本発明のガスバリアーフィルム積層体は、複数の樹脂基材が剥離可能な界面を介して貼合された樹脂基材ユニットの両面に、それぞれガスバリアー層を形成し、2つのガスバリアーフィルムを有する構成であることを特徴とし、フレキシブル性を有する薄膜の樹脂基材を用い、良好なガスバリアー性能と、高い耐久性及び平面性を備え、生産性に優れたガスバリアーフィルムの作製に用いるガスバリアーフィルム積層体を実現することができる。この特徴は、請求項1から請求項11に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の目的とする効果をより発現できる観点から、前記樹脂基材ユニットを構成する複数の前記樹脂基材が、同一組成の樹脂基材であること、あるいは、樹脂基材ユニットを構成する複数の前記樹脂基材が、同一膜厚の樹脂基材であることが、ガスバリアー層形成時に、表裏面とも均等な耐熱性を発現することができ、カールを抑制して、優れた平面性を得ることができる点で好ましい。
また、前記剥離可能な界面として、剥離可能な中間層を設けることが、複数の樹脂基材間の密着性を高めることができると共に、剥離工程で安定して剥離することができる観点から好ましい。
また、前記複数の樹脂基材の膜厚を、全て12〜75μmの範囲内とすることにより、ガスバリアー層形成時に、優れた平面性を得ることができると共に、薄膜のガスバリアーフィルムを実現することができる。
また、前記ガスバリアー層の全てが、炭素原子を含む金属酸化物を含有することによる、よりガスバリアー性に優れたガスバリアー層を形成することができる観点から好ましい。
また、本発明のガスバリアーフィルム積層体を用いたガスバリアーフィルムの製造方法としては、前記工程(A)〜(D)を有する態様の製造方法であることが好ましい。
また、前記工程(B)で用いる樹脂基材ユニット表面にガスバリアー層を形成する方法が、化学気相成長法(CVD法)又は物理気相成長法(PVD法)であることが、高品位のガスバリアー層を安定して形成することができる観点から好ましい。
更には、前記工程(C)と前記工程(D)との間に、分離したガスバリアーフィルムの少なくとも一方の樹脂基材表面に洗浄処理を施す洗浄工程Eを有することが、表面から異物等を除去でき、高品位のガスバリアーフィルムを得ることができる観点から好ましい。
また、少なくとも前記手段(B)から前記手段(D)までの製造工程が、オンラインで連続して行うロール・ツー・ロール方式であることが、高い生産性を実現することができる観点から好ましい。
本発明のガスバリアーフィルム積層体を用いたガスバリアーフィルムの製造装置としては、前記手段(イ)〜(ニ)を有する態様の製造装置であることが好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、以下の説明において示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
《ガスバリアーフィルム積層体の構成》
本発明のガスバリアーフィルム積層体は、複数の樹脂基材が剥離可能な界面を介して貼合された樹脂基材ユニットの両面に、それぞれガスバリアー層を形成したガスバリアーフィルムを有していることを特徴とする。
以下、図を交えて、本発明のガスバリアーフィルム積層体の代表的な構成について説明する。ただし、以下に、図を示して説明する本発明のガスバリアーフィルム積層体の構成は、その実施の形態の一例を示すものであり、ここで例示する構成にのみ限定されるものではない。
図1は、本発明のガスバリアーフィルム積層体の構成の一例を示す概略断面図である。
図1の(a)には、複数の樹脂基材F1及びF2が、それぞれ全く同一の膜厚及び材質の樹脂基材である例を示してある。
図1の(a)に示すガスバリアーフィルム積層体GFU1(ガスバリアーフィルムユニット1)は、剥離可能な界面として中間層1を有し、その両面に、樹脂基材F1と樹脂基材F2を配置して、樹脂基材ユニットFU1を構成している。樹脂基材F1及びF2のそれぞれの表面には、ガスバリアー層G1及びG2が設けられ、中間層1を介して、樹脂基材F1とガスバリアー層G1で構成されている第1のガスバリアーフィルムGF1Aと、樹脂基材F2とガスバリアー層G2で構成されている第2のガスバリアーフィルムGF2Aを有するガスバリアーフィルム積層体GFU1を形成し、その後の剥離工程で、剥離可能な界面である中間層1よりそれぞれを分離して、ガスバリアーフィルムGF1AとガスバリアーフィルムGF2Aが同時に得られる。
図1の(b)には、上記図1の(a)で示した構成と同様であるが、使用する複数の樹脂基材F1及びF2が、それぞれ膜厚や材質が異なる樹脂基材を用いたガスバリアーフィルムGF1B及びGF2Bを有する構成を示してある。
このように材質の異なる樹脂基材の例としては、一方がポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用い、他方がポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、あるいはシクロオレフィン(COP)樹脂フィルムを用いる例を挙げることができる。このように膜厚や材質が異なる樹脂基材を組み合わせる場合には、それぞれ適用する樹脂材料の熱膨張率や、膜厚を適宜設定して、ガスバリアーフィルム積層体を形成した際に、カール等が発生しにくい、平面性に優れた組み合わせにすることが好ましい。
図1の(c)には、適用する樹脂基材が、更に機能層としてアンカーコート層やブリードアウト防止層を有する例を示してある。
図1の(c)に示すように、基材フィルムF1には、中間層1と接する面側にアンカーコート層5Aを有し、ガスバリアー層を形成する面側にはブリードアウト防止層6Aを有している。この様な構成からなる基材フィルムF1及びF2が、中間層1を挟んで両側に配置され、更にその外側に、ガスバリアー層G1及びG2を構成して、ガスバリアーフィルム積層体GFU3を構成している。
形成されたアンカーコート層5A/樹脂基材F1/ブリードアウト防止層6A/ガスバリアー層G1から構成されるガスバリアーフィルムGF1Cと、アンカーコート層5B/樹脂基材F2/ブリードアウト防止層6B/ガスバリアー層G2から構成されるガスバリアーフィルムGF2Cから構成されているガスバリアーフィルム積層体GFU3は、剥離工程で、剥離可能な界面(中間層1)を介して分離され、ガスバリアーフィルムGF1CとガスバリアーフィルムGF2Cが、同時に得られる。
《ガスバリアーフィルム積層体及びガスバリアーフィルムの製造方法の概要》
次いで、本発明のガスバリアーフィルム積層体及びガスバリアーフィルムの製造方法の概要について、図を交えて説明する。
本発明のガスバリアーフィルム積層体及びガスバリアーフィルムの製造方法においては、少なくとも、複数の樹脂基材を、剥離可能な界面を介して貼合されて樹脂基材ユニットを形成する工程(A)と、前記樹脂基材ユニットのそれぞれの面側にガスバリアー層を形成して、少なくとも2つのガスバリアーフィルムからなるガスバリアーフィルム積層体を形成する工程(B)と、前記ガスバリアーフィルム積層体を、剥離可能な界面位置で剥離して、少なくとも2つのガスバリアーフィルムに分離する工程(C)と、分離したそれぞれのガスバリアーフィルムを巻き取る工程(D)を有することを特徴とする。
図2は、本発明のガスバリアーフィルム積層体の製造フローの一例を示す工程概略図である。
図2において、工程(I)では複数の樹脂基材F1及びF2を準備し、一方の樹脂基材F2上に、剥離可能な界面を形成する中間層1を設ける。
次いで、工程(II)では、樹脂基材F1の易接着加工処理が施されている面と、樹脂基材F2の中間層1塗設面とを対面及び貼合されて、樹脂基材ユニット2を形成する。
次いで、工程(III)(第1ステーションS1)で、樹脂基材ユニット2の一方の樹脂基材F1面に、ガスバリアー層形成手段4Aを用いて、ガスバリアー層G1付樹脂基材ユニット3を形成する。
次いで、工程(IV)(第2ステーションS2)で、樹脂基材ユニット2の他方の樹脂基材F2面に、ガスバリアー層形成手段4Bを用いて、ガスバリアー層G2を形成して、ガスバリアーフィルム積層体GFUが作製される。
次いで、工程(V)及び工程(VI)にて、作製したガスバリアーフィルム積層体GFUに対して上下方向に張力を加えて、剥離可能な界面でガスバリアーフィルムGF1と、ガスバリアーフィルムGF2に分離する。
なお、工程(VI)で2つのガスバリアーフィルムに分離した際、中間層の一部あるいは全てが一方の樹脂基材表面に残留している場合があり、工程(VII)として、中間層が残留している樹脂基材表面に対し、洗浄装置105を用いて洗浄処理を行い、中間層1を除去して、洗浄され樹脂基材表面を有するガスバリアーフィルムGF2とする工程を有することが好ましい態様である。
次いで、上記説明した本発明のガスバリアーフィルム積層体の構成要素及び本発明のガスバリアーフィルム積層体の製造方法に適用する具体的な製造装置及び作製方法の詳細について説明する。
《樹脂基材ユニット》
本発明のガスバリアーフィルム積層体においては、複数の樹脂基材が剥離可能な界面を介して貼合され、樹脂基材ユニットを構成している。この樹脂基材ユニットの両面に、それぞれガスバリアー層を形成し、2ユニットのガスバリアーフィルムを有する構成であることを特徴とする。
本発明でいう「複数の樹脂基材」には、本発明に係る樹脂基材ユニットが、剥離可能な界面を介して2つの同種または異種の樹脂基材が貼り合わされて構成している場合と、3つ以上の同種または異種の樹脂基材で形成されている場合とがあり、3つ以上の樹脂基材で形成されている場合には、その樹脂基材ユニットを構成する樹脂基材のいずれか一箇所の界面が剥離可能であればよく、その他の樹脂基材界面は剥離しない状態で貼り合わされていてもよい。
〔剥離可能な界面〕
本発明でいう「剥離可能な界面」とは、ガスバリアーフィルム積層体の製造過程で、その両面にガスバリアー層を形成する工程では剥離を起こすことなく、ガスバリアー層を安定して形成した後、挟持している樹脂基材や形成したガスバリアー層に対し、破壊、変形、あるいは損傷を与えることなく、一定の応力を加えることにより、安定して2つのガスバリアーフィルムに剥離可能な特性を備えている界面をいう。
従って、複数の樹脂基材の界面間は、一定の接着力で接着されており、形成する接着力としては、樹脂基材自身の貼合面が自己粘着性を有していてもよく、あるいは、樹脂基材表面に、プラズマ処理、UVオゾン処理、コロナ放電処理等の表面処理に施すことにより表面エネルギーを高めて接着性を付与する本発明法であってもよい。特に有効な方法は、上記のような粘着特性を備えた中間層を設けることが好ましい態様である。
剥離可能な界面における各樹脂基材に対する接着力としては、JIS Z 0237に準拠した粘着テープ・粘着シート試験方法において、接着力としては、下記試験方法に従って測定し、0.1〜100N/25mmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1.0〜50N/25mmの範囲内である。離可能な界面の樹脂基材に対する接着力が0.1N/25mm以上であれば、樹脂基材の剛度が強い場合でも、搬送時や、屈曲時において、意図しない剥離が発生することを防止することができ、100N/25mm以下であれば、使用する樹脂基材の耐久性が小さい場合でも、樹脂基材やガスバリアー層にダメージが生じることがない。
〈接着力の試験方法〉
・JIS Z0237準拠
・剥離角度:180度
・剥離速度:300mm/min
・測定環境:23℃、50%RH
本発明においては、上記の接着力の条件範囲を満たしていれば、例えば、静電気や、ファンデルワールス力、高平滑面同士の真空密着力、摩擦力、水素結合、投錨効果などを単独または併用して、樹脂基材ユニットを形成することもできる。
本発明に係る樹脂基材ユニットにおいては、複数の樹脂基材間で剥離した後、樹脂基材の剥離面では、その後の取り扱いの観点から、両面ともに接着性や粘着性が残留していないことが好ましい。剥離後に接着性や粘着性が残留している状態では、塵埃の付着を生じやすくなるため、必要に応じて剥離後の表面は、後述する洗浄工程で洗浄処理が施されていることが好ましい。
具体的な剥離方法としては、ガスバリアーフィルム積層体GFUが長尺のロール状である場合は、後述する図4の(c)に示すように、形成したガスバリアーフィルム積層体GFUを、一対のニップローラー14で挟持し、上下方向に張力を加えて、ガスバリアーフィルムGF1と、ガスバリアーフィルムGF2に分離する。この時、ガスバリアーフィルムGF1とガスバリアーフィルムGF2のいずれか一方の樹脂基材表面、あるいは両方の樹脂基材F1、F2の表面に、剥離可能な界面の一例である中間層1が残留することにあるため、上記のように、洗浄処理を施すことが好ましい。
ガスバリアーフィルム積層体GFUを挟持するニップローラーの曲率半径としては、通常、5〜1000mmの範囲内であり、好ましくは10〜300mmの範囲内である。
本発明においては、剥離可能な界面として、中間層として形成することがこのましい。
本発明に係る中間層としては、上記に記載の条件で、所定の接着力を備え、樹脂基材を安定して貼合及び剥離が可能であれば、特に制限は無いが、中間層の形成に好ましく用いられる化合物としては、有機または無機の化合物で、紫外〜可視光領域において透明な薄膜を形成することができる材料であることが好ましい。
有機の樹脂材料としては、例えば、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコーン樹脂、アセタール樹脂等を、1種または2種以上併せて使用することができる。これらの樹脂には、従来公知の添加剤を加えることもできる。 上記の化合物材料(樹脂)を含有する塗布液は、ローラーコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法等の公知の湿式方法により、樹脂基材上にコーティングし、溶媒、希釈剤等を乾燥除去することにより、中間層を形成することができる。その中間層の塗布量としては、固形分量として0.01〜1g/m2の範囲内が好ましい。
また、中間層を形成する接着材料としては、市販品としても入手可能であり、例えば、 トーヨーケム株式会社製のオリバイン(商品名)、有限会社グルーラボ製の仮固定用紫外線硬化型接着剤GL−3005シリーズ、株式会社テスク製の紫外線硬化性樹脂 UV樹脂A−1579、A−1582及びA−1611、セメダイン株式会社製のアクリル変性シリコーン湿気反応形弾性粘着剤 BBX909などが挙げられるが、これらには限定されない。
また、本発明に係る中間層は、熱、紫外線、可視光等により接着性が増大、減少する材料も用いることができる。
また、本発明においては、後述する洗浄工程での適性を付与する観点からは、ウェット方式の洗浄工程に適用するためには、水または有機溶媒に対する溶解性が高い中間層であることが好ましく、UVオゾン法や、酸素プラズマ洗浄などのドライ方式の洗浄の場合は、より酸化されやすい中間層であることが好ましい。
〔樹脂基材〕
本発明に係る樹脂基材ユニットを構成する樹脂基材としては、熱可塑性樹脂を主成分として含み、可撓性を有するものであることが好ましい。より好ましくは、熱可塑性樹脂からなる樹脂基材が用いられ、このような樹脂基材としては、一般に、プラスチックフィルムまたはプラスチックシートが用いられ、無色透明な樹脂からなるフィルムまたはシートが好ましく用いられる。用いられるプラスチックフィルムは、ガスバリアー層、ブリードアウト防止層、アンカーコート層等を保持できるフィルムであれば、材質や厚さ等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。
本発明において、樹脂基材として適用可能なプラスチックフィルムとしては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂からなるフィルム、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(製品名シルプラス、新日鐵化学株式会社製)、さらには上記したフィルム材料を2層以上積層して構成される樹脂フィルム等が挙げられる。
樹脂基材として用いることができる熱可塑性樹脂のより好ましい具体例としては、コストや入手容易性の点から、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、東洋紡株式会社製、コスモシャイン(登録商標)A4300)、脂環式ポリオレフィン(例えば、日本ゼオン株式会社製、ゼオノア(登録商標)1600)、ポリアリレート(PAr)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSF)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報に記載の化合物)、ポリイミド(例えば、三菱ガス化学株式会社製、ネオプリム(登録商標))、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報に記載の化合物)等が挙げられる。
本発明により製造されるガスバリアーフィルムを、有機EL素子等の電子デバイスに適用する場合、プラスチックフィルムは透明であることが好ましい。すなわち、光線透過率が通常80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。
光線透過率は、JIS K7105:1981に記載された方法、具体的には、積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率および散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。ただし、本発明に係るガスバリアーフィルムをディスプレイ用途に用いる場合であっても、観察側に設置しない場合には、必ずしも透明性が要求されルことはない。
本発明に係るガスバリアーフィルムを構成する樹脂基材の厚さは、用途によって適宜選択されるため特に制限がないが、概ね2〜200μmの範囲内であり、好ましくは12〜75μmの範囲内である。樹脂基材の厚さが2μm以上であれば、本発明に係るガスバリアーフィルム用の樹脂基材ユニットの形態において、取り扱い性、搬送性、耐熱性を維持することができる。また、200μm以下であれば、樹脂基材ユニットとしてのフレキシブル性が十分に確保でき、本発明のガスバリアーフィルム積層体の製造方法の工程において、不要な剥離(デラミネーション)は発生することを抑制することができる。
また、上記に挙げた樹脂等を用いた樹脂基材としては、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
本発明に適用可能な樹脂基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の樹脂基材を製造することができる。また、未延伸の樹脂基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等の公知の方法により、樹脂基材の搬送方法(縦軸方向、MD方向ともいう。)や、樹脂基材の搬送方向とは直角方法(横軸方法、TD方向ともいう。)に延伸することにより、延伸樹脂基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、樹脂基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2〜10倍の延伸倍率範囲内で延伸することが好ましい。
樹脂基材の表面には、接着性向上のため、公知の種々の処理、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、プラズマ処理等を行ってもよい。
〔樹脂基材に付与可能な機能層〕
本発明に係る樹脂基材には、必要に応じて各種機能層を設けても良い。機能層としては、例えば、図1の(c)に例示したようなアンカーコート層5A、5Bや、ブリードアウト防止層6A、6B等を挙げることができる。
(アンカーコート層)
アンカーコート層は、図1の(c)に示すように、樹脂基材の表面で、中間層と接する面側に設けられ、中間層と樹脂基材との接着性(密着性)の向上を目的として形成されるものである。また、アンカーコート層は、易接着層として形成してもよい。このアンカーコート層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコーン樹脂、およびアルキルチタネート等を、1種または2種以上併せて使用することができる。上記アンカーコート剤は、市販品を使用してもよい。
これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記のアンカーコート剤は、ローラーコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の湿式塗布方法を用いて樹脂基材上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することにより形成することができる。上記アンカーコート剤の塗布量としては、固形分量として0.1〜5g/m2の範囲内であることが好ましい。なお、市販の易接着層付き樹脂基材を用いてもよい。
(ブリードアウト防止層)
本発明に係る樹脂基材に適用可能なブリードアウト防止層とは、熱可塑性樹脂から構成される樹脂基材の内部に存在する可塑剤や、当該樹脂基材の原料であるモノマーやオリゴマー等の低分子成分が樹脂基材表面へ拡散し、接触する表面を汚染する現象、いわゆるブリードアウトを抑制する目的で、樹脂基材の表面上に設けられる。
ブリードアウト防止層は、炭素含有ポリマー、好ましくは硬化性樹脂を含んでいると好ましい。前記硬化性樹脂としては特に制限されず、熱硬化性樹脂や活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられるが、成形が容易なことから、活性エネルギー線硬化性樹脂が好ましい。かような硬化性樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。また、硬化性樹脂は市販品を用いてもよいし、合成品を用いてもよい。
活性エネルギー線硬化性材料としては、例えば、アクリレート化合物を含有する組成物、アクリレート化合物とチオール基を含有するメルカプト化合物とを含有する組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを含有する組成物等が挙げられる。具体的には、新中村化学工業株式会社の硬化性2官能アクリレートNKエステル A−DCP(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、JSR株式会社製のUV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR(登録商標)シリーズ(シリカ微粒子に重合性不飽和基を有する有機化合物を結合させてなる化合物)等を用いることができる。
また、上記のような組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している活性エネルギー線硬化性材料であれば特に制限はない。
ブリードアウト防止層を形成するために用いられる活性エネルギー線硬化性樹脂としては、紫外線や電子線のような活性エネルギー線を照射することによって硬化させることのできる樹脂が挙げられるが、これらの中でも、紫外線照射によって硬化する紫外線硬化性樹脂が好ましい。
ブリードアウト防止層に含まれうる化合物としては、分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する多価不飽和有機化合物、あるいは分子中に1個の重合性不飽和基を有する単価不飽和有機化合物等のハードコート剤を挙げることができる。
ここで、多価不飽和有機化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、単価不飽和有機化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
その他の添加剤として、マット剤を含有してもよい。マット剤としては、平均粒子径が0.1〜5μm程度の無機粒子が好ましい。
このような無機粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等の1種または2種以上を併せて使用することができる。
ここで、無機粒子からなるマット剤は、ハードコート剤の固形分100質量部に対して2質量部以上、好ましくは4質量部以上であり、より好ましくは6〜20質量部の範囲内である。
ブリードアウト防止層には、ハードコート剤およびマット剤の他の成分として熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、光重合開始剤等を含有させてもよい。
このような熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニルおよびその共重合体、塩化ビニルおよびその共重合体、塩化ビニリデンおよびその共重合体等のビニル系樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール系樹脂、アクリル樹脂およびその共重合体、メタクリル樹脂およびその共重合体等のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、線状ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
また、熱硬化性樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
また、電離放射線硬化性樹脂としては、光重合性プレポリマーもしくは光重合性モノマー等の1種または2種以上を混合した電離放射線硬化塗料に、電離放射線(紫外線または電子線)を照射することで硬化するものを使用することができる。ここで光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマーが特に好ましく使用される。このアクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート等が使用できる。また光重合性モノマーとしては、上記に記載した多価不飽和有機化合物等が使用できる。
また、光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾインベンゾエート、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパン、α−アシロキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられる。
以上のようなブリードアウト防止層は、ハードコート剤、および必要に応じて他の成分を配合して、適宜必要に応じて用いる希釈溶剤によって塗布液として調製し、塗布液を基材フィルム表面に従来公知の塗布方法によって塗布した後、電離放射線を照射して硬化させることにより形成することができる。なお、電離放射線を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等から発せられる100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、または走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
ブリードアウト防止層の厚さとしては、1〜10μmの範囲内であり、好ましくは2〜7μmの範囲内である。
〔樹脂基材ユニットの形成〕
本発明に係る樹脂基材ユニットは、複数の樹脂基材が剥離可能な界面、例えば、中間層を介して貼合されて構成されている。
本発明においては、樹脂基材ユニットを構成する複数の樹脂基材の組み合わせとしては、同一の樹脂基材であることが好ましい態様である。
また、樹脂基材ユニットを構成する複数の樹脂基材の組み合わせとしては、同一膜厚の樹脂基材であることが好ましい態様である。
最も好ましい樹脂基材の組み合わせとしては、同一種でかつ同一膜厚の樹脂基材を適用する構成である。
本発明に係る樹脂基材ユニットを構成する個々の樹脂基材の膜厚としては、12〜75μmの範囲内であることがこのましい。
また、異なる種類の樹脂基材を組み合わせて樹脂基材ユニットを構成する場合には、ガラス転移温度、熱膨張率、TD方向(横軸方法)及びMD方向(縦軸方向)におけるJIS C−2318で定義される引張強さや伸び率等の各特性値が近似の樹脂基材を用いることが好ましい。このような組み合わせにすることにより、ガスバリアー層を製膜した後のガスバリアーフィルム積層体のカール等が抑制され、製造時に安定した搬送性を得ることができ、電子デバイスの封止工程における取り扱い性が容易になる。
本発明に係る樹脂基材ユニットを構成する個々の樹脂基材の膜厚比としては、2枚の厚さの比率が3倍以下であることが好ましい。また、JIS C−2318における150℃,30minの加熱収縮率の差は、1%以下であることが好ましい。
〈樹脂基材ユニットの形成方法〉
上記の複数の樹脂基材を、剥離可能な界面、例えば、中間層を介して貼合されて、本発明に係る樹脂基材ユニットを形成する方法としては、後工程でガスバリアー層を形成した後、剥離可能となる条件を得ることができれば、特に制限は無いが、貼合する手段としては、表面がゴム、金属、プラスチック製の板状、ロール状の部材を対面さえて、圧力及び必要に応じて加熱しながら貼合するが好ましい。
図3は、2種の樹脂基材を貼合されて樹脂基材ユニットの形成する方法の一例を示す模式図である。
図3に示すように、一方の樹脂基材F2上には、予め、粘着剤等により中間層1が形成され、中間層形成後、所定の期間経過させる。次いで、中間層を塗布していない他方の樹脂基材F1の易接着加工処理が施されている面と、中間層1塗設面とを対面させ、ゴム製加圧ローラー7と、金属製加熱ローラー8とで形成されているローラー間隙を通過させて貼合されて、樹脂基材ユニット2を形成する。
貼合時の圧力としては、通常1.0〜1000N/cm2の範囲内であり、好ましくは10〜500N/cm2範囲内である。また、金属製加熱ローラーによる加熱温度としては、通常0〜300℃の範囲内であり、好ましくは、10〜200℃の範囲内である。これらの加圧及び加熱条件は、使用する樹脂基材の耐熱性、中間層の接着性に合せて適宜調整することが好ましい。
《ガスバリアーフィルム積層体及びガスバリアーフィルムの製造方法》
〔ガスバリアー層〕
本発明のガスバリアーフィルム積層体においては、上記作製した樹脂基材ユニットを構成する樹脂基材面にガスバリアー性を備えたガスバリアー層を有することを特徴としている。
なお、本発明でいう「ガスバリアー性」とは、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(水蒸気透過率)(38±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1.0g/(m2・24h)以下である場合をいい、このような状態であれば、ガスバリアー性を有していると定義する。
本発明に係るガスバリアー層の形成方法としては、金属や酸化物などを蒸発させて、樹脂基材上に成膜する物理気相成長法(PVD法)や、目的とする薄膜の成分を含む原料ガス(例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)に代表される有機ケイ素化合物など)を供給し、樹脂基材表面あるいは気相での化学反応により膜を堆積してガスバリアー層を形成する化学気相成長法(CVD法)、半導体レーザーなどを用いて、例えば、金属Siを蒸発させ酸素の存在下で基板上に堆積するスパッタ法などが挙げられるが、本発明においては、化学気相成長法(CVD法)又は物理気相成長法(PVD法)であることが好ましく、更に好ましくは、プラズマ放電を行うプラズマ化学気相成長法(プラズマCVD法)であり、特に好ましくは、有機珪素化合物を含む原料ガスを用いて、磁場を印加したローラー間に放電空間を有する放電プラズマ化学気相成長法(「ローラーCVD法」ともいう。)を用いた方法である。
本発明に係るガスバリアー層においては、ガスバリアー層の構成元素として、少なくとも炭素原子を含有することが好ましい。炭素原子を含むことにより、フレキシブル性(屈曲性)及び密着性に優れたガスバリアーフィルムを得ることができる観点から好ましい。
本発明において、ガスバリアー層の炭素原子、及びその他の原子の含有比率は、下記の条件にて、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)を用いた測定方法により求めることができる。
エッチングイオン種:アルゴン(Ar+)
エッチングレート(SiO2熱酸化膜換算値):0.05nm/sec
エッチング間隔(SiO2換算値):10nm
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名「VG Theta Probe」
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポット及びそのサイズ:800×400μmの楕円形。
本発明に係るガスバリアー層の厚さは、5〜3000nmの範囲内であることが好ましく、10〜2000nmの範囲内であることより好ましく、100〜1000nmの範囲内であることが特に好ましい。ガスバリアー層の厚さが前記範囲内であれば、酸素や水蒸気に対するガスバリアー性に優れ、屈曲によるガスバリアー性の低下がみられない。
〔ガスバリアー層の形成方法〕
本発明に係るガスバリアーフィルムを構成するガスバリアー層は、以下で詳述するように、生産性の観点から、ロール・ツー・ロール方式で樹脂基材表面に形成する方法が好ましい。また、プラズマCVD法によりガスバリアー層を製造する際に用いることが可能な形成装置としては、特に制限されないが、少なくとも一対の磁場を印加した成膜ローラーと、プラズマ電源とを備え、かつ一対の磁場を印加した成膜ローラー間において放電することが可能な構成となっている装置であることが好ましく、具体的には、以下に示す図4及び図5で示すような薄膜形成製造装置を用いた場合には、プラズマCVD法を利用しながらロール・ツー・ロール方式で製造することが可能となる。
(製造方法1:バッチ方式によるガスバリアーフィルム積層体及びガスバリアーフィルムの製造方法)
図4は、本発明に適用可能な磁場を印加した放電プラズマCVD装置を用い、バッチ方式で、ガスバリアーフィルム積層体及びガスバリアーフィルムを製造する方法の一例を示す概略図である。
図4においては、第1のガスバリアー層形成工程である工程a(第1ステーションS1)と、第2のガスバリアー層形成工程である工程b(第2ステーションS2)と、剥離工程である工程cを、それぞれ独立した工程で行う、いわゆるバッチ方式によりガスバリアーフィルムを製造する方式の一例を示している。
〈第1ステーションS1によるガスバリアー層の形成〉
図4の(a)に示す第1ステーションS1は、例えば、樹脂基材ユニット2の一方の面側に配置されている樹脂基材1の表面に、ガスバリアー層G1を形成する工程である。
第1ステーションS1を構成するプラズマCVD製造装置としては、主には、図4の(a)で示すように、樹脂基材ユニット2を積層したロール状の繰り出しローラー11Aと、樹脂基材ユニット2を搬送するための搬送ローラー22及び23と、一対の成膜ローラー31及び32と、成膜ガス供給管41と、プラズマ発生用電源51と、巻取りローラー11Bとを備えている。また、成膜ローラー31及び成膜ローラー32の内部には、成膜ローラーが回転しても回転しないようにして、固定された磁場発生装置61及び62がそれぞれ設けられている。
第1ステーションS1を構成するプラズマCVD製造装置としては、上記の成膜ローラー31及び32等の各構成部位が、図4の(a)に示すように真空チャンバー16内に配置されている。更に、真空チャンバー16には、真空排気手段である真空ポンプ17が排気口18を介して接続されており、この真空ポンプ17及び成膜ガス供給管41により真空チャンバー16内の圧力を適宜調整することが可能となっている。なお、真空ポンプ17は、真空チャンバー16の内部を真空状態又は真空に準じた低圧状態まで排気することができる。
次いで、プラズマCVD製造装置を用いたガスバリアー層の成膜方法について説明する。
ガスバリアー層を形成する際には、図4の(a)に示すように、一対の成膜ローラー31及び32のそれぞれに樹脂基材ユニット2を引き回して配置し、一対の成膜ローラー31及び32間に電圧を印加して、プラズマを発生させて、プラズマ放電空間を形成する。
次いで、成膜ガス供給管41よりガスバリアー層形成用の成膜ガスを放電空間に供給しながら、連続搬送している樹脂基材ユニット2を一方の樹脂基材F1表面に、ガスバリアー層G1を形成した後、巻取りローラー11Bによりロール状に巻き取られる。
また、本発明においては、ガスバリアー層成膜時の成膜ローラー31及び32の表面温度は、一定の範囲内に制御されていることが好ましい。各成膜ローラーの表面温度の具体的な温度範囲としては、樹脂基材ユニット2を構成している樹脂基材F1及びF2の種類によって適正な範囲は異なるが、概ね0〜150℃の温度範囲内であり、より好ましくは15〜80℃の温度範囲内であり、更に好ましくは20〜60℃の温度範囲内である。
成膜ローラーの表面温度を、上記の温度に制御するための具体的な方法について以下に詳述する。
本発明に係るプラズマCVD製造装置に適用可能な成膜ローラー31及び32を構成する材質としては、例えば、成膜ローラー表面に、チタン、ステンレス、クロムメッキ、超硬合金等によりコーティングされており、その内部に、冷媒または熱媒を流通させることができる機構を備えているものが挙げられる。そして、冷媒または熱媒をその内部に流通させることにより、成膜ローラー31及び32の表面温度を上記範囲となるように制御することが好ましい。また、冷媒または熱媒を流通させる機構としては、公知のものを用いることができる。
樹脂基材ユニット2の搬送速度(ライン速度)としては、成膜ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.25〜100m/minの範囲内とすることが好ましく、0.3〜30m/minの範囲内とすることがより好ましい。搬送速度が0.25m/min以上であれば、樹脂基材ユニット2の熱に起因する皺の発生や、不正な樹脂基材間の剥離等を効果的に抑制することができる。他方、100m/min以下であれば、生産性を損なうことなく、かつ樹脂基材間における剥離可能な界面における接着性を維持することができると共に、ガスバリアー層として十分な膜厚を確保することができる。
次いで、具体的なガスバリアー層の形成方法について説明する。
上記のように、一対の成膜ローラー(成膜ローラー31と成膜ローラー32)を有するプラズマCVD製造装置においては、一対の成膜ローラー31及び32を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ローラー31及び32がそれぞれプラズマ発生用電源51に接続されている。
そのため、このようなプラズマCVD製造装置(第1ステーションS1)においては、プラズマ発生用電源51により電力を供給することにより、成膜ローラー31と成膜ローラー32との間の空間に放電することが可能となり、これにより成膜ローラー31と成膜ローラー32との間の放電空間にプラズマを発生させる。なお、このように、成膜ローラー31と成膜ローラー32とを電極として利用する場合には、電極としても利用可能なようにその材質や設計を適宜変更すればよい。
また、図4の(a)に示すプラズマCVD製造装置においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー31及び32)は、その中心軸が同一平面上において略平行となるようにして配置することが好ましい。このように、水平に一対の成膜ローラー(成膜ローラー31及び32)を配置することにより、成膜レートを2倍にすることが可能となる。そして、このようなプラズマCVD製造装置によれば、成膜ローラー31位置で、CVD法により樹脂基材ユニット2の一方の樹脂基材F1表面上に、ガスバリアー層G1を形成することができ、更に成膜ローラー32領域においても、樹脂基材ユニット2の一方の樹脂基材F1表面上に、ガスバリアー層G1成分を堆積させることもできるため、樹脂基材F1の表面上に、ガスバリアー層G1を効率よく形成することができる。
成膜ローラー31及び成膜ローラー32の内部には、前述のように、成膜ローラーが回転しても、それ自身は回転しないように固定配置されている磁場発生装置61及び62がそれぞれ設けられている。
成膜ローラー31および成膜ローラー32のそれぞれに設けられた磁場発生装置61及び62は、一方の成膜ローラー31に設けられた磁場発生装置61と、他方の成膜ローラー32に設けられた磁場発生装置62との間で磁力線がまたがらず、それぞれの磁場発生装置61及び62がほぼ閉じた磁気回路を形成するように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置61及び62を設けることにより、各成膜ローラー31及び32の対向する面側の表面付近に磁力線が膨らんだ磁場の形成を促進することができ、その膨出部にプラズマが収束され易くなるため、ガスバリアー層の成膜効率を向上させることができる点で優れている。
また、成膜ローラー31及び成膜ローラー32のそれぞれに設けられた磁場発生装置61及び62は、それぞれ成膜ローラーのローラー軸方向に長いレーストラック状の磁極を備え、一方の磁場発生装置61と他方の磁場発生装置62とは向かい合う磁極が同一極性となるように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置61及び62を設けることにより、それぞれの磁場発生装置61及び62について、磁力線が対向するローラー側の磁場発生装置にまたがることなく、ローラー軸の長さ方向に沿って対向空間(放電空間)に面したローラー表面付近にレーストラック状の磁場を容易に形成することができ、その磁場にプラズマを収束させることができため、ローラー幅方向に沿って巻き掛けられた樹脂基材ユニット2を用いて効率的に蒸着膜であるガスバリアー層G1を樹脂基材F1表面に形成することができる点で優れている。
さらに、成膜ローラー31及び成膜ローラー32としては、適宜公知のローラーを用いることができる。成膜ローラー31及び32としては、より効率よく薄膜を形成することができる観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、成膜ローラー31及び32の直径としては、放電条件、チャンバーのスペース等の観点から、直径が300〜1000mmφの範囲、特に300〜700mmφの範囲が好ましい。直径が300mmφ以上であれば、プラズマ放電空間が小さくなることがないため生産性の劣化もなく、短時間でプラズマ放電の全熱量がフィルムにかかることを回避でき、残留応力が大きくなりにくく好ましい。一方、直径が1000mmφ以下であれば、プラズマ放電空間の均一性等も含めて装置設計上、実用性を保持することができるため好ましい。
また、このようなプラズマCVD製造装置に用いる繰り出しローラー11A及び搬送ローラー22及び23としては、公知のローラーを適宜選択して用いることができる。また、巻取りローラー11Bとしても、一方の面側にガスバリアー層を形成した樹脂基材3を巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のローラーを用いることができる。
また、成膜ガス供給管41および真空ポンプ17としては、原料ガス等を所定の速度で供給または排出することが可能なものを適宜用いることができる。
また、成膜ガス供給手段である成膜ガス供給管41は、成膜ローラー31と成膜ローラー32との間の対向空間(放電空間)の一方側に設けることが好ましく、真空排気手段である真空ポンプ17は、前記対向空間の他方側に設けることが好ましい。このように成膜ガス供給手段である成膜ガス供給管41と、真空排気手段である真空ポンプ17を配置することにより、成膜ローラー31と成膜ローラー32との間の対向空間(放電空間)に効率良く成膜ガスを供給することができ、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
さらに、プラズマ発生用電源51としては、適宜公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源51は、これに接続された成膜ローラー31と成膜ローラー32とに電力を供給して、これらを放電のための対向電極として利用することを可能とする。このようなプラズマ発生用電源51としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、前記一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用することが好ましい。また、このようなプラズマ発生用電源51としては、より効率よくプラズマCVD処理を実施することが可能となることから、印加電力を100W〜10kWの範囲内とすることができ、かつ交流の周波数を50Hz〜500kHzの範囲内とすることが可能なものであることがより好ましい。また、磁場発生装置61及び62としては適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。
このような図4の(a)に示すようなプラズマCVD製造装置を用いて、例えば、原料ガスの種類、プラズマ発生装置の電極ドラムの電力、真空チャンバー内の圧力、成膜ローラーの直径、ならびにフィルム(樹脂基材)の搬送速度を適宜調整することにより、所望の特性を備えたガスバリアー層を形成することができる。
より詳しくは、図4の(a)に示すようなプラズマCVD製造装置を用いて、成膜ガス(原料ガス等)を真空チャンバー16内に供給しつつ、一対の成膜ローラー(成膜ローラー31及び32)間に放電を発生させることにより、成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、成膜ローラー31上及び成膜ローラー32上の樹脂基材ユニット2の一方の樹脂基材F1表面上に、ガスバリアー層G1がプラズマCVD法により形成される。なお、このような成膜に際しては、樹脂基材ユニット2が繰り出しローラー11A、成膜ローラー31及び32、搬送ローラー22及び23等により、それぞれ搬送されることにより、ロール・ツー・ロール方式の連続的な成膜プロセスにより、樹脂基材ユニット2の一方の樹脂基材F1表面上に、ガスバリアー層G1が形成される。
〈ガスバリアー層形成用の成膜ガス〉
本発明に係るガスバリアー層の形成方法において、成膜ガス供給管41から対向空間(放電空間)に供給される成膜ガス(原料ガス等)としては、原料ガス、反応ガス、キャリアガス、放電ガスが単独または2種以上を混合して用いることができる。
ガスバリアー層G1の形成に用いる成膜ガス中の原料ガスとしては、形成するガスバリアー層G1の材質に応じて適宜選択して使用することができる。このような原料ガスとしては、例えば、ケイ素を含有する有機ケイ素化合物や炭素を含有する有機化合物ガスを用いることができるが、本発明に係るガスバリアー層においては、少なくとも炭素原子を含有する金属酸化物層を形成することができる原料が好ましい。
本発明に適用可能な有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(略称:HMDSO)、ヘキサメチルジシラン(略称:HMDS)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン(略称:TMOS)、テトラエトキシシラン(略称:TEOS)、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。これらの有機ケイ素化合物の中でも、化合物の取り扱い性及び得られるガスバリアー層のガスバリアー性等の特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。これらの有機ケイ素化合物は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができる。また、炭素を含有する有機化合物ガスとしては、例えば、メタン、エタン、エチレン、アセチレンを例示することができる。これら有機ケイ素化合物ガスや有機化合物ガスは、ガスバリアー層の種類に応じて適切な原料ガスが選択される。
また、成膜ガスとしては、上記原料ガスの他に、反応ガスを用いてもよい。このような反応ガスとしては、原料ガスと反応して酸化物、窒化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができる。また、窒化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができ、例えば、酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
また、成膜ガスとしては、原料ガスを真空チャンバー内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。更に、成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを用いてもよい。このようなキャリアガス及び放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガスや水素ガスを用いることができる。
このような成膜ガスが原料ガスと反応ガスを含有する場合には、原料ガスと反応ガスの比率としては、原料ガスと反応ガスとを完全に反応させるために理論上必要となる反応ガスの量の比率よりも、反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことが好ましい。反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことで、形成されるガスバリアー層によって、優れたガスバリアー性や耐屈曲性を得ることができる点で優れている。また、成膜ガスが前記有機ケイ素化合物と酸素とを含有するものである場合には、成膜ガス中の前記有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。
以下、成膜ガスの構成として、原料ガスとしてヘキサメチルジシロキサン(有機ケイ素化合物、HMDSO、(CH3)6Si2O)を用い、反応ガスとしての酸素(O2)を含有するものとを用い、ケイ素−酸素系のガスバリアー層を形成する場合を例に挙げて、成膜ガス中の原料ガスと反応ガスとの好適な比率等について、より詳細に説明する。
原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO、(CH3)6Si2O)と、反応ガスとしての酸素(O2)と、を含有する成膜ガスを、プラズマCVDにより反応させて、ケイ素−酸素系のガスバリアー層を形成する場合、その成膜ガスにより下記反応式(1)で表されるような反応が起こり、二酸化ケイ素が生成する。
式(1)
(CH3)6Si2O+12O2→6CO2+9H2O+2SiO2
上記のような反応においては、ヘキサメチルジシロキサン1モルを完全酸化するのに必要な酸素量は12モルである。そのため、成膜ガス中に、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素を12モル以上含有させて完全に反応させた場合には、均一な二酸化ケイ素膜が形成される。しかしながら、本発明において、形成されるバリア層のガスバリアー性を向上させるため、上記反応式(1)の反応が完全に進行してしまわないように、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素量を化学量論比の12モルより少なくする構成とすることが好ましい。なお、実際のプラズマCVDチャンバー内の反応では、原料のヘキサメチルジシロキサンと反応ガスの酸素とは、成膜ガス供給部41から成膜領域へ供給されて成膜されるので、反応ガスの酸素のモル量(流量)が原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の12倍のモル量(流量)であったとしても、現実には完全に反応を進行させることはできず、酸素の含有量を化学量論比に比して大過剰に供給して初めて反応が完結すると考えられる(例えば、CVDにより完全酸化させて酸化ケイ素を得るために、酸素のモル量(流量)を原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の20倍以上程度とする場合もある。)。そのため、原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)は、化学量論比である12倍量以下であることが好ましく、より好ましくは、10倍以下の量である。このような比でヘキサメチルジシロキサンおよび酸素を含有させることにより、完全に酸化されなかったヘキサメチルジシロキサン中の炭素原子や水素原子が、ガスバリアー層形成時に層中に取り込まれ、得られるガスバリアーフィルムにおいて優れたガスバリアー性および耐屈曲性を発揮させることが可能となる。
なお、有機EL素子や太陽電池などのような透明性を必要とするデバイス用のフレキシブル基板への利用の観点から、成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)の下限は、ヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の0.1倍より多い量とすることが好ましく、0.5倍より多い量とすることがより好ましい。
また、真空チャンバー16内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、0.5Pa〜50Paの範囲内とすることが好ましい。
また、このようなプラズマCVD法において、成膜ローラー31と成膜ローラー32との間に放電するために、プラズマ発生用電源51に接続された電極ドラム(不図示、図4の(a)に示す構成においては、成膜ローラー31及び32に設置されている。)に印加する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるものであり一概に言えるものでないが、0.1〜10kWの範囲とすることが好ましい。このような印加電力が100W以上であれば、パーティクルの発生を十分に抑制することができ、他方、10kW以下であれば、成膜時に発生する熱量を抑えることができ、成膜時の基材表面の温度が上昇するのを抑制できる。そのため基材が熱負けすることなく、成膜時に皺が発生するのを防止できる点で優れている。
〈第2ステーションS2によるガスバリアー層の形成〉
上記説明した第1ステーションS1で、樹脂基材ユニット2の一方の樹脂基材F1上にガスバリアー層G1を形成した試料を、巻取りローラー11Bより繰り出し、図4の(b)に示す第2ステーションS2により、第2のガスバリアー層G2を、樹脂基材ユニット2の樹脂基材F1とは反対側に位置する樹脂基材F2上に形成して、巻取りローラー11Cでロール状に巻き取って、ガスバリアーフィルム積層体GFUを作製する。
図4の(b)においては、上記図4の(a)で作製した巻き取りローラー11Bでロール状に巻き取った試料は、既にガスバリアー層G1を形成した面が成膜ローラー31及び成膜ローラー32に接し、放電空間面側に樹脂基材F2が配置する構成で搬送し、第1ステーションS1におけるガスバリアー層G1の形成で用いたのと同様のプラズマCVD製造装置を用いて、樹脂基材ユニット2の樹脂基材F2上に、第2のガスバリアー層G2を形成して、ガスバリアーフィルム積層体GFUを作製する。
本発明のガスバリアーフィルム積層体GFUにおいては、第1ステーションS1により形成するガスバリアー層G1と、第2ステーションS2により形成するガスバリアー層G2は、いずれも同一組成及び同一膜厚のガスバリアー層であっても、それぞれ組成、あるいは膜厚の異なる2種類のガスバリアー層の組み合わせであっても良い。すなわち、第1ステーションS1により形成条件と、第2ステーションS2における形成条件、例えば、成膜ガスの組成、成膜温度、樹脂基材ユニットの搬送速度等を適宜変更することにより、構成や組成の異なるガスバリアーフィルムを、同時に作製することができる。
〈ガスバリアーフィルム積層体の剥離工程〉
上記の方法に従って樹脂基材ユニットの両面に、それぞれガスバリアー層を形成したガスバリアーフィルム積層体は、図4の(c)に示すガスバリアーフィルム積層体の剥離工程で、剥離可能な界面位置で剥離して、2つのガスバリアーフィルムGF1及びGF2に分離される。
具体的には、図4の(c)で示すように、上記第1ステーションS1及び第2ステーションS2を経て作製したガスバリアーフィルム積層体GFUを搬送しながら、一対のサポートローラー14で挟持しながら、剥離位置Sepで上下方向に一定の張力をガスバリアーフィルム積層体GFUに付与して剥離して、ガスバリアーフィルムGF1と、ガスバリアーフィルムGF2とに分離し、それぞれ巻き取りローラー15A及び15Bに巻き取られる。
この場合、サポートローラー14の曲率半径は、通常5〜1000mmの範囲内であり、好ましくは10〜300mmの範囲内である。
また、剥離のために付与する張力としては、剥離可能な界面の接着力として0.1〜100N/25mmの範囲内で設定されている観点から、それを越える張力を付与して剥離することが好ましい。
〈ガスバリアーフィルムの洗浄工程〉
上記剥離工程で、ガスバリアーフィルムGF1と、ガスバリアーフィルムGF2とに分離した際、貼合に用いた中間層1の構成材料が、各ガスバリアーフィルムを構成する樹脂基材のいずれか一方の面側に残留する場合がある。この残留した中間層構成成分は、最終的なガスバリアーフィルムとしての品質に影響を与えることが無ければ、そのままの状態でガスバリアーフィルムとして使用することが可能であるが、残留している中間層は粘着性を有する成分で構成されており、それ以降の工程、例えば、ガスバリアーフィルムを用いた封止工程等で埃やチリが付着して品質に影響を与える懸念がある場合には、それを除去するため、例えば、図2の工程7にて例示したように、中間層が残留している樹脂基材表面に対し、洗浄装置105を用いて洗浄処理を施すことが好ましい。
本発明に適用可能な洗浄方法としては、特に制限はないが、粘着性の中間層成分を除去するという観点からは、ウェット方式あるいはドライ方式の洗浄方法を適用することが、樹脂基材表面から容易に中間層残留物を除去できることができる観点から好ましい。
本発明に適用可能な洗浄方法としては、以下に示す各種洗浄方法を制限なく用いることができる。
第一の方法は、乾式洗浄方法(ドライ洗浄方法)と呼ばれる方法で、プラズマ洗浄法、イオンビーム洗浄法、UVオゾン洗浄法、UVエキシマ照射法、レーザー洗浄法等が挙げられる。
第二の方法は、湿式洗浄方法(ウェット洗浄方法)と呼ばれる方法で、中間層成分が付着しているガスバリアーフィルムを、酸性、中性、アルカリ性の水または有機溶媒に浸漬した後、例えば、噴流洗浄、バブリング洗浄、超音波洗浄、流水洗浄等を用いて洗浄する方法である。
第三の方法は、物理的剥離方法で、中間層成分が付着しているガスバリアーフィルム表面に物理的な力(例えば、物体の衝撃力)を直接的に付与して洗浄する方法で、例えば、スクラブ洗浄、シャワー洗浄(例えば、高圧スプレー洗浄、超音波シャワー洗浄、二流体ノズル洗浄)、アイスブラスト洗浄(例えば、マイクロアイスジェット、ドライアイススクラブ洗浄)等が挙げられる。これらの物理的剥離方法は、ガスバリアーフィルム表面に付着している中間層成分に直接的に作用するため、その洗浄力(異物除去率)が極めて高く、かつ処理時間も短いという特徴を有している。
(製造方法2:オンライン方式によるガスバリアーフィルム積層体及びガスバリアーフィルムの製造方法)
前記図4においては、第1のガスバリアー層を形成する第1ステーションS1、第2のガスバリアー層を形成する第2ステーションS2、及びガスバリアーフィルム積層体の剥離工程を、それぞれ分離したバッチ方式のガスバリアーフィルム積層体及びガスバリアーフィルムの製造方法を示したが、本発明においては、第1ステーションS1及び第2ステーションS2によるガスバリアー積層体の形成工程、ガスバリアーフィルム積層体を剥離してガスバリアーフィルムを作製する工程及びガスバリアーフィルムを巻き取る工程までを、オンラインで連続して行うロール・ツー・ロール方式であることが、好ましい態様である。上記各工程を一貫してオンライン方式で行う方法は、図4に示すバッチ方式の製造方法に比較して、より高い生産性が得られる観点から好ましい。ただし、オンライン方式においては、ガスバリアー層G1及びG2の形成においては、搬送速度は一条件となる。
図5は、本発明に適用可能な磁場を印加した放電プラズマCVD装置を2ライン有し、オンライン方式でガスバリアーフィルム積層体及びガスバリアーフィルムを製造する一例を示す概略図である。
図5に示すガスバリアーフィルムの製造装置は、樹脂基材ユニットの繰り出し部、第1のガスバリアー層を形成する第1ステーションS1部、第2のガスバリアー層を形成する第2ステーションS2部、ガスバリアーフィルム積層体の剥離部、及び分離したガスバリアーフィルムの巻き取り部を有し、長尺のフィルムを途中で切断することなく、連続して処理することを特徴としている。
具体的には、繰り出しローラー11にロール状に積層した樹脂基材ユニット2を繰り出し、図4の(a)で説明したのと同様の構成からなる磁場を印加した放電プラズマCVD装置を有する第1ステーションS1により、樹脂基材ユニット2の一方の樹脂基材F1面上に、第1のガスバリアー層G1を、2パスで形成する。次いで、樹脂基材ユニット2を連続的に搬送しながら、図4の(b)で説明したのと同様の構成からなる磁場を印加した放電プラズマCVD装置を有する第2ステーションS2により、樹脂基材ユニット2の第1のガスバリアー層G1を設けた面とは反対側の樹脂基材F2上に、第2のガスバリアー層G2を、2パスで形成して、ガスバリアーフィルム積層体GFUを作製する。
この時、第1ステーションS1において、ガスバリアー層G1の形成に用いる成膜ガス組成と、第2ステーションS2において、ガスバリアー層G2の形成に用いる成膜ガス組成とが、全く同一組成である場合には、第1ステーションS1領域と第2ステーションS2領域とを分離する必要はないが、第1ステーションS1における成膜ガス組成と、第2ステーションS2における成膜ガス組成が異なる場合には、両成膜ガスの混合を避けるため、第1ステーションS1領域と第2ステーションS2領域との間に、隔壁wを設けることが、より均質のガスバリアー層を形成することができる観点から好ましい。SRは両領域を分離するための封止ローラーである。
作製されたガスバリアーフィルム積層体GFUは、次いで剥離工程に移動し、前記図4の(c)で示したのと同様の方法で、ガスバリアーフィルムGF1と、ガスバリアーフィルムGF2とに分離した後、巻き取りローラー15A、あるいは巻き取り15Bに巻き取られる。
この時、例えば、ガスバリアーフィルムGF2の樹脂基材F2表面に、中間層成分が残留している場合には、巻き取りローラー15Bで巻き取る前に、その表面に洗浄装置105による洗浄処理を施す。
また、上記説明した製造装置全体は、真空チャンバー16内に配置されている。更に、真空チャンバー16には、第1ステーションS1及び第2ステーションS2に対応する位置に、それぞれ真空排気手段である真空ポンプ17が排気口18を介して接続されており、この真空ポンプ17及び各成膜ガス供給管41により、真空チャンバー16内の圧力を適宜調整することが可能となっている。このような場合でも、第1ステーションS1領域と第2ステーションS2領域との間に、隔壁wを設けることが、安定した減圧度を得ることができる観点から好ましい。なお、真空ポンプ17は、真空チャンバー16の内部を真空状態又は真空に準じた低圧状態まで排気することができる。
《ガスバリアーフィルムの適用分野》
本発明のガスバリアーフィルム積層体を用いた製造方法により作製されるガスバリアーフィルムの用途としては、下記のような電子デバイスや光学部材への応用が挙げられる。
(電子デバイス)
本発明に係るガスバリアーフィルムは、空気中の化学成分(例えば、酸素、水、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等。)により、性能劣化等の影響を受け易い電子デバイスに好ましく用いることができる。
当該電子デバイスとしては、例えば、有機EL素子、液晶表示素子(LCD)、薄膜トランジスター、タッチパネル、電子ペーパー、太陽電池(PV)等を挙げることができる。本発明の効果がより効率的に得られるという観点から、有機EL素子または太陽電池に好ましく用いられ、有機EL素子に適用することが、特に好ましく用いられる。
本発明に係るガスバリアーフィルムは、電子デバイスの基板や固体封止法による封止のためのフィルムとしても用いることができる。固体封止法とは電子デバイスの上に保護層を形成した後、接着剤層、ガスバリアーフィルムを重ねて硬化する方法である。接着剤は特に制限はないが、熱硬化性エポキシ樹脂、光硬化性アクリレート樹脂等が例示される。
〈有機EL素子〉
ガスバリアーフィルムを用いた有機EL素子の例としては、特開2007−30387号公報等に詳しく記載されている。
〈液晶表示素子〉
反射型液晶表示装置は、下から順に、下基板、反射電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、透明電極、上基板、λ/4板、そして偏光膜からなる構成を有する。本発明に係るガスバリアーフィルムは、前記透明電極基板および上基板として使用することができる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を反射電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。
液晶セルの種類は特に限定されないが、より好ましくはTN型(Twisted Nematic)、STN型(Super Twisted Nematic)、HAN型(Hybrid Aligned Nematic)、VA型(Vertically Alignment)、ECB型(Electrically Controlled Birefringence)、OCB型(Optically Compensated Bend)、IPS型(In−Plane Switching)、CPA型(Continuous Pinwheel Alignment)であることが好ましい。
〈太陽電池〉
本発明に係るガスバリアーフィルムは、太陽電池素子の封止フィルムとしても用いることができる。ここで、ガスバリアーフィルムは、ガスバリアー層が太陽電池素子に近い側となるように配置して封止することが好ましい。
本発明に係るガスバリアーフィルムが好ましく用いられる太陽電池素子としては、特に制限はないが、例えば、単結晶シリコーン系太陽電池素子、多結晶シリコーン系太陽電池素子、シングル接合型、またはタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコーン系太陽電池素子、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池素子、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池素子、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子、色素増感型太陽電池素子、有機太陽電池素子等が挙げられる。中でも、本発明においては、上記太陽電池素子が、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子であることが好ましい。
〈その他の電子デバイス〉
本発明に係るガスバリアーフィルムのその他の適用例としては、例えば、特表平10−512104号公報等に記載の薄膜トランジスター、特開平5−127822号公報、特開2002−48913号公報等に記載のタッチパネル、特開2000−98326号公報等に記載の電子ペーパー等が挙げられる。
(光学部材)
本発明に係るガスバリアーフィルムは、光学部材としても用いることができる。光学部材の例としては、円偏光板等が挙げられる。
〈円偏光板〉
本発明に係るガスバリアーフィルムを基板とし、λ/4板と偏光板とを積層し、円偏光板を作製することができる。この場合、λ/4板の遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角が45°になるように積層する。このような偏光板は、長手方向(MD)に対し45°の方向に延伸されているものを用いることが好ましく、例えば、特開2002−865554号公報に記載のものを好適に用いることができる。これらの電子デバイスを、本発明に係るガスバリアーフィルムを用いて封止することにより、より軽量で、柔軟性に富んだ製品とすることができる。
本発明の効果を、以下の実施例及び比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。また、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。また、下記操作において、特記しない限り、操作および物理特性値等の測定は。25℃、相対湿度50%の環境下で行う。
《ガスバリアーフィルムの作製》
〔ガスバリアーフィルム1の作製〕
(1.樹脂基材ユニット1の作製)
〈1−1.樹脂基材1の準備〉
樹脂基材1(F1及びF2)として、熱可塑性樹脂支持体であって、両面に易接着加工された厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製、コスモシャインA4300、PETと略記する。)を用い、この樹脂基材1を温度25℃、相対湿度55%の環境下で96時間保管して調湿した。
〈1−2.ブリードアウト防止層の形成〉
上記樹脂基材1の片方の面側に、JSR株式会社製のUV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材OPSTAR(登録商標) Z7535を、乾燥後の膜厚が3μmとなるようにワイヤーバーで塗布した後、80℃、3分で乾燥した後、空気雰囲気下で高圧水銀ランプを用い、硬化条件:1.0J/cm2で硬化を行い、ブリードアウト防止層を形成した。これを樹脂基材1Sとした。
〈1−3.中間層1の形成〉
上記作製したブリードアウト防止層を形成した基材1Sのブリードアウト防止層を形成していない面側である易接着加工面に、下記の方法に従って中間層1を形成した。
中間層1の形成材料として、セメダイン株式会社製のアクリル変性シリコーン湿気反応形弾性粘着剤 BBX909を用い、この粘着剤を、乾燥後の膜厚が20μmとなるように基材1Sの易接着加工面に塗布した後、貼合までの時間(オープンタイム)として5分間その状態で保持した後、図3に示す方法に従って、樹脂基材ユニット1を作製した。
中間層を塗布していない樹脂基材1Sの易接着加工処理が施されている面と、上記中間層1を形成した樹脂基材1Sの中間層塗設面とを対面させ、直径が5.1cm(2インチ)のゴム製加圧ローラーと、直径が5.1cm(2インチ)の金属製加熱ローラーとで形成されているローラー間隙を通過させ、圧力5N/cm、搬送速度1m/分の速度で貼合された後、7.6cm(3インチ)径のプラスチック製のコアに巻き取り、1時間放置して、ロール状の樹脂基材ユニット1を形成した。
(2.ガスバリアーフィルム積層体1の形成)
次いで、図5に記載のオンライン方式で、2つのガスバリアー層形成用ステーションを備えた製造装置を用いて、ガスバリアー層を形成して、ガスバリアーフィルム積層体1を作製した。なお、以下に括弧内に記載した数値及び記号は、表5に記載した各符号を示してある。
上記作製したロール状の樹脂基材ユニット1を、繰り出しローラー(11)に装着した。次いで、繰り出しローラー(11)から繰り出した樹脂基材ユニット(2)を、第1のガスバリアー層を形成する第1ステーション(S1)の成膜ローラー31A、搬送ローラー22A、搬送ローラー23A、成膜ローラー31Bの順に引き回した後、第2のガスバリアー層を形成する第2ステーション(S2)を構成する成膜ローラー31B、搬送ローラー22B、搬送ローラー23B、成膜ローラー32Bの順次経由させながら、巻取りローラー(15A及び15B)に巻き付けて、搬送ラインを形成した。
(2−1.第1のガスバリアー層(G1)の形成)
ガスバリアー層の形成は、繰り出しローラー(11)から繰り出した樹脂基材ユニット1(2)の一方の樹脂基材(F1)のブリードアウト防止層上に、第1ステーション(S1)にて、第1のガスバリアー層(G1)を形成した。
第1ステーション(S1)におけるガスバリアー層(G1)の形成は、一対の直径が180mmの成膜ローラー(31A及び32A)の間に、磁場発生装置(61A及び62A)を用いて磁場を印加すると共に、それぞれの成膜ローラー(31A及び32A)にプラズマ発生用電源(51A)より電力を供給し、成膜ローラー間でプラズマを発生させて放電空間を形成し、この放電空間に、原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)と反応ガスとしての酸素ガスから構成される成膜ガスを、成膜ガス供給管(41A)より供給して、下記に示す成膜条件(プラズマCVD条件)にて、プラズマCVD法による薄膜形成を行い、一方の樹脂基材(F1)面上に、ガスリアー層(G1)を形成した。
〈ガスバリアー層の成膜条件〉
原料ガス:ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO) 供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute、0℃、1気圧基準)
反応ガス:酸素ガス(O2) 供給量:500sccm(0℃、1気圧基準)
真空チャンバー内の真空度:1.5Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.9kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
樹脂基材ユニットの搬送速度:1.0m/min
(2−2.第2のガスバリアー層(G2)の形成)
引き続き樹脂基材ユニットの搬送を行い、第2ステーション(S2)にて、樹脂基材ユニットを構成している他方の樹脂基材(F2)のブリードアウト防止層上に、上記第1のガスバリアー層(G1)の形成方法と同様にして、第2のガスバリアー層(G2)を形成し、ガスバリアーフィルム積層体1(GFU)を作製した。
上記のようして作製したガスバリアーフィルム積層体1(GFU)のそれぞれのガスバリアー層(G1及びG2)の厚さは、180nmであった。
(3.ガスバリアーフィルム1(1A及び1B)の作製)
次いで、ガスバリアーフィルム積層体1(GFU)を搬送し、剥離位置(Sep)で一対のサポートローラー(14)で保持しながら、上下に張力を付与し、剥離可能な界面である中間層1から剥離して、ガスバリアーフィルム1A(GF1)と、ガスバリアーフィルム1B(GF2)にそれぞれ分離し、巻取りローラー(15A及び15B)にそれぞれ巻き取った。
上記作製した全く構成が同一のガスバリアーフィルム1(1A及び1B)について、下記に記載の条件にてXPSデプスプロファイル測定を行い、ケイ素元素分布、酸素差元素分布及び炭素元素分布を得た。その結果、膜厚方向のケイ素(Si)、酸素(O)、炭素(C)の分布(原子数比率)は、Si:C:O=1:2.1:0.3であった。
〈XPSデプスプロファイル測定〉
エッチングイオン種:アルゴン(Ar+)
エッチングレート(SiO2熱酸化膜換算値):0.05nm/sec
エッチング間隔(SiO2換算値):10nm
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製 機種名 「VG Theta Probe」
照射X線:単結晶分光AlKα
〔ガスバリアーフィルム2の作製〕
上記ガスバリアーフィルム1の作製において、樹脂基材ユニット1に代えて、下記の構成からなる樹脂基材ユニット2を用いた以外は同様にして、ガスバリアーフィルム2を作製した。
(樹脂基材ユニット2の作製)
樹脂基材2(F1及びF2)として、両面に易接着加工された厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製、コスモシャインA4300、略称:PET)を用い、中間層1を下記の中間層2に変更した以外は、樹脂基材ユニット1の形成方法と同様にして、樹脂基材ユニット2を作製した。
〈中間層2の形成〉
ブリードアウト防止層を形成した基材2Sのブリードアウト防止層を形成していない面側である易接着加工面に、積水化学工業株式会社製のポリビニルブチラール樹脂(BL−1の固形分濃度5%溶液、メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=8/2溶媒)を、80℃で30秒間乾燥した後の膜厚が10μmとなるよう条件で塗布した後、樹脂基材ユニット1の作製と同様の方法で、中間層を塗布していない樹脂基材2Sの易接着加工処理が施されている面と、上記中間層2を形成した樹脂基材2Sの中間層塗設面とを対面させ、直径が5.1cm(2インチ)のゴム製加圧ローラーと、直径が5.1cm(2インチ)の金属製加熱ローラーとで形成されているローラー間隙を通過させ、圧力5N/cm、搬送速度1m/分の速度で貼合され、60℃で2日間の追加乾燥を行った後、7.6cm(3インチ)径のプラスチック製のコアに巻き取り、樹脂基材ユニット2を作製した。
〔ガスバリアーフィルム3の作製〕
上記ガスバリアーフィルム1の作製において、樹脂基材ユニット1に代えて、下記の構成からなる樹脂基材ユニット3を用いた以外は同様にして、ガスバリアーフィルム3を作製した。
(樹脂基材ユニット3の作製)
上記樹脂基材ユニット1の作製において、樹脂基材(F1及びF2)を、それぞれ厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製、コスモシャインA4300、略称:PET)に変更した以外は同様にして、樹脂基材ユニット3を作製した。
〔ガスバリアーフィルム4の作製〕
上記ガスバリアーフィルム1の作製において、樹脂基材ユニット1に代えて、下記の構成からなる樹脂基材ユニット4を用いた以外は同様にして、ガスバリアーフィルム4を作製した。
(樹脂基材ユニット4の作製)
上記樹脂基材ユニット1の作製において、樹脂基材(F1及びF2)を、それぞれ厚さが25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムである帝人デュポンフィルム株式会社製のテイジン(登録商標)テトロンフィルム(登録商標)GEに変更した以外は同様にして、樹脂基材ユニット4を作製した。
〔ガスバリアーフィルム5の作製〕
上記ガスバリアーフィルム1の作製において、樹脂基材ユニット1に代えて、下記の構成からなる樹脂基材ユニット5を用いた以外は同様にして、ガスバリアーフィルム5を作製した。
(樹脂基材ユニット5の作製)
上記樹脂基材ユニット1の作製において、樹脂基材(F1及びF2)を、それぞれ厚さが12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムである帝人デュポンフィルム株式会社製のテイジン(登録商標)テトロンフィルム(登録商標)GEに変更した以外は同様にして、樹脂基材ユニット5を作製した。
〔ガスバリアーフィルム6の作製〕
上記ガスバリアーフィルム1の作製において、樹脂基材ユニット1に代えて、下記の構成からなる樹脂基材ユニット6を用いた以外は同様にして、ガスバリアーフィルム6を作製した。
(樹脂基材ユニット6の作製)
上記樹脂基材ユニット1の作製において、一方の樹脂基材(F1)を厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製、コスモシャインA4300)とし、他方の樹脂基材(F2)を厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製、コスモシャインA4300)とした以外は同様にして、樹脂基材ユニット6を作製した。なお、中間層1は、厚さ75μmの樹脂基材(F1)上に形成した。
〔ガスバリアーフィルム7の作製〕
上記ガスバリアーフィルム1の作製において、樹脂基材ユニット1に代えて、下記の構成からなる樹脂基材ユニット7を用いた以外は同様にして、ガスバリアーフィルム7を作製した。
(樹脂基材ユニット7の作製)
上記樹脂基材ユニット1の作製において、一方の樹脂基材(F1)を厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製、コスモシャインA4300)とし、他方の樹脂基材(F2)を厚さが25μmの帝人デュポンフィルム株式会社製のテイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルムGEに変更した以外は同様にして、樹脂基材ユニット7を作製した。なお、中間層1は、厚さ75μmの樹脂基材(F1)上に形成した。
〔ガスバリアーフィルム8の作製〕
上記ガスバリアーフィルム3の作製において、樹脂基材ユニット3に代えて、下記の構成からなる樹脂基材ユニット8を用いた以外は同様にして、ガスバリアーフィルム8を作製した。
(樹脂基材ユニット8の作製)
上記樹脂基材ユニット3の作製において、一方の樹脂基材(F2)として、厚さが50μmの帝人デュポンフィルム株式会社製のポリエチレンナフタレート(PEN)であるテイジン(登録商標)テオネックス(登録商標)Q81を用いた以外は同様にして、樹脂基材ユニット8を作製した。なお、中間層1は、厚さ50μmの樹脂基材(F1)上に形成した。
〔ガスバリアーフィルム9の作製〕
上記ガスバリアーフィルム7の作製において、樹脂基材ユニット7に代えて、下記の構成からなる樹脂基材ユニット9を用いた以外は同様にして、ガスバリアーフィルム9を作製した。
(樹脂基材ユニット9の作製)
上記樹脂基材ユニット7の作製において、一方の樹脂基材(F2)として、厚さが25μmの帝人デュポンフィルム株式会社製のポリエチレンナフタレート(PEN)である帝テイジン(登録商標)テオネックス(登録商標)Q81に変更した以外は同様にして、樹脂基材ユニット9を作製した。なお、中間層1は、厚さ75μmの樹脂基材(F1)上に形成した。
〔ガスバリアーフィルム10の作製〕
〈樹脂基材の準備〉
樹脂基材として、熱可塑性樹脂支持体であって、両面に易接着加工された厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製、コスモシャインA4300)を用い、この樹脂基材を温Z度25℃、相対湿度55%の環境下で96時間保管して調湿した。
〈ブリードアウト防止層の形成〉
ガスバリアーフィルム1の作製に用いた樹脂基材1と同様の方法で、ブリードアウト防止層を樹脂基材の両面に設けた。
〈ガスバリアーフィルムの作製〉
次いで、樹脂基材の一方の面側に、ガスバリアーフィルム1の作製で用いたのと同様のプラズマCVD法を用い、第1ステーション(S1)のみを使用してガスバリアー層を形成し、樹脂基材の一方の面側のみにガスバリアー層(G1)を有するガスバリアーフィルム10を作製した。
〔ガスバリアーフィルム11の作製〕
上記ガスバリアーフィルム10の作製において、樹脂基材を両面に易接着加工された厚さ75μm厚さのポリエチレンテレフタレート(東洋紡株式会社製、コスモシャインA4300)に変更した以外は同様にして、片面のみにガスバリアー層を形成したガスバリアーフィルム11を作製した。
〔ガスバリアーフィルム12の作製〕
上記ガスバリアーフィルム10の作製において、樹脂基材を両面に易接着加工された厚さが25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムである帝人デュポンフィルム株式会社製のテイジン(登録商標)テトロンフィルム(登録商標)GEに変更した以外は同様にして、片面のみにガスバリアー層を形成したガスバリアーフィルム12を作製した。
〔ガスバリアーフィルム13の作製〕
上記ガスバリアーフィルム10の作製において、樹脂基材を両面に易接着加工された厚さが12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムである帝人デュポンフィルム株式会社製のテイジン(登録商標)テトロンフィルム(登録商標)GEに変更した以外は同様にして、片面のみにガスバリアー層を形成したガスバリアーフィルム13を作製した。
〔ガスバリアーフィルム14の作製〕
上記ガスバリアーフィルム12の作製において、樹脂基材である厚さが25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムである帝人デュポンフィルム株式会社製のテイジン(登録商標)テトロンフィルム(登録商標)GEのガスバリアー層を形成する面とは反対側の面に、ポリエチレンテレフタレート製の厚さ75μmの再剥離粘着フィルム(パナック株式会社製、パナプロテクトST、キャリアシート)を、図3に記載した貼合方法により、気泡が残留しないようにして貼合された以外は同様にして、ガスバリアーフィルム14を作製した。
《ガスバリアーフィルムの評価》
〔ガスバリアー性の評価〕
上記作製した各ガスバリアーフィルムについて、MOCON社製のMOCON水蒸気透過率測定装置PERMATRAN−Wを用いて、38℃、90%RHにおける水蒸気透過度を測定した。次いで、下記の評価ランクに従って、ガスバリアー性を評価した。なお、ガスバリアーフィルム1〜9については、2つ作製したガスバリアーフィルムGF1とGF2の平均値を求めた。
5:水蒸気透過度が、0.05g/m2・day未満である
4:水蒸気透過度が、0.05g/m2・day以上、0.10g/m2・day未満である
3:水蒸気透過度が、0.10g/m2・day以上、1.00g/m2・day未満である
2:水蒸気透過度が、1.00g/m2・day以上、5.00g/m2・day未満である
1:水蒸気透過度が、5.00g/m2・day以上である
〔耐久性の評価:屈曲処理後の水蒸気透過度の測定〕
上記作製した各ガスバリアーフィルムについて、下記の屈曲処理を施した後、MOCON社製のMOCON水蒸気透過率測定装置PERMATRAN−Wを用いて、38℃、90%RHにおける水蒸気透過度を測定した。次いで、下記の評価ランクに従って、耐久性を評価した。なお、ガスバリアーフィルム1〜9については、2つ作製したガスバリアーフィルムGF1とGF2の平均値を求めた。
(屈曲処理)
屈曲処理として、上記作製した各ガスバリアーフィルムについて、半径10mmの曲率になるように180度の角度で100回の屈曲を繰り返して行った。
5:水蒸気透過度が、0.05g/m2・day未満である
4:水蒸気透過度が、0.05g/m2・day以上、0.10g/m2・day未満である
3:水蒸気透過度が、0.10g/m2・day以上、1.00g/m2・day未満である
2:水蒸気透過度が、1.00g/m2・day以上、5.00g/m2・day未満である
1:水蒸気透過度が、5.00g/m2・day以上である
(カール耐性の評価)
各ガスバリアーフィルムの作製において、ガスバリアー層を形成した直後のカールを測定した。
具体的には、本発明のガスバリアーフィルム1〜9については、ガスバリアーフィルム積層体の状態で、また、比較例のガスバリアーフィルム10〜14については、ガスバリアーフィルムのカールを測定した。
上記各測定試料として、製膜方向に長さ30cm、幅手方向に幅20cmのシート状に切り出して、25℃、50%RHの環境下で、平滑で水平な金属面の上に、静置面に対して凹となる様に静置して、5分後に、シート端部の4点の浮き上がり高さの平均値を測定し、下記の基準に従って、カール耐性を評価した。
5:4点の浮き上がり平均高さが、1.0mm未満である
4:4点の浮き上がり平均高さが、1.0mm以上、3.0mm未満である
3:4点の浮き上がり平均高さが、3.0mm以上、10.0mm未満である
2:4点の浮き上がり平均高さが、10.0mm以上、25.0mm未満である
1:4点の浮き上がり平均高さが、25.0mm以上である
(ガスバリアーフィルムの平面性の評価)
上記作製した各ガスバリアーフィルムの平面状態、具体的にはガスバリアー形成時の熱等のダメージによるシワや凹凸の発生の有無について目視観察し、下記の基準に従って平面性の評価を行った。
◎:シワや凹凸の発生は全く認められず、良好な平面性である
○:極めて弱いシワや凹凸が僅かに認められるが、ほぼ良好な平面性である
△:弱いシワや凹凸の発生が認められるが、実用上許容される品質である
×:強いシワや凹凸がかなりの数発生し、実用上問題となる品質である
(ガスバリアーフィルムの生産性(相対値)の評価)
上記ガスバリアーフィルム1〜14の作製において、ガスバリアーフィルム1の生産効率(単位面積当たりの生産時間、分/m2)を基準として、それぞれのガスバリアーフィルムの相対生産効率を求めた。
ガスバリアーフィルム1の生産効率(単位面積当たりの生産時間、分/m2)と同等以上であれば「○」、0.60倍以上、1.00倍未満であれば「△」、0.60倍未満であれば「×」と判定した。
以上により得られた結果を、表1に示す。
表1に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する構成からなるガスバリアーフィルム積層体を用いて作製したガスバリアーフィルムは、ガスバリアー性、耐久性(屈曲耐性)及びカール耐性に優れていることが分かる。
また、ガスバリアーフィルム製造における平面性及び生産性に優れていることが分かる。これは、本発明の特徴である2つの樹脂基材を貼合された樹脂基材ユニットを用いることにより、それぞれのガスバリアーフィルムの樹脂基材の膜厚は薄くても、樹脂基材ユニットとして十分な膜厚を確保することができ、ガスバリアー層形成時に高温環境下に曝されても、平面性を損なうことがないため、薄膜でかつ平面性に優れたガスバリアーフィルムを安定に作製することができる。また、ガスバリアーフィルム積層体として、同時に2つのガスバリアーフィルムを一回の製造工程で作製することができ、生産効率が極めて高い方法である。