本発明の第1の態様によると、軸受構成により第2の構造物に回転可能に接続される第1の構造物を備える計測装置が提供され、軸受構成は、第2の構造物に対して第1の構造物が回転するときに摺動接触する部分を備える第1の摩擦軸受を少なくとも含み、装置は、第1の摩擦軸受上の荷重を低減する少なくとも1つの磁石を備えることを特徴とする。
したがって、本発明は計測装置を提供し、ここでは、2つの構造物を接続させる第1の摩擦軸受によって担持される機械的荷重が、1つまたは複数の磁石が包含されることにより低減される。言い換えると、第1の構造物と第2の構造物との間で伝達される荷重の少なくとも一部を担持するために、磁力(非接触力)が第1の摩擦軸受に平行に提供される。このようにして、第1の摩擦軸受によって担持される荷重は、少なくとも1つの磁石が存在しない場合に担持される荷重を基準として、低減される。
摩擦軸受は、定義上、互いに物理的に接触しならが摺動する部分を含む。本発明に従い、少なくとも1つの磁石を使用して、このような摩擦軸受によって担持される荷重を低減することには、多くの利点があることが分かっている。第1に、本発明は、2つの構造物が相対運動することに関して非常に正確に制御を行うことが必要であるような計測学的用途において摩擦軸受を使用することを試みる場合にみられる問題を克服することが分かっている。詳細には、本発明者らは、そのような計測装置において摩擦軸受を介して比較的高い荷重を伝達することにより望ましくない計測学的エラーが発生する可能性があることを発見した。例えば、高荷重が摩擦軸受を通過するとき、軸受部品の間で滑らかな摺動運動が起こる前に克服する必要がある初期摩擦量または開始時の摩擦量(静止摩擦)が存在する。この作用により、摩擦軸受によって接続される構造物の相対運動を正確に制御する能力が低下することが分かっており、それにより、軸受によって連結される2つの構造物の相対位置に動的不確実性および静的不確実性が組み込まれることが分かっている。本発明に従い、機械的荷重の一部の第1の摩擦軸受を低減することにより、上記のような運動制御の問題が低減され、それにより、計測装置を使用することにより得られる測定精度が向上することが分かっている。
また、本発明の計測装置内で起こる摩擦が低減されることにより、第1の摩擦軸受の接触部分の経時的な機械的摩耗量が低減される。したがって、本発明の軸受組立体の計測学的寿命は、上記のような磁石(複数可)が含まれない軸受組立体を基準として、延長され、および/または、一定の稼働寿命を有する軸受を提供するために必要となる材料の硬度が低減され得る。加えて、克服すべき摩擦が低減されることにより、第1の構造物および第2の構造物を互いに対して回転させる場合になされるべき仕事が低減される。装置がこのような回転を駆動させるために電気モータを含む場合、モータのサイズも縮小され、電力消費も低減される。また、このようなモータの電力消費が低減されることにより、モータが発生させる熱の量も低減され、それにより、熱により誘発されるあらゆる計測学的エフェクトが低減される(例えば、熱膨張による)。
第1の摩擦軸受上の荷重を低減するのに、磁気引力または磁気反発が使用され得る。有利には、少なくとも1つの磁石は、第1の摩擦軸受上の荷重を低減する反発構成となるように構成される複数の磁石を備える。例えば、上記の少なくとも1つの磁石は、1つまたは複数の第1の磁石と、1つまたは複数の第2の磁石とを備えることができる。1つまたは複数の第1の磁石は第1の構造物に付着され得るか、または、第1の構造物の一部として提供され得る。1つまたは複数の第2の磁石は第2の構造物に付着され得るか、または、第2の構造物の一部として提供され得る。第1および第2の磁石は、互いに反発するように構成され得、それにより、第1の摩擦軸受上の荷重を低減させる。言い換えると、第1および第2の磁石の同じ極が、必要となる磁気反発力を発生させるために対向するように配置され得る。
磁気反発の代わりに、上記の少なくとも1つの磁石は、磁気引力により第1の摩擦軸受上の荷重を低減することができる。例えば、1つまたは複数の磁石が第1の構造物および第2の構造物のうちの少なくとも1つに付着され得るか、または、第1の構造物および第2の構造物のうちの少なくとも1つの一部として形成され得る。1つまたは複数の磁石は磁気物質(例えば、鉄鋼)に取り付けられ得るか、または、別の磁石の反対の極に取り付けられ得る。したがって、1つまたは複数の磁石は、第1の構造物と第2の構造物との間に、第1の摩擦軸受上の荷重を低減させるような磁気引力を加えるように構成され得る。
計測装置の少なくとも1つの磁石は少なくとも1つの電磁石を含むことができる。有利には、少なくとも1つの磁石は少なくとも1つの永久磁石を含む。永久磁石は、電力供給を必要としないという理由で好適である。好適には、磁石は希土類磁石を含む。
有利には、別の部分に摺動接触する、第1の摩擦軸受の複数の部分のうちの1つがボールを備える。好都合には、第1の摩擦軸受の別の部分が1つまたは複数の軸受面を備える。有利には、第1の摩擦軸受の複数の部分が、1つまたは複数の軸受面に摺動接触するボールを備える。第1の構造物または第2の構造物がボールを備えることができ、第1の構造物または第2の構造物のもう一方が1つまたは複数の軸受面を備えることができる。これらの1つまたは複数の軸受面は、例えば、ボールの表面上に乗る複数の軸受面を備えることができ、それにより、ボールの中心が軸受面に対して実質的に不変な位置に留まるようになる。このようにして、軸受面およびボールは正確な枢動点を画定する。したがって、第1の構造物は、ボールの中心の周りに第2の構造物に対して回転することができる。
第1の構造物と第2の構造物を連結させる軸受構成は枢動ジョイントの形態をとることができ、これは、第1の摩擦軸受によって画定される枢動点の周りに第1および第2の構造物が自由に相対的に回転または枢動するのを可能にする。有利には、軸受構成は、第1の構造物が第1の軸の周りに第2の構造物に対して回転するのを可能にする。言い換えると、(使用時の)第2の構造物に対する第1の構造物の運動が、軸受組立体により、第1の軸の周りの回転のみに制限され得る。
有利には、この軸受構成は1つまたは複数の別の軸受を備えることができる。1つまたは複数の別の軸受は、第1の摩擦軸受と共に、第1の構造物が第2の構造物に対して回転し得る第1の軸を画定することができる。好適には、第1の摩擦軸受および1つまたは複数の別の軸受は第1の軸上に位置する。1つまたは複数の別の軸受は、任意のタイプの1つまたは複数の軸受を備えることができる。好適には、1つまたは複数の別の軸受は第2の摩擦軸受を備える。有利には、軸受組立体のすべての軸受が摩擦軸受である。摩擦軸受を使用して第1の構造物と第2の構造物との間の運動を拘束することにより、回転軸を正確に画定することが可能となる。この軸受組立体は、例えば、運動学的に、第1の構造物と第2の構造物との間の5自由度の運動を拘束することができ、第1の構造物は第1の軸の周りに第2の構造物に対して回転することのみ可能となる。
当業者には種々の摩擦軸受デザインが知られている。例えば、参照によりその内容が本明細書に組み込まれる(例えば、特許文献2参照)に記載される種々の摩擦軸受を参照する。有利には、第1および第2の摩擦軸受は、各々が、1つまたは複数の相補的な軸受面に接触するボールを備える。第1および第2の摩擦軸受のボールは等しい直径を有し得るか、または、(例えば、異なる荷重を担持するために異なる摩擦軸受が配置される場合は)異なる直径を有してもよい。
有利には、第1の構造物は、第2のセットの軸受面から離間される第1のセットの軸受面を備える。好都合には、第2の構造物は、第1のボールおよび第2のボールを有するシャフトを備え、第1および第2のボールはシャフトの長手方向軸に沿って離間される。このような配置構成では、第1の摩擦軸受が第1のボールおよび第1のセットの軸受面によって提供され得、第2の摩擦軸受が第2のボールおよび第2のセットの軸受面によって提供され得る。また、各ボールとそれぞれの軸受面との間で維持される接触を確保するために、付勢力または予荷重が提供されてもよい。第2の構造物は、第1の軸の方向に沿って第2の構造物のシャフトから(例えば、軸受組立体を超えて)延在するスピンドルを備えることができる。スピンドルは、別の回転ジョイントおよび/または測定プローブなどの、別の装置を担持することができる。
上述した配置構成の第1のセットの軸受面は第1の接触平面に提供されてよく、第2のセットの軸受面は第2の接触平面に提供されてよい。第1の接触平面および第2の接触平面は実質的に平行であってよい。第1および/または第2の接触平面はシャフトの長手方向軸に対して実質的に垂直であってよい。第1および第2の摩擦軸受のうちの少なくとも1つは、シャフトの長手方向軸に平行な方向においてその接触平面から外れるように弾性変位可能であってよく、例えば、軸受は(例えば、特許文献2参照)に記載されるタイプの構造物を有することができる。このようにして、第1および第2の摩擦軸受が、実質的にシャフトの長手方向軸の周りに第1および第2の構造物が相対的に回転することを画定する。したがって、軸受組立体が、上で言及した第1の回転軸を画定する。
有利には、計測装置が使用されるときに、第1の軸は実質的に垂直方向に位置合わせされる。言い換えると、第1の軸は、好適には、重力の作用方向である垂直方向に実質的に平行である。このような例では、第1の構造物が物体(例えば、CMMのクイル)に固定される場合、第1の摩擦軸受は、好適には、第2の構造物の重量と第2の構造物によって担持される任意の物体の重量とによる荷重(少なくとも1つの磁石の作用によって低減される)を担持する。したがって、このような例では、少なくとも1つの磁石は、重力に逆らって第2の構造物を保持することにより生じる第1の摩擦軸受上の荷重を低減するとみなされ得る。少なくとも1つの磁石は、第1の摩擦軸受によって担持される荷重を低減するが、第1の摩擦軸受によって担持される荷重を完全には回避しないことに留意されたい。好適には、第1の摩擦軸受を介して伝達される荷重は、摺動接触している第1の摩擦軸受の複数の部分が第1の構造物と第2の構造物との間の必要となる相対運動を確実に画定するのに十分なままである。
また、本発明の用途が任意特定の摩擦軸受構成のみに限定されないことに留意されたい。摩擦軸受上の荷重を低減するという概念は任意の摩擦軸受構成に適用され得る。
有利には、装置は少なくとも1つの機械的止めを含む。第1の摩擦軸受の摺動接触する部分は、好都合には、機械的衝撃を受ける場合に外れるように構成される。好適には、第1の摩擦軸受の摺動接触する部分が外れているときに許容される変位量は、少なくとも1つの機械的止めによって制限される。第1の構造物および/または第2の構造物は少なくとも1つの機械的止めを含むことができる。
好適には、少なくとも1つの機械的止めは、第1の摩擦軸受の通常使用時に摺動接触する部分が、機械的衝撃を受けて外れる場合に装置の任意の他の表面に衝撃を及ぼすのを防止するように、構成される。言い換えると、1つまたは複数の機械的止めは、好適には、回転運動を画定する第1の摩擦軸受の複数の部分が機械的衝撃または何らかの予期しない衝撃により破損するのを防止する。これにより、機械的衝撃を受けた後に摩擦軸受の部品を取り替える必要なくさらには計測装置を再較正する必要さえもなく、装置が継続して動作することが可能となる。装置が耐え得る機械的衝撃の大きさは、当然、装置の正確な構成によって決定されるが、摩擦軸受の摺動接触する表面を介して衝撃力を担持しなければならないような装置と比較して、上記のように第1の摩擦軸受の複数の部分が外れることができることにより、計測装置の弾性が大幅に向上することが分かっている。
有利には、第1の摩擦軸受の複数の部分は、機械的衝撃により外された後に再係合されるように(すなわち、再び摺動接触するように)構成される。有利には、第1の摩擦軸受によって担持される定格荷重(すなわち、少なくとも1つの磁石の効果によって低減される荷重)は、第1の摩擦軸受の複数の部分を摺動接触状態に戻すように付勢するように作用する。機械的止めが提供される場合、機械的止めは、さらに、外れているときに起こる第1の摩擦軸受の複数の部分の間での相対的変位を、付勢力によりこれらの部分を再係合させるのに十分なくらいに小さくさせるようにも作用することができる。この形式の再係合を補助するために、好適には、第1の摩擦軸受上の荷重を低減するための磁気反発構成が実装される。磁気反発を使用することが好適である理由は、磁気反発を使用することにより、少なくとも1つの磁石が別の磁石または磁気面に「付着」せず、したがって再係合を妨げないからである。
この計測装置は手動で作動されてよく、または、動力化されてもよい。この装置は、有利には、第2の構造物に対して第1の構造物を運動(例えば、回転)させるための少なくとも1つのモータを含む。計測装置はまた、第2の構造物に対する第1の構造物の回転を測定するためのデバイスを含むことができる。例えば、この装置は、好適には、第2の構造物に対する第1の構造物の回転を測定するための少なくとも1つの回転エンコーダを含む。また、第2の構造物に対する第1の構造物の運動を制御するために、位置制御装置が提供されてもよい。その場合、位置制御装置は、少なくとも1つのエンコーダからのフィードバックを使用して少なくとも1つのモータを制御することができる。このような位置制御装置は、第1および第2の構造物の所望の相対運動を提供するように構成され得、ここでの制御は、少なくとも1つの磁石を含むことにより第1の摩擦軸受を通過する荷重が低減されることにより、改善される。
上述の計測装置は多くの異なる計測学的用途に使用され得る。例えば、非デカルト座標系位置決め装置(例えば、六脚)のための枢動ジョイントが本発明の計測装置を備えることができる。また、ロボットアームまたは関節式プローブヘッドなどの関節式計測装置が本発明の計測装置を備えることができる。好適には、本発明の計測装置は、装置の計測学的ループまたは測定ループの一部を形成し、その計測学的ループまたは測定ループの中で使用される。例えば、物体上の位置を測定するために使用される装置の部分が本計測装置を備えることができる。
有利には、本発明の計測装置は関節式プローブヘッドの一部として提供される。このような関節式プローブヘッドは、好適には、座標位置決め装置のクイルに取り付けるための基部を備える。関節式プローブヘッドはまた、好都合には、測定プローブのための支持体を備えることができる。その場合、関節式プローブヘッドは、支持体が1つまたは複数の回転軸の周りに基部に対して回転するのを可能にするための1つまたは複数の関節式ジョイントを備えることができる。好適には、関節式プローブヘッドは、支持体が相互に直交する2つの回転軸の周りに基部に対して回転するのを可能にするための、2つの関節式ジョイントを備える。有利には、関節式ジョイントのうちの少なくとも1つが上述した計測装置を含む。
有利には、関節式プローブヘッドは、基部と支持体とを接続させる第1および第2の関節式リストまたは関節式ジョイントを少なくとも備え、それにより、支持体が少なくとも第1および第2の回転軸の周りに基部に対して回転するのを可能にする。好適には、第1の関節式ジョイントは本発明の上述した計測装置を備える。例えば、計測装置の第1の構造物は基部の一部を形成し得るか、または、基部に取り付けられ得る。この場合、第2の構造物は支持体を備えることができるか、または、任意選択で別の関節式ジョイントを介して、支持体に接続され得る。この場合、計測装置の軸受組立体が基部と支持体との間に第1の回転軸を画定することができる。有利には、運動の第1の回転軸は実質的に垂直であり、その結果、軸受組立体の第1の摩擦軸受によって担持される荷重(少なくとも1つの磁石によって低減される荷重)は、第2の構造物、付随する支持体、および支持体に取り付けられる任意の測定プローブの重量により発生する。
上述した関節式プローブヘッドは手動で作動されてよく、および/または、動力化されてもよい。プローブヘッドは、測定プローブが、プラットフォームを基準として公称的に再現可能に割り出しされる複数の方向を採用するのを可能にするための、インデクシングプローブ(indexing probe)ヘッドを備えることができる。言い換えると、プローブヘッドは、測定プローブを複数の公称的な位置に割り出しして保持するのを可能にする。従来、測定プローブはいわゆる連続プローブヘッド(continuous probe head)または能動プローブヘッドによりプラットフォームに取り付けられる。従来、連続プローブヘッドにより、測定プローブが事前定義された角度範囲内で任意の向きに自由に回転または配置されることが可能となる。好適には、連続プローブヘッドは、測定プローブの向きを測定するための少なくとも1つのエンコーダを備える。測定プローブの向きは測定時に保持または固定され得るか、または、測定プローブは測定プロセス中に再方向付けされ得る(例えば、走査または移動され得る)。
関節式プローブヘッドは任意のタイプの測定プローブを担持することができる。測定プローブは接触プローブであってよい(例えば、ワークピース接触スタイラスを有する)。別法として、測定プローブは非接触プローブ(例えば、光学プローブ、容量プローブ、電磁誘導プローブなど)であってもよい。測定プローブおよび関節式プローブヘッドは、解除可能に互いに取り付けられ得る分離したユニットを備えることができる。別法として、測定プローブは関節式プローブヘッド内の支持体に一体化されてもよい。
本発明の第2の態様によると、第1の摩擦軸受を少なくとも備える計測装置が提供され、ここでは、この装置は、第1の摩擦軸受によって担持される荷重を低減するための少なくとも1つの磁石を備える。当業者であれば、摩擦軸受という用語が、部品間で摺動接触する軸受に関連することを認識するであろう。摩擦軸受という用語は、そのような摺動接触していない、空気軸受またはローラ軸受などを含まない。この装置はまた、上述した好適な特徴のいずれも含むことができる。
本発明の第3の態様によると、第1の摩擦軸受を少なくとも備える計測装置が提供され、ここでは、装置は、第1の摩擦軸受によって担持される荷重を低減するための非接触型の力発生手段を備える。この非接触型の力発生手段は、例えば、1つまたは複数の磁石、静電気構成などを備えることができる。この装置はまた、上述した好適な特徴のいずれも含むことができる。
本発明の第4の態様によると、軸受構成により第2の構造物に回転可能に接続される第1の構造物を備える計測装置が提供され、軸受構成が、第1の構造物が第2の構造物に対して回転するときに摺動接触する複数の部分を含む第1の摩擦軸受を少なくとも含み、この装置は、少なくとも1つの機械的止めを備えることを特徴とし、ここでは、第1の摩擦軸受の摺動接触する部分は機械的衝撃を受けるときに外されるように構成され、ここでは、そのように外れているときに許容される変位量が少なくとも1つの機械的止めによって制限される。有利には、装置は、第1の摩擦軸受上の荷重を低減する少なくとも1つの磁石を備える。この装置はまた、上述した好適な特徴のいずれも含むことができる。