JP2014205318A - 金型の製造方法及び金型 - Google Patents
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Abstract
【課題】表面転写性に優れたものであって、温度調節性に優れ、成形サイクルの短縮化が可能な金型を製造する。【解決手段】マスターモデル11の表面に対し、電鋳加工により内面側電着金属層2を形成する。電鋳加工を一旦停止して、内面側電着金属層2の表面部に対し、機械加工により、冷却又は加熱用の流体通路となるべき溝5を形成する。溝5内を、加熱により除去可能なワックス等の消失性材料6で埋める。内面側電着金属層2の表面に対し、引続き電鋳加工を施すことにより、溝5内に消失性材料6が埋まった形態のまま、該溝5の開口部に蓋をするように外面側電着金属層3を形成する。マスターモデル11から離型した後、溝5内に埋まっている消失性材料6を除去させる。【選択図】図3
Description
本発明は、例えばヒート&クール成形等の樹脂成形品の成形に用いられる金型の製造方法及び金型に関する。
樹脂成形品の成形に用いられる金型には、キャビティを構成する金属殻の外面側に、冷却用(又は加熱用)の流体を通すための銅等の金属製のパイプを、例えばろう付けにより添設したものが知られている(例えば特許文献1参照)。この場合、一般に、パイプは、断面が横長矩形状の平らな角筒状をなし、内側寸法が例えば縦10mm、横20mm程度とされている。尚、表面転写性に優れた樹脂成形用の金型として、電鋳加工により製造された金型が広く提供されている。
しかしながら、上記従来の金型のような、金属殻の外面に金属製のパイプを添設したものでは、パイプ内を通る流体と金型のキャビティ面との間の熱交換の効率が低く、成形サイクルが長くなってしまう問題点があった。また、キャビティの温度の分布にもむらが生じやすいものとなっていた。更には、金型の使用を繰返すことにより、パイプが金型から外れてしまうといった問題もあった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、表面転写性に優れた樹脂成形用の金型であって、温度調節性に優れ、成形サイクルの短縮化を図ることができる金型の製造方法及び金型を提供するにある。
本発明の金型の製造方法は、成形品と同等な外形を有するマスターモデルの表面に対し、電鋳加工により内面側電着金属層を形成する第1の電鋳加工工程と、前記内面側電着金属層の表面部に対し、冷却又は加熱用の流体通路となるべき溝を形成する溝形成工程と、前記溝を、溶解、気化、燃焼等の化学的又は物理的な手段により除去可能な消失性材料で埋める埋込み工程と、前記内面側電着金属層の表面に対し、引続き電鋳加工を施すことにより、前記溝内が消失性材料で埋まった形態のまま、該溝の開口部に蓋をするように外面側電着金属層を形成する第2の電鋳加工工程と、前記溝内に埋まっている前記消失性材料を化学的又は物理的な手段で除去させる除去工程とを含むところに特徴を有する(請求項1の発明)。
本発明の金型は、外面がキャビティ面を形成する内面側電着金属層と、この内面側電着金属層の前記キャビティ面とは反対側の接合面に一体に接合された外面側電着金属層と、前記内面側電着金属層と外面側電着金属層との間に形成された冷却又は加熱用の流体通路とを備え、前記流体通路は、前記内面側電着金属層の接合面側に溝を形成し、その溝内を、溶解、気化、燃焼等の化学的又は物理的な手段により除去可能な消失性材料で埋込んだ状態で、前記外面側電着金属層を重ねるように形成し、その後に前記消失性材料を除去させることにより形成されているところに特徴を有する(請求項2の発明)。
本発明によれば、マスターモデルの表面に対し、いわば2段階で電鋳加工が行われることにより、電着金属層は、厚み方向に、内面側電着金属層と外面側電着金属層との2層状態に形成される。このとき、電鋳加工により形成される電着金属層は、マスターモデルの表面に対し、ほぼ均等な厚みで電着されるのであるが、内面側電着金属層の接合面側に一旦溝が形成され、その溝内に消失性材料が埋込まれた状態で外面側電着金属層が形成される。これにより、電着金属層の内部には消失性材料が詰まった形態の空洞が形成され、消失性材料が除去されることにより、その空洞が流体通路となる。
このとき、内面側電着金属層の接合面に形成した溝がそのまま流体の通路になるので、断面の小さい流体通路を、任意の形状をなすように形成することが可能となる。しかも、流体通路は、金型を構成する電着金属層の内部に埋込まれた形態で形成されるので、冷却又は加熱用の流体との熱交換効率が高く、温度調節性能に優れ、急加熱や急冷却に容易に対応することができる。また、金型全体を均一に冷却、加熱することが可能となり、温度分布を良好とすることができる。更には、金型の裏面側を凹凸のないフラットな形態に構成することができるので、その後の金型の裏面側に対する加工等を精度良く行うことができ、また補強を効率的に設置できるといったメリットも得ることができる。
本発明の金型の製造方法及び金型によれば、電着金属層を、内面側電着金属層及び外面側電着金属層の2段階で形成し、そのうち内面側電着金属層に形成した溝に化学的又は物理的な手段で除去可能な消失性材料を埋込むことにより、流体通路を形成するように構成したので、表面転写性に優れた樹脂成形用の金型であって、温度調節性に優れ成形サイクルの短縮化を図ることができるという優れた効果を奏する。
以下、本発明を具体化した一実施例について、図面を参照しながら説明する。尚、本実施例では、例えば、三次元形状の樹脂成型品を、ヒート&クール成形(射出成形等)やRIM成形により成形するための金型に、本発明を適用している。
まず、図1及び図2を参照して、本実施例に係る金型1の構成について述べる。本実施例に係る金型1は、内面(キャビティ面)が球面状に湾曲した円形容器状(ボウル状)をなしている。このとき、金型1の内面は、鏡面状の滑らかな曲面状をなし、外面についても、全体として滑らかな表面形状を備えている。
詳しくは後述するように、この金型1は、例えばニッケル又はニッケル合金等の金属から、電鋳加工法を用いた製造方法より製造され、全体がほぼ均等な厚みの電着金属層から構成されている。具体的には、金型1は、内面(キャビティ面)側に位置する内面側電着金属層2と、外面側に位置する外面側電着金属層3との2層構造を備えている。ここでは、前記内面側電着金属層2の方が、外面側電着金属層3よりも厚み寸法がやや大きく構成されている。
そして、金型1の内部、即ち、前記内面側電着金属層2と外面側電着金属層3との接合部分には、冷却又は加熱用の流体を通すための多数本の流体通路4が形成されている。これら多数本の流体通路4は、断面半円形状をなし、金型1の底部中心部から周囲上端面まで、外周方向に向けて湾曲しながら(いわば地球儀の南半球の南極近傍から赤道へ向けて経線が延びる方向に沿うように)延びて形成されている。各流体通路4の両端部は、金型1の周囲上端面、及び、底面部で夫々開口している。尚、断面が半円状の流体通路4の内側寸法は、例えば直径(幅方向寸法)が10mmとされている。
次に、上記した金型1の製造方法について、図3、図4も参照して述べる。図3は、本実施例における金型1の全体の製造工程の概略を順に示しており、図4は、そのうち流体通路4の形成の手順を要部を拡大して示している。金型1を製造するにあたっては、予め、例えばエポキシ樹脂等の材料からなるマスターモデル11が製作される。このマスターモデル11は、その表面部に、成形品の表面と同等の形状を備えている。このマスターモデル11の表面に対しては、予め導電処理が行われる。
金型1の製造には、まず、第1の電鋳加工工程が実行される。この第1の電鋳加工工程は、図3(a)に示すように、例えばスルファミン酸ニッケル浴からなる電鋳加工槽12内に、前記マスターモデル11及びニッケル電極13が配置され、それらの間に直流電流が流される。これにて、マスターモデル11の表面にニッケル(又はニッケル合金)が析出し電着が行われる。この電着金属層が内面側電着金属層2となる。図3(b)に示すように、所定厚みの内面側電着金属層2が得られた時点で、電鋳加工が一旦停止され、マスターモデル11は、電鋳加工槽12から取出される。
次いで、図3(c)及び図4(a)に示すように、内面側電着金属層2の表面部(外面側電着金属層3との接合面側)に対し、例えばコンピュータ制御のNC加工機械により、流体通路4となるべき溝5を形成する溝形成工程が実行される。この溝5は、断面が円弧状(半円状)をなすように形成される。このとき、コンピュータにより作成された加工データ(CADデータ等)を用いて、設計通りの位置、形状の溝5を、高い精度で形成することが可能となる。
溝形成工程が終了すると、引続き、図3(d)及び図4(b)に示すように、溝5内を消失性材料6で埋める埋込み工程が実行される。この消失性材料6は、溶解、気化、燃焼等の化学的又は物理的な手段により除去可能な材料からなり、この場合、例えば加熱により除去可能なワックスやパラフィンが用いられる。消失性材料6としては、それ以外にも、低融点合金半田、合成樹脂、天然樹脂等を採用することができる。この後、必要に応じて、溝5内の消失性材料6の表面に対し導電処理が行われる。
そして、内面側電着金属層2を有するマスターモデル11が、再度、電鋳加工層12内に収容され、第2の電鋳加工工程が実行される。この第2の電鋳加工工程では、図3(e)に示すように、内面側電着金属層2の表面に対し、引続き電鋳加工を施すことにより、前記溝5内が消失性材料6で埋まった形態のまま、該溝5の開口部に蓋をするようにニッケル(又はニッケル合金)が析出し電着が行われ、外面側電着金属層3が形成される。
所定厚みの外面側電着金属層3が形成されると、第2の電鋳加工工程が終了し、図3(f)に示すように、マスターモデル11が電鋳加工槽12から取出される。この状態では、図4(c)にも示すように、マスターモデル11表面の電着金属層は、内面側電着金属層2の溝5内に消失性材料6が埋込まれた形態のまま、それら溝5の開口部が外面側電着金属層3により蓋をされた如き状態で形成される。
この後、図3(g)に示すように、内面側電着金属層2及び外面側電着金属層3の2層構造からなる電着金属層がマスターモデル11から離型される。この電着金属層の内面(キャビティ面)には、マスターモデル11の表面即ち成形品の凹凸形状が反転された状態で転写されており、この場合の転写精度は極めて高いものとなる。そして、図3(f)に示すように、前記溝5内に埋まっている消失性材料6を化学的又は物理的な手段、この場合加熱により溶解させて除去させる除去工程が実行される。これにより、図4(d)にも示すように、溝5内の消失性材料6が除去(消失)され、流体通路4が形成される。この後、電着金属層の外面(裏面)側に対し、補強などの仕上げ処理が行われ、金型1が得られる。
尚、詳しい説明は省略するが、上記した金型1は、例えばヒート&クール成形に用いられる。このヒート&クール成形では、流体通路4を加熱用流体が流通され、金型1のキャビティ面が急加熱された状態で、合成樹脂材料が射出されて、樹脂成形が行われ、その後、流体通路4を冷却用の流体が流されて、金型1が急冷却されて、成形品の離型が行われる。これにより、ウェルドレスな外観の良い成形品を成形することができる。
このような本実施例の金型1の製造方法及び金型1によれば、次のような作用、効果を得ることができる。即ち、本実施例においては、マスターモデル11の表面に対し、いわば2段階で電鋳加工が行われることにより、厚み方向に、内面側電着金属層2と外面側電着金属層3との2層状態に電着金属層が形成される。このとき、内面側電着金属層2の接合面側に溝5が形成され、その溝5内に消失性材料6が埋込まれた状態で外面側電着金属層3が形成される。これにより、電着金属層の内部には消失性材料6が詰まった形態の空洞が形成され、消失性材料6が除去されることにより、その空洞が流体通路4となる。
このとき、内面側電着金属層2の接合面に形成した溝5がそのまま流体通路4になるので、断面の小さい流体通路4を、任意の形状をなすように形成することが可能となる。この場合、多数本の流体通路4を密に形成することができた。しかも、流体通路4は、金型1を構成する電着金属層の内部に埋込まれた形態で形成されるので、冷却又は加熱用の流体との熱交換効率が高いものとなる。また、金型1全体を均一に冷却、加熱することができ、温度分布も良好とすることができる。この結果、温度調節性能に優れ、急加熱や急冷却に容易に対応することができ、成形サイクルを短くすることができる。
更には、金型1の裏面側を凹凸のないフラットな形態に構成することができるので、金型1の裏面側に対する加工等を精度良く行うことができ、また補強を効率的に設置できるといったメリットも得ることができる。
以上のように、本実施例によれば、電着金属層を、内面側電着金属層2及び外面側電着金属層3の2段階で形成し、そのうち内面側電着金属層2に形成した溝5に、化学的又は物理的な手段で除去可能な消失性材料6を埋込むことに基づいて、流体通路4を形成するように構成したので、金属殻の外面に金属製のパイプをろう付けした従来のものと異なり、表面転写性に優れた樹脂成形用の金型1であって、温度調節性に優れ成形サイクルの短縮化を図ることができるという優れた効果を得ることができる。
尚、上記実施例では、内面側電着金属層2及び外面側電着金属層3を、共にニッケルから構成したが、ニッケル合金(コバルト、タングステン、鉄等とニッケルとの合金)、又は、他の金属材料例えば銅や銅合金等から構成しても良い。第1の電鋳加工工程と第2の電鋳加工工程とを、異なる浴組成(めっき液)で実行することにより、内面側電着金属層2と外面側電着金属層3とを別々の材料から構成することもできる。例えば、内面側を鉄や鉄合金、外面側をニッケルから構成するといったことも可能となる。
また、上記実施例では、ヒート&クール成形用の金型1を具体例としたが、金型の用途としては、FRP材料(FRTP材料)のRTM成形やプレス成形、アクリル樹脂等によるRIM成形などに用いるものであっても良い。その他、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、例えば金型1の形状や、流体通路(溝)の断面形状(例えば横長な四角形)、流体通路(溝)を設ける位置や延びる方向(例えば蛇行状等)についても様々な変形が可能である等、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
図面中、1は金型、2は内面側電着金属層、3は外面側電着金属層、4は流体通路、5は溝、6は消失性材料、11はマスターモデルを示す。
Claims (2)
- 冷却又は加熱用の流体通路を有する樹脂成形用の金型を、電鋳加工法を用いて製造するための製造方法であって、
成形品と同等な外形を有するマスターモデルの表面に対し、電鋳加工により内面側電着金属層を形成する第1の電鋳加工工程と、
前記内面側電着金属層の表面部に対し、前記流体通路となるべき溝を形成する溝形成工程と、
前記溝を、溶解、気化、燃焼等の化学的又は物理的な手段により除去可能な消失性材料で埋める埋込み工程と、
前記内面側電着金属層の表面に対し、引続き電鋳加工を施すことにより、前記溝内が消失性材料で埋まった形態のまま、該溝の開口部に蓋をするように外面側電着金属層を形成する第2の電鋳加工工程と、
前記溝内に埋まっている前記消失性材料を化学的又は物理的な手段で除去させる除去工程とを含むことを特徴とする金型の製造方法。 - 冷却又は加熱用の流体通路を有し、電鋳加工法を用いて製造される樹脂成形用の金型であって、
内面がキャビティ面を形成する内面側電着金属層と、
この内面側電着金属層の前記キャビティ面とは反対側の接合面に一体に接合された外面側電着金属層と、
前記内面側電着金属層と外面側電着金属層との間に形成された前記流体通路とを備え、
前記流体通路は、前記内面側電着金属層の接合面側に溝を形成し、その溝内を、溶解、気化、燃焼等の化学的又は物理的な手段により除去可能な消失性材料で埋込んだ状態で、前記外面側電着金属層を重ねるように形成し、その後に前記消失性材料を除去させることにより形成されていることを特徴とする金型。
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