ところが、上記従来の道路標示装置では、照明装置が高欄に設置された状態において、上記のように照明装置からの光の指向性は、車道外側線に対して直交又は略直交する向きになっているので、車道外側線上に照射されたライン状の光標示のうち、車両のドライバーから最も早く視認される通行方向逆向き側の始端は、照明装置からの光の中心線よりも通行方向の逆向き側に照射された光によるものであって、照明装置からの照射距離が長い光によるものであるため、若干暗く描かれ、かかる視認性の点で課題があった。
尚、上記課題は、車道における車両のドライバーだけでなく、通行すべき通行方向が決められている自転車や歩行者のための道路における自転車の乗り手や通行人についても同様である。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、被照射面にライン状の光標示を視認性良く描くことができる道路標示装置を提供することを課題とする。
本発明に係る道路標示装置は、上記課題を解決するためになされたもので、被照射面にライン状の光標示が描かれるように光を照射する照射手段を備える標示装置本体と、道路上の通行すべき通行方向が決められた通行部の道幅方向における外側に位置する支持体と、標示装置本体を支持体に設置するための設置具とを備え、照射手段は、標示装置本体が設置具によって支持体に設置された状態で、前記通行部の外側と内側とを区別する境界又は境界近傍に対して、通行部の外側において上方から斜め下方に向けるとともに通行部の通行方向に沿い、且つ、前記ライン状の光標示におけるライン方向の中心部が、照射手段から光が照射される起点である照射起点に対して、照射手段が照射する通行部における前記通行方向側に位置ずれするように、光を照射することを特徴とする。
かかる道路標示装置では、標示装置本体は、設置具によって、通行部の外側に位置する支持体に設置され、照射手段は、通行部の外側と内側とを区別する境界又は境界近傍に対して、通行部の外側において上方から斜め下方に向けるとともに通行部の通行方向に沿って光を照射してライン状の光標示を描いているため、通行部を通行する車両や人の高さに影響されることなく任意の高さで、標示装置本体を支持体に取り付けて、車両のドライバーや通行人に対して通行部の外側と内側とを明確に区別させることができる。
また、かかる道路標示装置では、ライン状の光標示を描いているので、被照射面に点状の光標示を描くような発光体や反射体を有する視線誘導標などと比較して、長い範囲に標示を描くので、車両のドライバーや通行人の視認性を向上させ、視線誘導効果を向上させることができる。
また、かかる道路標示装置では、上方から斜め下方に向けて光を照射してライン状の光標示を描くので、車両のドライバーや通行人に対して、照射手段からの光を傾斜する光の幕として視認させて、注意喚起させることができる。また、前記傾斜する光の幕では、降雪や降雨、霧などの発生などで視界が低下するような状況でも空気中の雪や水滴などが照らし出されるため、当該傾斜する光の幕の視認性が向上し、車両のドライバーや通行人に対して、注意喚起効果を向上させることができる。
ここで、前記ライン状の光標示におけるライン方向の中心部は、照射手段から光が照射される起点である照射起点に対して、照射手段が照射する通行部における前記通行方向側に位置ずれするので、照射手段により描かれるライン状の光標示のうち、通行方向の逆向き側の始端側では、照明手段からの照射距離を短くでき、照度を向上させて明るく明瞭に描かれることができるため、被照射面にライン状の光標示を視認性良く描くことができる。そして、ライン状の光標示の前記始端側が明るく明瞭に描かれることで、車両のドライバーや通行人が目視したときの誘目性を向上させ、即ち視認性を向上させ、視線誘導効果を向上させることができる。また、ライン状の光標示の前記始端側が明るく明瞭に描かれることで、通行部を走行する車両のドライバーに対して視線誘導効果をもたらすことにより、車の不要な速度低下を抑制させることができる。
また、照射手段からの光の指向性を照射起点に対して通行方向側とすることができ、照射手段からの光が車両のドライバーや通行人の目に直接達して、目を眩ませるような事態を防止することができる。
また、本発明に係る道路標示装置では、前記ライン状の光標示の少なくとも一部が、20Lx以上の照度であるように構成されることも可能である。
かかる道路標示装置では、ライン状の光標示を目立たせることができ、車両のドライバーや通行人に対して通行部の外側と内側とを明確に区別させることができる。
また、本発明に係る道路標示装置では、前記標示装置本体を複数備え、該複数の標示装置本体は、前記通行部の通行方向に沿って一又は複数の支持体に複数の設置具を介して設置され、複数の標示装置本体の照射手段は、ライン状の光標示が前記通行部の境界又は境界近傍に連続的に描かれるように光を照射するように構成されることも可能である。
かかる道路標示装置では、ライン状の光標示を通行部の境界又は境界近傍に連続的に描くことができ、車両のドライバーや通行人に対して通行部の外側と内側とを明確に区別させることができる。
また、連続的に描かれたライン状の光標示は、視認性が向上してより遠方から視認できるようになされるので、走行する車両のドライバーがより手前側からライン状の光標示を認識できる。また、連続的に描かれライン状の光標示は、夜間や、降雨、降雪、霧などにより視界が低下するような状況においても高い視認性を維持し、優れた視線誘導効果を得ることができる。
また、本発明に係る道路標示装置では、前記ライン状の光標示のうち、20Lx以上の照度である範囲は、前記通行方向に沿って8m以上の長さに亘るように構成されることも可能である。
かかる道路標示装置では、ライン状の光標示を極めて目立たせることができ、車両のドライバーや通行人に対して通行部の外側と内側とを明確に区別させることができる。
また、本発明に係る道路標示装置では、設置具は、高さ方向に沿う高さ軸周りに標示装置本体を支持体に対して回転調整可能に構成されることも可能である。
かかる道路標示装置では、高さ軸周りに標示装置本体を支持体に対して回転調整して、照射手段からの光を通行方向に向けて照射することで、ライン状の光標示におけるライン方向の中心部を照射起点に対して通行方向側に容易に位置ずれさせることができる。
また、本発明に係る道路標示装置では、設置具は、ライン方向に沿うライン軸周りと、ライン方向及び高さ方向に交差する交差方向に沿う交差軸周りとの少なくとも一方に標示装置本体を支持体に対して回転調整可能に構成されることも可能である。
かかる道路標示装置では、高さ軸周りに加えて、ライン軸周りと交差軸周りとの少なくとも一方に標示装置本体を支持体に対して回転調整することにより、ライン状の光におけるライン方向を通行方向に極めて正確に沿わせることができる。このように回転調整可能とすることで、新設の柱体のほか、既設の柱体や、道路横の盛土部、壁高欄部など種々の構造体を前記支持体として容易に利用することができる。
また、標示装置本体に電源を供給するための接続ボックスを地上から2m程度の高い位置に設けることにより、積雪量が地上から2m程度に達するまでは、積雪による影響を受け難く、標示装置本体へ安定して電源が供給できる。
また、標示装置本体と支持体とにそれぞれリング部を設け、各リング部に落下防止用ワイヤーを挿通させることにより、支持体からの標示装置本体の落下を防止できる。
また、支持体を棒状の支柱で構成させ、地上に立設される直線状の基部と、基部上端から上方かつ道路の外側に向けて屈曲する屈曲部と、屈曲部から上方に延設される先端部とを備えさせ、前記先端部に設置具を介して標示装置本体を設置させることで、風や除雪車からの投雪などの影響を受けた際に、屈曲部の撓みによって、屈曲部よりも上方の先端部が大幅に揺れるような事態を抑制して、先端部に設置させた標示装置本体からのライン状の光標示を定位置に安定して照射させることができる。
以上のように、本発明に係る道路標示装置によれば、標示装置本体は、通行部の外側に位置する支持体に設置され、照射手段は、通行部の外側と内側とを区別する境界又は境界近傍に対して、通行部の外側において上方から斜め下方に向けるとともに通行部の通行方向に沿って光を照射してライン状の光標示を描いているため、通行部を通行する車両や人の高さに影響されることなく任意の高さで、標示装置本体を支持体に取り付けて、車両のドライバーや通行人に対して通行部の外側と内側とを明確に区別させることができるという効果を奏する。特に、かかる道路標示装置では、前記ライン状の光標示におけるライン方向の中心部は、照射手段から光が照射される起点である照射起点に対して、照射手段が照射する通行部における前記通行方向側に位置ずれするので、照射手段により描かれるライン状の光標示のうち、通行方向の逆向き側の始端側では、照明手段からの照射距離を短くでき、照度を向上させて明るく明瞭に描かれることができるため、被照射面にライン状の光標示を視認性良く描くことができるという効果を奏する。
以下、本発明に係る道路標示装置の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
道路標示装置は、車両が通行する通行部(所謂、車道)の道幅方向における外側に設置されており、特に、通行部の通行方向に沿って通行部の外側と内側とを区別する境界である車道外側線が視認し難くなる夕方から早朝にかけて、車道外側から車道外側線に向けて光を照射して、車道外側線上にライン状の光を描くことにより、車両のドライバーに通行部の外側と内側とを明確に区別させるものである。とりわけ、かかる道路標示装置では、積雪地域において、積雪により車道外側線が視認できなくなったときにおいても、雪上にライン状の光標示を描くことにより、車両のドライバーに通行部の外側と内側とを明確に区別させ得る。尚、ライン状の光標示は、車道外側線上に限らず、車道外側線の近傍に対して通行方向に沿って描かれることも可能である。また、道路標示装置は、車道外側線が設けられていない道路に対して設けられることも可能であり、ライン状の光標示を通行部の外側と内側とを区別する境界として道路に描くことにより、車両のドライバーに通行部の外側と内側とを明確に区別させ得る。
このような道路標示装置は、図1,2に示すように、被照射面(本実施形態では、車道外側線上)にライン状の光標示が描かれるように光を照射する照射手段を備える標示装置本体1と、車両が通行する通行部Rの道幅方向における外側に位置する支持体2と、標示装置本体1を支持体2に設置するための設置具3とを備えて構成される。
尚、図1の上下方向が支持体2の高さ方向、図1の左右方向が通行部Rの道沿方向、図1の奥行き方向が通行部Rの道幅方向(高さ方向及び道沿方向に交差する方向)になっている。
標示装置本体1は、図3,4に示すように、光を照射する発光部11と、被照射面(本実施形態では、車道外側線上)にライン状の光標示(又は光模様)が描かれるように、発光部11から照射された光を集束するレンズ部12とを有する照射手段1Aと、該照射手段1Aが設けられる本体部13とを備える。発光部11は、複数の発光ダイオードがプリント基板に直線状に配置されてなる(図3参照)。レンズ部12は、発光ダイオードからの放射状の光を集束して、被照射面にライン状の光標示を描く(又は照明もしくは形成する)ように構成されている。具体的には、レンズ部12は、平板状のシリンドリカルレンズ(詳細には、シリンドリカルフレネルレンズ)であり、その表面中央部は、発光部11からの光が標示装置本体1外に照射される起点である照射起点10になっている(図3,4参照)。本体部13は、照射手段1Aを収容して内部に装着する箱型の筐体である。
また、本体部13には、落下防止用ワイヤY2を挿通可能に構成される環状のリング部13dが設けられている(図2,3参照)。
支持体2は、所定の高さを有し、水平断面が略円形をなす棒状の支柱で構成されており、高さ方向上方で曲げられる構造を有する。具体的には、支持体2は、図2に示すように、地上から所定の高さまで高さ方向に沿って立設される直線状の基部21と、基部21上端から上方かつ通行部Rの道幅方向の外側に向けて屈曲する屈曲部22と、屈曲部22上端から上方に延設される先端部23とからなる。支持体2の寸法は、例えば、全体の高さは3m50cm程度、基部の高さは2m80cm程度、屈曲部22の道幅方向の長さは25cm程度である。この支持体2の基部21の上部には、支持体2を地面に固定設置するためのワイヤロープY1を挿通可能に構成される環状のリング部21aが設けられており(図1参照)、支持体2の先端部23には、支持体2に設置される標示装置本体1が落下することを防止するための落下防止用ワイヤY2を挿通可能に構成される環状のリング部23aが設けられている(図2参照)。尚、支持体2は、上記のような支柱に限らず、高欄、切土、盛土、法面などの何れか一つで構成されることも可能である。
設置具3は、図3,4に示すように、標示装置本体1に取付け可能な本体取付部31と、支持体2に取付け可能な支持体取付部32と、本体取付部31と支持体取付部32とを連結する連結部33とを備える。尚、以下の設置具3の説明に際して便宜上、図3の正面図における上下方向、左右方向、奥行方向を、各々、上下方向、左右方向、前後方向としている。
本体取付部31は、上面が標示装置本体1(本体部13)を取付けるための取付面31Aをなす矩形平板状の取付部31aと、該取付部31aの外縁のうち、左右方向に沿う前辺を除く外縁に立設される側壁部31bとを備える(図3参照)。取付部31aには、ボルトBの軸部を挿通させるための貫通孔H1が前後方向に並んで2つ設けられている(図4参照)。また、取付部31aの下面には、標示装置本体1に電力供給用配線を接続するための筒状の入線口31cが設けられている。
支持体取付部32は、左右方向中央部と両端側とに貫通孔H2を有する矩形平板状の平板部32aと(図3参照)、該平板部32aに設けられ、支持体2を挟持するための挟持部32bを備える(図6参照)。挟持部32bは、図4,6に示すように、平板部32aにボルトとナットにより固定されるリブ部321と、該リブ部321に支持体2を挟んで取付可能なU字状のUバンド322とを備える。リブ部321は、平板部32aの貫通孔H2に対応する貫通孔H3を有する矩形平板状の本体部321aと、該本体部321aに下方に突設し左右方向に沿って設けられ、前後方向に対向する一対の鉤爪状をなす突条部321bとを有する(図3,4参照)。Uバンド322は、設置具3の下方に凸をなすU字状をなすU字部322aと、該U字部322aの両端に左右方向に延設され、貫通孔H4を有する平板状の延設部322bとを有する(図6参照)。かかる挟持部32bは、図6に示すように、支持体2に対して、設置具3の上下方向及び左右方向を水平方向にし、設置具3の前後方向の後方向を高さ方向に沿わせるようにして取付けられる。具体的には、挟持部32bは、リブ部321とUバンド322とで支持体2を挟んだ状態において、一対の突条部321bにボルトの頭部B1を挿入し、ボルトの軸部B2を延設部322bの貫通孔H4に貫通させてナットNで締結固定することにより、Uバンド322をリブ部321に取付固定して支持体2を挟持するように構成されている。従って、支持体取付部32は、支持体2への取付けに際して、前後方向に沿う前後軸周りに回転可能になっており、換言すれば、支持体2の高さ方向に沿う高さ軸周りに回転可能になっている。
連結部33は、本体取付部31に連結される連結上部34と、連結上部34及び支持体取付部32に連結される連結下部35とを備える(図3,4参照)。
連結上部34は、本体取付部31の取付面31Aの法線軸周り、換言すれば、上下方向に沿う上下軸周りに、本体取付部31に対して回転可能に連結される構成である。具体的には、連結上部34は、本体取付部31の取付部31aの下面に対して上下軸周りに回転可能に連結される平板状の平板部341と、平板部341の左右方向に対向する一対の辺に立設される一対の側壁部342とを備える(図3,4,5(a)参照)。平板部341には、中央部に丸孔H5が穿設され、該中央部の丸孔H5の周りに円弧状をなす長孔H6が穿設されている(図5(a)参照)。一対の側壁部342の各々には、立設方向の端部側に丸孔H7が穿設され、該丸孔H7よりも立設方向の基端側で該丸孔H7の周りに円弧状をなす長孔H8が穿設されている(図4参照)。
かかる連結上部34は、本体取付部31の貫通孔H1と、該貫通孔H1に対応する平板部341の各孔H5,H6とに対してボルトBの軸部を挿通することにより(図4参照)、丸孔H5における中心軸(又は上下軸)周りで長孔H6に沿って本体取付部31を回転可能にし(図5(a)参照)、ボルトBに対してナットNを締結することにより、本体取付部31に固定されるように構成されている。
連結下部35は、左右方向に沿う左右軸周りに連結上部34に対して回転可能に連結されると共に、上下軸周りに支持体取付部32に対して回転可能に連結される構成である。具体的には、連結下部35は、図3,4,5(b)に示すように、支持体取付部32の平板部32aに対して上下軸周りに回転可能に連結される平板状の平板部351と、該平板部351の左右方向に対向する一対の辺に立設される一対の側壁部352であって、連結上部34の一対の側壁部342の内面に対して左右軸周りに回転可能に連結される一対の側壁部352とを備える。平板部351には、中央部の周りに円弧状をなす2つの長孔H9,H10が穿設されている(図5(b)参照)。一対の側壁部352の各々には、立設方向に並んで2つの丸孔H11が連結上部34(一対の側壁部342)の丸孔H7と長孔H8とに各々対応して穿設されている(図3参照)。
かかる連結下部35は、支持体取付部32の貫通孔H2,H3と、該貫通孔H2,H3に対応する平板部351の各長孔H9,H10とに対してボルトBの軸部を挿通することにより(図4参照)、平板部351の中央部における上下軸周りで長孔H9,H10に沿って支持体取付部32を回転可能にし(図5(b)参照)、ボルトBに対してナットNを締結することにより、支持体取付部32に固定されるように構成されている。また、連結下部35は、一対の側壁部352の丸孔H11と、該丸孔H11に対応する連結上部34(一対の側壁部342)の丸孔H7と長孔H8とに対してボルトBの軸部を挿通することにより(図3参照)、丸孔H7における中心軸(又は左右軸)周りで長孔H8に沿って連結上部34を回転可能にし(図4参照)、ボルトBに対してナットNを締結することにより、連結上部34に固定されるように構成されている。
従って、かかる構成からなる設置具3は、上下方向に沿う上下軸周りと、左右方向に沿う左右軸周りと、前後方向に沿う前後軸周りとに標示装置本体1を支持体2に対して回転調整可能にしている。
以上のような道路標示装置では、図2に示すように、通行部Rの道幅方向外側のうち、車道外側線Lから離間して位置する車両柵Gの外側に支持体2が立設され、該支持体2の先端部23に設置具3を介して標示装置本体1が設置されている。
ここで、支持体2は、図1に示すように、地面に刺した鉄杭QからのワイヤロープY1を基部21のリング部21aに挿通させて支持される。また、支持体2の基部21の上部であってリング部21aよりも下方の位置(本実施形態では、地上から2m程度の位置)には、標示装置本体1に電源を供給するための接続ボックスSが設けられる。また、基部21の下部は、車両柵Gに対して、添架金具4により固定されている(図2参照)。具体的には、図7に示すように、基部21の下部と車両柵Gの支柱との間に介在金具41を設けて、基部21の下部に対してU字状のUバンド42を道幅方向内側向きに押し当て、車両柵Gの支柱に対して道幅方向外側向きにU字状のUボルト43を押し当て、Uボルト43の両端の軸部43aを介在金具41とUバンド42との貫通孔に貫通させてナットNで締結することにより、基部21の下部と車両柵Gの支柱とが連結固定されている。特に、介在金具41には、道幅方向外側向きに凸をなすV字状の切り欠き41aが設けられており、該切り欠かれた部分41aを車両柵Gの支柱に押し当てている(図7(b)参照)。つまり、添架金具4の取付けに際しては、この切り欠き41aによって位置決めすることができる。更に、切り欠き41aによって、基部21の下部と車両柵Gの支柱との離間距離を小さくし、かつ、車両柵Gの支柱との間に隙間が設けられるので、例えば、積雪地域において、添架金具4上への除雪車からの投雪や積雪による重量負荷の影響を抑制することができるようになっている。
また、支持体2(先端部23)のリング部23aと、標示装置本体1(本体部13)のリング部13dとに落下防止用ワイヤY2が挿通されて、標示装置本体1の落下を防止している(図2参照)。
このような道路標示装置においては、図8に示すように、通行部Rの外側と内側とを区別する境界である車道外側線Lに対して、ライン状の光標示(又は光模様)5を描いている。図8では、ライン状の光標示5の説明が理解され易いように、便宜上、標示装置本体1と通行部Rと車道外側線Lとを示している。
ここで、照射手段1Aは、標示装置本体1が設置具3によって支持体2に設置された状態で、車道外側線Lに対して、通行部Rの外側において上方から斜め下方に向けるとともに通行部Rの道沿方向(詳細には、通行方向P)に沿い、且つ、ライン状の光標示5におけるライン方向5aの中心部51が、照射手段1Aから光が照射される起点である照射起点10に対して、照射手段1Aが照射する通行部Rにおける前記通行方向側に位置ずれするように、光(照射光)50を照射している。尚、ライン方向5aは、道沿方向又は通行方向Pに沿う方向である。
即ち、このようなライン状の光標示5が車道外側線L上に描かれるように、設置具3は、設置具3の上下軸周りと、左右軸周りと、前後軸周りに標示装置本体1を支持体2に対して回転調整して設置している。或いは、ライン状の光標示5が車道外側線L上に描かれるように、設置具3は、支持体2の高さ方向に沿う高さ軸周りと、ライン状の光標示5のライン方向5aに沿うライン軸周りと、前記高さ方向及びライン方向5aに交差する交差方向に沿う交差軸周りに標示装置本体1を支持体2に対して回転調整して設置していると言うこともできる。
尚、図8では、複数の標示装置本体1によるライン状の光標示5は各々、車道外側線L上に互いに離間して描かれているが、これに限らず、複数のライン状の光標示5は、互いのライン方向の端部同士を連ならせて、連続的な一つのライン標示とすることも可能である。換言すれば、複数の標示装置本体1は、車道外側線Lに沿って一又は複数の支持体2に複数の設置具3を介して設置され、複数の標示装置本体1の照射手段1Aは、ライン状の光標示5が車道外側線L上(通行部の境界又は境界近傍)に連続的に描かれるように光を照射するように構成され得る。この場合、ライン状の光標示5を車道外側線L上に連続的に描くことができ、車両のドライバーや通行人に対して通行部の外側と内側とを明確に区別させることができる。
このように複数の標示装置本体1によって、ライン状の光標示5を連続的な一つのライン標示として通行部の外側と内側とを区別させることで、被照射面に点状の光標示を描くような発光体や反射体を有する視線誘導標などと比較して、車両のドライバーが通行部の外側と内側の境界を見失う恐れが少なくなる。これによって、夜間や、降雪、降雨、霧などにより視界が低下するような状況において、より高い視線誘導効果を得ることができる。また、車両のドライバーは、通行部の外側と内側の境界を見失う恐れが少なくなることにより、視界不良による走行車両の不要な速度低下は、抑制される。
また、かかる道路標示装置によるライン状の光標示5の詳細な性能について、図9,10を用いて説明する。
図9は、標示装置本体1によるライン状の光標示5におけるライン方向5aの各測定位置の照度と標示幅(ライン方向5aと直交する方向における幅)とを測定するための試験状況を示す図である。その試験結果は、図10である。尚、以下の試験方法の説明では、便宜上、図9に示す前後方向と左右方向とを用いる。
図9の試験方法を具体的に説明すると、まず、標示装置本体1と、支持体2と、設置具3(図示せず)とを暗室状態にした屋内に設置させる。詳細には、標示装置本体1は、設置具3を介して支持体2に設置される際に、床面(路面等に相当する被照射面)から3.5mの高さに設置される。
次に、標示装置本体1(照射手段1A)から光50を照射して床面にライン状の光標示5を描く。具体的には、光50を照射して、支持体2から3.3m程度前方に離れた位置に左右方向に沿うライン状の光標示5を描き、そのライン状の光標示5の中心部51は、標示装置本体1の照射起点10に対して左方側に位置ずれしている。
このように照射したライン状の光標示5における左右方向の各位置で、照度と標示幅(前後方向に沿う幅)とを測定する。照度と標示幅の測定位置は、左右方向に沿って1m間隔で実施され、ライン状の光標示5において支持体2から最も近い位置を「0m」として、ライン状の光標示5の中心部51へ向かう左方側に「1m」「2m」…とし、中心部51とは逆へ向かう右方側に「−1m」「−2m」…として測定を行った。即ち、ライン状の光標示5の「0m」の位置と支持体2の設置位置とを結ぶ線は、ライン状の光標示5のライン方向5aに対して垂直である。また、ライン状の光標示5の中心部51は、「4m」〜「6m」の測定位置付近に設けられる。
照度の測定では、横河M&C(株)製の一般型AA級照度計(型番:510 02)を用い、ライン状の光標示5が照射された床面に前記照度計を載置させ、ライン状の光標示5の標示幅の中央位置(前後方向の中央位置)における照度を測定した。また、標示幅の測定では、ライン状の光標示5の前後方向の両縁の位置を目視で判断し、両縁間の長さを巻尺で測定した。
ライン状の光標示5の照度と標示幅の測定は、2回実施され、各々の結果は、図10に、サンプル(1)、サンプル(2)として示される。その結果、ライン状の光標示5を目視で視認した場合、ライン状の光標示5は、「−3m」から「12m」の範囲でライン状に良好に視認できた。更に、ライン状の光標示5は、「−1m」から「7m」の範囲では、照度の測定値が略20Lx以上であり、極めて明確に視認することができた。
以上のように、本実施形態に係る道路標示装置によれば、標示装置本体1は、通行部Rの外側に位置する支持体2に設置され、照射手段1Aは、通行部Rの外側と内側とを区別する車道外側線Lに対して、通行部Rの外側において上方から斜め下方に向けるとともに通行部Rの通行方向Pに沿って光50を照射してライン状の光標示5を描いているため、通行部Rを通行する車両の高さに影響されることなく任意の高さで、標示装置本体1を支持体2に取り付けて、車両のドライバーに対して通行部Rの外側と内側とを明確に区別させることができる。
特に、かかる道路標示装置では、ライン状の光標示5におけるライン方向5aの中心部51は、照射手段1Aから光が照射される起点である照射起点10に対して、照射手段1Aが照射する通行部Rにおける前記通行方向側に位置ずれするので、照射手段1Aにより描かれるライン状の光標示5のうち、通行方向の逆向き側の始端側では、照明手段1A(照射起点10)から車道外側線L(被照射面)までの照射距離を短くでき、照度を向上させて明るく明瞭に描かれることができるため、被照射面にライン状の光標示を視認性良く描くことができる。そして、ライン状の光標示5の前記始端側が明るく明瞭に描かれることで、車両のドライバーが目視したときの誘目性を向上させ、即ち視認性を向上させ、視線誘導効果を向上させることができる。
また、かかる道路標示装置では、ライン状の光標示5におけるライン方向5aの中心部51が上記のように前記通行部Rの通行方向側に位置ずれするので、照射手段1Aからの光の指向性を照射起点10に対して通行方向側とすることができ、照射手段1Aからの光50が車両のドライバーの目に直接達して、目を眩ませるような事態を防止することができる。更に、照射手段1Aからの光の指向性を照射起点10に対して通行方向側としたことで、車両のドライバーは、通行方向Pに視線誘導されて走行し易い。
また、かかる道路標示装置では、設置具3(詳細には、支持体取付部32)によって、前後軸周り(又は高さ軸周り)に標示装置本体1を支持体2に対して回転調整して、照射手段1Aからの光を通行方向Pに向けて照射することで、ライン状の光標示5におけるライン方向5aの中心部51を照射起点10に対して通行方向側に容易に位置ずれさせることができる。
また、かかる道路標示装置では、設置具3(詳細には、本体取付部31と連結上部34と連結下部35と支持体取付部32)によって、前後軸周り(又は高さ軸周り)に加えて、左右軸周り及び上下軸周り(又は、ライン軸周り及び交差軸周り)とに標示装置本体1を支持体2に対して回転調整することにより、ライン状の光標示5におけるライン方向5aを通行方向Pに極めて正確に沿わせることができる。
また、かかる道路標示装置では、照射手段1Aが通行部Rの外側において上方から斜め下方に向けて光50を照射するため、車両のドライバーは、傾斜する光50の幕を視認して、通行部Rの外側に出ないように注意喚起され得る。前記傾斜する光50の幕では、降雪や降雨、霧などの発生などにより視界が低下するような状況でも、空気中の雪や水滴などが光50に照らし出されて前記傾斜する光50の幕の視認性が向上し、より高い注意喚起効果が得られる。また、前記傾斜する光50の幕が連続して配置されるように複数の標示装置本体1を設置させれば、視界が低下するような状況でも通行部Rの外側と内側との境界を見失う恐れが少なくなり、より高い視線誘導効果を得ることができる。
また、設置具3は、前後軸、左右軸、上下軸(又は、高さ軸、ライン軸、交差軸)の各軸周りに標示装置本体1を支持体2に対して回転調整可能に構成されているため、例えば、支持体2が高欄、切土、盛土、法面等で構成される場合であっても、路面等の被照射面に描かれるライン状の光標示5の位置やライン方向5aを容易に調整することができる。
また、支持体2は、上部に屈曲部22を有するため、標示装置本体1を道幅方向外側寄りに配置することができ、標示装置本体1が車両柵Gに対して外側に位置する、即ち車両柵Gに対して内側に位置しないようにすることができる。更に、支持体2では、例えば、積雪地域における除雪車からの投雪や、風などの影響を受けた際に、屈曲部22の撓みによって、屈曲部22よりも上方の先端部23が大幅に揺れるような事態を抑制して、先端部23に設置された標示装置本体1からのライン状の光標示5を定位置に安定して照射させることができる。
また、接続ボックスSは、支持体2の基部21の上部であって、地上から2m程度の位置に設けられているので、例えば、積雪量が地上から2m程度に達するまでは、積雪による影響を受け難く、標示装置本体1に安定して電源供給できる。
また、本実施形態の道路標示装置の性能試験によれば、ライン状の光標示5は、ライン方向5a(図9の左右方向)に沿って「−3m」から「12m」までの15mの長さに亘ってライン状に良好に視認できるので、道路標示装置を道路に設置したとき、1台の道路標示装置によって道沿方向(通行方向)に沿って15mの範囲にライン標示を描くことができ、経済的なメリットがある。更に、複数の道路標示装置を道沿方向に互いに離間させて並設した場合には、例えば、道沿方向に沿って15m以下の間隔で互いに並設することでライン状の光標示5を被照射面に連設することで、より少ない台数の道路標示装置によって、道沿方向に沿う長距離のライン状の光標示5を描くことができ、経済的なメリットがある。
また、本実施形態の道路標示装置の性能試験によれば、ライン状の光標示5は、ライン方向5a(図9の左右方向)に沿って、略20Lx以上の照度が測定された「−1m」から「7m」までの8mの長さに亘ってライン状に極めて明確に視認できるので、ライン状の光標示5を極めて目立たせることができ、車両のドライバーや通行人に対して通行部の外側と内側とを明確に区別させることができる。
また、本実施形態の道路標示装置の性能試験によれば、ライン状の光標示5のうち、前記「−1m」から「7m」までの8mの長さに亘る範囲では、標示幅(図9の前後方向の幅)が150mm以上200mm以下という略150mmの標示幅で描かれるので、車道外側線(或いは、通行部の境界又は境界近傍)をライン状の光標示5で照射したとき、目視する車両のドライバーや通行人は、ライン状の光標示5が車道外側線を表す標示であることを容易に認識できる。
尚、本発明に係る道路標示装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
上記実施形態では、通行部Rは、車両が通行する車道として構成される場合について説明したが、これに限らず、通行部Rは、自転車又は歩行者が通行するような自転車専用又は歩行者専用又は自転車兼歩行者専用の通行部として構成することも可能である。
また、上記実施形態では、標示装置本体1の本体部13と設置具3の本体取付部31とは別体で構成され、設置具3の本体取付部31に対して、標示装置本体1の本体部13が取付けられる場合について説明したが、標示装置本体1の本体部13と設置具3の本体取付部31とは一体で構成されることも可能である。例えば、本体部13の筐体底部が設置具3の本体取付部31として構成され得る。
また、上記実施形態では、設置具3は、本体取付部31と連結上部34と連結下部35と支持体取付部32とを各々ボルトとナットで締結固定して構成される場合について説明したが、これに限らず、設置具3は、ボールジョイントを用いて、前後軸、左右軸、上下軸(又は、高さ軸、ライン軸、交差軸)の各軸周りに標示装置本体1を支持体2に対して回転調整可能に構成されることも可能である。但し、設置具3では、ボールジョイントによる構成よりも、上記本実施形態のようにボルトとナットで締結固定する構成の方が、構造上の強度を強くすることができる。それ故、本実施形態の設置具3では、例えば、積雪地域において、除雪車からの投雪や積雪に対して、標示装置本体1の向きがずれたり、標示装置本体1が落下したりすることを一層確実に防止することができる。
また、上記実施形態では、設置具3は、前後軸、左右軸、上下軸(又は、高さ軸、ライン軸、交差軸)の各軸周りに標示装置本体1を支持体2に対して回転調整可能に構成される場合について説明したが、これに限らず、設置具3は、前後軸、左右軸、上下軸(又は、高さ軸、ライン軸、交差軸)の各軸の少なくとも一軸周りに標示装置本体1を支持体2に対して回転調整可能に構成されることも可能である。
また、設置具3は、本体取付部31と連結上部34と連結下部35と支持体取付部32との互いの連結強度を高めるような構成を更に具備することも可能である。例えば、連結上部34と連結下部35との連結強度を高める構成として、連結上部34の一対の側壁部342と連結下部35の一対の側壁部352とに貫通する連結用孔を一又は複数設けて、この連結用孔に対して、ボルトを挿通してナットで締結したり、固定ピンを挿通してピン止めする構成を採用することが可能である。かかる設置具3では、例えば、投雪や積雪による影響に対して、連結上部34と連結下部35とが互いに不用意に回転してしまうことがないような所定の強度を備えることができる。
また、道路標示装置を昼間に組み立て設置するような場合、ライン状の光標示5は、太陽光の影響により視認し難いことに鑑みて、標示装置本体1は、ライン状の光標示5が描かれる位置を把握し易くするように、太陽光の下でも視認可能なレーザー光を照射するレーザー照射手段を設けて構成されることも可能である。
また、本実施形態の道路標示装置は、標示装置本体1の発光部11の発光ダイオードの発色は、特に限定しないが、例えば、緑色に発光する発光ダイオードを用いることができる。かかる構成では、ライン状の光標示5が緑色の光で描くことができるため、例えば、積雪によって道路の路面標示が視認できないような場合に、車両のドライバーや通行人は、白色の雪の上に描かれるライン状の光標示5を容易に視認できる。また、夜間に走行する車両のヘッドライトが、道路標示装置によるライン状の光標示5を照らした場合でも、ライン状の光標示5が緑色の光で描かれているため、車両のドライバーや通行人は、ライン状の光標示5を容易に視認できるようになされる。