範囲(0.5〜3百万単位、1〜3百万単位および2〜3百万単位の特定の範囲を伴う)であり得る。皮下投与すると、インターフェロンアルファ−2bは、典型的に、約6から8時間の血流中でのtmaxを有する。したがって、本明細書に記載するような治療インターフェロン組成物で投与すると、そのインターフェロンのtmaxは、皮下注射する場合のインターフェロンのtmaxの、例えば約80%、または50%、または30%、または20%、または10%に短縮される。
もう1つの実施形態は、インターフェロンを含む治療組成物であって、経口摂取後の腸壁内への挿入に適合しており、挿入されると、その腸壁から血流にインターフェロンを放出して、腸壁に挿入されない経口摂取用量のインターフェロンのt1/2より大きいt1/2を達成する組成物を提供する。例えば、前記腸壁に挿入される用量のt1/2は、前記腸壁に挿入されない用量より100または50または10または5倍大きいことがある。
前記治療剤は、固体形態、例えば、腸壁内で分解するように構成された固体形態組成物であることがあり、該固体形態組成物は、例えば、尖った先端などの組織貫入特徴部を有することがある。前記治療剤組成物は、少なくとも1つの生分解性材料を含むことがあり、そして/または生分解性ポリマー、例えばPGLA、もしくは糖、例えばマルトースをはじめとする、少なくとも1つの医薬用賦形剤を含むことがある。
前記治療インターフェロン組成物は、固体形態、例えば、腸壁内で分解するように構成された固体形態組成物であることがあり、該固体形態組成物は、例えば、尖った先端などの組織貫入特徴部を有することがある。前記治療インターフェロン組成物は、少なくとも1つの生分解性材料を含むことがあり、そして/または生分解性ポリマー、例えばPGLA、もしくは糖、例えばマルトースをはじめとする、少なくとも1つの医薬用賦形剤を含むことがある。
前記インターフェロン組成物を、嚥下可能なカプセルでの経口送達に適合させることができる。特定の実施形態では、第一の構成および第二の構成を有するメカニズムであって、前記インターフェロン組成物を該第一の構成ではカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では該インターフェロン組成物を該カプセルから進出させ腸壁に進入させる、メカニズムに作動可能に連結されるように、かかる嚥下可能なカプセルを適合させることができる。かかる作動可能に連結されるメカニズムは、拡張可能な部材、拡張可能なバルーン、バルブ、組織貫入部材、拡張可能なバルーンに連結されたバルブ、または拡張可能なバルーンに連結された組織貫入部材のうちの少なくとも1つを含み得る。
一部の実施形態では、前記インターフェロン組成物を組織貫入部材の管腔内に送達されるように構成することができ、そして/または前記インターフェロン組成物を腸壁に進入可能な組織貫入部材として造形することができる。前記組織貫入部材は、腸壁内に完全に収容されるようなサイズであることがあり、そして/または腸壁に貫入するための組織貫入特徴部を備えていることがあり、そして/または腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えていることがある。前記留置特徴部は、例えば返しを含み得る。一部の実施形態において、前記組織貫入部材は、該組織貫入部材の表面に力が加わることで腸壁に進入するように構成され、ならびに場合により、前記組織貫入部材は、腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有し、そして/または前記貫入部材の表面は、拡張により力を加える拡張可能なバルーンに作動するように連結されるように構成され、そして/または前記組織貫入部材は、力の方向が変化すると、力を加えている構造物から外れるように構成される。
本発明によるさらなる態様および実施形態を以下の番号の節に示す。
1.インターフェロンを含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、インターフェロンを腸壁から血流に放出して、血管外注射用量のインターフェロンがCmaxを達成する期間より短期間でCmaxを達成する、治療製剤。
2.前記製剤から放出されるインターフェロンのtmaxが、血管外注射用量のインターフェロンのtmaxの約80%である、節1に記載の製剤。
3.前記製剤から放出されるインターフェロンのtmaxが、血管外注射用量のインターフェロンのtmaxの約50%である、節1に記載の製剤。
4.前記製剤から放出されるインターフェロンのtmaxが、血管外注射用量のインターフェロンのtmaxの約30%である、節1に記載の製剤。
5.前記製剤から放出されるインターフェロンのtmaxが、血管外注射用量のインターフェロンのtmaxの約10%である、節1に記載の製剤。
6.小腸壁への挿入に適合している、前記いずれかの節に記載の製剤。
7.前記血管外注射が、皮下注射または筋肉内注射である、前記いずれかの節に記載の製剤。
8.前記製剤の少なくとも一部分が固体形態である、前記いずれかの節に記載の製剤。
9.嚥下可能なカプセルで経口送達されるのに適合している、前記いずれかの節に記載の製剤。
10.第一の構成および第二の構成を有する送達手段であって、該第一の構成では前記製剤をカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では前記製剤を該カプセルから進出させて腸壁に進入させる、送達手段に作動可能に連結されるのに適合している、節9に記載の製剤。
11.前記送達手段が、拡張および非拡張状態を有する少なくとも1つの拡張可能なバルーンを含み、前記第一の構成が非拡張状態であり、前記第二の構成が拡張状態である、節10に記載の製剤。
12.インターフェロンを血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
13.前記生分解性材料が、PGLA、糖またはマルトースを含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
14.少なくとも1つの医薬用賦形剤を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
15.前記少なくとも1つの医薬用賦形剤が、結合剤、保存剤または崩壊剤のうちの少なくとも1つを含む、節14に記載の製剤。
16.前記結合剤がPEGを含む、節15に記載の製剤。
17.腸壁に貫入し、挿入されるように構成される組織貫入部材であって、前記製剤を備えている組織貫入部材を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
18.前記組織貫入部材が、インターフェロンを血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、節17に記載の製剤。
19.前記生分解性材料が、マルトースまたはPGLAを含む、節18に記載の製剤。
20.前記組織貫入部材中のインターフェロンの重量パーセントが、約0.1から3%の間を含む、節17に記載の製剤。
21.前記組織貫入部材中のインターフェロンの重量パーセントが、約0.05から0.2%の間を含む、節17に記載の製剤。
22.前記組織貫入部材が、挿入後に腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えている、節17に記載の製剤。
23.前記留置特徴部が、前記組織貫入部材の返しまたは逆テーパ形状の少なくとも一方を含む、節22に記載の製剤。
24.前記インターフェロンが、前記組織貫入部材における造形されたセクション内に収容されている、節17に記載の製剤。
25.前記造形されたセクションが、円柱またはペレット形状を有する、節24に記載の製剤。
26.前記組織貫入部材が、該組織貫入部材に力が加わることで腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有する、前記いずれかの節に記載の製剤。
27.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより実質的に大きい、前記いずれかの節に記載の製剤。
28.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより少なくとも約100倍大きい、節27に記載の製剤。
29.インターフェロンの長期放出をもたらすように構成される、前記いずれかの節に記載の製剤。
30.選択可能なt1/2を生じさせるようなインターフェロンの長期放出をもたらすように構成される、節29に記載の製剤。
31.前記t1/2が、約12時間である、節30に記載の製剤。
32.前記製剤中のインターフェロンの用量が、インターフェロン約0.03mgから25mgの範囲である、前記いずれかの節に記載の製剤。
33.前記製剤中のインターフェロンの用量が、インターフェロン約6μgから20μgの範囲である、前記いずれかの節に記載の製剤。
34.前記インターフェロンが、インターフェロンアルファ−2aである、前記いずれかの節に記載の組成物。
35.前記インターフェロンが、インターフェロンベータ−1aである、前記いずれかの節に記載の組成物。
36.前記インターフェロンが、インターフェロンベータ−1bである、前記いずれかの節に記載の組成物。
37.前記インターフェロンが、PEG化インターフェロンアルファ−2aである、前記いずれかの節に記載の組成物。
38.前記インターフェロンが、PEG化インターフェロンアルファ−2bである、前記いずれかの節に記載の組成物。
39.インターフェロンを含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、インターフェロンを腸壁から血流に放出して、腸壁に挿入されない経口摂取インターフェロンのt1/2より大きいt1/2を達成する、治療製剤。
40.腸壁に挿入される前記インターフェロンのt1/2が、腸壁に挿入されない経口摂取インターフェロンのt1/2より少なくとも約10倍大きい、節39に記載の製剤。
41.多発性硬化症の処置において使用するための、前記節のいずれか1つもしくは複数に記載の製剤。
42.B型またはC型肝炎の処置において使用するための、前記節のいずれか1つもしくは複数に記載の製剤。
アダリムマブ
上で論じたように、本明細書に記載する実施形態は、治療抗体、アダリムマブを含む治療組成物を含む。アダリムマブは、ヒト腫瘍壊死因子(TNF)に特異的な組換えヒトIgG1モノクローナル抗体である。アダリムマブは、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、尋常性乾癬および潰瘍性大腸炎をはじめとする、多数の自己免疫疾患の処置に有用である。かかる組成物は、望ましい薬物動態特性でのアダリムマブの送達をもたらす。これに関連して、注目すべき薬物動態測定基準としては、Cmax、投与後の薬物のピーク血漿濃度;tmax、Cmaxに達するまでの時間;およびt1/2、薬物の血漿濃度がCmaxに達した後にそのCmax値の半分に達するために要する時間が挙げられる。これらの測定基準は、当該技術分野において公知の標準的な薬物動態測定技術を用いて測定することができる。1つのアプローチでは、嚥下可能なデバイスの使用または非血管注射のいずれかによる薬物または他の治療剤の投与を開始して投与後まで設定時間間隔(例えば、1分、5分、1/2時間、1時間など)で血漿試料を採取することができる。その後、その特定の薬物に適応させることができる1つもしくは複数の適切な分析法、例えば、GC−質量分析、LC−質量分析、HPLCまたは様々なELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)を用いて、血漿中の薬物の濃度を測定することができる。その後、血漿試料からの測定値を用いて、濃度対時間曲線(本明細書では、濃度プロファイルとも呼ぶ)を生成することができる。この濃度曲線のピークがCmaxに対応し、これが発生する時間がtmaxに対応する。濃度がCmaxに達した後にその最大値(すなわち、Cmax)の半分に達する前記曲線における時間がt1/2に対応し、この値は、薬物の消失半減期としても公知である。Cmaxの判定の開始時間は、非血管注射の場合は注射を行った時間、および嚥下可能なデバイスの実施形態が1つもしくは複数の組織貫入部材(薬物を収容している)を小腸にまたはGI管内の他の位置(例えば、大腸)に進入させる時点に基づき得る。後者の場合、この時間は、外部制御シグナル(例えば、RFシグナル)に応答して組織貫入部材を腸壁内に展開させる嚥下可能なデバイスの遠隔制御実施形態をはじめとする1つもしくは複数の手段、または組織貫入部材が展開されたときに体外で検出可能なRFまたは他のシグナルを送信する嚥下可能なデバイスの実施形態のための1つもしくは複数の手段を用いて決定することができる。例えば超音波または蛍光透視法をはじめとする1つもしくは複数の医療画像診断法などの、小腸内への組織貫入部材展開を検出するための他の手段が、企図される。これらの研究のいずれか1つにおいて、ヒト薬物動態応答をモデル化するために適切な動物モデル、例えば、イヌ、ブタ、ラットなどを使用することができる。
このように、様々な実施形態は、アダリムマブを含む治療組成物(本明細書では製剤とも呼ぶ)を提供する。この組成物は、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、該組成物は、その腸壁から血流にアダリムマブを放出して、血管外注射用量のアダリムマブより早くCmaxに達する。換言すると、挿入形態のアダリムマブのほうが、血管外注射される(injected extravaculary)用量のアダリムマブより短期間(例えば、より小さいtmax)でCmaxを達成する。これらの結果を達成するために、腸壁内に送達される組成物中のアダリムマブの用量と血管外注射によって送達される用量は、同等であり得るが、同等である必要はないことに留意されたし。様々な実施形態において、前記組成物は、血管外注射用量のアダリムマブのtmaxの約80%、または50%、または30%、または20%、または10%である(例えば、腸壁、例えば小腸の腸壁から血流へのアダリムマブの放出によって)アダリムマブのtmaxを達成するように構成される。かかる血管外注射用量のアダリムマブは、例えば、皮下注射または筋肉内注射であり得る。特定の実施形態において、腸壁内への挿入によるアダリムマブの送達によって達成されるCmaxは、アダリムマブが腸壁に挿入されることなく経口送達されるときに達成されるCmax、例えば、ピル、他の従来の経口形態のアダリムマブまたは関連化合物によって達成されるCmaxより実質的に大きく、例えば、5、10、20、30、40、50、60、70、80またはさらには100倍大きい。一部の実施形態において、前記アダリムマブ組成物は、アダリムマブの長期放出をもたらすように構成される。また、選択可能なt1/2でのアダリムマブの長期放出をもたらすように前記組成物を構成することができる。例えば、前記選択可能なt1/2は、6、または9、または12、または15、または18、または24時間であり得る。
体重、年齢などの因子に応じて、特定の患者のために任意の適切な用量のアダリムマブを用いることができる。例えば、投与するアダリムマブの用量は、約1〜5mgの範囲(1〜4mg、2〜4mgおよび2〜3mgの特定の範囲を伴う)であり得る。皮下投与すると、アダリムマブは、典型的に、約130時間の血流中でのtmaxを有する。したがって、本明細書に記載するような治療アダリムマブ組成物で投与すると、そのアダリムマブのtmaxは、皮下注射する場合のアダリムマブのtmaxの、例えば約80%、または50%、または30%、または20%、または10%に短縮される。
様々な実施形態は、経口摂取後の腸壁内への挿入に適合したアダリムマブ組成物であって、挿入されると、その腸壁から血流にアダリムマブを放出して、腸壁に挿入されない経口摂取用量のアダリムマブのt1/2より大きいt1/2を達成する組成物も提供する。例えば、前記腸壁に挿入される用量のt1/2は、前記腸壁に挿入されない用量より100または50または10または5倍大きいことがある。
前記アダリムマブは、固体形態、例えば、腸壁内で分解するように構成された固体形態組成物であることがあり、該固体形態組成物は、例えば、尖った先端などの組織貫入特徴部を有することがある。前記アダリムマブ組成物は、少なくとも1つの生分解性材料を含むことがあり、そして/または生分解性ポリマー、例えばPGLA、もしくは糖、例えばマルトースをはじめとする、少なくとも1つの医薬用賦形剤を含むことがある。
前記アダリムマブ組成物を、嚥下可能なカプセルでの経口送達に適合させることができる。特定の実施形態では、第一の構成および第二の構成を有するメカニズムであって、前記アダリムマブ組成物を該第一の構成ではカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では該アダリムマブ組成物を該カプセルから進出させ腸壁に進入させる、メカニズムに作動可能に連結されるように、かかる嚥下可能なカプセルを適合させることができる。かかる作動可能に連結されるメカニズムは、拡張可能な部材、拡張可能なバルーン、バルブ、組織貫入部材、拡張可能なバルーンに連結されたバルブ、または拡張可能なバルーンに連結された組織貫入部材のうちの少なくとも1つを含み得る。
一部の実施形態では、前記アダリムマブを組織貫入部材の管腔内に送達されるように構成することができ、そして/または前記アダリムマブ組成物を腸壁に進入可能な組織貫入部材として造形することができる。前記組織貫入部材は、腸壁内に完全に収容されるようなサイズであることがあり、そして/または腸壁に貫入するための組織貫入特徴部を備えていることがあり、そして/または腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えていることがある。前記留置特徴部は、例えば返しを含み得る。一部の実施形態において、前記組織貫入部材は、該組織貫入部材の表面に力が加わることで腸壁に進入するように構成され、ならびに場合により、前記組織貫入部材は、腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有し、そして/または前記貫入部材の表面は、拡張により力を加える拡張可能なバルーンに作動するように連結されるように構成され、そして/または前記組織貫入部材は、力の方向が変化すると、力を加えている構造物から外れるように構成される。
本発明の様々な態様は、上に記載したものに加えて、医薬品100の送達用の嚥下可能な送達デバイスの他の実施形態も提供する。1つもしくは複数のかかる実施形態によると、前記嚥下送達デバイスは、医薬品100を備えている1つもしくは複数の組織貫入部材を小腸などの腸の壁内に送達する際に使用するための1つもしくは複数の拡張可能なバルーンまたは他の拡張可能なデバイスを含むことができる。ここで図12〜20を参照して、胃腸(GI)管内の送達部位DSへの医薬品100の送達のためのデバイス110のもう1つの実施形態は、嚥下され、腸管を通過するようなサイズのカプセル120と、展開部材130と、医薬品100を収容する1つもしくは複数の組織貫入部材140と、展開可能なアライナ160と、送達メカニズム170とを含むことができる。一部の実施形態では、医薬品100(本明細書では製剤100とも呼ぶ)は、それ自体が組織貫入部材140を構成することがある。展開可能なアライナ160は、カプセル内に位置し、該カプセルを小腸などの腸と位置合わせするように構成される。典型的に、これは、カプセルの長軸を腸の長軸と位置合わせすることを必然的に伴う;しかし、他の位置合わせも企図される。送達メカニズム170は、医薬品100を腸壁内に送達するために構成され、典型的に、送達部材172、例えば拡張可能な部材を含む。展開部材130は、アライナ160または送達メカニズム170の少なくとも一方の展開のために構成される。さらに本明細書中で説明するように、カプセル壁のすべてまたは一部分は、GI管内の液体がデバイス110による医薬品100の送達を誘発できるようにするために、GI管内の液体との接触により分解可能である。本明細書において用いる場合、「GI管」は、食道、胃、小腸、大腸および肛門を指し、その一方で「腸管」は、小腸および大腸を指す。本発明の様々な実施形態を、腸管と全GI管の両方の中への医薬品100の送達用に構成および配列することができる。
組織貫入部材140を備えているデバイス110を、液体、半液体もしくは固体形態の医薬品100、または三形態すべての組み合わせの送達用に構成することができる。いかなる形態であっても、医薬品100は、医薬品がデバイス110から進出させられ、腸壁(小腸もしくは大腸)またはGI管内の他の管腔壁に進入させられ、その後、その腸壁内で分解して薬物または他の治療剤101を放出することを可能にする材料一貫性を望ましくは有する。医薬品100の材料一貫性は、製剤の(体液中での)硬度、多孔度および溶解度のうちの1つもしくは複数を含み得る。前記材料一貫性を次のうちの1つもしくは複数の選択および使用によって達成することができる:i)製剤を作製するために用いる圧縮力;ii)当該技術分野において公知の1種もしくは複数種の医薬用崩壊剤の使用;iii)他の医薬用賦形剤の使用;iv)製剤(例えば、微粒子化粒子)の粒径および分布;およびv)当該技術分野において公知の微粒子化および他の粒子形成方法の使用。
本発明によるさらなる態様および実施形態を以下の番号の節に示す。
1.アダリムマブを含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、アダリムマブを腸壁から血流に放出して、血管外注射用量のアダリムマブがCmaxを達成する期間より短期間でCmaxを達成する、治療製剤。
2.前記治療製剤から放出されるアダリムマブのtmaxが、血管外注射用量のアダリムマブのtmaxの約80%である、節1に記載の製剤。
3.前記治療製剤から放出されるアダリムマブのtmaxが、血管外注射用量のアダリムマブのtmaxの約50%である、節1に記載の製剤。
4.前記治療製剤から放出されるアダリムマブのtmaxが、血管外注射用量のアダリムマブのtmaxの約30%である、節1に記載の製剤。
5.前記治療製剤から放出されるアダリムマブのtmaxが、血管外注射用量のアダリムマブのtmaxの約10%である、節1に記載の製剤。
6.小腸壁への挿入に適合している、前記いずれかの節に記載の製剤。
7.前記血管外注射が、皮下注射または筋肉内注射である、前記いずれかの節に記載の製剤。
8.前記製剤の少なくとも一部分が固体形態である、前記いずれかの節に記載の製剤。
9.嚥下可能なカプセルで経口送達されるのに適合している、前記いずれかの節に記載の製剤。
10.第一の構成および第二の構成を有する送達手段であって、該第一の構成では前記製剤をカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では前記製剤を該カプセルから進出させて腸壁に進入させる、送達手段に作動可能に連結されるのに適合している、節9に記載の製剤。
11.前記送達手段が、拡張および非拡張状態を有する少なくとも1つの拡張可能なバルーンを含み、前記第一の構成が非拡張状態であり、前記第二の構成が拡張状態である、節10に記載の製剤。
12.アダリムマブを血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
13.前記生分解性材料が、PGLA、糖またはマルトースを含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
14.少なくとも1つの医薬用賦形剤を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
15.前記少なくとも1つの医薬用賦形剤が、結合剤、保存剤または崩壊剤のうちの少なくとも1つを含む、節14に記載の製剤。
16.前記結合剤がPEGを含む、節15に記載の製剤。
17.腸壁に貫入し、挿入されるように構成される組織貫入部材であって、前記製剤を備えている組織貫入部材を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
18.前記組織貫入部材が、アダリムマブを血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、節17に記載の製剤。
19.前記生分解性材料が、マルトースまたはPGLAを含む、節18に記載の製剤。
20.前記組織貫入部材中のアダリムマブの重量パーセントが、約8から12%の間を含む、節17に記載の製剤。
21.前記組織貫入部材が、挿入後に腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えている、節17に記載の製剤。
22.前記留置特徴部が、前記組織貫入部材の返しまたは逆テーパ形状の少なくとも一方を含む、節21に記載の製剤。
23.前記アダリムマブが、前記組織貫入部材における造形されたセクション内に収容されている、節17に記載の製剤。
24.前記造形されたセクションが、円柱またはペレット形状を有する、節23に記載の製剤。
25.前記組織貫入部材が、該組織貫入部材に力が加わることで腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有する、前記いずれかの節に記載の製剤。
26.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより実質的に大きい、前記いずれかの節に記載の製剤。
27.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより少なくとも約100倍大きい、節26に記載の製剤。
28.アダリムマブの長期放出をもたらすように構成される、前記いずれかの節に記載の製剤。
29.選択可能なt1/2を生じさせるようなアダリムマブの長期放出をもたらすように構成される、節28に記載の製剤。
30.前記t1/2が、約40日である、節29に記載の製剤。
31.前記製剤中のアダリムマブの用量が、約1から5mgの範囲である、前記いずれかの節に記載の製剤。
32.前記製剤中のアダリムマブの用量が、約2から4mgの範囲である、節31に記載の製剤。
33.アダリムマブを含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、アダリムマブを腸壁から血流に放出して、腸壁に挿入されない経口摂取アダリムマブのt1/2より大きいt1/2を達成する、治療製剤。
34.腸壁に挿入される前記アダリムマブのt1/2が、腸壁に挿入されない経口摂取アダリムマブのt1/2より少なくとも約10倍大きい、節34に記載の製剤。
インフリキシマブ
上で論じたように、本明細書に記載する実施形態は、治療抗体、インフリキシマブを含む治療組成物を含む。インフリキシマブは、ヒト腫瘍壊死因子アルファ(TNF−アルファ)に特異的なモノクローナル抗体である。かかる組成物は、望ましい薬物動態特性でのインフリキシマブの送達をもたらす。これに関連して、注目すべき薬物動態測定基準としては、Cmax、投与後の薬物のピーク血漿濃度;tmax、Cmaxに達するまでの時間;およびt1/2、薬物の血漿濃度がCmaxに達した後にそのCmax値の半分に達するために要する時間が挙げられる。これらの測定基準は、当該技術分野において公知の標準的な薬物動態測定技術を用いて測定することができる。1つのアプローチでは、嚥下可能なデバイスの使用または非血管注射のいずれかによる薬物または他の治療剤の投与を開始して投与後まで設定時間間隔(例えば、1分、5分、1/2時間、1時間など)で血漿試料を採取することができる。その後、その特定の薬物に適応させることができる1つもしくは複数の適切な分析法、例えば、GC−質量分析、LC−質量分析、HPLCまたは様々なELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)を用いて、血漿中の薬物の濃度を測定することができる。その後、血漿試料からの測定値を用いて、濃度対時間曲線(本明細書では、濃度プロファイルとも呼ぶ)を生成することができる。この濃度曲線のピークがCmaxに対応し、これが発生する時間がtmaxに対応する。濃度がCmaxに達した後にその最大値(すなわち、Cmax)の半分に達する前記曲線における時間がt1/2に対応し、この値は、薬物の消失半減期としても公知である。Cmaxの判定の開始時間は、非血管注射の場合は注射を行った時間、および嚥下可能なデバイスの実施形態が1つもしくは複数の組織貫入部材(薬物を収容している)を小腸にまたはGI管内の他の位置(例えば、大腸)に進入させる時点に基づき得る。後者の場合、この時間は、外部制御シグナル(例えば、RFシグナル)に応答して組織貫入部材を腸壁内に展開させる嚥下可能なデバイスの遠隔制御実施形態をはじめとする1つもしくは複数の手段、または組織貫入部材が展開されたときに体外で検出可能なRFまたは他のシグナルを送信する嚥下可能なデバイスの実施形態のための1つもしくは複数の手段を用いて決定することができる。例えば超音波または蛍光透視法をはじめとする1つもしくは複数の医療画像診断法などの、小腸内への組織貫入部材展開を検出するための他の手段が、企図される。これらの研究のいずれか1つにおいて、ヒト薬物動態応答をモデル化するために適切な動物モデル、例えば、イヌ、ブタ、ラットなどを使用することができる。
このように、様々な実施形態は、インフリキシマブを含む治療組成物(本明細書では製剤とも呼ぶ)を提供する。この組成物は、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、該組成物は、その腸壁から血流にインフリキシマブを放出して、血管外注射用量のインフリキシマブより早くCmaxに達する。換言すると、挿入形態のインフリキシマブのほうが、血管外注射される(injected extravaculary)用量のインフリキシマブより短期間(例えば、より小さいtmax)でCmaxを達成する。これらの結果を達成するために、腸壁内に送達される組成物中のインフリキシマブの用量と血管外注射によって送達される用量は、同等であり得るが、同等である必要はないことに留意されたし。様々な実施形態において、前記組成物は、血管外注射用量のインフリキシマブのtmaxの約80%、または50%、または30%、または20%、または10%である(例えば、腸壁、例えば小腸の腸壁から血流へのインフリキシマブの放出によって)インフリキシマブのtmaxを達成するように構成される。かかる血管外注射用量のインフリキシマブは、例えば、皮下注射または筋肉内注射であり得る。特定の実施形態において、腸壁内への挿入によるインフリキシマブの送達によって達成されるCmaxは、インフリキシマブが腸壁に挿入されることなく経口送達されるときに達成されるCmax、例えば、ピル、他の従来の経口形態のインフリキシマブまたは関連化合物によって達成されるCmaxより実質的に大きく、例えば、5、10、20、30、40、50、60、70、80またはさらには100倍大きい。一部の実施形態において、前記インフリキシマブ組成物は、インフリキシマブの長期放出をもたらすように構成される。また、選択可能なt1/2でのインフリキシマブの長期放出をもたらすように前記組成物を構成することができる。例えば、前記選択可能なt1/2は、6、または9、または12、または15、または18、または24時間であり得る。
体重、年齢などの因子に応じて、特定の患者のために任意の適切な用量のインフリキシマブを用いることができる。例えば、投与するインフリキシマブの用量は、約1〜10mgの範囲(2〜8mg、3〜5mgおよび4〜5mgの特定の範囲を伴う)であり得る。静脈内投与すると、インフリキシマブは、典型的に、約8日の血流中でのtmaxを有する。皮下投与インフリキシマブのtmaxは、より長いと予想されよう。したがって、本明細書に記載するような治療インフリキシマブ組成物で投与すると、そのインフリキシマブのtmaxは、皮下注射する場合のまたは他の血管外注射によるインフリキシマブのtmaxの、例えば約80%、または50%、または30%、または20%、または10%に短縮される。
様々な実施形態は、経口摂取後の腸壁内への挿入に適合したインフリキシマブ組成物であって、挿入されると、その腸壁から血流にインフリキシマブを放出して、腸壁に挿入されない経口摂取用量のインフリキシマブのt1/2より大きいt1/2を達成する組成物も提供する。例えば、前記腸壁に挿入される用量のt1/2は、前記腸壁に挿入されない用量より100または50または10または5倍大きいことがある。
前記インフリキシマブは、固体形態、例えば、腸壁内で分解するように構成された固体形態組成物であることがあり、該固体形態組成物は、例えば、尖った先端などの組織貫入特徴部を有することがある。前記インフリキシマブ組成物は、少なくとも1つの生分解性材料を含むことがあり、そして/または生分解性ポリマー、例えばPGLA、もしくは糖、例えばマルトースをはじめとする、少なくとも1つの医薬用賦形剤を含むことがある。
前記インフリキシマブ組成物を、嚥下可能なカプセルでの経口送達に適合させることができる。特定の実施形態では、第一の構成および第二の構成を有するメカニズムであって、前記インフリキシマブ組成物を該第一の構成ではカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では該インフリキシマブ組成物を該カプセルから進出させ腸壁に進入させる、メカニズムに作動可能に連結されるように、かかる嚥下可能なカプセルを適合させることができる。かかる作動可能に連結されるメカニズムは、拡張可能な部材、拡張可能なバルーン、バルブ、組織貫入部材、拡張可能なバルーンに連結されたバルブ、または拡張可能なバルーンに連結された組織貫入部材のうちの少なくとも1つを含み得る。
一部の実施形態では、前記インフリキシマブ組成物を組織貫入部材の管腔内に送達されるように構成することができ、そして/または前記インフリキシマブ組成物を腸壁に進入可能な組織貫入部材として造形することができる。前記組織貫入部材は、腸壁内に完全に収容されるようなサイズであることがあり、そして/または腸壁に貫入するための組織貫入特徴部を備えていることがあり、そして/または腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えていることがある。前記留置特徴部は、例えば返しを含み得る。一部の実施形態において、前記組織貫入部材は、該組織貫入部材の表面に力が加わることで腸壁に進入するように構成され、ならびに場合により、前記組織貫入部材は、腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有し、そして/または前記貫入部材の表面は、拡張により力を加える拡張可能なバルーンに作動するように連結されるように構成され、そして/または前記組織貫入部材は、力の方向が変化すると、力を加えている構造物から外れるように構成される。
本発明によるさらなる態様および実施形態を以下の番号の節に示す。
1.インフリキシマブを含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、インフリキシマブを腸壁から血流に放出して、血管外注射用量のインフリキシマブがCmaxを達成する期間より短期間でCmaxを達成する、治療製剤。
2.前記治療製剤から放出されるインフリキシマブのtmaxが、血管外注射用量のインフリキシマブのtmaxの約80%である、節1に記載の製剤。
3.前記治療製剤から放出されるインフリキシマブのtmaxが、血管外注射用量のインフリキシマブのtmaxの約50%である、節1に記載の製剤。
4.前記治療製剤から放出されるインフリキシマブのtmaxが、血管外注射用量のインフリキシマブのtmaxの約30%である、節1に記載の製剤。
5.前記治療製剤から放出されるインフリキシマブのtmaxが、血管外注射用量のインフリキシマブのtmaxの約10%である、節1に記載の製剤。
6.小腸壁への挿入に適合している、前記いずれかの節に記載の製剤。
7.前記血管外注射が、皮下注射または筋肉内注射である、前記いずれかの節に記載の製剤。
8.前記製剤の少なくとも一部分が固体形態である、前記いずれかの節に記載の製剤。
9.嚥下可能なカプセルで経口送達されるのに適合している、前記いずれかの節に記載の製剤。
10.第一の構成および第二の構成を有する送達手段であって、該第一の構成では前記製剤をカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では前記製剤を該カプセルから進出させて腸壁に進入させる、送達手段に作動可能に連結されるのに適合している、節9に記載の製剤。
11.前記送達手段が、拡張および非拡張状態を有する少なくとも1つの拡張可能なバルーンを含み、前記第一の構成が非拡張状態であり、前記第二の構成が拡張状態である、節10に記載の製剤。
12.インフリキシマブを血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
13.前記生分解性材料が、PGLA、糖またはマルトースを含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
14.少なくとも1つの医薬用賦形剤を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
15.前記少なくとも1つの医薬用賦形剤が、結合剤、保存剤または崩壊剤のうちの少なくとも1つを含む、節14に記載の製剤。
16.前記結合剤がPEGを含む、節15に記載の製剤。
17.腸壁に貫入し、挿入されるように構成される組織貫入部材であって、前記製剤を備えている組織貫入部材を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
18.前記組織貫入部材が、インフリキシマブを血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、節17に記載の製剤。
19.前記生分解性材料が、マルトースまたはPGLAを含む、節18に記載の製剤。
20.前記組織貫入部材中のインフリキシマブの重量パーセントが、約8から12%の間を含む、節17に記載の製剤。
21.前記組織貫入部材が、挿入後に腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えている、節17に記載の製剤。
22.前記留置特徴部が、前記組織貫入部材の返しまたは逆テーパ形状の少なくとも一方を含む、節21に記載の製剤。
23.前記インフリキシマブが、前記組織貫入部材における造形されたセクション内に収容されている、節17に記載の製剤。
24.前記造形されたセクションが、円柱またはペレット形状を有する、節23に記載の製剤。
25.前記組織貫入部材が、該組織貫入部材に力が加わることで腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有する、前記いずれかの節に記載の製剤。
26.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより実質的に大きい、前記いずれかの節に記載の製剤。
27.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより少なくとも約100倍大きい、節26に記載の製剤。
28.インフリキシマブの長期放出をもたらすように構成される、前記いずれかの節に記載の製剤。
29.選択可能なt1/2を生じさせるようなインフリキシマブの長期放出をもたらすように構成される、節28に記載の製剤。
30.前記t1/2が、約40日である、節29に記載の製剤。
31.前記製剤中のインフリキシマブの用量が、約1から10mgの範囲である、前記いずれかの節に記載の製剤。
32.前記製剤中のインフリキシマブの用量が、約5mgである、節31に記載の製剤。
33.インフリキシマブを含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、インフリキシマブを腸壁から血流に放出して、腸壁に挿入されない経口摂取インフリキシマブのt1/2より大きいt1/2を達成する、治療製剤。
34.腸壁に挿入される前記インフリキシマブのt1/2が、腸壁に挿入されない経口摂取インフリキシマブのt1/2より少なくとも約10倍大きい、節34に記載の製剤。
エタネルセプト
上で論じたように、本明細書に記載する実施形態は、融合タンパク質、エタネルセプトを含む治療組成物を含む。エタネルセプトは、可溶性腫瘍壊死因子(TNF)受容体2についてのヒト遺伝子をヒト免疫グロブリンG1(IgG1)のFc成分についての遺伝子に連結させる融合タンパク質である。エタネルセプトは、関節リウマチ、多関節型若年性特発性関節炎、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎および尋常性乾癬をはじめとする、多数の自己免疫疾患の処置に有用である。かかる組成物は、望ましい薬物動態特性でのエタネルセプトの送達をもたらす。これに関連して、注目すべき薬物動態測定基準としては、Cmax、投与後の薬物のピーク血漿濃度;tmax、Cmaxに達するまでの時間;およびt1/2、薬物の血漿濃度がCmaxに達した後にそのCmax値の半分に達するために要する時間が挙げられる。これらの測定基準は、当該技術分野において公知の標準的な薬物動態測定技術を用いて測定することができる。1つのアプローチでは、嚥下可能なデバイスの使用または非血管注射のいずれかによる薬物または他の治療剤の投与を開始して投与後まで設定時間間隔(例えば、1分、5分、1/2時間、1時間など)で血漿試料を採取することができる。その後、その特定の薬物に適応させることができる1つもしくは複数の適切な分析法、例えば、GC−質量分析、LC−質量分析、HPLCまたは様々なELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)を用いて、血漿中の薬物の濃度を測定することができる。その後、血漿試料からの測定値を用いて、濃度対時間曲線(本明細書では、濃度プロファイルとも呼ぶ)を生成することができる。この濃度曲線のピークがCmaxに対応し、これが発生する時間がtmaxに対応する。濃度がCmaxに達した後にその最大値(すなわち、Cmax)の半分に達する前記曲線における時間がt1/2に対応し、この値は、薬物の消失半減期としても公知である。Cmaxの判定の開始時間は、非血管注射の場合は注射を行った時間、および嚥下可能なデバイスの実施形態が1つもしくは複数の組織貫入部材(薬物を収容している)を小腸にまたはGI管内の他の位置(例えば、大腸)に進入させる時点に基づき得る。後者の場合、この時間は、外部制御シグナル(例えば、RFシグナル)に応答して組織貫入部材を腸壁内に展開させる嚥下可能なデバイスの遠隔制御実施形態をはじめとする1つもしくは複数の手段、または組織貫入部材が展開されたときに体外で検出可能なRFまたは他のシグナルを送信する嚥下可能なデバイスの実施形態のための1つもしくは複数の手段を用いて決定することができる。例えば超音波または蛍光透視法をはじめとする1つもしくは複数の医療画像診断法などの、小腸内への組織貫入部材展開を検出するための他の手段が、企図される。これらの研究のいずれか1つにおいて、ヒト薬物動態応答をモデル化するために適切な動物モデル、例えば、イヌ、ブタ、ラットなどを使用することができる。
このように、様々な実施形態は、エタネルセプトを含む治療組成物(本明細書では製剤とも呼ぶ)を提供する。この組成物は、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、該組成物は、その腸壁から血流にエタネルセプトを放出して、血管外注射用量のエタネルセプトより早くCmaxに達する。換言すると、挿入形態のエタネルセプトのほうが、血管外注射される(injected extravaculary)用量のエタネルセプトより短期間(例えば、より小さいtmax)でCmaxを達成する。これらの結果を達成するために、腸壁内に送達される組成物中のエタネルセプトの用量と血管外注射によって送達される用量は、同等であり得るが、同等である必要はないことに留意されたし。様々な実施形態において、前記組成物は、血管外注射用量のエタネルセプトのtmaxの約80%、または50%、または30%、または20%、または10%である(例えば、腸壁、例えば小腸の腸壁から血流へのエタネルセプトの放出によって)エタネルセプトのtmaxを達成するように構成される。かかる血管外注射用量のエタネルセプトは、例えば、皮下注射または筋肉内注射であり得る。特定の実施形態において、腸壁内への挿入によるエタネルセプトの送達によって達成されるCmaxは、エタネルセプトが腸壁に挿入されることなく経口送達されるときに達成されるCmax、例えば、ピル、他の従来の経口形態のエタネルセプトまたは関連化合物によって達成されるCmaxより実質的に大きく、例えば、5、10、20、30、40、50、60、70、80またはさらには100倍大きい。一部の実施形態において、前記エタネルセプト組成物は、エタネルセプトの長期放出をもたらすように構成される。また、選択可能なt1/2でのエタネルセプトの長期放出をもたらすように前記組成物を構成することができる。例えば、前記選択可能なt1/2は、6、または9、または12、または15、または18、または24時間であり得る。
体重、年齢などの因子に応じて、特定の患者のために任意の適切な用量のエタネルセプトを用いることができる。例えば、投与するエタネルセプトの用量は、約1から5mgの範囲(1〜4mg、2〜4mgおよび2〜3mgの特定の範囲を伴う)であり得る。皮下投与すると、エタネルセプトは、典型的に、約70時間の血流中でのtmaxを有する。したがって、本明細書に記載するような治療エタネルセプト組成物で投与すると、そのエタネルセプトのtmaxは、皮下注射する場合のエタネルセプトのtmaxの、例えば約80%、または50%、または30%、または20%、または10%に短縮される。
様々な実施形態は、経口摂取後の腸壁内への挿入に適合したエタネルセプト組成物であって、挿入されると、その腸壁から血流にエタネルセプトを放出して、腸壁に挿入されない経口摂取用量のエタネルセプトのt1/2より大きいt1/2を達成する組成物も提供する。例えば、前記腸壁に挿入される用量のt1/2は、前記腸壁に挿入されない用量より100または50または10または5倍大きいことがある。
前記エタネルセプトは、固体形態、例えば、腸壁内で分解するように構成された固体形態組成物であることがあり、該固体形態組成物は、例えば、尖った先端などの組織貫入特徴部を有することがある。前記エタネルセプト組成物は、少なくとも1つの生分解性材料を含むことがあり、そして/または生分解性ポリマー、例えばPGLA、もしくは糖、例えばマルトースをはじめとする、少なくとも1つの医薬用賦形剤を含むことがある。
前記エタネルセプト組成物を、嚥下可能なカプセルでの経口送達に適合させることができる。特定の実施形態では、第一の構成および第二の構成を有するメカニズムであって、前記エタネルセプト組成物を該第一の構成ではカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では該エタネルセプト組成物を該カプセルから進出させ腸壁に進入させる、メカニズムに作動可能に連結されるように、かかる嚥下可能なカプセルを適合させることができる。かかる作動可能に連結されるメカニズムは、拡張可能な部材、拡張可能なバルーン、バルブ、組織貫入部材、拡張可能なバルーンに連結されたバルブ、または拡張可能なバルーンに連結された組織貫入部材のうちの少なくとも1つを含み得る。
一部の実施形態では、前記エタネルセプト組成物を組織貫入部材の管腔内に送達されるように構成することができ、そして/または前記治療組成物を腸壁に進入可能な組織貫入部材として造形することができる。前記組織貫入部材は、腸壁内に完全に収容されるようなサイズであることがあり、そして/または腸壁に貫入するための組織貫入特徴部を備えていることがあり、そして/または腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えていることがある。前記留置特徴部は、例えば返しを含み得る。一部の実施形態において、前記組織貫入部材は、該組織貫入部材の表面に力が加わることで腸壁に進入するように構成され、ならびに場合により、前記組織貫入部材は、腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有し、そして/または前記貫入部材の表面は、拡張により力を加える拡張可能なバルーンに作動するように連結されるように構成され、そして/または前記組織貫入部材は、力の方向が変化すると、力を加えている構造物から外れるように構成される。
本発明によるさらなる態様および実施形態を以下の番号の節に示す。
1.エタネルセプトを含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、エタネルセプトを腸壁から血流に放出して、血管外注射用量のエタネルセプトがCmaxを達成する期間より短期間でCmaxを達成する、治療製剤。
2.前記治療製剤から放出されるエタネルセプトのtmaxが、血管外注射用量のエタネルセプトのtmaxの約80%である、節1に記載の製剤。
3.前記治療製剤から放出されるエタネルセプトのtmaxが、血管外注射用量のエタネルセプトのtmaxの約50%である、節1に記載の製剤。
4.前記治療製剤から放出されるエタネルセプトのtmaxが、血管外注射用量のエタネルセプトのtmaxの約30%である、節1に記載の製剤。
5.前記治療製剤から放出されるエタネルセプトのtmaxが、血管外注射用量のエタネルセプトのtmaxの約10%である、節1に記載の製剤。
6.小腸壁への挿入に適合している、前記いずれかの節に記載の製剤。
7.前記血管外注射が、皮下注射または筋肉内注射である、前記いずれかの節に記載の製剤。
8.前記製剤の少なくとも一部分が固体形態である、前記いずれかの節に記載の製剤。
9.嚥下可能なカプセルで経口送達されるのに適合している、前記いずれかの節に記載の製剤。
10.第一の構成および第二の構成を有する送達手段であって、該第一の構成では前記製剤をカプセル内に収容し、そして、該第二の構成では前記製剤を該カプセルから進出させて腸壁に進入させる、送達手段に作動可能に連結されるのに適合している、節9に記載の製剤。
11.前記送達手段が、拡張および非拡張状態を有する少なくとも1つの拡張可能なバルーンを含み、前記第一の構成が非拡張状態であり、前記第二の構成が拡張状態である、節10に記載の製剤。
12.エタネルセプトを血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
13.前記生分解性材料が、PGLA、糖またはマルトースを含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
14.少なくとも1つの医薬用賦形剤を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
15.前記少なくとも1つの医薬用賦形剤が、結合剤、保存剤または崩壊剤のうちの少なくとも1つを含む、節14に記載の製剤。
16.前記結合剤がPEGを含む、節15に記載の製剤。
17.腸壁に貫入し、挿入されるように構成される組織貫入部材であって、前記製剤を備えている組織貫入部材を含む、前記いずれかの節に記載の製剤。
18.前記組織貫入部材が、エタネルセプトを血流に放出するための、腸壁内で分解する生分解性材料を含む、節17に記載の製剤。
19.前記生分解性材料が、マルトースまたはPGLAを含む、節18に記載の製剤。
20.前記組織貫入部材中のエタネルセプトの重量パーセントが、約8から12%の間を含む、節17に記載の製剤。
21.前記組織貫入部材が、挿入後に腸壁内に該組織貫入部材を留置するための留置特徴部を備えている、節17に記載の製剤。
22.前記留置特徴部が、前記組織貫入部材の返しまたは逆テーパ形状の少なくとも一方を含む、節21に記載の製剤。
23.前記エタネルセプトが、前記組織貫入部材における造形されたセクション内に収容されている、節17に記載の製剤。
24.前記造形されたセクションが、円柱またはペレット形状を有する、節23に記載の製剤。
25.前記組織貫入部材が、該組織貫入部材に力が加わることで腸壁に完全に進入するのに十分な剛性を有する、前記いずれかの節に記載の製剤。
26.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより実質的に大きい、前記いずれかの節に記載の製剤。
27.腸壁への挿入による前記製剤の送達によって達成されるCmaxが、前記製剤を腸壁への挿入なしに経口送達したときに達成されるCmaxより少なくとも約100倍大きい、節26に記載の製剤。
28.エタネルセプトの長期放出をもたらすように構成される、前記いずれかの節に記載の製剤。
29.選択可能なt1/2を生じさせるようなエタネルセプトの長期放出をもたらすように構成される、節28に記載の製剤。
30.前記t1/2が、約40日である、節29に記載の製剤。
31.前記製剤中のエタネルセプトの用量が、約1から5mgの範囲である、前記いずれかの節に記載の製剤。
32.前記製剤中のエタネルセプトの用量が、約3mgである、節31に記載の製剤。
33.エタネルセプトを含む治療製剤であって、経口摂取後の腸壁への挿入に適合しており、挿入されると、エタネルセプトを腸壁から血流に放出して、腸壁に挿入されない経口摂取エタネルセプトのt1/2より大きいt1/2を達成する、治療製剤。
34.腸壁に挿入される前記エタネルセプトのt1/2が、腸壁に挿入されない経口摂取エタネルセプトのt1/2より少なくとも約10倍大きい、節34に記載の製剤。
本発明の様々な態様は、上に記載したものに加えて、医薬品100の送達用の嚥下可能な送達デバイスの他の実施形態も提供する。1つもしくは複数のかかる実施形態によると、前記嚥下送達デバイスは、医薬品100を備えている1つもしくは複数の組織貫入部材を小腸などの腸の壁内に送達する際に使用するための1つもしくは複数の拡張可能なバルーンまたは他の拡張可能なデバイスを含むことができる。ここで図12〜20を参照して、胃腸(GI)管内の送達部位DSへの医薬品100の送達のためのデバイス110のもう1つの実施形態は、嚥下され、腸管を通過するようなサイズのカプセル120と、展開部材130と、医薬品100を収容する1つもしくは複数の組織貫入部材140と、展開可能なアライナ160と、送達メカニズム170とを含むことができる。一部の実施形態では、医薬品100(本明細書では製剤100とも呼ぶ)は、それ自体が組織貫入部材140を構成することがある。展開可能なアライナ160は、カプセル内に位置し、該カプセルを小腸などの腸と位置合わせするように構成される。典型的に、これは、カプセルの長軸を腸の長軸と位置合わせすることを必然的に伴う;しかし、他の位置合わせも企図される。送達メカニズム170は、医薬品100を腸壁内に送達するために構成され、典型的に、送達部材172、例えば拡張可能な部材を含む。展開部材130は、アライナ160または送達メカニズム170の少なくとも一方の展開のために構成される。さらに本明細書中で説明するように、カプセル壁のすべてまたは一部分は、GI管内の液体がデバイス110による医薬品100の送達を誘発できるようにするために、GI管内の液体との接触により分解可能である。本明細書において用いる場合、「GI管」は、食道、胃、小腸、大腸および肛門を指し、その一方で「腸管」は、小腸および大腸を指す。本発明の様々な実施形態を、腸管と全GI管の両方の中への医薬品100の送達用に構成および配列することができる。
組織貫入部材140を備えているデバイス110を、液体、半液体もしくは固体形態の医薬品100または三形態すべての組み合わせの送達用に構成することができる。いかなる形態であっても、医薬品100は、医薬品がデバイス110から進出させられ、腸壁(小腸もしくは大腸)またはGI管内の他の管腔壁に進入させられ、その後、その腸壁内で分解して薬物または他の治療剤101を放出することを可能にする材料一貫性を望ましくは有する。医薬品100の材料一貫性は、製剤の(体液中での)硬度、多孔度および溶解度のうちの1つもしくは複数を含み得る。前記材料一貫性を次のうちの1つもしくは複数の選択および使用によって達成することができる:i)製剤を作製するために用いる圧縮力;ii)当該技術分野において公知の1種もしくは複数種の医薬用崩壊剤の使用;iii)他の医薬用賦形剤の使用;iv)製剤(例えば、微粒子化粒子)の粒径および分布;およびv)当該技術分野において公知の微粒子化および他の粒子形成方法の使用。
カプセル120は、嚥下され、腸管を通過するようなサイズである。このサイズを、送達すべき薬物の量はもちろん患者の体重および成人対小児利用に応じて調整することができる。典型的に、前記カプセルは、ビタミンに類似の湾曲した末端を有する管形状を有する。これらの実施形態および関連実施形態において、カプセル長120Lは0.5から2インチの範囲、および直径120Dは0.1から0.5インチの範囲であり得るが、他の寸法も企図される。カプセル120は、内部空間または内容積124vを規定する外面125および内面124を有するカプセル壁121wを備えている。一部の実施形態において、カプセル壁121wは、組織貫入部材140の外方進出のためのサイズの1つのもしくは1つより多いアパーチャ126を備えることができる。デバイス110の他の構成要素(例えば、拡張可能な部材など)に加えて、前記内容積は、1つもしくは複数の区画またはリザーバ127を備えることができる。
製薬技術分野において公知の様々な生分解性ゼラチン材料から前記カプセルを製造することができるが、前記カプセルは、胃内での(酸などに起因する)分解からキャップを保護して、その後、小腸においてまたは腸管の他の領域において見いだされるより高いpHで分解するように構成された、様々な腸溶コーティング120cを備えることもできる。様々な実施形態において、カプセル120は、多数の部分から形成され得、それらの部分の1つもしくは1つより多くの部分が生分解性であり得る。多くの実施形態において、カプセル120は、2つの部分120p、例えば、ボディ部分120P”(本明細書ではボディ120p”)とキャップ部分120p’(本明細書ではキャップ120p)から形成され得、該キャップは、例えば該ボディの上または下に滑り込ませることによって、該ボディに外嵌する(が他の仕組みも企図される)。一方の部分、例えばキャップ120p’は、第一のpH(例えばpH5.5)より上で分解するように構成された第一のコーティング120c’を備えることができ、もう第二の部分、例えばボディ120p’’は、第二のより高いpH(例えば6.5)より上で分解するように構成された第二のコーティング120c”を備えることができる。カプセル120の内面124と外面125の両方がコーティング120c’および120c”で被覆されるので、該カプセルの両方の部分が、選択されたpHを有する流体と接触するまで、実質的に保存される。ボディ120p”の場合は、これにより、バルーン172をボディ部分内に保持するようにボディ120p”の構造的一体性を維持すること、およびバルーン130が拡張されるまで展開されないことが可能になる。コーティング120c’および120c”としては、様々なメタクリレートおよびエチルアクリレート系コーティング、例えば、Evonik Industriesにより商品名EUDRAGITで製造されているものを挙げることができる。カプセル120のこれらおよび他の二重コーティング構成により、カプセル120の一部分のメカニズムを該カプセルの他の部分のものより前に起動させることが可能になる。これは、腸液が、先ず、より低いpHコーティングが分解した部分に侵入し、かくして、かかる流体に対して応答性であるトリガー(例えば、分解可能なバルブ)を起動するためである。使用すると、カプセル120のかかる二重コーティング実施形態は、小腸内の特定の位置(またはGI管内の他の位置)への標的薬物送達はもちろん、送達プロセスの確実性向上も与える。これは、アライナ160などの特定の構成要素の展開が小腸の上方領域(例えば、十二指腸)において始まり、薬物の(例えば、小腸壁への)最適な送達のために腸内でカプセルを位置合わせすることを可能にし、かつ、カプセルが小腸または他の選択位置にまだある間に腸壁への薬物送達を達成するための他の構成要素の展開/起動に十分な時間を提供するように構成され得るという事実に起因する。
上で論じたように、カプセル120の1つもしくは1つより多くの部分を当該技術分野において公知の様々な生体適合性ポリマーから製造することができ、該ポリマーには様々な生分解性ポリマーが含まれ、これらは、好ましい実施形態では、セルロース、ゼラチン材料PGLA(ポリ乳酸−co−グリコール酸)を含み得る。他の好適な生分解性材料としては、本明細書に記載する様々な腸溶性材料はもちろん、ラクチド、グリコリド、乳酸、グリコール酸、パラ−ジオキサノン、カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、これらのブレンドおよびコポリマーが挙げられる。
様々な実施形態において、カプセルの壁120wは、GI管内の液体、例えば小腸内の液体との接触により分解し得る。好ましい実施形態において、前記カプセル壁は、胃の通過中は無傷のままであるが、その後、小腸内で分解されるように構成される。1つもしくは複数の実施形態では、これをカプセル壁120w上の外部コーティングまたは外層120cの使用により達成することができ、この120cは、小腸内で見いだされるより高いpHでのみ分解し、該カプセルが小腸に達する(この時点で、本明細書に記載するように、薬物送達プロセスがコーティングの分解によって開始される)前の胃内での分解から、下にあるカプセル壁を保護するのに役立つ。使用すると、かかるコーティングにより、小腸などの腸管の選択部分での治療剤の標的送達が可能になる。
カプセル20に類似して、様々な実施形態において、カプセル120は、1つもしくは複数の医療画像診断法、例えば蛍光透視法、超音波、MRIなどを用いるデバイスの定位のために様々な放射線不透過性材料、エコー源性材料または他の材料を含む場合がある。
さらに本明細書中で論ずるように、多くの実施形態において、展開部材130、送達部材172または展開可能なアライナ160のうちの1つもしくは複数は、カプセル120に内嵌するための形状およびサイズである拡張可能なバルーンに対応し得る。したがって、論述を容易にするために、展開部材130、送達部材172および展開可能なアライナ160をここではバルーン130、160および172と呼ぶことにする;しかし、様々な拡張可能なデバイスを含む他のデバイスもまたこれらの要素に企図されること、ならびに例えば、カプセル120の内容積124vに対応する拡張形状およびサイズを有する様々な形状記憶デバイス(例えば、形状記憶生分解性ポリマースパイアから製造された拡張可能なバスケット)、拡張可能な圧電性デバイスおよび/または化学的に拡張可能なデバイスを含み得ることは理解されるはずである。
バルーン130、160および172のうちの1つもしくは複数が医療デバイス技術分野において公知の様々なポリマーを含む場合もある。好ましい実施形態において、かかるポリマーは、低密度PE(LDPE)、線状低密度PE(LLDPE)、中密度PE(MDPE)および高密度PE(HDPE)ならびに当該技術分野において公知の他の形態のポリエチレンに対応し得る、1つもしくは1より多くのタイプのポリエチレン(PE)を含むことができる。ポリエチレンを使用する1つより多くの実施形態では、前記材料を架橋させることを、当該技術分野においてそうしたことが公知のポリマー照射法を用いてできる。特定の実施形態では、照射に基づく架橋を用いてバルーン材料のコンプライアンスを低下させることによりバルーンの膨張直径および形状を制御することができる。特定の架橋量を達成して、その結果、所与のバルーンについての特定の量のコンプライアンスを生じさせるように照射量を選択することができ、例えば、照射増加を用いて、より剛性でより低コンプライアンスのバルーン材料を生成することができる。他の好適なポリマーとしては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、シリコーンおよびポリウレタンが挙げられる。様々な実施形態において、バルーン130、160および172は、バルーンの位置および物理的状態(例えば、非膨張、膨張またはパンク)を医師が突きとめることを可能にするために、当該技術分野において公知の様々な放射線不透過性材料、例えば硫酸バリウムも含むことがある。バルーンカテーテル技術分野において公知の様々なバルーンブロー成形方法(例えば、モールドブロー成形、フリーブロー成形など)を用いて、カプセル120の内容積124vにほぼ対応する形状およびサイズを有するようにバルーン130、160および172を製造することができる。様々な実施形態において、バルーン130、160および172ならびに様々な対応する特徴部(例えば、接続チューブ)のうちの1つもしくは複数が単一の金型から形成された単体構造を有することができる。かかる単体構造を利用する実施形態は、デバイス110の1つもしくは複数の構成要素間に造らなければならない接合部がより少ないので、向上した製造性および確実性という恩恵をもたらす。
バルーン130、160および172の好適な形状には、先細りした、または湾曲した末端部分を有する様々な円筒形状(かかる形状の例としてホットドッグが挙げられる)が含まれる。一部の実施形態において、バルーン130、160および172のうちの1つもしくは複数の膨張サイズ(例えば、直径)は、カプセル120を(例えば、円周応力に起因する)膨張力でばらばらにさせるために、カプセル120より大きい場合がある。他の関連実施形態において、バルーン130、160および172のうちの1つもしくは複数の膨張サイズは、膨張したとき、i)カプセル120が、該カプセルの周囲の小腸の収縮を生じさせる蠕動収縮を惹起するために小腸壁と十分に接触し、そして/またはii)許容するように小腸のひだが消されるようなサイズであり得る。これらの両方の結果により、カプセルおよび/または送達バルーン172の選択領域上に組織貫入部材40を送達するようなカプセル/バルーン表面と腸壁間の改善された接触が可能になる。望ましくは、バルーン130、160または172の壁は、薄く、0.005から0.0001”の範囲、さらに好ましくは、0.004、0.003、0.002、0.001および0.0005の具体的な実施形態を伴う、0.005から0.0001の範囲の壁厚を有し得る。加えて、様々な実施形態において、バルーン130、160および172のうちの1つもしくは複数は、図13cの実施形態に示すような膨張チャンバ160ICおよび拡張フィンガー160EFを有する入れ子状バルーン構成を有することができる。膨張チャンバ160ICを接続する接続チュービング163は、ガス168の通過のみを可能にするために狭い場合があり、その一方で、バルーン130の2つの半分部分を連結する接続チュービング36は、水の通過を可能にするためにより大きい場合がある。
上で指摘するように、アライナ160は、拡張可能なバルーンを典型的に含み、論述を容易にするために、ここではこれをアライナバルーン160またはバルーン160と呼ぶことにする。バルーン160は、上で説明した材料および方法を用いて製造することができる。それは非拡張状態および拡張状態(展開状態とも呼ぶ)を有する。その拡張または展開状態では、バルーン160は、小腸SIの蠕動収縮によってカプセル120に及ぼされる力が、カプセル120の長軸120LAを小腸SIの長軸LAIと平行に位置合わせするのに役立つように、カプセル120の長さを伸長させる。そしてまたこれは、組織貫入部材140の腸壁IWへの貫入を増進および最適化するために組織貫入部材140のシャフトを腸壁IWの表面と垂直に位置合わせするのに役立つ。小腸内でカプセル120を位置合わせするのに役立つことに加えて、アライナ160はまた、送達バルーン172の膨張前にカプセル120から送達メカニズム170を押し出すように構成され、したがって、該送達バルーンおよび/またはメカニズムは該カプセルによって妨げられない。使用すると、薬物送達が起こり得る前にカプセルの特定の部分(例えば、送達メカニズム上にあるもの)が分解されるのを待つ必要がないので、アライナ160のこの押し出し機能は、治療剤の送達の確実性を向上させる。
バルーン160を、バルーン130および172を備えているデバイス110の1つもしくは複数の構成要素に、ポリマーチューブまたは他の流体連結162によって流体的に連結させることができ、この162は、バルーン160と130を連結させるためのチューブ163、およびバルーン160とバルーン172を連結させるためのチューブ164を含み得る。チューブ163は、バルーン160をバルーン130からの圧力(例えば、バルーン130内での化学反応物の混合によって生成される圧力)により拡張/膨張させるように、ならびに/またはバルーン130および160の一方または両方の膨張のためにガス発生化学反応を開始させるためのバルーン130と160間の液体の通過を別様に可能にするように構成される。チューブ164がバルーン160を172に接続して、バルーン160によるバルーン172の膨張を可能にする。多くの実施形態において、チューブ164は、選択圧力で開口してバルーン160によるバルーン172の膨張を制御するように構成されている制御バルブ155を備えているか、または該制御バルブ155に連結されている。したがって、チューブ164は、前記バルブに接続されている近位部分164pおよび前記バルブからつながる遠位部分164dを含むことができる。典型的に、近位部分164pおよび遠位部分164dは、下で説明するようなバルブハウジング158に接続される。
バルブ155は、バルブハウジング158のチャンバ158c内に配置される(あるいは、チュービング164内に直接配置されることもある)材料157の三角形または他の形状のセクション156を含むことがある。セクション157は、選択圧力で機械的に分解して(例えば、裂けて、剪断されて、離層して、など)、チューブ164および/またはバルブチャンバ158c中のガスの通過を可能にするように構成される。バルブ155のための好適な材料157としては、蜜蝋または他の形態の蝋、および選択可能な密封力/破裂圧を有する医療技術分野において公知の様々な接着剤を挙げることができる。バルブフィッティング158は、材料157のセクション156が(図13bの実施形態に示すように)チャンバ158cの壁を互いに封止するようにまたは該チャンバ中の流体の通過を別様に遮断するように配置されている(生分解性材料から作製された)薄い円筒形区画を典型的に含む。セクション156のサイズおよび形状のうちの1つもしくは複数の選択ならびに材料157の(例えば、接着強度、剪断強度などのような特性についての)選択によって、バルブ155の解放圧力を制御することができる。使用すると、制御バルブ155は、バルーン172を膨張させる前にバルーン160を完全にまたは別様に実質的に膨張させるようなバルーン160および172の順序づけられた膨張を可能にする。そしてまたこれは、バルーン160に、バルーン172が膨張する前にカプセル120から(典型的にはボディ部分120p’から)送達メカニズム170の残部と一緒にバルーン172を押し出させ、したがって、組織貫入部材140の展開はカプセル120によって妨害されない。使用すると、かかるアプローチは、カプセル120に収容されている組織貫入部材140の所望の貫入深度の達成とカプセル120に収容されているより多数の組織貫入部材140の送達の両方の点から見て、該部材の腸壁IWへの進入がカプセル壁120wによって妨害されないので、組織貫入部材140の腸壁IWへの貫入の確実性を向上させる。
上で説明したように、アライナバルーン160の膨張長160lは、カプセル120を腸の蠕動収縮から小腸の横軸と位置合わせするのに十分なものである。アライナ160についての好適な膨張長160lとしては、アライナ160の膨張前のカプセル120の長さ1201の約1/2倍から2倍の間の範囲を挙げることができる。アライナバルーン160についての好適な形状としては、ホットドッグ様形状などの様々な細長い形状を挙げることができる。具体的な実施形態では、バルーン160は、第一のセクション160’および第二のセクション160”を備えることができ、この場合、第一のセクション160’の拡張はカプセル120から送達メカニズム170を(典型的には から)進出させるように構成され、第二のセクション160”は送達バルーン172を膨張させるために用いられる。これらの実施形態および関連実施形態では、第一のセクション160’が先ず膨張してメカニズム170をカプセルから(典型的にはボディ部分120p’から)押し出し、第二のセクション160”が膨張して送達部材172を膨張させる入れ子式膨張を有するように、第一のセクション160’および第二のセクション160”を構成することができる。これは、第一のセクション160’が(そのより小さい容積に起因して)先ず膨張し、第二のセクション160”に関しては第一のセクション60’が実質的に膨張してしまうまで膨張しないように、第一のセクション160’を第二のセクション160”より小さい直径および容積を有するように構成することによって達成することができる。1つの実施形態において、これは、セクション160’内が最低圧力に達するまでガスにセクション160”を通過させない、セクション160’と160”を接続する(上で説明した)制御バルブ155の使用によって助長され得る。一部の実施形態において、アライナバルーンは、展開しているバルーンからの水または他の液体との混合によって反応する化学反応物を収容することができる。
多くの実施形態において、展開部材130は、展開バルーン130として公知の拡張可能なバルーンを含む。様々な実施形態において、展開バルーン30は、ガスの使用、例えば、化学物質からのガス169の発生によりアライナバルーン160の展開/拡張を助長するように構成される。前記ガスは、固体化学反応物165、例えば酸166(例えば、クエン酸)と塩基166(例えば、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムおよびこれらに類するもの)を反応させ、その後、それらを水または他の水性液168と混合することにより発生させることができる。化学量論的方法を用いて反応物の量を選択して、バルーン130、160および72のうちの1つもしくは複数において選択圧力を生じさせることができる。反応物165および液体をバルーン130および160内に別々に保管し、その後、小腸内のpH条件などのトリガー事象に応答して一緒にすることができる。反応物165および液体168をいずれのバルーン内に保管してもよいが、好ましい実施形態では、液体168はバルーン130内に保管され、反応物165はバルーン160内に保管される。反応を開始させるための液体168の通過および/または結果として生ずるガス169を可能にするために、下で説明する分解可能なバルブ150などの離隔手段150も典型的に備えているコネクタチューブ163によってバルーン130をアライナバルーン160に連結させることができる。バルーン130が液体を収容する実施形態については、チューブ163は、バルーン160はもちろんバルーン172も膨張させるために望ましい量のガスの生成に十分な水のバルーン130からバルーン60への通過を可能にするのに十分な直径を有する。また、バルーン130が液体を収容しているとき、バルーン30およびチューブ63の一方または両方は、次のうちの1つもしくは複数によってバルーン160への液体の通行を可能にするように構成される:i)曝露されたバルーン130に対する小腸の蠕動収縮によりバルーン130に加えられる圧縮力;およびii)毛細管作用によるチューブ163による液体の吸い上げ。
チューブ163は、バルブが分解するまでバルーン130の内容物(例えば、水158)をバルーン160の内容物(例えば、反応物165)から離隔する、分解可能な離隔バルブまたは他の離隔手段150を典型的に備える。バルブ150は、該バルブが消化管内で様々な液体と共に水に曝露されると開口するように液体水によって分解可能な材料、例えばマルトースから製造することができる。腸液中で見いだされるより高いpHに応答して分解することができる材料、例えばメタクリレート系コーティングからそれを作製することもできる。前記バルブは、バルーン130の上に突出し、かつ/または別様に十分に露出されているチューブ163上の位置に望ましくは位置するので、キャップ120p’が分解するとカプセルに侵入する腸液にバルブ150は曝露される。様々な実施形態において、(図16aおよび16bの実施形態に示すように)バルブ150は、バルーン130の表面にあるようにまたはさらにはその上に突出するように位置することができ、その結果、キャップ120p’が分解するとバルブ150は腸液に明確に曝露される。本発明の様々な実施形態は、離隔バルブ150についての多数の構造、例えば、ビーム様構造(この場合、バルブは、チューブ163および/または接続セクション136を圧迫するビームを含む)、または鍔型構造(この場合、バルブは、チューブ163および/または接続セクション136上にある鍔を含む)を提供する。さらに他のバルブ構造も企図される。
バルーン130は、展開状態および非展開状態を有する。展開状態では、展開バルーン130は、カプセルの末端の形状に対応するドーム形状130dを有することができる。展開されたバルーン130についての他の形状130s、例えば球形、チューブ状なども企図される。反応物165は、典型的に少なくとも2つの反応物166および167、例えば、クエン酸などの酸、および重炭酸ナトリウムなどの塩基を含む。他の酸、例えば酢酸(ascetic acid)、および塩基、例えば水酸化ナトリウムをはじめとする他の反応物165も企図される。バルブまたは他の離隔手段150が開口すると、反応物は液体中で混ざり、二酸化炭素などのガスを生成し、このガスがアライナバルーン160または他の拡張可能な部材を拡張させる。
図13bに示す代替実施形態において、展開バルーン130は、チューブ36または他の接続手段136(例えば、接続セクション)によって接続された第一のバルーン130’および第二のバルーン130”を実際に含むことができる。接続チューブ136は、上で説明したような液体および/または小腸内で見いだされる塩基性pH(例えば、5.5もしくは6.5)などの特定のpHを有する液体によって分解可能である離隔バルブ150を典型的に備える。2つのバルーン130’および130”は、拡張状態のときにカプセルの末端部分にバルーン130’および130”が内嵌することを可能にする半ドーム形状130hsを各々有することができる。一方のバルーンは、化学反応物(単数または複数)165(例えば、重炭酸ナトリウム、クエン酸など)を収容することができ、他方は、液体水168を収容することができ、したがって、バルブが分解されると前記二成分が混ざってガスを形成し、このガスがバルーン130’および130”の一方または両方を膨張させ、そして次にアライナバルーン160を膨張させる。
さらにもう1つの実施形態において、バルーン130は、多数の区画130cを有するように形成されるかまたは別様に構築される多区画バルーン130mcを含むことができる。典型的に、区画130cは、図14aの実施形態に示すように離隔バルブ150または他の離隔手段150によって離隔されている第一の区画134および第二の区画135を少なくとも備える。多くの実施形態において、区画134および135は、離隔バルブ150が典型的に配置される場所であるそれらの間に小さい接続セクション136を少なくとも有する。図14aの実施形態に示されているように、液体168(典型的には水である)を、第一の区画134内に配置することができ、1つもしくは複数の反応物165(これは典型的には固体であるが液体を使用することもできる)を第二の区画135に配置することができる。バルブ150が(例えば、小腸内の流体に起因する分解から)開口すると、液体168は区画135に侵入し(もしくはその逆、または両方)、反応物(単数または複数)165がその液体と混ざって二酸化炭素などのガス169を生成し、それがバルーン130を拡張し、そしてまたそのガスを用いてバルーン160および172のうちの1つもしくは複数を拡張させることができる。
反応物165は、典型的に、少なくとも第一の反応物166および第二の反応物167、例えば、クエン酸などの酸、および重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウムなどの塩基を含む。本明細書において論ずるように、様々な実施形態において、それらをバルーン130(区画134および135または半分部分130’および130”を含む)およびバルーン160のうちの1つもしくは複数の中に配置することができる。生成物により不活性ガスを生成する酸と塩基の他の組み合わせを含む、追加の反応物も企図される。クエン酸および重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウムを使用する実施形態については、2つの反応物間(例えば、クエン酸対重炭酸カリウム)の比は、約1:3の具体的な比を伴う、約1:1から約1:4の範囲であり得る。望ましくは、固体反応物165は、殆どまたは全く吸収水を有さない。したがって、前記反応物の1つもしくは複数、例えば、重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウムをバルーン130内に配置する前に(例えば、真空乾燥により)予備乾燥させることができる。他の酸、例えば酢酸(ascetic acid)、および塩基を含む、他の反応物165も企図される。反応物の組み合わせを含めて特定の反応物165の量は、特定の化学反応ならびにバルーンの膨張体積についての公知化学量論式と、理想気体の法則(例えば、PV=nRT)を用いて、特定の圧力を生じさせるように選択することができる。特定の実施形態では、バルーン130、160および172のうちの1つもしくは複数において、i)腸壁内への特定の貫通深度を達成するため、ならびにバルーン130、160および172のうちの1つもしくは複数について特定の直径を生じさせるため、ならびにiii)選択量の力を腸壁IWに及ぼすための選択圧力を生じさせるように、反応物の量を選択することができる。特定の実施形態では、バルーン130、160および172のうちの1つもしくは複数において、より小さい圧力およびより大きい圧力も企図されるが、10から15psiの範囲の圧力を達成するように、反応物(例えば、クエン酸および重炭酸カリウム)の量および比を選択することができる。さらにまた、公知化学量論式を用いて、これらの圧力を達成するための反応物の量および比を決定することができる。
ガス169を発生させるための化学反応物165を使用する本発明の様々な実施形態において、前記化学反応物は、単独でまたは展開バルーン130と組み合わせて、アライナバルーン160および送達メカニズム170(送達バルーン172を含む)の一方または両方を展開させるための展開エンジン180を構成し得る。展開エンジン180は、2つの展開バルーン130および130”を使用する実施形態(図13bに示すような二重ドーム構成)を含むこともあり、または図14aに示すような多区画バルーン130mcも含むことがある。展開エンジン180の他の形態、例えば、拡張性圧電材料(電圧の印加によって拡張する)、スプリングおよび他の形状記憶材料ならびに様々な熱拡張性材料の使用も、本発明の様々な実施形態によって企図される。
拡張可能なバルーン130、160および172のうちの1つもしくは複数は、典型的に、膨張後のバルーンのガス抜きに役立つガス抜きバルブ159も含む。ガス抜きバルブ159は、特定のバルーン内のガスの脱出のための開口部またはチャネルを生成するために小腸内の流体および/またはバルーンの区画のうちの1区画内の液体に曝露されると分解するように構成される生分解性材料を含むことができる。望ましくは、ガス抜きバルブ159は、該ガス抜きバルブが分解する前にバルーン130、160および172の膨張に十分な時間を与えるためにバルブ150より遅い速度で分解するように構成される。区画化バルーン130の様々な実施形態において、ガス抜きバルブ159は、図14aの実施形態に示すようにバルーンの末端部分131上に位置する分解可能なセクション139に対応し得る。この実施形態および関連実施形態において、分解可能なセクション139が前記液体への曝露から分解すると、バルーン壁132は、裂けるか、または別様にばらばらになって、急速なガス抜きの高度な保証を提供する。多数の分解可能なセクション139をバルーン壁132内の様々な位置に配置することができる。
バルーン172の様々な実施形態において、ガス抜きバルブ159は、図13bの実施形態に示すように(アライナバルーンに連結される末端の反対側の)送達バルーン172の末端172eに取り付けられたチューブバルブ173に対応し得る。チューブバルブ173は、小腸内の流体などの流体への曝露により分解するマルトースなどの材料173mで選択位置173lにて遮断されている管腔を有する中空チューブ173tを含む。チューブ173t内の遮断材料173mの位置173lは、該遮断材料が溶解してバルブ173を開口する前に送達バルーン172が膨張して腸壁IWに組織貫入部材40を送達するために十分な時間を提供するように選択される。典型的に、これは、液体が材料173mに到達する前に該液体がチューブ管腔内を吸い上がる時間を与えるために完全にはチューブ173tの末端173eではないが、その近くである。1つもしくは複数の実施形態によると、ガス抜きバルブ173が開口すると、それは、送達バルーン172のガス抜きに役立つばかりでなく、アライナバルーン160および展開バルーン130のガス抜きにも役立つ。多くの実施形態において、これら3つは、流体的に接続されている(アライナバルーンは送達バルーン172に流体的に接続されており、展開バルーン130はアライナバルーン160に流体的に接続されている)からである。ガス抜きバルブが小腸内の液体に良好に曝露されるように、アライナバルーン160の膨張によってカプセル120から押し出される送達バルーン172の末端172eにガス抜きバルブを配置することにより、ガス抜きバルブ173の開口を助長することができる。類似のチューブガス抜きバルブ173がアライナバルーン162および展開バルーン130の一方または両方の上に位置する場合もある。これらの後者の2ケースでは、送達バルーン172の膨張および組織貫入部材140の腸壁への進入のために十分な時間を与えるような期間にわたって分解するように、チューブバルブ内の遮断材料を構成することができる。
加えて、保証されたガス抜きのさらなる支援のために、バルーン(例えば、バルーン130、160、172)が完全に膨張すると、該バルーンは穿刺要素182と接触し、穿刺要素182によって穿刺されるように、1つもしくは複数の穿刺要素182をカプセルの内面124に取り付けることができる。穿刺要素182は、尖った先端を有する、表面124からの短い突出部を含むことができる。バルーンガス抜きのためもう1つの代案または追加の実施形態では、組織貫入部材140の1つもしくは複数を、バルーン172の172wの壁に直接連結させることができ、それらが取り外されるとそのバルーンから引き離され、その過程でそのバルーン壁を引き裂くように構成することができる。
ここで組織貫入部材140についての論述を提示する。組織貫入部材140は、様々な薬物および他の治療剤101、1種もしくは複数種の医薬用賦形剤(例えば、崩壊剤、安定剤など)ならびに1種もしくは複数種の生分解性ポリマーから製造することができる。後のほうの材料は、前記貫入部材に所望の構造および材料特性(例えば、腸壁への挿入のための柱強度、または薬物の放出を制御するための多孔度および親水性)を付与するように選択される。ここで図18a〜18fを参照して、多くの実施形態において、図18aの実施形態に示すように、腸壁の組織に容易に貫入するためにシャフト144および針先145または他の尖った先端145を有するように貫入部材140を形成することができる。好ましい実施形態において、先端145は、図18cの実施形態に示すようなトロカール形を有する。先端145は、該先端の硬度および組織貫入特性を増加させる様々な分解性材料、例えばスクロースまたは他の糖を(該先端のボディ内にまたはコーティングとして)含むことができる。腸壁内に配置されると、貫入部材140は、その壁組織内で腸液によって分解され、その結果、薬物または他の治療剤101がその流体に溶解し、血流に吸収される。大体数秒、数分またはさらに数時間内の薬物101の溶解および吸収を可能にするように、組織貫入部材140のサイズ、形状および化学組成のうちの1つもしくは複数を選択することができる。溶解速度を、製薬技術分野において公知の様々な崩壊剤の使用により制御することができる。崩壊剤の例としては、様々なデンプン、例えばデンプングリコール酸ナトリウム、および様々な架橋ポリマー、例えばカルボキシメチルセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。崩壊剤の選択を小腸壁内の環境に特異的に合せることができる。
組織貫入部材140はまた、前進後に腸壁IWの組織内に該貫入部材を留置するための1つもしくは複数の組織留置特徴部143、例えば返しまたはフックを典型的に備える。図18aおよび18bの実施形態に示すような部材シャフト144の周囲におよび部材シャフト144に沿って対称にまたは別様に割り当てられた2つのまたは2つより多い返しなどの、組織留置を増進するような様々なパターン143pで、留置特徴部143を配列することができる。加えて、多くの実施形態において、貫入部材はまた、送達メカニズム170上の連結構成要素への取り付けのための溝または他の嵌め合い特徴部146を備える。
組織貫入部材140は、望ましくは、組織貫入部材140の腸壁への進入後に該貫入部材をバルーンから取り外すためにプラットホーム175(または送達メカニズム170の他の構成要素)に取り外し可能に連結されるように構成される。取り外し可能性(detachability)は、i)プラットホーム175における開口部174と部材シャフト144とがぴったりと合うこと、すなわちそれらの間の嵌合;ii)貫入部材140上の組織留置特徴部143の構成および配置;およびiii)腸壁へのシャフト144の貫入深度をはじめとする様々な手段によって実現することができる。これらの因子のうちの1つもしくは複数を用いて、貫入部材140は、バルーンガス抜きの結果として(この場合、バルーンのガスが抜けるとまたは別様にバルーンが腸壁から引き戻されると留置特徴部143が貫入部材140を組織内に保持する)および/または小腸の蠕動収縮によってカプセル120に及ぼされる力の結果として取り外されるように構成される。
具体的な実施形態では、図18cの実施形態に示すように逆テーパ144tを有するように組織貫入部材シャフト144を構成することによって腸壁IW内での組織貫入部材140の取り外し可能性および留置を向上させることができる。シャフト144上のテーパ144tは、該シャフトに腸壁からの蠕動収縮力が加わることが該シャフトを内方へ押しやる(例えば内方に圧搾する)結果となるように構成される。これは、シャフトテーパ144tが、横方向に加えられる蠕動力PFを、腸壁の内方にシャフトを押しやるように作用する直交する力OFに変換するためである。使用すると、かかる逆テーパ型シャフト構成は、バルーン172のガス抜きによりプラットホーム175(または送達メカニズム170の他の構成要素)から取り外されるように組織貫入部材140を腸壁内に留置するのに役立つ。さらなる実施形態において、逆テーパ型シャフトを有する組織貫入部材140はまた、挿入されると腸壁IW内での該組織貫入部材の留置をさらに増進させるような1つもしくは複数の留置特徴部143を備えることができる。
上で説明したように、様々な実施形態において、組織貫入部材140を多数の薬物および他の治療剤101から製造することができる。また、1つもしくは複数の実施形態によると、前記組織貫入部材は、完全に薬物101から製造され得るか、または、他の成分構成要素、例えば、様々な医薬用賦形剤(例えば、結合剤、保存剤、崩壊剤など)、所望の機械的特性を有するポリマーなどをさらに有し得る。さらに、様々な実施形態において、1つもしくは複数の組織貫入部材140が他の組織貫入部材と同じまたは異なる薬物101(または他の治療剤)を担持する場合がある。前者の構成によって、より大量の特定の薬物101の送達が可能になり、その一方で後者によって、多数の薬物の実質的同時送達を要する薬物処置レジメンを助長するように2種のまたは2種より多くの異なる薬物をほぼ同時に腸壁内に送達することが可能になる。多数の送達組立体178(例えば、2つ、バルーン172の各面に1つ)を有するデバイス110の実施形態において、第一の組立体178’は、第一の薬物101を有する組織貫入部材を担持することができ、第二の組立体178”は、第二の薬物101を有する組織貫入部材を担持することができる。
典型的に、組織貫入部材140によって担持される薬物または他の治療剤101は、組織貫入部材140を形成するための生分解性材料105と混合される。材料105としては、1種もしくは複数種の生分解性ポリマー、例えばPGLA、セルロース、および糖、例えばマルトース、または本明細書に記載するかまたは当該技術分野において公知の他の生分解性材料を挙げることができる。かかる実施形態において、貫入部材140は、薬物101と生分解性材料105の実質的に不均一な混合物を含むことがある。あるいは、組織貫入部材140は、図18dの実施形態に示すように、生分解性材料105から実質的に形成される部分141と、薬物101から形成されるかまたは薬物101を収容する別のセクション142とを含むことがある。1つもしくは複数の実施形態において、セクション142は、薬物101のペレット、スラグ、円柱形または他の形状のセクション142sに対応し得る。造形されたセクション142sを別個のセクションとして予備成形することができ、その後、そのセクションを、図18eおよび18fの実施形態に示すように組織貫入部材140内のキャビティ142cに挿入する。あるいは、セクション142sをキャビティ142cへの薬物製剤100の添加によって形成することができる。薬物製剤100がキャビティ142cに添加される実施形態では、キャビティ142cに流し込まれるかまたは注入される粉末、液体またはゲルとして、製剤を添加することができる。造形されたセクション142sは、薬物101自体から形成されることもあり、または薬物101と1種もしくは複数種の結合剤、保存剤、崩壊剤および他の賦形剤とを含有する薬物製剤から形成されることもある。好適な結合剤としては、ポリエチレングリコール(PEG)および当該技術分野において公知の他の結合剤が挙げられる。様々な実施形態において、前記PEGまたは他の結合剤は、セクション142sの約10から90重量パーセントの範囲を構成することがあり、インスリン製剤についての好ましい実施形態では約25〜90重量パーセントを構成することがある。結合剤として使用することができる他の賦形剤としては、PLA、PLGA、シクロデキストリン、セルロース、メチルセルロース、マルトース、デキストリン、スクロースおよびPGAを挙げることができる。セクション142における賦形剤の重量パーセントに関するさらなる情報は、表1において見つけることができる。論述を容易にするために、セクション142をこの表ではペレットと呼ぶが、表中のデータは、本明細書に記載するセクション142の他の実施形態にもあてはまる。
様々な実施形態において、組織貫入部材140の重量は、10から15mgの間の範囲であり得るが、より重い重量およびより軽い重量が企図される。マルトースから製造された組織貫入部材140の実施形態について、その重量は、約11から14mgの範囲であり得る。様々な実施形態において、薬物101および所望の送達用量に応じて、部材140における薬物の重量パーセントは、約0.1から約15%の範囲であり得る。例示的実施形態において、これらの重量パーセントは、マルトースまたはPGLAから製造された部材140の実施形態に対応するが、それらは、部材140の製造に使用される生分解可能な材料105のいずれかにもあてはまる。部材140における薬物または他の治療剤101の重量パーセントを所望の用量に応じて調整できることはもちろん、該薬物の構造安定性および化学量論的安定性を与えるように、ならびにまた血液中のまたは体内の他の組織中の該薬物の所望の濃度プロファイルを達成するように調整することもできる。当該技術分野において公知の様々な安定性試験およびモデル(例えば、アレニウス式を使用する)ならびに/または公知の薬物化学分解速度を用いて、前記重量パーセント範囲内で特異的調整を行うことができる。表1は、組織貫入部材140によって送達することができるインスリンおよび多数の他の薬物の用量および重量パーセントの範囲を収載している。場合によっては、該表は、用量についての範囲および単一の値を収載している。これらの値は、例示的であり、請求項を含めてここに列挙する他の値も考慮されることは理解されるはずである。さらに、本発明の実施形態は、例えば、±1、±5、±10、±25およびさらにいっそう大きい変動を含めて、これらの値周辺の変動も考慮に入れる。かかる変動は、特定の値または値の範囲を請求する実施形態の範囲に入ると見なされる。この表は、様々な薬物および他の治療剤についてセクション142における薬物の重量パーセントも収載し、ここでは、重ねて論述を容易にするために、セクション142をペレットと呼ぶ。重ねて、本発明の実施形態は、上で説明した変動を考慮に入れる。
当該技術分野において公知の1つのもしくは1つより多いポリマーおよび医薬製造技術を用いて組織貫入部材140を製造することができる。例えば、薬物101(生分解性材料105を伴うまたは伴わない)は、固体形態である場合があり、そのときには1種もしくは複数種の結合剤を添加して、成形、圧縮または他の類似の方法を用いてそれを組織貫入部材140の形状にすることができる。あるいは、薬物101および/または薬物製剤100は、固体または液体であることがあり、そのときには液体形態の生分解性材料105にそれを添加し、その後、ポリマー技術分野において公知の成形法または他の形成法を用いてその混合物を貫入部材140にすることができる。
望ましくは、薬物または他の治療剤101と生分解性材料105とを含む組織貫入部材140の実施形態は、様々なペプチドおよびタンパク質などの薬物をはじめとする薬物のいずれの実質的熱分解も生じさせない温度で形成される。これは、当該技術分野において公知の室温硬化性ポリマーならびに室温成形および溶媒蒸発技術の使用によって達成することができる。特定の実施形態において、前記組織貫入部材内の熱分解される薬物または他の治療剤の量は、望ましくは約10重量%未満、そしてさらに好ましくは5%未満、さらにいっそう好ましくは1%未満である。特定の薬物の熱分解温度(単数または複数)は公知であるか、または当該技術分野において公知の方法を用いてそれを判定することができ、その後、この温度を用いて、薬物熱分解の温度および関連レベルを最小にするように特定のポリマー加工法(例えば、成形、硬化、溶媒蒸発法など)を選択および調整することができる。
送達メカニズム170について説明する。典型的に、このメカニズムは、図16aおよび16bの実施形態に示すように、送達バルーン172に取り付けられている(組織貫入部材140を含有する)送達組立体178を含む。送達バルーンの膨張は、カプセルから腸壁IW内に外向きに送達組立体172を係合させて組織貫入部材140をその壁に挿入するための機械的力をもたらす。様々な実施形態において、送達バルーン172は、接合された部分から成る(articulated)アコーディオンのようなボディ172bによって接続された2つの比較的平坦な面172fを伴う細長い形状を有し得る。組織貫入部材(TPM)140を腸壁に挿入するためにバルーン172の拡張により腸壁(IW)を加圧するように前記平面172fを構成することができる。薬物収容TPM40の腸壁の両側への挿入を可能にするようにバルーン172の片方または両方の面172fにTPM140(それら自体、または下で説明するような送達組立体178の一部として)を位置させることができる。バルーン172の前記面172fは、多数の薬物収容TPMの各面への配置を可能にするために十分な表面積を有することができる。
ここで図19を参照して、送達組立体178の組み立てについて説明する。第一段階300において、支持プラットホーム175(プラットホーム175としても公知)に対応し得る生分解性前進構造175に1つもしくは複数の組織貫入部材140を取り外し可能に連結させることができる。好ましい実施形態において、プラットホーム175は、段階300に示すように部材140の挿入のための1つのもしくは1つより多い開口部174を備えている。開口部174は、バルーン172の拡張前にプラットホーム175に部材140を挿入および留置することができるようなサイズである一方で、腸壁にそれらが貫入されるとプラットホームからそれらを取り外すことができるようなサイズである。次いで、段階301に示すように支持プラットホーム175を担持構造176内に配置することができる。担持構造176は、キャビティまたは開口部176cを規定する側壁176sと底壁176bとを有するウェル構造176に対応し得る。プラットホーム175は、望ましくは、当該技術分野において公知の接着剤または他の接合法を用いて底壁176bの内面に取り付けられる。ウェル構造176は、様々なポリマー材料を含むことができ、ポリマー加工技術分野において公知の真空成形技術を用いてそれを形成することができる。多くの実施形態において、段階302に示すように開口部176oを保護フィルム177で被覆することができる。保護フィルム177は、下で説明するように湿分および酸化から組織貫入部材140を保護するバリアとして機能するが、組織貫入部材140がなおそのフィルムに貫入できるように選択された特性を有する。フィルム177は、様々な水および/または酸素不透過性ポリマーを含むことができ、これらのポリマーは、望ましくは、小腸内で生分解性であるように、かつ/または、消化管を不活性状態で通過するように構成される。それは、所与の物質、例えば酸素、水蒸気などに対する不透過性について選択された特定の層を有する多層構造を有することもある。使用すると、保護フィルム177を利用する実施形態は、組織貫入部材140内の治療剤101の保存寿命の増加に役立ち、そしてまたそれがデバイス110の保存寿命の増加に役立つ。まとめると、組織貫入部材140、ウェル構造176およびフィルム177を取り付けた支持プラットホーム175が送達組立体178を構成する場合がある。組織貫入部材40または他の薬物送達手段に収容された1種もしくは複数種の薬物または治療剤101を有する送達組立体178を事前に製造し、保管し、その後、後日、デバイス110の製造に使用することができる。密閉組立体178のキャビティ176cに窒素などの不活性ガスを充填することにより、組立体178の保存寿命をさらに向上させることができる。
戻って図16aおよび16bを参照して、組立体178は、バルーン172の一方または両方の面172fに位置することができる。好ましい実施形態において、組立体178は、バルーン172の拡張時に腸壁IWの両側に実質的に均等に力を分配するように(図16aに示すように)両方の面172fに位置する。組立体178は、ポリマー技術分野において公知の接着剤または他の接合法を用いて面172fに取り付けることができる。バルーン172が拡張すると、TPM140は、フィルム177に貫入し、腸壁IWに侵入し、そしてバルーン172のガスが抜かれるとプラットホーム175から取り外されるように留置要素143および/またはTPM140の他の留置特徴部(例えば、逆テーパ型シャフト144t)によってそこに留置される。
様々な実施形態において、バルーン130、160および172のうちの1つもしくは複数をカプセル120の内部に、該カプセルの内容積124v内の空間を維持するような折り畳まれた、畳まれたまたは別様に望ましい構成で、パッケージすることができる。折り畳みは、予備成形された折り目または医療用バルーン技術分野において公知の他の折り畳み特徴または方法を用いて行うことができる。特定の実施形態では、バルーン130、160および172を、次のうちの1つもしくは複数を達成するように選択された向きに折り畳むことができる:i)空間を維持する、ii)所望の向きの特定の膨張バルーンを生じさせる;およびiii)所望のバルーン膨張順序を助長する。図15a〜15fに示す実施形態は、折り畳み方法および様々な折り畳み配列の実施形態を例証する。しかし、この折り畳み配列および結果として生ずるバルーンの向きが例示的なものであり、他のものも用いることができることは理解されるはずである。この実施形態および関連実施形態では、折り畳みを手で、自動機械によって、または両方の組み合わせによって行うことができる。また、多くの実施形態において、図13aおよび13bの実施形態に示すように、バルーン130、160、170とバルブチャンバ158と多彩な接続チュービング162とを含む単一のマルチバルーン組立体7(本明細書では組立体7)を使用することによって折り畳みを助長することができる。図13aは、バルーン130について単一ドーム構造を有する組立体7の実施形態を示し、その一方で図13bは、バルーン130について二重バルーン/ドーム構成を有する組立体7の実施形態を示す。組立体7は、ポリマー加工技術分野において公知の様々な真空成形法および他の関連方法を用いて所望の形状に真空成形される薄いポリマーフィルムを使用して製造することができる。好適なポリマーフィルムとしては、0.005”の具体的な実施形態を伴う、約0.003から約0.010”の範囲の厚みを有するポリエチレンフィルムが挙げられる。好ましい実施形態では、前記組立体の1つもしくは複数の構成要素(例えば、バルーン130、160など)を接合する必要をなくすために単体構造を有するように前記組立体を製造する。しかし、組立体7を多数の部分(例えば、半分部分)、または構成要素(例えば、バルーン)から製造し、その後、ポリマー/医療デバイス技術分野において公知の様々な接合法を用いてそれらを接合することも企図される。
ここで図15a〜15f、16a〜16bおよび17a〜17bを参照して、第一の折り畳み段階210では、バルーン160をバルーン172と共にバルブフィッティング158に外嵌し、その過程でバルブフィッティング158の反対側に反転させる(図15a参照)。次いで、段階211において、バルーン160とバルブ158の折り畳まれた組み合わせに対して直角にバルーン172を折り畳む(図15b参照)。次いで、バルーン130の二重ドーム実施形態についての段階212では、バルーン130の2つの半分部分130’および130”を互いに折り重ね、曝露されたバルブ150を残す(例えば15cを参照して、バルーン130の単一ドーム実施形態については、それ自体に折り重ねられる、図15e参照)。折り畳まれたバルーン130をバルブフィッティング158およびバルーン160の反対側に180°折り曲げる最終折り畳み段階213を行って、図15eに示す二重ドーム構成についての最終折り畳み組立体8ならびに図15eおよび15fに示す単一ドーム構成についての最終折り畳み組立体8’を得ることができる。次いで、1つもしくは複数の送達組立体178を段階214において組立体8(典型的にはバルーン72の2つの面72f)に取り付けて、(図16aおよび16bの実施形態に示す)最終組立体9を得、その後、カプセル120にそれを挿入する。挿入段階215の後の組立体9が挿入された最終組み立てバージョンのデバイス110を図17aおよび17bに示す。
ここで図20a〜20iを参照して、小腸壁または大腸壁などのGI管内の部位に医薬品101を送達するためのデバイス110の使用方法を説明する。段階およびそれらの順番が例示的なものであり、他の段階および順番も企図されることは理解されるはずである。デバイス110が小腸SIに侵入した後、キャップコーティング120c’は、上部小腸における塩基性pHによって分解され、それに起因して、図20bの段階400に示すようにキャップ120p’が分解する。次いで、バルブ150は小腸内の流体に曝露され、それに起因して、図20cの段階401に示すようにバルブが分解し始める。次いで、図20dに示すように、段階402においてバルーン130が(ガス169生成に起因して)拡張する。次いで、図20eに示すように、段階403においてバルーン160のセクション160’が拡張し始めて、カプセルボディからの組立体178の押し出しを開始する。次いで、図20fに示すように、段階404において、バルーン160のセクション160’および160”が完全に膨張されてカプセルボディから組立体178を完全に押し出して、カプセルの横軸120ALと小腸の横軸LAIを位置合わせするのに役立つようにカプセル長120lを伸長させる。この間に、(バルーンが完全に膨張して、他にガス169が行く場所がないことに起因して)バルーン60内の圧力増加からバルブ155が働かなくなり始めている。次いで、図20gに示すように、段階405では、バルブ155が完全に開口してバルーン172を膨張させ、そしてそのバルーン172が(ボディ120”から完全に押し出された)ここではもう完全に曝露された組立体178を径方向外方に腸壁IW内へと押す。次いで、図20hに示すように、段階406において、バルーン172は、拡張し続けて、ここで、組織貫入部材を腸壁IWに進入させる。次いで、段階407では、バルーン172は、(バルーン160および130と共に)空気が抜けてしまい、その結果、引き戻され、腸壁IWに留置された組織貫入部材が残る。また、カプセルのボディ部分120P”は、デバイス110の他の生分解性部分と共に、(コーティング120c”の分解に起因して)完全に分解される。分解されなかったいずれの部分も消化からの蠕動収縮によって小腸により遠位に運ばれ、最終的には排泄される。
本発明の様々な実施形態の上述の説明は、例証および説明を目的として提供したものである。開示する寸分違わない形態に本発明を限定するためのものではない。多くの修飾、変形および洗練が当業者には明らかである。例えば、デバイスの実施形態を、様々な小児科および新生児利用ならびに様々な獣医学的利用のためにサイズ調整または別様に適応させることができる。また、本明細書に記載する具体的なデバイスおよび方法の非常に多くの等価物を常例的実験のみを用いて突きとめることができることは、当業者には理解される。かかる等価物は、本発明の範囲内であると見なされ、下記添付クレームによって包含される。
1つの実施形態からの要素、特徴または行為を容易に組み換えて、または他の実施形態からの1つもしくは複数の要素、特徴または行為で置換して、本発明の範囲内で非常に多くの追加の実施形態を形成することができる。さらに、他の要素と組み合わせるように示されているかまたは記載されている要素は、様々な実施形態において、独立型要素として存在することができる。したがって、本発明の範囲は、記載した実施形態の明細に限定されず、代わりに、添付のクレームによってのみ限定される。