本発明の一実施形態によるブレーカーについて図面を参照して説明する。図1乃至図3はブレーカーの構成を示す。ブレーカー1は、固定接点21を有する固定片2と、先端部に可動接点3を有する可動片4と、温度変化に伴って変形する熱応動素子5と、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター6と、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6を収容するケース7等によって構成されている。ケース7は、樹脂ベース(第1ケース)71と樹脂ベース71の上面に装着されるカバー部材(第2ケース)72とカバー片8等によって構成されている。
固定片2は、リン青銅等を主成分とする金属板(この他、銅−チタン合金、洋白、黄銅などの金属板)をプレス加工することにより形成され、樹脂ベース71にインサート成形により埋め込まれている。固定片2の一端には外部回路と電気的に接続される端子22が形成され、他端側には、PTCサーミスター6を支持する支持部23が形成されている。PTCサーミスター6は、固定片2の支持部23に3箇所形成された凸状の突起(ダボ)24a,24bの上に載置されて、突起24a,24bに支持される。固定接点21は、銀、ニッケル、ニッケル−銀合金の他、銅−銀合金、金−銀合金などの導電性の良い材料のクラッド、メッキ又は塗布等により可動接点3に対向する位置に形成され、樹脂ベース71の上方に形成されている開口73bの一部から露出されている。端子22は樹脂ベース71の一端から外側に突き出されている。
本出願においては、固定片2において、固定接点21が形成されている側の面(すなわち図1において上側の面)を表(おもて)面、その反対側の面を裏(うら)面として説明している。固定片2は、端子22、固定接点21及び支持部23(図中裏面が露出部23dに相当する)において露出し、端子22と固定接点21との間及び固定接点21と支持部23との間において樹脂ベース71に埋設される。固定片2の支持部23の表面は、ケース7の内部の収容空間に露出し、突起24a,24bを介してPTCサーミスター6と電気的に接触している。
可動片4は、板状の金属材料をプレス加工することにより、長手方向の中心線に対して対称なアーム状に形成されている。可動片4の材料としては、固定片2と同等のリン青銅等を主成分とするものが好ましい。この他、銅−チタン合金、洋白、黄銅などの導電性弾性材料を用いてもよい。可動片4の長手方向の一端には外部回路と電気的に接続される端子41が形成されて樹脂ベース71から外側に露出される。可動片4の他端(アーム状の可動片4の先端に相当)には可動接点3が形成されている。可動接点3は、固定接点21と同等の材料によって形成され、溶接の他、クラッド、かしめ(crimping)等の手法によって可動片4の先端部に接合されている。なお、本出願においては、可動片4において、可動接点3が接合されている面(すなわち図1において下側の面)を裏(うら)面、その反対側の面を表(おもて)面として説明している。可動片4は、可動接点3と端子41の間に、当接部42(アーム状の可動片4の基端及びケース7に埋設される部分に相当)、及び弾性部43を有している。当接部42は、端子41と弾性部43との間で樹脂ベース71及びカバー部材72と当接し、可動片4の短手方向に翼状に突出する突出部42aを有する。弾性部43は、当接部42から可動接点3の側に延出されている。当接部42において樹脂ベース71とカバー部材72によって裏表両面側から挟み込まれて可動片4が固定され、弾性部43が弾性変形することにより、その先端に形成されている可動接点3が固定接点21の側に押圧されて接触し、固定片2と可動片4とが通電可能となる。
樹脂ベース71とカバー部材72には、可動片4の当接部42と当接し、当接部42を固定状態で保持する当接部74と当接部79がそれぞれ形成されている。本実施形態では、樹脂ベース71の収納部73の外縁から樹脂ベース71の外壁に亘る領域に当接部74が形成されている。当接部74は、図1中、ケース7の底壁(内底面)の一部を構成する。また、カバー部材72において、可動片4を挟んで当接部74と対向する領域に当接部79が形成されている。当接部79は、図1中、ケース7の天壁(内天面)の一部を構成する。当接部42は、その裏面において樹脂ベース71の当接部74と当接し、その表面においてカバー部材72の当接部79と当接する。可動片4は、当接部74及び当接部79によって当接部42の裏表両面から挟み込まれて、ケース7に対して固定される。本実施形態においては、当接部42が可動片4の短手方向に翼状に突出する突出部42aを有するので、当接部42が幅広く大きな領域でケース7の当接部74及び当接部79によって挟み込まれ、可動片4がケース7に対して強固に固定される。
可動片4は、弾性部43において、プレス加工により湾曲又は屈曲されている。湾曲又は屈曲の度合いは、熱応動素子5を収納できる限り特に限定はなく、動作温度及び復帰温度における弾性力、接点の押圧力などを考慮して適宜設定すればよい。また、弾性部43の下面には、熱応動素子5に対向して一対の突起(接触部)44a,44bが形成されている。突起44a,44bと熱応動素子5とは接触して、突起44a,44bを介して熱応動素子5の変形が弾性部43に伝達される(図1、図2及び図3参照)。
また、可動片4には、可動片4の厚み方向に貫通し、樹脂ベース71の突起74aが挿通される貫通穴45と、クランク状に形成された段曲げ部46と、段曲げ部46に形成された斜面47と、樹脂ベース71の位置決め部75と係合される一対の係合部48と、可動片4の長手方向に対して垂直な短手方向に可動片4の一部が切除されたくびれ部49が形成されている。貫通穴45、段曲げ部46、斜面47、係合部48及びくびれ部49は、弾性部43を挟んで可動接点3とは反対側、すなわち弾性部43に対して端子41の側に設けられている。貫通穴45は、くびれ部49において可動片4の長手方向の中心線上に設けられている。斜面47は、可動片4の短手方向に沿って連続して形成されている。係合部48は、可動片4の短手方向に沿って2箇所に設けられている。
貫通穴45は、可動片4の当接部42に形成されている。当接部42は、弾性部43に対して可動片4の短手方向に幅広に形成されている。これにより、当接部42における可動片4の長手方向に垂直な断面積が、弾性部43における該断面積に対して大きい箇所となる。また、貫通穴45は、平面視で(可動片4の厚み方向に視て)可動片4の短手方向に長い長円形状に形成されている。
係合部48は、くびれ部49の端子41の側の端縁にて形成される。くびれ部49は、当接部42を挟んで弾性部43とは反対側で、当接部42と端子41の間に配設されている。くびれ部49の幅寸法(可動片4の短手方向の長さ寸法、以下同様)は、弾性部43の幅寸法に対して同等以下に設定されているのが望ましいが、少なくとも当接部42及び端子41の幅寸法よりも小さく設定されていればよい。本実施形態におけるくびれ部49は、上記特許文献1における第2弾性部としての機能を有しており、端子41に加えられた外力や衝撃を吸収し、可動接点3の位置を適正に維持する。
熱応動素子5は円弧状に湾曲した初期形状をなし、バイメタル、トリメタルなどの複合材料からなる。過熱により動作温度に達すると湾曲形状はスナップモーションを伴って逆反りし、冷却により復帰温度を下回ると復元する。熱応動素子5の初期形状は、プレス加工により形成することができる。所期の温度で熱応動素子5の逆反り動作により可動片4の弾性部43が押し上げられ、かつ弾性部43の弾性力により元に戻る限り、熱応動素子5の材質及び形状は特に限定されるものでないが、生産性及び逆反り動作の効率性の観点から矩形が望ましく、小型でありながら弾性部43を効率的に押し上げるために正方形に近い長方形であるのが望ましい。なお、熱応動素子5の材料としては、例えば、高膨脹側に銅−ニッケル−マンガン合金又はニッケル−クロム−鉄合金、低膨脹側に鉄−ニッケル合金をはじめとする、洋白、黄銅、ステンレス鋼など各種の合金からなる熱膨張率の異なる2種類の材料を積層したものが、所要条件に応じて組み合わせて使用される。
熱応動素子5の逆反り動作により固定片2と可動片4との通電が遮断されたとき、PTCサーミスター6に流れる電流が増大する。PTCサーミスター6は、温度上昇と共に抵抗値が増大して電流を制限する正特性サーミスターであれば、動作電流、動作電圧、動作温度、復帰温度などの必要に応じて種類を選択でき、その材料及び形状はこれらの諸特性を損なわない限り特に限定されるものではない。本実施形態では、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム又はチタン酸カルシウムを含むセラミック焼結体が用いられる。セラミック焼結体の他、ポリマーにカーボン等の導電性粒子を含有させたいわゆるポリマーPTCを用いてもよい。
ケース7を構成する樹脂ベース71及びカバー部材72は、難燃性のポリアミド、耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの樹脂により成形されている。上述した樹脂と同等以上の特性が得られるのであれば、樹脂以外の材料を適用してもよい。樹脂ベース71には、熱応動素子5及びPTCサーミスター6などを収容するための収納部73及び可動片4を収納するための開口73a,73bなどが形成されている。なお、樹脂ベース71に組み込まれた可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6の端縁は、収納部73の内部に形成されている枠によってそれぞれ当接され、熱応動素子5の逆反り時に案内される。
また、樹脂ベース71は、可動片4の貫通穴45に挿通される突起74aと、可動片4を位置決めするための一対の位置決め部75と、可動片4の端子41を外部に露出させるための窓76を有する。突起74aは、貫通穴45に対応する形状に形成され、樹脂ベース71を補強する。突起74aの高さすなわち突出量は、可動片4の厚みより大きく設定され、カバー部材72の裏面には、突起74aの頂部に対応する凹部が必要に応じて設けられる。位置決め部75は、可動片4のくびれ部49に対応する形状に設けられている。すなわち、位置決め部75は、くびれ部49の近傍において切除された部分に介在し、樹脂ベース71を補強すると共に、カバー部材72の当接部79と溶着されて、ケース7の剛性・強度を高める。
カバー部材72には、カバー片8がインサート成形によって埋め込まれている。カバー片8は、上述したリン青銅等を主成分とする金属板又はステンレス鋼等の金属板をプレス加工することにより形成される。カバー片8は、図2及び図3に示すように、可動片4の上面と適宜当接し、可動片4の動きを規制すると共に、カバー部材72のひいては筐体としてのケース7の剛性・強度を高めつつブレーカー1の小型化に貢献する。
図1に示すように、固定片2、可動片4、熱応動素子5及びPTCサーミスター6等を収容した樹脂ベース71の開口73a等を塞ぐように、カバー部材72が、樹脂ベース71の上面に装着される。樹脂ベース71とカバー部材72とは、例えば超音波溶着によって接合される。
図2は、通常の充電又は放電状態におけるブレーカー1の動作を示している。通常の充電又は放電状態においては、熱応動素子5は初期形状を維持し(逆反り前であり)、固定接点21と可動接点3は接触し、可動片4の弾性部43などを通じてブレーカー1の両端子22、41間は導通している。可動片4の弾性部43と熱応動素子5とは接触しており、可動片4、熱応動素子5、PTCサーミスター6及び固定片2は、回路として導通している。しかし、PTCサーミスター6の抵抗は、可動片4の抵抗に比べて圧倒的に大きいため、PTCサーミスター6を流れる電流は、固定接点21及び可動接点3を流れる量に比して実質的に無視できる程度である。
図3は、過充電状態又は異常時などにおけるブレーカー1の動作を示している。過充電又は異常により高温状態となると、PTCサーミスター6が過熱され、動作温度に達した熱応動素子5は逆反りし、可動片4の弾性部43が押し上げられて固定接点21と可動接点3とが離反する。このとき、固定接点21と可動接点3の間を流れていた電流は遮断され、僅かな漏れ電流が熱応動素子5及びPTCサーミスター6を通して流れることとなる。PTCサーミスター6は、このような漏れ電流の流れる限り発熱を続け、熱応動素子5を逆反り状態に維持させつつ抵抗値を激増させるので、電流は固定接点21と可動接点3の間の経路を流れず、上述の僅かな漏れ電流のみが存在する(自己保持回路を構成する)。この漏れ電流は安全装置の他の機能に充てることができる。
過充電状態を解除し、又は異常状態を解消すると、PTCサーミスター6の発熱も収まり、熱応動素子5は復帰温度に戻り、元の初期形状に復元する。そして、可動片4の弾性部43の弾性力によって可動接点3と固定接点21とは再び接触し、回路は遮断状態を解かれ、図2に示す導通状態に復帰する。
図4は、通常の充電又は放電状態におけるブレーカー1の別の断面を示す。ブレーカー1のケース7の樹脂ベース71の底面には、凹部91(後述する図5参照)が形成されており、図4は、凹部91が含まれる断面である。
図5は、ブレーカー1を構成するケース7の樹脂ベース71及び固定片2の底面を示す。固定片2の支持部23は、樹脂ベース71の底面に露出している。樹脂ベース71の外底面の隅部の近傍には、周辺部分から陥没する凹部91,93が形成されている。
凹部91は、ゲート跡92を収容する。ゲート跡92は、金型のゲート内で硬化し離型時又はその後切断された樹脂材料の痕跡であり、凹部91の底面から若干量突出する。ゲート跡92の先端が樹脂ベース71の底面から突出しないように、凹部91の深さが設定される。また、凹部91の半径は、ゲートの径に応じて設定される。
凹部93は、凸状の刻印94の周辺に形成される。図5においては、一例として文字列”AA”の刻印94が、凹部93の底面から突き出して形成されている。刻印94が表す文字列によって、例えばブレーカー1の品番や生産ロット番号を示すことができる。ゲート跡92と同様に、刻印94の先端が樹脂ベース71の底面から突出しないように、凹部93の深さ及び刻印94の突出量が設定される。また、凹部93の形状及び大きさは、刻印94に応じて設定される。なお、ここでは刻印94の形態として文字列を例示しているが、記号、図形等によって凹部93や刻印94を形成しても同等の効果を得ることができる。
加工の容易性を考慮すると、通常であれば、固定片2は、支持部23において矩形の形状に形成される。この矩形の形状は、図5において固定片2の仮想の端縁23zとして一点鎖線で示される。なお、固定片2の仮想の端縁23zが含まれる矩形は、PTCサーミスター6等の他の部材を考慮に入れて、固定片2が備えるべき形状、寸法、機能などから推定できる。本実施形態のブレーカー1は、図5において破線のハッチングで示した退避部25を有する。本実施形態のブレーカー1は、支持部23の仮想の端縁23zから内側に退避する退避部25を設けることにより、固定片2の端縁と樹脂ベース71の凹部91,93との距離D(それぞれの最短距離)が所定の第1距離D1以上になるように構成されている。すなわち、固定片2の仮想の端縁と樹脂ベース71の凹部91,93との距離Dが第1距離D1未満となる場合であっても、退避部25は、固定片2の端縁と樹脂ベース71の凹部91,93との距離Dが第1距離D1以上隔たるように、凹部91,93から退避する。第1距離D1は、樹脂ベース71を形成する樹脂材料の金型内における流れ具合や、樹脂ベース71の機械的強度、ブレーカー1の耐電圧、温度特性等を考慮して、さらにはUL(Underwriters Laboratories Inc.)規格やTUV(技術検査協会)規格等の各種の安全規格において使用する樹脂材料ごとに定められている樹脂部分の最小肉厚と同程度以上に設定される。より具体的には、第1距離D1は、例えば0.1mm〜0.40mmに設定される。ブレーカー1の小型化を実現するためには、第1距離D1を上記上限値以下に設定することが望ましい。また、樹脂材料の流れ不良を抑制すると共に、樹脂ベース71の機械的強度、ブレーカー1の耐電圧等を確保するためには、第1距離D1を上記下限値以上に設定することが望ましい。
退避部25を設けることにより、固定片2の実際の端縁と凹部91,93との距離は、固定片2の仮想の端縁と凹部91,93との距離より大きくすることができる。従って、固定片2の実際の端縁と凹部91,93との距離が第1距離D1より長く確保されていれば、固定片2の仮想の端縁と凹部91,93との距離は、第1距離D1より短くなってもよい。なお、図5に示すように、退避部25と凹部91とが平面視(底面視)で一部が重複する場合は、固定片2の仮想の端縁と凹部91との距離は、負値として距離を比較することができる。
図5に示すように、退避部25によって退避された固定片2の端縁は、PTCサーミスター6の端縁に沿って形成されている。換言すれば、退避部25は、平面視で固定片2の端縁がPTCサーミスター6の端縁に沿うように、仮想の端縁から内側に退避して形成されている。本実施形態では、退避部25によって退避された固定片2の端縁は、PTCサーミスター6の端縁に対して、平面視で相似形となるように形成されている。すなわち、退避部25によって退避された固定片2の端縁は、PTCサーミスター6の端縁に沿って形成された沿端部26となる。また、図1及び図5に示すように、樹脂ベース71に形成されている枠73dが、PTCサーミスター6の端縁に対向して形成されているので、退避部25によって退避された固定片2の端縁(沿端部26)は、枠73dに沿って形成され、枠73dに対して、平面視で相似形となるように形成され、枠73dの外側で樹脂ベース71を構成する樹脂に埋設されている。ここで、相似形とは、両者の外形が略一致することを意味し、両者の輪郭が著しく相違しないように互いに近い曲率で形成されていればよい。また、その曲率は、退避部25によって退避された領域において一定とは限らず、部分的に異なっていてもよい。
退避部25においては、固定片2を形成する金属材料が除去されており、樹脂ベース71のインサート成形時に樹脂ベース71を形成する樹脂材料が充填されている。退避部25は、プレス加工によって形成される。金属材料が除去された部分には、樹脂材料が充填されるので、従来と同等の金型を使用して、樹脂ベース71を安価に成形することができる。退避部25によって、固定片2の端縁と樹脂ベース71の凹部91,93との距離Dを第1距離D1以上隔てることができるので、樹脂ベース71を成形する金型のキャビティ空間が局所的に狭くなることが抑制される。その結果、固定片2の端縁と凹部91,93との間における樹脂材料の充填不良やケース7の強度低下を抑制できる。
固定片2の端縁に退避部25を設けることにより、固定片2の端縁と凹部91,93との距離Dを第1距離D1以上に確保しながら、凹部91,93の配置の自由度を高めることができ、凹部91,93を固定片2の突起24a,24bすなわちPTCサーミスター6の近傍に集約して配置することが可能になる。特に、本実施形態においては、退避部25によって退避された固定片2の端縁が、PTCサーミスター6の端縁に沿って形成されているので、凹部91,93をより一層PTCサーミスター6の近傍に集約して配置することが可能になる。これにより、ケース7ひいてはブレーカー1の小型化を図ることができる。
また、退避部25によって退避された固定片2の端縁が、枠73dの外側で樹脂ベース71を構成する樹脂に埋設されているので、固定片2の端縁を樹脂ベース71に強固に結合させることができる。また、退避部25によって退避された固定片2の端縁が、枠73dに沿って形成され、枠73dに対して、平面視で相似形となるように形成されているので、枠73dの外側において固定片2が樹脂ベース71に埋設される領域の分布を均一にすることができる。これにより、固定片2及び樹脂ベース71に応力が集中することを回避でき、ブレーカー1の強度を高めることができる。枠73dが、PTCサーミスター6の端縁の側面に対向するように形成されているので、PTCサーミスター6の位置及び姿勢が適正に維持される。これにより、PTCサーミスター6と固定片2の突起24a,24bとの接触状態が安定し、上述したPTCサーミスター6による自己保持回路を有効に機能させることができる。
また、凹部91,93の配置の自由度を高めて、PTCサーミスター6の近傍に凹部91,93を集約して配置することにより、可動片4の一部(特に可動片4の段曲げ部46)と凹部91,93との距離Dを長く設定することができる。これにより、可動片4と凹部91,93との距離Dを第2距離D2(図4参照)以上に確保して、可動片4と凹部91,93との間における樹脂材料の充填不良やケース7の強度低下を抑制しつつ、ブレーカー1の小型化を図ることが容易となる。第2距離D2は、第1距離D1と同様に、樹脂ベース71を形成する樹脂材料の金型内における流れ具合や、樹脂ベース71の強度、ブレーカー1の耐電圧さらには各種の安全規格等を考慮して定められる。
ところで、固定片2に退避部25を設けて、沿端部26を仮想の端縁から内側に退避させた場合、支持部23の先端近傍において、固定片2と樹脂ベース71との接触面積が減少し、両者の結合力が低下することが懸念される。従って、図17において従来技術を示したように、熱応動素子5が熱によって逆反り変形し電流を遮断している状態にあっては、樹脂ベース71から固定片2の先端部23aが離反し、固定片2の支持部23が大きく変形する傾向が強くなる。
そこで、本実施形態は、固定片2の端縁である沿端部26において、固定片2の表裏両面から樹脂ベース71に埋設される埋設部26aを設けて、固定片2と樹脂ベース71との結合力を確保するように構成されている。また、退避部25が設けられていない支持部23の先端部23a及び側端部23bから延出された延出部27a,27b(図6等参照)が形成され、固定片2と樹脂ベース71との接触面積、すなわち両者の結合力を確保するように構成されている。なお、延出部27a,27bの形態は特に限定されることなく、例えば櫛歯状に延出されていてもよい。また、延出部27a,27bの個数、位置、寸法及び角度(露出部23dに対する傾斜部29a,29bの起立角度)は、特に限定されることなく、固定片2と樹脂ベース71との間で必要とされる結合力等に応じて適宜設定される。
図6は、上述のごとく構成されたブレーカー1を裏面側から視た斜視図である。固定片2のうち、樹脂ベース71に埋設された部分は、破線で示される。図7は、熱応動素子5の変形時における固定片2の先端近傍を拡大して示す。図8は、固定片2がインサートされた樹脂ベース71の断面を破断して示す。また、図9において、(a)は固定片2を表面側から視た斜視図、(b)は固定片2を裏面側から視た斜視図である。固定片2は、支持部23の裏面に形成され、樹脂ベース71の外部に露出する露出部23dと、露出部23dの先端縁(端子41側の端縁)から突き出されて、樹脂ベース71に埋設される埋設部26aと、支持部23の先端部23aから延出された延出部27aと、互いに対向する一対の側端部23bから延出された延出部27b等を有する。露出部23dは、樹脂ベース71外底面においてケース7の外部に露出する。固定片2をインサートして樹脂ベース71を成形する際に、樹脂ベース71の外底面から外部に支持部23の裏面の一部が露出して、その後の塗装やコーティング等の2次加工により、当該部分が覆われていても、露出部23dであることには変わりない。
埋設部26aは、露出部23dに対して階段状に形成され、その表裏両面から樹脂ベース71に埋設される。埋設部26aは、露出部23dの全幅すなわちブレーカー1の短手方向(弾性部43が延出されている方向に垂直な方向)における露出部23dの一端から他端に亘って連続的に形成されている。埋設部26aを階段状に形成するために、埋設部26aには、段差部26bが形成される。段差部26bは、埋設部26aと露出部23dとの境界に設けられ、露出部23dに対して埋設部26aを段違いに配置する。埋設部26aは、例えば固定片2の先端を精密プレス加工(コイニング)することにより形成できるが、切削加工等によって形成されていてもよい。本実施形態では、埋設部26aが設けられていることに伴い、延出部27aは、埋設部26aの先端から延出されるが、埋設部26aを経ることなく、露出部23dから直接的に延出されていてもよい。
延出部27a,27bの基端は、樹脂ベース71の内方に向かって屈曲又は湾曲される。すなわち、固定片2は、延出部27a,27bの基端に、内方に向かって屈曲又は湾曲された曲部28a,28bを有する。延出部27a,27bの基端に曲部28a,28bが形成されていることに伴い、延出部27a,27bの外面は、その先端が樹脂ベース71の内方に向かって傾斜される。すなわち、支持部23の外面には、樹脂ベース71の内方に向かって傾斜され、樹脂ベース71に埋設される傾斜部29a,29bが形成されている。また、ブレーカー1の長手方向における延出部27bの端縁27c及び27dは、長手方向(端子22又は端子41が延出されている方向)に突き出される。なお、本実施形態において、延出部27b及び傾斜部29bは、支持部23の側端部23bの全体に亘って形成されているが、側端部23bの一部(例えば、突起24bの近傍等)に部分的に形成されていてもよい。また、段差部26bによって露出部23dに対して段違いに配置された埋設部26aが設けられているので、延出部27aは、曲部28aを介することなく、埋設部26aとは同一の平面上に形成されていてもよい。
図7及び図8に示すように、樹脂ベース71の外面(同図において下側の面)は、固定片2の支持部23の外面、すなわち露出部23dと略同一の平面上に形成されている。従って、基端に曲部28a,28bを有する延出部27a,27bの外面には、インサート成形の際、樹脂ベース71を構成する樹脂材料が流れ込んで、係止部96a,96bが形成される。また、段差部26bを有する埋設部26aの外面には、インサート成形の際、樹脂ベース71を構成する樹脂材料が流れ込んで、図7に示す断面では、係止部96aに連続して係止部96cが形成される。また、係止部96cは、沿端部26に沿って連続的に形成される。
このように形成された係止部96a,96b,96cによって傾斜部29a,29bが係止され、係止部96cによって埋設部26aが係止される。特に本実施形態にあっては、延出部27a,27b及び埋設部26aは、その表裏両面において枠73dの外周部及び係止部96a,96b,96cに挟み込まれた状態で、樹脂ベース71に埋設される。その結果、延出部27a,27b及び埋設部26aと樹脂ベース71との結合力は強固なものとなり、両者間における気密性が高められる。インサート成形の際、延出部27a,27b及び埋設部26aの表裏両面側のキャビティ空間に流れ込んだ高温の樹脂材料が、冷却により収縮することにより、延出部27a,27b及び埋設部26aの表裏両面から延出部27a,27b及び埋設部26aを挟み込む力が生じ、両者を強固に密着させるからである。なお、本実施形態においては、傾斜部29a,29bによって、延出部27a,27bの外面が樹脂ベース71の内方に向かって傾斜されているので、係止部96a,96b,96cへの樹脂材料の流れ込みも良好となり、係止部96a,96b,96cによる支持部23の先端部23a、側端部23b及び埋設部26aの係止作用が十分に得られる。
本実施形態において、固定片2の突起24aは、先端部23aの近傍に設けられ、突起24bは、側端部23bの近傍に設けられる。従って、傾斜部29aは、突起24aに隣接する場所に形成され、傾斜部29bは、突起24bに隣接する場所に形成される。
また、図7に示すように、先端部23aの近傍に位置される突起24aは、熱応動素子5が変形したとき、熱応動素子5とPTCサーミスター6との接触領域50と平面視で重複する領域に形成されている。従って、熱応動素子5の変形時にPTCサーミスター6が、熱応動素子5から押圧力を受けたとき、PTCサーミスター6を回転させるモーメントを発生させることなく、上記押圧力を突起24aによって受けることができる。また、突起24aに対する接触領域50の微小なずれによりモーメントが発生する場合であっても、その値を小さくすることができる。これにより、熱応動素子5の変形時にPTCサーミスター6の姿勢が安定する。なお、本実施形態においては、ブレーカー1の小型化を図りつつ、熱応動素子5の変形時すなわち電流の遮断時に固定接点21からの可動接点3の距離を確保するために、上述のごとく接触領域50と突起24aの位置関係を設定しているが、熱応動素子5の変形時にPTCサーミスター6の姿勢を安定させる作用効果を得るためには、熱応動素子5とPTCサーミスター6との接触領域50が複数の突起24a及び突起24bによって囲まれた領域内に位置するように、構成すればよい。
以上のように、本実施形態のブレーカー1によれば、露出部23dの先端縁から突き出された埋設部26aが、固定片2の表裏両面から樹脂ベース71に埋設されているので、固定片2と樹脂ベース71との結合強度及び気密性が高められ、ブレーカー1の内部空間への水蒸気及びフラックス等の侵入が抑制される。これにより、熱応動素子5等の錆を防止でき、熱応動素子5の正常な熱変形動作を維持し、ブレーカー1の温度特性を良好なものとすることができる。
また、固定片2の裏面において、埋設部26aに段差部26bが形成されているので、段差部26bを形成する際に除去された領域に樹脂ベース71を構成する材料を充填することができる。これにより、樹脂ベース71の肉厚を増やすことなく、埋設部26aを固定片2の表裏両面から樹脂ベース71に埋設させることが可能となり、樹脂ベース71ひいてはケース7の薄型化を図ることができる。
また、埋設部26aが、露出部23dの先端縁の全幅に亘って形成されているので、先端縁の全幅に亘って固定片2と樹脂ベース71との結合強度及び気密性を高めることができ、熱応動素子5等の錆をより一層防止できるようになる。
また、固定片2の支持部23の表面が、ケース7の内部の収容空間に露出し、PTCサーミスター6と電気的に接触しているので、熱応動素子5が熱変形することにより、固定接点21から可動接点3が離反しているときに、PTCサーミスター6に微弱な電流が流れ、可動片4と固定片2を導通させ、上述した自己保持回路を構成できる。また、ケース7の肉厚を薄く構成できるので、さらなるブレーカー1の薄型化を図ることができる。
また、固定片2が、PTCサーミスター6の端縁に沿って形成された沿端部26を有するので、固定片2の小型化を図ることができ、ブレーカー1を容易に小型化できるようになる。
また、樹脂ベース71が、周辺部分から陥没する凹部91,93を有し、沿端部26が、樹脂ベース71の凹部91,93から退避して形成されている構成によれば、樹脂ベース71に凹部91,93を設けることに伴う樹脂材料の充填不良を抑制できる。従って、凹部91,93の位置、大きさ等の自由度を高めることができる。
また、固定片2が、延出部27a,27bの基端すなわち傾斜部29a,29bの基端に、樹脂ベース71の内方に向かって曲げられた曲部28a,28bを有するので、簡素な構造で傾斜部29a,29bを容易かつ安価に形成できる。
また、支持部23にPTCサーミスター6の側に突出してPTCサーミスター6と当接する複数の突起24a,24bが形成され、傾斜部29aが、突起24aに隣接する場所に形成されているので、熱応動素子5の変形時にPTCサーミスター6から突起24aにかかる力Fを傾斜部29aを介して樹脂ベース71に効率よく伝達し、支持部23の先端部23aの変形をより一層抑制することができる。同様に、傾斜部29bが、突起24bに隣接する場所に形成されているので、熱応動素子5の変形時にPTCサーミスター6から突起24bにかかる力Fを一対の傾斜部29bを介して樹脂ベース71に効率よく伝達し、支持部23の変形をより一層抑制することができる。このように、傾斜部29a又は29bが少なくともいずれかの突起24a又は24bに隣接する場所に形成されているので、熱応動素子5の変形時にPTCサーミスター6から突起にかかる力を傾斜部29a又は29bを介してケース7に効率よく伝達し、支持部の変形をより一層抑制することができる。
また、突起24aが、熱応動素子5が変形したとき、熱応動素子5とPTCサーミスター6との接触領域50と平面視で重複する領域に形成されているので、熱応動素子5の変形時にPTCサーミスター6及び熱応動素子5の姿勢が安定する。これにより、熱応動素子5の変形時における可動接点3の位置、姿勢が安定し、固定接点21と可動接点3との位置関係が安定する。従って、ブレーカー1の温度特性をより一層良好に維持することができる。
また、傾斜部29aが、支持部23の先端部23aに突出して形成されているので、支持部23の先端部23aの変形を抑制することができる。また、傾斜部29bが、支持部23の側端部23bに突出して形成されているので、支持部23の側端部23bの変形を抑制することができる。特に本実施形態においては、支持部23の先端部23a、側端部23b及び基端部(固定接点21の裏面側)、すなわち支持部23の周囲四方において、固定片2が樹脂ベース71に埋設されることになるので、支持部23の変形を効果的に抑制することができる。
(変形例)
図10は、固定片2の変形例である固定片2Aを裏面側から視た斜視図で示す。固定片2Aは、その裏面に、露出部23dに対して斜面状に形成された埋設部26cを有する点で、固定片2とは異なる。斜面状に形成された埋設部26cは、その表裏両面から樹脂ベース71に埋設される。埋設部26cは、露出部23dの全幅すなわちブレーカー1の短手方向における露出部23dの一端から他端に亘って形成されている。本変形例において、埋設部26cは、延出部27aによって分断されているが、図9に示した固定片2と同様に、延出部27aの肉厚を薄く形成することにより、斜面状の埋設部26cを露出部23dの一端から他端に亘って連続的に形成してもよい。埋設部26cを斜面状に形成するために、埋設部26cには、露出部23dに対して傾斜する傾斜部26dが形成される。露出部23dに対する傾斜部26dの角度は、傾斜部26dの法線が固定片2の裏面から表面に向かって厚み方向の成分を有するように設定されていればよい。例えば、固定片2の側壁に傾斜部26dを形成する場合、露出部23dを構成する固定片2の底面と傾斜部26dとのなす角が鈍角であればよい。
埋設部26cは、埋設部26aと同様に、例えば固定片2の先端を精密プレス加工(コイニング)することにより形成できるが、切削加工等によって形成されていてもよい。固定片2Aをインサートして樹脂ベース71を成形する際に、傾斜部29a,29bの外側に樹脂ベース71を構成する樹脂材料が流れ込み、係止部96a,96bが形成される点は、固定片2と同様である。また、同様に、傾斜部26dの外側にも、樹脂ベース71を構成する樹脂材料が流れ込み、係止部96cが形成され、埋設部26cが固定片2の表裏両面から埋設され係止される。
このような構成を有するブレーカーにおいても、固定片2を有するブレーカー1と同様に、露出部23dの先端縁から突き出された埋設部26cが、固定片2Aの表裏両面から樹脂ベース71に埋設されているので、固定片2Aと樹脂ベース71との結合強度及び気密性が高められ、ブレーカー1の内部空間への水蒸気及びフラックス等の侵入が抑制される。これにより、熱応動素子5等の錆を防止でき、熱応動素子5の正常な熱変形動作を維持し、ブレーカー1の温度特性を良好なものとすることができる。また、この変形例においては、固定片2Aの裏面において、埋設部26cに傾斜部26dが形成されているので、傾斜部26dの外側に樹脂ベース71を構成する材料を充填することができる。これにより、樹脂ベース71の肉厚を増やすことなく、埋設部26cを固定片2の表裏両面から樹脂ベース71に埋設させることが可能となり、樹脂ベース71ひいてはケース7の薄型化を図ることができる。
(変形例)
図11は、固定片2の別の変形例である固定片2Bを裏面側から視た斜視図で示す。固定片2Bは、延出部27a,27b及び曲部28a,28bが省略されている点で、図9に示した固定片2とは異なる。また、これに伴い、埋設部26aの表面は、平坦に形成されることになる。既に述べたように、露出部23dの先端縁から段差部26bを伴う埋設部26aが延出され、埋設部26aが固定片2の表裏両面から樹脂ベース71に埋設されることにより、固定片2Aと樹脂ベース71との結合強度及び気密性が高められる。従って、固定片と樹脂ベースとの間で、高い結合強度及び気密性が要求されない場合にあっては、固定片2Bのように、固定片2から延出部27a,27b及び曲部28a,28bを省略することができる。
なお、図11においては、図9に示した固定片2から、延出部27a,27b及び曲部28a,28bを省略した形態を示したが、図10に示した固定片2Aから、延出部27a,27b及び曲部28a,28bを省略した形態としてもよい。この場合、図11に示す埋設部26a及び段差部26bに替えて、埋設部26c及び傾斜部26dが適用される。また、図9における固定片2から延出部27a,曲部28a又は延出部27b,曲部28bを省略した形態としてもよい。また、図10における固定片2Aから延出部27a,曲部28a又は延出部27b,曲部28bを省略した形態としてもよい。
この変形例においては、固定片2から、延出部27a,27b及び曲部28a,28bを省略することにより、ブレーカー1の小型化を図ることができる。また、埋設部26aの表面が、平坦に形成されているため、樹脂ベース71の内部において埋設部26aがその表面側に突出しないので、埋設部26aと熱応動素子5や可動片4等の構成部品との接触・干渉等を防止できる。これにより、ブレーカー1の薄型化を図ることができる。
(変形例)
図12は、固定片2Bの変形例である固定片2Cを裏面側から視た斜視図で示す。固定片2Cは、露出部23dの側端縁23e及び基端縁23fに、露出部23dに対して階段状に形成された埋設部26e及び埋設部26fが形成されている点で、図11に示した固定片2Bとは異なる。埋設部26eは、露出部23dの全長すなわちブレーカー1の長手方向における露出部23dの一端から他端に亘って連続的に形成されている。また、埋設部26fは、ブレーカー1の短手方向における露出部23dの両端から固定接点21の近傍の段曲げ部に亘って連続的に形成されている。埋設部26e,26fを階段状に形成するために、埋設部26eには段差部26gが、埋設部26fには段差部26hがそれぞれ形成される。
段差部26gは、埋設部26eと露出部23dとの境界に設けられ、露出部23dに対して埋設部26eを段違いに配置する。段差部26hは、埋設部26fと露出部23dとの境界に設けられ、露出部23dに対して埋設部26fを段違いに配置する。段差部26g,26hは、埋設部26aと同様に加工される。なお、埋設部26e,26fは、階段状に形成された形態に限られることなく、埋設部26cと同様に、斜面状に形成されていてもよい。この場合、段差部26g,26hに替えて、傾斜部26dと同等の傾斜部が形成される。
この変形例においては、露出部23dの側端縁23eに埋設部26eが形成されているので、露出部23dの側端における固定片2Cと樹脂ベース71との結合強度及び気密性が高められる。その結果、固定片2において、支持部23の側端部23bから延出された延出部27bを省略しても、露出部23dの側端から水蒸気及びフラックス等が侵入することを抑制できる。また、露出部23dの基端縁23fに埋設部26fが形成されているので、露出部23dの基端における固定片2Cと樹脂ベース71との結合強度及び気密性が高められる。以上により、露出部23dの端縁全域に亘って、固定片2Cと樹脂ベース71との結合強度及び気密性を高めることができ、熱応動素子5等に錆が発生することをより一層防止しうる。なお、ブレーカー1の使用環境等が極めて過酷な場合にあっては、埋設部26a、埋設部26e及び埋設部26fによっては、固定片2Cと樹脂ベース71との間で十分な結合強度及び気密性が得られないことも考えられる。このような場合は、固定片2と同様に、延出部27a,27b等を適宜配設すればよい。
(変形例)
図13は、固定片2Aの変形例である固定片2Dの露出部23dを裏面側から拡大して視た斜視図で示す。固定片2Dは、延出部27aの両側に斜面状に形成された第1埋設部26hと、延出部27bの近傍に斜面状に形成された第2埋設部26iと、第1埋設部26h及び第2埋設部26iを段違いに配置する段差部26mと、露出部23d及び第2埋設部26iを段違いに配置する段差部26nとを有する点で、固定片2Aとは異なる。これに伴い、第1埋設部26hを斜面状に形成するために、第1埋設部26hには、露出部23dに対して傾斜する第1傾斜部26jが形成され、第2埋設部26iを斜面状に形成するために、第2埋設部26iには、露出部23dに対して傾斜する第2傾斜部26kが形成される。
第1斜面部26h、第2斜面部26i、段差部26m及び段差部26nと露出部23dとの境界は、直線状に形成される。第1埋設部26hのブレーカー1の長手方向の先端は、円弧状であるため、第1傾斜部26jのブレーカー1の長手方向の長さは、延出部27aの両端から延出部27bにかけて漸増し、その後漸減する。第1埋設部26hと第2埋設部26iとは、隣接する端縁同士で高さが異なり、段差部26mを介して段違いに配設される。また、段差部26nは、第2埋設部26iのブレーカー1の短手方向の外側端縁において、露出部23dと第2埋設部26とを段違いに配設する。このように、第1傾斜部26j、第2傾斜部26k、段差部26m、及び段差部26nを組み合わせて第1埋設部26h及び第2埋設部26iが構成される。
図10に示した固定片2A、図11に示した固定片2B、図12に示した固定片2C及び図13に示した固定片2Dのいずれの変形例においても、PTCサーミスターの端縁に沿って沿端部26を形成することにより、ブレーカー1の小形化を実現でき、かつ樹脂ベース71と固定片2等との結合力を高めて、気密性を高めることができる。
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく、少なくとも固定片2が、その裏面において樹脂ベース71の外部に露出する露出部23dと、露出部23dの先端縁から突き出されて樹脂ベース71に埋設される埋設部26aとを有し、埋設部26aが、固定片2の表裏両面から樹脂ベース71に埋設されていればよい。
また、延出部27aは、沿端部26に沿ってブレーカー1の短手方向に拡張され、延出部27bと連結されている形態であってもよい。
また、固定片2と樹脂ベース71との結合強度及び気密性を高めるために、埋設部26a,26c,26e,26f,第1埋設部26h及び第2埋設部26i等に、微小な凹部、又は凸部を形成し、埋設部26a,26c,26e,26f,第1埋設部26h及び第2埋設部26i等と樹脂ベース71との接触面積を確保するように構成してもよい。
また、図1等においては、可動片4は、貫通穴45、段曲げ部46及びくびれ部49の構成を有する形態であるが、これらの構成うちのいずれか又は全てが省略されていてもよい。例えば、貫通穴45を省略する場合は、樹脂ベース71の突起74aも省略される。また、段曲げ部46が省略される場合は、端子41が平坦な形状となる。この構成においては、段曲げ部46を省略することにより、可動片4及び樹脂ベース71の長手方向の寸法を小さくして、ブレーカー1のさらなる小型化を図ることができる。また、くびれ部49が省略される場合は、可動片4は、当接部42から端子41に亘って等幅に形成され、これに伴い樹脂ベース71の位置決め部75の形状も変更される。このように、可動片4の当接部42並びに樹脂ベース71の当接部74及びカバー部材72の当接部79等の形状は、図1等に示したものに限られず、適宜変更可能である。また、熱応動素子5及び収納部73等の形状も、図1等に示したものに限られず、適宜変更可能である。
また、支持部23に設けられる突起の数は、特に限定されない。例えば、突起24aのみが設けられる構成であってもよいし、固定接点21に隣接する箇所や支持部23の中央部等に、別の突起が追加されていてもよい。さらにまた、PTCサーミスター6と固定片2との間に別部品を配置する構成であってもよい。この場合、支持部23は、上記別部品を介してPTCサーミスター6を支持する。また、支持部23において、一部又は全ての突起が省略されていてもよい。
また、樹脂ベース71とカバー部材72との接合手法は、超音波溶着に限られることなく、両者が強固に接合される手法であれば、適宜適用することができる。例えば、液状又はゲル状の接着剤を塗布・充填し、硬化させることにより、両者が接着されてもよい。また、ケース7は、樹脂ベース71とカバー部材72等によって構成される形態に限られることなく、2個以上の部品によって可動片4が挟まれて保持される形態であればよい。この場合、一方が第1ケース、他方が第2ケースとなる。
また、可動片4をバイメタル又はトリメタル等によって形成することにより、可動片4と熱応動素子5を一体的に形成する構成であってもよい。この場合、一体化された可動片に伝熱部が形成されることになり、ブレーカーの構成が簡素化されて、さらなる小型化を図ることができる。
また、特開2005−203277号公報に示されるような、当接部42又はその近傍において、可動片4が端子41の側と可動接点3の側に構造的に分離されている形態に、本発明を適用してもよい。また、アームターミナルと可動アームとが溶接等によって固定されていてもよい。この場合において、当接部42及び端子41は、固定片2等と共に樹脂ベース71にインサート成形されていてもよい。
また、本発明のブレーカー1は、2次電池パック、電気機器用の安全回路等にも広く適用できる。図14は2次電池パック100を示す。2次電池パック100は、2次電池101と、2次電池101の出力端回路中に設けたブレーカー1とを備える。図15は電気機器用の安全回路102を示す。安全回路102は2次電池101の出力回路中に直列にブレーカー1を備えている。