JP2014207342A - 磁石用材料、磁石用材料の製造方法、及び磁石 - Google Patents

磁石用材料、磁石用材料の製造方法、及び磁石 Download PDF

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Abstract

【課題】希土類金属を極力使用せずFe16C2を利用した磁石用材料で、磁気特性に優れる磁石用材料、磁石用材料の製造方法、及び磁石を提供する。【解決手段】磁石用材料1は、FeとCの化合物を含む複数の磁性相11と、非磁性の合金を主体とし、これら磁性相11を取り囲んで隣接する磁性相11同士の間に介在される非磁性相12とを備える。磁性相11は、Fe16C2層11mとFe−C層11rとのラメラ組織を含む。Fe−C層11rは、Feに対するCの質量%での濃度がFe16C2以上Fe3C以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、永久磁石の材料に利用される磁石用材料、その製造方法、及びその磁石用材料を着磁した磁石に関する。特に、希土類金属を極力使用せずFe16を利用した磁石用材料で、磁気特性に優れる磁石用材料に関する。
モータや発電機などに利用される永久磁石として、酸化鉄を用いたフェライト磁石、Fe−Al−Ni−Co系合金やFe−Cr−Co系合金を用いた金属系磁石、Nd−Fe−B系合金やSm−Fe−N系合金を用いた希土類磁石が利用されている。
最近では、NdやSmなどの希土類金属に代表される希少金属を使用しない磁石用材料の研究が進められている。代替材料候補として、窒化鉄(Fe16)が注目されている(特許文献1、2参照)。Fe16は、飽和磁化が高く、理論的に高い最大エネルギー積(BH)maxを持つことから、磁石用材料として期待されている。
一方、Fe16と同様の侵入型化合物で高飽和磁化を発生する炭化鉄(Fe16)が知られている(特許文献3参照)。特許文献3には、Fe16膜を記録媒体膜として利用することが記載されている。この特許文献3では、Fe単結晶膜にCのイオンを加速して注入した後、熱処理することで、Fe格子中にCを侵入させた構造のFe16膜を作製している。
特開2012−246174号公報 特開2012−253248号公報 特開平08−203735号公報
希土類金属を極力使用することなく、更なる磁気特性の向上のために、上述のFe16のような代替材料が研究されている。上述したようにFe16が高飽和磁化を有するため、Fe16を希土類金属の代替材料として磁石用材料に利用することが考えられるが、Fe16を利用した磁石は実用化されていない。そのため、Fe16を利用した磁石用材料で、磁気特性に優れる磁石の開発が望まれている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、希土類金属を極力使用せずFe16を利用した磁石用材料で、磁気特性に優れる磁石用材料を提供することにある。
本発明のもう一つの目的は、上記磁石用材料を製造できる製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、上記磁石用材料を着磁した磁石を提供することにある。
本発明の磁石用材料は、FeとCの化合物を含む複数の磁性相と、非磁性の合金を主体とし、磁性相を取り囲んで隣接する磁性相同士の間に介在される非磁性相とを備える。磁性相は、Fe16層とFe−C層とのラメラ組織を含む。Fe−C層は、Feに対するCの質量%での濃度がFe16以上FeC以下である。
本発明の磁石用材料の製造方法は、準備工程と、相分離工程と、前駆相形成工程と、炭素拡散工程とを備える。
準備工程は、FeとCと母材料とを含む原料合金を準備する。
相分離工程は、原料合金をスピノーダル分解して、FeCを含む複数の炭化鉄相と、母材料を主体とし、炭化鉄相を取り囲んで隣接する炭化鉄相同士の間に介在される非磁性相とに相分離した複合材料を作製する。
前駆相形成工程は、複合材料に熱処理を施して、炭化鉄相がFeC層とFe層とのラメラ組織を含む前駆相に相変態した前駆体材料を作製する。
炭素拡散工程は、前駆体材料に3T以上の磁場を印加した状態で熱処理を施して、前駆相をFe16層とFe−C層とのラメラ組織を含む磁性相に相変態させる。
そして、Fe−C層は、Feに対するCの質量%での濃度がFe16以上FeC以下である。
本発明の磁石は、上記磁石用材料を着磁したものである。
本発明の磁石用材料は、磁気特性に優れる磁石が得られる。
本発明の磁石用材料の製造方法は、磁気特性に優れる磁石が得られる磁石用材料を好適に製造できる。
本発明の磁石は、磁気特性に優れる。
実施形態に係る磁性用材料を製造する工程を模式的に示す工程説明図である。
《本発明の実施形態の説明》
本発明者は、希土類金属を極力使用せずに金属系磁石の磁気特性の向上を図ることを鋭意検討した。そこで、理論的に高い最大エネルギー積(BH)maxを持つFe16と同様の構造を有するFe16を磁石の素材に利用すれば、磁気特性に優れる磁石が得られるのではないかと考え、Fe16を備える磁石用材料の製造方法を鋭意検討すると共に、得られた磁石用材料の磁気特性を測定した。その結果、炭素を予め含有した原料合金をスピノーダル分解後、特定の熱処理を施すことで得られる磁石用材料が磁気特性に優れるとの知見を得た。そして、その磁石用材料の内部組織の観察及び分析を行ったところ、ナノオーダー程度の微細なFe16を有する特定の結晶組織を含む磁性相を備えるとの知見も得た。本発明は、これらの知見に基づくものである。最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本発明の磁石用材料は、FeとCの化合物を含む複数の磁性相と、非磁性の合金を主体とし、磁性相を取り囲んで隣接する磁性相同士の間に介在される非磁性相とを備える。磁性相は、Fe16層とFe−C層とのラメラ組織を含む。そして、Fe−C層は、Feに対するCの質量%での濃度がFe16以上FeC以下である。
Fe16層とFe−C層との微細なラメラ組織を含む磁性相を備えるため、磁気特性に優れる磁石が得られる。
(2)本発明の磁石用材料の一形態として、上記磁性相は、柱状であり、その幅が10nm以上100nm以下で、その長さが100nm以上であることが挙げられる。
磁性相の幅を10nm以上とすることで、熱によるスピン電子運動の揺らぎを受けて自発磁化が消失する現象(超常磁性)の発生に起因する強磁性の低下を防止できる。また、非磁性相に対して磁性相が十分に存在して、磁気特性に優れる。磁性相の幅を100nm以下とすることで、幅が大きくなりすぎず、磁性相間に非磁性相を介在させ易い。磁性相の長さを100nm以上とすることで、十分な形状磁気異方性を得やすく、磁気特性に優れる磁石が得られる。
(3)本発明の磁石用材料の一形態として、磁性相の含有量が、50体積%以上であることが挙げられる。
上記の構成によれば、磁性相が十分に存在するため、磁気特性に優れる磁石が得られる。
(4)本発明の磁石用材料の一形態として、非磁性相が、Al,Ni,Cr,Co,及びSiから選択される2種以上の元素を含む合金であることが挙げられる。
上記の構成によれば、各磁性相の磁気作用を相互に影響し難くできる。
(5)本発明の磁石用材料の製造方法は、準備工程と、相分離工程と、前駆相形成工程と、炭素拡散工程とを備える。
準備工程は、FeとCと母材料とを含む原料合金を準備する。
相分離工程は、原料合金をスピノーダル分解して、FeCを含む複数の炭化鉄相と、母材料を主体とし、炭化鉄相を取り囲んで隣接する炭化鉄相同士の間に介在される非磁性相とに相分離した複合材料を作製する。
前駆相形成工程は、複合材料に熱処理を施して、炭化鉄相がFeC層とFe層とのラメラ組織を含む前駆相に相変態した前駆体材料を作製する。
炭素拡散工程は、前駆体材料に3T以上の磁場を印加した状態で熱処理を施して、前駆相をFe16層とFe−C層とのラメラ組織を含む磁性相に相変態させる。
そして、Fe−C層は、Feに対するCの質量%での濃度がFe16以上FeC以下である。
相分離工程後、前駆相形成工程を経て、炭化鉄相を一旦FeC層とFe層との微細なラメラ組織を含む前駆相に相変態させることで、その後の炭素拡散工程での炭素拡散距離を短くできる。そのため、炭素を拡散させてFe16層とFe−C層との微細なラメラ組織を含む磁性相に相変態させることができる。特に、炭素拡散工程で3T以上の磁場を印加することで、Feの結晶格子を一方向に引き伸ばし易くでき、引き伸ばされたFe原子間に炭素を拡散させることができる。即ち、炭素の拡散方向を規制し易い。その上、磁性相の配向方向を一方向に揃えることができる。従って、磁気特性に優れる磁石が得られる磁石用材料を製造できる。
(6)本発明の磁石用材料の製造方法の一形態として、炭素拡散工程の熱処理では、前駆体材料を200℃以上210℃以下に1時間以上100時間以下保持することが挙げられる。
上記の構成によれば、前駆相の磁性相への相変態を良好に行うことができる。前駆体材料の温度を200℃以上とすることで、炭素を拡散させ易くでき、210℃以下とすることで所望の組成の上記ラメラ組織を形成することができる。
(7)本発明の磁石用材料の製造方法の一形態において、前駆相形成工程の熱処理では、複合材料を250℃以上600℃以下に1時間以上24時間以下保持することが挙げられる。
上記の構成によれば、炭化鉄相の上記前駆相への相変態を良好に行うことができる。複合材料の温度を250℃以上とすることで、上記ラメラ組織を含む前駆相へ相変態させ易く、600℃以下とすることで、相分離工程で分離した炭化鉄相と非磁性相との間で相互拡散が起こり、炭化鉄相が減少することを抑制できる。
(8)本発明の磁石用材料の製造方法の一形態において、相分離工程では、原料合金を730℃以上950℃以下に0.1時間以上3時間以下保持し、その後、当該原料合金を0.05℃/sec以上5℃/sec未満の冷却速度で500℃以下まで冷却することが挙げられる。
上記の構成によれば、原料合金の炭化相及び非磁性相への相分離を良好に行えると共に、生成された炭化鉄相の成長を抑制して粗大化することを抑制できる。
(9)本発明の磁石用材料の製造方法の一形態において、相分離工程で上記冷却をする場合、その冷却を0.01T以上0.2T以下の磁場を印加した状態で行うことが挙げられる。
上記の構成によれば、炭化鉄相の長さと幅のアスペクト比(長さ/幅)を大きくできる。後工程において炭化鉄相の形状が基本的には維持されるため、形状磁気異方性を有する磁石用材料を製造できる。
(10)本発明の磁石用材料の製造方法の一形態において、前駆体材料にプレス、伸線、又は圧延を施す塑性加工工程を備えることが挙げられる。
上記の構成によれば、前駆相の長さと幅とのアスペクト比(長さ/幅)を大きくでき、アスペクト比(長さ/幅)の大きな磁性相を得ることができる。特に、前駆体材料はFe層を含む前駆相を備えるため塑性加工し易く、アスペクト比(長さ/幅)を大きくし易い。
(11)本発明の磁石は、上記磁石用材料を着磁したものである。
上記の構成によれば、上述の磁石用材料を用いるため磁石の磁気特性に優れる。
《本発明の実施形態の詳細》
本発明の実施形態の詳細を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
〔磁石用材料〕
実施形態に係る磁石用材料を主に図1下段右を参照して説明する。磁石用材料1は、FeとCの化合物を含む複数の磁性相11と、非磁性の合金を主体とし、磁性相11を取り囲んで隣接する磁性相11同士の間に介在される非磁性相12とを備える。磁石用材料1の主たる特徴とするところは、磁性相11は、Fe16層11mとFe−C層11rとのラメラ組織を含む点にある。
[磁性相]
磁性相11は、非磁性相12中に複数、特に多数分散している。磁性相11の形状は、柱状(棒状)、又は粒(球)状が挙げられる。この形状は、後述の製造条件によって変化させることができる。磁性相11の幅wは、10nm以上100nm以下が好ましい。磁性相11の幅wは、柱状の場合:短辺の長さ、粒状の場合:最大径をいう。幅wを10nm以上とすることで、熱によるスピン電子運動の揺らぎを受けて自発磁化が消失する現象(超常磁性)の発生に起因する強磁性の低下を防止できる。また、非磁性相12に対して磁性相11が十分に存在して、磁気特性に優れる。幅wを100nm以下とすることで、幅wが大きくなりすぎず、磁性相11間に非磁性相12を介在させ易い。幅wは、20nm以上とすることが好ましく、また、50nm以下とすることが好ましい。
磁性相11が柱状である場合、その長さ(高さ)hは100nm以上が好ましい。長さhを100nm以上とすることで、アスペクト比(長さh/幅w)が十分に大きくなる。アスペクト比が大きいほど、形状磁気異方性が向上するため磁気特性に更に優れる。このアスペクト比は、20以上が好ましく、50以上が更に好ましい。具体的な長さhとしては、1000nm以上がより好ましく、1200nm以上とすることが更に好ましい。
隣り合う磁性相11間の距離は5nm以上とすることが好ましい。そうすれば、各磁性相11の磁気作用が相互に影響し難くすることができる。この距離は30nm程度以下とすることが好ましい。そうすれば、小型な磁石用材料1とすることができる。この距離は、10nm以上とすることがより好ましい。磁性相11間の距離とは、柱状の形態では、隣接する磁性相11間における磁性相11の幅方向に沿った磁性相11の外周面同士の平均距離、粒状の形態では、隣接する磁性相11において最も近接する点間の距離とする。
磁性相11は、上述したようにFe16層11mとFe−C層11rとのラメラ組織を含む。磁性相11が柱状である場合、Fe16層11mとFe−C層11rとが磁性相11の長さhの方向に積層されている。
Fe−C層11rは、Feに対するCの質量%での濃度がFe16超FeC以下であることが挙げられる。このFe−C層11rは、実質的にFeCで構成されていることが多い。
なお、磁性相11は、実質的にFe16層11mとFe−C層11rとのラメラ組織で構成されていることが好ましいが、後述する製造過程での炭素の拡散によりFe16層11mとFe−C層11rとのラメラ組織以外にC層やFe層などを含むことがある。例えば、後述する前駆相形成工程で、熱処理温度が所定の温度よりも高い場合や不純物(Mnなど)が含まれる場合には、Fe層が形成される可能性があると考えられる。
Fe16層11mの厚さは、10nm以上100nm以下であることが好ましく、Fe−C層11rの厚さ(Fe16層11m同士の間隔)は、5nm以上30nm以下であることが好ましい。即ち、Fe16層11m同士の間隔とは、Fe−C層11rの上面側のFe16層11mと当該Fe−C層11rの下面側のFe16層11mとの最短距離である。Fe16層11mの厚さを10nm以上とすることで、磁性相11中のFe16層11mの割合を多くすることができる。Fe16層11mの厚さを100nm以下とすることで、保磁力が低下しない程度に薄い層であるため、磁気特性に優れる磁石が得られる。Fe−C層11rの厚さ(Fe16層11m同士の間隔)を5nm以上とすることで、各Fe16層11mの磁気作用が相互に影響し難くすることができる。Fe−C層11rの厚さ(Fe16層11m同士の間隔)を30nm以下とすることで、Fe16層11m同士の間隔が大きくなり過ぎず、磁性相11中のFe16層11mの割合を多くできる。
磁石用材料1中の磁性相11の含有量は、50体積%以上とすることが好ましい。そうすれば、磁性相11が十分に存在するため、磁気特性に優れる。磁性相11の含有量は、70体積%以下とすることが好ましい。そうすれば、各磁性相11の磁気作用が相互に影響し難くなるように非磁性相12が介在することができる。磁性相11の含有量は、60体積%以上とすることがより好ましい。
[非磁性相]
非磁性相12を構成する合金は、Al,Ni,Cr,Co,及びSiから選択される2種以上の元素からなることが挙げられる。ここでは、元素の選択は、非磁性合金となるようにする。具体的には、Al−Ni系合金、Cr−Co系合金、又はAl−Si系合金が挙げられる。中でもAl−Ni系合金は、後述する相分離温度域が比較的高温(例えば、FeCの安定化温度以上)にできることから、所望の組成の純度が高い炭化鉄相31と非磁性相12とに分離し易く、炭化鉄相31の全体に対する比率を高め易い。その上に、炭化鉄相31の成長が抑制され、ナノサイズの形状にできるため、磁気特性に優れる。Cr−Co系合金は、塑性加工性や切削加工性などに優れることから形状の自由度が高く、所望の磁石材料1を得やすい。Al−Si系合金は、元素を調達し易いことや、環境負荷が低いことなどから工業的に扱い易い。
磁石用材料1中の非磁性相12の含有量は、50体積%以下とすることが好ましく、特に、40体積%以下とすることが好ましい。そうすれば、磁石用材料1中の磁性相11の割合を多くすることができ、磁気特性に優れる磁石が得られる。非磁性相12の含有量は、30体積%以上とすることが好ましい。そうすれば、各磁性相11の磁気作用が相互に影響し難くするように磁性相11同士の間に介在することができる。
磁性相11の形状・サイズ・組成・組織や非磁性相12の組成の測定・確認は、例えば、磁石用材料1の断面をとり、この断面の透過型電子顕微鏡:TEMの像を利用することができる。その他、組成の分析には、エネルギー分散型X線分光法:EDXを利用することができる。
[磁気特性]
本発明の磁石用材料1は、磁気特性に優れ、特に、飽和磁束密度、残留磁束密度、固有保磁力、最大エネルギー積が高い。例えば、飽和磁束密度Bsが1.35T以上、角型比(残留磁束密度Br/飽和磁束密度Bs)が0.82以上、固有保磁力iHcが580kA/m以上、最大エネルギー積(BH)maxが170kJ/m以上の少なくとも一つを満たす形態が挙げられる。
〔作用効果〕
上述した磁石用材料1によれば、Fe16層11mとFe−C層11rとの微細なラメラ組織を含む磁性相11を備えるため、磁気特性に優れる磁石が得られる。
〔磁石用材料の製造方法〕
上述の磁石用材料1を製造する製造方法を図1を参照して説明する。この製造方法は、準備工程と、相分離工程と、前駆相形成工程と、炭素拡散工程とを備える。
[準備工程]
準備工程は、FeとCと母材料とを含む原料合金20を準備する(図1上段中)。原料合金20は、所定の組成の磁石用材料1が得られるようにFeとCと母材料とを含む原料粉末を溶解した溶湯を鋳造して製造できる(例えば、図1上段左)。母材料としては、Al,Ni,Cr,Co,及びSiから選択される2種以上の元素が挙げられる。元素の選択は、非磁性合金となるようにする。
(溶体化)
原料合金(鋳造材)20の各元素の濃度勾配(偏析)を無くして均質化を図るために、原料合金20に溶体化処理を施すことが好ましい。この溶体化処理により溶体化合金20hが作製される(図1上段右)。
溶体化処理温度は、後述のスピノーダル分解が生じる温度以上で行う。具体的には、1000℃以上液相化温度以下とすることが挙げられる。この処理温度が高いほど、偏析を低減できる。一方で、処理温度が高過ぎると液相が生じ、原料合金20の形状が変化してしまうからである。
溶体化処理の条件は、原料合金20の組成に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱温度:1000℃〜1300℃、加熱時間:10分〜10時間が挙げられる。溶体化処理は、大気雰囲気で行ってもよいが、非酸化性雰囲気(例えば、Arなどの不活性雰囲気)や低酸素雰囲気(酸素:100体積ppm以下の真空雰囲気)で行うことが好ましい。そうすれば、原料合金20に含まれるFeやAlなどの酸化を防止でき、酸化物の介在によるスピノーダル分解(後述)の阻害を抑制できる。
溶体化処理後には、50℃以下に急冷(例えば、冷却速度100℃/sec以上)することが好ましい。そうすれば、冷却斑が生じ難く、冷却斑による局部的な結晶粒の粗大化を抑制して、この粗大化による磁気特性の低下を防止できる。この冷却には、例えば、加熱状態にある素材を油や水などの液状冷却媒体に浸漬するといった強制冷却方法を利用することができる。
[相分離工程]
相分離工程は、溶体化合金20h(原料合金20)が、図1下段左に示すように、FeCを含む炭化鉄相31と、溶体化合金20hの母材料を主体とし、炭化鉄相を取り囲んで隣接する炭化鉄相同士の間に介在される非磁性相12とに相分離した複合材料30を作製する。具体的には、図1上段右の溶体化合金20h(原料合金20)をスピノーダル分解する。
スピノーダル分解は、加熱した溶体化合金20hを相分離温度域まで冷却することで行う。具体的には、溶体化合金20hを730℃以上950℃以下に0.1h以上3h以下保持した後、相分離温度域まで冷却する。相分離温度域は、代表的には平衡状態図や示差熱分析曲線(DTA曲線)から決定される相分離温度の中心温度±50℃の温度域が挙げられる。相分離工程を溶体化処理に連続して行うこともできる。そうすれば、溶体化処理で急冷した後に溶体化合金を更に加熱する必要がなく、加熱回数を低減できて生産性に優れる。
相分離工程の冷却は、冷却速度を0.05℃/sec以上とすることが好ましい。そうすれば、相分離を良好に行えて、生成された磁性相の成長を抑制できる。冷却速度を大きくするほど、上記成長を抑え易い。特に、0.1℃/sec以上、更に0.2℃/sec以上とすることが好ましい。冷却速度は、5℃/sec未満とすることが好ましい。冷却速度が、早すぎると相分離が十分に行えなくなるからである。冷却速度は、1℃/sec以下が好ましく、特に0.5℃/sec程度が一層好ましい。
相分離工程では、特に相分離温度域での冷却(降温)中に磁場を印加すると、炭化鉄相31を、幅wが100nm以下、長さ(高さ)hが100nm以上のナノオーダーであって、アスペクト比(長さh/幅w)が大きな柱状体とすることができる。印加する磁場が大きいほど、長さhを長くして、アスペクト比を大きくできる。印加する磁場が小さいと、長さhが短くなり、磁場を印加しないと、磁性相を粒(球)状にすることができる。所望のアスペクト比を満たすように、磁場の大きさを選択することができ、0.01T以上とすることが挙げられる。磁場の大きさの上限は特にないが、例えば、0.2T程度とすることが挙げられる。
磁場の印加には、銅線コイルといった常電導コイルを備える常電導磁石や、超電導コイルを備える超電導磁石を用いることができる。特に、高温超電導コイルを利用すると、励磁速度が速く、生産性に優れる。
相分離工程の雰囲気は、不活性雰囲気(例えば、Arなどの不活性ガス雰囲気)、又は減圧雰囲気(標準大気圧よりも圧力が低い真空雰囲気(最終真空度:例えば、10Pa以下))とすることが挙げられる。
相分離反応が進行し、未反応相を十分に低減可能な程度の時間を経過した後には、200℃以下に速やかに冷却することが好ましい。そうすれば、冷却斑が生じ難く、冷却斑による局部的な炭化鉄相31の粗大化を抑制して、この粗大化による磁気特性の低下を防止できる。冷却には、上述の溶体化処理と同様の方法を利用することができる。
相分離工程を経て得られた炭化鉄相31のサイズを実質的に変化させないように更に時効処理を行うことができる。時効処理により、炭化鉄相31と非磁性相12との分離を完全に進行できる。後述する前駆相形成工程が時効処理の作用を兼ねていてもよい。
相分離工程で分離された炭化鉄相31のサイズ(幅w、長さh、アスペクト比(長さh/w))は、後工程の前駆相形成工程や炭素拡散工程において基本的に維持される。但し、前駆相形成工程後、炭素拡散工程前に後述する塑性加工工程を行う場合は、炭化鉄相31のサイズは、前駆相形成工程において維持される。
[前駆相形成工程]
前駆相形成工程は、炭化鉄相31が、図1下段中に示すように、FeC層41cとFe層41pとのラメラ組織を含む前駆相41に相変態した前駆体材料40を作製する。具体的には、複合材料30に熱処理を施す。
熱処理条件は、複合材料30を250℃以上600℃以下に1h以上24h以下保持する。複合材料30の温度を250℃以上とすることで、上記ラメラ組織を含む前駆相41へ相変態させ易く、600℃以下とすることで、相分離工程で分離した炭化鉄相31と非磁性相12とが均質化されて炭化鉄相31が減少することを抑制できる。この熱処理条件は、複合材料30を450℃以上550℃以下に保持することが特に好ましい。この熱処理により、前駆相41のサイズ(幅w1、長さh1、アスペクト比(長さh1/w1))は実質的に変化しない。熱処理時の雰囲気は、上述の相分離工程と同様に、Arなどの不活性ガス雰囲気、又は減圧雰囲気(最終真空度:例えば、10Pa以下)とすることが挙げられる。
相分離工程で200℃以下への冷却を行わない場合、前駆相形成工程を相分離工程に連続して行うことができる。そうすれば、生産性に優れる。
[炭素拡散工程]
炭素拡散工程は、前駆相41が、図1下段右に示すように、Fe16層11mとFe−C層11rとのラメラ組織を含む磁性相11に相変態した磁石用材料1を作製する。具体的には、前駆体材料40に磁場を印加した状態で熱処理を施す。
磁場強度は、3T以上とすることが挙げられる。そうすれば、上記ラメラ組織を含む磁性相11に相変態させることができる。磁場を印加することで、Fe層41pの結晶格子を一方向に引き伸ばし易く、引き伸ばされたFe原子−Fe原子間にFeC層41cを炭素源としてFeC層41cの炭素を拡散させ易くなる。つまり、炭素の拡散方向を制御し易い。そのため、Fe層41pをFe16層11mに相変態させ易い。この効果は、磁場強度を高くするほど顕著になる。そして、FeC層41cは炭素が拡散してFe−C層11rに相変態する。
磁場印加方向は、相分離工程で磁場を印加した場合、相分離工程での磁場印加方向と同一方向とすることが好ましい。そうすることで、磁性相11の配向方向を長さhの方向に揃えることができ、優れた磁気特性を有する磁石が得られる磁石用材料とすることができる。
磁場の印加手段には、相分離工程と同様、常電導磁石や超電導磁石を用いることができる。
熱処理条件は、前駆体材料40を200℃以上210℃以下に1h以上100h以下保持する。前駆体材料40の温度を200℃以上とすることで、炭素を拡散させ易くでき、210℃以下とすることで所望の組成の上記ラメラ組織を形成させ易い。
熱処理時の雰囲気は、上述の相分離工程や前駆相形成工程と同様に、Arなどの不活性ガス雰囲気、又は減圧雰囲気(最終真空度:例えば、10Pa以下)とすることが挙げられる。
炭素拡散工程を前駆相形成工程に連続して行うこともできる。そうすれば、生産性に優れる。特に、溶体化処理、相分離工程、前駆相形成工程、炭素拡散工程を一連で行うと、生産性に優れる。
[その他の工程]
(塑性加工工程)
その他の工程として、前駆相形成工程後、炭素拡散工程前に、前駆体材料40に塑性加工を施すことが好ましい。塑性加工としては、例えば、プレス、伸線、圧延などが挙げられる。
塑性加工は、相分離工程で磁場を印加した場合、その磁場の印加方向と同一方向に前駆相41(前駆体材料40)が伸びるように施すことが好ましい。具体的には、プレスを施す場合、プレス方向は相分離工程での磁場印加方向と直交する方向とし、伸線や圧延を施す場合、伸線方向や圧延方向は相分離工程での磁場印加方向と同一方向とする。塑性加工を施すことで、図1下段中に示す前駆相41のアスペクト比(長さh/幅w)を大きくできる。分離工程で磁場印加方向に長さhが長くなった炭化鉄相31(図1下段左)は、上述したように前駆相形成工程後の前駆相41の長さhでも維持されるためである。そのため、加工後の炭素拡散工程でアスペクト比(長さh/幅w)の大きな磁性相11(図1下段右)を形成できる。特に、前駆相41はFe層41pを含むため、塑性加工性に優れ、アスペクト比(長さh/幅w)を大きくし易い。
塑性加工による加工率は、例えば、0%超15%以下とすることが好ましい。加工率を0%超とすることで、前駆相41のアスペクト比(長さh/幅w)を大きくできるため、形状磁気異方性が向上する。加工率を15%以下とすることで、前駆相41の幅wが小さくなりすぎることを抑制できる。加工率は、塑性加工前後の前駆体材料の断面積の比((加工前断面積−加工後断面積)/加工前断面積)を百分率で示した値(%)とする。
加工温度は、常温程度でもよいし常温以上でもよい。常温以上とする場合は、例えば400℃以下とすることが好ましい。加工時の雰囲気は、大気雰囲気としてもよいし、上述の各工程と同様に、Arなどの不活性ガス雰囲気、又は減圧雰囲気(最終真空度:例えば、10Pa以下)としてもよい。
〔作用効果〕
上述した磁石用材料の製造方法によれば、相分離工程後、前駆相形成工程を経て、炭化鉄相31を一旦FeC層41cとFe層41pとの微細なラメラ組織を含む前駆相41に相変態させることで、その後の炭素拡散工程での炭素拡散距離を短くできる。そのため、炭素を拡散させてFe16層11mとFe−C層11rとの微細なラメラ組織を含む磁性相11を形成することができる。従って、磁気特性に優れる磁石が得られる磁石用材料1を製造できる。
《試験例1》
磁石用材料の試料No.1〜No.25を以下の手順で作製し、各試料の磁気特性を調べた。この試験では、準備工程→相分離工程→前駆相形成工程→塑性加工工程→炭素拡散工程という手順で磁石用材料を作製した。
[準備工程]
まず、原料として、5質量%Ni、30質量%Al、2質量%C、及び残部がFeの溶湯を用意し、鋳造して原料合金を作製した。その原料合金に対して、Ar雰囲気下、1200℃で5hの熱処理を行って溶体化処理を施し、溶体化合金を作製した。
[相分離工程]
溶体化合金に対して、Ar雰囲気下、700℃に加熱した状態で0.5h保持した。その後、同雰囲気下、磁場を印加した状態で、0.5℃/secの冷却速度で500℃まで降温した。各試料に印加した磁場の強度を表1に示す。なお、表1に示す試料No.1の「0.00」は磁場を印加していないことを示す。
また、試料No.1〜試料No.6と同様の相分離工程を経て、観察用試料1〜6も併せて作製した。この観察用試料1〜3、4α、5、6の磁場の印加方向に平行な面が露出されるように切断又は研磨し、その露出面をTEM(Transmission Electron Microscope)−EDX(Energy Dispersive X−ray spectroscopy)で観察すると共に組成分析した。その結果、観察用試料2、3,4α、5、6は、図1下段左に示すように、複数の柱状の炭化鉄相31と、炭化鉄相31同士の間に介在されるAlNi合金からなる非磁性相12で構成されていた。一方、観察用試料1は、観察用試料2、3,4α、5、6と炭化鉄相31の形状が異なり、球状であった。これら炭化鉄相31の幅wと長さhとを測定した。観察用試料1、2、3,4α、5、6の結果を試料No.1〜試料No.6の結果として表1に示す。なお、試料No.7〜試料No.25は、試料No.4と同じ条件で作製しているため、試料No.4と同じ結果を示している。
[前駆相形成工程]
複合材料に対して、Ar雰囲気下、3hの熱処理を行って前駆体材料を作製した。各試料の加熱温度を表1に示す。
[塑性加工工程]
前駆体材料に対して、冷間圧延加工を行った。ここでは、圧延(伸び)方向を、上記相分離工程での磁場印加方向と同一方向とした。各試料の加工率を表1に示す。なお、表1に示す試料No.11の「0」は、塑性加工を施していないことを示す。
[炭素拡散工程]
塑性加工を施した前駆体材料に対して、Ar雰囲気下、磁場を印加した状態で加熱して20h保持した。磁場印加方向を、塑性加工して前駆体材料が伸びた方向と同一方向とした。加熱温度、及び印加した磁場強度を表1に示す。なお、表1に示す試料No.21の「0」は、磁場を印加していないことを示す。
[磁気特性測定]
得られた磁石用材料の試料を2500kA/mのパルス磁界で着磁した後、得られた各試料(磁石)の磁気特性を、BHトレーサ(理研電子株式会社製DCBHトレーサ)を用いて調べた。その結果を表1に示す。ここでは、磁気特性として、飽和磁束密度Bs(T)、角型比(残留磁束密度Br/飽和磁束密度Bs)、固有保持力iHc(kA/m)、磁束密度Bと減磁界の大きさHとの積の最大値:(BH)max(kJ/m)を求めた。
Figure 2014207342
[磁気特性測定結果]
試料No.1〜試料No.6より、相分離工程において印加する磁場を大きくするほど、炭化鉄相の長さが長くなることが分かる。そして、印加する磁場を大きくするほど、Bs,Br/Bs,iHc,及び(BH)maxが高くなる傾向にあることが分かる。
試料No.4と試料No.7〜試料No.10より、前駆相形成工程において加熱温度を250℃以上600℃以下とすることで、加熱温度が250℃未満や600℃超(具体的には、200℃や650℃)とする場合に比べて、Bs,Br/Bs,iHc,及び(BH)maxが高いことが分かる。特に、加熱温度が500℃の試料No.4や加熱温度が600℃の試料No.9のように加熱温度が上記範囲において高いほど、Bsと(BH)maxが高い傾向にあり、加熱温度が250℃の試料No.8のように加熱温度が上記範囲において低いほど、Br/BsとiHcが高い傾向にある。
試料No.4と試料No.11〜試料No.14より、塑性加工工程において、加工率を大きくするほど、Bs,Br/Bs,iHc,及び(BH)maxが高くなる傾向にあることが分かる。これは、加工率を大きくするほど、形状磁気異方性を向上できるからだと考えられる。
試料No.4と試料No.15〜試料No.20より、炭素拡散工程において、加熱温度を200℃以上210℃以下とすることで、加熱温度が200℃未満や210℃超(具体的には、150℃、190℃、220℃、250℃)とする場合に比べて、Bs,Br/Bs,iHc,及び(BH)maxが高いことが分かる。特に、加熱温度が205℃である試料No.4が、加熱温度が200℃の試料No.17や加熱温度が210℃の試料No.18よりもBr/Bsと(BH)maxが高いのに対して、試料No.17と試料No.18は、試料No.4よりもiHcが高い。
試料No.4と試料No.21〜試料No.25より、炭素拡散工程において、印加する磁場の強度が3T以上とすることで、Bs,Br/Bs,iHc,及び(BH)maxが高いことが分かる。そして、磁場の強度が高くなるほどBs,Br/Bs,iHc,及び(BH)maxが高くなる傾向にある。
《試験例2》
試験例1における上記前駆相形成工程、塑性加工工程、及び炭素拡散工程のそれぞれを経た時点での観察用試料を作製し、これらの工程で得られた観察用試料の内部構造の観察と組成分析を行った。
具体的には、以下の観察用試料を作製した。
(A)試料No.4及び試料No.7〜試料No.10と同様の準備工程→相分離工程→前駆相形成工程を経て作製された観察用試料4β及び観察用試料7〜観察用試料10
(B)試料No.4と試料No.11〜試料No.14と同様の準備工程→相分離工程→前駆相形成工程→塑性加工工程を経て作製された観察用試料4γ及び観察用試料11〜観察用試料14
(C)試料No.4と試料No.15〜試料No.25と同様の準備工程→相分離工程→前駆相形成工程→塑性加工工程→炭素拡散工程を経て作製された観察用試料4ε及び観察用試料15〜観察用試料25
上述の試験例1と同様にして、各観察用試料における相分離工程での磁場の印加方向に平行な面を露出させて、その露出面を上記TEM−EDXで観察すると共に組成分析した。
[観察結果]
(A)観察用試料4β、8、9は、図1下段中に示すように、FeC層41cとFe層41pとのラメラ組織を含む複数の柱状の前駆相41と、炭化鉄相31同士の間に介在されるAlNi合金からなる非磁性相12で構成されていた。一方、観察用試料7は、FeC層41cとFe層41pとを含む複数の柱状の相と、柱状の相同士の間に介在されるAlNi合金からなる非磁性相12で構成されていたものの、柱状の相はFeC層41cとFe層41pとのラメラ組織が形成されていなかった。これは、前駆相形成工程での熱処理温度が低く良好に相変態できなかったからだと考えられる。観察用試料10は、柱状の相が形成されていなかった。これは、前駆相形成工程での熱処理温度が高く、複合材料30の炭化鉄相31と非磁性相12との均質化が生じたからだと考えられる。
(B)観察用試料4γ及び観察用試料11〜観察用試料14は、上述の観察用試料4βと同様、上記前駆相41及び非磁性相12で構成されていた。そして、観察用試料4γ及び観察用試料12〜観察用試料14における前駆相41の幅w及び長さhはそれぞれ、観察用試料4αの炭化鉄相31の幅wよりも狭く、炭化鉄相31の長さwよりも長くなっていた。特に、観察用試料12、4γ、13、14の順に幅wが狭く、かつ長さhが長くなっていた。一方、観察用試料11における前駆相41の幅w及び長さhはそれぞれ、観察用試料4αの炭化鉄相31の幅w及び長さwと同じであった。
(C)観察用試料4ε、観察用試料17、18、24、25は、図1下段右に示すように、Fe16層11mとFe−C層11rとのラメラ組織を含む複数の柱状の磁性相11と、AlNi合金からなる非磁性相12とで構成されていた。このFe−C層11rは、実質的にFeCで構成されていた。一方、観察用試料15、16、19〜23は、ラメラ組織を有していたものの、Fe16層11mとFe−C層11rとのラメラ組織は形成されていなかった。観察用試料15、16は、炭素拡散工程での熱処理温度が低いため、FeC層41cの炭素が十分に拡散せず、観察用試料18,19は、炭素拡散工程での熱処理温度が高いため、FeC層41cの炭素が必要以上に拡散したからだと考えられる。観察用試料21〜23は、炭素拡散工程で印加する磁場強度が低く、Fe層41pの結晶格子を一方向に十分に引き伸ばせなかった上に、炭素の拡散方向を制御できなかったため、炭素を十分に拡散できなかったと考えらえる。
本発明の磁石用材料は、各種のモータ、特に、ハイブリッド車(HEV)やハードディスクドライブ(HDD)などに具備される高速モータに用いられる永久磁石の原料に好適に利用することができる。本発明の磁石用材料の製造方法は、永久磁石の原料の製造に好適に利用できる。
1 磁石用材料
11 磁性相
11m Fe16
11r Fe−C層
12 非磁性相
20 原料合金
20h 溶体化合金
30 複合材料
31 炭化鉄相
40 前駆体材料
41 前駆相
41c FeC層
41p Fe層

Claims (11)

  1. FeとCの化合物を含む複数の磁性相と、
    非磁性の合金を主体とし、前記磁性相を取り囲んで隣接する前記磁性相同士の間に介在される非磁性相とを備え、
    前記磁性相は、Fe16層とFe−C層とのラメラ組織を含み、
    前記Fe−C層は、Feに対するCの質量%での濃度がFe16超FeC以下である磁石用材料。
  2. 前記磁性相は、柱状であり、その幅が10nm以上100nm以下で、その長さが100nm以上である請求項1に記載の磁石用材料。
  3. 前記磁性相の含有量が、50体積%以上である請求項1または請求項2に記載の磁石用材料。
  4. 前記非磁性相が、Al,Ni,Cr,Co,及びSiから選択される2種以上の元素を含む合金である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の磁石用材料。
  5. FeとCと母材料とを含む原料合金を準備する準備工程と、
    前記原料合金をスピノーダル分解して、FeCを含む複数の炭化鉄相と、前記母材料を主体とし、前記炭化鉄相を取り囲んで隣接する前記炭化鉄相同士の間に介在される非磁性相とに相分離した複合材料を作製する相分離工程と、
    前記複合材料に熱処理を施して、前記炭化鉄相がFeC層とFe層とのラメラ組織を含む前駆相に相変態した前駆体材料を作製する前駆相形成工程と、
    前記前駆体材料に3T以上の磁場を印加した状態で熱処理を施して、前記前駆相をFe16層とFe−C層とのラメラ組織を含む磁性相に相変態させる炭素拡散工程とを備え、
    前記Fe−C層は、Feに対するCの質量%での濃度がFe16超FeC以下である磁石用材料の製造方法。
  6. 前記炭素拡散工程の熱処理では、前記前駆体材料を200℃以上210℃以下に1h以上100h以下保持する請求項5に記載の磁石用材料の製造方法。
  7. 前記前駆相形成工程の熱処理では、前記複合材料を250℃以上600℃以下に1h以上24h以下保持する請求項5または請求項6に記載の磁石用材料の製造方法。
  8. 前記相分離工程では、前記原料合金を730℃以上950℃以下に0.1h以上3h以下保持し、その後、当該原料合金を0.05℃/sec以上5℃/sec未満の冷却速度で500℃以下まで冷却する請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の磁石用材料の製造方法。
  9. 前記相分離工程の冷却を0.01T以上0.2T以下の磁場を印加した状態で行う請求項8に記載の磁石用材料の製造方法。
  10. 前記前駆体材料にプレス、伸線、又は圧延を施す塑性加工工程を備える請求項5〜請求項9のいずれか1項に記載の磁石用材料の製造方法。
  11. 請求項1に記載の磁石用材料を着磁した磁石。
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