JP2014517023A - ペプチドの抽出方法および液相ペプチド合成におけるその使用 - Google Patents

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Abstract

本発明は、ペプチドカップリング反応により得られる反応混合物からペプチドを抽出する方法であって、
該反応混合物が、ペプチドと、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドおよびN−メチル−2−ピロリドンからなる群から選択される極性非プロトン性溶媒とを含むこと;ならびに
該方法が、
a)該反応混合物にトルエンである成分a1)と水である成分a2)とを加えて、有機層および水層からなる二相系を得ることを含む工程、および
b)ペプチドを含む有機層と水層を分離することを含む工程
を含むこと
を特徴とする方法に関する。
本発明の特に好ましい実施形態においては、n−ヘプタン、2−メチルテトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトニトリルおよびテトラヒドロフランからなる群から選択される有機溶媒1とトルエンとの組み合わせを本発明の抽出方法に使用する。この抽出工程は、液相におけるペプチド調製方法に好ましく使用される。

Description

本発明は、ペプチドカップリング反応により得られる反応混合物からペプチドを抽出する方法に関する。本発明の方法は液相ペプチド合成(LPPS)法において使用することが好ましい。反応混合物からペプチドを抽出する本発明の方法は、他のペプチド合成法においても使用することができ、たとえば固相ペプチド合成(SPPS)法により調製された合成ペプチドを切断した後、このペプチドを単離する際に使用することができる。また、本発明の方法は固相−液相ハイブリッドペプチド合成法においても使用することができる。さらに、本発明のペプチド抽出方法は、酵母や細菌などの自然源からペプチドを単離するために使用することができ、具体的には、組換え技術によって発現させたペプチドを単離するために使用することができる。
本願明細書においてアミノ酸およびペプチドの命名法は、他に記載がない限り“Nomenclature and symbolism for amino acids and peptides”, Pure & Appl. Chem. 1984, Vol. 56, No. 5, pp. 595-624の記載に従うものとする。
次の略語は他に記載がない限り以下に示す意味を有する。
ACN アセトニトリル
Boc tert−ブトキシカルボニル
Bsmoc 1,1−ジオキソベンゾ[b]チオフェン−2−イルメチルオキシカルボニル
Bzl ベンジル
Cbz ベンジルオキシカルボニル
DCC N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
DCM ジクロロメタン
DEA ジエチルアミン
DIPE ジイソプロピルエーテル
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMA N,N−ジメチルアセトアミド
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
EDC 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
eq 当量
EtOAc 酢酸エチル
Fmoc フルオレニル−9−メトキシカルボニル
h 時間
HOBt 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
HOBt・H2O 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール1水和物
HPLS 高速液体クロマトグラフィー
LPPS 液相ペプチド合成
MeTHF 2−メチルテトラヒドロフラン
min 分
MS 質量分析
NMP N−メチル−2−ピロリドン
OMe メトキシ
OtBu tert−ブトキシ
PG 保護基
PyBOP ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ピロリジノ)−ホスホニウムヘキサフルオロホスファート
SPPS 固相ペプチド合成
TAEA トリス(2−アミノエチル)アミン
TBTU O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート
tBu tert−ブチル
TEA トリエチルアミン
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
TOTU O−[シアノ(エトキシカルボニル)メチレンアミノ]−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート
Trt トリチル
UV 紫外線
ペプチドの抽出方法は、通常、液相ペプチド合成(LPPS)、固相ペプチド合成(SPPS)、固相−液相ハイブリッドペプチド合成などの様々なペプチド合成法において使用される。
LPPSはペプチドの工業的大量生産に使用されることが特に多い。LPPSにおいては、通常、部分的に保護された2つのアミノ酸またはペプチド、すなわち、保護されていないC末端カルボン酸基を有するアミノ酸またはペプチドと、保護されていないN末端アミノ基を有するアミノ酸またはペプチドとをカップリングする。カップリング工程の終了後、得られたペプチドのN末端アミノ基またはC末端カルボン酸基の保護基(PG)を特異的に切断することによってN末端アミノ基またはC末端カルボン酸基を脱保護することができ、後続のカップリング工程を行うことができる。通常、LPPSは、残った保護基(PG)すべてを除去する包括的な脱保護工程を行うことによって完了する。
ペプチドの取り扱い、具体的にはLPPSにおける保護されていないC末端カルボン酸基および/または保護されていないN末端アミノ基を有するペプチドの取り扱いは往々にして困難である。これは、このようなペプチドが一般的な有機溶媒に溶解しにくいことが原因である。概して、一般的な有機溶媒に対するペプチドの溶解性はペプチド鎖が長くなればなるほど低下する。
ジクロロメタン(DCM)は適切な反応溶媒としてLPPSで一般的に使用されている。DCMは溶媒特性に優れ、沸点が低く、水との混和性が低いことから、DCMを用いることで反応混合物の後処理として水溶液による抽出を行うことが可能となる。しかしながら、DCMを工業規模で使用すると環境に悪影響を及ぼす恐れがあり、また、DCMは密度が大きいことから、水溶液を用いてDCM層を抽出しようとすると時間と費用を要するため、工業規模でのDCMの使用は通常限定的である。
さらに、最近開発された高効率なカップリング試薬、たとえば、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ピロリジノ)−ホスホニウムヘキサフルオロホスファート(PyBOP)やO−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TBTU)などはDCMに対する溶解性が低い。これらのカップリング試薬は大きなペプチド断片2つをカップリングする際に特に有利であり、このような大きなペプチド断片のカップリングに他のカップリング試薬を使用すると収率が低くなることが知られている。
さらに、ペプチドの多くは中性および塩基性条件下においてDCMには溶解しにくい一方、たとえばN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの極性非プロトン性溶媒にはよく溶解する。したがって、これらの極性非プロトン性溶媒は、従来よりLPPSの反応溶媒として単独またはテトラヒドロフラン(THF)などの極性の低い溶媒と混合して使用されている。
一方、LPPSに極性非プロトン性溶媒を使用することには多くの欠点がある。極性非プロトン性溶媒の沸点は高いため、反応混合物を蒸発濃縮することが難しい。さらに、極性非プロトン性溶媒は水と混和することから、反応混合物の後処理として水溶液による直接抽出を行うことは不可能である。
LPPSを工業規模で実施する場合、通常、各カップリング工程後に中間体ペプチドを直接沈殿させて、反応混合物から単離する。これによって、反応しなかった出発材料、副産物、過剰なカップリング試薬や塩基などの不純物から分離することができる。ペプチドカップリング反応の終了後、通常、反応混合物を貧溶媒(たとえばジエチルエーテルや水など)に添加することによってペプチドを沈殿させる。しかしながら、既知の問題として、反応混合物を貧溶媒に添加するとゲルが形成されることが知られている。
さらに、一般的に極性非プロトン性溶媒はペプチドの沈殿過程を阻害するため、ペプチドが粘着性のあるゴム状固形物として沈殿し、濾過および乾燥が難しくなる。場合によっては、沈殿したペプチドを濾過することができず、さらには沈殿したペプチドをフィルター上に移すことができないこともある。特に、工業規模でペプチドを沈殿させることは難しい場合が多く、多大な時間が必要とされ、濾過時間によってリードタイムが左右される。この問題は、沈殿工程において極性非プロトン性溶媒に対する貧溶媒の体積比を増加させることよって部分的に解決することができる。実際上、濾過可能な形態のペプチド沈殿物を得るためには適切な貧溶媒が大量に必要とされる。
さらに、ペプチド沈殿物中に残留する極性非プロトン性溶媒は、トリフルオロ酢酸(TFA)を用いた次の脱保護工程を阻害することが知られている。したがって、酸により切断可能な保護基(PG)、たとえば、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、トリチル(Trt)、tert−ブチル(tBu)、tert−ブトキシ(OtBu)などを切断する前に、極性非プロトン性溶媒よりもさらに揮発性の高い溶媒でペプチド沈殿物を洗浄して、残留する極性非プロトン性溶媒を除去する工程がさらに必要とされる。
関連技術
WO2005/081711は、薬物−リンカー−リガンド結合体、薬物−リンカー化合物、およびがん、自己免疫疾患または感染症を治療するためのこれらの使用方法に関する。この特許文献では、酢酸エチル、ジクロロメタンおよびtBuOH/CHCl3混合物を使用した、ペプチドベースの薬剤の調製方法およびペプチドの抽出方法などが開示されている。
US5,869,454はアルギニンケト−アミド酵素阻害剤に関する。この特許文献では、このような阻害剤の合成および酢酸エチルによる抽出などが開示されている。
US2005/0165215はペプチドの合成方法および該合成方法におけるペプチドの単離方法に関する。この特許文献はさらにペプチドを大規模合成するための改良に関する。この特許文献においては、ペプチド抽出に適切な溶媒として、ジクロロプロパン、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロフルオロカーボン、クロロフルオロハイドロカーボン、これらの混合物などのハロゲン化有機溶媒が提案されている。好ましい溶媒はジクロロメタンである。
C. H. Schneiderら(Int. J. Peptide Protein Res. 1980, 15, pp. 411-419)は、中間体の精製を液液抽出(二相法)により行う溶液中のペプチド合成方法を報告している。ペプチド抽出用溶媒としてジクロロメタンが使用されている。
J. W. van Nispen(Pure and Appl. Chem. 1987, Vol. 59, No. 3, pp. 331-344)は、(ポリ)ペプチドの合成および分析に関して概説している。この文献においては、ペプチド成分の最適な分離条件を見つけるために、様々な特性を有する溶媒を多様に組み合わせることが可能であることが教示されている。この目的を達成するためにいわゆるCraig装置が一般的に使用されており、この装置では、下相を固定し、上相を移動させることによって多段階的に分配が行われる。
US2010/0184952には、Fmoc基で保護されたアミノ酸化合物をアミンと反応させることにより脱保護して得られる反応混合物からジベンゾフルベンおよび/またはジベンゾフルベンアミン付加体を淘汰する方法であって、該反応混合物を、炭素数5以上の炭化水素溶媒および該炭化水素溶媒に混和しない極性有機溶媒(但し、アミド系有機溶媒を除く)中で攪拌、分層させ、ジベンゾフルベンおよび/またはジベンゾフルベンアミン付加体が溶解した炭化水素溶媒層を除去する工程を含むことを特徴とする方法が開示されている。この方法においては、アミノ酸エステルまたはペプチドは極性有機溶媒中に移行する。かかる極性有機溶媒としては、アセトニトリル、メタノール、アセトン等またはそれらの混合溶媒が挙げられ、アセトニトリルまたはメタノールが好ましい。
L. A. Carpinoら(Organic Process Research & Development 2003, 7, pp. 28-37)は、高速かつ連続した液相ペプチド合成を報告している。この文献の方法ではトリス(2−アミノエチル)アミンの存在下でペプチド断片のFmoc保護基およびBsmoc保護基の脱保護が行われており、この方法は短ペプチドのグラム単位での高速かつ連続した液相合成および比較的長い(22mer)断片(hPTH 13-34)の合成に使用できることが確認されている。後者の合成の場合、粗生成物の純度は固相法により得られた試料よりも有意に高いことが報告されている。Bsmocを用いたこの方法では、カップリング−脱保護サイクル毎に伸長される部分的に脱保護されたペプチドをシリカゲルショートカラムに通して濾過を行う新たな技法を取り入れることによって最適化がなされている。
しかしながら、L. A. Carpinoらによって報告された方法にはいくつかの制約がある。すなわち、この方法は反応溶媒としてDCMを使用しているため、DCMに対して難溶性を示すペプチドの調製に使用することはできない。さらに、高価なトリス(2−アミノエチル)アミン(TAEA)を大量に使用することから、このことによっても工業規模でこの方法を利用することが難しくなっている。
したがって、特に工業規模での生産を目的とした、ペプチドを調製するための時間効果および費用効果の高い合成方法が強く求められている。このような方法は、LPPSにおけるDCMの使用およびDMF、DMA、NMPなどの極性非プロトン性溶媒の使用により生じる問題点を解決できるものでなければならない。
驚くべきことに本発明者らは、構造的に多様なペプチドの多くがトルエンに対して優れた溶解性を示すこと、ならびにトルエンは、n−ヘプタン、2−メチルテトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトニトリルおよびテトラヒドロフランからなる群(この群を「有機溶媒1」と呼ぶ)から選択される有機溶媒と組み合わせて用いることが好ましいことを見出した。具体的には、有機溶媒1と組み合わせたトルエンに対するペプチドの溶解性は、トルエン単独に対するものよりも概して高い。さらに本発明者らは、トルエンまたは有機溶媒1と組み合わせたトルエンと水とを含む二相系において、一般的な極性非プロトン性溶媒の大部分は水層に移行することを見出した。
したがって、トルエン単独または有機溶媒1と組み合わせたトルエンと水とを含む系は、極性非プロトン性溶媒を含む混合物からのペプチドの抽出に非常に適している。本発明の一実施形態では、ペプチドを含む得られた有機層を部分的に蒸発させ、次いで適切な貧溶媒(この群の溶媒を「有機溶媒2」と呼ぶ)を添加することにより、有機層中に溶解しているペプチドを沈殿させる。ペプチドを沈殿させる際には極性非プロトン性溶媒は実質的に含まれていないため、得られたペプチドを容易に濾過することができる。本発明の抽出方法を使用することによって、ペプチドの濾過に必要とされる時間を大幅に短縮することができる。したがって、本発明の抽出方法を使用することによって、極性非プロトン性溶媒を使用することにより生じるLPPSの問題点を見事に解決することができる。
本発明は、ペプチドカップリング反応により得られる反応混合物からペプチドを抽出する方法であって、
該反応混合物が、ペプチドと、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドおよびN−メチル−2−ピロリドンからなる群から選択される極性非プロトン性溶媒とを含むこと;
該方法が、
a)該反応混合物にトルエンである成分a1)と水である成分a2)とを加えて、有機層および水層からなる二相系を得ることを含む工程、および
b)ペプチドを含む有機層と水層を分離することを含む工程
を含むこと;ならびに
工程a)で得られる該二相系の体積組成比が、
極性非プロトン性溶媒:トルエン=1:20〜1:2、および
極性非プロトン性溶媒:水=1:20〜1:2であること
を特徴とする方法に関する。
本発明の好ましい一実施形態は、ペプチドカップリング反応により得られる反応混合物からペプチドを抽出する方法であって、
該反応混合物が、ペプチドと、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドおよびN−メチル−2−ピロリドンからなる群から選択される極性非プロトン性溶媒とを含むこと;
該方法が、
a)トルエンである成分a1)と、水である成分a2)と、n−ヘプタン、2−メチルテトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトニトリルおよびテトラヒドロフランからなる群から選択される有機溶媒1である成分a3)とを加えて、有機層および水層からなる二相系を得ることを含む工程、および
b)ペプチドを含む有機層と水層を分離することを含む工程
を含むこと;ならびに
工程a)で得られる該二相系の体積組成比が、
極性非プロトン性溶媒:トルエン=1:20〜1:2、
極性非プロトン性溶媒:有機溶媒1=1:5〜30:1、
極性非プロトン性溶媒:水=1:20〜1:2、および
トルエン:有機溶媒1=50:1〜1:1であること
を特徴とする方法に関する。
好ましい実施形態において、工程a)で得られる二相系の体積組成比は、
極性非プロトン性溶媒:トルエン=1:6〜1:3、
極性非プロトン性溶媒:有機溶媒1=1:1〜4:1、
極性非プロトン性溶媒:水=1:5〜1:3、および
トルエン:有機溶媒1=10:1〜2:1である。
特に好ましい実施形態では、極性非プロトン性溶媒はN,N−ジメチルホルムアミドまたはN−メチル−2−ピロリドンである。
本発明のさらに別の実施形態では、二相系は有機溶媒1を含んでいない。
本発明の好ましい一実施形態では、ペプチドの抽出毎にペプチドの沈殿操作は行わない。すなわち、ペプチドの1つまたは複数の保護基を切断して、これにより得られた部分的に保護されていないペプチドを抽出し、このペプチドを含む有機層を次のペプチドカップリング反応に使用する。したがって、本発明によって、工業規模でのペプチドの調製に適した連続的LPPSを行うための効率的な合成方法が提供される。
本発明の連続的LPPSは、後述する実施例において説明されるような、保護基としてBoc、FmocおよびBzlを使用したペプチド合成に非常に適している。
ペプチドBoc-Pro-Ile-Leu-Pro-Pro-Glu(OBzl)-Glu(OBzl)-Tyr(Bzl)-Leu-OBzlのBoc保護基の除去速度に対する残留DMFの影響を示すグラフである。 DMFの非存在下で沈殿させたペプチドBoc-Ser(Bzl)-Phe-Pro-Ile-Leu-Pro-Pro-Glu(OBzl)-Glu(OBzl)-Tyr(Bzl)-Leu(OBzl)の写真である。
抽出方法
本発明は、ペプチドカップリング反応により得られる反応混合物からペプチドを抽出する方法であって、
該反応混合物が、ペプチドと極性非プロトン性溶媒とを含むこと;ならびに
該方法が、
a)該反応混合物にトルエンである成分a1)と水である成分a2)とを加えて、有機層および水層からなる二相系を得ることを含む工程、および
b)ペプチドを含む有機層と水層を分離することを含む工程
を含むこと
を特徴とする方法に関する。
本発明の好ましい一実施形態は、ペプチドカップリング反応により得られる反応混合物からペプチドを抽出する方法であって、
該反応混合物が、ペプチドと、DMF、DMAおよびNMPからなる群から選択される極性非プロトン性溶媒とを含むこと;ならびに
該方法が、
a)トルエンである成分a1)と、水である成分a2)と、n−ヘプタン、2−メチルテトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトニトリルおよびテトラヒドロフランからなる群から選択される有機溶媒1である成分a3)とを加えて、有機層および水層からなる二相系を得ることを含む工程、および
b)ペプチドを含む有機層と水層を分離することを含む工程
を含むこと
を特徴とする方法に関する。
成分a1)、成分a2)および成分a3)は混合してもよく、この混合はどのような順序で行ってもよい。本発明の抽出方法においてペプチドが沈殿しない限り、これらのうち2つの成分または3つの成分すべてを前もって混合してから、これら3成分を添加することもできる。
極性非プロトン性溶媒を含む混合物は、ペプチドカップリング反応により得られる粗反応混合物であることが好ましい。界面活性剤として作用する化合物がこの混合物に含まれていると本発明の抽出方法における相分離を阻害しうるため、この混合物はこのような化合物を全く含まないことが好ましい。特に好ましい実施形態では、この混合物はカチオン性界面活性剤や非イオン性界面活性剤などの従来技術において公知の界面活性剤を含んでいない。
ペプチドおよび極性非プロトン性溶媒を含む混合物への成分a1)、成分a2)および成分a3)の添加は、本発明の抽出方法においてペプチドが沈殿しない限り、どのような順序で行ってもよい。たとえば、ペプチドおよび極性非プロトン性溶媒を含む混合物と、トルエンとを混合し、ここに水を加え、最後に有機溶媒1を加えることができる。また、ペプチドおよび極性非プロトン性溶媒を含む混合物を水に加えた後に、トルエンおよび有機溶媒1を添加することもできる。
本発明の特に好ましい実施形態では、ペプチドおよび極性非プロトン性溶媒を含む混合物と、トルエンおよび有機溶媒1とを混合するが、トルエンおよび有機溶媒1はいずれを先に添加してもよい。次いで水を加える。
添加される水(成分a2))は、塩類(たとえば無機塩類)などの溶存成分を含んでいてもよいと理解される。
得られた二相系は激しく攪拌することが好ましい。得られた二相系の攪拌は、抽出操作に一般的に用いられかつ当技術分野において公知の混合機を使用して行うことができる。たとえば、バッチ抽出を行う場合にはジェットミキサーまたは攪拌ミキサーを使用して二相系を攪拌することができる。
抽出操作に適した機器は、主として本発明の抽出方法を実施する規模および抽出温度に応じて選択される。また、本発明の抽出方法はバッチ抽出法または連続抽出法を使用して行うことができる。ペプチドに最適な抽出を達成するために、必要に応じて本発明の抽出方法を複数回繰り返すことも可能である。
攪拌を行った後、相分離させて、2つの液体層(有機層および水層)を形成させることが好ましい。有機層は水層よりも密度が小さい。相分離は沈降管を使用してまたは遠心分離によって生じさせてもよい。相分離に必要とされる時間は、本発明の抽出方法を実施する規模および使用する機器に左右される。相分離に必要とされる時間は1時間未満であることが好ましく、10分未満であることがより好ましく、1分未満であることが特に好ましい。
相分離が生じた後、ペプチドは主として有機層に含まれており、有機層にはトルエンがさらに含まれ、場合によっては有機溶媒1がさらに含まれている。ペプチドを含む上層の有機層は水層と分離されている。本発明の抽出方法を実施後、ペプチド全体の90重量%より多くのペプチドが有機層に含まれ、10重量%未満が水層に含まれることが好ましい。本発明の抽出方法を実施後、ペプチド全体の98重量%より多くのペプチドが有機層に含まれ、2重量%未満が水層に含まれることがさらにより好ましい。本発明の抽出方法を実施後、ペプチド全体の99重量%より多くのペプチドが有機層に含まれ、1重量%未満が水層に含まれることが特に好ましい。
本発明の抽出方法によって、ペプチドカップリング反応により得られる粗反応混合物からペプチドを効率的に抽出することができる。有機層に対する極性非プロトン性溶媒の溶解性は水層に対するものよりも大幅に低い。したがって、抽出を行った後、ペプチドを含む有機層は極性非プロトン性溶媒をわずかな量しか含まない。
本発明の抽出方法を実施後、極性非プロトン性溶媒全体の15体積%未満が有機層に含まれ、極性非プロトン性溶媒全体の85体積%より多くの極性非プロトン性溶媒が水層に含まれることが好ましい。さらに、本発明の抽出方法を実施後、極性非プロトン性溶媒全体の5体積%未満が有機層に含まれ、極性非プロトン性溶媒全体の95体積%より多くの極性非プロトン性溶媒が水層に含まれることがより好ましい。本発明の抽出方法を実施後、極性非プロトン性溶媒全体の2体積%未満が有機層に含まれ、極性非プロトン性溶媒全体の98体積%より多くの極性非プロトン性溶媒が水層に含まれることが特により好ましい。この条件を達成するために繰り返し抽出が必要となる場合がある。
重要なことには、本発明による抽出方法は、極性非プロトン性溶媒の大部分からペプチドを分離できるだけでなく、カップリング試薬(尿素、テトラフルオロホウ酸塩など)に由来する塩および副産物からもペプチドを分離することができる。ペプチドカップリング反応により得られる粗反応混合物にn−ヘプタンまたはジエチルエーテルなどの疎水性貧溶媒を添加してペプチドを直接沈殿させた場合、塩および副産物は通常除去することができない。さらに、これらの塩および副産物は、ペプチドの後処理に使用されるクロマトグラフィーカラムの性能を低下させることが知られている。調製したペプチドを医薬品有効成分として使用する場合、カラムクロマトグラフィーによりさらに精製することが必須とされる。
したがって、ペプチドを沈殿させた後、必要に応じてカラムクロマトグラフィーで精製してもよい。ペプチドを医薬品有効成分として使用する場合、このような精製工程をさらに追加する。したがって、本発明による抽出方法は、反応混合物から直接沈殿させる方法よりも高純度のペプチドを単離することができる。
本発明の抽出方法により得られる二相系の組成は、有機層と水層の間における、ペプチドおよび極性非プロトン性溶媒の分配係数に大きな影響を及ぼす。以下において比率は体積/体積比で示す。
極性非プロトン性溶媒:トルエンの体積比は、1:20〜1:2の範囲であることが好ましい。この体積比は1:10〜1:2の範囲であることが好ましく、1:6〜1:3の範囲であることが特に好ましい。
トルエンおよび有機溶媒1の組み合わせに対するペプチドの溶解性は、トルエン単独に対するものよりも高いことが確認されている。したがって、使用する有機溶媒1の量が十分に多い場合、本発明の抽出方法において得られる有機層に対するペプチドの溶解性はとりわけ高い。極性非プロトン性溶媒:有機溶媒1の体積比は1:5〜30:1の範囲であることが好ましい。この体積比は1:3〜10:1の範囲であることが好ましく、1:1〜4:1の範囲であることが特に好ましい。
トルエン:有機溶媒1の体積比は50:1〜1:1の範囲であることが好ましい。この体積比は20:1〜2:1の範囲であることが好ましく、10:1〜2:1の範囲であることが特に好ましい。
極性非プロトン性溶媒:水の体積比は、本発明の抽出方法の効率および水層に対するペプチドの溶解性に大きな影響を及ぼす。具体的には、二相系における極性非プロトン性溶媒:水の体積比が1:2より高い場合、すなわち、水層に含まれる極性非プロトン性溶媒が34体積%よりも多い場合、水層へのペプチドの溶解性はかなり高くなる。したがって、極性非プロトン性溶媒:水の体積比は1:20〜1:2の範囲であることが好ましい。この体積比は1:10〜1:3の範囲であることが好ましく、1:5〜1:3の範囲であることが特に好ましい。
ペプチドを含む混合物中の極性非プロトン性溶媒は、DMFおよびNMPからなる群から選択されることが好ましい。
したがって、トルエン単独および有機溶媒1と組み合わせたトルエンはいずれも本発明のペプチド抽出方法に特に適している。トルエンは容易に再利用可能で安価な溶媒であり、ヒトおよび水生生物に対して比較的毒性が低い。したがって、本発明は工業規模で有利に使用することができる。
有機溶媒1が、n−ヘプタン、2−メチルテトラヒドロフラン、酢酸エチル(EtOAc)、酢酸イソプロピル、アセトニトリル(ACN)およびテトラヒドロフラン(THF)からなる群、より好ましくはEtOAc、酢酸イソプロピル、ACNおよびTHFからなる群、特に好ましくはACNおよびTHFからなる群から選択される場合、トルエンと有機溶媒1との組み合わせに対するペプチドの溶解性は特に高い。本発明のペプチド抽出方法の特に好ましい実施形態においては、有機溶媒1はACNおよびTHFからなる群から選択される。
本発明のペプチド抽出方法において使用される成分a2)は、水のみからなっていてもよい。しかしながら、成分a2)が少なくとも1種の無機塩類をさらに含んでいる場合、成分a2)とトルエンとの混和性および成分a2)と有機溶媒1との混和性、すなわち水層へのペプチドの溶解性を大幅に低下させることができる。さらに、成分a2)が少なくとも1種の無機塩類を含んでいる場合、有機層中の水の含有量は低下する。
好ましい一実施形態においては、成分a2)は、塩化ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムおよびリン酸水素ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種の無機塩類を含んでいる。別の実施形態では、成分a2)は酸などの他の化合物をさらに含む。
具体的には、成分a2)は、pH2〜11の範囲において、緩衝剤として作用しない無機塩類を含んでいてもよい。そのような無機塩類を添加すると、水層へのペプチドの溶解性を低下させることができ、本発明の抽出方法において相分離に必要とされる時間を短縮させることができる。たとえば、成分a2)は塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウムを含んでいてもよい。成分a2)中に含まれる無機塩類の濃度は、1〜20重量%の範囲であることが好ましく、5〜15重量%の範囲であることがより好ましい。塩化ナトリウムのような塩は二相分離を促進するために使用され、緩衝剤として作用する塩は水層中の酸または塩基を選択的に抽出するために使用される。
成分a2)のpHは、水層へのペプチドの溶解性およびいくつかの不純物の溶解性に大きな影響を及ぼす。さらに、成分a2)のpHは、ペプチドの化学的安定性およびその保護基(PG)の化学的安定性に応じて選択される。本発明の抽出方法において、ペプチドカップリング反応に使用した第三級塩基の大部分が水層中に含まれるように、成分a2)のpHは2〜11の範囲であることが好ましく、5〜8の範囲であることが特に好ましい。成分a2)のpHは、酸または塩基を添加することによって、かつ/または緩衝剤を使用することによって調整することができる。
成分a2)のpHの調整に使用することができる酸は、成分a2)に含まれる該酸が本発明のペプチド抽出方法を阻害せず、かつペプチドの分解を引き起こさないものであれば特に限定されず自由に選択することができる。たとえば、硫酸、塩酸、リン酸、トリフルオロ酢酸およびクエン酸などのブレンステッド酸をこの目的のために使用することができる。
成分a2)のpHの調整に使用することができる塩基は、成分a2)に含まれる該塩基が本発明のペプチド抽出方法を阻害せず、かつペプチドの分解を引き起こさないものであれば特に限定されず自由に選択することができる。たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムなどのアルカリ金属の水酸化物は、成分a2)のpHを調整するのに適している。
本発明の抽出方法において水層のpHが所望の範囲内に維持されるように、成分a2)は緩衝剤を含むことが好ましい。緩衝剤は、塩化アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムおよびリン酸ナトリウムからなる群から選択されることが好ましい。成分a2)に含まれる緩衝剤の濃度は、1〜10重量%の範囲が好ましく、3〜8重量%の範囲がさらにより好ましい。
必要に応じて、ペプチドを含む得られた有機層はさらに水溶液で少なくとも1回洗浄してもよい。この目的に使用する水溶液のpHは2〜11の範囲であることが好ましい。
ペプチドカップリング反応の条件および使用する試薬によっては、有機層は、遊離の第1級、第2級または第3級アミノ基を有する化合物、たとえば保護されていないN末端アミノ基を有するペプチドまたは第三級塩基を不純物として含みうる。このような場合、pH2〜7の水溶液で有機層を洗浄することが好ましい。
また、有機層が、遊離のカルボン酸基を有する化合物、たとえば保護されていないC末端カルボン酸基を有するペプチドを含む場合もある。このような場合は、pH7〜11の水溶液で有機層を洗浄することが好ましい。
本発明のペプチド抽出方法を実施するのに好ましい温度(以下「抽出温度」と呼ぶ)は、使用する溶媒の選択およびペプチドの特性に左右される。抽出温度は、使用する溶媒の混和性、ならびに有機層および水層に対するペプチドの溶解性に大きな影響を及ぼす。したがって、本発明の抽出方法において二相系が形成され、かつ有機層に対するペプチドの溶解性が十分に高くなるように抽出温度を選択する。本発明のペプチド抽出方法は、0〜60℃の抽出温度において行うことが好ましい。抽出温度は20〜30℃の範囲であることが特に好ましい。
ペプチドカップリング反応の条件および使用するカップリング試薬によっては、本発明の抽出方法を実施する前および/または実施している最中に固形物が形成されることがある。たとえば、カルボジイミドをカップリング試薬として使用する場合がこれに当てはまる。このため、ペプチドを含む混合物、極性非プロトン性溶媒、トルエン、(必要に応じて有機溶媒1)、および成分a2)を混合することにより得られる二相系の濾過が必要となる場合がある。したがって、本発明の一実施形態では、ペプチドを含む有機層を分離する前に二相系の濾過を行う。
本発明の抽出方法によって抽出されるペプチドはどのようなペプチドであってもよい。本発明の抽出方法によって抽出されるペプチドは100個以下のアミノ酸残基を含むことが好ましく、50個以下のアミノ酸残基を含むことがより好ましく、20個以下のアミノ酸残基を含むことが最も好ましい。該ペプチドのアミノ酸は、D−α−アミノ酸および/またはL−α−アミノ酸、β−アミノ酸であってもよく、少なくとも1個の第1級および/または第2級アミノ基と少なくとも1個のカルボン酸基とを含む他の有機化合物であってもよい。アミノ酸はα−アミノ酸であることが好ましく、L−α−アミノ酸であることがさらにより好ましく、これらの中でもタンパク質を構成するアミノ酸が特に好ましい。
ペプチドの調製
本発明の別の態様は、液相におけるペプチドの調製方法であって、
aa)カップリング試薬および必要に応じて第三級塩基の存在下において、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドおよびN−メチル−2−ピロリドンからなる群から選択される極性非プロトン性溶媒中でペプチドカップリング反応を行う工程;
bb)得られたペプチドを上記の方法によって抽出する工程;ならびに
cc)工程bb)において得られた有機層の少なくとも一部を蒸発させる工程
を含む方法に関する。
工程aa)のペプチドカップリング反応のための出発材料として、部分的に保護された2つのアミノ酸の組み合わせ、部分的に保護された2つのペプチドの組み合わせ、または部分的に保護されたアミノ酸1つと部分的に保護されたペプチド1つの組み合わせが使用される。
本発明による液相ペプチド調製方法は、液相ペプチド合成(LPPS)に非常に適している。本発明の一実施形態では、工程aa)のペプチドカップリング反応において、SPPSにより調製され部分的に保護された2つのペプチドの組み合わせが使用される。したがって、本発明の方法はペプチド断片のカップリングを行うことができ、SPPSと組み合わせて使用することができる。
工程aa)のペプチドカップリング反応は、ペプチドカップリング反応に通常用いられる慣用の反応条件および試薬を使用して行う。
ペプチドカップリング反応は、極性非プロトン性溶媒中において1以上のカップリング試薬を使用することにより従来実施されており、好ましくは1以上のカップリング添加剤の存在下、好ましくは1以上の第三級塩基の存在下で実施される。
ペプチドカップリング反応に使用されるカップリング試薬は、ペプチドカップリング反応条件下において極性非プロトン性溶媒と反応しないものであり、かつ活性カルボン酸基に隣接した立体中心のエピマー化が実質的に起こらないものが選択される。したがって、カップリング試薬としては、O−1H−ベンゾトリアゾールのホスホニウム塩またはウロニウム塩およびカルボジイミドカップリング試薬が好ましい。
上記ホスホニウム塩およびウロニウム塩は、BOP(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)−ホスホニウムヘキサフルオロホスファート)、PyBOP(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリスピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート)、HBTU(O−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)、HCTU(O−(1H−6−クロロ−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)、TCTU(O−(1H−6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート)、HATU(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)、TATU(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート)、TBTU(O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート)、TOTU(O−[シアノ(エトキシカルボニル)メチレンアミノ]−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート)、HAPyU(O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)オキシビス−(ピロリジノ)−ウロニウムヘキサフルオロホスファート)、PyAOP(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート)、COMU(1−[(1−(シアノ−2−エトキシ−2−オキソエチリデンアミノオキシ)−ジメチルアミノ−モルホリノメチレン)]−メタンアミニウムヘキサフルオロホスファート)、PyClock(6−クロロ−ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート)、PyOxP(O−[(1−シアノ−2−エトキシ−2−オキソエチリデン)アミノ]−オキシトリ(ピロリジン−1−イル)−ホスホニウムヘキサフルオロホスファート)、およびPyOxB(O−[(1−シアノ−2−エトキシ−2−オキソエチリデン)アミノ]−オキシトリ(ピロリジン−1−イル)−ホスホニウムテトラフルオロボラート)からなる群から選択されることが好ましい。
ホスホニウムカップリング試薬またはウロニウムカップリング試薬から選択される好ましいカップリング試薬はTBTU、TOTUおよびPyBOPである。
カルボジイミドカップリング試薬は、ジイソプロピル−カルボジイミド(DIC)、ジシクロヘキシル−カルボジイミド(DCC)、および水溶性カルボジイミド(WSCDI)(たとえば1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)など)からなる群から選択されることが好ましい。
水溶性カルボジイミドはカルボジイミドカップリング試薬として特に好ましく、水溶性カルボジイミドのうちEDCが最も好ましい。
ペプチドカップリング反応で使用される第三級塩基は、ペプチドおよびカップリング試薬と適合することが好ましく、本発明の抽出方法を阻害するような界面活性剤としての作用を持たないことが好ましい。
ペプチドカップリング反応で使用される第三級塩基の共役酸のpKaは7.5〜15が好ましく、7.5〜10がより好ましい。第三級塩基は、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)およびトリエチルアミン(TEA)などのトリアルキルアミン、N,N−ジエチルアニリンなどのN,N−ジ−C1-4アルキルアニリン、コリジン(2,4,6−トリメチルピリジン)などの2,4,6−トリ−C1-4アルキルピリジン、ならびにN−メチルモルホリンなどのN−C1-4アルキルモルホリン(C1-4アルキルはそれぞれ独立して同一でも異なっていてもよい直鎖または分岐鎖C1-4アルキル)からなる群から選択されることが好ましい。ペプチドカップリング反応に使用される第三級塩基として、DIPEA、TEAおよびN−メチルモルホリンが特に好ましい。
カップリング添加剤は、活性化エステルを形成する求核性ヒドロキシ化合物であることが好ましく、この化合物は酸性求核性N−ヒドロキシ基(Nはイミド、またはN−アシルもしくはN−アリール置換トリアゼノである)を有していることがより好ましく、トリアゼノ型カップリング添加剤は、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール誘導体(もしくは1−ヒドロキシベンゾトリアゾール誘導体)またはN−ヒドロキシベンゾトリアジン誘導体であることが好ましい。このようなカップリング添加剤はWO94/07910およびEP 0 410 182に記載されている。
好ましいカップリング添加剤は、N−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)、6−クロロ−1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(Cl-HOBt)、N−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン(HOOBt)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)およびエチル−2−シアノ−2−ヒドロキシイミノアセタート(CHA)からなる群から選択される。CHAはOXYMAPURE(登録商標)の商品名で入手可能である。CHAは、ベンゾトリアゾールベースのカップリング添加剤と比較して活性カルボン酸の立体中心のエピマー化をより抑制することから、効果的なカップリング添加剤であることが判明している。さらに、CHAはたとえばHOBtまたはCl-HOBtよりも爆発性が低いため取り扱いが容易であり、また、カップリング反応の進行を反応混合物の色変化によって視覚的にモニタリングすることができるというさらなる利点を有する。カップリング添加剤としてHOBtをペプチドカップリング反応に使用することが好ましい。
本発明の好ましい実施形態では、ペプチドカップリング反応における試薬の組み合わせは、TBTU/HOBt/DIPEA、PyBOP/TEA、EDC/HOBtおよびEDC/HOBt/DIPEAからなる群から選択される。
ペプチドカップリング反応の反応溶媒は、DMF、DMA、NMPおよびこれらの混合物からなる群から選択される。ペプチドカップリング反応に使用するのに特に好ましい反応溶媒は、DMFおよびNMPからなる群から選択される。
反応溶媒は実質的に水を含まないことが好ましい。反応溶媒中の水の含有量は1重量%未満であることが好ましく、0.1重量%未満であることがより好ましく、0.01重量%未満であることがさらにより好ましく、0.001重量%未満であることが特に好ましい。溶媒中の水の含有量は、従来技術において公知の標準試験法ASTM E203-8に従いカールフィッシャー滴定法によって決定することができる。
ペプチドカップリング反応の反応溶媒は、第1級アミン、第2級アミン、カルボン酸および脂肪族アルコールからなる群から選択される不純物を実質的に含まないことが好ましい。準化学量論量または化学量論量で使用されるいずれの出発材料においても、ペプチドカップリング反応中にこれらの不純物との望ましくない反応を起こす割合が1mol%未満であれば、ペプチドカップリング反応の反応溶媒はこれらの不純物を実質的に含まないと見なされる。
適切な反応温度は、使用するカップリング試薬およびペプチドの安定性に応じて選択される。ペプチドカップリング反応を行う反応温度は、−15℃〜50℃であることが好ましく、−10℃〜30℃であることがより好ましく、0℃〜25℃であることがさらに好ましい。
ペプチドカップリング反応は大気圧において行うことが好ましい。しかしながら、大気圧よりも高いまたはわずかに低い圧力下でペプチドカップリング反応を行うことも可能である。
ペプチドカップリング反応は周囲雰囲気下で行うことが好ましい。しかしながら、窒素およびアルゴンなどの保護ガス雰囲気下も好ましい。
本願において「反応時間」は、反応による変換が実質的に完了するのに必要とされる時間を指す。準化学量論量または化学量論量で使用される出発材料の量が最初の量の5mol%未満、好ましくは最初の量の2mol%未満に減少すれば、反応による変換が実質的に完了したと見なされる。反応の進行は当技術分野で公知の分析法を用いてモニタリングすることができ、たとえば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析、薄層クロマトグラフィー(TLC)、質量分析(MS)またはHPLC-MSを用いることができ、この目的に対してはHPLCが特に好ましい。
ペプチドカップリング反応の反応時間は15分〜20時間の範囲であることが好ましく、30分〜5時間の範囲がより好ましく、30分〜2時間の範囲がさらにより好ましい。
ペプチドカップリング反応の反応条件の説明における「部」は、ペプチドカップリング反応の出発材料として使用されるペプチドおよび/またはアミノ酸の総重量に対する割合を意味する。反応溶媒の使用量は、1〜30部が好ましく、5〜10部がより好ましい。
カップリング試薬の使用量は、反応性C末端カルボン酸基に対して0.9〜5モル当量が好ましく、1〜1.5モル当量がより好ましい。
カップリング添加剤の使用量は、カップリング試薬に対して0.1〜5モル当量が好ましく、0.5〜1.5モル当量がより好ましい。
第三級塩基の使用量は、カップリング試薬に対して1〜10モル当量が好ましく、2〜3モル当量がより好ましい。
本発明の液相ペプチド調製方法により、あらゆるペプチドを得ることができる。
本発明の液相ペプチド調製方法により得られるペプチドは、100個以下のアミノ酸残基を含むことが好ましく、50個以下のアミノ酸残基を含むことがより好ましく、20個以下のアミノ酸残基を含むことが最も好ましい。該ペプチドのアミノ酸は、D−α−アミノ酸、L−α−アミノ酸、またはβ−アミノ酸であってもよく、少なくとも1個の第1級および/または第2級アミノ基と少なくとも1個のカルボン酸基とを含む他の有機化合物であってもよい。本発明の液相ペプチド調製方法により得られるペプチドのアミノ酸はα−アミノ酸であることが好ましく、L−α−アミノ酸であることがさらにより好ましく、これらの中でもタンパク質を構成するアミノ酸が特に好ましい。
抽出工程の後、ペプチドを含む有機層を部分的に蒸発させることが好ましい。したがって、本願において、このようにして得られた有機層を「部分的に蒸発させた有機層」と呼ぶ。部分的な蒸発を行う温度は特に限定されず、ペプチドの熱安定性、およびトルエンの特性またはトルエンと有機溶媒1との混合物の特性に応じて選択される。有機層の部分的な蒸発は30〜50℃の温度で行うことが好ましい。必要に応じて、有機層の部分的な蒸発は20〜1000mbar(20〜1000hPa)の減圧下、好ましくは50〜200mbar(50〜200hPa)の減圧下で行う。当業者であれば、有機層の部分的な蒸発を行う圧力は蒸発操作を行う所望の温度に応じて調整することが好ましいことは理解できるであろう。
トルエンおよび有機溶媒1は十分な揮発性を有するため、ペプチドを含む有機層の部分的な蒸発は容易に実施することができる。
本発明の一実施形態では、ペプチドを含む有機層を直接、蒸発乾固させ、残った残渣をトルエンでも有機溶媒1でもない溶媒中に溶解する。しかしながら、ペプチドを含む有機層がMeTHFおよびTHFからなる群から選択される溶媒を30体積%よりも多く含んでいる場合、安全上の理由により完全に蒸発乾固させないことが好ましい。その代わり、ペプチドを含む有機層を部分的に蒸発させ、トルエンを添加してから蒸発乾固を行うことが可能である。
有機層中に含まれるトルエンは水との共沸混合物を形成するので、ペプチドを含む有機層中に微量に存在する水は有機層を部分的に蒸発させる工程において効果的に除去される。
好ましい一実施形態では、部分的に蒸発させた有機層と有機溶媒2とを混合することによってペプチドの大部分が沈殿する。
本発明の別の好ましい実施形態では、ペプチドを含む有機層を蒸発乾固させ、残った残渣をトルエンでも有機溶媒1でもない溶媒中に溶解する。次いで、得られた溶液を有機溶媒2と混合することによってペプチドを沈殿させる。
部分的に蒸発させた有機層:ペプチドを沈殿させるために使用される有機溶媒2の体積比は、沈殿工程の完全性および沈殿させたペプチドの特性に大きな影響を及ぼす。以下において比率は体積/体積比で示す。
部分的に蒸発させた有機層:有機溶媒2の体積比は、1:20〜1:1の範囲であることが好ましい。この体積比は1:12〜1:2の範囲であることが好ましく、1:6〜1:3の範囲であることが特に好ましい。
有機溶媒2は、大気圧における沸点が160℃未満の有機溶媒から選択されることが好ましい。有機溶媒2に対するペプチドの溶解性は、トルエンに対する溶解性および/またはトルエンと有機溶媒1との混合物に対する溶解性よりも低いことが好ましい。有機溶媒2は、アセトニトリル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルおよびn−ヘプタンからなる群から選択されることが好ましく、アセトニトリル、ジエチルエーテルおよびジイソプロピルエーテルからなる群から選択されることがより好ましく、ジイソプロピルエーテルおよびn−ヘプタンからなる群から選択されることが特に好ましい。
ペプチドを含む部分的に蒸発させた有機層は極性非プロトン性溶媒を実質的に含んでいないため、ペプチドの沈殿に必要とされる有機溶媒2の量は、ペプチドカップリング反応により得られる粗反応混合物を使用する従来の沈殿工程において使用される量よりも顕著に少ない。さらに、従来の沈殿工程とは異なり、ペプチドは粘着性を有さない固形物として沈殿する。
沈殿工程において、部分的に蒸発させた有機層中に含まれるペプチドの少なくとも80重量%が固形物として沈殿することが好ましい。部分的に蒸発させた有機層中に含まれるペプチドの少なくとも90重量%が固形物として沈殿することがより好ましい。部分的に蒸発させた有機層中に含まれるペプチドの少なくとも95重量%が固形物として沈殿することがさらにより好ましい。部分的に蒸発させた有機層中に含まれるペプチドの少なくとも98重量%が固形物として沈殿することが特に好ましい。
沈殿工程を行う温度(この温度を以下「沈殿温度」と呼ぶ)は、部分的に蒸発させた有機層の組成、有機溶媒2の選択およびペプチドの特性に左右される。
沈殿温度は、ペプチドの沈殿の完全性および沈殿したペプチドの物理的特性に大きな影響を及ぼす。沈殿工程は−10〜60℃の沈殿温度で行うことが好ましく、−10〜30℃の沈殿温度で行うことがさらにより好ましい。しかしながら、沈殿温度は−10〜0℃の範囲であることが特に好ましい。
ペプチドを含む部分的に蒸発させた有機層は極性非プロトン性溶媒を実質的に含んでいないため、沈殿したペプチドは容易に濾別することができる。したがって、濾過工程に必要とされる時間は大幅に短縮される。沈殿したペプチドは、濾別し減圧下で乾燥させることが好ましい。
しかしながら、沈殿したペプチドを遠心分離により分離することも可能である。
所望であれば、濾過により回収した濾液を再度部分的に蒸発させてから沈殿工程に付することができ、このようにして第2バッチのペプチド沈殿物を回収することができる。
本発明の別の実施形態では、ペプチドを含む部分的に蒸発させた有機層を、ペプチドの1つまたは複数の保護基(PG)を切断する試薬で直接処理する。ペプチドを含む部分的に蒸発させた有機層は極性非プロトン性溶媒を実質的に含んでいないため、ペプチドの1つまたは複数のPGを切断する試薬は特に限定されず自由に選択することができる。たとえば、ペプチドを含む部分的に蒸発させた有機層を酸分解試薬で処理することができ、この処理においては酸分解試薬と極性非プロトン性溶媒との間の望ましくない反応も保護基の切断の抑制も起こらない。ペプチドのN末端PGがtert−ブトキシカルボニル(Boc)基である場合、本発明のこの実施形態は特に好ましい。
本発明の別の実施形態では、部分的に蒸発させた有機層をジスルフィド架橋形成などの他の反応を行うために使用する。
本発明の別の実施形態では、ペプチドの1つまたは複数のPGを切断する試薬を、ペプチドカップリング反応により得られる反応混合物に直接添加する。標的とするPGの切断の完了後、得られたペプチドを反応混合物から抽出する。ペプチドのN末端PGがフルオレニル−9−メトキシカルボニル(Fmoc)基である場合、本発明のこの実施形態は特に好適である。
特定の一実施形態では、PG切断後のペプチドをトルエンまたはトルエンと有機溶媒1との混合物で抽出する。これは、NMPまたはDMFを含まない溶液中に保持することが難しいFmoc保護ペプチドに対して通常行われる。Fmocの切断後、このようなペプチドはトルエンと必要に応じて有機溶媒1とを含む有機層中に抽出することができる。
Bocで保護したペプチドの場合は上記とは逆に、Bocを切断する前にNMPおよびDMFを除去しなければならない。このようなペプチドは通常、>5体積%のTFAの存在下でトルエン、酢酸エチルまたはヘプタンに溶解する。
本発明のさらに別の実施形態では、ペプチドを含む有機層を上述のように蒸発乾固し、残った残渣をトルエンでも有機溶媒1でもない溶媒に溶解させ、次いでペプチドの1つまたは複数のPGを切断する試薬を加える。
保護基
アミノ酸もしくはペプチドの側鎖官能基の保護、またはアミノ酸もしくはペプチドのN末端アミノ基またはC末端カルボン酸基の保護のために本発明において使用される保護基(PG)は、以下の4つの異なる群に分類される。
1.塩基性の切断条件下で切断可能なPG(以下「塩基型PG」と呼ぶ)
2.強酸性の切断条件下で切断可能であるが、弱酸性の切断条件下では切断不可能なPG(以下「強力型PG」と呼ぶ)
3.弱酸性の切断条件下で切断可能なPG(以下「弱力型PG」と呼ぶ)
4.還元性の切断条件下で切断可能なPG(以下「還元型PG」と呼ぶ)
5.鹸化性の切断条件下で切断可能なPG(以下「鹸化型PG」と呼ぶ)
本発明の液相ペプチド調製方法において、従来の方法に従って使用されるPG、ならびにPGを切断するための典型的な反応条件、パラメータおよび試薬は当技術分野において公知であり、たとえば、T. W. Greene, P. G. M. Wuts “Greene's Protective Groups in Organic Synthesis” John Wiley & Sons, Inc., 2006;またはP. Lloyd-Williams, F. Albericio, E. Giralt, “Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins” CRC: Boca Raton, Florida, 1997に記載されている。
塩基性の切断条件は、塩基性切断溶液によるペプチドの処理を含む。塩基性切断溶液は、塩基性試薬および溶媒からなることが好ましい。本発明において使用される塩基性試薬は第2級アミンが好ましく、ジエチルアミン(DEA)、ピペリジン、4−(アミノメチル)ピペリジン、トリス(2−アミノエチル)アミン(TAEA)、モルホリン、ジシクロヘキシルアミン、1,3−シクロヘキサンビス(メチルアミン)−ピペラジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンおよびこれらの混合物からなる群から選択されることがより好ましい。本発明の液相ペプチド調製方法に使用される塩基性試薬は、DEA、TAEAおよびピペリジンからなる群から選択されることがさらにより好ましい。
塩基性切断溶液は添加剤をさらに含んでもよく、該添加剤は、6−クロロ−1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、エチル−2−シアノ−2−ヒドロキシイミノアセタートおよびこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
塩基性切断溶液の溶媒は、ペプチドカップリング反応に使用された極性非プロトン性溶媒と同一であることが好ましい。したがって、塩基性切断溶液の溶媒は、DMF、DMAおよびNMPからなる群から選択されることが好ましい。別法として、ペプチドカップリング反応後の反応混合物からペプチドを抽出する方法によって得られたペプチド含有有機層を上述のように蒸発乾固して、残った残渣を、DMF、DMA、ピリジン、NMP、アセトニトリルおよびこれらの混合物からなる群から選択される溶媒のいずれか1つに溶解し、次いで塩基性切断溶液で処理することもできる。実施例1に記載のように、Fmoc切断反応の反応混合物溶液中にペプチドを保持するためにDMFまたはNMPが必要とされる場合がある。
塩基性、強酸性、弱酸性、または還元性の切断条件に関する説明において「部」および「重量%」は、それぞれの切断条件に対応する群のPGを有するペプチドの重量に対する割合を意味する。たとえば、「5部の塩基性切断溶液を使用する」は、塩基型PGを有するペプチド1gの処理に塩基性切断溶液5gを使用することを意味する。
塩基性切断溶液の使用量は5〜20部が好ましく、5〜15部がより好ましい。塩基性試薬の量は、塩基性切断溶液の総重量に対して1〜30重量%の範囲であることが好ましく、10〜25重量%の範囲であることがより好ましく、15〜20重量%の範囲であることがさらにより好ましい。
本発明において定義されているように、強酸性の切断条件は強酸性切断溶液によるペプチドの処理を含む。強酸性切断溶液は酸分解試薬を含む。酸分解試薬は、TFA、塩酸(HCl)、塩酸(HCl)水溶液、フッ化水素酸(HF)溶液およびトリフルオロメタンスルホン酸などのブレンステッド酸;トリフルオロボラート・ジエチルエーテル付加物およびトリメチルシリルブロミドなどのルイス酸;ならびにこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
強酸性切断溶液は、ジチオトレイトール、エタンジチオール、硫化ジメチル、トリイソプロピルシラン、トリエチルシラン、1,3−ジメトキシベンゼン、フェノール、アニソール、p−クレゾールおよびこれらの混合物からなる群から選択される1以上の捕捉剤を含むことが好ましい。強酸性切断溶液は水、溶媒またはこれらの混合物をさらに含んでいてもよく、この溶媒は強力な切断条件下において安定性を示す溶媒である。
強酸性切断溶液の溶媒は、ペプチドを含む部分的に蒸発させた有機層に含まれる溶媒と同一であることが好ましい。したがって、強酸性切断溶液の溶媒は、トルエンまたはトルエンと有機溶媒1の組み合わせである。別法として、ペプチドを含む有機層を上述のように蒸発乾固し、残った残渣をACN、トルエン、DCM、TFAおよびこれらの混合物からなる群から選択される溶媒のいずれか1つに溶解することもできる。トルエンおよび有機溶媒1は十分な揮発性を有するため、有機層は容易に蒸発させることができる。
強酸性切断溶液の使用量は、10〜30部が好ましく、15〜25部がより好ましく、19〜21部がさらにより好ましい。酸分解試薬の量は強酸性切断溶液の総重量に対して30〜350重量%の範囲であることが好ましく、50〜300重量%の範囲であることがより好ましく、70〜250重量%の範囲であることがさらにより好ましく、100〜200重量%の範囲であることが特に好ましい。捕捉剤の総使用量は強酸性切断溶液の総重量に対して1〜25重量%であることが好ましく、5〜15重量%であることがより好ましい。
本発明による弱酸性の切断条件は、弱酸性切断溶液によるペプチドの処理を含む。弱酸性切断溶液は酸分解試薬を含む。酸分解試薬は、TFA、トリフルオロエタノール、塩酸(HCl)、酢酸(AcOH)、これらの混合物、および/またはこれらの含水混合物などのブレンステッド酸からなる群から選択されることが好ましい。
弱酸性切断溶液は水、溶媒またはこれらの混合物をさらに含んでいてもよく、この溶媒は弱い切断条件下において安定性を示す溶媒である。弱酸性切断溶液の溶媒は、ペプチドを含む部分的に蒸発させた有機層に含まれる溶媒と同一であることが好ましい。したがって、弱酸性切断溶液の溶媒は、トルエンまたはトルエンと有機溶媒1の組み合わせである。別法として、ペプチドを含む有機層を上述のように蒸発乾固し、残った残渣をACN、トルエン、DCM、TFAおよびこれらの混合物からなる群から選択される溶媒のいずれか1つに溶解することもできる。
弱酸性切断溶液の使用量は4〜20部が好ましく、5〜10部がより好ましい。酸分解試薬の量は、弱酸性切断溶液の総重量に対して0.01〜5重量%の範囲であることが好ましく、0.1〜5重量%の範囲であることがより好ましく、0.15〜3重量%の範囲であることがさらにより好ましい。
本発明の一実施形態において使用される還元性の切断条件は、還元性切断用混合物によるペプチドの処理を含む。還元性切断用混合物は触媒、還元剤および溶媒を含む。
還元性の切断条件に使用される触媒は、Pd(0)の誘導体、Pd(II)の誘導体および金属パラジウム含有触媒からなる群から選択され、Pd[PPh3]4、PdCl2[PPh3]2、Pd(OAc)2およびパラジウム−炭素(Pd/C)からなる群から選択されることがより好ましい。Pd/Cが特に好ましい。
還元剤は、Bu4N+BH4 -;NH3BH3;Me2NHBH3;tBu-NH2BH3;Me3NBH3;HCOOH/DIPEA;PhSO2H、tolSO2Naまたはi-BuSO2Naを含むスルフィン酸;これらの混合物;ならびに水素分子からなる群から選択されることが好ましく、tolSO2Naまたは水素分子であることがより好ましい。
還元性の切断条件下で使用される溶媒は、ペプチドを含む部分的に蒸発させた有機層に含まれる溶媒と同一であることが好ましい。したがって、還元性の切断条件下で使用される溶媒は、トルエンまたはトルエンと有機溶媒1の組み合わせであることが好ましい。別法として、ペプチドを含む有機層を上述のように蒸発乾固し、残った残渣をNMP、DMF、DMA、ピリジン、ACNおよびこれらの混合物からなる群から選択される溶媒のいずれか1つ、より好ましくはNMP、DMFまたはこれらの混合物に溶解することもできる。還元性の切断条件下で使用されるこれらの溶媒に対してペプチドが溶解性を示し、このような溶媒中に溶解することが好ましい。
還元性切断溶液の使用量は4〜20部が好ましく、5〜10部がより好ましい。
鹸化性の切断条件は、鹸化性切断溶液によるペプチドの処理を含む。鹸化性切断溶液は、鹸化試薬および溶媒からなることが好ましい。本発明において使用される鹸化試薬は、アルカリ金属の水酸化物またはアルカリ土類金属の水酸化物であることが好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択されることがより好ましい。本発明の液相ペプチド調製方法において使用される鹸化試薬は、水酸化ナトリウムであることがさらにより好ましい。
鹸化性切断溶液の溶媒は、THF、MeTHF、エタノール、メタノールおよびジオキサンからなる群から選択される溶媒と水との混合物を含むことが好ましい。
本発明によれば、塩基型PGは強酸性の切断条件下および弱酸性の切断条件下では切断できない。塩基型PGは、強酸性の切断条件下、弱い切断条件下、および還元性の切断条件下では切断できないことが好ましい。
「強力型PG」は、弱酸性の切断条件下および塩基性の切断条件下では切断できない保護基であると理解される。強力型PGは、弱酸性の切断条件下、塩基性の切断条件下、および還元性の切断条件下では切断できないことが好ましい。Bzlのような強酸性PGは通常、水素化によって切断される。通常、ペプチドの包括的な脱保護は非常に温和な条件下における水素化によって行われる。
弱力型PGは塩基性の切断条件下では切断できないが、強酸性の切断条件下では切断可能である。好ましくは、弱力型PGは塩基性の切断条件下および還元性の切断条件下では切断できないが、強酸性の切断条件下では切断可能である。
本発明の一実施形態によれば、塩基型PGはFmocであることが好ましい。強力型PGは、Boc、tBu、OtBuおよびCbzからなる群から選択されることが好ましい。弱力型PGはTrtおよび2−クロロフェニルジフェニルメチル基からなる群から選択されることが好ましい。還元型PGは、Bzl、N−メチル−9H−キサンテン−9−アミノ基およびCbzからなる群から選択されることが好ましい。鹸化型PGはOMeであることが好ましい。
本発明の液相ペプチド調製方法においては、次のペプチドカップリング反応を行う前に、ペプチドのN末端PGを脱保護反応により除去する。本発明によれば、N末端PGはFmocまたはBocであることが好ましい。
本発明の一実施形態において、Fmocは塩基性条件下で容易に除去することができるため、LPPSにおけるN末端PGとして非常に好ましい。さらに、ペプチドのN末端PGとしてFmocを使用すると、orthogonal systemにおいて側鎖PGと適合する。「orthogonal system」は、G. BaranayおよびR. B. Merrifield (JACS, 1977, 99, 22, pp. 7363-7365)によって定義されている。
本発明のさらに別の実施形態では、Bocは液相ペプチド調製方法に使用されるペプチドのN末端PGとして非常に好ましい。その除去は強酸性条件下で行うことができる。さらに、N末端PGとしてBocを使用した場合も、orthogonal systemにおいて側鎖PGと適合する。
本発明によれば、ペプチドのC末端PGは最終的な脱保護工程で除去される。
C末端PGとして、OtBu、Blz、OMe、NH2、2−クロロフェニル−ジフェニルメチルエステルまたはN−メチル−9H−キサンテン−9−アミドが好ましい。
本発明の一実施形態において、Bzlは上記の還元性切断条件下で容易に除去することができるため、液相ペプチド調製方法におけるC末端PGとして非常に好ましい。さらに、C末端PGとしてBzlを使用するとorthogonal systemにおいて側鎖PGと適合する。
本発明の別の実施形態では、液相ペプチド調製方法のC末端PGとしてOtBuが使用される。その除去は上記の強酸性切断条件下で行うことができる。さらに、C末端PGとしてOtBuを使用した場合も、orthogonal systemにおいて側鎖PGと適合する。
本発明の別の実施形態では、液相ペプチド調製方法のC末端PGとしてOMeが使用される。OMeは鹸化によって容易に切断することができ、ペプチドのN末端PGがBocである場合において特に有用である。
本発明のさらに別の実施形態では、疎水性PGをペプチドのC末端に使用することによって有機層へのペプチドの溶解性をさらに高めることができる。この目的のために、弱酸性条件下で切断可能な弱力型PGを用いてペプチドのC末端カルボン酸基を保護してもよい。このような弱力型PGとして2−クロロフェニルジフェニルメチルエステルおよびN−メチル−9H−キサンテン−9−アミドなどが挙げられる。これらのPGはペプチド断片の合成に特に有用であり、得られたペプチド断片はconvergent法によるペプチド合成に使用することができる。また、これらのC末端カルボン酸保護基(PG)は別の重要な利点を有する。すなわち、これらのC末端カルボン酸保護基(PG)は弱酸性条件下で切断されるため、convergent合成法においてペプチド断片として使用する保護されたペプチドをSPPSの代わりに液相合成を用いて合成することができる。実際に、2−クロロフェニルジフェニルメチルエステルおよびN−メチル−9H−キサンテン−9−アミドは、保護されたペプチド断片を合成する目的でSPPS用樹脂のリンカーとして使用される化学官能基である。
本発明によれば、液相ペプチド調製方法によって得られたペプチドのアミノ酸側鎖のヒドロキシ基、アミノ基、チオ基およびカルボン酸基を適切なPGで保護することによって望ましくない副反応を回避することが望ましい。さらに、側鎖にPGを使用することによって、通常、極性非プロトン性溶媒に対するペプチドの溶解性、ならびにトルエンおよび/またはトルエンと有機溶媒1の組み合わせに対するペプチドの溶解性が向上する。
通常、側鎖のPGは、液相ペプチド調製方法におけるN末端アミノ基の脱保護工程中に除去されないものが選択される。したがって、N末端アミノ基またはC末端カルボン酸基のPGと側鎖のPGは通常異なるものであり、これらのPGはorthogonal systemにおいて適合することが好ましい。
本発明によれば、好ましい側鎖基はtBu、Trt、Boc、OtBuおよびCbzである。
液相ペプチド調製方法によって目的とするペプチドのアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列が得られれば、N末端のPG、C末端のPGおよび側鎖のPGを除去して、保護されていない目的のペプチドを得ることが好ましい。この工程を「包括的な脱保護」と呼ぶ。液相ペプチド調製方法においては、PGの特性に応じて上記の弱酸性、強酸性、または還元性の切断条件下で包括的な脱保護を行えるようなPGを選択することが好ましい。
側鎖のPGは通常LPPSが完了するまで保持される。包括的な脱保護は、使用された種々の側鎖PGに適用可能な条件下で実施することができる。異なる種類の側鎖PGを選択した場合、これらのPGを連続的に切断してもよく、これはたとえば分岐ペプチドを合成する場合に行われる。同時に切断可能な側鎖PGを選択すると有利であり、これに加えて、LPPSによって調製したペプチドのN末端PGまたはC末端PGも同時に切断できる側鎖PGを選択するとさらに有利である。
本発明の一実施形態では、部分的に蒸発させた有機層中のペプチドのN末端PGを直接除去することができる。したがって、この場合、有機溶媒2を使用してペプチドを沈殿させる必要がなく、中間体ペプチドを単離することなくたとえば連続的LPPSとして本発明のLPPSを実施することができる。
ペプチドのN末端PGの特性に応じて、この工程に適切な切断条件を選択することができる。
ペプチドのN末端PGが上述したような強力型PGまたは弱力型PGである場合、ペプチドを含む有機層をTFAまたはHClで処理することが好ましい。ペプチドを含む有機層は極性非プロトン性溶媒を実質的に含んでいないため、ペプチドのN末端PGの除去は、TFAまたはHClと極性非プロトン性溶媒との間の望ましくない反応によって抑制されない。本発明の一実施形態においては、ペプチドのN末端PGはBoc基である。
ペプチドのN末端PGが上述したような塩基型PGである場合、従来技術において知られているように有機塩基を使用してペプチドを脱保護することができる。この目的のために、ペプチドカップリング反応により得られた反応混合物を、DEA、TAEAおよびピペリジンからなる群から選択される塩基性試薬で直接処理し、次いで保護されていないN末端を有するペプチドを反応混合物から抽出することが好ましい。別法では、ペプチドを含む有機層を塩基性試薬で処理する。さらに別法として、ペプチドを含む有機層を上述のように蒸発乾固し、残った残渣をDMF、DMA、ピリジン、NMPおよびこれらの混合物からなる群から選択される溶媒のいずれか1つに溶解し、次いで塩基性試薬で処理することもできる。
本発明の好ましい一実施形態においては、ペプチドのN末端PGはフルオレニル−9−メトキシカルボニル(Fmoc)基である。ペプチドのFmoc基の切断にはジベンゾフルベンの形成が伴う。塩基性試薬としてDEAまたはピペリジンを使用し、塩基性切断溶液の溶媒がアセトニトリルである場合、保護されていないN末端を有するペプチドを含む得られた溶液をたとえばn−ヘプタンなどの炭化水素で洗浄することによりジベンゾフルベンを実質的に除去する。Fmoc基を切断するための塩基性試薬としてTAEAを使用した場合、得られた溶液は本発明の抽出方法で処理する。したがって、後続のペプチドカップリング反応を行う前に、保護されていないN末端を有するペプチドを含む溶液からはジベンゾフルベンが実質的に除去されている。
ペプチドのN末端PGの切断後、保護されていないN末端を有するペプチドを含む溶液を少なくとも部分的に蒸発させ、次のペプチドカップリング反応あるいは包括的な脱保護工程に使用することができる。
したがって、本発明は、一般的に用いられるSPPS法と比べて多くの利点を有する連続的LPPS法を提供する。
本発明の連続的LPPSの場合、ペプチドカップリング反応および脱保護反応における反応混合物中の試薬の濃度はSPPSの場合よりも高い。結果として、反応時間はより短くなり、より少ない容量のバッチ式反応器を使用して所定量の目的とするペプチドを合成することができる。本発明の連続的LPPSによるペプチド合成に必要とされる総時間は、SPPSを使用して合成を行う場合に必要とされる総時間とほぼ同じである。したがって、本発明の連続的LPPSを使用することによって作業コストを節約できる。
本発明のLPPSのペプチドカップリング反応において必要とされる、保護されていないC末端カルボン酸基を有するアミノ酸またはペプチドの過剰量(1.1〜1.2当量)は、対応するSPPSのペプチドカップリング反応におけるアミノ酸またはペプチドの過剰量(1.5当量以上)よりも少ない。さらに、SPPSにおいては各ペプチドカップリング工程の後に樹脂をすすぐため大量の溶媒が必要とされる。したがって、SPPSに必要とされる溶媒の量は本発明の連続的LPPSよりも顕著に多い。したがって、SPPSを使用した場合と比較して、本発明の連続的LPPSを使用した場合は材料費を大幅に節約できる。
上記に加えて、本発明の連続的LPPS法のスケールアップは、対応するSPPS法のスケールアップよりも容易であることが知られており、本発明の連続的LPPSによって調製された目的のペプチドは、SPPSによって調製された同一のペプチドよりも純度が高い。
要約すると、本発明の連続的LPPSは、従来技術において公知の他のペプチド合成方法よりも多くの利点を備えており、工業規模におけるペプチドの調製に特に有用である。
以下の実施例により本発明の代表的な実施形態を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
他に記載がない限り実験はすべて室温(20±3℃)および大気圧(1013±50kPa)で行った。
方法の説明
A)HPLC分析
HPLC法Aにおける検出はUVフォトダイオードアレイ検出器を用いて行った。

工程1 試料調製:
移動相A:0.1体積%TFAを含む水
移動相B:0.085体積%TFAを含むACN

工程2 クロマトグラフィーの条件:
MIH-009-2TG11法
カラム: Purospher Star RP18 55×4mm
オーブン温度: 40℃
流速: 2.0mL/分
検出器波長: 215nm
グラジエント時間: 15分
グラジエント組成: 2〜78%B(5分)→78〜98%B(10分)

工程3 クロマトグラフィーによるプロファイル分析:
単離された生成物の組成はクロマトグラフィーにおける全てのピークの面積を測定することにより決定した。決定された予測生成物の純度は該生成物に対応するピーク面積(%)に一致する。
1.装置および機器
ガスクロマトグラフ: 水素炎イオン化検出器およびオートインジェクターシステムを備え、データ収集ソフトウェアと接続したGC
分析用GCカラム: 溶融シリカカラム
長さ50m;内径0.53mm;固定相:CP SIL 8CB DF=5.0μm
試薬: メタノール(分析等級)
2.試料の調製
試験溶液および対照溶液
10mLのメスフラスコに試料400μLを正確に入れ、メタノールを標線まで加えた。
3.クロマトグラフィーの条件
キャリアガス: ヘリウム 30kPa
オーブン温度: 35℃(14分)→(5℃/分)→55℃(3分)→(5℃/分)→110℃(5分)→(10℃/分)→225℃(5分)
インジェクター温度: 225℃
検出器温度: 260℃
注入量: 1μL
注入方法: スプリット
スプリット流量: 85mL/分
比率: 24
濾過性の測定
沈殿したペプチドを含む混合物を、孔径20μmのフィルターを備えた直径2.7cmの濾過カラムに移した。20℃、圧力50mbarの条件で濾過を行った。流速およびケーキの高さを測定し、濾過係数Kを次式により求めた。
K=母液量(mL)×ケーキの高さ(cm)/フィルターの面積(cm2)/圧力(bar)/濾過時間(分)
実施例1 MeTHF/THF/NaCl溶液系、EtOAc/THF/NaCl溶液系およびトルエン/THF/NaCl溶液系におけるNMPの抽出
トルエン/THF混合溶媒(本発明)の抽出性をMeTHF/THF混合溶媒およびEtOAc/THF混合溶媒(比較例)の抽出性と比較した。実験は150g/LのNaClを含む水溶液を用いて行った。この実施例の系にペプチドは含まれていなかった。
体積比は以下のとおりであった。
NMP:EtOAc:THF:NaCl溶液=1:3:3:3
NMP:MeTHF:THF:NaCl溶液=1:3:3:3
NMP:トルエン:THF:NaCl溶液=1:3:3:3
水層中のNMP分率をGCによって測定した。実験結果を表1に要約する。
上記の表1から明らかなように、トルエン/THF混合溶媒を用いて抽出を行うと、EtOAc/THFまたはMeTHF/THFを用いて抽出した場合よりも水層中のNMP分率が増加した。これに応じて、トルエン/THFを用いて抽出した後の有機層中のNMP含有量は、MeTHF/THFまたはEtOAc/THFを用いて抽出した場合よりも減少した。
実施例2 H-Tyr(Bzl)-Leu-OBzlの合成
実施例2.1 Boc-Tyr(Bzl)-Leu-OBzlのLPPS
Boc-Tyr(Bzl)-OH(4.7g、12.7mmol)およびH-Leu-OBzl・Tos(5.0g、12.7mmol)を20℃でDMF(25mL)中に溶解した。反応混合物を-8℃に冷却し、次いでHOBt・H2O(2.0g、13.1mmol、1.0当量)およびEDC・HCl(2.8g、14.6mmol)を加えた。HPLCにより反応の完了が確認されるまで反応温度を-5〜-10℃の範囲に維持した。反応の進行は、反応混合物から得た試料5μLを酢酸:水(9:1)で50倍に希釈し、上記のMIH-009-2TG11法に従って分析することによりモニタリングした。
実施例2.2 Bocの切断:H-Tyr(Bzl)-Leu-OBzl
実施例2.1に従って調製した混合物にトルエン(90mL)を加え、以下のものにより反応混合物から順次抽出を行った。
1)20g/L NaClを含む水溶液(90mL)
2)150g/L NaClおよび50g/L NaHCO3を含む水溶液(90mL)
3)20g/L NaClおよび50g/L NaHCO3を含む水溶液(90mL)
4)20g/L NaClおよび50g/L NaHCO3を含む水溶液(90mL)
5)150g/L NaClを含む水溶液(90mL)
次いで、合わせた有機層を体積が20mLになるまで減圧下35℃で濃縮した。
15℃でフェノール(0.25g、2.6mmol)およびTFA(20mL)を加えることによってBoc保護基を除去した。反応が完了したことをHPLCにより確認した後、減圧下35℃で反応混合物を蒸発させた。トルエン(3×25mL)と共蒸発させることによって残留TFAを除去した。反応の進行は、反応混合物から得た試料5μLをメタノールで30倍に希釈し、上記のMIH-009-2TG11法に従って分析することによりモニタリングした。
実施例3(比較例) Boc保護基の除去に対する残留DMFの影響:H-Pro-Ile-Leu-Pro-Pro-Glu(OBzl)-Glu(OBzl)-Tyr(Bzl)-Leu-OBzl
Boc-Pro-Ile-Leu-Pro-Pro-OH(3.5g)、H-Glu(OBzl)-Glu(OBzl)-Tyr(Bzl)-Leu-OBzl(5.0g)およびHOBt(0.88g)をDMF(20mL)中に溶解した。EDC・HCl(1.2g)およびTEA(1.5mL)を加えて-6〜0℃で攪拌しながら一晩かけてカップリング反応を行った。HPLC(MIH-009-2TG11法)により反応の完了を確認した。
反応混合物を濾過して不溶性塩類を除去した。反応混合物から得た試料1mLを以下の表2に記載の有機溶媒と混合し、次いでNaCl(15%w/v)およびNa2CO3(2.5%w/v)からなる水溶液3mLによる抽出を行った。有機層中のDMF含有量はGCによって決定した。
EtOAcにより抽出(試験No.2)を行うと、DCMにより抽出(試験No.1)を行った場合よりも有機層中のDMF含有量が減少した。
試験No.1および2で得られた材料を以下のようにさらに処理した。有機層を分離し、トルエンとの共蒸発を3回行うことによって溶媒を交換した(浴温=40℃、圧力=50mbar)。揮発性溶媒を完全に蒸発させた後、トルエン(4mL)およびフェノール(0.05g)を蒸発残留物に加えた。TFA(3.5mL)を加えることによってBocの切断を0℃で行った。この反応はHPLC(MIH-009-2TG11法)によりモニタリングした。
得られた結果を表3に要約し図1のグラフに示す。
結果
得られた材料中の微量のDMFはBoc保護基の除去を著しく抑制した。したがって、DCMを用いて抽出した材料におけるBocの切断の進行は、EtOAcを用いて抽出した材料の場合と比較して顕著に遅かった。
本発明の抽出方法を使用することによって、単離したペプチドからDMFなどの極性非プロトン性溶媒を効率的に分離することができる。したがって、本発明の抽出方法により単離したペプチド材料の酸分解切断は速やかに進行すると予想される。
実施例4(比較例) Boc-Ser(OBzl)-OHとH-Phe-Pro-Ile-Leu-Pro-Pro-Glu(OBzl)-Glu(OBzl)-Tyr-Leu(OBzl)とのカップリング
Boc-Ser(OBzl)-OH(1.62g、5.5mmol)を20℃でDMF(25mL)中に溶解し、粗生成物であるH-Phe-Pro-Ile-Leu-Pro-Pro-Glu(OBzl)-Glu(OBzl)-Tyr-Leu(OBzl)に加えた。HOBt・H2O(0.89g、5.8mmol)およびEDC・HCl(1.2g、6.3mmol)を加え、反応混合物を5℃に冷却した。反応の完了がHPLCにより確認されるまで反応混合物をこの温度で維持した。反応の進行は、反応混合物から得た試料5μLを酢酸:水(9:1)で50倍に希釈し、上記のMIH-009-2TG11法に従って分析することによりモニタリングした。
a)MeTHFによる抽出およびDIPE中における沈殿
Boc-Ser(Bzl)-Phe-Pro-Ile-Leu-Pro-Pro-Glu(OBzl)-Glu(OBzl)-Tyr(Bzl)-Leu(OBzl) 5gを含む反応混合物25mLを、100g/L NaClを含む水溶液(75mL)およびMeTHF(75mL)と混合した。十分に混合し相分離(約4分間)させた後、下層の水層を除去した。さらに、100g/L NaClを含む水溶液(3×75mL)を用いて上層の有機層からの抽出を3回行った。次いで有機層を単離し、残量が10mLになるまで30℃、60mbarで部分的に蒸発させた。0℃においてDIPE(250mL)を攪拌しながら、部分的に蒸発させた有機層を滴下することによってペプチドを沈殿させた。得られた混合物を、孔径20μmのフィルターを備えた直径2.7cmの濾過カラムに移した。50mbarの圧力下で濾過を行った。沈殿母液の全量(260mL)を濾過するのに3分45秒を要した。濾過後のケーキの高さは3.5cmであり、これより濾過係数(K)=848が得られた。固形物を回収し減圧下で乾燥した。ペプチド4.5gを固形物として単離した。
図2に、単離したペプチドの写真(40倍拡大)を示す。
抽出工程により得られた水層および沈殿母液をHPLCで分析した。検出されたペプチドの量は、実施例4により得られた反応混合物25mLに含まれる総ペプチド量の0.5重量%未満であった。
b)比較例:沈殿母液へのDMF添加による影響
ペプチドの濾過を行う前にDMF(2.5mL)を沈殿混合物に加えたこと以外は上記a)と同様に抽出および沈殿操作を行った。固形沈殿は直ちにゴム状固形物を形成し、濾過を行うことはできなかった。
c)比較例:DIPE中における直接沈殿
0℃においてDIPE(250mL)を攪拌しながら、Boc-Ser(Bzl)-Phe-Pro-Ile-Leu-Pro-Pro-Glu(OBzl)-Glu(OBzl)-Tyr(Bzl)-Leu(OBzl) 5gを含む実施例4において得られた反応混合物25mLを滴下し、沈殿物を生じさせた。粘着性を有するゴム状固形物としてペプチド沈殿物が得られた。二層分離後、上清をポンプで吸引して第2バッチ用のDIPE(250mL)と交換した。得られた混合物を1時間攪拌して、粘着性を有するゴム状固形物の凝集を解砕させた。二層分離後、上清を第3バッチ用のDIPE(250mL)と再度交換した。混合物を再度1時間攪拌し、次いで濾過カラムに移した。しかしながら、固形物の大部分は沈殿容器に付着したまま粘着性ゴム状固形物の形態を保ち、移動させることは不可能であった。母液の濾過には2分30秒を要し、ケーキの高さは1.75cmであった。これより濾過係数(K)=636が得られた。回収した固形物を減圧下で乾燥させた。
ペプチド2.45gが単離された。
d)比較例:水中における直接沈殿
0℃において水(250mL)を攪拌しながら、Boc-Ser(Bzl)-Phe-Pro-Ile-Leu-Pro-Pro-Glu(OBzl)-Glu(OBzl)-Tyr(Bzl)-Leu(OBzl) 5gを含む実施例4において得られた反応混合物25mLを滴下し、沈殿物を生じさせた。非常に薄い沈殿物の層が得られ、次いでこれを濾過カラムに移した。濾過速度は非常に遅く(<3mL/h)、濾過の最初の段階において多量の沈殿物がフィルターを通過し、約65分後には明らかなフィルターの閉塞が見られた。さらに、透明な沈殿上清は得られなかった。したがって、得られた沈殿物を回収することは不可能であった。
結果
DMFの存在下でペプチドBoc-Ser(Bzl)-Phe-Pro-Ile-Leu-Pro-Pro-Glu(OBzl)-Glu(OBzl)-Tyr(Bzl)-Leu(OBzl)を沈殿させると(実施例b)〜d))、ゴム状固形物が形成された。この固形物は取り扱いが困難であった。実施例a)では、微量に含まれていたDMFを抽出により実質的に除去した後、ペプチドBoc-Ser(Bzl)-Phe-Pro-Ile-Leu-Pro-Pro-Glu(OBzl)-Glu(OBzl)-Tyr(Bzl)-Leu(OBzl)を沈殿させた。得られた生成物は良好な収率で単離することができ、容易に濾過することができた。
本発明の抽出方法を使用することによって、ペプチドからDMFなどの極性非プロトン性溶媒を効率的に分離することができる。したがって、ペプチドの沈殿過程を阻害するといった極性非プロトン性溶媒が及ぼす望ましくない影響を排除することができる。

Claims (16)

  1. ペプチドカップリング反応により得られる反応混合物からペプチドを抽出する方法であって、
    該反応混合物が、ペプチドと、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドおよびN−メチル−2−ピロリドンからなる群から選択される極性非プロトン性溶媒とを含むこと;
    該方法が、
    a)該反応混合物にトルエンである成分a1)と水である成分a2)とを加えて、有機層および水層からなる二相系を得ることを含む工程、および
    b)ペプチドを含む有機層と水層を分離することを含む工程
    を含むこと;ならびに
    工程a)で得られる該二相系の体積組成比が、
    極性非プロトン性溶媒:トルエン=1:20〜1:2、および
    極性非プロトン性溶媒:水=1:20〜1:2であること
    を特徴とする方法。
  2. 工程a)において、n−ヘプタン、2−メチルテトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトニトリルおよびテトラヒドロフランからなる群から選択される有機溶媒1である成分a3)を前記反応混合物にさらに加えて、有機層および水層からなる二相系を得ること;ならびに
    工程a)で得られる該二相系の体積組成比が、
    極性非プロトン性溶媒:トルエン=1:20〜1:2、
    極性非プロトン性溶媒:有機溶媒1=1:5〜30:1、および
    極性非プロトン性溶媒:水=1:20〜1:2であること
    を特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 工程a)で得られる前記二相系の体積組成比が、
    極性非プロトン性溶媒:トルエン=1:6〜1:3、
    極性非プロトン性溶媒:有機溶媒1=1:1〜4:1、および
    極性非プロトン性溶媒:水=1:5〜1:3であること
    を特徴とする請求項2に記載の方法。
  4. 前記極性非プロトン性溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミドおよびN−メチル−2−ピロリドンからなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜3の1項以上に記載の方法。
  5. 前記有機溶媒1が、アセトニトリルおよびテトラヒドロフランからなる群から選択されることを特徴とする請求項2〜4の1項以上に記載の方法。
  6. 前記成分a2)が、塩化ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムおよびリン酸水素ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種の無機塩類を含むことを特徴とする請求項1〜5の1項以上に記載の方法。
  7. 前記成分a2)のpHが5〜8であることを特徴とする請求項1〜6の1項以上に記載の方法。
  8. 工程b)の前に、工程a)で得られた前記二相系の濾過を行うことを特徴とする請求項1〜7の1項以上に記載の方法。
  9. 工程a)および工程b)を20℃〜30℃で行うことを特徴とする請求項1〜8の1項以上に記載の方法。
  10. 液相におけるペプチドの調製方法であって、
    aa)カップリング試薬の存在下において、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドおよびN−メチル−2−ピロリドンからなる群から選択される極性非プロトン性溶媒中でペプチドカップリング反応を行う工程;
    bb)得られたペプチドを、請求項1〜10の1項以上に記載の方法によって抽出する工程;ならびに
    cc)工程bb)において得られた有機層の少なくとも一部を蒸発させる工程
    を含む方法。
  11. 前記カップリング試薬が、O−1H−ベンゾトリアゾールのウロニウム塩、O−1H−ベンゾトリアゾールのホスホニウム塩およびカルボジイミドカップリング試薬からなる群から選択されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
  12. 工程aa)の前記ペプチドカップリング反応を、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミンおよびN−メチルモルホリンからなる群から選択される第三級塩基の存在下で行うことを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
  13. dd)工程cc)で得られた前記有機層と、アセトニトリル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルおよびn−ヘプタンからなる群から選択される有機溶媒2とを混合する工程;
    ee)前記ペプチドの少なくとも大部分を沈殿させる工程;ならびに
    ff)沈殿させたペプチドを濾別する工程
    をさらに含む請求項10〜12の1項以上に記載の方法。
  14. 前記ペプチドのN末端保護基がtert−ブチルオキシカルボニル保護基である場合、工程cc)で得られた前記有機層をトリフルオロ酢酸で処理することによって、tert−ブチルオキシカルボニル保護基を除去することを特徴とする請求項10〜12の1項以上に記載の方法。
  15. 前記ペプチドのN末端保護基がフルオレニル−9−メトキシカルボニル保護基である場合、工程aa)の前記ペプチドカップリング反応により得られた反応混合物をピペリジンで処理することによって、フルオレニル−9−メトキシカルボニル保護基を除去することを特徴とする請求項10〜12の1項以上に記載の方法。
  16. 前記ペプチドのC末端カルボン酸基が、2−クロロフェニルジフェニルメチルエステルまたはN−メチル−9H−キサンテン−9−アミドで保護されていることを特徴とする請求項10〜15の1項以上に記載の方法。
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