JP2014238044A - シリンダライナ - Google Patents

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Abstract

【課題】ピストン摺動時のフリクションを全体的に低減することができ、良好な燃費を確保できるとともに、商品性を向上させることができるシリンダライナを提供する。
【解決手段】シリンダライナ1は、ピストン3の摺動時における上死点付近の第1皮膜部位1aと、下死点付近の第3皮膜部位1cと、これらの間の第2皮膜部位1bとを有している。第1皮膜部位1a及び第3皮膜部位1cの皮膜は、第2皮膜部位1bの皮膜よりも熱伝導率が高くなるように構成されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、内燃機関のシリンダブロック内に設けられ、内部をピストンが摺動するシリンダライナに関する。
従来、シリンダライナとして特許文献1に記載されたものが知られている。このシリンダライナは、鋳鉄製の内燃機関用のものであり、アルミニウム合金製のシリンダブロック内に配置されている。このシリンダライナでは、酸化処理により、酸化層が外周面に形成されており、さらに、タフトライド処理により、この酸化層の上に窒化物層が形成されている。これは、シリンダライナが鋳鉄製である関係上、その周囲を取り囲むように、アルミニウム合金でシリンダブロックを鋳造した場合、鋳鉄とアルミニウム合金との熱収縮率の差異に起因して、両者の接合部において隙間が発生するおそれがあるので、これを解消するためである。
特開平5−31566号公報
近年、内燃機関においては、フリクション及び機械損失を低減し、燃費を改善することを目的として、低粘度の潤滑油が用いられている。上記特許文献1のシリンダライナによれば、このような低粘度の潤滑油を用いた場合、ピストンの摺動速度がその上死点及び下死点で値0になる関係上、上死点及び下死点付近において、潤滑領域が境界潤滑領域(後述する図3参照)になってしまうことにより、フリクションが急増するおそれがある。その場合には、機械損失の増大を招くことで、燃費が悪化してしまう。これを回避するために、より高粘度の潤滑油を用いた場合には、上死点及び下死点付近におけるフリクションを低下させることができるものの、上死点及び下死点付近以外の部位でのフリクションが増大することで、シリンダライナ全体としてのフリクションが増大し、結果的に、機械損失の増大を招いてしまう。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ピストン摺動時のフリクションを全体的に低減することができ、良好な燃費を確保できるとともに、商品性を向上させることができるシリンダライナを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に係るシリンダライナ1は、内燃機関Eのシリンダブロック2内に外周面が接した状態で設けられ、ピストン3が内部を摺動するとともに、ピストン3の摺動時における上死点付近の所定の第1部位(第1皮膜部位1a)と下死点付近の所定の第2部位(第3皮膜部位1c)とが、第1部位と第2部位との間の中間部位(第2皮膜部位1b)よりも熱伝導率が高くなるように構成されていることを特徴とする。
このシリンダライナによれば、ピストンの摺動時における上死点付近の所定の第1部位と下死点付近の所定の第2部位とが、第1部位と第2部位との間の中間部位よりも熱伝導率が高くなるように構成されているので、これらの第1部位及び第2部位は、中間部位と比べて、シリンダブロック内の冷却水によって効率よく冷却されることになる。それにより、ピストンの摺動時、第1部位及び第2部位付近における潤滑油の粘度を、中間部位における潤滑油の粘度よりも高めることができるので、低粘度の潤滑油を用いた場合でも、中間部位における潤滑領域を流体潤滑領域に保持しながら、第1部位及び第2部位付近における潤滑領域も流体潤滑領域やこれに近い混合潤滑領域(後述する図3のH2<H≦H3の領域)に保持することが可能になる。それにより、シリンダライナ全体で、ピストン摺動時のフリクションを低減することができ、機械損失を低減することができることによって、内燃機関の燃料消費量を低減することができる。その結果、商品性を向上させることができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のシリンダライナ1において、第1部位は、ピストン3が上死点付近で摺動したときにピストン3のピストンリング3a〜3cが摺動する所定の第1範囲(摺動範囲Lb)を含み、第2部位は、ピストン3が下死点付近で摺動したときにピストン3のピストンリング3a〜3cが摺動する所定の第2範囲(摺動範囲Ld)を含み、第1範囲は、第2範囲よりも大きく設定されていることを特徴とする。
一般的な内燃機関の場合、ピストンが上死点付近で摺動するときに、混合気の圧縮や燃焼が実行されるので、ピストンが上死点付近の範囲で摺動したときの方が、ピストンが下死点付近の範囲で摺動したときよりも、ピストンリングからシリンダライナに作用する荷重が大きくなる。そのため、第1部位付近の方が、第2部位付近と比べて、潤滑領域が境界潤滑領域に相当する範囲が広くなり、フリクションが増大する範囲が広くなる。これに対して、このシリンダライナによれば、ピストンが上死点付近で摺動したときにピストンのピストンリングが摺動する所定の第1範囲が、ピストンが下死点付近で摺動したときにピストンのピストンリングが摺動する所定の第2範囲よりも大きく設定されているので、フリクションの増大する範囲が広くなるのに対応して、その分、シリンダブロック内の冷却水によって効率よく冷却される範囲を適切に広くすることができる。その結果、第1部位におけるフリクションを、第2部位におけるフリクションと同等に適切に低減することができ、商品性をさらに向上させることができる。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のシリンダライナ1において、第1部位(第1皮膜部位1a)、第2部位(第3皮膜部位1c)及び中間部位(第2皮膜部位1b)の外周面には、皮膜が形成されており、第1部位及び第2部位の皮膜は、中間部位の皮膜よりも熱伝導率が高くなるように構成されていることを特徴とする。
このシリンダライナによれば、第1部位、第2部位及び中間部位の外周面には、皮膜が形成されており、第1部位及び第2部位の皮膜は、中間部位の皮膜よりも熱伝導率が高くなるように構成されているので、1つのシリンダライナ部材の表面に、熱伝導率が互いに異なる2種類の皮膜を形成することによって、請求項1又は2に係る発明の作用効果を得ることができる。
請求項4に係る発明は、請求項1又は2に記載のシリンダライナにおいて、第1部位及び第2部位は、中間部位よりも熱伝導率の高い材質で構成されていることを特徴とする。
このシリンダライナによれば、第1部位及び第2部位は、中間部位よりも熱伝導率の高い材質で構成されているので、熱伝導率が互いに異なる2種類の原材料を組み合わせて用いることによって、請求項1又は2に係る発明の作用効果を得ることができる。
請求項5に係る発明は、請求項1又は2に記載のシリンダライナにおいて、第1部位、第2部位及び中間部位の外表面には、多数の凸部がシリンダブロックに接するように形成されており、第1部位及び第2部位の外表面の凸部は、単位面積当たりの数が中間部位の外表面の凸部よりも多くなるように設けられていることを特徴とする。
このシリンダライナによれば、第1部位、第2部位及び中間部位の外表面には、多数の凸部がシリンダブロックに接するように形成されており、第1部位及び第2部位の外表面の凸部は、単位面積当たりの数が中間部位の外表面の凸部よりも多くなるように設けられているので、シリンダライナの外表面に形成する凸部の単位面積当たりの数を2段階に変えることによって、請求項1又は2に係る発明の作用効果を得ることができる。
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載のシリンダライナ1において、第1部位(第1皮膜部位1a)は、第2部位(第3皮膜部位1c)よりも熱伝導率が高くなるように構成されていることを特徴とする。
前述したように、一般的な内燃機関の場合、ピストンリングからシリンダライナに作用する荷重が大きくなることで、第1部位付近の方が、第2部位付近と比べて、フリクションが増大することになる。これに対して、このシリンダライナによれば、第1部位は、第2部位よりも熱伝導率が高くなるように構成されているので、第2部位と比べてフリクションがより増大する第1部位を、シリンダブロック内の冷却水によって第2部位よりも効率よく冷却することができる。その結果、第1部位におけるフリクションを、第2部位におけるフリクションと同等に適切に低減することができ、商品性をさらに向上させることができる。
本発明の一実施形態に係るシリンダライナ及びその周辺の構成を示す断面図である。 シリンダライナを示す斜視図である。 ストライベック曲線を示す図である。 ピストンが上死点と下死点との間で摺動したときのフリクションの測定結果の一例を示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るシリンダライナについて説明する。図1に示すように、このシリンダライナ1は、直列タイプの内燃機関(以下「エンジン」という)Eに適用されたものであり、このエンジンEは図示しない車両に動力源として搭載されている。
このシリンダライナ1は、円筒状のものであり、シリンダブロック2内に設けられているとともに、その外周面で、シリンダブロック2の内孔に接合している。また、シリンダライナ1は、鋳鉄製で円筒状の基部1e(図2参照)を有しており、エンジンEのピストン3がこの基部1eの内部を上下方向に摺動するように構成されている。
このピストン3は、上側から下側に向かって順に配置された3つのピストンリング3a,3b,3cを有している。エンジンEの運転中、ピストン3は、ピストンリング3a〜3cを介して、シリンダライナ1の内孔1fに摺接しながら、図1に実線で示す上死点と図1に2点鎖線で示す下死点との間で摺動する。
このシリンダブロック2は、アルミニウム合金製のものであり、このシリンダブロック2の場合、シリンダライナ1を先に製作した後、型枠や中子をシリンダライナ1の周辺に配置し、溶融したアルミニウム合金を型枠内に流し込むことによって製作されている。それにより、シリンダブロック2とシリンダライナ1は、互いに隙間なく接合している。さらに、シリンダブロック2内には、エンジンEを冷却するための冷却水が流れる冷却水路2aが形成されている。
また、図2に示すように、シリンダライナ1は、上側から下側に向かって、基部1eの外周面に薄い皮膜を形成した4つの皮膜部位1a〜1dになっている。この第1皮膜部位1a(第1部位)は、金の薄膜(例えば0.5μ〜数μ程度の膜)を、シリンダライナ1の基部1eの上側部の外周面に形成したものである。
また、第2皮膜部位1b(中間部位)は、セラミックの薄膜を、第1皮膜部位1aの下側の基部1eの外周面に、第1皮膜部位1aの薄膜と同じ厚さで形成したものであり、このセラミックは、金よりも熱伝導率が低い特性を有している。それにより、第1皮膜部位1aの方が、第2皮膜部位1bよりも熱伝導率が高くなるように構成されている。
さらに、第3皮膜部位1c(第2部位)は、第2皮膜部位1bの下側の基部1eの外周面に、第1皮膜部位1aと同じ厚さで同じ材質(すなわち金)の薄膜を形成したものであり、そのため、第1皮膜部位1aと同じ熱伝導率を有するように構成されている。
一方、第4皮膜部位1dは、第2皮膜部位1bと同じ材質(すなわちセラミック)の薄膜を、第3皮膜部位1cの下側の基部1eの外周面に、第1皮膜部位1aの薄膜と同じ厚さで形成したものである。そのため、第4皮膜部位1dは、第2皮膜部位1bと同じ熱伝導率を有するように構成されている。
以上のように、第1〜第4皮膜部位1a〜1dにおいては、第1皮膜部位1a及び第3皮膜部位1cは、第2皮膜部位1b及び第4皮膜部位1dよりも高い熱伝導率を有するように構成されている。また、第1皮膜部位1aの幅(シリンダライナ1の軸線方向の長さ)Laは、図示しないクランクシャフトが後述するクランク角CA3〜CA4の範囲で回転するのに伴って、ピストン3が上死点とその若干下側の所定位置との間の範囲(以下「TDC付近範囲」という)で往復動したときに、ピストン3のピストンリング3a〜3cが摺動する摺動範囲Lbよりも若干大きなサイズに設定されている。
この摺動範囲Lb(第1範囲)は、ピストン3がTDC付近範囲の上限すなわち上死点にあるときのピストンリング3aの上端と、ピストン3がTDC付近範囲の下限にあるときのピストンリング3cの下端とによって規定される範囲に相当する。以上の構成により、ピストンリング3a〜3cは、ピストン3がTDC付近範囲内で往復動したときに、シリンダライナ1の第1皮膜部位1aの内孔1fに常に摺接した状態に保持される。
さらに、第3皮膜部位1cの幅Lcは、クランクシャフトが後述するクランク角CA1〜CA2の範囲で回転するのに伴って、ピストン3が下死点とその若干上側の所定位置との間の範囲(以下「BDC付近範囲」という)で往復動したときに、3つのピストンリング3a〜3cが摺動する摺動範囲Ldよりも若干大きなサイズに設定されている。
この摺動範囲Ld(第2範囲)は、ピストン3が下死点にあるときのピストンリング3cの下端と、ピストン3がBDC付近範囲の下限にあるときのピストンリング3aの上端とによって規定される範囲に相当する。以上の構成により、ピストンリング3a〜3cは、ピストン3がBDC付近範囲で往復動したときに、シリンダライナ1の第3皮膜部位1cの内孔1fに常に摺接した状態に保持される。
次に、図3及び図4を参照しながら、第1〜第4皮膜部位1a〜1dが以上のように構成されている理由について説明する。潤滑油によって潤滑される2つの部材間(すなわち、本実施形態の場合には、ピストン3とシリンダライナ1の間)の摩擦係数μは、ハーシー数Hが変化するのに伴って、図3のストライベック曲線に示すように変化する。このハーシー数Hは、潤滑油の粘度ηと部材の移動速度vの積を荷重(面圧)Fで割った値η・v/Fであり、同図のH1〜H3は、H1<H2<H3が成立するハーシー数Hの所定値である。
同図に示すように、H3<Hの領域が流体潤滑領域になっており、この流体潤滑領域では、ハーシー数Hが小さいほど、摩擦係数μが小さくなる。すなわち、潤滑油の粘度ηが低いほど、又は移動速度vが低いほど、摩擦係数μが小さくなることが判る。
また、H1≦H≦H3の領域が混合潤滑領域になっており、この混合潤滑領域の場合、H2<H≦H3の領域では、ハーシー数Hが小さいほど、摩擦係数μが小さくなるものの、H1≦H≦H2の領域では、ハーシー数Hが小さいほど、摩擦係数μが急激に大きくなる。すなわち、H1≦H≦H2の領域では、潤滑油の粘度ηが低いほど、又は移動速度vが低いほど、摩擦係数μが急激に大きくなることが判る。
さらに、H<H1の領域が境界潤滑領域になっており、この境界潤滑領域では、ハーシー数Hが小さいほど、摩擦係数μが大きくなる。すなわち、潤滑油の粘度ηが低いほど、又は移動速度vが低いほど、摩擦係数μが大きくなることが判る。
一方、本実施形態のエンジンEの場合、移動速度vに相当するピストン3の摺動速度が上死点及び下死点において一時的に値0になる関係上、ハーシー数Hが上死点及び下死点付近で急激に小さくなり、潤滑領域が混合潤滑領域から境界潤滑領域に移行することで、摩擦係数μが急激に大きくなることになる。
これに対して、本実施形態のシリンダライナ1の場合、第1皮膜部位1a及び第3皮膜部位1cの熱伝導率が、第2皮膜部位1b及び第4皮膜部位1dよりも高く設定されているので、エンジン運転中、シリンダブロック2の冷却水路2a内の冷却水によって、第1皮膜部位1a及び第3皮膜部位の方が、第2皮膜部位1b及び第4皮膜部位1dよりも効率よく冷却されることなる。
その結果、第1皮膜部位1a及び第3皮膜部位1cにおける潤滑油の粘度は、第2皮膜部位1b及び第4皮膜部位1dにおける潤滑油の粘度よりも高くなり、ハーシー数Hがより大きくなるので、第1皮膜部位1a及び第3皮膜部位1cにおける潤滑領域を流体潤滑領域にすることができる。その結果、第1皮膜部位1a及び第3皮膜部位1cにおけるフリクションを低減できることになる。
さらに、エンジンEにおいて、混合気の燃焼を行うことなく、動力源によって、エンジンEのクランクシャフトを回転させ、ピストン3を摺動させたときのフリクションとクランク角CAとの関係は、図4に示すようになる。同図に示すように、ピストン3が摺動する際のフリクションは、上死点付近の方が下死点付近よりも大きくなる。これは、ピストン3が上死点付近で上死点に向かって摺動する場合、ピストン3がシリンダ内のガスを圧縮することになるので、ピストンリング3a〜3cからシリンダライナ1に作用する荷重が、下死点に向かって摺動する場合よりも大きくなることによる。
これに加えて、ピストン3が前述したTDC付近範囲内で摺動する際、混合気が燃焼行程で燃焼した場合には、ピストンリング3a〜3cからシリンダライナ1に作用する荷重がさらに大きくなり、それに起因して、上死点付近における境界潤滑領域は、下死点付近よりも広い範囲になる。以上の理由により、前述した摺動範囲Lbは、前述した摺動範囲Ldよりも大きく設定されている。より具体的には、摺動範囲Lbは、クランクシャフトが図4の所定のクランク角CA3〜CA4に相当する範囲で回転したときの、ピストンリング3a〜3cの摺動範囲に設定されている。この場合、CA3〜TDCの範囲と、TDC〜CA4の範囲は同じ値(例えば、クランク角20°)に設定されている。
また、摺動範囲Ldは、クランクシャフトが図4の所定のクランク角CA1〜CA2に相当する範囲で回転したときの、ピストンリング3a〜3cの摺動範囲に設定されている。この場合、CA1〜TDCの範囲と、TDC〜CA2の範囲は同じ値(例えば、クランク角10°)に設定されている。
以上のように、本実施形態のシリンダライナ1によれば、第1皮膜部位1a及び第3皮膜部位1cが、第2皮膜部位1bよりも熱伝導率が高くなるように構成されていることで、第1皮膜部位1a及び第3皮膜部位1cが、第2皮膜部位1bと比べて、シリンダブロック2内の冷却水によって効率よく冷却されることになる。それにより、ピストン3の摺動時、第1皮膜部位1a及び第3皮膜部位1cにおける潤滑油の粘度を、第2皮膜部位1bにおける潤滑油の粘度よりも高めることができるので、低粘度の潤滑油を用いた場合でも、第2皮膜部位1bにおける潤滑領域を流体潤滑領域に保持しながら、第1皮膜部位1a及び第3皮膜部位1cにおける潤滑領域も流体潤滑領域や図3のH2<H≦H3の領域に保持することが可能になる。それにより、シリンダライナ1全体で、ピストン3摺動時のフリクションを低減することができ、機械損失を低減することができることで、エンジンEの燃料消費量を低減することができる。その結果、商品性を向上させることができる。
これに加えて、前述したように、ピストン3がTDC付近範囲内で摺動するときには、シリンダ内のガスの圧縮動作や、混合気の燃焼に起因して、ピストンリング3a〜3cからシリンダライナ1に作用する荷重は、ピストン3がBDC付近範囲内で摺動するときよりも大きくなり、それに起因して、上死点付近における境界潤滑領域は、下死点付近よりも広い範囲になる。これに対して、本実施形態のシリンダライナ1によれば、前述した摺動範囲Lbは、前述した摺動範囲Ldよりも大きく設定されているので、フリクションの増大する範囲が広くなるのに対応して、その分、シリンダブロック2内の冷却水によって効率よく冷却される範囲を適切に広くすることができる。その結果、第1皮膜部位1aにおけるフリクションを、第3皮膜部位1cにおけるフリクションと同等に適切に低減することができ、商品性をさらに向上させることができる。
なお、実施形態は、第1皮膜部位1a及び第3皮膜部位1cの皮膜を同じ熱伝導率の金属膜(すなわち金の薄膜)で構成した例であるが、第1皮膜部位1aの皮膜を第3皮膜部位1cよりも高い熱伝導率の皮膜で構成してもよい。このように構成した場合、シリンダライナ1の上死点付近における潤滑油を、下死点付近の潤滑油よりもさらに効率よく冷却することができる。それにより、例えば、前述した摺動範囲Lbと前述した摺動範囲Ldを同じ値にした場合でも、第1皮膜部位1aにおけるフリクションを、第3皮膜部位1cにおけるフリクションと同等に低減することができ、商品性をさらに向上させることができる。
また、実施形態は、第1部位としての第1皮膜部位1a及び第2部位としての第3皮膜部位1cにおける皮膜を、中間部位としての第2皮膜部位1bの皮膜よりも熱伝導率が高くなるように構成した例であるが、本発明の第1部位、第2部位及び中間部位の構成はこれに限らず、第1部位及び第2部位が中間部位よりも熱伝導率が高くなる構成であればよい。
例えば、第1部位及び第2部位の材質を中間部位よりも熱伝導率の高い材質で構成してもよく、その場合には、実施形態のシリンダライナ1において、3つの部位1a〜1cに皮膜を形成することなく、2つの部位1a,1cの基部1eの材質を、その中間の部位1bの基部1eの材質よりも熱伝導率の高いもので構成すればよい。
また、例えば、多数の凸部を、第1部位、第2部位及び中間部位の外表面にシリンダブロックに接するように形成するとともに、第1部位及び第2部位の外表面の凸部を、単位面積当たりの数が中間部位の外表面の凸部よりも多くなるように構成してもよい。すなわち、実施形態のシリンダライナ1において、3つの部位1a〜1cの外周面に皮膜を形成することなく、多数の凸部を形成し、これらの凸部を介して、シリンダブロック2の内周面に接しているように構成するとともに、2つの部位1a,1cの凸部の単位面積当たりの数を、その中間の部位1bの凸部よりも多くなるように構成してもよい。
さらに、実施形態は、第1部位の皮膜として金の薄膜を、第2部位の皮膜としてセラミックの薄膜をそれぞれ用いた例であるが、本発明の第1部位及び第2部位の皮膜はこれらに限らず、第1部位の皮膜の熱伝導率が第2部位の皮膜よりも高くなるものであればよい。例えば、第1部位の皮膜として、銀や銅の薄膜、グラファイト及び銀ペーストなどを用いてもよく、第2部位の皮膜として鋳鉄の酸化膜を用いてもよい。なお、シリンダライナを先に製作した後、その周囲を型枠及び中子で囲み、シリンダブロック用の溶融した金属を流し込むことで、シリンダブロックを製作する場合には、シリンダブロック用の金属の融点よりも、皮膜の材質の融点が高いものを用いればよい。さらに、皮膜を第1部位及び第2部位に形成する手法は、蒸着、コーティング及び塗布などの皮膜を形成できるものであればよい。
また、実施形態は、本発明のシリンダライナ1を車両用の内燃機関Eに適用した例であるが、本発明のシリンダライナは、これに限らず、船舶用の内燃機関や、他の産業機器用の内燃機関にも適用可能である。
E 内燃機関
1 シリンダライナ
1a 第1皮膜部位(第1部位)
1b 第2皮膜部位(中間部位)
1c 第3皮膜部位(第2部位)
2 シリンダブロック
3 ピストン
3a ピストンリング
3b ピストンリング
3c ピストンリング
Lb 摺動範囲(第1範囲)
Ld 摺動範囲(第2範囲)

Claims (6)

  1. 内燃機関のシリンダブロック内に外周面が接した状態で設けられ、ピストンが内部を摺動するとともに、当該ピストンの摺動時における上死点付近の所定の第1部位と下死点付近の所定の第2部位とが、当該第1部位と当該第2部位との間の中間部位よりも熱伝導率が高くなるように構成されていることを特徴とするシリンダライナ。
  2. 前記第1部位は、前記ピストンが前記上死点付近で摺動したときに前記ピストンのピストンリングが摺動する所定の第1範囲を含み、
    前記第2部位は、前記ピストンが前記下死点付近で摺動したときに前記ピストンの前記ピストンリングが摺動する所定の第2範囲を含み、
    前記第1範囲は、前記第2範囲よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載のシリンダライナ。
  3. 前記第1部位、前記第2部位及び前記中間部位の外周面には、皮膜が形成されており、
    前記第1部位及び前記第2部位の皮膜は、前記中間部位の皮膜よりも熱伝導率が高くなるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリンダライナ。
  4. 前記第1部位及び前記第2部位は、前記中間部位よりも熱伝導率の高い材質で構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリンダライナ。
  5. 前記第1部位、前記第2部位及び前記中間部位の外表面には、多数の凸部が前記シリンダブロックに接するように形成されており、
    前記第1部位及び前記第2部位の外表面の凸部は、単位面積当たりの数が前記中間部位の外表面の凸部よりも多くなるように設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリンダライナ。
  6. 前記第1部位は、前記第2部位よりも熱伝導率が高くなるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のシリンダライナ。
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