以下、本発明の実施の形態によるサスペンション制御装置を、鉄道車両に搭載した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
図1ないし図9は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、鉄道車両1は、例えば乗客、乗員等が乗車する車体2と、車体2の下側に設けられた前側,後側の台車3とを備えている。これらの台車3は、車体2の前部側と後部側とに離間して配置され、各台車3にはそれぞれ4個の車輪4が設けられている。鉄道車両1は、各車輪4が左,右のレール5(一方のみ図示)上を回転することによりレール5に沿って、例えば前進時に矢示A方向に走行駆動される。
車体2と各台車3との間には、それぞれの台車3上で車体2を弾性的に支持する複数の懸架ばね6と、各懸架ばね6と並列関係をなすように配置された複数の減衰力調整式ダンパ(以下、ダンパ7という)とが設けられている。図2に示すように、これらのダンパ7は、車体2の前部側に位置する前側台車3の左,右両側(FL,FR側)にそれぞれ配置されると共に、後部側に位置する後側台車3の左,右両側(RL,RR側)にもそれぞれ配置されている。
各ダンパ7は、それぞれの減衰力を個別に調整可能なシリンダ装置として、例えば、セミアクティブダンパと呼ばれる減衰力調整式の油圧緩衝器を用いて構成されている。このため、ダンパ7は、台車3に対する車体2の上,下方向の振動に対して振動を低減させるような減衰力を発生することにより、車体2の上,下方向の振動を低減する。
図3に示すように、ダンパ7は、被取付側となる車体2と路面側となる台車3との間に配置され、作動流体(作動油)が封入された筒状のシリンダ8と、シリンダ8の内部に摺動変位可能に設けられたピストン9と、一端側(図3の上端側)がシリンダ8の一端から外部に延出されると共に他端側(図3の下端側)がピストン9に連結されたピストンロッド10と、ピストンロッド10の周囲を覆うカバー11とを備えている。図4に示すように、シリンダ8内には、ピストン9によって上側油室8Aと下側油室8Bの2室が画成されている。
また、ダンパ7には、アクチュエータ12が搭載されている。このアクチュエータ12は、ピストン9の摺動によって生じる作動流体の流れを制御して減衰力を発生させる減衰力調整機構を構成する。アクチュエータ12には、上側油室8Aと下側油室8Bとを連通させる伸び側通路13および縮み側通路14が設けられている。
伸び側通路13には、伸び側減衰力調整手段としての伸び用バルブ15が設けられている。この伸び用バルブ15は、上側油室8A内が所定圧力を越えたときに、上側油室8A側から下側油室8B側への油液の流通を許容して減衰力を発生させる。
縮み側通路14には、縮み側減衰力調整手段としての縮み用バルブ16が設けられている。この縮み用バルブ16は、下側油室8B内が所定圧力を越えたときに、下側油室8B側から上側油室8A側への油液の流通を許容して減衰力を発生させる。
これらのバルブ15,16は、例えばソレノイド15A,16Aを備えた比例ソレノイドバルブによって構成される。ソレノイド15A,16Aには、後述の制御装置20から供給される推力指令信号S0に応じた駆動電流I1,I2が供給され、この駆動電流I1,I2に応じてバルブ15,16の弁開度が調整される。
これにより、ソレノイド15Aに供給する駆動電流I1を制御することで、ダンパ7の伸び行程時の減衰力をハードとソフトの間で調整することができる。同様に、ソレノイド16Aに供給する駆動電流I2を制御することで、ダンパ7の縮み行程時の減衰力をハードとソフトの間で調整することができる。このとき、駆動電流I1,I2は、最小値となるリミット値Imin(例えばImin=0A)から最大値Imax(例えばImax=1A)の間で変化する。そして、バルブ15,16は、駆動電流I1,I2が小さいときに減衰力が小さいソフトな特性(軟特性)になり、駆動電流I1,I2が大きいときに減衰力が大きいハードな特性(硬特性)になる。
これにより、アクチュエータ12は、伸び側と縮み側の発生減衰力の特性(減衰力特性)をハードな特性からソフトな特性に連続的に調整する。この結果、ダンパ7は、伸び側と縮み側の減衰力がいずれもソフトな特性、伸び側と縮み側の減衰力がいずれもハードな特性、伸び側の減衰力がソフトで縮み側の減衰力がハードな特性、伸び側の減衰力がハードで縮み側の減衰力がソフトな特性に無段階で切換えることができる。なお、アクチュエータ12は、減衰力特性を連続的でなくとも、2段階または複数段階に調整可能なものであってもよい。
加速度センサ17は、鉄道車両1の振動を検出する振動検出手段を構成している。図2に示すように、加速度センサ17は、鉄道車両1の異なる複数個所にそれぞれ搭載されている。具体的には、加速度センサ17は、鉄道車両1に合計4個搭載されると共に、これらの加速度センサ17は、車体2の前,後方向と左,右方向に離間した4隅側の位置にそれぞれ配置され、それぞれの位置で車体2の上,下方向の加速度をばね上加速度として検出する。
なお、加速度センサ17は、必ずしも4個設ける必要はなく、1〜3個でもよく、5個以上でもよい。また、振動検出手段は、必ずしも上,下方向のばね上加速度を検出するものに限らず、左,右方向や前,後方向のばね上加速度を検出するものでもよい。さらに、振動検出手段は、鉄道車両1の振動を検出するものであればよく、ばね上加速度に限らず、ばね上速度、ばね下加速度、ばね下速度等を検出するものでもよい。
図5に示すように、減衰力調整制御手段としての制御装置20は、マイクロコンピュータ等からなるCPU21と、各バルブ15,16に対応して設けられ電源装置22に接続されたソレノイド15A,16Aと、各ソレノイド15A,16Aを駆動するソレノイド駆動回路23と、を含む。また、制御装置20は、ROM、RAM等からなる記憶部20Aを有しており、この記憶部20Aには、図7に示す後述の処理プログラム等が格納されている。このとき、CPU21は計算部を構成し、ソレノイド駆動回路23は出力調整手段を構成している。
CPU21は、ばね上加速度センサ17の検出結果に基づき、伸び側または縮み側の推力指令信号S0をダンパ7毎に計算する。具体的には、CPU21は、後述の処理プログラムを実行し、例えばスカイフック理論に基づいて、ばね上加速度センサ17から得た振動の検出結果から目標減衰力を算出すると共に、この目標減衰力に応じた推力指令信号S0を出力する。
また、CPU21は、DA変換器を備え、推力指令信号S0として正と負の両極性のアナログ電圧を出力する。このとき、推力指令信号S0は、縮み側の推力指令、即ち縮ます方向の推力指令を発生させるときには正の値になる。また、推力指令信号S0は、伸び側の推力指令、即ち伸ばす方向の推力指令を発生させるときには負の値になる。なお、推力指令信号S0の正、負と縮み側、伸び側の関係は逆でもよい。
ソレノイド駆動回路23は、4本のダンパ7に対応して4個設けられる。これら4個のソレノイド駆動回路23は、いずれも同一の構成および作用を有する。従って、図5において、1個のソレノイド駆動回路23を詳細に記載し、残余の3個のソレノイド駆動回路23は簡略化して示す。
ソレノイド駆動回路23は、電圧整形回路24および電流制御回路29,30を備えている。
電圧整形回路24は、CPU21の出力端子に接続され、伸び・縮み指令信号出力手段を構成する。この電圧整形回路24は、推力指令信号S0の値に基づいて、縮み側の推力指令信号(伸び難く、縮み易くなる指令信号)に基づいた伸びバルブ用電流指令電圧信号S1と、伸び側の推力指令信号(縮み難く、伸び易くなる指令信号)に基づいた縮みバルブ用電流指令電圧信号S2とを出力する(図8参照)。図6に示すように、電圧整形回路24は、分岐部25、極性反転回路26および電流制限回路27,28によって構成される。
分岐部25は、CPU21の出力端子と極性反転回路26および電流制限回路27の入力端子とを接続する接続点によって構成される。このため、推力指令信号S0は、極性反転回路26と電流制限回路27とに入力される。
極性反転回路26は、例えば演算増幅器26Aを含む反転増幅回路によって構成される。演算増幅器26Aの反転入力端子は、抵抗26Bを介してCPU21の出力端子に接続されると共に、抵抗26Cを介して演算増幅器26Aの出力端子に接続されている。また、演算増幅器26Aの非反転入力端子は、グランドに接続されている。このため、極性反転回路26は、CPU21から出力される推力指令信号S0の極性を反転させると共に、抵抗26B,26Cの抵抗値に応じたゲインで増幅した反転推力指令信号(−S0)を出力する。このとき、極性反転回路26のゲインは例えば0dBに設定され、反転推力指令信号(−S0)の振幅は、推力指令信号S0の振幅と同じ値になっている。なお、極性反転回路26のゲインは、ソレノイド16A等の特性に応じて適宜変更してもよい。
電流制限回路27は、伸びバルブ用電流指令電圧信号S1がソフト側、つまりある一定値Imin以下のときに、ソレノイド15Aに供給する駆動電流I1を一定のリミット値Imin(例えばImin=0A)に制限する電流制限手段を構成している。この電流制限回路27は、演算増幅器27Aとダイオード27Bとを備える。演算増幅器27Aの反転入力端子と出力端子は互いに接続されると共に、出力端子はダイオード27Bのアノードに接続されている。ダイオード27Bのカソードは抵抗27Cを介して分岐部25に接続されると共に、電流制御回路29に接続されている。また、演算増幅器27Aの非反転入力端子には、リミット値Iminを設定する設定電圧V0が入力される。例えばリミット値Iminを0A程度に設定するときは、設定電圧V0は、ダイオード27Bの電圧降下を考慮して、0.5V程度に設定される。なお、設定電圧V0は、リミット値Iminに応じて適宜変更することができる。
例えばダイオード27Bのカソードがアノードよりも高い電圧になると、ダイオード27Bは遮断状態になる。このとき、電流制限回路27は、推力指令信号S0と同じ電圧値となった伸びバルブ用電流指令電圧信号S1を出力する。一方、例えばダイオード27Bのカソードがアノードよりも低い電圧になると、ダイオード27Bは導通状態になる。このとき、電流制限回路27は、設定電圧V0よりもダイオード27Bの電圧降下分だけ低い電圧値となった伸びバルブ用電流指令電圧信号S1を出力する。
電流制限回路28は、縮みバルブ用電流指令電圧信号S2がソフト側、つまりある一定の値Imin以下のときに、ソレノイド16Aに供給する駆動電流I2を一定のリミット値Iminに制限する電流制限手段を構成している。図6に示すように、電流制限回路28は、電流制限回路27とほぼ同様に構成され、演算増幅器28Aとダイオード28Bとを備える。演算増幅器28Aの反転入力端子と出力端子は互いに接続されると共に、出力端子はダイオード28Bのアノードに接続されている。ダイオード28Bのカソードは抵抗28Cを介して極性反転回路26の出力端子に接続されると共に、電流制御回路30に接続されている。また、演算増幅器28Aの非反転入力端子には、リミット値Iminを設定する設定電圧V0が入力される。なお、駆動電流I2のリミット値Iminは、駆動電流I1のリミット値Iminと同じ値でもよく、異なる値でもよい。駆動電流I1,I2のリミット値Iminは、ソレノイド15A,16A等の仕様に応じて適宜設定することができる。
例えばダイオード28Bのカソードがアノードよりも高い電圧になるときには、電流制限回路28は、反転推力指令信号(−S0)と同じ電圧値となった縮みバルブ用電流指令電圧信号S2を出力する。一方、例えばダイオード28Bのカソードがアノードよりも低い電圧になるときには、電流制限回路28は、設定電圧V0よりもダイオード28Bの電圧降下分だけ低い電圧値となった縮みバルブ用電流指令電圧信号S2を出力する。
これにより、電圧整形回路24は、推力指令信号S0が縮み側の推力指令、即ち縮ます方向の推力指令のときには、伸びバルブ用電流指令電圧信号S1をハード側にし、縮みバルブ用電流指令電圧信号S2をソフト側にする。一方、電圧整形回路24は、推力指令信号S0が伸び側の推力指令、即ち伸ばす方向の推力指令のときには、伸びバルブ用電流指令電圧信号S1をソフト側にし、縮みバルブ用電流指令電圧信号S2をハード側にする。この結果、電圧整形回路24は、伸びバルブ用電流指令電圧信号S1がハード側になるときには、縮みバルブ用電流指令電圧信号S2をソフト側に反転させる。同様に、電圧整形回路24は、縮みバルブ用電流指令電圧信号S2がハード側になるときには、伸びバルブ用電流指令電圧信号S1をソフト側に反転させる。
図5に示すように、電流制御回路29は、ソース−ドレイン間にソレノイド15Aを駆動する駆動電流I1(駆動電圧)を通電可能な電流容量を有してゲート電圧の変化に応じて抵抗値を変化させるトランジスタ29Aと、ソレノイド15Aに流れる実電流を電圧として出力するための電流検出抵抗29B(シャント抵抗)と、演算増幅器によって構成されて電流検出抵抗29Bの電圧を所定の電圧に増幅するための電流検出回路29Cと、演算増幅器によって構成されて伸びバルブ用電流指令電圧信号S1による指令電流値(指令電圧値)と電流検出回路29Cによって検出された実電流値(実電圧値)との差分を増幅して出力するゲート駆動回路29Dと、を含む。トランジスタ29Aは、例えば金属酸化膜型電界効果トランジスタ(MOSFET)である。
そして、電流制御回路29は、伸びバルブ用電流指令電圧信号S1による指令電流値に応じてトランジスタ29Aのゲート電圧を制御し、指令電流値に応じた駆動電流I1をソレノイド15Aに供給する。この結果、駆動電流I1(駆動電圧)に基づいてソレノイド15Aが駆動され、伸び用バルブ15は駆動電流I1に応じた大きさの減衰力を発生する。
電流制御回路30は、電流制御回路29とほぼ同様に構成され、トランジスタ30A、電流検出抵抗30B、電流検出回路30C、ゲート駆動回路30Dを含む。トランジスタ30Aは、例えば金属酸化膜型電界効果トランジスタ(MOSFET)からなり、ソース−ドレイン間にソレノイド16Aを駆動する駆動電流I2(駆動電圧)を通電可能な電流容量を有し、ゲート電圧の変化に応じて抵抗値を変化させる。電流検出抵抗29Bは、シャント抵抗を構成し、ソレノイド16Aに流れる実電流を電圧として出力する。電流検出回路30Cは、演算増幅器によって構成され、電流検出抵抗29Bの電圧を所定の電圧に増幅する。ゲート駆動回路30Dは、演算増幅器によって構成され、縮みバルブ用電流指令電圧信号S2による指令電流値(指令電圧値)と電流検出回路30Cによって検出された実電流値(実電圧値)との差分を増幅して出力する。
そして、電流制御回路30は、縮みバルブ用電流指令電圧信号S2による指令電流値に応じてトランジスタ30Aのゲート電圧を制御し、指令電流値に応じた駆動電流I2をソレノイド16Aに供給する。この結果、駆動電流I2(駆動電圧)に基づいてソレノイド16Aが駆動され、縮み用バルブ16は駆動電流に応じた大きさの減衰力を発生する。
第1の実施の形態において、CPU21が出力した推力指令信号S0と伸び用バルブ15と縮み用バルブ16に流れる駆動電流I1,I2の関係を、図9に示す。図9では、縦軸を推力指令信号S0とし、横軸を駆動電流I1,I2の大きさとしている。図9に示すように、駆動電流I1,I2は、推力指令信号S0がソフトに対応した値(0V)付近で交差し、全体としてアルファベットの「K」の字を描くように推移する。
次に、図7に基づいて、制御装置20を用いてダンパ7の減衰力特性を可変に調整する制御処理について説明する。なお、図7中の制御処理は、例えば0.5〜10ms程度のサンプリング周期毎に実行されるものである。
まず、ステップ1では、CPU21に各加速度センサ17からの出力信号(加速度信号)を取り込む。続くステップ2では、CPU21に取り込まれたデータに、ノイズ成分を除去するためのLPF処理、ドリフト成分および定常偏差成分を除去するためのHPF処理を含むフィルタ処理が実行される。
次に、ステップ3では、加速度信号が予め設定された領域内であるか否かを判断すると共に、各加速度信号の値の比較等して異常があるか否かを判定する。ステップ4では、加速度信号を積分処理した後に各種のゲイン等を乗じ、車体2の振動を低減させるために必要な推力を判断し、各ダンパ7の推力指令を決定する。続くステップ5では、推力指令にダンパ7の電流(駆動電流I1,I2)と減衰力特性との関係に応じたゲインを乗じることで、電流指令電圧を決定する。
そして、ステップ6では、電流指令電圧をCPU21のDA変換器によって処理し、電流指令電圧に応じた推力指令信号S0として、正と負の両極性のアナログ電圧を各ソレノイド駆動回路23に出力する。これにより、各ソレノイド駆動回路23の電圧整形回路24は、推力指令信号S0に基づいて、伸びバルブ用電流指令電圧信号S1と縮みバルブ用電流指令電圧信号S2を出力する。このとき、電流制御回路29は、伸びバルブ用電流指令電圧信号S1に応じた駆動電流I1をソレノイド15Aに供給すると共に、電流制御回路30は、縮みバルブ用電流指令電圧信号S2に応じた駆動電流I2をソレノイド16Aに供給する。この結果、バルブ15,16は、推力指令信号S0に応じた減衰力を発生させる。
第1の実施の形態によるサスペンション制御装置は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
鉄道車両1がレール5に沿って図1、図2中の矢示A方向に走行しているときに、例えばローリング(横揺れ)またはピッチング(前,後方向の揺れ)等の振動が発生すると、このときの上,下方向の振動を加速度センサ17により検出する。制御装置20は、加速度センサ17で検出した信号をそれぞれ個別な加速度の検出信号として判別しつつ、鉄道車両1の振動を抑えるために、例えばFL,FR,RL,RR側の各ダンパ7で発生すべき目標推力を演算する。そして、各ダンパ7は、制御装置20から個別に出力される推力指令信号S0に従って、それぞれの発生減衰力が目標推力に対応した特性となるように可変に制御される。
次に、本実施の形態による効果について、図10および図11に示す第1の比較例と、図12および図13に示す第2の比較例とを参照しつつ説明する。
1本のダンパに1個の比例ソレノイドバルブしかもたないダンパでは、伸び行程と縮み行程の両方の減衰力特性を1個のソレノイドで制御する。このようなダンパのうち、ソレノイドの駆動電流を増加(または減少)させたときに、伸び行程と縮み行程の両方の減衰力が増加(または減少)するものを非反転式のダンパと呼ぶ。一方、ソレノイドの駆動電流を増加(または減少)させたときに、伸び行程と縮み行程のうち一方の行程の減衰力を増加し、他方の行程の減衰力が減少するものを反転式のダンパと呼ぶ。
ところで、スカイフック制御等による車体の振動制御では、制御演算による推力指令値(推力指令信号S0の値)とダンパの伸長と縮小の組み合わせは、以下に示す状態(a)〜(d)の4通りに分類できる。
(a)ダンパの伸長行程でダンパを伸ばす方向の力の推力指令値(伸び側アシスト力)
(b)ダンパの伸長行程でダンパを縮ます方向の力の推力指令値(縮み側減衰力)
(c)ダンパの縮小行程でダンパを伸ばす方向の力の推力指令値(伸び側減衰力)
(d)ダンパの縮小行程でダンパを縮ます方向の力の推力指令値(縮み側アシスト力)
例えばモータやアクチュエータを搭載したアクティブ型の制御サスペンションでは以上4通り全ての状態で所望の力を発生可能である。しかし、本実施の形態のように、減衰力調整式ダンパを用いたセミアクティブサスペンションでは、状態(b)と状態(c)に示すような減衰力しか発生できない構造である。従って、状態(a)のように、ダンパの伸長行程でダンパを伸ばす方向の力の推力指令値が演算された場合、または状態(d)のように、ダンパの縮小行程でダンパを縮ます方向の力の推力指令値が演算された場合は、ダンパの減衰力を最小(ソフト)にし、ダンパが車体の乗り心地に悪影響を与えないにようにする必要がある。
本実施の形態のように、2個のソレノイドを有する減衰力調整式ダンパを用いる場合、ソレノイドに流す駆動電流の制御で、ダンパの減衰力を反転式として振舞わせて制御することが好ましい。
反転式として振舞わせる制御とは、例えば推力指令値が、ダンパが縮む行程(縮小行程)で推力を発生させる指令値である場合に、ダンパの縮み用バルブの駆動電流を増大させてハード側にし、伸び用バルブの駆動電流を減少させてソフト側にする制御である。
同様に、推力指令値が、ダンパが伸びる行程(伸長行程)で推力を発生させる指令値である場合に、ダンパの縮み用バルブの駆動電流を減少させてソフト側にし、伸び用バルブの駆動電流を増大させてハード側にする。推力指令値が推力を発生させない指令値である場合は、ダンパの縮み用バルブの駆動電流と伸び用バルブの駆動電流を、両方とも減少させてソフト側にする。
これを実現させるために、特許文献1に記載された構成では、伸び用バルブと縮み用バルブとで、それぞれのソレノイドを駆動するために電流指令値を別個に演算していた。このため、例えば4本のダンパを備えた車両では、バルブの数に相当する8チャネル分の電流指令値を演算し、8つの駆動電流を個別に制御する必要があった。
例えば、PWM方式の駆動回路を用いたセミアクティブサスペンションの制御装置では、8個のバルブを制御するために、制御演算によって求めたダンパ4本分の減衰力指令値を、ダンパを反転式に振舞わせることを考慮して、バルブ8個分の電流指令値に振り分ける演算が必要である。これに加えて、バルブ8個分の電流を電流指令値に追従させるための電流制御演算と、8本のPWM出力ポートと、実際に流れる駆動電流の電流値をフィードバックするために8チャネルのAD変換入力とが必要であり、演算負荷と部品選定の面で制約があった。
一方、特許文献2に記載されたドロッパー方式の構成では、制御演算によって求めたダンパ4本分の推力指令値を、バルブ8個分の電流指令値に振り分けて出力することができる。例えば、制御演算によって求めたダンパ4本分の推力指令値を、4チャネルのアナログ電圧としてそのまま出力し、ハードウエアで2つに分割して8本分の電流指令値(電流指令電圧)として利用すると、電流制御演算が不要であるのに加え、マイクロコンピュータの負荷が比較的軽くなる。
しかし、このようなドロッパー方式では、回路の構成上、伸び用バルブと縮み用バルブで、ソレノイドに供給される駆動電流の電流値が一致する。このため、電流指令値もこれに合わせて、伸び側と縮み側の両方の減衰力指令でソレノイドに駆動電流を流せるようにする必要がある。
例えば、図10および図11に示すように、伸び用バルブと縮み用バルブのハード側とソフト側の特性が同じ場合には、推力指令信号S0の絶対値を演算し、この絶対値に応じた伸びバルブ用電流指令電圧信号S1aと縮みバルブ用電流指令電圧信号S2aを出力する構成が考えられる。このような第1の比較例では、伸び側と縮み側のどちらの推力指令信号S0がハード側のときでも、伸び用バルブの駆動電流I1aと縮み用バルブの駆動電流I2aが増大するように電流指令電圧信号S1a,S2aを調整した上で出力する必要がある。これに加えて、図11に示すように、駆動電流I1a,I2aが増加すると、伸び用バルブと縮み用バルブはいずれも減衰力を発生するから、ダンパは非反転式として振舞う。このため、ダンパの伸長行程と縮小行程を判別した上で、状態(a)と状態(d)のときには、ダンパの減衰力を最小化する必要がある。この結果、行程を判定するためにセンサを追加すると製造コストが増加し、センサを増加せずに行程を推定した場合には推定の精度が課題になる。
一方、図12および図13に示すように、伸び用バルブと縮み用バルブで、ハード側とソフト側の特性を反転させるダンパの構成も考えられる。このような第2の比較例では、例えば推力指令信号S0が伸び側の減衰力またはアシスト力を発生させる指令値(縮み側でハード)のときに伸び用バルブの駆動電流I1bと縮み用バルブの駆動電流I2bをいずれも最小にし、縮み側の減衰力またはアシスト力を発生させる指令値(伸び側でハード)のときに駆動電流I1b,I2bを最大にする。これに加えて、伸び用バルブは駆動電流I1bが最小で減衰力をソフトにし、最大でハードにすると共に、縮み用バルブは駆動電流I2bが最小でハードにし、最大でソフトにする特性をダンパにもたせる。これにより、ダンパは反転式として振舞うから、ダンパの伸長行程と縮小行程を判定する必要がなくなるのに加えて、推力指令値の絶対値を演算する必要もなくなる。
しかし、第2の比較例では、例えば推力指令信号S0が伸び側と縮み側のいずれもソフトなときに、駆動電流I1b,I2bが最大と最小の中間値になるから、伸長行程と縮小行程の両行程で減衰力を発生させてしまい、伸び用バルブと縮み用バルブを一緒にソフトにすることができない。また、伸び用バルブと縮み用バルブで異なる特性になるから、両者の部品の共通化を図ることができず、コストが上昇する傾向がある。さらに、同一方向の指令、例えば状態(b)や状態(d)が連続した場合には、最大の駆動電流I1b,I2bが継続して供給されることになるから、伸び用バルブと縮み用バルブで発熱が生じるという問題もある。
これに対し、本実施の形態では、ソレノイド駆動回路23は、CPU21による推力指令信号S0の値に基づいて、伸び用バルブ15または縮み用バルブ16のうち一方にハード側の値を出力するときに、他方にソフト側に反転させた値を出力する。
具体的には、ソレノイド駆動回路23は、推力指令信号S0が伸び側の減衰力またはアシスト力を発生させる指令値である場合には、駆動電流I2を増加させて縮み用バルブ16をハード側にし、駆動電流I1を減少させて伸び用バルブ15をソフト側にする。このとき、縮み用バルブ16は減衰力を発生し、伸び用バルブ15は減衰力最小の状態にするから、ダンパ7は状態(a)のときは減衰力最小の状態を作り出し、状態(c)のときは減衰力を発生する状態を作り出すことができる。
また、推力指令信号S0が縮み側の減衰力またはアシスト力を発生させる指令値である場合には、駆動電流I1を増加させて伸び用バルブ15をハード側にし、駆動電流I2を減少させて縮み用バルブ16をソフト側にする。このとき、伸び用バルブ15は減衰力を発生し、縮み用バルブ16は減衰力最小の状態にするから、ダンパ7は状態(d)のときは減衰力最小の状態を作り出し、状態(b)のときは減衰力を発生する状態を作り出すことができる。
さらに、推力指令信号S0が推力を発生させない指令値である場合は、駆動電流I1,I2をいずれも減少させて、ダンパ7の伸び用バルブ15と縮み用バルブ16を両方ともソフト側にする。
この結果、ダンパ7を反転式として振舞わせることできるから、制御装置20はダンパ7の伸長行程と縮小行程を意識せずに、CPU21の推力指令信号S0に従ってソレノイド15A,16Aに駆動電流I1,I2を流せばよくなる。このため、伸び用バルブ15と縮み用バルブ16とで別個に推力指令信号S0を演算する必要がなくなるから、CPU21の演算負荷を軽減して処理速度が低いマイクロコンピュータ等を採用することができる。また、DA変換器による出力チャネル数もダンパ7の本数で足りるから、DA変換器等の部品選択の自由度を高めることができる。
また、ソレノイド駆動回路23は、CPU21による推力指令信号S0に基づき、伸びバルブ用電流指令電圧信号S1と縮みバルブ用電流指令電圧信号S2を出力する電圧整形回路24を備える。このとき、CPU21が伸び側の推力指令信号S0を出力した場合には、電圧整形回路24は、ハード側の縮みバルブ用電流指令電圧信号S2を出力するときに、ソフト側の伸びバルブ用電流指令電圧信号S1を出力する。また、CPU21が縮み側の推力指令信号S0を出力した場合には、電圧整形回路24は、ハード側の伸びバルブ用電流指令電圧信号S1を出力するときに、ソフト側の縮みバルブ用電流指令電圧信号S2を出力する。これにより、伸び用バルブ15または縮み用バルブ16のうち一方をハード側にするときに、他方をソフト側にすることができ、ダンパ7を反転式として振舞わせることできる。
また、ソレノイド駆動回路23は、伸びバルブ用電流指令電圧信号S1がソフト側のときにハード側に比べて小さい値の駆動電流I1を伸び用バルブ15のソレノイド15Aに供給し、縮みバルブ用電流指令電圧信号S2がソフト側のときにハード側に比べて小さい値の駆動電流I2を縮み用バルブ16のソレノイド16Aに供給する。これにより、伸び用バルブ15と縮み用バルブ16の両方をソフト側にするときには、消費電力を低下させることができる。
さらに、ソレノイド駆動回路23は、伸びバルブ用電流指令電圧信号S1がソフト側のとき、または縮みバルブ用電流指令電圧信号S2がソフト側のときに、駆動電流I1,I2を一定のリミット値Iminに制限する電流制限回路27,28をさらに備える。このため、伸び用バルブ15と縮み用バルブ16がソフト側になるときには、リミット値Iminとして最小の駆動電流I1,I2をソレノイド15A,16Aに供給することができる。
次に、図14ないし図16は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、ソレノイド駆動回路は、駆動電流のリミット値を零よりも大きい値にオフセットさせるオフセット調整回路を備えたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
図14に示すように、第2の実施の形態による制御装置40は、第1の実施の形態による制御装置20とほぼ同様に構成され、CPU21とソレノイド駆動回路41を備える。また、ソレノイド駆動回路41は、第1の実施の形態によるソレノイド駆動回路23とほぼ同様に構成され、電圧整形回路24および電流制御回路29,30を備える。但し、電圧整形回路24と電流制御回路29,30との間にオフセット調整回路42,43(オフセット調整手段)が接続されている点で、ソレノイド駆動回路41は、第1の実施の形態によるソレノイド駆動回路23とは異なる。
オフセット調整回路42は、駆動電流I1のリミット値Iminを零(0A)よりも大きい値(例えば0.3A)にオフセットさせる。具体的には、オフセット調整回路42は、伸びバルブ用電流指令電圧信号S1をオフセット電圧ΔVだけ増加させて、ゲート電圧をオフセットさせる。これにより、駆動電流I1は、オフセット電圧ΔVに応じたオフセット電流ΔIだけ増加するから、推力指令信号S0に応じて、オフセットされたリミット値Imin(例えばImin=0.3A)と最大値Imax(例えばImax=1.3A)の間で変化する。
オフセット調整回路43も、オフセット調整回路42とほぼ同様に構成され、駆動電流I2のリミット値Iminを零(0A)よりも大きい値(例えば0.3A)にオフセットさせる。これにより、駆動電流I2は、オフセット電流ΔIだけ増加するから、推力指令信号S0に応じて、オフセットされたリミット値Imin(例えばImin=0.3A)と最大値Imax(例えばImax=1.3A)の間で変化する。
ここで、第2の実施の形態では、ダンパ7はフェールセーフ機能を備え、伸び用バルブ15と縮み用バルブ16は、駆動電流I1,I2と発生減衰力が図16に示す関係になっている。具体的には、駆動電流I1,I2が最大値Imaxからリミット値Iminに近付くに従って、減衰力が減少する。しかし、駆動電流I1,I2がリミット値Imin以下になると、減衰力が通常の油圧ダンパのレベルとして予め決められた一定のバックアップ減衰力F0まで上昇する。
なお、図16に示すように、バルブ15,16には、リミット値Imin以下の近傍に不感帯が設けられ、この不感帯によって、減衰力が最小値(例えば0N)とバックアップ減衰力F0との間で繰り返し変動するのを抑制している。
第2の実施の形態において、CPU21が出力した推力指令信号S0と伸び用バルブ15と縮み用バルブ16に流れる駆動電流I1,I2の関係を、図15に示す。図15では、縦軸を推力指令信号S0とし、横軸を駆動電流I1,I2の大きさとしている。図15に示すように、第1の実施の形態と同様に、駆動電流I1,I2は、推力指令信号S0がソフトに対応した値(0V)付近で交差する。但し、駆動電流I1,I2はオフセットしているため、全体としては第1の実施の形態に対してアルファベットの「K」の字がオフセット電流ΔI(例えばΔI=0.3A)だけ右側、即ち駆動電流I1,I2が増加する方向にオフセットしたような形を描く。
かくして、このように構成される第2の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。これに加えて、第2の実施の形態では、ソレノイド駆動回路41は、駆動電流I1,I2のリミット値Iminを零よりも大きい値にオフセットさせるオフセット調整回路42,43をさらに備えている。これにより、例えば断線等によって駆動電流I1,I2がリミット値Iminよりも低い値(例えばI1,I2=0A)になったときでも、伸び用バルブ15と縮み用バルブ16は、推力指令信号S0とは別個に設定されたバックアップ減衰力F0を発生させることができる。このため、制御装置40によって減衰力を制御できない状態であっても、ダンパ7は通常必要となるバックアップ減衰力F0を確保することができ、フェールセーフ機能を実現することができる。
なお、前記第2の実施の形態では、オフセット調整回路42,43によって駆動電流I1,I2のリミット値Iminをオフセットさせる構成としたが、例えば電流制限回路27,28の設定電圧V0を調整することによって、駆動電流I1,I2のリミット値Iminをオフセットさせてもよい。
また、前記各実施の形態では、スカイフック理論に基づいてダンパ7を制御する制御装置20,40に適用した場合を例に挙げて説明したが、ロールフィードバック制御やピッチフィードバック制御を行うコントローラに適用してもよく、H∞制御や各種の現代制御理論を用いた制御に適用してもよい。
また、前記各実施の形態では、本発明を台車3と車体2との上下方向の振動を抑制するダンパ7に適用した場合ついて説明したが、本発明は、この他に、台車3と車体2との横(左右)方向の振動を抑制するダンパ、あるいは、台車3と車輪4(輪軸)との間の振動を抑制するダンパにも、同様に適用することができる。
また、前記各実施の形態では、本発明のサスペンション制御装置を鉄道車両に適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明は、これに限らず、例えば自動車等のような他の車両に適用してもよい。
次に、前記各実施の形態に含まれる発明について記載する。本発明によれば、前記減衰力調整制御手段は、前記振動検出手段の検出結果に基づき、伸び側または縮み側の推力指令信号を前記減衰力調整式ダンパ毎に計算する計算部と、前記計算部による推力指令信号の値に基づいて、前記伸び側減衰力調整手段または前記縮み側減衰力調整手段のうち一方にハード側の値を出力するときに、他方にソフト側に反転させた値を出力する出力調整手段と、を備える。
これにより、減衰力調整式ダンパ毎の推力指令信号に基づいて、伸び側減衰力調整手段または縮み側減衰力調整手段のうち一方をハード側にするときに、他方をソフト側にすることができる。このため、伸び側減衰力調整手段と縮み側減衰力調整手段とで別個に推力指令信号を演算する必要がなく、演算負荷を軽減して安価のマイクロコンピュータ等を採用することができる。また、DA変換器による出力チャネル数も減衰力調整式ダンパの本数で足りるから、DA変換器等の部品選択の自由度を高めることができる。さらに、減衰力調整式ダンパを反転式として振舞わせることできるから、伸長行程と縮小行程を判定する必要がなくなる。これに加えて、伸び側減衰力調整手段および縮み側減衰力調整手段の両方をソフトにすることができる。
また、本発明によれば、前記出力調整手段は、前記計算部による推力指令信号に基づき、前記伸び側減衰力調整手段をハード側またはソフト側にするための伸び側指令信号を出力し、前記縮み側減衰力調整手段をハード側またはソフト側にするための縮み側指令信号を出力する伸び・縮み指令信号出力手段を備え、前記伸び・縮み指令信号出力手段は、前記計算部が伸び側の推力指令信号を出力して、縮み側減衰力をハード側にする前記縮み側指令信号を出力するときに、伸び側減衰力をソフト側にする前記伸び側指令信号を出力し、前記計算部が縮み側の推力指令信号を出力して、伸び側減衰力をハード側にする前記伸び側指令信号を出力するときに、縮み側減衰力をソフト側にする前記縮み側指令信号を出力する。
即ち、計算部が伸び側の推力指令信号を出力した場合には、伸び・縮み指令信号出力手段は、ハード側の縮み側指令信号を出力するときに、ソフト側の伸び側指令信号を出力する。また、計算部が縮み側の推力指令信号を出力した場合には、伸び・縮み指令信号出力手段は、ハード側の伸び側指令信号を出力するときに、ソフト側の縮み側指令信号を出力する。これにより、伸び側減衰力調整手段または縮み側減衰力調整手段のうち一方をハード側にするときに、他方をソフト側にすることができ、減衰力調整式ダンパを反転式として振舞わせることできる。
本発明によれば、前記伸び側減衰力調整手段および前記縮み側減衰力調整手段は、駆動電流に応じて減衰力を調整するソレノイドを備え、前記出力調整手段は、前記伸び側指令信号の値がソフト側のときにハード側に比べて小さい値の駆動電流を前記伸び側減衰力調整手段のソレノイドに供給し、前記縮み側指令信号の値がソフト側のときにハード側に比べて小さい値の駆動電流を前記縮み側減衰力調整手段のソレノイドに供給する。
これにより、伸び側減衰力調整手段または縮み側減衰力調整手段がソフト側になるときに、ソレノイドに供給する駆動電流の値を小さくすることができる。従って、伸び側減衰力調整手段と縮み側減衰力調整手段の両方をソフト側にするときには、消費電力を低下させることができる。
本発明によれば、前記出力調整手段は、前記伸び側指令信号の値がソフト側のとき、または前記縮み側指令信号の値がソフト側のときに、前記駆動電流を一定のリミット値に制限する電流制限手段をさらに備える。
このため、伸び側減衰力調整手段または縮み側減衰力調整手段がソフト側になるときには、リミット値として最小の駆動電流をソレノイドの供給することができる。
本発明によれば、前記出力調整手段は、前記リミット値を零よりも大きい値にオフセットさせるオフセット調整手段をさらに備える。
これにより、例えば断線等によって駆動電流がリミット値よりも低下したときでも、推力指令信号とは別個に設定された減衰力を発生させることができる。このため、減衰力調整制御手段によって減衰力を制御できない状態であっても、通常のダンパとしての減衰力を確保することができ、フェールセーフ機能を実現することができる。