JP2014218169A - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 連続的なアップシフト要求に対して素早くアップシフトを完了させることが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供すること。
【解決手段】 本発明によるハイブリッド車両の制御装置は、ハイブリッドモードによる走行中に第1のアップシフトを行うときは、電動機を第1のアップシフト後に達成すべき第1目標回転数に向けて回転数制御し、更に第1のアップシフト中に第2のアップシフトが要求されたときは、第1のアップシフトの状態にかかわらず第2のアップシフトを開始するとともに、第1目標回転数を第2のアップシフト後に達成すべき第2目標回転数に変更する。
【選択図】図8

Description

本発明は、エンジンおよび電動モータを動力源とし、電動モータのみにより走行する電気走行モード(EVモード)と、電動モータおよびエンジンにより走行するハイブリッド走行モード(HEVモード)とを選択可能なハイブリッド車両の制御装置に関する。
このようなハイブリッド車両としては従来、例えば特許文献1に記載のようなものが知られている。この公報には、ハイブリッドシステムにおけるアップシフトの制御内容が開示されている。
特開2010−143364号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、連続的にアップシフトの要求がなされた場合、1段ずつアップシフトを実行すると、最終的な要求変速段に到達するまでに時間がかかり、かつ、変速毎に加減速度の変動が生じるため、運転者に違和感を与えるおそれがある。また、モータジェネレータが高回転ではエンジン始動用トルクを確保することが困難であるため、エンジンを停止できないことから、エンジンとモータジェネレータとの間のクラッチを解放できず、EVモードによる走行頻度が減少することにより燃費を改善できないという問題があった。
本発明は上記課題に着目し、連続的なアップシフト要求に対して素早くアップシフトを完了させることが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
この目的のため、本発明によるハイブリッド車両の制御装置は、ハイブリッドモードによる走行中に第1のアップシフトを行うときは、電動機を第1のアップシフト後に達成すべき第1目標回転数に向けて回転数制御し、更に第1のアップシフト中に第2のアップシフトが要求されたときは、第1のアップシフトの状態にかかわらず第2のアップシフトを開始するとともに、第1目標回転数を第2のアップシフト後に達成すべき第2目標回転数に変更することとした。
よって、第1のアップシフトの終了を待つことなく第2のアップシフトを実行し、また、電動機の回転数制御により素早く回転数を低下させることで、素早くアップシフトを完了させることが可能となり、加減速度の変動を抑制しつつEVモードによる走行頻度の減少を抑制できる。
実施例1のハイブリッド車両を示す全体システム図である。 実施例1のハイブリッド車両の制御構成を表すブロック図である。 実施例1の目標駆動力マップである。 実施例1に搭載される自動変速機ATの構成を表すスケルトン図である。 実施例1の自動変速機ATでの前進7速後退1速の締結作動表を示す図である。 実施例1の自動変速機ATに用いる変速線及び走行モードが設定された変速マップである。 実施例1のアップシフト制御処理を表すフローチャートである。 実施例1及び比較例のアップシフト制御処理を表すタイムチャートである。 実施例1の自動変速機において第3速,第4速及び第5速の状態を表す共線図である。
〔実施例1〕
まず、ハイブリッド車両の駆動系構成を説明する。図1は実施例1のエンジン始動制御装置が適用された後輪駆動によるハイブリッド車両を示す全体システム図である。実施例1におけるハイブリッド車の駆動系は、図1に示すように、エンジンEと、第1クラッチCL1と、モータジェネレータMGと、第2クラッチCL2と、自動変速機ATと、プロペラシャフトPSと、ディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左後輪RL(駆動輪)と、右後輪RR(駆動輪)と、を有する。尚、FLは左前輪、FRは右前輪である。
エンジンEは、例えばガソリンエンジンであり、後述するエンジンコントローラ1からの制御指令に基づいて、スロットルバルブのバルブ開度等が制御される。尚、エンジン出力軸にはフライホイールFWが設けられている。
第1クラッチCL1は、エンジンEとモータジェネレータMGとの間に介装されたクラッチであり、後述する第1クラッチコントローラ5からの制御指令に基づいて、第1クラッチ油圧ユニット6により作り出された制御油圧により作動し、スリップ締結を含み締結・開放が制御される。
モータジェネレータMGは、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータジェネレータであり、後述するモータコントローラ2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流を印加することにより制御される。このモータジェネレータMGは、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(以下、この状態を「力行」と呼ぶ)、ロータが外力により回転している場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能してバッテリ4を充電することもできる(以下、この動作状態を「回生」と呼ぶ)。尚、このモータジェネレータMGのロータは、図外のダンパーを介して自動変速機ATの入力軸に連結されている。
第2クラッチCL2は、モータジェネレータMGと左右後輪RL,RRとの間に介装されたクラッチであり、後述するATコントローラ7からの制御指令に基づいて、第2クラッチ油圧ユニット8により作り出された制御油圧により、スリップ締結を含み締結・開放が制御される。
自動変速機ATは、前進7速後退1速等の有段階の変速比を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り換える変速機であり、第2クラッチCL2は、専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、いくつかの摩擦締結要素を流用している。
そして、自動変速機ATの出力軸は、車両駆動軸としてのプロペラシャフトPS、ディファレンシャルDF、左ドライブシャフトDSL、右ドライブシャフトDSRを介して左右後輪RL,RRに連結されている。尚、前記第1クラッチCL1と第2クラッチCL2には、例えば、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できる湿式多板クラッチを用いている。
このハイブリッド駆動系には、第1クラッチCL1の締結・開放状態に応じて3つの走行モードを有する。第1走行モードは、第1クラッチCL1の開放状態で、モータジェネレータMGの動力のみを動力源として走行するモータ使用走行モードとしての電気自動車走行モード(以下、「EV走行モード」と略称する。)である。第2走行モードは、第1クラッチCL1の締結状態で、エンジンEを動力源に含みながら走行するエンジン使用走行モード(以下、「HEV走行モード」と略称する。)である。第3走行モードは、第1クラッチCL1の締結状態で第2クラッチCL2をスリップ制御させ、エンジンEを動力源に含みながら走行するエンジン使用スリップ走行モード(以下、「WSC走行モード」と略称する。)である。このモードは、特にバッテリSOCが低いときやエンジン水温が低いときに、クリープ走行を達成可能なモードである。尚、EV走行モードからHEV走行モードに遷移するときは、第1クラッチCL1を締結し、モータジェネレータMGのトルクを用いてエンジン始動を行う。
上記「HEV走行モード」には、「エンジン走行モード」と「モータアシスト走行モード」と「走行発電モード」との3つの走行モードを有する。「エンジン走行モード」は、エンジンEのみを動力源として駆動輪を動かす。「モータアシスト走行モード」は、エンジンEとモータジェネレータMGの2つを動力源として駆動輪を動かす。「走行発電モード」は、エンジンEを動力源として駆動輪RR,RLを動かすと同時に、モータジェネレータMGを発電機として機能させる。
定速運転時や加速運転時には、エンジンEの動力を利用してモータジェネレータMGを発電機として動作させる。また、減速運転時は、制動エネルギを回生してモータジェネレータMGにより発電し、バッテリ4の充電のために使用する。また、更なるモードとして、車両停止時には、エンジンEの動力を利用してモータジェネレータMGを発電機として動作させる発電モードを有する。
次に、ハイブリッド車両の制御系を説明する。実施例1におけるハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、第1クラッチコントローラ5と、第1クラッチ油圧ユニット6と、ATコントローラ7と、第2クラッチ油圧ユニット8と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10と、を有して構成されている。尚、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、第1クラッチコントローラ5と、ATコントローラ7と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10とは、互いの情報交換が可能なCAN通信線11を介して接続されている。
エンジンコントローラ1は、エンジン回転数センサ12からのエンジン回転数情報を入力し、統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令等に応じ、エンジン動作点(Ne:エンジン回転数,Te:エンジントルク)を制御する指令を、例えば、図外のスロットルバルブアクチュエータへ出力する。尚、エンジン回転数Ne等の情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給される。
モータコントローラ2は、モータジェネレータMGのロータ回転位置を検出するレゾルバ13からの情報を入力し、統合コントローラ10からの目標モータジェネレータトルク指令等に応じ、モータジェネレータMGのモータ動作点(Nm:モータジェネレータ回転数,Tm:モータジェネレータトルク)を制御する指令をインバータ3へ出力する。尚、このモータコントローラ2では、バッテリ4の充電状態を表すバッテリSOCを監視していて、バッテリSOC情報は、モータジェネレータMGの制御情報に用いると共に、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給される。
第1クラッチコントローラ5は、第1クラッチ油圧センサ14と第1クラッチストロークセンサ15からのセンサ情報を入力し、統合コントローラ10からの第1クラッチ制御指令に応じ、第1クラッチCL1の締結・開放を制御する指令を第1クラッチ油圧ユニット6に出力する。尚、第1クラッチストロークC1Sの情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
ATコントローラ7は、アクセル開度センサ16と車速センサ17と第2クラッチ油圧センサ18と運転者の操作するシフトレバーの位置に応じた信号を出力するインヒビタスイッチからのセンサ情報を入力し、統合コントローラ10からの第2クラッチ制御指令に応じ、第2クラッチCL2の締結・開放を制御する指令をAT油圧コントロールバルブ内の第2クラッチ油圧ユニット8に出力する。尚、アクセルペダル開度APOと車速VSPとインヒビタスイッチの情報は、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
ブレーキコントローラ9は、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ19とブレーキストロークセンサ20からのセンサ情報を入力し、例えば、ブレーキ踏み込み制動時、ブレーキストロークBSから求められる要求制動力に対し回生制動力だけでは不足する場合、その不足分を機械制動力(摩擦ブレーキによる制動力)で補うように、統合コントローラ10からの回生協調制御指令に基づいて回生協調ブレーキ制御を行う。
統合コントローラ10は、車両全体の消費エネルギを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、モータ回転数Nmを検出するモータ回転数センサ21と、第2クラッチ出力回転数N2outを検出する第2クラッチ出力回転数センサ22と、第2クラッチ伝達トルク容量TCL2を検出する第2クラッチトルクセンサ23と、ブレーキ油圧センサ24と、第2クラッチCL2の温度を検知する温度センサ10aと、前後加速度を検出するGセンサ10bからの情報およびCAN通信線11を介して得られた情報を入力する。また、統合コントローラ10は、エンジンコントローラ1への制御指令によるエンジンEの動作制御と、モータコントローラ2への制御指令によるモータジェネレータMGの動作制御と、第1クラッチコントローラ5への制御指令による第1クラッチCL1の締結・開放制御と、ATコントローラ7への制御指令による第2クラッチCL2の締結・開放制御と、を行う。
以下に、図2に示すブロック図を用いて、実施例1の統合コントローラ10にて演算される制御を説明する。例えば、この演算は、制御周期10msec毎に統合コントローラ10で演算される。統合コントローラ10は、目標駆動力演算部100と、モード選択部200と、目標充放電演算部300と、動作点指令部400と、変速制御部500と、を有する。
目標駆動力演算部100では、図3に示す目標駆動力マップを用いて、アクセルペダル開度APOと車速VSPとから、目標駆動力tFoOを演算する。モード選択部200は、図6に示す変速線図に設定されたモード領域に示すように、車速とアクセルペダル開度に基づいて走行モードを選択する。モード領域としては、EV走行モードと、WSC走行モードと、HEV走行モードとを有し、アクセルペダル開度APOと車速VSPとから目標モードを演算する。但し、EV走行モードが選択されていたとしても、バッテリSOCが所定値以下であれば、強制的に「HEV走行モード」もしくは「WSC走行モード」を目標モードとする。目標充放電演算部300では、予め設定された目標充放電量マップを用いて、バッテリSOCから目標充放電電力tPを演算する。
動作点指令部400では、アクセルペダル開度APOと、目標駆動力tFoOと、目標モードと、車速VSPと、目標充放電電力tPとから、これらの動作点到達目標として、過渡的な目標エンジントルクと目標モータジェネレータトルクと目標第2クラッチ締結容量と自動変速機ATの目標変速段と第1クラッチCL1の伝達トルク容量指令である第1クラッチソレノイド電流指令を演算する。また、動作点指令部400には、EV走行モードからHEV走行モードに遷移するときに、第1クラッチCL1を締結してエンジンEを始動するエンジン始動制御部401が設けられている。
変速制御部500では、シフトマップに示すシフトスケジュールに沿って、目標第2クラッチ締結容量と目標変速段を達成するように自動変速機AT内のソレノイドバルブを駆動制御する。図6は実施例1のシフトマップを表す図である。シフトマップは、車速VSPとアクセルペダル開度APOに基づいて予め目標変速段が設定されたものである。図6中の実線がアップシフト線であり、点線がダウンシフト線であり、現在の車速とアクセルペダル開度によって決定される運転点の移動に応じて適宜変速段が決定される。
次に、自動変速機の構成について説明する。図4は実施例1に搭載される自動変速機ATの構成を表すスケルトン図である。入力軸Input側から軸方向出力軸Output側に向けて、第1遊星ギヤセットGS1(第1遊星ギヤG1,第2遊星ギヤG2),第2遊星ギヤセットGS2(第3遊星ギヤG3及び第4遊星ギヤG4)の順に配置されている。また、摩擦締結要素として複数のクラッチC1,C2,C3及びブレーキB1,B2,B3,B4が配置されている。また、複数のワンウェイクラッチF1,F2が配置されている。
第1遊星ギヤG1は、第1サンギヤS1と、第1リングギヤR1と、両ギヤS1,R1に噛み合う第1ピニオンP1を支持する第1キャリヤPC1と、を有するシングルピニオン型遊星ギヤである。第2遊星ギヤG2は、第2サンギヤS2と、第2リングギヤR2と、両ギヤS2,R2に噛み合う第2ピニオンP2を支持する第2キャリヤPC2と、を有するシングルピニオン型遊星ギヤである。第3遊星ギヤG3は、第3サンギヤS3と、第3リングギヤR3と、両ギヤS3,R3に噛み合う第3ピニオンP3を支持する第3キャリヤPC3と、を有するシングルピニオン型遊星ギヤである。第4遊星ギヤG4は、第4サンギヤS4と、第4リングギヤR4と、両ギヤS4,R4に噛み合う第4ピニオンP4を支持する第4キャリヤPC4と、を有するシングルピニオン型遊星ギヤである。
入力軸Inputは、第2リングギヤR2に連結され、エンジンEからの回転駆動力を、トルクコンバータTC等を介して入力する。出力軸Outputは、第3キャリヤPC3に連結され、出力回転駆動力を図外のファイナルギヤ等を介して駆動輪に伝達する。第1連結メンバM1は、第1リングギヤR1と第2キャリヤPC2と第4リングギヤR4とを一体的に連結するメンバである。第2連結メンバM2は、第3リングギヤR3と第4キャリヤPC4とを一体的に連結するメンバである。第3連結メンバM3は、第1サンギヤS1と第2サンギヤS2とを一体的に連結するメンバである。
第1遊星ギヤセットGS1は、第1遊星ギヤG1と第2遊星ギヤG2とを、第1連結メンバM1と第3連結メンバM3により連結して構成し、4つの回転要素から構成している。また、第2遊星ギヤセットGS2は、第3遊星ギヤG3と第4遊星ギヤG4とを、第2連結メンバM2により連結して5つの回転要素から構成している。第1遊星ギヤセットGS1は、入力軸Inputから第2リングギヤR2に入力されるトルク入力経路を有する。第1遊星ギヤセットGS1に入力されたトルクは、第1連結メンバM1から第2遊星ギヤセットGS2に出力される。第2遊星ギヤセットGS2は、入力軸Inputから第2連結メンバM2に入力されるトルク入力経路と、第1連結メンバM1から第4リングギヤR4に入力されるトルク入力経路を有する。第2遊星ギヤセットGS2に入力されたトルクは、第3キャリヤPC3から出力軸Outputに出力される。
尚、H&LRクラッチC3が解放され、第3サンギヤS3よりも第4サンギヤS4の回転数が大きい時は、第3サンギヤS3と第4サンギヤS4は独立した回転数を発生する。よって、第3遊星ギヤG3と第4遊星ギヤG4が第2連結メンバM2を介して接続された構成となり、それぞれの遊星ギヤが独立したギヤ比を達成する。
インプットクラッチC1は、入力軸Inputと第2連結メンバM2とを選択的に断接するクラッチである。ダイレクトクラッチC2は、第4サンギヤS4と第4キャリヤPC4とを選択的に断接するクラッチである。H&LRクラッチC3は、第3サンギヤS3と第4サンギヤS4とを選択的に断接するクラッチである。尚、第3サンギヤS3と第4サンギヤの間には、第2ワンウェイクラッチF2が配置されている。フロントブレーキB1は、第1キャリヤPC1の回転を選択的に停止させるブレーキである。また、第1ワンウェイクラッチF1は、フロントブレーキB1と並列に配置されている。ローブレーキB2は、第3サンギヤS3の回転を選択的に停止させるブレーキである。2346ブレーキB3は、第3連結メンバM3(第1サンギヤS1及び第2サンギヤS2)の回転を選択的に停止させるブレーキである。リバースブレーキB4は、第4キャリヤPC4の回転を選択的に停止させるブレーキである。
図5は実施例1の自動変速機ATでの前進7速後退1速の締結作動表を示す図である。図5中、○は該当するクラッチもしくはブレーキの締結を表し、空白は解放を示す。また、(○)はエンジンブレーキ作用時にのみ締結することを示す。また、実施例1では、第2クラッチCL2として自動変速機AT内の締結要素を流用しており、図5中、太い実線で囲まれた締結要素が第2クラッチCL2となる。
図6は実施例1の自動変速機ATに用いる変速線及び走行モードが設定された変速マップである。図6の実線はアップシフト線、点線はダウンシフト線であり、ハッチング領域のうち、低アクセル開度域に設定された領域はEV走行モード領域であり、低車速領域であって、かつ、アクセル開度が高めに設定された領域はWSC走行モード領域である。それ以外のハッチングが無い領域はHEV走行モード領域である。図6に示すように、変速線はアクセル開度方向で見ると複数の変速段が重なるように設定されているため、車速がほぼ一定であっても、アクセルペダルの解放により複数回のアップシフト要求が行われる。
ここで、図6のHEV走行モード領域において第3速で走行している状態を例に説明する。高アクセル開度域においてHEV走行モードで走行しているときに、アクセルペダルを一気に離すと、第3速から第4速へのアップシフト要求が出力され、更に第5速へのアップシフト要求がなされる。そして、HEV走行モードからEV走行モードにモード切替が行われ、第1クラッチCL1を解放してエンジンEを停止する。
一般に、自動変速機は、現在の変速段を達成している解放側締結要素を解放し、次の変速段を達成する締結側締結要素を締結することで、制御を安定させて変速ショック等を回避している。よって、複数回のアップシフト要求が来たとしても、まず、最初のアップシフトを行い、そのアップシフトが終了してから次のアップシフトを行うことが一般的である。しかしながら、上述のような連続アップシフトの要求がなされた場合、1段ずつアップシフトを実行すると、最終的な要求変速段に到達するまでに時間がかかり、かつ、変速毎に加減速度の変動が生じるため、運転者に違和感を与えるおそれがある。また、モータジェネレータMGが高回転ではエンジン始動用トルクを確保することが困難であるため、エンジンEを停止できないことから、第1クラッチCL1を解放できず、EV走行モードによる走行頻度が減少することにより燃費を改善できないという問題がある。
そこで、実施例1では、第1のアップシフト中に、更に第2のアップシフト要求があった場合は、第1のアップシフトが終了しているか否かにかかわらず第2のアップシフトを行うこととした。
このとき、スリップ状態となる締結要素が通常の変速時よりも多くなるため、制御性が困難となる問題がある。そこで、第2のアップシフト時に解放される解放側締結要素の締結容量(以下、第2締結容量)を第1のアップシフト時に解放される解放側締結要素の締結容量(以下、第1締結容量)よりも小さくなるように制御することとした。これにより、仮に第1のアップシフトにおいて締結容量制御が十分に制御されなかった場合であっても、第2締結容量が低いため、モータジェネレータMG側もしくは駆動輪側にトルク変動が出力されることがなく、安定した変速状態を達成できる。
ここで、アップシフトの場合、エンジンEやモータジェネレータMGの回転数の低下には慣性力が作用しているために比較的時間を要する。そこで、モータジェネレータMGのアップシフト後のギヤ比に応じた目標回転数を設定し、回転数制御により積極的に回転数に低下させる。このとき、連続的にアップシフトが要求された場合には、目標回転数を即座に変更することで、変速完了時間の短縮化を図ることとした。
図7は実施例1のアップシフト制御処理を表すフローチャートである。ここでは、第3速から第4速へのアップシフト中に、更に第5速へのアップシフト要求が行われた際の制御内容を示す。
ステップS1では、モータジェネレータMGの最終目標回転数を第4速時目標回転数に設定し、モータジェネレータMGを回転数制御する。これにより、第4速へのアップシフトを素早く達成する。
ステップS2では、H&LRクラッチC3の締結制御を開始するとともに、ローブレーキB2の解放制御を開始する。
ステップS3では、アップシフトが終了したか否かを判断し、終了した場合は本制御フローを終了し、終了していない場合はステップS4へ進む。
ステップS4では、更に第5速へのアップシフト要求があったか否かを判断し、アップシフト要求があった場合はステップS5に進み、それ以外の場合はステップS1へ進む。言い換えると、第4速へのアップシフトを実行中であっても、第5速へのアップシフトを開始する。
ステップS5では、モータジェネレータMGの最終目標回転数を第5速時目標回転数に設定し、モータジェネレータMGを回転数制御する。これにより、第5速へのアップシフトを素早く達成する。
ステップS6では、インプットクラッチC1の締結制御、2346ブレーキB3の解放制御をおこなう。このとき、2346ブレーキB3の締結容量がインプットクラッチC1の締結容量よりも小さくなるように制御する。これにより、第4速へのアップシフトにおける締結ショック等が駆動輪等に伝達されることを回避する。
ステップS7では、運転者の要求する変速段が変化したか否かを判断し、変化したと判断した場合にはダウンシフトを行う必要があることからステップS9のダウンシフト処理に移行する。一方、運転者の要求が変化していない場合はステップS8に進む。一般に、ダウンシフトではエンジンEやモータジェネレータMGといった入力側の回転数を上昇させる必要があるが、エンジンEは積極的にトルクを出力することができるため、入力側の回転数を上昇させるのにさほど時間は要しない。これに対し、アップシフトは入力側の回転数を低下させる必要があるが、これら回転要素には慣性力が作用しており、エンジンEにはフリクションによる負トルクしか得られないため、目標回転数まで低下させるのに時間がかかる。よって、この間に運転者の意図が変更されてアクセルペダルが踏み込まれることは十分に考えられる。そこで、連続アップシフト中における運転者の意図の変更を確認することで、より運転者の意図に沿った変速段を達成できる。
ステップS8では、多段アップシフトが終了したか否かを判断し、終了した場合は本制御フローを終了し、終了していない場合はステップS5に戻る。
図8は実施例1のアップシフト制御処理を表すタイムチャートである。図8(a)はアップシフトを一つずつ行った比較例の場合のタイムチャートであり、図8(b)は連続的にアップシフトを行った実施例1の場合のタイムチャートである。これらタイムチャートは、最初の走行状態として、HEV走行モード、自動変速機ATが第3速で走行している状態である。また、NEXTGP_MAPとは、図6の変速マップ上で設定される目標変速段であり、NEXTGPとは、イナーシャフェーズ中にATコントローラ7が認識している目標変速段であり、CURGPとは、ATコントローラ7が認識している現在の変速段である。
時刻t1において、運転者がアクセルペダルを離すと、変速マップ上では第5速が目標変速段として認識される(NEXTGP_MAP参照)。そして、アップシフト要求により、変速制御にあっては第3速から第4速へのアップシフト要求が出力され(NEXTGP参照)、H&LRクラッチC3の締結制御が開始されると共に、ローブレーキB2の解放制御が開始される。
図8(a)に示す比較例では、時刻t2において、H&LRクラッチC3の締結容量がスリップ直前の締結容量まで上昇し、ローブレーキB2の締結容量がスリップ直前の締結容量まで低下すると、モータジェネレータMGの目標回転数が4速時目標回転数にセットされてイナーシャフェーズが開始する。このとき、第3速から第4速へのアップシフトのみが行われる。そして、時刻t3においてモータジェネレータMGの回転数が4速時目標回転数に到達すると、H&LRクラッチC3の締結容量を完全締結に向けて制御すると共に、ローブレーキB2を完全解放に向けて制御する。同時に、第4速から第5速へのアップシフトを開始するために、インプットクラッチC1の締結制御を開始し、2346ブレーキB3の解放制御を開始する。
時刻t4において、インプットクラッチC1の締結容量がスリップ直前の締結容量まで上昇し、2346ブレーキB3の締結容量がスリップ直前の締結容量まで低下すると、モータジェネレータMGの目標回転数が5速時目標回転数にセットされてイナーシャフェーズが開始する。このとき、第4速から第5速へのアップシフトのみが行われる。そして、時刻t5においてモータジェネレータMGの回転数が5速時目標回転数に到達すると、インプットクラッチC1を完全締結に向けて制御するとともに、2346ブレーキB3の締結容量を完全解放に向けて制御する。
このように、アップシフトを一つずつ行うと、アップシフトが完了するまでに時間がかかることで、HEV走行モードからEV走行モードに切り替えるまでに時間がかかり、燃費の悪化を招くおそれがある。また、変速中に加減速度の大きな変動が変速毎に発生するため、運転者に違和感を与えるおそれがある。
これに対し、図8(b)に示す実施例1では、時刻t21において、モータジェネレータMGの目標回転数が5速時目標回転数にセットされ、第3速から第5速へのアップシフトが行われる。言い換えると、第3速から第4速へのアップシフトに加えて、第5速へのアップシフトが開始される。よって、モータジェネレータMGの回転数は一気に5速時目標回転数に向かって変更されるため、変速時間を短縮できる。また、時刻t31において第3速から第4速へのアップシフトが完了する際、2346ブレーキB3の締結容量をローブレーキB2の締結容量よりも小さくしているため、変速ショックを回避できる。そして、時刻t41にモータジェネレータMGの回転数が5速時目標回転数に到達すると、アップシフトが完了する。
図9は実施例1の自動変速機において、第3速,第4速及び第5速の状態を表す共線図である。第3速は実線で示され、第4速は太い点線で示され、第5速は太い1点鎖線で示されている。第3速から第4速へのアップシフトは、H&LRクラッチC3の締結とローブレーキB2の解放により入力回転数INが低下して(図9の4速へ変速中参照)第4速を達成する。このアップシフト中に、更に第5速へのアップシフト要求があるときは、インプットクラッチC1の締結と2346ブレーキB3の解放により入力回転数INが低下して(図9の4→5速へ変速中参照)第5速を達成する。このとき、2346ブレーキB3の締結容量をローブレーキB2の締結容量よりも小さくしているため、仮に、H&LRクラッチC3の締結状態やローブレーキB2の解放状態が不安定であったとしても、2346ブレーキB3がスリップすることで駆動輪に変速ショックが伝達されることなく、安定した素早い変速を達成できる。
以上説明したように、実施例1にあっては下記に列挙する作用効果が得られる。
(1)エンジンEとモータジェネレータMG(電動機)との間に介装された第1クラッチCL1(エンジンクラッチ)と、
モータジェネレータMGと駆動輪RR,RLとの間に介装された自動変速機AT(有段式自動変速機)と、
エンジンEを用いて走行するHEV走行モード(ハイブリッドモード)と、モータジェネレータMGのみを用いて走行するEV走行モード(電気自動車モード)とを走行状態に応じて切り替えるとともに、自動変速機ATの変速段を制御する統合コントローラ10(制御手段)と、
を備え、
統合コントローラ10は、HEV走行モードによる走行中に第3速から第4速へのアップシフト(第1のアップシフト)を行うときは、モータジェネレータMGを4速時目標回転数(第1のアップシフト後に達成すべき第1目標回転数)に向けて回転数制御し、更に第3速から第4速へのアップシフト中(第1のアップシフト中)に第5速へのアップシフト(第2のアップシフト)が要求されたときは、第3速から第4速へのアップシフトの状態にかかわらず第5速へのアップシフトを開始するとともに、4速時目標回転数を5速時目標回転数(第2のアップシフト後に達成すべき第2目標回転数)に変更することとした。
よって、第3速から第4速へのアップシフトの終了を待つことなく第5速へのアップシフトを実行し、また、モータジェネレータMGの回転数制御により素早く回転数を低下させることで、素早くアップシフトを完了させることが可能となり、加減速度の変動を抑制しつつEV走行モードによる走行頻度の減少を抑制できる。
(2)統合コントローラ10は、第5速へのアップシフトを行うときに低下させる2346ブレーキB3(自動変速機内の第2締結要素)の締結容量を、第4速へのアップシフトを行っているときに低下させるローブレーキB2(自動変速機内の第1締結要素)の締結容量よりも低くして第5速へのアップシフトを開始する。
よって、第3速から第4速へのアップシフトと第5速へのアップシフトとが同時に行われることに伴うショックを2346ブレーキB3において吸収することができ、変速ショックを回避できる。
(3)統合コントローラ10は、第5速へのアップシフトを開始後、運転者の第5速へのアップシフト要求がダウンシフト要求に変化したときは、第5速へのアップシフトの状態にかかわらずダウンシフトを開始することとした。
よって、連続アップシフト中における運転者の意図の変更を確認することで、より運転者の意図に沿った変速段を達成できる。
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、第3速から第4速へのアップシフト中の第5速へのアップシフトに限らず、他の変速段から連続変速要求があった場合には、同様に適用可能である。すなわち、連続してアップシフトが要求される場合には、最初のアップシフトで解放される締結要素よりも後のアップシフトで解放される締結要素の締結容量を低下させておくことで、トルクヒューズとして機能させることができ、安定した変速を達成できる。
10 統合コントローラ
16 アクセル開度センサ
17 車速センサ
21 モータ回転数センサ
AT 自動変速機
B1 フロントブレーキ
B2 ローブレーキ
B3 2346ブレーキ
B4 リバースブレーキ
C1 インプットクラッチ
C2 ダイレクトクラッチ
C3 H&LRクラッチ
CL1 第1クラッチ
CL2 第2クラッチ
E エンジン
MG モータジェネレータ
RR,RL 駆動輪

Claims (3)

  1. エンジンと電動機との間に介装されたエンジンクラッチと、
    前記電動機と駆動輪との間に介装された有段式自動変速機と、
    前記エンジンを用いて走行するハイブリッドモードと、前記電動機のみを用いて走行する電気自動車モードとを走行状態に応じて切り替えるとともに、前記有段式自動変速機の変速段を制御する制御手段と、
    を備え、
    前記制御手段は、前記ハイブリッドモードによる走行中に第1のアップシフトを行うときは、前記電動機を前記第1のアップシフト後に達成すべき第1目標回転数に向けて回転数制御し、更に第1のアップシフト中に第2のアップシフトが要求されたときは、前記第1のアップシフトの状態にかかわらず前記第2のアップシフトを開始するとともに、前記第1目標回転数を前記第2のアップシフト後に達成すべき第2目標回転数に変更することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  2. 請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
    前記制御手段は、前記第2のアップシフトを行うときに低下させる前記自動変速機内の第2締結要素の締結容量を、前記第1のアップシフトを行っているときに低下させる前記自動変速機内の第1締結要素の締結容量よりも低くして前記第2のアップシフトを開始することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  3. 請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
    前記制御手段は、前記第2のアップシフトを開始後、運転者の第2のアップシフト要求がダウンシフト要求に変化したときは、前記第2のアップシフトの状態にかかわらずダウンシフトを開始することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
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