JP2014514310A - 毛細血管漏出の予防及び治療のために手術時に投与されるプロスタサイクリン及びその類似体 - Google Patents

毛細血管漏出の予防及び治療のために手術時に投与されるプロスタサイクリン及びその類似体 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、手術中の毛細血管漏出を予防及び/又は治療するためのプロスタサイクリン類似体の新規の使用に関する。本発明の治療は、止血及び血管拡張に対する個別的又は最小限の影響を仲介する。
【解決手段】したがって、本発明は、出血のリスクを最小化しつつ、毛細血管漏出を防止する治療のためのプロスタサイクリン及びその類似体を提供する。本発明は、更に、プロスタサイクリン及びその類似体を含む医薬組成物及びパーツキット、及び治療方法を提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、毛細血管漏出の予防及び/又は治療のための手術時/手術後におけるプロスタサイクリン類似体の新規の使用に関する。本発明の治療は、止血及び血管拡張に対する個別的又は最小限の影響を仲介する。したがって、本発明は、手術時の出血のリスクを最小化しつつ、毛細血管漏出を防止する治療のためのプロスタサイクリン及びその類似体を提供する。本発明は、更に、プロスタサイクリン及びその類似体を含む医薬組成物及びパーツキット、及び毛細血管漏出を治療又は予防する方法を提供する。
内皮細胞は、心臓から最小の毛細血管に至るまで、循環系全体で血管の内側部分を覆っている。血管内皮の管腔表面には、グリコカリックス(糖衣)が存在し、これは膜結合性の大分子の層であり、通常は1μmを超える機能的な厚さを有する(Reitsma et al 2007)(一部の領域では、グリコカリックスが内皮細胞自体より厚い場合があることが明らかとなっている)。内皮グリコカリックスは、「血漿層」又は「内皮表面層」(ELS)とも呼ばれる。
内皮グリコカリックスは、血流の制御において重要な役割を果たし、血液の血球及び大分子溶質を遮断し、これらが内皮細胞膜に接触しない状態を確保することができる。したがって、グリコカリックスは、血管緊張の調節、血液及び組織間の流体及び溶質の交換、白血球遊走、止血の調節、更には、凝固及び炎症の反応の調節に能動的に関与する。
内皮グリコカリックスは、膜糖脂質及び糖タンパク質の炭水化物部分から成る。主にプロテオグリカンであり、更には糖タンパク質である幾つかの「骨格」分子を介して、内皮に接続されていると考えられる。これらは、血漿又は内皮に由来する可溶性分子が組み込まれたネットワークを形成する。可溶性成分の層と血流との間には動的平衡が存在し、グリコカリックスの組成及び厚さに継続的に影響する。内皮表面層内に固定された(したがって、正常な血液循環に量的に関与しない)血漿の量は、ヒトにおいて約700乃至1000 mlであり、したがって総血漿体積の3分の1となる。内皮グリコカリックスの大きな寸法は、大きく非常に重要な循環の区画となる。しかしながら、上述したように、容積は動的であり、酵素又は剪断による脱落の恐れがあるグリコカリックスの変化に影響される。加えて、虚血/再潅流、プロテアーゼ、腫瘍壊死因子、酸化低密度リポタンパク質、及び心房性ナトリウム利尿ペプチドは、グリコカリックスの分解を媒介可能であることが分かっている。内皮グリコカリックスの減少は、血小板凝集と、白血球粘着と、毛細血管漏出及び組織浮腫を発生させる内皮透過性の増加とにつながる。例えば、ラット心筋毛細血管におけるグリコカリックスの透過障壁機能の酵素による(部分的な)除去及びその後の喪失は、心筋浮腫につながることが明らかとなっている(van den Berg BM (2003))。加えて、ヘパラン硫酸等、グリコカリックスの一部となるプロテオグリカンは、炎症において極めて重要な役割を果たす。
手術と、同時に生じる組織損傷、炎症、流体投与、虚血、遊離酸素ラジカル等は、内皮の一般的状態及び内皮グリコカリックスを損傷する可能性を有し、これは重篤な術後合併症を発生させ、集中治療の必要性につながると共に患者の死亡率を上昇させる恐れがある。こうした合併症には、血液成分の異常な溢出及び血管外スペースでの流体の蓄積(透過性亢進)と、腹部コンパートメント症候群、単/多臓器不全又は全身性毛細血管漏出症候群等の臨床状態につながり得る血流の低下及び虚血の両方が部分的な原因となる組織機能不全である組織浮腫とをもたらす毛細血管漏出が含まれる。
プロスタサイクリンは、健康な内皮細胞が放出する自然発生プロスタグランジンであり、強力な血管拡張活性及び血小板凝集阻害活性を有する。こうした作用は、肺及び全身の動脈血管床の血管拡張を引き起こすため、及び/又は血小板凝集を阻害するために、プロスタサイクリン及びその類似体を投与することにより臨床環境において用いられてきた。こうした作用のため、消化性潰瘍、外傷、及び頭蓋出血等、出血過多又は低血圧のリスクが増加している状況では、プロスタサイクリンを投与しないことが推奨される。同じ理由から、プロスタサイクリンは、通常、手術時には使用されない。
本発明の発明者は、驚くべきことに、プロスタサイクリン及びその類似体を手術中及び/又は手術後に低用量で投与した場合、毛細血管漏出を予防又は治療することが可能であり、同時に、例えばトロンボエラストグラフィー及び/又は全血凝集測定により評価した際に、止血系及び/又は血管拡張に対して最低限の影響のみを与えることを発見した。したがって、本発明において、プロスタサイクリンは、手術による過度な出血のリスクを最小限にする形で、毛細血管漏出の予防に使用される。
したがって、本発明は、術中及び/又は術後投与により毛細血管漏出を予防するための、プロスタサイクリン又はその類似体である化合物に関する。
本発明の一実施形態において、毛細血管漏出の予防は、グリコカリックスを含む内皮の保護により仲介される。
本発明の一実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体は、術中及び/又は術後投与により治療に用いられ、手術は、消化器、胸部、整形外科、泌尿器、婦人科、形成外科、美容整形、又は再建手術である。こうした種類の手術は、虚血、心血管疾患、移植、ステント及びグラフトの移植又は挿入、或いは外傷に関連しない場合がある。
本発明の一実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体である化合物は、PGI2、PGX、プロスタサイクリン(エポプロステノール)又はその変異体、ベラプロストナトリウム、エポプロステノールナトリウム、イロプロスト、ボセンタンと組み合わせたイロプロスト、クエン酸シルデナフィルと組み合わせたイロプロスト、トレプロスチニル、ペグ化トレプロスチニル、トレプロスチニルジエタノールアミン、トレプロスチニルナトリウム、又はこれらの誘導体の群から選択され、好ましくは、エポプロステノール又はイロプロスト、或いはその誘導体から選択される。
本発明の一実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体は、0.5 ng/kg/min乃至4.0 ng/kg/minの範囲内の用量で投与される。
本発明の他の実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体は、非経口投与、好ましくは持続静脈内投与により投与される。
本発明の他の実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体は、15分乃至72時間、好ましくは60乃至120分の長さを有する治療期間に使用される。
本発明の他の実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体は、15乃至360分、好ましくは60乃至120分の長さを有する治療期間に使用される。
他の実施形態において、本発明の化合物が投与される治療期間は、72時間までの術中治療期間及び術後期間を含む。
本発明の一実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体は、1つ又は複数のマーカー、好ましくは、シンデカン-1、グリピカン-1、及びヒアルロナンから選択されたグリコカリックスマーカーの身体由来試料におけるレベル増加のリスクを低減又は減少させる治療方法において使用される。
本発明の一実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体は、アドレナリン、ノルアドレナリン、ICAM-1、E-セレクチン、可溶性fms様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1又はsVEGF R1とも呼ばれる)、sVE-カドヘリン、アンジオポエチン1(Ang-1)、アンジオポエチン2(Ang-2)、可溶性トロンボモジュリン(sTM)、可溶性内皮プロテインC受容体(sEPCR)、プロテインC(PC)、活性化プロテインC(APC)、アンチトロンビンIII(AT)(抗トロンビンIII)、組織因子経路阻害因子(TFPI)、フォンヴィレブランド因子(vWF)、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、第XIII因子、ヒストン複合DNAフラグメント、高移動群タンパク質B1(HMGB1)、d-ダイマー、IL-6、sCD40L、及びsC5B9から選択された、1つ又は複数のバイオマーカーの、身体由来試料におけるレベル増加のリスクを低減又は減少させる治療方法において使用される。
本発明の一実施形態において、前記治療は、以下の1つ又は複数の要素のリスクを低減又は減少させる:
a. 周術期及び/又は手術後の流体投与の必要性、又は周術期及び/又は手術後に投与される流体の体積、
b. 手術前と比較した術後12時間、24時間、48時間、及び72時間の体重増加、
c. 手術後の腹部コンパートメント症候群の発生、
d. 昇圧補助(ノルアドレナリン、ドブタミン等の薬物)、換気補助、透析、及び敗血性合併症の治療といった集中治療等の支持療法の必要性、
e. 中枢神経系、肺、心臓、消化管系、腎臓、肝臓、及び血液系における臓器不全群から選択された単/多臓器不全の発生、及び
f. 凝血異常。
本発明の一実施形態において、カオリンにより活性化されたクエン酸血試料において、本明細書に定めた治療中又は治療後に測定したトロンボエラストグラフィー値は、a)Rが3.0乃至8.0分、b)アングルが55°乃至78°、及びc)MAが51 mm乃至69 mmの範囲内である。
本発明の一実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体による治療は、血小板凝集(例えば、電気的インピーダンス凝集測定法により測定)又は血液の凝固(例えば、トロンボエラストグラフィー(TEG)により測定)の有意な阻害等、止血系に対して個別的又は最小限の影響をもたらす。
本発明の他の実施形態において、治療は、微小循環に対して個別的又は最小限の血管拡張作用をもたらす。
本発明の他の実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体を用いた治療は、40乃至200の範囲内で、治療中又は治療後にマルチプレート電気的インピーダンス凝集測定法により測定される凝集単位をもたらす。
本発明は、更に、プロスタサイクリン又はその類似体を含む、毛細血管漏出の治療又は予防用の医薬組成物を提供する。
本発明の一実施形態において、本明細書に定めた前記医薬組成物は、グリコカリックスを含む内皮の保護を仲介する。
本発明の他の実施形態において、本明細書に定めた前記医薬組成物は、内皮グリコカリックスの保護を仲介する。
本発明の一実施形態において、医薬組成物は、プロスタサイクリン又はその類似体を0.375 μg乃至750 μgの用量で含み得るか、或いは、15分乃至360分の治療期間、即ち、術中投与に適した、プロスタサイクリン又はその類似体の用量を含み得る。
本発明の一実施形態において、医薬組成物は、1つ又は複数の第2の活性成分を含み、例えば、少なくとも1つの第2の活性成分は、アドレナリン受容体のアゴニスト又はアンタゴニスト等であり、或いは例えば、少なくとも1つの第2の活性成分は、アンチトロンビンIII(AT)、ヒドロコルチゾン、グルココルチコイド、N-アセチルシステイン、又はアルブミン等である。
本発明は、更に、本明細書に定めたプロスタサイクリン又はその類似体、又は本明細書の医薬組成物を含む、毛細血管漏出の治療又は予防用のパーツキットを提供する。
本発明の一実施形態において、本明細書に定めたパーツキットは、本明細書に定めたプロスタサイクリン又はその類似体がグリコカリックスを含む内皮の保護を仲介する方法において使用するためのものである。
毛細血管漏出を治療又は予防する方法も本発明の態様となる。こうした方法は、本明細書に定めたプロスタサイクリン又はその類似体、又は本明細書に定めた医薬組成物を、手術中及び/又は手術後に、個別、連続、又は同時投与により個体に投与するステップを備える。
本発明の一実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体の前記投与は、グリコカリックスを含む内皮及び特に内皮グリコカリックス自体の保護を仲介する。
本発明の一実施形態において、治療方法は、更に、1つ又は複数の第2の活性成分を、個体に対して個別、連続、又は同時投与するステップを備える。
トロンボエラストグラフィー(TEG)を用いた止血活性の記録:4つのパラメーターをルーチンに報告している:R(反応時間)は、血液をカップ内に入れた時間から血餅が形成され始めるまでの待ち時間を示し、角度(アングル)は、血餅強度の漸増を表し、最大振幅(MA)は、最大血餅強度を表しており、溶解(Ly30)は、血餅溶解を反映している。図1は、健康な人間におけるフローラン(プロスタサイクリン類似体)注入の60及び120分後に取得した試料によるベースライン又は正常TEG値を示している。 マルチプレート全血凝集測定は、血小板機能試験である(Multiplate(登録商標)、Dynabyte Medical、ドイツ、ミュンヘン)。この試験は、複数電極血小板凝集測定(MEA)に基づいており、トロンビン活性化ペプチド(TRAP)、ADP、ASPI、及びコラーゲン等の選択的血小板アゴニストによる刺激後に、全血(WB)における血小板凝集を測定する。マルチプレートセンサに対する血小板の付着によるインピーダンスの増加が、任意の凝集単位(AU)に変換され、時間に対してプロットされる。これにより、マルチプレートは、本明細書に定めた治療の効果を分析することができる。図2は、健康な人間におけるフローラン(プロスタサイクリン類似体)注入の60及び120分後に取得した試料による、選択された時点でのベースラインマルチプレートAU値を示している。 A:健康な個体におけるプロスタサイクリン投与中及び投与後の経時的なトロンボモジュリンのレベル。B:健康な個体におけるプロスタサイクリン投与中及び投与後の経時的なプロテインCのレベル。 A:健康な個体におけるプロスタサイクリン投与中及び投与後の経時的なPAI-1のレベル。B:健康な個体におけるプロスタサイクリン投与中及び投与後の経時的なアンチトロンビンのレベル。 A:健康な個体におけるプロスタサイクリン投与中及び投与後の経時的なヒストン複合DNAのレベル。B:健康な個体におけるプロスタサイクリン投与中及び投与後の経時的なHMGB1のレベル。 A:健康な個体におけるプロスタサイクリン投与中及び投与後の経時的なシンデカン-1のレベル。B:健康な個体におけるプロスタサイクリン投与中及び投与後の経時的なTFPIのレベル。
[定義]
「抗凝集性」及び「抗血栓性」という用語は、相互交換可能に使用され、血餅形成プロセスにおいて相互作用する血小板の能力、即ち血栓を形成する能力を、減少させる化合物(群)の作用を示す。
「凝血異常」という用語(凝固障害及び出血障害とも呼ばれる)は、凝集及び血餅形成のための身体のメカニズムにおける何らかの欠陥であり、凝集が遅すぎる(凝固性低下)又は速すぎる(凝固性亢進)傾向を発生させる。場合によっては、凝血異常は、出血増加の傾向と、血栓症のリスク増加との両方を示す。
「重篤疾患」、更に急性疾患という用語は、患者を集中治療が必要な状態にする任意の状態を含むものである。集中治療は、限定はされないが、ホメオスタシスの誘導、人工呼吸(例えば機械的人工呼吸)、血液透析、昇圧補助、流体補助、非経口栄養、赤血球濃厚液、新鮮冷凍血漿、血小板濃厚液、全血の投与、全身抗生物質及び/又は抗ウイルス及び/又は抗真菌及び/又は抗原虫療法、顆粒球注入、T細胞注入、幹細胞注入、活性化プロテインC、その類似体又はフラグメント及び/又はアンチトロンビン及び/又は組織因子経路阻害因子(TFPI)(及び/又は低分子量ヘパリンを含むヘパリン及び/又はトロンビン阻害剤の投与を限定ではなく含む抗凝固療法、コルチコイドの投与、厳密な血糖コントロール)の投与を含み得る。
「グリコカリックス」という用語は、本明細書において、健康な個体において内皮細胞を覆う炭水化物に富んだ層を示す。グリコカリックスは、可溶性の、或いは内皮細胞膜に結合可能な、プロテオグリカンを含む。
「グリコサミノグリカン」という用語は、本明細書において、反復する二糖単位から成る、長く分岐のない多糖類を示す。反復単位は、N-アセチルグルコサミン又はN-アセチルガラクトサミン等のヘキソサミン(窒素を含む六炭糖)に結合したヘキソース(六炭糖)又はヘキスロン酸から成る。GAGは、高い電荷密度を有し、二糖類及び硫酸化部位の変化による顕著な多様性を示す。ヘパリン及びヘパラン硫酸に加え、GAGは、コンドロイチン又はデルマタン硫酸、ケラタン硫酸、又はヒアルロナンにより構成され得る。グリコサミノグリカンの同意語は、GAG及びムコ多糖である。
「グリピカン」という用語は、本明細書において、グリコシルフォスファチジルイノシトール(GPI)との共有結合を介して細胞表面に固定された、ヘパラン硫酸プロテオグリカンのGPCファミリーを示す。6種類の脊椎動物グリピカンファミリー構成要素は、17%から63%まで同一性が異なる。ヘパラン硫酸グリコサミノグリカンは、タンパク質のC末端部分に、GPIアンカー及び細胞膜の近くで付着する。
「ヒアルロナン」(ヒアルロン酸又はヒアルロン酸塩とも呼ばれる)という用語は、本明細書において、二糖の重合体である陰イオン性の非硫酸化グリコサミノグリカンであり、それ自体がD-グルクロン酸及びD-N-アセチルグルコサミンから成り、β-1,4及びβ-1,3の交互のグリコシド結合を介して結合される。ヒアルロナンは、25000個の二糖の反復の長さとなる場合があり、ヒアルロナンの重合体は、様々な大きさを有することが可能であり、一般にはin vivoで5000乃至20000000 Daの範囲となる。細胞外マトリックスに豊富に存在するが、ヒアルロナンは、組織のハイドロダイナミクス、細胞の移動及び増殖にも寄与し、多数の細胞表面受容体相互作用に関与する。
本明細書で使用される「凝固性低下」という用語は、TEGにより評価した際に、正常な参照と比較して、緩慢な開始段階(増加したR)及び/又は減少したトロンビンバースト(減少したアングル)及び/又は減少した血餅強度(減少したMA)を表す。
本明細書で使用される「凝固性亢進」という用語は、TEGにより評価した際に、正常な参照と比較して、開始段階において増加した凝固活性(減少したR)及び/又は増加したトロンビンバースト(増加したアングル)及び/又は増加した血餅強度(増加したMA)を表す。
「血液量減少(hypovolemia)」(又はhypovolaemia)という用語は、血液量が減少した状態であり、更に具体的には、血漿の体積の減少である。したがって、血管内成分の体積収縮(又は血液量の喪失)である。
「多臓器不全」(又はMOF)という用語は、ホメオスタシスを達成するために医学的介入を要する急性疾患患者における臓器機能の変化であり、MOFは、本明細書での使用において、TAMOFを含む。MOFは、多臓器機能不全症候群(MODS)としても知られる。
「プロスタサイクリン」という用語は、エイコサノイドファミリーの構成要素である脂質分子プロスタサイクリン(PGI2)を示す。本明細書で用いる定義には、プロスタサイクリン類似体、又はプロスタサイクリン受容体に対する親和性を有し且つプロスタサイクリンの機能に類似する機能を仲介が可能となり得るプロスタサイクリン受容体アゴニストが含まれる。
「プロスタサイクリン類似体」は、プロスタサイクリンの生理学的又は薬理学的応答特性を開始可能な薬物を示す。本発明によるプロスタサイクリン類似体には、限定ではないが、プロスタサイクリン受容体に対する親和性を有し且つプロスタサイクリンに類似する形でプロスタサイクリン受容体反応を活性化可能な化合物が含まれる。
「保護」という用語は、内皮及びグリコカリックス、内皮、及び/又はグリコカリックス自体の分解の低減、改善、又は緩和と、内皮細胞の損傷、グリコカリックスの分解の進行の遅延化と、グリコカリックス及びグリコカリックスの構成要素の生産の増加と、及び/又は、グリコカリックスの分解のリスク低減又は予防とを示す。グリコカリックスの「脱落」という用語は、本明細書において、グリコカリックスの分解と呼ばれる。
「プロテオグリカン」という用語は、重度にグリコシル化されたタンパク質を示す。基本のプロテオグリカン単位は、1本又は複数の共有結合されたグリコサミノグリカン(GAG)鎖(群)を有するタンパク質から成る。付着点は、グリコサミノグリカンが四糖の架橋を介して接合するセリン残基である。鎖は、ヘパリン硫酸及びウロン酸基の発生のため生理的条件下で負に荷電した、長い線状の炭水化物重合体である。プロテオグリカンは、他のプロテオグリカン、ヒアルロナン、及び線維性基質タンパク質(コラーゲン等)の全てに対して、大きな複合体を形成する。陽イオン(ナトリウム、カリウム、及びカルシウム等)及び水の結合及びマトリクスを介した分子の移動の調節にも関与している。
「受容体」は、分子メッセンジャ(神経伝達物質、ホルモン、リンホカイン、レクチン、薬物等)として機能する化合物を特異的に認識して結合する細胞内又は細胞上の分子又は重合体構造を示す
本明細書で用いる「再潅流損傷」は、血液供給が虚血期間後に組織に戻った時に発生する、組織に対する損傷を示す。血液からの酸素及び栄養が存在しないことから、循環の回復が、正常な機能の回復ではなく、酸化ストレスの誘発による炎症及び酸化的損傷を引き起こす状態が形成される。
本明細書で使用する「塩」という用語は、無機又は有機酸及び/又は塩基により形成された酸性及び/又は塩基性塩、好ましくは塩基性塩を意味する。医薬的に許容可能な塩は、特に本発明のプロスタサイクリン又はその類似体を薬剤として利用する時に好適であるが、例えば、こうしたプロスタサイクリン類似体を加工する際、或いは非薬剤タイプの使用が考えられる場合には、他の塩も利用可能となる。こうしたプロスタサイクリン類似体の塩は、当該技術分野において認められている手法により調製し得る。こうした医薬的に許容可能な塩の例には、限定ではないが、無機及び有機酸添加塩、例えば、それぞれ、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、又はリン酸塩、及び酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、テオフィリン酢酸塩、サリチル酸塩等が含まれる。低級アルキル第4級アンモニウム塩等も適切となる。
「シンデカン1」という用語は、ヒトSDC1遺伝子又はSDC1遺伝子に類似する遺伝子群によりコードされたタンパク質を示す。シンデカン1の意味には、本明細書において、全長転写物と、より短い転写変異体とにコードされたタンパク質が共に含まれる。当該タンパク質は、膜貫通(I型)ヘパラン硫酸プロテオグリカンであり、シンデカン1乃至4を含むシンデカンプロテオグリカンファミリーの構成要素である。シンデカン-1タンパク質は、膜内在性タンパク質として機能し、細胞増殖、細胞移動、及び細胞外マトリクスタンパク質に対する受容体を介した細胞-マトリックス相互作用に関与する。
本願明細書で使用する「血小板減少関連多臓器不全」(TAMOF)という用語は、血栓性微小血管症による、或いは、散在性血管内凝固又は血小板数及び/又は機能の低下に関連する他の任意の状態に続発する、微小循環における血栓形成をもたらす血小板の病理学的消費に続く、多機能障害の発生に関連した重篤疾患患者に影響する任意の状態を表す。
「外傷」は、本明細書での使用において、事故、傷害、又は衝突による突然の肉体的負傷により生じた何らかの身体の傷又はショックを意味する。
「治療」及び「治療する」という用語は、本明細書での使用において、状態、疾患、又は傷害と闘うことを目的とした患者の管理及びケアを示す。当該用語は、症状又は合併症の改善、軽減、又は緩和と、状態、疾患、又は障害の進行の遅延と、状態、疾患、又は障害の治癒又は除去と、及び/又は、状態、疾患、又は障害のリスク低減又は疾患の再発予防を含む予防とを目的とするプロスタサイクリン又はその類似体の投与等、患者が苦しむ所与の状態に対するあらゆる治療を含むものであり、「予防する」又は「予防」は、状態、疾患、又は障害の発生を妨げることを目的とした患者の管理及びケアを示すと理解するべきであり、症状又は合併症の発生を予防するための医薬組成物の投与を含む。治療対象の個体は、好ましくは、哺乳動物、特に人間である。しかしながら、ウシ、ニワトリ、シチメンチョウ、ダチョウ、エミュー、アヒル、ウマ、ロバ、ラバ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、レイヨウ、ラマ、ネコ、ライオン、トラ、イヌ、クマ、モルモット、ハムスタ、チンチラ、ミンク、フェレット、齧歯類、オウム、インコ、クジャク、アザラシ、アシカ、シャチ、サル、チンパンジ、ヒヒ、オランウータン、ゴリラ、爬虫類、及び他の動物園及び家畜動物等の動物の治療も、本発明の範囲に含まれる。本発明による治療対象の個体は、様々な年齢のものにすることが可能であり、男女(雄雌)両方にすることができる。
「単位剤形」という用語は、本明細書において、ヒト及び動物の被験体に対する単一投与量として適切な、物理的に分離した単位を示し、各単位は、医薬的に許容される希釈剤、担体、又はビヒクルと共に所望の効果を発生させるために十分な量に計算された所定量のプロスタサイクリン又はその類似体を、単独で、或いは他の作用物質と組み合わせて含む。本発明の単位剤形の仕様は、プロスタサイクリン又はその類似体である、利用される特定の化合物、達成されるべき効果、更にホスト内の各化合物に関連する薬力学に応じて決まる。
血管内皮及びそのグリコカリックス
内皮は、心臓から最小の毛細血管に至るまで、循環系全体の血管の内表面を覆う細胞の薄層である。内皮は多くの機能を有しており、その1つは、血液の流れの乱れを減らし、流体をより速く送り出せるようにすることである。内皮の他の機能には、組織及び血管間の溶質の交換と、炎症反応及び血液凝固の調節とがある。
健康な個体において、血管内皮細胞は、グリコカリックスと呼ばれる炭水化物に富んだ層に覆われている。血管のグリコカリックスは、主にプロテオグリカンであり、更には糖タンパク質である幾つかの「骨格」分子を介して、内皮に結合されている。これらは、血漿又は内皮に由来する可溶性分子が組み込まれたネットワークを形成する。血管の内腔に最も近い側において、グリコカリックスは、直接的な形で、或いは可溶性のプロテオグリカン及び/又はグリコサミノグリカンを介して、互いに結合された可溶性血漿成分により形成される。プロテオグリカン、糖タンパク質、及びグリコサミノグリカンの膜結合性メッシュの組成と、関連する血漿タンパク質及びグリコサミノグリカンの組成は、静的な状態として捉えることはできない。この可溶性成分の層と血流との間には動的平衡が存在し、グリコカリックスの組成及び厚さに継続的に影響を与える。血流との平衡状態にあることに加え、グリコカリックスには、酵素又は剪断による脱落が生じる。何れかの構成要素の酵素的な除去は、グリコカリックスの特性に劇的な影響を与え、これは全てのグリコカリックス構成要素の相乗的相互作用を全体として考慮することの重要性を示している。
プロテオグリカンは、グリコカリックスの「骨格」分子として機能する。プロテオグリカンは、1つ又は複数のグリコサミノグリカン鎖が結合されたコアタンパク質から成る。シンデカン(シンデカン1乃至4を含む)及びグリピカン(GPC1乃至GPC6を含む)のコアタンパク質群は、膜貫通ドメイン(シンデカン)又はグリコシルフォスファチジルイノシトールアンカー(グリピカン)を介して、細胞膜に強固に接続している。シンデカン-1(CD138)は、内皮グリコカリックスにおいて最も多く見られる種類のシンデカンである。シンデカンは、膜内在性タンパク質として機能し、細胞増殖、細胞移動、及び細胞外マトリクスタンパク質に対する受容体を介した細胞-マトリックス相互作用に関与する。プロテオグリカンのコアタンパク質間では、その大きさ、付着したグリコサミノグリカン鎖の数、及び内皮細胞膜に結合されているかに関して、変動が著しい。グリコサミノグリカン鎖は、通常、ヘパラン及びコンドロイチン硫酸である。ミメカン、ペルレカン、及びビグリカン等の他のプロテオグリカンは、その会合及びグリコサミノグリカン鎖の修飾後に分泌される。これは、グリコカリックス内に存在するか、或いは血流中へ拡散する、可溶性プロテオグリカンの生成につながる。
上述したプロテオグリカンに加え、グリコカリックスは、炭水化物を含む。グリコカリックスの主要成分は、ヒアルロナン、即ち陰イオン性の非硫酸化グリコサミノグリカンであり、5000乃至200万ダルトンの範囲の長い重合体として見られる場合が多い。ヒアルロナンは、組織のハイドロダイナミクス、細胞の移動及び増殖に寄与し、一次受容体CD44及びRHAMMを介して多数の細胞表面受容体相互作用に関与する。
内皮グリコカリックスの他の成分は、L-、E-、及びP-セレクチン、β2-インテグリン、ICAM-1、ICAM-2、及びVCAM-1等の上に存在する多数の表面接着分子である。これらは通常、グリコカリックスの厚さに比べて短く、そのため健康な個体では、グリコカリックスにより殆ど覆い隠される。
医学的状態
グリコカリックスが内皮細胞の損傷と共に分解又は脱落することにより、内皮障壁機能の異常が起こり、続いて、血液成分の異常な溢出及び血管外スペースでの流体の蓄積(透過性亢進)と、腹部コンパートメント症候群、単/多臓器不全又は全身性毛細血管漏出症候群等の臨床状態につながり得る血流の低下及び虚血の両方が部分的な原因となる組織機能不全である組織浮腫とをもたたす毛細血管漏出が生じる。
更に、グリコカリックスの分解及び内皮細胞の損傷は表面接着分子の露出につながるため、こうした分子は、組織内の多形核好中球の移動を発生させる可能性のある、血小板及び白血球の相互作用及び接着に対して露出される。
毛細血管漏出は、昇圧補助(ノルアドレナリン、ドブタミン等の薬物を使用)、換気補助、透析、敗血性合併症の治療、及び集中治療室(ICU)において一般に用いられる他の治療を含む集中治療処置の必要性を増加させ、集中治療室での患者の滞在期間(LOS)を長引かせ、重篤な場合には、致死率を増加させる。
毛細血管漏出を生じるリスクは、糖尿病、虚血性心疾患、アテローム性動脈硬化、又は他の悪性病変等の併存症を有する高齢の患者において増加する。
本発明によれば、プロスタサイクリン又はその類似体は、毛細血管漏出の予防及び/又は治療のために用いられる。
本発明の特定の実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体を用いる治療は、内皮細胞及び/又は内皮グリコカリックスの保護を仲介する。
毛細血管漏出は、腹部内圧上昇及び腹部コンパートメント症候群(ACS)を引き起こす恐れがある。ACSは、手術を受ける多様な患者において疾病率及び致死率を増加させる。ACSは、例えば組織浮腫により、腹部が圧力の上昇(腹部内圧上昇)に晒される時に発生する。増加する圧力は、腹部臓器の血流を減少させ、肺、心臓血管、腎臓、及び胃腸(GI)機能を低下させ、多臓器機能不全症候群及び死亡を引き起こす。殆どの治療に関する考察では、腹部臓器のための空間を物理的に大きくするために、腹壁及び腹筋膜前部の開放を含む緊急外科的減圧術が重視されている。緊急外科的減圧術を施せない場合、長期の重篤な腸間膜虚血及び多臓器の灌流低下につながる恐れがあり、疾病率及び死亡率が高い状態となる。
初期段階での医学的管理は、生存率を向上させ、末期ACSへの進行を予防する可能性を有する。更に、ICU及び病院での滞在期間を短くし、資源の利用の減少をもたらす。
本発明の一実施形態において、本明細書に定めた治療は、腹部内圧上昇及び/又は腹部コンパートメント症候群の発生からの保護又はその予防を行う。
一態様において、本発明は、臓器不全の予防又は治療につながる可能性のある、毛細血管漏出の治療又は予防のためのプロスタサイクリン又はその類似体の使用に関し、臓器不全は、ホメオスタシスを達成するために医学的介入を要する急性疾患患者における臓器機能の変化として定義される。臓器不全は、本明細書での使用において、少なくとも1つの臓器、例として少なくとも2つ、3つ、4つ、又は5つの臓器における、単/多臓器機能障害及び血小板減少関連多臓器不全を含む。臓器不全は、本発明によれば、例えば、中枢神経系、肺、心臓、消化管系、腎臓、肝臓、及び血液系における臓器不全群から選択される。
毛細血管漏出症候群(全身性毛細血管漏出症候群又はクラークソン症候群と呼ばれる場合もあり、本明細書ではCLSと略す)は、毛細血管の全般的な透過性亢進を特徴とする医学的状態であり、限定された灌流による危険なほど低い血圧(ハイポテンション)、浮腫、及び多臓器不全につながる血液から間質液への流体の漏出をもたらす。症状には、低血圧 (ハイポテンション)、血液濃縮/血液量減少、アルブミン尿の無い低アルブミン血、全身性浮腫が含まれる。細胞レベルにおいて、浮腫は、毛細血管と組織との間の拡散距離を増加させ、臓器虚血と酸素供給の減少による嫌気性代謝との指標として、血中乳酸等のマーカーの増加及びpHの低下をもたらす。
CLSは、2段階で説明することができる。
1. 毛細血管漏出段階-臨床的特徴は、腹痛、悪心、全身性浮腫、及び心肺の衰弱をもたらし得る低血圧である。急性腎不全は、血液量減少及び横紋筋融解の結果として生じる急性尿細管壊死によるものとなる。
2. 間質液の補充。多尿及び肺水腫による血管内の過負荷が生じる場合が多い。浮腫は、初期段階での大量の流体供給により更に重篤となり得る。利尿剤又は血液濾過による枯渇治療への切換のために患者の監視が必要となる。
毛細血管漏出症候群の1研究において、死亡率は、57症例のうち21%と報告されている。
本発明の一実施形態において、本明細書に定めたプロスタサイクリン又はその類似体は、毛細血管漏出症候群の予防及び/又は治療のために用いられる。
内皮損傷及びグリコカリックス分解のメカニズム、並びに保護の検出
内皮グリコカリックスは、グリコカリックスの様々な成分に作用する酵素により分解され得る。この分解により、グリコカリックスの成分の血中への脱落が生じる。ヒアルロナンは、ヒアルロニダーゼと呼ばれる酵素ファミリーにより分解される。ヒトでは、少なくとも7種類のヒアルロニダーゼ様酵素が存在し、その幾つかは、腫瘍抑制因子である。ヒアルロナンの分解産物であるオリゴ糖及び超低分子量ヒアルロナンは、血管新生促進特性を示す。加えて、最近の研究では、ヒアルロナンフラグメントは、天然高分子量のヒアルロナンでは不可能な、組織傷害におけるマクロファージ及び樹状細胞内での炎症反応の誘発が可能であることが明らかとなった。ヒアルロナン分解産物は、マクロファージ及び樹状細胞内のToll様受容体2(TLR2)、TLR4、又はTLR2及びTLR4の両方を介して、その炎症シグナルを伝達する。シンデカン細胞外ドメイン(外部ドメイン)は、そのコアタンパク質のタンパク質切断により、完全な状態で脱落させ、細胞表面の前駆体の結合特性を保持した可溶性プロテオグリカンを生産することができる。外部ドメインの脱落は、表面受容体の数を減少させるため、シグナル伝達を下方制御し、膜結合型シンデカン1を同じリガンドについて競合する可溶性エフェクタに変換する。シンデカン及びグリピカンの脱落は、プロテインキナーゼCのホルボール12-ミリスタート13-アセタート(PMA)活性と、トロンビン(Gタンパク質結合)及びEGF(タンパク質チロシンキナーゼ)受容体のリガンド活性とにより促進される。マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)シグナル伝達経路も、状況依存的な形でプロテオグリカンを分解するMT1-MMP(MMP-14)及びMT3-MMP、MMP7等の幾つかのマトリクスメタロプロテアーゼの活性を媒介することにより、重要な役割を果たす。シンデカン-1及び-4の外部ドメインは、急性皮膚創傷液において見られ、成長因子活性を調節する。明らかな内皮損傷には、トロンボモジュリンの流出が伴い、したがって、血中での可溶性トロンボモジュリンのレベル増加が伴う。
本発明の一実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体を用いた治療は、グリコカリックス成分の酵素的切断を減少させ、例えば、ヘパラナーゼと、ヒアルロニダーゼと、マトリクスメタロプロテアーゼと、限定ではないが間質コラゲナーゼ、マトリクスメタロプロテアーゼ8(MMP-8)、ゼラチナーゼB、及びマトリクスメタロプロテアーゼ(MMP-9)等、好中球顆粒球から放出されるプロテアーゼとから選択された1つ又は複数の酵素の酵素活性を減少させる。
グリコカリックスは、更に、グリコカリックスの成分の生産増加により保護することができる。本発明の一実施形態において、本明細書に開示した治療は、1つ又は複数のグリコカリックスの成分の発現及び/又は分泌の増加、例えば、限定ではないが、本明細書に記載のプロテオグリカン又は炭水化物の発現及び/又は分泌の増加を仲介する。
グリコカリックスの一般的状態及び分解は、当該技術において公知の多数の異なる方法を用いて測定することができる。こうした方法には、当該技術分野において用いられる視覚化手法、例えば、光学顕微鏡法、電子顕微鏡法、蛍光顕微鏡法、及び共焦点レーザー走査顕微鏡法等の顕微鏡法が含まれる。こうした視覚化手法は、レクチン標識、或いは、ヘパラン硫酸、シンデカン-1、又はヒアルロナン等のグリコカリックスの成分に結合する抗体を用いた抗体標識/免疫組織化学的検査等の親和性標織手法と組み合わせ得る。
内皮及び/又はグリコカリックスの一般的状態/分解/保護を測定する他の方法は、血液、血清、又は血漿等の体液における分解のマーカーの存在又はレベルを測定することを含むことができる。
こうした内皮及びグリコカリックス損傷のマーカーは、内皮細胞の損傷とグリコカリックス又はその成分の分解及び脱落との後、血中のレベルの増加を検出することが可能な、可溶性トロンボモジュリン、シンデカン-1、グリピカン-1、及びヒアルロナンを含む。
これらのマーカーは、グリコカリックスに対して特異的なマーカー、及び/又は内皮に対して特異的なマーカーを含み得る
グリコカリックス特異的マーカーには、限定ではないが、シンデカン-1、グリピカン-1、及びヒアルロナンが含まれる。
シンデカン-1は、CellSciencesのHuman Syndecan-1/CD138 ELISA Kit等の従来のELISA法を用いて検出し得る。ヒアルロンは、従来のELISA(USCN、キット番号E90182Hu)を用いて、グリピカン-1は、従来のELISA(USCN、キット番号E91032Hu)を用いて検出し得る。
本発明の一実施形態において、本明細書に記載の治療は、血漿シンデカン-1レベルが標準の2乃至5000倍、例えば標準の2乃至5倍、又は例えば標準の5乃至20倍、又は例えば標準の30乃至50倍、又は例えば標準の50乃至100倍、又は例えば標準の100乃至200倍、又は例えば標準の200乃至400倍、又は例えば標準の400乃至1000倍、又は例えば標準の1000乃至1500倍、又は例えば標準の1500乃至2000倍、又は例えば標準の2000乃至2500倍、又は例えば標準の2500乃至3000倍、又は例えば標準の3000乃至3500倍、又は例えば標準の3500乃至4000倍、又は例えば標準の4000乃至4500倍、又は例えば標準の4500乃至5000倍、又は例えば標準の5000倍まで増加するのを防止することが可能である。したがって、本発明の一実施形態において、本明細書に記載の治療は、血漿シンデカン-1レベルが2 ng/ml乃至600 ng/mlを超えるレベル、例えば2 ng/ml乃至20 ng/mlの範囲を超える、例えば2 ng/ml超、例えば4.5 ng/ml超、例えば10 ng/ml超、例えば15 ng/ml超、又は例えば20 ng/ml乃至100 ng/mlの範囲を超える、例えば30 ng/ml超、例えば40 ng/ml超、例えば50 ng/ml超、例えば60 ng/ml超、例えば70 ng/ml超、例えば80 ng/ml超、例えば90 ng/ml、又は例えば100 ng/ml乃至200 ng/mlの範囲を超える、例えば100 ng/ml超、例えば110 ng/ml超、例えば120 ng/ml超、例えば130 ng/ml超、例えば140 ng/ml超、例えば150 ng/ml超、例えば160 ng/ml超、例えば170 ng/ml超、例えば180 ng/ml超、例えば190 ng/ml、又は例えば200 ng/ml乃至300 ng/mlの範囲を超える、例えば200 ng/ml超、例えば210 ng/ml超、例えば220 ng/ml超、例えば230 ng/ml超、例えば240 ng/ml超、例えば250 ng/ml超、例えば260 ng/ml超、例えば270 ng/ml超、例えば280 ng/ml超、例えば290 ng/ml超、又は例えば300 ng/ml乃至400 ng/mlの範囲を超える、例えば300 ng/ml超、例えば310 ng/ml超、例えば320 ng/ml超、例えば330 ng/ml超、例えば340 ng/ml超、例えば350 ng/ml超、例えば360 ng/ml超、例えば370 ng/ml超、例えば380 ng/ml超、例えば390 ng/ml又は例えば400 ng/ml乃至500 ng/mlの範囲を超える、例えば400 ng/ml超、例えば410 ng/ml超、例えば420 ng/ml超、例えば430 ng/ml超、例えば440 ng/ml超、例えば450 ng/ml超、例えば460 ng/ml超、例えば470 ng/ml超、例えば480 ng/ml超、例えば490 ng/ml又は例えば500 ng/ml乃至600 ng/mlの範囲を超える、例えば500 ng/ml超、例えば510 ng/ml超、例えば520 ng/ml超、例えば530 ng/ml超、例えば540 ng/ml超、例えば550 ng/ml超、例えば560 ng/ml超、例えば570 ng/ml超、例えば580 ng/ml超、例えば590 ng/ml超、例えば595 ng/ml超のレベルまで増加するのを防止することが可能である。したがって、本発明の目的は、本発明の化合物の投与により、シンデカン-1レベルを可能な限り標準レベルに近い状態に維持することである。したがって、本発明の目的は、シンデカン-1レベルを、約120 ng/ml±5 ng/ml、例えば120 ng/ml±10 ng/ml、例えば120 ng/ml±15 ng/ml、例えば120 ng/ml±20 ng/ml、例えば120 ng/ml±30 ng/ml、例えば120 ng/ml±40 ng/ml、例えば120 ng/ml±50 ng/ml、例えば120 ng/ml±60 ng/ml、例えば120 ng/ml±70 ng/ml、例えば120 ng/ml±80 ng/ml、例えば120 ng/ml±90 ng/mlの近辺に保つことである。
本発明の一実施形態において、本明細書に記載の治療は、血漿グリピカン-1レベルが標準レベルと比較して、例えば標準の2倍、例えば標準の10倍、例えば標準の20倍、例えば標準の30倍、例えば標準の40倍、例えば標準の50倍、例えば標準の60倍、例えば標準の70倍、例えば標準の80倍、例えば標準の90倍、例えば標準の100倍、例えば標準の110倍、例えば標準の120倍、例えば標準の130倍、例えば標準の140倍、例えば標準の150倍に増加するのを防止することが可能である。したがって、本発明の一実施形態において、本明細書に記載の治療は、血漿グリピカン-1レベルが0.10 ng/ml超、例えば0.20 ng/ml超、例えば0.30 ng/ml超、例えば0.40 ng/ml超、例えば0.50 ng/ml超、例えば0.60 ng/ml超、例えば0.70 ng/ml超、例えば0.80 ng/ml超、例えば0.90 ng/ml超、例えば1 ng/ml超、例えば2 ng/ml超、例えば5 ng/ml超、例えば7.5 ng/ml超、例えば10 ng/ml超、例えば12.5 ng/ml超、例えば15 ng/ml超、例えば20 ng/ml超まで増加するのを防止することが可能である。
プロスタサイクリン又はその類似体を用いた治療の効果は、更に、内皮細胞活性又は内皮損傷を示すマーカー、即ち、内皮マーカーのレベルを測定することによりモニタ可能となる。したがって、こうした方法は、アドレナリン、ノルアドレナリン、ICAM-1、E-セレクチン、可溶性fms様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1又はsVEGF R1とも呼ばれる)、sVE-カドヘリン、アンジオポエチン1(Ang-1)、アンジオポエチン2(Ang-2)、可溶性トロンボモジュリン(sTM)、可溶性内皮プロテインC受容体(sEPCR)、プロテインC(PC)、活性化プロテインC(APC)、抗トロンビンIII(AT)(アンチトロンビンIII)、組織因子経路阻害因子(TFPI)、フォンヴィレブランド因子(vWF)、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、第XIII因子、ヒストン複合DNAフラグメント、高移動群タンパク質B1(HMGB1)、d-ダイマー、インタロイキン-6(IL-6)、及び終末補体複合体(sC5B9)のレベルの体液(例えば、血漿、血清、及び血液)中での測定を含むことができる。
好ましくは、内皮マーカーは、限定ではないが、ICAM-1、E-セレクチン、可溶性fms様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1又はsVEGF R1とも呼ばれる)、sVE-カドヘリン、アンジオポエチン2(Ang-2)、可溶性トロンボモジュリン(sTM)、可溶性内皮プロテインC受容体(sEPCR)、プロテインC(PC)、活性化プロテインC(APC)、抗トロンビンIII(AT)(アンチトロンビンIII)、組織因子経路阻害因子(TFPI)、vフォンヴィレブランド因子(vWF)、及び組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)を含む。更に好ましくは、マーカーは、E-セレクチン、可溶性トロンボモジュリン(sTM)、プロテインC(PC)、アンチトロンビンIII(AT)、及び(アンチトロンビンIII)を含む。
臨床において、毛細血管漏出の予防は、以下の1つ又は複数の要素のリスクの低減又は減少をもたらす:
a. 周術期及び/又は手術後の流体投与の必要性、又は周術期及び/又は手術後に投与される流体の体積、
b. 手術前と比較した術後12時間、24時間、及び48時間の体重増加、
c. 手術後の腹部コンパートメント症候群の発生、
d. 限定ではないが、昇圧補助(ノルアドレナリン、ドブタミン等の薬物)、換気補助、透析、及び敗血性合併症の治療といった集中治療等の支持療法の必要性、
e. 中枢神経系、肺、心臓、消化管系、腎臓、肝臓、及び血液系の臓器不全群から選択された単/多臓器不全の発生、
f. 凝血異常(凝固性低下又は凝固性亢進を発生させる可能性のある凝固の障害)。
本発明の一実施形態において、グリコカリックス及び内皮細胞の一般的状態/保護/分解は、本明細書に定めたように治療された個体において測定された、上述したマーカー又は臨床要素の測定レベルの比較により監視してよく、前記測定要素を、同じ種類の手術を受けたが、本明細書に定めたプロスタサイクリン又はその類似体により治療されていない個体における測定要素と比較することにより監視し得る。本発明の他の実施形態において、グリコカリックス及び内皮細胞の一般的状態/保護/分解は、本明細書に定めた治療前、治療中、又は治療後の個体において測定された、上述したマーカー又は要素のレベルの比較により監視し得る。
本発明の一実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体による治療は、血小板凝集(例えば、電気的インピーダンス凝集測定法により測定)又は血液の凝固(例えば、トロンボエラストグラフィー(TEG)により測定)の有意な阻害等、止血系に対して個別的又は最小限の影響をもたらす。したがって、本発明は、手術時及び手術後の回復期間中に毛細血管漏出の予防又は治療を可能とする治療を提供し、組織の治癒は、血小板(トロンボサイト)の凝集を含む正常な止血により進行する。
粘弾性クエン酸全血止血アッセイ:トロンボエラストグラフィー(TEG)又はトロンボエラストメタリー(ROTEM)
TEGインビトロアッセイは、血小板凝集、凝血活性、及び血餅強度における重要なパラメーターの判定に適している。TEGシステムの患者の止血を監視するアプローチは、止血プロセスの最終結果が血餅であるという前提に基づいている。血餅の物理特性により、患者が正常な止血を有しているか、或いは出血又は血栓症のリスクが上昇しているかを判断する(Salooja et al. 2001)。
TEGアナライザーは、回転カップ内の少量の全血試料と、動きを監視される、捩り針金により血中に吊り下げたピンとを使用する。血餅形成を加速するために、標準量の活性剤(例えば、カオリン、組織因子)を、カップ内でのピンの配置直前に、カップに加えてもよい。回転カップのトルクは、フィブリン及び/又はフィブリン血小板結合がカップとピンとを互いに結合した後でのみ、浸漬したピンに伝達される。こうした結合の強度及び速度は、ピンの運動の大きさに影響し、強固な血餅がカップの運動と同調して直接ピンを動かすようになる。したがって、TEG技術は、血液をアナライザーに配置した時点から、最初にフィブリンが形成され、血餅率が強まり、GPIIb/IIIaを介してフィブリンと血小板とが結合し、最終的に血餅溶解するまで、血小板とタンパク質凝固カスケードとの相互作用を記録する。TEGのRパラメーターは、凝固の開始から最初のフィブリンバンドが形成されるまでの開始段階の反応時間を反映し、アングル(α)は、血餅強度の増加、血餅キネティクスを表し、トロンビン生成と相関する。最大振幅(MA)パラメーターは、最大血餅強度、即ち、血餅の最大弾性係数を表す。Ly30は、MAに到達した30分後に溶解している血餅の割合を示し、線維素溶解を表す。
血餅の強度、安定度、及び変化は、TEG(トロンボエラストグラフィー)により計測可能なパラメーターであるMAにより相対的血餅強度の増加として、TEGから導出可能なパラメーターである溶解AUCにより血餅安定度の増加として、測定することができる。最大振幅(MA)パラメーターは、最大血餅強度、即ち、血餅の最大弾性係数を表す。溶解曲線の下の面積、即ち、MAが得られた曲線の下の面積(溶解AUC)は、線維素溶解の度合いを表す。ある手順の間に、血餅の強度及び安定度の両方を測定してもよく、或いは、血餅安定度又は血餅強度の何れか等、1パラメーターのみを追跡してもよい。
カオリンにより活性化したクエン酸全血試料においてTEGにより測定した、上述したパラメーターの正常値は次の通りである。
a)Rは、3.0乃至8.0分。
b)アングルは、55°乃至78°。
c)MAは、51 mm乃至69 mm。
TEGシステムは、独自の有用性を有するツールとして認められており、肝臓移植(Kang et al 1985)及び心血管系手術等の大規模な外科的介入中の止血の管理、更に産科、外傷、神経外科、深部静脈血栓の管理、及び血小板GPIIb/IIIaアンタゴニストの監視及び識別(Di Benedetto 2003)において広く使用されてきた。
したがって、本発明の一実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体による治療は、TEGにより測定される止血系に対する影響が最小限となる。換言すれば、本発明の一態様は、本発明の化合物を、治療後の個体においてTAG値に対する影響が、治療前に測定した値と比較して殆どないし全く無い形で投与することである。
したがって、本発明の一実施形態において正常範囲内のTEG値を有する人に対する、プロスタサイクリン又はその類似体による治療は、TEGにより測定される止血系に対する影響が最小限となり、カオリンにより活性化したクエン酸血試料におけるTEG値は、a)Rが3.0乃至8.0分、b)アングルが55°乃至78°、及びc)MAが51 mm乃至69 mmである。
同様に、本発明の一実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体による治療は、マルチプレート全血凝集測定法により測定される止血系に対する影響が最小限となる。
マルチプレート全血凝集測定は、血小板機能試験である(Multiplate(登録商標)、Dynabyte Medical、ドイツ、ミュンヘン)。この試験は、複数電極血小板凝集測定(MEA)に基づいており、トロンビン活性化ペプチド(TRAP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アラキドン酸(ASPI)、及びコラーゲン(COL)等の選択的血小板アゴニストによる刺激後に、全血(WB)における血小板凝集を測定する。マルチプレートセンサに対する血小板の付着によるインピーダンスの増加が、任意の凝集単位(AU)に変換され、時間に対してプロットされる。その結果、凝集は、時間に対する単位のプロットにより決定されるAUC*min(曲線下面積*min)の単位で測定することができる。加えて、凝集は、単位(U)(1単位=10 AU*min)により表現することもできる。したがって、マルチプレートにより、血小板凝集に対する化合物の影響の分析が可能となる。健康なヒトからのヘパリン処理した全血において、AUCの平均値及び95%信頼区間(CI)の値は、一般に次の通りである。
ADP:84 AUC*min、47乃至121 95%CI。
ASPI:96 AUC*min、59乃至133 95%CI。
TRAP:114 AUC*min、66乃至163 95%CI。
或いは、システムの製作者が述べているように、AUCの中央値及び90%信頼区間(CI)の値は、一般に次の通りである。
ADP:83 AUC*min、55乃至117 95%CI。
ASPI:106 AUC*min、79乃至141 95%CI。
TRAP:121 AUC*min、92乃至151 95%CI。
したがって、本発明の一実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体による治療では、マルチプレート全血凝集測定により測定される止血系に対する影響が最小限となり、治療中又は治療後に取得した全血試料において、ADP、ASPI、TRAP、及び/又はCOLによる刺激後に測定された凝集単位(AU)は、健康なヒトの範囲内となる。更に、本発明によれば、本明細書に定めた治療は、40乃至200の範囲内にある治療中又は治療後に取得された全血試料において測定された凝集単位をもたらし、例えば40乃至50の範囲内にある治療中又は治療後の凝集単位、例えば50乃至60の範囲内にある治療中又は治療後の凝集単位、例えば60乃至70の範囲内にある治療中又は治療後の凝集単位、例えば70乃至80の範囲内にある治療中又は治療後の凝集単位、例えば80乃至90の範囲内にある治療中又は治療後の凝集単位、例えば90乃至100の範囲内にある治療中又は治療後の凝集単位、例えば100乃至110の範囲内にある治療中又は治療後の凝集単位、例えば110乃至120の範囲内にある治療中又は治療後の凝集単位、例えば120乃至130の範囲内にある治療中又は治療後の凝集単位、例えば130乃至140の範囲内にある治療中又は治療後の凝集単位、例えば140乃至150の範囲内にある治療中又は治療後の凝集単位、例えば150乃至160の範囲内にある治療中又は治療後の凝集単位、例えば160乃至170の範囲内にある治療中又は治療後の凝集単位、例えば170乃至180の範囲内にある治療中又は治療後の凝集単位、例えば180乃至190の範囲内にある治療中又は治療後の凝集単位、例えば190乃至200の範囲内にある治療中又は治療後の凝集単位をもたらす。
プロスタサイクリン及びプロスタサイクリン類似体
プロスタサイクリンは、アラキドン酸の代謝産物であると共に、強力な血管拡張活性及び血小板凝集の阻害活性を有する自然発生プロスタグランジンであり、健康な内皮細胞により放出される。プロスタサイクリンは、血小板及び内皮細胞上に位置するGタンパク質結合受容体であるプロスタサイクリン受容体(IP受容体)に関与するパラクリンシグナル伝達カスケードを介して、その機能を実行する。従来の臨床環境において、治療に用いられるプロスタサイクリン及びその類似体は、次の2つの主要な薬理学的作用を有する:(1)肺及び全身の動脈血管床の直接的な血管拡張、(2)血小板凝集/血液凝固の阻害。
プロスタサイクリン及びその類似体の内皮プロスタサイクリン受容体との結合は、サイトゾルcAMP及びプロテインキナーゼA活性化を上昇させることができる。これは、更に、平滑筋弛緩及び血管拡張と共に、微小血管の灌流の改善と、炎症の減少を伴うリソソーム及び細胞膜の安定化による「細胞保護」とをもたらす(Zardi et al 2005; Zardi et al 2007)。
プロスタサイクリン及びその類似体の抗凝集性効果は、プロスタサイクリン類似体結合時のプロスタサイクリン受容体(Gαsタンパク質結合受容体)の活性化により仲介される。この活性化により、アデニリルシクラーゼに対してcAMPを生成するようシグナルが伝達され、これによりプロテインキナーゼAが活性化され、遊離細胞内カルシウム濃度が減少する。cAMPの上昇は、血小板活性化(分泌及び凝集)を直接阻害し、トロンビン、アデノシン二リン酸(ADP)、トロンボキサンA2(TXA2)、血小板活性化因子(PAF)、コラーゲン、及びセロトニン(5-HT)等のアゴニストによる血小板活性化により生じた細胞質内カルシウムの増加を相殺する(Bihari et al、1988; Schereen et al、1997; Xing et al 2008)。
本発明の発明者は、驚くべきことに、手術時に低用量で与えたプロスタサイクリン又はその類似体が毛細血管漏出の予防及び治療に好ましい効果を有することを発見した。こうした低用量で手術時に投与した場合、プロスタサイクリン及びその類似体は、血小板の凝集及び凝固に対する影響が最小限となる。
本明細書に記載した低用量のプロスタサイクリン又はその類似体は、更に、微小循環の個別的な血管拡張を仲介可能となる場合がある。
したがって、本発明の一実施形態において、本明細書に定めた治療は、グリコカリックスを保護すると共に、出血を最少に抑え、個別的な血管拡張を仲介し、例えば、内皮細胞、内皮細胞及びグリコカリックスの細胞膜等の細胞膜を保護することができる。
本発明によれば、プロスタサイクリン又はその類似体である化合物は、毛細血管漏出の予防又は治療のために個体に投与される。こうした本発明の化合物は、限定ではないが、PGI2、PGX、プロスタサイクリン(エポプロステノール)又はその変異体、例えば、ベラプロストナトリウム、エポプロステノールナトリウム、イロプロスト、ボセンタンと組み合わせたイロプロスト、クエン酸シルデナフィルと組み合わせたイロプロスト、トレプロスチニル、ペグ化トレプロスチニル、トレプロスチニルジエタノールアミン、及びトレプロスチニルナトリウムの群、又はこれらの誘導体から選択される。プロスタサイクリン類似体である他の化合物は、2-{4-[(5,6-ジフェニルピラジン-2-yl)(イソプロピル)アミノ]-ブトキシ}-N-(メチルスルホニル)アセトアミド、{4-[(5,6-ジフェニルピラジン-2-yl)(イソプロピル)アミノ]-ブトキシ}酢酸、8-[1,4,5-トリフェニル-1H-イミダゾール-2-yl-オキシ]オクタン酸、イソカルバサイクリン、シカプロスト、[4-[2-(1,1-ジフェニルエチルスルホニル)-エチル]-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[1,4]オキサジン-8-イルオキシ]酢酸N-メチル-d-グルカミン、7,8-ジヒドロ-5-(2-(1-フェニル-1-ピリド-3-yl-メチミノキシ)-エチル)-a-ナフチルオキシ酢酸、(5-(2-ジフェニルメチルアミノカルボキシ)-エチル)-a-ナフチルオキシ酢酸、2-[3-[2-(4,5-ジフェニル-2-オキサゾリル)エチル]フェノキシ]酢酸、[3-[4-(4,5-ジフェニル-2-オキサゾリル)-5-オキサゾリル]フェノキシ]酢酸、ボセンタン、17[アルファ], 20-ジメチル-[デルタ]6,6a-6a-カルバPGI1、及び15-デオキシ-16[アルファ]-ヒドロキシ-16[ベータ],20-ジメチル-[デルタ]6,6a-6a-カルバPGI1、及びその塩、水和物、溶媒和物、及び誘導体である。
プロスタサイクリン類似体であるエポプロステノールナトリウム及びイロプロストは、等しい有効性を有し、本明細書に記載した治療にとって特に有用である(これらは、Flolan及びIlomedinという商標名で静脈内投与用に市販されている)。本発明の好適な実施形態において、プロスタサイクリン類似体は、エポプロステノールナトリウム又はイロプロストである。
他の好適な実施形態において、プロスタサイクリン類似体の半減時間は、4時間未満(例えばトレプロスチニル等)、好ましくは1時間未満(例えばベラプロスト(35乃至40分))、更に好ましくは1/2時間(例えばイロプロスト(20乃至30分))、好ましくは5分未満(例えばエポプロステノール(0.5乃至3分))である。
手術
治療を施すべき手術の種類には、身体の臓器/組織、即ち、肺、心臓、胃、十二指腸、回腸、空腸、結腸、S状結腸、直腸、肝臓、膵臓、胆嚢、腎臓、脾臓、膀胱、子宮、前立腺、臀部、膝、背部における感染症、非感染性抗原、炎症、熱傷/糜爛、臓器/組織破壊/変性/損傷/断裂、出血、中毒、及び/又は悪性病変のために実行される消化器手術、胸部手術、泌尿器科又は婦人科手術、形成外科/美容整形/再建手術、及び整形外科手術が含まれる。
各臓器系内の手術の非網羅的なリストには以下が含まれる。

消化器手術:
膿瘍切開及びドレナージ
副腎摘出
幽門洞切除
胆嚢摘除
結腸切除
人工肛門形成
憩室切除
瘻孔切開術
胃底切除
胃切除
胃瘻造設
胃十二指腸吻合
胃食道逆流手術
下半身切除
片側椎弓切除
肝除去
回腸導管手術
回腸瘻造設
腸閉塞修復
腸重積低減
開腹、試験開腹
膵十二指腸切除(ホイップル手術)
直腸切除
S状結腸人工肛門形成
小腸及び大腸切除
括約筋切開
脾臓除去
血栓除去
精管切除
垂直帯胃形成

胸部手術:
肺切開
肺切除
開胸

整形外科手術:
寛骨臼形成
切断術
関節固定
関節形成
骨折修復
股関節骨切り術
股関節置換
股関節再置換手術
膝骨切り術
膝置換
膝再置換手術
骨盤手術

泌尿/婦人科手術:
膀胱切除
子宮摘出
腎切除
前立腺切除
幽門形成
尿管S状結腸吻合

形成外科/美容整形/再建手術:
熱傷手術
壊死組織除去
再建術

外傷手術
本発明の特定の実施形態において、本明細書に記載した治療は、例えば、不安定な狭心症虚血又は心筋梗塞といった組織の虚血又は再潅流傷害の重大なリスクを伴わない手術時に用いられる。
本発明の他の実施形態において、本明細書に記載した治療は、血管形成術、バイパス術、心不全手術、或いはカテーテル、ステント、又はグラフトの挿入といった心血管疾患又はアテローム性動脈硬化に関連しない手術時に用いられる。
本発明の一実施形態において、本明細書に記載した治療は、例えば、頭部傷害、脳損傷、又は骨格筋損傷といった外傷に関与しない手術時に用いられ、即ち、神経外傷は、本発明の目的ではない。
本発明の他の実施形態において、本明細書に記載した治療は、肺高血圧の重大なリスクを伴わない手術時に用いられる。
本発明の他の実施形態において、本明細書に記載した治療は、移植を伴わない手術時に用いられる。
投与及び用量
本発明によれば、プロスタサイクリン又はその類似体は、手術時に投与される(周術期投与)。したがって、本発明の一実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体は、手術前、手術中、及び/又は手術後に投与される。
本発明の好適な実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体は、患者における麻酔の導入から開始され、外科手術の最後の縫合又はステープリングが終了するまでの間隔の任意の時点で、手術時に術中投与される。
本発明の他の実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体は、患者における麻酔の導入から開始され、外科手術の最後の縫合又はステープリングが終了するまでの間隔の任意の時点で、手術時に術中投与され、手術後に術後投与される。術後投与は、任意の時間の長さ、好ましくは、少なくとも1時間、例えば2時間、3時間、4時間、6時間、12時間、24時間、36時間、48時間、60時間、72時間、84時間以上継続し得る。好ましくは、術後投与は、72時間継続する。
本発明の他の実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体は、手術の最初の切開から最後の切開まで等、身体に対して侵襲的手技が実施される時間の範囲内の任意の時点で術中投与される。
本発明の更に別の実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体は、手術の最初の切開から手術後少なくとも72時間まで等、身体に対して侵襲的手技が実施される時間の範囲内の任意の時点で術中投与される。
本発明の一実施形態において、本発明の治療は、手術期間の長さに対応する。したがって、本発明によれば、治療は、15分乃至360分の間隔、例えば15乃至60分の間隔、例として15分乃至30分、又は例として30分乃至45分、又は例として45分乃至60分、或いは例えば60分乃至120分の間隔、例として60分乃至75分、又は例として75分乃至90分、又は例として90分乃至105分、又は例として105分乃至120分、例として120分乃至135分、又は例として135分乃至150分、又は例として150分乃至165分、又は例として165分乃至180、或いは例えば180分乃至240分、例として180分乃至195分、又は例として195分乃至210分、又は例として210分乃至225分、又は例として225分乃至240の間隔、或いは例えば240分乃至300分の間隔、例として240分乃至255分、又は例として255分乃至270分、又は例として270分乃至300分、或いは例えば300分乃至360分の間隔、例として300分乃至315分、又は例として315分乃至330分、又は例として330分乃至345分、又は例として345分乃至360分に亘り実施される。
本発明の目的は、更に、本発明の治療を術後に施すことであり、したがって、治療の実施は、手術の後、30分、例えば約1時間、例えば2時間、例えば3時間、例えば4時間、例えば5時間、例えば6時間、例えば8時間、例えば10時間、例えば12時間、例えば14時間、例えば16時間、例えば18時間、例えば20時間、例えば22時間、例えば24時間、例えば26時間、例えば28時間、例えば30時間、例えば32時間、例えば26時間、例えば40時間、例えば44時間、例えば48時間、例えば52時間、例えば56時間、例えば60時間、例えば64時間、例えば68時間、例えば72時間、例えば76時間、例えば80時間、例えば86時間、例えば92時間、例えば100時間継続し得る。
したがって、治療は、手術時及び手術後の両方で実施し得る。好ましくは、治療は、手術時と、手術後約72時間までに亘り実施される。
プロスタサイクリン又はその類似体及び/又は本発明の組成物の投与は、被験体に対して行われ、プロスタサイクリン又はその類似体の全身濃度を発生させる。投与方法には、経腸投与、例えば経口、舌下、胃、又は直腸投与、及び/又は非経口的投与、即ち静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、鼻腔内、肺内、直腸内、膣内、又は腹腔内投与が含まれる。皮下及び静脈内の形態の非経口投与が、一般に好ましい。こうした投与に適した剤形は、従来の手法により調製し得る。プロスタサイクリン又はその類似体は、吸入、即ち鼻腔内及び吸入投与によっても投与し得る。こうした投与に適した剤形、例えばエアゾール製剤又は定量噴霧式吸入器は、従来の手法により作成し得る。
本発明の非常に好適な実施形態によれば、プロスタサイクリン又はその類似体は、持続非経口注入、好ましくは、持続静脈内(i.v.)注入により投与される。
低用量のプロスタサイクリン又はその類似体は、本発明の発明者により、毛細血管漏出の治療又は予防に対して有益な効果を有することが発見された。更に、本発明において使用されるプロスタサイクリン又はその類似体の用量は、血小板凝集の著しい阻害等、止血系の著しい変化を引き起こす恐れがない。
本発明の他の実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体を用いた治療は、正常又は正常に近い患者の血液動態プロフィールを伴い、前記血液動態プロフィールは、例えば、血圧監視(侵襲的なカニューレ挿入により監視し得る)及び/又は心電図検査(ECG)及び/又は血中酸素飽和度により測定される。正常な血液動態プロフィールの推定は、手術の前に患者のモニタリングすることにより判定される。
本発明の治療方法において、プロスタサイクリン及びその類似体は、0.5 ng/kg/min乃至4.0 ng/kg/minの用量、例えば0.5 ng/kg/min乃至1.0 ng/kg/min、例として0.5 ng/kg/min乃至0.75 ng/kg/min、又は例として0.75 ng/kg/min乃至1.0 ng/kg/minの区間、或いは例えば1.0 ng/kg/min乃至3.0 ng/kg/min、例として1.0 ng/kg/min乃至1.25 ng/kg/min、又は例として1.25 ng/kg/min乃至1.50 ng/kg/min、又は例として1.50 ng/kg/min乃至1.75 ng/kg/min、又は例として1.75 ng/kg/min乃至2.0 ng/kg/min、又は例として2.0 ng/kg/min乃至2.25 ng/kg/min、又は例として2.25 ng/kg/min乃至2.5 ng/kg/min、又は例として2.5 ng/kg/min乃至2.75 ng/kg/min、又は例として2.75 ng/kg/min乃至3.0 ng/kg/minの区間、或いは例えば3.0 ng/kg/min乃至4.0 ng/kg/min、例として3.0 ng/kg/min乃至3.25 ng/kg/min、又は例として3.25 ng/kg/min乃至3.5 ng/kg/min、又は例として3.5 ng/kg/min乃至3.75 ng/kg/min、又は例として3.75 ng/kg/min乃至4.0 ng/kg/minの区間において投与される。
他の実施形態において、内皮の完全性を調節/保護することが可能な化合物、特にプロスタサイクリン(PGI2)、プロスタサイクリン(PGX)、又はその変異体、最も好ましくは、イロプロスト又はフローランについて、投与量は、非経口経路用、特に静脈内、筋肉内、及び/又は皮下経路用のものであり、1回又は反復ボーラス投与量は、約0.5乃至4.0 ng/kgの全身濃度を一定の期間、例えば10分間、更に好ましくは15分間、更に好ましくは30分間、例えば60分間、90分間、又は120分間に亘り、術中条件の間に維持することに対応する。更に好ましくは、全身濃度は、前記期間に亘り約0.5乃至2.0 ng/kgである。全身濃度は、個体において観察された反応に応じて調整してよく、15分毎等に投与量を増加又は減少させること等により0.5 ng/kg、1.0 ng/kg、1.5 ng/kg、2.0 ng/kg、2.5 ng/kg、3.0 ng/kg、3.5 ng/kg、又は4.0 ng/kgに調整し得る。
更に、約0.5乃至4.0 ng/kgの全身濃度を、術中及び術後期間を含み、術後期間が約12時間、例えば24時間、例えば36時間、例えば48時間、例えば60時間、例えば72時間以上である一定の期間に亘り、維持することが考えられる。
一部の化合物は、通常、出血に対して悪影響を有することが知られているが、本明細書のように低投与量で投与した場合、出血に対する悪影響を与えずに、内皮及び/又はグリコカリックスに対する所望の効果が得られることが発見された。
化合物は、1回又は複数回のボーラス注射により投与してよく、したがって、ボーラス注射は、例えば、投与量に合わせて、1回、2回、又は数回行ってよく、ボーラス注射は、5分毎、例えば10分毎、例えば15分毎、例えば20分毎、例えば25分毎、例えば30分毎、例えば35分毎、例えば40分毎、例えば45分毎、例えば50分毎、例えば55分毎、例えば60分毎、例えば70分毎、例えば80分毎、例えば90分毎、例えば100分毎、例えば110分毎、例えば120分以上毎に行ってよい。例えば、ボーラス投与量は、被術者に対する外傷の時から、病院又は他の治療施設に到達するまで、適切な間隔で投与し得る。特に、本発明の化合物を、上述した頻度の何れかによるボーラス注射として、術中に投与することが興味の対象となる。他の実施形態では、本発明の化合物を、手術時と、手術後少なくとも72時間までの術後との両方で、上述した間隔の何れかで反復してボーラス投与量を与えることにより、投与することが考えられる。
したがって、本発明の化合物は、単一のボーラス投与量又は反復投与量として投与し得る。
本発明の化合物は、非経口投与(例えば、ボーラス注射又は持続注入等の注入)用に処方され、アンプル、充填済みシリンジ、少量の注入液、又は保存料を添加した複数回投与用容器において、単位剤形で提供し得る。
通常、用量は、治療中の状態又は徴候の重症度又は広がりを防止又は軽減することが可能となるべきである。本明細書に記載した範囲から選択される正確な用量は、治療中の状態、投与スケジュール、プロスタサイクリン又はその類似体が単独で投与されるか、他の治療薬と併せて投与されるか、プロスタサイクリン又はその類似体の血漿半減期、及び被術者の全体的な健康といった状況に応じて決まる。
第2の活性成分
本発明の治療は、グリコカリックスの保護と、グリコカリックスの分解により発生する合併症の予防/治療とのために第2の活性成分の使用を含む場合がある。
交感神経副腎系の調節により、手術に伴う出血の減少をもたらし得るバランスの取れた止血反応を仲介することができる。したがって、プロスタサイクリン又はその類似体は、アドレナリン受容体の1つ又は複数のアンタゴニスト及び/又はアゴニストと併せて投与し得る。そのため、本発明の一実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体は、メトキサミン、メチルノルエピネフリン、オキシメタゾリン、及びフェニレフリン等のアルファ-1(α1)アドレナリン受容体アゴニストと組み合わせて投与される。
本発明の他の実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体は、クロニジン、グアンファシン、グアナベンズ、グアノキサベンズ、グアネチジン、キシラジン、メチルドパ、及びファドルミジン等のアルファ-2(α2)アドレナリン受容体アゴニストと組み合わせて投与される
本発明の更に他の実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体は、アミデフリン、アミトラズ、アニソダミン、アプラクロニジン、ブリモニジン、シラゾリン、デトミジン、デクスメデトミジン、エピネフリン、エルゴタミン、エチレフリン、インダニジン、ロフェキシジン、メデトミジン、メフェンテルミン、メタラミノール、メトキサミン、ミドドリン、ミバゼロール、ナファゾリン、ノルエピネフリン、ノルフェネフリン、オクトパミン、オキシメタゾリン、フェニルプロパノールアミン、リルメニジン、ロミフィジン、シネフリン、タリペキソール、及びチザニジン等、未確定のαアドレナリン受容体アゴニストと組み合わせて投与される。
本発明の更に他の実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体は、ドブタミン、イソプロテレノール、キサモテロール、及びエピネフリン等のベータ-1アドレナリン受容体アゴニストと組み合わせて投与される。
本発明の更に他の実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体は、サルブタモール、フェノテロール、ホルモテロール、イソプロテレノール、メタプロテレノール、サルメテロール、テルブタリン、クレンブテロール、イソエタリン、ピルブテロール、プロカテロール、リトドリン、及びエピネフリン等のベータ-2アドレナリン受容体アゴニストと組み合わせて投与される。
本発明の更に他の実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体は、アルブタミン、ベフノロール、ブロモアセチルアルプレノロールメンタン、ブロキサテロール、シマテロール、シラゾリン、デノパミン、ドペキサミン、エチレフリン、ヘキソプレナリン、ヒゲナミン、イソクスプリン、マブテロール、メトキシフェナミン、ニリドリン、オキシフェドリン、プレナルテロール、ラクトパミン、レプロテロール、リミテロール、トレトキノール、ツロブテロール、ジルパテロール、及びジンテロール等の未確定のベータアドレナリン受容体アゴニストと組み合わせて投与される。
本発明の更に他の実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体は、限定ではないが以下のようなアドレナリン受容体アンタゴニストと組み合わせて投与される:アルフゾシン、アロチノロール、カルベジロール、ドキサゾシン、インドラミン、ラベタロール、モキシシリト、フェノキシベンザミン、フェントラミン、プラゾシン、シロドシン、タムスロシン、テラゾシン、トラゾリン、トリマゾシン等のアルファ-1(α1)アドレナリン受容体アンタゴニスト、及び/又は、アチパメゾール、シラゾリン、エファロキサン、イダゾキサン、ミアンセリン、ミルタザピン、ナピタン、フェノキシベンザミン、フェントラミン、ラウオルシン、セチプチリン、トラゾリン、ヨヒンビン等のアルファ-2(α2)アドレナリン受容体アンタゴニスト、及び/又は、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、エスモロール、メトプロロール、ネビボロール等のベータ-1アドレナリン受容体アンタゴニスト、及び/又は、ブタキサミン、ICI-118,551等のベータ-2アドレナリン受容体アンタゴニスト、及び/又は、ブシンドロール、アルプレノロール、カルテオロール、カルベジロール(付加的なα-ブロッキング活性を有する)、ラベタロール(付加的なα-ブロッキング活性を有する)、ナドロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール等の非選択的ベータ-ブロッカ、及び/又は、SR 59230A(付加的なα-ブロッキング活性を有する)等のベータ-3アドレナリン受容体アンタゴニスト、及び/又は、レボシメンダン、ヒドロコルチゾン及び/又は、アルギニンバソプレシン等のプロスタサイクリンに結合可能な交感神経副腎系の他のモジュレータ。
本発明の更に他の実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体は、Dunser: J Int Care Med 2009;24:293-316に記載のもの、例えば、レボシメンダン、ヒドロコルチゾン、及びアルギニンバソプレシン等、交感神経副腎系の他のモジュレータと組み合わせて投与される。
本発明の好適な実施形態において、第2の活性成分は、エピネフリンである。
グリコカリックスの保護のための第2の活性成分は、プロスタサイクリン又はその類似体と組み合わせて投与してもよい。本発明の他の実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体は、アンチトロンビンIII(AT)、ヒドロコルチゾン、グルココルチコイド、N-アセチルシステイン、血漿、バルプロエート、又はアルブミンと組み合わせて投与される。
医薬組成物
本発明は、本明細書に定めた治療用の医薬組成物に関し、医薬組成物は、プロスタサイクリン又はその類似体と、1つ又は複数の医薬的に許容可能な担体又は賦形剤とを含む。こうした医薬的に許容可能な担体又は賦形剤と、適切な医薬調製方法とは、当該技術において周知である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa (1990)参照)。
好適な実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体は、非経口用組成物において調製される。こうした非経口投与可能な組成物を調製する方法も、当業者に公知又は明白であろう、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa (1990)において更に詳細に説明されている。本明細書において、「医薬的に許容可能」という用語は、投与される被験者において悪影響を全く引き起こさない担体又は賦形剤を意味する。
本発明によれば、プロスタサイクリン又はその類似体は、非経口投与(例えば、ボーラス注射又は持続注入等の注入)用に処方され、アンプル、充填済みシリンジ、少量の注入液、又は保存料を添加した複数回投与用容器において、単位剤形で提供し得る。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、又は乳液の形態、例えば、水性ポリエチレングリコール中の溶液の形態をとり得る。油性又は非水性担体、希釈剤、溶媒、又はビヒクルの例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール中、野菜油(例えば、オリーブ油)、及び注入可能有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が含まれ、保存剤、湿潤剤、乳化剤、又は懸濁化剤、安定化剤、及び/又は分散剤等の調合剤を含有し得る。或いは、活性成分は、滅菌固体の無菌的分離、或いは、適切なビヒクル、例えば発熱性物質除去蒸留水と共に使用する前の構成の溶液から凍結乾燥により取得される粉末形態としてもよい。
非経口投与用の組成物は、プロスタサイクリン又はその類似体を、医薬的に許容可能な担体、好ましくは水性担体と組み合わせて、好ましくは担体中に溶解した状態で含む。水、緩衝用水、例えば0.7%、0.8%、0.9%、又は1%等の生理食塩水、0.2%、0.3%、0.4%、又は0.5%等のグリシン等、様々な水性担体を使用し得る。通常、組成物が水中で0.9% w/w塩化ナトリウム溶液に対応する浸透圧を有することを目標とする。更に、当業者に公知であるように、特定の投与規則に応じて、pH 7.4を中心とする適切な範囲内でpHを調整し得る。組成物は、従来の周知の滅菌手法により滅菌し得る。結果的に生じた水溶液は、使用のためにパッケージしてよく、或いは無菌状態で濾過及び凍結乾燥し、凍結乾燥された調製物を投与前に滅菌水溶液と組み合わせてもよい。
組成物は、生理的状態に近づける必要に応じて、pH調整及び緩衝剤、安定化剤、保存料、非イオン性界面活性剤又は洗浄剤、抗酸化剤、等張化剤等の医薬的に許容可能な補助物質、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等を含有し得る。
本発明によれば、プロスタサイクリン又はその類似体の用量は、治療される個体の体重及び全身状態に応じて決まる。したがって、治療の準備では、プロスタサイクリン又はその類似体の濃度を調整する必要が生じる場合がある。こうした調整は、手術直前に行わなくてはならない場合があり、ミスのリスクを伴う。したがって、本発明によれば、前記医薬組成物は、プロスタサイクリン又はその類似体の濃度の比較的安全且つ容易な調整を可能にするプロスタサイクリン又はその類似体の量を含む。
本発明の一実施形態において、前記医薬組成物は、本明細書に定めた治療において使用するためのプロスタサイクリン又はその類似体の単位用量を含む。本発明による単位用量は、0.375 μg乃至750 μg、例えば0.750 μg乃至150 μg、又は例えば150 μg乃至225 μg、又は例えば225 μg乃至275 μg、又は例えば275 μg乃至325 μg、又は例えば325 μg乃至375 μg、又は例えば375 μg乃至425 μg、又は例えば425 μg乃至475 μg、又は例えば475 μg乃至525 μg、又は例えば525 μg乃至575 μg、又は例えば575 μg乃至625 μg、又は例えば625 μg乃至675 μg、又は例えば675 μg乃至725 μg、又は例えば725 μg乃至750 μgの用量となり得る。こうした用量は、術中投与を対象としたものとなる。
本発明の一実施形態において、前記医薬組成物は、本明細書に定めた治療において使用するためのプロスタサイクリン又はその類似体の単位用量として処方される。こうした量は、手術期間の長さにより決まる、予想される治療の長さに応じて調整し得る。一般的な手術期間の長さは、15分乃至360分であり、例えば15乃至60分の間隔、例として15分乃至30分、又は例として30分乃至45分、又は例として45分乃至60分、或いは例えば60分乃至120分の間隔、例として60分乃至75分、又は例として75分乃至90分、又は例として90分乃至105分、又は例として105分乃至120分、例として120分乃至135分、又は例として135分乃至150分、又は例として150分乃至165分、又は例として165分乃至180、或いは例えば180分乃至240分の間隔、例として180分乃至195分、又は例として195分乃至210分、又は例として210分乃至225分、又は例として225分乃至240、或いは例えば240分乃至300分の間隔、例として240分乃至255分、又は例として255分乃至270分、又は例として270分乃至300分、或いは例えば300分乃至360分の間隔、例として300分乃至315分、又は例として315分乃至330分、又は例として330分乃至345分、又は例として345分乃至360分である。
上述した術中投与を対象とした用量は、手術に続く任意の長さの時間に亘り術後投与と組み合わせ得る。好ましくは、術後投与は72時間継続される。したがって、本発明の実施形態において、医薬組成物は、本明細書に定めた術中及び/又は術後の両方の治療において使用するためのプロスタサイクリン又はその類似体の単位用量を含む。術後投与のための本発明による単位用量は、約86.5 mg乃至1728 mg、例えば172.8 mgから432.0 mgの用量となり得る。
本発明によれば、プロスタサイクリン又はその類似体は、1つ又は複数の第2の活性成分と組み合わせて投与し得る。したがって、本発明の一実施形態において、前記医薬組成物は、プロスタサイクリン又はその類似体との同時投与用の1つ又は複数の第2の活性成分を含む。
パーツキット
本発明は、本明細書に定めた治療において使用するためのパーツキットを提供する。したがって、本発明によれば、前記パーツキットは、個別、連続、又は同時投与用の本明細書に定めたプロスタサイクリン又はその類似体或いは医薬組成物を備える。
本発明によれば、プロスタサイクリン又はその類似体の用量は、治療される個体の体重に応じて決まる。本発明の一実施形態において、前記パーツキットは、本明細書に定めた治療において使用するためのプロスタサイクリン又はその類似体の単位用量パッケージを含む
他の実施形態において、前記パーツキットは、プロスタサイクリン又はその類似体を、0.375 μg乃至750 μg、例えば0.750 μg乃至150 μg、又は例えば150 μg乃至225 μg、又は例えば225 μg乃至275 μg、又は例えば275 μg乃至325 μg、又は例えば325 μg乃至375 μg、又は例えば375 μg乃至425 μg、又は例えば425 μg乃至475 μg、又は例えば475 μg乃至525 μg、又は例えば525 μg乃至575 μg、又は例えば575 μg乃至625 μg、又は例えば625 μg乃至675 μg、又は例えば675 μg乃至725 μg、又は例えば725 μg乃至750 μgの単位用量で含む。
本発明の一実施形態において、前記パーツキットは、本明細書に記載した治療に適した量のプロスタサイクリン又はその類似体を含む少なくとも1個の単位パッケージを備える。こうした量は、手術期間の長さにより決まる、予想される治療の長さに応じて調整し得る。一般的な手術期間の長さは、15分乃至360分の間隔であり、例えば15乃至60分の間隔、例として15分乃至30分、又は例として30分乃至45分、又は例として45分乃至60分、或いは例えば60分乃至120分の間隔、例として60分乃至75分、又は例として75分乃至90分、又は例として90分乃至105分、又は例として105分乃至120分、例として120分乃至135分、又は例として135分乃至150分、又は例として150分乃至165分、又は例として165分乃至180、或いは例えば180分乃至240分の間隔、例として180分乃至195分、又は例として195分乃至210分、又は例として210分乃至225分、又は例として225分乃至240、或いは例えば240分乃至300分の間隔、例として240分乃至255分、又は例として255分乃至270分、又は例として270分乃至300分、或いは例えば300分乃至360分の間隔、例として300分乃至315分、又は例として315分乃至330分、又は例として330分乃至345分、又は例として345分乃至360分である。
本発明の好適な実施形態において、パーツキットは、60分乃至120分の範囲の治療の長さに適したプロスタサイクリン又はその類似体の量を含む。
本発明によれば、プロスタサイクリン又はその類似体は、1つ又は複数の活性成分と組み合わせて投与し得る。したがって、本発明の一実施形態において、前記パーツキットは、更に、個別、連続、又は同時投与用の1つ又は複数の第2の活性成分を含む。
本発明の一実施形態において、プロスタサイクリン又はその類似体は、適切な投与量及び/又は治療のための体積を得るために容易に溶解可能な、医薬組成物の1つ又は複数の投与単位として前記パーツキットに含まれ得る。
本発明によるパーツキットは、更に、プロスタサイクリン、その類似体、又は医薬組成物を溶解する水性媒体と、プロスタサイクリン又はその類似体或いは組成物の投与に必要となる他の手段とを備え得る。
本発明によるパーツキットは、本明細書に定めた治療において使用するための取扱説明書を備えてもよい。
治療のための方法
本発明は、プロスタサイクリン又はその類似体を手術中に個体に投与する治療の方法に関する。したがって、本発明による方法は、プロスタサイクリン又はその類似体を手術時に個体に対して個別、連続、又は同時投与により投与する1つ又は複数のステップを備える。
本発明によれば、プロスタサイクリン又はその類似体は、1つ又は複数の第2の活性成分と組み合わせて投与し得る。したがって、本発明の一実施形態において、前記治療の方法は、第2の活性成分を個体に対して個別、連続、又は同時投与により投与する1つ又は複数のステップを備える。
実施例I
以下の実施例は、手術を受ける個体におけるグリコカリックス及び内皮の状態を測定する方法を実証する。
実施例は、ホイップル手術(膵十二指腸切除術)を受ける患者の二重盲検臨床研究である。研究に含まれる患者は、任意抽出され、Flolan(プロスタサイクリン類似体)を2 ng/kg/minの用量で、或いは生理食塩水を等しい体積で、周術期に投与された。
グリコカリックスの保護は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により測定した。
血液は、到着直後に、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸塩、ヘパリン(血漿)、及び血清管中に採取する。血液試料は、最小限の血行静止(30秒未満)が有る状態又は無い状態で採取し、氷温に冷却し、凝固直後に、2000 gで10分間遠心分離する。血清試料は、採取の1時間以内に凍結させ、分析まで-80℃で保存する。
グリコカリックス分解の可溶性マーカー(シンデカン-1及びグリピカン-1、ヒアルロナン)、並びに、炎症、組織及び内皮損傷、内皮活性化、自然な抗凝集性、及び線維素溶解のマーカーは、市販のイムノアッセイにより、製造業者の推奨に従って、血漿試料において1回ずつ測定した。シンデカン-1と、グリピカン-1、ヒアルロナンを含むグリコカリックス損傷を示す他のマーカーの血漿レベルを測定する。アドレナリン、ノルアドレナリン、ICAM-1、E-セレクチン、可溶性fms様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1又はsVEGF R1とも呼ばれる)、sVE-カドヘリン、アンジオポエチン1(Ang-1)、アンジオポエチン2(Ang-2)、可溶性トロンボモジュリン(sTM)、可溶性内皮プロテインC受容体(sEPCR)、プロテインC(PC)、活性化プロテインC(APC)、抗トロンビンIII(AT)(アンチトロンビンIII)、組織因子経路阻害因子(TFPI)、フォンヴィレブランド因子(vWF)、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、第XIII因子、ヒストン複合DNAフラグメント、高移動群タンパク質B1(HMGB1)、d-ダイマー、IL-6、sCD40L、及びsC5B9を含む、内皮細胞の活性化及び損傷を示すマーカーの血漿レベルも、手術により生じた合併症のレベルを監視するために測定する。
他の測定される臨床学的因子:
患者は、手術前、手術中、及び手術後に追跡する。周術期及び/又は手術後の流体投与の必要性、又は周術期及び/又は手術後の流体投与の体積、術後12時間、24時間、及び48時間における体重増加、手術後の腹部コンパートメント症候群の発生、昇圧補助(ノルアドレナリン及びドブタミン等の薬物の使用による)、換気補助、透析、及び敗血性合併症の治療の必要性を含む集中治療の必要性について、データを収集する。
統計
統計分析は、従来の方法を用いて行う。手術時にプロスタサイクリン(Flolan)により治療した患者を、手術時にプロスタサイクリン(Flolan)により治療しなかった患者と比較する。生理食塩水により治療した患者と比較した、Flolanにより治療した患者からの血漿試料における1つ又は複数のマーカーのレベル低下は、内皮及びそのグリコカリックスの保護により仲介される毛細血管漏出の予防に、治療が有用であることを示す。
a)手術時の流体投与の必要性及び手術後の流体投与の必要性の合計、b)術後12時間、24時間、及び48時間の体重増加、c)腹部コンパートメント症候群の発生、d)昇圧補助(ノルアドレナリン及びドブタミン等の薬物の使用による)、換気補助、透析、及び敗血性合併症の治療の必要性を含む集中治療の必要性のうち1つ又は複数が、生理食塩水を受けた患者と比較して、プロスタサイクリンにより治療した患者において減少することは、毛細血管漏出の予防に治療が有用であることを示す。
実施例II
健康な志願者における低用量のプロスタサイクリン類似体の血小板凝集及び血液凝固に対する最小限の影響の実証:
6人の健康な志願者にFlolan(プロスタサイクリン類似体)を4 ng/kg/minの用量で2時間静脈内投与した。全血粘弾性アッセイ(トロンボエラストグラフィー[TEG])用及び全血血液凝集(マルチプレート)用の血液試料を、Flolanの注入前、Flolan注入の60分後、及びFlolan注入の120分後に取得した。
TEGアッセイに関しては、製造業者の推奨通りに実施し、340 μlを、20 μlのCaClを0.2 M(カップ内の最終濃度11.1 mM)及びカオリンと37℃で混合後、止血活性をWO2010/075861に示したように記録した。
全血インピーダンス凝集測定は、Multiple Platelet function Analyzer(MultiPlate(登録商標)アナライザー)により分析した。分析では、様々な血小板アゴニストを利用した:ASPI試験(アラキドン酸による活性化)、COL試験(コラーゲンによるコラーゲン受容体を介した活性化)、TRAP試験(TRAP-6(トロンビン受容体活性化ペプチド)による活性化は、血小板表面上のトロンビン受容体を刺激する)、及びADP試験(アデノシン5′-二リン酸(ADP)による活性化は、ADP受容体による血小板活性化を刺激する)。300μLに調節した試料を、300μLのNaCl(ASPI試験)又はNaCl-CaCl2(COL試験、TRAP試験、ADP試験)及び20μLのPLTアゴニストと混合した。
1)TRAP試験:TRAP-6最終濃度、32 micromol/L、
2)ADP試験:ADP濃度、6.5 micromol/L、
3)COL試験:コラーゲン濃度、3.2 microg/mL、
4)ASPI試験:アラキドン酸濃度(AA)、0.5 mmol/L
マルチプレートは、血小板凝集を継続的に記録する。マルチプレートセンサに対する血小板の付着によるインピーダンスの増加が、任意の凝集単位(AU)に変換され、WO2010/075861に示したように時間に対してプロットされる。
結果:
ベースラインTEG値をFlolan注入の60及び120分後に取得した試料と比較した際に、調査したパラメーター(R、アングル、MA)の何れにおいても、試験した6人の志願者全員で有意な差は観察されておらず、図1を参照されたい。
同様に、ベースラインマルチプレート値をFlolan注入の60及び120分後に取得した試料と比較した際に、調査したアゴニストの何れにおいても、有意な差は観察されなかった。図2は、試験した6人の志願者のADP及びTRAP試験の値を示す。
実施例III
健康な被験者におけるFlolan(登録商標)の注入の内皮保護及び抗凝集効果
研究プロトコル
8人の健康な志願者にFlolan(登録商標)(プロスタサイクリン)を4 ng/kg/minの用量で2時間静脈内投与した。血液試料は、内皮細胞(トロンボモジュリン、PAI-1)及びグリコカリックス(シンデカン-1)活性化及び/又は損傷、細胞壊死(ヒストン複合DNAフラグメント、HMGB1)、及び抗凝集(プロテインC、アンチトロンビン、TFPI)を示す血漿バイオマーカーについて、以下の時点で分析した:注入前(0時間)、注入停止直後(2時間)、及び、注入開始後4時間、5時間、6時間、8時間、及び24時間。
血漿中の個別のバイオマーカーの濃度は、市販のELISAキットにより、製造業者の推奨に従って分析した。
対応のあるt検定でp値<0.05のものを有意と見做した。
結果
投与量のプロスタサイクリンは、トロンボモジュリンの循環レベルの著しい減少により証明される内皮保護効果を有し、効果は、持続的で、注入停止後数時間継続していると思われる(図3A)。更に、プロテインCの循環レベルは、Flolan注入停止後の時間帯に減少し、プロスタサイクリンがプロテインCの活性化を向上させたことを示している(非活性化形態のプロテインCの低下をもたらす)(図3B)。
更に、活性化内皮から生じる線維素溶解の阻害剤であるPAI-1の循環レベルも低下しており(図4A)、プロスタサイクリンの注入が内皮を不活性化し、内因性の線維素溶解を促進したことを更に示している。最後に、アンチトロンビンの循環レベルも減少しており(図4B)、より多くの量のアンチトロンビンが、可溶型で存在するのではなく、内皮グリコカリックスに付着したことを示している(図4B)。
プロスタサイクリンは、細胞壊死のバイオマーカー(ヒストン複合DNAフラグメント、HMGB1)に有意に影響していないが、但し、HMGB1は5時間後に減少に向かう傾向を有した(p=0.056)(図5A及び5B)。プロスタサイクリンは、グリコカリックス脱落を誘発せず、又はこれに影響しておらず(シンデカン-1)(図6A)、或いはTFPIの循環レベルに作用しなかった(図6B)。
結論
プロスタサイクリンの投与量が健康な個体におけるトロンボモジュリン及びプロテインCの同時減少に関連するという発見は、プロスタサイクリンの内皮保護効果の概念を実証する。機構的に、当該発見は、プロスタサイクリンが内皮損傷について認められたマーカーであるトロンボモジュリンの内皮での放出/流出を減少させること、更にこれにより、内皮により/において活性化可能なプロテインCの量が増加することを示している。活性化プロテインCは、PAR受容体を介して内皮に対する細胞保護効果を発揮し、高レベルのトロンボモジュリンは、粗い内皮細胞損傷を示し、外傷患者の高い致死率の予測につながる。したがって、この発見は、内皮の変調に続いて毛細血管漏出症候群が発生するリスクが高い大手術を受けた患者において、その結果をプロスタサイクリンが改善し得る重要なメカニズムを初めて特定するものとなる。
PAI-1がプロスタサイクリン注入中にアンチトロンビンと共に減少したという発見は、プロスタサイクリンが線維素溶解を支援すると同時に、内皮グリコカリックスに対するアンチトロンビンの付着を増加させることで内皮保護を行うことを更に示している。最後に、細胞損傷バイオマーカーであるヒストン複合DNAフラグメント及びHMGB1、及びグリコカリックス分解バイオマーカー(シンデカン-1)にプロスタサイクリンが有意な影響を与えなかったという発見(但しHMGB1は有意でない減少を示した)は、この研究に含まれる健康な被験者が組織損傷を有していなかったことから、予期されるものである。
実施例IV
トロンボエラストグラフィー及び内皮マーカーにより測定した、プロスタサイクリンの大規模な手術による止血に対する影響
序論
外科的ストレスに関連して、毛細血管透過性は増加し、血漿コロイド浸透圧の減少と、間質組織への血管内液の喪失とが生じる。患者は、その後、晶質及びコロイドの注入により治療される血液量減少及び血圧低下を発生させる可能性があり、これは間質浮腫の形成の増加につながる恐れがある。正常に機能する血管内皮は、管腔側に膜結合した様々なプロテオグリカン及び糖タンパク質を有する。この層は、グリコカリックスとされる。内皮細胞、血漿タンパク質、及び液体と共に、その主な機能は、血管透過性を維持及び制御して、成分の障壁としての役割を果たすことである。更に、グリコカリックスは、白血球及び血小板が内皮に接着することを防止し、これにより、炎症及び細胞浮腫の発生を低減する。全身のレベルでは、グリコカリックスは、約700乃至1,000 mlの血漿(70 kgの健康な成人、総プラズマ量の30%に対応)を内皮表面に結合させており、この血漿体積の非循環部分は、循環血漿体積との動的均衡状態にある。循環及び非循環血漿間の均衡が撹乱され、内皮がグリコカリックスとの関連においてストレスの影響を受けている場合、毛細血管透過性は増加し、毛細血管漏出症候群(CLS)を、その後の重篤な間質浮腫の形成と共に発生させる恐れがある。
プロスタサイクリン(PGI2)は、正常に機能する内皮細胞により形成及び放出され、PGI2は、内皮/血管の完全性を保護すると共に、細胞保護性を有する。現在、PGI2は、肺高血圧症、肺損傷(ARDS)、及び四肢の重大な虚血を有する重篤疾患患者の治療、更に透析用フィルタ内の抗凝血剤に用いられている。
目的
本研究の目的は、膵臓及び肝臓の癌の手術を受けた患者におけるプロスタサイクリンの持続注入の薬理学的効果を明らかにすることである。前向き無作為化試験の目的は、以下を調査することである。
1)内皮機能に対する影響(主要エンドポイント)
2)止血に対する影響
3)輸液の必要性に対する影響
仮説
プロジェクトの仮説は次の通りである。
1)無作為抽出し、プロスタサイクリン治療を施した患者では、プラセボ群と比較して、内皮マーカーにより測定した内皮機能障害/傷害が明白ではない。
2)プラセボと比較して、プロスタサイクリンの影響は、全血分析(トロンボエラストグラフィー、TEG)により測定される凝血異常を、より明白なものにしない。
3)プロスタサイクリンの効果は、プラセボ群と比較して、輸血の必要性に影響しない。
研究の設計
2治療群による前向き無作為プラセボ対照比較単一施設試験:
A. イロプロスト(Ilomedin(登録商標))-手術開始から手術完了後6時間まで静脈内注入として投与
B. プラセボ(0.9%生理食塩水)-手術開始から手術完了後6時間まで静脈内注入として投与
材料
患者の基盤は、Rigshospitalet(コペンハーゲン大学病院)のKIR-GAS-TRANSPLANT Clinicで手術を受けることになった脾臓及び肝臓に癌を有する患者により構成される。一年以内に、2×20人の患者を含めることが予定されている。目的に適した成人が含まれ得る。
包含の基準
1. 18歳超の男女。
2. ホイップル手術又は肝臓切除術を受ける。
3. インフォームドコンセントの後、研究に参加する意思を有する。
除外の基準
1. 試験薬剤に対するアレルギー。
2. ADP受容体阻害剤、ヘパリン(血栓症予防としてではなく)、第Xa因子阻害剤、トロンビン阻害剤、ビタミンKアンタゴニストによる治療を受けている。
3. 自己免疫異常
4. 過去6ヶ月以内の頭蓋内出血
5. 過去6ヶ月以内の急性冠疾患、心筋梗塞
6. 急性又は慢性の鬱血性心不全
7. 肝硬変(肝不全)
8. 透析を要する腎臓障害
9. 患者が妊娠又は授乳中である(妊娠を除外するため、女性は閉経後(最後の月経から少なくとも12ヶ月)又は不妊であるか、或いは妊娠可能年齢の女性で妊娠テストが陰性でなくてはならない)
10.過去30日以内の他の臨床研究への参加
効果パラメーター
1次効果の対象
・手術前から術後6時間までの循環可溶性トロンボモジュリン(sTM)の濃度変化
・手術前から術後6時間までの循環可溶性E-セレクチンの濃度変化
・手術前から術後6時間までのグリコカリックス分解の尺度としてのシンデカン-1の濃度変化
2次効果の対象
・手術完了時にTEGにより評価した凝血異常の度合い
・手術開始から術後6時間までの輸血数
試験薬剤
イロプロストは、濃縮物として注入液溶液に分注する。1 mlに、20 μgのイロプロストが(トロメタモール塩として)滅菌水中にpH約8.3で含まれる。イロプロストは、0.5乃至2ナノグラム/kg体重/分の静脈内投与量で投与する。この研究では、1.0ナノグラム/kg/分のイロプロストを、手術の開始から術後病棟を出るまで投与するが、最大24時間までとする。投与量は、500 mlの0.9%生理食塩水に、医薬品情報リーフレットに従って溶解する。プラセボとして、500 mlの0.9%塩化ナトリウムを用い、イロプロストの投与に対応する体積で投与する。
無作為化
患者をプロスタサイクリン及びプラセボにそれぞれ割り当てる連続番号の付いた不透明な封筒を開くことにより、1:1無作為化を用い、これを手術当日、患者の治療に関与しない人間が試験薬剤を手術前に調製する際に行う。試験薬剤の調製は、熟練したスタッフが行う。
介入
それぞれの系列において、以下を与える。
1. 手術の開始から術後6時間まで、2と同体積の持続注入の形態のプラセボ。投与は、中心静脈(CVK)において行う。
2. 手術の開始から術後6時間まで、1.0 ng/kg/分のプロスタサイクリンの持続注入。投与は、中心静脈(CVK)において行う。
試験は、個々の患者において術後6時間で完了とする。試験薬剤は、電気ポンプシステムにより持続注入として投与する。試験薬剤の調製及び接続は、その訓練を受けたスタッフが実行しなくてはいけない。試験薬剤は、手術の直前に混合し、室温に保つ必要があり、この混合物の保存可能期間は24時間である。
盲検化
この研究では盲検化は行わない。
測定
内皮に対する影響の研究
内皮の機能障害/活性化及び傷害の度合いを、血漿中のバイオマーカーのベースラインからの変化により術後6時間まで測定して研究する。血液試料は、A-カニューレから、介入前(イロプロスト注入前)及び手術完了時、更に術後6時間に取得し、その後、sTM、可溶性E-セレクチン、及びシンデカン-1の分析を行う。
止血に対する影響
TEGは、血液が凝固する能力を反映する血液止血分析である。分析では、凝固因子又は血小板の欠如及び線維素溶解の増加等、凝血異常の様々な原因を特定する。TEGは、従来の凝固分析と比較して、より良好に止血を反映し、輸液を増加させる必要性を有する患者を特定する(Johansson et al. 2009)。TEGにより、手術の開始前、手術完了時、及び術後6時間に止血を調査する。更に、手術中及び術後6時間の輸血の回数及び種類(SAG M、FFP、TK)、更に、手術中及び術後6時間の注入液の種類(晶質/コロイド)及び量を記録する。
次の血液試料を採取する。
1)手術開始前(イロプロスト/プラセボ注入開始前)
a. EDTA血漿9 ml
b. クエン酸血漿4 ml
c. ヘパリン血漿4 ml
d. 血清4 ml
2)手術完了時
a. EDTA血漿9 ml
b. クエン酸血漿4 ml
c. ヘパリン血漿4 ml
d. 血清4 ml
3)術後6時間
a. EDTA血漿9 ml
b. クエン酸血漿4 ml
c. ヘパリン血漿4 ml
d. 血清4 ml
上述した分析(ELISA、TEG)は、全てRigshospitaletの血液バンク2034、輸血医学部の実験室において確立及び検証され利用可能となっている。
統計的考慮事項
プロジェクトの主要エンドポイントは、可溶性トロンボモジュリン(sTM)により測定した内皮の機能不全/傷害である。5%の有意レベル(アルファ)を用い、検出力(1-ベータ)を80%に設定する。上述したパラメーター、最小関連差(POTAからの放出に対するベースラインからのsTMレベルにおける35%平均差[Johansson et al. Ann Surg 2001及びJ Trauma 2011 及び未発表データに基づいて推定])及び平均値の35%の推定標準偏差[Johansson et al. Ann Surg 2001及びJ Trauma 2011に基づいて推定]によりNを計算すると、80%の検出率を得るためには、各アームにおける参加数は17となる。2×20人の患者を含めることに決定した。
副作用、リスク、及び欠点
プロスタサイクリンは、肺高血圧症の治療用に、本研究の投与量の10倍を超える用量で長年使用されてきた周知の物質である。こうした用量では、薬品情報リーフレットに記載されるように副作用が見られる場合がある。2 ng/kg/分を下回る用量でのプロスタサイクリンの注入では、1乃至2時間続く自己限定的な低血圧エピソードが幾つか記載されている。他の副作用、特に出血の傾向は、記載されていない。
全ての副作用は、患者固有のCRFに記録しており、全てのインシデントはデンマーク医薬品局への最終報告書から明らかとなろう。
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図1
R-value: R値
TEG-R-Value: TEG-R値
mean: 平均
Angle: アングル
TEG-Angle: TEG-アングル
MA-value: MA値
TEG-MA-value: TEG-MA値
図2
Multiplate-TRAP: マルチプレート-TRAP
mean: 平均
Multiplate-ADP: マルチプレート-ADP
図3
A
Thrombomodulin: トロンボモジュリン
Plasma thrombomodulin: 血漿トロンボモジュリン
B
Protein C: プロテインC
Plasma protein C: 血漿プロテインC
図4
A
Plasma PAI-1: 血漿PAI-1
B
Antithrombin: アンチトロンビン
Plasma antithrombin: 血漿アンチトロンビン
図5
A
Histone-complexed DNA: ヒストン複合DNA
Plasma histone-complexed DNA fragments: 血漿ヒストン複合DNAフラグメント
B
Plasma HMGB1: 血漿HMGB1
図6
A
Syndecan-1: シンデカン-1
Plasma syndecan-1: 血漿シンデカン-1
B
Plasma tissue factor pathway inhibitor (TFPI): 血漿組織因子経路阻害因子(TFPI)

Claims (32)

  1. 術中及び/又は術後投与により毛細血管漏出を予防するための、プロスタサイクリン又はその類似体である化合物。
  2. 前記プロスタサイクリン又はその類似体は、手術中に投与される、請求項1記載の化合物。
  3. 前記毛細血管漏出の予防は、内皮細胞及び/又はグリコカリックスの保護により仲介される、請求項1乃至2記載の化合物。
  4. 前記毛細血管漏出の予防は、グリコカリックスの保護により仲介される、先行請求項に記載の化合物。
  5. 消化器、胸部、整形外科、泌尿器、婦人科、形成外科、美容整形、又は再建手術から選択された手術における術中及び/又は術後投与用である、先行請求項に記載の化合物。
  6. 虚血、心血管疾患、外傷、移植、ステント及びグラフトの移植又は挿入に関連しない手術における術中及び/又は術後投与用である、先行請求項に記載の化合物。
  7. 前記化合物は、PGI2、PGX、プロスタサイクリン(エポプロステノール)又はその変異体、ベラプロストナトリウム、エポプロステノールナトリウム、イロプロスト、ボセンタンと組み合わせたイロプロスト、クエン酸シルデナフィルと組み合わせたイロプロスト、トレプロスチニル、ペグ化トレプロスチニル、トレプロスチニルジエタノールアミン、トレプロスチニルナトリウム、2-{4-[(5,6-ジフェニルピラジン-2-yl)(イソプロピル)アミノ]-ブトキシ}-N-(メチルスルホニル)アセトアミド、{4-[(5,6-ジフェニルピラジン-2-yl)(イソプロピル)アミノ]-ブトキシ}酢酸、8-[1,4,5-トリフェニル-1H-イミダゾール-2-yl-オキシ]オクタン酸、イソカルバサイクリン、シカプロスト、[4-[2-(1,1-ジフェニルエチルスルホニル)-エチル]-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[1,4]オキサジン-8-イルオキシ]酢酸N-メチル-d-グルカミン、7,8-ジヒドロ-5-(2-(1-フェニル-1-ピリド-3-yl-メチミノキシ)-エチル)-a-ナフチルオキシ酢酸、(5-(2-ジフェニルメチルアミノカルボキシ)-エチル)-a-ナフチルオキシ酢酸、2-[3-[2-(4,5-ジフェニル-2-オキサゾリル)エチル]フェノキシ]酢酸、[3-[4-(4,5-ジフェニル-2-オキサゾリル)-5-オキサゾリル]フェノキシ]酢酸、ボセンタン、17[アルファ], 20-ジメチル-[デルタ]6,6a-6a-カルバPGI1、及び15-デオキシ-16[アルファ]-ヒドロキシ-16[ベータ],20-ジメチル-[デルタ]6,6a-6a-カルバPGI、又はその誘導体の群から選択される、先行請求項に記載の化合物。
  8. 前記化合物は、エポプロステノール又はイロプロスト、或いはその誘導体である、先行請求項に記載の化合物。
  9. 0.5 ng/kg/min乃至4.0 ng/kg/minの用量で投与するための、先行請求項に記載の化合物。
  10. 非経口投与用の、先行請求項に記載の化合物。
  11. 持続静脈内投与用の、先行請求項に記載の化合物。
  12. 単一ボーラス投与又は反復用量投与、或いは皮下投与用である、先行請求項に記載の化合物。
  13. 前記術中治療期間は、15乃至360分の長さを有する、先行請求項に記載の化合物。
  14. 前記治療期間は、60乃至120分の長さを有する、請求項13に記載の化合物。
  15. 前記治療期間は、前記術中治療期間と72時間までの術後期間とを含む、先行請求項に記載の化合物。
  16. 前記治療は、シンデカン-1、グリピカン-1、及びヒアルロナンから選択された1つ又は複数のマーカーの、身体由来試料におけるレベル増加のリスクを低減又は減少させる、先行請求項に記載の化合物。
  17. 前記治療は、アドレナリン、ノルアドレナリン、ICAM-1、E-セレクチン、可溶性fms様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1)、sVE-カドヘリン、アンジオポエチン1(Ang1)、アンジオポエチン2(Ang-2)、可溶性トロンボモジュリン(sTM)、可溶性内皮プロテインC受容体(sEPCR)、プロテインC(PC)、活性化プロテインC(APC)、アンチトロンビンIII(AT)、組織因子経路阻害因子(TFPI)、フォンヴィレブランド因子(vWF)、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、第XIII因子、ヒストン複合DNAフラグメント、高移動群タンパク質B1(HMGB1)、d-ダイマー、IL-6、及びsC5B9から選択された、1つ又は複数のマーカーの、身体由来試料におけるレベル増加のリスクを低減又は減少させる、先行請求項に記載の化合物。
  18. 前記治療は、
    a)周術期及び/又は手術後の流体投与の必要性、又は周術期及び/又は手術後に投与される流体の体積、
    b)手術前と比較した手術後12時間、24時間、48時間、及び72時間の体重増加、
    c)手術前の腹部コンパートメント症候群の発生、
    d)集中治療、昇圧補助、換気補助、透析、及び敗血性合併症の治療等の支持療法の必要性、
    e)中枢神経系、肺、心臓、消化管系、腎臓、肝臓、及び血液系の臓器不全群から選択された単/多臓器不全の発生、及び
    f)凝血異常、のうち1つ又は複数の要素のリスクを低減又は減少させる、先行請求項に記載の化合物。
  19. カオリンにより活性化されたクエン酸血試料において、治療中又は治療後に測定したトロンボエラストグラフィー値は、a)Rが3.0乃至8.0分、b)アングルが55°乃至78°、及びc)MAが51 mm乃至69 mmの範囲内となる治療用の、先行請求項に記載の化合物。
  20. 前記治療は、微小循環に対して個別的又は最小限の血管拡張作用をもたらす、先行請求項に記載の化合物。
  21. 治療中又は治療後にマルチプレート電気的インピーダンス凝集測定法により測定される凝集単位は、40乃至200の範囲内となる治療用の、先行請求項に記載の化合物。
  22. 請求項1乃至21に記載の化合物を含む、毛細血管漏出の治療又は予防用の医薬組成物。
  23. 前記化合物は、内皮細胞及びグリコカリックスの保護を仲介する、請求項22記載の医薬組成物。
  24. 前記化合物は、内皮グリコカリックスの保護を仲介する、請求項22記載の医薬組成物。
  25. 前記化合物は、0.375 μg乃至750 μgの用量で含まれる、請求項22乃至24記載の医薬組成物。
  26. 前記化合物は、15分乃至360分の治療期間に適した用量で含まれる、請求項22乃至25記載の医薬組成物。
  27. 更に、1つ又は複数の第2の活性成分を含む、請求項22乃至26記載の医薬組成物。
  28. 少なくとも1つの第2の活性成分は、アドレナリン受容体のアゴニスト又はアンタゴニストである、請求項22乃至27記載の医薬組成物。
  29. 少なくとも1つの第2の活性成分は、アンチトロンビンIII(AT)、ヒドロコルチゾン、グルココルチコイド、N-アセチルシステイン、血漿、バルプロエート、又はアルブミンである、請求項22乃至28記載の医薬組成物。
  30. 請求項1乃至21記載の化合物又は請求項22乃至29記載の医薬組成物を備える、毛細血管漏出の治療又は予防用のパーツキット。
  31. 請求項1乃至21記載の化合物又は請求項22乃至29記載の医薬組成物を、手術中及び/又は手術後に、個別、連続、又は同時投与により個体に投与するステップを備える、毛細血管漏出を治療又は予防する方法。
  32. 更に、1つ又は複数の第2の活性成分を、個体に対して個別、連続、又は同時投与するステップを備える、請求項31記載の治療方法
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