JP2014222021A - 排気温度センサの異常診断装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】気温度を検出する排気温度センサにおける故障などの異常の有無を幅広い条件下において診断可能な排気温度センサの異常診断装置を提供する。【解決手段】内燃機関(1)の排気通路(4)に酸化触媒(5)と、DPF(6)と、前記酸化触媒の上下流にそれぞれ排気温度センサ(11a、11b)がそれぞれ設けられており、本発明の排気温度センサの異常診断装置は、上流側排気温度センサの検出値に基づいて下流側排気温度センサにおける排気温度を推定し、該推定値を下流側温度センサの実測値と比較し、その偏差が所定値より大きい場合に、排気温度センサに異常があると診断する。【選択図】図1

Description

本発明は、内燃機関の排気通路において排気温度を検知する排気温度センサについて、故障などの異常の有無を診断する排気温度センサの異常診断装置の技術分野に関する。
ディーゼルエンジンなどの内燃機関の排気に含まれる大気汚染物質の削減は、近年、大きな課題となっている。そこで排気通路には、排気中に含まれる酸素を利用して排気中の炭化水素(HC)を主とした未燃焼物質を酸化して水(H0)と二酸化炭素(CO)に分解する酸化触媒(DOC)や、排気中の未燃焼微細物質(PM)を捕集することによって浄化を行うディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)などからなる排気後処理システムが設けられている。この種の排気後処理システムでは、DPFにおけるPMの蓄積量が増えると浄化能力が低下することから、所定のタイミングで再生処理を実施することによって、蓄積したPMの燃焼処理が行われる。
この種の排気後処理システムでは、その性能確保のために内燃機関からの排気の温度管理が重要である。特に酸化触媒では十分な浄化能力が発揮できるように活性温度以上に昇温する必要がある一方で、過昇温が生じると劣化や破損が生じるおそれがあるため、適切な温度範囲に管理する必要がある。そのため、排気通路に設けられた酸化触媒の前後には、それぞれ排気温度センサが設置されることがある。
しかしながら、このような排気温度センサに故障などに起因する異常が発生した場合には、排気温度の正確な検知が不能となってしまうため、温度管理ができず、結果的に重大な故障をもたらすおそれがある。そこで、排気温度センサの異常を診断するための技術として、例えば特許文献1及び2がある。これらの技術では、排気通路に設置された酸化触媒の上流側と下流側にそれぞれ設けられた排気温度センサのうち、一方の温度検出値に基づいて他方の排気温度センサにおける検出温度を計算により算出(推定)し、実測値との偏差を評価することによって、異常の有無が診断される。
特に、特許文献1では触媒が活性温度に達していない運転条件、又は、高速高負荷条件下において、伝達関数を用いることによって、触媒の下流側の排気温度を推定できることが記載されている。また特許文献2では、内燃機関の運転状態が所定の安定状態にある場合に、その運転状態に基づいて排気温度を推定できることが記載されている。
特開2005−140069号公報 特開2006−22730号公報
上述したように、特許文献1では触媒が活性温度に達していない運転条件、又は、高速高負荷条件が成立した場合に限って、又は、特許文献2では運転安定状態に限って、排気温度の推定が可能であるため、その他の状況下においては排気温度の推定を行うことができない。このように従来技術では、ごく限られた条件が成立した場合にのみ排気温度の推定が可能であるため、例えばDPF再生中や過渡的な運転状態では推定できない場合があり、内燃機関の運転中に定常的に使用される排気後処理システムに用いられる排気温度センサの異常診断として、十分とは言えない。
本発明は上述の問題点に鑑みなされたものであり、排気後処理システムで用いられる排気温度センサにおける故障などの異常の有無を幅広い条件下において診断可能な排気温度センサの異常診断装置を提供することを目的とする。
本発明に係る排気温度センサの異常診断装置は上記課題を解決するために、内燃機関の排気通路に酸化触媒と、該酸化触媒より下流側に設けられたDPFと、前記酸化触媒の上流側に設けられた上流側排気温度センサと、前記酸化触媒及び前記DPF間に設けられた下流側排気温度センサとを備えた排気後処理システムにおける排気温度センサ異常診断装置であって、前記酸化触媒へのHC添加量を検出するHC添加量検出手段と、前記HC添加量から前記酸化触媒における酸化燃焼熱量を算出する酸化燃焼熱量算出手段と、前記酸化触媒と該酸化触媒を流れる排気との間における熱交換量を算出する熱交換量算出手段と、前記上流側排気温度センサの検出値、前記酸化燃焼熱量及び熱交換量に基づいて、前記下流側排気温度センサの検出値を推定する推定手段と、前記下流側排気温度センサの実測値と前記推定手段によって推定された値との偏差が所定値以上である場合に異常があると判定する異常判定手段とを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、ポスト噴射等によるHC添加量から求められる酸化燃焼熱量や、酸化触媒と排気との間における熱交換量を算出することにより、推定手段において、酸化触媒における熱収支モデルを構築し、上流側排気温度センサの検出値に基づいて下流側排気温度センサにおける検出値を推定することができる。このような温度推定は内燃機関の運転状態に関わらず適用可能な熱収支モデルに基づいて行われるため、幅広い条件下で行うことができる。そして、異常判定手段では、前記推定値と下流側排気温度センサにおける実測値の偏差を異常判定の基準値である所定値と比較することによって、幅広い条件下において下流側排気温度センサ及び上流側排気温度センサについて異常の有無を診断することができる。
特に推定手段では、酸化触媒に流入前の排気温度である上流側排気温度センサの検出値に基づいて、酸化触媒から排出された排気温度を推定することによって、逆の場合(酸化触媒から排出された排気温度である下流側排気温度センサの検出値に基づいて、酸化触媒に流入前の排気温度を推定する場合)に比べて、推定値の算出精度を高くすることができる。これは、下流側排気温度センサの検出値は、酸化触媒の熱容量による温度上昇遅れを含んでいるため、その値を元に上流側排気温度を推定するよりも、上流側排気温度センサの検出値に基づき、酸化触媒の熱容量も考慮して下流側排気温度を推定した方が、より精度の高い推定ができるためである。その結果、正確な異常診断が可能となる。
本発明の一態様では、外気温度を検出する外気温度検出手段と、前記外気と前記酸化触媒との温度差から、前記酸化触媒から外気への放熱量を算出する放熱量算出手段とを備え、前記熱交換量算出手段は、前記放熱量に基づいて前記熱交換量を算出してもよい。
この態様によれば、熱収支モデルに酸化触媒から外気への放熱量を組み込むことによって、下流側排気温度センサの検出値をより精度よく推定することができる。
また、前記酸化燃焼熱量算出手段では、前記酸化触媒温度をパラメータとするアレニウス則を用いて前記酸化触媒で反応可能なHC最大反応量を求め、前記HC添加量が前記HC最大反応量より大きい場合、前記HC最大反応量を前記HC添加量として酸化燃焼熱を算出してもよい。
この態様によれば、ポスト噴射等によってHCが過剰に添加された場合に酸化触媒で反応することなく下流側へ流出する分を考慮し、HC最大反応量(酸化触媒で反応可能なHC量の最大値)に基づいて酸化燃焼熱を算出することで、下流側排気温度センサの検出値を更に精度よく推定することができる。
本発明によれば、ポスト噴射等によるHC添加量から求められる酸化燃焼熱量や、酸化触媒と排気との間における熱交換量を算出することにより、推定手段において、酸化触媒における熱収支モデルを構築し、上流側排気温度センサの検出値に基づいて下流側排気温度センサにおける検出値を推定することができる。このような温度推定は内燃機関の運転状態に関わらず適用可能な熱収支モデルに基づいて行われるため、幅広い条件下で行うことができる。そして、異常判定手段では、前記推定値と下流側排気温度センサにおける実測値の偏差を異常判定の基準値である所定値と比較することによって、幅広い条件下において下流側排気温度センサ及び上流側排気温度センサについて異常の有無を診断することができる。
特に推定手段では、酸化触媒に流入前の排気温度である上流側排気温度センサの検出値に基づいて、酸化触媒から排出された排気温度を推定することによって、逆の場合(酸化触媒から排出された排気温度である下流側排気温度センサの検出値に基づいて、酸化触媒に流入前の排気温度を推定する場合)に比べて、熱収支モデルが複雑化しないため、推定値の算出精度を高くすることができ、その結果、正確な異常診断が可能となる。
本実施例に係る排気温度センサの異常診断装置を搭載した車両の内部構造を示す構成図である。 ECUにおいて実施される異常診断方法が採用するDOCの熱収支モデルを概念的に示す図である。 本実施例に係る異常診断方法の実施プロセスを示すフローチャートである。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を例示的に詳しく説明する。但し、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りはこの発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
(全体構成)
図1は本実施例に係る排気温度センサの異常診断装置を搭載した車両の内部構造を示す構成図である。
符号1はコモンレール式の燃料噴霧装置を備えた内燃機関であるディーゼルエンジン(以下、適宜「エンジン」と称する)であり、各気筒の燃焼室内には燃料噴射弁から燃料が直接噴射され、圧縮着火燃焼が行われる。燃料噴射弁の燃料噴射時期及び噴射量は電子制御ユニット(以下、適宜「ECU」と称する)10によって電気的に制御されている。
外部からエアクリーナ2を介して導入された吸気は吸気管3を介してエンジン1に取り込まれ、燃焼室にて圧縮着火燃焼によって発生した排気は排気管4に排出される。排気管4には上流側から順に酸化触媒(DOC)5及びディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)6を備えている。
DOC5では、排気中に含まれる酸素を利用して、排気中の炭化水素(HC)を主とした未燃焼物質を酸化して水(H0)と二酸化炭素(CO)に分解する。
DPF6では、排気中の未燃焼微細物質(PM)を捕集することによって浄化を行う。DPF6に捕集されたPMの蓄積量が増えると浄化能力が低下することから、所定のタイミングでDPF6の再生処理が実施される。再生処理時には、DOC5の上流側に設けられたHC添加装置7によって排気管4中に燃料(HC)を噴射し、DOC5で当該排気中に含まれる燃料を酸化させて排気を昇温し、高温になった排気をDPF6に送り込むことによって、蓄積したPMを燃焼処理する。
このようにDOC5及びDPF6で浄化された排気は、更に下流側に配置された不図示のNOx選択還元型触媒において排気中の窒素酸化物(NOx)を水(H0)と窒素(N)に分解浄化した後、外部に排出される。
吸気管3には吸気流量Gair[kg/s]を検出するための吸気流量センサ8が設けられている。DOC5の上流側の排気管4にはDOC5の入口圧力Pinを検出するための圧力センサ9と、DOC5の上流側の排気温度Tin[K]を検出するための上流側排気温度センサ11aが設けられている。排気管4のうちDOC5及びDPF6間にはDOC5の下流側の排気温度Tout[K]を検出するための下流側排気温度センサ11bが設けられている。また車両には外気温度Tamb[K]を検出するための外気温度センサ12、及び、車速Vvehicle[km/h]を検出するための車速センサ13が設けられている。
吸気流量センサ8の検出値Gair[kg/s]、入口圧力センサ9の検出値Pin[Pa]、上流側排気温度センサ11aの検出値Tin[K]、下流側排気温度センサ11bの検出値Tout[K]、外気温度センサ12の検出値Tamb[K]、及び、車速センサ13の検出値Vvehicle[km/h]は、それぞれ演算装置であるECU10に送られ、後述の異常診断の演算に利用される。
ECU10はエンジン1をはじめとする車両全体の制御を統括するコントロールユニットであり、一般的なエンジン制御に加えて、本実施例ではDOC5の上流側に配置された上流側排気温度センサ11aの検出値に基づいて、DOC5の下流側に配置された下流側排気温度センサ11bにおける排気温度を推定し、該推定値を下流側排気温度センサ11bの実測値と比較することによって、双方の排気温度センサにおける故障などの異常の有無を診断する排気温度センサの異常診断装置として機能する。尚、当該方法の実施に必要な制御ロジックはECU10が備えるメモリ等の記憶部に予めプログラムとして記憶されており、演算装置によって適宜読みだされることによって実施可能に構成されている。
図1では特に、ECU10の内部構成として、該ECU10で実施される後述の異常診断方法の各ステップに対応する機能ブロックを示しており、HC添加装置7によるHC添加量を検出するHC添加検出手段15と、酸化燃焼熱量QHC[W]を算出する酸化燃焼熱量算出手段16と、放熱量Qrad[W]を算出する放熱量算出手段17と、熱交換量Qexh[W]を算出する熱交換量算出手段18と、排気温度の推定結果を求める排気温度推定手段19と、該推定結果に基づいて排気温度センサにおける異常の有無を判定する異常判定手段20とを含んで構成されている。
尚、本実施例では、HC添加装置7を用いてHCを添加する場合を示しているが、これに代えてエンジン燃焼室内に設けられた燃料インジェクタによるポスト噴射を用いてHC添加を行ってもよい。
尚、異常判断手段20において排気温度センサに異常があると判定された場合には、警告手段21に制御信号を送信することによって、ブザーなどのオペレータの知覚可能な手法によって警報が報知されるように構成されている。
続いてECU10において実施される排気温度センサの異常診断の具体的内容について説明する。この診断方法では、DOC5における熱収支モデルを構築することによって、上流側排気温度センサ11aの検出値に基づいて、下流側排気温度センサ11bにおける排気温度を推定して、下流側排気温度センサ11bの実測値と比較することによって異常診断がなされる。
尚、本実施例とは逆に、下流側排気温度センサ11bの検出値に基づいて、上流側排気温度センサ11aにおける排気温度を推定し、上流側排気温度センサ11aの実測値と比較することによって同様の考え方に基づいて異常診断を行ってもよい。
図2はECU10において実施される異常診断方法が採用するDOC5の熱収支モデルを概念的に示す図である。DOC5には上流側でHC添加装置7によって添加された燃料が酸化することによって酸化燃焼熱量QHC[W]が与えられる一方で、該DOC5を流れる排気との間に生じる温度差に基づいた熱交換量Qexh[W]が生じる。また酸化燃焼熱量QHC[W]や熱交換量Qexh[W]に比べて排気温度に与える影響は小さいものの、DOC5と外気との間の温度差に基づいて放熱量Qrad[W]が生じる。本実施例における診断方法では、これら3つの熱量の移動を考慮することによって、DOC5を熱収支モデル化して排気温度の推定を行う。
図3は本実施例に係る異常診断方法の実施プロセスを示すフローチャートである。
まずECU10は各センサ類の検出値(吸気流量Gair[kg/s]、入口圧力Pin[Pa]、上流側排気温度センサ11aの検出値Tin[K]、外気温度Tamb[K]、車速Vvehicle[km/h])を取得する(ステップS101)。そして、取得した検出値を用いて、DOC5の上流側に設けられたHC添加装置7から添加された燃料が酸化されることによって与えられる酸化燃焼熱量QHC[W]を算出し(ステップS102)、DOC5から外気への放熱量Qrad[W]を算出し(ステップS103)、DOC5及び排気間の熱交換量Qexh[W]を算出する(ステップS104)。そして、ステップS102〜S104の算出結果に基づいて、DOC5の下流側における排気温度Tout_est[K]の推定が行われる(ステップS105)。
そして、ステップS105で推定されたDOC5の下流側における排気温度Tout_est[K]と、当該箇所に配置された下流側排気温度センサ11bの実測値Tout_measureとの偏差ΔToutを、判定閾値である所定値ΔTout1と比較することで排気温度センサにおける異常の有無を判定する(ステップS106)。
偏差ΔToutが所定値ΔTout1より大きい場合、実測値と推定値との間に誤差があるため、温度センサに故障があると判定し、警報手段21を作動する(ステップS107)。一方、偏差ΔToutが所定値ΔTout1以下である場合、実測値と推定値との間の誤差が十分小さいため、温度センサに故障がないと判定する(ステップS108)。
尚、ステップS106で使用される所定値ΔTout1は、例えば実験等にて予め異常の可能性が高くなる値を選択し、メモリ等の記憶手段に記憶させたものを適宜読み出すようにするとよい。
以下、ステップS102〜S105における排気温度の具体的な推定方法について詳しく説明する。尚、図3ではステップS102〜S104を順に実施するように示しているが、これらのステップは同時に実施してもよい。
(酸化燃焼熱量QHCの算出方法)
ECU10の酸化燃焼熱量算出手段16において、酸化燃焼熱量はHC添加装置7によって排気中に添加されたHCがDOC5で酸化反応した際に発生する熱量であり、大まかにはHC添加量qHC[kg/s]と燃料の低位発熱量Hufuel[J/kg]とに基づいて次式
HC1=(qHC+qHC_exh)・Hufuel (1)
から求められる。ここでHC添加量qHC[kg/s]はECU10のHC添加装置7に対する指示値を用い(機能ブロック的に言えば、図1に示すようにHC添加量検出手段15によってHC添加装置7の添加量を取得する)、燃料の低位発熱量Hufuel[J/kg]は予めメモリ等の記憶部に記憶された代表値を読み出すことによって取得したものを用いるとよい。またqHCexh[kg/s]は、エンジンから排出された排気に含まれるHC含有量であり、不図示のエンジン回転数センサの検出値であるエンジン回転数Nengと、ECU10の指示値である燃料噴射量qfuel[kg/s]をパラメータとする任意関数により算出される。
ところでHC添加装置7から過剰に燃料が添加された場合には、その一部が未反応のままDOC5の下流側に流出する。このような未燃分を加味することによって、より精度よく酸化燃焼熱量QHC[W]を求めることができる。DOC5で反応可能な添加燃料の最大反応値は、アレニウス則を用いて次式
HC2=A・NHC・NO2・exp(−E/(R・Tsub(i−1)) (2)
により得られる。ここでA及びEは適合係数であり、Rは気体定数である。また、NHC[mol/L]及びNO2[mol/L]はそれぞれ排気中の燃料濃度及び酸素濃度であり、吸気流量センサ8の検出値Gair[kg/s]、ECU10のHC添加装置7に対するHC添加量指示値qHC[kg/s]、エンジンから排出された排気に含まれるHC含有量qHCexh[kg/s]、ECU10の燃料噴射装置(図1において不図示)に対する燃料噴射量指示値qfuel[kg/s]、当該方法の前回実施時に求められたDOC5の温度推定値(触媒温度の前回推定値)Tsub(i−1)に基づいて算出することができる。
ECU10は、HC添加量に基づいた算出値QHC1[W]とDOC5で反応可能な添加燃料の最大反応値QHC2[W]とを比較し、より大きい方を酸化燃焼熱量QHC[W]として特定する。
HC=max(QHC1,QHC2) (3)
これにより、HC添加装置7から過剰に添加された場合にDOC5で反応せずに下流側へ流出する分を考慮し、精度よく酸化燃焼熱量を求めることができる。
DOC5に与えられる酸化燃焼熱量QHC[W]は、所定の割合dHCsub(0≦dHCsub≦1)でDOC5及び該DOC5を流れる排気に分配される。DOC5及び排気に分配される熱量をそれぞれQHCsub[W]及びQHCexh[W]とすると、
HCsub=dHCsub・QHC (4)
HCexh=(1−dHCsub)・QHC (5)
となる。
ここで分配係数dHCsubは排気流量Gexh[kg/s]をパラメータとする任意の関数として次式
HCsub=f(Gexh) (6)
により得られる。
尚、排気流量Gexh[kg/s]は、吸気流量センサ8の検出値Gair[kg/s]及びエンジン制御パラメータであるエンジン燃料噴射量qfuel[kg/s]に基づいて次式
exh=Gair+qfuel (7)
により得られる。
(放熱量Qradの算出方法)
ECU10の放熱量算出手段17はDOC5と外気との温度差や、DOC5の周りの外気の流れを考慮することにより、放熱量Qrad[W]を算出する。
まずECU10は、外気の特性を規定するパラメータである動粘度νair[m/s]、比熱Cair[J/kg・K]、密度ρair[kg/m]、熱伝導率λair[W/m・K]、体積膨張係数βair[1/K]について、それぞれ外気温度センサ12の検出値Tamb[K]をパラメータとする任意関数を用いて、次式
νair=f(Tamb) (8)
air=f(Tamb) (9)
ρair=f(Tamb) (10)
λair=f(Tamb) (11)
βair=f(Tamb) (12)
により求める。
続いて、DOC5の周りを流れる外気について、流体の熱伝達性を特徴付けるパラメータであるレイノルズ数Reamb、プラントル数Pramb、グラスホフ数Gramb、ヌッセルト数Nuambを算出する。
Reamb=vvehicle・Lsub/νair (13)
Pramb=Cair・ρair・νair/λair (14)
Gramb=Lsub ・g・βair・(Tsub(i−1)−Tamb)/νair (15)
Nuamb=c0・(Gramb・Pramb1/3 (vvehicle=0) (16−1)
Nuamb=c1・Reamb m1・Pramb n1 (vvehicle>0) (16−2)
ここでvvehicleは車速センサ13の検出値[km/h]であり、Lsubは酸化触媒の長さ[m]であり、gは重力加速度(≒9.80)[m/s]であり、Tsub(i−1)は当該方法で求めたDOC5の触媒温度Tsubの前回推定値[K]である。c0は任意の適合定数である。またc1、m1、n1はヌッセルト数Nuambの補関数であり任意関数fを用いて
c1=f(Reamb) (17)
m1=f(Reamb) (18)
n1=f(Reamb) (19)
により表わされる。
上記計算結果を用いて、外気の熱伝達係数hamb[W/m・K]は次式
amb=Nuamb・λair/Lsub (20)
で表わされ、DOC5及び外気間の熱伝達係数kは、DOC5のカバー外径dcov[m]、DOC5の外径dsub[m]を用いて次式
k=1/(ln(dcov/dsub)/(2・λcov)+1/(hamb・dcov)) (21)
により表わされる。従って、DOC5から外気への放熱量Qrad[W]は
rad=k・π・Lsub・(Tsub(i−1)−Tamb) (22)
となる。
(熱交換量Qexhの算出方法)
ECU10の熱交換量算出手段18は、DOC5と該DOC5を流れる排気との温度差を考慮することにより、熱交換量Qexh[W]を算出する。
まずECU10は、排気の特性を規定するパラメータである動粘度νexh[m/s]、比熱Cexh[J/kg・K]、密度ρexh[kg/m]、熱伝導率λexh[W/m・K]について、それぞれ上流側排気温度センサ11aの検出値Tinをパラメータとする任意関数を用いて、次式
νexh=f(Tin) (23)
exh=f(Tin) (24)
ρexh=f(Tin) (25)
λexh=f(Tin) (26)
により求める。
続いて、DOC5を流れる排気について、流体の熱伝達性を特徴付けるパラメータであるレイノルズ数Reexh、プラントル数Prexh、ヌッセルト数Nuexhを算出する。
Reexh=uexh・Lsub/νexh (27)
exh=Gexh・(R/Mexh)・Tin/Pin (28)
exh=vexh/(nsub・psub ) (29)
Prexh=Cexh・ρexh・νexh/λexh (30)
Nuexh=c2・Reexh m2・Prexh n2 (31)
ここでc2、m2、n2はヌッセルト数Nuexhの補関数であり任意関数fを用いて
c2=f(Reexh) (32)
m2=f(Reexh) (33)
n2=f(Reexh) (34)
により表わされる。
上記計算結果を用いて、排気の熱伝達係数hamb[W/m・K]は次式
exh=Nuexh・λexh/Lsub (35)
で表わされ、DOC5から排気への熱交換量Qexh[W]は
exh=hexh・nsub・4・psub・Lsub・(Tsub(i−1)−Tin) (36)
となる。
尚、nsubはDOC5のセル数、psubはDOC5のセルピッチ[m]であり、予めメモリ等の記憶部に記憶された設計値を読み出すことによって取得するとよい。
(排気温度Toutの推定方法)
ECU10の排気温度推定手段19では、上述の演算により得られた酸化燃焼熱量QHC[W]、放熱量Qrad[W]及び熱交換量Qexh[W]を、図2に示す熱収支モデルに適用することにより、DOC5の下流側の排気温度Tout[K]は次式
out=Tin+(QHCexh+Qexh)/(Gexh・Cexh) (37)
により推定される。
またDOC5の触媒温度Tsub[K]もまた次式
sub=Tsub(i−1)+(QHCsub−Qrad−Qexh)/(msub・Csub) (38)
により推定される。尚、msubはDOC5の質量[kg]であり、CsubはDOC5の特性温度[J/kg・K]であり、予めメモリ等の記憶部に記憶された設計値を読み出すことによって取得するとよい。
以上説明したように、本実施例によれば、ECU10において異常診断方法を実施することで、HC添加装置7からのHC添加量に基づいて求められる酸化燃焼熱量QHCや、DOC5と排気との間における熱交換量Qexh[W]を算出することにより、DOC5における熱収支モデルを構築し、上流側排気温度センサ11aの検出値に基づいて、下流側排気温度センサ11bにおける排気温度を推定し、その推定結果を下流側排気温度センサ11bの実測値と比較することにより、これらの温度センサにおける故障の有無を、エンジン1の運転状態に関わらず幅広い条件下において診断することが可能となる。
特に、熱収支モデルにDOC5から外気への放熱量Qrad[W]を組み込むことによって、より高精度に排気温度を推定することができる。
また、このような熱収支モデルは、従来技術のような1次遅れフィルタ等の伝達関数を用いた場合に比べて実体に近いため、良好な推定精度を得ることができる。
本発明は、内燃機関の排気通路において排気温度を検知する排気温度センサについて、故障などの異常の有無を診断する排気温度センサ異常診断装置に利用可能である。
1 エンジン
2 エアクリーナ
3 吸気管
4 排気管
5 酸化触媒(DOC)
6 ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)
7 HC添加装置
8 吸気流量センサ
9 入口圧力センサ
10 ECU
11 排気温度センサ
12 外気温度センサ
13 車速センサ
15 HC添加量検出手段
16 酸化燃焼熱量算出手段
17 放熱量算出手段
18 熱交換量算出手段
19 排気温度推定手段
20 故障判定手段
21 警報手段

Claims (3)

  1. 内燃機関の排気通路に酸化触媒と、該酸化触媒より下流側に設けられたDPFと、前記酸化触媒の上流側に設けられた上流側排気温度センサと、前記酸化触媒及び前記DPF間に設けられた下流側排気温度センサとを備えた排気後処理システムにおける排気温度センサ異常診断装置であって、
    前記酸化触媒へのHC添加量を検出するHC添加量検出手段と、
    前記HC添加量から前記酸化触媒における酸化燃焼熱量を算出する酸化燃焼熱量算出手段と、
    前記酸化触媒と該酸化触媒を流れる排気との間における熱交換量を算出する熱交換量算出手段と、
    前記上流側排気温度センサの検出値、前記酸化燃焼熱量及び熱交換量に基づいて、前記下流側排気温度センサの検出値を推定する推定手段と、
    前記下流側排気温度センサの実測値と前記推定手段によって推定された値との偏差が所定値以上である場合に異常があると判定する異常判定手段と
    を備えたことを特徴とする排気温度センサの異常診断装置。
  2. 外気温度を検出する外気温度検出手段と、
    前記外気と前記酸化触媒との温度差から、前記酸化触媒から外気への放熱量を算出する放熱量算出手段と
    を備え、
    前記熱交換量算出手段は、前記放熱量に基づいて前記熱交換量を算出することを特徴とする請求項1に記載の排気温度センサの異常診断装置。
  3. 前記酸化燃焼熱量算出手段では、前記酸化触媒温度をパラメータとするアレニウス則を用いて前記酸化触媒で反応可能なHC最大反応量を求め、前記HC添加量が前記HC最大反応量より大きい場合、前記HC最大反応量を前記HC添加量として酸化燃焼熱を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の排気温度センサの異常診断装置。
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WO2022186368A1 (ja) * 2021-03-04 2022-09-09 株式会社小松製作所 制御装置および通知方法

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