JP2014204529A - モータ制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】駆動回路のスイッチング素子の短絡異常を検出した際に、その誤検出を回避することのできるモータ制御装置を提供する。
【解決手段】このモータ制御装置4は、各相に対応する上下アームの接続点P1〜P3から給電線Wu〜Wwを介してモータ20に交流電力を供給する駆動回路40と、駆動回路40の駆動を制御するマイコン41とからなる。マイコン41は、駆動回路40のFET44u〜44w,45u〜45wの短絡異常を検出した際、短絡異常が検出された特定相の上側FET及び下側FETをオフ状態に固定する。そして特定相以外の二相の下側FETが共にオン状態になったとき、特定相の接続点の電圧に基づいて特定相の上側FETに短絡異常が生じているか否かを判定する。また特定相以外の二相の上側FETが共にオン状態になったとき、特定相の接続点の電圧に基づいて特定相の下側FETに短絡異常が生じているか否かを判定する。
【選択図】図2

Description

本発明は、モータの駆動を制御するモータ制御装置に関する。
車両のステアリングシャフトやラックシャフトにモータのアシストトルクを付与することにより運転者のステアリング操作を補助する電動パワーステアリング装置が知られている。この電動パワーステアリング装置には、運転者のステアリング操作に基づいて操舵機構に付与される操舵トルクを検出するトルクセンサ、及びトルクセンサの検出操舵トルクに基づいてモータの駆動を制御する制御装置が設けられている。制御装置は、モータに交流電力を供給する駆動回路、及び駆動回路の動作を制御するマイコンからなる。マイコンは、トルクセンサの検出操舵トルクに基づいてモータの駆動電流の目標値である電流指令値を演算する。そして、モータの実際の駆動電流値を電流指令値に追従させる電流フィードバック制御の実行によりモータの駆動を制御する。
一方、このようなモータ制御装置では、駆動回路を構成するスイッチング素子に短絡異常が生じると、モータの駆動を適切に制御することができなくなる。そこで従来のモータ制御装置では、特許文献1に見られるように、電流センサにより検出されるモータの各相電流値に基づいてスイッチング素子に短絡異常が生じているか否かを監視し、スイッチング素子の短絡異常を検出した場合には、モータの駆動を停止している。
特開2012−143118号公報
ところで、特許文献1に記載のモータ制御装置では、電流センサにより検出される各相電流値がノイズ等の影響により変動すると、スイッチング素子の短絡異常を誤検出するおそれがある。スイッチング素子の短絡異常を誤検出した場合、実際にはスイッチング素子が正常であるにもかかわらず、モータの駆動が停止してしまうため、好ましくない。このような事情により短絡異常の誤検出を回避することのできる装置が望まれている。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、駆動回路のスイッチング素子の短絡異常を検出した際に、その誤検出を回避することのできるモータ制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、電源に接続された上アーム及び接地された下アームの直列回路を各相に対応して有し、前記上アームを構成する上側スイッチング素子及び前記下アームを構成する下側スイッチング素子のスイッチングに基づき、前記各相に対応する上下アームの接続点から給電線を介してモータに交流電力を供給する駆動回路と、前記駆動回路の駆動を制御する制御部と、を備え、前記駆動回路のスイッチング素子の短絡異常を検出するモータ制御装置において、前記制御部は、前記駆動回路のスイッチング素子の短絡異常を検出した際、短絡異常が検出されたスイッチング素子に対応する相を特定相として同特定相の上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子をオフ状態に固定するとともに、前記特定相以外の二相の上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子のスイッチングを継続し、前記特定相以外の二相の下側スイッチング素子が共にオン状態になったとき、あるいは前記特定相以外の二相の上側スイッチング素子が共にオフ状態になったとき、前記特定相の上下アームの接続点の電圧に基づいて前記特定相の上側スイッチング素子に短絡異常が生じているか否かを判定する。
また上記課題を解決するために、電源に接続された上アーム及び接地された下アームの直列回路を各相に対応して有し、前記上アームを構成する上側スイッチング素子及び前記下アームを構成する下側スイッチング素子のスイッチングに基づき、前記各相に対応する上下アームの接続点から給電線を介してモータに交流電力を供給する駆動回路と、前記駆動回路の駆動を制御する制御部と、を備え、前記駆動回路のスイッチング素子の短絡異常を検出するモータ制御装置において、前記制御部は、前記駆動回路のスイッチング素子の短絡異常を検出した際、短絡異常が検出されたスイッチング素子に対応する相を特定相として同特定相の上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子をオフ状態に固定するとともに、前記特定相以外の二相の上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子のスイッチングを継続し、前記特定相以外の二相の上側スイッチング素子が共にオン状態になったとき、あるいは前記特定相以外の二相の下側スイッチング素子が共にオフ状態になったとき、前記特定相の上下アームの接続点の電圧に基づいて前記特定相の下側スイッチング素子に短絡異常が生じているか否かを判定する。
これらの構成によれば、スイッチング素子が短絡した場合と正常な場合とで特定相の上下アームの接続点の電圧が大きく異なるときに、制御部が、その短絡異常検出の正誤を判定することができる。したがって短絡異常の誤検出を的確に回避することができる。
ところで、特定相の上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子をオフ状態にした時点で特定相の給電線に電流が流れていると、特定相の上下アームの接続点の電圧が変動する。したがって、そのような状況下で特定相の上下アームの接続点の電圧に基づいて短絡異常検出の正誤を判定すると、判定精度が低下してしまう。
そこで、上記モータ制御装置については、前記制御部は、前記特定相の給電線に電流が流れていない状態で、前記特定相のスイッチング素子に短絡異常が生じているか否かを判定することが有効である。
この構成によれば、制御部は、特定相の給電線に電流が流れていない状況でのみ短絡異常検出の正誤の判定を行うため、判定精度を的確に確保することができる。
そして上記モータ制御装置については、前記制御部は、前記特定相の上下アームの接続点の電圧と、予め設定された閾値との比較に基づいて前記短絡異常の判定を行うことが有効である。
また上記モータ制御装置については、前記上側スイッチング素子は、ドレイン端子が電源に接続されたFETからなり、前記下側スイッチング素子は、ソース端子が接地に接続されたFETからなり、前記上側スイッチング素子のソース端子と前記下側スイッチング素子のドレイン端子とが互いに接続されることで前記上下アームの直列回路が構成され、前記制御部は、前記特定相における前記上側スイッチング素子のドレイン−ソース間の電位差と、予め設定された閾値との比較に基づいて前記短絡異常の判定を行うことが有効である。
さらに上記モータ制御装置については、前記上側スイッチング素子は、ドレイン端子が電源に接続されたFETからなり、前記下側スイッチング素子は、ソース端子が接地に接続されたFETからなり、前記上側スイッチング素子のソース端子と前記下側スイッチング素子のドレイン端子とが互いに接続されることで前記上下アームの直列回路が構成され、前記制御部は、前記特定相における前記下側スイッチング素子のドレイン−ソース間の電位差と、予め設定された閾値との比較に基づいて前記短絡異常の判定を行うことが有効である。
これらの構成によれば、短絡異常検出の正誤を容易に判定することができる。
このモータ制御装置によれば、駆動回路のスイッチング素子の短絡異常を検出した際に、その誤検出を回避することができる。
モータ制御装置の一実施形態について同装置を適用した電動パワーステアリング装置の概略構成を示すブロック図。 実施形態のモータ制御装置の構成を示すブロック図。 (a)は、デューティ値及び三角波の推移を示すタイムチャート。(b)〜(g)は、各相の上側FET及び下側FETのスイッチング状態の推移を示すタイムチャート。 (a)は、U相上下アームの接続点の電圧の推移をU相上側FETの短絡異常検出が正しい場合と誤りの場合とで比較して示すタイムチャート。(b)〜(g)は、各相の上側FET及び下側FETのスイッチング状態の推移を示すタイムチャート。 (a)は、U相上下アームの接続点の電圧の推移をU相下側FETの短絡異常検出が正しい場合と誤りの場合とで比較して示すタイムチャート。(b)〜(g)は、各相の上側FET及び下側FETのスイッチング状態の推移を示すタイムチャート。 実施形態のモータ制御装置による上側FETの短絡異常検出の際に実行される処理の手順を示すフローチャート。 実施形態のモータ制御装置による下側FETの短絡異常検出の際に実行される処理の手順を示すフローチャート。
以下、モータ制御装置の一実施形態について説明する。はじめに本実施形態のモータ制御装置が搭載された電動パワーステアリング装置の概要について説明する。
図1に示すように、この電動パワーステアリング装置は、運転者のステアリングホイール10の操作に基づき転舵輪3を転舵させる操舵機構1、及び運転者のステアリング操作を補助するアシスト機構2を備えている。
操舵機構1は、ステアリングホイール10の回転軸となるステアリングシャフト11、及びその下端部にラックアンドピニオン機構12を介して連結されたラックシャフト13を備えている。操舵機構1では、運転者のステアリングホイール10の操作に伴いステアリングシャフト11が回転すると、その回転運動がラックアンドピニオン機構12を介してラックシャフト13の軸方向の往復直線運動に変換される。このラックシャフト13の往復直線運動がその両端に連結されたタイロッド14を介して転舵輪3に伝達されることにより転舵輪3の転舵角が変化し、車両の進行方向が変更される。
アシスト機構2は、ステアリングシャフト11にアシストトルクを付与するモータ20を備えている。モータ20は三相ブラシレスモータからなる。モータ20の回転が減速機21を介してステアリングシャフト11に伝達されることでステアリングシャフト11にモータトルクが付与され、ステアリング操作が補助される。
この電動パワーステアリング装置には、ステアリングホイール10の操作量や車両の状態量を検出する各種センサが設けられている。例えばステアリングシャフト11には、運転者のステアリング操作に際してステアリングシャフト11に付与されるトルク(操舵トルク)Thを検出するトルクセンサ5が設けられている。車両には、その走行速度Vを検出する車速センサ6が設けられている。モータ20には、その回転角θmを検出する回転角センサ7が設けられている。これらセンサ5〜7の出力はモータ制御装置4に取り込まれる。モータ制御装置4は各センサ5〜7の出力に基づいてモータ20の駆動を制御する。
図2に示すように、モータ制御装置4は、車載バッテリ等の電源(電源電圧+VB)から供給される直流電力を三相(U相、V相、W相)の交流電力に変換する駆動回路40、及び駆動回路40をPWM(パルス幅変調)駆動する制御部としてのマイコン41を備えている。
駆動回路40は、それぞれ対をなす上アーム42u及び下アーム43uの直列回路、上アーム42v及び下アーム43vの直列回路、並びに上アーム42w及び下アーム43wの直列回路を並列に接続した構造をなしている。上アーム42u〜42wは、それぞれドレイン端子が電源に接続されたMOSFET(以下、「上側FET」という)44u〜44wからなる。下アーム43u〜43wは、それぞれソース端子が接地に接続されたMOSFET(以下、「下側FET」という)45u〜45wからなる。そして各上側FET44u〜44wのソース端子と各下側FET45u〜45wのドレイン端子とが接続されることにより、上下アームの直列回路が構成されている。なお本実施形態では、上側FET44u〜44wが上側スイッチング素子となり、下側FET45u〜45wが下側スイッチング素子となっている。また図中に破線で示す符号Dは、各FET44u〜44w,45u〜45wの寄生ダイオードを示している。上アーム42uと下アーム43uとの接続点P1、上アーム42vと下アーム43vとの接続点P2、及び上アーム42wと下アーム43wとの接続点P3には、給電線Wu〜Wwを介してモータ20の各相コイル20u〜20wがそれぞれ接続されている。この駆動回路40では、マイコン41からの制御信号Sc1〜Sc6に基づいてFET44u〜44w,45u〜45wがスイッチングされることにより、電源から供給される直流電力を三相(U相、V相、W相)の交流電力に変換する。
詳しくは、図3(a)〜(g)に示すように、マイコン41は、各相モータコイル20u〜20wに印可すべき相電圧に対応する各デューティ値Du〜DwとPWMキャリア(搬送波)である三角波δとの比較に基づいて制御信号Sc1〜Sc6を生成する。すなわちマイコン41は、三角波δの値よりも各デューティ値Du〜Dwの方が大きい場合には、対応する相の上側FET44u〜44wをオンし、小さい場合には、対応する相の上側FET44u〜44wをオフするような制御信号Sc1,Sc3,Sc5を生成する。またマイコン41は、三角波δの値よりも各デューティ値Du〜Dwの方が小さい場合には、対応する相の下側FET45u〜45wをオンし、大きい場合には、対応する相の下側FET45u〜45wをオフするような制御信号Sc2,Sc4,Sc6を生成する。こうして生成される制御信号Sc1〜Sc6に基づいてFET44u〜44w,45u〜45wがスイッチングされることにより、電源から供給される直流電力が三相交流電力に変換される。そして、この三相交流電力が給電線Wu〜Wwを介して各相モータコイル20u〜20wに供給されることでモータ20が駆動する。
図2に示すように、U相に対応する上下アーム42u,43uの接続点P1、V相に対応する上下アーム42v,43vの接続点P2、及びW相に対応する上下アーム42w,43wの接続点P3には、電圧センサ46u〜46wがそれぞれ接続されている。電圧センサ46u〜46wは、各相の接続点P1〜P3の電圧を、換言すればモータ20の各相端子電圧Vu〜Vwを検出する。電圧センサ46u〜46wは、各相の接続点P1〜P3の電圧Vu〜Vwを分圧抵抗により分圧して出力する周知の構成からなる。電圧センサ46u〜46wの出力信号Sv_u〜Sv_wはマイコン41に取り込まれる。マイコン41は、電圧センサ46u〜46wの出力信号Sv_u〜Sv_wに基づいて各相の接続点P1〜P3の電圧Vu〜Vwを検出する。
下側FET45u〜45wと接地との間には、各相に対応する電流センサ47u〜47wがそれぞれ設けられている。電流センサ47u〜47wは、各下側FET45u〜45wに対して直列に接続されたシャント抵抗の端子間電圧を増幅して出力する周知の構成からなる。各電流センサ47u〜47wの出力信号Si_u〜Si_wはマイコン41に取り込まれる。マイコン41は、電流センサ47u〜47wの出力信号Si_u〜Si_wを所定のサンプリングタイミングで取得し、各相のモータ電流値Iu〜Iwを演算する。詳しくは、図3に示すように、マイコン41は、PWMキャリアとしての三角波δが谷となるタイミングT1及び山となるタイミングT2で電流センサ47u〜47wの出力信号Si_u〜Si_wをそれぞれ取得する。なお、「谷となるタイミングT1」とは三角波δの値が最小となるピークタイミングであり、全ての上側FET44u〜44wがオン状態となり、全ての下側FET45u〜45wがオフ状態となるタイミングである。これに対し、「山となるタイミングT2」とは三角波δの値が最大となるピークタイミングであり、全ての上側FET44u〜44wがオフ状態となり、全ての下側FET45u〜45wがオン状態となるタイミングである。マイコン41は、三角波δが谷となるタイミングT1で取得する出力信号Si_u〜Si_wに基づいて谷読み電流値Iv_u〜Iv_wを検出する。また三角波δが山となるタイミングT2で取得する出力信号Si_u〜Si_wに基づいて山読み電流値Im_u〜Im_wを検出する。そしてマイコン41は、検出された谷読み電流値Iv_u〜Iv_w及び山読み電流値Im_u〜Im_wから以下の式(1)〜(3)に基づいて各相電流値Iu〜Iwを演算する。
Iu=Im_u−Iv_u ・・・(1)
Iv=Im_v−Iv_v ・・・(2)
Iw=Im_w−Iv_w ・・・(3)
そしてマイコン41は、演算された各相電流値Iu〜Iw、及び各センサ5〜7により検出される操舵トルクTh、車速V、及びモータ回転角θmに基づいて制御信号Sc1〜Sc6を生成する。具体的には、マイコン41は、モータ回転角θmに基づいて各相電流値Iu〜Iwをd/q座標系のd軸電流値及びq軸電流値に変換する。またマイコン41は、操舵トルクTh及び車速Vに基づいて、操舵系に付与すべきアシストトルクの目標値に対応するq軸電流指令値を演算する。例えば、マイコン41は、操舵トルクThの絶対値が大きくなるほど、また車速Vが遅くなるほど、q軸電流指令値の絶対値をより大きい値に設定する。またマイコン41はd軸電流指令値を零に設定する。そしてマイコン41は、d軸電流値をd軸電流指令値に追従させるべく、またq軸電流値をq軸電流指令値に追従させるべく電流フィードバック制御を行うことによりd/q座標系の電圧指令値を演算する。次にマイコン41は、モータ回転角θmに基づいて、このd/q座標系の電圧指令値を逆変換することにより、三相座標系の各相電圧指令値を演算する。さらにマイコン41は、演算された各相電圧指令値に基づく各デューティ値Du〜Dwを、図3に例示したように三角波δと比較することにより制御信号Sc1〜Sc6を生成し、生成した制御信号Sc1〜Sc6を駆動回路40に出力する。これにより、目標アシストトルクを発生させるための駆動電力がモータ20に供給されるようになっている。
一方、マイコン41は、谷読み電流値Iv_u〜Iv_w及び山読み電流値Im_u〜Im_wに基づいてFET44u〜44w,45u〜45wのドレイン−ソース間の短絡異常を検出する。詳しくは、マイコン41は、山読み電流値の絶対値|Im_u|〜|Im_w|のいずれかが所定の閾値を超えた場合、閾値を超えた山読み電流値が検出された相に対応する上側FETに短絡異常が生じたと判定する。またマイコン41は、谷読み電流値の絶対値|Iv_u|〜|Iv_w|のいずれかが所定の閾値を超えた場合、閾値を超えた谷読み電流値が検出された相に対応する下側FETに短絡異常が生じたと判定する。さらにマイコン41は、FET44u〜44w,45u〜45wのいずれかに短絡異常が生じたことを検出した場合、電圧センサ46u〜46wにより検出される各相の接続点P1〜P3の電圧Vu〜Vwに基づいて、短絡異常検出の正誤を判定する。以下、短絡異常検出の正誤判定の方法について詳述する。はじめに、その原理について説明する。
本実施形態のマイコン41は、例えばU相上側FET44uの短絡異常を検出した場合、図4(b),(c)に示すように、U相上側FET44u及び下側FET45uをオフ状態に固定する。なおこのとき、図4(d)〜(g)に示すように、マイコン41は、U相以外のV相及びW相の上側FET44v,44w及び下側FET45v,45wに関しては制御信号Sc3〜Sc6に基づくスイッチングを継続する。ここでU相上側FET44uの短絡異常検出が正しい場合、図4(a)に実線で示すように、U相接続点P1の電圧Vuは電源電圧VBと等しくなり、その状態が継続する。これに対し、U相上側FET44uの短絡異常検出が誤りである場合、すなわちU相上側FET44uが正常である場合、図4(a)に一点鎖線で示すように、U相接続点P1の電圧Vuは、V相及びW相の上側FET44v,44w及び下側FET45v,45wのスイッチングに応じて変化する。詳しくは、V相上側FET44v及びW相上側FET44wが共にオン状態となる例えば時刻t1〜時刻t2の期間や時刻t5〜t6の期間、U相接続点P1の電圧Vuは電源電圧VBを示す。またV相下側FET45v及びW相下側FET45wが共にオン状態となる例えば時刻t3〜t4の期間、U相接続点P1の電圧Vuは「0」を示す。したがって、第1閾値Vth1を「0<Vth1<VB」の範囲で設定した上で、V相下側FET45v及びW相下側FET45wが共にオン状態となったとき、U相接続点P1の電圧Vuが第1閾値Vth1以上であれば、U相上側FET44uの短絡異常検出が正しいと判定することができる。これに対し、U相接続点P1の電圧Vuが第1閾値Vth1よりも小さければ、U相上側FET44uの短絡異常検出は誤りであると判定することができる。なおV相上側FET44v及びW相上側FET44wについても、これに準じた判定を行うことにより、それらの短絡異常検出の正誤を判定することができる。
一方、マイコン41は、U相下側FET45uの短絡異常を検出した場合にも、図5(b),(c)に示すように、U相上側FET44u及び下側FET45uをオフ状態に固定する。また図5(d)〜(g)に示すように、マイコン41は、U相以外のV相及びW相の上側FET44v,44w及び下側FET45v,45wに関しては制御信号Sc3〜Sc6に基づくスイッチングを継続する。ここでU相下側FET45uの短絡異常検出が正しい場合、図5(a)に実線で示すように、U相接続点P1の電圧Vuは「0」となり、その状態が継続する。したがってこの場合、第2閾値Vth2を「0<Vth2<VB」の範囲で設定した上で、V相上側FET44v及びW相上側FET44wが共にオン状態となったとき、U相接続点P1の電圧Vuが第2閾値Vth2以下であれば、U相下側FET45uの短絡異常検出が正しいと判定することができる。これに対し、U相接続点P1の電圧Vuが第2閾値Vth2よりも大きければ、U相下側FET45uの短絡異常検出は誤りであると判定することができる。なおV相下側FET45v及びW相下側FET45wについても、これに準じた判定を行うことにより、それらの短絡異常検出の正誤を判定することができる。
次に、このような原理に基づいてマイコン41が行う短絡異常検出の正誤判定処理について説明する。はじめに、図6を参照して、マイコン41が上側FET44u〜44wのいずれかの短絡異常を検出した際に実行する処理の手順についてその作用とともに説明する。
図6に示すように、マイコン41は、まず、短絡異常が検出されたFETに対応する相を特定相として、当該特定相の上側FET及び下側FETをオフ状態に固定する(ステップS1)。なおマイコン41は、特定相以外の二相の上側FET及び下側FETに関しては、制御信号Sc1〜Sc6に基づくスイッチングを継続する。続いてマイコン41は、特定相以外の二相の下側FETが共にオン状態になったか否かを判断する(ステップS2)。そして、特定相以外の二相の下側FETが共にオン状態になった場合(ステップS2:YES)、マイコン41は、電圧センサ46u〜46wの出力信号Sv_u〜Sv_wに基づいて特定相に対応する接続点の電圧Vpを検出し(ステップS3)、検出された特定相の接続点の電圧Vpが第1閾値Vth1よりも大きいか否かを判定する(ステップS4)。そして、特定相の接続点の電圧Vpが第1閾値Vth1よりも大きい場合(ステップS4:YES)、マイコン41は、短絡異常検出が正しいと判定し(ステップS5)、フェールセーフ処理を実行する(ステップS6)。なおフェールセーフ処理としては、例えば駆動回路への制御信号Sc1〜Sc6の出力を停止してモータ20の駆動を停止する処理や、特定相以外の二相の上側FET及び下側FETのみをスイッチングすることによりモータ20の駆動を継続する、いわゆる二相駆動に移行する処理などを採用することができる。
一方、マイコン41は、特定相に対応する接続点の電圧Vpが第1閾値Vth1以下の場合(ステップS4:NO)、短絡異常検出が誤りであると判定し(ステップS7)、特定相の上側FET及び下側FETに関して制御信号Sc1〜Sc6に基づくスイッチングを再開する(ステップS8)。
次に、図7を参照して、マイコン41が下側FET45u〜45wのいずれかの短絡異常を検出した際に実行する処理の手順についてその作用とともに説明する。なおここでは、図6に示した処理と同一の処理には同一の符号を付すことによりその説明を割愛し、以下では両者の相違点を中心に説明する。
図7に示すように、マイコン41は、ステップS1の処理を実行した後、特定相以外の二相の上側FETが共にオン状態になったか否かを判断する(ステップS9)。次にマイコン41は、特定相以外の二相の上側FETが共にオン状態になった場合(ステップS9:YES)、ステップS3の処理を実行した後、特定相の接続点の電圧Vpが第2閾値Vth2よりも小さいか否かを判定する(ステップS10)。そして、特定相の接続点の電圧Vpが第2閾値Vth2よりも小さい場合(ステップS10:YES)、マイコン41は、ステップS5及びS6の処理を実行する。一方、特定相の接続点の電圧Vpが第2閾値Vth2以上の場合(ステップS10:NO)、マイコン41は、ステップS7及びS8の処理を実行する。
このような構成によれば、マイコン41が駆動回路40のFET44u〜44w,45u〜45wの短絡異常を検出したとき、その短絡異常検出の正誤を判定することができる。したがって短絡異常の誤検出を的確に回避することができる。
また、本実施形態のように特定相の上側FET及び下側FETをオフした状態で短絡異常検出の正誤判定を行えば、図4及び図5に例示したように、短絡異常検出が正しい場合と誤りの場合とで、特定相の接続点の電圧Vpに「VB」の差が生じる。これにより、特定相の接続点の電圧Vpに、判定精度の確保に必要な十分な偏差が生じるため、高い判定精度を得ることができる。
以上説明したように、本実施形態によれば以下の効果が得られる。
(1)モータ制御装置4は、FET44u〜44w,45u〜45wの短絡異常を検出した際、短絡異常が検出されたFETに対応する相を特定相として、特定相の上側FET及び下側FETをオフ状態にするとともに、特定相以外の二相の上側FET及び下側FETのスイッチングを継続することとした。そしてモータ制御装置4は、特定相以外の二相の下側FETが共にオン状態になったとき、特定相の上下アームの接続点の電圧Vpに基づいて特定相の上側FETに短絡異常が生じているか否かを判定することとした。またモータ制御装置4は、特定相以外の二相の上側FETが共にオン状態になったとき、特定相の上下アームの接続点の電圧Vpに基づいて特定相の下側FETに短絡異常が生じているか否かを判定することとした。これによりモータ制御装置4は、FET44u〜44w,45u〜45wの短絡異常を検出したとき、その短絡異常検出が正しいか否かを検証することができる。したがって短絡異常の誤検出を的確に回避することができる。また高い判定精度を確保することもできる。
(2)モータ制御装置4は、特定相の上下アームの接続点の電圧Vpと、予め設定された第1閾値Vth1及び第2閾値Vth2との比較に基づいて、短絡異常の判定を行うこととした。これにより、特定相の上側スイッチング素子あるいは下側スイッチング素子に短絡異常が生じているか否かを容易に判定することができる。
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・特定相の上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子をオフ状態にしたとき、特定相の給電線に電流が流れていると、特定相の上下アームの接続点の電圧が変動するため、短絡異常検出の正誤を適切に判定できないおそれがある。このようなケースとしては2つのケースがあるため、まずは第1のケースについて説明する。例えば図2に示すU相上側FET44u及び下側FET45uが共に正常な状況でそれらをオフ状態にしたとき、U相給電線Wuにモータ20からU相接続点P1に向かう方向の電流が流れていると、U相接続点P1の電圧は、U相上側FET44uの寄生ダイオードDに順方向の電流が流れる電圧となる。すなわちこの場合、U相接続点P1の電圧は、電源電圧VBと寄生ダイオードDの順方向電圧Vfとを加算した電圧「VB+Vf」となる。したがって、U相給電線Wuにモータ20からU相接続点P1に向かう方向の電流が流れている状況でマイコン41が図6に示した処理を実行すると、実際にはU相上側FET44uが正常であるにもかかわらず、U相上側FET44uの短絡異常検出が正しいと誤判定するおそれがある。したがって、マイコン41は、図6に示す処理を、特定相の給電線に電流が流れていない状況で実行することが好ましい。具体的には、マイコン41が、各相電流値Iu〜Iwのうち、特定相の電流値が「0」であることを条件に、図6に示す処理を実行すればよい。これにより短絡異常検出の判定精度を的確に確保することができる。
・次に短絡異常検出の正誤を適切に判定できない第2のケースについて説明する。例えば図2に示すU相上側FET44u及び下側FET45uが共に正常な状況でそれらをオフ状態にしたとき、U相給電線WuにU相接続点P1からモータ20に向かう方向の電流が流れていると、U相接続点P1の電圧は、U相下側FET45uの寄生ダイオードDに順方向の電流が流れる電圧となる。すなわちこの場合、U相接続点P1の電圧は、接地よりも寄生ダイオードDの順方向電圧Vf分だけ低い電圧「−Vf」となる。したがって、U相給電線WuにU相接続点P1からモータ20に向かう方向の電流が流れている状況でマイコン41が図7に示した処理を実行すると、実際にはU相下側FET45uが正常であるにもかかわらず、U相下側FET45uの短絡異常検出が正しいと誤判定するおそれがある。したがって、マイコン41は、図7に示す処理も、特定相の給電線に電流が流れていない状況で実行することが好ましい。具体的には、マイコン41が、各相電流値Iu〜Iwのうち、特定相に対応する電流値が「0」であることを条件に、図7に示す処理を実行すればよい。これにより短絡異常検出の判定精度を的確に確保することができる。
・上記実施形態では、各相の接続点P1〜P3の電圧Vu〜Vwのうち、特定相に対応する接続点の電圧Vpと閾値Vth1,Vth2との比較に基づいて短絡異常検出の正誤を判定した。これに代えて、特定相の上側FETにおけるドレイン−ソース間の電位差に基づいて、換言すれば電源と特定相の接続点との間の電位差に基づいて短絡異常検出の正誤を判定してもよい。具体的には、図6に示すステップS4の処理を、特定相の上側FETにおけるドレイン−ソース間の電位差が、第3閾値Vth3よりも小さいか否かを判断する処理に代えてもよい。また図7に示すステップS10の処理を、特定相の上側FETにおけるドレイン−ソース間の電位差が、第4閾値Vth4よりも大きいか否かを判断する処理に代えてもよい。さらに、短絡異常検出の正誤判定については、特定相の下側FETにおけるドレイン−ソース間の電位差に基づいて、換言すれば接地と特定相の接続点との間の電位差に基づいて行ってもよい。具体的には、図6に示すステップS4の処理を、特定相の下側FETにおけるドレイン−ソース間の電位差が、第5閾値Vth5よりも大きいか否かを判断する処理に代えてもよい。また図7に示すステップS10の処理を、特定相の下側FETにおけるドレイン−ソース間の電位差が、第6閾値Vth6よりも小さいか否かを判断する処理に代えてもよい。
・図6に示すステップS2の処理を、特定相以外の二相の上側FETが共にオフ状態になったか否かを判断する処理に代えてもよい。また図7に示すステップS9の処理を、特定相以外の二相の下側FETが共にオフ状態になったか否かを判断する処理に代えてもよい。
・上記実施形態では、谷読み電流値Iv_u〜Iv_w及び山読み電流値Im_u〜Im_wに基づいてFET44u〜44w,45u〜45wの短絡異常を検出したが、それらの短絡異常を検出する方法は適宜変更可能である。
・上記実施形態では、デューティ値Du〜Dwとの比較に用いられる三角波が一つだけであった。これに代えて、いわゆるアーム短絡による貫通電流の発生を回避すべく、上下にシフトされた位相の等しい2つの三角波を用いることにより、上側FET44u〜44wのオン/オフのタイミングと、下側FET45u〜45wのオン/オフのタイミングとの間にデッドタイムを設けてもよい。
・上記実施形態では、上アーム42u〜42w及び下アーム43u〜43wのスイッチング素子としてFET44u〜44w,45u〜45wを用いたが、それ以外の適宜のスイッチング素子を用いてもよい。
・上記実施形態の電動パワーステアリング装置は、ステアリングシャフト11にアシストトルクを付与する電動パワーステアリング装置に限らず、ラックシャフト13にアシストトルクを付与する電動パワーステアリング装置にも適用可能である。
・上記実施形態のモータ制御装置4は、電動パワーステアリング装置に限らず、適宜のモータ制御装置に適用することが可能である。
P1〜P3…接続点、Wu〜Ww…給電線、20…モータ、40…駆動回路、41…マイコン(制御部)、42u〜42w…上アーム、43u〜43w…下アーム、44u〜44w…上側FET(上側スイッチング素子)、45u〜45w…下側FET(下側スイッチング素子)。

Claims (6)

  1. 電源に接続された上アーム及び接地された下アームの直列回路を各相に対応して有し、前記上アームを構成する上側スイッチング素子及び前記下アームを構成する下側スイッチング素子のスイッチングに基づき、前記各相に対応する上下アームの接続点から給電線を介してモータに交流電力を供給する駆動回路と、
    前記駆動回路の駆動を制御する制御部と、を備え、
    前記駆動回路のスイッチング素子の短絡異常を検出するモータ制御装置において、
    前記制御部は、前記駆動回路のスイッチング素子の短絡異常を検出した際、短絡異常が検出されたスイッチング素子に対応する相を特定相として同特定相の上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子をオフ状態に固定するとともに、前記特定相以外の二相の上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子のスイッチングを継続し、前記特定相以外の二相の下側スイッチング素子が共にオン状態になったとき、あるいは前記特定相以外の二相の上側スイッチング素子が共にオフ状態になったとき、前記特定相の上下アームの接続点の電圧に基づいて前記特定相の上側スイッチング素子に短絡異常が生じているか否かを判定することを特徴とするモータ制御装置。
  2. 電源に接続された上アーム及び接地された下アームの直列回路を各相に対応して有し、前記上アームを構成する上側スイッチング素子及び前記下アームを構成する下側スイッチング素子のスイッチングに基づき、前記各相に対応する上下アームの接続点から給電線を介してモータに交流電力を供給する駆動回路と、
    前記駆動回路の駆動を制御する制御部と、を備え、
    前記駆動回路のスイッチング素子の短絡異常を検出するモータ制御装置において、
    前記制御部は、前記駆動回路のスイッチング素子の短絡異常を検出した際、短絡異常が検出されたスイッチング素子に対応する相を特定相として同特定相の上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子をオフ状態に固定するとともに、前記特定相以外の二相の上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子のスイッチングを継続し、前記特定相以外の二相の上側スイッチング素子が共にオン状態になったとき、あるいは前記特定相以外の二相の下側スイッチング素子が共にオフ状態になったとき、前記特定相の上下アームの接続点の電圧に基づいて前記特定相の下側スイッチング素子に短絡異常が生じているか否かを判定することを特徴とするモータ制御装置。
  3. 請求項1又は2に記載のモータ制御装置において、
    前記制御部は、前記特定相の給電線に電流が流れていない状態で、前記特定相のスイッチング素子に短絡異常が生じているか否かを判定することを特徴とするモータ制御装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のモータ制御装置において、
    前記制御部は、前記特定相の上下アームの接続点の電圧と、予め設定された閾値との比較に基づいて前記短絡異常の判定を行うことを特徴とするモータ制御装置。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のモータ制御装置において、
    前記上側スイッチング素子は、ドレイン端子が電源に接続されたFETからなり、
    前記下側スイッチング素子は、ソース端子が接地に接続されたFETからなり、
    前記上側スイッチング素子のソース端子と前記下側スイッチング素子のドレイン端子とが互いに接続されることで前記上下アームの直列回路が構成され、
    前記制御部は、前記特定相における前記上側スイッチング素子のドレイン−ソース間の電位差と、予め設定された閾値との比較に基づいて前記短絡異常の判定を行うことを特徴とするモータ制御装置。
  6. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のモータ制御装置において、
    前記上側スイッチング素子は、ドレイン端子が電源に接続されたFETからなり、
    前記下側スイッチング素子は、ソース端子が接地に接続されたFETからなり、
    前記上側スイッチング素子のソース端子と前記下側スイッチング素子のドレイン端子とが互いに接続されることで前記上下アームの直列回路が構成され、
    前記制御部は、前記特定相における前記下側スイッチング素子のドレイン−ソース間の電位差と、予め設定された閾値との比較に基づいて前記短絡異常の判定を行うことを特徴とするモータ制御装置。
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