JP2014233936A - レーザー彫刻用樹脂組成物、レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版及びその製造方法、並びに、フレキソ印刷版及びその製版方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(成分A)分子中にラジカル重合性基を1つのみ有するマクロモノマー、(成分B)分子中にラジカル重合性基を2以上有する多官能エチレン性不飽和化合物、(成分C)バインダーポリマー、及び、(成分D)ラジカル重合開始剤を含有することを特徴とするレーザー彫刻用樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
従来のレーザー彫刻用樹脂組成物としては、例えば、特許文献1及び2に記載のものが知られている。
特許文献2には、硬度、膜弾性、耐刷性及び水性インキ転移性に優れるフレキソ印刷版を得ることができ、印刷版のレーザー彫刻時に発生する彫刻カスのリンス性及びレーザー彫刻における彫刻感度に優れるレーザー彫刻用樹脂組成物として、(成分A)加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を有する化合物と、(成分B)熱可塑性エラストマーと、(成分C)重合性化合物と、を含有することを特徴とするレーザー彫刻用樹脂組成物が記載されている。
<1>(成分A)分子中にラジカル重合性基を1つのみ有するマクロモノマー、(成分B)分子中にラジカル重合性基を2以上有する多官能エチレン性不飽和化合物、(成分C)バインダーポリマー、及び、(成分D)ラジカル重合開始剤を含有することを特徴とするレーザー彫刻用樹脂組成物、
<2>成分Aが、スチレン類及び(メタ)アクリル酸エステル類よりなる群から選ばれた1種のエチレン性不飽和化合物に由来するモノマー単位を含有する、<1>に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<3>成分Aの重量平均分子量が2,000以上20,000以下である、<1>又は<2>に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<4>成分Aのガラス転移温度(Tg)が、20℃以上である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<5>成分Aの上記ラジカル重合性基が分子末端にあり、かつ、(メタ)アクリロイル基である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<6>(成分E)光熱変換剤を更に含有する、<1>〜<5>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<7>成分Cがプラストマーである、<1>〜<6>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<8>成分Cが熱可塑性エラストマーである、<1>〜<6>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<9>成分Dが有機過酸化物であり、成分Eがカーボンブラックである、<6>に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物、
<10><1>〜<9>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を、支持体上に備えるレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版、
<11><1>〜<9>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を熱及び/又は光により架橋した架橋レリーフ形成層を支持体上に備えるレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版、
<12>熱により架橋した架橋レリーフ形成層を備える、<11>に記載のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版、
<13><1>〜<9>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、並びに、上記レリーフ形成層を熱及び/又は光により架橋し、架橋レリーフ形成層を有するフレキソ印刷版原版を得る架橋工程、を含むことを特徴とするレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法、
<14>上記架橋工程において、上記レリーフ形成層を熱により架橋する、<13>に記載のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法、
<15><10>〜<12>のいずれか1つに記載のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版を準備する工程、及び、レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版をレーザー彫刻してレリーフ層を形成する彫刻工程、を含むことを特徴とするフレキソ印刷版の製版方法、
<16>上記彫刻工程後、上記レリーフ層表面を水系リンス液によりリンスするリンス工程を更に含む、<15>に記載のフレキソ印刷版の製版方法、
<17><15>又は<16>に記載のフレキソ印刷版の製版方法により製造されたフレキソ印刷版。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)は、(成分A)分子中にラジカル重合性基を1つだけ有するマクロモノマー、(成分B)分子中にラジカル重合性基を2以上有する多官能エチレン性不飽和化合物、(成分C)バインダーポリマー、及び、(成分D)ラジカル重合開始剤を含有することを特徴とする。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、レーザー彫刻が施されるフレキソ印刷版原版のレリーフ形成層を形成する以外の用途にも、特に限定なく広く用いることができる。例えば、以下に詳述する凸状のレリーフ形成をレーザー彫刻により行う印刷版原版のレリーフ形成層のみならず、表面に凹凸や開口部を形成する他の材形、例えば、凹版、孔版、スタンプ等、レーザー彫刻により必要な画像が形成される各種印刷版や各種成形体の形成に適用することができる。
本発明の樹脂組成物は、適切な支持体上にレリーフ形成層を形成するために使用して、レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版とすることが好ましい。
詳細な機構は不明であるが、上記樹脂組成物を成分Dの作用によりラジカル重合させると、成分A及び成分Bが成分Cの共存下で共重合すると、全体としては架橋された網目構造が形成される。成分Cを含む連続した網目構造(海)の中で、成分Aが有する疎水性の長鎖側鎖は互いに寄り集まって、微小な独立の領域(島)を形成すると推定される。本発明の樹脂組成物をラジカル重合させるとこのようにしていわゆる「海−島構造(ミクロ相分離構造)」が形成されると推定される。また、成分Aに由来するモノマー単位は「島」に偏在する傾向が強く、特に成分Aがガラス転移点(Tg)の高い分子鎖を有する場合には、この傾向が顕著になると推定される。この「島」の領域の形成により、熱溶融起因の彫刻形状の悪化は抑制され、また柔らかい「海」の領域の存在により樹脂全体としてのゴム弾性も保たれるため、本発明の課題が解決されたのではないかと推認される。
以下、本発明の樹脂組成物の必須成分である、(成分A)分子中にラジカル重合性基を1つのみ有するマクロモノマー、(成分B)分子中にラジカル重合性基を2以上有する多官能エチレン性不飽和化合物、(成分C)バインダーポリマー、及び、(成分D)ラジカル重合開始剤について順に説明する。
成分Aは、「ラジカル重合性基」、すなわち、ラジカル成長末端により付加重合が進行する基を有し、このようなラジカル重合性の官能基を分子内に「1つのみ」有する、いわゆる単官能のモノマーであり、かつ、比較的高分子量のモノマーである。ここで、マクロモノマーとは、重量平均分子量が1,000以上のものをいい、100,000以下であることが好ましい。より好ましい範囲については後述する。
ラジカル重合性基は、そのラジカル重合性が発現するために、分子内部にではなくて、分子の末端に1つのみあることが好ましい。
このような分子末端にラジカル重合性基を導入する方法の一つは、分子の末端に1つのみ存在する水酸基などの官能基と、(メタ)アクリル酸塩化物などとの反応を利用して導入する高分子反応法である。
別法としては、マクロモノマーは高温でのラジカル重合法によっても製造される。
いずれの方法により生成したマクロモノマーも本発明で使用できるが、高分子反応法により製造されたマクロモノマーが本発明において好ましく使用される。
−C(=O)C(R)=CH2 (1)
−C(=CH2)C(=O)O(R) (2)
(式中、Rは水素原子、又は、炭素数1〜20の1価の有機基を表す。)
式(1)において、Rは低級アルキル基(炭素数1〜5)又は水素原子であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましい。すなわち式(1)で表される基が(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。また、上記ラジカル重合性基が(メタ)アクリロイルオキシ基であることがより好ましい。
式(2)においても、Rは、式(1)と同義であり、水素原子又はメチル基であることが好ましい。すなわち式(2)で表される基が(1−ヒドロキシカルボニル)ビニル基又は(1−メトキシカルボニル)ビニル基であることが好ましい。
成分Aの長鎖骨格は、1種のモノマー単位から構成されていてもよく、2種以上のモノマー単位から構成されていても良い。
また成分Aは、スチレン、又は、(メタ)アクリル酸メチルに由来するモノマー単位を、全モノマー単位に対し、50モル%以上含有することが好ましく、80モル%以上含有することがより好ましく、90モル%以上含有することが更に好ましく、95モル%以上含有することが特に好ましい。
マクロモノマーの長鎖の分子鎖が、ポリメタクリル酸メチル(MMA)、ポリスチレン(St)、ポリ(アクリロニトリル−スチレン)(AN/St)、ポリ(メタアクリル酸−2−ヒドロキシエチル)(MMA/HEMA)、又は、ポリイソブチルメタクリレート(IBMA)であるマクロモノマーが、東亞合成(株)から種々のグレード名で市販されており、本発明に使用できる。
東亞合成(株)から上市されている製品のグレード名には、45%AA−6、AA−6SR、AA−6、AS−6、AN−6S、AB−6、AW−6S、AK−5、AK−32が含まれる。
本発明の樹脂組成物中に含まれる成分Aの含有量は、溶媒等の揮発成分を除いた固形分全質量に対し、1〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましく、10〜20質量%であることが更に好ましい。
なお、長鎖骨格が共重合体であるマクロモノマーにおける重合体の「ガラス転移温度」は、次のFOX式(下記式(3))により算出することもできる。この式(3)中に用いられるTgは絶対温度(K)を意味するが、明細書中の他の記載において用いられるTgは摂氏温度(℃)を意味する。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+…+Wi/Tgi+…+Wn/Tgn
(3)
上記FOX式は、n種の単量体由来の重合体を構成する、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度をTgiとし、各モノマーの質量分率を、Wiとしており、(W1+W2+…+Wi+…+Wn=1)である。
本発明に使用する成分Bは、分子内にラジカル重合性基を2以上有する、多官能エチレン性不飽和化合物である。成分Bが有するラジカル重合性基は、2個〜20個であることが好ましく、2個〜6個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
成分Bは、分子量が1,000未満の重合性化合物であることが好ましく、(重量平均)分子量が170〜900であることがより好ましい。
上記の脂肪族多価アルコールとしては、炭素数2〜10のアルキレンジオール、トリメチロールプロバン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及び、トリシクロデカンジメタノールが好ましく例示される。
また、ヒドロキシル基や、アミノ基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナト基や、エポキシ基、等の親電子性置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類との付加反応物、ハロゲン原子や、トシルオキシ基、等の脱離性置換基を有する、不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、ビニル化合物、アリル化合物、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
(ただし、R及びR’は、それぞれ、H又はCH3を示す。)
また、成分Bとしては、上市されている製品を使用することができ、ヘキサンジオールジアクリレート(第一工業製薬(株)製)、トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業(株)製)が例示できる。
成分Bの含有量は、レーザー彫刻用樹脂組成物の固形分全質量に対し、3〜60質量%であることが好ましく、8〜30質量%であることがより好ましく、10〜20質量%であることが特に好ましい。
本発明の樹脂組成物は、必須成分として、(成分C)バインダーポリマーを含有する。バインダーポリマーは、結着樹脂であって、いわゆる内部オレフィン結合を有していてもよい。
成分Cは、主鎖末端にはエチレン性不飽和基を有しないことが好ましく、分子末端以外の位置にエチレン性不飽和基を有していてもよい。また、成分Cは、重量平均分子量が1,000以上1,000,000以下であることが好ましく、2,000〜500,000であることがより好ましい。
バインダーポリマーとしては、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、アクリル樹脂、アセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、及び、ポリ共役ジエン樹脂から選択して用いることができ、プラストマー又は熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
本発明において「プラストマー」とは、高分子学会編「新版高分子辞典」(日本国、朝倉書店、1988年発行)に記載されているように、加熱により容易に流動変形し、かつ冷却により変形された形状に固化できるという性質を有する高分子体を意味する。プラストマーは、エラストマー(外力を加えたときに、その外力に応じて瞬時に変形し、かつ外力を除いたときには、短時間に元の形状を回復する性質を有するもの)に対する言葉であり、エラストマーのような弾性変形を示さず、容易に塑性変形するものである。
本発明において、プラストマーは、元の大きさを100%としたときに、室温(20℃)において小さな外力で200%まで変形させることができ、上記外力を除いても、130%以下に戻らないものを意味する。より詳細には、JIS K 6262−1997の引張永久ひずみ試験に基づき、20℃において引張試験でI字状試験片の引張前の標線間距離の2倍に伸ばすことが可能であり、かつ、引張前の標線間距離の2倍に伸ばしたところで5分間保持した後、引張外力を除いて5分後に引張永久ひずみが30%以上であるポリマーを意味する。
なお、上記の測定ができないポリマーの場合、外力を加えなくとも変形して元の形状に戻らないポリマーはプラストマーに該当し、例えば、水あめ状、オイル状、液体状の樹脂が該当する。
更に、プラストマーは、ポリマーのガラス転移温度(Tg)が測定可能である場合には、少なくとも1つのTgが20℃未満であることが好ましい。
上記のポリブタジエンは、主鎖がブタジエンを単量体単位とするポリマーであればよく、末端変性ポリブタジエンや、部分水素添加ポリブタジエン、水添ポリブタジエンが含まれる。上市されているポリブタジエン、ポリブタジエンポリオールを使用してもよく、例えば、クラプレンLBRシリーズ((株)クラレ製)、Poly bd(出光興産(株)製)、UBEPOLシリーズ(宇部興産(株))等が例示される。
上記のポリイソプレンは、主鎖がイソプレンを単量体単位とするポリマーであればよく、末端変性ポリイソプレンや、部分水素添加ポリイソプレン、水添ポリイソプレンが含まれる。上市されているポリイソプレン、ポリイソプレンポリオールを使用することもでき、例えば、クラプレンLIRシリーズ((株)クラレ製)が例示される。
なお、上記のポリブタジエン及び上記のポリイソプレンは、いずれも1,4−付加体が主成分であることが好ましい。
また、上記のポリブタジエン及び上記のポリイソプレンは、いずれも、数平均分子量が1,500〜500,000であることが好ましく、2,000〜300,000であることがより好ましく、2,500〜250,000であることが更に好ましい。
成分Cとしては、いくつかのセグメントが化学的に結合した熱可塑性エラストマーが好ましく、ブロック共重合体がより好ましい。ブロック共重合体の分子構造は、ポリエーテル又はゴム分子のようなソフトセグメントと、常温付近では加硫ゴムと同じく塑性変形を示さないハードセグメントからなる。そして、上記ハードセグメントの相とソフトセグメントの相とが微細に分散した多相構造を形成する。ハードセグメントが形成する相としては凍結相、結晶相、水素結合、イオン架橋など種々のタイプが存在する。
熱可塑性エラストマーは、柔軟性とゴム弾性発現の観点から、ガラス転移温度(Tg)が20℃以下のポリマーであることが好ましく、0℃以下のポリマーであることがより好ましい。熱可塑性エラストマーは、耐刷性の観点から、融点(Tm)が70℃以上のポリマーであることが好ましく、100℃以上のポリマーであることがより好ましい。
アクリル系熱可塑性エラストマーとしては、アクリル系モノマーに由来するモノマー単位を主体とする重合体ブロック(ハードセグメント)と、共役ジエン化合物に由来するモノマー単位を主体とするブロック(ソフトセグメント)とのブロック共重合体(以下、アクリル系ブロック共重合体とする)、及び、上記ブロック共重合体の共役ジエン化合物に由来するモノマー単位を水素添加したものを例示することができる。
本発明における「アクリル系」とは、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及びそのエステル類、並びに、アクリルアミドやメタクリルアミド及びその誘導体よりなる群から選ばれたモノマー由来の構成単位を少なくとも1種含んでいることを意味する。
また、アクリル系ブロック共重合体は、1種以上のアクリル系ブロックを有していればよく、更に、芳香族ビニル重合体ブロック、共役ジエン重合体ブロック、水添共役ジエン重合体ブロックなどのアクリル系以外のブロックを有していてもよいが、2種以上のアクリル系ブロックのみからなる共重合体であることが好ましい。
また、アクリル系ブロック共重合体は、同種のモノマー単位からなるブロックを2つ以上有する場合は、これらは、分子量(重量平均分子量)が同一であっても異なっていてもよく、また、モノマー単位の組成割合、配列状態、立体配置、結晶構造などの分子構造が同一であっても、異なっていてもよい。
上記ブロック共重合体における各ブロックにおけるモノマー単位は、1種単独であってもよいし、2種以上有していてもよい。例えば、アクリル系ブロック共重合体の各ブロックはそれぞれ、ホモポリマーであっても、ランダム共重合体であってもよいが、上記ブロック共重合体の各ブロックがそれぞれ、ホモポリマーであることが好ましい。
アクリル系ブロック共重合体は、硬化樹脂の柔軟性に優れ、製造が容易であることから、A−B−A型のトリブロック共重合体、及び、A−B型のジブロック共重合体が好ましく、A−B−A型のトリブロック共重合体がより好ましい。
また、アクリル系ブロック共重合体は、下記式(C−1)で表されるモノマー単位からなるブロックを少なくとも有することがより好ましく、2種以上の下記式(C−1)で表されるモノマー単位からなるブロックのみからなるブロック共重合体であることが特に好ましい。
式(C−1)におけるR2は、炭素数1〜16であることが好ましく、炭素数1〜12であることがより好ましく、1〜8であることが特に好ましい。
また、式(C−1)におけるR2は、膜中で共存する可塑剤や架橋剤との相溶性の観点から、アルキル基又はヒドロキシアルキル基であることが好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。また、上記R2におけるアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、ポリアルキレンオキシアルキル基、アラルキル基及びジアルキルアミノアルキル基は、直鎖であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
下記式(C’−1)におけるR1及びR2は、上記式(C−1)におけるR1及びR2とそれぞれ同義であり、好ましい態様も同様である。
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、アセトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体のモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。更に、ウレタン基やウレア基を有するアクリル単量体を含んで構成される変性アクリル樹脂も好ましく使用することができる。
また、アクリル系ブロック共重合体は、メチル(メタ)アクリレートを少なくとも共重合して得られたブロック共重合体であることが好ましく、メチル(メタ)アクリレートを必須成分として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート及び/又はn−ブチル(メタ)アクリレートを共重合して得られたブロック共重合体であることがより好ましく、メチル(メタ)アクリレートを必須成分として、n−ブチル(メタ)アクリレートを共重合して得られたブロック共重合体であることが更に好ましい。
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系モノマーに由来するモノマー単位を主体とする重合体ブロック(ハードセグメント)と、共役ジエン化合物に由来するモノマー単位を主体とするブロック(ソフトセグメント)とのブロック共重合体、及び、上記ブロック共重合体の共役ジエン化合物に由来するモノマー単位を水素添加したものを例示することができる。
スチレン系モノマーとしては、スチレン及び少なくとも1つの置換基(ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基)により任意の位置で置換されたスチレン誘導体が挙げられる。具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン又はt−ブチルスチレンが挙げられ、中でもスチレンが好ましい。
共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチルブタジエンが挙げられ、中でもブタジエン、イソプレンが好ましい。
これらは1種類のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
スチレン系熱可塑性エラストマーとして、具体的には、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)又はスチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)等が挙げられ、中でも、SIS、SBS、SEBSが好ましく、SBSがより好ましい。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、式(I)で表される構成単位よりなるハードセグメントと、式(II)で表される構成単位よりなるソフトセグメントとがブロック共重合したブロック共重合体が好ましく例示される。
R1は分子量が300以下の芳香環を含む2価の残基を表し、置換基を有していてもよいフェニレン基が好ましい。上記置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、アミノ基、炭素数1〜10のアルキル基を有するアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基が挙げられる。
Gは平均分子量が400〜3,500のポリ(アルキレンオキサイド)グリコールから両末端のヒドロキシ基を除いた2価の残基を表す。
R2は分子量が300以下の2価の残基を表し、炭素数1〜30のアルキレン基、炭素数6〜30のアリーレン基を表す。R2はR1における上記置換基を有していてもよい。
式(II’)中、qは1〜10の整数を表し、素材入手性の観点から、2〜4であることが好ましい。
rは1〜500の整数を表し、柔軟性とゴム弾性発現の観点から、5〜100であることが好ましい。
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントであるポリオレフィン樹脂と、ソフトセグメントであるオレフィン系エラストマーとが多相を形成したものである。
ハードセグメントであるポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
ソフトセグメントであるオレフィン系エラストマーとしては、エチレンに由来するモノマー単位と、炭素数が3以上のα−オレフィン単位に由来する構成単位、からなる共重合体がより好ましい。
炭素数が3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセンなどのα−オレフィンから誘導される構成単位が挙げられる。
オレフィン系エラストマーの具体例として、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−ヘキセンランダム共重合体、エチレン−オクテンランダム共重合体、エチレン−デセンランダム共重合体、エチレン−4−メチルペンテンランダム共重合体等が挙げられ、中でもエチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−ブテンランダム共重合体が好ましい。
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル系熱可塑性エラストマーは、エチレンを主体とする重合体ブロック(ハードセグメント)と、(メタ)アクリル酸エステルに由来する重合体ブロック(ソフトセグメント)とのブロック共重合体を例示することができる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸イソデシルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルに由来する重合体ブロックには、これらのモノマー単位が、単独で含有されていてもよく、少なくとも2種が含有されていてもよい。
また、上記エチレン及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の他に、一酸化炭素に由来する構成単位を含むターポリマーもエチレン−(メタ)アクリル酸エステル系熱可塑性エラストマーとして好ましい。
エチレン−(メタ)アクリル酸エステル系熱可塑性エラストマーの具体例として、エチレン/アクリル酸n−ブチル/一酸化炭素共重合体、エチレン/アクリル酸デシル/一酸化炭素共重合体等が挙げられ、中でもエチレン/アクリル酸n−ブチル/一酸化炭素共重合体が好ましい。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、ポリアミドをハードセグメントに、ガラス転移温度の低いポリエステルジオール又はポリエーテルジオールをソフトセグメントに用いたマルチブロックコポリマーが例示される。
ここで、ポリアミド成分としては、ナイロン−6、−66、−610、−11、−12などが挙げられ、中でもナイロン−6、ナイロン−12が好ましい。
ポリエーテルジオールとしては、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコールなどが挙げられる。
ポリエステルジオールとしては、ポリ(エチレン−1,4−アジペート)グリコール、ポリ(ブチレン−1,4−アジペート)グリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。ポリアミド系エラストマーの具体例として、ナイロン12/ポリテトラメチレングリコールブロック共重合体などが挙げられる。
成分Cの含有量としては、樹脂組成物の全固形分量に対し、10〜95質量%であることが好ましく、20〜90質量%であることがより好ましく、30〜80質量%であることが更に好ましい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、架橋構造形成を促進するため、(成分D)ラジカル重合開始剤を含有する。
本発明のラジカル重合開始剤としては、熱重合開始剤と光重合開始剤のどちらも使用することができ、当業者間で公知のものを制限なく使用することができる。以下詳述するが、本発明はこれらの記述により制限を受けるものではない。
また、(c)有機過酸化物及び(l)アゾ系化合物としては、以下に示す化合物が好ましい。
本発明に用いることができるラジカル重合開始剤として好ましい(a)芳香族ケトン類としては、ベンゾフェノン、4,4’−(ビスジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−(ビスジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−トリル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパンなどのベンゾフェノン系又はアルキルフェノン系が好ましく、アルキルフェノン系がより好ましく、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが更に好ましい。
本発明に用いることができるラジカル重合開始剤として好ましい(c)有機過酸化物としては、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−3−メチルベンゾエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシアセテートなどの過酸化エステル系や、α,α’−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネートが好ましく、過酸化エステル系の有機過酸化物がより好ましく、t−ブチルパーオキシベンゾエートが更に好ましい。
本発明に用いることができるラジカル重合開始剤として好ましい(l)アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロピオニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等を挙げることができる。
本発明において、レーザー彫刻用樹脂組成物中の成分Dの含有量は、全固形分量に対して、0.01〜40質量%であることが好ましく、0.05〜30質量%であることがより好ましく、0.1〜20質量%であることが更に好ましい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、(成分E)を更に含有することが好ましく、光熱変換剤は700〜1,300nmの波長の光を吸収可能であることがより好ましい。すなわち、本発明における光熱変換剤は、レーザーの光を吸収し発熱することで、レーザー彫刻時の硬化物の熱分解を促進すると考えられる。このため、彫刻に用いるレーザー波長の光を吸収する光熱変換剤を選択することが好ましい。
本発明に用いることができる光熱変換剤としては、種々の染料又は顔料が用いられる。
また、カーボンブラックとしては、光熱変換により発生した熱を周囲のポリマー等に効率よく伝えることで彫刻感度が向上するという観点で、比表面積が少なくとも100m2/gである、伝導性カーボンブラックが好ましい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物においては、重合開始剤と700〜1,300nmの波長の光を吸収可能な光熱変換剤とを併用することが好ましく、成分Dとして有機過酸化物とカーボンブラックとを併用することが特に好ましい。上記態様であると、レーザー彫刻時において、架橋レリーフ形成層中に残留している重合開始剤が光熱変換剤から発生する熱により分解し、成分A等の分解をより促進することができ、彫刻感度を向上させることができる。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物中における(成分E)700〜1,300nmの波長の光を吸収可能な光熱変換剤の含有量は、その分子固有の分子吸光係数の大きさにより大きく異なるが、樹脂組成物の全固形分に対し、0.01〜20質量%が好ましく、0.05〜15質量%がより好ましく、1〜10質量%が特に好ましい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物は、溶剤を含有していてもよい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を調製する際に用いる溶剤は、各成分の溶解性の観点から、主として非プロトン性の有機溶剤を用いることが好ましい。より具体的には、非プロトン性の有機溶剤/プロトン性有機溶剤=100/0〜50/50(重量比)で用いることが好ましく、100/0〜70/30(重量比)で用いることがより好ましく、100/0〜90/10(重量比)で用いることが特に好ましい。
非プロトン性の有機溶剤の好ましい具体例としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
プロトン性有機溶剤の好ましい具体例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオールが挙げられる。
これらの中でも、非プロトン性の有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いることが好ましい。
本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物には、上記成分A〜成分F以外の添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜配合することができる。例えば、ワックス、プロセス油、金属酸化物、オゾン分解防止剤、老化防止剤、熱重合防止剤、着色剤等が挙げられ、これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ニトロセルロースは自己反応性化合物であるため、レーザー彫刻時、自身が発熱し、共存する親水性ポリマー等のバインダーポリマーの熱分解をアシストする。その結果、彫刻感度が向上すると推定される。
高熱伝導性物質は、熱伝達を補助する目的で添加され、熱伝導性物質としては、金属粒子等の無機化合物、導電性ポリマー等の有機化合物が挙げられる。金属粒子としては、粒径がマイクロメートルオーダーから数ナノメートルオーダーの、金微粒子、銀微粒子、銅微粒子が好ましい導電性ポリマーとしては、特に共役ポリマーが好ましく、具体的には、ポリアニリン、ポリチオフェンが挙げられる。
また、共増感剤を用いることで、レーザー彫刻用樹脂組成物を光硬化させる際の感度を更に向上させることができる。
更に、組成物の製造中あるいは保存中において重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが好ましい。
レーザー彫刻用樹脂組成物の着色を目的として染料又は顔料等の着色剤を添加してもよい。これにより、画像部の視認性や、画像濃度測定機適性といった性質を向上させることができる。
本発明のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の第1の実施態様は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を有する。
また、本発明のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の第2の実施態様は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を架橋した架橋レリーフ形成層を有する。
本発明において「レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版」とは、レーザー彫刻用樹脂組成物からなる架橋性を有するレリーフ形成層が、架橋される前の状態、及び、光又は熱により硬化された状態の両方又はいずれか一方のものをいう。
本発明において「レリーフ形成層」とは、架橋される前の状態の層をいい、すなわち、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなる層であり、必要に応じ、乾燥が行われていてもよい。
架橋レリーフ形成層を有する印刷版原版をレーザー彫刻することにより「フレキソ印刷版」が作製される。
本発明において「架橋レリーフ形成層」とは、上記レリーフ形成層を架橋した層をいう。上記の架橋は、熱及び/又は光により行うことができる。また、上記架橋は樹脂組成物が硬化される反応であれば特に限定されず、成分B同士の反応、成分Bと他の成分との反応などによる架橋構造が例示できる。
また、本発明において「レリーフ層」とは、フレキソ印刷版におけるレーザーにより彫刻された層、すなわち、レーザー彫刻後の上記架橋レリーフ形成層をいう。
レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版は、必要により更に、支持体と(架橋)レリーフ形成層との間に接着層を、また、(架橋)レリーフ形成層上にスリップコート層、保護フィルムを有していてもよい。
レリーフ形成層は、上記本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなる層であり、熱架橋性の層であることが好ましい。
以下、主としてレリーフ形成層をシート状にした場合を例に挙げて説明する。
レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の支持体に使用する素材は特に限定されないが、寸法安定性の高いものが好ましく使用され、例えば、スチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属、ポリエステル(例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PAN(ポリアクリロニトリル))やポリ塩化ビニルなどのプラスチック樹脂、スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ガラスファイバーで補強されたプラスチック樹脂(エポキシ樹脂やフェノール樹脂など)が挙げられる。支持体としては、PETフィルムやスチール基板が好ましく用いられる。支持体の形態は、レリーフ形成層がシート状であるかスリーブ状であるかによって決定される。
レリーフ形成層を支持体上に形成する場合、両者の間には、層間の接着力を強化する目的で接着層を設けてもよい。
接着層に使用し得る材料(接着剤)としては、例えば、I.Skeist編、「Handbook of Adhesives」、第2版(1977)に記載のものを用いることができる。
レリーフ形成層表面又は架橋レリーフ形成層表面への傷や凹み防止の目的で、レリーフ形成層表面又は架橋レリーフ形成層表面に保護フィルムを設けてもよい。保護フィルムの厚さは、25〜500μmが好ましく、50〜200μmがより好ましい。保護フィルムは、例えば、PETのようなポリエステル系フィルム、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)のようなポリオレフィン系フィルムを用いることができる。またフィルムの表面はマット化されていてもよい。保護フィルムは、剥離可能であることが好ましい。
レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、レーザー彫刻用樹脂組成物を調製し、必要に応じて、このレーザー彫刻用塗布液組成物から溶剤を除去した後に、支持体上に溶融押し出しする方法が挙げられる。あるいは、レーザー彫刻用樹脂組成物を、支持体上に流延し、これをオーブン中で乾燥して樹脂組成物から溶剤を除去する方法でもよい。
中でも、本発明のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、並びに、上記レリーフ形成層を熱及び/又は光により架橋した架橋レリーフ形成層を有するフレキソ印刷版原版を得る架橋工程、を含む製造方法であることが好ましい。
保護フィルムを用いる場合には、まず保護フィルム上にレリーフ形成層を積層し、次いで支持体をラミネートする方法を採ってもよい。
接着層を設ける場合は、接着層を塗布した支持体を用いることで対応できる。スリップコート層を設ける場合は、スリップコート層を塗布した保護フィルムを用いることで対応できる。
本発明のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程を含むことが好ましい。
レリーフ形成層の形成方法としては、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を調製し、必要に応じて、このレーザー彫刻用樹脂組成物から溶剤を除去した後に、支持体上に溶融押し出しする方法や、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を調製し、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物を支持体上に流延し、これをオーブン中で乾燥して溶剤を除去する方法が好ましく例示できる。
レーザー彫刻用樹脂組成物は、例えば、成分A〜D、並びに、任意成分として、成分Eを適当な溶剤に溶解又は分散させ、次いで、これらの液を混合することによって製造できる。溶剤成分のほとんどは、フレキソ印刷版原版を製造する段階で除去することが好ましいので、溶剤としては、揮発しやすい低分子アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル)等を用い、かつ温度を調整するなどして溶剤の全添加量をできるだけ少なく抑えることが好ましい。
本発明のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法は、上記レリーフ形成層を熱及び/又は光により架橋した架橋レリーフ形成層を有するフレキソ印刷版原版を得る架橋工程を含む製造方法であることが好ましく、上記レリーフ形成層を熱により架橋した架橋レリーフ形成層を有するフレキソ印刷版原版を得る架橋工程を含む製造方法であることがより好ましい。
レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版を加熱することで、レリーフ形成層を架橋することができる(熱架橋工程)。熱により架橋を行うための加熱手段としては、印刷版原版を熱風オーブンや遠赤外オーブン内で所定時間加熱する方法や、加熱したロールに所定時間接する方法が挙げられる。
レリーフ形成層を熱架橋することで、第1にレーザー彫刻後形成されるレリーフがシャープになり、第2にレーザー彫刻の際に発生する彫刻カスの粘着性が抑制されるという利点がある。
レリーフ形成層が光重合開始剤を含有する場合には、光重合開始剤のトリガーとなる光(「活性光線」ともいう。)をレリーフ形成層に照射することで、レリーフ形成層を架橋することができる。
光は、レリーフ形成層全面に行うのが一般的である。光としては可視光、紫外光、及び電子線などが挙げられるが、紫外光が最も一般的である。レリーフ形成層の支持体等、レリーフ形成層を固定化するための基材側を裏面とすれば、表面に光を照射するだけでもよいが、支持体が活性光線を透過する透明なフィルムであれば、更に裏面からも光を照射することが好ましい。表面からの照射は、保護フィルムが存在する場合、これを設けたまま行ってもよいし、保護フィルムを剥離した後に行ってもよい。酸素の存在下では重合阻害が生じる恐れがあるので、レリーフ形成層に塩化ビニルシートを被せて真空引きした上で、活性光線の照射を行ってもよい。
本発明のフレキソ印刷版の製版方法は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、上記レリーフ形成層を熱及び/又は光で架橋し架橋レリーフ形成層を有するフレキソ印刷版原版を得る架橋工程、及び、上記架橋レリーフ形成層を有するフレキソ印刷版原版をレーザー彫刻する彫刻工程、を含むことが好ましい。
本発明のフレキソ印刷版は、本発明のレーザー彫刻用樹脂組成物からなる層を架橋及びレーザー彫刻して得られたレリーフ層を有するフレキソ印刷版であり、本発明のフレキソ印刷版の製版方法により製版されたフレキソ印刷版であることが好ましい。
本発明のフレキソ印刷版は、水性インキを印刷時に好適に使用することができる。
本発明のフレキソ印刷版の製版方法における層形成工程及び架橋工程は、上記レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法における層形成工程及び架橋工程と同義であり、好ましい範囲も同様である。
本発明のフレキソ印刷版の製版方法は、上記架橋レリーフ形成層を有するフレキソ印刷版原版をレーザー彫刻する彫刻工程を含むことが好ましい。
彫刻工程は、上記架橋工程で架橋された架橋レリーフ形成層をレーザー彫刻してレリーフ層を形成する工程である。具体的には、架橋された架橋レリーフ形成層に対して、所望の画像に対応したレーザー光を照射して彫刻を行うことによりレリーフ層を形成することが好ましい。また、所望の画像のデジタルデータを元にコンピューターでレーザーヘッドを制御し、架橋レリーフ形成層に対して走査照射する工程が好ましく挙げられる。
この彫刻工程には、赤外線レーザーが好ましく用いられる。赤外線レーザーが照射されると、架橋レリーフ形成層中の分子が分子振動し、熱が発生する。赤外線レーザーとして炭酸ガスレーザーやYAGレーザーのような高出力のレーザーを用いると、レーザー照射部分に大量の熱が発生し、架橋レリーフ形成層中の分子は分子切断又はイオン化されて選択的な除去、すなわち、彫刻がなされる。レーザー彫刻の利点は、彫刻深さを任意に設定できるため、構造を3次元的に制御することができる点である。例えば、微細な網点を印刷する部分は、浅く又はショルダーをつけて彫刻することで、印圧でレリーフが転倒しないようにすることができ、細かい抜き文字を印刷する溝の部分は深く彫刻することで、溝にインキが埋まりにくくなり、抜き文字つぶれを抑制することが可能となる。
中でも、光熱変換剤の吸収波長に対応した赤外線レーザーで彫刻する場合には、より高感度で架橋レリーフ形成層の選択的な除去が可能となり、シャープな画像を有するレリーフ層が得られる。
半導体レーザーとしては、波長が700〜1,300nmのものが好ましく、800〜1,200nmのものがより好ましく、860〜1,200nmのものが更に好ましく、900〜1,100nmのものが特に好ましい。
また、本発明のフレキソ印刷版原版を用いたフレキソ印刷版の製版方法に好適に使用し得るファイバー付き半導体レーザーを備えた製版装置は、特開2009−172658号公報及び特開2009−214334号公報に詳細に記載され、これを本発明に係るフレキソ印刷版の製版に使用することができる。
本発明のフレキソ印刷版の製版方法では、彫刻工程に次いで、更に、必要に応じて下記リンス工程、乾燥工程、及び/又は、後架橋工程を含んでもよい。
リンス工程:彫刻後のレリーフ層表面を、水又は水を主成分とする液体で彫刻表面をリンスする工程。
乾燥工程:彫刻されたレリーフ層を乾燥する工程。
後架橋工程:彫刻後のレリーフ層にエネルギーを付与し、レリーフ層を更に架橋する工程。
上記工程を経た後、彫刻表面に彫刻カスが付着しているため、水又は水を主成分とする液体で彫刻表面をリンスして、彫刻カスを洗い流すリンス工程を追加してもよい。リンスの手段として、水道水で水洗する方法、高圧水をスプレー噴射する方法、感光性樹脂凸版の現像機として公知のバッチ式又は搬送式のブラシ式洗い出し機で、彫刻表面を主に水の存在下でブラシ擦りする方法などが挙げられ、彫刻カスのヌメリがとれない場合は、石鹸や界面活性剤を添加したリンス液を用いてもよい。
彫刻表面をリンスするリンス工程を行った場合、彫刻されたレリーフ形成層を乾燥してリンス液を揮発させる乾燥工程を追加することが好ましい。
更に、必要に応じてレリーフ形成層を更に架橋させる後架橋工程を追加してもよい。追加の架橋工程である後架橋工程を行うことにより、彫刻によって形成されたレリーフをより強固にすることができる。
リンス液を上記のpH範囲とするために、適宜、酸及び/又は塩基を用いてpHを調整すればよく、使用する酸及び塩基は特に限定されない。
本発明に用いることができるリンス液は、主成分として水を含有することが好ましい。
また、リンス液は、水以外の溶剤として、アルコール類、アセトン、テトラヒドロフラン等などの水混和性溶剤を含有していてもよい。
本発明に用いることができる界面活性剤としては、彫刻カスの除去性、及び、フレキソ印刷版への影響を少なくする観点から、カルボキシベタイン化合物、スルホベタイン化合物、ホスホベタイン化合物、アミンオキシド化合物、又は、ホスフィンオキシド化合物等のベタイン化合物(両性界面活性剤)が好ましく挙げられる。
界面活性剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の使用量は特に限定する必要はないが、リンス液の全重量に対し、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがより好ましい。
フレキソ印刷版が有するレリーフ層の厚さは、耐磨耗性やインキ転移性のような種々の印刷適性を満たす観点からは、0.05mm以上10mm以下が好ましく、より好ましくは0.05mm以上7mm以下、特に好ましくは0.05mm以上3mm以下である。
なお、本明細書におけるショアA硬度は、25℃において、測定対象の表面に圧子(押針又はインデンタと呼ばれる)を押し込み変形させ、その変形量(押込み深さ)を測定して、数値化するデュロメータ(スプリング式ゴム硬度計)により測定した値である。
(成分A)分子中にラジカル重合性基を1つのみ有するマクロモノマー
A−1:AS−6(東亞合成(株)製)、ポリスチレン骨格、Tg>20℃、Mw=6,000
A−2:AA−6(東亞合成(株)製)、ポリメタクリル酸メチル骨格、Tg>20℃、Mw=6,000
A−3:AA−714(東亞合成(株)製)、(ポリメタクリル酸メチル・ポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチル)(86/14)共重合骨格、Tg>20℃、Mw=6,000
A−4:AB−6(東亞合成(株)製)、ポリアクリル酸ブチル骨格、Tg<20℃、Mw=6,000
A−5:ラウリルメタクリレート、分子量254.4
A−6:ステアリルメタクリレート(和光純薬工業(株)製)、分子量338.6
A−7:スチレン(東京化成工業(株)製)、分子量104.2
A−8:XMAP C/Mタイプ((株)カネカ製)、2官能アクリル系液状樹脂、Tg<20℃、Mn=20,000
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA、第一工業製薬(株)製)
トリメチロールプロパントリアクリレート(A−TMPT、新中村化学工業(株)製)
C−1:TR−2000(JSR(株)製)、スチレン・ブタジエン熱可塑性エラストマー、Tg=約−80℃及び約100℃
C−2:LIR−50((株)クラレ製)、Tg=−63℃、液状ポリイソプレン、Mn=54,000、プラストマー
C−3:UBEPOL BR 150L(宇部興産(株)製)、ポリブタジエンラバー、Mn=243,000、プラストマー、Tg=約−80℃
C−4:LA2250((株)クラレ製)、ポリメタクリル酸メチル−b−ポリアクリル酸n−ブチル−b−ポリメタクリル酸メチルブロック共重合体、熱可塑性エラストマー、Mw=67,000、Tg=約−30℃及び約130℃
D−1:パーブチルZ(日油(株)製、t−ブチルパーオキシベンゾエート)
D−2:イルガキュア184(チバガイギー(株)製、(1−ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルケトン)
カーボンブラック#45L(三菱化学(株)製、粒子径:24nm、比表面積:125m2/g、DBP吸油量:45cm3/100g)
1.レーザー彫刻用樹脂組成物の調製
撹拌羽及び冷却管をつけた3つ口フラスコ中に、表1に記載の成分Cを64部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを50部入れ、撹拌しながら70℃で180分間加熱し、成分Cを溶解させた。
その後、溶液を40℃にし、表1に記載の成分Aを10部、成分Bを15部、成分Dを1部及び表1に記載の成分Eを10部添加して30分間撹拌した。なお、表1に「なし」と記載されている成分は、上記において添加しなかった。
この操作により、流動性のある架橋性レリーフ形成層用塗布液(レーザー彫刻用樹脂組成物)をそれぞれ得た。
ポリエチレンテレフタレート(PET)基板上に所定厚のスペーサー(枠)を設置し、得られた上記の樹脂組成物をスペーサー(枠)から流出しない程度に静かに流延し、70℃のオーブン中で3時間乾燥させた。その後80℃で3時間、更に100℃で3時間加熱して熱架橋させ、厚さがおよそ1mmの架橋レリーフ形成層を設け、レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版を作製した。ただし、成分Dが光重合開始剤である実施例10については、熱架橋を行う代わりに超高圧水銀灯のUV照射により光架橋の操作を行った。
レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版から、スペーサーとPETを除去し剥離した後、架橋したレリーフ形成層(架橋レリーフ形成層)に対し、以下の2種のレーザーにより1cm四方に巾100μmの凹線、凸線を100μmおきに彫刻し、また別に1cm四方のベタ部分をラスター彫刻して、フレキソ印刷版を得た。
樹脂組成物が光熱変換剤を含まない実施例1及び10については、炭酸ガスレーザー彫刻機として、レーザー照射による彫刻を、高品位CO2レーザーマーカML−9100シリーズ((株)キーエンス製)を用いた。炭酸ガスレーザー彫刻機で、出力:12W、ヘッド速度:200mm/秒、ピッチ設定:2,400DPIの条件で彫刻した。
樹脂組成物が光熱変換剤を含む実施例2〜9については、半導体レーザー彫刻機として、最大出力8.0Wのファイバー付き半導体レーザー(FC−LD)SDL−6390(JDSU社製、波長915nm)を装備したレーザー記録装置を用いた。半導体レーザー彫刻機でレーザー出力:7.5W、ヘッド速度:409mm/秒、ピッチ設定:2,400DPIの条件で彫刻した。
〔リンス液の調製〕
リンス液の調製は、500部の純水に、撹拌しながらNaOH48%水溶液(和光純薬工業(株)製)を滴下し、pHを13に調整した。
その後、更にソフダリゾンLAO(川研ファインケミカル(株)製、ラウリル酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド)を全質量の0.1質量%添加し30分撹拌し、リンス液を作製した。
〔リンス工程〕
上記方法にて彫刻した版材上に、上記方法で作製したリンス液を版表面が均一に濡れる様にスポイトで滴下(約100ml/m2)し、1分静置後、ハブラシ(ライオン(株)クリニカハブラシ フラット)を用い、荷重200gf(1.96N)で版と並行に20回(30秒)こすった。その後、流水にて版面を洗浄、版面の水分を除去し、1時間ほど自然乾燥した。
以下の項目についてフレキソ印刷版の性能評価を行い、結果を表1に示す。
上記彫刻条件にて作製した凹線及び凸線のエッジ部をマイクロスコープVHX−1000((株)キーエンス製)で倍率300倍にて目視観察した。
評価基準は、以下の通りである。
1:彫刻エッジ形状が鮮鋭である
2:彫刻エッジがわずかに熱溶融しているが、印刷上問題のないレベル
3:彫刻エッジが熱溶融している
得られたフレキソ印刷版を印刷機(ITM−4型、(株)伊予機械製作所製)にセットし、インクとして、水性インキ アクアSPZ16紅(東洋インキ製造(株)製)を希釈せずに用いて、印刷紙として、フルカラーフォームM70(日本製紙(株)製、厚さ100μm)を用いて印刷を継続し、印刷開始から1,000mにおける印刷物上のベタ部のインキの付着度合いを目視で比較した。
評価基準は、以下の通りである。
1:濃度ムラがなく均一
2:濃度ムラがわずかにあるが、実質上問題のないレベル
3:濃度ムラがある
上記インキ着肉性試験と同様の条件で印刷を継続し、ハイライト1〜10%を印刷物で確認した。印刷されない網点が生じたところを刷了とし、刷了時までに印刷した紙の長さ(メートル)を指標とした。数値が大きいほど耐刷性に優れると評価する。
Claims (17)
- (成分A)分子中にラジカル重合性基を1つのみ有するマクロモノマー、
(成分B)分子中にラジカル重合性基を2以上有する多官能エチレン性不飽和化合物、
(成分C)バインダーポリマー、及び、
(成分D)ラジカル重合開始剤を含有することを特徴とする
レーザー彫刻用樹脂組成物。 - 成分Aが、スチレン類及び(メタ)アクリル酸エステル類よりなる群から選ばれた1種のエチレン性不飽和化合物に由来するモノマー単位を含有する、請求項1に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 成分Aの重量平均分子量が2,000以上20,000以下である、請求項1又は2に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 成分Aのガラス転移温度(Tg)が20℃以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 成分Aの前記ラジカル重合性基が分子末端にあり、かつ、(メタ)アクリロイル基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- (成分E)光熱変換剤を更に含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 成分Cがプラストマーである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 成分Cが熱可塑性エラストマーである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 成分Dが有機過酸化物であり、成分Eがカーボンブラックである、請求項6に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を、支持体上に備えるレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を熱及び/又は光により架橋した架橋レリーフ形成層を支持体上に備えるレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版。
- 熱により架橋した架橋レリーフ形成層を備える、請求項11に記載のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用樹脂組成物からなるレリーフ形成層を形成する層形成工程、並びに、
前記レリーフ形成層を熱及び/又は光により架橋して架橋レリーフ形成層を有するフレキソ印刷版原版を得る架橋工程、を含むことを特徴とする
レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法。 - 前記架橋工程において、前記レリーフ形成層を熱により架橋する、請求項13に記載のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版の製造方法。
- 請求項10〜12のいずれか1項に記載のレーザー彫刻用フレキソ印刷版原版を準備する工程、及び、
レーザー彫刻用フレキソ印刷版原版をレーザー彫刻してレリーフ層を形成する彫刻工程、を含むことを特徴とする
フレキソ印刷版の製版方法。 - 前記彫刻工程の後に、前記レリーフ層表面を水系リンス液によりリンスするリンス工程を更に含む、請求項15に記載のフレキソ印刷版の製版方法。
- 請求項15又は16に記載の製版方法により製版されたフレキソ印刷版。
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