JP2014229401A - ウエット試料の封入用カプセルならびに構成部材およびその製造方法 - Google Patents

ウエット試料の封入用カプセルならびに構成部材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 ウエット試料を確実に封入でき、TEMによる観察を可能にし得るカプセルを安価に提供する。【解決手段】 封入用カプセルに使用する構成部材は、基板11の表面に単層または複数層に積層されたグラフェンにより形成されたグラフェン膜15と、グラフェン膜の裏面側の一部が露出するように基板を裏面から部分的に除去して形成された凹部16とを備える。封入用カプセルは、二つの構成部材のうち、少なくとも一方の凹部にウエット試料を充填し、他方の構成部材によって凹部を閉鎖するとともに、両構成部材の各グラフェン膜が相互に対向するように配置した状態で一体化する。製造方法は、基板表面に金属触媒膜を積層する工程と、金属触媒膜の表面にグラフェンを単層または複数層に成長形成してグラフェン膜を積層する工程と、グラフェン膜の裏面を露出させる工程とを含む。【選択図】 図1

Description

本発明は、液状の試料または液体を含有し若しくは液体に内包される試料などのいわゆるウエット試料を封入するためのカプセル、そのカプセルを構成するための構成部材、および、これらの製造方法に関し、特に、透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察することができるものである。
透過型電子顕微鏡における試料の観察は、真空環境下による制限を受けることから、ウエット試料を観察する場合にあっては、脱水し、凍結処理し、または樹脂等により密封化処理をするなど、前処理を必要としていた。これは、真空状態において試料から気体が発生する場合には、電子ビームが試料を透過せず、回折を行うことができないことが原因となるためであった。
そこで、従来は、窒化ケイ素による微細なチューブを構成し、このチューブ内にウエット試料を通液することにより、真空環境下における液体の影響を排除してなる装置が開発されている(非特許文献1参照)。また、グラフェンによってウエット試料を包み込む方法が提案されている(非特許文献2参照)。
K.L.Klein, I.M.Anderson and N.de Jonge, "Transmission electron microscopy with a liquid flow cell", Journal of Microscopy, vol.242, Pt2, 2011, pp.117−123(2010). Christian Colliex, "Watching Solution Growth of Nanoparticles in Graphene Cells", 6, April, 2012, vol.336, SCIENCE, pp.44−45.
前掲の非特許文献1に開示される技術は、窒化ケイ素チューブによって、真空状態の外部環境から、ウエット試料を通液する内部環境を隔離するものであり、ウエット試料が当該チューブ内を通液する限り、当該ウエット試料が真空環境による影響を受けない構成となっている。しかしながら、窒化ケイ素により真空環境からウエット試料を隔離するためには、十分な強度を得るために、適当な肉厚を確保しなければならず、そのため、電子顕微鏡による分解能が低下せざるを得なかった。
そこで、前掲の非特許文献2に開示されるグラフェンによりウエット試料を包み込むことが提案されたものであるが、この技術は、二層のグラフェン膜の中間にウエット試料を注入するものであり、二層のグラフェン膜の中間に注入された試料は、グラフェン膜によって周辺環境から隔離されるものである。この技術によれば、非常に薄いグラフェンによって包み込まれたウエット試料を高い分解能によってTEM観察することが可能となるものであった。
しかしながら、上記の技術は、グラフェンを成長させて得られたグラフェン膜二層を貼り合わせ、そのグラフェン膜層に対してウエット試料の液滴をたらすことによって、グラフェン膜の周囲から二層間に液滴の一部を吸い取らせるものであるため、液滴の吸い取り状態を制御することができず、吸い取られた(包み込まれた)ウエット試料の位置や量などが安定しないものとなっていた。また、粘性を有するウエット試料、または細胞などのようにある程度の大きさを有するウエット試料を二層間に吸い取らせることは困難であるという問題点があった。
なお、前掲の非特許文献1は、窒化ケイ素によるチューブの一部(電子ビーム透過部分)を真空環境内において露出させる構成であることから、ウエット試料をチューブに供給するための手段(および排出するための手段)がチューブと一体的に構成されなければならず、しかも非常に微細な構造を要することから、その装置には高額な製造コストを要することとなり、結果的に高価な装置となっていた。
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、ウエット試料を確実に封入でき、TEMによる観察を可能にし得るカプセルを安価に提供するとともに、そのための構成部材およびその製造方法を提供することである。
そこで、本発明者らは、鋭意研究した結果、MEMS(微小電気機械システム:Micro Electro Mechanical System)技術によって微細なカプセル構成部材を製造し得る方法を開発し、また、グラフェン膜によって真空状態の外部環境から内部環境を隔離させるとともに、確実にウエット試料を封入できるカプセルを製造し得ることを見出し、以下の各発明を完成させることに至ったものである。
ウエット試料の封入用カプセルの構成部材にかかる第1の発明は、基板の表面に単層または複数層に積層されたグラフェンにより形成されたグラフェン膜と、このグラフェン膜の裏面側の一部が露出するように前記基板を裏面から部分的に除去して形成された凹部とを備えることを特徴とするものである。
ウエット試料の封入用カプセルの構成部材にかかる第2の発明は、構成部材にかかる第1の発明において、前記グラフェン膜が、前記基板の表面に積層された金属触媒膜上で成長させた単層または複数層のグラフェンによって形成されたものであり、前記凹部が、前記グラフェン膜を露出させるために前記金属触媒膜の一部を除去して形成されたものである。
ウエット試料の封入用カプセルの構成部材にかかる第3の発明は、基板の表面を端縁から適宜長さの範囲について部分的に除去して形成された2本の流路構成部と、この2本の流路構成部が一部で連続するように基板の表面を除去して形成された連続部と、この連続部の一部に単層または複数層に積層されたグラフェンにより形成されたグラフェン膜と、このグラフェン膜の裏面側の一部が露出するように前記基板を裏面から部分的に除去された凹部とを備えることを特徴とするものである。
ウエット試料の封入用カプセルの構成部材にかかる第4の発明は、構成部材にかかる第3の発明において、2本の前記流路構成部が、相互に平行となるように形成されているものである。
ウエット試料の封入用カプセルの構成部材にかかる第5の発明は、構成部材にかかる第3または第4の発明において、前記グラフェン膜が、前記基板の表面に積層された金属触媒膜上で成長させた単層または複数層のグラフェンによって形成されたものであり、前記凹部が、前記グラフェン膜を露出させるために前記金属触媒膜の一部を除去して形成されたものである。
ウエット試料の封入用カプセルにかかる第1の発明は、構成部材にかかる第1または第2の発明を二つ用いて構成されるウエット試料の封入用カプセルであって、少なくとも一方の前記構成部材の凹部にウエット試料を充填し、他方の前記構成部材によって一方の構成部材の凹部を閉鎖するとともに、両構成部材の各グラフェン膜が相互に対向するように配置した状態で、両構成部材を一体化させてなることを特徴とするものである。
ウエット試料の封入用カプセルにかかる第2の発明は、第1の発明において、前記両構成部材が、該構成部材に形成された凹部を相互に対向する状態に配置され、両方の凹部によってウエット試料を封入してなることを特徴とするものである。
ウエット試料の封入用カプセルにかかる第3の発明は、構成部材にかかる第3ないし第5の発明のいずれかを二つ用いて構成されるウエット試料の封入用カプセルであって、前記両構成部材の流路構成部を合致させて流路を構成するとともに、前記グラフェン膜が相互に対向するように配置した状態で、両構成部材を一体化させてなることを特徴とするものである。
ウエット試料の封入用カプセルにかかる第4の発明は、第3の発明において、前記流路構成部によって構成される流路の一方に、ウエット試料を供給する供給側チューブの先端が挿入され、該流路の他方に、ウエット試料を排出する排出側チューブの先端が挿入され、前記両チューブとともに二つの前記構成部材を一体化しているものである。
ウエット試料の封入用カプセルの構成部材の製造方法にかかる第1の発明は、基板の表面に金属触媒膜を積層する触媒積層工程と、前記金属触媒膜の表面にグラフェンを単層または複数層に成長形成してグラフェン膜を積層するグラフェン成長工程と、前記グラフェン膜の裏面を露出するために前記基板の裏面側の一部をエッチングするグラフェン膜裏面露出工程とを含むことを特徴とするものである。
ウエット試料の封入用カプセルの構成部材の製造方法にかかる第2の発明は、基板の表面を部分的にエッチングして二つの流路構成部を形成する流路構成工程と、前記二つの流路構成部の一部を連続させるべき領域の表面を低くして連続部を形成する連続部形成工程と、前記連続部の表面に金属触媒膜を積層する触媒膜積層工程と、前記金属触媒膜の表面にグラフェンを成長させてグラフェン膜を形成するグラフェン膜形成工程と、前記グラフェン膜の裏面を露出するために前記基板の裏面側の一部をエッチングするグラフェン膜裏面露出工程とを含むことを特徴とするものである。
ウエット試料の封入用カプセルの構成部材にかかる本発明によれば、この構成部材を使用することによって内部に中空部を有するカプセルを構成することが可能となる。これにより、当該中空部を利用することによってウエット試料を封入することが可能となり、カプセルを構成した場合、そのカプセル内の所定位置においてウエット試料を確実に保持させることができる。また、構成部材の表面側と裏面側とは、グラフェン膜のみによって隔離されることとなり、TEM観察に供する場合においては、電子ビームの透過を良好な状態とすることができる。
また、ウエット試料の封入用カプセルにかかる本発明によれば、グラフェン膜で挟まれた空間にウエット試料を設置することができ、TEM観察時における電子ビームの透過を良好にすることができるため、解析度の高い観察を可能にするものである。また、カプセルの内部と外部との境界はグラフェン膜が配置されることから、真空環境下においても境界面が変形するなどの状態を抑制することができる。そして、流路を構成したカプセルにかかる第3の発明によれば、当該流路を使用してウエット試料の供給および排出を可能にし、また、複数の試料をカプセル内で混合させることも可能となる。さらに、流路にチューブを挿入した構成のカプセルにかかる第4の発明によれば、当該流路にチューブを設置することによって、カプセルの内部空間と外部とを当該チューブによって連続させることが可能となり、例えば、TEM観察中にカプセル内部にウエット試料を供給し、または、薬液等をウエット試料に供給するなど、条件を変化させつつTEM観察することも可能となる。
さらに、ウエット試料の封入用カプセルに使用する構成部材の製造方法にかかる本発明によれば、MEMS技術により微細な空間または流路等を形成することが可能であるから、比較的安価な構成部材を提供することができ、このような構成部材を使用することによって安価なカプセルを提供することができる。なお、構成部材の貼り合わせには、例えば、シール効果を有するエポキシ系の接着剤を使用することができ、市販されているものの中から選択されることとなるため、構成部材を安価に製造することにより、カプセル全体の製造コストを低額に抑えることが可能となる。流路にチューブを設置する場合においても、前述のように、シール効果を有する接着剤の使用により、流路とチューブとの間に生じ得る間隙を封止することも可能となる。
(a)は、封入用カプセルの構成部材にかかる第1の実施形態を示す説明図である。(b)は、IB−IB断面における切断部端面図である。 封入用カプセルにかかる第1の実施形態を示す説明図である。 封入用カプセルの構成部材にかかる第2の実施形態を示す説明図である。 (a)はIVA−IVA断面における切断部端面図であり、(b)は封入用カプセルにかかる第2の実施形態を示す説明図である。 封入用カプセルの実施形態について使用態様を示す説明図である。 封入用カプセルの実施形態について使用態様を示す説明図である。 封入用カプセルの構成部材の製造方法にかかる第1の実施形態を示す説明図である。 封入用カプセルの構成部材の製造方法にかかる第2の実施形態の前半の工程を示す説明図である。 封入用カプセルの構成部材の製造方法にかかる第2の実施形態の後半の工程を示す説明図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。説明の便宜上、ウエット試料の封入用カプセルの構成部材かかる実施形態を説明した後、当該構成部材を使用する封入用カプセルにかかる実施形態を説明し、最後に個々の製造方法について説明することとする。
〔構成部材にかかる第1の実施形態〕
図1は、ウエット試料の封入用カプセルの構成部材(以下、単に「構成部材」と称する場合がある)にかかる第1の実施形態を示すものである。図1(a)は構成部材の斜視図であり、図1(b)はIB−IB断面における切断部端面図である。これらの図に示されているように、本実施形態の構成部材1は、基板11の両面に積層された保護層12,13の片側(図中下側)10aの表面に金属触媒膜14が積層され、さらに、その表面にグラフェン膜15が積層されている。また、上記保護層12,13の他方(図中上側)10bの表面には、保護層13の一部が除去されるとともに、基板11が部分的に除去され、さらに、他方の保護層12および金属触媒膜14が除去されるように凹部16が形成され、グラフェン膜15の裏面側15bが露出するように構成されている。その結果、構成部材1の表裏の間は、グラフェン膜15のみによって区切られた状態となり、グラフェン膜15の表面側15aが外方に露出し、裏面側15bが内方に露出している。
グラフェン膜15は、基板11の表面10aに転写する方法もあり得るが、基板11との一体性および積層工程の容易性から、金属触媒膜14を積層したうえで、グラフェンを成長形成することによって成膜された構成としている。なお、グラフェン膜15は、グラフェンが単層の場合と複数層の場合とがあり得る。これは、グラフェン膜15の全体が一様に同じ状態で成長する場合にほか、部分的に単層〜複数層が混在する場合もあり得る。そこで、複数層のグラフェンを成長させることにより、成長率の小さい部分においても少なくとも単層のグラフェンを形成させることができるのである。そして、単層〜3層の範囲内となるようにグラフェンを成長させることによって、基板11の表面(金属触媒膜14の表面)のほぼ全体にグラフェンが成長され、グラフェン膜15を形成させることができるものである。
ここで、基板11としてはシリコン基板を使用することができ、保護層12,13は酸化シリコン膜によって構成することができる。この酸化シリコン膜による保護層12,13は、エッチングにより基板11を除去する際に、エッチングすべき領域以外の面を保護するために設けられている。そして、この保護層12,13は、エッチング終了後に除去してもよいが、本発明の趣旨によれば、これを除去することなく、これに重ねて成膜することができる。そこで、本発明では、単に基板の表面または裏面に積層されると表現する場合においては、上記保護層12,13を除去した状態で直接基板に積層する場合のほか、当該保護層12,13を残存させた状態において積層される場合をも含むことを意味するものである。
また、基板11として、面方位(100)のシリコン基板を使用することにより、凹部16を形成する際、異方性エッチングによって(111)に沿ったエッチング面が形成され、角錐状の凹部16を形成することが可能となる。このように、凹部16を角錐状に形成することにより、封入すべきウエット試料が供給される際、その底面に位置するグラフェン膜15へ案内させることができ、ウエット試料の封入位置を特定することができる。
〔カプセルにかかる第1の実施形態〕
図2は、上述した構成部材にかかる第1の実施形態を使用したウエット試料の封入用カプセル(以下、単に「カプセル」と称する場合がある)の実施形態を示す図である。図2(a)は、同じ構造の二つの構成部材1A,1Bを同じ向きとして積層した状態を示し、図2(b)は、片方の構成部材1Bを反転させて積層した状態を示している。なお、いずれの状態による積層においても、特に図示していないが、両構成部材1A,1Bの当接部分は、その外周全体に樹脂製シール剤(エポキシ樹脂等の接着力あるシール剤)が塗布され、両者を強固に接着しつつ、当接部分における緊密性を確保しているものである。
そこで、まず、図2(a)に示されるカプセル101について説明する。同図に示されているように、このカプセル101は、二つの構成部材1A,1Bが、同じ構造の構成部材1A,1Bを同じ向きで、厚さ方向に積層したものである。すなわち、一方の構成部材(第1の構成部材)1Aの凹部16Aの開口を、他方の構成部材(第2の構成部材)1Bのグラフェン膜15Bで閉鎖するように積層されているのである。このような積層状態において両構成部材1A,1Bを一体化することにより、第1の構成部材1Aに形成された凹部16Aが、当該構成部材1Aのグラフェン膜15Aと、第2の構成部材1Bのグラフェン膜15Bとで密閉されることとなる。また、積層される二つの構成部材1A,1Bは同じ構造であることから、積層された両者1A,1Bに形成される両グラフェン膜15A,15Bは、当該凹部16Aを挟んで相互が対向した状態となり、しかも、一体化された状態のカプセル101の厚さ方向に、二つのグラフェン膜15A,15Bが並んで配置された状態となっている。
上記のような構成から、両構成部材1A,1Bを一体化した状態においては、第1の構成部材1Aに形成される凹部16Aは中空状態となり、この中空部分にウエット試料を封入させることができることとなる。従って、現実に使用する場合は、上記凹部16Aにウエット試料を入れた状態で両構成部材1A,1Bが一体化されることとなる。また、この中空部分は二つのグラフェン膜15A,15Bによって外部から隔離されることとなり、ウエット試料を外部へ漏洩させないように封入することができるものである。さらに、TEM観察に供する場合においては、上記二つのグラフェン膜15A,15Bは、対向した位置に配置されていることから、片方のグラフェン膜(例えば、第2の構成部材1Bのグラフェン膜15B)の外方から電子ビームを照射した場合、このグラフェン膜15Bを透過した電子ビームは、ウエット試料に照射され、さらに、透過した電子ビームは、反対側のグラフェン膜(例えば、第1の構成部材1Aのグラフェン膜15A)を透過して外方に放出することとなる。
なお、上記構成の場合には、第2の構成部材1Bに形成した凹部16Bはウエット試料の封入には寄与しないものであるが、当該凹部16Bが開口した状態で形成されていることから、この凹部16Bを、TEM観察時の電子ビームの照射位置の目印として利用し、さらには、微細な外部環境変更材料(磁性体など)をウエット試料に接近させた際のウエット試料の観察などに利用することもできる。なお、密閉された凹部16Aを挟んで両グラフェン膜15A,15Bが配置されることから、両グラフェン膜15A,15Bの距離を接近させた状態とすることができる。
次に、図2(b)に示されるカプセル102について説明する。同図に示されているように、このカプセル102は、同じ構造の二つの構成部材1A,1Bのうち、一つの構成部材(第1の構成部材に対して第2の構成部材)1Bを反転させて、厚さ方向に積層したものである。このような構成においては、二つの構成部材1A,1Bに形成した凹部16A,16Bが連続した状態で、一つの大きい中空部を構成することとなり、この両凹部16A,16Bを同時に、両構成部材1A,1Bのグラフェン膜15A,15Bによってその全体が閉鎖されることとなるものである。この構成によれば、各構成部材1A,1Bが薄肉に構成され、それぞれの凹部16A,16Bが比較的小さく形成される場合であっても、二つが総合されて比較的大きい中空領域を形成することが可能となり、ウエット試料を封入するための容積を大きくすることができる。
この場合においても、中空部分は、両方の構成部材1A,1Bのグラフェン膜15A,15Bによって外部から隔離されることとなる。また、両構成部材1A,1Bは同じ構造であることから、一体化されたカプセル102の厚さ方向の両側に、対向する状態でグラフェン膜15A,15Bを配置することができる。また、このグラフェン膜15A,15Bが、凹部16A,16Bの側に露出する位置を対称とする(例えば、平面視において中央に配置する)ことにより、一体化したときの両グラフェン膜15A,15Bはカプセル102の厚さ方向に並んだ状態で配置することができることとなり、前述のように、TEM観察時における電子ビームの透過が可能となる。
〔構成部材にかかる第2の実施形態〕
次に、構成部材にかかる第2の実施形態について説明する。図3は、構成部材の第2の実施形態を示す図である。図3(a)は、表面側を上向きとし、図3(b)は、裏面側を上向きとした状態を示している。
まず、図3(a)に示されているように、本実施形態の構成部材2は、基板21の両面に保護層22,23が積層された状態において、その表面20aに二本の流路構成部27,28が形成され、また、この両流路構成部27,28を連続させる連続部29が形成されている。さらに、流路構成部27,28および連続部29を含む表面20aには、金属触媒膜24が積層され、その表面にグラフェン膜25が積層されている。
流路構成部27,28は、基板21の端縁20cから反対端縁20dに向かう方向Xに沿って長尺に形成され、本実施形態では、流路構成部27,28の長手方向を、ともに当該方向Xに平行な状態としている。また、両流路構成部27,28は、片方の端縁20cにおいて開口しており、他方の端縁20dには到達しない(開口しない)状態の長さで設けられている。このとき形成される開口部27a,28aは、カプセル構成時(後述)において当該カプセルの外部との通液等を可能にするためのものである。
なお、図3(a)には、流路構成部27,28を開口部27a,28aから離れたところで、幅狭に形成しており、そのため、幅方向内向きに突出する部分S1,S2,S3,S4が形成されているが、これは、カプセル構成時において、外部との通液等のためにチューブを挿入する際のストッパとして機能させるためのものである。従って、この種のストッパS1〜S4が不要である場合には、流路構成部27,28の幅を均一な状態で構成してもよい。また、この突出部分S1〜S4をストッパとして機能させるためには、その形状は構成可能な形状に適宜変更可能であり、従ってテーパ状に形成してもよいものである。
連続部29は、上記流路構成部27,28の一部が連続するように設けられるものであり、その連続部29が形成される領域では、前記保護層22が他の領域に比較して薄肉に形成されている。そして、流路構成部27,28および周辺領域を含む表面20aの全体に、金属触媒膜24およびグラフェン膜25が形成される結果、連続部29の表面は、周辺領域より低位で、かつ、流路構成部27,28よりも浅い状態で形成されている。この連続部29深さは保護層22の膜厚によって決定されることとなるから、当該保護層22の膜厚を調整することにより適宜変更が可能である。
ところで、図3(b)に示されているように、本実施形態の裏面20bには、凹部26が形成されている。この凹部26は、前記連続部29に形成したグラフェン膜25を裏面20bの側に露出させるためのものである。すなわち、表面20aの側(図3(a)参照)には保護層22および金属触媒膜24が存在しているが、裏面20bの側では、凹部26の底面はグラフェン膜25の裏面側が露出した状態となっている。
この状態の詳細を図4(a)に示している。この図は、図3(a)のIVA−IVA断面における切断部端面図である。この図に示されるように、グラフェン膜25の表面側25aは構成部材2の表面20aにおいて露出し、グラフェン膜25の裏面側25bは、構成部材2の裏面20bにおいて露出しているのである。従って、本実施形態の構成部材20では、表面20aの側と裏面20bの側とは、グラフェン膜25によって隔離される状態となっているのである。なお、本実施形態における凹部26についても、基板21として、面方位(100)のシリコン基板を使用することにより、異方性エッチングによって(111)に沿ったエッチング面が形成されることとなり、結果的に凹部26を角錐状に形成することが可能である。
〔カプセルにかかる第2の実施形態〕
カプセルにかかる第2の実施形態を図4(b)に示す。本実施形態は、上述の構成部材にかかる第2の実施形態を使用するものであって、同じ構成の二つの構成部材2A,2Bを積層した状態で一体化してなるものである。この一体化には、第1の実施形態と同様に接着性を有するシール剤が使用されるが、両構成部材2A,2Bが張り合わされる境界部分については、さらに外部からシール剤を塗布して気密性よく間隙を閉鎖させることができる。なお、流路構成部の開口部については後述する。
ここで、一体化されてなる本実施形態のカプセル200は、両構成部材2A,2Bのうち、一方の構成部材(第1の構成部材)2Aの表面(流路構成部が形成されている面20a(図4(a)参照))に他方の構成部材(第2の構成部材)2Bの表面(同様に流路構成部が形成されている面20a(図4(a)参照))を対向させるように、第2の構成部材2Bを反転させて積層している。このような状態で積層され一体化されることによって、両構成部材2A,2Bに形成される両グラフェン膜25A,25Bは、それぞれ表面側が相互に対向するように配置され、また、流路構成部27A,27B,28A,28Bも対向する状態となる。
このように、流路構成部27A,27B,28A,28Bがそれぞれ対向して一体となることによって、流路R1,R2が二つ形成されることとなる。また、グラフェン膜25A,25Bは、周辺領域よりも低位に配置されていることから、両グラフェン膜25A,25Bの対向する面の間には、間隙が形成されることとなり、これが連続流通部R3として機能することとなる。すなわち、カプセル200の内部に形成される二つの流路R1,R2は、その一部が連続流通部R3によって連続され、一方の流路R1からウエット試料を流入させる場合、このウエット試料を連続流通部R3に到達させることができ、さらに、この連続流通部R3を通過したウエット試料を他方の流路R2から排出させることが可能となるのである。これにより、カプセル200の内部に連続してウエット試料を供給することができる経路を形成し得るのである。
また、両構成部材2A,2Bの凹部26A,26Bは、それぞれのグラフェン膜25A,25Bの裏面側を露出させていることから、カプセル200の両面において当該グラフェン膜25A,25Bの裏面が露出しており、その表面側(カプセル200の内部側)には、連続流通部R3が形成される構成となっている。
本実施形態は上記のような構成であるから、二つの構成部材2A,2Bに形成される二つのグラフェン膜25A,25Bによって連続流通部R3が構成されていることにより、当該連続流通部R3が形成される領域は、当該二つのグラフェン膜25A,25Bによって外部から隔離されることとなる。また、この連続流通部R3は二つの流路R1,R2に連続していることから、流路R1,R2の開口部を閉鎖することにより、内部空間を密閉することができる。
このような構成により、本実施形態をTEM観察に使用する場合には、順次異なるウエット試料を供給しつつ連続した観察を行うことができるほか、予め供給したウエット試料に対し、特定の薬液を投与しつつ、その変化を観察することも可能となる。また、流路R1,R2を利用してウエット試料を供給した後に、流路R1,R2の開口部を閉鎖することにより、密閉された空間内にウエット試料を封入することができ、この状態でTEM観察に供することも可能となる。
また、二つのグラフェン膜25A,25Bは、対向した位置に配置されていることから、TEM観察に際して、片方のグラフェン膜(例えば、25B)の外方から電子ビームを照射した場合、このグラフェン膜25Bを透過した電子ビームは、ウエット試料に照射され、さらに、透過した電子ビームは、反対側のグラフェン膜(例えば、グラフェン膜25A)を透過して外方に放出することとなる。
〔カプセルにかかる第3の実施形態〕
次に、カプセルにかかる第3の実施形態について説明する。図5は第3の実施形態を示す図である。この図に示されるように、本実施形態のカプセル300は、前記第2の実施形態と同様に、同種の二つの構成部材2A,2Bを積層した状態で一体化してなり、さらに、その流路R1,R2にチューブC1,C2を挿入したものである。このように、流路R1,R2の開口部分は、チューブC1,C2を装着することにより、また、そのチューブC1,C2と流路R1,R2に生ずる微細な間隙をシール剤等で閉塞することにより、流路R1,R2および連続流通部R3(図4(b)参照)は、チューブC1,C2を介して外部と連通することとなる。なお、シール剤は、前記チューブC1,C2と流路R1,R2との間隙を閉塞するために使用するほか、前記二つの構成部材2A,2Bを一体化する際にも使用し、さらに、両構成部材2A,2Bが張り合わされる境界部分についても、外部から塗布して気密性よく間隙を閉鎖するためにも使用される。このように、カプセル300の周辺外部とは隔離されることとなることとなるから、カプセル300の内部空間は周辺外部と隔離しつつ、上記チューブC1,C2を介することによってウエット試料を内部に供給することができ、また、内部のウエット試料の排出を可能にすることができる。なお、本実施形態においても、第2の実施形態と同様に、二つの構成部材2A,2Bの凹部26A,26B(図5中に26Aは表示していない)は、それぞれのグラフェン膜の裏面側を露出させる状態となっており、カプセル300の内部側には、連続流通部が形成される状態となっている。
ところで、本実施形態をTEM観察に供する場合には、使用されるチューブC1,C2は、一部が真空環境下に配置されることとなることから、適宜な剛性を有するものが使用される。例えば、ヴィクトレックス・ピーエルシー社製のPEEK(登録商標)Tubingを使用することができる。チューブC1,C2のサイズは、カプセル300の大きさ、特に流路R1,R2の大きさによって適宜選択されるが、その概略を示せば、カプセル300が縦横4mm、厚さ400μmの四角柱状である場合、管径360μm程度を使用することができる。
また、流路R1,R2とチューブC1,C2との間に間隙を生ずる場合は、シール剤を使用して当該間隙を閉塞することができる。このシール剤は、構成部材2A,2Bを一体化する際に、その当接境界部分に使用されるものと同じものが使用される。すなわち、両者の一体化とともに、チューブC1,C2の一体化を同時に行うのである。ここで使用されるシール剤は、構成部材2A,2Bが強固に固着され、また、チューブC1,C2が固着されるように、接着力を有するものが使用される。例えば、アジレント・テクノロジーズ・インコーポレイテッド社製のTORR SEAL(登録商標)を使用することができる。
〔カプセルの使用態様〕
次に、チューブC1,C2を含むカプセル300をTEMホルダに設置する状態を説明する。図6は、設置状態の概略を示す図である。この図に示されているように、チューブC1,C2はTEMホルダTHの内部に埋設され、その先端付近において外部に突出し、さらに、先端がカプセル300に連結されている。TEMホルダTHの先端周辺は真空領域Vに設置されることから、チューブC1,C2がTEMホルダTMから突出する部分にリング状のシール部材SRが介在されている。カプセル300は、電子ビーム(矢印)が照射される位置に、グラフェン膜露出領域(凹部26A,26Bが形成される部分)を設置し、その内部に供給されるウエット試料に電子ビームを照射させることとなる。
このような使用態様により、真空領域Vに設置されたカプセル300に対し、外部からウエット試料を供給し、また、カプセル300からウエット試料を排出させつつTEM観察を可能にすることができる。また、カプセル300の内部に残置させたウエット試料に対して薬液等を供給して、その変化を観察することも可能となる。なお、供給側のチューブC1を介してカプセル300にウエット試料や薬液等を供給する際、排出側のチューブC2は、これらの内部に充満する空気を排気して供給を容易にする機能をも兼ねている。
〔製造方法にかかる第1の実施形態〕
まず、前述した構成部材にかかる第1の実施形態の製造方法について説明する。図7は、図1(b)に示した切断部端面図によって製造過程を示している。この図に示されているように、基板11の両面に保護層12,13を積層する(図7(a))。基板11は、例えばシリコン基板を使用することができ、保護層12,13は、熱酸化によりシリコン酸化膜を形成することができる。この保護層12,13は、基板11に凹部16を形成する際の保護を目的としている。
次に、裏面10bに凹部16を形成するための工程を行う(図7(b),(c))。凹部16は、基板11をエッチングして形成するが、まず、凹部16を形成すべき領域の保護層13をエッチングによって除去し(図7(b))、さらに、基板11をエッチングして当該領域の基板11に凹部16を形成する。保護層13のエッチングは、例えば、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)法によることができ、基板11のエッチングは、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)を使用するウエットエッチング法によることができる。このとき、基板11を面方位(100)のシリコン基板を使用することにより、結晶異方性エッチングを行うことによって(111)面に沿ったエッチング面を形成させ、角錐状の凹部26を形成することができる。
次に、図7(d)に示すように、基板11(保護層12,13を含む)の表裏を反転させ、その表面10aの側(保護層12の表面)に金属触媒膜14を積層する(触媒積層工程)。この触媒積層工程で積層される金属触媒としては、ニッケルや銅などのように、表面に三角格子を持つものが使用される。この種の金属により触媒能を得ることができる。金属触媒の積層は、例えば、蒸着法またはスパッタ法を使用することができる。さらに、金属触媒膜14の表面に当該金属を触媒としてグラフェンを成長形成させ(図7(e))、グラフェン膜15を積層する(グラフェン成長工程)。グラフェンの成長には、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法によることができる。具体的には、炭化水素ガスを使用し、これを熱分解および触媒による分解によって得られる炭素原子をエピタキシャル成長させる方法(熱分解CVD法)により、グラフェンを単層から複数層(3層程度)に成長形成させることができる。炭化水素ガスとしては、メタン、アセチレン、アルコールなどがあり、金属触媒膜14を1000°C程度に加熱することにより熱分解能を得ることができる。なお、保護層12を除去せずに金属触媒膜14を積層するのは、当該金属触媒膜14が基板11から剥離することを防止するためである。すなわち、基板11がシリコン基板であり、金属触媒膜14がニッケルの場合には、基板11から金属触媒膜14が剥離する場合もあり得るが、シリコン酸化膜による保護層12に金属触媒膜14を積層することにより、金属触媒膜14が容易に剥離しないようにすることができるのである。
最後に、図7(f)に示されるように、基板11(保護層12,13を含む)の表裏を再度反転させ、裏面10bの側において、凹部16の底部に残存する保護層12の一部および金属触媒層14の一部をエッチングによって除去する(グラフェン膜裏面露出工程)。保護層12のエッチングには、例えば、前記と同様に反応性イオンエッチング(RIE)法によることができるほか、希フッ酸(DHF)によるウエットエッチング法によることができる。また、金属触媒膜14のエッチングには、例えば、塩化鉄(FeCl)の水溶液を使用したウエットエッチングによることができる。
このようにして凹部16の底部に残存されていた保護層12および前工程で積層された金属触媒膜14を除去することによって、グラフェン膜15の裏面側が凹部16の底部において露出することとなり、構成部材1が製造されることとなる。なお、本実施形態で使用される基板11としては、縦横が4mmで厚さが200〜300μmの微細な四角柱状のものを予定していることから、基本的にMEMS技術が用いられている。また、逐次説明していないが、積層時およびエッチング時において、その対象としない領域は、フォトリソグラフィまたはマスキング等により被覆したうえで、選択的に蒸着等およびエッチングが行われるものである。
〔カプセルの製造方法〕
上記のようにして製造された構成部材1は、これらを2個使用し、図2に示したように、厚さ方向に積層させ、両者の境界部分には、接着力を有するシール剤が塗布されることによって一体化することができ、これによりカプセルを製造することができる。なお、シール剤としては、例えば、前述したアジレント・テクノロジーズ・インコーポレイテッド社製のTORR SEAL(登録商標)などを使用することができる。
〔製造方法にかかる第2の実施形態〕
次に、前述した構成部材にかかる第2の実施形態の製造方法について説明する。この製造過程のうち前半の工程を図8に、後半の工程を図9に示す。本実施形態では、基本的な工程としては、第1の実施形態と同様であるが、流路構成部27,28および連続部29を構成する工程が相違している。そこで、まず、図8(a)に示すように、基板21の両面に保護層22,23を積層する。本実施形態においても、基板21としては、例えば、シリコン基板を使用することができ、この場合、保護層22,23は、熱酸化によりシリコン酸化膜を成膜することにより形成することができる。
次に、図8(b)に示すように、基板21の表面20aの側の保護層22を部分的にエッチングし、さらに基板21をエッチングすることにより流路構成部の基礎部分27a,28aを形成する(流路構成工程)。保護層22のエッチングには、第1の実施形態と同様に、例えば、RIE法によることができ、また、基板21のエッチングには、例えば、誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング(ICP−RIE:Inductive Coupled Plasma RIE)法により矩形にエッチングすることができる。
次に、図8(c)および(d)に示すように、裏面20bに凹部26を形成する。このとき、基板21の表裏20a,20bを反転させ、保護層23の一部をエッチングによって除去し、当該部分から結晶異方性エッチングにより角錐状の凹部26を形成するものである。この形成工程は第1の実施形態と同様である。
そして、図8(e)に示すように、再び基板21の表裏20a,20bを反転させ、保護層22の一部(連続部を形成すべき領域)の表面を除去し、当該保護層21を部分的に薄膜化し連続部の基礎部分29aを形成する(連続部形成工程)。このとき、フォトリソグラフィにより除去する領域以外をフォトレジストで被覆し、当該除去領域をRIE法によりエッチングすることで、保護膜(シリコン酸化膜)22を薄膜化することができる。このように、連続部の基礎部分29aを薄膜化することにより、その表面の高さは周辺領域よりも低位となることから、両流路構成部の基礎部分27a,28aに連続する部分を形成することができるのである。
その後、図9(a)および(b)に示すように、基板21の表面20aの側に露出される表面に金属触媒膜24を積層し(触媒膜積層工程)、さらに、その表面にグラフェン膜25を形成する(グラフェン膜形成工程)。金属触媒膜24の積層には、蒸着法またはスパッタ法によることができ、使用する金属としては、第1の実施形態と同様にニッケルや銅などが使用される。グラフェンの成長形成についても、前述と同様に熱分解CVD法によって行うことができる。なお、金属触媒膜24を薄膜化した保護層22に積層することによって、少なくとも連続部の基礎部分29aにおける金属触媒膜24の剥離を防止している。流路構成部の基礎部分27a,28aの表面には保護膜を形成させていないが、これは、剥離可能にする意味ではない。すなわち、製造後(特に、カプセル構成の状態)において、連続部の基礎部分29は、表裏を隔てるグラフェン膜を支持するための機能を発揮させる必要があることから、外力による剥離を防止するために、特に強力に積層させる必要があるためである。従って、流路構成部の基礎部分27a,28aのように、外力が作用する可能性の低い個所については、特に、保護膜を形成させていないのである。
このように、基板21の表面20aの側の表面全体に金属触媒膜24およびグラフェン膜25を積層することにより、流路構成部の基礎部分27a,28a(図8(e)参照)の底面にも金属触媒膜24およびグラフェン膜25が積層され、最終的な流路構成部27,28が形成される(図9(b)参照)。また、連続部の基礎部分29a(図8(e)参照)についても最終的な連続部29が形成されることとなる(図9(b)参照)。ここで、連続部29は、その基礎部分29aが周辺領域よりも低位に構成されていたため(図8(e)参照)、周縁領域とともに連続部の基礎部分29aの表面に金属触媒膜24およびグラフェン膜25が積層されることによって、各領域表面の相対的な高さの差は維持されることとなる(図9(b)参照)。
最後に、図9(c)および(d)に示すように、基板21の表裏20a,20bを再度反転させたうえで、裏面20bに形成した凹部26の底部に残存する保護層22と金属触媒膜24とを除去し、グラフェン膜25の裏面側を露出させることとなる(グラフェン膜裏面露出工程)。この除去の方法は、前述の第1の実施形態と同様である。以上のようにして、第2の実施形態の構成部材2を製造することができるのである。
〔カプセルの製造方法〕
上記のようにして製造された構成部材2は、これらを2個使用し、図4(b)に示したように、対称な状態で対向させつつ厚さ方向に積層させ、シール剤を両者の境界部分に塗布して一体化させことができる。このとき、内部には適宜空間(流路R1,R2および連続流通部R3)が形成されたカプセル状に構成することができるものである。なお、前記カプセル状に構成することによって形成される流路R1,R2には、図5に示したように、チューブの先端を挿入した状態としてもよい。また、一体化のために使用するシール剤としては、前述したものと同様のシール剤を使用することができる。
〔その他の態様〕
本発明の実施形態は、上記に示したとおりであるが、上記実施形態は一例であって、本発明がこれらに限定される趣旨ではない。従って、これらを適宜変形する実施形態とすることは可能である。例えば、構成部材にかかる第2の実施形態において、基板21の表面20aの側には、その表面全体に金属触媒膜24およびグラフェン膜25が積層されているが、当該構成部材2を使用して構成されるカプセル200の構造上、連続部29の表面にのみグラフェン膜25が形成されれば、外部との隔離を可能にすることができる。従って、上記第2の実施形態において、金属触媒膜24およびグラフェン膜25は、連続部29にのみ積層するような構成としてもよい。
上記のような構成とする場合には、製造方法にかかる第2の実施形態において、連続部の基礎部分29aのみに金属触媒膜24およびグラフェン膜25を積層させることとなる。このとき少なくとも金属触媒膜24を成膜する際に、当該基礎部分29aを除く領域には適宜材料によりマスキング等を行うこととなる。さらに、金属触媒膜24およびグラフェン膜25が積層された連続部29の表面の高さが周辺領域よりも低位となるように、予め保護層22のエッチングの程度を調整し、また、金属触媒膜24およびグラフェン膜25の膜厚が調整されることとなる。
また、構成部材にかかる実施形態において、凹部16,26を異方性エッチングによって角錐状に形成したものを例示したが、この凹部16,26を設ける趣旨は、グラフェン膜の裏面側を露出させ、作製されるカプセルの内部と外部とをグラフェン膜によって隔離するためである。従って、エッチングにより形成される形状は、角錐状に限定されるものではなく、他の形状にエッチングしたものであってもよい。ただし、グラフェン膜の露出面積を最小限にすることによって、剛性を維持するなどの目的で、凹部の開口部断面積よりも底面部断面積を小さくする場合には、異方性エッチングによることが好適である。
さらに、使用する材料、加工条件等についても例示したが、他の材料を使用し、また、他の条件により加工することができることは言うまでもない。すなわち、表面に特定の材料を積層する場合には、所定材料を堆積させる方法を適宜選択して利用することができ、エッチング方法についても、個々に示したエッチング方法に限定されず他の方法を使用してもよい。
1,2,3 構成部材
10a,20a 基板表面
10b,20b 基板裏面
11,21 基板
12,13,22,23 保護層
14,24 金属触媒膜
15,25 グラフェン膜
16,26 凹部
27,28 流路構成部
29 連続部
100,200,300 カプセル
R1,R2 流路
R3 連続流通部
C1,C2 チューブ
TH TEMホルダ
SR シール部
V 真空領域

Claims (11)

  1. 基板の表面に単層または複数層に積層されたグラフェンにより形成されたグラフェン膜と、このグラフェン膜の裏面側の一部が露出するように前記基板を裏面から部分的に除去して形成された凹部とを備えることを特徴とするウエット試料の封入用カプセルの構成部材。
  2. 前記グラフェン膜は、前記基板の表面に積層された金属触媒膜上で成長させた単層または複数層のグラフェンによって形成され、前記凹部は、前記グラフェン膜を露出させるために前記金属触媒膜の一部を除去して形成されている請求項1に記載のウエット試料の封入用カプセルの構成部材。
  3. 請求項1または2に記載の構成部材を二つ用いて構成されるウエット試料の封入用カプセルであって、少なくとも一方の前記構成部材の凹部にウエット試料を充填し、他方の前記構成部材によって一方の構成部材の凹部を閉鎖するとともに、両構成部材の各グラフェン膜が相互に対向するように配置した状態で、両構成部材を一体化させてなることを特徴とするウエット試料の封入用カプセル。
  4. 前記両構成部材は、該構成部材に形成された凹部を相互に対向する状態に配置され、両方の凹部によってウエット試料を封入してなることを特徴とする請求項3に記載のウエット試料の封入用カプセル。
  5. 基板の表面を端縁から適宜長さの範囲について部分的に除去して形成された2本の流路構成部と、この2本の流路構成部が一部で連続するように基板の表面を除去して形成された連続部と、この連続部の一部に単層または複数層に積層されたグラフェンにより形成されたグラフェン膜と、このグラフェン膜の裏面側の一部が露出するように前記基板を裏面から部分的に除去された凹部とを備えることを特徴とするウエット試料の封入用カプセルの構成部材。
  6. 前記流路構成部は、2本が相互に平行となるように形成されている請求項5に記載のウエット試料の封入用カプセルの構成部材。
  7. 前記グラフェン膜は、前記基板の表面に積層された金属触媒膜上で成長させた単層または複数層のグラフェンによって形成され、前記凹部は、前記グラフェン膜を露出させるために前記金属触媒膜の一部を除去して形成されている請求項5または6に記載のウエット試料の封入用カプセルの構成部材。
  8. 請求項5ないし7のいずれかに記載の構成部材を二つ用いて構成されるウエット試料の封入用カプセルであって、前記両構成部材の流路構成部を合致させて流路を構成するとともに、前記グラフェン膜が相互に対向するように配置した状態で、両構成部材を一体化させてなることを特徴とするウエット試料の封入用カプセル。
  9. 前記流路構成部によって構成される流路の一方には、ウエット試料を供給する供給側チューブの先端を挿入し、該流路の他方には、ウエット試料を排出する排出側チューブの先端を挿入し、前記両チューブとともに二つの前記構成部材を一体化してなる請求項6に記載のウエット試料の封入用カプセル。
  10. 基板の表面に金属触媒膜を積層する触媒積層工程と、
    前記金属触媒膜の表面にグラフェンを単層または複数層に成長形成してグラフェン膜を積層するグラフェン成長工程と、
    前記グラフェン膜の裏面を露出するために前記基板の裏面側の一部をエッチングするグラフェン膜裏面露出工程と
    を含むことを特徴とするウエット試料の封入用カプセルの構成部材の製造方法。
  11. 基板の表面を部分的にエッチングして二つの流路構成部を形成する流路構成工程と、
    前記二つの流路構成部の一部を連続させるべき領域の表面を低くして連続部を形成する連続部形成工程と、
    前記連続部の表面に金属触媒膜を積層する触媒膜積層工程と、
    前記金属触媒膜の表面にグラフェンを成長させてグラフェン膜を形成するグラフェン膜形成工程と、
    前記グラフェン膜の裏面を露出するために前記基板の裏面側の一部をエッチングするグラフェン膜裏面露出工程と
    を含むことを特徴とするウエット試料の封入用カプセルの構成部材の製造方法。
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