JP2014214178A - 熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物およびその製造方法、並びに、熱線遮蔽塩化ビニルフィルム、熱線遮蔽合わせ透明基材 - Google Patents
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Abstract
Description
一方、透明成形体表面に、金属等を直接蒸着してなる熱線遮蔽板は、製造に際して高真空で精度の高い雰囲気制御を要する装置が必要となる。このため、量産性が悪く、汎用性に乏しいという問題を有している。
具体的には、塩化ビニルフィルム製造用可塑剤中にタングステン酸化物や複合タングステン酸化物の微粒子を分散させた熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物という段階を経ることで、タングステン酸化物や複合タングステン酸化物の微粒子と塩化ビニルフィルム製造用可塑剤とを十分に分散させた状態で、塩化ビニル樹脂中へ投入するものである。これにより、タングステン酸化物や複合タングステン酸化物の微粒子を塩化ビニルフィルム中へ均一に分散させ、当該塩化ビニルフィルムに低コストで熱線遮蔽機能を付与することができる。
当該知見に基づき、本発明者らはDOTP中にタングステン酸化物微粒子および/又は複合タングステン酸化物微粒子を分散させる検討を行なった。すると、当該タングステン酸化物微粒子および/又は複合タングステン酸化物微粒子の凝集が起こることを知見した。
熱線遮蔽塩化ビニルフィルムを製造するために使用される熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物の製造方法であって、
一般式WOX(但し、2.45≦x≦2.999)で示されるタングステン酸化物微粒子、および/または、一般式MyWOZ(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示され、かつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子と、塩基性ウレタン系分散剤とを、有機溶剤に分散して分散液を得る工程と、
当該分散液に、ジオクチルテレフタレートを混合して混合物を得る工程と、
当該混合物から上記有機溶剤を5質量%以下となる迄、除去して上記熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物を得る工程とを、有することを特徴とする熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物の製造方法である。
第2の発明は、
上記有機溶剤として、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、エタノールから選択される少なくとも1種を用いることを特徴とする第1の発明に記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物の製造方法である。
第3の発明は、
上記塩基性ウレタン系分散剤として、3〜100mgKOH/gのアミン価を有するものを用いることを特徴とする第1、第2の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物の製造方法である。
第4の発明は、
上記塩基性ウレタン系分散剤として、200℃以上の熱分解温度を有するものを用いることを特徴とする第1〜第3の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物の製造方法である。
第5の発明は、
上記タングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子が、平均粒径800nm以下の微粒子であることを特徴とする第1〜第4の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物の製造方法である。
第6の発明は、
上記タングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子が、Si、Ti、Zr、Alの1種類以上を含有する化合物によって表面処理されていることを特徴とする第1〜第5の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物の製造方法である。
第7の発明は、
一般式WOX(但し、2.45≦x≦2.999)で示されるタングステン酸化物微粒子、および/または、一般式MyWOZ(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示され、かつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子と、塩基性ウレタン系分散剤と、ジオクチルテレフタレートと、有機溶剤とを、含むことを特徴とする熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物である。
第8の発明は、
上記塩基性ウレタン系分散剤が、3〜100mgKOH/gのアミン価を有するものであることを特徴とする第7の発明に記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物である。
第9の発明は、
上記塩基性ウレタン系分散剤が、200℃以上の熱分解温度を有するものであることを特徴とする第7、第8の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物である。
第10の発明は、
上記タングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子が、平均粒径800nm以下の微粒子であることを特徴とする第7〜第9の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物である。
第11の発明は、
上記タングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子が、Si、Ti、Zr、Alの1種類以上を含有する化合物によって表面処理されていることを特徴とする第7〜第10の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物である。
第12の発明は、
塩化ビニル樹脂中に、一般式WOX(但し、2.45≦x≦2.999)で示されるタングステン酸化物微粒子、および/または、一般式MyWOZ(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示され、かつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子と、塩基性ウレタン系分散剤と、ジオクチルテレフタレートとが分散していることを特徴とする熱線遮蔽塩化ビニルフィルムである。
第13発明は、
上記塩基性ウレタン系分散剤が、3〜100mgKOH/gのアミン価を有するものであることを特徴とする第12の発明に記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルムである。
第14の発明は、
上記塩基性ウレタン系分散剤が、200℃以上の熱分解温度を有するものであることを特徴とする第12、第13の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルムである。
第15の発明は、
上記タングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子が、平均粒径800nm以下の微粒子であることを特徴とする第12〜第14の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルムである。
第16の発明は、
上記タングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子が、Si、Ti、Zr、Alの1種類以上を含有する化合物によって表面処理されていることを特徴とする第12〜第15の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルムである。
第17の発明は、
少なくとも2枚以上の透明基材間に、第12〜第16の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルムが存在していることを特徴とする熱線遮蔽合わせ透明基材である。
第18の発明は、
前記透明基材の内、少なくとも1枚以上がガラスであることを特徴とする第17の発明に記載の熱線遮蔽合わせ透明基材である。
本発明に係る熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物は、熱線遮蔽機能を有する微粒子として、一般式WOX(但し、2.45≦x≦2.999)で示されるタングステン酸化物微粒子、および/または、一般式MyWOZ(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示され、かつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子を用いている。そして、当該熱線遮蔽機能を有する微粒子と、分散剤とを、有機溶剤に分散して分散液を得、得られた分散液に、塩化ビニルフィルム製造用可塑剤を混合した後、減圧蒸留法を用いて、上記有機溶剤を5質量%以下まで除去することで得られたものである。
以下、当該熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物、熱線遮蔽塩化ビニルフィルムおよび熱線遮蔽合わせ透明基材について、(1)熱線遮蔽機能を有する微粒子、(2)分散剤、(3)溶剤、(4)熱線遮蔽機能を有する微粒子の溶剤への分散、(5)熱線遮蔽機能を有する微粒子が分散する溶剤へのDOTPの添加、(6)溶剤除去、(7)その他の添加剤、(8)熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物、(9)熱線遮蔽塩化ビニルフィルム、(10)熱線遮蔽合わせ透明基材、の順で詳細に説明する。
本発明に係る熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物に用いられる熱線遮蔽機能を有する微粒子は、タングステン酸化物微粒子、および/または、複合タングステン酸化物微粒子である。タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子は、近赤外線領域、特に、波長1000nm以上の光を大きく吸収するため、その透過色調はブルー系の色調となるものが多い。
この理由は、粒子の分散粒子径が小さければ、幾何学散乱や、ミー散乱による波長400nm〜780nmの可視光線領域における光の散乱が低減されるからである。当該光の散乱が低減されれば、熱線遮蔽膜が曇りガラスのようになってしまい、鮮明な透明性が得られなくなることを回避できる。これは、分散粒子径が200nm以下になると、上記幾何学散乱またはミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になる為である。レイリー散乱領域では、散乱光は粒子径の6乗に反比例して低減するため、分散粒子径の減少に伴い散乱が低減し透明性が向上する。さらに、分散粒子径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。光の散乱を回避する観点からは、分散粒子径は小さい方が好ましく、分散粒子径が1nm以上であれば工業的な製造は容易である。
以下、本発明に係る熱線遮蔽機能を有する微粒子について、(a)タングステン酸化物微粒子、(b)複合タングステン酸化物微粒子、の順でさらに説明する。
一般式WOX(但し、2.45≦x≦2.999)で示されるタングステン酸化物微粒子としては、例えばW18O49、W20O58、W4O11などを挙げることができる。xの値が2.45以上であれば、当該熱線遮蔽材料中に目的外であるWO2の結晶相が現れるのを完全に回避することが出来ると共に、材料の化学的安定性を得ることが出来る。一方、xの値が2.999以下であれば、十分な量の自由電子が生成され効率よい熱線遮蔽材料となる。xの値が、2.95以下であれば熱線遮蔽材料として、さらに好ましい。尚、xの範囲が2.45≦x≦2.999であるようなWOX化合物は、いわゆるマグネリ相と呼ばれる化合物に含まれる。
本発明に用いる複合タングステン酸化物微粒子は、熱線遮蔽効果を発現する成分であり、一般式MyWOZ(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示される複合タングステン酸化物微粒子である。
本発明に係る分散剤は、塩基性ウレタン系分散剤であって、アミン価が3〜100mgKOH/gであり、熱分解温度が200℃以上のものであることが好ましい。当該分散剤の分子量は、適宜選択できる。
なお、本発明において「アミン価」とは、試料1g中に含まれるアミン成分を中和するのに要する塩酸と等量の水酸化カリウムのmg数をいう。
本発明者らは、本発明に係る分散剤の優れた分散効果は、当該3〜100mgKOH/gのアミン価を有する塩基性ウレタン系樹脂が、1級、2級または3級のアミン化合物であることによるのではないかと、考えている。
これは、同じウレタン系分散剤であっても、酸性ウレタン系分散剤は、タングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子の、DOTP中への分散を妨げる場合があることによる。
本発明に係る熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物に用いられる溶剤は、120℃以下の沸点を持つ有機溶剤が好ましく使用される。
沸点が120℃以下であれば、減圧蒸留で除去することが容易である。この結果、減圧蒸留の工程で除去することが迅速に進み、熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物の生産性に寄与するからである。さらに、減圧蒸留の工程が容易かつ十分に進行するので、本発明に係る熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物中に過剰な溶剤が残留するのを回避できる。この結果、塩化ビニルフィルム成形時に気泡の発生などの不具合が発生することを回避できる。具体的には、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、エタノールが挙げられるが、沸点が120℃以下で熱線遮蔽機能を発揮する微粒子を均一に分散可能なものであれば、任意に選択できる。
上述したタングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子を、溶剤へ分散する方法について説明する。
タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子の溶剤への分散方法は、当該微粒子が均一に溶剤に分散する方法であれば任意に選択できる。例としては、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散などの方法を用いることが出来る。
タングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子と、分散剤とを溶剤に分散させた後、該熱線遮蔽機能を有する微粒子が分散する溶剤へDOTPを添加し、撹拌して混合物を得る。撹拌装置は、一般的な攪拌混合装置を用いることができる。
本発明に係る熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物の溶剤含有量は、塩化ビニルフィルム成形時に過剰な溶剤に起因する気泡の発生などの不具合を回避するという観点から、5質量%以下であることが好ましい。尚、本発明に係る熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物において、溶剤含有量を5質量%以下まで除去する方法としては多様な方法が適用出来るが、減圧蒸留する方法が好ましい。
具体的には、上記混合物を攪拌しながら減圧蒸留して、熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物と有機溶剤成分とを分離する。減圧蒸留に用いる装置としては、真空攪拌型の乾燥機があげられるが、上記機能を有する装置であれば良く、特に限定されない。減圧蒸留法を用いることで、溶剤の除去効率が向上すると伴に、熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物が長時間高温に曝されることがないので、分散している微粒子の凝集が起こらず好ましい。さらに生産性も上がり、蒸発した有機溶剤を回収することも容易で、環境的配慮からも好ましい。
本発明に係る熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物へは、さらに、一般的な添加剤を配合することも可能である。例えば、必要に応じて任意の色調を与えるための、アゾ系染料、シアニン系染料、キノリン系、ペリレン系染料、カーボンブラック等、一般的に熱可塑性樹脂の着色に利用されている染料、顔料を添加しても良い。また、ヒンダードフェノール系、リン系等の安定剤、離型剤、ヒドロキシベンゾフェノン系、サリチル酸系、HALS系、トリアゾール系、トリアジン系等の有機紫外線吸収剤、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の無機紫外線吸収剤、カップリング剤、界面活性剤、帯電防止剤等を添加剤として使用することができる。
本発明に係る熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物は、一般式WOX(但し、2.45≦x≦2.999)で示されるタングステン酸化物微粒子、および/または、一般式MyWOZ(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示され、かつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子と、塩基性ウレタン系分散剤と、ジオクチルテレフタレートと、有機溶剤と、所望により上述したその他の添加剤を含む組成物である。
本発明に係る熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物は、塩化ビニル樹脂へ混練されることで、当該塩化ビニル樹脂の光学的特性、機械的特性を損なうことなく、低コストで熱線遮蔽機能を付与することができる。
さらに、本発明に係る熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物は、可塑剤として内分泌攪乱物質であるとの懸念が無いDOTPを用を用いている為、環境負荷が少ないという優れた効果を発揮するものである。
本発明に係る熱線遮蔽塩化ビニルフィルムについて説明する。
本発明に係る熱線遮蔽塩化ビニルフィルムは、上述した熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物を、塩化ビニル樹脂と混練して分散させた後、押出成形法、カレンダー成形法等の、公知の方法によりフィルム状に成形することによって得られる。
本発明に係る熱線遮蔽塩化ビニルフィルムは、塩化ビニル樹脂の、光学的特性、耐貫通性に優れるという機械的特性を担保したまま、優れた熱線遮蔽機能を発揮するものである。
さらに、本発明に係る熱線遮蔽塩化ビニルフィルムは、可塑剤として内分泌攪乱物質であるとの懸念が無いDOTPを用いている為、環境負荷が少ないという優れた効果を発揮するものである。
本発明に係る熱線遮蔽塩化ビニルフィルムを用いた熱線遮蔽合わせ透明基材は、少なくとも2枚以上の透明基材間に、熱線遮蔽塩化ビニルフィルムが存在していることを熱線遮蔽合わせ透明基材であって様々な形態がある。
例えば、透明基材として無機ガラスを用いた熱線遮蔽合わせ無機ガラスは、本発明に係る熱線遮蔽塩化ビニルフィルムを挟み込んで存在させた対向する複数枚の無機ガラスを、公知の方法で張り合わせ一体化することによって得られる。得られた熱線遮蔽合わせ無機ガラスは、主に自動車のフロント用の無機ガラスや、窓ガラス、アーケード等の構造材に使用することが出来る。
ここで、当該熱線遮蔽合わせ無機ガラスを自動車に用いることを考えると、自動車内の温度上昇抑制効果を考慮して、当該赤外線反射フィルムを本発明に係る熱線遮蔽膜より車外側に存在させる構成が好ましい。
また、所望により、本発明に係る熱線遮蔽塩化ビニルフィルム単体として使用すること、無機ガラスや透明樹脂等の透明基材の片面または両面に本発明に係る熱線遮蔽塩化ビニルフィルムを存在させて使用することも、勿論可能である。
さらに、本発明に係る熱線遮蔽合わせ透明基材は、可塑剤として内分泌攪乱物質であるとの懸念が無いDOTPを用いている為、環境負荷が少ないという優れた効果を発揮するものである。
本実施例において得られた熱線遮蔽塩化ビニルフィルムに関し、ヘイズH(単位:%)は、ヘイズメーター(村上色彩研究所製)を使用し、JIS K 7136に準拠して測定した。また、の可視光透過率並びに日射透過率は、日立製作所(株)製の分光光度計U−4000を用いて測定した。
尚、当該日射透過率は、熱線遮蔽塩化ビニルフィルムの熱線遮蔽性能を示す指標である。
複合タングステン酸化物微粒子として粒径1〜3μmの複合タングステン酸化物Cs0.33WO330gと、炭化水素溶剤としてトルエン210gとを、攪拌して混合物とした。当該混合物へ、塩基性ウレタン系分散剤としてDISPERBYK−2150(ビックケミー社製)60gを添加し、スラリーを調製した。このスラリーをビーズとともに媒体攪拌ミルに投入し、スラリーを循環させて粉砕分散処理を行い、塩基性ウレタン系分散剤で被覆された複合タングステン酸化物の微粒子分散液(以下、A液と略称する。)を得た。
さらに、A液100重量部へ、DOTP70重量部を添加混合し、それをエバポレーターを使用して80℃で1時間減圧蒸留を行い、トルエンを除去し、実施例1に係る熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物(以下、組成物Aと略称する。)を得た。
得られた組成物Aは、DOTP中に複合タングステン酸化物が良好に分散していることを示す、濁りのない透明な青色の液体であった。
以上、実施例1に係る分散剤の種別、性状、得られた組成物の透明性の評価結果を表1に記載した。以下、実施例2〜11、比較例1〜4についても、同様に表1に記載した。
分散剤としてDISPERBYK−2155(ビックケミー社製)を使用した以外は実施例1と同様にして組成物Bを得た。得られた組成物Bは、DOTP中に複合タングステン酸化物が良好に分散していることを示す、濁りのない透明な青色の液体であった。
分散剤としてDISPERBYK−2163(ビックケミー社製)を使用した以外は実施例1と同様にして組成物Cを得た。得られた組成物Cは、DOTP中に複合タングステン酸化物が良好に分散していることを示す、濁りのない透明な青色の液体であった。
分散剤としてDISPERBYK−161(ビックケミー社製)を使用した以外は実施例1と同様にして組成物Dを得た。得られた組成物Dは、DOTP中に複合タングステン酸化物が良好に分散していることを示す、濁りのない透明な青色の液体であった。
分散剤としてDISPERBYK−163(ビックケミー社製)を使用した以外は実施例1と同様にして組成物Eを得た。得られた組成物Eは、DOTP中に複合タングステン酸化物が良好に分散していることを示す、濁りのない透明な青色の液体であった。
分散剤としてDISPERBYK−164(ビックケミー社製)を使用した以外は実施例1と同様にして組成物Fを得た。得られた組成物Fは、DOTP中に複合タングステン酸化物が良好に分散していることを示す、濁りのない透明な青色の液体であった。
分散剤としてDISPERBYK−182(ビックケミー社製)を使用した以外は実施例1と同様にして組成物Gを得た。得られた組成物Gは、DOTP中に複合タングステン酸化物が良好に分散していることを示す、濁りのない透明な青色の液体であった。
分散剤としてEFKA−4015(BASF社製)を使用した以外は実施例1と同様にして組成物Hを得た。得られた組成物Hは、DOTP中に複合タングステン酸化物が良好に分散していることを示す、濁りのない透明な青色の液体であった。
分散剤としてEFKA−4046(BASF社製)を使用した以外は実施例1と同様にして組成物Iを得た。得られた組成物Iは、DOTP中に複合タングステン酸化物が良好に分散していることを示す、濁りのない透明な青色の液体であった。
分散剤としてEFKA−4061(BASF社製)を使用した以外は実施例1と同様にして組成物Jを得た。得られた組成物Jは、DOTP中に複合タングステン酸化物が良好に分散していることを示す、濁りのない透明な青色の液体であった。
分散剤としてEFKA−4080(BASF社製)を使用した以外は実施例1と同様にして組成物Kを得た。得られた組成物Kは、DOTP中に複合タングステン酸化物が良好に分散していることを示す、濁りのない透明な青色の液体であった。
分散剤としてDISPERBYK−174(ビックケミー社製)を使用した以外は実施例1と同様にして組成物Lを得た。得られた組成物Lは、DOTP中で複合タングステン酸化物が凝集したゲル状物質であった。
分散剤としてDISPERBYK−2001(ビックケミー社製)を使用した以外は実施例1と同様にして組成物Mを得た。得られた組成物Mは、DOTP中で複合タングステン酸化物が凝集したゲル状物質であった。
分散剤としてDISPERBYK−2070(ビックケミー社製)を使用した以外は実施例1と同様にして組成物Nを得た。得られた組成物Nは、DOTP中で複合タングステン酸化物が凝集したゲル状物質であった。
分散剤としてDISPERBYK−2000(ビックケミー社製)を使用した以外は実施例1と同様にして組成物Oを得た。得られた組成物Oは、DOTP中で複合タングステン酸化物が凝集したゲル状物質であった。
次に、得られた組成物A11.7質量%、DOTP30.1質量%、塩化ビニル樹脂58.2質量%を混合し、2本ロールを使用して150℃で15分混練し、カレンダーロール法で0.3mm厚の実施例1に係る熱線遮蔽塩化ビニルフィルム(以下、「フィルムA」と記載する。)を得た。
フィルムAの光学特性は、表2に示すように、可視光透過率69.0%のときの日射透過率は32.1%で、ヘイズ値は2.2%であった。
実施例1〜11においては、分散剤として3〜100mgKOH/gのアミン価を有する塩基性ウレタン系分散剤を使用することで、DOTP中に複合タングステン酸化物が良好に分散していることを示す、濁りのない透明な青色の組成物が得られた。また当該組成物を使用することでヘイズの低い透明なフィルムAが得られた。
一方、比較例1においては、分散剤として酸性分散剤を使用したために、複合タングステン酸化物への分散剤の吸着が十分ではなく、複合タングステン酸化物の凝集が生じていた。また比較例2〜4においては、分散剤とDOTPとの相溶性が十分でないために、複合タングステン酸化物をDOTP中に分散させることができなかった。
Claims (18)
- 熱線遮蔽塩化ビニルフィルムを製造するために使用される熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物の製造方法であって、
一般式WOX(但し、2.45≦x≦2.999)で示されるタングステン酸化物微粒子、および/または、一般式MyWOZ(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示され、かつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子と、塩基性ウレタン系分散剤とを、有機溶剤に分散して分散液を得る工程と、
当該分散液に、ジオクチルテレフタレートを混合して混合物を得る工程と、
当該混合物から上記有機溶剤を5質量%以下となる迄、除去して上記熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物を得る工程とを、有することを特徴とする熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物の製造方法。 - 上記有機溶剤として、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、エタノールから選択される少なくとも1種を用いることを特徴とする請求項1記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物の製造方法。
- 上記塩基性ウレタン系分散剤として、3〜100mgKOH/gのアミン価を有するものを用いることを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物の製造方法。
- 上記塩基性ウレタン系分散剤として、200℃以上の熱分解温度を有するものを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物の製造方法。
- 上記タングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子が、平均粒径800nm以下の微粒子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物の製造方法。
- 上記タングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子が、Si、Ti、Zr、Alの1種類以上を含有する化合物によって表面処理されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物の製造方法。
- 一般式WOX(但し、2.45≦x≦2.999)で示されるタングステン酸化物微粒子、および/または、一般式MyWOZ(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示され、かつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子と、塩基性ウレタン系分散剤と、ジオクチルテレフタレートと、有機溶剤とを、含むことを特徴とする熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物。
- 上記塩基性ウレタン系分散剤が、3〜100mgKOH/gのアミン価を有するものであることを特徴とする請求項7に記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物。
- 上記塩基性ウレタン系分散剤が、200℃以上の熱分解温度を有するものであることを特徴とする請求項7、8のいずれかに記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物。
- 上記タングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子が、平均粒径800nm以下の微粒子であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物。
- 上記タングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子が、Si、Ti、Zr、Alの1種類以上を含有する化合物によって表面処理されていることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルム製造用組成物。
- 塩化ビニル樹脂中に、一般式WOX(但し、2.45≦x≦2.999)で示されるタングステン酸化物微粒子、および/または、一般式MyWOZ(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示され、かつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子と、塩基性ウレタン系分散剤と、ジオクチルテレフタレートとが分散していることを特徴とする熱線遮蔽塩化ビニルフィルム。
- 上記塩基性ウレタン系分散剤が、3〜100mgKOH/gのアミン価を有するものであることを特徴とする請求項12に記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルム。
- 上記塩基性ウレタン系分散剤が、200℃以上の熱分解温度を有するものであることを特徴とする請求項12、13のいずれかに記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルム。
- 上記タングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子が、平均粒径800nm以下の微粒子であることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルム。
- 上記タングステン酸化物微粒子および/または複合タングステン酸化物微粒子が、Si、Ti、Zr、Alの1種類以上を含有する化合物によって表面処理されていることを特徴とする請求項12〜15のいずれかに記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルム。
- 少なくとも2枚以上の透明基材間に、請求項12〜16のいずれかに記載の熱線遮蔽塩化ビニルフィルムが存在していることを特徴とする熱線遮蔽合わせ透明基材。
- 前記透明基材の内、少なくとも1枚以上がガラスであることを特徴とする請求項17に記載の熱線遮蔽合わせ透明基材。
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