以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について説明する。
図1は、本発明の実施例に係る建設機械用油圧システムが搭載されるショベルの構成例を示す図である。図1において、建設機械としてのショベル1は、クローラ式の下部走行体2の上に、旋回機構を介して、上部旋回体3をX軸周りに旋回自在に搭載している。
また、上部旋回体3は、前方中央部に掘削アタッチメントを備える。掘削アタッチメントは、ブーム4、アーム5、及びバケット6を含み、且つ、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9を含む。
図2は、本発明の実施例に係る建設機械用油圧システムの回路図である。建設機械用油圧システム100は、エンジン、電動モータ等の駆動源によって駆動される油圧ポンプ10L、10R(以下では、集合的に「油圧ポンプ10」と称する場合もある。左右一対で構成される他の構成要素についても同様である。)を有する。油圧ポンプ10Lは、1回転当たりの吐出量(cc/rev)を可変とする可変容量型ポンプである。また、油圧ポンプ10Lは、流量制御弁11L、12L、13L、及び15Lを連通するセンターバイパス管路30Lを経て作動油タンク22まで作動油を循環させる。同様に、油圧ポンプ10Rは、流量制御弁12R、13R、14R、及び15Rを連通するセンターバイパス管路30Rを経て作動油タンク22まで作動油を循環させる。
流量制御弁11Lは、油圧ポンプ10Lが吐出する作動油を油圧アクチュエータとしての走行用油圧モータ42Lに供給するために作動油の流れを切り替えるスプール弁である。
流量制御弁12Lは、油圧ポンプ10Lが吐出する作動油を油圧アクチュエータとしての旋回用油圧モータ44に供給するために作動油の流れを切り替えるスプール弁である。流量制御弁12Rは、油圧ポンプ10Rが吐出する作動油を走行用油圧モータ42Rに供給するために作動油の流れを切り替えるスプール弁である。
流量制御弁13L、13Rはそれぞれ、油圧ポンプ10L、10Rが吐出する作動油を油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7へ供給し、また、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンク22へ排出するために作動油の流れを切り替えるスプール弁である。流量制御弁13Rは、操作装置としてのブーム操作レバーが操作された場合に、油圧ポンプ10Rが吐出する作動油をブームシリンダ7に供給するスプール弁である。また、流量制御弁13Lは、ブーム操作レバーが所定のレバー操作量以上で操作された場合に、油圧ポンプ10Lが吐出する作動油を追加的にブームシリンダ7に供給するスプール弁である。
流量制御弁14Rは、油圧ポンプ10Rが吐出する作動油を油圧アクチュエータとしてのバケットシリンダ9へ供給し、また、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンク22へ排出するためのスプール弁である。
また、流量制御弁15L、15Rはそれぞれ、油圧ポンプ10L、10Rが吐出する作動油を油圧アクチュエータとしてのアームシリンダ8へ供給し、また、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンク22へ排出するために作動油の流れを切り替えるスプール弁である。流量制御弁15Lは、操作装置としてのアーム操作レバーが操作された場合に、油圧ポンプ10Lが吐出する作動油をアームシリンダ8に供給するスプール弁である。また、流量制御弁15Rは、アーム操作レバーが所定のレバー操作量以上で操作された場合に、油圧ポンプ10Rが吐出する作動油を追加的にアームシリンダ8に供給するスプール弁である。
センターバイパス管路30L、30Rは、それぞれ、最も下流にある流量制御弁15L、15Rと作動油タンク22との間にネガティブコントロール絞り20L、20Rを備える(以下では、ネガティブコントロールを「ネガコン」と略称する。)。ネガコン絞り20L、20Rは、油圧ポンプ10L、10Rが吐出する作動油の流れを制限することにより、ネガコン絞り20L、20Rの上流でネガコン圧を発生させる。
圧力センサS1、S2は、ネガコン絞り20L、20Rの上流で発生したネガコン圧を検出し、検出した値を電気的なネガコン圧信号としてコントローラ54に対して出力する。圧力センサS3、S4は、油圧ポンプ10L、10Rの吐出圧を検出し、検出した値を電気的な吐出圧信号としてコントローラ54に対して出力する。
コントローラ54は、油圧システム100を制御する機能要素であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、NVRAM(Non Volatile RAM)等を備えたコンピュータである。
本実施例では、コントローラ54は、アーム操作レバー、ブーム操作レバー等の各種操作装置を操作した場合に発生するパイロット圧を測定する操作内容検出部としてのパイロット圧センサの出力に基づいて各種操作装置の操作内容(例えば、レバー操作の有無、レバー操作方向、レバー操作量等である。)を電気的に検出する。但し、操作内容検出部は、各種操作レバーの傾きを検出する傾きセンサ等、パイロット圧センサ以外のセンサを用いて構成されてもよい。
そして、コントローラ54は、各種操作装置の操作内容に応じて電磁弁55L、55R等を動作させる各種機能要素に対応するプログラムをCPUに実行させる。
電磁弁55L、55Rは、コントローラ54が出力する指令に応じて動作する弁である。本実施例では、電磁弁55L、55Rは、コントローラ54が出力する電流指令に応じてコントロールポンプ52から吐出量制御部61L、61Rの受圧室612L、612Rに導入される制御圧を調整する電磁減圧弁である。
ポンプレギュレータ40Lは、油圧ポンプ10Lの吐出量を制御する駆動機構であり、主に、傾転アクチュエータ41L、スプール弁機構60L、吐出量制御部61L、及び、フィードバックレバー62Lを含む。
傾転アクチュエータ41Lは、油圧ポンプ10Lのポンプ容量を変化させるための斜板(ヨーク)を傾転駆動する機能要素である。具体的には、傾転アクチュエータ41Lは、一端に大径受圧部PR1を有すると共に他端に小径受圧部PR2を有する作動ピストン410Lと、大径受圧部PR1に対応する受圧室411Lと、小径受圧部PR2に対応する受圧室412Lとを含む。受圧室411Lにはスプール弁600Lを介して油圧ポンプ10Lの吐出圧が導入され、或いは、受圧室411Lからスプール弁600Lを介して作動油が排出される。また、受圧室412Lには油圧ポンプ10Lの吐出圧が導入される。作動ピストン410Lは、受圧室411Lに作動油が導入されて受圧室412L側に変位すると油圧ポンプ10Lの斜板(ヨーク)を小流量側に傾転駆動する。また、作動ピストン410Lは、受圧室411Lから作動油が排出されて受圧室411L側に変位すると油圧ポンプ10Lの斜板(ヨーク)を大流量側に傾転駆動する。
スプール弁機構60Lは、傾転アクチュエータ41Lに作動油の給排を行うための機能要素であり、スプール弁600L及びばね601Lを含む。スプール弁600Lは、油圧ポンプ10Lの吐出圧が導入される第一ポート、作動油タンク22に連通する第二ポート、及び受圧室411Lに連通する出力ポートを有する。また、スプール弁600Lは、第一ポートと出力ポートとを連通する第一位置、第二ポートと出力ポートとを連通する第二位置、又は第一ポート及び第二ポートの何れをも出力ポートに連通しない中立位置に選択的に切り替えられる。ばね601Lは、スプール弁600Lを第二位置に変位させる方向に作用する力を付与する。
吐出量制御部61Lは、スプール弁600Lを変位させるための機能要素である。具体的には、吐出量制御部61Lは、サーボピストン610L、ばね611L、及び受圧室612Lを含む。サーボピストン610Lは、電磁弁55Lが生成する制御圧に応じて、スプール弁600Lを第一位置に変位させる方向に移動する。ばね611Lは、電磁弁55Lが生成する制御圧に抗して、サーボピストン610Lを復帰させる方向に作用する力を付与する。受圧室612Lは、サーボピストン610Lに設けられた受圧部PR3に対応し、コントロールポンプ52から電磁弁55Lを通じて作動油が導入される。
フィードバックレバー62Lは、傾転アクチュエータ41Lの変位をスプール弁600Lにフィードバックするためのリンク機構である。具体的には、フィードバックレバー62Lは、作動ピストン410Lが移動したときにその移動量を物理的にスプール弁600Lにフィードバックしてスプール弁600Lを中立位置に復帰させるようにする。
なお、上述の説明は、ポンプレギュレータ40Lに関するものであるが、ポンプレギュレータ40Rに対しても同様に適用される。
以上の構成により、ポンプレギュレータ40L、40Rは、吐出量制御部61L、61Rに導入される制御圧が大きいほど油圧ポンプ10L、10Rの吐出量を低減させる。また、ポンプレギュレータ40L、40Rは、吐出量制御部61L、61Rに導入される制御圧が小さいほど油圧ポンプ10L、10Rの吐出量を増大させる。
なお、図2は、ショベル1における油圧アクチュエータが何れも利用されていない状態を示す。以下、この状態を「待機モード」と称する。待機モードでは、油圧ポンプ10L、10Rが吐出する作動油は、センターバイパス管路30L、30Rを通ってネガコン絞り20L、20Rに至り、ネガコン絞り20L、20Rの上流で発生するネガコン圧を増大させる。
その結果、ポンプレギュレータ40L、40Rは、ネガコン圧信号に基づいてコントローラ54が生成する指令に応じて、スプール弁600L、600Rを第一位置に変位させる。スプール弁600L、600Rは、傾転アクチュエータ41L、41Rを駆動して、油圧ポンプ10L、10Rの吐出量を低減させる。その結果、油圧ポンプ10L、10Rが吐出する作動油がセンターバイパス管路30L、30Rを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)が抑制される。
一方、ショベル1における何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、油圧ポンプ10L、10Rが吐出する作動油は、その油圧アクチュエータに対応する流量制御弁を介してその油圧アクチュエータに流れ込む。そのため、ネガコン絞り20L、20Rに至る量は減少或いは消滅し、ネガコン絞り20L、20Rの上流で発生するネガコン圧は低下する。
その結果、ポンプレギュレータ40L、40Rは、油圧ポンプ10L、10Rの吐出量を増大させ、各油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、各アクチュエータの駆動を確かなものとする。
図3は、油圧ポンプ10の吐出量(以下、「ポンプ流量」とする。)とネガコン圧との関係を示すネガコン制御線図であり、縦軸にポンプ流量を配し、横軸にネガコン圧を配する。上述の通り、実線で表されるポンプ制御線は、ネガコン圧が減少するにつれてポンプ流量が増大する傾向を示す。なお、図3は、待機モードにおけるネガコン圧とポンプ流量との関係の図示を省略するが、実際には、待機モードにおいてネガコン圧が所定圧を下回る場合、ポンプ流量は最小流量に制限される。
以下では、上述のようなネガコン圧に基づくポンプ流量の制御を「ネガコン制御」と称する。ネガコン制御により、油圧システム100は、待機モードにおいては、無駄なエネルギ消費を抑制できる。油圧ポンプ10L、10Rの吐出する作動油がセンターバイパス管路30L、30Rで発生させるポンピングロスを抑制できるためである。また、油圧システム100は、各種油圧アクチュエータを作動させる場合には、油圧ポンプ10L、10Rから必要十分な作動油を各種油圧アクチュエータに供給できる。
また、油圧システム100は、ネガコン制御と並行して馬力制御を実行する。馬力制御は、油圧ポンプ10の吸収馬力がエンジンの出力馬力を超えないよう、油圧ポンプ10の吐出圧(以下、「ポンプ吐出圧」とする。)の上昇に応じてポンプ流量を低減させる制御である。
図4は、ポンプ流量とポンプ吐出圧との関係を示す馬力制御線図(PQ線図)であり、縦軸にポンプ流量を配し、横軸にポンプ吐出圧を配する。実線で表される馬力制御線は、ポンプ吐出圧が減少するにつれてポンプ流量が増大する傾向を示す。
次に、図5を参照しながら、図1のショベルに搭載される油圧システム100の一部を構成する旋回油圧回路200について説明する。なお、図5は、旋回油圧回路200の構成例を示す概略図である。
図5に示すように、旋回油圧回路200は、主に、旋回用油圧モータ44、旋回リリーフ弁71L、71R、及びチェック弁72L、72Rを含む。
旋回用油圧モータ44は、メカニカルブレーキ80及び減速機81を含む旋回機構を介して上部旋回体3を旋回させる。本実施例では、旋回用油圧モータ44の出力トルクは、2段階のプラネタリギア機構で構成される減速機81によって増幅される。また、旋回用油圧モータ44の出力軸の回転は、複数枚のブレーキディスクと各ブレーキディスクを挟む複数枚のブレーキプレートとで構成されるメカニカルブレーキ80によって制動される。
また、旋回用油圧モータ44の第1ポート44Lは、管路70Lを介して、流量制御弁12Lの第1ポート12P1に接続され、旋回用油圧モータ44の第2ポート44Rは、管路70Rを介して、流量制御弁12Lの第2ポート12P2に接続される。
旋回リリーフ弁71L、71Rは、管路70R、70L内の作動油の圧力(以下、「旋回油圧回路内圧」とする。)を所定の旋回リリーフ圧以下に制限する弁である。本実施例では、旋回リリーフ弁71L、71Rは、電気的に旋回リリーフ圧を調整可能な電磁式リリーフ弁であり、コントローラ54からの制御指令に応じて旋回リリーフ圧を変更する。但し、旋回リリーフ弁71L、71Rは、バネ等によって旋回リリーフ圧が固定的に設定される機械式リリーフ弁であってもよい。
具体的には、旋回リリーフ弁71Lは、管路70Lの旋回油圧回路内圧がクラッキング圧に達した場合に部分的開状態となり、管路70L内の作動油の、管路73を介した作動油タンク22への流出を開始させる。さらに、旋回リリーフ弁71Lは、管路70Lの旋回油圧回路内圧が旋回リリーフ圧に達した場合に全開状態となり、旋回油圧回路内圧が旋回リリーフ圧を過度に上回らないように管路70L内の作動油を作動油タンク22へ流出させる。同様に、旋回リリーフ弁71Rは、管路70Rの旋回油圧回路内圧がクラッキング圧に達した場合に部分的開状態となり、管路70R内の作動油の、管路73を介した作動油タンク22への流出を開始させる。さらに、旋回リリーフ弁71Rは、管路70Rの旋回油圧回路内圧が旋回リリーフ圧に達した場合に全開状態となり、旋回油圧回路内圧が旋回リリーフ圧を過度に上回らないように管路70R内の作動油を作動油タンク22へ流出させる。
図6は、旋回油圧回路内圧と、旋回リリーフ弁71を通過する作動油の流量(以下、「旋回リリーフ流量」とする。)との関係を示す図である。
図6に示すように、旋回リリーフ流量は、旋回油圧回路内圧がクラッキング圧未満の場合にゼロである。また、旋回リリーフ流量は、旋回油圧回路内圧がクラッキング圧以上旋回リリーフ圧未満の場合には、旋回油圧回路内圧が増大するにつれて比較的緩やかに増加する。また、旋回リリーフ流量は、旋回油圧回路内圧が旋回リリーフ圧以上の場合には、旋回油圧回路内圧が増大するにつれて比較的急激に増加する。
チェック弁72L、72Rは、管路70L、70R内の作動油の圧力が作動油タンク22の作動油の圧力(以下、「タンク圧」とする。)を下回らないようにする弁である。
具体的には、チェック弁72Lは、管路70Lの作動油が作動油タンク22へ流出するのを禁止しながら、管路70Lの旋回油圧回路内圧がタンク圧未満となった場合に開状態となり、作動油タンク22(管路73)の作動油を管路70L内に流入させる。同様に、チェック弁72Rは、管路70Rの作動油が作動油タンク22へ流出するのを禁止しながら、管路70Rの旋回油圧回路内圧がタンク圧未満となった場合に開状態となり、作動油タンク22(管路73)の作動油を管路70R内に流入させる。
メインリリーフ弁83は、油圧システム100内の作動油の圧力を所定のメインリリーフ圧以下に制限する弁である。本実施例では、メインリリーフ弁83は、バネ等によってメインリリーフ圧が固定的に設定される機械式リリーフ弁である。なお、メインリリーフ圧は、旋回リリーフ圧より高くなるように設定される。
コントローラ54は、旋回操作内容と油圧ポンプ10Lのポンプ吐出圧とに基づいて、油圧ポンプ10Lのポンプ流量、及び、旋回リリーフ弁71L、71Rの旋回リリーフ圧を調整することができる。
本実施例では、旋回操作の有無等を含む旋回操作内容は、圧力センサS5、S6の出力に基づいて導き出される。なお、圧力センサS5、S6は、旋回操作レバー82のレバー操作量に対応するパイロット圧を検出するパイロット圧センサである。また、油圧ポンプ10Lのポンプ吐出圧は、吐出圧センサとしての圧力センサS3の出力に基づいて導き出される。
例えば、旋回操作レバー82が右旋回方向に操作され、圧力センサS6が検出するパイロット圧が上昇すると、流量制御弁12Lが左方向に移動させられる。このとき、流量制御弁12Lは、第1ポート12P1を通じて、油圧ポンプ10Lと旋回用油圧モータ44の第1ポート44Lとを連通させ、第2ポート12P2を通じて、旋回用油圧モータ44の第2ポート44Rと作動油タンク22とを連通させる。また、流量制御弁12Lは、センターバイパス管路30Lを遮断する。油圧ポンプ10Lは、センターバイパス管路30Lの遮断によりネガコン圧がほぼゼロまで減少するため、図3のネガコン制御線図に示すように、そのポンプ流量を最大ポンプ流量まで増大させる。
一方で、旋回用油圧モータ44の駆動に消費される作動油の量(以下、「旋回消費流量」とする。)は、油圧ポンプ10Lの最大ポンプ流量より低いまま、緩やかに増加する。ショベル1の上部旋回体3が大きな慣性モーメントを有するためである。このとき、最大ポンプ流量と旋回消費流量との間の流量差を生じさせる作動油は、旋回リリーフ弁71Lを介して作動油タンク22に排出される。そのため、油圧ポンプ10Lが生成する油圧エネルギの一部は、利用されることがないまま無駄に捨てられてしまう。
そこで、コントローラ54は、この無駄に捨てられてしまう油圧エネルギを最小限に抑えるために、油圧ポンプ10Lのポンプ流量を旋回消費流量に近づける制御(以下、「旋回リリーフカット制御」とする。)を実行する。具体的には、コントローラ54は、旋回操作内容と油圧ポンプ10Lのポンプ吐出圧とに基づいて、油圧ポンプ10Lのポンプ流量、旋回リリーフ弁71L、71Rの旋回リリーフ圧等を調整する。なお、油圧ポンプ10Lのポンプ流量、及び、旋回リリーフ弁71L、71Rの旋回リリーフ圧の調整については、その詳細を後述する。
次に、図7を参照しながら、油圧ポンプ10Lのポンプ吐出圧(Pd)に応じて旋回用油圧モータ44の回転速度(ω)が決まるまでの制御(以下、「旋回速度制御」とする。)の流れについて説明する。なお、図7は、旋回速度制御の流れを示すブロック線図である。
最初に、コントローラ54は、吐出圧センサS3で検出された油圧ポンプ10Lのポンプ吐出圧(Pd)を表す電気信号としての吐出圧信号を取得する。コントローラ54は、電磁弁55Lに対する電流指令(Is)を吐出圧(Pd)に基づいて決定する。電磁弁55Lは、電流指令(Is)に応じた制御圧(Ps)を吐出量制御部61Lの受圧室612Lで発生させる。
その後、吐出量制御部61Lは、スプール弁機構60L及び傾転アクチュエータ41Lを介して油圧ポンプ10Lのポンプ流量(Qd)を制御圧(Ps)に応じた量に調整する。図7は、制御圧(Ps)が1次遅れを表す演算要素E1を介して油圧ポンプ10Lのポンプ流量(Qd)に変換される様子を表す。
その後、ポンプ流量(Qd)の変化は、センターバイパス管路30L内の作動油の体積変化に起因する圧力を生じさせる。図7は、油圧ポンプ10Lのポンプ流量(Qd)が圧縮ボリュームを表す演算要素E2を介して吐出圧(Pd')に変換される様子を表す。なお、演算要素E2において、K、V、sはそれぞれ、体積弾性率、体積、ラプラス演算子を表す。また、ここで得られた吐出圧(Pd')は、フィードバックループを通じてコントローラ54にフィードバックされる。吐出圧センサS3で検出された吐出圧(Pd)と、コントローラ54が電磁弁55に対して出力する電流指令(Is)に応じて演算される吐出圧(Pd')が等しくなるようにして制御を安定化させるためである。
その後、ポンプ10Lが吐出する吐出圧(Pd')を有する作動油は、旋回用油圧モータ44に対応する流量制御弁12LのP−T絞りを通る。図7は、油圧ポンプ10Lのポンプ吐出圧(Pd')からネガコン圧(Pn')を差し引いた圧力が流量制御弁12LのP−T絞りを表す演算要素E3を介してブリード流量(Qb)に変換される様子を表す。なお、演算要素E3において、c、A、ρ、Δpはそれぞれ、流量係数、開口面積、密度、圧力変化を表す。この場合、油圧ポンプ10Lのポンプ吐出圧(Pd')はP−T絞りの上流側の圧力を表し、ネガコン圧(Pn')はP−T絞りの下流側の圧力を表す。また、ブリード流量(Qb)は、流量制御弁12LのP−T絞りを通過する作動油の流量を表す。
また、流量制御弁の下流側にあるネガコン圧(Pn')を有する作動油は、ネガコン絞り20Lを通って作動油タンク22に排出される。図7は、ネガコン圧(Pn')がネガコン絞り20Lを表す演算要素E4を介して排出流量(Qe)に変換される様子を表す。この場合、排出流量(Qe)は、ネガコン絞り20Lを通過する作動油の流量を表す。
なお、ネガコン絞り20Lにおける流量(Qb−Qe)の変化は、作動油の体積変化に起因する圧力を生じさせる。図7は、流量(Qb−Qe)が圧縮ボリュームを表す演算要素E5を介してネガコン圧(Pn')に変換される様子を表す。
その後、センターバイパス管路30Lを流れる作動油の流量は、一部が旋回用油圧モータ44に流れることによって変化する。そのため、センターバイパス管路30Lを流れる作動油の流量(Qd−Qb)の変化は、作動油の体積変化に起因する圧力を生じさせる。図7は、流量(Qd−Qb)が圧縮ボリュームを表す演算要素E2を介して吐出圧(Pd')に変換される様子を表す。
また、ポンプ10Lが吐出する吐出圧(Pd')を有する作動油は、旋回用油圧モータ44に対応する流量制御弁12LのP−C絞りを通る。図7は、油圧ポンプ10Lのポンプ吐出圧(Pd')から旋回油圧回路内圧(Pact)を差し引いた圧力が流量制御弁12LのP−C絞りを表す演算要素E6を介して旋回油圧回路内流量(Qact)に変換される様子を表す。この場合、油圧ポンプ10Lのポンプ吐出圧(Pd')はP−C絞りの上流側の圧力を表し、旋回油圧回路内圧(Pact)はP−C絞りの下流側の圧力を表す。また、旋回油圧回路内流量(Qact)は、流量制御弁12LのP−C絞りを通過する作動油の流量を表す。なお、旋回油圧回路内流量(Qact)は、演算要素E2にフィードバックされる。油圧ポンプ10Lのポンプ吐出圧(Pd')は、油圧ポンプ10Lのポンプ流量(Qd)からブリード流量(Qb)と旋回油圧回路内流量(Qact)とを差し引いた流量を有する作動油の圧縮によって生成されるためである。
その後、旋回油圧回路内流量(Qact)の変化は、旋回油圧回路内の作動油の体積変化に起因する圧力を生じさせ、さらに、旋回用油圧モータ44を回転させる力(トルク)を発生させる。図7は、旋回油圧回路内流量(Qact)が圧縮ボリュームを表す演算要素E7を介して旋回油圧回路内圧(Pact)に変換され、さらに、旋回用油圧モータ44の受圧面積Aを表す演算要素E8を介して力(トルク)に変換される様子を表す。
その後、旋回用油圧モータ44で発生させた力(トルク)に応じて旋回用油圧モータ44の動きが決定される。図7は、その力が演算要素E9を介して旋回用油圧モータ44の回転速度(ω)に変換される様子を表す。なお、演算要素E9において、J、sはそれぞれ、慣性モーメント、ラプラス演算子を表す。
また、演算要素E7が出力する旋回油圧回路内圧(Pact)は、演算要素E6にフィードバックされる。旋回油圧回路内流量(Qact)は、油圧ポンプ10Lのポンプ吐出圧(Pd')と旋回油圧回路内圧(Pact)との間の差圧によって生成されるためである。
同様に、演算要素E9が出力する旋回用油圧モータ44の回転速度(ω)は、旋回用油圧モータ44の受圧面積Aを表す演算要素E10を介して旋回油圧回路内流量(Qact')に変換された上で、演算要素E7にフィードバックされる。
また、演算要素E7が出力する旋回油圧回路内圧(Pact)は、旋回リリーフ弁71のクラッキング圧以上旋回リリーフ圧未満の場合に、2次遅れを表す演算要素E11を介して、旋回リリーフ弁71を通過する旋回リリーフ流量(Qrf)に変換された上で、演算要素E7にフィードバックされる。なお、旋回油圧回路内圧(Pact)は、クラッキング圧未満の場合には、旋回リリーフ流量を生じさせないため、演算要素E11を介して演算要素E7にフィードバックされることはない。また、旋回油圧回路内圧(Pact)は、旋回リリーフ圧以上の場合には、クラッキング圧以上旋回リリーフ圧未満の場合の旋回油圧回路内圧(Pact)と旋回リリーフ流量との対応関係とは異なる対応関係で旋回リリーフ流量を生じさせる。そのため、旋回油圧回路内圧(Pact)は、演算要素E11とは異なる別の演算要素(図示せず。)を介して、旋回リリーフ弁71を通過する旋回リリーフ流量(Qrf)に変換された上で、演算要素E7にフィードバックされ得る。
なお、上述の実施例において1次遅れ又は2次遅れで表される演算要素は、3次以上の高次遅れ要素等の任意の非線形要素であってもよい。
次に、図8を参照して、旋回用油圧モータ44を駆動する際のコントローラ54の動作について説明する。なお、図8は、コントローラ54の構成例を示すブロック線図である。
図8に示すように、コントローラ54は、主に、演算要素E20、フィードバック制御部E21、最小流量選択部E22、及び参照テーブルTB1を含む。参照テーブルTB1は、ROM、NVRAM等に予め記憶されている。
演算要素E20は、ポンプ吐出圧に関する指令値をポンプ流量に関する指令値に変換する機能要素である。本実施例では、演算要素E20は、予め設定された目標ポンプ吐出圧(Ptgt)と、吐出圧センサS3で検出されたポンプ吐出圧(Pd)との偏差(P1)をポンプ流量指令値Q1に変換する。
フィードバック制御部E21は、予め設定された目標ポンプ流量(Qtgt)と演算要素E20が出力するポンプ流量指令値(Q1)とに基づいてポンプ流量指令値(Q2)を生成して出力する機能要素である。本実施例では、フィードバック制御部E21は、目標ポンプ流量(Qtgt)に基づいて所定の増加率で増加する基礎的なポンプ流量指令値を生成し、ポンプ流量指令値(Q1)の増減に応じてその基礎的なポンプ流量指令値を修正してポンプ流量指令値(Q2)を出力する。この際、フィードバック制御部E21は、ポンプ吐出圧(Pd)と目標ポンプ吐出圧(Ptgt)との偏差、及び、ポンプ流量指令値(Q1)と目標ポンプ流量(Qtgt)との偏差に基づくPID制御を実行してポンプ流量指令値(Q2)を出力する。また、フィードバック制御部E21は、それら偏差を減少させる位相補償を実行してポンプ流量指令値(Q2)を出力してもよい。
なお、コントローラ54がポンプ吐出圧(Pd)に基づいてポンプ流量指令値(Q2)を出力する制御は、上述の旋回リリーフカット制御を構成する。そのため、以下では、ポンプ流量指令値(Q2)を旋回リリーフカット制御流量(Q2)とも称する。
最小流量選択部E22は、旋回リリーフカット制御により導き出されるポンプ流量指令値(Q2)と、その他の制御により導き出される1又は複数のポンプ流量指令値とのうちで最小のポンプ流量指令値を選択する機能要素である。本実施例では、最小流量選択部E22は、旋回リリーフカット制御により導き出されるポンプ流量指令値(Q2)と、ネガコン制御により導き出されるポンプ流量指令値(以下、「ネガコン制御流量(Qn)」とする。)と、馬力制御により導き出されるポンプ流量指令値(以下、「馬力制御流量(Qh)」とする。)とのうちで最小のものを選択してポンプ流量指令値(Q3)として出力する。
参照テーブルTB1は、ポンプ流量指令値(Q3)と電流指令(Is)との対応関係を表す参照テーブルである。コントローラ54は、最小流量選択部E22が出力するポンプ流量指令値(Q3)と参照テーブルTB1とに基づいて電流指令(Is)を導き出し、導き出した電流指令(Is)を電磁弁55Lに対して出力する。
次に、図9を参照して、コントローラ54が電磁弁55Lに対して電流指令(Is)を出力する処理(以下、「電流指令出力処理」とする。)について説明する。なお、図9は、電流指令出力処理の流れを示すフローチャートであり、コントローラ54は、所定の制御周期で繰り返しこの電流指令出力処理を実行する。
最初に、コントローラ54は、パイロット圧及びポンプ吐出圧を取得する(ステップST1)。本実施例では、コントローラ54は、各種操作装置を操作した場合に発生するパイロット圧を検出する操作内容検出部としてのパイロット圧センサの出力に基づいて各種操作装置のレバー操作量を電気的に検出する。また、コントローラ54は、吐出圧センサS3の出力に基づいて油圧ポンプ10Lのポンプ吐出圧を電気的に検出する。
その後、コントローラ54は、取得したパイロット圧に基づいて旋回操作が行われたか否かを判定する(ステップST2)。本実施例では、コントローラ54は、旋回操作レバー82が操作された場合に旋回操作が行われたと判定する。コントローラ54は、旋回操作が行われたか否かを判定することにより、旋回リリーフ弁71がリリーフ状態又はリリーフ可能状態であるか否かを判定できる。旋回操作が行われない場合に旋回リリーフ弁71がリリーフ状態又はリリーフ可能状態になることはないためである。
旋回操作が行われたと判定した場合(ステップST2のYES)、コントローラ54は、ポンプ吐出圧が閾値TH1以上であるか否かを判定する(ステップST3)。本実施例では、閾値TH1は、旋回リリーフ弁71のクラッキング圧である。なお、閾値TH1は、クラッキング圧未満の値であってもよい。
ポンプ吐出圧が閾値TH1以上であると判定した場合(ステップST3のYES)、コントローラ54は、アクション動作を実行する(ステップST4)。アクション動作は、旋回リリーフカット制御を実行した上で、旋回リリーフカット制御流量(Q2)、ネガコン制御流量(Qn)、及び馬力制御流量(Qh)を含む複数のポンプ流量指令値のうちで最も小さい値に基づいて電流指令(Is)を出力する処理であり、その詳細を後述する。
ポンプ吐出圧が閾値TH1未満であると判定した場合(ステップST3のNO)、コントローラ54は、旋回操作以外の他の操作が行われたか否かを判定する(ステップST5)。本実施例では、コントローラ54は、例えば、ブーム操作レバー、アーム操作レバー、バケット操作レバー等が操作された場合に他の操作が行われたと判定する。
他の操作が行われたと判定した場合(ステップST5のYES)、コントローラ54は、トランジション動作を実行する(ステップST6)。トランジション動作は、アクション動作の準備を行うための処理である。具体的には、トランジション動作は、旋回リリーフカット制御流量以外の複数のポンプ流量指令値のうちで最も小さい値に基づいて電流指令(Is)を出力する。そして、トランジション動作は、最小値として選択されたポンプ流量指令値を次のアクション動作におけるフィードバック制御のために記憶する。なお、トランジション動作については、その詳細を後述する。
一方、他の操作が行われていないと判定した場合(ステップST5のNO)、コントローラ54は、ストップ動作を実行する(ステップST7)。ストップ動作は、アクション動作のリセットを行うための処理である。具体的には、ストップ動作は、旋回リリーフカット制御流量以外の複数のポンプ流量指令値のうちで最も小さい値に基づいて電流指令(Is)を出力する。そして、ストップ動作は、次のアクション動作におけるフィードバック制御のために、フィードバック制御部E21のパラメータをリセットする。なお、ストップ動作については、その詳細を後述する。
図10は、アクション動作、トランジション動作、及びストップ動作の間の状態遷移図を示す。
図10に示すように、コントローラ54は、ストップ動作を周期的に実行している場合に他の操作が行われるとストップ動作をトランジション動作に切り替える。また、コントローラ54は、ストップ動作を周期的に実行している際に旋回操作が行われた場合、ポンプ吐出圧(Pd)が閾値TH1以上であれば、ストップ動作をアクション動作に切り替える。
また、コントローラ54は、アクション動作を周期的に実行している際に旋回操作が中止され或いはポンプ吐出圧(Pd)が閾値TH1未満になった場合、他の操作が行われていれば、アクション動作をトランジション動作に切り替え、他の操作が行われていなければ、アクション動作をストップ動作に切り替える。
また、コントローラ54は、トランジション動作を周期的に実行している際に旋回操作が行われた場合、ポンプ吐出圧(Pd)が閾値TH以上であれば、トランジション動作をアクション動作に切り替える。また、コントローラ54は、トランジション動作を周期的に実行している場合に他の操作が中止されると、トランジション動作をストップ動作に切り替える。
このようにして、コントローラ54は、アクション動作、トランジション動作、及びストップ動作の3つの動作のうちの1つを周期的且つ継続的に実行しながら、電流指令(Is)を周期的且つ継続的に電磁弁55Lに対して出力する。
次に、図11を参照して、アクション動作の詳細について説明する。なお、図11は、アクション動作の流れの一例を示すフローチャートである。
最初に、コントローラ54は、目標ポンプ吐出圧(Ptgt)、ポンプ吐出圧(Pd)、及び目標ポンプ流量(Qtgt)を取得する(ステップST11)。
目標ポンプ吐出圧(Ptgt)は、旋回リリーフ弁71のクラッキング圧以上で且つ旋回リリーフ弁71の旋回リリーフ圧未満の値であり、NVRAM等に予め記憶されている。本実施例では、目標ポンプ吐出圧(Ptgt)は、クラッキング圧と旋回リリーフ圧との中間値である。また、目標ポンプ流量(Qtgt)は、旋回用油圧モータ44を所定の回転速度で回転させる際に必要な油圧ポンプ10Lのポンプ流量であり、NVRAM等に予め記憶されている。本実施例では、目標ポンプ流量(Qtgt)は、旋回用油圧モータ44を最大回転速度で回転させる際に必要な油圧ポンプ10Lのポンプ流量である。なお、ポンプ吐出圧(Pd)は、吐出圧センサS3で検出される値である。
また、コントローラ54は、クラッキング圧以上旋回リリーフ圧未満の範囲内で目標ポンプ吐出圧(Ptgt)を変更することによって作業モードを切り替えてもよい。例えば、コントローラ54は、クラッキング圧以上旋回リリーフ圧未満の範囲内で旋回油圧回路内圧を増大させることによってより大きな旋回トルクを発生させるハイパワーモードと、その範囲内で旋回油圧回路内圧を低減させて旋回リリーフ流量を減少させることによって省エネルギを実現する省エネルギモードとを切り替える。このようにして、コントローラ54は、旋回リリーフカット制御を中断することなく、作業モードを切り替えることができる。
その後、コントローラ54は、ポンプ吐出圧(Pd)と目標ポンプ吐出圧(Ptgt)との偏差(P1)を導き出し、偏差(P1)に所定の比例ゲインK1を乗じてポンプ流量指令値(Q1)導き出す(ステップST12)。
その後、コントローラ54は、ポンプ流量指令値(Q1)と目標ポンプ流量(Qtgt)とに基づいてポンプ流量指令値(Q2)を導き出す(ステップST13)。具体的には、コントローラ54は、フィードバック制御部E21によるPID制御を実行してポンプ流量指令値(Q2)を導き出す。また、コントローラ54は、フィードバック制御部E21による位相補償を実行してポンプ流量指令値(Q2)を導き出してもよい。
その後、コントローラ54は、ネガコン制御流量(Qn)及び馬力制御流量(Qh)を導き出す(ステップST14)。なお、コントローラ54は、次のステップST15の処理を実行する前であれば、ステップST14の処理を何れのタイミングで実行してもよい。例えば、コントローラ54は、ステップST11の処理を実行する前にステップST14の処理を実行してもよい。また、コントローラ54は、ステップST14において、ネガコン制御及び馬力制御以外の他の制御が導き出したポンプ流量指令値を取得してもよい。
その後、コントローラ54は、最小流量選択部E22により、旋回リリーフカット制御流量(Q2)、ネガコン制御流量(Qn)、及び馬力制御流量(Qh)を含む複数のポンプ流量指令値のうちで最も小さい値をポンプ流量指令値(Q3)として選択する(ステップST15)。なお、旋回操作が行われている場合には、コントローラ54は、制御周期毎に所定の増加率で増加するポンプ流量指令値としての旋回操作時流量(Qx)を生成してもよい。その上で、最小流量選択部E22は、旋回操作時流量(Qx)、ネガコン制御流量(Qn)、及び馬力制御流量(Qh)を含む複数のポンプ流量指令値のうちで最も小さい値をポンプ流量指令値(Q3)として出力する。旋回操作時流量(Qx)が生成されなければ、ネガコン制御流量(Qn)に基づく最大ポンプ流量指令値が出力されてしまうためである。
その後、コントローラ54は、参照テーブルTB1を参照し、ポンプ流量指令値(Q3)に対応する電流指令(Is)を導き出し、導き出した電流指令(Is)を電磁弁55Lに対して出力する(ステップST16)。
次に、図12を参照して、トランジション動作の詳細について説明する。なお、図12は、トランジション動作の流れの一例を示すフローチャートである。
最初に、コントローラ54は、ポンプ流量指令値(Q2)に最大値を設定する(ステップST21)。最小流量選択部E22によってポンプ流量指令値(Q2)が最小値として選択されるのを防止するためである。
その後、コントローラ54は、フィードバック制御部E21のパラメータをリセットする(ステップST22)。本実施例では、コントローラ54は、PID制御で用いる比例ゲイン、微分ゲイン等の値をゼロに設定する。次のアクション動作に悪影響を及ぼさないようにするためである。
その後、コントローラ54は、アクション動作におけるステップST14〜ST16の処理と同様に、ステップST23〜ST25の処理を実行する。
その後、コントローラ54は、次のアクション動作に備えて、ポンプ流量指令値(Q3)を記憶する(ステップST26)。本実施例では、コントローラ54は、次のアクション動作におけるPID制御の出力が急変しないよう、現に取得したポンプ流量指令値(Q3)を積分ゲインの値として記憶する。
次に、図13を参照して、ストップ動作の詳細について説明する。なお、図13は、ストップ動作の流れの一例を示すフローチャートである。
最初に、コントローラ54は、ポンプ流量指令値(Q2)に最大値を設定する(ステップST31)。最小流量選択部E22によってポンプ流量指令値(Q2)が最小値として選択されるのを防止するためである。
その後、コントローラ54は、次のアクション動作に備えて、フィードバック制御部E21のパラメータをリセットする(ステップST32)。本実施例では、コントローラ54は、次のアクション動作のPID制御で用いる積分ゲインに最小値を設定する。ポンプ流量指令値として用いられる積分ゲインの最小値には、ゼロ以外の値、例えば、最大値の15%の値が設定される。次のアクション動作におけるPID制御の出力が急変しないようにするためである。
その後、コントローラ54は、アクション動作におけるステップST14〜ST16の処理と同様に、ステップST33〜ST35の処理を実行する。
次に、図14を参照して、旋回リリーフカット制御を実行する際の余剰流量とポンプ吐出圧との関係について説明する。なお、図14は、縦軸にポンプ吐出圧を配し、横軸に余剰流量を配する。余剰流量は、ポンプ流量から旋回消費流量を差し引いた流量であり、旋回リリーフ流量及び漏れ流量を含む。また、ポンプ吐出圧(Pc)、余剰流量(Qc)は、それぞれ、単独旋回操作の際に旋回油圧回路内圧が旋回リリーフ弁71のクラッキング圧に達したときのポンプ吐出圧、余剰流量に相当する。また、ポンプ吐出圧(Pr)、余剰流量(Qr)は、それぞれ、単独旋回操作の際に旋回油圧回路内圧が旋回リリーフ弁71の旋回リリーフ圧に達したときのポンプ吐出圧、余剰流量に相当する。
図14に示すように、ポンプ吐出圧がPc未満の場合、余剰流量に対するポンプ吐出圧の増加率(ゲイン)は、ポンプ吐出圧がPc以上Pr未満の場合に比べて顕著に大きい。そのため、仮に目標ポンプ吐出圧(Ptgt)をPc未満の値に設定した場合には、旋回リリーフカット制御は安定性を失い、ポンプ吐出圧を上下に振動させてしまうおそれがある。
一方、ポンプ吐出圧がPr以上の場合、余剰流量に対するポンプ吐出圧の増加率(ゲイン)は、ポンプ吐出圧がPc以上Pr未満の場合に比べて顕著に小さい。そのため、仮に目標ポンプ吐出圧(Ptgt)をPr以上の値に設定した場合、旋回リリーフカット制御は、余剰流量(ポンプ流量)の比較的大きな変動を許容することとなり、余剰流量(旋回リリーフ流量)の削減効果を低下させるおそれがある。
そのため、目標ポンプ吐出圧(Ptgt)は、余剰流量に対するポンプ吐出圧の増加率(ゲイン)が適度な大きさとなる、Pc以上Pr未満の範囲内の値を有するように設定される。
次に、図15及び図16を参照して、単独旋回操作時の旋回リリーフカット制御による効果について説明する。なお、図15は、ショベル1の上部旋回体3の慣性モーメントが小さい場合の旋回消費流量とポンプ流量との関係を示す。また、図15(A)は、旋回リリーフカット制御を実行しない場合の関係を示し、図15(B)は、旋回リリーフカット制御を実行する場合の関係を示す。同様に、図16は、ショベル1の上部旋回体3の慣性モーメントが大きい場合の旋回消費流量とポンプ流量との関係を示す。また、図16(A)は、旋回リリーフカット制御を実行しない場合の関係を示し、図16(B)は、旋回リリーフカット制御を実行する場合の関係を示す。
図15及び図16に示すように、旋回リリーフカット制御を実行する場合、ポンプ流量から旋回消費量を差し引いた旋回リリーフ流量(斜線ハッチング領域)は、旋回リリーフカット制御を実行しない場合に比べ顕著に少ない。これは、ポンプ吐出圧が目標ポンプ吐出圧(Ptgt)となるようにポンプ流量が制御された結果、ポンプ流量が旋回消費流量を僅かに上回る程度に制限されたためである。
また、図15と図16との比較から分かるように、上部旋回体3の慣性モーメントが大きいほど旋回リリーフ流量の減少幅が大きい。すなわち、掘削アタッチメントを開いて旋回半径を大きくするほど、旋回操作時の旋回リリーフ流量の減少幅が大きくなる。
このようにして、コントローラ54は、旋回リリーフカット制御により、旋回操作時の旋回リリーフ流量を減少させ、省エネルギ性を向上させることができる。
なお、旋回リリーフカット制御による省エネルギ性と作業性とはトレードオフの関係にあり、省エネルギ性を高めるほど、すなわち、旋回リリーフ流量を少なくするほど出力可能な旋回トルクは小さくなってしまう。
そこで、出力可能な旋回トルクの大きさを維持しながら省エネルギ性を高めるために、コントローラ54は、旋回リリーフ弁71の旋回リリーフ圧及びクラッキング圧を増大させてもよい。
しかしながら、コントローラ54は、旋回リリーフカット制御により旋回加速時の旋回油圧回路内圧をクラッキング圧以上旋回リリーフ圧未満の所定値に近づけることはできるが、旋回減速時の旋回油圧回路内圧をその所定値に近づけることはできない。旋回用油圧モータ44から作動油タンク22へ流れる作動油の流量をポンプ流量と同じように制御することはできないためである。そのため、コントローラ54は、旋回リリーフ弁71の旋回リリーフ圧及びクラッキング圧を増大させた場合、旋回減速時の旋回油圧回路内圧を、増大後の旋回リリーフ圧まで不可避的に増大させてしまう。そして、増大後の旋回リリーフ圧に等しい旋回油圧回路内圧によって生み出される減速トルクは、旋回用油圧モータ44、旋回減速機等の構造に悪影響を及ぼす場合がある。そのため、コントローラ54は、旋回加速時に旋回リリーフ弁71の旋回リリーフ圧及びクラッキング圧を増大させる場合には、旋回減速時にその増大させた旋回リリーフ圧及びクラッキング圧を低減させ、望ましくは、増大前の状態に戻すようにする。
具体的には、コントローラ54は、パイロット圧センサ及び吐出圧センサの出力に基づいて旋回加速中であるか旋回減速中であるかを判定する。そして、コントローラ54は、旋回加速中であると判定した場合には旋回リリーフ弁71の旋回リリーフ圧及びクラッキング圧を増大させ、一方で、旋回減速中であると判定した場合には旋回リリーフ弁71の旋回リリーフ圧及びクラッキング圧を低減させる。
この構成により、コントローラ54は、旋回加速中には、出力可能な旋回トルクの大きさを維持しながら省エネルギ性を高めることができ、一方で、旋回減速中には、旋回用油圧モータ44、旋回減速機等の構造に悪影響を及ぼすのを防止できる。
図17は、コントローラ54が旋回リリーフ弁71の旋回リリーフ圧及びクラッキング圧を旋回状態に応じて切り替える際の旋回油圧回路内圧と旋回リリーフ流量との関係を示す図である。
図17に示すように、コントローラ54は、旋回加速中であると判定した場合に旋回リリーフ弁71の旋回リリーフ圧及びクラッキング圧を増大させ、旋回油圧回路内圧と旋回リリーフ流量との関係が実線で示す関係となるようにする。そして、コントローラ54は、旋回リリーフカット制御により、旋回油圧回路内圧が旋回リリーフ圧Praとクラッキング圧Pcaとの間の所定値となるようにポンプ流量を制御する。
また、コントローラ54は、旋回減速中であると判定した場合には、旋回リリーフ弁71の旋回リリーフ圧及びクラッキング圧を増大前の状態に戻し、旋回油圧回路内圧と旋回リリーフ流量との関係が点線で示す関係となるようにする。この場合、旋回油圧回路内圧は、旋回リリーフ圧Prdに達する。そして、油圧システム100は、上部旋回体3の慣性モーメントに応じた旋回リリーフ流量で旋回油圧回路内の作動油を旋回リリーフ弁71から作動油タンク22に流出させながら上部旋回体3を減速させる。
以上の構成により、建設機械用油圧システム100は、旋回リリーフカット制御により、旋回操作時に旋回リリーフ弁71の旋回リリーフ流量を減少させることができる。具体的には、油圧システム100は、ポンプ吐出圧が目標ポンプ吐出圧(旋回リリーフ弁71のクラッキング圧以上で且つ旋回リリーフ圧未満の範囲内の値)となるようにポンプ流量を制御する。その結果、油圧システム100は、ポンプ流量を旋回消費流量に近づけ、ポンプ流量と旋回消費流量との間の流量差である旋回リリーフ流量を減少させることができる。
また、油圧システム100は、旋回操作が行われ、且つ、ポンプ吐出圧が閾値TH1以上となった場合に旋回リリーフカット制御を実行する。すなわち、油圧システム100は、旋回リリーフ弁71がリリーフ状態又はリリーフ可能状態であり、且つ、ポンプ流量と旋回消費流量との間に乖離が生じるおそれがあると判定した上で旋回リリーフカット制御を実行する。その結果、油圧システム100は、制御の対象となるリリーフ弁を特定した上でポンプ流量の制御を開始するため、制御精度を向上させることができる。
また、油圧システム100は、旋回リリーフカット制御により、旋回リリーフ流量がほぼ一定の状態で維持されるようにポンプ流量を旋回消費流量に近づけることができる。そのため、油圧システム100は、旋回消費流量をポンプ流量で近似することができる。その結果、油圧システム100は、ポンプ流量から旋回角速度を導き出すことができ、また、ポンプ吐出圧から旋回トルクを導き出すことができる。したがって、油圧システム100は、旋回トルクを旋回角加速度で除した値である上部旋回体3の慣性モーメントを比較的正確に導き出すことができる。なお、上部旋回体3の慣性モーメントは、掘削アタッチメントの姿勢に応じて決まる値である。そのため、油圧システム100は、旋回リリーフカット制御を実行しているときのポンプ吐出圧及びポンプ流量に基づいて掘削アタッチメントの姿勢を推定でき、さらには、その推定結果に基づいて旋回角速度を調整できる。
次に、図18を参照して、コントローラの別の構成例について説明する。なお、図18は、コントローラの別の構成例54Aを示すブロック線図であり、図8に対応する。
図18のコントローラ54Aは、油圧ポンプ10Lから旋回リリーフ弁71までの管路における圧力損失を補償する機能を有する点で、図8のコントローラ54と相違する。
具体的には、図8のコントローラ54は、ポンプ吐出圧と旋回油圧回路内圧とが同等であるという前提で旋回リリーフカット制御を実行する。しかしながら、実際には、ポンプ吐出圧と旋回油圧回路内圧との間には、油圧ポンプ10Lから旋回リリーフ弁71までの管路における圧力損失に起因する圧力差が生じる。また、その圧力損失は、ポンプ流量が増加するにつれて増大する。したがって、コントローラ54は、ポンプ吐出圧(Pd)が所定の目標ポンプ吐出圧(Ptgt)に近づくようにポンプ流量を制御した場合であっても、ポンプ流量が上昇するにつれてポンプ吐出圧と旋回油圧回路内圧との間の圧力差を増大させてしまう場合がある。その結果、コントローラ54は、旋回リリーフカット制御中に旋回油圧回路内圧が旋回リリーフ弁71のクラッキング圧を下回る状況、すなわち、余剰流量が流量Qcを下回る状況(図14参照。)を発生させ、旋回リリーフカット制御の安定性を低下させてしまう場合がある。余剰流量に対するポンプ吐出圧の増加率(ゲイン)が顕著に増大するためである。
そこで、コントローラ54Aは、フィードバック制御部E21が出力するポンプ流量指令値(Q2)に基づいて、油圧ポンプ10Lから旋回リリーフ弁71までの管路における圧力損失(P2)を導き出す。そして、コントローラ54Aは、演算要素E20に圧力損失(P2)をフィードバックすることによって、圧力損失(P2)を補償したポンプ流量指令値(Q1)を演算要素E20に生成させる。以下では、この処理を「圧力損失補償処理」と称する。
また、コントローラ54Aは、ポンプ吐出圧(Pd)を当初の目標ポンプ吐出圧(Ptgt)で維持しながらでは、ポンプ流量の増加に伴う圧力損失の増大に応じてポンプ流量指令値(Q2)を増大させるにも限界がある。そこで、コントローラ54Aは、ポンプ流量指令値(Q2)が閾値TH2以上となった場合に目標ポンプ吐出圧(Ptgt)を補正する。本実施例では、コントローラ54Aは、ポンプ流量指令値(Q2)が閾値TH2以上となった場合に目標ポンプ吐出圧(Ptgt)を所定幅だけ増大させる。以下では、この処理を「目標ポンプ吐出圧補正処理」と称する。
圧力損失補償処理を実現するために、図18のコントローラ54Aは、ローパスフィルタE23及び演算要素E24を含む。その他の構成要素は、図8のコントローラ54と同じである。そのため、共通点の説明を省略しながら相違点について詳説する。
ローパスフィルタE23は、ポンプ流量に関する指令値の高周波成分を遮断する機能要素である。本実施例では、ローパスフィルタE23は、フィードバック制御部E21が出力するポンプ流量指令値(Q2)のうち、油圧ポンプ10Lの応答周波数より高い高周波成分を遮断する。旋回リリーフカット制御の安定性を高めるためである。
演算要素E24は、ポンプ流量に関する指令値をポンプ吐出圧に関する指令値に変換する機能要素である。本実施例では、演算要素E24は、ローパスフィルタE23が出力するポンプ流量指令値(Q2)を圧力損失としてのポンプ吐出圧指令値(P2)に変換する。また、本実施例では、旋回操作のみが行われた場合の実際の圧力損失(油圧ポンプ10Lから旋回リリーフ弁71までの管路における圧力損失)に基づいて決定された値が比例ゲインK2として予め設定されている。圧力損失としてのポンプ吐出圧指令値(P2)が過少に見積もられてしまうのを防止するためである。これは、旋回操作と他の油圧アクチュエータの操作とが同時に行われた場合の圧力損失が旋回操作のみが行われた場合の圧力損失より小さいという事実に基づく。
演算要素E20は、予め設定された目標ポンプ吐出圧(Ptgt)と、吐出圧センサS3で検出されたポンプ吐出圧(Pd)との偏差(P1)から、演算要素E24が出力するポンプ吐出圧指令値(P2)を差し引いた偏差(P3)をポンプ流量指令値(Q1)に変換する。
その後は、図8に示すコントローラ54の動作と同様に、フィードバック制御部E21は、予め設定された目標ポンプ流量(Qtgt)と演算要素E20が出力するポンプ流量指令値(Q1)とに基づいてポンプ流量指令値(Q2)を生成して出力する。
また、コントローラ54Aは、ポンプ流量指令値(Q2)が閾値TH2以上となった場合には、目標ポンプ吐出圧(Ptgt)を所定幅だけ増大させる。ポンプ流量指令値(Q2)の上限が、増大補正前の当初の目標ポンプ吐出圧(Ptgt)によって制限されないようにするためである。
このようにして、コントローラ54Aは、ポンプ流量の増加に伴う圧力損失の増大に応じてポンプ流量指令値を増大させる。また、コントローラ54Aは、ポンプ流量指令値の増大に応じて目標ポンプ吐出圧(Ptgt)を増大させる。その結果、コントローラ54Aは、旋回油圧回路内に流入する作動油の流量を所望の旋回消費流量に近づけることができ、圧力損失の影響を受けた旋回油圧回路内圧を当初の目標ポンプ吐出圧に近づけることができる。また、コントローラ54Aは、旋回リリーフカット制御中に旋回油圧回路内圧が旋回リリーフ弁71のクラッキング圧を下回るのを防止することで、制御安定性を維持できる。
次に、図19を参照して、コントローラ54Aが実行するアクション動作の例について説明する。なお、図19は、そのアクション動作の流れを示すフローチャートであり、図11に対応する。
最初に、コントローラ54Aは、目標ポンプ吐出圧(Ptgt)、ポンプ吐出圧(Pd)、目標ポンプ流量(Qtgt)、作動油温、及び、前回の制御周期で導き出したポンプ流量指令値(Q2)を取得する(ステップST41)。なお、コントローラ54Aは、前回の制御周期でポンプ流量指令値(Q2)を導き出していない場合には、ポンプ流量指令値(Q2)の代わりに所定の初期値(例えば値ゼロである。)を用いる。また、作動油温は、温度センサ(図示せず。)で検出される値である。
その後、コントローラ54Aは、取得した作動油温の値に基づいて流量指令値に関する閾値TH2を決定する(ステップST42)。本実施例では、コントローラ54Aは、ROM等に予め記憶された、作動油温と閾値TH2との対応関係を定める参照テーブル(図示せず。)を参照し、取得した作動油温の値に対応する閾値TH2を決定する。また、本実施例では、閾値TH2は、作動油温が低いほど小さくなる傾向を有する。
その後、コントローラ54Aは、油圧ポンプ10Lから旋回リリーフ弁71までの管路における圧力損失が所定値以上であるか否かを判定する(ステップST43)。本実施例では、コントローラ54Aは、ポンプ流量指令値(Q2)が閾値TH2以上の場合に、圧力損失が所定値以上であると判定する。
そして、圧力損失が所定値以上であると判定した場合、すなわち、ポンプ流量指令値(Q2)が閾値TH2以上であると判定した場合(ステップST43のYES)、コントローラ54Aは、目標ポンプ吐出圧(Ptgt)を補正する(ステップST44)。本実施例では、コントローラ54Aは、旋回リリーフ弁71のクラッキング圧以上旋回リリーフ圧未満の範囲内において、目標ポンプ吐出圧(Ptgt)を所定幅だけ増大させる。
また、圧力損失が所定値未満であると判定した場合、すなわち、ポンプ流量指令値(Q2)が閾値TH2未満であると判定した場合(ステップST43のNO)、コントローラ54Aは、目標ポンプ吐出圧(Ptgt)を補正することなく、ステップST45以降の処理を実行する。
その後、ステップST45において、コントローラ54Aは、ポンプ吐出圧(Pd)と目標ポンプ吐出圧(Ptgt)との偏差(P1)を導き出す。また、コントローラ54Aは、前回の制御周期で導き出したポンプ流量指令値(Q2)に応じた圧力損失(P2)を導き出す。本実施例では、コントローラ54Aは、演算要素E24において、ポンプ流量指令値(Q2)に比例ゲインK2を乗じて圧力損失(P2)を導き出す。
その後、コントローラ54Aは、偏差(P1)と圧力損失(P2)との偏差(P3)に所定の比例ゲインK1を乗じてポンプ流量指令値(Q1)を導き出す(ステップST46)。なお、偏差(P3)は、旋回油圧回路内圧に相当するポンプ吐出圧指令値である。
その後、コントローラ54Aは、ポンプ流量指令値(Q1)と目標ポンプ流量(Qtgt)とに基づいて新たにポンプ流量指令値(Q2)を導き出す(ステップST47)。具体的には、コントローラ54Aは、フィードバック制御部E21によるPID制御を実行してポンプ流量指令値(Q2)を導き出す。また、コントローラ54Aは、フィードバック制御部E21による位相補償を実行してポンプ流量指令値(Q2)を導き出してもよい。
その後、コントローラ54Aは、ステップST48〜ステップST50の処理を実行する。なお、ステップST48〜ステップST50の処理は、図11のステップST14〜ステップST16の処理と同じであるため、その説明を省略する。
また、上述の実施例において、コントローラ54Aは、作動油温に応じて閾値TH2を決定する。これは、作動油温の変化、すなわち、作動油の粘度、流量係数等の変化に起因する旋回リリーフ弁71等の応答性の変化を反映させるためである。しかしながら、コントローラ54Aは、エンジン回転数、ポンプ回転数等の作動油温以外のパラメータに応じて閾値TH2を決定してもよく、複数のパラメータに基づいて閾値TH2を決定してもよい。また、コントローラ54Aは、閾値TH2を決定することなく、前回の制御周期で導き出したポンプ流量指令値(Q2)に応じて目標ポンプ吐出圧(Ptgt)をその都度決定し直してもよい。
また、上述の実施例において、コントローラ54は、目標ポンプ吐出圧(Ptgt)の補正をアクション動作中に実行するが、トランジション動作、ストップ動作等、アクション動作以外の他の処理が行われているときに実行してもよく、目標ポンプ吐出圧(Ptgt)の補正のみを独立して実行してもよい。
次に、図20を参照して、圧力損失補償処理及び目標ポンプ吐出圧補正処理による効果について説明する。なお、図20は、旋回リリーフカット制御中のポンプ吐出圧、旋回油圧回路内圧、及びポンプ流量の時間的推移を示す図である。また、図20(A)は、圧力損失補償処理及び目標ポンプ吐出圧補正処理を実行しない場合の推移を示し、図20(B)は、圧力損失補償処理及び目標ポンプ吐出圧補正処理を実行した場合の推移を示す。
図20(A)に示すように、圧力損失補償処理及び目標ポンプ吐出圧補正処理が実行されない場合、ポンプ吐出圧は、ポンプ流量の増大にかかわらず、当初の目標ポンプ吐出圧(Ptgt)のまま推移する。また、旋回油圧回路内圧は、ポンプ流量が増加するにつれて低下する。ポンプ流量は、ポンプ吐出圧が目標ポンプ吐出圧(Ptgt)に近づくように制御されるためである。また、ポンプ流量が増加するにつれて圧力損失が増大し、ポンプ吐出圧と旋回油圧回路内圧との間の圧力差が増大するためである。そして、旋回油圧回路内圧がクラッキング圧Pcを下回ると、コントローラ54Aは、制御安定性を失い、ポンプ吐出圧、旋回油圧回路内圧、及びポンプ流量のそれぞれでハンチングを発生させてしまう。
一方、図20(B)に示すように、圧力損失補償処理及び目標ポンプ吐出圧補正処理が実行される場合には、ポンプ吐出圧は、目標ポンプ吐出圧が増大補正されるまでは当初の目標ポンプ吐出圧(Ptgt)のまま推移し、目標ポンプ吐出圧が増大補正された後は増大補正後の目標ポンプ吐出圧(Ptgt1)まで増大する。また、旋回油圧回路内圧は、ポンプ流量の増大にかかわらず、当初の目標ポンプ吐出圧(Ptgt)のまま推移する。圧力損失は、ポンプ流量が増加するにつれて増大し、ポンプ吐出圧と旋回油圧回路内圧との間の圧力差も増大するが、ポンプ吐出圧が増大補正後の目標ポンプ吐出圧(Ptgt1)まで増大することでその圧力差が吸収されるためである。
このようにして、コントローラ54Aは、圧力損失が増大する場合であっても、その圧力損失を考慮したポンプ流量指令値を生成し、その上で必要に応じて目標ポンプ吐出圧を増大させることで、旋回油圧回路内圧が低下するのを防止する。そのため、コントローラ54Aは、旋回リリーフカット制御によりポンプ吐出圧が目標ポンプ吐出圧に近づくようにポンプ流量を制御しているにもかかわらず旋回油圧回路内圧が旋回リリーフ弁71のクラッキング圧を下回るという状況が発生するのを防止できる。その結果、コントローラ54Aは、作動油温が低い場合等、圧力損失が大きくなり易い場合であっても、制御安定性を維持することができる。
なお、上述の実施例では、コントローラ54Aは、作動油温に応じて閾値TH2を決定し、ポンプ流量が閾値TH2を上回った場合に目標ポンプ吐出圧(Ptgt)を増大補正する。しかしながら、コントローラ54Aは、作動油温が所定温度以下に低下した場合に限り目標ポンプ吐出圧(Ptgt)を増大補正してもよい。
また、上述の実施例において、コントローラ54、54Aは、ショベル1が平面上に位置し、上部旋回体3の旋回軸Xが水平面に対して垂直な場合を想定している。そのため、ショベル1が傾斜面上に位置し、上部旋回体3の旋回軸Xが水平面に対して垂直でない場合には、省エネルギ性を向上させることで作業性を低下させてしまうおそれがある。
具体的には、ショベル1が傾斜面上に位置し、掘削アタッチメントが斜面下方を向いていない場合、上部旋回体3は自重により斜面下方に旋回しようとする。この斜面下方に上部旋回体3を旋回させようとする自重による旋回トルク(以下、「自重トルク」とする。)は、旋回半径が大きいほど、すなわち、掘削アタッチメントの伸張度合いが大きいほど大きくなる。また、この自重トルクは、傾斜面の傾斜角が大きいほど大きくなり、ある限界角度(旋回可能傾斜角)を超えると旋回用油圧モータ44が出力可能な旋回トルクを上回る。その結果、ショベル1は、上部旋回体3を斜面上方へ旋回させることができなくなる。なお、旋回用油圧モータ44が出力可能な旋回トルクは、旋回油圧回路内圧(旋回モータ圧)と旋回油圧回路内流量(押しのけ容積)との積で決まる。また、旋回油圧回路内圧の最大値は、旋回リリーフ弁71の旋回リリーフ圧に相当する。
そのため、省エネルギ性を向上させる旋回リリーフカット制御により、旋回リリーフ圧より低い値である目標ポンプ吐出圧にポンプ吐出圧が近づくようにポンプ流量が制御されると、旋回可能傾斜角が小さくなり、ショベル1の作業範囲が狭められてしまう。
そこで、コントローラ54、54Aは、入力された旋回操作が斜面上方への旋回のためのものであると判定した場合には、目標ポンプ吐出圧を増大させるようにする。これにより、コントローラ54、54Aは、ショベル1が傾斜面上に位置する場合の作業性を損なうことなく、ショベル1が平面上に位置する場合の省エネルギ性を向上させることができる。
次に、傾斜面上に位置するショベル1で旋回操作が行われる場合の油圧システム100の挙動について説明する。
旋回操作が行われる前、自重トルクは、メカニカルブレーキ80が発生させる制動トルクによって打ち消され、上部旋回体3は停止状態にある。旋回操作が行われると、メカニカルブレーキ80による制動が解除され、上部旋回体3は旋回可能状態となる。このとき、自重トルクは、極めて微小ではあるものの上部旋回体3を斜面下方に旋回させ、旋回用油圧モータ44を油圧ポンプとして作用させる。なお、油圧ポンプとして作用する旋回用油圧モータ44は、旋回用油圧モータ44と油圧ポンプ10Lとの間の管路にある作動油を圧縮してその作動油の圧力を上昇させる。その圧力上昇は、上部旋回体3の斜面下方への旋回を抑えようとする保持トルクを発生させる。保持トルクは、自重トルクとは逆向きのトルクである。上部旋回体3の斜面下方への旋回は、自重トルクと保持トルクとがつり合った時点で停止する。
一方、斜面上方への旋回操作が行われた場合、油圧ポンプ10Lは、油圧ポンプとして作用する旋回用油圧モータ44とは逆の方向から、旋回用油圧モータ44と油圧ポンプ10Lとの間の管路にある作動油を圧縮してその作動油の圧力を上昇させる。その圧力上昇は、上部旋回体3を斜面上方へ旋回させようとする旋回トルクを発生させる。この旋回トルクは、自重トルクとは逆向きのトルクである。上部旋回体3の斜面上方への旋回は、この旋回トルクが自重トルクを上回った時点で開始する。この場合、旋回トルクは、自重トルクと同じ大きさの逆向きの保持トルクを含む。
このように、ショベル1が傾斜面上に存在する場合に斜面上方への旋回操作が行われると、油圧ポンプ10Lは、ショベル1が平面上に存在する場合に比べ、自重トルクと同じ大きさの保持トルクの分だけ大きな旋回トルクを発生させる。また、油圧ポンプ10Lは、ショベル1が平面上に存在する場合に比べ、旋回用油圧モータ44と油圧ポンプ10Lとの間の管路にある作動油の圧力をより早期に上昇させる。したがって、コントローラ54、54Aは、以下に示すように、旋回操作開始時のポンプ吐出圧とポンプ流量との対応関係の推移に基づいて斜面上方への旋回が行われたか否かを判定することができ、必要に応じて目標ポンプ吐出圧を調整することができる。
ここで、図21及び図22を参照して、傾斜面に位置するショベル1の上部旋回体3を斜面上方に旋回させる際に目標ポンプ吐出圧を調整する処理(以下、「目標ポンプ吐出圧調整処理」とする。)の一例について説明する。なお、図21は、目標ポンプ吐出圧調整処理の流れを示すフローチャートであり、図22は、目標ポンプ吐出圧調整処理を実行する際のポンプ吐出圧及びポンプ流量の推移を示す図である。また、図22は、ショベル1が平面上に位置し、上部旋回体3の旋回軸Xが水平面に対して垂直な場合のポンプ吐出圧及びポンプ流量の推移を点線で示し、ショベル1が傾斜面上に位置し、上部旋回体3の旋回軸Xが水平面に対して垂直でない場合のポンプ吐出圧及びポンプ流量の推移を実線で示す。また、この目標ポンプ吐出圧調整処理は、コントローラ54、54Aのそれぞれで実行され得るが、以下では、コントローラ54で実行される場合について説明する。
最初に、コントローラ54は、パイロット圧及びポンプ吐出圧を取得する(ステップST51)。本実施例では、コントローラ54は、パイロット圧センサの出力に基づいて旋回操作レバー82のレバー操作量を電気的に検出する。また、コントローラ54は、吐出圧センサS3の出力に基づいて油圧ポンプ10Lのポンプ吐出圧を電気的に検出する。
その後、コントローラ54は、取得したパイロット圧に基づいて旋回操作が行われたか否かを判定する(ステップST52)。
旋回操作が行われたと判定した場合(ステップST52のYES)、コントローラ54は、その旋回操作が斜面上方への旋回のためのものであるか否かを判定する(ステップST53)。本実施例では、コントローラ54は、旋回開始直後のポンプ吐出圧とポンプ流量との対応関係に基づいて斜面上方への旋回であるか否かを判定する。
具体的には、図22に示すように、時刻t1において旋回操作が開始されると、コントローラ54は、制御周期毎に所定の増加率で増加するポンプ流量指令値を生成して、ポンプ流量を所定の増加率で増加させる。そして、コントローラ54は、旋回操作開始後に所定時間が経過した時点である時刻t2において検出されるポンプ吐出圧が閾値Pth以上であれば、斜面上方への旋回が行われていると判定し、そのポンプ吐出圧が閾値Pth未満であれば、斜面上方への旋回が行われていないと判定する。したがって、コントローラ54は、ポンプ吐出圧P11を検出した場合には、閾値Pth未満であるとして、斜面上方への旋回が行われていないと判定する。一方で、コントローラ54は、ポンプ吐出圧P12を検出した場合には、閾値Pth以上であるとして、斜面上方への旋回が行われていると判定する。
また、コントローラ54は、作動油温、エンジン回転数等に基づいて閾値Pthの値を調整してもよい。本実施例では、コントローラ54は、作動油温、エンジン回転数等の1又は複数のパラメータと閾値Pthとの対応関係を定める参照テーブル(図示せず。)を参照して、ショベル1の現状に合う閾値Pthを導き出す。なお、閾値Pthは、作動油温が高いほど高く、エンジン回転数が高いほど高くなる傾向を有する。或いは、コントローラ54は、閾値Pthを固定しながら、作動油温、エンジン回転数等に応じて、ポンプ流量を所定の増加率で増加させるためのポンプ流量指令値の増加率を調整してもよい。これらの調整は何れも、作動油温、エンジン回転数等の変化に応じてポンプ流量が変化するために必要とされる。斜面上方への旋回が行われているか否かの判定条件がポンプ流量の変化によって変わってしまうのを防止するためである。
また、コントローラ54は、所定間隔で検出される複数個のポンプ吐出圧データに基づいて算出されるポンプ吐出圧の単位時間当たりの増大率と所定の閾値とを比較することによって斜面上方への旋回であるか否かを判定してもよい。具体的には、コントローラ54は、その増大率が閾値以上であれば斜面上方への旋回が行われていると判定し、その増大率が閾値未満であれば斜面上方への旋回が行われていないと判定する。この場合においても、コントローラ54は、作動油温、エンジン回転数等に基づいて閾値の値を調整してもよく、ポンプ流量を所定の増加率で増加させるためのポンプ流量指令値の増加率を調整してもよい。
斜面上方への旋回が行われていると判定した場合(ステップST53のYES)、コントローラ54は、目標ポンプ吐出圧(Ptgt)を増大させる(ステップST54)。この場合、コントローラ54は、目標ポンプ吐出圧(Ptgt)を旋回リリーフ圧以上に増大させてもよい。
一方、斜面上方への旋回が行われていないと判定した場合(ステップST53のNO)、コントローラ54は、目標ポンプ吐出圧(Ptgt)を増大させることなく、今回の目標ポンプ吐出圧調整処理を終了させる。
また、旋回操作が行われていないと判定した場合も(ステップST52のNO)、コントローラ54は、目標ポンプ吐出圧(Ptgt)を増大させることなく、今回の目標ポンプ吐出圧調整処理を終了させる。
具体的には、図22に示すように、時刻t2において検出されたポンプ吐出圧P12に基づいて旋回操作が行われていると判定した場合、コントローラ54は、目標ポンプ吐出圧(Ptgt)を目標ポンプ吐出圧(Ptgt(a))に増大させる。このとき、コントローラ54は、目標ポンプ吐出圧の増大に併せて、旋回リリーフカット制御を開始させる条件である閾値TH1を閾値TH1(a)に増大させる。そして、時刻t3においてポンプ吐出圧(Pd)が閾値TH1(a)に達すると、コントローラ54は、旋回リリーフカット制御を開始させる。その結果、ポンプ流量は、時刻t3においてその増加率が減少するものの、ポンプ吐出圧が目標ポンプ吐出圧(Ptgt(a))で維持されるように、適切に制御される。
一方、時刻t2において検出されたポンプ吐出圧P11に基づいて旋回操作が行われていないと判定した場合、コントローラ54は、目標ポンプ吐出圧(Ptgt)を増大させることなくそのまま使い続けるようにする。このとき、コントローラ54は、閾値TH1を増大させることもない。そして、時刻t4においてポンプ吐出圧(Pd)が閾値TH1に達すると、コントローラ54は、旋回リリーフカット制御を開始させる。その結果、ポンプ流量は、時刻t4においてその増加率が減少するものの、ポンプ吐出圧が目標ポンプ吐出圧(Ptgt)で維持されるように、適切に制御される。
このようにして、油圧システム100は、ショベル1が傾斜面上に位置する場合の作業性を損なうことなく、ショベル1が平面上に位置する場合の省エネルギ性を向上させることができる。
また、油圧システム100は、傾斜センサ等の追加センサを用いることなく、ポンプ吐出圧とポンプ吐出量との対応関係に基づいて斜面上方への旋回であるか否かを判定する。そのため、製造コストを増大させることなく、ショベル1の作業性と省エネルギ性を向上させることができる。
なお、上述の実施例において、油圧システム100は、斜面上方への旋回であるか否かを判定して目標ポンプ吐出圧を調整する。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。油圧システム100は、斜面上方への旋回が行われる場合以外にも、外力トルクに逆らう旋回が行われる場合であれば、目標ポンプ吐出圧を増大させるようにしてもよい。例えば、油圧システム100は、ショベル1を浚渫作業で用いる際に、水流に逆らう旋回であるか否かを判定して目標ポンプ吐出圧を調整してもよい。或いは、油圧システム100は、均し作業のための旋回であるか否かを判定して目標ポンプ吐出圧を調整してもよい。
また、上述の実施例において、油圧システム100は、外力トルクに逆らう旋回であるか否かを二者択一的に判定して目標ポンプ吐出圧を増大させる。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、油圧システム100は、ポンプ吐出圧とポンプ吐出量との対応関係に基づいて、傾斜面の傾斜度合い、水流の強さ等の外力の大きさに関する値を推定し、その推定結果に応じて目標ポンプ吐出圧を決定してもよい。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
例えば、上述の実施例において、建設機械用油圧システム100は、ネガコン制御を実行しながら、旋回リリーフカット制御により油圧ポンプ10Lの吐出量を旋回消費流量に近づけてリリーフ流量を抑制する。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、建設機械用油圧システム100は、ネガコン制御の代わりに、ポジティブコントロール制御、ロードセンシング制御等を実行してもよい。
また、上述の実施例において、建設機械用油圧システム100は、旋回操作時に旋回リリーフ弁71の旋回リリーフ流量がほぼ一定となるように旋回リリーフカット制御を実行する。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、建設機械用油圧システム100は、旋回用油圧モータ44以外の他の油圧アクチュエータの操作時に、その油圧アクチュエータとその油圧アクチュエータに対応する流量制御弁との間に設置されるリリーフ弁のリリーフ流量がほぼ一定となるように旋回リリーフカット制御と同様の制御を実行してもよい。