JP2014201456A - ガラス構造体の製造方法およびガラス構造体 - Google Patents

ガラス構造体の製造方法およびガラス構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】表面に高いアスペクト比を有する凹凸形状の微細パターンを有するガラス構造体を製造する方法を提供する。【解決手段】一対の主面を有し、組成においてアルカリ酸化物を含有するガラス基板4の一方の主面にアルカリ低濃度領域8のパターンを形成する工程と、このガラス基板4を、正極2と負極3との間に、前記パターン形成面が正極2から離間し、他方の主面が負極3に接触するように配置した後、正極2と負極3との間を絶縁性材料の揮発成分を含む雰囲気に保持しつつ、正極2と負極3との間に直流電圧を印加してコロナ放電を発生させる工程を備える。そして、コロナ放電発生工程で、絶縁性材料22から生成した帯電粒子を、アルカリ低濃度領域8以外の領域に静電的に付着させて絶縁堆積層15を形成する。こうして、凸部の少なくとも最上層が絶縁堆積層15からなる凹凸形状の微細パターンを有するガラス構造体が得られる。【選択図】図7

Description

本発明は、ガラス構造体の製造方法およびガラス構造体に係り、より詳しくは、アルカリ酸化物を含有するガラスからなり、表面に凹凸形状の微細パターンを有するガラス構造体を製造する方法、およびガラス構造体に関する。
例えば、フラットパネルディスプレイやプロジェクタなどのディスプレイデバイスでは、より多くの光を透過させて明度の高い画像を実現するために、各画素の前後に、微細な凹凸構造によりレンズ機能や光散乱機能を持たせた光学素子を設けている。また、MEMS(Micro Electro Mechanical System)を用いた微小化学分析デバイスや化学合成デバイス、MEMSによる流体制御システムでは、ガラス表面に微細な凹凸構造を形成し、それらを接合して液体の流路や各種分析反応機構を作製している。そのため、目的に合わせて、ガラス表面に微細な凹凸構造を形成するための効率的な方法が求められている。
従来から、表面に微細な凹凸形状のパターンを有するガラス構造体を製造するには、成形用型により微細パターンを転写して形成する方法が用いられている。この方法は、軟化温度まで加熱されたガラスに、型面に凹凸形状の微細パターンが形成された成形用型を押し付けることにより、型面の微細パターンをガラスに転写する方法である(例えば、特許文献1参照。)。また従来から、ガラス表面にエッチングマスクを形成した後、反応性ガスでドライエッチングして微細な凹凸形状を形成する技術も行なわれている。
しかし、これらの方法では、加工面積を十分に大きくできないという問題があった。
また、静電気を利用した表面コーティング技術として、静電塗装法、エレクトロスピニング法、エレクトロスプレー法等があり、これらの方法を用いてガラスの表面に樹脂層を形成することが行なわれている(例えば、特許文献2参照。)。そして、そのような方法を、前記ガラス構造体の製造に用いることも考えられる。
しかし、従来からの静電塗装法等では、高いアスペクト比を有する凹凸形状の微細パターンを形成することが難しかった。
特開2009−161405号公報 特開平5−345640号公報
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、表面に高いアスペクト比を有する凹凸形状の微細パターンを有するガラス構造体を製造する方法の提供を目的とする。また、表面に高いアスペクト比を有する凹凸形状の微細パターンが形成されたガラス構造体の提供を目的とする。
本発明のガラス構造体の製造方法は、一対の主面を有し、化学組成においてアルカリ酸化物を含有するガラス基板の一方の主面に、アルカリイオンを含む陽イオンの少なくとも1種の含有割合が他の領域より低いアルカリ低濃度領域のパターンを形成する工程と、前記アルカリ低濃度領域のパターンが形成されたガラス基板を、正極と負極との間に、前記パターンが形成された面が前記正極から離間して対向し、かつ他方の主面が前記負極に接触するように配置した後、前記正極と前記負極の間を絶縁性材料の揮発成分を含む雰囲気に保持しつつ、前記正極と前記負極との間に直流電圧を印加してコロナ放電を発生させる工程とを備え、前記コロナ放電を発生させる工程で、前記絶縁性材料から帯電した粒子を生成するとともに、この帯電粒子を、前記ガラス基板の前記正極側の主面において、前記アルカリ低濃度領域以外の領域に静電的に付着させて絶縁堆積層を形成し、凸部の少なくとも最上層が前記絶縁堆積層からなる凹凸形状の微細パターンを形成することを特徴とする
本発明のガラス構造体の製造方法において、前記絶縁性材料は、鎖状または環状のシリコーンであり、前記コロナ放電を発生させる工程で、この鎖状または環状のシリコーンから生成した負に帯電した粒子を、前記ガラス基板の主面の前記アルカリ低濃度領域以外の領域に静電的に付着させて、SiOからなる絶縁堆積層を形成することが好ましい。
また、前記アルカリ低濃度領域のパターンを形成する工程は、前記ガラス基板の一方の主面に、絶縁性材料からなり、所定のパターンの透孔部または極薄部を有するマスクを配設する工程と、前記マスクが配設された前記ガラス基板を、正極と負極との間に、前記マスクの表面が前記正極から離間して対向し、かつ他方の主面が前記第負極に接触するように配置した後、前記正極と前記負極との間に直流電圧を印加してコロナ放電を発生させ、前記ガラス基板の正極側表層部の前記マスクの透孔部または極薄部に対応する領域で、アルカリイオンを含む陽イオンの少なくとも1種を負極側に向って移動させる表面処理工程とを有することができる。そして、前記マスクは、表面に所定のピッチの凹凸パターンが形成された絶縁樹脂層であることができる。
また、前記アルカリ低濃度領域のパターンを形成する工程は、前記ガラス基板の一方の主面に、型面に凹凸形状の微細パターンが形成され、かつ少なくとも前記型面が導電性を有する成形用型の該型面を当接させて保持し、前記ガラス基板を所定の温度に加熱しながら、前記ガラス基板に前記成形用型との当接面側を正極とし反対の主面側をアースまたは負極とする直流電圧を印加し、コロナ放電を発生させて、該ガラス基板の前記当接面を加圧成形し、凹凸形状のパターンを転写・形成する加圧成形工程を有することができる。そして、前記加圧成形工程において、前記ガラス基板を、100℃を超え(Tg−150℃)未満(ただし、Tgは前記ガラス基板を構成するガラス材料のガラス転移温度を示す。)の温度に加熱することが好ましい。さらに、前記加圧成形工程において、前記ガラス基板の前記当接面に転写・形成された凹凸形状のパターンの凹部の表層部に、前記アルカリ低濃度領域が形成されており、凸部の上に前記絶縁堆積層を形成できる。
本発明のガラス構造体は、一方の主面に凹凸形状の微細パターンを有するガラス構造体であり、化学組成においてアルカリ酸化物を含有するガラスからなり、一方の主面の表層部に、アルカリイオンの少なくとも1種の含有割合が他の領域より低いアルカリ低濃度領域が所定のパターンで形成されたガラス基板と、前記ガラス基板の前記主面において、前記アルカリ低濃度領域以外の領域に選択的に形成された絶縁堆積層を有し、前記凹凸形状の微細パターンにおける凸部の少なくとも最上層が前記絶縁堆積層であることを特徴とする。
本発明のガラス構造体において、前記ガラス基板は、前記一方の主面に凹凸形状で凹部の表層部に前記アルカリ低濃度領域が形成された微細パターンを有し、このパターンの凸部の上に前記絶縁堆積層が選択的に形成されていることができる。
本発明のガラス構造体において、前記ガラス基板は、前記一方の主面に凹凸形状で凹部の表層部にアルカリ低濃度領域が形成された微細パターンを有し、このパターンの凸部の上に前記絶縁堆積層が選択的に形成されていることができる。
本発明において、「負極」にはアースも含み、「負極またはアース」を「負極」と記す。そして、「コロナ放電」とは、正極と負極(前記したように、アースも含む。以下、同様である。)との間に必要かつ十分な大きさの直流電圧(コロナ放電開始電圧)を印加することにより、被処理物から離間して配置された正極の周りに不均一な電界が生じることによって起こる、持続的な放電をいう。なお、この放電は、電極間に存在する気体の電離が局所的に限られた局部放電(部分放電)で、多数のストリーマの集合体であり、前記電圧を維持している間、継続して発生する。電圧を上げると、コロナ放電は負極に向かって進展し、1つのストリーマが負極に接近ないし到着すると、火花放電へと瞬時のうちに移行する。本発明では、基本的に、火花放電には移行しない持続的なコロナ放電を行わせる。
本発明において、「アルカリイオンを含む陽イオン」は、基板を構成するガラスの組成に含まれるアルカリイオン(アルカリ金属イオンともいう。)およびアルカリ土類イオンを意味し、水素イオンであるプロトンは含まない。すなわち、基板を構成するガラスが、その化学組成において、アルカリ酸化物とともにアルカリ土類酸化物を含有する場合は、正極と負極との間で発生したコロナ放電によって、ガラス基板中に含有されるアルカリ土類イオンは、アルカリイオンとともに負極側に向って移動する。したがって、本発明において、アルカリ低濃度領域において含有割合が他の領域より低くなる「アルカリイオンを含む陽イオン」は、基板を構成するガラスの組成に含まれるアルカリイオンを必ず含み、かつアルカリ土類イオンを含む場合もある1種以上のイオンを示すものである。
そして、本発明で用いられるガラス基板の組成において、アルカリ酸化物としてはNaOが含有され、かつナトリウムイオンは以下に示すように直流電圧の印加により移動しやすいため、前記アルカリイオンは、ナトリウムイオンとすることができる。
さらに、本発明において、「パターン」は、所定の平面形状の複数の部位が所定の配列で存在することを意味する。
本発明によれば、表面に大面積で高アスペクト比の凹凸状の微細パターンを有するガラス構造体を効率的に得ることができる。
本発明の実施形態において、アルカリ低濃度領域のパターンを形成する工程で使用される表面処理装置の一例を示す図である。 本発明の実施形態において、アルカリ低濃度領域のパターンを形成する工程で使用される表面処理装置の別の例を示す図である。 本発明の実施形態で表面処理後のガラス基板(マスク付きガラス基板)の断面図である。 本発明の実施形態において、(II)の方法によりアルカリ低濃度領域のパターン形成を行った場合の、電圧印加によるアルカリイオンの移動と、成形用型による凹凸パターンの転写との関係を説明する図である。 本発明の実施形態において、アルカリ低濃度領域のパターンを形成する工程で使用される加圧成形装置の構成を概略的に示す図である。 本発明の実施形態において、(II)の方法でアルカリ低濃度領域のパターンが形成されたガラス基板に対して、絶縁堆積層が形成された態様を示す断面図である。 本発明の実施形態において、絶縁堆積層を形成する工程で使用される絶縁堆積装置の概略構成を示す図である。 絶縁堆積層を形成する工程で使用される絶縁堆積装置の別の例を示す図である。 本発明の実施形態のガラス構造体を示す断面図である。 本発明の実施例3〜5において、絶縁堆積処理におけるコロナ放電時間とガラス基板の表面に形成された段差の測定結果との関係を表すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[ガラス構造体の製造方法]
本発明の実施形態に係るガラス構造体の製造方法は、一対の主面を有し、化学組成においてアルカリ酸化物を含有するガラス基板の一方の主面に、アルカリイオンを含む陽イオンの少なくとも1種(例えば、ナトリウムイオン)の含有割合が他の領域より低いアルカリ低濃度領域のパターンを形成する工程と、この工程でアルカリ低濃度領域のパターンが形成されたガラス基板を、正極と負極との間に、前記パターンが形成された一方の主面が前記正極から離間して対向し、かつ他方の主面が前記負極に接触するように配置した後、正電極と負極との間を絶縁性材料の揮発成分を含む雰囲気に保持しつつ、正極と負極に直流電圧を印加してコロナ放電を発生させる工程を備えている。
そして、前記コロナ放電を発生させる工程で、前記絶縁性材料から負に帯電した粒子を生成し、この帯電した粒子を、前記ガラス基板の正極側の一方の主面のアルカリ低濃度領域以外の領域に静電的に付着させる。そして、付着した粒子により、前記アルカリ低濃度領域以外の領域に絶縁堆積層を凸状に形成する。こうして、凸部が絶縁堆積層からなる凹凸形状の微細パターンが形成される。
以下、本発明の実施形態に用いられるガラス基板、および本発明の実施形態の各工程について説明する。
<ガラス基板>
本発明の実施形態の製造方法に用いられるガラス基板は、化学組成においてアルカリ酸化物を有するガラス材料から構成される。ガラスの組成は、少なくとも1種のアルカリ酸化物を有するものであれば特に限定されないが、製造の容易性の観点から、アルカリ酸化物およびアルカリ土類酸化物を合計で15質量%を超える割合で含有するものが好ましい。
そのようなガラス材料としては、酸化物基準の質量%表示で、SiOを50〜80%、Alを0.5〜25%、Bを0〜10%、NaOを10〜16%、KOを0〜8%、LiOを0〜16%、CaOを0〜10%、MgOを0〜12%、その他SrO、BaO、ZrO、ZnO、SnOなどを合計で10%未満含有するガラスを挙げることができる。以下、このガラスを構成する各成分について記載する。なお、%はいずれも質量%を表す。
SiOはガラスの骨格を構成する成分である。SiOの含有割合が50%未満では、ガラスとしての安定性が低下する、または耐候性が低下するおそれがある。SiOの含有割合は60%以上が好ましい。より好ましくは62%以上、特に好ましくは63%以上である。
SiOの含有割合が80%超では、ガラスの粘性が増大し、溶融性が著しく低下するおそれがある。SiOの含有割合は、より好ましくは76%以下、さらに好ましくは74%以下である。
Alはイオンの移動速度を向上させる成分である。Alの含有割合が0.5%未満では、イオンの移動速度が低下するおそれがある。Alの含有割合は、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは2.5%以上、特に好ましくは4%以上、最も好ましくは6%以上である。
Alの含有割合が25%超では、ガラスの粘性が高くなり、均質な溶融が困難になるおそれがある。Alの含有割合は20%以下が好ましい。より好ましくは16%以下、特に好ましくは14%以下である。
は必須成分ではないが、高温での溶融性またはガラス強度の向上のために含有してもよい成分である。Bを含有する場合、その含有割合は0.5%以上がより好ましく、さらに好ましくは1%以上である。
また、Bの含有割合は10%以下である。Bは、アルカリ成分との共存により蒸発しやすくなるため、均質なガラスを得にくくなるおそれがある。Bの含有割合は、より好ましくは6%以下、さらに好ましくは1.5%以下である。ガラスの均質性を特に改善するためには、Bは含有しないことが好ましい。
NaOはガラスの溶融性を向上させる成分である。また、直流電圧の印加によって移動しやすいため、アルカリ低濃度領域において含有割合が他の領域より低い陽イオンの主たるイオン(ナトリウムイオン)を生成する。NaOの含有割合が10%未満では、アルカリ低濃度領域のパターンが形成しにくい。NaOの含有割合は、より好ましくは11%以上、特に好ましくは12%以上である。
NaOの含有割合は16%以下である。16%超では、ガラス転移温度Tgしたがって歪点が低くなり、耐熱性が劣る、または耐候性が低下するおそれがある。NaOの含有割合は、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは14%以下、特に好ましくは13%以下である。
Oは必須成分ではないが、ガラスの溶融性を向上させる成分であるとともに、直流電圧の印加によって移動しやすい成分であるため、含有してもよい。KOを含有する場合、その含有割合は1%以上が好ましく、さらに好ましくは3%以上である。
また、KOの含有割合は8%以下である。KOの含有割合が8%超では、耐候性が低下するおそれがある。より好ましくは5%以下である。
LiOもKOと同様に必須成分ではないが、ガラスの溶融性を向上させる成分であるとともに、直流電圧の印加によって移動しやすい成分であるため、含有してもよい。LiOを含有する場合、その含有割合は1%以上が好ましく、さらに好ましくは3%以上である。
また、LiOの含有量は16%以下である。LiOの含有割合が16%超では、歪点が低くなりすぎるおそれがある。LiOの含有割合は、より好ましくは14%以下、特に好ましくは12%以下である。
アルカリ土類酸化物は、ガラスの溶融性を向上させる成分であるとともに、ガラス転移温度Tgの調節に有効な成分である。
アルカリ土類酸化物のうちで、MgOは必須成分ではないが、ガラスのヤング率を上げて強度を向上させ、溶解性を向上させる成分である。MgOを1%以上含有することが好ましい。MgOの含有割合は、より好ましくは3%以上、特に好ましくは5%以上である。また、MgOの含有割合は12%以下である。MgOの含有割合が12%超では、ガラスの安定性が損なわれるおそれがある。MgOの含有割合は、より好ましくは10%以下、特に好ましくは8%以下である。
CaOは必須成分ではないが、CaOを含有する場合、その含有割合は典型的には0.05%以上である。また、CaOの含有割合は10%以下である。CaOの含有割合が10%超では、直流電圧の印加によるアルカリイオンの移動量が低下するおそれがある。CaOの含有割合は、より好ましくは6%以下、さらに好ましくは2%以下、特に好ましくは0.5%以下である。
アルカリ酸化物とアルカリ土類酸化物の含有割合の合計(総量)は、ガラスの溶融性を向上させ、かつガラス転移温度Tgの調節による安定した電圧印加のために、15%以上とする。アルカリ酸化物とアルカリ土類酸化物の含有割合の合計は、より好ましくは17%以上、特に好ましくは20%以上である。
本発明の製造方法で用いられるガラス基板を構成するガラスは、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の成分を含有してもよい。そのような成分を含有する場合、それらの成分の含有割合の合計は10%以下が好ましく、より好ましくは5%以下である。実質的に以上の成分からなることが特に好ましい。さらに、前記ガラスは、溶融の際の清澄剤として、SO、塩化物、フッ化物などを適宜含有してもよい。
このようなガラスにより構成されるガラス基板の形状は、互いに平行な一対の主面を有する形状であれば、一対の主面が平坦な平面である平板状のものでも、一対の主面が曲面である曲板状のものでもよい。
<アルカリ低濃度領域のパターンを形成する工程>
アルカリ低濃度領域のパターンを形成するには、例えば、次の方法を採ることができる。
(I)マスクを使用し、コロナ放電によりガラス基板を表面処理する方法
(II)コロナ放電発生下に成形用型を用いてガラス基板を加圧成形し、凹凸形状のパターンを転写・形成する方法
なお、前記したように、アルカリ低濃度領域は、通常ナトリウムイオンの含有濃度が他の領域より低い、すなわちガラス母材より低い領域であり、具体的には、ナトリウムイオンの含有濃度が、モル基準で例えばガラス母材の1/10以下である領域を、アルカリ低濃度領域とできる。ここで、ナトリウムイオンの含有濃度は、例えば、ToF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)により測定した値とする。
((I)マスクを使用してコロナ放電によりガラス基板を表面処理する方法)
この方法は、ガラス基板の一方の主面に、絶縁性材料からなり、所定のパターンの透孔部または極薄部を有するマスクを配設する工程と、
前記マスクが配設されたガラス基板を、正極と負極の間に、前記マスクの表面が正極から離間して対向し、かつ他方の主面が負極に接触するように配置した後、前記正極と負極に直流電圧を印加してコロナ放電を発生させ、前記ガラス基板の正極側表層部でマスクの透孔部または極薄部に対応する領域で、アルカリイオンを含む陽イオンの少なくとも1種(以下、単にアルカリイオンと示す。)を負極に接する側(負極側)に向って移動させる表面処理工程とを有する。
表面処理工程において、ガラス基板の正極側表層部でアルカリイオンを負極側に向って移動させることで、マスクの極薄部または透孔部に対応する領域で、アルカリイオンの含有割合(以下、含有濃度ということがある。)が処理前より減少することにより、含有濃度が他の領域より低いアルカリ低濃度領域が形成される。そして、ガラス基板の正極側表層部において、マスクの極薄部または透孔部に対応する領域以外の領域では、アルカリイオンの移動がなく、あるいは移動するイオンの量および移動距離が極めて少ないので、前記アルカリ低濃度領域は形成されないか、あるいは表面から極めて浅くしか形成されない。したがって、ガラス基板の正極側表層部に、マスクの極薄部または透孔部のパターンに対応するパターンでアルカリ低濃度領域を形成できる。
(マスク(マスクパターン))
ガラス基板の主面に配設されるマスクは、絶縁性の材料からなり、所定のパターンの極薄部または透孔部を有する。マスクに形成された極薄部または透孔部のパターン(平面形状、配列等)は限定されない。なお、マスクの透孔部は、マスク本体を貫通して形成された孔部をいい、極薄部は貫通した孔とはなっていないが、厚さが他の部分に比べて極めて薄い(例えば、厚さが1/10以下)部分をいう。
マスクを構成する材料は、コロナ放電により正極から負極に向かって発生する放電(ストリーマの集合体)を遮蔽する観点から、絶縁材料である。
実施形態で使用されるマスクとしては、例えば、ガラス基板の主面に、所定のピッチのL/S(Line and Space)パターン状に形成されたアゾベンゼン樹脂からなるマスクが挙げられる。このマスクは、ガラス基板の主面に形成されたアゾベンゼン樹脂層に所定のパターンでレーザービーム等を照射して、層表面に所定のピッチの凹凸パターンを形成することにより得られる。
アゾベンゼン樹脂層の表面への凹凸パターンの形成は、以下の機構による。すなわち、アゾベンゼン樹脂は、アゾベンゼン骨格をもつ樹脂であり、アゾベンゼン樹脂からなる層は、レーザービーム等の光が照射されることで、層の表面部分で光の強弱に感応して光の強い部分から弱い部分へと高分子鎖の移動が生じる結果、表面に凹凸パターンが形成される。なお、アゾベンゼン樹脂層の表面に形成された凹凸パターンにおいて、凹部がマスクの極薄部となり、この極薄部が所定のピッチPで配列されたL/Sパターンとなるマスクが得られる。
アゾベンゼン樹脂層の表面に形成された凹凸の高低差に相当するマスクの膜厚は、0.1〜5μm(例えば1μm)の範囲にできる。また、凹部のピッチに相当する極薄部のピッチは、0.3〜10μm(例えば4μm)の範囲にできる。
このように、マスク材料としてアゾベンゼン樹脂を使用することで、前記した膜厚およびピッチの微細パターンを有するマスクを得ることができる。そして、そのようなマスクを使用することで、ガラス基板の正極側表層部にアルカリ低濃度層を微細なパターンで形成できる。
また、マスクを構成する絶縁材料としては、アゾベンゼン樹脂以外に、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂などの高分子材料も使用できる。例えば、アクリル樹脂からなるマスクは、ガラス基板の主面に形成された紫外線硬化型アクリル樹脂(例えば、電気化学工業社製、商品名;OP−3010P)の層に、所定のパターンで紫外線を照射することにより、層表面に所定のピッチの凹凸パターンを形成することにより得られる。また、フォトレジスト(例えば、東京応化工業社のg線用レジスト、商品名:OPR−800)を用いて、同様にマスクを形成できる。これらの高分子材料により形成されたマスクにおいて、膜厚およびピッチは、前記アゾベンゼン樹脂からなるマスクと同様な範囲が好ましい。そして、これらの高分子材料からなるマスクを使用することで、ガラス基板の正極側表層部にアルカリ低濃度層を微細なパターンで形成できる。
さらに、樹脂フィルムに円孔等の孔部が所定のパターンで形成したマスクを使用できる。樹脂フィルムを構成する絶縁材料としては、耐熱性や耐腐食性の観点からフッ素樹脂が好ましいが、これに限定されない。マスクとしての機能の点から、樹脂フィルムの厚さは0.1〜1mmが好ましい。また、孔部の直径および配列パターンは、形成すべきアルカリ低濃度層のパターンの径および配列に合わせて調整でき、特に限定されない。アルカリ低濃度層のパターン形成の容易性の点から、孔部の直径は0.1〜30mmの範囲が好ましい。また、孔部の配列パターンとしては、例えば、各孔部が六角形の中心および頂点の位置を占めるように配列された千鳥状の配列パターンが挙げられる。
このような樹脂フィルムからなるマスクを使用した場合は、ガラス基板の正極側表層部において、孔部に対応する領域においてのみ、アルカリイオンが負極側に向けて移動する結果アルカリ低濃度層を形成できる。こうして、マスクの孔部に対応するパターンのアルカリ低濃度層を形成できる。
(正極および負極)
表面処理工程においては、例えば直流電源に接続される正極と負極を、所定の間隔をおいて対向して配置し、正極と負極の間に、前記マスクが配設されたガラス基板を以下に示すように配置する。すなわち、ガラス基板の一方の主面(例えば上面)は正極に対して離間し、この面に配設されたマスクが正極に所定の間隔をおいて対向するようにし、かつ他方の主面(例えば下面)は負極に接触するようにして、ガラス基板を配置する。そして、正極と負極に直流電圧を印加し、正極と負極の間にコロナ放電を発生させる。
一方の主面のマスクの表面と正極との距離は、正極の形状や印加電圧等によっても異なるが、前記距離が大きいほど、放電電流が小さくコロナ放電が弱くなるため、0mmより大きくし、かつ30mm以下が好ましい。さらには、距離が近いほど、放電電流は放物的に大きくなってコロナ放電が強くなるため、0mmより大きく、10mm以下がより好ましい。
ここで、正極は負極より電極面積が小さいことが好ましい。なお、「電極面積」とは、正極については、被処理物であるガラス基板の主面への投影面積をいい、負極については、ガラス基板の主面に接触する面積をいう。正極が、後述するように、複数本の電極の集合体である場合、「電極面積」は、各電極についての前記「電極面積」の合計をいう。
正極としては、ワイヤ状の電極を使用できる。ワイヤ状電極は、1本を単独で使用してもよいし、複数本を互いに所定の間隔をおいて配置し、これらの集合体を正極としてもよい。正極として、複数本のワイヤ状電極を使用することで、ガラス基板の一方の主面全体を均一に処理できる。
また正極としては、先端に尖鋭部を有する針状の電極を使用できる。そして、前記針状の電極の1本、または複数本を所定のピッチで配列し集合したものを、正極としてもよい。
(表面処理装置)
表面処理工程で用いられる装置の例を、図1および図2に示す。図1および図2は、表面処理装置1の構成を概略的に示す正面図である。図1に示す表面処理装置1においては、正極2としてワイヤ状電極2aが設けられている。また、図2に示す表面処理装置1においては、正極2として針状電極2bが設けられている。
なお、これらの図において、符号3は負極を示し、符号4は被処理物であるガラス基板を示す。また、符号5はガラス基板4の主面に配設された前記マスクを示す。さらに、符号6は直流電源を示し、符号7は回路を流れる電流をモニタするための電流計を示す。
図1に示す表面処理装置1において、正極2であるワイヤ状電極2aは、コロナ放電の発生しやすさの観点から、細い方がよいが、強度と取り扱い易さの点で、ワイヤ状電極2aの直径は0.03〜0.1mmが好ましい。また、ワイヤ状電極2aは、ガラス基板4の上面に平行に配置することが好ましい。正極2として複数本のワイヤ状電極2aを用いる場合、各ワイヤ状電極2aは、0mmより大きく、ガラス基板4とワイヤ状電極2aとの距離と同程度の間隔をおいて互いに平行に、かつガラス基板4の上面に平行な平面上に配置することが、ガラス基板4の主面全体を均一に処理するうえで好ましい。後述するように、ガラス基板4をワイヤ状電極2aに対して平行に運動させる場合は、ガラス基板4が平行運動することで処理ムラが緩和されるので、各ワイヤ状電極2aの間隔はより大きくできる。
さらに、正極2として1本のワイヤ状電極2aを単独で配置する場合には、ガラス基板4の表面を均一に処理するために、ガラス基板4と一体とした負極3を、正極2であるワイヤ状電極2aに対して相対的に運動させることが好ましい。具体的には、負極3を、ガラス基板4を載せた状態で、ワイヤ状電極2aの配設方向に対して直交する方向に運動させる。この運動は、直線運動や往復直線運動がより好ましいが、回転運動や揺動であってもよい。
さらに、広く利用されているコロトロン・スコロトロンと呼ばれるコロナ放電を利用した帯電器と同様に、円筒型ないし角形のケーシングを設けることが好ましい。グリッド電極を設けてもよい。前記ケーシング、およびグリッド電極の作用で、コロナ放電のイオンの流れを制御でき、ガラス基板4への処理の均一性と処理効率を向上できる。
図2に示す表面処理装置1において、正極2である針状電極2bは、根元部の直径が0.1〜2mmが好ましく、針状電極2bの先端尖鋭部をガラス基板4の上面に向け、上面に垂直に配置することが好ましい。正極2として複数本の針状電極2bを用いる場合、各針状電極2bは、互いに平行でガラス基板4の上面に垂直とし、かつ先端部がガラス基板4の上面から等しい距離となる配置が好ましい。また、各針状電極2bの配設位置は、0mmよりも大きく、かつガラス基板4と針状電極2bとの距離と同程度の間隔で、千鳥状または碁盤状等の均等配置が、ガラス基板4表面を均一に処理するうえで好ましい。ガラス基板4を針状電極2bに対して平行に運動させる場合は、処理ムラが緩和されるので、各針状電極2bの間隔はより大きくできる。
ワイヤ状電極2aおよび針状電極2bにおいては、表面に、金、白金、その他貴金属等の耐食性の導電性膜を設けると、電界強度の均一性が良好となり、かつ電極としての耐久性が向上する。
図1および図2に示す表面処理装置1において、負極3は、平板状や曲板状など、被処理物であるガラス基板4の他方の主面(下面)に合わせた形状を有するものが好ましい。また、孔あき部を有するメッシュ状のものなど、ガラス基板4と面内で均一に接触するものでもよい。このような負極3を、ガラス基板4の下面に接触する配置で、ガラス基板4への通電性が向上するため、印加電圧を高くできる。負極3において、ガラス基板4との接触面にITO等の導電膜を設けることで、さらに通電性を向上できる。次に、表面処理工程における表面処理の条件(ガラス基板の温度、処理雰囲気など)について説明する。
ガラス基板の温度は、常温から400℃の範囲で、ガラスのTgより低い温度が好ましい。400℃以下の温度とすることで、ガラス基板の変形や処理部材の劣化を引き起こすことなく、ガラス基板の表層部に、十分な厚さのアルカリ低濃度領域のパターンを形成できる。また、前記温度範囲は、ガラス基板を構成するガラスのTgよりも温度が低く、ガラスは粘性が十分に大きい固体状態を呈する。そのため、ガラス基板中のアルカリイオンが動き過ぎるということがなく、アルカリイオンの移動方向が電界方向である負極側に向う方向に限定されるので、コロナ放電による表面処理の効率が高い。ガラス基板の温度は、100〜300℃がより好ましい。ただし、ガラスのTgが400℃以下の場合、ガラス基板の温度は、さらに低い温度が好ましい。
正極と負極との間に印加する直流電圧は、正極からコロナ放電を発生させる電圧である。この印加電圧は、正極の形状や被処理物であるガラス基板の温度によっても変わるが、3〜12kVの範囲とする。印加電圧が3kV未満ではコロナ放電が発生しにくい。印加電圧が12kVを超えると、アーク放電が生じやすくなり、コロナ放電を継続するのが難しい。
このような直流電圧の印加により被処理物であるガラス基板を流れる電流は、電子の移動による電流と、アルカリイオン等の移動による電流の両者を含むものである。表面処理工程でガラス基板を流れる電流は、0.01〜0.5mAの範囲であり、単位面積当たりの電気量は、10〜500mC/cmの範囲が好ましい。
正極と負極との間は、空気または窒素を主体とする雰囲気に保持する。ここで、「空気または窒素を主体とする雰囲気」とは、空気または窒素の含有割合が雰囲気ガス全体の50体積%を超える気体状態をいう。
前記したように、負極はガラス基板の他方の主面(例えば下面)に接触するように配置され、負極とガラス基板との間の通電性が高められているので、ヘリウムやアルゴンのようなプラズマ形成ガスの雰囲気にする必要がない。すなわち、空気または窒素を主体とする雰囲気で、正極の周りにコロナ放電を発生させて、ガラス基板の表面を処理できる。
このように表面処理を行うことで、図3に示すように、ガラス基板4の一方の主面側の表層部において、マスク5の厚さが所定の値以下の極薄部(マスク5の表面凹部に相当する)に対応する領域に、十分な厚さを有するアルカリ低濃度層8が形成され、その他の領域ではアルカリ低濃度層8がほとんど形成されない結果、ガラス基板4の主面には、マスクの極薄部のパターンに対応するパターンのアルカリ低濃度層8が形成される。
((II)コロナ放電発生下に成形用型を用いてガラス基板を加圧成形する方法)
この方法は、ガラス基板の一方の主面に、型面に凹凸形状の微細パターンが形成され、かつ少なくとも前記型面が導電性を有する成形用型の該型面を当接させて保持し、ガラス基板を所定の温度に加熱しながら、ガラス基板に成形用型との当接面側を正極とし反対の主面側を負極とする直流電圧を印加し、コロナ放電を発生させて、ガラス基板の前記当接面を加圧成形する加圧成形工程を有する。こうして、成形用型の型面の凹凸パターンが、ガラス基板の当接面に転写・形成されるとともに、この面にアルカリイオンの低濃度領域のパターンが形成される。
ここで、加圧成形工程におけるガラス基板の加熱温度は、100℃を超えかつ(Tg−150℃)未満が好ましい。ただし、Tgはガラス基板を構成するガラス材料のガラス転移温度を示す。
このような加圧成形工程において、ガラス基板は、ガラス転移温度Tgよりはるかに低い(Tg−150℃)未満の温度に加熱され、ガラス材料は軟化しないが、例えば100V以下の直流電圧の印加と加圧により、ガラス基板の当接面に、成形用型の型面の凹凸パターンが精度良く転写される。そして、ガラス基板の正極側つまり当接面側の表層部において、ガラス基板を構成するガラスに含まれるアルカリイオンが、前記コロナ放電により負極側である裏面側に向って移動するが、ガラス基板の当接面側の表層部においては、該表層部に接する成形用型の型面の凹部と凸部との電界強度の違いにより、アルカリイオンの移動の程度(移動距離)および移動方向に差異が生じる。すなわち、図4に示すように、ガラス基板4の当接面4a側の表層部において、成形用型9の型面9aの凸部に接する領域では、アルカリイオンが負極側(裏面側)に向かって移動することにより、アルカリイオンの含有割合が他の領域に比べて低いアルカリ低濃度領域8が形成される結果、ガラスの変形が加速され、成形面の凹部にアルカリイオンの低濃度領域8が形成される。そして、成形面の凸部の表面近傍のアルカリイオン濃度は未処理のガラスと変わらないので、ガラス基板4の成形面にアルカリ低濃度領域8のパターンが形成される。
(加圧成形装置)
加圧成形工程で用いられる装置の一例を、図5に示す。図5は、加圧成形装置10の構成を概略的に示す図である。
この加圧成形装置10は、導電性の基盤11と、この基盤11の上に、他方の主面が接触するように配置されたガラス基板4と、ガラス基板4の一方の主面(成形面ともいう。)に型面12aが当接するように保持された成形用型12と、ガラス基板4と成形用型12を加熱するために、これらに接してまたはこれらの近傍に配置された電熱ヒーター(図示を省略。)と、導電性の基盤11をアースまたは負極とし成形用型12を正極として、ガラス基板4に対して直流電圧を印加するための直流電源13とを備えている。また、成形用型12に荷重をかける等の方法で、その型面12aをガラス基板4の成形面に押圧する加圧機構(図示を省略。)を備えている。
ここで、成形用型12に対しては、その上面に接して配置された型基盤14を正極として、電圧を印加するように構成されている。そして、このような加圧成形装置10は、窒素雰囲気等に制御されたチャンバ内に配置されている。なお、大気中で成形を行う場合は、チャンバを有しない構成とできる。また、ガラス基板4および成形用型12を加熱する機構は、電熱ヒーターに限定されるものではなく、電磁誘導加熱など、ガラス基板4等を所定の温度に加熱できる機構であればよい。
ガラス基板4が配置される基盤11は、成形の際に直流電圧が印加される負極であり、後述する加圧力に耐える機械的強度を有す導電性の材料から構成される。同様に、成形用型12の上面に接して配置される型基盤14は、成形の際に直流電圧が印加される正極であり、前記基盤11と同じく機械的強度を有す導電性の材料から構成されることが好ましい。
このような導電性材料としては、銀、銅、アルミニウム、クロム、チタン、タングステン、パラジウム、ステンレス等の金属、およびタングステンカーバイド(WC)、シリコンカーバイド(SiC)、カーボン等が挙げられる。機械的強度の点からは、WC、SiC、SUS304やSUS318のようなステンレス等が好ましく、コストの点からは、カーボンが好ましい。特に、ガラス基板4の下の基盤11の材料としてカーボンを使用した場合には、コロナ放電によりガラス基板4の負極側から浸み出すナトリウムイオン等のアルカリイオンと、反応しにくいという利点がある。
負極となる基盤11は、ガラス基板4の他方の主面全体と接触する形状および構造が好ましい。このような形状および構造とすることで、ガラス基板4内部に均一に電界がかかり、アルカリイオンの移動が促進される。また、ガラス基板4の基盤11と接触する裏面にITO等の導電膜を形成することで、基盤11からガラス基板4への通電性をさらに向上できる。なお、導電性の基盤11を設ける代わりに、前記したようにガラス基板4の裏面に導電膜を形成し、それを負極として用いることもできる。
正極となる型基盤14は、成形用型12の導電性を有する型面と電気的に接続された形状および構造とする。このような形状および構造とすることで、成形用型12の型面12aと接するガラス基板4の成形面に正電圧を負荷して、ガラス基板4内部に十分な強度の電界をかけることができる。
ガラス基板4の成形面に当接させて保持する成形用型12は、ガラス基板4と接触する側の面である型面12aに、凹凸形状の微細パターンを有する。成形用型12は、後述する加圧力に耐える機械的強度を有する材料から構成されることが好ましい。また、ガラス基板4の成形面に所定の正電圧を印加できるように、少なくとも型面12aは、導電性材料により構成されることが好ましい。すなわち、成形用型12は、機械的強度と耐久性を有する材料からなる型本体の少なくとも型面に、導電性材料からなる被覆層を有することが好ましい。ここで、導電性材料としては、例えば、Ni、Cr、Mo等の金属、白金、イリジウム、ロジウム等の貴金属、カーボン、SiC、タングステンカーバイド(WC)等が挙げられる。さらには、成形用型9の加熱温度を超える耐熱性を有する材料であれば、導電性の有機樹脂材料の使用も可能である。
成型用型12は、前記した導電性材料により全体を形成してもよいし、あるいは、SiO等の絶縁材料で形成した型本体の少なくとも型面に、前記導電性材料からなる薄膜を形成してもよい。なお、このように少なくとも型面に形成された導電性材料部は、前記したように、正極となる型基盤14と電気的に接続されており、成形用型12の型面と接するガラス基板4の成形面に十分な正電圧を印加できるようになっている。
成型用型12の型面12aに形成された前記微細パターンの凹凸の段差(以下、型段差という。)は、100nm以上が好ましい。成型用型12の型面12aとガラス基板4の成形面との距離が大きいほど、ガラス基板4に印加される電界パターンがより鮮明になるため、ガラス基板4において、成型用型12の型面12a(凸部)と接する部分のアルカリイオンの移動により促進されるガラスの変形の度合いも大きくなる。このとき、ガラス基板4の成形面に形成される凹凸の高さは、型面12aの微細パターンのピッチには依存せず、200nm以下であるので、前記した型段差を200nm以上とすることで、(Tg−150℃)未満という十分に低い温度でかつ十分に低い電圧印加により、ガラス基板4の成形面に対する加圧成形が可能となる。次に、加圧成形工程における成形の条件(ガラス基板の温度、印加電圧、成形雰囲気など)について説明する。
ガラス基板の温度Tは、100℃より高くかつ(Tg−150℃)未満の温度(100℃<T<Tg−150℃)が好ましい。なお、この温度は、ガラス基板の成形面の温度であり、ガラス基板の成形面以外の部位は必ずしもこの温度にする必要がないが、加熱効率および成形作業の効率の点で、ガラス基板全体が100℃より高くかつ(Tg−150℃)より低い温度に加熱されることが好ましい。また、加圧成形の容易性の点から、成形用型もガラス基板と同じ温度に加熱するのが好ましい。
ガラス基板の温度Tを100℃より高くすることで、ガラス材料中でのアルカリイオンの移動が容易になり、ガラス基板の成形面における表層部に、アルカリ低濃度領域を形成し、加圧成形を容易にできる。また、ガラス基板の温度Tを(Tg−150℃)より低くすることで、成形面以外のガラス材料の変形を最小限に抑えることができるうえに、成形用型への熱的なダメージを低減でき、加熱および遮熱構造を簡易化できる。
前記した導電性の基盤を負極とし、成形用型の上面に配置された型基盤を正極として、ガラス基板に対して印加する直流電圧は、1〜100Vが好ましい。100V以下の電圧であっても、ガラス基板の正極に近い成形面側の表層部において、ガラス基板を構成するガラスの組成に含まれるアルカリイオンが、負極である基盤に接す他方の主面側に向って、ガラス中を移動する結果、ガラス基板の成形面において、成形用型の型面の凸部に接する領域の表層部に、アルカリ低濃度領域が形成され、前記した100℃より高くかつ(Tg−150℃)より低い温度での加圧成形が可能となる。また、この電圧範囲とすることで、ガラス基板と成形用型との間、およびそれらと成形装置のその他の構成部材との間で絶縁破壊が生じるおそれがないので、絶縁構造を簡易化でき、小型で簡易な装置による成形が可能となる。また、100V以下の電圧印加では、成形用型の型面に離型膜を形成した場合、離型膜が消耗しないという利点がある。
ガラス基板の加圧成形が行われる雰囲気、例えば、加圧成形装置が配置されるチャンバ内の雰囲気は、真空雰囲気またはアルゴン等の希ガス雰囲気とする必要はなく、空気または窒素を主体とする雰囲気とできる。窒素を主体とする雰囲気がより好ましい。加圧成形を空気または窒素を主体とする雰囲気で行うことにより、真空中または希ガス中で行う場合に比べて、装置を小型簡易化できるとともに、装置構成の自由度が向上する。
ガラス基板の成形面に対する加圧機構は、成形用型を外部からの荷重等により加圧し、その型面をガラス基板の成形面に押圧できる機構であれば、特に限定されない。加圧により、より短時間で、かつガラス基板の成形面の面積全体に亘って安定して成形できる。加圧力は0.1MPa〜10MPaの範囲が好ましい。加圧力をこの範囲とすることで、ガラス基板および成形用型に損傷を与えることなく、ガラス基板の成形面と成形用型の型面とを確実に当接させ、型面の微細パターンをガラス基板の成形面に精度良く転写できる。
加圧は直流電圧印加前に行ってもよいが、電圧印加まで加圧を継続するか、または電圧を印加した状態で加圧を行うことが好ましい。さらに、効率的に成形を行うために、成形用型を加圧した状態で一定時間保持することが好ましい。
本発明の実施形態では、このように(I)または(II)の方法でガラス基板の主面にアルカリ低濃度領域のパターンを形成した後、その上に絶縁堆積層をパターン状に形成する。
<絶縁堆積層を形成する工程>
この工程は、前記(I)または(II)の方法でアルカリ低濃度領域のパターンが形成されたガラス基板を、正極と負極の間に、前記パターンが形成された一方の主面が正極から離間して対向し、かつ他方の主面が負極に接触するように配置した後、正極と負極の間を絶縁性材料からの揮発成分を含む雰囲気に保持しつつ、正極と負極に直流電圧を印加して、コロナ放電を発生させる工程を有する。
そして、このようなコロナ放電を発生させる工程で、絶縁性材料から帯電した粒子を生成するとともに、生成した帯電粒子を、ガラス基板の正極側の一方の主面のアルカリ低濃度領域以外の領域に静電的に付着させて、絶縁堆積層を形成する。絶縁性材料から生成した帯電粒子のうちで負電荷を有する粒子は、アルカリ低濃度領域が形成された領域に比べて表面電位が高いアルカリ低濃度領域以外の領域に静電的に付着する。そして、付着した帯電粒子は電荷を失って電気的に中性の絶縁物質となり、この絶縁物質がアルカリ低濃度領域以外の領域に堆積する。
こうして、絶縁物質の堆積層である絶縁堆積層が、アルカリ低濃度領域以外の領域に選択的に形成され、凸部の全部あるいは最上層が絶縁堆積層からなる凹凸形状のパターンが形成される。すなわち、(I)の方法でアルカリ低濃度領域のパターンが形成されたガラス基板に対しては、アルカリ低濃度領域のパターンを有する平坦な一方の主面のアルカリ低濃度領域以外の領域に、絶縁物質からなる凸状の絶縁堆積層のパターンが形成される。また、(II)の方法でアルカリ低濃度領域のパターンが形成されたガラス基板の場合は、成形面に転写・形成された凹凸パターンにおいて、凹部の表層部にアルカリ低濃度領域が形成されているので、図6に示すように、ガラス基板4の成形面で、アルカリ低濃度領域に比べて表面電位が高いアルカリ低濃度領域以外の領域である凸部4bの上に、選択的に絶縁堆積層15が形成される。このように、ガラス基板4の凸部4bの上にだけ絶縁堆積層15が形成されて、凸部の高さが増大されるので、ガラス基板4表面に形成された凹凸形状のパターンのアスペクト比を高めることができる。
なお、(I)の方法によるアルカリ低濃度領域のパターン形成においても、表面にレーザー等で形成された所定のピッチの凹凸パターンを有するアゾベンゼン樹脂のマスクを使用する場合は、マスクを付けたままのガラス基板に対して前記絶縁堆積層を形成できる。その場合は、ガラス基板のアルカリ低濃度領域はマスクの極薄部に対応する領域に形成されているので、マスクの層厚部(凸部)の上に選択的に絶縁堆積層が形成され、凸部の高さがより増大される。なお、凹凸パターンは、レーザーを回折することによって生じる回折パターンによって生成できる。
(絶縁堆積装置)
絶縁堆積層を形成する工程は、図7に示す絶縁堆積装置20を使用できる。この絶縁堆積装置20は、コロナ放電発生機構を電気炉21内に設置するとともに、この電気炉21内に、加熱により揮発し、揮発成分が電圧印加により負に帯電する絶縁性材料22を設置して構成される。コロナ放電発生機構は、前記した(I)の表面処理方法に用いられる機構と同様に、正極2である針状電極2bと、負極3と、負極3をアースとして直流電圧を印加する直流電源(図示を省略する。)を備え、負極3上に被処理物であるガラス基板4が配置される。なお、図7においては、正極2として針状電極2bが設けられているが、ワイヤ状電極でもよい。
ガラス基板4としては、一方の主面にアルカリ低濃度領域8のパターンが形成されたガラス基板が使用される。なお、(I)の方法でアルカリ低濃度領域のパターンを形成した場合、通常マスクを除去した後のガラス基板の表面に対して絶縁堆積処理を行うが、マスクを構成する絶縁性材料の耐熱性が高い(例えば、耐熱温度が200℃以上。)場合には、マスクを付けたままのガラス基板に対して絶縁堆積処理をすることも可能である。また、(II)の方法でアルカリ低濃度領域のパターンを形成した場合は、表面に凹凸パターンが転写・形成されかつその凹部にアルカリ低濃度領域のパターンが形成されたガラス基板がそのまま使用される。
電気炉21内に配置される絶縁性材料としては、コロナ放電発生工程での加熱により揮発し、揮発成分が電圧印加により負に帯電する材料であれば、特に限定されないが、鎖状または環状のシリコーン(ポリオルガノシロキサン)の使用が好ましい。これらの中でも、比較的高分子量の環状シリコーンを使用する場合は、加熱により環状シリコーンが分解し、生成した低分子化合物が揮発して負に帯電すると考えられる。
こうして、絶縁性材料から生成した帯電粒子のうちで負電荷を有する粒子22aは、ガラス基板4の一方の主面において、アルカリ低濃度領域8が形成された領域に比べて表面電位が高いアルカリ低濃度領域以外の領域に静電的に付着する。そして、付着した帯電粒子は電荷を失って電気的に中性の絶縁物質となり、絶縁堆積層15がアルカリ低濃度領域以外の領域に選択的に形成される。こうして、凸部の少なくとも最上部が絶縁堆積層15である凹凸パターンが形成される。
絶縁性材料として、常温で液状のシリコーンオイル(鎖状または環状のポリオルガノシロキサン)を使用する場合には、図8に示すように、シリコーンオイル23の貯留部24、ヒーター25、エアーポンプ26および蒸気導入管27からなる揮発成分の導入機構を設け、シリコーンオイル23の加熱により揮発した成分を電気炉21内に導入するようにできる。絶縁性材料として、このような鎖状または環状のシリコーンを使用してコロナ放電による絶縁堆積処理を行った場合には、絶縁堆積物はSiOとなり、ガラス基板4のアルカリ低濃度領域以外の領域にSiOからなる絶縁堆積層15が形成される。
次に、絶縁堆積処理を行う条件(ガラス基板の温度、処理雰囲気など)について記載する。
ガラス基板の温度は、常温から400℃の範囲で、ガラスのTgより低い温度が好ましい。400℃以下の温度とすることで、ガラス基板の変形や処理部材の劣化を引き起こすことがない。そして、絶縁性材料から生成された帯電粒子を、ガラス基板の正極側の一方の主面のアルカリ低濃度領域以外の領域に選択的かつ静電的に付着させて、絶縁堆積層を形成できる。
ガラス基板の温度は、100〜300℃がより好ましい。ただし、ガラスのTgが400℃以下の場合、ガラス基板の温度は、さらに低い温度が好ましい。
正極と負極との間に印加する直流電圧は、正極からコロナ放電を発生させる電圧である。この印加電圧は、正極の形状や被処理物であるガラス基板の温度によっても変わるが、3〜12kVの範囲とする。印加電圧が3kV未満ではコロナ放電が発生しにくい。印加電圧が12kVを超えると、アーク放電が生じやすくなり、コロナ放電を継続するのが難しい。
被処理物であるガラス基板が配置された、正極と負極との間は、空気または窒素を主体とする雰囲気に保持する。
前記したように、負極はガラス基板の他方の主面に接触するように配置され、負極とガラス基板との間の通電性が高められているので、ヘリウムやアルゴンのようなプラズマ形成ガスの雰囲気にする必要がない。すなわち、空気または窒素を主体とする雰囲気で、正極の周りにコロナ放電を発生できる。そして、この空気または窒素を主体とする雰囲気に、前記絶縁性材料の加熱により生じた揮発成分が混入した雰囲気でコロナ放電が発生することになる。
次に、このような製造方法により製造されるガラス構造体について説明する。
<ガラス構造体>
図9に示すように、本発明の実施形態のガラス構造体30は、一方の主面の表層部に、アルカリ低濃度領域8が所定のパターンで形成されたガラス基板4を有する。このガラス基板4は、化学組成においてアルカリ酸化物を含有するガラスから構成されるものであり、このガラス基板4の前記一方の主面のアルカリ低濃度領域以外の領域には、絶縁堆積層15が選択的に形成されている。そして、実施形態のガラス構造体30では、この絶縁堆積層15を凸部とする凹凸形状の微細パターンを有している。このようなガラス構造体30は、前記した実施形態の製造方法により得ることができる。
このようなガラス構造体30の表面に形成された凹凸形状の微細パターンにおいて、凹凸の高低差である段差は、10〜500nmの範囲とできる。
図9に示す実施形態では、ガラス基板4のアルカリ低濃度領域4aのパターンが形成された一方の主面が平坦に形成されているが、ガラス基板は、図6に示すように、一方の主面に凹凸形状のパターンが形成され、凹部の表層部にアルカリ低濃度領域8が形成されたものでもよい。このように、一方の主面に凹凸形状のパターンを有するガラス基板4を有する構造体では、凹部のアルカリ低濃度領域8に比べて表面電位が高い凸部の上に絶縁堆積層15が形成される結果、ガラス基板4に比べてよりアスペクト比が高い凹凸形状となる。
このようなガラス構造体では、ガラス基板4の表面に形成された1〜50nmの凹凸の高低差である段差を、凸部への絶縁堆積層15の形成により、10〜500nmの範囲にまで大きくできる。
以下、本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
ガラス基板として、酸化物基準の質量%表示で、SiOを70%、Alを2%、NaOを13%、CaOを10%、MgOを4%、KO、Fe、SOを合計で1%未満含有するソーダライムガラス(旭硝子株式会社製、商品名;ASガラス)の基板(主面が25mm×25mmの矩形で厚さ1mm)を使用した。このガラス基板の一方の主面に、アゾベンゼン樹脂を含む塗布液を2500rpmの回転速度でスピンコートした後、乾燥した。なお、アゾベンゼン樹脂を含む塗布液は、側鎖型アゾベンゼンポリマー(株式会社トリケミカル研究所製、商品名;ポリアミン)の粉末0.1gをシクロヘキサノン0.9gに混合・分散して調製したものである。
次いで、得られた塗布膜にArイオンレーザーを照射し、2光束干渉により畝状の表面レリーフパターンを形成した。こうして、膜厚が最大の凸部と最小の凹部との差が100nmで、ピッチが5μmのL/Sパターンを有するマスクを形成した。なお、L/Sとは、Lines and Spacesの略称であり、ストライプパターンを指す。
次に、こうして主面に前記マスクが形成されたガラス基板を、図2に示す表面処理装置1の正極2と負極3との間に、マスク5の表面が正極2から離間して対向し、ガラス基板4の他方の主面が負極3に接触するように配置し、コロナ放電による表面処理を行った。
なお、この表面処理装置1において、負極3は接地された平板状電極(電極材料ステンレス、電極サイズ16mm×16mm)であり、この負極3の上に前記マスク5付きのガラス基板4を載せ、水平に配置した。正極2は、電極材料がニッケルの1本の針状電極2bにより構成し、この針状電極2bをガラス基板4の主面に垂直に配置した。また、この針状電極2bの先端部とマスク5の表面との距離は10mmとした。さらに、正極2である針状電極と負極3との間は大気雰囲気とした。
こうして、マスク5が形成されたガラス基板4を電気炉により135℃に加熱しつつ、直流電源6により針状電極2bと負極3との間に6kVの電圧を印加し、この状態で2時間コロナ放電を継続した。その後、アセトン中に浸漬し10分間超音波洗浄を行ってマスク5を除去した後、450℃で10分間の乾燥処理を行った。
次いで、前記した表面処理装置をそのまま絶縁堆積装置として使用し、絶縁堆積処理を行った。すなわち、図7に示すように構成された絶縁堆積装置20の正極2と負極3との間に、前記表面処理後のガラス基板4を、前記マスクが形成されていた一方の主面が正極2から離間して対向し、他方の主面が負極3に接触するように配置した。そして、このガラス基板4を電気炉21内で200℃に加熱しつつ、直流電源6により正極2である針状電極2bと負極3との間に6kVの電圧を印加し、この状態で4時間処理を継続した。なお、このとき、ポリジメチルシロキサンを含む粘着層を有する耐熱テープ(日東電工株式会社製、商品名;ニトフロンテープ、80mm×50mm)を電気炉21内に配置した。
こうして絶縁堆積処理がなされたガラス基板4の表面を原子間力顕微鏡により観察したところ、ライン状の凸部が、前記マスクのL/Sパターンのピッチに相当するピッチで形成されていることがわかった。そして、この凸部のパターンの段差は、253nmであった。なお、段差の測定は、原子間力顕微鏡を用いて行った。以下においても同様である。
実施例2
実施例1と同じソーダライムガラス基板の一方の主面に、実施例1と同様にしてアゾベンゼン樹脂を含む塗布液をスピンコートし乾燥した後、得られた塗布膜にArイオンレーザーを照射して、2光束干渉により畝状の表面レリーフパターンを形成した。そして、凸部と凹部との膜厚差が100nmで、ピッチが1μmのL/Sパターンを有するマスクを形成した。
次に、このマスクが形成されたガラス基板に対して、実施例1と同様に、コロナ放電による表面処理を行い、次いでマスクを除去した後、実施例1と同様にして絶縁堆積処理を行った。こうして得られたガラス基板の表面を原子間力顕微鏡により観察したところ、ライン状の凸部が、前記マスクのL/Sパターンのピッチに相当するピッチで形成されていることがわかった。この凸部のパターンの段差は、90nmであった。
実施例1および実施例2から、以下のことがわかる。すなわち、ガラス基板の一方の主面に設けられたマスクパターンのピッチが大きく、したがってこのマスクのパターンに合わせて形成されるアルカリ低濃度領域のパターンのピッチが大きいほど、アルカリ低濃度領域以外の領域への帯電粒子の付着量が多くなる。その結果、帯電粒子の付着により形成される絶縁堆積層の厚さが厚くなるため、段差が大きくなることがわかる。
実施例3〜5
実施例1と同じソーダライムガラス基板の一方の主面に、実施例1と同様にしてアゾベンゼン樹脂を含む塗布液をスピンコートし乾燥した後、得られた塗布膜にArイオンレーザーを照射し、2光束干渉により畝状のレリーフパターンを塗布膜の表面に形成した。レリーフパターンのピッチは、実施例3では1μm、実施例4では3μm、実施例5では5μmとした。
次に、このようなレリーフパターンを有するマスクが形成されたガラス基板に対して、実施例1と同様に、コロナ放電による表面処理を行い次いでマスクを除去した後、実施例1と同様にして絶縁堆積処理を行った。なお、実施例3〜5のそれぞれにおいて、絶縁堆積処理におけるコロナ放電時間を0〜4時間の間で変化させた。こうして得られたガラス基板の表面を、原子間力顕微鏡で観察し、形成されたライン状の凸部の段差を測定した。測定結果を、コロナ放電時間を横軸として図10のグラフに示す。
各実施例において、段差が最大となるコロナ放電時間が、絶縁堆積処理工程での最適時間となる。図10のグラフから、マスクのレリーフパターンのピッチが小さくなるほど、絶縁堆積処理工程における最適時間が短くなっていることがわかる。
実施例6,7
ガラス基板としては、実施例1と同じソーダライムガラスの基板(主面は10mm×10mmの矩形で厚さは2mm)を使用した。また、成形用型としては、石英基板の型面にL/Sパターン(ピッチ5μm、型段差180nm)を形成し、型面にスパッタ法により厚さ40nmのカーボン層を形成したものを使用した。そして、このようなガラス基板と成形用型を、図5に示す加圧成形装置10にセットし、チャンバ内を窒素ガス雰囲気とした。
次いで、ガラス基板4の上面に成形用型12の型面12aを接触保持した状態で、ガラス基板4と成形用型12を以下の表1に示す温度に加熱しながら、成形用型12に3MPaの加圧力を240秒間加え、型面12aをガラス基板4の成形面に押し付けた。そして、この加圧力を加えている240秒間のうちの60秒間において、50Vの直流電圧を印加し、加圧成形を行った。
こうして加圧成形されたガラス基板4の成形面に形成された凹凸パターンの高低差である段差を測定したところ、表1に示す結果が得られた。
次に、図7に示す絶縁堆積装置20を使用し、絶縁堆積処理を行った。すなわち、正極2である針状電極2bと負極3との間に、ガラス基板4を前記段差が形成された面が針状電極2bと対向するように配置し、ガラス基板4を200℃に加熱しつつ、針状電極2bと負極3との間に6kVの電圧を印加し、この状態で4時間処理を継続した。なお、このとき、実施例1と同様に、ポリジメチルシロキサンを含む粘着層を有する耐熱テープを電気炉21内に配置した。
こうして絶縁堆積処理されたガラス基板4の表面の凹凸パターンの高低差である段差を、再び測定したところ、表1に示す結果が得られた。なお、段差の数値は、複数箇所を1回測定したときの最小値と最大値で示した。
Figure 2014201456
表1の結果から、絶縁堆積処理後のガラス基板では、成形面に形成された凹凸パターンの凸部に絶縁堆積層が形成される結果、凹凸の高低差である段差が、絶縁堆積処理前に比べて大幅に増大していることがわかる。
実施例8
実施例1と同じソーダライムガラスの基板(主面が25mm×25mmの矩形で厚さ1mm)の一方の主面に、実施例1と同じアゾベンゼン樹脂を含む塗布液を2500rpmの回転速度でスピンコートした後、乾燥した。次いで、得られた塗布膜にArイオンレーザーを照射し、2光束干渉により4μmのピッチの表面レリーフパターンを形成し、マスクとした。
次に、このマスクが形成されたガラス基板に対して、実施例1と同様にしてコロナ放電による表面処理を行い、次いでマスクを除去した後、実施例1と同様にして絶縁堆積処理を行った。こうして得られたガラス基板の表面に白色光源を照射して観察したところ、イメージホログラムの再生像が観察された。
実施例9
実施例1と同じソーダライムガラスの基板(主面が25mm×25mmの矩形で厚さ1mm)の一方の主面に、実施例1と同じアゾベンゼン樹脂を含む塗布液を2500rpmの回転速度でスピンコートした後、乾燥した。次いで、得られた塗布膜にArイオンレーザーを照射し、2μmのピッチのフーリエ変換ホログラムの記録を形成した。
次いで、このように一方の主面に、前記ホログラムが記録されたマスクが形成されたガラス基板に対して、実施例1と同様にしてコロナ放電による表面処理を行い、次いでマスクを除去した後、実施例1と同様にして絶縁堆積処理を行った。こうして得られたガラス基板の表面にレーザー光を照射したところ、フーリエ変換ホログラムの再生像が得られた。
実施例8および9から、本発明の方法は、ホログラムをガラス基板に高効率で記録する方法として有用であることがわかる。すなわち、アルカリ低濃度領域のパターンの形成により、ホログラムをガラス基板に記録でき、このガラス基板に対して、絶縁性材料の揮発成分を含む雰囲気に保持しつつコロナ放電を発生させる絶縁堆積処理を施すことで、ガラス基板の表面にアスペクト比の高い凹凸パターンを形成し、ホログラムを再生できることがわかる。
本発明によれば、表面に大面積で高アスペクト比の凹凸状の微細パターンを有するガラス構造体を効率的に得ることができる。また、ガラス基板にホログラムが高効率で記録された構造体を得る方法として有用である。
1…表面処理装置、2…正極、2a…ワイヤ状電極、2b…針状電極、3…負極、4…ガラス基板、5…マスク、6,13…直流電源、8…アルカリ低濃度領域、9,12…成形用型、10…加圧成形装置、11…基盤、15…絶縁堆積層、20…絶縁堆積装置、21…電気炉、22…絶縁性材料、23…シリコーンオイル、27…蒸気導入管、30…ガラス構造体。

Claims (9)

  1. 一対の主面を有し、化学組成においてアルカリ酸化物を含有するガラス基板の一方の主面に、アルカリイオンを含む陽イオンの少なくとも1種の含有割合が他の領域より低いアルカリ低濃度領域のパターンを形成する工程と、
    前記アルカリ低濃度領域のパターンが形成されたガラス基板を、正極と負極との間に、前記パターンが形成された面が前記正極から離間して対向し、かつ他方の主面が前記負極に接触するように配置した後、前記正極と前記負極の間を絶縁性材料の揮発成分を含む雰囲気に保持しつつ、前記正極と前記負極との間に直流電圧を印加してコロナ放電を発生させる工程とを備え、
    前記コロナ放電を発生させる工程で、前記絶縁性材料から帯電した粒子を生成するとともに、この帯電粒子を、前記ガラス基板の前記正極側の主面において、前記アルカリ低濃度領域以外の領域に静電的に付着させて絶縁堆積層を形成し、凸部の少なくとも最上層が前記絶縁堆積層からなる凹凸形状の微細パターンを形成することを特徴とするガラス構造体の製造方法。
  2. 前記絶縁性材料は、鎖状または環状のシリコーンであり、
    前記コロナ放電を発生させる工程で、この鎖状または環状のシリコーンから生成した負に帯電した粒子を、前記ガラス基板の主面の前記アルカリ低濃度領域以外の領域に静電的に付着させて、SiOからなる絶縁堆積層を形成する、請求項1に記載のガラス構造体の製造方法。
  3. 前記アルカリ低濃度領域のパターンを形成する工程は、
    前記ガラス基板の一方の主面に、絶縁性材料からなり、所定のパターンの透孔部または極薄部を有するマスクを配設する工程と、
    前記マスクが配設された前記ガラス基板を、正極と負極との間に、前記マスクの表面が前記正極から離間して対向し、かつ他方の主面が前記第負極に接触するように配置した後、前記正極と前記負極との間に直流電圧を印加してコロナ放電を発生させ、前記ガラス基板の正極側表層部の前記マスクの透孔部または極薄部に対応する領域で、アルカリイオンを含む陽イオンの少なくとも1種を負極側に向って移動させる表面処理工程と
    を有する、請求項1または2に記載のガラス構造体の製造方法。
  4. 前記マスクは、表面に所定のピッチの凹凸パターンが形成された絶縁樹脂層である、請求項3に記載のガラス構造体の製造方法。
  5. 前記アルカリ低濃度領域のパターンを形成する工程は、
    前記ガラス基板の一方の主面に、型面に凹凸形状の微細パターンが形成され、かつ少なくとも前記型面が導電性を有する成形用型の該型面を当接させて保持し、前記ガラス基板を所定の温度に加熱しながら、前記ガラス基板に前記成形用型との当接面側を正極とし反対の主面側を負極とする直流電圧を印加し、コロナ放電を発生させて、該ガラス基板の前記当接面を加圧成形し、凹凸形状のパターンを転写・形成する加圧成形工程を有する、請求項1または2に記載のガラス構造体の製造方法。
  6. 前記加圧成形工程において、前記ガラス基板を、100℃を超え(Tg−150℃)未満(ただし、Tgは前記ガラス基板を構成するガラス材料のガラス転移温度を示す。)の温度に加熱する、請求項5に記載のガラス構造体の製造方法。
  7. 前記加圧成形工程において、前記ガラス基板の前記当接面に転写・形成された凹凸形状のパターンの凹部の表層部に、前記アルカリ低濃度領域が形成されており、凸部の上に前記絶縁堆積層を形成する、請求項5または6に記載のガラス構造体の製造方法。
  8. 一方の主面に凹凸形状の微細パターンを有するガラス構造体であり、
    化学組成においてアルカリ酸化物を含有するガラスからなり、一方の主面の表層部に、アルカリイオンの少なくとも1種の含有割合が他の領域より低いアルカリ低濃度領域が所定のパターンで形成されたガラス基板と、
    前記ガラス基板の前記主面において、前記アルカリ低濃度領域以外の領域に選択的に形成された絶縁堆積層を有し、
    前記凹凸形状の微細パターンにおける凸部の少なくとも最上層が前記絶縁堆積層であることを特徴とするガラス構造体。
  9. 前記ガラス基板は、前記一方の主面に凹凸形状で凹部の表層部に前記アルカリ低濃度領域が形成された微細パターンを有し、このパターンの凸部の上に前記絶縁堆積層が選択的に形成されている、請求項8に記載のガラス構造体。
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