JP2015113327A - Crs4の治療及び/又は予防のための組成物、crs4モデルマウス及びバイオマーカー - Google Patents

Crs4の治療及び/又は予防のための組成物、crs4モデルマウス及びバイオマーカー Download PDF

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Takahiko Saito
能彦 斎藤
史朗 上村
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Abstract

【課題】CKDに続発する心不全のうち、臨床的にも頻度が高いCRS4の適切な治療薬を提供する。
【解決手段】可溶性Flt-1(sFlt-1)を有効成分とする。sFlt-1をノックアウトした後、大動脈縮窄術を施してCRS4モデルマウスを作成した。CRS4モデルマウスでは肺重量係数及び心重量係数の増加が認められた。このCRS4モデルマウスに、リコンビナントsFlt-1タンパクを投与したところ、心重量係数と肺重量係数の増加を抑制した。
【選択図】図6

Description

本発明は、CRS4の治療及び/又は予防のための組成物、CRS4モデルマウス及びCRS4のバイオマーカーに関する。
慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease)は心血管系疾患(CVD:cardiovascular disease)の独立した危険因子であり、糸球体積過量の低下とともにCVDの発症率が上昇することが知られている。CKDが注目されるようになったのは、軽微な腎機能障害や尿所見異常でもCVD特に心不全発症の強力な予測因子となることが明らかとなったためで、腎機能障害とCVDが互いに密接に悪影響を及ぼし合うことから心腎連関の概念が生まれるきっかけとなった。
現在では心腎連関はRoncoらによりcardio-renal syndrome(CRS)として心血管障害及び腎機能障害の急性・慢性、病態の方向性(心腎、腎心)等から5種類(CRS1-CRS5)の病型に分類されている(非特許文献1)。このうちCKDによる心不全の悪化はCRS4に分類されており、臨床的にも頻度が高く、予後とも密接に関与すると考えられる病態である。しかし、CKDにおいて心不全が増悪する機序としては、過去より様々な機序が想定されているが、その機序はいまだ十分には解明されておらず、その有効な原因療法は皆無であり、対症療法に限られているのが現状である。
CKDでは、古典的なCVDさらには心不全の発症危険因子である加齢、高脂血症、高血圧、喫煙、糖尿病のほか、腎性貧血、栄養不良、酸化ストレス、慢性炎症、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系や交感神経活性の亢進、カルシウム・リン代謝異常、高ホモシスティン血症、一酸化炭素(NO)産生低下等の非古典的心血管危険因子を有していることが多く、これら多くの病態が複合的に関与する(非特許文献2)。
更にCKD患者では内因性NOS阻害物質であるADMA(Asymmeteric dimethylarginine)が増加し、NO産生はますます低下する傾向にある。これらの病態は、糸球体や尿細管、間質にとどまらず、全身の血管にも波及しており、これが血管内皮障害・炎症・動脈硬化病変の発現を介して、心不全発症に繋がる。血行動態的には、CKDでは高血圧と血管の石灰化や動脈硬化度の増加が圧負荷増大の原因となり(非特許文献3)、一方、水・ナトリウム貯留、及び貧血が容量負荷増大の原因となって、左室肥大、左室拡張不全をきたす(非特許文献4)。
更に透析患者は内在性の動脈硬化や危険因子を多数有しており、貧血や動静脈シャントによる心拍出量の増加、透析時の除水による急激な循環血漿量の減少、血圧降下等の冠動脈血流量を減少させる要因も多く、高頻度に心不全の発症をきたす。この様にCRS4に関しては様々な機序が想定されているが、裏を返せば根幹となる分子機序が解明されていないことを表している。
更にCRS4の治療法に関しては、上述したように対症療法の域を出ておらず、CKDを有する心不全患者はしばしば塩分・水分が貯留傾向にあることから、そのため利尿薬投与が行われることがある。しかしながら過剰な利尿薬の使用は前負荷の低下から心拍出量の低下を引き起こし、結果として糸球体濾過量を低下させる虞がある。また、ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)やBNP(brain natriuretic peptide)は、血管拡張及び利尿作用を有し、神経体液因子を抑制することも知られているため、CKDを合併する心不全の治療において投与されることがある。しかしながら腎に対する効果は一定の見解が得られておらず、腎血流や糸球体濾過量を低下させ、腎機能を悪化させる虞がある。また、低用量のドパミンも腎血流を増加させ、糸球体濾過量の増加と腎尿細管への直接作用による利尿作用が期待され時として使用されるが、強心薬は短期間の血行動態を改善させるが、心事故や死亡率を増加させる危険性を有している(非特許文献5)。このようにCKDに続発する心不全の適切な治療法は提案されていない。
Ronco C, McCullough P, Anker SD, et al,Cardio-renal syndromes: report from the consensus conference of the acute dialysis quality initiative. Eur Heart J. 2010;31:703-71l. Shamseddin MK, Parfrey PS. Mechanisms of the cardiorenal syndromes. Nature reviews. 2009;5:641-649. Nakagawa N, Takahashi F, Chinda J, Kobayashi M, Hayashi Y, Abe M, Saijo Y, Kikuchi K, Hasebe N. Hypertens Res. 2008;31:193-201. Sarnak MJ, Levey AS, Schoolwerth AC, Coresh J, Culleton B, Hamm. LL, et al. Circulation . 2003;108:2154-2169. 中川直樹,長谷部直幸.CKDにおける心不全の治療のあり方. Annual Review 腎臓. 2011;257-264
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、CKDに続発する心不全のうち、臨床的にも頻度が高いCRS4を適切に治療及び/又は予防するための組成物を提供することを目的とする。またCRS4のモデルマウスを提供することを目的とする。またCRS4を的確に検出することができるバイオマーカーを提供することを目的とする。
本発明にかかる組成物は、可溶性Flt-1(sFlt-1)を有効成分とするCRS4を治療及び/又は予防する組成物である。
また、本発明にかかるCRS4モデルマウスは、sFlt-1をノックアウトした後、大動脈縮窄術(TAC:transverse aortic constriction)を施したことを特徴とする。
また、本発明にかかるCRS4のバイオマーカーは、PlGF/sFlt-1からなることを特徴とする。
本発明によれば、CRS4を適切に治療できる治療薬が得られる。
CRS4モデルマウスの生存率を示す図である。 CRS4モデルマウスの心肥大と肺うっ血を示す図であり、そのうち(a)は心肥大の指標としての心重量の増加であり、(b)は肺うっ血の指標としての肺重量の増加である。 CRS4モデルマウスの心機能の心臓超音波検査結果を示す図であり、そのうち(a)はTAC処理をしていないsFlt-1欠損マウスのMモード心エコー図であり、(b)はCRS4モデルマウスのMモード心エコー図であり、(c)左室駆出率を比較して示す図であり、(d)は左室拡張末期径を比較して示す図である。 マクロファージの心筋内への湿入を示す図であり、そのうち(a)はsFlt-1ノックアウト処理をせずに、TAC処理のシャムオペレーションをしたマウスであり、(b)はsFlt-1ノックアウト処理をせずに、TAC処理をしたマウスであり、(c)はsFlt-1ノックアウト処理を行い、TAC処理のシャムオペレーションをしたマウスであり、(d)は本願CRS4モデルマウスである。 TAC処理後の心室線維化を示す図であり、そのうち(a)はsFlt-1ノックアウト処理後、TAC処理のシャムオペレーションをしたマウスの線維化を示す図であり、(b)は本願CRS4モデルマウスの心室線維化を示す図であり、(c)は心室線維化を比較して示す図である。 リコンビナントsFlt-1タンパクの投与効果を示す図であり、そのうち(a)は心重量の増加を示し、(b)は肺重量の増加を示す。 心臓超音波検査結果を示す図であり、そのうち(a)はリコンビナントsFlt-1タンパクを投与していない本願発明のCRS4モデルマウスであり、(b)はリコンビナントsFlt-1タンパクを投与した本願発明のCRS4モデルマウスであり、(c)はリコンビナントsFlt-1タンパクの投与効果を比較して示す図である。 慢性腎臓病患者におけるPlGF/sFlt-1比と心不全発症率の関係を示す図である。
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
胎盤増殖因子(placental growth factor: PlGF)は、血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor: VEGF)ファミリーに分類されるサイトカインであり、VEGF受容体-1(Flt-1)に特異的に結合する。VEGFが2種類のチロシンキナーゼ型受容体であるVEGF受容体-1(Flt-1)とVEGF受容体-2(Flk-1,KDR)のいずれにも親和性があるのに対して、PlGFはVEGF受容体-1のみに選択的に結合する。
Flt-1のリガンドがPlGFである場合には、チロシンキナーゼのリン酸化に引き続いて、VEGF受容体-2で認められるPLCγ-PKC系ではなく、MAP kinase系の活性化を介したDNA合成・細胞分裂の亢進、あるいは血管内皮細胞からの生理活性物質の産生を刺激する。更にPlGFによるFlt-1の活性化は、VEGF-AによるVEGF受容体-2のシグナル伝達を細胞内において促進させるcross-talk機序によって血管新生を協調的に刺激する。また、PlGFの特異的受容体であるFlt-1はCD34陽性細胞に代表される広範な骨髄系幹細胞に発現しており、血管新生には、既存の血管からの新しい血管の伸長(狭義のangiogenesis)だけでなく、骨髄に由来する血管前駆細胞(vasculogenesis)も関与している。即ち、PlGFは既存の血管からの新しい血管分枝の誘導(angiogenesis)と骨髄由来の血管前駆細胞誘導(vasculogenesis)の2つの機序を介して、虚血性心疾患や悪性腫瘍等の疾患状態における血管新生に寄与している。
一方、Flt-1遺伝子からはalternative splicingによって膜結合ドメインが欠損し、リガンドとの結合に必要な細胞外ドメインだけからなる可溶性アイソフォーム(可溶性Flt-1、即ちsFlt-1)が翻訳される。血中・組織液中のsFlt-1は、遊離型のPlGFあるいはVEGFと結合し、これらのリガンドが細胞膜上にあるFlt-1と結合することを阻害することによって、血管内皮細胞機能や血管形態を調節している。即ち、sFlt-1に結合したVEGFとPlGFは、本来結合する内皮細胞のレセプターに結合せず、従ってVEGFによるシグナル伝達されず、sFlt-1はVEGFやPlGFの内因性の拮抗物質として働いている。
本発明者らは、慢性腎不全では、尿毒症毒素や酸化ストレス等の影響により、肺を含む臓器でのsFlt-1産生が減少しており、それに起因してPlGFやVEGFを介する系が相対的に活性化しており、慢性腎不全では炎症機転や水の血管透過性が亢進していることを新知見として見いだした。そして、本発明者らはかかる新知見を基礎に、リコンビナントsFlt-1タンパクを投与することにより、PlGFやVEGFの相対的な活性化が抑制され、CRS4を治療及び/又は予防できることを見いだした。本明細書において「予防」には疾患の発症を抑えること及び遅延させることが含まれ、疾患になる前の予防だけでなく、治療後の疾患の再発に対する予防も含まれる。一方、「治療」には、症状を治癒すること、症状を改善すること及び症状の進行を抑えることが含まれる。即ち、本実施形態にかかる組成物は、sFlt-1を有効成分とするCRS4を治療及び/又は予防する組成物である。例えば、alternative splicingの部位の違いによるサイズの異なるsFlt-1、さらにはsFlt-1の構造を元に修飾した物質を含む。CRS4は、Roncoらにより分類された心血管障害及び腎機能障害の5種類の病型のうち、CKDによるCVDの悪化を意味する。
sFlt-1は、単独で投与することも可能ではあるが、通常は薬理学的に許容される一つあるいはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られる任意の方法により製造した医薬製剤として提供するのが望ましい。
投与経路は、治療に際して最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口投与、又は口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内及び静脈内等の非経口投与をあげることができ、望ましくは静脈内投与をあげることができる。
投与形態としては、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏、テープ剤等があげられる。経口投与に適当な製剤としては、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等があげられる。乳剤及びシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトール、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を添加剤として用いて製造できる。カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等は、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール等の賦形剤、デンプン、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を添加剤として用いて製造できる。非経口投与に適当な製剤としては、注射剤、座剤、噴霧剤等があげられる。注射剤は、塩溶液、ブドウ糖溶液、あるいは両者の混合物からなる担体等を用いて調製される。座剤はカカオ脂、水素化脂肪又はカルボン酸等の担体を用いて調製される。また、噴霧剤は受容者の口腔及び気道粘膜を刺激せず、かつ該化合物を微細な粒子として分散させ吸収を容易にさせる担体等を用いて調製される。担体として具体的には乳糖、グリセリン等が例示される。
投与量又は投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、体重等により異なるが、通常成人1日当たり1μg/kg〜8mg/kgである。
次に、本実施形態にかかるCRS4のモデルマウス(以下、「CRS4モデルマウス」とする。)は、sFlt-1をノックアウトした後、大動脈縮窄術を施したことを特徴とする。
CRS4モデルマウスは、sFlt-1欠損工程の後、大動脈縮窄工程を行うことにより作成される。
sFlt-1欠損工程では、例えば、sFlt-1のイントロン13における選択的スプライシングを阻害する目的でイントロン13を欠失させ、sFlt-1の産生を低下させる。これにより、腎機能は正常であるが、慢性腎不全と同様にsFlt-1産生を低下させることが可能となる。
次にTAC処理は、左室から出た大動脈弓を結紮する手術であり、大動脈における拍出量の減少から、左室内が高圧になる。TAC処理を行うことにより、心肥大及び心不全を発症させることが可能となる。
本実施形態にかかるCRS4モデルマウスにより、内因性sFlt-1刺激剤の心不全に対する評価が初めて可能となる。
次に、本実施形態にかかるCRS4のバイマーカーは、PlGF/sFlt-1からなることを特徴とする。sFlt-1、PlGFのどちらかのみを測定するよりも、これら二つの指標の相対的変化を示すPlGF/sFlt-1比を、指数として用いることにより適切にCRS4を検出できる。PlGF/sFlt-1比が減少していればCRS4の発症リスクが少なく、一方でPlGF/sFlt-1比が増加していればCRS4の発症リスクが多いことを検出できる。
sFlt-1及びPlGFの測定は、sFlt-1量及びPlGF量を定量しうる方法であればよく、公知の方法であっても、今後開発される新たな方法であっても特に限定されない。例えば免疫学的測定方法を好適に適用することができる。例えば、抗sFlt-1抗体や抗PlGF抗体を用いた抗原抗体反応を検出しうる免疫学的測定方法によることができる。そのような免疫学的手法としては、ラテックス凝集法、オクタロニー法、免疫クロマトグラフィー法やELISA法等の自体公知の手法を適用することができる。多くの検体を処理しうるELISA法が、特に好適である。ELISAでの検出には、PlGF及びsFlt-1の断片、例えばペプチド、ならびにPlGF及びsFlt-1のアイソファーム及び誘導体の検出も含む。
例えばsFlt-1の測定では、抗sFlt-1抗体を固相に固定し、該固相に固定した抗sFlt-1抗体に検体試料を接触させ、抗sFlt-1抗体と検体試料中に含有可能性のあるsFlt-1との免疫複合体、又は反応産物を検出することで、sFlt-1を測定することができる。ELISA法の実施に伴う非特異反応の抑制方法や、検出の際に使用しうる標識物質、測定機器等は、自体公知のもの、あるいは今後開発されるものを適用することができる。例えば、sFlt-1検出用の市販のキットを用いて測定を行ってもよい。
(1)CRS4モデルマウスの作成
sFlt-1のイントロン13における選択的スプライシングを阻害する目的でイントロン13を欠失させ、sFlt-1の産生を低下させたマウスを作製した(Kidney International 2013)。同マウスはsFlt-1が生理的な濃度の半量程度の血中濃度を保っていた。
次に、11週から13週令のsFlt-1欠損マウスを用いTAC処理を施し圧負荷心不全モデル(CRS4モデルマウス)を作製した。TACの具体的処理は以下の如くである。気管挿管を施行し、イソフルレン1%による吸入麻酔下に手術を施行した。右第3肋間から開胸し開胸器で視野を確保した後、胸部大動脈周囲の結合織を剥離した。左総頸動脈分岐部と右腕頭動脈分岐部の間を通すように大動脈の下に5-0ナイロン糸を通した後、27G針と共に大動脈を結札した。その後27G針を抜去し、下降大動脈への血流を再開させた。WTマウスに圧負荷心不全モデルを作製すると、7日目で心肥大を、4週間で心不全を来たすとされている。
(2)CRS4モデルマウスの生存率の測定
作成したCRS4モデルマウスの生存率(各時点での生存匹数/術直後に生存していた匹数)を測定した。コントロールとして週齢を一致させたWTマウスを使用し、生存率について検討を行った。結果を図1に示す。図1は、CRS4モデルマウスの生存率を示す図である。図1に示されるように、CRS4モデルマウス群ではWT群に比して有意に生存率の低下を認めた。
(3)CRS4モデルマウスの心重量及び肺重量の測定
作成したCRS4モデルマウスの心重量及び肺重量を測定した。具体的には、TAC作製7日目に頸椎脱臼にてマウスを安楽死させた後に心臓と肺を摘出し、心重量、肺重量、及び体重を測定し、心重量係数(心重量/体重)と肺重量係数(肺重量/体重)を算出した。心肥大、心不全の指標として心重量係数を、肺水腫の指標として肺重量係数を検討した。
結果を図2に示す。図2は、CRS4モデルマウスの心肥大と肺うっ血を示す図であり、そのうち(a)は心肥大の指標としての心重量の増加であり、(b)は肺うっ血の指標としての肺重量の増加である。ここでコントロールはTAC処理のシャムオペレーションであり、KOはsFlt-1のノックアウト処理を示す。図2に示されるように、CRS4モデルマウス群では肺重量係数及び心重量係数の増加を認めた。
(4)CRS4モデルマウスの心機能の心臓超音波検査
作成したCRS4モデルマウスの心機能の心臓超音波検査を行った。具体的には、TAC作製7日目に心臓超音波検査装置(東芝メディカルシステムズ)で心機能を評価した。
心機能の指標としては左室拡張末期径(LVDd:Left ventricular diastolic diameter)、左室駆出率(EF:Ejection fraction:(拡張期の心内腔体積−収縮期の心内腔体積)/拡張期の心内腔体積)を測定した。
結果を図3に示す。図3は、CRS4モデルマウスの心機能の心臓超音波検査結果を示す図であり、そのうち(a)はTAC処理をしていないsFlt-1欠損マウスのMモード心エコー図であり、(b)はCRS4モデルマウスのMモード心エコー図であり、(c)左室駆出率を比較して示す図であり、(d)は左室拡張末期径を比較して示す図である。なお、Mモード表示は反射源の時間的位置変化を記録する表示方法であり、ブラウン管の横軸に時間を、縦軸に生体深度を表示して、反射信号を輝度変調することにより反射源の運動曲線を示す表示である。
図3に示されるように、CRS4モデルマウス群では、TAC処理後に、左室拡大は認めなかったが、駆出率は有意に低下していた。
(5)CRS4モデルマウスにおけるマクロファージの心筋内への湿入
作成したCRS4モデルマウスのTAC処理後のマクロファージ湿潤を検出した。具体的には、TAC作製後7日目に採取した心臓から凍結切片を作製した。抗マウスCD68抗体(Abcam社)で免疫染色を施行し、CD68陽性マクロファージ数を計算した。左室前壁、中隔、後壁、側壁の各ポイントで200倍の倍率でCD68 陽性細胞をカウントし、平均した値を用いた。
結果を図4に示す。図4は、マクロファージ湿潤検出を示す図であり、そのうち(a)はsFlt-1ノックアウト処理をせずに、TAC処理のシャムオペレーションをしたマウスであり、(b)はsFlt-1ノックアウト処理をせずに、TAC処理をしたマウスであり、(c)はsFlt-1ノックアウト処理を行い、TAC処理のシャムオペレーションをしたマウスであり、(d)は本願CRS4モデルマウスである。図4に示されるように、TAC後のマクロファージ数はsFlt-1群において有意に増加傾向を示した。
(6)CRS4モデルマウスの心線維化面積の検討
作成したCRS4モデルマウスのTAC処理後の心線維化面積を測定した。線維化の検討を目的としてマッソン・トリクローム染色を施行した(Circ J 2009:73(9)1674)。マッソン・トリクローム陽性線維化病変の面積比率を計測した。面積比率はマッソン・トリクローム陽性領域/心臓全体の面積として計算した。
結果を図5に示す。図5はTAC処理後の線維化を示す図であり、そのうち(a)はsFlt-1ノックアウト処理後、TAC処理のシャムオペレーションをしたマウスの線維化を示す図であり、(b)は本願CRS4モデルマウスの線維化を示す図であり、(c)は線維化を比較して示す図である。図5に示されるように、sFlt-1群において線維化病変の面積比率が有意に増加していた。
(7)リコンビナントsFlt-1タンパクの投与効果
リコンビナントヒトsFlt-1タンパクとしては、ヒトFlt-1タンパクの3つの細胞外イムノグロブリン様ドメインからなる分子量約30KDのタンパクを使用した (Circ J 2009:73(9)1674)。ヒトsFlt-1タンパクはTAC作製1週間前から連日腹腔内投与し、TAC作製後1週間も同様に投与を継続した(15ng/g 体重)。TAC処理後7日目に心臓と肺を摘出し、心肥大、心不全、肺水腫の検討目的に肺重量係数と心重量係数を測定した。
結果を図6に示す。図6はリコンビナントsFlt-1タンパクの投与効果を示す図であり、そのうち(a)は心重量の増加を示し、(b)は肺重量の増加を示す。コントロールはTAC処理のシャムオペレーションであり、KOはsFlt-1のノックアウト処理を示し、TAC+sFlt-1はTAC処理後にリコンビナントsFlt-1タンパクを投与したことを示す。図6に示されるように、sFlt-1タンパク投与群ではsFlt-1ノックアウトマウス群における心重量係数と肺重量係数の増加を抑制した。
また、心臓超音波検査も同日施行した。心臓超音波検査装置(東芝メディカルシステムズ)で左室駆出率(EF)を測定した。結果を図7に示す。図7は心臓超音波検査結果を示す図であり、そのうち(a)はリコンビナントsFlt-1タンパクを投与していない本願発明のCRS4モデルマウスであり、(b)はリコンビナントsFlt-1タンパクを投与した本願発明のCRS4モデルマウスであり、(c)はリコンビナントsFlt-1タンパクの投与効果を比較して示す図である。図7に示されるように、心臓超音波検査においても心機能低下の抑制が認められた。
(8)慢性腎臓病患者におけるPlGF/sFlt-1比と心不全発症率の検討
奈良県立医科大学病院に入院した慢性腎臓病患者(343例)に対して採血を施行し、血清分離後にPlGFとsFlt-1の血中濃度をELISAキットを用いて測定した(R and D社: Quantikine ELISA Kit)。慢性腎臓病患者は推算糸球体濾過量(eGFR)が60ml/min以下でタンパク尿を認めない患者を選択した。感染症、悪性疾患、重症患者、18歳以下、妊娠、へパリン治療中の患者は除外した。へパリン投与後のPlGF/sFlt-1と心不全入院との関連について165日間の追跡期間で検討した。PlGF/sFlt-1比を中央値にて0.061以上と以下の2群に分類した。
結果を図8に示す。図8は慢性腎臓病患者におけるPlGF/sFlt-1比と心不全発症率の関係を示す図である。図8に示されるように、へパリン投与後のPlGF/sFlt-1比が0.061以上の群において(172人中19人)、0.061以下の群(171人中8人)に比して有意に心不全発症率が高かった。
CRS4の治療及び/又は予防に利用できる。

Claims (4)

  1. 可溶性Flt-1(sFlt-1)を有効成分とするCRS4を治療及び/又は予防するための組成物。
  2. sFlt-1をノックアウトした後、大動脈縮窄術を施したことを特徴とするCRS4モデルマウス。
  3. PlGF/sFlt-1からなることを特徴とするCRS4のバイオマーカー。
  4. PlGF/sFlt-1が0.061以上の場合に、CRS4の発症リスクの存在を判定することを特徴とする請求項3に記載のCRS4のバイオマーカー。
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