JP2014237626A - 生体防御用組成物及びその用途、並びにペプチド - Google Patents
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Abstract
【解決手段】稲種子に存在する、以下の(A)〜(C)のタンパク質及びペプチドのいずれかを有効成分として含有する生体防御用組成物などである。(A)特定のアミノ酸配列からなるタンパク質(B)特定のアミノ酸配列において1個〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、生体防御作用を有するタンパク質(C)前記(A)又は(B)のタンパク質の一部からなり、生体防御作用を有するペプチド
【選択図】なし
Description
イネゲノム中にはディフェンシンなど既知の抗菌タンパク質のホモログが存在するが、イネの生体防御に対する寄与は不明である。
また、本発明は、優れた抗菌活性及びエンドトキシンによる炎症抑制活性を有し、長期間処方しても安全性に優れるペプチドを提供することを目的とする。
<1> 以下の(A)〜(C)のタンパク質及びペプチドのいずれかを有効成分として含有することを特徴とする生体防御用組成物である。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(B)配列番号1で表されるアミノ酸配列において1個〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、生体防御作用を有するタンパク質
(C)前記(A)又は(B)のタンパク質の一部からなり、生体防御作用を有するペプチド
<2> 配列番号1で表されるアミノ酸配列の第175位〜第192位、及び第356位〜第372位から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸配列を含むペプチド、又は前記ペプチドにおいて1個〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、生体防御作用を有する前記<1>に記載の生体防御用組成物である。
<3> 生体防御作用が、有効成分の抗菌活性に基づく前記<1>から<2>のいずれかに記載の生体防御用組成物である。
<4> 抗菌活性が、有効成分と、リポ多糖及びLipid A(以下、「リピドA」と称することがある)の少なくともいずれかとの結合に基づく前記<3>に記載の生体防御用組成物である。
<5> 生体防御作用が、有効成分の炎症抑制活性に基づく前記<1>から<2>のいずれかに記載の生体防御用組成物である。
<6> 炎症抑制活性が、エンドトキシン中和活性及び炎症性サイトカイン産生抑制活性の少なくともいずれかに基づく前記<5>に記載の生体防御用組成物である。
<7> エンドトキシン中和活性及び炎症性サイトカイン産生抑制活性の少なくともいずれかが、有効成分と、リポ多糖及びLipid Aの少なくともいずれかとの結合に基づく前記<6>に記載の生体防御用組成物である。
<8> 生体防御作用が、有効成分の創傷治癒活性に基づく前記<1>から<2>のいずれかに記載の生体防御用組成物である。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の生体防御用組成物を含有してなることを特徴とする飲食品、医薬品、医薬部外品、化粧品又は飼料である。
<10> 以下の(a)及び(b)のいずれかのペプチドである。
(a)配列番号2及び3のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチド
(b)前記(a)のペプチドに対して1個〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ生体防御作用を有するペプチド
また、本発明によれば、従来における前記諸問題を解決することができ、優れた抗菌活性及びエンドトキシンによる炎症抑制活性を有し、長期間処方しても安全性に優れるペプチドを提供することができる。
本発明の生体防御用組成物は、以下の(A)〜(C)のタンパク質及びペプチドのいずれかを有効成分として含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(B)配列番号1で表されるアミノ酸配列において1個〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、生体防御作用を有するタンパク質
(C)前記(A)又は(B)のタンパク質の一部からなり、生体防御作用を有するペプチド
前記タンパク質は、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質に限定されず、生体防御作用を有する限り配列番号1で表されるアミノ酸配列において1個〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であってもよい。
また、生体防御作用を有する限りこれらのタンパク質の一部からなるペプチドであってもよい。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、添加剤、補助剤、水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記生体防御用組成物中の前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明の飲食品、医薬品、医薬部外品、化粧品又は飼料は、前記生体防御用組成物を含有してなる。
前記医薬品、医薬部外品としては、特に制限はないが、歯周病治療剤、口内炎治療剤、薬用トローチ、薬用のど飴、洗口液、練歯磨き、などが好適に挙げられる。
前記化粧品又は飼料としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
Os02g0765600由来ペプチドによる抗菌スペクトルの検討
(1)ペプチド
選択したタンパク質、前記Os02g0765600のアミノ酸配列(配列番号1)に基づいて、タンパク質表面にあり、α−へリックス構造を取り、疎水性残基と塩基性残基をともに含んでいる部分を検索した。
その結果、表1に記載の2種類のペプチドを合成して、抗菌スペクトルを検討した。各ペプチドは、ペプチド合成装置(PSSM−8、株式会社島津製作所製)を用いて合成し、カラム(Cadenza CD−C18、インタクト株式会社製)を装着したHPLC(10A system、株式会社島津製作所製)にて以下の精製条件で精製した。
<精製条件>
・溶媒A:0.1質量%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル
・溶媒B:0.1質量%トリフルオロ酢酸を含む水
・流速:1.0mL/分間
・波長:220nm
・インジェクション容量:20μL
・グラジエント条件:0.01分間(溶媒A 10体積%、溶媒B 90体積%)→25.0分間(溶媒A 35体積%、溶媒B 65体積%)→25.1分間(溶媒A 100体積%、溶媒B 0体積%)→30分間(停止)
被験菌として、表2に示した疾病に関連する微生物を用いた。
濃度を変えて表1に記載の各ペプチドを培地に添加し、上記被験菌を培養した。
P. gingivalis ATCC 33277は、変法GAM培地(1L中、ペプトン5.0g、ダイズペプトン3.0g、プロテオーゼペプトン5.0g、消化血清末10.0g、酵母エキス末2.5g、肉エキス末2.2g、肝臓エキス末1.2g、ブドウ糖0.5g、溶性デンプン5.0g、L−トリプトファン0.2g、L−システイン塩酸塩0.3g、チオグリコール酸ナトリウム0.3g、L−アルギニン1.0g、ビタミンK10.005g、ヘミン0.01g、リン酸二水素カリウム2.5g、塩化ナトリウム3.0g、pH7.3)を用いて絶対嫌気条件下、37℃で48時間静置培養した。
E. coli K−12は、LB培地(1L中、トリプトン10.0g、酵母エキス5.0g、塩化ナトリウム10.0g、pH7.0)又はTSB培地(1L中、カゼイン製ペプトン17.0g、ダイズ製ペプトン3.0g、塩化ナトリウム5.0g、ブドウ糖2.5g、リン酸水素二カリウム2.5g、pH7.3)を用いて通性嫌気条件下、37℃で4時間静置培養した。
E. corrodens ATCC 23834は、前記TSB培地を用いて、絶対嫌気条件下、37℃で20時間静置培養した。
A. aggregatibacter 310aは、前記TSB培地を用いて、絶対嫌気条件下、37℃で15時間静置培養した。
F. nucleatum ATCC 25586は、前記TSB培地を用いて、絶対嫌気条件下、37℃で5時間静置培養した。
S. aureus NBRC 12732は、前記TSB培地を用いて、通性嫌気条件下、37℃で10時間静置培養した。
S. mutans JCM 5705は、BHI培地(1L中、豚脳エキス末4.0g、豚ハートエキス末4.0g、ペプトン17.5g、ブドウ糖2.0g、塩化ナトリウム5.0g、リン酸水素二ナトリウム2.5g、pH7.2)を用いて、通性嫌気条件下、37℃で6時間静置培養した。
P. acnes JCM 6473は、GAM培地(1L中、ペプトン10.0g、ダイズペプトン3.0g、プロテオーゼペプトン10.0g、消化血清末13.5g、酵母エキス5.0g、肉エキス2.2g、肝臓エキス1.2g、ブドウ糖3.0g、リン酸二水素カリウム2.5g、塩化ナトリウム3.0g、溶性デンプン5.0g、L−システイン塩酸塩0.3g、チオグリコール酸ナトリウム0.3g、pH7.1)を用いて、通性嫌気条件下、37℃で24時間静置培養した。
P. aeruginosa NBRC 13275は、YM培地(1L中、グルコース10.0g、ペプトン5.0g、酵母エキス3.0g、麦芽エキス1.0g、pH6.2)を用いて、好気条件下、30℃で10時間静置培養した。
C. albicans NBRC 1385の培地は、前記YM培地を用いて、通性嫌気条件下、25℃で24時間静置培養した。
上記被験菌の培養に用いたのと同じ培地に、80μLの各被験菌の培養液を播種した後、所定の温度に設定したインキュベーターに入れて所定の時間培養した。その後、新たな培地に植え継いで、更に所定の時間培養した。得られた前培養液を段階希釈することでOD650=5.0×10−5の菌液を調製した。
次に、リザーバーを用意して、各レーンに300μLの1.33倍濃度の培地、100μLの各ペプチド溶液(ペプチドの濃度を様々に振った溶液)、100μLの前記菌液を添加してよく混合した。
コントロールとブランクには、ペプチド溶液の代わりに同量の滅菌水を添加し、更にブランクには菌液の代わりに1倍濃度の各培地を同量添加した。ペプチド溶液を添加したもの、コントロール及びブランクのそれぞれを96ウェル培養プレート(#3595、Corning社製)のウェルに100μLずつ分注し、前記各被験菌の培養条件と同じ条件で培養を行った。
各ペプチドの抗菌活性は、生菌に由来するATPを定量することによって評価した。
生菌に由来するATPの定量は、BacTiter・Glo(登録商標) Microbial Cell Viability Assay Kit(Promega社製)を用いたルシフェリン−ルシフェラーゼ発光法により行った。以下のように微生物からATPを抽出し、ATP量に応じた発光強度から微生物量を測定した。
具体的には、まず、培養プレートの各ウェルに分注した100μL被験菌培養液に対して10μLのルシフェールATP消去試薬(キッコーマン株式会社製)を添加し、10分間撹拌することによって生菌体外に存在するATPを分解消去させてサンプルとした。
次に、あらかじめ96穴プレート(OptiPlate−96、PerkinElmer社製)の各ウェルに分注した50μLのATP発光試薬に対して、前記サンプルを50μL添加した。各ウェルの生菌に由来するATP発光強度(発光波長560nm)を、マイクロプレートリーダー1420(Multilabel Counter Arvo(登録商標)MX、PerkinElmer社製)を用い、Relative Light Unit(RLU)として測定した。1サンプルについて3回測定を行い、測定は、各菌の対数増殖初期において行った。抗菌活性は、抗菌成分を含まないコントロールのRLUを100%とし、50%に低下させるペプチド濃度(50%増殖阻害濃度:IC50値)を用いて表した。結果を表3に示す。
表3から明らかなように、前記AmyI−1(175−192)及び前記AmyI−1(356−372)は、いずれもP. gingivalis ATCC 33277に対して抗菌活性を示した。
また、AmyI−1(175−192)は、試験したグラム陰性菌のE. corrodens ATCC 23834、E. coli K−12、P. aeruginosa NBRC 13275、A. aggregatibacter 310a、及びF. nucleatum ATCC 25586、グラム陽性菌のS. mutans JCM 5705、S. aureus NBRC 12732、及びP. acnes JCM 6473、並びに真菌のC. albicans NBRC 1385に対して、すべて抗菌活性を示した。
前記Os02g0765600由来ペプチドのエンドトキシン中和活性
「エンドスペシーES−50Mセット」(生化学工業株式会社製)及び「エンドトキシン標準品CSE−Lセット」(生化学工業株式会社製)を用いてエンドトキシン中和活性を評価した。
ペプチドとして、表1に記載の前記AmyI−1(175−192)を用いた。96ウェルプレート(#3595 マルチプルウェルプレート(平底)、Corning社製)の各ウェルにエンドトキシン標準品(0.10EU/mL)25μL及びペプチド溶液(最終濃度1μM及び10μM)を加えて、37℃にて30分間又は35分間振盪しながらインキュベーションした。次に、50μLの前記セットに含まれていたLAL試薬を各ウェルに添加し、37℃で10分間振盪しながらインキュベーションした。その後、マイクロプレートリーダー(2030 Arvo X、PerkinElmer社製)を用いて、波長405nmの吸光度を測定した。ペプチド溶液の代わりに蒸留水(エンドトキシンフリー)を添加したものをコントロールとし、コントロール(0μM)の吸光度を100%とした時の相対値をエンドトキシン中和活性とした。結果を表4に示す。
前記Os02g0765600由来ペプチドの一酸化窒素産生抑制作用
マウスマクロファージRAW264細胞(RIKEN BRC CELL BANK)を用いて、AmyI−1(175−192)を添加したときの、エンドトキシン刺激による傷害性の一酸化窒素(NO)の産生量への影響を検討した。本発明では、エンドトキシンとして、Smooth型のリポ多糖であるE. coli O55:B5のLPS(#203、List Biological Laboratories社製)、Rc型のリポ多糖であるE. coli J5のLPS(0130、Glycobiotech社製)、及びLipid AとしてE. coli R515のLipid A(ALX−581−200、Enzo Life science社製)を、それぞれ用いて試験した。
前記Os02g0765600由来ペプチドの細胞毒性の検討
マウスマクロファージRAW264細胞(RIKEN BRC CELL BANK)を用いて、前記AmyI−1(175−192)ペプチドを添加したときの生存率を測定することによって、細胞毒性を検討した。
96穴プレート(#3595、Corning社製)を用いて10質量%FBSを含んだフェノールレッド不含のDMEM培地(12430−054、Invitrogen社製)中で培養した後、培養液だけを吸引除去した。
DMEM培地と、水溶性のホルマザンを生成するテトラゾリウム塩WST−8を発色基質として含むCell Counting Kit−8(343−07623、株式会社同仁化学研究所製)を10:1で混合した混合液を作製した。前記混合液を、前記培養液を吸引除去した各ウェルに100μLずつ添加した後、CO2インキュベーター(MCO−18AIC、三洋電機株式会社製)内で5分間反応させた。マイクロプレートリーダー(2030 Arvo X、PerkinElmer社製)を用いて、各ウェルの450nmにおける吸光度を測定し、前記AmyI−1(175−192)ペプチドを添加していないコントロールウェルの値と比較することによって、細胞生存率を測定し、細胞毒性を評価した。RAW264細胞に対する毒性を評価した結果を図4に示す。
一酸化窒素産生抑制の実験において用いた最大の濃度1,000μMよりも高い1,200μMを添加しても、前記AmyI−1(175−192)ペプチドは、RAW264細胞に対して毒性を示さなかった。
前記Os02g0765600由来ペプチドの溶血活性の検討
緬羊脱繊維無菌血液(0102−1、株式会社日本バイオテスト研究所製、以下「赤血球」とも称する)を用いて、前記AmyI−1(175−192)ペプチドの溶血活性を試験した。
マイクロチューブ中にて、40μLの赤血球を960μLの生理的食塩を含むリン酸緩衝液(PBS: pH 7.2)に4体積%になるように懸濁して懸濁液とした。前記懸濁液を5,000rpmにて、5分間遠心分離した後、上清液を除き、新たに960μLのPBSを加えて赤血球を再懸濁した。この操作を3回繰り返した後、得られた赤血球をサンプルとして用いた。任意の濃度に希釈された前記AmyI−1(175−192)ペプチド溶液、又は0.1質量% TritonX−100(595−13135、和光純薬工業株式会社製)を96穴プレート(#3595、Corning社製)の各ウェルに50μLずつ分注した。次に、4体積%の赤血球懸濁液を各ウェルに50μLずつ分注した後、37℃にて1時間インキュベーションした。その後、4,000rpmにて10分間遠心分離を行った。遠心分離によって得られた50μLの上清液を、あらかじめ50μLのPBS又は水を分注しておいたウェルに添加した。マイクロプレートリーダー(2030 ArvoTM X、PerkinElmer社製)を用いて、各ウェルの405nmにおける吸光を測定した。前記AmyI−1(175−192)ペプチドを添加しないときの吸光度を0%、及び前記AmyI−1(175−192)ペプチドの代わりに0.1質量% TritonX−100を添加したときの吸光度を100%として、次の式を用いて溶血活性を評価した。
溶血活性(%)=(Apeptide−A0)×100/(ATritonX−100−A0)
ここで、A0は無添加のときの吸光度、ApeptideはAmyI−1(175−192)ペプチドを添加したときの吸光度、及びATritonX−100は0.1質量% TritonX−100を添加したときの吸光度をそれぞれ示す。
溶血活性を測定した結果を図5に示す。
前記Os02g0765600由来ペプチドとエンドトキシンとの親和性解析
表面プラズモン共鳴を利用した生体分子間相互作用解析装置 Biacore(Biacore X: GE Healthcare Life Science社製)を用いて、前記Os02g0765600由来ペプチドであるAmyI−1(175−192)ペプチドとリポ多糖(E. coli O55:B5; #203, List Biological Laboratory社製)との親和性、及び前記Os02g0765600由来ペプチドであるAmyI−1(175−192)ペプチドとLipid A(E. coli R515, LX−581−200, Enzo Life Scinece社製)との親和性を解析した。
最初に、チオールカップリング法によってAmyI−1(175−192)ペプチドをセンサーチップCM5(BR−1000−12: GE Healthcare Life Sciences社製)に固定化した。具体的には、AmyI−1(175−192)ペプチドのアミノ末端にシステインを付加し、そのシステインとセンサーチップ表面のカルボキシメチルデキストランとをThiol Coupling Kit(BR−1005−57:GE Healthcare Life Sciences社製)を用いてジスルフィド結合を形成させることによって固定化した。
生理的食塩を含むリン酸緩衝液(PBS:pH 7.2)中のリポ多糖、又はLipid Aを分散させるために超音波で5分間処理した後に、それぞれ10μg/mL、30μg/mL、又は50μg/mLの濃度になるように希釈した。その後、流速を10μL/分間に設定して流路へ添加した。このときの結合時間は、240秒間に調節した。次に、解離するためにリン酸緩衝液だけを500秒間流した。センサーチップの再生には、1mM NaOHを用いた。
Biacore付属のデータ編集ソフトウェア BIAevaluationを用いて、各濃度のセンサーグラムを解析した。具体的には、BIAevaluationのGlobal fittingを用いてセンサーグラムの同時解析を行い、解離定数KDを算出した。リポ多糖及びLipid Aの分子量は、それぞれ20,500Da、1,798.8Daとした。
Biacore付属のデータ編集ソフトウェア BIAevaluationを用いて、解離定数KDを算出した結果、AmyI−1(175−192)ペプチドとリポ多糖との間のKDは4.28×10−10Mとなり、AmyI−1(175−192)ペプチドとLipid Aとの間のKDは5.56×10−10Mとなり、それぞれ非常に高い親和性を示すことがわかった。
したがって、AmyI−1(175−192)ペプチドのグラム陰性菌に対する抗菌活性は、細胞表層に存在するリポ多糖やその構成成分であるLipid Aとの強い結合によって、細胞膜の機能を損傷することに起因していることがわかった。また、AmyI−1(175−192)ペプチドのエンドトキシン中和活性や一酸化窒素産生抑制作用は、AmyI−1(175−192)ペプチドがリポ多糖又はLipid Aに直接結合することによって発揮されることがわかった。また、AmyI−1(175−192)ペプチドとリポ多糖との間、及びAmyI−1(175−192)ペプチドとLipid Aとの間の親和性は、ほぼ同じであることからAmyI−1(175−192)ペプチドは、リポ多糖のLipid A部分に結合して作用を発揮していることもわかった。
前記Os02g0765600由来ペプチドの創傷治癒作用
AmyI−1(175−192)ペプチドの創傷治癒作用を、HUVEC(ヒト臍帯静脈血管内皮細胞、倉敷紡績株式会社製、KE−4109)の管腔形成促進作用に基づいて評価した。
96穴プレート(#3595, Corning社製)を用いて、HUVECを3日間〜4日間コンフルエントな状態になるまで培養した後、HEPES緩衝液(倉敷紡績株式会社製、HK−3320)を用いて洗浄し、不純物を取り除いた。次に、トリプシン/EDTA(倉敷紡績株式会社製、HK−3120)で3分間処理し、剥がれてきたHUVECを回収し、トリプシン中和液(倉敷紡績株式会社製、HK−3220)に添加した。この細胞懸濁液を800rpmで5分間遠心分離した後、上澄み液を除去し、HuMedia−EG2(倉敷紡績株式会社製、KE−2150S)を加えて細胞濃度を2.0×105cells/mLに調整した。得られた細胞懸濁液とAmyI−1(175−192)ペプチドとを1:1の割合で混合した。
本実験では、ヒト由来の創傷治癒作用を有する生体防御ペプチドとして知られているLL−37(Leu−Leu−Gly−Asp−Phe−Phe−Arg−Lys−Ser−Lys−Glu−Lys−Ile−Gly−Lys−Glu−Phe−Lys−Arg−Ile−Val−Gln−Arg−Ile−Lys−Asp−Phe−Leu−Arg−Asn−Leu−Val−Pro−Arg−Thr−Glu−Ser:配列番号4;株式会社ペプチド研究所製、4445−s)をポジティブコントロールとして用いて、AmyI−1(175−192)ペプチドの管腔形成促進作用と比較した。なお、LL−37がヒト由来の創傷治癒作用を有する生体防御ペプチドであることは、例えば、1) M. Carretero, M. J. Escamez, M. Garcia, B. Duarte, A. Holguin, L. Retamosa, J. L. Jorcano, M. del Rio, and F. Larcher: In vitro and in vivo wound healing promoting activity of human cathelicidin LL−37. Journal of Investigative Dermatology, (2008) Vol.128, pp.233−236.、2) R. Ramos, J. P. Silva, A. C. Rodrigues, R Costa, L. Guardao, F. Schmitt, R. Soares, M. Vilanova, L. Domingues, and M. Gama: Wound healing activity of the human antimicrobial peptide LL37. Peptides, (2011) Vol.32, pp.1469−1476.などに記載されている。
マトリゲル内でHUVECが形成した管腔構造を、顕微鏡を用いて40倍の倍率で観察し、写真撮影を行った。また、得られた画像から300×400pixelの範囲を抽出し、形成された管腔構造をした細胞の長さの合計値を測定し、AmyI−1(175−192)ペプチドの創傷治癒作用を評価した。
Claims (10)
- 以下の(A)〜(C)のタンパク質及びペプチドのいずれかを有効成分として含有することを特徴とする生体防御用組成物。
(A)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(B)配列番号1で表されるアミノ酸配列において1個〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、生体防御作用を有するタンパク質
(C)前記(A)又は(B)のタンパク質の一部からなり、生体防御作用を有するペプチド - 配列番号1で表されるアミノ酸配列の第175位〜第192位、及び第356位〜第372位から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸配列を含むペプチド、又は前記ペプチドにおいて1個〜数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、生体防御作用を有する請求項1に記載の生体防御用組成物。
- 生体防御作用が、有効成分の抗菌活性に基づく請求項1から2のいずれかに記載の生体防御用組成物。
- 抗菌活性が、有効成分と、リポ多糖及びLipid Aの少なくともいずれかとの結合に基づく請求項3に記載の生体防御用組成物。
- 生体防御作用が、有効成分の炎症抑制活性に基づく請求項1から2のいずれかに記載の生体防御用組成物。
- 炎症抑制活性が、エンドトキシン中和活性及び炎症性サイトカイン産生抑制活性の少なくともいずれかに基づく請求項5に記載の生体防御用組成物。
- エンドトキシン中和活性及び炎症性サイトカイン産生抑制活性の少なくともいずれかが、有効成分と、リポ多糖及びLipid Aの少なくともいずれかとの結合に基づく請求項6に記載の生体防御用組成物。
- 生体防御作用が、有効成分の創傷治癒活性に基づく請求項1から2のいずれかに記載の生体防御用組成物。
- 請求項1から8のいずれかに記載の生体防御用組成物を含有してなることを特徴とする飲食品、医薬品、医薬部外品、化粧品又は飼料。
- 以下の(a)及び(b)のいずれかのペプチド。
(a)配列番号2及び3のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチド
(b)前記(a)のペプチドに対して1個〜数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ生体防御作用を有するペプチド
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