JP2014211188A - 継手接続構造、およびそれを備える水道用ホース - Google Patents

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裕 山口
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Abstract

【課題】手で簡単に回転させることができず、且つカシメ応力によるき裂などの欠陥が発生しない、金属製パイプと金属製継手との接続構造を提供すること。【解決手段】Oリング5が嵌め込まれたニップル3のパイプ側挿入部13が、金属製パイプ2の被挿入部12に挿入された状態で、被挿入部12の端部がこのパイプ側挿入部13のカシメ溝14に下記のカシメ率S(%)の範囲内で外周側からカシメ込まれている。S=((D1+t?2)−Ds)/(D1+t?2)?1000.9≦S≦1.7D1:カシメ前のカシメ溝14の底部の外径Ds:被挿入部12を含むカシメ後のカシメ部の外径t:カシメ前の被挿入部12の厚み【選択図】図2

Description

本発明は、金属製パイプと金属製継手とを接続する継手接続構造、およびそれを備える水道用ホースに関する。
例えば住宅の台所・洗面台などの水道混合栓用のホースとして、金属製パイプとフレキシブルホースとを金属製継手で接続してなる水道用ホースが特許文献1に開示されている。
特許文献1では、接続金具(金属製継手)の挿入部を金属製パイプの端部内面に挿入した状態で、この金属製パイプの端部の一部を、挿入部の外周面に形成されたリング状溝(Oリングが嵌め込まれていないリング状溝)にカシメ込むことで、金属製パイプと接続金具(金属製継手)とを一体化している。なお、挿入部の外周面に形成された2本のリング状溝のうち1本のリング状溝にはOリングが嵌め込まれている(特許文献1の図2参照)。
特許文献1に記載の接続構造によると、低コストで確実に接合部の接続強度およびシール性を確保することができる。また、接合部の外径が過大とならないため、フレキシブルホースと金属製パイプとの一体接続物を狭い空間で施工する際に、配管作業が妨げられることがない(特許文献1の段落0037)。
特開2004−36861号公報
ここで、金属製パイプと金属製継手とは相互に回転不能であることが望ましいとの要望がある。金属製パイプと金属製継手との接続部のシール性は、リング状溝に嵌め込まれたOリングで確保し得るのであるが、金属製パイプと金属製継手とが手で簡単に相互に回転可能であると、その接続部のシール性が十分であるか否か懸念視される、ということのようである。
特許文献1に記載の接続構造によると、金属製パイプと金属製継手とが手で簡単に相互に回転不能であるか否かが定かではない。また、回転不能であることを確実とするために、カシメ込む強さが大きすぎると、その接続部(カシメ部)の金属製継手にカシメ応力によるき裂などの欠陥が発生することが懸念される。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、手で簡単に回転させることができず、且つカシメ応力によるき裂などの欠陥が発生しない、金属製パイプと金属製継手との接続構造を提供することである。
本発明は、金属製パイプと金属製継手とを接続する継手接続構造である。前記金属製パイプの端部には、前記金属製継手が挿入される内面が平滑な被挿入部が設けられており、前記金属製継手の前記被挿入部への挿入部の外周面には、シールリングが嵌め込まれるリング状のシール溝、および前記被挿入部がカシメ込まれるリング状のカシメ溝が設けられており、前記シール溝と前記カシメ溝とは隣り合って設けられている。シールリングが嵌め込まれた前記挿入部が前記被挿入部に挿入された状態で、下記のカシメ率を満たすように、前記被挿入部の一部が前記カシメ溝にカシメ込まれていることを特徴とする。
S=((D1+t×2)−Ds)/(D1+t×2)×100
0.9≦S≦1.7
S:カシメ率[%]
D1:カシメ前の前記カシメ溝の底部の外径
Ds:前記被挿入部を含むカシメ後のカシメ部の外径
t:カシメ前の前記被挿入部の厚み
本発明によれば、手で簡単に回転させることができず、且つカシメ応力によるき裂などの欠陥が発生しない、金属製パイプと金属製継手との接続構造とすることができる。
本発明の一実施形態に係る継手接続構造を備える水道用ホースの部分断面図である。 本発明の一実施形態に係る金属製パイプと金属製継手との接続前の状態を示す部分断面図である。 本発明の一実施形態に係る金属製パイプと金属製継手との接続後の状態を示す部分断面図である。 き裂の発生調査の結果を示す写真である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態である水道用ホース1は、ホース4と金属製パイプ2とをニップル3(金属製継手)で接続してなるものである。
(ホース)
ホース4は、例えば繊維補強層を内部に有する(繊維補強された)樹脂製のフレキシブルホースである。
(金属製パイプ)
金属製パイプ2は、カシメ成形加工が容易で、且つ水道水に含有されている塩素に対する耐腐食性に優れた、例えば銅製またはステンレス鋼製の管である。この金属製パイプ2は、パイプ本体部11と、パイプ本体部11から延在する内面が平滑な被挿入部12とを有する。金属製パイプ2の端部に設けられた被挿入部12は、パイプが拡径加工された部分であり、パイプ本体部11よりも径が大きい。この部分に、後述するニップル3のパイプ側挿入部13が挿入される。
(ニップル)
ニップル3は、円筒形状のホース側挿入部23と円筒形状のパイプ側挿入部13とからなる。ホース側挿入部23の外周面には、円筒形状のソケット6の端が係合されるリング状の係合溝24が設けられている。パイプ側挿入部13の外周面には、Oリング5(シールリング)が嵌め込まれるリング状のシール溝13a・13b、および金属製パイプ2の被挿入部12がカシメ込まれるリング状のカシメ溝14が設けられている。シール溝13bとカシメ溝14とは隣り合っている。なお、シール溝が2つである必要は必ずしもない。1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。金属製パイプ2との接続部における十分なシール性の確保、継手(ニップル)の長さ寸法をあまり大きくしない、という観点から、本実施形態においては、2つのシール溝13a・13bとされている。
(ホースとニップルとの接続)
ニップル3のホース側挿入部23とソケット6との間隙にホース4の端部が挿入された状態で、ソケット6をその外周側からカシメ込むことで、ホース4の端部をニップル3に接続する。
(金属製パイプとニップルとの接続)
ニップル3のパイプ側挿入部13の外周面に設けられたシール溝13a・13bのそれぞれにOリング5を嵌め込む。その後、金属製パイプ2の被挿入部12にパイプ側挿入部13を挿入し、下記のカシメ率の範囲内で、金属製パイプ2の被挿入部12の端部をその外周側からパイプ側挿入部13のカシメ溝14にカシメ込む。これにより、金属製パイプ2の端部をニップル3に接続する。
S=((D1+t×2)−Ds)/(D1+t×2)×100
0.9≦S≦1.7
S:カシメ率[%]
D1:カシメ前(カシメ加工前)のカシメ溝14の底部の外径[mm]
Ds:被挿入部12を含むカシメ後のカシメ部の外径[mm]
t:カシメ前の被挿入部12の厚み[mm]
なお、D1、Ds、tを図2または図3に示しているので適宜参照されたい。
上記したカシメ率の範囲内で、金属製パイプ2の被挿入部12の端部をその外周側からパイプ側挿入部13のカシメ溝14にカシメ込むことで、手で簡単に回転させることができず、且つカシメ応力によるき裂などの欠陥が発生しない、金属製パイプ2とニップル3との接続構造となる。
ここで、ニップル3のパイプ側挿入部13に関して、カシメ前(カシメ加工前)のカシメ溝14の底部の厚みをt1[mm]とし、カシメ前のシール溝13bの底部の厚みをt2[mm]としたとき、下記の式を満たすようにパイプ側挿入部13が形成されていることが好ましい。
t1≧t2
なお、t1、t2を図2に示しているので適宜参照されたい。
この構造によると、金属製パイプ2との接続部における小径化を図りつつ、カシメ荷重を大きくすることができる。パイプ側挿入部13の内周面と、カシメ溝14の底面との間の距離(厚みt2)を十分に確保することができるので、カシメ荷重を大きくしても、或いはカシメ荷重が変動しても、カシメ部にき裂などの欠陥がより確実に発生しなくなる。また、カシメ荷重がかかるカシメ溝14の溝深さは、シール溝13bの溝深さよりも浅いため、金属製パイプ2に過度の荷重をかける(金属製パイプ2を過度に変形させる)ことなく、カシメ溝14に金属製パイプ2を接続することができるので、金属製パイプ2にもき裂などの欠陥が発生しなくなる。
また、本実施形態においては、カシメ前のカシメ溝14の底部の平滑な部分の幅L1が、カシメ前のシール溝13bの幅L2よりも大きくされている。なお、特開2004−36861号公報に記載の継手接続構造では、カシメ溝の底部の平滑な部分の幅は、シール溝の幅と等しくされている(特開2004−36861号公報の図1、図2)。
本実施形態のこの構造は、回転非容易性をより優先した構造であり、カシメ前のカシメ溝14の底部の平滑な部分の幅L1を、カシメ前のシール溝13bの幅L2よりも大きくすることで、金属製パイプ2の被挿入部12とニップル3のパイプ側挿入部13とのカシメ部における接触面積を大きくすることができる。その結果、摩擦抵抗がより大きくなり、回転非容易性がより向上する。
(効果検証実験)
上記したカシメ率Sを0.9以上1.7以下に規定したことによる効果検証実験結果について、以下に記載する。
<ニップルの回転非容易性>
金属製パイプ2とニップル3とを、上記したカシメ率の範囲を含めた様々なカシメ率Sでカシメ込み接続した試験体A〜Fそれぞれに対して、金属製パイプ2を固定しニップル3に回転トルクを作用させて、ニップル3が回転を始めるときの回転開始トルクを調査した。結果を表1に示す。
表1から、カシメ率Sが0.0%や−0.9%であると、金属製パイプ2とニップル3との接続部は(金属製パイプ2に対してニップル3は)、手で簡単に回転してしまうことがわかる。これに対して、カシメ率Sを0.9%以上にすれば、金属製パイプ2とニップル3との接続部は手で簡単に回転しない。また、カシメ率Sが0.0%と0.9%との間では回転開始トルクに大きな差がある。
<き裂発生の有無>
試験体A〜Fを12.5wt%のアンモニア水溶液の入ったデシケータに入れ48時間放置した。なお、試験体A〜Fは、ホース4を接続した状態、すなわち、図1に示した水道用ホース1の形態としている。その後、試験体A〜Fを取り出し中和した後、常温水にて3.5MPa×5分間の耐圧試験を行った。その後、さらに加圧していき、水道用ホース1が破裂する圧力を測定した(破裂試験)。さらにその後、各試験体A〜Fを分解し、ニップル3の割れ(き裂)発生を金属顕微鏡で観察した。なお、ニップル3の割れ(き裂)発生観察は、ニップル3をその軸方向に沿って割り、その断面を金属顕微鏡で観察した。
3.5MPa×5分間の耐圧試験では、いずれの試験体A〜Fも異常は無かった。その後の破裂試験では、いずれの試験体A〜Fも19.6MPaの圧力でホース4部分が破裂した。その後のニップル3の割れ(き裂)発生観察結果を表2に示す。
表2に示したように、カシメ率Sが−0.9%から1.7%の範囲の場合、ニップル3に割れ(き裂)は発生しなかった。一方、カシメ率Sが2.5%や3.4%の場合、ニップル3に割れ(き裂)が発生していた。割れ(き裂)が発生した部分は、ニップル3のカシメ部であり、具体的には、図3に示すX部(カシメ溝14の底部コーナー部)であった。割れ(き裂)が発生した試験体BのX部の写真を図4(a)に、異常無しの試験体CのX部の写真を図4(b)に示している。
表2から、カシメ率Sが2.5%や3.4%であると、ニップル3のカシメ部にき裂などの欠陥が発生することがわかる。これに対して、カシメ率Sを1.7%以下にすれば、カシメ応力によるき裂などの欠陥は発生しない。
1:水道用ホース
2:金属製パイプ
3:ニップル(金属製継手)
4:ホース(フレキシブルホース)
5:Oリング(シールリング)
11:パイプ本体部
12:被挿入部
13:パイプ側挿入部
13a、13b:シール溝
14:カシメ溝
15:凸部分
23:ホース側挿入部

Claims (4)

  1. 金属製パイプと金属製継手とを接続する継手接続構造であって、
    前記金属製パイプの端部には、前記金属製継手が挿入される内面が平滑な被挿入部が設けられており、
    前記金属製継手の前記被挿入部への挿入部の外周面には、シールリングが嵌め込まれるリング状のシール溝、および前記被挿入部がカシメ込まれるリング状のカシメ溝が設けられており、
    前記シール溝と前記カシメ溝とは隣り合って設けられており、
    シールリングが嵌め込まれた前記挿入部が前記被挿入部に挿入された状態で、下記のカシメ率を満たすように、前記被挿入部の一部が前記カシメ溝にカシメ込まれていることを特徴とする、継手接続構造。
    S=((D1+t×2)−Ds)/(D1+t×2)×100
    0.9≦S≦1.7
    S:カシメ率[%]
    D1:カシメ前の前記カシメ溝の底部の外径
    Ds:前記被挿入部を含むカシメ後のカシメ部の外径
    t:カシメ前の前記被挿入部の厚み
  2. 請求項1に記載の継手接続構造において、
    前記挿入部は円筒形状であって、
    カシメ前の前記カシメ溝の底部の厚みをt1とし、カシメ前の前記シール溝の底部の厚みをt2としたとき、下記の式を満たすことを特徴とする、継手接続構造。
    t1≧t2
  3. 請求項2に記載の継手接続構造において、
    カシメ前の前記カシメ溝の底部の平滑な部分の幅が、カシメ前の前記シール溝の幅よりも大きくされていることを特徴とする、継手接続構造。
  4. フレキシブルホースと前記金属製パイプとを前記金属製継手で接続してなる、請求項1〜3のいずれかに記載の継手接続構造を備える水道用ホース。
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