JP2014198677A - レチノイン酸等を含む神経変性疾患の治療及び/又は予防用医薬組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】神経変性疾患の治療及び予防、特にTDP-43の細胞内凝集体の形成に伴う疾患の予防及び治療に有用な医薬組成物等を提供する。【解決手段】本発明に係る神経変性疾患の治療及び/又は予防用医薬組成物は、レチノイン酸、若しくはそのプロドラッグ、又はそれらの薬理学的に許容し得る塩、あるいはそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含むものである。【選択図】なし
Description
本発明は、神経変性疾患の治療及び/又は予防用医薬組成物、並びにTDP-43の細胞内凝集体の形成阻害又は抑制剤等に関する。
TAR DNA-binding protein of 43 kDa(TDP-43)は、前頭側頭葉変性症 (frontoyrmporal lobar degeneration; FTLD) や筋萎縮性側索硬化症 (amyotrophic lateral sclerosis; ALS) の患者脳にみられるタウ陰性ユビキチン陽性封入体の主要構成成分として同定され(非特許文献1)、また、家族性および弧発性ALSにおいてはTDP-43の遺伝子変異が多数発見されたことから、ALSにおける神経変性の実行犯がTDP-43であることはほぼ確実となっている。このことは、TDP-43がALS治療のターゲットとなりうることを意味する。また、そのTDP-43の凝集体蓄積を伴う病変の拡大と臨床症状の進行とは非常によく一致することから、当該凝集体の形成は病気の発症や進行を促進する方向にあるものと考えられる。
一方で、TDP-43の異常が、上述したそれぞれの疾患において広い領域にわたっていることや、上記疾患以外にもアルツハイマー病やレビー小体型認知症において患者の30〜50%程度にその異常が認められると報告されている。また、嗜銀性顆粒認知症、ハンチントン病、ペリー症候群、Britishアミロイド症、グアムや紀伊半島のALS/パーキンソン認知症複合など、様々な神経変性疾患において、TDP-43の蓄積が認められることが報告されている(非特許文献2,3)。
したがって、TDP-43異常蓄積の阻害法及び阻害物質を探ることは、ALSやFTLDはもちろんのこと、TDP-43の蓄積を伴うその他の様々な神経変性疾患の治療法の開発に重要と考えられる。
したがって、TDP-43異常蓄積の阻害法及び阻害物質を探ることは、ALSやFTLDはもちろんのこと、TDP-43の蓄積を伴うその他の様々な神経変性疾患の治療法の開発に重要と考えられる。
Arai T, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 22; 351 (3): 602-611 (2006)
Arai T, et al., Neuropathology., 30(2): 170-181 (2010)
Chen-Plotkin AS et al., Nat. Rev. Neuro., 6(4): 211-220 (2010)
このような状況下において、神経変性疾患の治療及び予防、特にTDP-43の細胞内凝集体の形成に伴う疾患の予防及び治療に有用な医薬組成物等の開発が望まれていた。
本発明は、上記状況を考慮してなされたもので、以下に示す、神経変性疾患の治療及び/又は予防用医薬組成物、TDP-43の細胞内凝集体の形成阻害又は抑制剤、神経変性疾患の治療及び/又は予防方法、TDP-43の細胞内凝集体の形成阻害又は抑制方法、神経変性疾患の治療及び/又は予防用キット、並びに、TDP-43の細胞内凝集体の形成阻害又は抑制用キット等を提供するものである。
(1)レチノイン酸、若しくはそのプロドラッグ、又はそれらの薬理学的に許容し得る塩、あるいはそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む、神経変性疾患の治療及び/又は予防用医薬組成物。
上記(1)の医薬組成物は、例えば、神経変性疾患の進行抑制及び/又は再発防止用医薬組成物である。
上記(1)の医薬組成物において、神経変性疾患は、例えば、TDP-43の細胞内凝集体の形成に伴う疾患であり、具体的には、例えば、前頭側頭葉変性症又は筋萎縮性側索硬化症である。
上記(1)の医薬組成物は、例えば、神経変性疾患の進行抑制及び/又は再発防止用医薬組成物である。
上記(1)の医薬組成物において、神経変性疾患は、例えば、TDP-43の細胞内凝集体の形成に伴う疾患であり、具体的には、例えば、前頭側頭葉変性症又は筋萎縮性側索硬化症である。
上記(1)の医薬組成物は、例えば、さらに、メチレンブルー、ラトレピルジン、エキシフォン、ゴシペチン、コンゴレッド、ドネペジル、メマンチン、ガランタミン、リバスチグミン、アポモルヒネ塩酸塩水和物、アマンタジン塩酸塩、エンタカポン、カベルゴリン、セレギリン塩酸塩、ゾニサミド、タリペキソール塩酸塩、チアプリド塩酸塩、トリヘキシフェニジル塩酸塩、ドロキシドパ、ビペリデン塩酸塩、ピロヘプチン塩酸塩、プラミペキソール塩酸塩水和物、レボドパ、レボドパ・カルビドパ水和物、ブロモクリプチンメシル酸塩、ペルゴリドメシル酸塩、ロピニロール塩酸塩、リルゾール、メチルコバラミン及びエダラボンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものである。
(2)レチノイン酸、若しくはそのプロドラッグ、又はそれらの薬理学的に許容し得る塩、あるいはそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む、TDP-43の細胞内凝集体の形成阻害又は抑制剤。
上記(2)の形成阻害又は抑制剤は、例えば、さらに、メチレンブルー、ラトレピルジン、エキシフォン、ゴシペチン、コンゴレッド、ドネペジル、メマンチン、ガランタミン、リバスチグミン、アポモルヒネ塩酸塩水和物、アマンタジン塩酸塩、エンタカポン、カベルゴリン、セレギリン塩酸塩、ゾニサミド、タリペキソール塩酸塩、チアプリド塩酸塩、トリヘキシフェニジル塩酸塩、ドロキシドパ、ビペリデン塩酸塩、ピロヘプチン塩酸塩、プラミペキソール塩酸塩水和物、レボドパ、レボドパ・カルビドパ水和物、ブロモクリプチンメシル酸塩、ペルゴリドメシル酸塩、ロピニロール塩酸塩、リルゾール、メチルコバラミン及びエダラボンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものである。
上記(2)の形成阻害又は抑制剤は、例えば、さらに、メチレンブルー、ラトレピルジン、エキシフォン、ゴシペチン、コンゴレッド、ドネペジル、メマンチン、ガランタミン、リバスチグミン、アポモルヒネ塩酸塩水和物、アマンタジン塩酸塩、エンタカポン、カベルゴリン、セレギリン塩酸塩、ゾニサミド、タリペキソール塩酸塩、チアプリド塩酸塩、トリヘキシフェニジル塩酸塩、ドロキシドパ、ビペリデン塩酸塩、ピロヘプチン塩酸塩、プラミペキソール塩酸塩水和物、レボドパ、レボドパ・カルビドパ水和物、ブロモクリプチンメシル酸塩、ペルゴリドメシル酸塩、ロピニロール塩酸塩、リルゾール、メチルコバラミン及びエダラボンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものである。
(3)レチノイン酸、若しくはそのプロドラッグ、又はそれらの薬理学的に許容し得る塩、あるいはそれらの水和物若しくは溶媒和物を被験者に投与することを含む、神経変性疾患の治療及び/又は予防方法。
上記(3)の方法は、例えば、神経変性疾患の進行抑制及び/又は再発防止方法である。
上記(3)の方法は、例えば、さらに、メチレンブルー、ラトレピルジン、エキシフォン、ゴシペチン、コンゴレッド、ドネペジル、メマンチン、ガランタミン、リバスチグミン、アポモルヒネ塩酸塩水和物、アマンタジン塩酸塩、エンタカポン、カベルゴリン、セレギリン塩酸塩、ゾニサミド、タリペキソール塩酸塩、チアプリド塩酸塩、トリヘキシフェニジル塩酸塩、ドロキシドパ、ビペリデン塩酸塩、ピロヘプチン塩酸塩、プラミペキソール塩酸塩水和物、レボドパ、レボドパ・カルビドパ水和物、ブロモクリプチンメシル酸塩、ペルゴリドメシル酸塩、ロピニロール塩酸塩、リルゾール、メチルコバラミン及びエダラボンからなる群より選ばれる少なくとも1種を被験者に投与する(併用投与する)ことを含むものである。
上記(3)の方法は、例えば、神経変性疾患の進行抑制及び/又は再発防止方法である。
上記(3)の方法は、例えば、さらに、メチレンブルー、ラトレピルジン、エキシフォン、ゴシペチン、コンゴレッド、ドネペジル、メマンチン、ガランタミン、リバスチグミン、アポモルヒネ塩酸塩水和物、アマンタジン塩酸塩、エンタカポン、カベルゴリン、セレギリン塩酸塩、ゾニサミド、タリペキソール塩酸塩、チアプリド塩酸塩、トリヘキシフェニジル塩酸塩、ドロキシドパ、ビペリデン塩酸塩、ピロヘプチン塩酸塩、プラミペキソール塩酸塩水和物、レボドパ、レボドパ・カルビドパ水和物、ブロモクリプチンメシル酸塩、ペルゴリドメシル酸塩、ロピニロール塩酸塩、リルゾール、メチルコバラミン及びエダラボンからなる群より選ばれる少なくとも1種を被験者に投与する(併用投与する)ことを含むものである。
(4)レチノイン酸、若しくはそのプロドラッグ、又はそれらの薬理学的に許容し得る塩、あるいはそれらの水和物若しくは溶媒和物を用いることを含む、TDP-43の細胞内凝集体の形成阻害又は抑制方法。
上記(4)の方法は、例えば、さらに、メチレンブルー、ラトレピルジン、エキシフォン、ゴシペチン、コンゴレッド、ドネペジル、メマンチン、ガランタミン、リバスチグミン、アポモルヒネ塩酸塩水和物、アマンタジン塩酸塩、エンタカポン、カベルゴリン、セレギリン塩酸塩、ゾニサミド、タリペキソール塩酸塩、チアプリド塩酸塩、トリヘキシフェニジル塩酸塩、ドロキシドパ、ビペリデン塩酸塩、ピロヘプチン塩酸塩、プラミペキソール塩酸塩水和物、レボドパ、レボドパ・カルビドパ水和物、ブロモクリプチンメシル酸塩、ペルゴリドメシル酸塩、ロピニロール塩酸塩、リルゾール、メチルコバラミン及びエダラボンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることを含むものである。
上記(4)の方法は、例えば、さらに、メチレンブルー、ラトレピルジン、エキシフォン、ゴシペチン、コンゴレッド、ドネペジル、メマンチン、ガランタミン、リバスチグミン、アポモルヒネ塩酸塩水和物、アマンタジン塩酸塩、エンタカポン、カベルゴリン、セレギリン塩酸塩、ゾニサミド、タリペキソール塩酸塩、チアプリド塩酸塩、トリヘキシフェニジル塩酸塩、ドロキシドパ、ビペリデン塩酸塩、ピロヘプチン塩酸塩、プラミペキソール塩酸塩水和物、レボドパ、レボドパ・カルビドパ水和物、ブロモクリプチンメシル酸塩、ペルゴリドメシル酸塩、ロピニロール塩酸塩、リルゾール、メチルコバラミン及びエダラボンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることを含むものである。
(5)レチノイン酸、若しくはそのプロドラッグ、又はそれらの薬理学的に許容し得る塩、あるいはそれらの水和物若しくは溶媒和物を含む、神経変性疾患の治療及び/又は予防用キット。
上記(5)のキットは、例えば、神経変性疾患の進行抑制及び/又は再発防止用キットである。
上記(5)のキットは、例えば、さらに、メチレンブルー、ラトレピルジン、エキシフォン、ゴシペチン、コンゴレッド、ドネペジル、メマンチン、ガランタミン、リバスチグミン、アポモルヒネ塩酸塩水和物、アマンタジン塩酸塩、エンタカポン、カベルゴリン、セレギリン塩酸塩、ゾニサミド、タリペキソール塩酸塩、チアプリド塩酸塩、トリヘキシフェニジル塩酸塩、ドロキシドパ、ビペリデン塩酸塩、ピロヘプチン塩酸塩、プラミペキソール塩酸塩水和物、レボドパ、レボドパ・カルビドパ水和物、ブロモクリプチンメシル酸塩、ペルゴリドメシル酸塩、ロピニロール塩酸塩、リルゾール、メチルコバラミン及びエダラボンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものである。
上記(5)のキットは、例えば、神経変性疾患の進行抑制及び/又は再発防止用キットである。
上記(5)のキットは、例えば、さらに、メチレンブルー、ラトレピルジン、エキシフォン、ゴシペチン、コンゴレッド、ドネペジル、メマンチン、ガランタミン、リバスチグミン、アポモルヒネ塩酸塩水和物、アマンタジン塩酸塩、エンタカポン、カベルゴリン、セレギリン塩酸塩、ゾニサミド、タリペキソール塩酸塩、チアプリド塩酸塩、トリヘキシフェニジル塩酸塩、ドロキシドパ、ビペリデン塩酸塩、ピロヘプチン塩酸塩、プラミペキソール塩酸塩水和物、レボドパ、レボドパ・カルビドパ水和物、ブロモクリプチンメシル酸塩、ペルゴリドメシル酸塩、ロピニロール塩酸塩、リルゾール、メチルコバラミン及びエダラボンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものである。
(6)レチノイン酸、若しくはそのプロドラッグ、又はそれらの薬理学的に許容し得る塩、あるいはそれらの水和物若しくは溶媒和物を含む、TDP-43の細胞内凝集体の形成阻害又は抑制用キット。
上記(6)のキットは、例えば、さらに、メチレンブルー、ラトレピルジン、エキシフォン、ゴシペチン、コンゴレッド、ドネペジル、メマンチン、ガランタミン、リバスチグミン、アポモルヒネ塩酸塩水和物、アマンタジン塩酸塩、エンタカポン、カベルゴリン、セレギリン塩酸塩、ゾニサミド、タリペキソール塩酸塩、チアプリド塩酸塩、トリヘキシフェニジル塩酸塩、ドロキシドパ、ビペリデン塩酸塩、ピロヘプチン塩酸塩、プラミペキソール塩酸塩水和物、レボドパ、レボドパ・カルビドパ水和物、ブロモクリプチンメシル酸塩、ペルゴリドメシル酸塩、ロピニロール塩酸塩、リルゾール、メチルコバラミン及びエダラボンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものである。
上記(6)のキットは、例えば、さらに、メチレンブルー、ラトレピルジン、エキシフォン、ゴシペチン、コンゴレッド、ドネペジル、メマンチン、ガランタミン、リバスチグミン、アポモルヒネ塩酸塩水和物、アマンタジン塩酸塩、エンタカポン、カベルゴリン、セレギリン塩酸塩、ゾニサミド、タリペキソール塩酸塩、チアプリド塩酸塩、トリヘキシフェニジル塩酸塩、ドロキシドパ、ビペリデン塩酸塩、ピロヘプチン塩酸塩、プラミペキソール塩酸塩水和物、レボドパ、レボドパ・カルビドパ水和物、ブロモクリプチンメシル酸塩、ペルゴリドメシル酸塩、ロピニロール塩酸塩、リルゾール、メチルコバラミン及びエダラボンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものである。
本発明によれば、神経変性疾患の治療及び予防、特にTDP-43の細胞内凝集体の形成に伴う疾患の予防及び治療に有用な医薬組成物、さらには、神経変性疾患の治療及び/又は予防に有用な方法、並びに、神経変性疾患の治療及び/又は予防用キット等を提供することができる。また、本発明によれば、TDP-43の細胞内凝集体の形成阻害又は抑制剤、TDP-43の細胞内凝集体の形成阻害又は抑制方法、並びに、TDP-43の細胞内凝集体の形成阻害又は抑制用キット等も提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。なお、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。
1.本発明の概要
TAR DNA-binding protein of 43 kDa(TDP-43)は、前頭側頭葉変性症や筋萎縮性側索硬化症患者脳に見られるタウ陰性ユビキチン陽性封入体の主要構成成分として同定された。TDP-43は他の脳内凝集タンパク質と同様、リン酸化、断片化及びユビキチン化などの翻訳後修飾を受けており、その蓄積の拡大と臨床症状の進行が非常によく一致することから、細胞内におけるTDP-43凝集体の形成を阻害又は抑制することはTDP-43蓄積を伴う神経変性疾患において有効な治療法になると考えられる。
TAR DNA-binding protein of 43 kDa(TDP-43)は、前頭側頭葉変性症や筋萎縮性側索硬化症患者脳に見られるタウ陰性ユビキチン陽性封入体の主要構成成分として同定された。TDP-43は他の脳内凝集タンパク質と同様、リン酸化、断片化及びユビキチン化などの翻訳後修飾を受けており、その蓄積の拡大と臨床症状の進行が非常によく一致することから、細胞内におけるTDP-43凝集体の形成を阻害又は抑制することはTDP-43蓄積を伴う神経変性疾患において有効な治療法になると考えられる。
そこで、本発明者は、TDP-43凝集体形成細胞モデルを用いて、TDP-43プロテイノパチー(異常TDP-43の蓄積を伴う疾患)を含む各種神経変性疾患に対する新規治療薬の開発を目指して、迅速かつ簡便なハイスループット・スクリーニング法の開発を行うとともに、実際に、その方法を用いて凝集体形成阻害能をもつ低分子化合物のスクリーニングを行った。その結果、TDP-43の細胞内凝集体形成の阻害又は抑制能を有する化合物として、レチノイン酸を同定し、本発明を完成した。
2.医薬組成物等
本発明の神経変性疾患の治療及び/又は予防用医薬組成物(以下、「本発明の医薬組成物」ということがある)は、前述した通り、レチノイン酸、若しくはそのプロドラッグ、又はそれらの薬理学的に許容し得る塩、あるいはそれらの水和物若しくは溶媒和物(以下、「レチノイン酸等」ということがある)を有効成分として含むことを特徴とするものである。
なお、本発明は、(i)レチノイン酸等を用いること、具体的には例えばレチノイン酸等の有効量を被験者(神経変性疾患若しくはその恐れのある患者、又は健常者)に投与することを含む神経変性疾患の治療及び/又は予防方法、(ii)神経変性疾患の治療及び/又は予防用の薬剤を製造するためのレチノイン酸等の使用、(iii)神経変性疾患の治療及び/又は予防用のレチノイン酸等の使用、並びに、(iv)神経変性疾患の治療及び/又は予防用のレチノイン酸等も含むものである。
本発明の神経変性疾患の治療及び/又は予防用医薬組成物(以下、「本発明の医薬組成物」ということがある)は、前述した通り、レチノイン酸、若しくはそのプロドラッグ、又はそれらの薬理学的に許容し得る塩、あるいはそれらの水和物若しくは溶媒和物(以下、「レチノイン酸等」ということがある)を有効成分として含むことを特徴とするものである。
なお、本発明は、(i)レチノイン酸等を用いること、具体的には例えばレチノイン酸等の有効量を被験者(神経変性疾患若しくはその恐れのある患者、又は健常者)に投与することを含む神経変性疾患の治療及び/又は予防方法、(ii)神経変性疾患の治療及び/又は予防用の薬剤を製造するためのレチノイン酸等の使用、(iii)神経変性疾患の治療及び/又は予防用のレチノイン酸等の使用、並びに、(iv)神経変性疾患の治療及び/又は予防用のレチノイン酸等も含むものである。
本発明において、神経変性疾患の治療及び/又は予防としては、具体的には、例えば、神経変性疾患の進行抑制及び/又は再発防止等も含まれる。
本発明において、神経変性疾患としては、特に限定はされないが、例えば、TDP-43の細胞内凝集体(細胞内封入体ともいう)の形成に伴う疾患(すなわちTDP-43の細胞内蓄積に伴う疾患)として公知の又は未知の各種神経変性疾患が挙げられ、具体的には、例えば、前頭側頭葉変性症(FTLD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン舞踏病、プリオン病、レビー小体型認知症、嗜銀性顆粒認知症、ペリー症候群、Britishアミロイド症、グアムや紀伊半島のALS/パーキンソン認知症複合等が好ましく挙げられる。
本発明において、神経変性疾患としては、特に限定はされないが、例えば、TDP-43の細胞内凝集体(細胞内封入体ともいう)の形成に伴う疾患(すなわちTDP-43の細胞内蓄積に伴う疾患)として公知の又は未知の各種神経変性疾患が挙げられ、具体的には、例えば、前頭側頭葉変性症(FTLD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン舞踏病、プリオン病、レビー小体型認知症、嗜銀性顆粒認知症、ペリー症候群、Britishアミロイド症、グアムや紀伊半島のALS/パーキンソン認知症複合等が好ましく挙げられる。
本発明の医薬組成物の有効成分である、レチノイン酸は、公知の市販のものを使用することができるが、限定はされず、独自に合成、抽出及び精製等したものを使用してもよい。なお、レチノイン酸は下記構造式で表されるものである。
本発明の医薬組成物の有効成分としては、レチノイン酸と共に又はレチノイン酸に代えて、レチノイン酸誘導体を用いることもできる。当該誘導体としては、レチノイン酸由来の化学構造を有する等、当業者の技術常識に基づいてレチノイン酸の誘導体と考えられるものであればよく、限定はされないが、TDP-43の細胞内凝集体形成の抑制又は阻害能がレチノイン酸と同程度ものが好ましい。
本発明に用いるレチノイン酸やその誘導体としては、例えば、生体内で酸化、還元、加水分解、又は抱合などの代謝を受けるものも包含するほか、生体内で酸化、還元、又は加水分解などの代謝を受けてレチノイン酸やその誘導体を生成する化合物(いわゆるプロドラッグ)も含まれる。本発明において、プロドラッグとは、薬理学的に許容し得る、通常プロドラッグにおいて使用される基で親化合物を修飾した化合物をいい、例えば、安定性や持続性の改善等の特性が付与され、腸管内等で親化合物に変換されて効果を発現することが期待できる化合物をいう。例えば、レチノイン酸等の化合物のプロドラッグは、対応するハロゲン化物等のプロドラッグ化試薬を用いて、常法により、当該化合物中のプロドラッグ化の可能な基(例えば、水酸基、アミノ基、その他の基)から選択される1以上の任意の基に、常法に従い適宜プロドラッグを構成する基を導入した後、必要に応じ、単離精製することにより製造することができる。ここで、上記プロドラッグを構成する基としては、限定はされないが、例えば、低級アルキル−CO−、低級アルキル−O−低級アルキレン−CO−、低級アルキル−OCO−低級アルキレン−CO−、低級アルキル−OCO−、及び低級アルキル−O−低級アルキレン−OCO−等が好ましく挙げられる。
本発明の医薬組成物の有効成分としては、レチノイン酸やレチノイン酸誘導体やそれらのプロドラッグと共に、又はレチノイン酸やレチノイン酸誘導体やそれらのプロドラッグに代えて、それらの薬理学的に許容し得る塩を用いることもできる。
レチノイン酸及びその誘導体の薬理学的に許容し得る塩としては、限定はされないが、例えば、ハロゲン化水素酸塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、及びヨウ化水素酸塩など)、無機酸塩(例えば、硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、炭酸塩、及び重炭酸塩など)、有機カルボン酸塩(例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、及びクエン酸塩など)、有機スルホン酸塩(例えば、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、及びカンファースルホン酸塩など)、アミノ酸塩(例えば、アスパラギン酸塩、及びグルタミン酸塩など)、四級アミン塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、及びカリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム塩、及びカルシウム塩など)などが好ましく挙げられる。
レチノイン酸及びその誘導体の薬理学的に許容し得る塩としては、限定はされないが、例えば、ハロゲン化水素酸塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、及びヨウ化水素酸塩など)、無機酸塩(例えば、硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、炭酸塩、及び重炭酸塩など)、有機カルボン酸塩(例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、及びクエン酸塩など)、有機スルホン酸塩(例えば、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、及びカンファースルホン酸塩など)、アミノ酸塩(例えば、アスパラギン酸塩、及びグルタミン酸塩など)、四級アミン塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、及びカリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム塩、及びカルシウム塩など)などが好ましく挙げられる。
本発明に用いるレチノイン酸等は、化合物の構造上生じ得るすべての異性体(例えば、幾何異性体、不斉炭素に基づく光学異性体、回転異性体、立体異性体、及び互変異性体等)及びこれら異性体の2種以上の混合物をも包含し、便宜上の構造式の記載等に限定されるものではない。また、レチノイン酸等は、S-体、R-体あるいはRS-体のいずれであってもよく、限定はされない。さらに、レチノイン酸等は、その種類により水和物や溶媒和物の形で存在する場合もあり、本発明においては当該水和物及び溶媒和物もレチノイン酸等に含むものとし、本発明の医薬組成物の有効成分として用いることができる。当該溶媒和物としては、限定はされないが、例えば、エタノールとの溶媒和物等が挙げられる。
本発明の医薬組成物において、有効成分としてのレチノイン酸等の含有割合は、限定はされず、適宜設定することができるが、例えば、医薬組成物全体に対して、0.01〜99重量%の範囲内とすることができ、好ましくは、0.01〜30重量%、より好ましくは0.05〜20重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%の範囲内としてもよい。有効成分の含有割合が上記範囲内であることにより、本発明の医薬組成物は、各種神経細胞におけるTDP-43の細胞内凝集体形成の抑制又は阻害効果、ひいては、神経変性疾患の治療及び/又は予防効果、例えば、神経変性疾患の進行抑制及び/又は再発防止効果を十分に発揮することができる。
本発明の医薬組成物は、レチノイン酸等以外にも、本発明の効果が著しく損なわれない範囲で他の成分を含んでいてもよい。例えば、本発明においては、レチノイン酸等と共に、メチレンブルー、ラトレピルジン、エキシフォン、ゴシペチン及びコンゴレッド等のうちの1種又は2種以上の低分子化合物も、TDP-43の細胞内凝集体形成の抑制又は阻害効果を有する有効成分として、使用することができる。また、本発明においては、レチノイン酸等と共に、ドネペジル、メマンチン、ガランタミン及びリバスチグミン等のアルツハイマー病治療薬として公知の薬剤、アポモルヒネ塩酸塩水和物、アマンタジン塩酸塩、エンタカポン、カベルゴリン、セレギリン塩酸塩、ゾニサミド、タリペキソール塩酸塩、チアプリド塩酸塩、トリヘキシフェニジル塩酸塩、ドロキシドパ、ビペリデン塩酸塩、ピロヘプチン塩酸塩、プラミペキソール塩酸塩水和物、レボドパ、レボドパ・カルビドパ水和物、ブロモクリプチンメシル酸塩、ペルゴリドメシル酸塩及びロピニロール塩酸塩等のパーキンソン病治療薬として公知の薬剤、並びに、リルゾール、メチルコバラミン及びエダラボン等の筋萎縮性側索硬化症治療薬として公知の又は開発中の薬剤等のうちの1種又は2種以上を、併用することもできる。さらに、本発明の医薬組成物は、例えば、後述する薬剤製造上一般に用いられるもの等を含むことができる。
本発明の医薬組成物は、ヒト又は非ヒト哺乳動物に対して、種々の投与経路、具体的には、経口、又は非経口(例えば静脈内注射(静注)、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、直腸投与、経皮投与)で投与することができる。従って、本発明に使用するレチノイン酸等は、単独で用いることも可能であるが、投与経路に応じて慣用される方法により薬学的に許容し得る担体を用いて適当な剤形に製剤化して用いることができる。
剤形としては、経口剤では、例えば、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、被覆錠剤、カプセル剤、内用水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、及びトローチ剤等が挙げられ、非経口剤では、例えば、注射剤(点滴剤を含む)、吸入剤、軟膏剤、点鼻剤、及びリポソーム剤等が挙げられる。なお、上述した各種経口剤とする場合、本発明の医薬組成物は、場合によりサプリメント剤(例えば機能性食品に該当する)として利用することもできる。
剤形としては、経口剤では、例えば、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、被覆錠剤、カプセル剤、内用水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、及びトローチ剤等が挙げられ、非経口剤では、例えば、注射剤(点滴剤を含む)、吸入剤、軟膏剤、点鼻剤、及びリポソーム剤等が挙げられる。なお、上述した各種経口剤とする場合、本発明の医薬組成物は、場合によりサプリメント剤(例えば機能性食品に該当する)として利用することもできる。
これら製剤の製剤化に用い得る担体としては、例えば、通常用いられる賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、及び矯味矯臭剤のほか、必要に応じ、安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、増量剤、湿潤化剤、表面活性化剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、及び無痛化剤等が挙げられ、医薬品製剤の原料として用いることができる公知の成分を配合して常法により製剤化することが可能である。
当該成分として使用可能な無毒性のものとしては、例えば、大豆油、牛脂、及び合成グリセライド等の動植物油;流動パラフィン、スクワラン、及び固形パラフィン等の炭化水素;ミリスチン酸オクチルドデシル、及びミリスチン酸イソプロピル等のエステル油;セトステアリルアルコール、及びベヘニルアルコール等の高級アルコール;シリコン樹脂;シリコン油;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、及びポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー等の界面活性剤;ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、及びメチルセルロース等の水溶性高分子;エタノール、及びイソプロパノール等の低級アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、及びポリエチレングリコール等の多価アルコール(ポリオール);グルコース、及びショ糖等の糖;無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、及びケイ酸アルミニウム等の無機粉体;塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム等の無機塩;精製水等が挙げられ、いずれもその塩またはその水和物であってもよい。
賦形剤としては、例えば、乳糖、果糖、コーンスターチ、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビット、結晶セルロース、及び二酸化ケイ素等が、結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール・ポリオキシエチレン・ブロックポリマー、及びメグルミン等が、崩壊剤としては、例えば、澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、及びカルボキシメチルセルロース・カルシウム等が、滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、及び硬化植物油等が、着色剤としては医薬品に添加することが許可されているものが、矯味矯臭剤としては、例えば、ココア末、ハッカ脳、芳香散、ハッカ油、竜脳、及び桂皮末等が、それぞれ好ましく挙げられ、いずれもその塩又はそれらの水和物であってもよい。
本発明の医薬組成物の投与量は、一般には、製剤中の有効成分(レチノイン酸等)の配合割合を考慮した上で、投与対象(患者)の年齢、体重、病気の種類・進行状況や、投与経路、投与回数(/1日)、投与期間等を勘案し、適宜、広範囲に設定することができる。
本発明の医薬組成物を、非経口剤又は経口剤として用いる場合について、以下に具体的に説明する。
本発明の医薬組成物を、非経口剤又は経口剤として用いる場合について、以下に具体的に説明する。
非経口剤として用いる場合、一般にその形態は限定されないが、各種注射剤の場合は、例えば、単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態や、使用時に溶解液に再溶解させる凍結乾燥粉末の状態で提供され得る。当該非経口剤には、有効成分となるレチノイン酸等のほかに、各種形態に応じ、公知の各種賦形材や添加剤を上記有効成分の効果が損なわれない範囲で含有することができる。例えば、各種注射剤の場合は、水、グリセロール、プロピレングリコールや、ポリエチレングリコール等の脂肪族ポリアルコール等が挙げられる。
非経口剤の投与量(1日あたり)は、限定はされないが、例えば各種注射剤であれば、一般には、有効成分となるレチノイン酸等を、適用対象(被験者、患者)の体重1kgあたり、0.1〜50 mg服用できる量とすることができ、あるいは0.5〜20 mg服用できる量や1〜10 mg服用できる量とすることもできる。
非経口剤の投与量(1日あたり)は、限定はされないが、例えば各種注射剤であれば、一般には、有効成分となるレチノイン酸等を、適用対象(被験者、患者)の体重1kgあたり、0.1〜50 mg服用できる量とすることができ、あるいは0.5〜20 mg服用できる量や1〜10 mg服用できる量とすることもできる。
経口剤として用いる場合、一般にその形態は限定されず、前述した剤形のいずれであってもよいし、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。当該経口剤には、有効成分となるレチノイン酸等のほかに、各種形態に応じ、公知の各種賦形材や添加剤を上記有効成分の効果が損なわれない範囲で含有することができる。例えば、結合剤(シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、ポリビニルピロリドン等)、充填材(乳糖、糖、コーンスターチ、馬鈴薯でんぷん、リン酸カルシウム、ソルビトール、グリシン等)、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ等)、崩壊剤(各種でんぷん等)、および湿潤剤(ラウリル硫酸ナトリウム等)等が挙げられる。
経口剤の投与量(1日あたり)は、一般には、有効成分となるレチノイン酸等を、適用対象(被験者、患者)の体重1 kgあたり0.1〜100 mg服用できる量とすることができ、あるいは0.5〜50 mg服用できる量や1〜10 mg服用できる量とすることもできる。また、経口剤中の有効成分の配合割合は、限定はされず、1日あたりの投与回数等を考慮して、適宜設定することができる。
また、本発明においては、レチノイン酸等を有効成分として含む、TDP-43の細胞内凝集体の形成阻害又は抑制剤を提供することもできる。
さらに、本発明は、(i) レチノイン酸等を用いること、具体的には例えばレチノイン酸等の有効量を被験者に投与することを含むTDP-43の細胞内凝集体の形成阻害又は抑制方法、(ii) TDP-43の細胞内凝集体の形成阻害又は抑制剤を製造するためのレチノイン酸等の使用、(iii) TDP-43の細胞内凝集体の形成阻害又は抑制用のレチノイン酸等の使用、並びに、(iv) TDP-43の細胞内凝集体の形成阻害又は抑制用のレチノイン酸等も含むものである。
さらに、本発明は、(i) レチノイン酸等を用いること、具体的には例えばレチノイン酸等の有効量を被験者に投与することを含むTDP-43の細胞内凝集体の形成阻害又は抑制方法、(ii) TDP-43の細胞内凝集体の形成阻害又は抑制剤を製造するためのレチノイン酸等の使用、(iii) TDP-43の細胞内凝集体の形成阻害又は抑制用のレチノイン酸等の使用、並びに、(iv) TDP-43の細胞内凝集体の形成阻害又は抑制用のレチノイン酸等も含むものである。
なお、上記のTDP-43の細胞内凝集体の形成阻害又は抑制剤等に係る発明における、レチノイン酸等の詳細や、当該阻害又は抑制剤等におけるレチノイン酸等の含有割合、当該阻害又は抑制剤等の使用及び投与態様などの全ての詳細については、前述した本発明の医薬組成物に関する説明を適宜参酌することができる。
3.キット
各種神経変性疾患の治療及び/又は予防、例えば、神経変性疾患の進行抑制及び/又は再発防止を行うに当たっては、レチノイン酸等を含むキット(具体例として、前述した本発明の医薬組成物を含むキット)を用いることができる。
当該キットにおけるレチノイン酸等の形態は、限定はされないが、安定性(保存性)及び使用容易性等を考慮し、例えば溶解した状態で備えられていてもよい。
当該キットは、レチノイン酸等以外にも、適宜、他の構成要素を含むことができる。
各種神経変性疾患の治療及び/又は予防、例えば、神経変性疾患の進行抑制及び/又は再発防止を行うに当たっては、レチノイン酸等を含むキット(具体例として、前述した本発明の医薬組成物を含むキット)を用いることができる。
当該キットにおけるレチノイン酸等の形態は、限定はされないが、安定性(保存性)及び使用容易性等を考慮し、例えば溶解した状態で備えられていてもよい。
当該キットは、レチノイン酸等以外にも、適宜、他の構成要素を含むことができる。
当該キットは、構成要素として少なくとも前述したレチノイン酸等を備えているものであればよい。従って、各種神経変性疾患の治療及び/又は予防に必須となる構成要素の全てを、当該レチノイン酸等と共に備えているものであってもよいし、別々に備えているものであってもよく、限定はされない。
また、本発明においては、レチノイン酸等を含む、TDP-43の細胞内凝集体の形成阻害又は抑制用キットを提供することもできる。当該キットにおけるレチノイン酸等の形態や他の構成要素などの全ての詳細については、前述した神経変性疾患の治療及び/又は予防用のキットに関する説明を適宜参酌することができる。
また、本発明においては、レチノイン酸等を含む、TDP-43の細胞内凝集体の形成阻害又は抑制用キットを提供することもできる。当該キットにおけるレチノイン酸等の形態や他の構成要素などの全ての詳細については、前述した神経変性疾患の治療及び/又は予防用のキットに関する説明を適宜参酌することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
I.材料及び方法
(1)TDP-43蓄積細胞モデル(TDP-43の細胞内凝集体形成を生じる細胞モデル)の作製
FTLD又はALS患者脳内で見られるのと同じ長さのTDP-43のC末断片(アミノ酸番号:162-414)のコンストラクトを発現する細胞、および、TDP-43の塩基性配列に富む2箇所の配列(アミノ酸番号:78-84とアミノ酸番号:187-192の計13アミノ酸残基)を欠損させたコンストラクトを発現する細胞を作製し、使用した。これら細胞では、FTLD又はALS患者脳内でみられるTDP-43の細胞内凝集体と同様、細胞内で形成された凝集体がリン酸化及びユビキチン化されることが確認されている(WO 2009-125646参照)。上記各細胞の作製は、以下の手順に従って行った。
(1)TDP-43蓄積細胞モデル(TDP-43の細胞内凝集体形成を生じる細胞モデル)の作製
FTLD又はALS患者脳内で見られるのと同じ長さのTDP-43のC末断片(アミノ酸番号:162-414)のコンストラクトを発現する細胞、および、TDP-43の塩基性配列に富む2箇所の配列(アミノ酸番号:78-84とアミノ酸番号:187-192の計13アミノ酸残基)を欠損させたコンストラクトを発現する細胞を作製し、使用した。これら細胞では、FTLD又はALS患者脳内でみられるTDP-43の細胞内凝集体と同様、細胞内で形成された凝集体がリン酸化及びユビキチン化されることが確認されている(WO 2009-125646参照)。上記各細胞の作製は、以下の手順に従って行った。
(1-1)各種プラスミドベクターの構築
pRc-CMVベクター(Buratti E et al., EMBO J., 2001, vol. 20(7), p. 1774-1784参照)のCMVプロモーター下流のNot Iサイト及びApa Iサイト間にヒトTDP-43遺伝子(配列番号1)が挿入されたベクター(pRc-CMV-TDP-43)を鋳型として、PCR法により、ヒトTDP-43遺伝子のコード領域を増幅した。当該PCRは、下記のプライマーセットを使用し、下記の反応液組成及び反応条件で行った。
pRc-CMVベクター(Buratti E et al., EMBO J., 2001, vol. 20(7), p. 1774-1784参照)のCMVプロモーター下流のNot Iサイト及びApa Iサイト間にヒトTDP-43遺伝子(配列番号1)が挿入されたベクター(pRc-CMV-TDP-43)を鋳型として、PCR法により、ヒトTDP-43遺伝子のコード領域を増幅した。当該PCRは、下記のプライマーセットを使用し、下記の反応液組成及び反応条件で行った。
<プライマーセット>
Fプライマー:
5'-CGGGATCC ATGTCTGAATATATTCGGGT-3'(配列番号3)
Rプライマー:
5'-GCTCTAGA CTACATTCCCCAGCCAGAAG-3'(配列番号4)
Fプライマー:
5'-CGGGATCC ATGTCTGAATATATTCGGGT-3'(配列番号3)
Rプライマー:
5'-GCTCTAGA CTACATTCCCCAGCCAGAAG-3'(配列番号4)
<反応液組成>
鋳型DNA (pRc-CMV-TDP-43; 100μg/μl): 1μL
TaqDNAポリメラーゼ: 1 unit
Fプライマー (20μM): 1μL
Rプライマー (20μM): 1μL
dNTP (2.5mM each): 5μL
10×Buffer: 5μL
滅菌水: 適量 (約36μL)
合 計: 50μL
鋳型DNA (pRc-CMV-TDP-43; 100μg/μl): 1μL
TaqDNAポリメラーゼ: 1 unit
Fプライマー (20μM): 1μL
Rプライマー (20μM): 1μL
dNTP (2.5mM each): 5μL
10×Buffer: 5μL
滅菌水: 適量 (約36μL)
合 計: 50μL
<反応条件>
「95℃で30秒間の熱変性・解離 → 50℃で30秒間のアニーリング → 72℃で120秒間の合成・伸長」を1サイクルとするサイクル条件で、計30サイクル。
「95℃で30秒間の熱変性・解離 → 50℃で30秒間のアニーリング → 72℃で120秒間の合成・伸長」を1サイクルとするサイクル条件で、計30サイクル。
上記PCRにより得られた増幅断片を、pcDNA3 (+)ベクター(インビトロジェン社)のMCSのBamHIサイトおよびXbaIサイト間に挿入し、pcDNA3-TDP43 WTベクターを作製した。
次いで、野生型ヒトTDP-43又はその一部(アミノ酸残基番号:162-414)と、GFPとの融合タンパク質をコードする塩基配列を有するプラスミドベクターを作製した。具体的には、まず、pcDNA3-TDP43 WTを鋳型として、PCR法により、野生型TDP-43をコードする塩基配列の全部又は所望の一部を増幅した。当該PCRは、下記のいずれかのプライマーセットを使用し、下記の反応液組成及び反応条件で行った。
<プライマーセット>
・野生型TDP-43(アミノ酸残基番号:1-414)をコードする塩基配列の増幅用
Fプライマー:
5'-CCGCTCGAGCT ATGTCTGAATATATTCGGGTAACCGAA-3'(配列番号5)
Rプライマー:
5'-CGGGATCC CTACATTCCCCAGCCAGAAG-3'(配列番号6)
・野生型TDP-43(アミノ酸残基番号:1-414)をコードする塩基配列の増幅用
Fプライマー:
5'-CCGCTCGAGCT ATGTCTGAATATATTCGGGTAACCGAA-3'(配列番号5)
Rプライマー:
5'-CGGGATCC CTACATTCCCCAGCCAGAAG-3'(配列番号6)
・TDP-43の一部(アミノ酸残基番号:162-414)をコードする塩基配列の増幅用
Fプライマー:
5'-CCGCTCGAGCT ATGTCACAGCGACATATGA-3'(配列番号7)
Rプライマー:
5'-CGGGATCC CTACATTCCCCAGCCAGAAG-3'(配列番号6)
Fプライマー:
5'-CCGCTCGAGCT ATGTCACAGCGACATATGA-3'(配列番号7)
Rプライマー:
5'-CGGGATCC CTACATTCCCCAGCCAGAAG-3'(配列番号6)
<反応液組成>
鋳型DNA (pcDNA3-TDP43 WT; 100μg/μl): 1μL
TaqDNAポリメラーゼ: 1 unit
Fプライマー (20μM): 1μL
Rプライマー (20μM): 1μL
dNTP (2.5mM each): 5μL
10×Buffer: 5μL
滅菌水: 適量 (約36μL)
合 計: 50μL
鋳型DNA (pcDNA3-TDP43 WT; 100μg/μl): 1μL
TaqDNAポリメラーゼ: 1 unit
Fプライマー (20μM): 1μL
Rプライマー (20μM): 1μL
dNTP (2.5mM each): 5μL
10×Buffer: 5μL
滅菌水: 適量 (約36μL)
合 計: 50μL
<反応条件>
「95℃で30秒間の熱変性・解離 → 55℃で30秒間のアニーリング → 72℃で120秒間の合成・伸長」を1サイクルとするサイクル条件で、計30サイクル。
「95℃で30秒間の熱変性・解離 → 55℃で30秒間のアニーリング → 72℃で120秒間の合成・伸長」を1サイクルとするサイクル条件で、計30サイクル。
上記PCRにより得られた各増幅断片を、それぞれpEGFP-C1(クロンテック社;GenBankアクセッション番号:U55763)のMCSのBamHIサイトおよびXhoIサイト間に挿入し、GFPとの融合タンパク質をコードする塩基配列を有するプラスミドベクターを、それぞれ作製した。各ベクターの名称及び概要を以下に列挙した。
・GFP-TDP-43 WT:
GFPと野生型TDP-43(アミノ酸残基番号:1-414(全長))との融合タンパク質をコー ド。
・GFP-TDP 162-414:
GFPとTDP-43の一部(アミノ酸残基番号:162-414)との融合タンパク質をコード。
GFPと野生型TDP-43(アミノ酸残基番号:1-414(全長))との融合タンパク質をコー ド。
・GFP-TDP 162-414:
GFPとTDP-43の一部(アミノ酸残基番号:162-414)との融合タンパク質をコード。
他方、上記GFP-TDP-43 WTを鋳型とし、QuickChange Site-directed Mutagenesis Kit(ストラテジーン社)を用いて、TDP-43の核移行シグナル(NLS1,アミノ酸残基番号:78-84)及び核移行シグナル類似配列(NLS2,アミノ酸残基番号:187-192)の両配列の欠損変異体と、GFPとの融合タンパク質をコードする塩基配列を有するプラスミドベクターを作製した。ベクターの名称及び概要を以下に示した。
・GFP-TDP 43-ΔNLS1&2:
GFPと、NLS1及びNLS2の両欠損変異体(アミノ酸残基番号:74-84及びアミノ酸残基 番号:187-192を欠損)との融合タンパク質をコード。
GFPと、NLS1及びNLS2の両欠損変異体(アミノ酸残基番号:74-84及びアミノ酸残基 番号:187-192を欠損)との融合タンパク質をコード。
(1-2)SH-SY5Y細胞の培養およびプラスミドベクターの導入
神経芽細胞SH-SY5Yは、10%仔牛血清を含むDMEM/F12培地を用いて37℃、5% CO2の条件のインキュベーター中で培養した。
上記1-1項で作製した各種プラスミドベクター(GFP-TDP 162-414又はGFP-TDP 43-ΔNLS1&2,1μg)を、FuGENE6トランスフェクション試薬(ロシュ・ダイアグノスティックス社)を用いて、SH-SY5Y細胞に導入した。具体的には、総プラスミド量の3倍容量のFuGENE6をプラスミドと混合し、15分間室温で静置した後、細胞液に混合した。その後、細胞を2〜3日間培養し、TDP-43蓄積細胞モデルを作製し、下記のスクリーニング方法等に用いた。
神経芽細胞SH-SY5Yは、10%仔牛血清を含むDMEM/F12培地を用いて37℃、5% CO2の条件のインキュベーター中で培養した。
上記1-1項で作製した各種プラスミドベクター(GFP-TDP 162-414又はGFP-TDP 43-ΔNLS1&2,1μg)を、FuGENE6トランスフェクション試薬(ロシュ・ダイアグノスティックス社)を用いて、SH-SY5Y細胞に導入した。具体的には、総プラスミド量の3倍容量のFuGENE6をプラスミドと混合し、15分間室温で静置した後、細胞液に混合した。その後、細胞を2〜3日間培養し、TDP-43蓄積細胞モデルを作製し、下記のスクリーニング方法等に用いた。
(2)TDP-43の細胞内凝集体形成の阻害又は抑制能を有する薬剤化合物のスクリーニング、及び、当該阻害又は抑制能の評価
(2-1)前記1-2項で作製したTDP-43蓄積細胞モデルを用いたフローサイトメトリー法(FACS)による、TDP-43の細胞内凝集体形成の阻害又は抑制能を有する薬剤化合物のハイスループット・スクリーニング法を用いて、実際に既存薬ライブラリーのスクリーニングを行った。
具体的には、前記TDP-43蓄積細胞モデルを作製した後、6時間後より薬剤処理を開始した。添加薬剤としては、既存薬ライブラリーの各化合物と、ポジティブコントロールとして、TDP-43の細胞内凝集体形成の阻害能を有することが公知のディメボン(Dimebone:Yamashita M, et al., FEBS Lett., 2009, Jul 21;583(14):2419-2424参照)(一般名:ラトレピルジン)を使用した。また、ネガティブコントロールとして、ジメチルスルホキシド(DMSO)(溶媒)を同量添加して用いた。
具体的には、前記TDP-43蓄積細胞モデルを作製した後、6時間後より薬剤処理を開始した。添加薬剤としては、既存薬ライブラリーの各化合物と、ポジティブコントロールとして、TDP-43の細胞内凝集体形成の阻害能を有することが公知のディメボン(Dimebone:Yamashita M, et al., FEBS Lett., 2009, Jul 21;583(14):2419-2424参照)(一般名:ラトレピルジン)を使用した。また、ネガティブコントロールとして、ジメチルスルホキシド(DMSO)(溶媒)を同量添加して用いた。
4日後に細胞を回収し、1 mlのPBSに懸濁したものをフローサイトメトリー法に供し、GFP蛍光強度を指標にして、添加薬剤のTDP-43細胞内凝集体形成の阻害又は抑制能を評価した。このモデルでは、凝集体が形成されるとGFPタンパク質も同時に凝集してくるため、GFPの蛍光強度が増し、その結果、凝集体形成細胞は、GFP蛍光強度が高い細胞として検出される。よって、得られたヒストグラムよりGFP強発現細胞の割合を算出し、薬剤未処理群(ネガティブコントロール)と比較することによって、各薬剤化合物のTDP-43細胞内凝集体形成の阻害又は抑制能を評価した。
(2-2)前記1-2項で作製したTDP-43蓄積細胞モデルを用いて、ウエスタンブロッティング法(WB)により、TDP-43細胞内凝集体形成の阻害又は抑制能を検証した。前記TDP-43蓄積細胞モデルを作製した後、6時間後より薬剤処理を開始した(添加薬剤等は、前記2-1項に記載したものと同じ。)。
3日後に細胞を回収し、1% TritonX-100(以下Tx)含有細胞溶解液中で細胞を超音波破砕した後、15,000 rpmで30分間遠心することにより、可溶性画分とTx不溶性画分とに分画した後、ウエスタンブロッティング法に供した。Tx不溶性画分中の異常リン酸化TDP-43量を指標に、添加薬剤のTDP-43細胞内凝集体形成の阻害又は抑制効果を検証した。
3日後に細胞を回収し、1% TritonX-100(以下Tx)含有細胞溶解液中で細胞を超音波破砕した後、15,000 rpmで30分間遠心することにより、可溶性画分とTx不溶性画分とに分画した後、ウエスタンブロッティング法に供した。Tx不溶性画分中の異常リン酸化TDP-43量を指標に、添加薬剤のTDP-43細胞内凝集体形成の阻害又は抑制効果を検証した。
より詳しくは、可溶性画分のウエスタンブロットでは、1次抗体として抗TDP-43抗体(10782−1−AP、ProteinTech)、2次抗体としてBiotinilated Anti-Rabbit IgG (H+L)(Vector Laboratories)を用いた。他方、不溶性画分のウエスタンブロットでは、1次抗体として自作の抗リン酸化TDP-43(pS409/410)抗体(Arai T, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 22;351(3):602−611(2006))、2次抗体としてBiotinilated Anti-Rabbit IgG (H+L)(Vector Laboratories)を用いた。
得られたブロットデータはImageJで解析され、TDP-43のリン酸化の割合が算出された。このTDP-43のリン酸化の割合に基づいて、候補薬物の凝集体形成抑制能が評価された。サンプル1つあたり実験2回が行われた。
得られたブロットデータはImageJで解析され、TDP-43のリン酸化の割合が算出された。このTDP-43のリン酸化の割合に基づいて、候補薬物の凝集体形成抑制能が評価された。サンプル1つあたり実験2回が行われた。
(2-3)前記1-2項で作製したTDP-43蓄積モデルを用いて、免疫染色法を用いて、蛍光顕微鏡観察により、TDP-43細胞内凝集体形成の阻害又は抑制能を検証した。前記TDP-43蓄積細胞モデルを作製した後、6時間後より薬剤処理を開始した(添加薬剤等は、前記2-1項に記載したものと同じ。)。
3日後に細胞を固定し、異常リン酸化TDP-43を認識する抗体で染色後、共焦点レーザー生物顕微鏡にてGFP強度を指標に、添加薬剤のTDP-43細胞内凝集体形成の阻害又は抑制能を評価した。
3日後に細胞を固定し、異常リン酸化TDP-43を認識する抗体で染色後、共焦点レーザー生物顕微鏡にてGFP強度を指標に、添加薬剤のTDP-43細胞内凝集体形成の阻害又は抑制能を評価した。
より詳しくは、トランスフェクション3日後に、トランスフェクタントは、4%パラホルムアルデヒド(和光純薬工業株式会社)を用いてカバーグラス上に室温で30分間固定した。また、膜透過処理は、0.2%(v/v)TritonX−100を含むPBSを用いて室温で10分間行った。さらに、ブロッキングは、5% BSAを含むPBSを用いて室温で30分間行った。その後、適切に希釈した1次抗体及び2次抗体それぞれを用いて、抗原抗体反応を37℃で1時間ずつ行った。1次抗体として抗リン酸化TDP-43(pS409/410)抗体、2次抗体としてAlexa−568標識抗ウサギ抗体を用いた。細胞の核は、TO−PRO−3(Molecular Probes、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)により37℃で1時間染色した。前記トランスフェクタントは、ProLong Gold antifade reagent(カタログ番号:P36934、インビトロジェン株式会社)で封入し、共焦点顕微鏡(カールツァイスマイクロスコピー株式会社)により観察した。この評価システムでは、TDP-43の細胞内凝集体が形成されると、GFPも同時に凝集され、その結果として、GFPの蛍光強度が増加し、TDP-43凝集体を形成する細胞はGFPの蛍光強度が高い細胞として検出される。したがって、候補薬物のTDP-43細胞内凝集体形成の阻害又は抑制能は、GFの蛍光強度を指標に評価できる。この評価システムでは、レーザーの波長(488nm)は、TDP-43細胞内凝集体のみを検出できるように調節された。また、TO−PRO−3の染色シグナルを視野内の細胞数とみなすことによって、TDP-43細胞内凝集体形成の割合を算出した。サンプル1つあたり視野8つ以上の画像データを取得し、数値化して、評価した。
II.結果
前記(2-1)〜(2-3)の方法により検証及び評価した結果を、それぞれ順に、図1〜3に示した。これらの結果から、TDP-43の細胞内凝集体形成の阻害又は抑制能を有する化合物として、レチノイン酸を同定した。なお、各図では、「ctrl」はDMSO、「DB」はディメボン(一般名:ラトレピルジン)、「4B8」はレチノイン酸を表す。
前記(2-1)〜(2-3)の方法により検証及び評価した結果を、それぞれ順に、図1〜3に示した。これらの結果から、TDP-43の細胞内凝集体形成の阻害又は抑制能を有する化合物として、レチノイン酸を同定した。なお、各図では、「ctrl」はDMSO、「DB」はディメボン(一般名:ラトレピルジン)、「4B8」はレチノイン酸を表す。
III.考察
ALSやFTLDにおいて見られる異常凝集体の主要構成成分としてTDP-43が同定されたことにより、神経変性疾患患者脳内に見られる凝集タンパク質のうち主だったものはほぼ同定されたと言われている。その後、様々な分子生物学的・生化学的解析が行われた結果、それら凝集体形成タンパク質(タウ、α-シヌクレイン、TDP-43など)は、それぞれ相互に全く配列相同性がないにも関わらず、いずれも種々の翻訳後修飾、特にリン酸化や断片化という共通の修飾受けて細胞内に蓄積していることが明らかとなった。つまり、細胞内凝集体を伴う神経変性疾患には共通の発症・進行メカニズムが存在すると考えられる。したがって、TDP-43凝集体形成阻害因子の同定は、TDP-43だけでなく、その他の凝集タンパク質に対しても広く阻害効果を発揮しうる可能性が期待される。
ALSやFTLDにおいて見られる異常凝集体の主要構成成分としてTDP-43が同定されたことにより、神経変性疾患患者脳内に見られる凝集タンパク質のうち主だったものはほぼ同定されたと言われている。その後、様々な分子生物学的・生化学的解析が行われた結果、それら凝集体形成タンパク質(タウ、α-シヌクレイン、TDP-43など)は、それぞれ相互に全く配列相同性がないにも関わらず、いずれも種々の翻訳後修飾、特にリン酸化や断片化という共通の修飾受けて細胞内に蓄積していることが明らかとなった。つまり、細胞内凝集体を伴う神経変性疾患には共通の発症・進行メカニズムが存在すると考えられる。したがって、TDP-43凝集体形成阻害因子の同定は、TDP-43だけでなく、その他の凝集タンパク質に対しても広く阻害効果を発揮しうる可能性が期待される。
配列番号3:合成DNA
配列番号4:合成DNA
配列番号5:合成DNA
配列番号6:合成DNA
配列番号7:合成DNA
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Claims (13)
- レチノイン酸、若しくはそのプロドラッグ、又はそれらの薬理学的に許容し得る塩、あるいはそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む、神経変性疾患の治療及び/又は予防用医薬組成物。
- 神経変性疾患の進行抑制及び/又は再発防止用医薬組成物である、請求項1記載の組成物。
- 神経変性疾患が、TDP-43の細胞内凝集体の形成に伴う疾患である、請求項1又は2記載の組成物。
- 神経変性疾患が、前頭側頭葉変性症又は筋萎縮性側索硬化症である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
- さらに、メチレンブルー、ラトレピルジン、エキシフォン、ゴシペチン、コンゴレッド、ドネペジル、メマンチン、ガランタミン、リバスチグミン、アポモルヒネ塩酸塩水和物、アマンタジン塩酸塩、エンタカポン、カベルゴリン、セレギリン塩酸塩、ゾニサミド、タリペキソール塩酸塩、チアプリド塩酸塩、トリヘキシフェニジル塩酸塩、ドロキシドパ、ビペリデン塩酸塩、ピロヘプチン塩酸塩、プラミペキソール塩酸塩水和物、レボドパ、レボドパ・カルビドパ水和物、ブロモクリプチンメシル酸塩、ペルゴリドメシル酸塩、ロピニロール塩酸塩、リルゾール、メチルコバラミン及びエダラボンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
- レチノイン酸、若しくはそのプロドラッグ、又はそれらの薬理学的に許容し得る塩、あるいはそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む、TDP-43の細胞内凝集体の形成阻害又は抑制剤。
- さらに、メチレンブルー、ラトレピルジン、エキシフォン、ゴシペチン、コンゴレッド、ドネペジル、メマンチン、ガランタミン、リバスチグミン、アポモルヒネ塩酸塩水和物、アマンタジン塩酸塩、エンタカポン、カベルゴリン、セレギリン塩酸塩、ゾニサミド、タリペキソール塩酸塩、チアプリド塩酸塩、トリヘキシフェニジル塩酸塩、ドロキシドパ、ビペリデン塩酸塩、ピロヘプチン塩酸塩、プラミペキソール塩酸塩水和物、レボドパ、レボドパ・カルビドパ水和物、ブロモクリプチンメシル酸塩、ペルゴリドメシル酸塩、ロピニロール塩酸塩、リルゾール、メチルコバラミン及びエダラボンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項6記載の阻害又は抑制剤。
- レチノイン酸、若しくはそのプロドラッグ、又はそれらの薬理学的に許容し得る塩、あるいはそれらの水和物若しくは溶媒和物を被験者に投与することを含む、神経変性疾患の治療及び/又は予防方法。
- 神経変性疾患の進行抑制及び/又は再発防止方法である、請求項8記載の方法。
- レチノイン酸、若しくはそのプロドラッグ、又はそれらの薬理学的に許容し得る塩、あるいはそれらの水和物若しくは溶媒和物を用いることを含む、TDP-43の細胞内凝集体の形成阻害又は抑制方法。
- レチノイン酸、若しくはそのプロドラッグ、又はそれらの薬理学的に許容し得る塩、あるいはそれらの水和物若しくは溶媒和物を含む、神経変性疾患の治療及び/又は予防用キット。
- 神経変性疾患の進行抑制及び/又は再発防止用キットである、請求項11記載のキット。
- レチノイン酸、若しくはそのプロドラッグ、又はそれらの薬理学的に許容し得る塩、あるいはそれらの水和物若しくは溶媒和物を含む、TDP-43の細胞内凝集体の形成阻害又は抑制用キット。
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JP2013074114A JP2014198677A (ja) | 2013-03-29 | 2013-03-29 | レチノイン酸等を含む神経変性疾患の治療及び/又は予防用医薬組成物 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2020231024A1 (ko) * | 2019-05-14 | 2020-11-19 | 주식회사 노브메타헬스 | 고시페틴을 포함하는 퇴행성 뇌질환 예방 또는 치료용 조성물 |
-
2013
- 2013-03-29 JP JP2013074114A patent/JP2014198677A/ja active Pending
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