JP2013252566A - タービン翼用鋳型およびタービン翼の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】前縁、後縁、凹状に湾曲した正圧面および凸状に湾曲した負圧面を有するタービン翼を鋳造するタービン翼用鋳型であって、内部にタービン翼の形状を有する翼形空間2と、外部から供給された溶融された金属である湯を翼形空間2に流入させる湯道5と、を内部に有する鋳型本体208が設けられ、鋳型本体208の横断面視において、2つの翼形空間2が、湯道5を中心として回転対称となり、且つ、それぞれの翼形空間2の後縁に相当する部分22同士が重なり合うように配置され、湯道5は、翼形空間2における後縁に相当する部分22の近傍に配置されるとともに、重なり合う前記後縁に相当する部分22の間に挟まれていることを特徴とする。
【選択図】図10
Description
鋳型は、ワックス模型を耐火性の液状粘結剤と耐火粉末を混ぜたスラリーと呼ばれる泥状物の中に浸漬し、その後に耐火砂を振りかけて、しばらく乾燥させる工程を複数回繰り返すことのより形成される。そのため、鋳型の厚さは、上述の工程の回数により調節されている。
このようなワックスおよび鋳型の物性値の変化や、鋳型の厚みのばらつきは、以下の問題の原因になっていた。
本発明のタービン翼用鋳型は、前縁、後縁、凹状に湾曲した正圧面および凸状に湾曲した負圧面を有するタービン翼を鋳造するタービン翼用鋳型であって、内部に前記タービン翼の形状を有する翼形空間と、外部から供給された溶融された金属である湯を前記翼形空間に流入させる湯道と、を内部に有する鋳型本体が設けられ、該鋳型本体の横断面視において、2つの前記翼形空間が、前記湯道を中心として回転対称となり、且つ、それぞれの前記翼形空間の後縁に相当する部分同士が重なり合うように配置され、前記湯道は、前記翼形空間における前記後縁に相当する部分の近傍に配置されるとともに、重なり合う前記後縁に相当する部分の間に挟まれていることを特徴とする。
具体的には、タービン翼の後縁部分は他の部分と比較して熱容量が小さいため、タービン翼を鋳込んだ後の後縁部分の温度低下は、他の部分と比較して速くなっていた。そこで、当該後縁部分に、湯道に充填された湯から放射された熱を加えることにより、当該後縁における温度低下が緩やかになり、タービン翼の全体における温度低下のばらつきが抑制されることとなる。
以下、本発明の第1参考実施形態に係るタービン翼用鋳型およびタービン翼の製造方法(鋳造法方)について図1から図4を参照して説明する。
図1は、本参考実施形態に係る鋳型の構成を説明する模式図である。図2は、図1の鋳型の構成を説明する図1のA−A断面視図である。
鋳型1には、図1および図2に示すように、翼形空間2と、断熱空間3と、湯口4と、湯道5と、上側セキ6と、下側セキ7と、を内部に有する鋳型本体8が、主に設けられている。
翼形空間2には、空間前縁21と、空間後縁(後縁に相当する部分)22と、空間正圧面(正圧面に相当する領域)23と、空間負圧面(負圧面に相当する領域)24と、空間取付部25と、が主に設けられている。
空間正圧面23および空間負圧面24は、翼形空間2における内面形状のうち、それぞれタービン翼の凹状に湾曲した腹側の曲面である正圧面、および、凸状に湾曲した背側の曲面である負圧面に相当する部分であって、鋳込まれたタービン翼の正圧面部分、および、負圧面部分を形成するものである。
空間取付部25には上側セキ6が連通され、翼形空間2における下側の端部には下側セキ7が連通されている。
さらに断熱空間3は、翼形空間2の空間正圧面23から空間後縁22を介して空間負圧面24まで延びる空間であり、かつ、図1に示すように、翼形空間2のスパン方向(図1の上下方向)に延びる空間である。
湯口4は、鋳型本体8に設けられた空間のうち、最も上方に配置された空間である。そのため、湯口4に注がれた湯は、重力により翼形空間2などの他の空間に充填される。
上側セキ6の一方の端部は湯道5および湯口4に連通され、他方の端部は翼形空間2の空間取付部25に連通されている。
下側セキ7の一方の端部は湯道5に連通され、他方の端部は翼形空間2の先端に連通されている。
鋳型本体8は、後述する浸漬工程および乾燥工程により形成された層を積み重ねた、いわゆるシェル構造を有するものである。
まず、上述の鋳型1を形成する鋳型形成工程が行われ、その後に、形成された鋳型1を用いたタービン翼の鋳造を行う鋳造工程が行われる。
鋳型形成工程では、図3および図4に示すように、翼形空間2、湯口4、湯道5、上側セキ6、および、下側セキ7の形状を有する翼形模型M2と、断熱空間3の形状を有する断熱模型M3と、が造形される。
翼形模型M2および断熱模型M3は、加熱することにより溶ける又は消失するワックス(ろう)を用いて造形されている。なお、造形に用いられるワックスとしては、ロストワックス法に用いられる公知のものを用いることができ、特に限定するものではない。
その後、断熱模型M3が接着された状態で、浸漬工程および乾燥工程が繰り返し行われ、鋳型本体8は所定の厚さに形成される。上述のように、鋳型本体8は浸漬工程および乾燥工程により形成された層が積層した構造を有しているため、シェル鋳型とも呼ばれる。
これにより、鋳型本体8の内部に、翼形空間2や断熱空間3などが形成される。
その後、必要に応じて鋳型本体8の焼成などを行い図1および図2に示すような鋳型1が完成する。
具体的には、タービン翼を構成する金属、例えばニッケル基合金が溶解炉により溶かされ、溶融金属である湯が準備される。
上側セキ6に流入した湯は、翼形空間2に流入する。その一方で、湯道5に流入した湯は、下側セキ7を介して翼形空間2に流入する。このようにして、翼形空間2の内部に湯が充填される。
このとき、翼形空間2における空間後縁22の近傍を覆うように断熱空間3が配置されているため、他の部分と比較して、空間後縁22の近傍から外部に熱が放出されにくくなっている。そのため、他の部分と比較して熱容量が小さいタービン翼の後縁付近の温度低下が遅く緩やかになり、タービン翼の全体における温度低下のばらつきが抑えられる。
そのため、翼形空間2に溶融金属である湯を充填した(鋳込んだ)際に、タービン翼の全体における温度低下のばらつきが抑制される。つまり、タービン翼における他の部分と比較して熱容量が小さい後縁近傍の温度低下が、空間後縁22が設けられていない場合と比較して緩やかになることから、タービン翼の全体における温度低下のばらつきが抑制される。その結果、ガスタービンのタービン翼のような断面形状を有する精密鋳造品の変形を抑制することができる。
このように予熱温度を高めることにより、注湯時における急激な湯の温度低下を防ぐことができる。そのため、鋳造されたタービン翼の断面内に生じる温度差による熱応力を緩和し、残留変形を抑制することができる。
さらに、予熱温度を高めることにより、鋳型1および注湯時された湯が常温(例えば室温)に冷える際の鋳型1と、鋳込まれたタービン翼との熱伸び差による熱応力も緩和できる。
次に、本発明の第2参考実施形態について図5から図9を参照して説明する。
本参考実施形態の鋳型の基本構成は、第1参考実施形態と同様であるが、第1参考実施形態とは、鋳型本体における空間後縁近傍の構成が異なっている。よって、本参考実施形態においては、図5から図9を用いて鋳型本体における空間後縁近傍の構成のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図5は、本参考実施形態の鋳型の構成を説明する模式図である。図6は、図5の鋳型の構成を説明する図5のB−B断面視図である。
なお、第1参考実施形態と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
鋳型本体108は、後述する浸漬工程および乾燥工程により形成された層を積み重ねた、いわゆるシェル構造を有するものである。
鋳型本体108の空間後縁22近傍における外表面には、図5に示すように、スリット部(溝部)103が設けられている。
本参考実施形態では、スリット部103の溝の深さが鋳型本体108の厚さの約半分である場合に適用して説明する。
なお、上述の鋳型101を形成する鋳型形成工程は、第1参考実施形態における鋳型形成工程と比較して、断熱模型M3を鋳型本体108に埋め込む必要がない。さらに、鋳型本体108を所定の厚さに形成した後、スリット部103を形成する工程が追加されている。スリット部103を形成する方法としては、切削加工などの公知の加工方法を用いることができ、特に限定するものではない。
なお、鋳造を行う際には、鋳型101は予熱炉を用いて予熱され、鋳込み炉で鋳込まれる。
なお、上述の参考実施形態のように、予熱炉で鋳型101を予熱してから鋳込みを行ってもよいし、図7に示すように、鋳型101における熱容量の少ない部分、つまり、空間後縁22の近傍をバーナーや、発熱材などを用いて加熱してもよい。このようにすることで、鋳込まれた直後のタービン翼における不均一な温度低下を抑制することができ、熱応力を低減させることができる。
さらに、図8に示すように、鋳型101における空間前縁21や、空間後縁22の近傍に、耐熱性を有する断熱材104を配置してもよく、特に限定するものではない。
断熱材104を配置する場所は、例えば、熱伝導解析の結果を参考にして求められる。断熱材104を配置する厚さは、鋳型101における熱容量を参考に定めることができ、図8では、空間前縁21の近傍に1枚の断熱材104を配置し、空間後縁22の近傍に3枚の断熱材104を配置する例が示されている。
なお、鋳型101に配置されるものとしては、断熱材104に限られるものではなく、保温材であってもよい。
さらに、図9に示す支持治具110を用いて鋳型101を支持し、鋳型101を中に浮かせた状態で鋳造を行ってもよい。このようにすることで、鋳型101と地面との接点を無くすことができ、地面との接触による鋳型101の温度の急激な低下を防止することができる。
土台111は、支持治具110の最も下方に配置され、支持治具110そのもの、および、鋳型101を支えるものである。土台111には支柱112が取り付けられている。
支柱112は、土台111から上方に向って延びる柱状の部材であって、上側支持部113および下側支持部114とともに、鋳型101を支持するものである。
下側支持部114は、支柱112の中央付近に配置された部材であって、鋳型101における湯道5の下側端部の周辺を支持するものである。
次に、本発明の実施形態について図10および図11を参照して説明する。
本実施形態の鋳型の基本構成は、第1参考実施形態と同様であるが、第1参考実施形態とは、翼形空間と湯道との相対配置が異なっている。よって、本実施形態においては、図10および図11を用いて翼形空間と湯道との相対配置のみを説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
図10は、本実施形態の鋳型における翼形空間と湯道との相対配置を説明する模式図である。
なお、第1参考実施形態と同一の構成要素に付いては、同一の符号を付してその説明を省略する。
湯道5は、一対の翼形空間2,2における空間後縁22の近傍に配置されている。さらに、一対の翼形空間2,2は、湯道5を中心とした回転対称に配置されている。
ここで、一対の翼形空間2,2を有する一般的な鋳型1Aの構成を、本実施形態の鋳型201と対比しながら説明する。
鋳型1Aには、図11に示すように、一対の翼形空間2,2と、1つの湯口4および湯道5と、一対の上側セキ6および下側セキ7と、を内部に有する鋳型本体8Aが、主に設けられている。
具体的には、鋳型1Aでは、一対の翼形空間2,2と、1つの湯道5とは離間して配置されているのに対して、鋳型201では、一対の翼形空間2,2における空間後縁22の近傍に湯道5が配置されている点が異なっている。
なお、上述の鋳型201を形成する鋳型形成工程は、第1参考実施形態における鋳型形成工程と比較して、断熱模型M3を鋳型本体208に埋め込む必要がない点を除き、第1参考実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
また、形成された鋳型101を用いたタービン翼の鋳造を行う鋳造工程についても、第1参考実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
具体的には、タービン翼の後縁部分は他の部分と比較して熱容量が小さいため、タービン翼を鋳込んだ後の後縁部分の温度低下は、他の部分と比較して速くなっていた。そこで、当該後縁部分に、湯道5に充填された湯から放射された熱を加えることにより、当該後縁における温度低下が緩やかになる。その結果、タービン翼の全体における温度低下のばらつきが抑制され、変形を抑制することができる。
5 湯道
22 空間後縁(後縁に相当する部分)
23 空間正圧面(正圧面に相当する領域)
24 空間負圧面(負圧面に相当する領域)
201 鋳型(タービン翼用鋳型)
208 鋳型本体
Claims (2)
- 前縁、後縁、凹状に湾曲した正圧面および凸状に湾曲した負圧面を有するタービン翼を鋳造するタービン翼用鋳型であって、
内部に前記タービン翼の形状を有する翼形空間と、
外部から供給された溶融された金属である湯を前記翼形空間に流入させる湯道と、を内部に有する鋳型本体が設けられ、
該鋳型本体の横断面視において、2つの前記翼形空間が、前記湯道を中心として回転対称となり、且つ、それぞれの前記翼形空間の後縁に相当する部分同士が重なり合うように配置され、
前記湯道は、前記翼形空間における前記後縁に相当する部分の近傍に配置されるとともに、重なり合う前記後縁に相当する部分の間に挟まれていることを特徴とするタービン翼用鋳型。 - 請求項1に記載のタービン翼用鋳型を形成する鋳型形成工程と、
前記タービン用鋳型の前記翼形空間に溶融された金属である湯を充填する鋳込み工程と、
を有することを特徴とするタービン翼の製造方法。
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