JP2014218577A - 防汚性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】親水性官能基を有する特定の熱可塑性ポリウレタン樹脂を用いることによって、防汚性、耐加水分解性および外観に優れた熱可塑性樹脂組成物およびその成形品を提供する。
【解決手段】防汚性、耐加水分解性および外観に優れた熱可塑性樹脂組成物は、数平均分子量=750〜3000のポリエーテルジオールとポリカーボネートジオールとポリ(ヘキサメチレンアジペート)ジオールの少なくとも一種を含む高分子ジオール、数平均分子量=100〜3000の親水性官能基を有するジオール、数平均分子量=60〜300のジオールである鎖延長剤および有機ジイソシアネートを含み、親水性官能基の濃度を最適化した熱可塑性ポリウレタン樹脂によって得られる。
【選択図】なし
【解決手段】防汚性、耐加水分解性および外観に優れた熱可塑性樹脂組成物は、数平均分子量=750〜3000のポリエーテルジオールとポリカーボネートジオールとポリ(ヘキサメチレンアジペート)ジオールの少なくとも一種を含む高分子ジオール、数平均分子量=100〜3000の親水性官能基を有するジオール、数平均分子量=60〜300のジオールである鎖延長剤および有機ジイソシアネートを含み、親水性官能基の濃度を最適化した熱可塑性ポリウレタン樹脂によって得られる。
【選択図】なし
Description
本発明は、「ジオール成分と有機ジイソシアネート成分とから構成される熱可塑性ポリウレタン樹脂」(以下、「TPU」と略称する)のジオール成分の一部として親水性官能基を有するジオール成分を用いることによって防汚性(または耐汚染性)に優れた熱可塑性樹脂組成物およびそれによって得られる防汚性に優れた熱可塑性成形品に関する。
熱可塑性樹脂を用いた成形品の防汚性に関しては、例えば特許文献1(特開2001−89721号公報)では、従来技術として、一般的な屋外用粘着剤付きフィルムまたはシート等の接着シートの表面の耐汚染性を向上させるために、通常、接着シートの表面に保護層を配置し、その保護層が一般的にアクリル樹脂やフッ素系共重合体を含む樹脂層であり、通常、これらの樹脂と、架橋剤または硬化剤とを含有する塗料から形成されているという技術が開示されている。そして、通常、アクリル樹脂およびフッ素系共重合体は、架橋(または硬化)可能な様に変性されるということも開示されている。
それに対して、特許文献1の技術は、その保護層である熱可塑性樹脂層の長期間にわたる耐汚染性を維持するために、(a)フッ素系共重合体と(b)非フッ素系共重合体と組み合わせる(c)親水性付与剤として、分解性の保護基(フッ化アルキル基等の含フッ素置換基など)を分子内に有し、熱または光を受けて反応し、親水性官能基(カルボン酸基、スルホン酸基、アミノ基等)を有する化学種を発生させる化合物の技術である。
特許文献1の技術は、保護層が熱可塑性樹脂のため、この親水性付与剤が保護層の内部からその表面に向けて移行(ブリード)することが極めて容易になり、親水性付与剤層を安定に形成することができるとされていて、そのことによって保護層表面の耐汚染性を長期にわたって(たとえば、4ヶ月以上)維持することが極めて容易となることが示されている。
それに対して、特許文献1の技術は、その保護層である熱可塑性樹脂層の長期間にわたる耐汚染性を維持するために、(a)フッ素系共重合体と(b)非フッ素系共重合体と組み合わせる(c)親水性付与剤として、分解性の保護基(フッ化アルキル基等の含フッ素置換基など)を分子内に有し、熱または光を受けて反応し、親水性官能基(カルボン酸基、スルホン酸基、アミノ基等)を有する化学種を発生させる化合物の技術である。
特許文献1の技術は、保護層が熱可塑性樹脂のため、この親水性付与剤が保護層の内部からその表面に向けて移行(ブリード)することが極めて容易になり、親水性付与剤層を安定に形成することができるとされていて、そのことによって保護層表面の耐汚染性を長期にわたって(たとえば、4ヶ月以上)維持することが極めて容易となることが示されている。
しかし、特許文献1の技術は、必須成分として、フッ素系共重合体、非フッ素系共重合体および親水性付与剤とから構成される保護層が熱可塑性樹脂層であるため、その層が実質的に架橋および硬化されておらず、具体的には特許文献1が開示するように、(i)実質的に架橋剤および硬化剤を含まないか、または、(ii)たとえ架橋剤または硬化剤を含んでいても、フッ素系共重合体および非フッ素系重合体の分子内に、その架橋剤または硬化剤と反応し得る官能基(たとえば、水酸基等の活性水素)を含まない技術である。
すなわち、このことは、親水性付与剤が、特許文献1で示すイソシアネート系硬化剤のような架橋剤または硬化剤によって、フッ素系共重合体と非フッ素系共重合体と反応により結合していないことを表しており、親水性付与剤が単なる添加剤として配合されている以上、その脱落、剥離だけでなく、表面へのブリードによる外観や表面性等の不良が起こるおそれが潜在的にあった。そのため、保護層表面の耐汚染性を必ずしも長期にわたって安定的に維持するとは言えなかった。
すなわち、このことは、親水性付与剤が、特許文献1で示すイソシアネート系硬化剤のような架橋剤または硬化剤によって、フッ素系共重合体と非フッ素系共重合体と反応により結合していないことを表しており、親水性付与剤が単なる添加剤として配合されている以上、その脱落、剥離だけでなく、表面へのブリードによる外観や表面性等の不良が起こるおそれが潜在的にあった。そのため、保護層表面の耐汚染性を必ずしも長期にわたって安定的に維持するとは言えなかった。
本発明は、熱可塑性樹脂、とりわけ熱可塑性ポリウレタン樹脂(以後、TPUという)やそれを用いた成形品において、防汚性付与目的で親水性発現成分を用いるものであり、その発現の持続性に関して前記の問題点を解決するものである。
すなわち、本発明は、長期にわたる防汚性、耐加水分解性および外観や表面性等に優れた熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物およびそれを用いた成形品を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、長期にわたる防汚性、耐加水分解性および外観や表面性等に優れた熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物およびそれを用いた成形品を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究した結果、前記の問題点が解決できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、高分子ジオール(A−1)、親水性官能基を有するジオール(A−2)、鎖延長剤(B)およびイソシアネート(C)とから得られる熱可塑性樹脂組成物であって、前記高分子ジオール(A−1)が数平均分子量=750〜3000のポリエーテルジオールとポリカーボネートジオールとポリ(ヘキサメチレンアジペート)ジオールの少なくとも一種を含み、前記親水性官能基を有するジオール(A−2)が数平均分子量=100〜3000で、親水性官能基として、カルボン酸基、スルホン酸基またはそれらの金属塩の少なくとも一種を含み、前記鎖延長剤(B)が数平均分子量=60〜300の活性水素化合物で、イソシアネート(C)が有機ジイソシアネートであることを特徴とし、さらに当該親水性官能基の合計の濃度が0.03〜1.0mmol/gであることを特徴とする防汚性熱可塑性樹脂組成物である。
また、本発明は、前記親水性官能基を有するジオール(A−2)のうちスルホン酸基またはそれらの金属塩を有する少なくとも一種が、スルホン酸ナトリウム塩基を含有するジカルボン酸またはそのエステルと、アジピン酸と、1,6−ヘキサンジオールとを反応させて得られる、ポリエステルジオールである段落0007に記載の防汚性熱可塑性樹脂組成物である。
さらに本発明は、段落0007または段落0008記載の防汚性熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる防汚性に優れた熱可塑性成形品である。
本発明は成形品表面が長期にわたって親水性を発現して防汚性を維持するために、TPUを構成するジオール成分の一部として、親水性官能基を有し、かつ、イソシアネート基と反応する活性水素を含有するジオールを用いる技術である。それによって、安定かつ継続的に親水性が発現し防汚性が維持できるだけでなく、親水性付与剤のブリード等による成形品の外観や表面性等の不良が起こらない。そのため、長期間にわたり防汚性を発現でき、外観や表面性等の良好な成形品が得られる。
さらに、本発明によって得られる防汚性樹脂組成物では、親水性官能基濃度を特定範囲に設定することにより、界面活性剤的に疎水性成分と親水性成分のバランスをとることによって、耐加水分解性と防汚性を両立させるものである。
一方、本発明で得られる樹脂組成物は、特定のジオールを用いることによって耐加水分解性に優れることから、耐久性にも優れている。
本発明の防汚性樹脂組成物は、ジオール成分と有機ジイソシアネート成分との組み合わせからなるTPUであって、それを構成するジオール成分は、数平均分子量750〜3000の高分子ジオール(A−1)、親水性官能基を有する数平均分子量=100〜3000のジオール(A−2)および数平均分子量=60〜300の鎖延長剤(B)を含む。
高分子ジオール(A−1)は、両末端にイソシアネート基と反応する水酸基を有するジオールであって、数平均分子量が750〜3000、好ましくは800〜2000、より好ましくは1000〜2000である。
高分子ジオール(A−1)の数平均分子量が750未満であると、TPUのウレタン基濃度が相対的に高くなり過ぎるために未溶融物が発生したり、TPU溶融物が高粘度化して加工時に成形不良を起こし、外観不良になるおそれがある。また、硬度、100%モジュラス、引張強さ、引裂強さは高くなるものの、伸びが低下し、熱可塑性樹脂本来の特性である柔軟性や可とう性を生かすことができない。
一方、高分子ジオール(A−1)の数平均分子量が3000を超えると、ウレタン基濃度が相対的に低くなり過ぎるために、所期の物性が得られず、本発明の防汚性樹脂組成物の成形品の耐久性(耐加水分解性、硬度・物性保持性等)が不十分となる。
一方、高分子ジオール(A−1)の数平均分子量が3000を超えると、ウレタン基濃度が相対的に低くなり過ぎるために、所期の物性が得られず、本発明の防汚性樹脂組成物の成形品の耐久性(耐加水分解性、硬度・物性保持性等)が不十分となる。
なお、高分子ジオール(A−1)の数平均分子量は、JIS K 7252−3(プラスチック―サイズ排除クロマトグラフィーによる高分子の平均分子量及び分子量分布の求め方―第3部:常温付近での方法)に準拠して測定することができる。
このような高分子ジオール(A−1)としては、親水性官能基を有するジオール(A−2)による親水性発現により熱可塑性樹脂が加水分解するおそれを排除するために、耐加水分解性に優れた、ポリエーテルジオールとポリカーボネートジオール、さらにはポリ(ヘキサメチレンアジペート)ジオールの少なくとも一種を含有する。
そして、これらのポリエーテルジオールとポリカーボネートジオールとポリ(ヘキサメチレンアジペート)ジオールは、高分子ジオール(A−1)の好ましくは質量基準で90%以上、より好ましくは100%を占めることが好ましい。
そして、これらのポリエーテルジオールとポリカーボネートジオールとポリ(ヘキサメチレンアジペート)ジオールは、高分子ジオール(A−1)の好ましくは質量基準で90%以上、より好ましくは100%を占めることが好ましい。
ポリ(ヘキサメチレンアジペート)ジオールは、一般的にポリエステルジオールとして使用されている中で相対的にエステル基濃度が低いことから耐加水分解性が優れており、本発明には好ましい。
ポリエーテルジオール類としては、鎖延長剤として使用し得る、後述する低分子ジオール類、低分子アミノアルコール類、二官能体タイプの低分子グリコールエーテル類等の単独又は2種以上の混合物を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、アミレンオキサイド等のアルキレンオキサイド、メチルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のアリールグリシジルエーテル、テトラヒドロフラン等の環状エーテルモノマー単品又は混合物を公知の方法により付加重合することで得られるものが挙げられる。好ましくは、耐加水分解性に優れている点から、水酸基を両末端に持ったポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられる。
ポリカーボネートジオール類としては、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等のジオ−ル類と、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジエチレンカーボネート等との脱アルコール反応、脱フェノール反応等で得られるものが挙げられる。
ポリ(ヘキサメチレンアジペート)ジオールは、前述のとおりアジピン酸と1,6−ヘキサンジオールとを反応させて得られるポリエステルジオールである。
また、本発明の趣旨を損なわない範囲であれば、ポリ(エチレンアジペート)ジオール、ポリ(プロピレンアジペート)ジオール、ポリ(ブチレンアジペート)ジオールなどのポリエステルジオールを併用しても構わない。
また、本発明の趣旨を損なわない範囲であれば、ポリ(エチレンアジペート)ジオール、ポリ(プロピレンアジペート)ジオール、ポリ(ブチレンアジペート)ジオールなどのポリエステルジオールを併用しても構わない。
本発明の親水性官能基を有するジオール(A−2)は、イソシアネート基と反応する水酸基を両末端に有する活性水素含有化合物であり、そのため特許文献1の技術のように、親水性を付与する添加剤がブリードして成形品の外観や表面性等の不良を起こすことがない。また、本発明の親水性官能基を有するジオール(A−2)は、以下に説明するように、数平均分子量が100〜3000、好ましくは100〜2000である。
親水性官能基を有するジオール(A−2)の数平均分子量が100未満であると、TPUのウレタン基濃度が相対的に高くなり過ぎるために未溶融物が発生したり、TPU溶融物が高粘度化して加工時に成形不良を起こし、外観不良になるおそれがある。また、硬度、100%モジュラス、引張強さ、引裂強さは高くなるものの、伸びが低下し、熱可塑性樹脂本来の特性である柔軟性や可とう性を生かすことができない。
一方、親水性官能基を有するジオール(A−2)の数平均分子量が3000を超えると、ウレタン基濃度が相対的に低くなり過ぎるために、所期の物性が得られず、さらにエステル基濃度が高くなるため耐加水分解性が悪くなり、本発明の防汚性樹脂組成物の成形品の耐久性(耐加水分解性、硬度・物性保持性等)が低下する。
一方、親水性官能基を有するジオール(A−2)の数平均分子量が3000を超えると、ウレタン基濃度が相対的に低くなり過ぎるために、所期の物性が得られず、さらにエステル基濃度が高くなるため耐加水分解性が悪くなり、本発明の防汚性樹脂組成物の成形品の耐久性(耐加水分解性、硬度・物性保持性等)が低下する。
本発明の親水性官能基を有するジオール(A−2)としては、具体的には、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(DMPA、分子量=134)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(DMBA、分子量=148)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸ナトリウム(分子量=235)、スルホン酸ナトリウム塩基(SO3Na)含有ジオールなどが挙げられる。
特に、前記スルホン酸ナトリウム塩基含有ジオールは、スルホン酸ナトリウム塩基を有するポリエステルジオールが好ましく、スルホン酸ナトリウム塩基を有するジカルボン酸またはそのエステルと、ジカルボン酸と、短鎖ジオールとを反応させて得られるポリエステルジオールである。
特に、前記スルホン酸ナトリウム塩基含有ジオールは、スルホン酸ナトリウム塩基を有するポリエステルジオールが好ましく、スルホン酸ナトリウム塩基を有するジカルボン酸またはそのエステルと、ジカルボン酸と、短鎖ジオールとを反応させて得られるポリエステルジオールである。
スルホン酸ナトリウム塩基を有するジカルボン酸としては、スルホン酸ナトリウム塩基で置換されたイソフタル酸(スルホイソフタル酸ナトリウム)、スルホン酸ナトリウム塩基で置換されたフタル酸(スルホフタル酸ナトリウム)、スルホン酸ナトリウム塩基で置換されたコハク酸(スルホコハク酸ナトリウム)などを挙げることができる。
また、スルホン酸ナトリウム塩基を有するジカルボン酸の「エステル」としては、これらのジメチルエステル、ジエチルエステルなどを挙げることができる。
また、スルホン酸ナトリウム塩基を有するジカルボン酸の「エステル」としては、これらのジメチルエステル、ジエチルエステルなどを挙げることができる。
また、スルホン酸ナトリウム塩基を有するポリエステルジオールの合成に供されるジカルボン酸としてはアジピン酸、短鎖ジオールとしては1,6−ヘキサンジオールが好ましい。それは、防汚性樹脂組成物及びその成形品の耐加水分解性を損なわない面から、ポリエステルジオール用として一般的に使用されている短鎖ジオールの中では相対的にエステル基濃度を低くできる1,6−ヘキサンジオールが好ましく、それと組み合わせるジカルボン酸としてはアジピン酸が一般的であるからである。
このポリエステルジオールは、具体的には、イソフタル酸ジメチルエステル(ジメチル−5−スルホイソフタル酸ナトリウムなど)と、1,6−ヘキサンジオールと、アジピン酸とを反応させることにより調製することができる。
本発明で使用される親水性官能基を有するジオール(A−2)は、TPUの構成成分として、界面活性剤的に疎水性成分と親水性成分のバランスをとる目的で使用することが親水性発現のために好ましい。すなわち、TPUを構成する成分の全体量に対して当該親水性官能基の濃度が0.03〜1.0mmol/gであることが好ましく、更に好ましくは0.03〜0.8mmol/gである。
当該親水性官能基の濃度が0.03mmol/gより小さいと、防汚性、親水性が不足して本発明の効果が得られない。また、当該親水性官能基の濃度が1.0mmol/gより大きいと、親水性が強くなるためにTPUとしての耐加水分解性が低下するだけでなく、TPUが水膨潤して外観不良となり、目的とする成形品を得ることができない。
当該親水性官能基の濃度が0.03mmol/gより小さいと、防汚性、親水性が不足して本発明の効果が得られない。また、当該親水性官能基の濃度が1.0mmol/gより大きいと、親水性が強くなるためにTPUとしての耐加水分解性が低下するだけでなく、TPUが水膨潤して外観不良となり、目的とする成形品を得ることができない。
本発明の鎖延長剤(B)は、両末端にイソシアネート基と反応する水酸基を有する活性水素含有化合物であって、以下に説明するように、数平均分子量が60〜300、好ましくは60〜200である。
鎖延長剤の数平均分子量が60未満であると、TPUのウレタン基濃度が相対的に高くなり過ぎるために未溶融物が発生したり、TPU溶融物が高粘度化して加工時に成形不良を起こし、外観不良になるおそれがある。また、硬度、100%モジュラス、引張強さ、引裂強さは高くなるものの、伸びが低下し、熱可塑性樹脂本来の特性である柔軟性や可とう性を生かすことができにくくなる。
一方、鎖延長剤の数平均分子量が300を超えると、ウレタン基濃度が相対的に低くなり過ぎるために、所期の物性が得られず、本発明の防汚性樹脂組成物の成形品の耐久性(耐加水分解性、硬度・物性保持性等)が不十分になる。
一方、鎖延長剤の数平均分子量が300を超えると、ウレタン基濃度が相対的に低くなり過ぎるために、所期の物性が得られず、本発明の防汚性樹脂組成物の成形品の耐久性(耐加水分解性、硬度・物性保持性等)が不十分になる。
本発明の鎖延長剤(B)は、両末端にイソシアネート基と反応する水酸基を有するジオールが好ましく、例えば低分子ジオール類、低分子アミノアルコール類、二官能体タイプの低分子グリコールエーテル類を用いることができる。
低分子ジオール類としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等の単品又は2種以上の混合物が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂の特性を損なわない範囲であれば、1−デカノール、1−ドデカノール、ステアリルアルコール、1−ドコサノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等のような官能基数が1の活性水素化合物やグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビトール等のような官能基数が2より大きい活性水素化合物も併用することができる。
低分子アミノアルコール類としては、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン等の単品又は2種以上の混合物が挙げられる。また、熱可塑性樹脂の特性を損なわない範囲であれば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)イソプロパノールアミン等も使用することができる。
二官能体タイプの低分子グリコールエーテル類としては、例えば、1,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−ポリオキシエチレン−オキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ポリオキシプロピレン−オキシフェニル)プロパン、ジメチロールヘプタンエチレンオキサイド付加物、ジメチロールヘプタンプロピレンオキサイド付加物のようなグリコールエーテル等の単品又は2種以上の混合物が挙げられる。
本発明のジオール成分における「親水性官能基を有するジオール(A−2)のうち分子量が100〜500までの成分と鎖延長剤(B)の合計」と高分子ジオール(A−1)の配合割合は、高分子ジオール(A−1)の活性水素基モル数に対する「親水性官能基を有するジオール(A−2)のうちの分子量が100〜500までの成分と鎖延長剤(B)の合計の活性水素基モル数」の比([A−2のうちの分子量が100〜500までの成分とBの合計の活性水素基モル数]/[高分子ジオールの活性水素基モル数]=(R′値))が、TPUのハードセグメント量の指標であり、物性発現を左右するという観点から、R′値は、好ましくは0.1〜15、より好ましくは0.3〜12である。
本発明においては、TPUを構成するイソシアネート成分(C)として、熱可塑性樹脂本来の特性である柔軟性や可とう性を生かすために有機ジイソシアネートを用いる。
具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、3,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート等およびこれらの異性体からなる芳香族ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート、トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート等を用いることができる。また、これらの化合物と活性水素基含有化合物との反応によるイソシアネート基末端化合物、あるいは、これらの化合物の反応、例えばカルボジイミド化反応等によるポリイソシアネート変成体等も用いることができる。
これらのジイソシアネートのうち、硬度や物性、耐熱性等の向上の面からジフェニルメタンジイソシアネートが、耐候性、柔軟性の向上の面からは1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
これらのジイソシアネートのうち、硬度や物性、耐熱性等の向上の面からジフェニルメタンジイソシアネートが、耐候性、柔軟性の向上の面からは1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
本発明において、ジオール成分の全活性水素基モル数に対するジイソシアネート成分の全イソシアネート基モル数の比([全イソシアネート基モル数]/[全活性水素基モル数]=(R値))は、TPUの分子量や粘度を好ましい範囲に調整するという観点から、好ましくは0.7〜1.3、より好ましくは0.8〜1.2である。
本発明の防汚性樹脂組成物を構成するTPUは、公知のTPUの製造方法、例えば、ワンショット法、プレポリマー法、バッチ反応法、連続反応法、ニーダによる方法、押出機による方法等により得ることができる。特に、押出機による方法では、単軸〜多軸スクリュー型押出機を用いると生産性が高くなり好ましい。
そして、本発明の防汚性樹脂組成物は、前記製造方法によって、フレーク、ペレット、パウダー、グラニュール、ロッド、シート、ブロック等の形状として個々に得られる。
例えば、上記のようにして得られた粉末状またはブロック状のような固形物を粉砕してフレーク状のものを得たり、それを押出機に供給して、通常のTPUを押し出す温度(約150〜220℃)で溶融混練後、ストランドカットまたは水中カットによりペレット形状のものを得ることができる。
また、ニーダによる方法では、ニーダに高分子ジオール(A−1)、親水性官能基を有するジオール(A−2)および鎖延長剤(B)を仕込み、撹拌下、100℃に加温後、イソシアネート(C)を投入し、10〜120分反応させ、冷却することにより粉末状またはブロック状のTPUを製造することができる。なお、これらの方法においては、必要に応じ触媒を添加することができる。
そして、本発明の防汚性樹脂組成物は、前記製造方法によって、フレーク、ペレット、パウダー、グラニュール、ロッド、シート、ブロック等の形状として個々に得られる。
例えば、上記のようにして得られた粉末状またはブロック状のような固形物を粉砕してフレーク状のものを得たり、それを押出機に供給して、通常のTPUを押し出す温度(約150〜220℃)で溶融混練後、ストランドカットまたは水中カットによりペレット形状のものを得ることができる。
また、ニーダによる方法では、ニーダに高分子ジオール(A−1)、親水性官能基を有するジオール(A−2)および鎖延長剤(B)を仕込み、撹拌下、100℃に加温後、イソシアネート(C)を投入し、10〜120分反応させ、冷却することにより粉末状またはブロック状のTPUを製造することができる。なお、これらの方法においては、必要に応じ触媒を添加することができる。
前記のTPU製造時の触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルイミダゾール、N−エチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ−5,4,0−ウンデセン−7(DBU)等のアミン類、酢酸カリウム、スタナスオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート等の有機金属類、トリブチルホスフィン、ホスフォレン、ホスフォレンオキサイド等のリン系化合物が挙げられる。なお、これらの化合物はそれぞれ単独で用いることができ、また、2種以上を混合して使用することもできる。
特に、スズ系触媒については、高分子ジオール(A)の質量に対して0.5〜30ppmの割合で用いるとTPUを比較的短時間で製造することができる。
特に、スズ系触媒については、高分子ジオール(A)の質量に対して0.5〜30ppmの割合で用いるとTPUを比較的短時間で製造することができる。
また、本発明の防汚性樹脂組成物の重合過程または重合後に、必要に応じてTPUを製造する際に通常使用されている熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、加水分解防止剤、耐熱性向上剤、耐候性改良剤、反応性遅延剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、導電付与剤、防黴剤、着色剤、無機および有機充填剤、繊維系補強材、結晶核剤などの各種添加剤を適宜加えることもできる。
本発明の防汚性樹脂組成物の成形は、一般に用いられているTPUの成形方法が適用でき、例えば、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、真空成形、遠心成形、回転成形、カレンダー加工、ロール加工、プレス加工等の成形方法で成形できる。
本発明の防汚性樹脂組成物の成形品は、例えば家屋の内装材、通信ケーブル、工業用ケーブル、自動車、各種車両内装材、家電用品、装飾品等屋内外の幅広い分野に用いることができる。
例えば、押出成形関係では、高圧ホース、塗装用ホース、消防ホース、医療用チューブ、油・空圧チューブ、散水用チューブなどのホース・チューブ類;コンベアーベルト、エアーマット、ダイヤフラム、キーボードシート、合成皮革、ライフジャケット、ウェットスーツ、ホットメルト、フレキシブルコンテナーなどのフィルム類;電力、通信ケーブル、コンピュータ配線、自動車配線、各種カールコードなどの電線・ケーブル類;各種ロープ、丸ベルト・Vベルトなどの各種駆動ベルト、スリップ止め、タイミングベルト、視線誘導標などのその他の分野に用いることができる。
射出成形関係では、ボールジョイント、ダストカバー、ペダルストッパー、ドアーロックストライカー、ブッシュ、スプリングカバー、軸受、防振部品、内・外装部品などの自動車部品;各種ギアー、シール材、パッキン類、防振部品、ピッカー、ブッシュ、軸受、キャップ、コネクター、ラバースクリーン、印字ドラムなどの機械・工業部品;野球・ゴルフ・サッカーシューズ等のスポーツシューズのソール及びポイント 、婦人靴トップリフト、スキー靴、安全靴などの靴関連部品;ローラー、キャスター、グリップ、時計バンド、イヤータッグ、スノーチェーン、シュノーケル、足ヒレなどのその他の分野に用いることができる。
カレンダー加工関係では、コンベアーベルト、フレキシブルコンテナー、フィルム、ラミネート品などの分野に用いることが出来る。ブロー成形関係では、各種自動車・車両用ブーツ、各種容器類に、インフレーション成形関係では、薄肉・広幅フィルム類に用いることが出来る。
さらに、TPUを溶剤に溶解して溶液として使用するタイプとしては、バインダー、接着剤、合成皮革、ロープ・ワイヤ・手袋等の各種コーティングなどの分野にも用いることができる。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
実施例1〜18,比較例1〜16
(試料の作製)
撹拌機と温度計の付いた反応容器に、高分子ジオール(A−1)、親水性官能基を有するジオール(A−2)、鎖延長剤(B)、酸化防止剤(イルガノックス1010)および紫外線吸収剤(チヌビンP)を表1〜表6に記載の量を均一に混合した。
(試料の作製)
撹拌機と温度計の付いた反応容器に、高分子ジオール(A−1)、親水性官能基を有するジオール(A−2)、鎖延長剤(B)、酸化防止剤(イルガノックス1010)および紫外線吸収剤(チヌビンP)を表1〜表6に記載の量を均一に混合した。
得られた混合液を100℃に加熱した後、イソシアネート(C)を表1〜表6に記載の量を加え、ウレタン化反応を行った。反応物が90℃になったところでバット上に流し込み固化させた。得られた固形物を80℃の電気炉で16時間熟成させ、冷却した後、固形物を粉砕しフレーク状のTPUを得た。
得られたフレーク状のTPUを押出機でストランドを押出し、カッターを用いてペレットを作製した。得られたペレットを220〜230℃で射出成形して厚さ2mmのシートを作製し、これを105℃で16時間、アニール後、実施例1〜18および比較例1〜16の試料とした。
なお、表1〜表6には、TPUに含まれる個々の親水性官能基の濃度(mmol/g)を示した。
また、表1〜表6の使用原料は以下のとおりである。
<A(高分子ジオール)>
*PTMG650:
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量=650)、三菱化学株式会社製
*PTMG850:
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量=850)、三菱化学株式会社製
*PTMG1000:
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量=1000)、三菱化学株式会社製
*PTMG2000:
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量=2000)、三菱化学株式会社製
*ニッポラン981:
ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(数平均分子量=1000)、日本ポリウレタン工業株式会社製
*ニッポラン164
ポリ(ヘキサメチレンアジペート)ジオール(数平均分子量=1000)、日本ポリウレタン工業株式会社製
*ニッポラン4073
ポリ(ヘキサメチレンアジペート)ジオール(数平均分子量=2000)、日本ポリウレタン工業株式会社製
*ニッポラン4009
ポリ(ブチレンアジペート)ジオール(数平均分子量=1000)、日本ポリウレタン工業株式会社製
*サンニックスPP−4000
ポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量=4160)、三洋化成工業株式会社製
*PTMG650:
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量=650)、三菱化学株式会社製
*PTMG850:
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量=850)、三菱化学株式会社製
*PTMG1000:
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量=1000)、三菱化学株式会社製
*PTMG2000:
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量=2000)、三菱化学株式会社製
*ニッポラン981:
ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(数平均分子量=1000)、日本ポリウレタン工業株式会社製
*ニッポラン164
ポリ(ヘキサメチレンアジペート)ジオール(数平均分子量=1000)、日本ポリウレタン工業株式会社製
*ニッポラン4073
ポリ(ヘキサメチレンアジペート)ジオール(数平均分子量=2000)、日本ポリウレタン工業株式会社製
*ニッポラン4009
ポリ(ブチレンアジペート)ジオール(数平均分子量=1000)、日本ポリウレタン工業株式会社製
*サンニックスPP−4000
ポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量=4160)、三洋化成工業株式会社製
<A−2(親水性官能基を有するジオール)>
*DMBA:
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(分子量=148)、カルボン酸基濃度=6.757mmol/g、和光純薬工業株式会社
製
*HEAES
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸ナトリウム(分子量=235)、スルホン酸ナトリウム塩基濃度=4.255mmol/g、和光純薬工業株式会社製
*HAS1000:
温度計、攪拌機、還流式冷却管を備えた反応容器に、ジメチル−5−スルホイソフタル酸ナトリウムを120.8質量部、1,6−ヘキサンジオールを559.1質量部を仕込んだ。攪拌しながら温度を180℃まで加熱してエステル交換反応を開始した。メタノールの留出が止まったところで、アジピン酸を486.2質量部を仕込み、180℃でエステル化反応を開始した。水の留出速度が低下したところで、テトラブチルチタネートを0.01g仕込み、温度を徐々に200℃まで加熱し、かつ同時に内圧を徐々に2.5kPaまで減圧して、エステル化反応を進行させてポリエステルジオールHAS1000を得た。スルホン酸ナトリウム塩基濃度=0.40mmol/gで、数平均分子量は1020であった。
*HAS2000:
温度計、攪拌機、還流式冷却管を備えた反応容器に、ジメチル−5−スルホイソフタル酸ナトリウムを118.4質量部、1,6−ヘキサンジオールを520.8質量部を仕込んだ。攪拌しながら温度を180℃まで加熱してエステル交換反応を開始した。メタノールの留出が止まったところで、アジピン酸を512.9質量部を仕込み、180℃でエステル化反応を開始した。水の留出速度が低下したところで、テトラブチルチタネートを0.01g仕込み、温度を徐々に200℃まで加熱し、かつ同時に内圧を徐々に2.5kPaまで減圧して、エステル化反応を進行させてポリエステルジオールHAS2000を得た。スルホン酸ナトリウム塩基濃度=0.40mmol/gで、数平均分子量は2000であった。
*HAS4000:
温度計、攪拌機、還流式冷却管を備えた反応容器に、ジメチル−5−スルホイソフタル酸ナトリウムを118.4質量部、1,6−ヘキサンジオールを506.5質量部を仕込んだ。攪拌しながら温度を180℃まで加熱してエステル交換反応を開始した。メタノールの留出が止まったところで、アジピン酸を531.8質量部を仕込み、180℃でエステル化反応を開始した。水の留出速度が低下したところで、テトラブチルチタネートを0.01g仕込み、温度を徐々に200℃まで加熱し、かつ同時に内圧を徐々に2.5kPaまで減圧して、エステル化反応を進行させてポリエステルジオールHAS4000を得た。スルホン酸ナトリウム塩基濃度=0.40mmol/gで、数平均分子量は4000であった。
*HAS1000の末端OH処理品:
温度計、攪拌機、乾燥管を備えた反応容器に、前記のポリエステルジオールHAS1000を810.8質量部に対して、当モル量のフェニルイソシアネートを189.2質量部を仕込んで、80℃で水酸基含量およびイソシアネート含量が検出されなくなるまで反応して、HAS1000の末端OH処理品を得た。スルホン酸ナトリウム塩基濃度=0.32mmol/gであった。
*DMBA:
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(分子量=148)、カルボン酸基濃度=6.757mmol/g、和光純薬工業株式会社
製
*HEAES
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸ナトリウム(分子量=235)、スルホン酸ナトリウム塩基濃度=4.255mmol/g、和光純薬工業株式会社製
*HAS1000:
温度計、攪拌機、還流式冷却管を備えた反応容器に、ジメチル−5−スルホイソフタル酸ナトリウムを120.8質量部、1,6−ヘキサンジオールを559.1質量部を仕込んだ。攪拌しながら温度を180℃まで加熱してエステル交換反応を開始した。メタノールの留出が止まったところで、アジピン酸を486.2質量部を仕込み、180℃でエステル化反応を開始した。水の留出速度が低下したところで、テトラブチルチタネートを0.01g仕込み、温度を徐々に200℃まで加熱し、かつ同時に内圧を徐々に2.5kPaまで減圧して、エステル化反応を進行させてポリエステルジオールHAS1000を得た。スルホン酸ナトリウム塩基濃度=0.40mmol/gで、数平均分子量は1020であった。
*HAS2000:
温度計、攪拌機、還流式冷却管を備えた反応容器に、ジメチル−5−スルホイソフタル酸ナトリウムを118.4質量部、1,6−ヘキサンジオールを520.8質量部を仕込んだ。攪拌しながら温度を180℃まで加熱してエステル交換反応を開始した。メタノールの留出が止まったところで、アジピン酸を512.9質量部を仕込み、180℃でエステル化反応を開始した。水の留出速度が低下したところで、テトラブチルチタネートを0.01g仕込み、温度を徐々に200℃まで加熱し、かつ同時に内圧を徐々に2.5kPaまで減圧して、エステル化反応を進行させてポリエステルジオールHAS2000を得た。スルホン酸ナトリウム塩基濃度=0.40mmol/gで、数平均分子量は2000であった。
*HAS4000:
温度計、攪拌機、還流式冷却管を備えた反応容器に、ジメチル−5−スルホイソフタル酸ナトリウムを118.4質量部、1,6−ヘキサンジオールを506.5質量部を仕込んだ。攪拌しながら温度を180℃まで加熱してエステル交換反応を開始した。メタノールの留出が止まったところで、アジピン酸を531.8質量部を仕込み、180℃でエステル化反応を開始した。水の留出速度が低下したところで、テトラブチルチタネートを0.01g仕込み、温度を徐々に200℃まで加熱し、かつ同時に内圧を徐々に2.5kPaまで減圧して、エステル化反応を進行させてポリエステルジオールHAS4000を得た。スルホン酸ナトリウム塩基濃度=0.40mmol/gで、数平均分子量は4000であった。
*HAS1000の末端OH処理品:
温度計、攪拌機、乾燥管を備えた反応容器に、前記のポリエステルジオールHAS1000を810.8質量部に対して、当モル量のフェニルイソシアネートを189.2質量部を仕込んで、80℃で水酸基含量およびイソシアネート含量が検出されなくなるまで反応して、HAS1000の末端OH処理品を得た。スルホン酸ナトリウム塩基濃度=0.32mmol/gであった。
<B(鎖延長剤)>
*1,4−BG:
1,4−ブタンジオール(数平均分子量=90)、三菱化学株式会社製
*1,6−HG:
1,6−ヘキサンジオール(数平均分子量=118)三菱化学株式会社製
*サンニックスPP−200
ポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量=200)、三洋化成工業株式会社製
*サンニックスPP−400
ポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量=400)、三洋化成工業株式会社製
*1,4−BG:
1,4−ブタンジオール(数平均分子量=90)、三菱化学株式会社製
*1,6−HG:
1,6−ヘキサンジオール(数平均分子量=118)三菱化学株式会社製
*サンニックスPP−200
ポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量=200)、三洋化成工業株式会社製
*サンニックスPP−400
ポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量=400)、三洋化成工業株式会社製
<C(イソシアネート化合物)>
*MDI:
4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、日本ポリウレタン工業株式会社製
*HDI:
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、日本ポリウレタン工業株式会社製
*MDI:
4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、日本ポリウレタン工業株式会社製
*HDI:
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、日本ポリウレタン工業株式会社製
(特性試験)
上記手順で作製した試料(射出成形シート)について、以下に説明するように各種特性を試験評価した。得られた結果を表7〜表12に示す。
上記手順で作製した試料(射出成形シート)について、以下に説明するように各種特性を試験評価した。得られた結果を表7〜表12に示す。
(1)機械的性質
[硬さ(JIS−A硬度)]
[100%モジュラス(引張応力、MPa)]
[引張強さ(MPa)]
[伸び(%)]
[引裂強さ(kN/m)]
射出成形シートをJIS K 7311(ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの試験方法)に記載の測定方法に従って測定した。実用上備えるべき性質は以下のとおりである。
[硬さ(JIS−A硬度)]
[100%モジュラス(引張応力、MPa)]
[引張強さ(MPa)]
[伸び(%)]
[引裂強さ(kN/m)]
射出成形シートをJIS K 7311(ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの試験方法)に記載の測定方法に従って測定した。実用上備えるべき性質は以下のとおりである。
[硬さ(JIS−A硬度)]
JIS−A硬度は、実用上、56以上であることが望ましい。
[100%モジュラス(引張応力、MPa)]
実用上、1.4MPa以上であることが望まれる。
[引張強さ(MPa)]
実用上、12MPa以上であることが望まれる。
[伸び(%)]
実用上、400%以上であることが望まれる。
[引裂強さ(kN/m)]
実用上、40kN/m以上であることが望まれる。
JIS−A硬度は、実用上、56以上であることが望ましい。
[100%モジュラス(引張応力、MPa)]
実用上、1.4MPa以上であることが望まれる。
[引張強さ(MPa)]
実用上、12MPa以上であることが望まれる。
[伸び(%)]
実用上、400%以上であることが望まれる。
[引裂強さ(kN/m)]
実用上、40kN/m以上であることが望まれる。
(2)防汚性
(i)汚染性試験1
射出成形シート上に、約2mL容量のポリスポイトで吸い上げた「JX日鉱日石エネルギー株式会社製の工業用ギヤー油ボンノックM」を1摘ずつ合計で5カ所垂らした。
室温で5分間放置後、ウエスでふき取り、射出成形シートの表面状態を目視で以下の基準で評価し、AAおよびAを合格とし、BおよびCを不合格とした。
(i)汚染性試験1
射出成形シート上に、約2mL容量のポリスポイトで吸い上げた「JX日鉱日石エネルギー株式会社製の工業用ギヤー油ボンノックM」を1摘ずつ合計で5カ所垂らした。
室温で5分間放置後、ウエスでふき取り、射出成形シートの表面状態を目視で以下の基準で評価し、AAおよびAを合格とし、BおよびCを不合格とした。
ランク:内容
AA:しみこみが全くなし
A:部分的にしみこみあり
B:しみこみ部分が過半
C:全面的にしみこみあり
AA:しみこみが全くなし
A:部分的にしみこみあり
B:しみこみ部分が過半
C:全面的にしみこみあり
(ii)汚染性試験2
JIS K 7219(プラスチック−直接屋外暴露、アンダーグラス屋外暴露及び太陽集光促進屋外暴露試験方法)に従って射出成形シートを屋外暴露にかけて、JIS K 7362(プラスチック−アンダーグラス屋外暴露、直接屋外暴露又は実験室光源による暴露後の色変化及び特性変化の測定方法)およびJIS Z 8730(色の表示方法−物体色の色差)に従って、開始時と6ケ月経過後の明度差(ΔL)から下記の式にて防汚性変化率(%)を求め、以下の基準で評価し、AAおよびAを合格とし、BおよびCを不合格とした。
防汚性変化率(%)
=〔(試験開始時の明度−6ケ月経過後の明度)/試験開始時の明度〕×100
JIS K 7219(プラスチック−直接屋外暴露、アンダーグラス屋外暴露及び太陽集光促進屋外暴露試験方法)に従って射出成形シートを屋外暴露にかけて、JIS K 7362(プラスチック−アンダーグラス屋外暴露、直接屋外暴露又は実験室光源による暴露後の色変化及び特性変化の測定方法)およびJIS Z 8730(色の表示方法−物体色の色差)に従って、開始時と6ケ月経過後の明度差(ΔL)から下記の式にて防汚性変化率(%)を求め、以下の基準で評価し、AAおよびAを合格とし、BおよびCを不合格とした。
防汚性変化率(%)
=〔(試験開始時の明度−6ケ月経過後の明度)/試験開始時の明度〕×100
ランク:内容
AA:10%未満
A:10%以上30%未満
B:30%以上50%未満
C:50%以上
AA:10%未満
A:10%以上30%未満
B:30%以上50%未満
C:50%以上
(3)親水性
(i)水接触角
上記で得られた射出成形シートの水接触角(度)をJIS R 3257(基板ガラス表面のぬれ性試験方法)を参考にして測定した。その値が小さいほどシート面に対する水の濡れ性が高いことを示し、すなわち親水性が高いことを示す。
(i)水接触角
上記で得られた射出成形シートの水接触角(度)をJIS R 3257(基板ガラス表面のぬれ性試験方法)を参考にして測定した。その値が小さいほどシート面に対する水の濡れ性が高いことを示し、すなわち親水性が高いことを示す。
(ii)親水性変化率
上記と同様に、射出成形シートを屋外暴露にかけて、開始時と6ケ月経過後の水接触角(度)から下記の式にて親水性変化率(%)を求め、以下の基準で評価し、AAおよびAを合格とし、BおよびCを不合格とした。
親水性変化率(%)
=〔(6ケ月経過後の水接触角−試験開始時の水接触角)/試験開始時の水接触角〕×100
上記と同様に、射出成形シートを屋外暴露にかけて、開始時と6ケ月経過後の水接触角(度)から下記の式にて親水性変化率(%)を求め、以下の基準で評価し、AAおよびAを合格とし、BおよびCを不合格とした。
親水性変化率(%)
=〔(6ケ月経過後の水接触角−試験開始時の水接触角)/試験開始時の水接触角〕×100
ランク:内容
AA:10%未満
A:10%以上30%未満
B:30%以上50%未満
C:50%以上
AA:10%未満
A:10%以上30%未満
B:30%以上50%未満
C:50%以上
(4)ブリード特性
射出成形シートの表面の状態を目視および触感によって、以下の基準で評価し、AAおよびAを合格とし、BおよびCを不合格とした。
射出成形シートの表面の状態を目視および触感によって、以下の基準で評価し、AAおよびAを合格とし、BおよびCを不合格とした。
ランク:内容
AA:なし
A:少しあり
B:やや多い
C:多い
AA:なし
A:少しあり
B:やや多い
C:多い
(5)外観
射出成形シート表面の状態を目視によって、気泡、塊、異物、クラック、膨潤等の有無の程度によって良否を評価し、AAおよびAを合格とし、BおよびCを不合格とした。
射出成形シート表面の状態を目視によって、気泡、塊、異物、クラック、膨潤等の有無の程度によって良否を評価し、AAおよびAを合格とし、BおよびCを不合格とした。
ランク:内容
AA:良好
A:部分的に不良
B:不良部分が過半
C:ほぼ全面が不良
AA:良好
A:部分的に不良
B:不良部分が過半
C:ほぼ全面が不良
(6)耐加水分解性
射出成形シートを用いて、JIS K7311(ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの試験方法)で規定されているダンベル形状に打ち抜き、試験片とした。試験片を70℃の温水に60日間浸漬し、引張試験機を使用して引張強さを測定した。試験前のシート物性(100%モジュラス)と比較し、その保持率によって耐加水分解性を以下の基準で評価し、AAおよびAを合格とし、BおよびCを不合格とした。
射出成形シートを用いて、JIS K7311(ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの試験方法)で規定されているダンベル形状に打ち抜き、試験片とした。試験片を70℃の温水に60日間浸漬し、引張試験機を使用して引張強さを測定した。試験前のシート物性(100%モジュラス)と比較し、その保持率によって耐加水分解性を以下の基準で評価し、AAおよびAを合格とし、BおよびCを不合格とした。
ランク:内容
AA:保持率90%以上
A:保持率90%未満70%以上
B:保持率70%未満50%以上
C:保持率50%未満
AA:保持率90%以上
A:保持率90%未満70%以上
B:保持率70%未満50%以上
C:保持率50%未満
本発明の防汚性樹脂組成物は、親水性官能基を有するジオールを含むジオール成分と有機ジイソシアネート成分とから構成されるTPUから得られる。その組成物においては、TPUを構成するジオール成分の種類と分子量を限定し、鎖延長剤の分子量を特定し、イソシアネートとして有機ジイソシアネートを用い、親水性官能基の濃度を規定している。
このため、本発明の防汚性樹脂組成物は、安定かつ継続的な親水性発現に基づく防汚性を発現し、良好な外観と優れた耐久性、特に耐加水分解性を有する。
従って、本発明の防汚性樹脂組成物は、射出成形、押出成形、カレンダー成形等によって成形される屋内外の各種分野において、汚染性が問題となる用途および耐久性(耐加水分解性、硬度・物性保持性等)を要求される用途に有用である。
このため、本発明の防汚性樹脂組成物は、安定かつ継続的な親水性発現に基づく防汚性を発現し、良好な外観と優れた耐久性、特に耐加水分解性を有する。
従って、本発明の防汚性樹脂組成物は、射出成形、押出成形、カレンダー成形等によって成形される屋内外の各種分野において、汚染性が問題となる用途および耐久性(耐加水分解性、硬度・物性保持性等)を要求される用途に有用である。
Claims (3)
- 高分子ジオール(A−1)、親水性官能基を有するジオール(A−2)、鎖延長剤(B)およびイソシアネート(C)とから得られる熱可塑性樹脂組成物であって、前記高分子ジオール(A−1)が数平均分子量=750〜3000のポリエーテルジオールとポリカーボネートジオールとポリ(ヘキサメチレンアジペート)ジオールの少なくとも一種を含み、前記親水性官能基を有するジオール(A−2)が数平均分子量=100〜3000で、親水性官能基として、カルボン酸基、スルホン酸基またはそれらの金属塩の少なくとも一種を含み、前記鎖延長剤(B)が数平均分子量=60〜300の活性水素化合物で、イソシアネート(C)が有機ジイソシアネートであることを特徴とし、さらに当該親水性官能基の合計の本樹脂組成物中濃度が0.03〜1.0mmol/gであることを特徴とする防汚性熱可塑性樹脂組成物。
- 前記親水性官能基を有するジオール(A−2)のうちスルホン酸基またはそれらの金属塩を有する少なくとも一種が、スルホン酸ナトリウム塩基を含有するジカルボン酸またはそのエステルと、アジピン酸と、1,6−ヘキサンジオールとを反応させて得られるポリエステルジオールである請求項1に記載の防汚性熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1または請求項2の防汚性熱可塑性樹脂組成物を用いて得られる防汚性に優れた熱可塑性成形品。
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JP2013098513A JP2014218577A (ja) | 2013-05-08 | 2013-05-08 | 防汚性樹脂組成物 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2019137789A (ja) * | 2018-02-13 | 2019-08-22 | 東ソー株式会社 | 熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物、及び該樹脂組成物を用いた成形体 |
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2013
- 2013-05-08 JP JP2013098513A patent/JP2014218577A/ja active Pending
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