JP2014216421A - 電磁波シールド用金属箔、電磁波シールド材及びシールドケーブル - Google Patents

電磁波シールド用金属箔、電磁波シールド材及びシールドケーブル Download PDF

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Abstract

【課題】接触抵抗が低く、耐湿、耐食性に優れ、かつSnカスが発生しにくい電磁波シールド用金属箔、電磁波シールド材及びシールドケーブルを提供する。【解決手段】厚さ100μm以下の金属箔1からなる基材の片面又は両面に、Cu、Ni又はAgとSnとからなるSn合金層2が形成され、該Sn合金層は、Snを20〜80質量%含み、かつ厚さが30〜1500nmである電磁波シールド用金属箔10である。【選択図】図2

Description

本発明は、樹脂層又は樹脂フィルムを積層されて電磁波シールド材に用いられる金属箔、それを用いた電磁波シールド材及びシールドケーブルに関する。
Snめっき被膜は耐食性に優れ、かつ、はんだ付け性が良好で接触抵抗が低いと言う特徴を持っている。このため、例えば、車載電磁波シールド材の複合材料として、銅等の金属箔にSnめっきされて使用されている。
上記の複合材料としては、銅又は銅合金箔からなる基材の一方の面に樹脂層又はフィルムを積層し、他の面にSnめっき被膜を形成した構造が用いられている(特許文献1参照)。
又、アルミニウム又はアルミニウム合金箔の表面に亜鉛置換めっき層、電気ニッケルめっき層、又は電気スズめっき層を形成することで、耐湿性、耐食性を改善した多層めっきアルミニウム(合金)箔が開発されている(特許文献2参照)。
ところで、Snめっきは柔らかいため、金属箔の製造時等に削れてSnカスが発生する。このSnカスは金属箔の生産ラインの搬送ロールに付着、堆積したり、粒状になって金属箔表面の傷や凹凸の原因となる。Snカスを除去するためには、生産ラインを停止して定期的に清掃が必要となり、生産性が低下する。
Snカスを防止するためには、Snめっき被膜を硬くすることが有効であると考えられる。このようなことから、Snめっき被膜中のC濃度を調整して被膜を硬くする方法が知られている(特許文献3参照)。
国際公開WO2009/144973号 特開2013―007092号公報 特許第2971035号公報
しかしながら、金属箔は柔らかいため、その表面に硬いSn層を形成すると、Sn層が金属箔の柔軟性に追従しきれなくなってクラックを生じ、Sn層本来の目的である耐湿性、耐食性が損なわれる。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、接触抵抗が低く、耐湿、耐食性に優れ、かつSnカスが発生しにくい電磁波シールド用金属箔、電磁波シールド材及びシールドケーブルの提供を目的とする。
本発明者らは種々検討した結果、金属箔の表面に所定の組成と厚みのSn合金層を形成することで、接触抵抗が低く、耐湿、耐食性に優れ、かつSnカスが発生しにくい電磁波シールド用金属箔を得ることに成功した。
上記の目的を達成するために、本発明の電磁波シールド用金属箔は、厚さ100μm以下の金属箔からなる基材の片面又は両面に、Cu、Ni又はAgとSnとからなるSn合金層が形成され、該Sn合金層は、Snを20〜80質量%含み、かつ厚さが30〜1500nmである。
前記Sn合金層の微小押し込み硬さが500MPaを超えることが好ましい。
前記Sn合金層がさらに、P、W、Fe、Co及びZnの群から選ばれる1種以上の元素を含むことが好ましい。
前記Sn合金層と前記基材との間に、Cu、Ni若しくはAgからなる金属層、又はCu、Ni若しくはAgと、P、W、Fe、Co若しくはZnとからなる合金層によって構成される下地層が形成されていることが好ましい。
前記Sn合金層の表面に、Sn合金層の酸化物層が形成されていることが好ましい。
前記基材が金、銀、白金、ステンレス、鉄、ニッケル、亜鉛、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金からなることが好ましい。
本発明の電磁波シールド材は、前記電磁波シールド用金属箔の片面に、樹脂層が積層されている。
前記樹脂層は樹脂フィルムであることが好ましい。
本発明のシールドケーブルは、前記電磁波シールド材でシールドされてなる。
本発明によれば、接触抵抗が低く、耐湿、耐食性に優れ、かつSnカスが発生しにくい電磁波シールド用金属箔が得られる。
本発明の第1の実施の形態に係る電磁波シールド用金属箔を示す断面図である。 本発明の第2の実施の形態に係る電磁波シールド用金属箔を示す断面図である。 本発明の実施の形態に係る電磁波シールド材を示す断面図である。 実施例4の試料のSTEMによる断面像を示す図である。 実施例4の試料のSTEMによる線分析の結果を示す図である。 Snカスの試験装置を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明において%とは、特に断らない限り、質量%を示すものとする。
図1(b)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る電磁波シールド用金属箔10は、金属箔からなる基材1と、基材1の片面に形成されたSn合金層2とを有する。
(基材)
基材1は、電磁波シールド効果を発揮する導電性の高い金属であればなんでもよい。基材1としては金、銀、白金、ステンレス、鉄、ニッケル、亜鉛、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金などの箔が挙げられるが、銅又はアルミニウムの箔が一般的である。
基材1の形成方法は特に限定されず、例えば圧延して製造してもよく、電気めっきで箔を形成してもよい。又、後述する電磁波シールド材の樹脂層又は樹脂フィルムの表面に、乾式めっきして基材1を成膜してもよい。
基材1の厚みは、電磁波シールドの対象とする周波数と表皮効果を考慮して決定するのがよい。具体的には、基材1を構成する元素の導電率と、対象となる周波数を下式(1)に代入して得られる表皮深さ以上とするのが好ましい。例えば、基材1として銅箔を使用し、対象となる周波数が100MHzの場合、表皮深さは6.61μmであるので、基材1の厚みを約7μm以上とするのがよい。基材1の厚みが厚くなると、柔軟性や加工性に劣り、原料コストも増加することから100μm以下とする。基材1の厚みは4〜50μmがより好ましく、5〜25μmがさらに好ましい。
d={2/(2π×f×σ×μ)}1/2 (1)
d:表皮深さ(μm)
f:周波数(GHz)
σ:導体の導電率(S/m)
μ:導体の透磁率(H/m)
基材1として銅箔を用いる場合、銅箔の種類に特に制限はないが、典型的には圧延銅箔や電解銅箔の形態で用いることができる。一般的には、電解銅箔は硫酸銅めっき浴やシアン化銅めっき浴からチタン又はステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。
圧延銅箔としては、純度99.9%以上の無酸素銅(JIS-H3100(C1020))又はタフピッチ銅(JIS-H3100(C1100))を用いることができる。又、銅合金箔としては要求される強度や導電性に応じて公知の銅合金を用いることができる。公知の銅合金としては、例えば、0.01〜0.3%の錫入り銅合金や0.01〜0.05%の銀入り銅合金が挙げられ、特に、導電性に優れたものとしてCu-0.12%Sn、Cu-0.02%Agがよく用いられる。例えば、圧延銅箔として導電率が5%以上のものを用いることができる。電解銅箔としては、公知のものを用いることができる。
又、アルミニウム箔としては、純度99.0%以上のアルミニウム箔を用いることができる。又、アルミニウム合金箔としては、要求される強度や導電率に応じて公知のアルミニウム合金を用いることができる。公知のアルミニウム合金としては、例えば、0.01〜0.15%のSiと0.01〜1.0%のFe入りのアルミニウム合金、1.0〜1.5%のMn入りアルミニウム合金が挙げられる。
(Sn合金層)
Sn合金層は、Ni、Cu又はAgと、Snとからなる。Sn合金層は、Snを20〜80質量%含み、かつ厚さが30〜1500nmである。
なお、Sn合金層、下地層、Sn酸化物の組成及び厚みは、後述するSTEMによって測定することができる。
Sn合金層中のSnの割合が20質量%未満であると、Sn合金層の耐食性が低下する。一方、Snの割合が80質量%を超えると、Sn合金層の硬さが低下して柔らかくなり過ぎ、Snカスが発生する。
Ni、Cu、又はAgと、Snとの合金は、他のSn合金に比べて接触抵抗が低く、耐食性も高い。
Sn合金層の厚さが30nm未満であると耐食性が低下し、1500nmを超えるとSn合金層表面に割れやクラックが発生して下地が露出し、同様に耐食性が劣る。
Sn合金層のISO14577−1に準拠した微小押し込み硬さが500MPaを超えると、Snカスが発生し難くなるので好ましい。Sn合金層の微小押し込み硬さが1200MPa以上であるとより好ましく、2000MPa以上であるとさらに好ましい。また、Sn合金層の微小押し込み硬さは20000MPa以下が望ましい。硬さが20000MPaを超えると、Sn合金層に割れやクラックが発生して下地が露出し、耐食性が劣ることがある。
なお、ISO14577−1には、超微小押し込み硬さ試験の方法が規定されている。
Sn合金層はさらに、P、W、Fe、Co及びZnの群から選ばれる1種以上の元素を含んでもよい。Sn合金層がこれら元素を含むと、層を硬くすることができる。Sn合金層中の上記元素の合計割合は、1〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がさらに好ましい。
(Sn合金層の形成方法)
Sn合金層は、合金めっき(湿式めっき)、合金層を構成する合金のターゲットを用いたスパッタ、合金層を構成する成分を用いた蒸着等によって形成することができる。
又、図1(a)に示すように、例えば、基材1の片面にまずSn以外の元素からなる第1層21を形成し、第1層21の表面にSnからなる第2層22を形成した後、熱処理して第1層21の元素を第2層22中に拡散させ、図1(b)に示すSn合金層2を形成することもできる。熱処理の条件は特に限定されないが、例えば、120〜500℃で2秒〜10時間程度とすることができる。
次に、図2を参照し、本発明の第2の実施の形態に係る電磁波シールド用金属箔11について説明する。電磁波シールド用金属箔11は、第1の実施の形態に係る電磁波シールド用金属箔10において、さらに基材1とSn合金層2との間に、下地層3が形成されている。
熱処理によってSn合金層を形成する場合、基材中の元素がSn合金層に拡散する場合があるが、下地層3は基材中の元素の拡散を防止し、Sn合金層中のSnの割合やSn合金層の硬さをコントロールしやすくなる。
下地層3は、(1)Cu、Ni若しくはAgからなる金属層、又は(2)Ni、Cu若しくはAgと、P、W、Fe、Co若しくはZnとからなる合金層、によって構成されている。(2)の例としては、Ni−Zn合金層が挙げられる。
下地層3は、例えば図1(a)の第1層21の厚みを厚くし、熱処理後に第1層21の一部をSn合金層2とせずに残存させることで形成することができる。勿論、基材1の表面に、熱処理せずに直接下地層3、Sn合金層2をこの順にめっき等で形成してもよい。又、下地層3、Sn合金層2は、湿式めっきの他、蒸着、PVD、CVD等によって形成することもできる。
又、基材としてアルミニウムやアルミニウム合金箔を使用する場合、下地層3を電気めっきするための下地めっきとして、下地層3と基材1との間に亜鉛置換めっき層を形成してもよい。
Sn合金層の表面にSn酸化物が形成されていると好ましい。Sn酸化物は耐食性が高く、Sn合金層の表面にSn酸化物が存在すると、Sn合金層の耐食性がさらに向上する。
なお、図1(a)に示すように、加熱によりSn合金層を形成する場合、Snからなる第2層22を形成したときに自然酸化でSn酸化物が第2層22に形成され、その後の加熱による合金化によってもSn合金層中に残存する。このSn酸化物は、耐食性といった特性を向上させる効果がある。
Sn酸化物は、層となっていなくてもよく、Sn合金層の表面に存在すればよいが、2〜30nmの厚みとすると好ましい。Sn酸化物はSn合金層と比較すると接触抵抗が高いため、層の厚みが30nmを超えると接触抵抗が増加する。
なお、Sn合金層を熱処理によって形成した場合、熱処理の際に厚いSn酸化物層が積極的に形成されるので好ましい。
次に、図3を参照し、本発明の実施の形態に係る電磁波シールド材100について説明する。電磁波シールド材100は電磁波シールド用金属箔10と、この金属箔10の片面に樹脂層又は樹脂フィルム4とを積層してなる。
樹脂層としては例えばポリイミド等の樹脂を用いることができ、樹脂フィルムとしては例えばPET(ポリエチレンテレフタラート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)のフィルムを用いることができる。樹脂層や樹脂フィルムは、接着剤により金属箔に接着されてもよいが、接着剤を用いずに溶融樹脂を金属箔上にキャスティングしたり、フィルムを金属箔に熱圧着させてもよい。又、樹脂フィルムにPVDやCVDで直接銅やアルミニウムの層を基材として形成したフィルムや、樹脂フィルムにPVDやCVDで銅やアルミニウムの薄い層を導電層として形成した後、この導電層上に湿式めっきで金属層を厚く形成したメタライズドフィルムを用いてもよい。
樹脂層や樹脂フィルムとしては公知のものを用いることができる。樹脂層や樹脂フィルムの厚みは特に制限されないが、例えば1〜100μm、より好ましくは3〜50μmのものを好適に用いることができる。又、接着剤を用いた場合、接着層の厚みは例えば10μm以下とすることができる。
材料の軽薄化の観点から、電磁波シールド材100の厚みは1.0mm以下、より好ましくは0.01〜0.5mmであることが好ましい。
そして、電磁波シールド材100をケーブルの外側に巻くことで、シールドケーブルが得られる。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(基材)
圧延銅箔としては、厚さ8μmの圧延銅箔(JX日鉱日石金属製の型番C1100)を用いた。
電解銅箔としては、厚さ8μmの無粗化処理の電解銅箔(JX日鉱日石金属製の型番JTC箔)を用いた。
Cuメタライズドフィルムとしては、厚さ8μmのメタライジングCCL(日鉱金属製の製品名「マキナス」)を用いた。
アルミニウム箔としては、厚さ12μmのアルミニウム箔(サン・アルミニウム工業社製)を用いた。
Alメタライズドフィルムとしては、厚さ12μmのPETフィルム(東洋紡績社製)に真空蒸着でアルミニウムを6μm形成したものを用いた。
(Sn合金層)
Sn合金層を、上記基材の片面に形成した。表1に、Sn合金層の形成方法を示す。
表1において「めっき」とは、図1(a)に示す方法で第1層21、第2層22をこの順でめっきした後、窒素雰囲気下において150〜180℃で2〜7時間熱処理したものであり、熱処理後に第1層21が残存した場合、その層を下地層として表1に組成を記載した。表1において「めっきのみ」とはめっきによりSn層を形成し、熱処理を行わなかったものである。表1において「合金めっき」は、合金めっきによりSn合金層を形成したものであり、合金めっきの前に基材上に下地層をめっきした。
又、実施例16〜20は、基材の片面に、表1に示すNi合金めっきを下地層として形成した後、下地層の上にSnめっきを施し、さらに上記条件の熱処理によりSn合金層を形成した。このとき下地層からNi以外の元素(P、W、Fe、Co)も拡散し、3成分を含むSn合金層が形成された。
又、実施例11、12、20はアルミニウム箔に置換めっきによってZn層を形成した後、Zn層の上に下地Ni層、下地Ni層の上にSnめっきを施し、さらに熱処理によりSn合金層を形成した。このうち、Ni層の厚みを薄くした実施例20の場合、表面のSn層にZn層からZnも拡散し、3成分を含むSn−Ni−Zn合金層が形成された。
又、比較例8はアルミニウム箔に置換めっきによってZn層を形成した後、Zn層の上に下地Ni層をめっきし、下地Ni層の上にSnめっきを施した。
なお、各めっきは、以下の条件で形成した。
Niめっき:硫酸Ni浴(Ni濃度:20g/L、電流密度:2〜10A/dm
Snめっき:フェノールスルホン酸Sn浴(Sn濃度:40g/L、電流密度:2〜10A/dm
Agめっき:シアン化Ag浴(Ag濃度:10g/L、電流密度:0.2〜4A/dm
Cuめっき:硫酸Cu浴(Cu濃度:20g/L、電流密度:2〜10A/dm
Zn置換めっき:ジンケート浴(Zn濃度:15g/L)
Ni−Snめっき:ピロリン酸塩浴(Ni濃度10g/L、Sn濃度10g/L、電流密度:0.1〜2A/dm
Co−Snめっき:ピロリン酸塩浴(Co濃度20g/L、Sn濃度20g/L、電流密度:0.2〜3A/dm
Ni−P:硫酸浴(Ni濃度:20g/L、P濃度:20g/L、電流密度:2〜4A/dm
Ni−W:硫酸浴(Ni濃度:20g/L、W濃度:20g/L、電流密度:0.1〜2A/dm
Ni−Fe:硫酸浴(Ni濃度:20g/L、Fe濃度:10g/L、電流密度:0.1〜2A/dm
Ni−Co:硫酸浴(Ni濃度:20g/L、Co濃度:10g/L、電流密度:0.1〜2A/dm
表1において「スパッタ」は、Ni,Snをこの順でスパッタした後、熱処理したものである。
表1において「合金スパッタ」は、対応する合金のターゲット材を用いてスパッタして合金層を形成したものである。なお、合金スパッタで成膜される層は合金層そのものの組成であるので、熱処理は行わなかった。
なお、スパッタ、合金スパッタは以下の条件で行った。
スパッタ装置:バッチ式スパッタリング装置(アルバック社、型式MNS−6000)
スパッタ条件:到達真空度1.0×10-5Pa、スパッタリング圧0.2Pa、スパッタリング電力50W
ターゲット:Ni(純度3N)、Ag(純度3N)、Ni−Sn(それぞれ(質量%で)Ni:Sn=85:15、80:20、57:43、40:60、27:73、20:80)
表1において「蒸着」は、以下の条件で行った。
蒸着装置:真空蒸着装置(アルバック社、型式MB05−1006)
蒸着条件:到達真空度5.0×10-3Pa、電子ビーム加速電圧6kV
蒸着源:Ni(純度3N)
(Sn合金層、下地層、Sn酸化物層の同定及び厚みの測定)
得られた電磁波シールド用金属箔の断面試料について、STEM(走査透過型電子顕微鏡、日本電子株式会社製JEM−2100F)による線分析を行い、層構成を判定した。分析した指定元素は、Sn、Ag、Ni、Cu、P、W、Fe、Co、Zn、C、S及びOである。また、上記した指定元素の合計を100%として、各層における各元素の割合(wt%)を分析した(加速電圧:200kV、測定間隔:2nm)。
図4に示すように、Snを5wt%以上含み、かつAg、NiおよびCuのいずれかの元素を5wt%以上含む層をSn合金層とし、その厚みを図4上(線分析の走査距離に対応)で求めた。Sn合金層よりも下層側に位置し、Snが5wt%未満であり、Ag、NiおよびCuのいずれかの元素を5wt%以上含む層を下地層とし、その厚みを図上で求めた。Sn合金層より上層側に位置し、Snが5wt%以上であり、かつOが5wt%以上である層をSn酸化物層とし、その厚みを図上で求めた。STEMの測定を3視野で行い、3視野×5カ所の平均値を各層の厚さとした。
(Sn合金層、下地層の組成)
Sn合金層、下地層の組成は、STEM(走査透過型電子顕微鏡)による線分析によって求めた。Sn合金層および下地層を構成する各元素を指定元素とし、指定元素の合計を100%としたときの各元素の質量割合をSn合金層、下地層の組成とした。
(硬さの測定)
得られた電磁波シールド用金属箔のSn合金層側の面について、ISO14577−1に従う、超微小押し込み硬さ試験で硬さを測定した。硬さの測定にはエリオニクス社製のENT−2100を使用した。
(接触抵抗及び耐食性の評価)
得られた電磁波シールド用金属箔の合金層側の面について塩水噴霧試験を行い、試験前後のSn合金層側の最表面の接触抵抗を測定した。
接触抵抗の測定は山崎精機株式会社製の電気接点シミュレーターCRS−1を使用して四端子法で測定した。プローブ:金プローブ、接触荷重:20gf、バイアス電流:10mA、摺動距離:1mm
塩水噴霧試験は、JIS−Z2371(温度:35℃、塩水成分:塩化ナトリウム、塩水濃度:5wt%、噴霧圧力:98±10kPa、噴霧時間:48h)に従った。塩水噴霧試験前後の評価が共に◎か○であれば実用上、問題はない。なお、塩水噴霧試験前の初期の接触抵抗は、接触抵抗自体の評価を示し、塩水噴霧試験後の接触抵抗は耐食性の評価を示す。
◎:接触抵抗が20mΩ未満
○:接触抵抗が20mΩ以上、100mΩ未満
×:接触抵抗が100mΩ以上
(Snカス)
図6に示す試験装置300を用いて評価した。
得られた電磁波シールド用金属箔10を、Sn合金層側の面が上になるように鉄板302上に貼り付け、その上に、BWF(ドイツ)社製の厚み3mmのBCフェルト(商品名)304を巻きつけた4.8mm径の鉄球306を組み込んだ錘308を置き、鉄球306に30gの荷重を加えて往復距離10mm、往復回数15回で平面方向にSn合金層上を擦った後、フェルト304に付着しためっきカスを目視で観察した。
○:めっきカスが確認できない
×:めっきカスが確認できた
得られた結果を表1に示す。
表1から明らかなように、基材の表面に、Cu、Ni又はAgとSnとからなり、Snを20〜80質量%含み、かつ厚さが30〜1500nmであるSn合金層を有する各実施例の場合、接触抵抗が低く、耐食性に優れ、かつSnカスが発生しにくいものとなった。
特に、めっき後に熱処理してSn合金層を形成したために、他の実施例よりもSn酸化物層が厚い実施例1〜12、16〜20の場合、耐食性がさらに優れていた。
なお、図4、5は、それぞれ実施例1の試料のSTEMによる断面像、及びSTEMによる線分析の結果を示す。断面像におけるX層、Y層は、線分析の結果から、それぞれNi−Sn合金層(Sn合金層)、Ni層(下地層)であることがわかる。
一方、Sn合金層を形成しなかった比較例1、2の場合、耐食性が大幅に劣った。
Sn合金層の厚さが20nm未満である比較例3の場合、耐食性が大幅に劣った。Sn合金層の厚さが1500nmを超えた比較例4の場合、Snカスは発生し難かったが、耐食性が大幅に劣った。なお、比較例4の塩水噴霧試験後の表面のSn合金層をSEM(倍率5000倍)で観察したところ、クラックが生じて基材が露出したのが観察された。
Sn合金層として、Sn−Co層を形成した比較例5の場合、Snカスは発生し難かったが、接触抵抗が高くなり、耐食性も劣った。
Sn合金層の代わりに純Sn層を設けた比較例6〜8の場合、Sn層の硬さが500MPa以下となり、Snカスが顕著に発生した。
Sn合金層の代わりにNi層を形成した比較例9の場合、耐食性が劣った。
Sn合金層中のSnの割合が20質量%未満である比較例10の場合、接触抵抗が高くなり、耐食性も劣った。又、Sn合金層の硬さが500MPa以下となり、Snカスが顕著に発生した。
Sn合金層の硬さが20000MPaを超えた比較例11の場合、Sn合金層が硬くなり過ぎ、耐食性が大幅に劣った。なお、比較例11の塩水噴霧試験後の表面のSn合金層をSEM(倍率5000倍)で観察したころ、クラックが生じて基材が露出したのが観察された。
1 金属箔
2 Sn合金層
3 下地層
4 樹脂層又は樹脂フィルム
10 電磁波シールド用金属箔
100 電磁波シールド材
上記の目的を達成するために、本発明の電磁波シールド用金属箔は、厚さ100μm以下の金属箔からなる基材の片面又は両面に、Cu、Ni又はAgとSnとからなるか、又は該組成に対し、P、W、Fe及びZnの群から選ばれる1種以上の元素を1〜40質量%含むSn合金層が形成され、前記Sn合金層の微小押し込み硬さが500MPaを超え、20000MPa以下であり、前記Sn合金層をSEMで表面観察したとき、一つ一つの突起の凸部を取り囲むことのできる最小円の直径の平均値で表される平均径0.1〜2.0μmの複数の針状又は柱状の突起を有さず、該Sn合金層は、Snを20〜80質量%含み、かつ厚さが30〜1500nmである。
記Sn合金層と前記基材との間に、Cu、Ni若しくはAgからなる金属層、又はCu、Ni若しくはAgと、P、W、Fe、Co若しくはZnとからなる合金層によって構成される下地層が形成されていることが好ましい。
前記Sn合金層の表面に、Sn合金層の酸化物層が形成されていることが好ましい。
前記基材が金、銀、白金、ステンレス、鉄、ニッケル、亜鉛、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金からなることが好ましい。

上記の目的を達成するために、本発明の電磁波シールド用金属箔は、厚さ100μm以下の金属箔からなる基材の片面又は両面にNi又はAgとSnとからなSn合金層が形成され、前記Sn合金層の表面に、2〜30nmの厚みの該Sn合金層の酸化物層が形成され、前記Sn合金層の微小押し込み硬さが500MPaを超え、20000MPa以下であり、前記Sn合金層をSEMで表面観察したとき、一つ一つの突起の凸部を取り囲むことのできる最小円の直径の平均値で表される平均径0.1〜2.0μmの複数の針状又は柱状の突起を有さず、該Sn合金層は、Snを20〜80質量%含み、かつ厚さが30〜1500nmである。
前記Sn合金層と前記基材との間に、Cu、Ni若しくはAgからなる金属層、又はCu、Ni若しくはAgと、P、W、Fe、Co若しくはZnとからなる合金層によって構成される下地層が形成されていることが好ましい
前記基材が金、銀、白金、ステンレス、鉄、ニッケル、亜鉛、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金からなることが好ましい。
(Sn合金層)
Sn合金層を、上記基材の片面に形成した。表1に、Sn合金層の形成方法を示す。
表1において「めっき」とは、図1(a)に示す方法で第1層21、第2層22をこの順でめっきした後、窒素雰囲気下において150〜180℃で2〜7時間熱処理したものであり、熱処理後に第1層21が残存した場合、その層を下地層として表1に組成を記載した。表1において「めっきのみ」とはめっきによりSn層を形成し、熱処理を行わなかったものである。表1において「合金めっき」は、合金めっきによりSn合金層を形成したものであり、合金めっきの前に基材上に下地層をめっきした。
又、参考例16〜20は、基材の片面に、表1に示すNi合金めっきを下地層として形成した後、下地層の上にSnめっきを施し、さらに上記条件の熱処理によりSn合金層を形成した。このとき下地層からNi以外の元素(P、W、Fe、Co)も拡散し、3成分を含むSn合金層が形成された。
又、実施例11、12、参考例20はアルミニウム箔に置換めっきによってZn層を形成した後、Zn層の上に下地Ni層、下地Ni層の上にSnめっきを施し、さらに熱処理によりSn合金層を形成した。このうち、Ni層の厚みを薄くした参考例20の場合、表面のSn層にZn層からZnも拡散し、3成分を含むSn−Ni−Zn合金層が形成された。
又、比較例8はアルミニウム箔に置換めっきによってZn層を形成した後、Zn層の上に下地Ni層をめっきし、下地Ni層の上にSnめっきを施した。
表1から明らかなように、基材の表面に、Cu、Ni又はAgとSnとからなり、Snを20〜80質量%含み、かつ厚さが30〜1500nmであるSn合金層を有する各実施例の場合、接触抵抗が低く、耐食性に優れ、かつSnカスが発生しにくいものとなった。
特に、めっき後に熱処理してSn合金層を形成したために、他の実施例よりもSn酸化物層が厚い実施例1〜12場合、耐食性がさらに優れていた。
なお、図4、5は、それぞれ実施例1の試料のSTEMによる断面像、及びSTEMによる線分析の結果を示す。断面像におけるX層、Y層は、線分析の結果から、それぞれNi−Sn合金層(Sn合金層)、Ni層(下地層)であることがわかる。


Claims (9)

  1. 厚さ100μm以下の金属箔からなる基材の片面又は両面に、Cu、Ni又はAgとSnとからなるSn合金層が形成され、
    該Sn合金層は、Snを20〜80質量%含み、かつ厚さが30〜1500nmである電磁波シールド用金属箔。
  2. 前記Sn合金層の微小押し込み硬さが500MPaを超える請求項1記載の電磁波シールド用金属箔
  3. 前記Sn合金層がさらに、P、W、Fe、Co及びZnの群から選ばれる1種以上の元素を含む請求項1又は2に記載の電磁波シールド用金属箔。
  4. 前記Sn合金層と前記基材との間に、Cu、Ni若しくはAgからなる金属層、又はCu、Ni若しくはAgと、P、W、Fe、Co若しくはZnとからなる合金層によって構成される下地層が形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の電磁波シールド用金属箔。
  5. 前記Sn合金層の表面に、Sn合金層の酸化物層が形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の電磁波シールド用金属箔。
  6. 前記基材が金、銀、白金、ステンレス、鉄、ニッケル、亜鉛、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金からなる請求項1〜5のいずれかに記載の電磁波シールド用金属箔。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の電磁波シールド用金属箔の片面に、樹脂層が積層されている電磁波シールド材。
  8. 前記樹脂層は樹脂フィルムであることを特徴とする請求項7に記載の電磁波シールド材。
  9. 請求項7又は8に記載の電磁波シールド材でシールドされたシールドケーブル。
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