第1の発明は、外板と内板と枠体とによって形成される空間に真空断熱材を配置して前記真空断熱材以外の前記空間に硬質ウレタンフォームを発泡充填した断熱扉であって、前記外板は、外部に露出する前面をガラス板で構成し、前記真空断熱材を前記外板と前記内板との中間よりも前記内板寄りに配置もしくは前記真空断熱材を前記内板に固定し、前記枠体の前端が前記ガラス板で構成した前記外板の前面よりも前方に突出せず前記ガラス板で構成した前記外板の前面の全面が外部に露出するように前記外板を硬質ウレタンフォームの接着力を利用して固定したことを特徴とする断熱扉である。
上記構成において、外板は、外部に露出する前面をガラス板で構成し、ガラス板で構成した外板の前面の全面が外部に露出するので、断熱扉の前面を、凹凸のない、全面フラット感のある、すっきりとした外観にすることができる。
また、枠体は、枠体の前端がガラス板で構成した外板の前面よりも前方に突出せず、従来のガラス板挿入部に相当する構造を有していないため、ガラス板の前面の外周端部を前方から覆うガラス板挿入部の前面側(ガラス面側)の縁部とガラス板との間の境界部に塵埃等が付着堆積して、これが縁部に沿って線状に残って目立ってくることもない。
また、外板における外部に露出するガラス面に付着した微細な塵埃等を拭き取る場合に、微細な塵埃等を拭き取る対象となるガラス面に拭き取り作業の障害となる凹凸がないので、微細な塵埃等の拭き取り残しなく、きれいに拭き取ることができ、清掃性に優れ、長期間に亘って初期の高い意匠性(美観に優れた外観)をそのまま維持することができる。
また、一般的に硬質ウレタンフォームの約20倍の断熱性能を有している真空断熱材を硬質ウレタンフォームと共に複層構造にして断熱扉内に設けたので、断熱扉の断熱材として硬質ウレタンフォームのみを用いた従来の断熱扉よりも断熱性能に優れる。
なお、枠体に外板を保持する構造を設けることなく外板を硬質ウレタンフォームの接着力を利用して固定するには、硬質ウレタンフォームの外板に対する接着力が外板の固定(保持)に充分な接着力である必要がある。
一般的な、断熱扉の硬質ウレタンフォームの発泡充填の工程では、まず、硬質ウレタンフォームを充填する前の断熱扉が外板側を下にして発泡治具に設置され、次に、外板と内板と枠体とによって囲まれた空間に硬質ウレタンフォームの原液が注入される。
そして、この断熱扉の内部空間に注入された硬質ウレタンフォームの原液は、前記空間の底となる外板裏面に流れ落ちた後で、高温度で発泡しながら流動して前記空間を埋めていく。
もし、硬質ウレタンフォームが充填されずに空洞(ボイド)が発生する場合、または、
硬化前の硬質ウレタンフォームに場所による密度のバラツキがある場合は、硬質ウレタンフォームの発泡充填の圧力に場所によるバラツキが生じる。
また、高温度で行われる硬質ウレタンフォームの発泡後に、外板、硬質ウレタンフォーム、真空断熱材、枠体、内板の各部材の温度低下による収縮率の違いにより(未充填部の空洞(ボイド)がある場合は、更に、未充填部の空洞(ボイド)内の空気の温度低下による空気圧の低下の影響も加わって)、硬質ウレタンフォームに隣接する部材に硬質ウレタンフォームによる接着力以上の力が働こうとした場合に、硬質ウレタンフォームとの接着部分が部分的に剥がれ、もしくは接着力が低下する。
このとき、外板の剛性が不足していると、外板が変形したり、外板に用いたガラス板が割れる虞がある。
そして、外板の剛性不足により、外板が変形したり、外板に用いたガラス板が割れないように、外板の剛性を高めようとして外板に用いるガラス板を厚くすると、外板の重量が増して、外板のガラス面が鉛直方向に対して略平行(外板のガラス面が前面)になる断熱扉の使用時に、外板の重量により外板が硬質ウレタンフォームから剥がれて脱落するように作用する力と外板に対する硬質ウレタンフォームの接着力とのバランスが悪くなり、外板の重量により外板が硬質ウレタンフォームから剥がれて脱落するリスクが高くなる。
一般に、真空断熱材は、板状の芯材を外被材で覆って減圧密封してなり、芯材の周囲に芯材を外被材の間に含まず外被材のみから構成されるヒレ部を有している。
そして、真空断熱材のヒレ部は、高温度で発泡しながら流動する硬質ウレタンフォームの流動性を妨げ空洞(ボイド)発生の原因になりやすいので、ヒレ部を芯材が密封された部分に重なるように折り返して、ホットメルトなどの接着剤、両面接着(粘着)シート、片面接着(粘着)テープなどで、高温度で発泡しながら流動する硬質ウレタンフォームが折り返された状態のヒレ部または接着部に作用しても、ヒレ部が折り返された状態を維持するように接着固定して用いる。
また、外板または内板に密着するように真空断熱材を配置する場合は、高温度で発泡しながら流動する硬質ウレタンフォームによって、真空断熱材の配置位置が移動しないように、ホットメルトなどの接着剤、両面接着(粘着)シート、片面接着(粘着)テープなどで、真空断熱材を外板または内板に固定する。
また、外板と真空断熱材との間と内板と真空断熱材との間の両方に間に硬質ウレタンフォームが充填されるように、真空断熱材を中間浮かし配置にする場合は、外板と内板と枠体のいずれかと真空断熱材との間に中間浮かし用の部材が必要になる。
そして、真空断熱材、真空断熱材の接着固定手段、中間浮かし用の部材は、高温度で発泡しながら流動する硬質ウレタンフォームの流動性を悪くするので、真空断熱材の周囲に、硬質ウレタンフォームが充填されない空洞(ボイド)が発生し易い。
以上のように、真空断熱材の周囲には、硬質ウレタンフォームが充填されない空洞(ボイド)が発生し易いので、硬質ウレタンフォームの空洞(ボイド)発生による外板への悪影響が少なくなるように、真空断熱材は、外板に近接して配置するよりも外板から離した方が良いことが分かる。
また、外板に密着するように真空断熱材を配置する場合は、真空断熱材の伝熱面が外板の面積より小さいと、外板と硬質ウレタンフォームとが密着する部分と、外板と硬質ウレ
タンフォームとの間に真空断熱材が介在する部分ができる。
そして、外板と硬質ウレタンフォームとが密着する部分については、外板に対する硬質ウレタンフォームの接着力が外板を保持する力に作用するが、外板と硬質ウレタンフォームの間に真空断熱材が介在する部分については、外板と真空断熱材との接着固定手段の接着力と真空断熱材に対する硬質ウレタンフォームの接着力の両方の接着力が外板を保持する力に作用する。
そのため、外板と硬質ウレタンフォームの間に真空断熱材が介在する部分において、外板を保持する力は、外板と真空断熱材との接着固定手段の接着力よりも弱くなり、また、真空断熱材に対する硬質ウレタンフォームの接着力よりも弱くなる。また、真空断熱材に対する硬質ウレタンフォームの接着力は、外板に対する硬質ウレタンフォームの接着力よりもバラツキが生じやすい。
また、硬質ウレタンフォーム発泡前の冶具予熱工程では、高温度で発泡しながら流動する硬質ウレタンフォームの流動性と発泡効率を高めるため、発泡治具に設けた加熱手段により、硬質ウレタンフォームと隣接する部材の表面温度を所定温度に高めているが、真空断熱材における加熱手段の加熱の影響を受けやすい面と反対側の面は、真空断熱材の高い断熱性能が影響して、温度上昇し難い。
そして、外板に隣接する発泡治具に加熱手段があり、外板に略密着するように真空断熱材を配置した場合は、真空断熱材の高い断熱性能が影響して、真空断熱材における内板と対向する面の表面温度が所定温度より低い温度になるので、真空断熱材に対する硬質ウレタンフォームの接着力が悪くなる。
したがって、外板に密着するように真空断熱材を配置した場合は、外板と真空断熱材との間に硬質ウレタンフォームが介在する場合よりも、外板を保持する力が低下する。
また、外板に用いたガラス板が、外部からの衝撃で割れにくくするには、外板に対する外部からの衝撃力を吸収、分散する、比較的柔らかい緩衝材として機能するものが外板の内側で外板に隣接していることが望ましいので、真空断熱材の硬度が硬質ウレタンフォームの硬度より硬い場合は、外板に密着するように真空断熱材を配置するよりも外板と真空断熱材との間に硬質ウレタンフォームを介在させた方が、外板に用いたガラス板が外部からの衝撃で割れ難い。
また、外板に密着するように真空断熱材を配置する場合において、外板と硬質ウレタンフォームとが密着する部分ができる場合や、真空断熱材における外板に密着する面に凹凸がある場合や、真空断熱材のヒレ部を外板と対向する面側に折り返した場合は、外板に対する外部からの衝撃力を外板の内側で受け止める部分が局部に集中し易くなる。
そして、外板に対する外部からの衝撃力を外板の内側で受け止める部分が局部に集中すると、外板に用いたガラス板が外部からの衝撃で割れ易くなるので、外板に密着するように真空断熱材を配置するのは、好ましくない。
また、外板に密着するように真空断熱材を配置する場合において、真空断熱材が、板状の芯材をアルミニウムなどの金属を蒸着した蒸着層またはアルミニウム箔などの金属箔を有するラミネートフィルムからなる2枚の外被材で覆って減圧密封してなり、芯材の周囲に芯材を外被材の間に含まず外被材のみから構成されるヒレ部を有しており、真空断熱材のヒレ部を内板と対向する面側に折り返した場合は、外板から真空断熱材に伝わった熱は、外板に密着する外被材からヒレ部に伝わり、ヒレ部は内板と対向する面側に折り返して
いるので、ヒレ部における内板と対向する部分にまで伝わるので、真空断熱材の高い断熱性能を充分に発揮させることができない。
また、真空断熱材が、板状の芯材をアルミニウムなどの金属を蒸着した蒸着層またはアルミニウム箔などの金属箔を有するラミネートフィルムからなる2枚の外被材で覆って減圧密封してなり、芯材の周囲に芯材を外被材の間に含まず外被材のみから構成されるヒレ部を有しており、ヒレ部の外被材同士を熱溶着している場合は、真空断熱材の設置環境が高温である程、真空断熱材の外部のガス(空気)が、外被材または外被材同士を熱溶着した部分から、真空断熱材の内部に侵入し易くなる。
真空断熱材は内部の真空度が低下する(内圧が高くなる)程断熱性能が低下するので、真空断熱材の高い断熱性能を長期に亘って維持させるには、真空断熱材の設置環境が低温である程好ましい。
本発明では、真空断熱材を外板と内板との中間よりも内板寄りに配置もしくは真空断熱材を内板に固定したので、真空断熱材を外板と内板との中間よりも外板寄りに配置もしくは真空断熱材を外板に固定した場合よりも、真空断熱材を硬質ウレタンフォームと共に複層構造にして断熱扉内に設けたことによる硬質ウレタンフォームの接着力で外板を固定(保持)する機能の低下の影響を小さくすることができ、外板に用いるガラス板を薄くすることが可能になり、ガラス板で構成した外板の前面の全面が外部に露出するように、外板を硬質ウレタンフォームの接着力を利用して固定することができ、長期に亘って外板を硬質ウレタンフォームの接着力を利用して固定(保持)することができる。
したがって、本発明の断熱扉は、外部に露出する前面をガラス板で構成した外板と真空断熱材とを用いており、枠体の前端がガラス板で構成した外板の前面よりも前方に突出せず、ガラス板で構成した外板前面の全面が外部に露出する構造にしたので、断熱性能と意匠性に優れている。
また、ガラス板で構成した外板前面の全面が外部に露出する構造にした場合でも、硬質ウレタンフォームの接着力を利用して、外部に露出する面をガラス板で構成した外板の脱落を、長期に亘って高い信頼性で防止することが可能になるので、長期に亘って優れた意匠性を維持することができる。
第2の発明は、第1の発明において、前記真空断熱材は板状の芯材を外被材で覆って減圧密封してなり前記芯材の周囲に前記芯材を間に含まず前記外被材のみから構成されるヒレ部を有し、前記ヒレ部を前記芯材が密封された部分に重なるように折り返して固定し、折り返した前記ヒレ部がある面を前記内板側に向けて、前記真空断熱材を前記内板に固定したものである。
真空断熱材の芯材の周囲のヒレ部を芯材が密封された部分に重なるように折り返して、例えば、主に梱包に用いられる耐水性、耐湿性に優れたOPPテープ(ポリプロピレン材を溶融押出成型により透明なフィルムにして粘着剤を塗布した延伸ポリプロピレンテープ)などで固定し、折り返したヒレ部がある面を内板側に向けて、真空断熱材を内板に固定すると、高温度で発泡しながら流動する硬質ウレタンフォームは、折り返したヒレ部を接着固定した部分を剥がすように作用しないので、折り返したヒレ部の接着固定状態を長期に亘って維持できる。
第3の発明は、第1の発明において、前記真空断熱材は板状の芯材を外被材で覆って減圧密封してなり前記芯材の周囲に前記芯材を間に含まず前記外被材のみから構成されるヒレ部を有し、前記ヒレ部を前記芯材が密封された部分に重なるように折り返してホットメ
ルト接着剤で固定したものであり、高温度で発泡しながら流動する硬質ウレタンフォームが、折り返したヒレ部を接着固定した部分を剥がすように作用した場合に、他の接着固定手段に比べて、接着固定した部分が剥がれ難い。
以下、本発明の断熱扉の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における断熱扉を用いた冷蔵庫の外観斜視図であり、図2は同冷蔵庫の断面図、図3は同冷蔵庫の扉の一つを示す斜視図であり、図4は同冷蔵庫の扉の分解斜視図であり、図5は同冷蔵庫の扉の概略横断面図であり、図6は同冷蔵庫の扉の下部の縦断面を示す要部縦断面図である。
図1、図2において、冷蔵庫本体1を構成する断熱箱体は、前方に開口する金属製(例えば鉄板)の外箱2と、硬質樹脂製(例えばABS)の内箱3と、これら外箱2と内箱3との間に発泡充填した硬質ウレタンフォーム4からなる。
冷蔵庫本体1は、その内部に、最上段に冷蔵室5と、冷蔵室5の下に位置する切替室6及び切替室6の横に並設した製氷室7と、切替室6及び製氷室7の下部に位置する冷凍室8と、冷凍室8の下部に位置する野菜室9とを有する。
そして、冷蔵室5の前面は、例えば観音開き式の扉10,10により開閉自由に閉塞し、切替室6及び製氷室7と冷凍室8と野菜室9の前面部は、それぞれ引き出し式の扉11,12,13,14によって開閉自由に閉塞してある。
冷凍室8の奥には冷却室16が設けられる。そして、冷却室16には、周囲の空気との熱交換により冷気を生成する冷却器17と、冷気を各室に供給する送風ファン18とが設けてある。
また、冷蔵庫本体1の本体天面奥部には圧縮機19が設けている。そして、圧縮機19と、コンデンサ(図示せず)と、放熱用の放熱パイプ20と、キャピラリーチューブ21と、冷却器17とを順次環状に接続すると共に、内部に冷媒を封入して、冷凍サイクルを構成している。
この冷凍サイクルは冷却運転を行うように構成しており、圧縮機19から吐出した高温高圧のガス冷媒は、コンデンサ(図示せず)と放熱パイプ20で凝縮し、キャピラリーチューブ21で減圧され、冷却器17で冷却器17の周囲の空気と熱交換して気化して、圧縮機19に戻る。
ここで、上記各扉10〜14は、冷蔵庫本体1と同様に、内部空間に硬質ウレタンフォームを発泡充填して断熱性を持たせてあり、更に意匠性を向上させるべく、前面板となる外板の前面をガラス板で構成してある。
以下、扉10を例にして、その構成について図3〜図6を用いて説明する。なお、扉10以外の扉11〜14も同様の構成であるので、その説明は省略する。
図3〜図6において、内板23は、扉10の裏側(冷蔵庫本体1の内側)に位置することになり、例えばABS樹脂で真空形成してある。枠体24は、内板23の周端面に結合固定する縁枠で、ABS樹脂で形成してある。ガラス板からなる前面板(外板)25は、内板23と所定間隔あけて内板23と対向するように枠体24の前に積層配置しており、
本実施の形態では、光沢のある強化ガラス板を用いている。
このガラス板25は、図5、図6に示すように、裏面に透明の接着剤26を介して樹脂フィルム27が貼り付けてある。この樹脂フィルム27には、絵模様、例えばヘアーラインのような金属調模様からなる着色層28が形成してある。これによって、ガラス板25は、あたかも着色層付きのガラス板となる。
本実施の形態では、ガラス板25の裏面に透明の接着剤26を介して着色層28を有する樹脂フィルム27を貼り付けたが、ガラス板25の裏面に、多層のシルクスクリーン印刷やその他の手段で加飾を施しても構わない。
樹脂フィルム27は、本実施の形態では透明性が高く機械的強度の高いポリエチレンテレフタレートを用い、着色層28はホワイト系ではガラス板25とは反対側面に形成し、グレー系ではガラス板25側に形成してある。図面ではガラス板25とは反対側面に形成した場合を示している。
なお、ヘアーラインを立体的に強調する場合には、ガラス板25側に形成した着色層とは反対側の樹脂フィルムの表面に凹凸状の溝を設けて立体形状のヘアーラインを形成し、その表面にクロム蒸着層を形成する。
これにより、意匠性を向上できると共に、蒸着層の材料をクロムとすることで、フィルムと蒸着層の端面を起点とする蒸着層の錆発生を防止でき、模様の耐久性を向上させる効果がある。
硬質ウレタンフォーム29は、ガラス板25の樹脂フィルム27側の面(裏面)と内板23と枠体24とによって形成される空間に真空断熱材30を(真空断熱材30が内板23と略密着するように)配置した後で真空断熱材30以外の空間に発泡充填されている。
ここで、真空断熱材30は、グラスウール等の繊維集合体からなる板状の芯材31をアルミニウムなどの金属をプラスチックフィルムに蒸着した蒸着層またはアルミニウム箔などの金属箔をプラスチックフィルムの間に有するラミネートフィルムからなる2枚の外被材32で覆って芯材31を2枚の外被材32の間に減圧密封してなり、芯材31の周囲に芯材31を外被材32の間に含まず外被材32のみから構成されるヒレ部33を有している。
なお、真空断熱材30の外部のガス(空気)が、真空断熱材30の内部(芯材が外被材32により密封された空間)に容易に侵入しないようにヒレ部33の外被材32同士は熱溶着されている。
また、ヒレ部33を芯材31が密封された部分に重なるように折り返して、折り返したヒレ部33の上から両面テープ34または片面接着テープで折り返した状態を維持するように固定し、折り返したヒレ部33がある面を内板23側に向けて、真空断熱材30を両面テープ34で内板23に固定している。
なお、真空断熱材30と内板23とを接着する両面テープ34は、内板23における真空断熱材30が略密着する部分が略平面であれば、真空断熱材30と内板23の隙間に硬質ウレタンフォーム29が入らないように真空断熱材30における内板23と対向する面の外周の全周(または真空断熱材30における内板23と対向(密着)する面の略全面)に設けることが好ましい。
硬質ウレタンフォーム29は、発泡によって真空断熱材30、内板23及び枠体24と共にガラス板25裏面に接着剤26により貼り付けられた(着色層28が形成された)樹脂フィルム27に接着し、樹脂フィルム27を介してガラス板25を接着保持している。
本実施の形態では、硬質ウレタンフォーム29を発泡充填する前に、ガラス板25と枠体24との所定の位置関係を維持できるように、ガラス板25の樹脂フィルム27側の面(裏面)と枠体24の前面側の端面24aとを両面テープ35によって接着している。
また、枠体24は、従来例で説明したようなガラス板挿入部を有しておらず、ガラス板25の外周端は、図6に示すように枠体24の前面側の端面24aと同一か若干内側に位置、本実施の形態では若干内側に位置させただけの構成としてある。
また、本実施の形態では、図5に示すように、長方形のガラス板25の四辺の前後2つの角のうち前面側の角は面取りしてあり、枠体24の下端にはガラス板25の裏面よりも前方に突出するガラス板支持突起24bを設けており、ガラス板支持突起24bがガラス板25の重量を支えることができるように構成してある。
このガラス板支持突起24bは、ガラス板25で構成した外板の前面よりも前方に突出させず、ガラス板支持突起24bの前端は、ガラス板25の外周縁の面取り部分よりも後方に位置させている。
上記構成において、この冷蔵庫の扉10は、ヘアーラインのような金属調模様からなる着色層28がガラス板25及び樹脂フィルム27からなる透明層の内側に位置するため、着色の色に深みが加わり、その意匠性は金属製あるいは樹脂製の塗装前板に比べると大きく向上する。
特に、本実施の形態では、着色層28は樹脂フィルム27に形成しているので、ローラ等によって樹脂フィルム27に形成することができ、ヘアーライン等の精細な模様も形成できて、その意匠性を格段に向上させることができる。
また、着色層28は、ローラ等によって樹脂フィルム27に形成することができるので、樹脂フィルム27に対する接着強度を管理保証することができ、硬質ウレタンフォーム29の熱収縮や経年変化等による接着状態の劣化が生じても樹脂フィルム27に対し剥がれることを防止できるようになる。
これにより、樹脂フィルム27をガラス板25と硬質ウレタンフォーム29との間に位置させて、これら両者を硬質ウレタンフォーム29及び接着剤26の接着力によって接着させたとき、着色層28が樹脂フィルム27から剥がれ、この剥がれに起因してガラス板25が硬質ウレタンフォーム29から剥離等するのを防止することができる。
よって、長期間に亘ってフィルム付きガラス板25の接着強度を維持保証することができ、信頼性を確保することができる。
本実施の形態では、硬質ウレタンフォーム29の発泡密度をガラス板25の中央部分よりもガラス板25の外周部分の方が高くなるようにしているので、硬質ウレタンフォーム29の接着力はガラス板25の外周部分の方がガラス板25の中央部分より強くなる。
これにより、ガラス板25の樹脂フィルム27と硬質ウレタンフォーム29との接着力を長期間に亘ってより確実に維持保証することができる。
すなわち、冷蔵庫は内部と外部で温度差が激しく、扉の開閉時に内部からの冷気によって、扉のガラス板25の外周部分はガラス板25の中央部分よりも結露や激しい温度変化の影響を受ける。
また、使用者の使い方によっては、扉の開閉時に激しい衝撃を扉に与えたり、収納物の出し入れ時にガラス板25を含む扉に水や汁を溢す使用実態となる。
そして、このような冷蔵庫特有の使用環境・実態によって、ガラス板25の外周部分はガラス板の外周端部を覆うガラス板挿入部が無いと硬質ウレタンフォーム29から剥がれやすい環境となっている。
このような環境下において、ガラス板25の外周部分は、硬質ウレタンフォーム29の発泡密度が高い、すなわち、ごく微細に発泡しているウレタンスキン層との接着となっていて、硬質ウレタンフォーム29とガラス板25の裏面の樹脂フィルム27との接着密度はガラス板25の中央部分よりも高く強固なものとなっている。
したがって、長期間の使用に際してもガラス板25の裏面の樹脂フィルム27と硬質ウレタンフォーム29との接着は確保され、長期間に亘って樹脂フィルム27を裏面に設けたガラス板25の接着強度を維持保証することができ、信頼性を確保できるのである。
寿命加速試験を行った結果、ガラス板25の裏面に設けた樹脂フィルム27と硬質ウレタンフォーム29との接着力を1.0g/cm2 以上、好ましくは2.6g/cm2 以上とすれば、硬質ウレタンフォーム29の熱収縮等の経年変化による接着力劣化があっても樹脂フィルム27と硬質ウレタンフォーム29との接着強度を保証することができ、ひいては樹脂フィルム27を介してガラス板25の硬質ウレタンフォーム29に対する接着強度を長期間に亘って維持保証することができることが分かった。
ここで、上記接着力の測定は、接着剤の重ね合わせ剪断接着強さの標準的な測定方法である「JIS K 6850(接着剤−剛性被着材の引張せん断 接着強さ試験方法)」に基づく方法により行った。
また、本実施の形態では、樹脂フィルム27をポリエチレンテレフタレートフィルムで形成しており、このポリエチレンテレフタレートは機械的強度が高いので、フィルム自体が硬質ウレタンフォーム29の熱収縮に伴う経年変化で破れ、この破れた部分から樹脂フィルム27の硬質ウレタンフォーム29への接着の剥離が経年的に進行するのを防止でき、その接着強度維持保証の信頼性を確保することができる。
一方、この扉は、上記接着強度の維持保証によって従来のガラス板25の外周端部を覆うガラス板挿入部等を廃止することができるから、ガラス板挿入部があるもののように意匠性を損なうことがなく、全面フラット感のあるすっきりとした外観にすることができる。また、ガラス板挿入部とガラス板25との間の境界部に塵埃等が付着堆積して、これが線状に目立ってくることもなく、長期間に亘って初期の高い意匠性をそのまま維持することができる。
また、本実施の形態では、枠体24の下端には、ガラス板25の裏面よりも前方に突出するガラス板支持突起24bを設けており、ガラス板支持突起24bがガラス板25の重量を支えることができるように構成してあるので、万が一、硬質ウレタンフォーム29によるガラス板25の接着力の劣化によってガラス板25の剥がれが部分的に生じるようなことがあったとしても、ガラス板25が落下する等の異常事態を防止でき、安心感が大きく向上する。
また、枠体24のガラス板支持突起24bは、ガラス板25で構成した外板の前面よりも前方に突出せず、また、ガラス板25で構成した外板の前面を前方から覆わないので、ガラス板挿入部のように扉前面から見えることもなく、意匠性及び全面フラット感は良好なまま維持できる。また、拭きとり時にごみがたまらない程度の微少な出っ張りであれば、塵埃の非付着効果が変わらないのは言うまでもない。
また、本実施の形態では、ガラス板25は、その外周端部が枠体24の前面側の端面24aより若干内側に位置する構成としてあるから、このガラス板25の外周端部を枠体24の端面24aが保護することになり、また、ガラス板25の外周端部にガラス板25を剥がす方向の力が加わり難くなる。
よって、例えば生産ラインでの扉搬送時やユーザ宅における扉交換サービス時にガラス板25の外周端部が何らかの物に当たって割れたりするようなことを防止することもできる。すなわち、ガラス板25を保持するためのガラス板挿入部を廃止してもガラス板外周部の破損を防止することができ、また、ガラス板25の外周端部にガラス板25を剥がす方向の力が加わるのを抑制でき、扉の前全面板(外板)にガラス板25を用いても安心して冷蔵庫を使用することができる。
また、仮にガラス板25に何らかの外力が加わって万が一割れることがあっても、このガラス板片は樹脂フィルム27に接着していて飛散を防止されることになり、万が一のときの安全性も向上する。
なお、樹脂フィルム27における硬質ウレタンフォーム29と接触する面に予めウレタン系接着剤またはポリエステル系の接着剤を塗布しておけば、樹脂フィルム27における硬質ウレタンフォーム29と接触する面に接着剤を塗布しない場合よりも、樹脂フィルム27と硬質ウレタンフォーム29との接着力を高めることができる。
樹脂フィルム27における硬質ウレタンフォーム29と接触する面に予め接着剤を塗布することにより、硬質ウレタンフォーム29の発泡密度が低くて硬質ウレタンフォーム29と樹脂フィルム27との実質接着面積が減少するガラス板25の中央部分での接着強度も向上させることができる。
すなわち、硬質ウレタンフォーム29の発泡密度が低くて硬質ウレタンフォーム29と樹脂フィルム27との実質接着面積が減少する分を、樹脂フィルム27における硬質ウレタンフォーム29と接触する面に塗布する接着剤による接着でカバーして、硬質ウレタンフォーム29と樹脂フィルム27との接着強度をより確実に確保することができ、ひいてはガラス板25の接着強度を長期間に亘って維持保証することができ、信頼性の高いものとすることができる。
また、樹脂フィルム27と硬質ウレタンフォーム29との接着面は、ミクロ的に見ると硬質ウレタンフォーム29のスキン層と樹脂フィルム27とが接着しており、このようなスキン層と樹脂フィルム27とは、その双方の表面が滑面となっているため、剥がれかけると一気に剥がれてしまう危険性がある。
特に、ガラス板25の外周部分の発泡密度を高めて、ガラス板25との接着面をスキン層とした場合にあってはガラス板25の外周部分で剥がれが広がってしまう恐れがある。
しかしながら、樹脂フィルム27の硬質ウレタンフォーム29との密着面に接着剤を介在させると、樹脂フィルム27と硬質ウレタンフォーム29との接着強度が高いものとな
り、上記したような硬質ウレタンフォーム29のスキン層と樹脂フィルム27との剥がれの広がりを防止できる。
ウレタン系またはポリエステル系の接着剤を構成するウレタンまたはポリエステルは、その溶解性パラメータ(以下、SP値と称す)がウレタンのSP値10〜11及びフィルムの材料であるポリエチレンテレフタレートのSP値11.3と近いので、これら相互間の接着力はより強固なものとなり、その接着強度維持はきわめて高いものとなる。
換言すると、ポリエステル系(アクリル系も同様)樹脂は末端に−OH基をイソシアネートで反応させていて、ウレタン変成樹脂膜となっており、一方、ウレタン発泡材はポリエーテルポリオールのイソシアネート硬化であることから、基本の樹脂骨格は異なるものの反応内容は同じであるため、接着強度が向上するのである。よって、ガラス板25の接着強度を長期間に亘って維持保証することができ、信頼性を一段と高めることができる。
ガラス板25の裏面の樹脂フィルム27と枠体24の前面側の端面24aとを両面テープ35によって接着すると、ガラス板25は硬質ウレタンフォーム29との接着に加え両面テープ35を介して枠体24にも接着されることになる。よって、ガラス板25は樹脂フィルム27を介して硬質ウレタンフォーム29と枠体24の両方に強力に接着保持されることになり、長期間に亘ってガラス板25の接着強度を維持保証することができ、更に信頼性の高いものとすることができる。
上記実施の形態は本発明を実施するうえでの一例として示したものであり、本発明の目的を達成する範囲内で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、ガラス板25を透明樹脂板に置き換えても良く、これによって軽量化による接着強度の更なる保証が可能となり、しかも低コスト化を図ることができる。また、樹脂フィルムも着色層の接着強度を管理保証できるものであれば、ポリエチレンテレフタレート以外のものであっても良い。
更に、樹脂フィルム27の着色層28は既に述べている通り、ガラス板25側であっても良く、また、樹脂フィルム27と硬質ウレタンフォーム29との接着強度を向上させるために用いる接着剤にウレタンバインダー或いは蒸着層を用いても良く、或いは樹脂フィルム27における硬質ウレタンフォーム29と接触する面に塗布する接着剤と硬質ウレタンフォーム29との間に更に蒸着層或いはウレタンバインダー或いはその双方を介在させても良く、必要に応じて用いることによって接着強度や着色層の意匠性を向上させることができる。
本実施の形態の冷蔵庫の扉10〜14に用いた断熱扉は、外板25と内板23と枠体24とによって形成される空間に真空断熱材30を配置して真空断熱材30以外の前記空間に硬質ウレタンフォーム29を発泡充填した断熱扉であって、外板25は、外部に露出する前面をガラス板25で構成し、真空断熱材30を外板25と内板23との中間よりも内板23寄りに配置もしくは真空断熱材30を内板23に固定し、枠体24の前端(ガラス板支持突起24b)がガラス板25で構成した外板25の前面よりも前方に突出せずガラス板25で構成した外板25の前面の全面が外部に露出するように外板25を硬質ウレタンフォーム29の接着力を利用して固定した断熱扉である。
上記構成において、外板25は、外部に露出する前面をガラス板25で構成し、ガラス板25で構成した外板25の前面の全面が外部に露出するので、断熱扉の前面を、凹凸のない、全面フラット感のある、すっきりとした外観にすることができる。
また、枠体24は、枠体24の前端(ガラス板支持突起24b)がガラス板25で構成した外板25の前面よりも前方に突出せず、従来のガラス板挿入部に相当する構造を有していないため、ガラス板25の前面の外周端部を前方から覆うガラス板挿入部の前面側(ガラス面側)の縁部とガラス板25との間の境界部に塵埃等が付着堆積して、これが縁部に沿って線状に残って目立ってくることもない。
また、外板25における外部に露出するガラス面に付着した微細な塵埃等を拭き取る場合に、微細な塵埃等を拭き取る対象となるガラス面に拭き取り作業の障害となる凹凸がないので、微細な塵埃等の拭き取り残しなく、きれいに拭き取ることができ、清掃性に優れ、長期間に亘って初期の高い意匠性(美観に優れた外観)をそのまま維持することができる。
また、一般的に硬質ウレタンフォームの約20倍の断熱性能を有している真空断熱材30を硬質ウレタンフォーム29と共に複層構造にして断熱扉内に設けたので、断熱扉の断熱材として硬質ウレタンフォームのみを用いた従来の断熱扉よりも断熱性能に優れる。
なお、枠体24に外板25を保持する構造を設けることなく外板25を硬質ウレタンフォーム29の接着力を利用して固定するには、硬質ウレタンフォーム29の外板25に対する接着力が外板25の固定(保持)に充分な接着力である必要がある。
一般的な、断熱扉の硬質ウレタンフォーム29の発泡充填の工程では、まず、硬質ウレタンフォーム29を充填する前の断熱扉が外板25側を下にして発泡治具(図示せず)に設置され、次に、外板25と内板23と枠体24とによって囲まれた空間に硬質ウレタンフォーム29の原液が注入される。なお、内板23は、外板25と枠体24を組み合わせて外板25側を下にしたものに硬質ウレタンフォーム29の原液を注入した後に、枠体24の上に被せる場合もある、
そして、この断熱扉の内部空間に注入された硬質ウレタンフォーム29の原液は、前記空間の底となる外板25裏面に流れ落ちた後で、高温度で発泡しながら流動して前記空間を埋めていく。
もし、硬質ウレタンフォーム29が充填されずに空洞(ボイド)が発生する場合、または、硬化前の硬質ウレタンフォーム29に場所による密度のバラツキがある場合は、硬質ウレタンフォーム29の発泡充填の圧力に場所によるバラツキが生じる。
また、高温度で行われる硬質ウレタンフォーム29の発泡後に、外板25、硬質ウレタンフォーム29、真空断熱材30、枠体24、内板23の各部材の温度低下による収縮率の違いにより(未充填部の空洞(ボイド)がある場合は、更に、未充填部の空洞(ボイド)内の空気の温度低下による空気圧の低下の影響も加わって)、硬質ウレタンフォーム29に隣接する部材に硬質ウレタンフォーム29による接着力以上の力が働こうとした場合に、硬質ウレタンフォーム29との接着部分が部分的に剥がれ、もしくは接着力が低下する。
このとき、外板25の剛性が不足していると、外板25が変形したり、外板25に用いたガラス板25が割れる虞がある。
そして、外板25の剛性不足により、外板25が変形したり、外板25に用いたガラス板25が割れないように、外板25の剛性を高めようとして外板25に用いるガラス板25を厚くすると、外板25の重量が増して、外板25のガラス面が鉛直方向に対して略平行(外板25のガラス面が前面)になる断熱扉の使用時に、外板25の重量により外板25が硬質ウレタンフォーム29から剥がれて脱落するように作用する力と外板25に対す
る硬質ウレタンフォーム29の接着力とのバランスが悪くなり、外板25の重量により外板25が硬質ウレタンフォーム29から剥がれて脱落するリスクが高くなる。
一般に、真空断熱材30は、グラスウール等の繊維集合体からなる板状の芯材31をアルミニウムなどの金属をプラスチックフィルムに蒸着した蒸着層またはアルミニウム箔などの金属箔をプラスチックフィルムの間に有するラミネートフィルムからなる2枚の外被材32で覆って芯材31を2枚の外被材32の間に減圧密封してなり、芯材31の周囲に芯材31を外被材32の間に含まず外被材32のみから構成されるヒレ部33を有している。
そして、真空断熱材30のヒレ部33は、高温度で発泡しながら流動する硬質ウレタンフォーム29の流動性を妨げ空洞(ボイド)発生の原因になりやすいので、ヒレ部33を芯材31が外被材32の間に密封された部分に重なるように折り返して、ホットメルトなどの接着剤、両面接着(粘着)シート、片面接着(粘着)テープなどで、高温度で発泡しながら流動する硬質ウレタンフォーム29が折り返された状態のヒレ部33または接着部に作用しても、ヒレ部33が折り返された状態を維持するように接着固定して用いる。
また、外板25または内板23に密着するように真空断熱材30を配置する場合は、高温度で発泡しながら流動する硬質ウレタンフォーム29によって、真空断熱材30の配置位置が移動しないように、ホットメルトなどの接着剤、両面接着(粘着)シート、片面接着(粘着)テープなどで、真空断熱材30を外板25または内板23に固定する。
また、外板25と真空断熱材30との間と内板23と真空断熱材30との間の両方に間に硬質ウレタンフォーム29が充填されるように、真空断熱材30を中間浮かし配置にする場合は、外板25と内板23と枠体24のいずれかと真空断熱材30との間に中間浮かし用の部材が必要になる。
そして、真空断熱材30、真空断熱材30の接着固定手段、中間浮かし用の部材は、高温度で発泡しながら流動する硬質ウレタンフォーム29の流動性を悪くするので、真空断熱材30の周囲に、硬質ウレタンフォーム29が充填されない空洞(ボイド)が発生し易い。
以上のように、真空断熱材30の周囲には、硬質ウレタンフォーム29が充填されない空洞(ボイド)が発生し易いので、硬質ウレタンフォーム29の空洞(ボイド)発生による外板25への悪影響が少なくなるように、真空断熱材30は、外板25に近接して配置するよりも外板25から離した方が良いことが分かる。
また、外板25に密着するように真空断熱材30を配置する場合は、真空断熱材30の伝熱面が外板25の面積より小さいと、外板25と硬質ウレタンフォーム29とが密着する部分と、外板25と硬質ウレタンフォーム29との間に真空断熱材30が介在する部分ができる。
そして、外板25と硬質ウレタンフォーム29とが密着する部分については、外板25に対する硬質ウレタンフォーム29の接着力が外板25を保持する力に作用するが、外板25と硬質ウレタンフォーム29の間に真空断熱材30が介在する部分については、外板25と真空断熱材30との接着固定手段の接着力と真空断熱材30に対する硬質ウレタンフォーム29の接着力の両方の接着力が外板25を保持する力に作用する。
そのため、外板25と硬質ウレタンフォーム29の間に真空断熱材30が介在する部分において、外板25を保持する力は、外板25と真空断熱材30との接着固定手段の接着
力よりも弱くなり、また、真空断熱材30に対する硬質ウレタンフォーム29の接着力よりも弱くなる。また、真空断熱材30に対する硬質ウレタンフォーム29の接着力は、外板25に対する硬質ウレタンフォーム29の接着力よりもバラツキが生じやすい。
また、硬質ウレタンフォーム29の発泡充填前の冶具予熱工程では、高温度で発泡しながら流動する硬質ウレタンフォーム29の流動性と発泡効率を高めるため、発泡治具(図示せず)に設けた加熱手段(図示せず)により、硬質ウレタンフォーム29と隣接する部材の表面温度を所定温度に高めているが、真空断熱材30における加熱手段の加熱の影響を受けやすい面と反対側の面は、真空断熱材30の高い断熱性能が影響して、温度上昇し難い。
そして、外板25に隣接する発泡治具に加熱手段があり、外板25に略密着するように真空断熱材30を配置した場合は、真空断熱材30の高い断熱性能が影響して、真空断熱材30における内板23と対向する面の表面温度が所定温度より低い温度になるので、真空断熱材30に対する硬質ウレタンフォーム29の接着力が悪くなる。
したがって、外板25に密着するように真空断熱材30を配置した場合は、外板25と真空断熱材30との間に硬質ウレタンフォーム29が介在する場合よりも、外板25を保持する力が低下する。
また、外板25に用いたガラス板25が、外部からの衝撃で割れ難くするには、外板25に対する外部からの衝撃力を吸収、分散する、比較的柔らかい緩衝材として機能するものが外板25の内側で外板25に隣接していることが望ましいので、真空断熱材30の硬度が硬質ウレタンフォーム29の硬度より硬い場合は、外板25に密着するように真空断熱材30を配置するよりも外板25と真空断熱材30との間に硬質ウレタンフォーム29を介在させた方が、外板25に用いたガラス板25が外部からの衝撃で割れ難い。
また、外板25に密着するように真空断熱材30を配置する場合において、外板25と硬質ウレタンフォーム29とが密着する部分ができる場合や、真空断熱材30における外板25に密着する面に凹凸がある場合や、真空断熱材30のヒレ部33を外板25と対向する面側に折り返した場合は、外板25に対する外部からの衝撃力を外板25の内側で受け止める部分が局部に集中し易くなる。
そして、外板25に対する外部からの衝撃力を外板25の内側で受け止める部分が局部に集中すると、外板25に用いたガラス板25が外部からの衝撃で割れ易くなるので、外板25に密着するように真空断熱材30を配置するのは、好ましくない。
また、外板25に密着するように真空断熱材30を配置する場合において、真空断熱材30が、グラスウール等の繊維集合体からなる板状の芯材31をアルミニウムなどの金属をプラスチックフィルムに蒸着した蒸着層またはアルミニウム箔などの金属箔をプラスチックフィルムの間に有するラミネートフィルムからなる2枚の外被材32で覆って芯材31を2枚の外被材32の間に減圧密封してなり、芯材31の周囲に芯材31を外被材32の間に含まず外被材32のみから構成されるヒレ部33を有しており、真空断熱材30のヒレ部33を内板23と対向する面側に折り返した場合は、外板25から真空断熱材30に伝わった熱は、外板25に密着する外被材32からヒレ部33に伝わり、ヒレ部33は内板23と対向する面側に折り返しているので、ヒレ部33における内板23と対向する部分にまで伝わるので、真空断熱材30の高い断熱性能を充分に発揮させることができない。
また、真空断熱材30が、グラスウール等の繊維集合体からなる板状の芯材31をアル
ミニウムなどの金属をプラスチックフィルムに蒸着した蒸着層またはアルミニウム箔などの金属箔をプラスチックフィルムの間に有するラミネートフィルムからなる2枚の外被材32で覆って芯材31を2枚の外被材32の間に減圧密封してなり、芯材31の周囲に芯材31を外被材32の間に含まず外被材32のみから構成されるヒレ部33を有しており、真空断熱材30の外部のガス(空気)が、真空断熱材30の内部(芯材が外被材32により密封された空間)に容易に侵入しないようにヒレ部33の外被材32同士を熱溶着している場合は、真空断熱材30の設置環境が高温である程、真空断熱材30の外部のガス(空気)が、外被材32または外被材32同士を熱溶着した部分から、真空断熱材30の内部に侵入し易くなる。
真空断熱材30は内部の真空度が低下する(内圧が高くなる)程断熱性能が低下するので、真空断熱材30の高い断熱性能を長期に亘って維持させるには、真空断熱材30の設置環境が低温である程好ましい。
本実施の形態では、真空断熱材30を外板25と内板23との中間よりも内板23寄りに配置もしくは真空断熱材30を内板23に固定したので、真空断熱材30を外板25と内板23との中間よりも外板25寄りに配置もしくは真空断熱材30を外板25に固定した場合よりも、真空断熱材30を硬質ウレタンフォーム29と共に複層構造にして断熱扉内に設けたことによる硬質ウレタンフォーム29の接着力で外板25を固定(保持)する機能の低下の影響を小さくすることができ、外板25に用いるガラス板25を薄くすることが可能になり、ガラス板25で構成した外板25の前面の全面が外部に露出するように、外板25を硬質ウレタンフォーム29の接着力を利用して固定することができ、長期に亘って外板25を硬質ウレタンフォーム29の接着力を利用して固定(保持)することができる。
したがって、本実施の形態の冷蔵庫の扉10〜14に用いた断熱扉は、外部に露出する前面をガラス板25で構成した外板25と真空断熱材30とを用いており、枠体24の前端(ガラス板支持突起24b)がガラス板25で構成した外板25の前面よりも前方に突出せず、ガラス板25で構成した外板25前面の全面が外部に露出する構造にしたので、断熱性能と意匠性に優れている。
また、ガラス板25で構成した外板25前面の全面が外部に露出する構造にした場合でも、硬質ウレタンフォーム29の接着力を利用して、外部に露出する面をガラス板25で構成した外板25の脱落を、長期に亘って高い信頼性で防止することが可能になるので、長期に亘って優れた意匠性を維持することができる。
また、本実施の形態の冷蔵庫の扉10〜14に用いた断熱扉は、真空断熱材30のヒレ部33を芯材31が密封された部分に重なるように折り返して、折り返したヒレ部33の上から両面テープ34または片面接着テープ(例えば、主に梱包に用いられる耐水性、耐湿性に優れたOPPテープ(ポリプロピレン材を溶融押出成型により透明なフィルムにして粘着剤を塗布した延伸ポリプロピレンテープ))で折り返した状態を維持するように固定し、折り返したヒレ部33がある面を内板23側に向けて、真空断熱材30を両面テープ34で内板23に固定している。
このようにして、真空断熱材30を内板23に固定すると、高温度で発泡しながら流動する硬質ウレタンフォーム29は、折り返したヒレ部33を接着固定した部分を剥がすように作用しないので、折り返したヒレ部33の接着固定状態を長期に亘って維持できる。
本実施の形態では、真空断熱材30と内板23との間に硬質ウレタンフォーム29が入らないように真空断熱材30を内板23に固定したが、外板25と真空断熱材30との間
と内板23と真空断熱材30との間の両方に間に硬質ウレタンフォーム29が充填されるように、真空断熱材30を中間浮かし配置にして、真空断熱材30の外板25と対向する伝熱面に伝わった熱が折り返したヒレ部33または真空断熱材30の両面の外被材32同士を熱溶着した部分を介して真空断熱材30の内板23と対向(略接触)する伝熱面に伝わった後に、真空断熱材30の内板23と対向(略接触)する伝熱面から内板23に直接的に伝わるのを防ぐ場合は、真空断熱材30を外板25と内板23との中間よりも内板23寄りに配置する。この場合は、枠体24と真空断熱材30との間に中間浮かし用の部材を設けることが望ましい。
(実施の形態2)
図7は本発明の実施の形態2における断熱扉の概略横断面図である。本実施の形態は、真空断熱材30のヒレ部33を芯材31が密封された部分に重なるように折り返してホットメルト接着剤36で固定し、折り返してたヒレ部33がある面を外板25側に向けて、真空断熱材30を両面テープ34で内板23に固定したものであり、その他の構成は、実施の形態1と同様である。
折り返したヒレ部33を固定するホットメルト接着剤36は、オレフィン系のホットメルト材で、株式会社MORESCO製「モレスコメルトRAC―18Z」を採用した。塗布量は、0.5g/m〜1.5g/mでボード状塗布とした。
このホットメルト接着剤36の代わりに、ウレタンフォーム素材に粘着材を塗布したブリジストン製「エバーライト」を用いても良い。この場合は、ウレタンフォーム素材であるため、硬質ウレタンフォーム29に含浸し、剥離することがない。