JP2014219362A - パルス波高検出装置、放射線検出装置、放射線分析装置、及びパルス波高検出方法 - Google Patents

パルス波高検出装置、放射線検出装置、放射線分析装置、及びパルス波高検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】放射線の検出効率と放射線エネルギーの検出精度とを両立させたパルス波高検出装置、放射線検出装置、放射線分析装置、及びパルス波高検出方法を提供する。【解決手段】放射線検出器1は、放射線のエネルギーに応じた単ステップ状パルスを出力する。パルス波高検出装置2は、第1フィルタ部(第1変換部)22及び第2フィルタ部(第2変換部)23で単ステップ状パルスを台形状パルスへ変換し、波高検出部26で台形状パルスの波高を検出する。パルス波高検出装置2は、プロセスタイムがより短くなる第2フィルタ部23を利用することにより、放射線検出装置及び放射線分析装置での放射線の検出効率を向上させる。また、パルス波高検出装置2は、S/N比がより良好になる第1フィルタ部22を可能な限り利用し、第2フィルタ部23の利用を必要最小限に抑えることにより、放射線エネルギーの検出精度の悪化を可及的に防止する。【選択図】図1

Description

本発明は、放射線の検出によって発生するパルスに基づいて放射線のエネルギーを求める処理を行うパルス波高検出装置、該パルス波高検出装置を用いた放射線検出装置、該放射線検出装置を用いた放射線分析装置、及びパルス波高検出方法に関する。
X線等の放射線を検出する放射線検出装置は、放射線検出器と、パルス波高検出装置とを備えている。放射線検出器は、半導体放射線検出素子等を用いて構成されており、放射線が検出される都度、単ステップ状パルスを出力する。パルス波高検出装置は、フィルタ処理により単ステップ状パルスを台形状パルスへ変換する。パルスの変換時には、単ステップ状パルスを台形状パルスへ整形すると共に、ノイズの除去が行われる。次に、パルス波高検出装置は、ピークホールドにより台形状パルスの波高を検出する。パルス波高検出装置が検出したパルスの波高は、放射線のエネルギーに対応し、パルス波高検出装置が検出したパルスの波高に基づいて放射線のスペクトルを求めることができる。特許文献1には、複数のフィルタ処理を用いて、単ステップ状パルスのベースラインを正確に読み取る技術が開示されている。
特許第4429011号公報
パルス波高検出装置でピークホールドにより台形状パルスの波高を正確に検出するためには、パルスの時間間隔がある程度以上長い必要がある。必要な最短の時間間隔は、プロセスタイム又はデッドタイムと言われ、台形状パルスの時間幅に応じた値となる。プロセスタイムよりも短い間隔で二つの放射線が検出された場合、二つの放射線に起因する台形状パルスが重なるので、二つの放射線を区別することが困難になる。このため、プロセスタイムが長い場合は、放射線の検出効率が低下する。一方で、プロセスタイムを短くした場合は、台形状のパルスのS/N(信号/ノイズ)比が悪化し、放射線エネルギーの検出精度が悪化する。従って、放射線の検出効率と放射線エネルギーの検出精度とを両立させることは困難である。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、放射線の検出効率と放射線エネルギーの検出精度とを両立させたパルス波高検出装置、放射線検出装置、放射線分析装置、及びパルス波高検出方法を提供することにある。
本発明に係るパルス波高検出装置は、順次的な単ステップ状パルスが多段の階段状に連なった信号が入力され、夫々の単ステップ状パルスを台形状パルスへ変換し、変換した台形状パルスの波高を検出するパルス波高検出装置において、単ステップ状パルスを台形状パルスへ変換する第1変換部と、単ステップ状パルスを、該第1変換部が変換する台形状パルスよりも時間幅が短い台形状パルスへ変換する第2変換部と、一の単ステップ状パルスP(n)の一つ前の単ステップ状パルスP(n−1)から前記単ステップ状パルスP(n)までの時間間隔を計測する計測手段と、該計測手段が計測した時間間隔が所定の第1閾値を超過している場合に、前記単ステップ状パルスP(n)を前記第1変換部が変換した台形状パルスの波高を検出する手段と、前記時間間隔が前記第1閾値以下であり、前記第1閾値よりも短い所定の第2閾値を超過している場合に、前記単ステップ状パルスP(n)及び前記単ステップ状パルスP(n−1)の波高を比較する手段と、前記単ステップ状パルスP(n)の波高が前記単ステップ状パルスP(n−1)の波高を超過している場合に、前記単ステップ状パルスP(n)を前記第1変換部が変換した台形状パルスの波高を検出する手段と、前記単ステップ状パルスP(n)の波高が前記単ステップ状パルスP(n−1)の波高以下である場合に、前記単ステップ状パルスP(n)を前記第2変換部が変換した台形状パルスの波高を検出する手段とを備えることを特徴とする。
本発明に係るパルス波高検出装置は、前記計測手段が計測した時間間隔が前記第2閾値以下である場合に、台形状パルスの波高の検出を休止する手段を更に備えることを特徴とする。
本発明に係るパルス波高検出装置は、前記第1閾値は、前記第1変換部が二つの単ステップ状パルスを変換した二つの台形状パルスが重ならないために必要な前記二つの単ステップ状パルスの時間間隔であることを特徴とする。
本発明に係るパルス波高検出装置は、前記第2閾値は、前記第2変換部が二つの単ステップ状パルスを変換した二つの台形状パルスが重ならないために必要な前記二つの単ステップ状パルスの時間間隔であることを特徴とする。
本発明に係る放射線検出装置は、放射線検出時に放射線のエネルギーに応じた単ステップ状パルスを出力する放射線検出器と、該放射線検出器が出力した単ステップ状パルスが順次的に連なった信号を入力され、夫々の単ステップ状パルスを変換した台形状パルスの波高を検出する本発明に係るパルス波高検出装置とを備えることを特徴とする。
本発明に係る放射線分析装置は、放射線のエネルギーに対応するパルスの波高を検出する本発明に係る放射線検出装置と、該放射線検出装置が検出したパルスの波高に基づいて、放射線のエネルギーを分析する分析部とを備えることを特徴とする。
本発明に係るパルス波高検出方法は、順次的な単ステップ状パルスが多段の階段状に連なった信号を受け付け、夫々の単ステップ状パルスを台形状パルスへ変換し、変換した台形状パルスの波高を検出する方法において、単ステップ状パルスを台形状パルスへ変換する第1変換部と、単ステップ状パルスを、該第1変換部が変換する台形状パルスよりも時間幅が短い台形状パルスへ変換する第2変換部とを用い、一の単ステップ状パルスP(n)の一つ前の単ステップ状パルスP(n−1)から前記単ステップ状パルスP(n)までの時間間隔を計測し、計測した時間間隔が所定の第1閾値を超過している場合に、前記単ステップ状パルスP(n)を前記第1変換部で変換した台形状パルスの波高を検出し、前記時間間隔が前記第1閾値以下であり、前記第1閾値よりも短い所定の第2閾値を超過している場合に、前記単ステップ状パルスP(n)及び前記単ステップ状パルスP(n−1)の波高を比較し、前記単ステップ状パルスP(n)の波高が前記単ステップ状パルスP(n−1)の波高を超過している場合に、前記単ステップ状パルスP(n)を前記第1変換部で変換した台形状パルスの波高を検出し、前記単ステップ状パルスP(n)の波高が前記単ステップ状パルスP(n−1)の波高以下である場合に、前記単ステップ状パルスP(n)を前記第2変換部で変換した台形状パルスの波高を検出することを特徴とする。
本発明においては、放射線検出装置は、放射線のエネルギーに応じた単ステップ状パルスを出力する放射線検出器と、単ステップ状パルスを台形状パルスへ変換して波高を検出するパルス波高検出装置とを備える。放射線分析装置は、放射線検出装置と分析部とを備える。パルス波高検出装置は、単ステップ状パルスP(n)を第1変換部で変換した第1の台形状パルスと、第2変換部で変換した時間幅がより短い第2の台形状パルスとの何れかの波高を検出する。一つ前の単ステップ状パルスP(n−1)と単ステップ状パルスP(n)との時間間隔が第1閾値より長い場合に、パルス波高検出装置は、第1の台形状パルスの波高を検出する。時間間隔が第1閾値以下で第2閾値より長い場合、パルス波高検出装置は、単ステップ状パルスP(n)の波高が単ステップ状パルスP(n−1)より大きいときに第1の台形状パルスの波高を検出し、単ステップ状パルスP(n)の波高が単ステップ状パルスP(n−1)の波高以下のときに第2の台形状パルスの波高を検出する。台形状パルスの時間幅が短くなるもののS/N比が悪くなる第2変換部の利用が最小限となる。
また、本発明においては、パルス波高検出装置は、単ステップ状パルスP(n−1)と単ステップ状パルスP(n)との時間間隔が第2閾値以下である場合に、台形状パルスの波高を検出しない。単ステップ状パルスの時間間隔が短すぎる場合は、単ステップ状パルスP(n−1)と単ステップ状パルスP(n)とを変換した二つの台形状パルスを区別できないので、波高の検出は行われない。
また、本発明においては、単ステップ状パルスP(n−1)と単ステップ状パルスP(n)との時間間隔が第1閾値より長い場合は、単ステップ状パルスP(n−1)と単ステップ状パルスP(n)とを第1変換部で変換した二つの台形状パルスは重ならない。単ステップ状パルスの時間間隔が第1閾値以下である場合は、二つの台形状パルスが重なる。第1変換部で変換した二つの台形状パルスが重なる場合でも、単ステップ状パルスP(n)の波高が単ステップ状パルスP(n−1)より大きいときは、第1の台形状パルスの波高の検出が可能である。
また、本発明においては、単ステップ状パルスP(n−1)と単ステップ状パルスP(n)との時間間隔が第2閾値以下である場合は、単ステップ状パルスP(n−1)と単ステップ状パルスP(n)とを第2変換部で変換した二つの台形状パルスが重なる。
本発明にあっては、時間幅の短い台形状パルスの波高を検出することにより、放射線検出装置及び放射線分析装置では、放射線の不感時間が短くなり、放射線の検出効率が向上する。また、時間幅がより長いもののS/N比が良好である台形状パルスの波高を可能な限り検出し、時間幅が短いもののS/N比の悪い台形状パルスの利用を必要最小限に抑えることにより、放射線検出装置及び放射線分析装置では、放射線エネルギーの検出精度の悪化を可及的に防止することができる。従って、放射線の検出効率と放射線エネルギーの検出精度とを両立させることが可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
放射線分析装置の機能構成を示すブロック図である。 放射線検出器が出力する信号の例を示す模式的特性図である。 単ステップ状パルス及び台形状パルスの例を示す模式的特性図である。 プロセスタイムを説明する説明図である。 パルス波高検出装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。 単ステップ状パルスP(n)の波高が単ステップ状パルスP(n−1)の波高を超過している場合の単ステップ状パルス及び台形状パルスの例を示す特性図である。 単ステップ状パルスP(n)の波高が単ステップ状パルスP(n−1)と等しい場合の単ステップ状パルス及び台形状パルスの例を示す特性図である。 単ステップ状パルスP(n)の波高が単ステップ状パルスP(n−1)の波高未満である場合の単ステップ状パルス及び台形状パルスの例を示す特性図である。
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
図1は、放射線分析装置の機能構成を示すブロック図である。放射線分析装置は、放射線検出器1と、パルス波高検出装置2と、分析部3とを備えている。放射線検出器1及びパルス波高検出装置2の組み合わせは、本発明の放射線検出装置である。放射線検出器1は、放射線検出素子11と、プリアンプ12とを備えている。放射線検出素子11は、SDD(Silicon Drift Detector)等の半導体放射線検出素子であり、入射した放射線のエネルギーに応じた電荷を発生し、発生した電荷に応じたパルス電流を出力する。プリアンプ12は、放射線検出素子11が出力したパルス電流を電圧パルスに変換し、放射線検出時に一段のステップ状に信号値が上昇する単ステップ状パルスを生成する。放射線検出器1は、プリアンプ12が生成した単ステップ状パルスを出力する。
図2は、放射線検出器1が出力する信号の例を示す模式的特性図である。図中の横軸は時間を示し、縦軸は信号値を示している。放射線検出器1が出力する信号は、信号値が一段のステップ状に変化してなる単ステップ状パルスが順次的に連なって構成され、順次的な単ステップ状パルスが多段の階段状になった信号である。信号値が上昇するステップの高さを、単ステップ状パルスの波高とする。放射線検出器1は、放射線を検出する都度、単ステップ状パルスを出力する。単ステップ状パルスの波高は、放射線のエネルギーに対応する。
パルス波高検出装置2は、DPP(デジタルパルスプロセッサ)で構成されている。放射線検出器1が出力した単ステップ状パルスは、パルス波高検出装置2へ順次入力される。パルス波高検出装置2は、A/D(アナログ/デジタル)変換部21を備えている。A/D変換部21は、パルス波高検出装置2へ入力された単ステップ状パルスをA/D変換する。A/D変換部21には、単ステップ状パルスを台形状パルスへ変換するフィルタ処理を行う第1フィルタ部(第1変換部)22、第2フィルタ部(第2変換部)23及び高速フィルタ部24が接続されている。
図3は、単ステップ状パルス及び台形状パルスの例を示す模式的特性図である。図中の横軸は時間を示し、縦軸は信号値を示している。図3Aは単ステップ状パルスを示し、順次的な複数の単ステップ状パルスの内、(n−1)番目の単ステップ状パルスP(n−1)とn番目の単ステップ状パルスP(n)とを示している。図3Bは、図3Aに示す単ステップ状パルスを第1フィルタ部22で変換した台形状パルスを示す。台形状パルスのベースラインは、温度が一定の場合、ほぼ一定である。第1フィルタ部22は、フィルタ処理により、単ステップ状パルスを台形状パルスへ整形すると共に、ノイズを除去する。台形状パルスのピーク値の高さを台形状パルスの波高とする。台形状パルスの波高は、単ステップ状パルスの波高に応じた値になる。即ち、台形状パルスの波高は放射線のエネルギーに対応する。また、台形状パルスの時間幅は、第1フィルタ部22が実行するフィルタ処理の特性によって予め定められた値となる。
図3Cは、図3Aに示す単ステップ状パルスを第2フィルタ部23で変換した台形状パルスを示す。第2フィルタ部23でも、フィルタ処理により、単ステップ状パルスを台形状パルスへ整形すると共に、ノイズを除去する。第2フィルタ部23は、単ステップ状パルスを、第1フィルタ部22で変換した場合よりも時間幅が短い台形状パルスへ変換するように、フィルタ処理の特性が調整されている。このフィルタ処理の特性のため、第2フィルタ部23が単ステップ状パルスを変換した台形状パルスは、第1フィルタ部22が単ステップ状パルスを変換した台形状パルスよりもS/N比が悪化している。
図3Dは、図3Aに示す単ステップ状パルスを高速フィルタ部24で変換した高速パルスを示す。高速フィルタ部24は、第1フィルタ部22及び第2フィルタ部23と同様のフィルタ処理を行うものの、変換後の時間幅が極端に短くなるようにフィルタ処理を行う。このため、高速フィルタ部24が単ステップ状パルスを変換したパルスは瞬間的な高速パルスとなる。高速パルスの時間幅は、第1フィルタ部22で得られる台形状パルスの時間幅の10分の1以下となっている。
図4は、プロセスタイムを説明する説明図である。図中の横軸は時間を示し、縦軸は信号値を示している。実線で示した台形状パルスと破線で示した台形状パルスの時間幅は同一である。図中に実線で示す台形状パルスの波高を正確に求めるためには、台形状パルスが立ち上がる前に一つ前のパルスの立下りが終了していることが必要であり、また、台形状パルスのピーク値を取得するまでに次のパルスが立ち上がらないことが必要である。従って、一つの台形状パルスの波高を正確に求めるためには、図4に示す如きプロセスタイムの間に他のパルスが含まれていないことが必要である。台形状パルスの立ち上がり時間と立下り時間とが等しいとすると、プロセスタイムの長さは、台形状パルスの立ち上がり時間の三倍に、台形状パルスのピーク値が持続する時間の二倍を加算した時間である。
プロセスタイムは、台形状パルスの時間幅に応じた値であるので、第1フィルタ部22及び第2フィルタ部23が実行するフィルタ処理の特性によって予め定められた値となる。第1フィルタ部22により単ステップ状パルスを変換した台形状パルスの波高を検出する際のプロセスタイムを第1のプロセスタイムとし、第2フィルタ部23により単ステップ状パルスを変換した台形状パルスの波高を検出する際のプロセスタイムを第2のプロセスタイムとする。第2のプロセスタイムは、第1のプロセスタイムよりも短く、例えば2分の1以下になっている。プロセスタイムは放射線検出の不感時間に相当し、プロセスタイムが短いほど放射線の検出効率が向上する。但し、プロセスタイムを短くするほど、台形状パルスの時間幅は短く、前述したように、S/N比は悪化する。即ち、第1フィルタ部22が単ステップ状パルスを変換した台形状パルスは、プロセスタイムが長い一方でS/N比が優れており、第2フィルタ部23が単ステップ状パルスを変換した台形状パルスは、プロセスタイムが短い一方でS/N比が劣っている。
第1フィルタ部22、第2フィルタ部23及び高速フィルタ部24は、波高を検出すべき台形状パルスを選択する選択部25に接続されている。選択部25は、第1フィルタ部22が単ステップ状パルスを変換した台形状パルスと、第2フィルタ部23が変換した台形状パルスとの内で、波高を検出すべき台形状パルスを選択する処理を行う。選択部25には、台形状パルスの波高を検出する波高検出部26が接続されている。選択部25は、選択した台形状パルスを波高検出部26へ入力し、波高検出部26は、ピークホールドにより、入力された台形状パルスの波高を検出する。波高検出部26には、MCA(マルチチャネルアナライザ)27が接続されている。波高検出部26は、検出した台形状パルスの波高をMCA27へ入力し、MCA27は、波高別に、台形状パルスの波高が入力された回数をカウントする。パルス波高検出装置2は、台形状パルスの波高とMCA27がカウントしたカウント数との関係を示すデータを出力する。
分析部3は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータで構成されている。分析部3は、パルス波高検出装置2が出力したデータを入力され、データが示す台形状パルスの波高とカウント数との関係から、台形状パルスの波高が対応する放射線のエネルギーとカウント数とを対応づけた放射線のスペクトルを生成する処理を行う。分析部3は、更に、生成した放射線のスペクトルに基づいて、放射線源の元素分析を行い、試料の定性・定量分析を行う等の更なる処理を行ってもよい。
次に、パルス波高検出装置2の動作を説明する。図5は、パルス波高検出装置2が実行する処理の手順を示すフローチャートである。放射線検出素子11に放射線が入射した場合に、放射線検出器1は、放射線のエネルギーに応じた単ステップ状パルスを出力し、パルス波高検出装置2には、単ステップ状パルスが入力される(S1)。ここで、入力された単ステップ状パルスを、パルス波高検出装置2へ入力された信号に含まれるn番目の単ステップ状パルスP(n)とする。A/D変換部21は、入力された単ステップ状パルスP(n)をA/D変換する(S2)。A/D変換部21は、A/D変換した単ステップ状パルスP(n)を第1フィルタ部22、第2フィルタ部23及び高速フィルタ部24へ入力する。第1フィルタ部22、第2フィルタ部23及び高速フィルタ部24は、夫々に、単ステップ状パルスP(n)に対してフィルタ処理を行う(S3)。フィルタ処理により、第1フィルタ部22及び第2フィルタ部23は単ステップ状パルスP(n)を台形状パルスへ変換する。第1フィルタ部22が単ステップ状パルスP(n)を変換した台形状パルスを第1の台形状パルスとし、第2フィルタ部23が単ステップ状パルスP(n)を変換した台形状パルスを第2の台形状パルスとする。第2の台形状パルスは、第1の台形状パルスよりも時間幅が短い。また、高速フィルタ部24は、単ステップ状パルスP(n)を高速パルスへ変換する。第1フィルタ部22は第1の台形状パルスを選択部25へ入力し、第2フィルタ部23は第2の台形状パルスを選択部25へ入力し、高速フィルタ部24は高速パルスを選択部25へ入力する。
選択部25は、入力された単ステップ状パルスP(n)の一つ前の単ステップ状パルスP(n−1)から、単ステップ状パルスP(n)までの時間間隔を計測する(S4)。選択部25は、高速フィルタ部24から入力された高速パルスに基づいて、時間間隔を計測する。例えば、選択部25は、高速フィルタ部24から高速パルスが入力された時刻を記憶しておき、次の高速パルスが高速フィルタ部24から入力された場合に、時刻の差を計算することにより、時間間隔を計測する。また例えば、選択部25は、経過時間を計測し、高速フィルタ部24から高速パルスが入力される都度経過時間をリセットし、リセットまでに経過した経過時間を時間間隔とする。選択部25でのS4の処理は、計測手段に対応する。
選択部25は、次に、計測した時間間隔が第1のプロセスタイムを超過しているか否かを判定する(S5)。選択部25は、第1のプロセスタイムを予め記憶している。第1のプロセスタイムは、第1閾値に対応する。計測した時間間隔が第1のプロセスタイムを超過している場合は(S5:YES)、選択部25は、第1フィルタ部22から入力された第1の台形状パルス、及び第2フィルタ部23から入力された第2の台形状パルスの内、第1の台形状パルスを選択し、選択した台形状パルスを波高検出部26へ入力する(S6)。図3は、単ステップ状パルスP(n−1)から単ステップ状パルスP(n)までの時間間隔が第1のプロセスタイムを超過している場合を示している。この場合は、図3Bに示すように、単ステップ状パルスP(n)を第1フィルタ部22が変換した台形状パルスは、単ステップ状パルスP(n−1)を第1フィルタ部22が変換した台形状パルスに重なることが無い。このため、第1フィルタ部22が変換した第1の台形状パルスの波高を検出することが可能である。
S5で、計測した時間間隔が第1のプロセスタイム以下である場合は(S5:NO)、選択部25は、計測した時間間隔が第2のプロセスタイム以下であるか否かを判定する(S7)。選択部25は、第2のプロセスタイムを予め記憶している。第2のプロセスタイムは、第2閾値に対応する。計測した時間間隔が第2のプロセスタイム以下である場合は(S7:YES)、選択部25は、処理を終了する。この場合は、選択部25は、波高検出部26へは台形状パルスを入力しない。このため、波高検出部26での台形状パルスの波高の検出は休止される。単ステップ状パルスP(n−1)から単ステップ状パルスP(n)までの時間間隔が第2のプロセスタイム以下である場合は、第2の台形状パルスは、単ステップ状パルスP(n−1)を第2フィルタ部23が変換した台形状パルスに重なっている。第1及び第2の台形状パルスの内、時間幅が短い方の第2の台形状パルスでも一つ前の台形状パルスに重なるので、台形状パルスの波高を検出することができない。
S7で、計測した時間間隔が第2のプロセスタイムを超過している場合は(S7:NO)、選択部25は、単ステップ状パルスP(n)と単ステップ状パルスP(n−1)との波高を比較し、単ステップ状パルスP(n)の波高が単ステップ状パルスP(n−1)の波高を超過しているか否かを判定する(S8)。例えば、選択部25は、高速フィルタ部24からの高速パルスの波高を記憶しておき、単ステップ状パルスP(n−1)に対応して記憶してある高速パルスの波高と、高速フィルタ部24から入力された高速パルスの波高とを比較することによって、単ステップ状パルスの波高を比較する。また例えば、選択部25は、第2フィルタ部23からの台形状パルスのピーク値を記憶しておき、単ステップ状パルスP(n−1)に対応して記憶してあるピーク値と、第2フィルタ部23から入力された台形状パルスのピーク値とを比較することによって、単ステップ状パルスの波高を比較する。単ステップ状パルスP(n)の波高が単ステップ状パルスP(n−1)の波高を超過している場合は(S8:YES)、選択部25は、処理をS6へ進め、第1フィルタ部22から入力された台形状パルスを選択して波高検出部26へ入力する。
図6は、単ステップ状パルスP(n)の波高が単ステップ状パルスP(n−1)の波高を超過している場合の単ステップ状パルス及び台形状パルスの例を示す特性図である。図中の横軸は時間を示し、縦軸は信号値を示している。図6Aは、単ステップ状パルスを示し、図6Bは、単ステップ状パルスを第1フィルタ部22が変換した台形状パルスを示している。図6Bに示すように、単ステップ状パルスP(n−1)から単ステップ状パルスP(n)までの時間間隔が第1のプロセスタイム以下である場合は、第1の台形状パルスは、単ステップ状パルスP(n−1)を第1フィルタ部22が変換した台形状パルスに重なっている。また、単ステップ状パルスP(n)の波高が単ステップ状パルスP(n−1)の波高を超過しているので、第1の台形状パルスの波高は、単ステップ状パルスP(n−1)を変換した台形状パルスの波高を超過している。この場合は、二つの台形状パルスが重なっていると雖も、重なったパルスには、第1の台形状パルスのピークが現れている。このため、ピークホールドにより、第1の台形状パルスの波高を求めることが可能である。従って、単ステップ状パルスP(n)の波高が単ステップ状パルスP(n−1)の波高を超過している場合は、第1の台形状パルスを選択する。第1の台形状パルスを選択することにより、第2の台形状パルスを選択した場合に比べて、S/N比が良好になる。
S8で、単ステップ状パルスP(n)の波高が単ステップ状パルスP(n−1)の波高以下である場合は(S8:NO)、選択部25は、第1及び第2の台形状パルスの内、第2の台形状パルスを選択し、選択した台形状パルスを波高検出部26へ入力する(S9)。
図7は、単ステップ状パルスP(n)の波高が単ステップ状パルスP(n−1)と等しい場合の単ステップ状パルス及び台形状パルスの例を示す特性図である。図7Aは、単ステップ状パルスを示し、図7Bは、単ステップ状パルスを第1フィルタ部22が変換した台形状パルスを示し、図7Cは、単ステップ状パルスを第2フィルタ部23が変換した台形状パルスを示している。図8は、単ステップ状パルスP(n)の波高が単ステップ状パルスP(n−1)の波高未満である場合の単ステップ状パルス及び台形状パルスの例を示す特性図である。図8Aは、単ステップ状パルスを示し、図8Bは、単ステップ状パルスを第1フィルタ部22が変換した台形状パルスを示し、図8Cは、単ステップ状パルスを第2フィルタ部23が変換した台形状パルスを示している。図7B及び図8Bに示すように、第1の台形状パルスの波高は、単ステップ状パルスP(n−1)を変換した台形状パルスの波高以下であり、二つの台形状パルスが重なったパルスには、第1の台形状パルスのピークは現れていない。このため、単ステップ状パルスP(n)を変換した台形状パルスの波高をピークホールドにより求めることはできない。一方、図7C及び図8Cに示すように、単ステップ状パルスP(n−1)から単ステップ状パルスP(n)までの時間間隔が第2のプロセスタイムを超過している場合は、第2の台形状パルスは、単ステップ状パルスP(n−1)を第2フィルタ部23が変換した台形状パルスに重なっていない。従って、第2の台形状パルスを選択することで、台形状パルスの波高を検出することが可能になる。
S6又はS9が終了した後は、波高検出部26は、入力された台形状パルスの波高を検出する(S10)。S10では、波高検出部26は、台形状パルスのピーク値をホールドするピークホールドの処理を実行することにより、台形状パルスの波高を検出し、検出した波高をMCA27へ入力する。MCA27は、波高検出部26から入力された波高別に、台形状パルスの波高が入力された回数をカウントする(S11)。パルス波高検出装置2は、以上で処理を終了する。放射線検出器1から単ステップ状パルスが入力される都度、パルス波高検出装置2は、S1〜S11の処理を実行する。
パルス波高検出装置2は、台形状パルスの波高とMCA27がカウントしたカウント数との関係を示すデータを出力する。例えば、パルス波高検出装置2は、S1〜S11の処理を所定回数繰り返した場合、処理開始から所定時間が経過した場合、又は図示しない受付部でデータ出力の要求を受けつけた場合に、データを出力する。なお、パルス波高検出装置2は、S1〜S11の処理を実行する都度、データを出力してもよい。パルス波高検出装置2が出力したデータは分析部3へ入力され、分析部3は、入力されたデータに基づいて、放射線のスペクトルを生成する等の放射線のエネルギーを分析する処理を行う。
以上詳述した如く、本実施の形態においては、パルス波高検出装置2は、単ステップ状パルスP(n)を第1フィルタ部22で変換した第1の台形状パルスが単ステップ状パルスP(n−1)を変換した台形状パルスに重なる場合でも、第1の台形状パルスの波高の検出が可能なときに、第1の台形状パルスの波高を検出する。また、パルス波高検出装置2は、第1の台形状パルスの波高の検出ができないときに、プロセスタイムがより短くなる第2フィルタ部23で単ステップ状パルスP(n)を変換した第2の台形状パルスの波高を検出する。第2フィルタ部23を利用することにより、プロセスタイムが短くなるので、放射線検出装置及び放射線分析装置では、放射線の不感時間が短くなり、放射線の検出効率が向上する。また、第2フィルタ部23を利用した場合よりもS/N比が良好になるように第1フィルタ部22を可能な限り利用し、第2フィルタ部23の利用を必要最小限に抑えることにより、放射線検出装置及び放射線分析装置では、放射線エネルギーの検出精度の悪化を可及的に防止することができる。従って、本実施の形態においては、放射線の検出効率と放射線エネルギーの検出精度とを両立させることが可能となる。
なお、図1に示した放射線分析装置の機能構成は、最小限の機能構成であり、パルス波高検出装置2は、必要に応じて増幅部等のその他の機能部を更に備えた形態であってもよい。また、本実施の形態においては、A/D変換部21及びMCA27をパルス波高検出装置2の内部に備えた形態を示したが、本発明は、パルス波高検出装置2の外部にA/D変換部21又はMCA27を備えた形態であってもよい。
1 放射線検出器
11 放射線検出素子
12 プリアンプ
2 パルス波高検出装置
22 第1フィルタ部(第1変換部)
23 第2フィルタ部(第2変換部)
24 高速フィルタ部
25 選択部
26 波高検出部
3 分析部

Claims (7)

  1. 順次的な単ステップ状パルスが多段の階段状に連なった信号が入力され、夫々の単ステップ状パルスを台形状パルスへ変換し、変換した台形状パルスの波高を検出するパルス波高検出装置において、
    単ステップ状パルスを台形状パルスへ変換する第1変換部と、
    単ステップ状パルスを、該第1変換部が変換する台形状パルスよりも時間幅が短い台形状パルスへ変換する第2変換部と、
    一の単ステップ状パルスP(n)の一つ前の単ステップ状パルスP(n−1)から前記単ステップ状パルスP(n)までの時間間隔を計測する計測手段と、
    該計測手段が計測した時間間隔が所定の第1閾値を超過している場合に、前記単ステップ状パルスP(n)を前記第1変換部が変換した台形状パルスの波高を検出する手段と、
    前記時間間隔が前記第1閾値以下であり、前記第1閾値よりも短い所定の第2閾値を超過している場合に、前記単ステップ状パルスP(n)及び前記単ステップ状パルスP(n−1)の波高を比較する手段と、
    前記単ステップ状パルスP(n)の波高が前記単ステップ状パルスP(n−1)の波高を超過している場合に、前記単ステップ状パルスP(n)を前記第1変換部が変換した台形状パルスの波高を検出する手段と、
    前記単ステップ状パルスP(n)の波高が前記単ステップ状パルスP(n−1)の波高以下である場合に、前記単ステップ状パルスP(n)を前記第2変換部が変換した台形状パルスの波高を検出する手段と
    を備えることを特徴とするパルス波高検出装置。
  2. 前記計測手段が計測した時間間隔が前記第2閾値以下である場合に、台形状パルスの波高の検出を休止する手段を更に備えること
    を特徴とする請求項1に記載のパルス波高検出装置。
  3. 前記第1閾値は、前記第1変換部が二つの単ステップ状パルスを変換した二つの台形状パルスが重ならないために必要な前記二つの単ステップ状パルスの時間間隔であること
    を特徴とする請求項1又は2に記載のパルス波高検出装置。
  4. 前記第2閾値は、前記第2変換部が二つの単ステップ状パルスを変換した二つの台形状パルスが重ならないために必要な前記二つの単ステップ状パルスの時間間隔であること
    を特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載のパルス波高検出装置。
  5. 放射線検出時に放射線のエネルギーに応じた単ステップ状パルスを出力する放射線検出器と、
    該放射線検出器が出力した単ステップ状パルスが順次的に連なった信号を入力され、夫々の単ステップ状パルスを変換した台形状パルスの波高を検出する請求項1乃至4の何れか一つに記載のパルス波高検出装置と
    を備えることを特徴とする放射線検出装置。
  6. 放射線のエネルギーに対応するパルスの波高を検出する請求項5に記載の放射線検出装置と、
    該放射線検出装置が検出したパルスの波高に基づいて、放射線のエネルギーを分析する分析部と
    を備えることを特徴とする放射線分析装置。
  7. 順次的な単ステップ状パルスが多段の階段状に連なった信号を受け付け、夫々の単ステップ状パルスを台形状パルスへ変換し、変換した台形状パルスの波高を検出する方法において、
    単ステップ状パルスを台形状パルスへ変換する第1変換部と、
    単ステップ状パルスを、該第1変換部が変換する台形状パルスよりも時間幅が短い台形状パルスへ変換する第2変換部とを用い、
    一の単ステップ状パルスP(n)の一つ前の単ステップ状パルスP(n−1)から前記単ステップ状パルスP(n)までの時間間隔を計測し、
    計測した時間間隔が所定の第1閾値を超過している場合に、前記単ステップ状パルスP(n)を前記第1変換部で変換した台形状パルスの波高を検出し、
    前記時間間隔が前記第1閾値以下であり、前記第1閾値よりも短い所定の第2閾値を超過している場合に、前記単ステップ状パルスP(n)及び前記単ステップ状パルスP(n−1)の波高を比較し、
    前記単ステップ状パルスP(n)の波高が前記単ステップ状パルスP(n−1)の波高を超過している場合に、前記単ステップ状パルスP(n)を前記第1変換部で変換した台形状パルスの波高を検出し、
    前記単ステップ状パルスP(n)の波高が前記単ステップ状パルスP(n−1)の波高以下である場合に、前記単ステップ状パルスP(n)を前記第2変換部で変換した台形状パルスの波高を検出すること
    を特徴とするパルス波高検出方法。
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