本発明は、フェンタニル、浸透促進剤、揮発性液体を含む組成物であって、該組成物は溶液である組成物を経皮投与する工程を含む、イヌにおける疼痛を抑制する方法を提供する。本発明はまた、単一単位用量の組成物を提供する。
本発明は、パッチ製剤でイヌに投与されるフェンタニルと比較していくつかの利点を提供する。第1に、本発明は適用時間内に最小限で有効血漿濃度を達成し、イヌの先制鎮痛を提供するために手術前に短時間投与され得る。第2に、本発明は長期間の作用を達成する。フェンタニルに対する個々のイヌの反応性に応じて、本発明の治療的に有効量の1回量が数日継続し得る。第3に、本発明は経皮溶液であり、装置ではないので、本発明は、適切なフェンタニル吸収を維持するためにイヌにおける皮膚接触の維持を必要としない。第4に、本発明は、用量に比例した薬物動態を生じるキログラムベース当たりで投与されるので、パッチ製剤でイヌに送達されるフェンタニルの可変速度および範囲に関する問題を克服する。第5に、本発明は、イヌまたはイヌの飼い主に対する不用意な曝露を制限する。なぜなら、フェンタニルは、乾燥直後に角質層において迅速に隔離され、フェンタニルリザーバが存在しないからである。最後に、フェンタニルリザーバを有さないことにより、本発明の流用および不要な使用、ならびに認可された獣医の制御できない処分に関する懸念が最小化される。
本発明に係る方法は、疼痛を抑制するためにイヌに対する組成物の投与を利用する。本明細書で使用する場合、「疼痛の抑制」または「疼痛を抑制する」とは、イヌにおける疼痛を予防、最小化または排除することを指す。本明細書で使用する場合、「疼痛」という用語は、組織障害から生じる外傷痛、術後疼痛、火傷疼痛、炎症性疼痛、疾患(癌、感染、変形性関節症、関節リウマチ、または他の種類の関節炎)に伴う疼痛、神経損傷、神経障害、および神経痛性の他の形態に伴う疼痛、神経障害および特発性疼痛症候群、ならびに特定の器官または組織疼痛、例えば眼および角膜疼痛、骨痛、心臓痛、皮膚痛、内臓(腎臓、胆嚢、胃腸など)疼痛、関節痛、歯痛、および筋肉痛を含む、疼痛の全てのカテゴリーを表す。「疼痛」という用語はまた、様々な重度の疼痛、すなわち軽度、中度および重度の疼痛、ならびに急性および慢性疼痛を含む。
本発明の一部の実施形態において、その方法は、有効期間の間、疼痛を抑制するためにイヌに対する組成物の投与を利用する。本明細書で使用する場合、「有効期間」という用語は、少なくとも24時間を含む。一部の実施形態において、有効期間は、少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間、少なくとも96時間、少なくとも7日間を含む。
本発明に従って投与される組成物は、フェンタニル、浸透促進剤、および揮発性液体を含む。フェンタニルは、完全μ−オピオイド受容体アゴニストであり、また、N−フェニル−N−[1−(2−フェニルエチル)−4−ピペリジニル]プロパンアミド、N−(1−フェネチル−4−ピペリジル)−プロピオンアニリド、またはN−(1−フェネチル−4−ピペリジニル)−N−フェニルプロピオンアミドなどの化合物名として知られている。フェンタニルの化学構造は以下である:
本明細書で使用する場合、「フェンタニル」という用語は、フェンタニル塩基、フェンタニルの薬学的に許容可能な塩、またはフェンタニルの他の塩を指す。「薬学的に許容可能な塩」という用語は、フェンタニルの酸または塩基部分と共に存在する付加塩を指す。そのような酸は、当業者に公知であるHANDBOOK OF PHARMACEUTICAL SALTS:PROPERTIES,SELECTION AND USE,P.H.Stahl and C.G.Wermuth(Eds.),Wiley−VCH,New York,2002に記載されている薬学的に許容可能な塩を含む。酸付加性質の薬学的に許容可能な塩は、フェンタニルおよび塩基性官能基を含むその中間体のいずれかが、薬学的に許容可能な酸と反応する場合に形成される。このような酸付加塩を形成するために一般に利用される薬学的に許容可能な酸には、無機酸および有機酸が含まれる。塩基付加性質の薬学的に許容可能な塩は、フェンタニルおよび酸性官能基を含むその中間体のいずれかが、薬学的に許容可能な塩基と反応する場合に形成される。塩基付加塩を形成するために一般に利用される薬学的に許容可能な塩基には、有機塩基および無機塩基が含まれる。
薬学的に許容可能な塩に加えて、他の塩が本発明に含まれる。それらは、化合物の精製もしくは他の薬学的に許容可能な塩の調製における中間体として役立ち得るか、または識別、特性付けもしくは精製に有用である。
本明細書で使用する場合、「浸透促進剤」という用語は、皮膚障壁を超える薬物輸送を改善する化学物質を指す。本発明に係る浸透促進剤は、皮膚脂質の詰め物を破壊し、それにより、角質層の障壁性質を変化させることにより、角質層−生存表皮界面における薬物の分割挙動を変化させることにより、または薬物の熱力学的活量に影響を与えることにより作用し得る。浸透促進剤は、皮膚に対して低い毒性であり得、典型的に皮膚吸着の促進剤である。一部の実施形態において、浸透促進剤は脂溶性化学物質である。浸透促進剤およびその使用は、例えば、米国特許第6,299,900号、同第6,818,226号および同第6,916,486号に記載されている。
本発明に係る浸透促進剤は、イヌなどの動物の皮膚を通る鎮痛剤の経皮送達に特に適している。多くの浸透促進剤は当該技術分野において知られている。一部の実施形態において、浸透促進剤には、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪アルコール、グリコールおよびグリコールエステル、1,3−ジオキソランおよび1,3−ジオキサン、少なくとも12個の炭素原子を含む大環状ケトン、オキサゾリジノンおよびオキサゾリジノン誘導体、アルキル−2−(N,N−二置換アミノ)−アルカノエートエステル、(N,N−二置換アミノ)−アルカノールアルカノエート、サンスクリーンエステル、およびそれらの混合物が含まれる。一部の実施形態において、浸透促進剤は、オレイン酸、オレイルアルコール、シクロペンタデカノン(CPE−218(商標))、モノオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸グリセロール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、2−n−ノニル1,3−ジオキソラン(SEPA(商標))、ドデシル2−(N,N−ジメチルアミノ)−プロピオネート(DDAIP)またはその塩誘導体、2−エチルヘキシル2−エチルヘキサノエート、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルイソソルビド、4−デシルオキサゾリジノン−2−オン(SR−38(商標)、TCPI,Inc.)、3−メチル−4−デシルオキサゾリジノン−2−オン、ジメチル−パラ−アミノ安息香酸オクチル、パラ−メトキシ桂皮酸オクチル、オクチサレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
一部の実施形態において、浸透促進剤は、米国特許第6,299,900号に記載されている化合物などのサンスクリーンエステルであってもよい。例えば、その化合物は、以下の式の安全な皮膚許容性エステルサンスクリーンであってもよい:
式中、R
1は、水素、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン化物、ヒドロキシまたはNR
3R
4であり、
R.sup.
2は、長鎖アルキルである、
R
3およびR
4は、各々独立して、水素、低級アルキルであるか、またはR
3およびR
4は、それらが結合する窒素原子と一緒に、5員または6員複素環を形成し、
nは0または1であり、
qは1または2である。
一部の実施形態において、浸透促進剤は、パラ−アミノ安息香酸長鎖アルキル、ジメチル−パラ−アミノ安息香酸長鎖アルキル、桂皮酸長鎖アルキル、メトキシ桂皮酸長鎖アルキルまたはサリチル酸長鎖アルキルを有するエステルである。一部の実施形態において、浸透促進剤は、ジメチル−パラ−アミノ安息香酸オクチル(「パジメートO(Padimate O)」)、パラ−メトキシ桂皮酸オクチル、サリチル酸オクチル(オクチサレートとしても知られている)またはそれらの混合物からなる群から選択される。一実施形態において、浸透促進剤はサリチル酸オクチルである。
本明細書で使用する場合、「揮発性液体」という用語は、当該技術分野において公知の任意の薬理学的に適切な液体組成物を指す。例えば、揮発性液体は、低温で容易に揮発可能であり得るか、または急速に蒸発する傾向がある。一旦、皮膚に適用されると、本発明に係る揮発性液体の急速な蒸発が、組成物の他の成分の過飽和を生じ得る。一部の実施形態において、本発明に係る揮発性液体は安全な皮膚許容性溶媒を含む。一部の実施形態において、揮発性液体は、低級アルキルアルコールまたはそのようなアルコールの混合物である。一部の実施形態において、揮発性液体は、エタノール、酢酸エチル、イソプロパノール、アセトン、ギ酸エチル、メタノール、酢酸メチル、メチルエチルケトン、ペンタン、クロロホルム、またはそれらの混合物からなる群から選択される。他の実施形態において、揮発性液体はエタノールもしくはイソプロパノールまたはそれらの混合物である。一実施形態において、揮発性液体はイソプロパノールである。
本発明に係る方法は、組成物が溶液中に存在する組成物の投与を利用する。本発明の一部の実施形態において、組成物は、溶液の重量/体積に基づいて種々の量でフェンタニル、浸透促進剤、および揮発性液体を含む。一部の実施形態において、組成物は、重量ベースで約0.1〜約10%のフェンタニル、約0.1〜約10%の浸透促進剤、および約80%〜約99.8%の揮発性液体を含む。別の実施形態において、組成物は、重要ベースで、約1〜約10%のフェンタニル、約1〜約10%の浸透促進剤、および約80%〜約98%の揮発性液体を含む。別の実施形態において、組成物は、重量ベースで、約2〜約8%のフェンタニル、約2〜約8%の浸透促進剤、および約84%〜約96%の揮発性液体を含む。別の実施形態において、組成物は、重量ベースで、約3〜約7%のフェンタニル、約3〜約7%の浸透促進剤、および約86%〜約94%の揮発性液体を含む。さらに別の実施形態において、組成物は、重量ベースで、約1〜約5%のフェンタニル、約1〜約5%の浸透促進剤、約90%〜約98%の揮発性液体を含む。別の実施形態において、組成物は、重量ベースで、約5%のフェンタニル、約5%の浸透促進剤、および約90%の揮発性液体を含む。
さらに、本発明に係る方法は、投与が経皮投与である、組成物の投与を利用する。本明細書で使用する場合、「経皮」という用語は、当該技術分野においてその通常の意味を有し、動物、例えばイヌの少なくとも1つの皮膚層を通る薬剤の通過を指す。さらに、「経皮」という用語は、皮膚への薬剤の適用を示す「局所」という用語と同様の意味で使用される。「局所」および「経皮」という両方の用語は、薬物が皮膚層と通過するような動物の皮膚表面への薬物の投与に関して広範な意味で本明細書に使用される。他に記載または示唆されない限り、局所薬物送達および経皮薬物送達という用語は交換可能に使用される。厳格な薬物送達の観点から、「経皮」は時折、皮膚を通る全身送達のみを指すために使用され、一方、「局所」は、局所効果のために皮膚内または皮膚上への送達のみを必要とする。本明細書に記載される本発明は、経皮および局所様式の送達の両方に同様に適用可能であり、本明細書で簡便さのために「経皮」のみとして記載している。本発明に係る方法は、組成物が望ましくは経皮パッチではない組成物の経皮投与を利用できる。
本発明の方法を実施する際に、組成物中のフェンタニルの量は治療効果を達成するのに適切である。本明細書で使用する場合、「治療有効量」という用語は、イヌに対して所望の利点を与える量を指し、治療および予防投与の両方を含む。その量はイヌにより様々であり、イヌの全体の健康状態および治療される病態の基本的な原因を含む、多くの要因に依存する。
疼痛を抑制するために使用されるフェンタニルの量は、許容可能な変化率を与え、有益なレベルにおいて所望の反応を維持する。本発明の方法に使用される治療有効量の組成物は公に利用可能な材料および手順を用いて当業者により容易に確認され得る。本発明の一実施形態において、送達される治療有効量のフェンタニルは、イヌの体重1kg当たりのフェンタニルのミリグラムを決定することにより定量化され得る。一部の実施形態において、組成物中の治療有効量のフェンタニルは、イヌの体重1kg当たり約0.01から約10ミリグラムの量で存在してもよい。別の実施形態において、組成物中の治療有効量のフェンタニルは、イヌの体重1kg当たり約0.1から約10ミリグラムの量で存在してもよい。さらに別の実施形態において、組成物中の治療有効量のフェンタニルは、イヌの体重1kg当たり約1から約5ミリグラムの量で存在してもよい。一部の実施形態において、組成物中の治療有効量のフェンタニルは、イヌの体重1kg当たり約2から約4ミリグラムの量で存在してもよい。一部の実施形態において、組成物中の治療有効量のフェンタニルは、イヌの体重1kg当たり約2から約3ミリグラムの量で存在してもよい。一実施形態において、組成物中に存在する治療有効量のフェンタニルは約2.7mg/kgである。一実施形態において、組成物中に存在する治療有効量のフェンタニルは約2.6mg/kgである。
一実施形態において、本発明に係る組成物は、重量ベースで、溶液中に約5%のフェンタニル(すなわち、50mg/mL)を含み、組成物中に存在する治療有効量のフェンタニルは約2.7mg/kgである。この実施形態において、本発明の方法は表1に示した用量に従ってイヌに経皮投与され得る。
一部の実施形態において、治療有効量は最小有効血漿濃度(MEC)を達成するのに十分な量である。一般に、MECは、患者が鎮痛補助薬を要求することを予防するのに十分な鎮痛剤の最小血漿濃度と定義されている。ヒトにおけるフェンタニルのMECは腹部手術を受けた成人集団で確立されている。
手術後、疼痛が許容可能でなくなった場合、フェンタニルを、患者により投与されるボーラス自体に応じて20マイクログラムを用いて20μg/hrの基本的なIV注入速度にて送達した。患者にさらなる鎮痛を施す直前に採取した血液試料をMECとみなした。48時間を超えると、MECは0.23〜1.18ng/mL(平均0.63ng/mL)の範囲であり、48時間の研究期間を超えて個々の患者内で比較的一定に維持した。このように、疼痛が0.2ng/mLで軽減するヒトにおいて、これは時間と共に一定を維持し、疼痛が1.18ng/mLで軽減したヒトについても同様である。このことにより、個々の反応性に応じて6倍の範囲の最小有効量のフェンタニル濃度が示唆される。
イヌはそれら独自の鎮痛補助薬を必要とできないので、真のMECを定量することは困難なままであり、イヌにより示される推測される疼痛関連行動から推論する観察者に依存する。これらの制限にも関わらず、行動に基づいた研究は、鎮痛および薬物濃度を概算するためにイヌにおける鎮痛および血漿フェンタニル濃度を評価している。その結果により、イヌにおけるMECはヒトにおいて観察されたものと重なる可能性があるという考えが支持されている。様々な手術を受けたイヌにおける研究により、0.4〜1.28ng/mlの範囲のフェンタニル濃度が疼痛を抑制するのに効果的であると示されている。イヌにおいてフェンタニルパッチで行った全ての研究の評価および分析により、0.6ng/mlの平均血漿フェンタニル濃度が鎮痛を提供するのに効果的であると示唆されている。
本発明の一部の実施形態において、疼痛はイヌに実施されたまたは実施される手術と関連する。本発明の一実施形態において、組成物は、イヌに実施されたまたは実施される手術の2〜4時間前に投与される。一実施形態において、イヌに実施されたまたは実施される手術は整形外科手術である。本明細書で使用する場合、「整形外科手術」という用語は、筋骨格系、その関節、および関連構造の機能の保存または回復に関与する外科手術を指す。
別の実施形態において、イヌに実施されたまたは実施される手術は軟組織手術である。本明細書で使用する場合、「軟組織手術」という用語は、筋肉、脂肪、線維組織、血管、または身体の他の支持組織、例えば腱、靱帯、筋膜、皮膚、神経または滑膜の機能の保存または回復に関与する外科手術を指す。
別の実施形態において、イヌに実施されたまたは実施される手術は頭蓋十字断裂と関連する。一実施形態において、頭蓋十字断裂と関連する手術は固定手術である。
本発明の一実施形態において、組成物は投与直前に複数回用量バイアルに含まれる。本発明の組成物を含有する複数回用量バイアルは、ガラス、プラスチック、または他の材料から作製されてもよい。本発明の一部の実施形態において、組成物は複数回用量療法として投与される。一実施形態において、複数回用量療法は約14日の期間である。別の実施形態において、複数回用量療法は約一ヶ月の期間である。さらに別の実施形態において、複数回用量療法は約二ヶ月の期間である。別の実施形態において、複数回用量療法は約三ヶ月の期間である。さらに別の実施形態において、複数回用量療法は約四ヶ月の期間である。
本発明の別の実施形態において、組成物は1回量として投与される。本発明のさらに別の実施形態において、組成物は単一単位用量として投与される。本明細書で使用する場合、「単位用量」という用語は、所定量のフェンタニルを含む組成物の個別の量である。フェンタニルの量は、通常、イヌに投与されるフェンタニルの投薬量または例えばそのような投薬量の半分もしくは3分の1などのそのような投薬量の都合の良い画分と等しい。
本発明の方法によれば、「1回量」および「単一単位用量」という用語は、組成物が単回適用として経皮投与され、および複数回適用として投与され得る実施形態を含む。一実施形態において、組成物の1回量または単一単位用量が、イヌの皮膚の1つの部位に単回適用でイヌに経皮投与され得る。別の実施形態において、組成物の1回量または単一単位用量が、イヌの皮膚の1つの部位に単回適用でイヌに経皮投与され、ここで、単回適用は組成物の約0.5mLの溶液である。一実施形態において、組成物の1回量または単一単位用量は、イヌの皮膚の単一の部位に複数回適用でイヌに経皮投与され得る。別の実施形態において、組成物の1回量または単一単位用量は、イヌの皮膚の単一部位に複数回適用でイヌに経皮投与され、ここで、各適用は組成物の約0.5mL以下の溶液である。一実施形態において、組成物の1回量または単一単位用量は、イヌの皮膚の1つより多い部位に複数回適用でイヌに経皮投与され得る。別の実施形態において、組成物の1回量または単一単位用量は、イヌの皮膚の1つより多い部位に複数回適用でイヌに経皮投与され、ここで、各適用は組成物の約0.5mL以下の溶液を有する。組成物の複数回適用が利用される実施形態において、複数回適用は妥当な期間にわたってイヌに投与される。
本発明の一実施形態において、組成物はイヌの背側部位にてイヌに経皮投与される。本発明の方法によれば、「背側」という用語はその通常の意味を有し、本明細書で使用する場合、イヌの脊椎の後方に対する方向、すなわちイヌの背中にわたる外側を指す。本発明の一実施形態において、組成物はイヌの腹側部位にてイヌに経皮投与される。本発明の方法によれば、「腹側」という用語はその通常の意味を有し、本明細書で使用する場合、イヌの脊椎の前方に対する方向、すなわちイヌの身体を通して前方を指す。
本発明の組成物はまた、必要に応じて、フェンタニルに加えて1種以上の他の活性成分を含有するものを含む。本明細書で使用する場合、「活性成分」または「治療成分」という用語は、治療活性化合物、ならびにその任意のプロドラッグおよび化合物およびプロドラッグの薬学的に許容可能な塩、水和物、および溶媒和物を指す。他の活性成分が、フェンタニルと併用されてもよく、別々にまたは同じ医薬製剤に投与されてもよい。与えられる他の活性成分の量は、フェンタニルでの療法に基づいて当業者により容易に決定され得る。
本発明に係る方法の1つの実施形態において、組成物をイヌに投与するために経皮投与装置が使用され得る。1つの実施形態において、その経皮投与装置は、本明細書中に記載される製剤を動物に投与するためのアプリケーターであり得る。経皮投与装置の例は、例えば、PCT特許出願番号PCT/US2010/053206および米国特許出願番号12/581,658に記載されている。
アプリケーターは、互いに連結した第1および第2セクションを備えるハウジング(その第1および第2セクションは、それらの間にチャネル(少なくとも1つの流出口を備える)を規定する);第1セクションと一体になっており、そこから伸びているハブ(そのハブは、コンジットを規定する);およびコンジットとチャネルとを接続している湾曲パスを備える。この実施形態によると、コンジット、湾曲パスおよびチャネルは、流体的に接続されている。
本発明のなおも別の態様によると、互いに連結されてチャネルを形成する第1および第2セクションを備えるハウジングならびにそのハウジングから伸びているハブ(そのハブは注射器に取り付け可能である)を有するタイプのアプリケーターから本明細書中に記載される製剤を投与するための方法が提供される。その方法は、製剤を含む注射器にハブを取り付ける工程;アプリケーターの流出口を動物上または動物の近くに置く工程;製剤を注射器からアプリケーターに放出させる工程;ハブ、湾曲パスを通ってチャネルまで製剤を通過させる工程;および流出口を通ってアプリケーターから製剤を投与する工程を含む。
本明細書中に記載されるアプリケーターは、イヌを含み得る動物の外被および皮膚に、動物用規制物質(controlled veterinary substances)(例えば、フェンタニル)の用量を経皮的に送達するために特に有用であり得る。ある特定の例示的な実施形態において、その薬物送達デバイスは、標準的なルアーロック注射器に適合するアプリケーターデバイスまたはチップを備え、その薬物送達デバイスは、動物の皮膚または外被の表面に製剤を塗布することを可能にするハウジングからなる。これを達成するために、アプリケーター本体は、動物の被毛を貫通することによってその動物の皮膚または外被に薬物を直接送達するように形成された、脚または歯の形状である1つ以上の流出口を備える。ある特定の態様では、その流出口は、その遠位端から伸びている1対の間隔のあいた突起物または足状物をさらに備え、それによって動物の表面上に製剤を自由に投与できる。より詳細には、その間隔のあいた足状物は、アプリケーターの遠位端から外向きに伸びているので、それらは、動物の表面に直接接触して塞ぐ、組み立てられたアプリケーターの唯一の構造部分である。さらに、その流出口の開口部は、それが投与操作中に動物の表面に直接接触しないかまたはその表面を塞がないような様式で、相隔たる突起物間に位置するので、製剤は、物理的に妨害されずにまたは遮断されずに動物上に自由に投与および塗布されることが可能である。
本教示に係る流体送達デバイスに連結された組み立てられたアプリケーターの非限定的な説明図が、図1に示されている。より詳細には、図1は、ユーザー100が本明細書中に記載される製剤を動物102上に投与している斜視図を示している。この例示的かつ非限定的な説明図によると、製剤を含む流体送達デバイス104が、アプリケーターデバイス106に放出可能に取り付けられ、次いで、動物102の表面上または表面付近に置かれる。この例証的な実施形態は、標準的な注射器として流体送達デバイス104を示しているが、製剤の送達は、アプリケーターデバイス106に放出可能に取り付けでき、投薬または投与される製剤を保持および/または貯蔵するためのレザバーを有する、任意の公知の流体送達デバイスまたはコネクターによって達成されてもよいと本明細書中で理解および認識されるべきである。使用され得る他のそのような非限定的かつ例証的な流体送達デバイスとしては、注射器、カテーテル、ハブニードル(hubbed needle)、IVチューブおよびシリンダーの流体送達デバイスが挙げられるが、これらに限定されない。
下記で詳細に説明されるように、アプリケーターデバイス106は、通常、互いに連結されるかまたは組み立てられることによりアプリケーター構造を形成する少なくとも2つの部材または半部材(すなわち、セクション114および214)からなる。1つのアプリケーター部材または2つの構造的に相補的な部材からなる他の多くの従来のアプリケーターデバイスとは異なり、上記デバイスは、構造に関していくらか相補的であるが、具体的には、いったん組み立てられると多量の関連漏出または付着残留を起こさずにそこから製剤を投与できるような様式の形状をとる、2つのセクション114、214を備える。より詳細には、セクション114、214は、それらが互いに連結されると、アプリケーター本体からの製剤の漏出が抑制されるような構造上の形状をとる。さらに、第1セクションと第2セクションとの間に設けられた投与通路の構造上の方向は、投与操作中に製剤の実質的にすべてがアプリケーターデバイスから投与されるように促されるような様式の形状をとっている。従って、予想外の利点の少なくともいくつかが、組み立てられたアプリケーターセクションによって形成される投与通路の、結果として生じる形状および配置に影響されると本明細書中で理解および認識されるべきである。
ここで図2に移ると、完全に組み立てられたアプリケーター106の斜視図が示されている。アプリケーター106は、流入口ハブ110および流出口112を規定しているハウジングまたは本体108を備えている。下記で詳細に説明されるように、流入口ハブ110は、投与操作において薬物送達デバイス104に取り付け可能であるのに対し、流出口部112は、動物の被毛を貫通することができ、その結果、そこから製剤が動物の表面上に適切に投与され得る。アプリケーター106は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリテトラフルオロエチレンなどから作製され得る。
組み立ての面から見ると、アプリケーター106は、互いに連結されるかまたは組み立てられることによりハウジング108を形成する第1および第2セクションまたは面(114、214)を備える。図3および4に示されるように、第1セクション114は、上面117、底面118、流入口ハブ110と一体になった後端部119、ならびに第1および第2側面120、122を備え、その第1および第2側面は、第1および第2側面120、122の間に配置された実質的に平らな中央セクション121から伸び、それを部分的に囲んでいる、1対の実質的に平行の流出口端部または脚部123、125によって規定される。平行の様式で互いとの間隔があいている1対のリブ124、126は、予め組み立てられた第1セクション114の上面117から上向きに伸びており、かつその外側の周縁に実質的に沿って位置する。ある特定の例示的な実施形態において、リブ124、126は、台形の形をとり、上側と下側の面が互いに平行である4つの面を有する。この例示的な実施形態によると、間隔のあいたリブ124、126は、それらの間に形成された溝またはチャネル127を有する。
ある特定の態様では、溝127は、第1セクションの上面117より下に陥没するかまたは落ち込むことにより、製剤を流出口端部123、125に、最終的には動物上に送達するためのチャネルを形成する。陥没したチャネルを形成するために、溝127は、表面117より下の凹部として提供され、実質的に半円状の形状を有する。この半円状の形状のより詳細かつ非限定的で例示的な説明は、図4の線4Bに沿った第1セクション114の断面図を図示している図4Bを参照すると理解できる。この例示的な説明図は、半円状の形状の溝またはチャネル127を示しているが、流体または他のそのような液剤がその中を移動するのを可能にするチャネルを設けるために有用な任意の公知の幾何学的形状が構想され、そのような形状が使用され得ると本明細書中で理解および認識されるべきである。
上で説明されたように、予め組み立てられた第1セクション114は、予め組み立てられた第2セクション214に連結され、それとともに成形されて、完全に組み立てられたアプリケーターデバイス106を形成するように構成されていると本明細書中で理解および認識されるべきである。さらに、リブ124と126との間に形成されているチャネルまたは溝127は、いったんセクション114がセクション214に連結され、それとともに成形されると、製剤を投与するための流体通路またはコンジットが、流体送達デバイス104と流出口112の投与端部との間に形成されるような様式で配置され、そのような様式の形をとる。
ここで図5に移ると、予め組み立てられた第2セクション214は、予め組み立てられた第1セクション114に実質的に似ており、かつそれを補完する形状を有する;しかしながら、その第2セクションは、第1セクション114と同様の対応する流入口ハブ部またはリブおよび溝の配置を有しない。その代わりに、第2セクション214は、上面217、底面218、および後端部219(後端部219に沿って実質的に中央に位置し、組み立てによって第1セクションの流入口ハブ110部と実質的に整合するように構成されている円型部221を有する)を備える。この整合を達成するために、流入口ハブ110は、第2セクション214の平らな端部214aとなめらかな対になるような相補的な形状をとり、そうなるように構成されている、平らな端部110aを有する。予め組み立てられた第2セクション214は、第1および第2側面220、222の間に配置されている実質的に平らな中央セクション227から伸び、それを部分的に囲んでいる、1対の実質的に平行の流出口端部または脚部223、225によって規定される第1および第2側面220、222も備える。1対の間隔のあいた溝226、228によって形成されているレッジまたはエネルギーディレクター(energy director)224は、第2セクションの底面218から外向きに伸びており、かつその外側の周縁に実質的に沿って位置する。この幾何学的配置のより詳細かつ非限定的で例示的な説明は、図5の線4Aに沿った第2セクション214の断面図を図示している図4Aを参照すると理解できる。
アプリケーター106の組み立てにおいて、予め組み立てられた第1セクション114の間隔のあいたリブ124、126の対は、第2セクション214の間隔のあいた溝226、228と実質的に整合する(そして対になる)ように構成されており、それにより、製剤を投与するための通路またはチャネル127が形成される。ある特定の例示的な実施形態によると、通路127は、第1および第2セクション114、214を互いに取り付けるシームレスジョイント113に対して非対称である。互いに整合して対になった第1および第2セクション114、214の完全に組み立てられた図が、図4Cおよび6に見られ、これらはそれぞれ、線4Cに沿った図2の組み立てられたアプリケーター106の断面図、および線6に沿った図2の組み立てられたアプリケーター106の断面側面図を表している。
特に図4Cに見られるように、第1および第2セクションが、互いに溶接された後、間隔のあいたリブ124、126は、溝226、228に結合し、その2つの面114、214の間にシームレスジョイント113が形成され、それらの間にチャネル127が形成される。特に、チャネル127の実質的に平らな部分は、シームレスジョイント113によって規定される。いったん完全に組み立てられると、チャネル127は、流入口ハブ110と1つ以上の流出口112との間に流体通路を形成する。図2Aに示されているように、アプリケーターの流出口の遠位端112aは、開いているので(参照数字127aを参照のこと)、製剤は、投与適用中にチャネル127から排出され得る。
別の実施形態において、予め組み立てられた第1および第2セクション114、214は、様々な公知のプラスチック成形および製造方法によって、互いに連結されて、組み立てられたアプリケーター106を形成し得る。しかしながら、ある特定の態様では、アプリケーター106は、予め組み立てられた第1および第2セクション114、214を互いに超音波によって溶接することによって形成される。この例示的かつ非限定的な実施形態によると、その予め組み立てられた第1および第2セクション114、214は、上で説明されたように、互いに対にされて整合され、例えばレッジ224に沿った、超音波による溶接を開始することにより、それらのセクションが互いにシームレスに結合または連結する。プラスチックの製造および溶接の分野の当業者が容易に理解および認識するように、予め組み立てられた部材のうちの1つに形成されたエネルギーディレクターに沿って2つのプラスチック部材を互いに超音波によって溶接するプロセスは、伸張性のある結合の形成を可能にし、その結合を引き裂く力の傾向に抵抗する。具体的には、超音波エネルギーが、部材間の接触点を融解することによって、シームレスジョイントが形成される。さらに、これらのタイプの溶接は、典型的には、溶接深さを長くするかまたはエネルギーディレクターのサイズを大きくして溶接面積をより広くすることによって強化され得る。したがって、特に、当業者であれば、組み立てられる特定の投与アプリケーターデバイスにとって最もうまく溶接された結果が得られるように構成要素のサイズおよび形を最大限に活用する方法を理解しているので、本明細書中に記載される予め組み立てられた構成要素の正確な形およびサイズが本質をなすものではないと本明細書中で理解および認識されるべきである。
しかしながら、図4A、4Bおよび4Cに図示されているアプリケーター106の実施形態には利点が存在する。特に、第1セクション114および第2セクション214の構造は、実質的に半円状のチャネル127(使用後にチャネルに残留している残留物の量を最小にしつつ、製剤がそれを通って投与されるように促す)を形成する際に有益である。この理由の1つは、溶接パス、すなわち、シームレスジョイント113が、流体パス、すなわち、チャネル127の近くに配置されているからである。別の理由は、チャネル127が、実質的に平らな部分を有し、リブ124、126が、互いにより近く位置し得るからである。同様に、チャネルの全体の容積を減少させることによって、チャネル127は、より小さくなり得、それにより、そこを通った薬剤の投与後にそのチャネルに残る残留製剤の量が効果的に減少する。
アプリケーター106の図示された実施形態での別の利点は、第2セクション214における溝226、228およびレッジ224の形である。図4Aに示されているように、各溝は、実質的にV字形であり、レッジ224は、実質的に平らであり、その結果、予め組み立てられた第1および第2セクション114、214が、互いに対になり、整合すると、チャネル127に残るフラッシュが、たとえあったにしても非常に少なくなる。超音波溶接によって、例えば、超音波エネルギーが、エネルギーディレクター、すなわち、レッジ224を融解して、第1および第2セクション114、214の間にジョイント113を形成する。図4Cでは、第1セクション114および第2セクション214が互いに溶接された後、チャネルにフラッシュが形成されずにチャネル127が形成されている。フラッシュは、チャネル127を通過する製剤の流れを乱し得るかまたは妨げ得る。フラッシュがチャネル127に存在すると、製剤が投与された後、より多量の残留流体が、そのチャネルに残り得る。フラッシュを減少させるかまたは排除することによって、チャネル127は、実質的に半円状の形状を維持し、それにより、上に記載されたように、使用後にチャネルに残る残留製剤の量が減少する。
しかしながら、このことは、第2セクションにおける異なる形の溝および/またはレッジには当てはまらない。図5Aでは、例えば、上面517および底面518を有する第2セクション514の異なる実施形態が示されている。さらに、溝526、528が台形である第2セクション514の異なる断面が、図示されている。台形の溝526、528は、第1セクション114の台形のリブ124、126(図5B)と相補的である。第2セクション514のエネルギーディレクターまたはレッジ524は、実質的に平らであるので、図4Aにおけるレッジ224と似ている。図5Cに見られるように、第1および第2セクションが互いに溶接された後、間隔のあいたリブ124、126は、溝526、528に結合し、それらの2つの面117、518の間にシームレスジョイント113が形成され、それらの間にチャネル127が形成される。しかしながら、図4Cに示されている半円状のチャネル127とは異なり、台形の溝526、528と台形のリブ126、128とが対になることによって、チャネル127の一部を満たすフラッシュ540が生成される。フラッシュ540は、チャネル127のサイズを小さくし、チャネル127はもはや半円状でなくなる。チャネルにフラッシュが生成される1つの理由は、台形の溝526、528と台形のリブ126、128との溶接が困難であることに起因する。
図7Aには、上面717および底面718を有する第2セクション714の別の実施形態が示されている。さらに、第2セクション714は、V字形であるがゆえに図4Aの溝226、228に似ている溝726、728を備える。しかしながら、第2セクション714は、平らでないエネルギーディレクターまたはレッジ724も備える。その代わりに、レッジ724は、底面718より上に押し込まれ、半円状の断面を有する。レッジ724の形は、図7Bに示されている第1セクション114の半円状のチャネル127と相補的に対応する。図7Cに見られるように、第1および第2セクションが互いに溶接されると、間隔のあいたリブ124、126は、溝726、728に結合し、それらの2つの面117、718の間にシームレスジョイント113が形成され、それらの間にチャネルが形成される。第1および第2セクションの間に形成されたチャネル127は、実質的に円形の断面を有するが、フラッシュ740が、チャネル内に形成することにより、そこを通る流れが阻害される。それら2つのセクションを互いに溶接することが困難であることに起因して、チャネル127内にフラッシュが生成される。図7Aに見られるように、例えば、レッジ724は、もはや実質的に平らでない。特に、それらの2つのセクションを互いに超音波によって溶接するために第1セクション114と接触するレッジ724に沿って存在する材料は非常に少ない。したがって、適切な結合が形成されて、第1および第2セクションが互いに保持されることを確実にするために、フラッシュは、チャネル127の縁を満たす。ゆえに、本明細書中に記載される予め組み立てられた構成要素の正確な形およびサイズは、本質をなすものではないと本明細書中で理解および認識されるべきであるが、その予め組み立てられた構成要素が、フラッシュをほとんどかまったく助長しない形およびサイズを備えることが有益である。
アプリケーター106の様々な部材のより詳細な説明が、ここで提供される。特に図6、8、8Aおよび8Bに示されるように、流入口ハブ110は、1対の開口部130、132の間に配置されたパス128を経由して第1セクション114と流体的に接続されている。本明細書中で理解および認識されるべきであるように、流入口ハブ110と第1セクション114との間の流体接続は、流体送達デバイス104から溝またはチャネル127に製剤を受け入れるためのコンジットを規定する。より詳細には、流入口ハブ110は、流入口ハブ110の近位端211に配置された第1開口部130を有し、流体送達デバイス(例えば、図1におけるデバイス104)の投与端を受け入れるための挿入穴として機能する。第2の開口部132は、第1開口部130の向かいに存在し、ハウジング108の溝またはチャネル127と流体的に接続されている。同様に、流入口ハブ110は、流体送達デバイス104に対する開口部を機能的に形成するように設計されており、そこから製剤が容易かつ便利に投与され得る。
流入口ハブ110は、流体送達デバイス(図示せず)に固定するように適合された1対の翼型耳状物(winged ears)111を有する。より詳細には、流体送達デバイス(例えば、図1におけるデバイス104)は、第1開口部130に挿入され、当該分野で公知の任意の締め付け手段によって流入口ハブ110に確実に取り付けられる。例示的な接続手段としては、ルアーロック接続が挙げられるが、これに限定されない。ルアーロック接続は、医学分野において周知であり、典型的には、注射器または他のそのような液体もしくは気体の供給源とカテーテルラインまたは医療デバイスとをつなぐために使用される。さらに、関連する分野の当業者によって認識および理解されるように、ルアーコネクターは、方向として雌型であっても雄型であってもよく、ルアーロックデバイス、ルアースリップ接続デバイスなどとして機能し得る。いくつかの特定の態様によると、ルアーロック接続は、流体送達デバイス104と流入口ハブ110の翼型耳状物111との間で達成される。
上記の記述から理解できるように、流路128は、流体の流れ(すなわち、流入口ハブ110から流出口112の遠位端112aへ)の向きに沿って直径が有意に減少する。このことは、アプリケーターを、一方では、ハブ110の末端においてより大きな流体送達デバイスとの接続、他方では、流出口112から投与される前に流体が移動する非常に小さいチャネル127との接続のために適合させるのに必要である。この直径の減少によって、パス128内に有意な圧力が生じ、それにより、溶接継ぎ目などの任意の弱いまたは脆弱な点がパス128に沿って存在する場合、漏出が引き起こされ得る。これらの構造上の問題に対処するために、パス128は、曲げられるか、または本質的に曲がりくねった形状をとる、すなわち、第1および第2開口部130、132との間は直線ルートではなく、1回以上、向きが変更される。このように、パス128は、アプリケーターの単一のセクションであるセクション114内に完全に形成され、それによって、パス128を規定する任意の構造に対して溶接継ぎ目が存在することが回避される。図8Bを参照すると、例えば、第1および第2セクションとの間の界面、すなわち、ジョイント113(図2)は、そこを通過する平面800を規定する。この例証的な実施形態に示されるように、パス128は、平面800から外れている。アプリケーターの1つのセクションに流路を配置し(2つのセクションがその間に流路を規定するのではなく)、その結果として、流路128によって規定される範囲内のすべての溶接継ぎ目を排除することによって、流体送達デバイス104とチャネル127との間の流体の流れとしての漏出の発生は、排除されるとまではいかなくても、実質的に減少する。
図8および8Aを参照すると、パス128を規定する構造を理解でき、ここで、流入口ハブ110によって規定されるコンジットは、第1および第2開口部130、132の間に配置され、実質的に中央で突き当たって第2開口部132においてチャネル127に通じる、短い中空の円筒形チャンバー134を備える。チャンバー134は、典型的には、寸法的に一様でない(すなわち、第1開口部130と第2開口部132との間の幅および高さが異なる)ように設計される。この態様によると、チャンバー134の内径は変化して、アプリケーターの単一セクション114内にパス128を維持するために必要とされる直径の減少および配置が達成される。上で述べたように、製剤が流体送達デバイスとチャネルとの間を流れるとき、この配置が製剤の漏出を回避すると見出されている。
ある特定の態様では、1つ以上の管状物または他のそのような囲い込まれた管状構造が、本アプリケーターの構造設計の内部に組み込まれ得る。例えば、流体送達デバイスとアプリケーターとの間の接続の周囲にまたは成形された第1および第2セクション114、214の間に形成されたジョイント113に沿って生じ得る任意の関連漏出を回避するために、1つ以上のチャンバーが、流入口ハブ110部の中におよび/またはアプリケーター本体の形成されたチャネル127内に内部的に付加され得る。そのような追加の構造が、本教示から逸脱することなく任意の実施形態に組み込まれ得るが、そのような構造は必須でないと本明細書中で理解および認識されるべきである。より詳細には、湾曲パスの方向およびアプリケーターセクションの相補的な構造設計を用いることにより、マニホールドを含まないだけでなく、漏出を生じずに操作できる、チューブレスの設計を達成することが可能であると見出されている。
ある特定の例示的な実施形態において、チャンバー134は、曲がった形状をもたらし、パス128の直径を段階的に小さくする、隆起、レッジまたは他のそのような同様の構造を備える。なおも他の態様では、パス128は、第1および第2セクション114、214の間に形成されたシームレスジョイント113の下、かつそれらの間に形成されたチャネル127の下に位置する。
ある特定の態様によると、第2開口部132は、チャネル127の長手方向の向きと実質的に直交する向きで製剤をチャネルに向かって方向づける。そのような例示的な実施形態は、例えば、図8および8Aを参照すると、理解できる。第2開口部132の寸法および/または幾何学的形状は、特定の薬物送達用途に適合するように適応され得るが、開口部132は、実質的に長方形の形状である。
なおも別の例証的な態様によると、湾曲パス128は、製剤を流体送達デバイス104およびチャネル127から受け入れるためのコンジットに接続された実質的に半円状の部分を備える。この例証的な態様によると、湾曲パス128は、第2開口部132で突き当たり、そしてそれは、湾曲パス128の実質的に半円状の部分に対して実質的に直交的に配置されている。
いったん製剤がチャネル127を完全に通過して周回し、1つ以上の流出口112の遠位端112aに達すると、動物の表面上または外被上に投与される準備が整う。上で説明されたように、動物の表面の上に製剤を均等に広げるために、流出口112は、動物の被毛を貫通することにより、動物の皮膚に達することができる。これを達成するために、流出口112は、動物の表面上への製剤の投与を支援するための1つ以上の突起物129を備えてもよい。ある特定の実施形態によると、アプリケーター106が、製剤の投与において動物の身体表面に実質的に達するかまたは接触することができるように、突起物129は、動物102の被毛を貫通するように構成された間隔のあいた足状物または歯状物を備える。この貫通によって、薬剤のより効率的な局所的および経皮的放出が可能になる。さらに、薬物送達および流体投与の分野の当業者は、流出口112からの突起物または他のそのような構造的突出物の付加によって、投与の実施中の毛管作用または毛管引力の発生が抑制される(すなわち、製剤が流出口の外面に沿って上流方向に移動するのが止まる)ことを理解および認識するだろう。有害および/または危険であると考えられ得る製剤を取り扱う際には、そのような毛管作用の影響を最小化および/または排除することは、特に有益である。
本発明は、フェンタニル、パラ−アミノ安息香酸長鎖アルキル、ジメチル−パラ−アミノ安息香酸長鎖アルキル、桂皮酸長鎖アルキル、メトキシ桂皮酸長鎖アルキル、サリチル酸長鎖アルキル、ジメチル−パラ−アミノ安息香酸オクチル、パラ−メトキシ桂皮酸オクチル、サリチル酸オクチルまたはそれらの混合物からなる群から選択される浸透促進剤、およびエタノール、酢酸エチル、イソプロパノール、アセトン、ギ酸エチル、メタノール、酢酸メチル、メチルエチルケトン、ペンタン、クロロホルムまたは投与に適したそれらの混合物からなる群から選択される揮発性液体を含む治療有効量の組成物を含む1回量の経皮製剤も含む。いくつかの実施形態において、浸透促進剤はサリチル酸オクチルである。一実施形態において、揮発性液体はプロパノールである。いくつかの実施形態において、その組成物は、イヌの体重の1kgあたり約2.7mgの用量でフェンタニルを含む。いくつかの実施形態において、1回量の経皮製剤は、ある有効時間にわたってイヌにおける疼痛を抑制する。いくつかの実施形態において、有効時間は、少なくとも24時間の時間、少なくとも48時間の時間、少なくとも72時間の時間、少なくとも96時間の時間、または少なくとも7日の時間を含む。一実施形態において、1回量の経皮製剤は、少なくとも48時間ごとに1回投与される。別の実施形態において、1回量の経皮製剤は、少なくとも72時間ごとに1回投与される。さらに別の実施形態において、1回量の経皮製剤は、少なくとも96時間ごとに1回投与される。なおも別の実施形態において、1回量の経皮製剤は、少なくとも7日ごとに1回投与される。
本発明の方法によると、用語「1回量の経皮製剤」は、組成物が単回適用および複数回適用として経皮的に投与され得る実施形態を含む。1つの実施形態において、組成物の1回量の経皮製剤は、イヌの皮膚上の1ヶ所に単回適用でイヌに経皮的に投与され得る。別の実施形態において、組成物の1回量の経皮製剤は、イヌの皮膚上の2ヶ所以上に複数回適用でイヌに経皮的に投与され得る。1つの実施形態において、組成物の1回量の経皮製剤は、イヌの皮膚上の1ヶ所に単回適用でイヌに経皮的に投与され、ここで、その単回適用は、最大約0.5mLの組成物の溶液である。1つの実施形態において、組成物の1回量の経皮製剤は、イヌの皮膚上の1ヶ所に複数回適用でイヌに経皮的に投与され得る。別の実施形態において、組成物の1回量の経皮製剤は、イヌの皮膚上の1ヶ所に複数回適用でイヌに経皮的に投与され、各適用は最大約0.5mLの組成物の溶液である。別の実施形態において、組成物の1回量の経皮製剤は、イヌの皮膚上の2ヶ所以上に複数回適用でイヌに経皮的に投与され、各適用は最大約0.5mLの組成物の溶液である。組成物の複数回適用が利用される実施形態において、複数回適用が妥当な時間にわたってイヌに投与され得る。
以下の実施形態も企図される:
1.疼痛を抑制する必要のあるイヌに、フェンタニル、浸透促進剤、および揮発性液体を含む治療有効量の組成物を経皮投与する工程を含む、疼痛を抑制する方法であって、
前記組成物は溶液である、方法。
2.前記経皮投与がイヌの背側部位に適用される、項1に記載の方法。
3.前記経皮投与がイヌの腹側部位に適用される、項1に記載の方法。
4.疼痛を抑制する必要のあるイヌに、フェンタニル、浸透促進剤、および揮発性液体を含む治療有効量の組成物を経皮投与する工程を含む、疼痛を抑制する方法であって、
前記組成物は溶液であり、
前記経皮投与はイヌの背側部位に適用される、方法。
5.前記組成物が1回量として投与される、項1〜4に記載の方法。
6.前記疼痛が有効期間、抑制される、項1〜5に記載の方法。
7.前記有効期間が約96時間である、項6に記載の方法。
8.治療を必要とするイヌに、フェンタニル、浸透促進剤、および揮発性液体を含む治療有効量の組成物を経皮投与する工程を含む、疼痛を治療する方法であって、
前記組成物は1回量として投与され、
前記1回量は約96時間、疼痛の治療に有効である、方法。
9.前記経皮投与がイヌの背側部位に適用される、項8に記載の方法。
10.前記経皮投与がイヌの腹側部位に適用される、項8に記載の方法。
11.前記浸透促進剤がサリチル酸オクチルである、項1〜10に記載の方法。
12.前記揮発性液体がイソプロパノールである、項1〜11に記載の方法。
13.前記疼痛が、イヌに実施されたまたは実施される手術に伴う、項1〜12に記載の方法。
14.前記手術が整形外科手術である、項13に記載の方法。
15.前記手術が軟組織手術である、項13に記載の方法。
16.前記組成物が前記手術の約2〜約4時間前にイヌに投与される、項13〜15に記載の方法。
17.前記組成物が1回量として投与される、項16に記載の方法。
18.前記組成物が単一単位用量として投与される、項1〜17に記載の方法。
19.前記組成物が、約0.1〜約10%(w/v)のフェンタニル、約0.1〜約10%(w/v)の浸透促進剤、および約80〜約99.8%(w/v)の揮発性液体を含む、項1〜18に記載の方法。
20.前記組成物が、約3〜約7%(w/v)のフェンタニル、約3〜約7%(w/v)の浸透促進剤、および約86〜約94%(w/v)の揮発性液体を含む、項1〜19に記載の方法。
21.前記組成物が、約5%(w/v)のフェンタニル、約5%(w/v)の浸透促進剤、および約90%(w/v)の揮発性液体を含む、項1〜20に記載の方法。
22.前記浸透促進剤がサリチル酸オクチルであり、前記揮発性液体がイソプロパノールである、項21に記載の方法。
23.前記フェンタニルがイヌの体重1kg当たり約0.1〜約10mgの用量である、項1〜22に記載の方法。
24.前記フェンタニルがイヌの体重1kg当たり約1〜約5mgの用量である、項1〜23に記載の方法。
25.前記フェンタニルがイヌの体重1kg当たり約2.7mgの用量である、項1〜24に記載の方法。
26.前記組成物が1種以上の他の治療成分と共に投与される、項1〜25に記載の方法。
27.前記組成物が経皮投与装置を使用して投与される、項1〜26に記載の方法。
28.治療有効量の溶液中の組成物を含む1回量の経皮製剤であって、前記組成物は、
フェンタニルと、
パラ−アミノ安息香酸長鎖アルキル、ジメチル−パラ−アミノ安息香酸長鎖アルキル、桂皮酸長鎖アルキル、メトキシ桂皮酸長鎖アルキル、サリチル酸長鎖アルキル、ジメチル−パラ−アミノ安息香酸オクチル、パラ−メトキシ桂皮酸オクチル、サリチル酸オクチルまたはそれらの混合物からなる群から選択される浸透促進剤と、
エタノール、酢酸エチル、イソプロパノール、アセトン、ギ酸エチル、メタノール、酢酸メチル、メチルエチルケトン、ペンタン、クロロホルム、またはそれらの混合物からなる群から選択される揮発性液体と、
を含む、製剤。
29.イヌの体重1kg当たり約0.1〜約10mgのフェンタニルの用量での投与に適した項28に記載の製剤。
30.イヌの体重1kg当たり約1〜約5mgのフェンタニルの用量での投与に適した項28または29に記載の製剤。
31.イヌの体重1kg当たり約2.7mgのフェンタニルの用量での投与に適した項28〜30に記載の製剤。
32.少なくとも72時間毎に1回投与される、項28〜31に記載の製剤。
33.少なくとも96時間毎に1回投与される、項28〜31に記載の製剤。
以下の各実施例において、本発明の組成物は溶液製剤としてイヌに投与される。本発明の組成物の実施形態は、5%重量/体積(50mg/mL)の濃度にてフェンタニル、5%重量/体積(50mg/mL)の濃度にてサリチル酸オクチル、およびイソプロパノールが含まれる各実施例において利用される。
実施例1
イヌの腹側位置での1回経皮用量として投与されたフェンタニル組成物の薬物動態
本発明の組成物(フェンタニル、浸透促進剤、および揮発性液体を含む組成物であり、その組成物は溶液である)の薬物動態は、イヌの腹側位置での1回経皮投与後に検査することができる。18匹の成体ビーグル犬は、6匹のイヌ(3匹の雄と3匹の雌)の3つの群に分けることができる。各群に対して、1.3(25)、2.6(50)、または5.2mg/kg(100μL/kg)の濃度のフェンタニルを含む本発明の組成物の1回量を投与することができる。投与を、臍近くから尾方の刈り取られた腹側皮膚に対する1回量として、1mLツベルクリン注射器を用いて経皮的に行うことができる。投与後すぐに、適用部位を直接舐めることを防止するために72時間の間にわたって各イヌにカラーを配置できる。一連の頸静脈血液サンプルを投与の0(投与前)、1、2、4、6、8、12、24、36、48、60、72、84、96、108、120、144、168、240、336、408および504時間後に回収することができ、LC/MS/MSによりフェンタニルについてアッセイできる。
1回経皮用量の投与後、フェンタニルは、用量依存的に21日の間の適用時間内に腹側適用部位から吸収される(表2参照)。フェンタニルは、1.3mg/kgの群において0.333時間、および他の2つの処置群において0時間の平均吸収遅延時間(tlag)で急速に検出される。平均最高観測血漿濃度(Cmax)は、フェンタニルの投与の増加に伴って増加し、それぞれ1.3、2.6および5.2mg/kg用量群において2.28、2.67および4.71ng/mLで計算した。全群においてCmaxに到達した平均時間(tmax)は、約50から60時間の範囲に及んだ。
表2:イヌの腹側に対して1回量として本発明の組成物を1.3、2.6または5.2mg/kg適用した後の血漿フェンタニル濃度
平均排出半減期は、1.3、2.6および5.2mg/kg用量群においてそれぞれ53.7、69.6および103時間であった。これらの観測は、クエン酸フェンタニルの静脈内注射後のフェンタニル半減期(当該半減期は、0.76から6.0時間の範囲に及ぶ)と顕著に対照的である。
定量下限(LLOQ、0.025ng/mL)よりも低い血漿フェンタニル濃度を、記述的統計計算のために0ng/mLと同等になるように設定した。最低用量の群から最高用量の群までの定量LLOQ(AUC0−LLOQ)の下限にてまたはこの下限より上において、時刻0から最終サンプルの時刻までの血漿濃度−時刻曲線計算下の平均面積は、157、269、および645ng時間/mLであり、用量に比例した(ここで、R2は0.9818であった)。
0.2から1.2ng/mLの推定最小有効血漿濃度(MEC)を本実施例において使用した。1.3mg/kg用量の群についての平均血漿フェンタニル濃度は、4〜168時間まで、および36〜72時間までの範囲でそれぞれ、MECの下端および上端におけるままであるか、またはこれらの下端および上端より上のままであった。対照的に、2.6mg/kg用量では、平均血漿フェンタニル濃度は、2〜240時間まで≧0.2ng/mLのままであり、12から約84〜120時間まで≧1.2ng/mLのままであった。5.2mg/kgの高用量では、平均濃度は、1〜504時間まで≧0.2ng/mLのままであり、6〜168時間まで≧1.2ng/mLであった。したがって、イヌにおける1.3mg/kg用量の開始は、3〜7日間続いて4〜36時間であり得る。2.6mg/kgの用量では、開始は、3.5〜10日間続いて2〜12時間であり得る。最終的に、5.2mg/kgの用量では、開始は、7〜17日間続いて1〜8時間であり得る。
用量を確定するために、安全性と有効性の両方が考慮されなければならない。ヒトにおいて、用量制限効果は、オピオイド誘発性高炭酸ガス症および呼吸抑制である。ヒトにおけるこのような深刻な反応は、術後疼痛のためのフェンタニルパッチの禁忌という結果をもたらした。対照的に、これは、自発呼吸がフェンタニル濃度と独立して維持されるということでイヌでは問題とならない。約80ng/mLと同じ高さの血漿フェンタニル濃度は、自発呼吸下のイヌにおいて、致命的ではなく、約11呼吸/分(50%)だけ呼吸数を減少させる。加えて、呼吸数、酸素消費量、および血液ガス(pCO2、pO2、およびpH)は、濃度が100ng/mlよりも増加するにつれて更に変化しない。
本研究における最低用量から最高用量までの平均Cmaxは、2.28、2.67および4.71ng/mLであり、イヌにおける呼吸数に対して臨床的影響を有する濃度よりも十分に下である。主な用量制限効果は、5.2mg/kg用量の群における減少した食欲および鎮痛のようであった。この用量の群の1匹のイヌは、食料および水摂取の不足が原因で72〜96時間の非経口輸液療法および強制栄養が要求され、4匹のイヌは3日間鎮痛状態であった。2.6mg/kgの群は、何ら有害事象を有さず、1.3mg/kgの群よりも速い作用の推定開始と長い継続を有した。
要約すれば、イヌの腹側位置に対する投与後に、2.6mg/kg(50μL/kg)のフェンタニル用量の群は、1.3mg/kgのフェンタニル用量の群と比較してより急速な作用の開始と長い作用継続を示した。更に、2.6mg/kgのフェンタニル用量の群は、5.2mg/kgのフェンタニル用量の群と比較してより少ない観測有害事象を示した。
実施例2
イヌの背側位置と比較した腹側位置での1回経皮用量として投与したフェンタニル組成物の薬物動態
本発明の組成物の薬物動態は、イヌの異なる解剖学的部位に対する組成物の1回経皮投与後に検査することができる。通常、異なる解剖学的部位に対する経皮薬物の適用は、異なる吸収特性をもたらすことができる。本発明の組成物を腹側以外の部位に対して適用することは有益であり得る。例えば、背側肩甲骨間適用は、適用を容易にするために処置領域まで、および処置領域から歩行可能なイヌは歩くことができ、外科的開腹術では決してない。しかしながら、異なる経皮投与部位は、似ていない薬物送達特性を生じることが知られている。イヌにおいて背面皮膚に対して腹側皮膚は、血流については異なることが示されているので、薬物がこれらの部位に適用される場合、異なる吸収特性が明らかになり得る。従って、本発明の組成物の薬物動態は、組成物がイヌの腹側肩甲骨間領域に対して腹側に局所的に適用される場合、異なり得る。
40匹の目的をもって繁殖させた実験用ビーグル犬(Marshall BioResources,North Rose,NY)を本研究のために選択した(20匹のオス、20匹のメス、全て投与時において6から8月齢)。イヌに、2.6mg/kg(50μL/kg)の本発明の組成物を、背面肩甲骨間領域または臍付近の腹側皮膚領域へ1回量として適用した。イヌを並行研究デザインにおいて背側投与または腹側投与へランダムに割り当てた。
適用部位ごとの平均血漿フェンタニル濃度を表3に示す。血漿フェンタニル濃度は、背側適用後に急速に上昇し、含む適用の群においてより長く持続した。平均血漿フェンタニル濃度は、背側適用の群において4〜96時間および腹側適用の群において8〜144時間から0.6ng/mLより上のままであった。
表3:本発明の組成物の適用後の処置群(n=20/群)ごとの血漿フェンタニル濃度
適用部位の群ごとの薬物動態パラメータを表4に要約する。Cmaxは、腹側適用の群および背側適用の群それぞれについて2.34±1.29(平均±標準偏差)および2.02±0.84ng/mLであった。tmaxは、腹側適用部位の群および背側適用部位の群それぞれにおいて40.2±29.5および24.8±17.8時間であった。両群についての終末排出半減期(t1/2)は、腹側適用部位の群および背側適用部位の群それぞれについて137±58.9および117±56.6時間の値と類似していた。20%未満のAUC0−∞は、両方の群について、AUC0−LLOQが露出の程度を十分に反映していることを示していると推定された。
表4:本発明の組成物の適用後の処置群(n=20/群)ごとの薬物動態パラメータ
生物学的同等性分析結果を表5に示す。AUC0−LLOQの幾何平均の背側−腹側比は70.5%(90%CI[60.6−82.0%])であり、幾何平均のCmax比については、93.1%(90%CI[73.4−118%])であった。
表5:選択された薬物動態パラメータ(n=20/群)の幾何平均の比(背側:腹側)および90%信頼区間
本研究において有害事象はなかった。背側適用の群における一匹のイヌは、0.61ng/mLの群平均と比較して96時間にて13.0ng/mLの血漿フェンタニル濃度を有した。中程度から重度の鎮静は、15ng/mL近くかまたはそれより上の濃度にて予想される。96時間で上昇濃度が観察された時点で鎮静状態または有害事象は見られず、本対象における72時間と120時間の血漿フェンタニル濃度は、1.0ng/mLより下であった。したがって、一時的な急上昇は偽と考えられ、更なる薬物動態分析から外された。
イヌにおける本発明の組成物の吸収は、腹側領域に対して背側肩甲骨間領域に適用した場合、同等ではない。吸収は、本発明の背側に適用された組成物についてより迅速であり、これは、腹側適用と比較して、より迅速な作用の開始を支持する。0.6ng/mLの濃度に達する平均時間は背側適用について4時間であったが、腹側適用では、投与後8時間まではこの濃度に達しなかった。背側適用に関連するより迅速な吸収はまた、0.6ng/mLより上の平均継続の差異にも関連した。背側適用および腹側適用について0.6ng/mL未満に下がる平均時間は、それぞれ96時間と144時間であった(表3参照)。
背側適用は、12時間で生じる9.8μg/kg/時間のピークとともに適用後2〜144時間で≧2μg/kg/時間の吸収速度を達成した。対照的に、腹側投与は、24時間で生じる8.5μg/kg/時間のピークとともに2〜264時間で≧2μg/kg/時間の吸収速度を達成した。これらの結果は、本発明の組成物からの潜在的鎮痛注入速度が、適用の数時間以内に達成し、10日間の期間まで維持されることを示唆している。
要約すれば、背側適用部位および腹側適用部位の両方は、イヌに対する経皮適用の2時間以内に2μg/kg/時間より大きい吸収速度をもたらすが、背側部位は、腹側適用での8時間と比較して4時間までに0.6ng/mLの平均血漿濃度を達成した。従って、背側適用は、より迅速な作用の開始を提供する。このような迅速な作用の開始で、本発明の組成物は、手術の2〜4時間前に潜在的に生じる鎮痛濃度を有する麻酔前投薬として病院に導入する場合、イヌに対して適用することができる。追加のオピオイド投与をすることなく、この1回投与は、96時間の最低継続を有することができる。
実施例3
イヌの背側位置での1回経皮投与として投与したフェンタニル組成物の薬物動態
本発明の組成物(フェンタニル、浸透促進剤、および揮発性液体を含み、本組成物は溶液である)の薬物動態は、イヌの背側位置での1回経皮投与後に検査することができる。20匹の目的を持って繁殖させた実験用ビーグル犬(10匹のオスと10匹のメス)に、背側肩甲骨間領域に本発明の組成物(フェンタニルの2.6mg/kgを含む)の1回量を投与することができる。LC−MS/MSによる血漿フェンタニル分析のための血液サンプルは、用量投与前から用量投与後21日にわたって回収することができる(すなわち、投与の0、2、4、8、12、24、36、48、72、96、120、144、168、216、264、336、408および504時間後に回収)。薬物動態は、非コンパートメント薬物動態分析方法を用いて決定することができる。
本発明の組成物の投与後、平均血漿フェンタニル濃度は、用量投与後2時間までに測定可能な血漿フェンタニル濃度(>0.100ng/mL)を示す全てのイヌについて急速に上昇した(表6参照)。平均血漿フェンタニル濃度は、用量投与後約12時間で最大値に達し、その後全てのサンプルが504時間で0.100ng/mL未満になるまで徐々に下降する。平均血漿フェンタニル濃度は、用量投与後4〜96時間で0.5ng/mLより上のままであった。
表6:本発明の組成物の投与後のイヌ(n=20)におけるフェンタニルの平均濃度
血漿フェンタニルサンプルの変動係数(C.V.)は通常、約50%であった。比較的高いC.V.は、96時間で13.0ng/mLの一時的に高い血漿フェンタニル濃度を有する一匹のイヌに起因して96時間で観察された。この対象について72時間と120時間近くのサンプルでの血漿フェンタニル濃度は、両方とも1.0ng/mLより下であった。鎮痛状態が13.0ng/mLの血漿フェンタニル濃度を有するイヌにおいて予想されるにもかかわらず、鎮痛状態または他の副作用は96時間では観察されなかった。血漿フェンタニル濃度の一過性増加の原因は未知である。
非コンパートメント薬物動態分析からの結果を表7に示す。平均Cmaxは2.58ng/mL(2.59標準偏差)であった。しかしながら、その結果は96時間での13.0ng/mLの1つの一時的に高い血漿フェンタニル濃度により大いに影響を受けた。この1つのサンプルを平均および標準偏差計算から外すことで、それぞれ2.02と0.840ng/mLのCmax値が得られる。
表7:非コンパートメント薬物動態分析(n=20)からのパラメータ
tmaxは29.0(23.6)時間であり、t1/2は117(61.5)時間であった。外挿AUC0−\パーセントは11.8(7.48)%のみであり、これは、血漿濃度−時間プロファイルの十分な部分がAUC0−\およびt1/2を正確に定量することが観察されたことを示している。AUC0−\は、13.5(3.44)L/hr・kgの大きな生物学的利用能の正規化されたクリアランス(すなわち、Cl/F)に対応する、206(64.4)ng・時間/mLであった。96時間で一時的に高い血漿濃度を有する1つのサンプルの除去は、Cmax以外の薬物動態パラメータに対してわずかな影響しか及ぼさないので、この血漿サンプルを除去する結果は、他のパラメータについては示されない。
50〜100μg/hの投与速度でのイヌにおけるフェンタニル経皮パッチの使用と比較して、平均血漿フェンタニル濃度は、本発明の組成物を2.6mg/kg投与した後に、より迅速に0.6ng/mLに達した。組成物の投与後、平均血漿フェンタニル濃度は、経皮パッチ適用での10〜30時間と比較して、用量投与の4時間以内に0.6ng/mLに達した(表6参照)。従って、鎮痛濃度は、経皮フェンタニルパッチと比較して本発明の組成物の適用後に、より迅速に達するであろうし、これはフェンタニルが投与されなければならない手術前の時間を短縮する。加えて、平均血漿フェンタニル濃度は、本発明の組成物の投与後92時間について0.6ng/mLより上のままであり、一方、平均血漿フェンタニル濃度は、経皮パッチでの18〜62時間についてこの濃度より上のままのみであった。6匹のオスのビーグル犬に50μg/hの経皮フェンタニルパッチを投与することにより、約1.6ng/mLの平均濃度を有する適用の24〜72時間後に比較的一定な血漿フェンタニル濃度をもたらした。比較すると、本発明の組成物の平均血漿フェンタニル濃度は、1.23ng/mLの平均濃度で、24時間にて1.50ng/mLから72時間にて0.725ng/mLまで徐々に下降した(表6参照)。
本発明の組成物の薬物動態パラメータ結果(表7参照)は、フェンタニル経費パッチの最近の研究(平均Cmaxおよびtmax値は、それぞれ2.1ng/mLおよび22時間であった)と類似した。その研究において、適用されたパッチのサイズは、体重の約3μg/hr/kgの適切な目標用量で、イヌの体重に依存した。
有害な副作用または適用部位皮膚反応はこの研究中に何も観察されなかった。
要約すれば、イヌの背側位置に投与された本発明の方法は、経口的または非経口的に投与されたフェンタニルの主な制限を克服することができ、加えて、フェンタニル経皮パッチの多くの制限を克服することができた。
実施例4
軟組織または整形外科手術前にイヌに投与した1回経皮用量として投与したフェンタニル組成物の集団薬物動態
本発明の方法の研究は、外科手術を受けるイヌに本発明の組成物の経皮投与を決定するために行うことができる。登録されたイヌは、本発明の組成物または陽性対照皮下オキシモルホン(Opana(登録商標)Injection,Endo Pharmaceuticals Inc.,Chadds Ford,Pennsylvania)のいずれかを与えるために無作為化できる。本発明の組成物を与えるために無作為化したイヌの処置群に、整形外科または軟組織の手術のいずれかの2〜4時間前に、背側肩甲骨領域に2.7mg/kg(54μL/kg)のフェンタニルの1回量を投与できる。陽性対照のために無作為化したイヌの処置群は、手術の2〜4時間前の抜管時に、および抜管の6〜90時間ごとに、オキシモルホンを皮下投与することができる。オキシモルホンHClは、約0.1〜0.2mg/kgのイヌにおけるFDA認可用量で投与することができる。
血漿フェンタニル濃度は、本発明の組成物の1回量の投与後、215匹のイヌから決定することができる。集団薬物動態モデルを、一次吸収および吸収遅延時間最適フィティングデータを用いて1−コンパートメントオープン薬物動態モデルを用いて、得られたデータにフィッティングした。試験した臨床共変量は、本発明の組成物の薬物動態に対して有意な効果を有した。最終モデルは集団薬物動態を適切に示し、健康なイヌにおける実験室薬物動態研究と一致する結果を与えた。
最終モデル集団平均パラメータ推定値を用いて(表8参照)、0時から無限大(AUC0−∞)までのフェンタニル血漿濃度−時間曲線下の推定面積は、「典型的な」対象について220ng・h/mLであった。加えて、典型的な臨床患者について0から4日(96時間)の推定平均濃度は、イヌにおいて鎮痛性である可能性が高い、1.32ng/mLであった。推定最大血漿濃度(Cmax)およびCmax発生(tmax)は、それぞれ、典型的な対象について1.83ng/mLおよび13.6時間であった。最終的に、推定終末半減期(t1/2)は、典型的な対象について74.0時間であった。長いt1/2は、静脈内投与したフェンタニルが約0.76〜6.0時間のt1/2を有するので、本発明の組成物の以前に認められたフリップ−フロップ(flip−flop)薬物動態と一致する。
表8:集団薬物動態モデルパラメータ推定値(n=215対象)。値は推定として表される(標準誤差)
血漿フェンタニル濃度は、イヌにおいて術後疼痛が鎮痛すると考えられる範囲の日にわたって維持した。本発明の組成物が投与された典型的なイヌ患者において0.5ng/mLに到達する時間は、イヌにおいてフェンタニル経皮パッチ適用を用いた10〜30時間と比較して、1.60時間であった。6匹のビーグル犬において50μg/hのフェンタニル経皮パッチを投与することにより、適用の24〜72時間後に約1.6ng/mLの平均血漿フェンタニル濃度が得られた。比較すると、本研究における組成物を用いた血漿フェンタニルの観測された平均濃度は、適用の24〜72時間後に1.82ng/mLであった。
要約すれば、イヌへの背側投与の後、一次吸収および吸収遅延時間最適を用いた1−コンパートメントオープン薬物動態モデルは、対象臨床集団において2.7mg/kg用量のフェンタニルにて本発明の組成物の1回投与の薬物動態を示した。本発明の組成物が投与されたイヌについて、観測された血漿フェンタニル濃度および予測された血漿フェンタニル濃度は、イヌにおいて術後疼痛が鎮痛されると考えられる範囲の日にわたって維持された。
実施例5
イヌにおける術後疼痛の抑制についての経皮フェンタニル組成物およびオキソモルホンの比較
塩酸オキシモルホンと比較した本発明の組成物の安全性および有効性を、4日の期間にわたる術後疼痛の抑制について検査することができる。イヌを、手術の2〜4時間前に適用した本発明の組成物の1回経皮用量(2.7mg/kg[1.2mg/lb])、または手術の2〜4時間前に皮下投与した塩酸オキシモルホン(0.1〜0.2mg/kg[0.22−0.44mg/lb])に無作為に割り当てることができ、次いで手術の90時間後まで続けて6時間ごとに投与した。本発明の組成物を与えるために無作為化したイヌに、手術の2〜4時間前に背側肩甲骨領域に対して2.7mg/kg(1.2mg/lb[約50μL/kg])の1回量を投与することができる。疼痛は、グラスゴー(Glasgow)改変疼痛スケールを用いて盲目にされた観察者により評価でき、また治療の失敗についての事前基準は、疼痛スコア≧8(20最大スコア)または離脱を要する有害事象であった。
本実施例において、多様な種の502匹のイヌを登録して、本発明の組成物(N=249)とオキシモルホン(N=253)とにおよそ均等に分けた。イヌを軟組織手術(N=250)と整形外科手術(N=251)とに分けた。本発明の組成物で処置した4匹のイヌは疼痛抑制(痛覚スコア≧8)の欠如に起因して離脱し、1匹はフェンタニルに無関係な死に起因して離脱した。8匹のオキシモルホンで処置したイヌは疼痛制限の欠如に起因して離脱し、18匹は深刻な有害事象に起因して離脱し、1匹はオキシモルホンに無関係な死に起因して離脱した。
有効性を決定する主要変数は、本発明の組成物(すなわち、フェンタニルを含む組成物)およびオキシモルホンの処置失敗率の非劣勢評価であった。フェンタニル−オキシモルホン処置失敗率の間の差異のマージンの上限は、オキシモルホンに対して非劣性と考えられるフェンタニルについて15%以下であった。フェンタニルの中断率は2.01%であり、オキシモルホンの中断率は、−8.7%の平均差で10.76%であった(表9参照)。片側の95%信頼上限は、15%の事前選択されたマージン差以下である、−6.2%であった。従って、処置失敗率に基づいて、本発明の組成物(すなわち、フェンタニルを含む組成物)の投与はオキシモルホンに対して非劣性であった。
2次非劣性分析を、各疼痛評価期間での疼痛強度スコアに対して、フェンタニルとオキシモルホンとを比較した。疼痛スコアは、両方の群において抜管の2時間後に最高であり、平均値は、フェンタニルで処置したイヌにおいて2.32であり、オキシモルホンで処置したイヌにおいて2.64であった。疼痛スコアは4日の研究期間にわたって下降し、4日までに、平均疼痛スコアは、フェンタニルで処置したイヌにおける0.830から、オキシモルホンで処置したイヌにおける1.28の範囲に及んだ。1時間の疼痛評価以外の全ての時点において、本発明の組成物は、オキシモルホンに対して非劣性であった。
追加の2次非劣性分析を、SPIDに対してフェンタニルとオキシモルホンとを比較した(表10参照)。疼痛強度スコアの平均合計は、それぞれ、フェンタニルで処置したイヌについて18.636であり、オキシモルホンで処置したイヌについて21.662であった。フェンタニル−オキシモルホン間のSPIDについての上限は、オキシモルホンに対して非劣性であると考えられるフェンタニルについての26%以下であった。フェンタニル−オキシモルホン間のSPIDについての上限は、26%以下ではない、0.432であった。従って、SPIDに基づくと、本発明の組成物は、オキシモルホンに対して非劣性であった。
表10:全術後期間にわたる疼痛強度スコア概要統計の合計、SPID、および差異についての片側95%信頼上限
計画した疼痛評価の前に鎮静スコア≧2を有するイヌは、過剰な鎮静が、改変グラスゴー複合的疼痛スケールの使用による鎮痛を適切に評価する疼痛評価者の能力を妨げるので、疼痛についてスコア化しなかった。いずれの処置群においても平均鎮静スコア≧2には決してならなかった。鎮静スコアは抜管1時間後の最初の疼痛評価時において最高であり、平均鎮静スコアは、それぞれ、フェンタニルで処置したイヌおよびオキシモルホンで処置したイヌにおいて、1.67および1.98であった。抜管6時間後までに、両方の群における平均鎮痛スコアは、1(軽度)未満、すなわちフェンタニルおよびオキシモルホンについてそれぞれ0.81および0.97であった。抜管1時間後において、49%のフェンタニルで処置したイヌは鎮静スコア≧2を有し、12時間までにこれは7%のイヌにまで落ちた。24時間までに、3%のフェンタニルで処置したイヌは、鎮静スコア≧2を有し、どれも48時間を超えなかった。鎮静スコア≧2を有するオキシモルホンで処置したイヌの数は、フェンタニルと比較して各評価期間で多かった。抜管1時間後において、70%のオキシモルホンで処置したイヌは、鎮静スコア≧2を有し、11%のイヌは12時間において適度に落ち着いたままであった。24時間までに、7%のオキシモルホンで処置したイヌは鎮静スコア≧2を有し、3%〜0.9%のイヌは残りの4日の研究期間を通して適度に落ち着いたままであった。
全体としては、オキシモルホンに関連する有害事象は、数および重症度の両方において、本発明の組成物と比較して大きかった。44匹(17.7%)のフェンタニルで処置したイヌにおいて報告された合計56件の個々の有害事象があった。すなわち、46件は軽度として分類され、9件が中程度として分類され、1件が重度として分類された(表11参照)。オキシモルホンで処置したイヌにおいて、84匹(33.7%)のイヌにおいて報告された合計228件の有害事象があった。すなわち、125件は軽度として分類され、75件が中程度として分類され、28件が重度として分類された。フェンタニルで処置したイヌにおける有害事象の発生は、手術の最初の48時間以内のいくつかの有害事象の発生より僅かに多く、時間とともに希少になった(表12参照)。最初の48時間にわたって、最も頻度の高い有害事象は、0.4〜2%の範囲で下痢であり、0〜1.6%の範囲で嘔吐であり、1.5〜4.4%の範囲で低体温であり、0〜0.8%の範囲で食欲不振であった。オキシモルホンで処置したイヌにおける有害事象の発生は、フェンタニルと比較していくつかのカテゴリーの中でより高く、4日の研究期間を通して続いた(表13参照)。4日の研究期間にわたって、嘔吐は1.6〜8.7%の範囲に及び、低体温は1.4〜9.5%の範囲に及んだ。本研究において2件の死があり、フェンタニルで処置した群およびオキシモルホンで処置した群において各1件であった。両方の場合において、これらの死は、治験薬物処置または対照薬物処置と無関係であると判断された。
表11:有害事象重症度カテゴリーによる各処置群における有害事象の数
表12:経皮フェンタニル溶液を用いて処置したイヌにおける研究日による有害事象
表13:オキシモルホンを用いて処置したイヌにおける研究日による有害事象
要約すると、手術の2〜4時間に局所適用した本発明の組成物の1回量は、イヌにおける整形外科手術および軟組織手術に伴う疼痛の抑制について安全かつ有効であり、少なくとも96時間は鎮痛を提供する。本発明の組成物の1回先制用量により提供された持続的定常状態フェンタニル送達は、より少ない有害事象を有する96時間にわたるオキシモルホンの反復注入と比較して、等鎮痛(equianalgesia)を提供する。
実施例6
イヌに対する複数回治療用量で投与したフェンタニル組成物の1回経皮投与の安全範囲
本発明の組成物の複数回用量での適用後の安全性範囲を検査できる。24匹の健康な目的をもって繁殖させた実験用雑種ハウンド犬(12匹のオス/12匹のメス)に、腹側皮膚へ本発明の組成物の1回プラセボ用量または増加用量を投与し、14日間観測した。組成物の用量を、イヌの体重に基づいて2.6(1×)、7.8(3×)、または13.0(5×)mg/kgで投与した。
血漿フェンタニル濃度は用量とともに増加し、各群において14日間を通して投与後30分の最初のサンプリング時点で検出可能(≧0.025ng/mL)であった(表14参照)。平均Cmaxは、1×、3×および5×群において、それぞれ、3.18、7.27および13.5ng/mLであり、AUC0−LLOQは、323、824および1272ng・時間/mLであった(表15参照)。3つ全ての用量群における半減期は約70時間であった。AUC0−LLOQにより測定したようにフェンタニルに対する曝露は用量依存的であった。
表14:処置群(n=6/群)による血漿フェンタニル濃度(ng/mL)の概要統計
表15:処置群(n=6/群)による薬物動態パラメータ
鎮静はプラセボ群において観測されなかった。僅かな鎮静の少しの発生が、1×群において投与の4時間以内に開始して24時間にわたって観察された(表16参照)。3×および5×群において、鎮静は第5日および第4日それぞれを通して投与の1時間以内に証明された(表16参照)。中程度から重度の鎮静は、第3日まで、用量投与の2.5時間後から観察された3×および5×群に限定された。3×および5×群におけるイヌは、過剰鎮静に起因して維持水量を消費してないと決定されたため、第0日および第1日に40〜60mL/kg/日の皮下流体(Normosol−R,Hospira,Inc.,Lake Forest,IL)を補充された。
表16:用量群(n=6/群)対時間による平均鎮静スコア
*
平均食料消費は、投与後全ての処置した用量群において減少した。食料消費において最も大きな減少は、5×群においてであり、第0日から第2日まで何も食料が消費されなかった。食料消費は、1×群において第4日および3×群と5×群において第6日に処置前の量に戻った。平均体重は、7日間にわたって1×群において僅かに減少し、3×群および5×群において僅かに大きい程度まで減少した。14日の研究期間にわたって、プラセボ1×、3×および5×群において、それぞれ、4、1、4および3件の嘔吐事象があった。14日の研究期間にわたって、プラセボ1×、3×および5×群において、それぞれ、暗色便または赤色便および下痢または粘性便を含む異常便の発生が1、6、21および25件あった。1×群における異常便は第1日から第3日までに限定されたが、3×群および5×群において、異常便は第4日から開始し研究の最後に至るまで、より散発的であった。唾液分泌は、第4日および第5日に1×群において1匹のイヌに見られ、第2日および第3日に3×群において1匹のイヌに見られ、第10日の1件の観測を含む、第2日から第3日に5×群において3匹のイヌに見られた。流涙は、第2日に3×群において1匹のイヌに見られた。縮瞳は、第0日および第1日に5×群において4匹のイヌにおいてみられた。
平均心拍数は、本発明の組成物の用量投与の2日後について用量依存的に減少し、第3日から第14日までにプラセボ群におけるものと類似する平均心拍数に戻った。心拍数における最大減少は、5×用量群において観測され、ブラセボ対照に対して約50%の減少であった。平均呼吸速度は、心拍数よりもより変化しやすかったが、平均呼吸速度は、用量投与後の2〜3日間については用量依存的に僅かに減少したようにみえた。しかしながら、心拍数とは異なり、平均呼吸速度の最大減少は、約30%での3×および5×用量群の両方において類似した。平均直腸体温は用量依存的に減少し、第3日または第4日にわたって用量投与後1時間から全ての処置した用量群におけるプラセボ対照より低いままであった。体温の最大降下は、1×、3×および5×群それぞれにおいて、第1日に約2、3および4℃であった。
拡散両側性眼球レンズ混濁は、1匹の3×イヌおよび3匹の5×イヌにおいて第3日に担当獣医により報告された。経過観察眼科検査は、担当獣医により第7日に行われ、眼球混濁は、1匹の3×群のイヌに限定された。有資格の獣医眼科医は第8日のイヌを検査するために調べ、第7日の所見は薬理的散瞳後に生体顕微鏡検査法により確認された。第13日まで、レンズ混濁は、獣医眼科医により確認されたように一匹の3×イヌにおいて観察されなかった。
第3日および第13日に記録されたECGから不整脈または変化した心係数はなかった。全ての平均血液学結果および血清化学結果は、正常な範囲内のままであった(表17、表18、および表19を参照)。3×および5×群の両方における第3日の平均血中尿素窒素(BUN)は、それぞれ、14.2および13.2mg/dLまで増加したが、正常な範囲内のままであった。第14日まで、3×群および5×群の両方におけるBUNは、第−7日の値に類似した。フェンタル処置に関連すると考えられる部検所見または病理組織学敵所見はなかった。皮膚適用部位での異常に関する全体的証拠または微視的証拠はなかった。本研究の最初の7日にわたってレンズ混濁を観察した3×および5×群における4匹のイヌの瞳についての異常に関する全体的証拠または微視的証拠はなかった。
表17:用量群(n=6/群)対時間による平均赤血球および血小板パラメータ
表18:用量群(n=6/群)対時間による平均白血球パラメータ
表19:用量群(n=6/群)対時間による平均血清化学パラメータ
1×群における有害反応は一時的であり、軽度の鎮静の低い発生、減少した食物摂取、中程度の体重減少、および心拍数と直腸温の最低減少を含む。中程度から重度の鎮静は、3×および5×群で出現し、これは食物摂取および水摂取の用量制限減少に関連し、適用後の最初の2日は維持流体交換を必要とする。高い用量群でまた観測されたものは、異常便および一時的なレンズ混濁の発生の増加であった。鎮静は、オピオイドの薬理学的効果の予測された延長である。軽度鎮静は、48時間にわたる1×用量の群中の一部のイヌにおいて、ならびに3×および5×群においてより大きな程度および持続で、散発的に観測された。これらの観測は、非経口投与された場合に血漿フェンタニル濃度とともに鎮静が増加するという以前の報告と一致する。鎮静は、フェンタニル経皮パッチ適用後、並びに推奨用量で使用された場合に、イヌにおいて報告されている。本研究において使用された本発明の組成物の高用量(すなわち、3×および5×)において、鎮静は2日間にわたって維持流体交換を要求する食物と水の摂取の欠如をもたらすという点において、用量を制限する有害事象であった。これは、嘔吐率がプラセボで処置したイヌおよびフェンタニルで処置したイヌにおいて違いがなかったので、吐き気の結果とは異なった。5×群において、食物摂取は、7日間にわたって基準値に徐々に戻しながら、48時間にわたって完全に除去した。食物摂取は平均体重の中程度の減少が生じることを十分に抑制した。食欲不振は、フェンタニル投与で説明されており、食物摂取の減少は、鎮静に依存しない、薬物の直接的な結果であり得る。外科的な標準治療とは、イヌを手術前に典型的に絶食させ、手術を必要とする疾患に応じて術後の時間にわたって、与える食物の量を徐々に増加させることである。フェンタニルにより誘導される減少した食物摂取は、この結果の理解により生じるこれらの術後治療診療と重なり得る。
第3日および第7日に1匹の3×および3匹の5×群のイヌで観測された可逆的両側レンズ混濁は、長期にわたる中程度から重度の鎮静により生じる角膜乾燥に起因するようであった。イヌで報告されていないが、この変化は、麻酔されまたは何らかの理由で角膜乾燥を有したラットで観測されている。このような場合、後部縫合線に沿ったレンズ繊維は、水に何らかの影響を与えかつ最終的にレンズに影響を与える角膜における僅かな浸透圧の変化が原因で膨張する。これらの変化は、それらが可逆的であるので、白内障ではない。しかしながら、この変化は、角膜乾燥を誘発する状態が検査を受けてないままである場合は、不可逆的になり得る。従って、本研究における3×および5×用量に関連する延長された鎮静は、一時的な角膜およびレンズの乾燥を生じやすく、次いで可逆的なレンズ白濁を生じると考えられた。これらの結果はまた、レンズにおける組織病理学的所見の欠如により支持される。1×群において観測されていないが、慎重な臨床診療では、正常な眼瞼反射が麻酔後に確立されるまでの時間に瞳の潤滑を行うことである。
低換気および呼吸抑制は、本研究において用量を制限する有害反応ではなかった。この有害事象は、急性死をもたらしたパッチにより送達されるフェンタニルに関連するヒトにおいて説明されている。結果として、経皮パッチは、手術と組み合わせて用いることが禁忌であり、オピオイドに対する事前耐性を必要とする。これは、明らかにイヌにおいて本発明の組成物の投与を伴うケースではない。呼吸速度の減少は、最初の48時間にわたる3×および5×群における約30%の速度の最大減少に、一時的かつ僅かに用量依存的であった。これらの観測は更に、注入およびパッチ経皮送達の後のイヌにおけるフェンタニルデータにより支持される。約80ng/mLと同じくらい高い血漿フェンタニル濃度は、自発呼吸下のイヌにおいて約11呼吸/分(50%)のみまで呼吸速度を減少させる。加えて、呼吸速度、酸素消費量、血液ガス(pCO2、pO2、およびpH)は、濃度が100ng/ml以上である場合、更に変化しない。48時間にわたってパッチにより送達されるように約2ng/mLの持続的定常状態血漿フェンタニル濃度は、血液ガス分析により確認された術後性低換気を引き起こさない。まとめると、イヌにおいて本発明の組成物を使用するために、事前オピオイド耐性の必要性または麻酔での禁忌を支持するデータはない。
平均心拍数は、本発明の組成物の投与後に用量依存的に減少した。減少した心拍数は、非経口およびパッチ送達によるフェンタニルの両方で報告されている。15ng/mLの血漿フェンタニル濃度において、心拍数は、約35鼓動/分(50%)まで減少し、更に血漿フェンタニル濃度が15ng/mLを超える場合は、心拍数の減少は観測されなかった。5×群における平均Cmaxは13.5ng/mLであり、心拍数における最大下降は投与適用後の24時間で約50%であった。事前報告と一致して、本発明において心臓指標に対する変化も、不整脈についても何も観測されなかった。
減少した直腸温がイヌについてのオピオイド文献で一般用語として説明されているが、時間にわたって意識のあるイヌにおける体温転帰は、フェンタニル投与後に報告されていない。オピオイドは、減少した体温をもたらす視床下部体温調節機構の均衡点を変化させるようにみえる。本研究における平均直腸体温は、用量依存的に減少した。1×用量において、体温の一時的な減少は、投与後24時間で2℃の最大下降で観測された。麻酔イヌにおいて、平均直腸温は、手術の間中、5μg/kg/分CRIのフェンタニルが投与された場合、乳腺切除において60分、0.9℃に減少し、注入速度は、1×用量と重なり、プラセボと同様であった。
変色便(黒色または赤色)、下痢または粘性便を含む異常便の出現は、14日の研究期間にわたって本発明の組成物の用量と共に増加した。1×群における異常便は不定期であり、第1日から第3日に限定され、一方、3×および5×群においては、異常便は第4日の開始から研究の終わりまで、より散発的であった。オピオイドは、小腸分泌物を減少させ、さらに結腸推進蠕動波を減少させるので、その結果として減少した乾燥便をもたらすことが報告されている。3×および5×群における本研究の後半での緩い粘液便または黒色便の出現は、この減少に関連し得るか、または著しい食物減少後、摂取に戻ることに関連し得る。
全ての平均臨床病理学的結果は、3×および5×群の両方において第3日に平均BUNが基準値から僅かに増加したものの、本研究を通して正常な範囲内のままであった。クレアチニンは、BUNと並行した増加を示さず、腎臓内には肉眼的病変または組織学的病変はなかった。これは、水分補給が必要な鎮静に続発する減少された水摂取に関連する可能性が高かった。同時に存在する尿素サンプルは、事前腎臓関連性を確認するために回収しなかった。代わりの可能性は、抗利尿ホルモン(ADH)の放出に続発する減少された尿素排出量である。フェンタニルの高用量は、イヌにおける抗利尿特性を有し、ADHの放出に関連する可能性があることが示されている。
全ての異常な健康観測は、第14日の部検前に完全に解決され、特定された組織学的異常性は何もなかった。これらのデータは、1×用量の安全使用を支持し、オピオイドの逆転がない場合に5×用量までの過量の結果を説明する。
要約すると、実施例6からの結果は、提案用量の2.6mg/kg(50μL/kg)を1×、3×および5×に投与した場合、健康な実験用イヌにおいて本発明の組成物の投与についての安全性範囲を実証する。
実施例7
イヌに投与した過量のフェンタニル組成物の麻酔効果のナロキソン反転
イヌにおける過量の本発明の組成物の麻酔副作用に対する筋肉内(IM)ナロキソン反転レジメンを検査できる。24匹の健康な目的を持って繁殖させた実験用ビーグル犬(12匹のオス/12匹のメス)に、本発明の組成物の1回13mg/kg用量(5×過量)を投与し、2つの反転レジメン処置群(40μg/kg(8匹のイヌ)または160μg/kgのIMナロキソン(16匹のイヌ))に無作為化した。全てのイヌに、腹側へ約5×(13.0mg/kg)の1回過量の本発明の組成物(2.7mg/kgの使用用量)を投与した。本発明の組成物の投与の16時間後に、イヌにIMナロキソン投与を8時間ごとにそれらの処置割当に従って投与した。全てのイヌはナロキソン投与の前に鎮静であった。
血漿ナロキソンおよびフェンタニル濃度を表20に示す。血漿フェンタニル濃度は、全てのイヌにおいて投与前でLLOQ以下であり、平均フェンタニル濃度は、本発明の組成物の5×過量(13mg/kg)の投与後、16〜24時間を通して両方に群にわたって、4.60〜6.53ng/mlの範囲に及んだ。血漿ナロキソン濃度はまた、全てのイヌにおいてIMナロキソン用量投与の前でLLOQ以下であった。5回目のナロキソン用量投与(20.083時間)の5分後、血漿ナロキソン濃度は、40および160μg/kgのIMナロキソン用量群(群1および群2)のそれぞれにおいて、10.4±0.238ng/mlおよび34.7±1.75ng/mlであった。24時間において、平均血漿ナロキソン濃度は、両方の群において前のピークから実質的に下降し、その既知の作用の短期持続および急速クリアランスと一致した。ナロキソン投与の発作または他の有害事象はあらゆるイヌにおいて観測されなかった。
表20:IMナロキソン処置群による血漿フェンタニルおよびナロキソン濃度
未知の理由について、6匹のイヌを本発明の組成物の投与の時点(0時間)で鎮静とし観測した。本発明の組成物の5×過量(13mg/kg)の後、全てのイヌをナロキソン投与の前に(すなわち、14、15、15.917時間で)鎮静した。1時間間隔での40または160μg/kgのIMナロキソンのいずれかの投与は、鎮静イヌの割合を減少させた。群1および2について16〜24時間の鎮静イヌの平均割合は、それぞれ、0.698および0.438であった。加えて、全てのイヌは、両方の群において16〜24時間の間、少なくとも1回は鎮静されていると決定された。鎮静イヌの平均割合は、26時間までに、両群についての1時間ごとのIMナロキソン投与の中断後に1.0へ戻った。
本発明の組成物の鎮静作用の反転に対するナロキソンの全体的効果は、40および160μg/kgのIMナロキソン反転レジメン(両方のレジメンについてP<0.001)の個々の効果であったので、統計的に有意(P<0.001)であった。分析はまた、鎮静反応(すなわちσ
2文字>0が<0.05であった確率)において顕著な対象間の変動があったことを示した。更に、160μg/kgのIMナロキソン用量の麻酔反転影響は、40μg/kgのIMナロキソン用量についてのものよりも顕著に大きかった(P=0.0132)。160μg/kgのIMナロキソン用量で鎮静されている対象の残りは、40μg/kgのIMナロキソン用量のそれの0.353(95%CI[0.0327−0.674])倍であった。β
Fと
との間の高い相関度(−1.00に近い)に起因して、β
Fの値は11.5の初期推定値に一定化した。β
Fの一定値が1〜30で変化することは、異なる妥当な一定値のβ
Fに対してロバストであることを示している仮説試験結果(尤度の正確な数値積分はβ
F>30の値に達することができなかった)に何も影響を与えなかった。
両群にわたる直腸体温は、本発明の組成物の投与前の38.4±0.0976℃から、処置の後(すなわち、14、15、および15.917時間の時点で)の35.1±0.0884℃へ下降した。IMナロキソン反転の間(すなわち、16〜24時間)、両群にわたる体温は、37.7±0.0578℃であった。26および28時間まで、体温は、全体平均の35.9±0.0976℃でナロキソン投与前の値近くまで戻った。ナロキソン処置期間(μN)の間の平均体温は、フェンタニルのみの期間(μF)(P<0.001)の間の平均よりも高い、2.19±0.0638℃であった。加えて、ナロキソン処置期間の間、体温は、40μg/kgのIMナロキソン用量群(P<0.001)におけるよりも高い160μg/kgIMナロキソン用量群において0.412±0.123℃であり、これは、IMナロキソンの高用量の大きな麻酔反転効果を示している。
両群にわたる心拍数は、本発明の組成物の投与前の101±3.31bpmから、本組成物の投与後(すなわち、14、15、および15.917時間の時点で)、64.2±3.04bpmまで下降した。IMナロキソン反転の間(すなわち、16〜24時間)、両群にわたるHRは、101±2.41bpmの値を有する投与前HR測定値まで戻り、次いで、ナロキソン投与の終了後の全体平均の83.1±3.31bpmまで再度下降した。ナロキソン処置期間(μN)に間の平均HRは、フェンタニルのみの期間(μF)(P<0.001)の間の平均よりも高い、28.9±1.78bpmであった。最終的に、ナロキソン処置期間の間、HRは、40μg/kgのIMナロキソン用量群(P=0.0258)におけるより160μg/kgのIMナロキソン用量群において高い9.97±5.11bpmであり、これはさらに、160μg/kgのIMナロキソン用量のより大きな麻酔反転効果を示している。
要約すると、過量の本発明の組成物の麻酔副作用は、40μg/kgまたは160μg/kgのIMナロキソンのいずれかの1時間ごとの投与によって、安全かつ有効に反転され得るが、160μg/kgレジメンがより効果的である。
実施例8
イヌに対するフェンタニル組成物の経皮適用後の浸透促進剤のインビトロ効果およびインビボ効果
本発明の組成物中の浸透促進剤のインビトロおよびインビボ効果は評価できる。インビトロ効果は、浸透促進剤を含むフェンタニル組成物および浸透促進剤を含まないフェンタニル組成物を死体皮膚へ適用することによって評価できる。その後、皮膚にわたるフェンタニル変動の効果を評価できる。この実験において、サリチル酸オクチルは、浸透促進剤として使用することができる。インビボ効果は、浸透促進剤を含むフェンタニル組成物の1回量および浸透促進剤を含まないフェンタニル組成物の1回量を背側位置においてイヌへ投与することによって評価できる。その後、イヌにおけるフェンタニルの全身性血液レベル暴露を評価できる。この実験において、サリチル酸オクチルは浸透促進剤として使用できる。
インビボ実験において、群1は、サリチル酸オクチルに加えて2.6mg/kg(52μL/kg)の濃度でフェンタニルを含む組成物の1回経皮用量を投与した12匹の成体オスビーグル犬を含んだ。第2群(群2)は、サリチル酸オクチルを含まないが2.6mg/kg(52μL/kg)の濃度でフェンタニルを含む組成物の1回経皮用量を投与した12匹の成体オスビーグル犬を含んだ。
血漿フェンタニル濃度決定のための血液サンプルを、投与前から投与後21日まで全ての対象から回収した。デコンボリューション分析を、時間と共にフェンタニルの全身性吸収を決定するために行い、投与後21日に全身的に吸収されたフェンタニルの累計量を、2つの処置群間で統計的に比較した。
2つの処置群についての全身性フェンタニル吸収速度の概要統計を表21に示す。平均全身性吸収速度は、投与後96時間を通して各サンプリング時点で群2より群1において、より大きく、これは、経皮フェンタニル溶液投与後の最初の96時間、フェンタニル吸収速度に対するサリチル酸オクチルの実質的効果を示している。投与の96時間後、全身性フェンタニル吸収速度は両方の処置群において類似していた。
表21:処置群および時間による全身性フェンタニル吸収速度(mg/kg/時間)概要統計
2つの処置群についての累積全身性フェンタニル吸収の概要統計を表22に示す。投与後48時間での累積全身性吸収は、群1および群2において、それぞれ、0.413±0.168(平均±SD)および0.193±0.0943mg/kgであった。同様に、投与後96時間での累積全身性吸収は、群1および群2において、それぞれ、0.706±0.272および0.342±0.126mg/kgであった。従って、投与後48時間および96時間で、2回にわたって同じ量のフェンタニルは、サリチル酸オクチルを含まない経皮フェンタニル溶液を投与されたイヌよりも、サリチル酸オクチルを含有する経皮フェンタニル溶液を投与されたイヌにおいて全身的に吸収された。投与後21日(504時間)において、累積全身性吸収は、1.41±0.550mg/kgおよび1.01±0.260mg/kgのそれぞれにおいて群2よりも群1において1.40倍高かった。この累積全身性吸収における差異は統計的に有意であった(P<0.05)。
表22:処置群および時間による累積全身フェンタニル吸収(mg/kg)概要統計
要約すれば、平均全身性フェンタニル吸収速度は、サリチル酸オクチルを含まない経皮フェンタニル溶液を与えられたイヌよりも、サリチル酸オクチルを含む経皮フェンタニル溶液を与えられたイヌにおいて投与後96時間を通してより大きかった。同様に、投与後21日で、全身的に吸収されたフェンタニルの平均累積量は、サリチル酸オクチルを含む経皮フェンタニル溶液を与えられたイヌにおいて1.40倍高かった(P<0.05)。したがって、浸透促進剤のサリチル酸オクチルは、イヌにおける背側肩甲骨間領域への経皮フェンタニル溶液の1回局所投与の後、全身性フェンタニル吸収の速度と範囲の両方を増加させた。
実施例9
イヌに対するフェンタニル組成物の経皮投与後の適用部位から拭かれた局所的残留フェンタニルの量に対する湿潤効果
本発明の組成物の経皮投与後のイヌにおける適用部位の湿潤効果は評価できる。この評価は、本発明の組成物の1回投与の後にイヌの局所的適用部位から拭かれた残留フェンタニルの量を測定することで実施できる。イヌは、10の処置群(1群あたり4匹のイヌ)のうち1つに無作為化できる。全てのイヌの適用部位(背側、肩甲骨間領域)は、用量投与の前にフェンタニルが存在しないことを確認するために、第1日に綿手袋で拭くことができる。5つの処置群(すなわち、群1W−5W)におけるイヌは、綿手袋で拭く約5分前に、(噴霧ボトルを介して)蒸留水で濡らした適用部位を有すことができる。他の5つの処置群(すなわち、群1D−5D)におけるイヌは、綿手袋で拭く前に、乾燥したままの適用部位を有すことができる。本発明の組成物の約2.7mg/kg(約54μL/kg)の1回局所投与は、第0日に全てのイヌに対して背側肩甲骨間領域に適用することができる。第2の綿手袋拭き(湿式または乾式)を、処置無作為化に従って投与後の各イヌについて行うことができる。群1Dおよび群1Wのイヌは、用量適用後の8時間で第0日に拭くことができる。群2D/W、3D/W、4D/W、および5D/Wにおけるイヌは、用量投与後24、48、72、および120時間にそれぞれ拭くことができる。綿手袋は、有効な分析方法を用いてフェンタニル量について測定することができる。体重について正規化した、手袋当たりの残留フェンタニル量の概要統計は、時間および湿式/乾式適用部位により計算できる。正規化した残留フェンタニル量に対する適用部位の湿潤効果もまた、分析できる。
本実施例において、40匹のビーグル犬を、10の処置群のうち1つに無作為化した(1群当たり4匹のイヌ)。表23は各処置群についての綿手袋上で検出された残留フェンタニル量(体重のμg/kg)を示している。フェンタニルは、用量投与前(−1日)の綿手袋サンプルのいずれかにおいて測定可能ではなかった(すなわち、測定値が定量化の下限以下であった)。投与後8時間において、綿手袋から回収された平均残留フェンタニルの量は、それぞれ乾式および湿式適用部位で体重の41.0および35.4μg/kgであった。名目2.7mg/kg経皮フェンタニル溶液用量のパーセントとして、平均残留フェンタニル量は、それぞれ1.52%および1.31%であった。投与後72時間において、平均綿手袋残留量は、それぞれ乾式および湿式適用部位について適用用量の0.31%および0.35%であり、投与後120時間で、平均残留量は、それぞれ<0.28%および0.19%であった。
表23:名目拭き時間および乾式または湿式適用部位による綿手袋上で検出された残留フェンタニル量(μg/kg体重)
線形固定効果モデル分析は、残留フェンタニル量に対する乾式対湿式適用部位の統計的に有意な主効果を何も示さず(p=0.4568)、また乾式/湿式適用部位と投与後の時間の間で統計的に有意な相関効果を何も示さなかった(p=0.9485)。従って、適用部位を濡らすことは、イヌに対して経皮フェンタニル溶液を1回投与した後、綿手袋で適用部位から拭いた局所残留フェンタニル量に対する効果を何も有さなかったようである。
本研究中に如何なる動物も除去されず、如何なる死もなかった。本研究中に7件の有害事象が起きた。全ての有害事象は、本研究の第1日または第2日に生じ、嘔吐または嘔吐と食欲不振を含んだ。有害事象は、軽度として分類され、フェンタニル処置に関連する可能性がある。医療介入は必要とされなかった。