本発明を具体化した実施の形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係るテープ印字装置1及びテープカセット30について説明する。本実施形態の説明では、図1の左下側、右上側、右下側、左上側、上側、下側を、それぞれテープ印字装置1の前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。図2の右下側、左上側、右上側、左下側、上側、下側を、それぞれテープカセット30の前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。
本実施形態では、テープカセット30に収納される各種テープ(例えば、感熱紙テープ、印字テープ、両面粘着テープ、フィルムテープ、後述するチューブテープ57)を、総称してテープという。テープカセット30に収納されるテープの種類(例えば、テープ幅、印字態様、テープ色、文字色など)を、総称してテープ種類という。
図1〜図3を参照して、テープ印字装置1について説明する。説明の便宜上、図2及び図3では、カセット装着部8の周囲を形成する側壁が図示されているが、これらの図はあくまでも模式図であるため、図中に示す側壁は実際よりも厚く描かれている。図2に図示されているギヤ91、93、94、97、98、101を含むギヤ群は、実際にはキャビティ811の底面により覆い隠されている。これらのギヤ群を説明する必要上、図2にはキャビティ811の底面は図示されていない。図3及び図5において、テープカセット30は、上ケース311が取り外された状態である。
テープ印字装置1の概略構成について説明する。テープ印字装置1は、1台でサーマルタイプ、レセプタタイプ、ラミネートタイプ、チューブタイプ等、各種のテープカセットが使用可能な汎用のテープ印字装置である。サーマルタイプのテープカセットは、感熱紙テープを備えている。レセプタタイプのテープカセットは、印字テープとインクリボンとを備えている。ラミネートタイプのテープカセットは、両面粘着テープとフィルムテープとインクリボンとを備えている。チューブタイプのテープカセットは、チューブテープとインクリボンとを備えている。
図1に示すように、テープ印字装置1は、略直方体形状の本体カバー2を備えている。本体カバー2上面の前部には、キャラクタキーや機能キーを含むキーボード3が配設されている。キーボード3の後側には、キーボード3で入力されたキャラクタ(文字、数字、及び図形等)などを表示可能なディスプレイ5が設けられている。ディスプレイ5の後側には、テープカセット30(図2参照)の交換時に開閉されるカセットカバー6が設けられている。
カセットカバー6は、平面視略長方形状の蓋部である。カセットカバー6は、本体カバー2の背面上方の左右両端部で軸支され、図示しない閉鎖位置と、図1に示す開放位置との間で回動可能である。本体カバー2の内部には、テープカセット30を着脱可能な領域であるカセット装着部8が設けられている。カセット装着部8は、カセットカバー6が閉鎖位置にあるときに被覆され、カセットカバー6が開放位置にあるときに露出する。
本体カバー2の左側面後方には、排出スリット111が設けられている。排出スリット111は、印字済みのテープをカセット装着部8から排出する。カセットカバー6の左側面には、排出窓112が設けられている。排出窓112は、カセットカバー6が閉じられている場合に、排出スリット111を外部に露出させる。
図2を参照して、カセットカバー6下の本体カバー2の内部構造について説明する。図2に示すように、カセット装着部8は、キャビティ811及び角支持部812を含む。キャビティ811は、カセットケース31の底面302の形状と略対応するように凹設された、平面状の底面を有する凹部である。角支持部812は、キャビティ811の外縁から水平に延びる平面部である。テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合、角支持部812はテープカセット30の周縁の下面を支持する。
角支持部812の2箇所に、2つの位置決めピン102、103が設けられている。具体的には、キャビティ811の左側に、位置決めピン102が設けられている。キャビティ811の右側に、位置決めピン103が設けられている。位置決めピン102、103は、テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合に、カセットケース31の底面302に設けられたピン孔(図示せず)にそれぞれ挿入される。このとき、位置決めピン102、103は、テープカセット30の周縁部の左右位置で、テープカセット30を前後・左右方向に位置決めする。
カセット装着部8の前部には、ヘッドホルダ74が設けられている。ヘッドホルダ74は、発熱体(図示せず)を備えるサーマルヘッド10を搭載している。テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合、ヘッドホルダ74はヘッド挿入部39に挿入される(図3参照)。カセット装着部8の外側(図2では右上側)には、ステッピングモータであるテープ駆動モータ23が配設されている。テープ駆動モータ23の駆動軸の下端には、ギヤ91が固着されている。ギヤ91は、開口を介してギヤ93に噛み合っている。ギヤ93は、ギヤ94に噛み合っている。ギヤ94は、ギヤ97に噛み合っている。ギヤ97は、ギヤ98に噛み合っている。ギヤ98は、ギヤ101に噛み合っている。
ギヤ94の上面には、リボン巻取軸95が立設されている。リボン巻取軸95は、リボン巻取りスプール44に着脱可能な軸体である。ギヤ101の上面には、テープ駆動軸100が立設されている。テープ駆動軸100は、テープ駆動ローラ46の孔部461に着脱可能な軸体である。
テープカセット30がカセット装着部8に装着された状態で、テープ駆動モータ23が反時計回り方向にギヤ91を回転駆動すると、ギヤ93、ギヤ94を介して、リボン巻取軸95が反時計回り方向に回転駆動する。リボン巻取軸95は、リボン巻取軸95に装着されたリボン巻取りスプール44を回転駆動する。さらに、ギヤ94の回転は、ギヤ97、ギヤ98、ギヤ101を介してテープ駆動軸100に伝達されて、テープ駆動軸100が時計回り方向に回転駆動する。テープ駆動軸100は、テープ駆動軸100に装着されたテープ駆動ローラ46を回転駆動する。
カセット装着部8の右側後部には、ガイド軸120が立設されている。ガイド軸120は、テープカセット30のガイド孔47に挿脱可能な軸体である。ガイド軸120は、直径が異なる2つの軸部(大径軸部120A及び小径軸部120B)と、テーパ部120Cとを含む。大径軸部120Aは、ガイド軸120の基部側を構成する軸部であり、ガイド軸120において直径が最も大きい。小径軸部120Bは、ガイド軸120の先端側を構成する軸部であり、大径軸部120Aよりも直径が小さい。テーパ部120Cは、大径軸部120Aと小径軸部120Bとの間に設けられた軸部である。テーパ部120Cは、大径軸部120A側から小径軸部120B側に向けて軸径が漸減するテーパ面を有する。
図3に示すように、ヘッドホルダ74の前側には、アーム状のプラテンホルダ12が設けられている。プラテンホルダ12は、軸支部121を中心に揺動可能に軸支されている。プラテンホルダ12の先端側には、プラテンローラ15及び可動搬送ローラ14が回転可能に軸支されている。プラテンローラ15は、サーマルヘッド10に相対して、サーマルヘッド10と接離可能である。可動搬送ローラ14は、テープ駆動軸100に装着されているテープ駆動ローラ46に相対して、テープ駆動ローラ46と接離可能である。
プラテンホルダ12には、カセットカバー6の開閉に連動して左右方向に移動する図示外のリリースレバーが連結されている。カセットカバー6が開放されると、リリースレバーが右方向に移動して、プラテンホルダ12が図3に示す待機位置に向けて移動する。図3に示す待機位置では、プラテンホルダ12がカセット装着部8から離間しているので、人がテープカセット30をカセット装着部8に対して着脱可能である。プラテンホルダ12は、図示外の巻きバネにより常に待機位置に弾性付勢されている。
カセットカバー6が閉鎖されると、リリースレバーが左方向に移動して、プラテンホルダ12が印字位置(図示せず)に向けて後方向に移動する。印字位置では、プラテンホルダ12がカセット装着部8に近接する。具体的には、チューブタイプのテープカセット30がカセット装着部8に装着されている場合、プラテンローラ15がチューブテープ57とインクリボン60とを介してサーマルヘッド10を押圧する。同時に、可動搬送ローラ14がチューブテープ57を介してテープ駆動ローラ46を押圧する。印字位置では、テープ印字装置1がカセット装着部8に装着されているテープカセット30を使用して印字を行うことが可能である。
図3に示すように、排出スリット111(図1参照)の右側には、印字済テープ50を所定位置で切断するカット機構17が設けられている。カット機構17は、固定刃18と移動刃19とを有する。移動刃19は、固定刃18に対向して前後方向(図3の上下方向)に移動可能である。
図4を参照して、印字済みのチューブテープ57(すなわち、印字済テープ50)の使用態様について説明する。図4(A)は、チューブテープ57にキャラクタ「Cable A」が2カ所印字され、カット機構17によって切断され、排出スリット111から排出された印字済テープ50である。チューブテープ57は、加熱することで熱収縮する素材で形成された面59(以下、「収縮面59」という。)と、加熱により収縮しない素材で形成された面58(以下、「非収縮面58」という。)とをつなぎ合わせた筒状、長尺状のテープである。チューブテープ57は、非収縮面58が印刷面に、収縮面59が裏面になるように扁平状に押しつぶされた状態で、第一テープスプール40に巻回されている。印刷済みのチューブテープ57は、テープカセット30から排出された後、図4(A)に示すように展開される。図4(B)に示すように、筒状に展開されたチューブテープ57に、装着対象物であるケーブル80が挿通された後、ドライヤー等によって加熱される。これによってチューブテープ57の収縮面59が収縮し、図4(C)に示すように、チューブテープ57はケーブル80の側面81に固定される。
次に、図2、図5〜図8を参照して、テープカセット30について説明する。説明の便宜上、図6では、内部に収納されるテープ類及びスプール類を取り除いたカセットケース31を図示している。
テープカセット30の概略構成について説明する。テープカセット30は、内部に収納されるテープの種類、及び、インクリボンの有無などを適宜変更することによって、前述のサーマルタイプ、レセプタタイプ、ラミネートタイプ等に実装可能な汎用カセットである。図2及び図5では、一例として、チューブタイプに実装されたテープカセット30を示している。
図2に示すように、テープカセット30は、その筐体であるカセットケース31を備えている。カセットケース31は、全体としては平面視で丸みを帯びた角部を有する略長方体状(箱型)である。カセットケース31は、上ケース311と下ケース312とを含む。下ケース312は、カセットケース31の底面302を形成する底板306を含む。上ケース311は、カセットケース31の上面301を形成する上板305を含み、下ケース312の上部に固定される。
本実施形態のカセットケース31は、上板305及び底板306の周縁全体が側面を形成する周壁によって囲われているが、必ずしも全体が囲われている必要はない。例えば、周壁の一部(例えば背面)にカセットケース31内を露出させるような開口部が設けられていたり、その開口部を臨む位置に上板305及び底板306を接続するボスが設けられたりしてもよい。
カセットケース31は、テープカセット30のテープ種類にかかわらず、同一の幅(上下方向の長さが同一)に形成された4つの角部321〜324を有する。以下の説明では、左後方の角部を第一角部321、右後方の角部を第二角部322、右前方の角部を第三角部323、左前方の角部を第四角部324という。第一〜第三角部321〜323は、平面視で直角をなすようにカセットケース31の側面から外側方向に突出している。第四角部324は、排出案内部49が角に設けられているため、直角をなしていない。角部321〜324の下面は、テープカセット30がカセット装着部8に装着されたときに、角支持部812に支持される部位である。
カセットケース31には、カセットケース31内に装着されるスプール類を回転可能に支持するための4つの支持孔65〜68が設けられている。以下の説明では、カセットケース31の左側後部、右側後部、右側前部に設けられた孔部を、それぞれ、第一テープ支持孔65、第二テープ支持孔66、リボン支持孔67という。平面視で第一テープ支持孔65とリボン支持孔67との間に設けられた孔部を、巻取スプール支持孔68という。
第一テープ支持孔65は、第一テープスプール40(図3及び図5参照)を回転可能に支持する。リボン支持孔67は、リボンスプール42(図3及び図5参照)を回転可能に支持する。巻取スプール支持孔68は、リボン巻取りスプール44(図3及び図5参照)を回転可能に支持する。リボン巻取りスプール44の下部には、クラッチバネ340(図3及び図5参照)が取り付けられている。クラッチバネ340は、リボン巻取りスプール44が逆転することで巻き取ったインクリボン60が緩んでしまうのを防止するコイルバネである。図示しないが、例えば、カセットケース31がラミネートカセットに実装される場合、第二テープ支持孔66は、印字媒体であるフィルムテープが巻回された第二テープスプールを回転可能に支持する。
図6に示すように、第二テープ支持孔66は、上板305が円形状に下方に突出した上テープ支持部66Aと、底板306が円形状に上方に突出した下テープ支持部66Bとを含む。上テープ支持部66A及び下テープ支持部66Bは、カセットケース31の上下方向に対応する位置に設けられている。
上テープ支持部66Aは、平面視における中央部に上板305を上下方向に貫通する軸孔582を備えている。下テープ支持部66Bの平面視における中央部には、上方に向かって延びる支持軸584が立設されている。支持軸584の上端が軸孔582に嵌め込まれることで、上テープ支持部66Aと下テープ支持部66Bとが連結される。下テープ支持部66Bの上端面には、その周縁に沿って上方に延びる円筒状の壁部504(図6及び図8参照)が設けられている。
図3、図5、図7、及び図8に示すように、カセットケース31内には、第一テープ領域400、第二テープ領域410、第一リボン領域420、及び第二リボン領域440が設けられている。第一テープ領域400及び第二テープ領域410は、それぞれテープを収納可能な領域である。第一テープ領域400は、第一角部321に隣接した、カセットケース31内の左半分をほぼ占める平面視略円形の領域である。第二テープ領域410は、第二角部322に隣接した、カセットケース31内の右後部に設けられた平面視略円形の領域である。
第一リボン領域420は、未使用のインクリボン60を収納可能な領域である。第一リボン領域420は、第三角部323及びヘッド挿入部39に隣接した、カセットケース31内の右前部に設けられている。第二リボン領域440は、印字に使用された後のインクリボン60(以下、使用済みのインクリボン60)を収納可能な領域である。第二リボン領域440は、カセットケース31内で第一テープ領域400と第一リボン領域420との間に設けられており、前後方向においてアーム部34と第一テープ領域400との間に位置する。第一テープ領域400、第二リボン領域440、及び第一テープ領域400は、一対の角部である第一角部321と第三角部323とを結ぶ第一対角線521(図3及び図5参照)上に位置する。支持孔65〜68(図2参照)は、平面視で、それぞれ第一テープ領域400、第二テープ領域410、第一リボン領域420、第二リボン領域440の略中央部に設けられている。
第二リボン領域440の右側、且つ、第二テープ領域410の前側には、平面視で前後方向に長い長方形状の一対の孔であるカセット矩形孔681,682が設けられている。一対のカセット矩形孔681,682は、所定の間隔で左右に並んで配置されている。カセット矩形孔681は、カセット矩形孔682の左方に位置している。一対のカセット矩形孔681,682の互いに向き合う壁面には、開口(図示せず)が設けられている。
図3及び図5に示すように、チューブタイプのテープカセット30の場合、第一テープ領域400には、チューブテープ57が巻回されたテープロール571が収納される。第二テープ領域410には、テープは収納されない。第一リボン領域420には、インクリボン60が巻回されたリボンスプール42が収納される。第二リボン領域440には、印字に使用された後のインクリボン60を巻き取るリボン巻取りスプール44が収納される。
チューブテープ57は、前後方向においてテープロール571の巻回中心572より後方でテープロールから引き出される。図3及び図5に示すテープカセット30では、チューブテープ57は、テープロール571の右後部から右前方に向けて引き出されている。チューブテープ57の搬送経路は、少なくとも壁部501,502、503、504、及び案内部505によって形成される。壁部501は、第一テープ領域400の外周に沿って設けられており、下ケース312の底板306から上方に延びる。より詳細には、壁部501は、第一テープ領域400の後側よりやや右側から、右斜め後方にかけて円弧状に設けられている。壁部501の右部の上下方向の高さは、右側に向かうほど漸減している(図8参照)。
案内部505は、カセット矩形孔681の右後の角部であり、壁部501よりも搬送経路の下流側に位置している。案内部505は、第一テープ領域400におけるテープロール571の収納量に関わらずチューブテープ57に接触する。壁部502は、壁部501と案内部505との間に設けられている。より詳細には、壁部502は、第二テープ領域410の左側よりやや後方から、後側を経由して、右前側にかけて円弧状に設けられており、壁部502の左部が壁部501と案内部505との間に位置している。壁部502の左部の上下方向の高さは、左側に向かうほど漸減している(図8参照)。壁部502の右前側の端部は、カセット矩形孔682の左後部に接続されている。
壁部503は、第一テープ領域400の外周に沿った位置、且つ、搬送経路に位置するチューブテープ57を挟んで壁部502の反対側に設けられている。壁部503は、円柱部513と隔壁516とを含む。円柱部513は、壁部504の右端部であり、第一テープ領域400の右側に位置している。円柱部513は、下ケース312の底板306から上方に延びる。
隔壁516は、円柱部513から第一テープ領域400の外周に沿って延びる、第一対角線521と交差する第二対角線(図示せず)上には、第二角部322と第四角部324が位置している。隔壁516は、第四角部324に設けられたテープ駆動ローラ46の孔部461と、第二角部322に設けられたガイド孔47とを結ぶ仮想線522に沿っている。より詳細には、仮想線522は、孔部461からガイド孔47に向かって右後方に延びている。隔壁516は、左端部から円弧状に仮想線522に沿って右後方に延び、カセットケース31の中央部において仮想線522と交差し、仮想線522に沿って右後方に延びている。隔壁516の後端部は、第二テープ領域410の外周に沿って設けられた壁部506の後端部と一体となっている。壁部506は、第二テープ領域410の左側から前側にかけて円弧状に設けられている。
壁部501、壁部502、壁部504における、搬送経路を搬送されるチューブテープ57に対向する一端を、夫々、端部511,512,514という。端部511,512,514は、上下方向に延びる(図8参照)。また、円柱部513は、壁部503における、搬送経路を搬送されるチューブテープ57に対向する一端である。端部511,512,514は、チューブテープ57の一面(図4の収縮面59)に対向する。円柱部513と案内部505とは、チューブテープ57の他面(図4の非収縮面58)に対向する。端部512は、端部511と端部514とを結ぶ仮想線523上に設けられている。言い換えると、端部511,512,514は、仮想線523に沿って並んでいる。
図3及び図5に示すように、カセットケース31の右前隅部、すなわち第一リボン領域420の右前側には、屈曲部533が立設されている。テープロール571から引き出されたチューブテープ57の搬送経路は、案内部505において屈曲され、カセット矩形孔681,682の間を通り、屈曲部533に向かって延びる。屈曲部533は、チューブテープ57の搬送経路を、第一リボン領域420の外周に沿って鋭角状に屈曲させるピンである。カセットケース31の左前隅部に向けて搬送されたテープは、屈曲部533を経由してカセットケース31の左前隅部に向けて搬送され、後述のアーム部34内に案内される。
図2、図3、図5、図7、及び図8に示すように、カセットケース31の前面には、平面視で略半円状の溝部である半円溝84が設けられている。半円溝84は、カセットケース31の上下方向に亘って設けられている。半円溝84は、テープカセット30がカセット装着部8に装着されたときに、プラテンホルダ12の軸支部121がカセットケース31と干渉しないように設けられた逃がし部である。
カセットケース31の前面壁のうち、半円溝84から左に延びる部分は、アーム前面壁35である。アーム前面壁35から後方へ離間した位置に上下方向に亘って設けられた壁部は、アーム背面壁37である。アーム前面壁35及びアーム背面壁37とで前後に規定される、テープカセット30の右前部から左方に延びる部位が、アーム部34である。アーム前面壁35の左端部は、後方へ向かって屈曲している。アーム前面壁35とアーム背面壁37の左端部との間で上下方向に延びる隙間が、排出口341である。
アーム背面壁37の右端部から後方に延び、且つ、アーム背面壁37と平行に延びる周壁は、ヘッド周壁36である。アーム背面壁37とヘッド周壁36とによって規定される、テープカセット30を上下方向に貫通する平面視略長方形状の空間は、ヘッド挿入部39である。ヘッド挿入部39は、テープカセット30の前面側に設けられた露出部77を介して、テープカセット30の前面側でも外部とつながっている。ヘッド挿入部39には、サーマルヘッド10を支持するヘッドホルダ74が挿入される。
ヘッド挿入部39の左側には、分離部61が設けられている。分離部61は、露出部77のテープ搬送方向下流側で、印字に使用されたチューブテープ57とインクリボン60とを分離する部位である。分離部61は、規制部材361、362、及びリボン案内壁38等を含む。
図2、図7、及び図8に示すように、分離部61の左側(つまり、テープ搬送方向の下流側)には、ローラ支持孔64が設けられている。ローラ支持孔64の内側には、テープ駆動ローラ46が回転可能に軸支される(図2参照)。テープ駆動ローラ46の外周面の一部である前側の面は、カセットケース31の外部に露出し、チューブテープ57に接触している。
図2、図3、図5、図7、及び図8に示すように、ローラ支持孔64の搬送方向下流側には、排出案内部49が設けられている。排出案内部49は、カセットケース31の左側面の前端部から僅かに前方に離間して設けられた、上面301と底面302に亘る板状部材である。排出案内部49は、テープ駆動ローラ46を経由して搬送されてきた印字済テープ50を、カセットケース31の左側面の前端部との間に形成される通路内に案内する。印字済テープ50は、この通路の終端からテープカセット30の外部に排出される。
テープの搬送及び印字について説明する。図3に示すように、チューブタイプのテープカセット30がカセット装着部8に装着されている場合、テープ駆動ローラ46と可動搬送ローラ14との協働によって、テープロール571からチューブテープ57が引き出される。チューブテープ57の引き出しに伴って、テープロール571が平面視で時計回りに回転する。テープロール571から引き出されたチューブテープ57は、端部512と円柱部513との間を通って第二テープ領域410に入り、案内部505に向かう。チューブテープ57は案内部505、屈曲部533を介してアーム部34に搬送される。一方、リボン巻取りスプール44は、リボン巻取軸95の駆動に伴って平面視で反時計回りに回転し、インクリボン60をリボンスプール42から引き出す。インクリボン60の引き出しに伴って、リボンスプール42は平面視で反時計回りに回転する。リボンスプール42から引き出されたインクリボン60は、アーム部34に向けて搬送される。
アーム部34内では、チューブテープ57が、アーム前面壁35と略平行に延びる搬送経路に沿って案内され、排出口341から露出部77に排出される。インクリボン60は、アーム部34内でテープとは異なる搬送経路に沿って案内され、チューブテープ57と重ね合わされて排出口341から露出部77に排出される。
露出部77では、排出口341から排出されたチューブテープ57の一面(図4の収縮面59)が前方に露出し、且つ他面(図4の非収縮面58)がサーマルヘッド10に対向する。サーマルヘッド10は、露出部77に位置するチューブテープ57にインクリボン60を用いた印字を行う。
印字が行われた後のインクリボン60は、分離部61によってチューブテープ57と分離され、リボン巻取りスプール44に巻き取られる。印字後のチューブテープ57、すなわち印字済テープ50は、規制部材361、362によってテープ搬送方向の下流側に案内され、テープ駆動ローラ46と可動搬送ローラ14との間を経由して排出案内部49に向かって搬送される。印字済テープ50は、排出案内部49から外部に排出される。これによって、図4(A)に示す印字済テープ50が得られる。
以上のように、本実施形態におけるテープカセット30が構成される。本実施形態では、チューブテープ57の一面に対向する壁部501,502、504の夫々の端部511,512,514が、端部511と端部514とを結ぶ仮想線523に沿って並んでいる。このため、搬送されるチューブテープ57が端部511,512,514に接触した場合でも、チューブテープ57が屈曲し難い。よって、端部511,512,514とチューブテープ57との間の摩擦力が大きくなることが防止され、チューブテープ57をスムーズに搬送することができる。よって、印字品質が向上する。特に、本実施形態のように、印字媒体であるテープが熱収縮可能なチューブテープ57である場合、例えば、感熱紙テープ等に比べて、テープの腰が強くなる。テープの腰が強くなると、テープが後方に膨らみやすくなり、端部511,512,514に接触し易くなる。この場合でも、端部511,512,514が仮想線523に沿って並んでおり、チューブテープ57が屈曲し難いので、チューブテープ57はスムーズに搬送される。すなわち、チューブテープ57が印字媒体である場合に、スムーズに搬送されるという効果がより大きくなる。
また、壁部504が円筒状であるので、チューブテープ57が壁部504に接触する場合、曲面に接触する。このため、例えば、角柱状の棒にチューブテープ57が接触する場合に比べて、摩擦力が小さくなる。よって、チューブテープ57がよりスムーズに搬送される。よって、印字品質がさらに向上する。
また、円柱部513が設けられているので、円柱部513にチューブテープ57が接触しても、チューブテープ57がスムーズに搬送される。また、前後方向において、チューブテープ57はテープロール571の巻回中心572より後方でテープロール571から引き出され、円柱部513はテープロール571の巻回中心572より後方に位置する。この場合、テープロール571の巻回中心572より前側に円柱部513が位置する場合に比べて、円柱部513と壁部502(端部512)との間の距離が短くなる。このため、テープロール571の収納量が変化し、テープロール571の径が変化した場合でも、チューブテープ57の搬送経路の変動が、距離が短い円柱部513と壁部502(端部512)の間の距離に限定される。よって、チューブテープ57の搬送経路の変動を少なくすることができる。よって、テープロール571の収納量が変化した場合でも、チューブテープ57がスムーズに搬送される。
また、テープロール571の巻回中心572より前側に円柱部513が位置する場合に比べて、テープロール571から引き出されたチューブテープ57と円柱部513との間の距離が短くなる。このため、チューブテープ57が消費され、テープロール571の径が小さくなった場合でも、チューブテープ57の搬送経路の変動を少なくすることができる。故に、チューブテープ57がスムーズに搬送される。
また、テープロール571とリボン巻取りスプール44との間が隔壁516によって隔てられる。このため、テープロール571の巻回が緩んでテープロール571の径が大きくなっても、リボン巻取りスプール44とテープロール571とが接触することが防止される。よって、テープロール571がリボン巻取りスプール44と接触して、回転し難くなることを防止できる。故に、チューブテープ57が確実に引き出され、印字品質が向上する。
特に、本実施形態のように、チューブテープ57が使用される場合、感熱紙テープ等に比べて、テープの腰が強くなる。例えば、テープの腰が弱い場合、テープロールにおけるテープの巻回が緩んだ場合にテープが搬送のために引っ張られることによって、再びテープが巻回され、緩みがある程度解消される場合がある。しかし、テープの腰が強くなると、一旦テープロール571におけるテープの巻回が緩むと、テープが搬送のために引っ張られても、緩みが解消され難い。このため、隔壁516が設けられていない場合、テープロール571とリボン巻取りスプール44とが接触する可能性が高くなる。しかし、本実施形態では、隔壁516が設けられているので、リボン巻取りスプール44とテープロール571とが接触することが防止される。よって、テープロール571が回転し難くなることを防止できる。すなわち、チューブテープ57が印字媒体である場合に、テープロール571が回転し難くなることを防止できるという効果がさらに大きくなる。また、チューブテープ57がテープロール571から確実に引き出されるので、印字品質を確保できる。
また、第一テープ領域400とリボン巻取りスプール44とは、第一対角線521上に並んでいる。このため、前後方向又は左右方向に並んでいる場合に比べて、第一テープ領域400とリボン巻取りスプール44との収納スペースを確保し易い。よって、カセットケース31全体のサイズを大きくすることなく、テープロール571とリボン巻取りスプール44との間に隔壁516を配置することができる。また、第一テープ領域400とリボン巻取りスプール44との収納スペースを確保し易いので、テープロール571とリボン巻取りスプール44との径を小さくすることなく、隔壁516を設けることができる。よって、チューブテープ57とインクリボン60との容量を確保できる。
例えば、隔壁516と円柱部513との間に隙間がある場合、隙間を形成する隔壁516の端部に、膨らんだチューブテープ57が接触する。このため、テープロール571が回転し難くなる可能性がある。本実施形態では、隔壁516は円柱部513から延びるので、隙間が形成されない。よって、テープロール571がスムーズに回転する。故に、印字品質が向上する。
また、テープカセット30には、第四角部324のテープ駆動ローラ46に孔部461が設けられ、第二角部322にガイド孔47が設けられている。テープカセット30がカセット装着部8に装着される場合、孔部461にテープ駆動軸100が挿入され、ガイド孔47にガイド軸120が挿入される(図3参照)。このため、テープカセット30は、テープ駆動軸100とガイド軸120とによって孔部461とガイド孔47とが案内されながら、カセット装着部8に装着される。隔壁516は、孔部461とガイド孔47とを結んだ仮想線522に沿っているので、隔壁516が設けられていない場合に比べて、テープカセット30の重心が仮想線522に近くなる。このため、テープカセット30がテープ駆動軸100とガイド軸120とによって孔部461とガイド孔47とが案内されながらカセット装着部8に装着される場合の姿勢が安定する。よって、テープカセット30がカセット装着部8に装着される場合に、テープカセット30が傾く可能性を低減できる。
上記実施形態において、第一テープ領域400は本発明の「テープ収納領域」の一例である。壁部501は本発明の「第一壁部」の一例である。壁部502は本発明の「第二壁部」の一例である。壁部503は本発明の「第三壁部」の一例である。壁部504は本発明の「第四壁部」の一例である。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、端部512は、正確に端部511と端部514とを結ぶ仮想線523上に位置していなくてもよい。端部512は、仮想線523に沿った位置に設けられていればよい。例えば、端部512は、円筒状の壁部504の後端507から左方向に引いた仮想線524(図3参照)と、仮想線523との間に位置していてもよい。なお、端部512が仮想線524と仮想線523との間に位置している場合において、製造時に誤って円筒状の壁部504の後端507を通るようにチューブテープ57が配置されたとする。この場合、図示しないが、テープロール571から引き出されたチューブテープ57は、端部512で壁部504の後端507に向かって折れ曲がる。このため、端部512とチューブテープ57との間の摩擦力が大きくなり、チューブテープ57を引き出すための力が増大する。よって、チューブテープ57の引き出し力を検査することで、製造時に誤ってチューブテープ57が配置されたことを検出できる。
また、壁部504は、円筒状であったが、他の形状であってもよい。例えば、端部514と同じ位置に、円柱、又は、角柱が設けられていてもよい。この場合、円柱、及び角柱は本発明の「第四壁部」の一例である。また、ガイド孔47が設けられていたが、設けられなくてもよい。この場合、ガイド軸120が設けなくてもよい。また、隔壁516に上下方向のスリットが1又は複数設けられていてもよい。また、隔壁516が設けられていなくてもよい。
また、端部512に対向して搬送経路を形成する部位が、円柱部513であったが、これに限定されない。例えば、円柱ではなく、隔壁516に連接する壁部であってもよい。また、図9に示す変形例に係るテープカセット32のように、上下方向を軸線として回転可能なコロ519であってもよい。コロ519は、中心部に上下方向の孔を有しており、孔の内側に円柱520が位置し、円柱520の周囲を回転する。コロ519が設けられる場合、隔壁516がコロ519に近接していてもよい。コロ519が設けられている場合、コロ519が設けられていない場合に比べてチューブテープ57との摩擦力を小さくすることができる。よって、チューブテープ57がよりスムーズに搬送される。故に、印字品質がさらに向上する。
第一テープ領域400に収納されるテープが、チューブテープ57であったが、これに限定されない。例えば、第一テープ領域400には、印字テープ及び感熱紙テープ等が配置されてもよい。この場合でも、チューブテープ57の場合と同様の効果を奏することができる。なお、感熱紙テープが配置される場合、インクリボン60はカセットケース31内に設けられていなくてもよい。