本発明に基づいた各実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。各実施の形態の説明において、個数および量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数およびその量などに限定されない。各実施の形態の説明において、同一の部品および相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
[実施の形態1]
(全体構成)
図1〜図7を参照して、本実施の形態における近接センサ510について説明する。図1は、近接センサ510を示す斜視図である。図2は、近接センサ510の分解した状態を示す斜視図である。図3は、図1中のIII−III線に沿った矢視断面図である。図4は、図1中のIV−IV線に沿った矢視断面図である。図5は、近接センサ510に備えられる検出コイル部210の近傍を拡大して示す断面図である。
図6は、近接センサ510に備えられる検出コイル部210の内部構造を模式的に示す斜視図である。図6においては、便宜上のため、後述のベース金具60および封止樹脂部120はいずれも図示されていない。図7は、近接センサ510に備えられる封止樹脂部120の近傍を拡大して示す断面図である。
図1〜図6を参照して、近接センサ510は、検出領域内に磁界を発生させて検出対象の接近または有無を検出する誘導形の近接センサである。近接センサ510により検出される検出対象は、導電性の物体である。近接センサ510により検出される検出対象は、代表的には、鉄などの磁性金属を含む。近接センサ510により検出される検出対象は、銅またはアルミニウムなどの非磁性金属を含んでいてもよい。
近接センサ510は、仮想上の中心軸102(図3,図4)に沿って円柱状に延伸する外観を有する。近接センサ510は、検出コイル部210(図3〜図6)と、前面カバー20(コイルケース)と、プリント基板50(図2〜図6)と、ベース金具60と、クランプ80と、リングコード70とを備える。
検出コイル部210は、検出対象の接近または有無を検出する検出部として設けられている。検出コイル部210は、磁界を発生する。検出コイル部210は、検出領域と向かい合う近接センサ510の前端側に設けられている。検出コイル部210は、コア体40と、電磁コイル36(図3〜図6)と、コイルスプール30(図2〜図6)と、コイルピン46(図3〜図6)とが組み合わさって構成されている。
コア体40は、たとえばフェライトなどの高周波特性の良い材料から形成されている。コア体40は、検出コイル部210のコイル特性を高めるとともに、磁束を検出領域に集中させる機能を有する。電磁コイル36は、コイル線であって、コイルスプール30に巻回されている。電磁コイル36は、中心軸102を中心に巻回されている。中心軸102は、電磁コイル36の巻回中心軸でもある。
コイルスプール30(スプール体)は、電気絶縁性を有する樹脂から形成されている。コイルスプール30は、コア体40に形成された環状の溝の内部に収容されている。コイルピン46は、導電性の金属から形成されている。コイルピン46は、コイルスプール30により支持されている。コイルピン46は、検出コイル部210からプリント基板50の側に向けて延出する形状を有する。コイルピン46の延びる先は、プリント基板50上に形成されたパターン50P(図6参照)に、図示しないはんだを用いて接続されている。
検出コイル部210から延出するコイルピン46の根元部には、コイルスプール30の外周上から引き出された電磁コイル36の先端37が巻き付けられている。電磁コイル36とプリント基板50とは、コイルピン46および図示しないはんだを介して互いに電気的に接続されている。
検出コイル部210は、前面カバー20(コイルケース)内に収容されている。前面カバー20は、樹脂から形成されている。前面カバー20は、熱可塑性樹脂から形成されている。前面カバー20は、たとえば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の、熱可塑性樹脂部122(詳細は後述する)を形成する熱可塑性樹脂との接着性がよい材料から形成されている。
前面カバー20は、検出コイル部210を収容する前端カバーとして設けられている。前面カバー20は、第1閉塞部材として機能することができ、円筒形状を有するベース金具60の前端側の開口(一方の開口61)を閉塞する。前面カバー20は、主に、検出コイル部210を外部雰囲気から遮断し、保護するために設けられている。
前面カバー20は、有底の円筒形状を有する。前面カバー20は、中心軸102を中心に円筒状に延伸し、その一方端で閉塞され、その他方端で開口された形状を有する。前面カバー20の閉塞端側の端面が、近接センサ510の検出面を構成している。検出コイル部210は、前面カバー20のうちの筒状に形成された部分の内側に配置されている。
プリント基板50は、長尺状の平板形状を有する。プリント基板50は、中心軸102の軸方向を長手方向として延在している。プリント基板50は、長手方向に沿って延びる側面52,52(図2,図3参照)を有している。プリント基板50には、トランジスタやダイオード、抵抗、コンデンサなど、各種の図示しない電子部品が搭載されている。この電子部品は樹脂封止されており、この電子部品には、検出コイル部210に電気的に接続されるものも含まれる。プリント基板50には、図示しない発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)が搭載されている。発光ダイオードは、プリント基板50の表面および裏面に設けられ、検出状態を知らせるための発光部として機能する。
ベース金具60は、トランジスタやダイオード、抵抗、コンデンサ等の電子部品を収容する本体ケースとして設けられている。ベース金具60は、中心軸102の外周上で近接センサ510の外郭をなす。ベース金具60は、中心軸102を中心に円筒状に延びる形状を有する。ベース金具60は、円筒状の形状に限られず、四角筒状、多角筒状または楕円筒状などの、他の筒状の形状を有していてもよい。本体ケースとしては、樹脂製の部材から構成されていてもよい。
詳細は後述されるが、ベース金具60、前面カバー20、リングコード70およびクランプ80が組み合わされた状態では、これらの内側には収容空間としての収容部85が形成される。近接センサ510が作製された状態においては、プリント基板50および電子部品(ならびに後述の封止樹脂部120)は、収容部85内に位置している。
ベース金具60は、中心軸102に沿って延びる両端で開口されており、長手方向の一方側に開口61を有し、長手方向の他方側に開口62を有している。開口61および開口62は、ベース金具60の内表面63の内側に形成される内部空間を通して互いに連通している。本実施の形態の内表面63については、中心軸102に対して直交する方向の断面形状を見た場合、中心軸102の延びる方向のいずれの位置においても正円形状を有している。
ベース金具60は、金属から形成されている。ベース金具60の外周面には、近接センサ510を外部設備に固定する際に用いられるネジが形成されている。上述の前面カバー20は、ベース金具60の一方の開口61の内側に挿入され、ベース金具60に固定されている。上述のとおり、前面カバー20は、第1閉塞部材として機能することができ、ベース金具60の開口61を閉塞している。
本実施の形態における近接センサ510は、いわゆるシールドタイプの近接センサであり、金属製のベース金具60が、検出コイル部210の外周上に配置されている。近接センサ510としては、金属製のベース金具60が検出コイル部210の外周上から中心軸102の軸方向にずれた位置に配置される、いわゆる非シールドタイプの近接センサに適用されてもよい。
クランプ80は、近接センサ510の後端側からベース金具60に接続される接続部材として設けられている。クランプ80は、円筒形状を有するベース金具60の後端に接続されている。クランプ80は、ベース金具60の後端側の開口(他方の開口62)の内側に挿入されている。クランプ80は、ベース金具60と一体となって、中心軸102を中心に円筒状に延びている。
プリント基板50に搭載された発光ダイオードは、クランプ80の内側に位置決めされている。クランプ80は、樹脂から形成されている。近接センサ510の外部から発光ダイオードの発光が視認可能なように、クランプ80は、透明または半透明の樹脂により形成されている。クランプ80は、たとえば、ポリアミドから形成されている。
リングコード70は、収容部85の内部でプリント基板50に電気的に接続されている。リングコード70は、クランプ80の中に挿通され、クランプ80の後端側の開口88(収容部85の後端)から引き出されている。リングコード70は、クランプ80の後端側の開口88(収容部85の後端)を閉塞している。リングコード70およびクランプ80は、第2閉塞部材として機能することができ、円筒形状を有するベース金具60の後端側の開口(他方の開口62)を互いに一体となって閉塞する。
リングコード70は、ケーブル71およびリング部材72を有する。リング部材72は、ケーブル71の端部を覆うように設けられている。リング部材72は、収容部85内に設けられる後述の封止樹脂部120と、ケーブル71との間の接合性を確保する。リング部材72は、たとえば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)から形成されている。ケーブル71は、たとえば、ポリ塩化ビニルにより被覆されている。
ベース金具60の内部(収容部85内)には、封止樹脂部120が設けられている。封止樹脂部120は、ベース金具60と、ベース金具60の一方の開口61する前面カバー20と、ベース金具60の他方の開口62を閉塞するリングコード70およびクランプ80とに囲まれてこれらの内側に収容空間として形成された収容部85内に位置している。封止樹脂部120は、前面カバー20に収容された検出コイル部210、円筒ケース310に収容されたプリント基板50、およびプリント基板50上に実装された電子部品を樹脂封止している。
(封止樹脂部120)
封止樹脂部120は、熱硬化性樹脂部121と、熱可塑性樹脂部122とを含む。熱硬化性樹脂部121は、熱硬化性樹脂により形成されており、検出コイル部210(コア体40、電磁コイル36、コイルスプール30)を封止している。熱可塑性樹脂部122は、熱可塑性樹脂により形成されており、プリント基板50および電子部品を封止している。熱可塑性樹脂部122の形成に用いられる熱可塑性樹脂としては、詳細は後述するが、硬度(shoreD)が60以下のものが選定されている。
近接センサ510が作製された状態においては、熱可塑性樹脂部122は、前面カバー20の側(第1閉塞部材の側)からリングコード70およびクランプ80の側(第2閉塞部材の側)に向かって延びる形状を有している。ここで言う延びる形状の技術的意義には、熱可塑性樹脂部122が、リングコード70およびクランプ80の側(第2閉塞部材の側)から前面カバー20の側(第1閉塞部材の側)に向かって延びる形状も含まれている。詳細は後述されるが、図14には、近接センサ510が製造される途中段階における熱可塑性樹脂部122が図示されている。
熱硬化性樹脂部121と熱可塑性樹脂部122とは、境界面101(図3〜図6参照)で境界をなすように設けられている。本実施の形態の境界面101は、前面カバー20の内部に位置しており、中心軸102に対して直交する方向に沿って広がる面形状を有している。図6に示すように、2点鎖線で仮想的に示す境界面101から見て矢印AR121で示す方向の側に、熱硬化性樹脂部121が形成されている。境界面101から見て矢印AR122で示す方向の側に、熱可塑性樹脂部122が形成されている。
熱硬化性樹脂部121は、前面カバー20内においてコア体40、電磁コイル36およびコイルスプール30を少なくとも封止するとともに、コイルピン46の一部(コイルピン46の根元側の部分)を封止している。本実施の形態においては、コイルピン46のうちの熱硬化性樹脂部121により封止されていない部分は、熱可塑性樹脂部122により封止されている。
コイルピン46は、先端46Jを有する。コイルピン46のうちの電磁コイル36(コイル線)の先端37が巻き付けられている部分よりもさらに延びる先の部分(先端46Jの側)は、熱可塑性樹脂部122により封止されている(図5参照)。コイルピン46のうちのプリント基板50のパターン50P(図6参照)にはんだ付けされた部分は、熱可塑性樹脂部122により封止されている。本実施の形態においては、熱可塑性樹脂部122は、プリント基板50上に実装されたコンデンサなどの電子部品の全部を封止している。
上記の構成に限られず、熱可塑性樹脂部122は、プリント基板50上に実装された電子部品の一部のみを封止していてもよい。コイルピン46のうちの電磁コイル36(コイル線)の先端37が巻き付けられている部分よりもさらに延びる先の部分(先端46Jの側)は、熱硬化性樹脂部121により封止されていてもよい。コイルピン46のうちのプリント基板50のパターン50Pにはんだ付けされた部分が、熱硬化性樹脂部121により封止されていてもよい。
熱可塑性樹脂部122の形成に用いられる熱可塑性樹脂としては、たとえばポリオレフィン、ポリエステルおよびポリアミドからなる群より選ばれた少なくとも一種が挙げられる。熱可塑性樹脂部122の形成に用いられる熱可塑性樹脂には、難燃剤、有機・無機フィラー、可塑剤、着色剤、酸化防止剤などの各種の添加剤が含まれてもよい。硬度(shoreD)が60以下である熱可塑性樹脂が用いられることで、電子部品またはプリント基板50などの内部機器への応力を低減できる。
好ましくは、熱可塑性樹脂部122の粘度は、TAインスツルメント社製のレオメーターAR2000EXを用いて測定したとき、測定時のせん断速度を10(1/s)とし、測定時の温度を190℃とすると、500mPa・s以上、10000mPa・s以下であるとよい。さらに好ましくは、熱可塑性樹脂部122の粘度は、TAインスツルメント社製のレオメーターAR2000EXを用いて測定したとき、測定時のせん断速度を10(1/s)とし、測定時の温度を190℃とすると、500mPa・s以上、8000mPa・s以下であるとよい。
熱硬化性樹脂部121の形成に用いられる熱硬化性樹脂としては、代表的に、エポキシ樹脂が用いられる。熱硬化性樹脂部121は、検出コイル部210に作用する樹脂応力変動(応力緩和)が小さいことが好ましい。熱硬化性樹脂部121は、常温での弾性率が800MPa以上であるものが好ましい。熱硬化性樹脂部121の形成に用いられる熱硬化性樹脂には、難燃剤、有機・無機フィラー、可塑剤、着色剤、酸化防止剤などの各種添加剤が含まれても良い。封止樹脂部120は、熱硬化性樹脂部121および熱可塑性樹脂部122からなる2段の分割構造に限られず、3段以上の分割構造を有してもよい。
図3〜図5および図7を参照して、熱可塑性樹脂部122の外表面は、対向部124を含んでいる。熱可塑性樹脂部122の外表面とは、熱可塑性樹脂部122の外縁(外形)を形成している表面部位である。対向部124は、熱可塑性樹脂部122の外表面のうち、ベース金具60の内表面63に接しないように、内表面63に隙間130を介して対向する部位である。
対向部124は、前面カバー20の側(第1閉塞部材の側)からリングコード70およびクランプ80の側(第2閉塞部材の側)に向かって延びる形状を有している。換言すると、対向部124は、リングコード70およびクランプ80の側(第2閉塞部材の側)から前面カバー20の側(第1閉塞部材の側)に向かって延びる形状を有している。
本実施の形態の対向部124は、クランプ80の前端側の開口端部82と前面カバー20の後端側の開口端部21との間に形成されている。隙間130は、円筒状の形状を有する空間を形成し、対向部124とベース金具60の内表面63との間において対向部124を径方向の外側から取り囲むように、対向部124の全周にわたって形成されている。
(製造方法)
図8〜図16を参照して、近接センサ510(図1参照)の製造方法について説明する。図8〜図10は、それぞれ、当該製造方法の第1〜第3工程を示す図である。図11は、図10中のXI−XI線に沿った矢視断面図である。図12〜図14は、それぞれ、当該製造方法の第4〜第6工程を示す図である。図15は、図14中のXV−XV線に沿った矢視断面図である。図16は、当該製造方法の第7工程を示す図である。
図8を参照して、まず、検出コイル部210およびプリント基板50を含むサブアセンブリ116を組み立てる。具体的には、コア体40と、電磁コイル36が巻回されたコイルスプール30とを組み合わせるとともに、コア体40にプリント基板50を接続する。コイルピン46の先端をプリント基板50の表面(図6中のパターン50P)上にはんだ付けすることによって、電磁コイル36とプリント基板50とを電気的に接続する。
図9を参照して、次に、サブアセンブリ116に前面カバー20を組み付ける。具体的には、前面カバー20内に、注型樹脂として熱硬化性樹脂を充填する。前面カバー20内に、検出コイル部210の側からサブアセンブリ116を挿入配置する。検出コイル部210は、前面カバー20内の熱硬化性樹脂に浸漬される。加熱により、前面カバー20内の熱硬化性樹脂を硬化させる。熱硬化性樹脂部121が形成され、検出コイル部210(コア体40、電磁コイル36、コイルスプール30)は、熱硬化性樹脂部121によって封止される。
図10および図11を参照して、次に、リングコード70およびクランプ80をサブアセンブリ116に組み付ける。具体的には、クランプ80の開口88内にリングコード70を挿通させるとともに、リングコード70のケーブルの先端を、プリント基板50の表面上にはんだ付けする。リングコード70は、プリント基板50に実装された電子部品に電気的に接続される。サブアセンブリ116Mが得られる。
図12を参照して、次に、サブアセンブリ116Mを金型200内に配置する。金型200は、鋼材またはアルミ材などから形成され、複数の分割された部位から構成される。サブアセンブリ116Mは、これら複数の部位が分割された状態でこれらの部位内に配置される。これら複数の部位は、互いに組み合わされることにより、成形面201をそれらの内側に形成する。成形面201には、フッ素処理、シリコーン処理、梨時処理、およびメッキ処理などの表面処理が施されているとよい。
成形面201は、クランプ80の外形形状および前面カバー20の外形形状、ならびに上述の熱可塑性樹脂部122の対向部124の外形形状に対応する形状を有している。成形面201の形状は、中間品117(詳細は図14および図15を参照して後述する)をベース金具60内に挿し込む際の利便性を考慮して、クランプ80の外表面および前面カバー20の外表面が樹脂で被覆されないような形状を有していることが好ましい。
金型200が組み合わされた状態では、サブアセンブリ116Mのうちのリングコード70(ケーブル71の後端側の部分)は、成形面201から外部に引き出されている。プリント基板50、プリント基板50上の電子部品、前面カバー20、リングコード70(ケーブル71の先端側の部分、リング部材72)およびクランプ80は、金型200の成形面201内に配置されている。本実施の形態においては、サブアセンブリ116M(第1閉塞部材としての前面カバー20)が金型200内に配置される前の状態において、検出コイル部210は前面カバー20内において熱可塑性樹脂部122によって封止されている。
金型200は、成形ゲート202を有する。成形ゲート202は、成形面201の内側に樹脂を注入するための貫通孔として設けられている。サブアセンブリ116Mが金型200内に配置された後、成形ゲート202を通して高温の熱可塑性樹脂が金型200内に充填される。熱可塑性樹脂部122を形成する熱可塑性樹脂を充填可能な成型機としては、その樹脂充填圧力が0.1MPa〜10MPaの範囲で任意に調整できるのもが用いられるとよい。構造細部への樹脂充填性の観点からは、樹脂充填圧力は0.1MPa以上、より好ましくは1MPa以上の範囲に設定するとよい。内部部品に対するダメージ抑制の観点からは、樹脂充填圧力は、10MPa以下、より好ましくは6MPa以下の範囲に設定するとよい。
図13を参照して、熱可塑性樹脂を冷却固化させることにより、熱可塑性樹脂部122が形成される。冷却固化の際、熱可塑性樹脂の収縮作用によって熱可塑性樹脂は成形面201から離れる。冷却固化が完了した状態では、熱可塑性樹脂部122の内部に収縮応力はもはやほとんど残存していない。
熱可塑性樹脂部122は、前面カバー20の側(第1閉塞部材の側)からリングコード70およびクランプ80の側(第2閉塞部材の側)に向かって延びる形状を有している。プリント基板50および各種の電子部品は、熱可塑性樹脂部122により樹脂封止される。上述のとおり、熱可塑性樹脂部122の形成に用いられる熱可塑性樹脂としては、硬度(shoreD)が60以下のものが選定されている。
熱可塑性樹脂部122が形成されることにより、中間品117(図14および図15も参照)が作製される。中間品117は、プリント基板50、プリント基板50上の電子部品、前面カバー20、検出コイル部210、リングコード70、クランプ80、および封止樹脂部120(熱硬化性樹脂部121、熱可塑性樹脂部122)を含んでいる。
図14および図15を参照して、中間品117が金型200から取り外された後、ベース金具60が準備される。中間品117は、ベース金具60の開口61を通してベース金具60の中に挿し込まれる。ベース金具60の一方の開口61は、前面カバー20により塞がれる。ベース金具60の他方の開口62は、リングコード70およびクランプ80により塞がれる。熱可塑性樹脂部122の対向部124の外径D1は、ベース金具60の内表面63の内径D2に比べて小さい。中間品117をベース金具60の中に挿し込む際に、熱可塑性樹脂部122の対向部124がベース金具60の内表面63に接触することは抑制されており、容易に挿し込むことも可能となっている。
図16を参照して、その後、打痕、加締め、接着または溶着などの固定手段(図中の白色矢印参照)により、ベース金具60およびクランプ80が互いに固定され、ベース金具60および前面カバー20も互いに固定される。以上の工程により、図1中の近接センサ510が作製される。
(作用・効果)
近接センサ510においては、検出コイル部210が熱硬化性樹脂部121によって封止される。熱硬化性樹脂部121としては、エポキシ樹脂などが用いられる。検出コイル部210のコア体40は、フェライト等の焼成体を含んでいる。仮に、検出コイル部210が熱可塑性樹脂部によって封止されているとすると、検出コイル部210を構成しているコア体40および電磁コイル36は、外部から受ける応力が経時的に変化しやすくなる。
外部から受ける応力が増減すると、コア体40および電磁コイル36が形成する磁界の強度(磁束密度)が不安定になりやすい。具体的には、コア体40に加わる応力が変化すると、磁気弾性結合(磁歪)の影響により、コア体40の磁気特性が変化する。コア体40に加わる応力が変化すると、コア体40を構成する磁区が変化し、これに伴い磁束が変化する。コア体40に加わる応力が変化すると、コイル径やコイル線間距離が変化することもある。この場合、コイルのL値が変化したり、コイルのC値が変化したりする。これらの特性変動は、近接センサの検出感度の変動を招く。
検出コイル部210を封止する樹脂として熱硬化性樹脂を用いると、熱可塑性樹脂を用いる場合に比べて、検出コイル部210に作用する応力が長期的に安定する。たとえば、近接センサ510の製造直後、近接センサ510の検査後、近接センサ510の製品出荷後、および近接センサ510の使用時の各時点において、検出コイル部210が熱硬化性樹脂部121から受ける応力は、ほとんど変化しない。近接センサ510は、検出対象の接近または有無を安定した感度で検出することができる。
一方で、プリント基板50等は、熱可塑性樹脂部122によって封止される。熱可塑性樹脂部122としては、硬度(shoreD)が60以下の樹脂が用いられる。硬度が低い熱可塑性樹脂を用いて封止する場合、封止後に電子機器の内部に残留する応力を緩和することができる。熱可塑性樹脂部122を用いてプリント基板50等を封止したとしても、封止後にプリント基板50等に作用する応力は、熱硬化性樹脂部121を用いてプリント基板50等を封止する場合に比べて小さくなる。近接センサ510によれば、プリント基板50およびその上に実装された各電子部品に作用する応力を緩和することができる。
上述のとおり、好ましくは、熱可塑性樹脂部122の粘度は、TAインスツルメント社製のレオメーターAR2000EXを用いて測定したとき、測定時のせん断速度を10(1/s)とし、測定時の温度を190℃とすると、500mPa・s以上、10000mPa・s以下であるとよい。さらに好ましくは、熱可塑性樹脂部122の粘度は、TAインスツルメント社製のレオメーターAR2000EXを用いて測定したとき、測定時のせん断速度を10(1/s)とし、測定時の温度を190℃とすると、500mPa・s以上、8000mPa・s以下であるとよい。これらの構成によれば、熱硬化性樹脂部121と熱可塑性樹脂部122との間の界面において、熱可塑性樹脂部122を熱硬化性樹脂部121に良好に接着することが可能となる。
本実施の形態においては、プリント基板50等を封止する熱可塑性樹脂部122が、金型200を用いて形成される。その後、熱可塑性樹脂部122を含む中間品117がベース金具60の中に挿し込まれる。熱可塑性樹脂部122としては、硬度(shoreD)が60以下の樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂部122は、熱可塑性樹脂が固化することによって形成される。一方で、熱硬化性樹脂部は、熱硬化性樹脂が硬化することによって形成される。熱可塑性樹脂部122が形成される時に樹脂に発生する収縮率は、熱硬化性樹脂部が形成される時に樹脂に発生する収縮率に比べて大きい。
仮に、プリント基板50等が熱可塑性樹脂部122によって封止されていない状態で、ベース金具60の内部に配置されたとする。この場合、ベース金具60(収容部85)の内部に熱可塑性樹脂が充填されることによって、プリント基板50等を封止する熱可塑性樹脂部122が形成される。
この仮の構成においては、熱可塑性樹脂が固化する際に発生する収縮によって、前面カバー20およびベース金具60同士が嵌合している部分の近傍、クランプ80およびベース金具60同士が嵌合している部分の近傍、ならびに、クランプ80にリングコード70が挿通されている部分の近傍などには、気泡が形成されやすくなる。この気泡は、熱可塑性樹脂が固化する際に発生した収縮により収容部85内の嵌合部の近傍が負圧となり、外部から収容部85内に空気等が引き込まれて形成されるものである。気泡の残存は、嵌合部付近における耐水性の低下を招き、ひいては近接センサ510としての耐水性を低下させる。
本実施の形態においては、熱可塑性樹脂部122が金型200を用いて形成される。熱可塑性樹脂が金型200内で固化したとしても、金型200内に外部から空気等が引き込まれることはほとんどなく(若しくは容易に抑制または防止可能であり)、熱可塑性樹脂部122は、気泡がほとんど形成されない状態で成形面201の形状に対応するように形成されることができる。したがって近接センサ510および近接センサ510の製造方法によれば、従来に比して高い耐水性を発揮することが可能となる。熱可塑性樹脂部122を含む中間品117をベース金具60の中に挿し込む前に、熱可塑性樹脂部122が適切に形成されているかどうか(気泡が発生していないかなど)を目視で容易に確認することもでき、検査費用の低減を図ることも可能となっている。
[変形例]
図17〜図18を参照して、実施の形態1の変形例について説明する。ここでは、実施の形態1との相違点についてのみ説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。図17は、本変形例における近接センサの製造方法の工程を示す図である。図18は、本変形例における近接センサ520を示す断面図である。
図17および図18を参照して、近接センサ520(図18)においては、検出コイル部210も、熱可塑性樹脂部122によって封止されている。実施の形態1の封止樹脂部120は、熱硬化性樹脂部121および熱可塑性樹脂部122を含む。一方で近接センサ520の封止樹脂部は、実施の形態1における熱硬化性樹脂部121を含まず、熱可塑性樹脂部122により構成されている。
近接センサ520の製造方法としては、検出コイル部210が熱硬化性樹脂部121によって封止されていないサブアセンブリ116N(図17参照)が作製される。図17に示すサブアセンブリ116Nは、実施の形態1におけるサブアセンブリ116M(図10および図11参照)に対応している。サブアセンブリ116Nは、金型200内に配置される。サブアセンブリ116Nが金型200内に配置された後、成形ゲート202を通して高温の熱可塑性樹脂が金型200内に充填される。
図18を参照して、熱可塑性樹脂を冷却固化させることにより、熱可塑性樹脂部122が封止樹脂部として形成される。熱可塑性樹脂部122は、前面カバー20の側(第1閉塞部材の側)からリングコード70およびクランプ80の側(第2閉塞部材の側)に向かって延びる形状を有している。プリント基板50および各種の電子部品は、熱可塑性樹脂部122により樹脂封止される。熱可塑性樹脂部122の形成に用いられる熱可塑性樹脂としては、硬度(shoreD)が60以下のものが選定されている。
熱可塑性樹脂部122が形成されることにより、中間品(図14および図15に示す中間品117に対応)が作製される。この中間品は、プリント基板50、プリント基板50上の電子部品、前面カバー20、検出コイル部210、リングコード70、クランプ80、および封止樹脂部(熱可塑性樹脂部122)を含んでいる。中間品117は、ベース金具60の開口61を通してベース金具60の中に挿し込まれる。ベース金具60の一方の開口61は、前面カバー20により塞がれる。ベース金具60の他方の開口62は、リングコード70およびクランプ80により塞がれる。
その後、打痕、加締め、接着または溶着などの固定手段により、ベース金具60およびクランプ80が互いに固定され、ベース金具60および前面カバー20も互いに固定される。以上の工程により、図18中の近接センサ520が作製される。
本変形例においても、プリント基板50等を封止する熱可塑性樹脂部122が、金型200を用いて形成される。熱可塑性樹脂部122を含む中間品がベース金具60の中に挿し込まれる。熱可塑性樹脂部122としては、硬度(shoreD)が60以下の樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂が金型200内で固化したとしても、金型200内に外部から空気等が引き込まれることはほとんどなく(若しくは容易に抑制または防止可能であり)、熱可塑性樹脂部122は、気泡がほとんど形成されない状態で成形面201の形状に対応するように形成されることができる。したがって近接センサ520および近接センサ520の製造方法によっても、従来に比して高い耐水性を発揮することが可能となる。熱可塑性樹脂部122を含む中間品をベース金具60の中に挿し込む前に、熱可塑性樹脂部122が適切に形成されているかどうか(気泡が発生していないかなど)を目視で容易に確認することもでき、検査費用の低減を図ることも可能となっている。
[実施の形態2]
図19および図20を参照して、本実施の形態における近接センサ530について説明する。ここでは、実施の形態1との相違点についてのみ説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。図19は、近接センサ530を示す斜視図である。図20は、図19中のXX−XX線に沿った矢視断面図である。
近接センサ530は、ベース金具60(実施の形態1)の代わりにベース金具60Aを備え、封止樹脂部120とは異なる封止樹脂部140をさらに備えている。本体ケースとしてのベース金具60Aは、ベース金具60の構成に加えてゲート68をさらに有している。ゲート68は、近接センサ530の製造時、ベース金具60A内(収容部85内)に樹脂を注入するための貫通孔として設けられている。ゲート68は、ベース金具60A内(収容部85内)に樹脂を注入可能であれば、クランプ80に設けられていてもよい。好適には、ゲート68は部品同士が嵌合している嵌合部の近傍(たとえばベース金具60Aとクランプ80とが嵌合する部分の近傍)に設けられているとよい。近接センサ530の製造時において、嵌合部は強い接着性を持って接着されることが可能となる。
封止樹脂部140は、たとえば熱可塑性樹脂により形成されており、前面カバー20の側(第1閉塞部材の側)からリングコード70およびクランプ80の側(第2閉塞部材の側)に向かって延びる形状を有している。ここで言う延びる形状の技術的意義には、封止樹脂部140が、リングコード70およびクランプ80の側(第2閉塞部材の側)から前面カバー20の側(第1閉塞部材の側)に向かって延びる形状も含まれている。封止樹脂部140を形成するための熱可塑性樹脂としては、たとえば、熱可塑性樹脂部122を形成するための熱可塑性樹脂と同様なものが用いられる。
封止樹脂部140を形成するための樹脂としては、近接センサ530に求められる耐環境性能(耐熱性、耐薬品性、および耐切削油性など)に応じて、最適なものが選択されるとよい。耐熱性が求められる場合、融点もしくはガラス転移点が高い、熱可塑性樹脂群または熱硬化性樹脂群から選択することができる。耐環境性能として耐薬品性が求められる場合、当該薬品耐性を有する熱可塑性樹脂群または熱硬化性樹脂群から選択することができる。耐環境性能として耐切削油性が求められる場合、当該切削油耐性を有する熱可塑性樹脂群または熱硬化性樹脂群から選択することができる。
封止樹脂部140は、熱可塑性樹脂部122の外表面のうちのベース金具60の内表面63に対向する部分126を外側から取り囲むように、当該部分126の全周にわたって形成されている。実施の形態1でも述べたように、熱可塑性樹脂部122の外表面とは、熱可塑性樹脂部122の外縁(外形)を形成している表面部位である。当該部分126は、熱可塑性樹脂部122の外表面のうち、ベース金具60の内表面63に封止樹脂部140を介して対向する部位である。
当該部分126は、前面カバー20の側(第1閉塞部材の側)からリングコード70およびクランプ80の側(第2閉塞部材の側)に向かって延びる形状を有している。換言すると、当該部分126は、リングコード70およびクランプ80の側(第2閉塞部材の側)から前面カバー20の側(第1閉塞部材の側)に向かって延びる形状を有している。本実施の形態においては、収容部85内のうちの熱可塑性樹脂部122が形成されていない部分を封止するように封止樹脂部140が形成されている。
封止樹脂部140は、封止樹脂部140を形成する樹脂として熱可塑性樹脂部122を形成するための熱可塑性樹脂と同様なものが用いられる場合、ベース金具60Aと前面カバー20との間の接合性、および、ベース金具60Aとクランプ80との間の接合性を高めることができる。封止樹脂部140の体積は、熱可塑性樹脂部122の体積に比べて小さいとよい。当該構成によれば、封止樹脂部140を形成する際に電子部品等に発生する応力負荷を低減することができる。
(製造方法)
図21〜図24を参照して、近接センサ530(図19参照)の製造方法について説明する。図21〜図24は、それぞれ、当該製造方法の第1〜第4工程を示す図である。当該製造方法は、図21に示す第1工程の前に行なわれる図示しない工程をさらに含んでおり、その工程は、上述の実施の形態1における図8〜図11に記載の各工程と共通している。換言すると、図11に示すサブアセンブリ116Mが作製されるまでは、実施の形態1および実施の形態2の製造方法は互いに共通している。
図21を参照して、本実施の形態においては、サブアセンブリ116Mが金型250内に配置される。金型250は、複数の分割された部位から構成される。サブアセンブリ116Mは、これら複数の部位が分割された状態でこれらの部位内に配置される。これら複数の部位は、互いに組み合わされることにより、成形面251をそれらの内側に形成する。成形面251には、フッ素処理、シリコーン処理、梨時処理、およびメッキ処理などの表面処理が施されているとよい。
成形面251は、クランプ80の外形形状および前面カバー20の外形形状、ならびに上述の熱可塑性樹脂部122の外表面のうちのベース金具60の内表面63に対向する部分126の外形形状に対応する形状を有している。成形面251の形状は、中間品118(詳細は図22を参照して後述する)をベース金具60内に挿し込む際の利便性を考慮して、クランプ80の外表面および前面カバー20の外表面が樹脂で被覆されないような形状を有していることが好ましい。
成形面251のうち、プリント基板50の周囲に位置し、プリント基板50に間隔を空けてプリント基板50を取り囲んでいる部分の内径D3は、金型200(図12参照)の内径D3に対応する部分の内径に比べて小さい。金型250が組み合わされた状態では、サブアセンブリ116Mのうちのリングコード70(ケーブル71の後端側の部分)は、成形面251から外部に引き出されている。プリント基板50、プリント基板50上の電子部品、前面カバー20、リングコード70(ケーブル71の先端側の部分、リング部材72)およびクランプ80は、金型250の成形面251内に配置されている。
本実施の形態においては、サブアセンブリ116M(第1閉塞部材としての前面カバー20)が金型250内に配置される前の状態において、検出コイル部210は前面カバー20内において熱可塑性樹脂部122によって封止されている。この構成に限られず、上述の実施の形態1の変形例と同様に、検出コイル部210は熱可塑性樹脂部122によって必ずしも封止されていなくてもよい(図17参照)。
金型250は、成形ゲート252を有する。成形ゲート252は、成形面251の内側に樹脂を注入するための貫通孔として設けられている。サブアセンブリ116Mが金型250内に配置された後、成形ゲート252を通して高温の熱可塑性樹脂が金型250内に充填される。熱可塑性樹脂部122を形成する熱可塑性樹脂を充填可能な成型機としては、その樹脂充填圧力が0.1MPa〜10MPaの範囲で任意に調整できるのもが用いられるとよい。構造細部への樹脂充填性の観点からは、樹脂充填圧力は0.1MPa以上、より好ましくは1MPa以上の範囲に設定するとよい。内部部品に対するダメージ抑制の観点からは、樹脂充填圧力は、10MPa以下、より好ましくは6MPa以下の範囲に設定するとよい。
図22を参照して、熱可塑性樹脂を冷却固化させることにより、熱可塑性樹脂部122が形成される。冷却固化の際、熱可塑性樹脂の収縮作用によって熱可塑性樹脂は成形面251から離れる。冷却固化が完了した状態では、熱可塑性樹脂部122の内部に収縮応力はもはやほとんど残存していない。
熱可塑性樹脂部122は、前面カバー20の側(第1閉塞部材の側)からリングコード70およびクランプ80の側(第2閉塞部材の側)に向かって延びる形状を有している。プリント基板50および各種の電子部品は、熱可塑性樹脂部122により樹脂封止される。熱可塑性樹脂部122の形成に用いられる熱可塑性樹脂としては、硬度(shoreD)が60以下のものが選定されている。
熱可塑性樹脂部122が形成されることにより、中間品118が作製される。中間品118は、プリント基板50、プリント基板50上の電子部品、前面カバー20、検出コイル部210、リングコード70、クランプ80、および封止樹脂部120(熱硬化性樹脂部121、熱可塑性樹脂部122)を含んでいる。
図23を参照して、中間品118が金型250から取り外された後、ベース金具60Aが準備される。中間品118は、ベース金具60Aの開口61を通してベース金具60Aの中に挿し込まれる。ベース金具60Aの一方の開口61は、前面カバー20により塞がれる。ベース金具60Aの他方の開口62は、リングコード70およびクランプ80により塞がれる。
図24を参照して、打痕、加締め、接着または溶着などの固定手段により、ベース金具60Aおよびクランプ80が互いに固定され、ベース金具60Aおよび前面カバー20も互いに固定される。この固定工程は、この後に続く樹脂充填工程の後に実施してもよい。
中間品118をベース金具60A内に挿し込んだ状態においては、熱可塑性樹脂部122の外表面のうちのベース金具60Aの内表面63に対向する部分126を外側から取り囲むように、当該部分126の全周にわたって隙間132が形成されている。隙間132には、封止樹脂部140を形成するための充填樹脂が充填される。上述のとおり、封止樹脂部140を形成するための熱可塑性樹脂としては、熱可塑性樹脂部122を形成するための熱可塑性樹脂と同様なものが用いられるとよい。
より具体的には、ベース金具60Aを含むアセンブリを、位置決め用治具を用いて金型にセッティングする。ゲート68を通じて、高温の樹脂を隙間132内に注入する。充填樹脂を固化または硬化させることにより、封止樹脂部140(図20参照)が形成される。隙間132は、封止樹脂部140により樹脂封止される。封止樹脂部140は、ベース金具60Aと前面カバー20との間の接合性、および、ベース金具60Aとクランプ80との間の接合性を高めることができる。封止樹脂部140の体積は、熱可塑性樹脂部122の体積に比べて小さいとよい。当該構成によれば、封止樹脂部140を形成する際に電子部品等に発生する応力負荷を低減することができる。以上の工程により、図20および図21に示す近接センサ530が完成する。
上述のとおり、封止樹脂部140(図20参照)は、前面カバー20の側(第1閉塞部材の側)からリングコード70およびクランプ80の側(第2閉塞部材の側)に向かって延びる形状を有している。封止樹脂部140は、熱可塑性樹脂部122の外表面のうちのベース金具60の内表面63に対向する部分126を外側から取り囲むように、当該部分126の全周にわたって形成されている。
(作用・効果)
近接センサ530においても、検出コイル部210が熱硬化性樹脂部121によって封止される。熱硬化性樹脂部121としては、エポキシ樹脂などが用いられる。検出コイル部210に作用する応力は、長期的に安定する。近接センサ530は、検出対象の接近または有無を安定した感度で検出することができる。
プリント基板50等は、熱可塑性樹脂部122によって封止される。熱可塑性樹脂部122としては、硬度(shoreD)が60以下の樹脂が用いられる。近接センサ530によれば、プリント基板50およびその上に実装された各電子部品に作用する応力を緩和することができる。
好ましくは、熱可塑性樹脂部122の粘度は、TAインスツルメント社製のレオメーターAR2000EXを用いて測定したとき、測定時のせん断速度を10(1/s)とし、測定時の温度を190℃とすると、500mPa・s以上、10000mPa・s以下であるとよい。さらに好ましくは、熱可塑性樹脂部122の粘度は、TAインスツルメント社製のレオメーターAR2000EXを用いて測定したとき、測定時のせん断速度を10(1/s)とし、測定時の温度を190℃とすると、500mPa・s以上、8000mPa・s以下であるとよい。これらの構成によれば、熱硬化性樹脂部121と熱可塑性樹脂部122との間の界面において、熱可塑性樹脂部122を熱硬化性樹脂部121に良好に接着することが可能となる。封止樹脂部140と熱可塑性樹脂部122との間の界面においても、封止樹脂部140を熱可塑性樹脂部122に良好に接着することが可能となる。
本実施の形態においても、プリント基板50等を封止する熱可塑性樹脂部122が、金型250を用いて形成される。その後、熱可塑性樹脂部122を含む中間品118がベース金具60Aの中に挿し込まれる。熱可塑性樹脂部122としては、硬度(shoreD)が60以下の樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂部122は、熱可塑性樹脂が固化することによって形成される。
熱可塑性樹脂が金型250内で固化したとしても、金型250内に外部から空気等が引き込まれることはほとんどなく(若しくは容易に抑制または防止可能であり)、熱可塑性樹脂部122は、気泡がほとんど形成されない状態で成形面251の形状に対応するように形成されることができる。したがって近接センサ530および近接センサ530の製造方法によれば、従来に比して高い耐水性を発揮することが可能となる。熱可塑性樹脂部122を含む中間品118をベース金具60Aの中に挿し込む前に、熱可塑性樹脂部122が適切に形成されているかどうか(気泡が発生していないかなど)を目視で容易に確認することもでき、検査費用の低減を図ることも可能となっている。
[変形例]
図25〜図28を参照して、実施の形態2の変形例について説明する。ここでは、実施の形態2との相違点についてのみ説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。図25は、それぞれ、本変形例の製造方法の第1〜第4工程を示す図である。当該製造方法は、図25に示す第1工程の前に行なわれる図示しない工程をさらに含んでおり、その工程は、上述の実施の形態1における図8および図9に記載の各工程と共通している。
図25を参照して、本変形例の製造方法としては、検出コイル部210およびプリント基板50を含むサブアセンブリ116(図9も参照)が、実施の形態1と同様に作製される。図25に示すサブアセンブリ116は、実施の形態1におけるサブアセンブリ116(図9参照)に対応している。サブアセンブリ116は、金型270内に配置される。
金型270は、複数の分割された部位から構成される。サブアセンブリ116は、これら複数の部位が分割された状態でこれらの部位内に配置される。これら複数の部位は、互いに組み合わされることにより、成形面271をそれらの内側に形成する。成形面271には、フッ素処理、シリコーン処理、梨時処理、およびメッキ処理などの表面処理が施されているとよい。
成形面271は、プリント基板50の後端側の部分53の外形形状および前面カバー20の外形形状、ならびに熱可塑性樹脂部122の外表面のうちのベース金具60の内表面63に対向する部分126(図20参照)の外形形状に対応する形状を有している。成形面271の形状は、中間品119(詳細は図27を参照して後述する)をベース金具60A内に挿し込む際の利便性を考慮して、前面カバー20の外表面が樹脂で被覆されないような形状を有していることが好ましい。
成形面271のうち、プリント基板50の周囲に位置し、プリント基板50に間隔を空けてプリント基板50を取り囲んでいる部分の内径D4は、金型200(図12参照)の内径D4に対応する部分の内径に比べて小さい。金型270が組み合わされた状態では、プリント基板50、プリント基板50上の電子部品および前面カバー20は、金型250の成形面251内に配置されている。サブアセンブリ116のうちのプリント基板50の後端側の部分53は、成形面271に設けられた凹部273内に配置されている。
本実施の形態においては、サブアセンブリ116(第1閉塞部材としての前面カバー20)が金型270内に配置される前の状態において、検出コイル部210は前面カバー20内において熱可塑性樹脂部122によって封止されている。この構成に限られず、上述の実施の形態1の変形例と同様に、検出コイル部210は熱可塑性樹脂部122によって必ずしも封止されていなくてもよい(図17参照)。
金型270は、成形ゲート272を有する。成形ゲート272は、成形面271の内側に樹脂を注入するための貫通孔として設けられている。サブアセンブリ116が金型270内に配置された後、成形ゲート272を通して高温の熱可塑性樹脂が金型270内に充填される。熱可塑性樹脂部122を形成する熱可塑性樹脂を充填可能な成型機としては、その樹脂充填圧力が0.1MPa〜10MPaの範囲で任意に調整できるのもが用いられるとよい。構造細部への樹脂充填性の観点からは、樹脂充填圧力は0.1MPa以上、より好ましくは1MPa以上の範囲に設定するとよい。内部部品に対するダメージ抑制の観点からは、樹脂充填圧力は、10MPa以下、より好ましくは6MPa以下の範囲に設定するとよい。
図26を参照して、熱可塑性樹脂を冷却固化させることにより、熱可塑性樹脂部122が形成される。冷却固化の際、熱可塑性樹脂の収縮作用によって熱可塑性樹脂は成形面271から離れる。冷却固化が完了した状態では、熱可塑性樹脂部122の内部に収縮応力はもはやほとんど残存していない。
熱可塑性樹脂部122は、前面カバー20の側(第1閉塞部材の側)からプリント基板50(電子部品)が位置している側(第2閉塞部材が配置される側)に向かって延びる形状を有している。プリント基板50および各種の電子部品は、熱可塑性樹脂部122により樹脂封止される。熱可塑性樹脂部122の形成に用いられる熱可塑性樹脂としては、硬度(shoreD)が60以下のものが選定されている。
熱可塑性樹脂部122が形成されることにより、中間品119が作製される。中間品119は、プリント基板50、プリント基板50上の電子部品、前面カバー20、検出コイル部210および封止樹脂部120(熱硬化性樹脂部121、熱可塑性樹脂部122)を含んでいる。
図27を参照して、中間品119が金型270から取り外された後、リングコード70、クランプ80およびベース金具60Aが準備される。リングコード70およびクランプ80は、中間品119に組み付けられる。具体的には、クランプ80の開口88内にリングコード70を挿通させるとともに、リングコード70のケーブルの先端を、プリント基板50の後端側の部分53にはんだ付けする。リングコード70は、プリント基板50に実装された電子部品に電気的に接続される。中間品119を含むサブアセンブリ119M(図28参照)が得られる。
図28を参照して、その後、中間品119は、サブアセンブリ119M(図28参照)としてベース金具60Aの開口61を通してベース金具60Aの中に挿し込まれる。ベース金具60Aの一方の開口61は、前面カバー20により塞がれる。ベース金具60Aの他方の開口62は、リングコード70およびクランプ80により塞がれる。打痕、加締め、接着または溶着などの固定手段により、ベース金具60Aおよびクランプ80が互いに固定され、ベース金具60Aおよび前面カバー20も互いに固定される。この固定工程は、この後に続く樹脂充填工程の後に実施してもよい。
中間品119(サブアセンブリ119M)をベース金具60A内に挿し込んだ状態においては、熱可塑性樹脂部122の外表面のうちのベース金具60Aの内表面63に対向する部分126を外側から取り囲むように、当該部分126の全周にわたって隙間132が形成されている。隙間132には、封止樹脂部140を形成するための充填樹脂が充填される。封止樹脂部140を形成するための熱可塑性樹脂としては、熱可塑性樹脂部122を形成するための熱可塑性樹脂と同様なものが用いられるとよい。
より具体的には、ベース金具60Aを含むアセンブリを、位置決め用治具を用いて金型にセッティングする。ゲート68を通じて、高温の樹脂を隙間132内に注入する。充填樹脂を固化または硬化させることにより、封止樹脂部140(図20参照)が形成される。隙間132は、封止樹脂部140により樹脂封止される。封止樹脂部140は、ベース金具60Aと前面カバー20との間の接合性、および、ベース金具60Aとクランプ80との間の接合性を高めることができる。封止樹脂部140の体積は、熱可塑性樹脂部122の体積に比べて小さいとよい。当該構成によれば、封止樹脂部140を形成する際に電子部品等に発生する応力負荷を低減することができる。以上の工程により、図20および図21に示す近接センサ530と同様の構成を有する近接センサが完成する。
上述のとおり、封止樹脂部140(図20参照)は、前面カバー20の側(第1閉塞部材の側)からリングコード70およびクランプ80の側(第2閉塞部材の側)に向かって延びる形状を有している。封止樹脂部140は、熱可塑性樹脂部122の外表面のうちのベース金具60の内表面63に対向する部分126を外側から取り囲むように、当該部分126の全周にわたって形成されている。
(作用・効果)
本変形例の近接センサにおいても、検出コイル部210が熱硬化性樹脂部121によって封止される。熱硬化性樹脂部121としては、エポキシ樹脂などが用いられる。検出コイル部210に作用する応力は、長期的に安定する。本変形例の近接センサも、検出対象の接近または有無を安定した感度で検出することができる。
プリント基板50等は、熱可塑性樹脂部122によって封止される。熱可塑性樹脂部122としては、硬度(shoreD)が60以下の樹脂が用いられる。本変形例の近接センサによっても、プリント基板50およびその上に実装された各電子部品に作用する応力を緩和することができる。
好ましくは、熱可塑性樹脂部122の粘度は、TAインスツルメント社製のレオメーターAR2000EXを用いて測定したとき、測定時のせん断速度を10(1/s)とし、測定時の温度を190℃とすると、500mPa・s以上、10000mPa・s以下であるとよい。さらに好ましくは、熱可塑性樹脂部122の粘度は、TAインスツルメント社製のレオメーターAR2000EXを用いて測定したとき、測定時のせん断速度を10(1/s)とし、測定時の温度を190℃とすると、500mPa・s以上、8000mPa・s以下であるとよい。これらの構成によれば、熱硬化性樹脂部121と熱可塑性樹脂部122との間の界面において、熱可塑性樹脂部122を熱硬化性樹脂部121に良好に接着することが可能となる。封止樹脂部140と熱可塑性樹脂部122との間の界面においても、封止樹脂部140を熱可塑性樹脂部122に良好に接着することが可能となる。
本変形例においても、プリント基板50等を封止する熱可塑性樹脂部122が、金型270を用いて形成される。その後、熱可塑性樹脂部122を含む中間品118がベース金具60Aの中に挿し込まれる。熱可塑性樹脂部122としては、硬度(shoreD)が60以下の樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂部122は、熱可塑性樹脂が固化することによって形成される。
熱可塑性樹脂が金型270内で固化したとしても、金型270内に外部から空気等が引き込まれることはほとんどなく(若しくは容易に抑制または防止可能であり)、熱可塑性樹脂部122は、気泡がほとんど形成されない状態で成形面271の形状に対応するように形成されることができる。したがって本変形例の近接センサおよびその製造方法によっても、従来に比して高い耐水性を発揮することが可能となる。熱可塑性樹脂部122を含む中間品119をベース金具60Aの中に挿し込む前に、熱可塑性樹脂部122が適切に形成されているかどうか(気泡が発生していないかなど)を目視で容易に確認することもでき、検査費用の低減を図ることも可能となっている。
上述の各実施の形態および各変形例は、電子機器の一例として近接センサに基づいて説明したが、本発明は近接センサに限られない。本発明は、光電センサ、ファイバセンサ、または、スマートセンサなどに適用してもよい。
光電センサは、発光源から出射される光の様々な性質を利用して、物体の有無や表面状態の変化などを検出する。光電センサの検出部は、発光源として発光ダイオードまたは半導体レーザーなどを含む。ファイバセンサは、光電センサに光学ファイバを組み合わせたセンサである。ファイバセンサの検出部も、発光源として発光ダイオードまたは半導体レーザーなどを含む。スマートセンサは、近接センサや光電センサに、解析、情報処理の能力が付加されたセンサである。スマートセンサの検出部は、近接センサが基本構成として用いられる場合、上記の各実施の形態における検出コイル部に相当し、光電センサが基本構成として用いられる場合、発光源として発光ダイオードまたは半導体レーザーなどを含む。
以上、本発明に基づいた各実施の形態および各変形例について説明したが、今回開示された各実施の形態および各変形例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。