以下、本発明の芯線加工準備装置の実施形態について図を参照して説明する。本実施形態の芯線加工準備装置(以下「本装置」という)は、先端の外側被覆が除去されて芯線が露出した多芯ケーブルから芯線を1本ずつ取り出して加工機に投入するとともに、加工後の芯線を加工機から取り出すまでの一連の工程を自動化するものである。
まず、図1および図10を参照して本装置1の構成概要を説明する。なお、これらの図は、回転テーブル13の回転位置が異なる点で相違している。また、各図において座標軸(X軸、Y軸、Z軸)が表示されている場合には、以下、その図に記載されている座標の軸名称のことを、単に、「X軸」、「Y軸」または「Z軸」と表記する場合がある。
<本装置の構成概要>
図1および図10に示すように、本装置1は、ケーブル保持部2、スプリット機構部3、整列機構部4、取り出し機構部5、送出機構部6、測長機構部7、退避機構部8および制御部9により構成されている。これらは、主に、基台11の上に設けられており、そのうちの、ケーブル保持部2、整列機構部4、送出機構部6および測長機構部7は、ベーステーブル12上で回転する回転テーブル13に位置している。これらを回転テーブル13により回転させる理由については後述する。
基台11は、後で参照する図27に示すように、図示されていない装置枠の上に固定されている。図1に表されていない取り出し機構部5および退避機構部8は、この装置枠内、つまり基台11の下に設けられており、図10に示すように、回転テーブル13が45度回転した場合にこれらが切欠部11aを介して上昇し、基台11上に現れるように構成されている。また、制御部9も基台11上ではなく、図27に示すように装置枠の側部に設けられている。
これら各装置は、図略の電源装置から駆動電力が供給されて、制御部9によって各動作が制御されている。そのため、図1や図10には特に図示されていないが、各装置には電源線や制御線が接続されていることに注意されたい。なお、回転テーブル13上に設けられるケーブル保持部2等に接続される電源線や制御線は、ハーネスホルダ17内に敷設されている。ハーネスホルダ17は、回転テーブル13の回転に伴って平面的に可動する構造体で、ラック18上に載置されている。
ベーステーブル12は、回転テーブル13の下側に位置しており、図略の駆動機構によってガイドレール15上を移動可能に構成されている。本装置1では、基台11に隣接する加工装置台19に向けて2本のガイドレール15が敷設されている。そのため、回転テーブル13上に設けられたケーブル保持部2等は、回転テーブル13による回転に加えて加工装置台19の方向(図1に示す座標軸表示におけるX軸の矢印方向)にも移動する。
加工装置台19は、基台11に隣接して設けられている。この加工装置台19は、多芯ケーブル100の芯線を加工する加工機200を固定する基台である。本実施形態では、加工機200は、例えば、端子等を芯線に圧着する圧着装置であるが、多芯ケーブルの芯線を加工する装置であれば特に限定されない。なお、図1や図10に表されている符号201は、加工時に芯線を投入する加工機200の投入口を示す。
<ケーブル保持部、スプリット機構部>
次に、ケーブル保持部2およびスプリット機構部3について図2〜図7を参照して説明する。まずケーブル保持部2の構成を図2および図3に基づいて説明する。ケーブル保持部2は、回転テーブル13上に設けられており、回転テーブル13の回転に伴って基台11上における位置が変動する。図2に示すケーブル保持部2は、回転テーブル13が準備位置に対して時計回りに90度回転した状態を示すもので、この状態においては、ケーブル保持部2はスプリット機構部3に対向する(図1参照)。
図2に示すように、ケーブル保持部2は、多芯ケーブル100を回動駆動可能に保持する装置で、保持ユニットと駆動ユニット29により構成されている。保持ユニットは、ホールドスリーブ28を除いて、矩形箱状のケース21内に収容されている。駆動ユニット29は、図略のモータやその出力軸に接続される減速ギヤ等が収容される駆動ユニットである。モータは、正転および逆転可能に構成されており、シーケンサ等の制御部9から入力される制御信号によって回転制御されている。駆動ユニット29の出力は、ドライブシャフト24を介して保持ユニットのケース21に入力される。
図3に、保持ユニットのケース21内の構成が図示されている。図3(A)には、ケース21を開けた状態の保持ユニットの斜視図、図3(B)には、ローラ25の部分においてローラ径の方向に切断した状態の断面図、それぞれが図示されている。
図3(A)に示すように、ケース21は、上下方向に上部ケース21aと下部ケース21bとに2分割可能に構成されており、長手方向に沿って保持する多芯ケーブル100が貫通し得るように両側に入力孔21cと出力孔21dが形成されている。上部ケース21aと下部ケース21bは、ヒンジ22を介して開閉可能に連結されており、また閉じた状態で上下の両ケース21a,21bをロック可能な留め金部も設けられている。本実施形態では、このようにケース21を上下に分割することにより、多芯ケーブル100のセットを簡便かつ容易にしている。
出力孔21dが形成される側壁には、出力孔21dに連通する円筒状のホールドスリーブ28が取り付けられている。ホールドスリーブ28は、その内径が多芯ケーブル100の外径よりも僅かに大径に設定されている円筒形状部と、出力孔21dと連通する一端側に形成されてケース21に取り付け可能な円盤形状部と、により構成されている。本実施形態では、ケース21を上下2分割可能に構成しているため、ホールドスリーブ28もそれに合わせて軸方向に2分割、つまり縦割り可能に構成されている。
ホールドスリーブ28の他端側は、内径が変わることなく一端側の円筒形状よりも外径が小径に設定された薄肉の円筒形状に形成されている。この他端側からは、図2に示すように、束状の芯線102が突出して、整列機構部4や取り出し機構部5により芯線103に対する操作が行われる。そのため、ホールドスリーブ28の他端側は、このような操作の障害にならない外径に設定されている。これに対し、ホールドスリーブ28の一端側は、スプリット機構部3によるスプリット操作時における押圧等にも十分に耐え得る機械的強度を確保可能な肉厚や外径に設定されている。
図3(B)に示すように、下部ケース21bには、ドライブシャフト24が図略の軸受によって回動自在に支持されており、駆動ユニット29から入力される駆動力をドライブシャフト24に接続されたドライブギヤ23とベルト27によって上方の2つのローラ25に伝達可能に構成されている。この2つのローラ25は、下部ケース21b内に設けられており、上部ケース21aに回動自在に設けられるローラ25とともに3つのローラ25によって、多芯ケーブル100を回動可能に挟持している。ローラ25の外周面は、ゴム系樹脂で覆われている。
このようにケーブル保持部2を構成することによって、上部ケース21aを開けた状態の保持ユニットに多芯ケーブル100がセットされて上部ケース21aが閉じられると、多芯ケーブル100が回動可能に保持される。また、駆動ユニット29による駆動力がドライブシャフト24から入力されると、駆動力がベルト27を介してローラ軸26に伝達されるため、下部ケース21bの2つのローラ25が回転して多芯ケーブル100を回転させ、多芯ケーブル100の回転に従動して上部ケース21aのローラ25も回転する。これにより、多芯ケーブル100を安定して回転(回動)させることが可能になる。
なお、ケーブル保持部2にセットされる多芯ケーブル100は、前工程(例えば、準備工程)により先端100aの外側被覆101が除去されて複数の芯線103が露出しており、後端100b側が適当な長さで切断されている。複数の芯線103は、図略の工具や治具によって捩じれや撚れのないほぼ直線状に予めフォーミングされているため、図2や図3等に表される多芯ケーブル100の先端100aは、束状を成している(符号102)。なお、これは図面表現の一例に過ぎず、捩じれや撚れが除かれている芯線103であれば、必ずしも束状にまとめられている必要はない。
次に、スプリット機構部3の構成を図2および図4に基づいて説明する。スプリット機構部3は、基台11上に設けられている(図1参照)。そのため、基台11上において、スプリット機構部3の位置が変動することはない。
図2に示すように、スプリット機構部3は、ケーブル保持部2に保持された多芯ケーブル100の束状の芯線を平面的に整列させた状態で扇状に集める装置である。スプリット機構部3は、主に、機構部プレート31a上に設けられるスライドユニット31cと、スライドプレート31b上に設けられる駆動モータ32a、プッシャー33、プッシャーガイド34等と、により構成されている。スライドユニット31cは、図略のスライダを直線的に移動させる駆動機構で、制御部9から入力される制御信号によって移動量が制御されている。本実施形態では、このスライダにスライドプレート31bが取り付けられることで、スライドプレート31bを、Y軸方向に移動可能に構成している。ストッパ31dは、スライドプレート31bに当接して予め設定された範囲を超えたサブプレート31eの移動を規制している。
スライドプレート31b上には、駆動モータ32a、プッシャー33、プッシャーガイド34等が設けられている。駆動モータ32aは、例えば、ステッピングモータやサーボモータであり、プッシャーガイド34を回転させる駆動力を発生させ得るように、制御部9から入力される制御信号によって回転制御されている。駆動モータ32aの出力は、ドライブギヤ32b、ドライブシャフト32c、ベルト32d等を介して、プッシャーガイド34に伝達される。本実施形態では、プッシャー33、プッシャーガイド34等は、スライドプレート31bに取り付けられるサブプレート31e上に設けられている。
図4に、プッシャー33、プッシャーガイド34等の構成が図示されている。図4(A)にはプッシャー33の軸方向に沿って切断した場合の断面図、図4(B)にはプッシャー33の先端部分の側面図、図4(C)にはプッシャー33の先端部分の正面図、がそれぞれ図示されている。
図4(A)に示すように、プッシャー33は、先端部33aが円錐形状に加工された金属製の丸棒で、後端部33bには、雄ねじが形成されている。先端部33a側の直径は、例えば、多芯ケーブル100の外径とほぼ同様に設定されており、後端部33bの直径は、先端部33a側よりも小径に設定されている。このプッシャー33は、後端部33b側に設けられる圧縮コイルスプリング(以下「スプリング」)39によって、後述するように、プッシャーガイド34から先端部33a側が突出するように付勢される。そのため、本実施形態では、中間部33cに段差部を設けてスプリング39の一端側の当接を可能にしている。なお、プッシャー33は、先端部33aが先細りの錐体形状を有する棒状体であれば、例えば、断面形状が四角形や多角形の角棒でもよい。この場合の先端部33aは、角錐形状や円錐形状を取り得る。
プッシャーガイド34は、プッシャー33の先端部33a側の外周を筒状に包被する円筒部材で、プッシャー33の先端部33a側の外径よりも僅かに大径に設定された内径と、後述する移動ピン35bを保持し得る肉厚を確保可能な外径と、を有する。この先端部34aから、プッシャー33の先端部33aが突出する。移動ピン35bは、L字形状に形成されており、その大半がプッシャーガイド34内に収容されて、先端がプッシャーガイド34から立ち上がるように径方向外側に突出している。移動ピン35bは、プッシャーガイド34に固定されているため、プッシャーガイド34の回転とともにその位置が変動する。プッシャーガイド34の後端側には、大径部34bが形成されており、回動パイプ37の接合部37aに取り付け可能に構成されている。
プッシャーガイド34は、両端を除いて、中空の円錐台形状を成す先端ハウジング36aに覆われている。先端ハウジング36aの先細の先端側には、プッシャーガイド34の外周面に沿うように先端部34aに向けて延びる棒状の固定ピン35aが固定されている。また先端ハウジング36aの基部側は、後端ハウジング36bが接続されており、この後端ハウジング36b内で、プッシャーガイド34と回動パイプ37が接続されている。
固定ピン35aは、その太さが、例えば芯線103の外径程度に設定されており、また長さは、プッシャーガイド34の先端部34aから僅かに突出する程度(移動ピン35bの突出量よりも小さい)に設定されている。図4(B)および図4(C)に示すように、プッシャーガイド34に設けられる移動ピン35bは径方向外側に突出していることから、先端ハウジング36aに固定される固定ピン35aと重なる位置付近では両者が接触し得る。そのため、プッシャーガイド34は、その回転がこの固定ピン35aによって規制されて、固定ピン35aと接触する位置を除く範囲で回動する。
なお、本実施形態では、固定ピン35aよりも径方向内側に位置する移動ピン35bを回動可能なプッシャーガイド34に設けて移動ピン35bがプッシャーガイド34とともに回動し得るように構成したが、これとは逆に、プッシャーガイド34の外周にその外周を回動可能な機構を設けてそれに移動ピン35bを取り付けてこの移動ピン35bよりも径方向内側のプッシャーガイド34に固定ピン35aを固定してもよい。この場合、プッシャーガイド34は、回動しないように固定しても、また回動させてもよい。
回動パイプ37は、プッシャー33の中間部33cおよび後端部33b側の外周を筒状に包被する円筒部材で、ほぼ軸方向中央に設けられたドライブギヤ32bから駆動力を受けてプッシャーガイド34に伝達する。回動パイプ37の一端側には、プッシャーガイド34の大径部34bに取り付け可能な接合部37aが形成されており、他端側は、プッシャー33の後端部33bが貫通可能な貫通孔を有するキャップ37bにより覆われている。回動パイプ37の内径は、スプリング39の外径よりも僅かに大径に設定されており、プッシャー33の後端部33bを通したスプリング39が回動パイプ37に挿入される。
回動パイプ37内に挿入されたスプリング39の他端側が、キャップ37bの内側底部に当接することで、このキャップ37bから突出する後端部33bの突出量が多いほどスプリング39が圧縮されてその付勢力が高まる。つまり、この突出量を後端部33bの雄ねじに螺合するナット33dにより調整することで、プッシャー33を付勢するスプリング39の付勢力を任意に設定することが可能になる。スプリング39による加圧力は、多芯ケーブル100に含まれる芯線103の本数や線径等により左右されるため、多芯ケーブル100の種類に応じて適宜設定される。
回動パイプ37の両端は、サブプレート31eに固定される2つの軸受部38により、回動可能にサブプレート31eに支持されている。プッシャー33側に位置する軸受部38は、後端ハウジング36bを介して先端ハウジング36aに接続されている。これにより、プッシャーガイド34を覆う先端ハウジング36aは、後端ハウジング36bおよび軸受部38を介してサブプレート31eに支持される。
このように構成されたスプリット機構部3は、スプリット工程において、プッシャー33の先端部33aが多芯ケーブル100の先端100aと対向し、かつプッシャー33がケーブル保持部2に保持された多芯ケーブル100の軸Jと同軸に位置するように、ケーブル保持部2との位置関係が設定される。例えば、図5(A)や図6(A)に示すように両者が対向する。スライドユニット31cの制御によって、スライドプレート31bがケーブル保持部2の方向(図5に示す座標軸表示におけるY軸の矢印方向)に移動すると、やがてプッシャー33の先端部33aが多芯ケーブル100の束状の芯線102に接触する(図6(B))。スライドプレート31bがさらにY軸方向に移動すると、先端部33aが束状の芯線102に差し込まれてこれらの芯線103を傘の骨状に拡開させる。図6(A)に示すように、多芯ケーブル100の多くは、その軸Jを中心に複数の芯線103が配置されているため、先端部33aの頂部をこの中心に圧接させることによって、図5(B)や図6(C)に示すように、傘の骨状に複数の芯線103を拡開させることが可能になる。後述する芯線寄せ集め処理により複数の芯線103を扇状に寄せ集めてスプリット機構3に渡した後、スプリット機構部3は後退してケーブル保持部2から離れる。
なお、上述したようなY軸方向に移動可能なスライドプレート31bおよびスライダユニット31cに相当する移動機構を設けその上にケーブル保持部2を取り付けて、固定されたスプリット機構3に対して接近または離隔するようにケーブル保持部2を移動させてもよい。また、ケーブル保持部2およびスプリット機構3のいずれもY軸方向に移動可能に構成して両者を互いに接近または離隔させてもよい。
ここで、図5〜図7を参照して、スプリット工程における制御部9による制御処理(スプリット処理)の例を説明する。なお、制御部9の典型例はシーケンサであり、図7に示すスプリット処理は、予めプログラムされて制御部9のメモリにロードされている。
図7に示すように、スプリット処理では、ケーブル保持部2やスプリット機構部3を所定の原点位置にセットする等の所定の準備処理の後(S101)、前述した駆動モータ32a、プッシャー33やプッシャーガイド34等のスプリット機構が設けられたスプリットスライドユニット31cを図6(A)に示すようにケーブル保持部2の方向(図5に示すY軸の矢印方向)に前進させる(S103、スプリット機構前進処理)。次に、芯線103の重なりの有無を判断する(S105、芯線の重なり検出)。「芯線103の重なり」とは、芯線103が立体的に重なるため平面的に整列していない状態のことをいう。この判断は、例えば、スライドプレート31bの移動位置に基づいて行う。即ち、芯線103が平面的に整列している場合にスライドプレート31bが到達する位置情報(例えば、スライドユニット31cから出力されるアドレスエンコーダ(位置センサ)の値)を、多芯ケーブル100の種類に応じた試行や調整等により取得して、制御部9に予め設定(記憶)することにより、スライドプレート31bがその位置に到達したか否かを判断する。そのため、実際には、芯線103が立体的に重なっていない場合であっても、ステップS105では「芯線103の重なり」を検出するときがある。例えば、図6(A)や図6(B)の場合、「芯線103の重なり」を検出する(S105;あり)。
「芯線103の重なり」を検出した場合、続いてスライドプレート31bの位置が変化しているか否かを判断する(S107、位置変化の検出)。即ち、図6(A)や図6(B)に示すような場合には、プッシャー33の先端部33aが複数の芯線103の付け根部分を押圧するに至っていない。そのため、スライドプレート31bの位置が前回位置に比べて変化していることから、位置の変化を検出して(S107;あり)、スライドプレート31bを引き続き前進させる(S103)。これにより、束状の芯線102には、プッシャー33の先端部33aがさらに差し込まれる(図6(C))。これに対して、先端部33aが複数の芯線103の付け根部分を押圧している場合には、スライドプレート31bの位置が前回位置に比べて変化しない(S107;ない)。つまり、この場合、制御部9に予め設定(記憶)された位置に到達していないにもかかわらず、スライドプレート31bが停止しているため、芯線103が立体的に重なっている可能性が高い。したがって、このような場合には、次に多芯ケーブル100を回転(または回動)させる(S109、ケーブル回転処理)。
多芯ケーブル100の回転(または回動)は、ケーブル保持部2により行われる。具体的には、例えば、ケーブル保持部2の駆動ユニット29に対して駆動モータを正転方向に180度回転させた後、逆転方向に180度回転させ、さらにこの正転および逆転を2回繰り返す。これにより、芯線103の立体的な重なりが解消されて平面的に芯線103が整列し得る。なお、正転および逆転方向の回転角やこのような回転制御の繰り返し回数は、多芯ケーブル100に含まれる芯線103の本数や線径等に左右されるため、多芯ケーブル100の種類に応じて適宜設定される。ケーブル回転処理が終わると、スライドプレート31bを引き続き前進させる(S103)。これにより、芯線103の立体的な重なりが解消された場合には、スライドプレート31bが進むため移動位置も変化する。
ケーブル保持部2に保持される多芯ケーブル100は、先端100aの周囲がホールドスリーブ28によって撓んだり曲がったりしないようにスプリット機構部3による押圧に十分に耐え得る機械的強度で保持されている。そのため、スライドプレート31bの移動が進むと、先端部33aが複数の芯線103の付け根部分に押圧されて押し返されるため、その力がプッシャー33を付勢するスプリング39の付勢力を超えた場合、プッシャー33がプッシャーガイド34の方向に押し戻されてプッシャーガイド34内にプッシャー33の先端部33aが挿入され(図4(A)に示す符号33a’)、その後端部33bが回動パイプ37からさらに突出する(図4(A)に示す符号33b’)。
これにより、傘の骨状に拡がった複数の芯線103にプッシャーガイド34の先端部34aが当接することで、図6(D)に示すように、複数の芯線103はさらに拡開して放射状に拡がる。このときスライドプレート31bが制御部9に予め設定(記憶)された位置に到達している場合には、芯線の重なりを検出せず(S105;ない)、次に複数の芯線103を寄せ集める処理を行う(S111、芯線寄せ集め処理)。
芯線寄せ集め処理は、プッシャーガイド34を回転させることにより行われる。即ち、プッシャーガイド34には、その外周面に位置する固定ピン35aよりも、僅かに先端が突出した移動ピン35bが取り付けられている。そのため、図6(D)に示すように、複数の芯線103が平面的に整列している場合には、プッシャーガイド34の先端部34aを押圧することで、これらのピン35a,35bの先端が複数の芯線103の間に挿入される。移動ピン35bは、その先端が固定ピン35aよりも突出しているため、移動ピン35bの方が固定ピン35aよりも深く芯線103間に挿入される。この状態で、プッシャーガイド34が、例えば、時計回りの方向に回転することで、移動ピン35bもその周方向時計回りに移動する。これにより、図6(E)に示すように、移動ピン35bよりも時計回りの方向に位置している芯線103j,103i,103h等は、移動ピン35bの移動とともに移動ピン35bに押されて時計回りに移動する。プッシャーガイド34は、例えば、開始位置から所定角度回転するまで回転を続け、その角度に到達すると回転を止める。本実施形態では、例えば、170度回転させて止める(図4(B),図4(C)に示す符号35b’)。これにより、平面的に整列した複数の芯線103a〜103jを固定ピン35aと移動ピン35bとの間の範囲(例えば、約190度)内に扇形状に寄せ集めることができる。なお、開始位置から所定角度は、多芯ケーブル100に含まれる芯線103の本数や線径等に左右されるため、多芯ケーブル100の種類に応じて適宜設定される。
なお、プッシャーガイド34の外周に、移動ピン35bを取り付けた回動可能な機構を設け、その移動ピン35bよりも径方向内側のプッシャーガイド34に固定ピン35aを固定した場合には、移動ピン35bを取り付けた回動機構を回転させて固定ピン35aとの間に複数の芯線103を上述と同様に寄せ集めるように、前記回動機構を制御してもよい。また前記回動機構に加えて径方向内側のプッシャーガイド34も回転させてもよい。これにより、固定ピン35aおよび移動ピン35bのいずれも回転するため、両ピン35a,35bの回転方向が逆方向のときには、いずれか一方のピンだけを回転させるときに比べて短時間に複数の芯線103を寄せ集めることが可能になり、また任意の位置に集めることができる。
<整列機構部>
続いて、整列機構部4について図1,図8〜図10を参照して説明する。まず整列機構部4の構成を図1および図8に基づいて説明する。図8(A)は整列機構部4の構成を示す斜視図、図8(B)〜図8(E)は、整列機構部4を構成するC型ガイド44の構成例を示す説明図である。図1に示すように、整列機構部4は、回転テーブル13上に設けられており、ケーブル保持部2に保持される多芯ケーブル100に対して、その径方向(多芯ケーブル100の軸に直交する方向)から、後述する右プレート45および左プレート46を介在させ得るように位置している。
図8(A)に示すように、整列機構部4は、スプリット工程でスプリット機構部3により扇状に寄せ集められた複数の芯線103を、両側から挟み込んで平面的な整列を維持したまま次工程(取り出し工程)の取り出し機構部5に提供する装置である。整列機構部4は、主に、スライドユニット41と、スライドプレート42上に設けられるロボットユニット43、ロボットアーム43a,43b、C型ガイド44等により構成されている。スライドユニット41は、図略のスライダを直線的に移動させる駆動機構で、制御部9から入力される制御信号によって移動量が制御されている。本実施形態では、このスライダにスライドプレート42が取り付けられることで、スライドプレート42を、ケーブル保持部2に保持される多芯ケーブル100に直交する方向に移動可能に構成している。
スライドプレート42上には、ロボットユニット43等が設けられている。ロボットユニット43は、互いに平行に移動可能な2本のロボットアーム43a,43bを備えており、制御部9から入力される制御信号によってアームの開閉が制御されている。ロボットアーム43a,43bの先端には、C型ガイド44が取り付けられている。C型ガイド44は、右プレート45と左プレート46により構成されており、左右の形状が異なる。本実施形態では、向かって右側のロボットアーム43aに右プレート45を取り付け、向かって左側のロボットアーム43bに左プレート46を取り付けている。
図8(B)および図8(C)に右プレート45の斜視図等が図示されており、また図8(D)および図8(E)に左プレート46の斜視図等が図示されている。そのため、ここからはこれらの図も参照しながら説明する。
図8(A)、図8(B)および図8(C)に示すように、右プレート45は、先端が半円形状に切り欠かれた短冊形状に形成されており、左プレート46と対向する内側には、この半円形状の切欠部に沿って肉厚が厚く設定されるC字形状の凸状部(以下「C字凸状部」という)45aが形成されている。このように右プレート45の先端が半円形状に切り欠かれているのは、ケーブル保持部2のホールドスリーブ28に保持された多芯ケーブル100に対して直交方向から、ホールドスリーブ28に接触することなく介在するためである。また、C字形状の凸状部を有するのは、面で挟むよりも線で挟むことにより、扇状に寄せ集められた複数の芯線103をその両側から確実に挟み込むためである。
また、右プレート45の内側上方(図1に示す座標表示におけるZ軸の矢印方向)には、ファイバーセンサ用の光ファイバ47bから出射される光を左プレート46の光ファイバ48bに向けて送出するための上側切欠部45bが形成されている(図8(A)に示す矢印付きの点線が光の伝達方向を示す)。さらに、右プレート45の外側下方(Z軸の反矢印方向)には、下側切欠部45cが形成されている。この下側切欠部45cは、後述する取り出し機構部5との協働により芯線103を取り出す際に案内通路に使用されるガイドの役割を果たす。そのため、この下側切欠部45cは、取り出し機構部5を構成するEWガイドにより形成される案内通路の形状に合わせて、右プレート45の表面に対して斜め45度の角度で切り出されている。ファイバーセンサ用の発光部47aは、ブラケット49により右プレート45の上端に取り付けられている。
図8(A)、図8(D)および図8(E)に示すように、左プレート46も、右プレート45とほぼ同様に、先端が半円形状に切り欠かれた短冊形状に形成され、また右プレート45と対向する内側にはC字凸状部46aが形成されている。これらが形成される理由は、右プレート45と同じで、多芯ケーブル100に対して直交方向から、プッシャーガイド34や固定ピン35a等に接触することなく介在して、複数の芯線103をその両側から確実に挟み込むためである。
また左プレート46の内側上方には、ファイバーセンサ用の光ファイバ48bが受光する光を右プレート45の光ファイバ47bから受けるための上側切欠部46bが形成されている。さらにこの上側切欠部46bに連続してC字凸状部46aの内側には、右プレート45に対向する方向に突出する上側凸部46cが形成されている。この上側凸部46cは、後述する取り出し機構部5との協働により最外位置よりも内側にある芯線103を押し戻す役割を果たす。そのため、この上側凸部46cは、その突出量が芯線103の線径よりも僅かに小さく設定されている。また、左プレート46の内側下方には、右プレート45に対向する方向に突出する下側凸部46dが形成されている。この下側凸部46dは、右プレート45の内側下方に当接することで、両プレート45,46の間に挟み込んだ芯線103が外部に抜け出ないように芯線103の移動を阻止する役割を果たしている。そのため、この下側凸部46dは、その突出量が芯線103の線径よりも僅かに大きく設定されている。ファイバーセンサ用の受光部48aは、ブラケット49により左プレート46の上端に取り付けられている。
なお、ファイバーセンサは、C字凸状部45a,46aの外側において、光の遮断や光の強弱を検出することにより、C型ガイド44の外側に芯線103が出たか否か、即ち、後述する取り出し工程において、最外位置の芯線103がEWガイド55の取出隙間Saに入ったか否かを判断するためのデータを制御部9に出力している。
このように整列機構部4を構成することによって、図9に示すように、ケーブル保持部2に保持された多芯ケーブル100に対して、多芯ケーブル100の軸Jに直交する方向から接近する。この移動はスライドユニット41により行われる。このとき、ロボットアーム43a,43bの間隔は、余裕を持って広く開いている。図9(A)は、C型ガイド44の両プレート45,46がケーブル保持部2のホールドスリーブ28やスプリット機構部3のプッシャーガイド34に十分近づいた状態を示しており、この状態においては、複数の芯線103は、両プレート45,46によって所定圧で挟持されている。これにより、スプリット機構部3により扇状に寄せ集められた複数の芯線103が平面的な整列を維持したまま取り出し工程の取り出し機構部5に提供することができるので、取り出し機構部5では芯線103の取り出しを容易に行うことが可能になる。
なお、この状態に至る前に、例えば、一旦、芯線103に接触するかしないかの程度で芯線103を軽く挟んだ後(例えば、両プレート45,46の対向間隔を芯線103の線径の2倍未満で線径よりも広い間隔に設定して挟む)、所定圧で挟むように制御してもよい。両プレート45,46が所定圧で挟む前に、芯線103の近傍で一度停止することから、このような一旦停止をしない場合に比べ加速度を伴うことがないため、設定値に対して精度の高い加圧が可能になる。これにより、芯線103を過剰な圧力で挟み込むことを防ぐため、芯線103に傷を付け難い。図9(B)には、スプリット機構部3が後退(図9(B)に示す座標表示に示すX軸の反矢印方向に移動)した後の状態が図示されており、この後、回転テーブル13が、図1に示す状態から反時計回りに45度回転して、準備位置に対して45度回転した状態に移行する。この状態が図10に図示されている。なお、図10においては、整列機構部4がケーブル保持部2から離れて位置しているが、実際には、次に説明するように、整列機構部4は、そのC型ガイド44がケーブル保持部2のホールドスリーブ28に近接した位置を維持している(図13参照)。
また、前述したスプリット工程において、複数の芯線103を扇状に寄せ集める際に、C型ガイド44で複数の芯線103を軽く挟んだ(例えば、両プレート45,46の対向間隔を芯線103の線径の2倍未満で線径よりも広い間隔で挟む)状態を維持してもよい。これにより、複数の芯線103を寄せ集める際に芯線103が立体的に重なるのを防ぐため、寄せ集め時に芯線103が重なってしまい平面的な整列ができなくなる可能性を格段に低下させることができる。
<取り出し機構部、送出機構部>
次に、取り出し機構部5および送出機構部6について図10〜図18を参照して説明する。まず、取り出し機構部5の構成を図10〜図14に基づいて説明する。なお、図14(A)は、図13に示す矢印14A方向から見た模式的な平面図、図14(B)は、図14(A)に示す矢印14B方向から見た模式的な矢視図、図14(C)は、図14(A)に示す矢印14C方向から見た模式的な矢視図、である。なお、図14においては、EWガイド55を構成するU字形状部57やJ字形状部58の位置と範囲を明示するため、U字形状部57とそれに一体に成形される部分は薄いグレーに着色し、またJ字形状部58とそれに一体に成形される部分はグレーに着色している。
取り出し機構部5は、整列機構部4から提供される扇状に寄せ集められた複数の芯線103から、芯線103を1本ずつ取り出す装置で、取り出し工程で使用される。取り出し機構部5は、図10に示すように、基台11の下に設けられて、回転テーブル13が45度回転した場合に切欠部11aを介して上昇して基台11上に現れる。そのため、図11に示すように、取り出し機構部5は、主に、エレベータユニット52、ロボットユニット54、EWガイド55等により構成されている。スプリット工程時に回転テーブル13が90度回転している場合や準備工程時に準備位置(0度)にある場合には、EWガイド55は使用されない。そのため、また回転テーブル13と接触を避けるために、EWガイド55は基台11の下に退避している。
エレベータユニット52は、スライダを直線的に移動させる駆動機構で、Z軸の矢印方向に立ち上がるエレベータタワー51に取り付けられている。エレベータユニット52は、制御部9から入力される制御信号によって移動量が制御されており、L字形状に形成されたエレベータプレート53がスライダに取り付けられることで、エレベータプレート53を上下方向に移動可能に構成している。
L字形状に形成されたエレベータプレート53のXY平面には、ロボットユニット54とこのロボットユニット54によりX軸方向に移動するロボットアーム54a,54bが取り付けられている。ロボットアーム54a,54bは、エレベータプレート53と同様にXY平面に拡がるプレート部54a1,54b1と、このプレート部からZ軸の矢印方向に立ちが上がる立設部54a2,54b2と、により構成されている。そして、ロボットアーム54aの立設部54a2の先端には、EWガイド55の一方を構成するU字形状部57がアーム部56および取付部59を介して取り付けられている。また、ロボットアーム54bの立設部54b2の先端には、EWガイド55の他方を構成するJ字形状部58がアーム部56および取付部59を介して取り付けられている。
図12(A)にEWガイド55をY軸の矢印方向から見た斜視図、図12(B)にEWガイド55をY軸の反矢印方向から見たEWガイド55の斜視図、図12(C)にEWガイド55をZ軸の反矢印方向から見たの平面図、がそれぞれ図示されている。なお、図12(D)〜図12(F)は、図12(A)〜図12(C)に示すEWガイド55の先端部分を拡大したものである。
ここからは、図12〜図14を参照しながら説明する。なお、図13においては、ロボットアーム54a,54b等が省略されている。
EWガイド55は、U字形状部57とJ字形状部58とにより構成されている。EWガイド55は、ケーブル保持部2のホールドスリーブ28に保持された多芯ケーブル100に対して直交する方向から、ホールドスリーブ28に接触することなく介在し、C型ガイド44が保持する複数の芯線103から、送出機構部6と協働して1本の芯線103を取り出す。そのため、図13や図14(A)に示すように、前述したC型ガイド44とは反対側、つまりX軸の反矢印方向から、ホールドスリーブ28に接近する。また、図14(B)および図14(C)に示すように、C型ガイド44に半円形状の切欠部が形成されているように、ホールドスリーブ28が存在する範囲を避ける必要からEWガイド55においても、U字形状部57やJ字形状部58の形状を成す。
なお、U字形状部57やJ字形状部58の外形状が、C型ガイド44のように矩形状ではなく曲面を備えている理由は、後述するように、送出機構部6の送出スティック63が円弧を描くようにEWガイド55の周囲を移動するため、この移動軌跡に合わせてU字形状部57やJ字形状部58の外形状を円弧状のカーブを描く曲面に設定している。
図12(D)に示すように、U字形状部57は、そのU字形状の一端側に段部57aが形成されて先端57bの肉厚が薄くなっている。これは、図14(A)に示すように、EWガイド55がC型ガイド44に接近した場合に、C型ガイド44の右プレート45の先端45tがU字形状部57に容易に組み合わさることを可能にするためである(図16(A)参照)。また、U字形状の一端側と、アーム部56が接続されるU字形状の他端側との間には、切欠部57cや切欠部57dが形成されている。図14(A)に示すように、U字形状部57がJ字形状部58と組み合わさった場合に、J字形状部58に形成される突起部58dとの接触を避けるため切欠部57cが形成され、またホールドスリーブ28との接触を避けるために切欠部57dが形成されている。
図12(E)に示すように、J字形状部58は、U字形状部57がほぼ1/2円弧形状であるのに対して、ほぼ1/4円弧形状に形成されている。これは、後述するように、C型ガイド44から取り出した芯線103を案内通路Scを介して測長機構部7に渡す際に、図12(F)に示すように、芯線103を破線の矢印方向に逃がす空間を確保するためである。このJ字形状部58も、そのJ字形状の一端側に段部58aが形成されて先端58bの肉厚が薄くなっている。これも図16(A)を参照するとわかるように、C型ガイド44の左プレート46の先端46tがJ字形状部58に容易に組み合わさることを可能にするためである。また、後述するように取出隙間Saを形成するため、J字形状部58に切欠部58cが形成されている。突起部58dは、図12(F)に示すように、案内通路Scに取り出された芯線103がEWガイド55の下側に倒れ込んで抜け落ちるのを防止するために形成されている(図18(G)〜図18(I)参照)。
なお、EWガイド55は、図12(F)に示すように、U字形状部57とJ字形状部58が組み合わさって案内通路Scを形成した場合に、平面形状(Z軸の反矢印方向から見た形状)が段部57aと段部58aを底辺αとする二等辺三角形αβγを形成するように、U字形状部57およびJ字形状部58が形成されている。これは、ケーブル保持部2のホールドスリーブ28と整列機構部4のC型ガイド44とが直交する位置関係にあり、ホールドスリーブ28の軸が辺αに平行であること、取り出した芯線103を渡す測長機構部7の測長プレート77〜79が辺βに平行な位置関係で待機していること、および、加工機200に向けてベーステーブル12が移動する方向(X軸方向)が辺γと平行であること、に基づいてこのような二等辺三角形αβγを形成している。
図10に示すように、送出機構部6は、スライドユニット61、駆動部63、アーム65、送出スティック67等により構成されており、前述した整列機構部4のロボットアーム43bの上(図13に示すロボットアーム43b上に二点鎖線で表される範囲60)に設けられている。スライドユニット61は、スライダを直線的に移動させる駆動機構で、制御部9から入力される制御信号によって移動量が制御されている。本実施形態では、このスライダに、駆動部63等が取り付けられることで、駆動部63等が整列機構部4のC型ガイド44の方向に移動可能に構成している。駆動部63は、制御部9に制御されるステッピングモータやサーボモータで、この回転によってアーム65の先端が円または円弧を描いて回るように構成されている。例えば、図10に示す座標表示では、Y軸方向を軸にXZ平面においてEWガイド55の外周相当の円または円弧を描くように回る。このアーム65の先端には、整列機構部4のC型ガイド44の先端方向に向けて延びる送出スティック67が取り付けれられている。送出スティック67は、図10に示すようにL字形状に形成された細長棒体により構成されている(図27〜図32参照)。
このように構成される送出機構部6は、制御部9による制御信号によってスライドユニット61や駆動部63が駆動すると、送出スティック67の先端がEWガイド55のU字形状部57やJ字形状部58の外周に沿うように移動する。そのため、EWガイド55の案内通路Scに位置する芯線103を送出スティック67が下方に向けて押し倒すことが可能になる(図18(G)〜図18(I)参照)。
ここで、図15〜図18を参照して、取り出し工程における制御部9(例えばシーケンサ)による制御処理(取り出し処理)の例を説明する。なお、図16〜図18においては、EWガイド55を構成するU字形状部57やJ字形状部58の位置と範囲を明示するため、U字形状部57とそれに一体に成形される部分は点状模様に塗りつぶし、またJ字形状部58とそれに一体に成形される部分はグレーに着色している。また、図15に示す取り出し処理は、予めプログラムされて制御部9のメモリにロードされている。また以下説明するEWガイド55(U字形状部57やJ字形状部58)の移動は、取り出し機構部5のロボットアーム54a,54bによるものである。またC型ガイド44(右プレート45や左プレート46)の移動は、整列機構部4のロボットアーム43a,43bによるものである。
図15に示すように、取り出し処理では、まず準備処理として、複数の芯線103a,103b,…,103jを挟持したC型ガイド44の右プレート45および左プレート46に、EWガイド55のU字形状部57およびJ字形状部58を接近させて、U字形状部57の段部57aに右プレート45の先端45tを、またJ字形状部58の段部58aに左プレート46の先端46tを、それぞれ組み合わせる(S201、図16(A))。次に、EWガイド55とC型ガイド44が組み合わさった状態を維持したままEWガイド55(U字形状部57およびJ字形状部58)を、図16(A)に示す矢印方向に移動させる(S203、隙間形成処理)。これにより、図16(B)に示すように、J字形状部58に切欠部58cが設けられていることにより取出隙間Saが形成される。続いて、C型ガイド44の左プレート46を図16(B)に示す矢印方向に移動させる(S205、C型ガイド開処理)。これにより、図16(C)に示すように、右プレート45と左プレート46との間が開くので、それまではC型ガイド44に挟持されて移動が規制されていた複数の芯線103は、両プレート45,46内で移動が可能になる。また、取出隙間Saの間隔も、より拡がった取出隙間Sbになる。
次に、ケーブル保持部2により多芯ケーブル100を図17(D)に示す矢印方向に回転させる(S207、芯線シフト処理)。即ち、両プレート45,46の間に位置する複数の芯線103のうち、最外位置に存在する芯線103aが取出隙間Sb内に入るように、複数の芯線103全体が点線矢印方向に移動するように、ホールドスリーブ28内の多芯ケーブル100を回転させる。このとき最外位置の芯線103aが取出隙間Sbに入ったか否かを判断するため、ファイバーセンサから送られてくる遮光の有無情報を参照して芯線103aの通過、つまり取出隙間Sbに芯線103aが入ったか否かを判断する(S209、芯線検出)。芯線103aが取出隙間Sbに入るまで、多芯ケーブル100を回転させる(S209;No)。芯線103aが取出隙間Sbに入ると(S209;Yes)、今度はC型ガイド44を閉じる(S211、C型ガイド閉処理)。図17(D)に示す矢印方向に左プレート46を移動させる。これにより、左プレート46の上側凸部46cが、取出隙間Sbに入った芯線103aとそれに隣接する芯線103bとの間に入り込むため、最外位置にある芯線103aはさらに取出隙間Sb内に、また隣接する芯線103bは、図17(E)に示す点線矢印方向、つまり先とは反対方向に押し込まれて移動する。これにより、最外位置にある芯線103aだけを確実に取出隙間Sbに移動させることが可能になる。このとき、ケーブル保持部2により多芯ケーブル100を図17(D)に示す矢印方向と反対方向に回転させることで、最外位置にある芯線103aを取出隙間Sb内に残して、他の芯線103b,103c等を図17(E)に示す点線矢印方向に移動させることができる。そのため、これらの芯線103b,103c等が取出隙間Sb方向に移動するのを防止することが可能になる。次に、EWガイド55(U字形状部57およびJ字形状部58)を図17(E)に示す矢印方向に移動させる(S213、芯線押出処理)。これにより、図17(F)に示すように、取出隙間Sb内にある芯線103aは、U字形状部57の先端57bに押されて左プレート46の上側切欠部46bに移動する。
次に、図17(F)に示す矢印方向にJ字形状部58だけを移動させる(S215、案内通路形成処理)。これにより、U字形状部57とJ字形状部58との間に隙間ができる。つまり、図18(G)に示すように、EWガイド55に案内通路Scが形成されて芯線103aのX軸方向が開く。さらに、スライドユニット61を制御して送出スティック67を図18(G)に示す矢印方向に移動させる(S217、送出スティック挿入処理)。これにより、図18(H)に示すように、送出スティック67が案内通路Scの手前に位置する芯線103aとC型ガイド44内で最外に位置する芯線103bとの間に挿入される。このように送出スティック67が挿入されると、駆動部63を制御して、図18(H)に示す矢印方向(上方から下方に向けた回転)に送出スティック67を回転させる(S219、送出スティック回転処理)。これにより、図18(I)に示すように、芯線103aは、下向きに回転する送出スティック67により案内通路Sc内を下方に押し倒されて、J字形状部58の突起部58dに当接して止まる。なお、案内通路Scは、X軸方向に沿って延びるため、案内通路Scに倒れ込んだ芯線103aもX軸方向に沿った姿勢を保つ。
このように取り出し工程では、ケーブル保持部2、整列機構部4、取り出し機構部5および送出機構部6を取り出し処理によって制御することで、C型ガイド44の最外位置にある芯線103aをEWガイド55の案内通路Scに取り出すことが可能になる。取り出し工程で取り出された芯線103は、測長機構部7に渡される。
<測長機構部>
続いて、測長機構部7について図19〜図23を参照して説明する。まず測長機構部7の構成を図19〜図23に基づいて説明する。なお、図21および図23においては、芯線103の位置と範囲を明示するため、芯線103をグレーに着色している。図19に示すように、測長機構部7は、取り出し機構部5により取り出された芯線103の長さを測るとともに芯線103の形状を真っ直ぐに整える(以下「整直」という)装置で、測長工程で使用される。図19に示すように、測長機構部7は、主に、エレベータタワー71、エレベータユニット72a、スライドユニット73a、ロボット74、測長プレート77,78,79等により構成されている。なお、このエレベータタワー71は、回転テーブル13上に設けられている。そのため、測長機構部7は、これまで説明したケーブル保持部2、整列機構部4および送出機構部6とともに、回転テーブル13によりベーステーブル12上で回転する。
エレベータユニット72aは、スライダを直線的に移動させる駆動機構で、Z軸の矢印方向に立ち上がるエレベータタワー71に取り付けられている。エレベータユニット72aは、制御部9から入力される制御信号によって移動量が制御されており、L字形状に形成されたエレベータプレート72bがスライダに取り付けられることで、エレベータプレート72bを上下方向(Z軸方向)に移動可能に構成している。
エレベータプレート72bには、スライドユニット73aが取り付けられている。このスライドユニット73aは、スライダを直線的に移動させる駆動機構で、制御部9から入力される制御信号によって移動量が制御されている。本実施形態では、このスライダにスライドプレート73bが取り付けられることで、図20(A)および図20(B)に示すように、スライドプレート73bをX軸方向に移動可能に構成している。このスライドプレート73bにロボット74が取り付けられている。ロボット74には、X軸方向に移動するロボットアーム75a,75bが取り付けられている。ロボットアーム75a,75bは、両アーム75a,75bによる閉方向に加圧したり、両アーム75a,75bをそれぞれY軸方向に同方向または逆方向に移動させたりすることが可能に構成されており、その先端にそれぞれ測長アーム76a,76bを備えている。この測長アーム76a,76bには、測長プレート77,78,79が取り付けられている。
図20に示すように、測長プレート77,78,79は、へ字形状に曲がったロボットアーム75a,75bから測長アーム76a,76bを介してZ軸方向に垂下している。測長プレート77,78,79は、例えば、アルミ板で構成されており、1枚で構成される測長プレート77と、2枚で構成される測長プレート78・79とが左右対称の形状を成している。例えば、図21および図23に示すように、縦長の矩形の1つの角部を面取り状に大きく切り欠いた形状に形成されており、この切欠部を互いに向けて、X軸の反矢印方向から見て右側には1枚構成の測長プレート77が、また同左側には2枚構成される測長プレート78・79が、それぞれ位置している。また、左右の測長プレートが対向する辺部分には、芯線103を挟み込む位置を決め得る凹部が形成されている。
2枚構成の測長プレート78・79は、1枚構成の測長プレート77が介在することが可能な隙間を隔てて2枚が重なるように構成されている。そのため、図23(D)や図23(E)に示すように、左右の測長プレート間に何も介在しない場合には、2枚構成の測長プレート78・79の間に1枚構成の測長プレート77が入り込み得る。これらの測長プレートは、前述したように、閉方向に加圧可能なロボットアーム75a,75bに取り付けられている。そのため、図23(B)および図23(C)に示すように、測長プレート77と測長プレート78・79の間に芯線103aが介在する場合には、測長プレート78・79の間に測長プレート77が入り込むことはない。しかし、図23(D)および図23(E)に示すように、測長プレート77と測長プレート78・79の間に芯線103aが介在しない場合には、測長プレート78・79の間に測長プレート77が入り込む。
このように構成される測長機構部7を測長工程において、図21に示すように、ケーブル保持部2のホールドスリーブ28、整列機構部4のC型ガイド44および取り出し機構部5のEWガイド55に対して、X軸方向から介在するように測長機構部7を位置させる。これにより、C型ガイド44に挟持される複数の芯線103a,103b,103c等から取り出し機構部5によって取り出される1本の芯線103aも、前述したように、X軸方向に沿った姿勢で案内通路Scに倒れ込むため、測長機構部7は、倒れた芯線103aをそのまま測長プレート77、78・79によって受け取ることが可能になる。なお、この図21には、図示されていないが、X軸に沿って倒れ込んだ芯線103aは、送出機構部6の送出スティック67によって上方から抑えられて倒れた姿勢を保っている。
ここで、図22および図23を参照して、測長工程における制御部9(例えばシーケンサ)による制御処理(測長整直処理)の例を説明する。なお、図22に示す測長整直処理は、予めプログラムされて制御部9のメモリにロードされている。図23(A)には、測長工程における、測長機構部7の動作例の模式図が図示されている。また図23(B)には、芯線103aを加圧している状態の測長プレート77、78・79を示す模式図が、さらに図23(C)には、同状態の測長プレート77、78・79をZ軸の反矢印方向から見た模式図が、それぞれ図示されている。また図23(D)には、芯線103aの先端に到達した直後の状態の測長プレート77、78・79を示す模式図が、さらに図23(E)には、同状態の測長プレート77、78・79をZ軸の反矢印方向から見た模式図が、それぞれ図示されている。
図22に示すように、測長整直処理では、まず準備処理として、X軸に沿って倒れ込んだ芯線103aをその両側から挟み込み得るように、エレベータユニット72aを制御して、測長アーム76a,76bの先端に位置する測長プレート77、78・79の位置合わせを行う(S301)。次に、測長プレート77、78・79を所定の加圧力で閉じる(S303、プレート閉処理)。ここでの加圧力は、例えば、多芯ケーブル100の芯線103をその加圧力で挟んだまま測長プレート77、78・79を芯線103の軸方向に移動させると、芯線103が整直される程度の値である。
スライドユニット73aにより測長プレート77、78・79を移動させる前の位置情報や測長プレート77、78・79の状態情報を記憶する(S305、開始状態記憶処理)。位置情報は、例えば、エンコーダによるアドレスカウンタの値である。また、測長プレート77、78・79の状態情報は、例えば、測長プレート77、78・79の開閉位置や加圧値である。次に、スライドユニット73aを制御して、測長プレート77、78・79を含めたロボットアーム75a,75bをX軸の矢印方向に前進させる(S307、プレート前進処理)。続いて測長プレート77、78・79の閉状態を検出し(S309、閉変化検出)、ステップS305で記憶した状態情報と異ならない場合には(S309;No)、ステップS307に戻ってロボットアーム75a,75bをX軸の矢印方向に前進させて、閉状態が変化するまで繰り返す。例えば、図23(A)に示すように、測長プレート77’、78’・79’が芯線103aの途中を挟持している場合である。
これに対して、測長プレート77、78・79の閉状態に変化があった場合には(S309;Yes)、続いて閉変化検出直後の位置情報や状態情報を記憶する(S311、終了状態記憶処理)。閉状態に変化があった場合とは、例えば、図23(A)に示す測長プレート77”、78”・79”が芯線103aの先端に到達した場合である。なお、芯線103aの先端に到達したか否かは、例えば、それまで挟持されていた芯線103aが測長プレート77と測長プレート78・79の間に存在しなくなることによって、加圧していた圧力値が急激な変動を生じるためその圧力変化を検出することにより判断する。
次に、ステップS305により記憶した開始時の状態情報と、ステップS311により記憶した終了時の状態情報と、に基づい芯線103aの長さを演算により求める(S313、測長演算処理)。例えば、終了アドレスのエンコーダ値から開始アドレスのエンコーダ値を引くことにより、開始位置からの芯線103aの長さが求められる。なお、芯線103aの実際の長さは、これに、芯線103aの根元から開始位置までの長さが加わる。ステップS313により求められた芯線103aの長さを記憶した後、測長プレート77、78・79を開始位置に戻す(S315、開始位置戻り処理)。このときは、測長プレート77、78・79は、十分な広さで開いた状態で戻る。このように一旦、開始位置に測長プレート77、78・79を戻すのは、芯線103aの先端まで測長プレート77、78・79が到達した後は、芯線103aが測長プレート77、78・79から離れてしまい芯線103aの位置がわからなくなるためである。そのため、芯線103の先端等を探す代わりに、芯線103aが確実に存在する開始位置まで測長プレート77、78・79を戻す。これにより、無駄な動きをせずに芯線103aを見つけることが可能になる。
このように本実施形態に係る測長整直では、測長プレート77、78・79により芯線103aの先端までの長さを測定しながら、芯線103aを測長プレート77、78・79により加圧したまま芯線103aをシゴクようにその先端まで測長プレート77、78・79を移動させるため、芯線103aを整直することが可能になる。つまり、1つの工程で、線長を測定しかつ整直するため、後工程で芯線103aを真っ直ぐに整える工程を設ける必要がない。これにより、芯線103の前準備に要する時間を短縮することができる。また、整直用の装置や治具を新たに設ける必要がないため、設備コストを削減することが可能になる。
なお、前述した測長工程では、測長整直処理を芯線103aに対して1回実施したが、同じ芯線103aに対して複数回実施してもよい。これにより、1本の芯線103aに対して複数の測長データが得られるため、測長値の精度を高めることが可能になる。また、1本の芯線103aに対して複数回の整直が行われるため、芯線103aの形状をさらに真っ直ぐに整えることが可能になる。
また、前述した測長工程では、多芯ケーブル100を構成する複数の芯線103のうち、最初に取り出される芯線103aの場合を例示して説明したが、2番目に取り出される芯線103bや、3番目に取り出される芯線103cについても、芯線103aと同様に測長工程を行うことができる。また、多芯ケーブル100に含まれる全ての芯線103に対して、必ずしも上記の測長工程による測長整直処理を行う必要はない。例えば、多芯ケーブル100が10本の芯線103を含んでいる場合、例えば、最初(1番目)と中間(5番目または6番目)と最後(10番目)について上記の測長工程による測長整直処理を行う。これにより、毎回、測長工程を行う必要がなくなるので、芯線103の前準備に要する時間をさらに短縮することが可能になる。
<加工機への芯線の投入動作の例および加工後の芯線の取り出し動作の例>
本装置1では、加工対象となる多芯ケーブル100がケーブル保持部2に保持されているため、たとえ回転テーブル13を回転させても多芯ケーブル100を加工機200の投入口201に投入することはできない。そのため、本装置1では、基台11と回転テーブル13の間に位置するベーステーブル12を加工機200に向けて移動させ得るように構成している。
ここで、図24を参照して本装置1による一連動作の例として、全工程の流れを説明する。図24(A)には準備工程、図24(B)にはスプリット工程、図24(C)には取り出し工程および測長工程、図24(D)には加工機投入・取出工程、における、主な装置(ケーブル保持部2、スプリット機構部3、整列機構部4、取り出し機構部5、送出機構部6、測長機構部7、退避機構部8等)、ベーステーブル12や回転テーブル13の位置関係を図示している。なお、図24において、丸角の枠内に記載されている「図xx」(xxは図面番号)とその矢印は、図1、図10、図25、図27〜図32における斜視図等のビューポイントとその方向を示す。また、回転テーブル13の回転状態を明示にするため、回転テーブル13をグレーに着色している。
図24(A)に示すように、準備工程における本装置1aでは、回転テーブル13は準備位置に位置している。この準備位置では、作業者がアクセスし易い場所にケーブル保持部2が位置している。準備工程はケーブル保持部2に多芯ケーブル100をセットする工程であり、この作業は作業員が行うため、ケーブル保持部2が本装置1の側面に向くように回転テーブル13を回転させている。なお、回転テーブル13においては、この準備位置を0度として、時計回り方向を正転(+)、反時計回り方向を逆転(−)に定義する。
図24(B)に示すように、スプリット工程における本装置1bでは、回転テーブル13は準備位置から90度正転したところに位置している。これにより、ケーブル保持部2はスプリット機構部3に対向する位置に配置されて、前述したスプリット処理が可能になる。
図24(C)に示すように、取り出し工程および測長工程における本装置1cでは、回転テーブル13は、スプリット工程時の位置から45度逆転(準備位置から45度正転)したところに位置している。これにより、測長機構部7の移動方向がX軸方向になるため、測長機構部7が加工機200に対してアクセス可能な方向を向く。また、このとき取り出し機構部5と退避機構部8が基台11の下から上昇して切欠部11aから基台11上に現れる。この図では確認できないが、取り出し機構部5の案内通路ScもX軸方向に向くため、案内通路Scに倒れる芯線103を測長機構部7が容易に挟持することが可能になる。
図24(D)に示すように、加工機投入・取出工程における本装置1dでは、回転テーブル13は回転することなく、ベーステーブル12が加工機200の方向に向けてX軸の矢印方向(加工機200に接近する方向)に移動、つまり前進する。これにより、ベーステーブル12とともに測長機構部7が設けられた回転テーブル13も加工機200に向けて前進するため、測長機構部7のロボットアーム75a,75bを基台11の範囲を超えて、加工機200の投入口に接近させることが可能になる。本装置1では、回転テーブル13に基本形状がほぼ正方形のものを採用しているため、加工機200に対して、正方形の辺で接近するよりも、正方形の角で接近する方がベーステーブル12の移動距離を短くすることが可能になる。また、加工機200への接近に際して基台11からはみ出る範囲も角で接近する方が辺で接近するよりも小さくすることができる。したがって、本装置1では、加工機投入・取出工程や、取り出し工程および測長工程においては、回転テーブル13が基準位置から45度正転(またはスプリット工程時の位置から45度逆転)して、回転テーブル13の角部による加工機200への接近を実現している。また、本装置1では、この角部に、ケーブル保持部2、整列機構部4、取り出し機構部5および測長機構部7による作業領域を設定している。なお、この角部において、その一部がw字形状に切り欠かれているのは、基台11の下から上昇する取り出し機構部5や退避機構部8の配置空間を確保するためである。
なお、図25に、図24(A)に相当する準備工程における本装置1の斜視図が図示されている。この図25においては、ベーステーブル12による移動を案内するガイドレール15や、回転テーブル13による移動を案内するガイドレール16が図示されている。また、回転テーブル13の角部においてw字形状に切り欠かれている切欠部13wも図示されている。
図24(D)において、制御部9により実行される加工機200に対する投入・取り出し処理の概要を図26を参照して説明する。この投入・取り出し処理は、前述した測長機構部7による測長整直処理と本来、連続して行われるものである。そのため、ここでは、図22に示す開始位置戻り処理の続きとして説明する。
図26に示すように、まずベーステーブル12や測長機構部7のロボットアーム75a,75bの移動量を算出する処理が行われる(S501、移動量算出処理)。この処理では、前工程の測長整直処理により測定した芯線103aの長さに基づいて、加工機200に対して接近させるベーステーブル12の移動量、および移動したベーステーブル12上(回転テーブル13上)での測長機構部7のロボットアーム75a,75bの移動量、つまり測長プレート77、78・79の移動位置が求められる。なお、これらには、加工機200に挿入する長さも含まれる。
次に、ステップS501により求められた移動量だけスライドユニット73aによってロボットアーム75a,75b(測長プレート77、78・79)を移動させる(S503、プレート移動処理)。これにより、先に測長してそのまま残っている芯線103aを挟持可能な位置に到達するため、測長プレート77、78・79を閉じる(S505、プレート閉処理)。これにより、芯線103aが測長プレート77、78・79によって挟持されるため、次に芯線103aの先端位置を加工機200の投入口201(YZ平面)に合わせて移動させる(S507、Y・Z位置決め処理)。この移動は、ベーステーブル12によるX軸方向以外の移動であり、ロボット74によるロボットアーム75a,75b(Y軸方向)と、エレベータユニット72aによるエレベータプレート72b(Z軸方向)と、によって行われる。このYZ平面における位置の座標もステップS501により算出される。
測長プレート77、78・79の位置合わせが完了すると、次にベーステーブル12を移動させる(S509、ベーステーブル前進処理)。これにより、芯線103aの先端が投入口201に投入されて加工機200による加工が可能になる(S511)。加工機200による加工が終わると(S513;Yes)、今度は、ベーステーブル12を後退させる(S515、ベーステーブル後退処理)。これにより、加工済みの芯線103aが加工機200から取り出されるため、次の芯線103bの取り出しや加工機200への投入の邪魔にならないように、加工済みの芯線103aを下方に退避させる(S517、加工済み芯線退避処理)。
なお、上述した例では、加工機200に近づくX軸方向の移動をベーステーブル12により行ったが、例えば、加工機200が載置された加工装置台19をX軸方向に移動可能に構成して、加工機200を本装置1に接近させてもよい。この場合には、加工装置台19による加工機200の移動量(移動位置)がステップS501により求められ、また当該加工装置台19に移動制御が制御部9により制御される。また、加工機200およびベーステーブル12の両者を違いに近づく方向に移動制御をしてもよい。この場合も、それぞれの移動量(移動位置)がステップS501により求められる。両者が同時期に移動するため、移動時間を短縮できる。
<本装置の一連動作例>
次に、本装置1による一連動作の例を図27〜図32に基づいて簡単に説明する。なお、これらの図に表される説明図は、本装置1の試作機を写真撮影したものである。そのため、既に説明した図1〜図26に表される各図と若干相違するものも含まれている点に留意されたい。例えば、ケーブル保持部2の駆動ユニット29は、図1等ではケースに覆われており中の構造については図示されていないが、これから説明する図27(A)等においては、ケースが取り外されている点が異なる。
なお、図28〜図32では符号や引き出し線等が図面表現上の妨げになるため、あえて符号等を表記しない。そのため、本装置1による一連動作の例を説明する前に、図28〜図32において表されている各装置を、図27において符号を付して確認する。なお、図27〜図32において表示されていない符号は、以下、括弧書きで表記する。
図27(A)には、本装置1の全体構成として、準備工程における斜視図が図示されている。この図においては、ほぼ中央にケーブル保持部(2)と駆動ユニット(29)が表されている。またこれらの上方に測長機構部7やハーネスホルダ17、さらにラック18が表されている。加工装置台19には加工機200として圧着機が設けられている。また、制御部9、装置枠10や基台11も表されている。
図27(B)には、本装置1の全体構成として、取り出し工程および測長工程における斜視図であって、加工機200が本来、存在する位置から見たものが表されている。この図においては、他の工程では基台11の下に隠れている取り出し機構部5や退避機構部8も、基台11の切欠部11aから上昇して現れている。また、ベーステーブル12の下側にはガイドレール15を見ることができる。さらに回転テーブル13の角部に形成されているw字形状の切欠部(13w)も、取り出し機構部5や退避機構部8の背後に見える。この他、ケーブル保持部2、スプリット機構部3、整列機構部4、送出機構部6、測長機構部7、装置枠10も表されている。
図28は、スプリット工程の例を示す説明図である。図28(A)では、ケーブル保持部(2)のホールドスリーブ(28)に保持された多芯ケーブル(100)の先端(100a)から束状の芯線(102)が露出している。この図の左側にスプリット機構部3のプッシャー(33)やプッシャーガイド(34)が表されている。またこの図の上方左側には、送出機構部(6)が、さらに上方ほぼ中央には測長機構部7の測長アーム(76a、76b)や測長プレート(77、78・79)が表されている。図28(B)では、束状の芯線(102)にスプリット機構部(3)のプッシャー(33)を差し込んでさらにプッシャーガイド(34)により複数の芯線(103)を押圧している様子が表されている。複数の芯線103が放射状に拡がっている。図28(C)は、図28(B)をアングルを変えて表したものである。
図29は、整列機構部の動作例を示す説明図で、図28から続くものである。図29(A)では、スプリット機構部(3)のプッシャーガイド(34)が回転して固定ピン(35a)と移動ピン(35b)とにより複数の芯線(103)を扇状に寄せ集めている様子が表されている。図29(B)は、扇状に寄せ集められた複数の芯線(103)を整列機構部4がC型ガイド(44)によって両側から挟み込んでいる様子を表したもので、前述の図9(A)に相当するものである。図29(C)は、スプリット機構部(3)が後退した後の様子を表したもので、前述の図9(B)に相当するものである。なお、図29(B)および図29(C)において、送出機構部(6)の送出スティック(67)が複数の芯線(103)に接近しているが、これはアングル上、送出スティック(67)がそのように重なって表されているに過ぎない。
図30は、取り出し工程の例を示す説明図で、図29に表される状態から回転テーブル(13)が45度逆転した後に続く工程である。図30(A)は、C型ガイド(44)に挟持された複数の芯線(103)から1本の芯線(103)を取り出す途中の様子を表したもので、前述の図18(H)に相当するものである。図30(B)および図30(C)も、図30(A)の続きで、前述の図18(I)に相当するものである。
図31は、測長工程および加工機投入・取出工程の例を示す説明図で、図30から続く工程である。図31(A)および図31(B)は、測長機構部7の測長プレート77、78・79により芯線103aを測長整直している様子を表したもので、前述の図23(A)に相当するものである。これに対して、図31(C)は、測長工程の後、測長機構部7の測長プレート77、78・79により挟持した芯線103aを、ベーステーブル12の前進により投入口201に投入している様子を表したもので、アングルは異なるが前述の図24(D)に相当するものである。
図32は、加工機投入・取出工程の例を示す説明図で、図31(C)から続くものである。図32(A)は加工済みの芯線103aをベーステーブル12の後退により取り出した直後の様子を表したものである。また図32(B)および図32(C)は、測長プレート77、78・79による挟持から解放された芯線103が、退避機構部8によって下方に退避させられている様子を表したものである。この図からわかるように、退避機構部8は、制御部9に駆動制御される駆動モータと、この駆動モータの出力軸(回転軸)に接続された針金状のアームと、により構成されている。
以上説明したように本装置1によると、円錐体形状の先端部33aを有するプッシャー33を、ケーブル保持部2に保持された多芯ケーブル100の先端100aに先端部33aを対向させて多芯ケーブル100と同軸に位置させる。そして、スライドユニット31cおよびケーブル保持部2を制御する制御部9により、プッシャーガイド34またはケーブル保持部2の少なくとも一方を移動させて、束状の芯線102にプッシャー33の先端部33aを差し込んでこれらの芯線103を拡開させる。その後、プッシャーガイド34の一端側先端部34aが拡がった複数の芯線103を押圧するようにスライドユニット31cを制御する。また、プッシャーガイド34に押圧された複数の芯線103が放射状に互いに重ならないように拡がる所定位置に、プッシャーガイド34またはケーブル保持部2が到達するまでケーブル保持部2を制御して多芯ケーブル100を回動させる。これにより、自動化技術において、多芯ケーブル100の芯線103を平面的に整列させることが可能になる。また、複数の芯線103が放射状に互いに重ならないように拡がる状態を、スライドユニット31cで用いられる位置センサで検出することができるため、特に、専用のセンサやカメラ等を設けることなく、多芯ケーブル100の複数の芯線103を平面的に整列させることが可能になる。
また、上述した本装置1によると、制御部9に制御されるEWガイド55は、固定ピン35aと移動ピン35bの間に集められた複数の芯線103のうち移動ピン35bの側に位置する最外位置の芯線103aを取り出し得る取出隙間Sbを形成可能であり、また取出隙間Sbに取り出した芯線103aを所定方向に案内する案内通路Scを形成可能である。C型ガイド44は、互いに重ならないように複数の芯線103を多芯ケーブル100の軸方向両側から芯線103の外径の2倍未満で該外径よりも広い間隔で挟み、一方の内側には、最外位置の芯線103aの近傍において芯線間に入り込み得る上側凸部46cが設けられる。そして、制御部9により、最外位置の芯線103aが取出隙間Sbに移動する方向に多芯ケーブル100を回転させるようにケーブル保持部2が制御されるため、例えば、ピン等で芯線を押さなくても、最外位置の芯線103aを取出隙間Sbに移動させることができる。最外位置の芯線103aを取出隙間Sbに移動させた後、C型ガイド44を制御して、C型ガイド44の間隔を狭めて最外位置の芯線103aよりも内側の芯線103bを上側凸部46cにより押し戻す。これにより、最外位置の芯線103aよりも内側の芯線103bが取出隙間Sbに移動するのを防止する。その後、EWガイド55を制御して案内通路Scを形成し、この案内通路Scに移動した芯線103aを所定方向に押し出すように送出機構部6を制御する。これにより、固定ピン35aと移動ピン35bの間に集められた複数の芯線103a〜103jから、1本の芯線を取り出すことが可能になる。自動化技術において、多芯ケーブル100の複数の芯線103を平面的に整列させるだけでなく、その中から1本の芯線を取り出すことが可能になる。
さらに、上述した本装置1によると、制御部9は、所定圧で芯線103aを挟持している測長プレート77、78・79を芯線103の先端方向に移動するようにスライドユニット73aを制御するとともに、測長プレート77、78・79が何も挟むことがなくなったときの測長プレート77、78・79の位置情報を位置センサより取得し、これに基づいて芯線103aの長さを算出する。これにより、芯線103aはその長さが制御部9により算出され、かつ、測長プレート77、78・79により所定圧で挟持された状態でその測長プレート77、78・79が芯線103aの先端方向に移動する。そのため、芯線103aの形状が真っ直ぐに整えられる。つまり、線長を計りながら整直するため、整直工程を別途設ける必要がない。これにより、芯線103の前準備に要する時間を短縮することが可能になり、また整直用の装置や治具を新たに設ける必要がないため、設備コストを削減することも可能になる。