JP2014226703A - アルミニウム合金材のろう付方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】フラックスを使用せずにろう付を行い、Mgによる酸化皮膜の破壊作用を利用したろう付方法において、より良好で安定したろう付性を有し、工業的にも適用可能なろう付方法を提供する。【解決手段】心材にろう材がクラッドされたMg含有アルミニウム合金製ブレージングシートを用いて、フラックスを使用せずにアルミニウム合金材をろう付するろう付方法であって、第1加熱室に前記ブレージングシートと前記アルミニウム合金材とを、前記ろう材と前記アルミニウム合金材とが接する状態で配置し、所定量のMg蒸気を含有する不活性ガスを外部から前記第1加熱室へ供給してろう付けする。【選択図】図1
Description
本発明は、フラックスを使用しないでアルミニウム合金材をろう付するろう付方法に関し、特に熱交換器の製造に好適なろう付方法に関する。
アルミニウム材料は熱伝導率が高く軽量であるため、自動車搭載用をはじめとする熱交換器に多く使用されている。内部に水やオイル等を循環させ熱交換させる熱交換器は、タンク、チューブ、フィン等の部材から構成され、各部材はろう付により金属的に接合されている。
ろう付により製造される熱交換器を構成するアルミニウム材料としては、心材となるアルミニウム合金板の片面または両面にろう材等をクラッドしたブレージングシートが用いられる。一般的にブレージングシートの心材には溶融温度が600℃以上のアルミニウム合金が使用され、クラッドされるろう材合金には溶融温度が600℃以下のAl−Si合金が使用される。このブレージングシートにより熱交換器の部材を作製してこれらを組み合わせ、600℃前後の温度に加熱することにより、ブレージングシートのろう材のみを溶融して他の部材とろう付し、熱交換器を作製することができる。ブレージングシートを使用することにより、熱交換器を構成する多数の部材を一度にろう付することができるため、ブレージングシートは熱交換器用の材料として広く利用されている。
主に実用化されているろう付方法としては、真空ろう付法とノコロックろう付法が挙げられる。真空ろう付法ではAl−Si−Mg系合金からなるろう材が用いられ、真空中で加熱することによりろう材中のMgが材料から蒸発し、その際に材料表面の酸化皮膜を破壊してろう付を可能にする。しかしながら、真空ろう付法は高価な真空加熱装置を必要とするという欠点があった。一方、ノコロックろう付法ではAl−Si系合金からなるろう材が用いられ、フラックスを塗布した後に不活性ガス中で加熱し、フラックスが材料表面の酸化皮膜を破壊してろう付を可能にするものである。しかしながら、フラックスが不均一に塗布されるとろう付不良の原因となるため、フラックスを必要箇所に均一に塗布する必要があった。
これに対して、高価な真空加熱装置やフラックスを用いないで不活性ガス中で加熱することによりろう付を可能にする方法が提案されている。特許文献1には、フラットパイプの内側にAl−Si−Mg系合金からなるろう材を用いて乱流挿入片をフラックスを使用しないでろう付する方法が記載されている。また、特許文献2には、Mgを含有するろう付品を炭素室カバーで覆って加熱し、フラックスを用いずに不活性ガス中でろう付する方法が記載されている。この方法では、炭素質カバー内に存在する酸素が炭素質カバーのカーボンと反応し、炭素質カバー内の酸素濃度を低くしてろう付を可能にしている。
しかしながら、特許文献1の方法では、フラットパイプの外側についてはフラックスを塗布したノコロックろう付法によりろう付する必要があり、全てのろう付部位をフラックス無しでろう付することはできない。また、特許文献2の方法では、酸素とカーボンの反応により一酸化炭素や二酸化炭素が生成し、これらのガスがアルミニウムを酸化する作用を有するため、安定したろう付け性を得ることが困難であった。
本発明は、フラックスを使用せずにろう付を行い、Mgによる酸化皮膜の破壊作用を利用したろう付方法において、より良好で安定したろう付性を有し、工業的にも適用可能なろう付方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、Mg蒸気を含有する不活性ガスをブレージングシート及びアルミニウム合金材に供給することにより良好なろう付性が達成されることを見出した。
本発明に係るろう付方法は、心材にろう材がクラッドされたMg含有アルミニウム合金製ブレージングシートを用いて、フラックスを使用せずにアルミニウム合金材をろう付するろう付方法であって、第1加熱室に前記ブレージングシートと前記アルミニウム合金材とを、前記ろう材と前記アルミニウム合金材とが接する状態で配置し、所定量のMg蒸気を含有する不活性ガスを外部から前記第1加熱室へ供給してろう付けすることを特徴とする。
本発明に係るろう付方法において、前記第1加熱室に前記Mg蒸気を含有する不活性ガスを供給するための第2加熱室を設け、前記第2加熱室において、Mg又はMg合金を加熱して溶融させ、溶融したMg又はMg合金に不活性ガスを噴射することによりMg蒸気を含有する不活性ガスを生成することが好ましい。
本発明に係るろう付方法において、前記Mg又はMg合金を650〜850℃の温度になるよう加熱して溶融させ、前記ブレージングシート及び前記アルミニウム合金材を580〜620℃の温度になるよう加熱してろう付けすることが好ましい。
本発明に係るろう付方法において、前記Mg蒸気を含有する不活性ガスにおけるMg蒸気の分圧は1×101〜1×103Paであることが好ましい。
本発明に係るろう付方法において、前記ブレージングシート及び前記アルミニウム合金材の温度が前記ろう材の溶融温度に到達したときに、前記Mg蒸気を含有する不活性ガスを外部から前記第1加熱室へ供給することが好ましい。
本発明のろう付方法では、心材にろう材がクラッドされたアルミニウム合金製ブレージングシート(以下、単に「ブレージングシート」と記す)を用いて、フラックスを使用せずにアルミニウム合金材をろう付する。ろう材を溶融させることにより、心材とアルミニウム合金材とを接合することができる。溶融したろう材で心材とアルミニウム合金材とを接合するためには、ろう材及びアルミニウム合金材の表面に存在する酸化皮膜を破壊して、アルミニウム合金材の新生面を露出させる必要がある。さらに、露出した新生面は溶融したろう材との濡れが完了するまでは、再び酸化しないことが必要である。本発明のろう付方法では、Mgが上記の酸化皮膜を破壊する作用を有し、さらに、新生面が再び酸化するのを防止する作用を有している。すなわち、アルミニウムよりも酸化しやすいMgはアルミニウム合金材の表面でAl2O3+3Mg→2Al+3MgOの反応により、アルミニウムの酸化皮膜を還元して破壊し、アルミニウム合金材の新生面を露出させる。さらに、Mgは不活性ガス中に微量に存在する酸素と反応し、不活性ガス中の酸素濃度を低減することが可能である。酸素濃度が低下した雰囲気下では、露出した新生面が再び酸化することがないため、アルミニウム合金材はろう付が可能になる。
本発明のろう付方法では、ブレージングシートが心材及び/又はろう材にMgを含有する。ブレージングシートのろう材に含有されるMgは、ろう材の溶融時に蒸発することでろう材及びアルミニウム合金材の表面に存在する酸化皮膜を破壊する。また、不活性ガス中に微量に存在する酸素と反応し、不活性ガス中の酸素濃度を低減する。また、ブレージングシートの心材に含有されるMgは、ろう材の溶融時にアルミニウム合金材表面に拡散し、ろう材及びアルミニウム合金材の表面に存在する酸化皮膜を破壊する。さらに、上記Mgは、不活性ガス中に微量に存在する酸素と反応し、不活性ガス中の酸素濃度を低減する。本発明のろう付方法では、Mgを含有するブレージングシートを用いるだけでなく、外部からMg蒸気を供給することにより、不活性ガス中の酸素濃度をより効率的に低減することができる。
従来、Mgを含有するブレージングシートを用いたり、炉内にMg又はMg合金を配置するだけでは、アルミニウムの酸化皮膜を破壊する効果や不活性ガス中の酸素濃度を低減する効果が不十分であった。これは、大気圧の不活性ガス中ではMgの蒸発量はわずかであり、不活性ガス中に微量に存在する酸素との反応はMgを含有するブレージングシートの表面や炉内に配置したMgの表面のみに限られるためである。したがって、アルミニウム合金材の周囲でわずかな気流が発生すると、Mg蒸気はアルミニウム合金材の周囲から吹き飛ばされ、Mg蒸気を含有する不活性ガス雰囲気とならない。そのため、アルミニウム合金材の表面は酸化しやすい状態となり、ろう付性が低下することになる。この現象は熱交換器等の中空構造物の内部と外部をろう付する際に顕著となる。中空構造物の内部においては、気流の発生が無いため、Mgによる酸化皮膜の破壊と、不活性ガス中の酸素濃度の低下が順調に進み、安定したろう付性を示す。一方、中空構造物の外部においては、炉内の雰囲気にそのままさらされるため、アルミニウム合金材の周囲に気流が発生しやすく、アルミニウム合金材の表面にMg蒸気をとどめておくことができないため、不安定なろう付性を示すことが多い。
これに対して、本発明では、アルミニウム合金材の周囲よりも高い濃度のMg蒸気を第1加熱室に供給することにより、アルミニウム合金材の周囲で気流が発生しても、アルミニウム合金材の表面が酸化されることはなく、安定したろう付性が得られる。不活性ガス中に残留する酸素はMgと反応して酸化マグネシウムとなるが、酸化マグネシウムはアルミニウムよりも安定であるため、第1加熱室に供給してもアルミニウム合金材の表面が酸化されることはない。また、本発明では、第1加熱室にMg蒸気を含有する不活性ガスを供給することにより、アルミニウム合金材の表面はMgによる還元雰囲気となるため、ブレージングシート中に含有するMgと同様にアルミニウム合金材の表面に存在する酸化皮膜を雰囲気側から破壊する効果も期待でき、ろう付性が安定する。中空構造物のろう付において、中空構造体の内部ではブレージングシート中のMgが酸化皮膜を破壊してろう付を可能にし、中空構造体の外部ではブレージングシート中のMgとMg蒸気の両方が酸化皮膜を破壊してろう付を可能にする。したがって、中空構造体の内部及び外部ともに良好なろう付性を有するろう付製品を作製することができる。
本発明のろう付方法では、Mg蒸気を含有する不活性ガスを供給するために、第2加熱室にMg又はMg合金を設置し、不活性ガス中で加熱することにより、効率的にMg蒸気を含有する不活性ガスを発生させることができる。
また、本発明のろう付方法では、ブレージングシート及びアルミニウム合金材を設置した第1加熱室とは独立にMg蒸気を含有する不活性ガスの供給源である第2加熱室を設けることにより、第1加熱室と第2加熱室とを異なる温度条件で加熱することができる。第1加熱室の温度はろう材の溶融温度により決まってしまうが、第2加熱室の温度はMg蒸気の必要な供給量に応じて任意の温度に設定することができる。
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明のろう付方法では、第1加熱室にブレージングシート及びアルミニウム合金材を配置し、Mg蒸気を含有する不活性ガスを外部から第1加熱室へ供給する。
本発明で用いるブレージングシートは、アルミニウム合金からなる心材と、心材の片面又は両面にクラッドされたアルミニウム合金からなるろう材とを有する。心材、ろう材の少なくとも一方には、Mgが含有されている。心材におけるMgの含有率は0.05〜2.5wt%であることが好ましい。ろう材にMgが含有されていない場合、心材におけるMgの含有率が0.05wt%未満であると、ろう付の際にろう材及びアルミニウム合金材の表面に存在する酸化皮膜を十分に破壊することができない。一方、心材におけるMgの含有率が2.5wt%を超えると、心材の融点が低下してろう付の際に心材が溶融してしまうことがある。心材を構成するアルミニウム合金は、JISA1100のような純Al系合金、JISA3003のようなAl−Mn系合金であることが好ましい。心材には、強度を調整するために、Fe、Si、Mn等の元素が含有されていてもよい。また、耐食性を改善するために、Cu、Zn等の元素が含有されていてもよい。
ろう材におけるMgの含有率は0.2〜3.0wt%であることが好ましい。心材にMgが含有されていない場合、ろう材におけるMgの含有率が0.2wt%未満であると、ろう付の際にろう材及びアルミニウム合金材の表面に存在する酸化皮膜を十分に破壊することができない。一方、ろう材におけるMgの含有率が3.0wt%を超えると、ろう材表面に酸化マグネシウムが堆積し、ろう付性が低下する。また、ろう材におけるSiの含有率は、4〜13wt%であることが好ましい。Siは、ろう材の融点を低下させる作用を有する。Siの含有率が4wt%未満であると、ろう付温度において溶融するろう材の量が少なくなり、ろう付性が低下する。一方、Siの含有率が13wt%を超えると、心材及びアルミニウム合金材の侵食が顕著になり、ろう付性が低下する。ろう材には、ろう付性を改善するために、Biが0.01〜1.0wt%含有されていてもよい。また、耐食性を改善するために、Cu、Zn等の元素が含有されていてもよい。
本発明で用いるアルミニウム合金材は、ろう付温度で溶融しない材料であれば、特に限定されない。アルミニウム合金材を構成するアルミニウム合金は、例えば、JISA1100のような純Al系合金、JISA3003のようなAl−Mn系合金である。アルミニウム合金材には、耐食性を改善するために、その他の元素が含有されていてもよい。なお、アルミニウム合金材におけるMgの含有率は3.0wt%以下であることが好ましい。Mgの含有率が3.0wt%を超えると、アルミニウム合金材表面に酸化マグネシウムが堆積し、ろう付性が低下する。なお、本発明で用いるアルミニウム合金材は、ブレージングシートであってもよい。すなわち、本発明のろう付方法は、ブレージングシート同士をろう付する場合にも適用できる。その場合には、いずれか一方のブレージングシートをMg含有アルミニウム合金製ブレージングシートとすればよい。
ブレージングシートとアルミニウム合金材をろう付する際、ブレージングシート及びアルミニウム合金材の温度が580〜620℃になるように加熱するのが好ましい。より好ましくは、590℃〜610℃である。ろう材がAl−Si系合金又はAl−Si−Mg系合金からなる場合、溶融開始温度は約570℃である。したがって、ろう付温度が580℃未満であると、溶融するろう材の量が少なく、ろう付性が低下する。一方、ろう付温度が620℃を超えると、心材及びアルミニウム合金材の一部にエロ−ジョンが発生し、良好なろう付製品を得ることができない。また、上記ろう付温度での保持時間は、3〜10分であることが好ましい。
第1加熱室では、ブレージングシート及びアルミニウム合金材は、ブレージングシートのろう材とアルミニウム合金材とが接するように配置される。この状態でろう材を溶融させることにより、ブレージングシートとアルミニウム合金材とをろう付することができる。
本発明では、Mg蒸気を含有する不活性ガスを第1加熱室に供給するために、第1加熱室とは別に、Mg蒸気を含有する不活性ガスを生成する第2加熱室が設けてもよい。第2加熱室から第1加熱室へガスを供給することができれば、第1加熱室と第2加熱室の位置関係は特に限定されないが、第1加熱室と第2加熱室とは隣接した位置に設けられることが好ましい。第2加熱室が第1加熱室から離れた位置に設けられると、2つの加熱室を接続する接続経路においてMg蒸気が固化して、Mgが接続経路内に付着してしまうことがある。第1加熱室に到達したときにガス中のMg濃度が大幅に低下すると、ろう材及びアルミニウム合金材の表面に存在する酸化皮膜を破壊する効果が低減する。なお、第2加熱室を第1加熱室と離れて設けた場合には、接続経路を第2加熱室と同様に加熱することにより、Mg蒸気の固化を抑制することができる。
第2加熱室でMg蒸気を含有する不活性ガスを生成する方法は特に限定されないが、例えば、Mg又はMg合金を溶融させ、溶融したMg又はMg合金に不活性ガスを噴射することにより行われる。溶融したMg又はMg合金中に不活性ガスを噴射してバブリングさせると、平衡状態により近い濃度のMg蒸気を発生させることができる。Mg又はMg合金を溶融させる方法は特に限定されないが、例えば、電気ヒーターを用いて溶融温度以上で加熱する方法、レーザー等の高密度のエネルギーを照射する方法が挙げられる。また、第2加熱室を負圧にしてMgの蒸発量を増加させてもよい。
Mg又はMg合金としては、特に限定されないが、例えば、純Mg、Mgを主成分とする合金、Alを主成分としてMgを含有する合金等が挙げられる。Mgを主成分とする合金は、Mg−Al−Zn系合金が好ましい。Alを主成分とする合金は、5000系のAl−Mg系合金、Al−Si−Mg系合金が好ましい。
Mg又はMg合金を溶融させる際、Mg又はMg合金の温度が650〜850℃になるよう加熱するのが好ましい。これは、ろう材及びアルミニウム材表面の酸化皮膜を破壊させるのに十分な高濃度のMg蒸気を発生させるためである。温度が650℃未満であると、高濃度のMg蒸気を発生させることができず、Mg蒸気を含有する不活性ガスを供給することによってろう付性を改善する効果が小さい。一方、温度を高くすれば高濃度のMg蒸気を発生させることができるが、温度が850℃を超えると、Mg蒸気の濃度が高すぎるため、第1加熱室にガスを供給した際にブレージングシート及びアルミニウム合金材の表面に金属Mgが蒸着してしまい、ろう付性が低下する。
Mg蒸気を含有する不活性ガスにおけるMg蒸気の分圧は1×101〜1×103Paであることが好ましい。分圧が1×101Pa未満であると、ろう材及びアルミニウム合金材表面の酸化皮膜を破壊することができない。一方、分圧が1×103Paを超えると、ブレージングシート及びアルミニウム合金材の表面に金属Mgが蒸着してしまい、ろう付性が低下する。なお、Mg蒸気の分圧は、ガス質量分析計でガス中の不活性ガス量とMg量を分析することにより測定することができる。
不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン又はこれらの混合ガスが挙げられ、アルゴンがより好ましい。不活性ガスとして窒素を用いると、アルミニウム合金材の表面にマグネシウムまたはアルミニウムと窒素からなる皮膜が形成され、ろう付性が低下することがある。アルゴンは、MgまたはAlと反応しないため、不活性ガスとして適している。
外部から第1加熱室へMg蒸気を含有する不活性ガスを供給するタイミングは、ブレージングシート及びアルミニウム合金材の温度がろう材の溶融温度に到達したタイミングであることが好ましい。ろう材が溶融して流動するまでの間に、アルミニウム合金材が溶融したろう材で濡れてフィレットが形成されると、ろう付が可能となる。したがって、ろう材が溶融し始める段階でMg蒸気を含有する不活性ガスを第1加熱室へ供給することにより、ろう材及びアルミニウム合金材の表面に存在する酸化皮膜を破壊することができ、良好なろう付性が得られる。なお、ブレージングシート及びアルミニウム合金材の温度が低い段階でMg蒸気を供給しても、良好なろう付性は得られる。しかし、酸化皮膜を破壊する効果が小さいためにガスの供給を長時間行う必要があり、第1加熱室へMgが堆積する等の弊害がある。
なお、第1加熱室内の温度は、第1加熱室の内部に設置したブレージングシート及びアルミニウム合金材の温度に対応する。ろう付中、ブレージングシート及びアルミニウム合金材の温度は第1加熱室の温度変化に応じて変化するが、第1加熱室の温度に完全には一致しない。しかし、工業的に本発明のろう付を行うにあたり、ブレージングシート及びアルミニウム合金の温度を定常的に測定することは困難であるため、第1加熱室内の温度による管理が実用的である。また同様に、第2加熱室内の温度は、第2加熱室の内部に設置したMg又はMg合金の温度に対応するが、第2加熱室内の温度による管理が実用的である。
次に本発明を実施例に基づき説明する。
(実験例1)
通常のブレージングシートの製造方法に従い、表1に示す組成の心材およびろう材からなるブレージングシートを製造した。なお、表1に示す組成の単位は「wt%」である。まず、各合金を鋳造後、心材を面削し、ろう材を熱間圧延により所定の厚さにした。その後、心材とろう材を合わせて熱間クラッド圧延し、冷間圧延により所定の厚さに仕上げた。ろう材は片面クラッドとし、クラッド率は10%とした。板厚は0.5mmとした。
通常のブレージングシートの製造方法に従い、表1に示す組成の心材およびろう材からなるブレージングシートを製造した。なお、表1に示す組成の単位は「wt%」である。まず、各合金を鋳造後、心材を面削し、ろう材を熱間圧延により所定の厚さにした。その後、心材とろう材を合わせて熱間クラッド圧延し、冷間圧延により所定の厚さに仕上げた。ろう材は片面クラッドとし、クラッド率は10%とした。板厚は0.5mmとした。
作製したブレージングシートを用いて、図1に示すような隙間充填試験片100を作製した。まず、ブレージングシートを60×20mmに切断したものを水平板1とした。また、板厚1.0mmのJISA1100のベア材を55×20mmに切断したものを垂直板2とした。水平板1は、ろう材面が上側になるように配置し、垂直板2は、厚さ辺と長辺とからなる側面が水平板1に対向するように、水平板1に対して垂直に立てた。水平板1と垂直板2との間に隙間を形成するために、φ2.0mmのステンレス棒をスペーサ3として用いた。具体的に、水平板1と垂直板2の接触部4の位置から水平板1の長辺方向に沿って50mm離間した位置に、水平板1の短辺方向に沿ってスペーサー3を設置した。
図2は、ろう付後の隙間充填試験片を示す正面図である。図2に示すように、ろう付後には、水平板1と垂直板2との間にフィレット5が形成された。水平板1と垂直板2の接点からフィレット5が形成された長さを測定し、隙間充填長さLとした。測定した隙間充填長さLを表2に示す。
図3は、ろう付用加熱装置の一例を示す概略図である。図3に示すように、ろう付は、石英管6の内部で実施した。石英管6の両端部には、ガスを導入するためのガス導入口7とガスを排出するためのガス排出口8が設けられている。石英管6の外周部には、ガス排出口8側からガス導入口7側にかけて順に、第1加熱炉9、第2加熱炉10が設けられている。石英管6において、第1加熱炉9により加熱される第1加熱室6aには、隙間充填試験片100を設置した。一方、第2加熱炉10により加熱される第2加熱室6bには、表2に記載の組成を有する金属110を配置した。石英管6の内部には、ガス導入口7からガス排出口8へ、不活性ガスとしてアルゴンガスを流した。石英管6の内部にアルゴンガスを流してしばらく放置し、石英管6の内部をアルゴンガスで置換した。その後、第1加熱室6a及び第2加熱室6bを、隙間充填試験片100及び金属110の温度が表2に記載の温度になるように加熱した。隙間充填試験片100の温度が表2に記載の温度になってから5分間保持した後、冷却した。実施例1〜3及び比較例1、2の結果を表2に示す。
第1加熱室へMg蒸気を含有する不活性ガスを供給した実施例1〜3では隙間充填長さが長く、良好なろう付性を示した。一方、第2加熱室にAlを設置した比較例1では隙間充填長さが短く、ろう付性に劣っていた。また、第2加熱室に何も設置しなかった比較例2においても隙間充填長さが短く、ろう付性が劣ることが分かった。
(実験例2)
表3に示す組成の心材およびろう材からなるブレージングシートを実験例1と同様の方法で作製した。なお、表3に示す組成の単位は「wt%」である。作製したブレージングシートを切断したものを水平板1’とし、またJISA3003のベア材を切断したものを垂直板2’とした。水平板1’と垂直板2’とを用いて、実験例1と同様の方法で隙間充填試験片100’を作製した。
表3に示す組成の心材およびろう材からなるブレージングシートを実験例1と同様の方法で作製した。なお、表3に示す組成の単位は「wt%」である。作製したブレージングシートを切断したものを水平板1’とし、またJISA3003のベア材を切断したものを垂直板2’とした。水平板1’と垂直板2’とを用いて、実験例1と同様の方法で隙間充填試験片100’を作製した。
図4は、ろう付用加熱装置の他の一例を示す概略図である。ろう付は、図4に示す装置Aを使用して実施した。装置Aは、第1加熱室6a’と第2加熱室6b’と、第1加熱室6a’と第2加熱室6b’とを接続する配管11と、第1加熱室6a’を加熱するための第1加熱炉9’と、第2加熱室6b’を加熱するための第2加熱炉10’とを備える。第1加熱室6a’には、ガスを導入するためのガス導入管12と、ガスを排出するためのガス排出管13とが設けられている。また、第2加熱室6b’には、ガスを導入するためのガス導入管14が設けられる、ガス導入管14にはバルブ15が設けられている。
まず、第1加熱室6a’に隙間充填試験片100’を設置し、加熱した。ガス導入管12を通じて第1加熱室6a’にアルゴンガスを導入し、ガス排出管13を通じてアルゴンガスを排出した。これにより、第1加熱室6a’内部をアルゴンガスで置換した。一方、第2加熱室6b’には、表4に記載の組成を有する金属110’を入れた坩堝を配置し、金属110’の温度が表4に記載の温度になるように加熱した。なお、ガス導入管14の一端は、坩堝内部に位置している。また、バルブ15は閉じられた状態である。隙間充填試験片100’に使用したブレージングシートのろう材の溶融温度が570℃であるため、隙間充填試験片100’の温度が570℃に到達した後、バルブ15を開放した。そして、隙間充填試験片100’の温度が表4に記載の温度になるように引き続き加熱した。バルブ15を開放すると、ガス導入管14を通じてアルゴンガスが坩堝内で溶融している金属110’中に導入され、Mg蒸気を含有するアルゴンガスが発生した。そして、Mg蒸気を含有するアルゴンガスは、配管11を通じて第2加熱室6b’から第1加熱室6a’へ供給された。隙間充填試験片100’の温度が表4に記載の温度になってから5分間保持した後、冷却した。実施例4〜11及び比較例3,4の結果を表4に示す。
アルゴンガス中のMg蒸気の分圧は、第2加熱室6b’内部のガスをモニターするためのサンプリング口(図示せず)よりガスを取り出し、ガス質量分析計で測定した。Mg蒸気の分圧は、ガス導入口14から導入するアルゴンガスの量と金属110’の温度により変化する。
第1加熱室へMg蒸気を含有する不活性ガスを供給した実施例4〜11では隙間充填長さが長く、良好なろう付性を示した。また、第2加熱室に設置した金属の温度が650〜850℃になるように加熱した実施例5〜10では隙間充填長さがより長く、さらに良好なろう付性を示した。一方、第2加熱室にAlを設置した比較例3では隙間充填長さが短く、ろう付性に劣っていた。また、第2加熱室に何も設置しなかった比較例4においても隙間充填長さが短く、ろう付性が劣ることが分かった。
本発明のろう付方法を適用し、Mgによる酸化皮膜を破壊する作用を利用し、フラックスを用いずに不活性ガス中で加熱することで優れたろう付性を達成できる。また、安定した高信頼性のろう付も可能であり、工業的な適用性にも優れる。
1、1’ 水平材
2、2’ 垂直材
3 スペーサー
4 接触部
5 フィレット
6 石英管
6a、6a’ 第1加熱室
6b、6b’ 第2加熱室
7 ガス導入口
8 ガス排気口
9、9’ 第1加熱炉
10、10’ 第2加熱炉
11 配管
12、14 ガス導入管
13 ガス排出管
15 バルブ
100、100’ 隙間充填試験片
110、110’ 金属
A 装置
L 隙間充填長さ
2、2’ 垂直材
3 スペーサー
4 接触部
5 フィレット
6 石英管
6a、6a’ 第1加熱室
6b、6b’ 第2加熱室
7 ガス導入口
8 ガス排気口
9、9’ 第1加熱炉
10、10’ 第2加熱炉
11 配管
12、14 ガス導入管
13 ガス排出管
15 バルブ
100、100’ 隙間充填試験片
110、110’ 金属
A 装置
L 隙間充填長さ
Claims (5)
- 心材にろう材がクラッドされたMg含有アルミニウム合金製ブレージングシートを用いて、フラックスを使用せずにアルミニウム合金材をろう付するろう付方法であって、
第1加熱室に前記ブレージングシートと前記アルミニウム合金材とを、前記ろう材と前記アルミニウム合金材とが接する状態で配置し、
所定量のMg蒸気を含有する不活性ガスを外部から前記第1加熱室へ供給してろう付することを特徴とする、ろう付方法。 - 前記第1加熱室に前記Mg蒸気を含有する不活性ガスを供給するための第2加熱室を設け、
前記第2加熱室において、Mg又はMg合金を加熱して溶融させ、溶融したMg又はMg合金に不活性ガスを噴射することによりMg蒸気を含有する不活性ガスを生成することを特徴とする、請求項1に記載のろう付方法。 - 前記Mg又はMg合金を650〜850℃の温度になるよう加熱して溶融させ、前記ブレージングシート及び前記アルミニウム合金材を580〜620℃の温度になるよう加熱してろう付けすることを特徴とする、請求項2に記載のろう付方法。
- 前記Mg蒸気を含有する不活性ガスにおけるMg蒸気の分圧は1×101〜1×103Paであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のろう付方法。
- 前記ブレージングシート及び前記アルミニウム合金材の温度が前記ろう材の溶融温度に到達したときに、前記Mg蒸気を含有する不活性ガスを外部から前記第1加熱室へ供給することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のろう付方法。
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JPH0985433A (ja) * | 1995-09-19 | 1997-03-31 | Sky Alum Co Ltd | フラックスレス非酸化性雰囲気ろう付け方法 |
JPH0985431A (ja) * | 1995-09-26 | 1997-03-31 | Furukawa Electric Co Ltd:The | アルミニウム製品の真空ろう付方法 |
-
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- 2013-05-23 JP JP2013109239A patent/JP2014226703A/ja active Pending
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