JP2014194051A - アルミニウム合金ろう材とブレージングシート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Si:4.0〜13.0質量%、Sr:0.001〜0.050質量%、P:0.0001〜0.0090質量%を含有し、残部がAlと不可避的不純物よりなるアルミニウム合金から構成されるろう材とそれを用いたアルミニウム合金ブレージングシート。
【選択図】なし
Description
係るろう材を用いることにより、ろう材自体の流動性を向上させることができることが判明し、更なるろう付性の向上効果を得ることができる。
係る構成のアルミニウム合金ブレージングシートとすることによって、ろう材の特性と心材の特性とが相まって、強度とろう付性と耐食性を向上させることが可能となる。
本発明のろう材は、Si:4.0〜13.0質量%、Sr:0.001〜0.050質量%、P:0.0001〜0.0090質量%を含有し、残部がAlと不可避的不純物よりなるアルミニウム合金から構成されている。
以下、本発明のろう材を構成するアルミニウム合金を構成する各元素について、説明する。
Siはアルミニウム合金の固相線温度を低下させ、ろう付温度における流動性を高める作用がある。Siが4.0質量%未満では、ろう付時のろう付温度580〜630℃におけるろう材液相の絶対量が不足する。例えば600℃でろう付する場合に、十分なフィレット(ろうの充填、凝固部)体積が確保できず、ろう付性が不十分となる。一方、Siが13.0質量%を越えると、ろう材の鋳造時の凝固課程において、Siの粗大な初晶が発生しやすくなり、100μm程度を超えるサイズの粗大なSi初晶が発生することがある。ろう材の鋳造時に100μmを超える粗大なSi結晶が生成すると、チューブの成形時にこれらの粗大なSi結晶粒を起点とした割れが発生し、チューブの成形が困難となる。よって、Siの含有量は、4.0〜13.0質量%とする。Siの含有量のより好ましい範囲は4.1〜12.5質量%である。
本発明では、微量のSrとPとを共存させることによって、ろう材溶融時の流動性を向上させる効果を有することが明らかとなった。そのメカニズムは必ずしも明らかとなってはいないが、現時点では、SrとPが僅かに共存することによって、溶融Alの表面張力をさらに低下させる効果を有するためと考えている。即ち、SrとPが共存することによって、ろう材溶融開始時のAl−Si液相、Al固相、Si固相が共存して流動する際の流動係数を低下させることを可能にするためと考えている。
よって、Pの含有量は、0.0001〜0.0090質量%とする。Pの含有量のより好ましい範囲は0.0001〜0.0070質量%である。
本発明のろう材は、残部がAlと不可避的不純物よりなるアルミニウム合金から構成される。不可避的不純物としては、Fe、Cu、Mnなどが考えられる。不可避的不純物は本発明の効果に影響を与えない程度の含有量であれば、含有することが許容される。例えば、Feであれば0.3質量%以下、Cuであれば0.3質量%以下、Mnであれば0.3質量%以下であることが好ましい。但し、不可避的不純物の含有量の合計が、0.6質量%を超えないように制御することが好ましい。
本発明のろう材を構成するアルミニウム合金の耐食性を向上させるときは、さらに、Zn:1.5〜10.0質量%を含有することが好ましい。Znを添加して、ろう材側の電位を電気化学的に卑とすることによって、耐食性を向上させることができる。Znが1.5質量%未満では電位を卑化する効果が小さく、耐食性向上効果が小さい。一方、Znが、10.0質量%を越えるとAl−Si−Znろう材の固相線温度が低くなりすぎるため、ろう材として適さない。よって、Znを含有させるときは、Znの含有量は、1.5〜10.0質量%とする。Znの含有量のより好ましい範囲は1.8〜9.5質量%である。
次に、この本発明のアルミニウム合金ブレージングシートに用いる心材について説明する。
本発明では、上記の特定の組成を有するアルミニウム合金からなるろう材とともに、ろう材と貼り合せる心材として、特定の組成を有したアルミニウム合金からなる心材を用いることによって、強度、ろう付性、耐食性に優れたアルミニウム合金ブレージングシートを得ることができる。
以下、本発明の心材を構成するアルミニウム合金を構成する各元素について、説明する
Siは、固溶して引張強度を向上させる効果を有しており、ろう付後の合金強度を向上させることができる。0.1質量%未満では上記効果が不十分であり、一方、1.0質量%を超えると心材の固相線温度が低下するため、ろう付時に心材が溶融するおそれがある。よって、Siの含有量は、0.1〜1.0質量%とする。Siの含有量のより好ましい範囲は0.12〜0.98質量%である。
Cuは、Siと同様に、固溶して引張強度を向上させる効果を有しており、ろう付後の合金強度を向上させることができる。0.5質量%未満では、Cuによる固溶強化が不十分であり、引張強度の向上効果が不十分である。一方、1.2質量%を超えると、ろう付加熱後にAl−Cu系析出物の量が増大し、耐食性が低下する。よって、Cuの含有量は、0.5〜1.2質量%とする。Cuの含有量のより好ましい範囲は0.52〜1.15質量%である。
Mnは、Siとの分散粒子を形成することによって、分散が強化され、ろう付後のアルミニウム合金の引張強度を向上させる効果を有している。0.5質量%未満では、分散強化による引張強度の向上効果が不十分である。一方、2.0質量%を超えると、鋳造時に粗大なAl−Mn系の金属間化合物を形成しやすくなり、加工性が低下するため、チューブ成形時に割れが発生しやすくなる。よって、Mnの含有量は、0.5〜2.0質量%とする。Mnの含有量のより好ましい範囲は0.52〜1.90質量%である。
Tiは、Al合金中でTi−Al系化合物を形成して層状に分散する。Tiが層状に分布することにより、材料の電位の分布もTiの濃淡に対応した分布となることから、腐食形態を層状化でき、板厚方向の腐食進行速度が低減され、ろう付後の耐食性を向上させる効果を有している。0.05質量%未満では、Tiの層状分布の度合いが不十分であり、耐食性が不十分となる。一方、0.25質量%を超えると、鋳造時に粗大なAl3Ti系金属間化合物を形成しやすくなり、加工性が低下するため、チューブ成形時に割れが発生しやすくなる。よって、Tiの含有量は、0.05〜0.25質量%とする。Tiの含有量のより好ましい範囲は0.06〜0.24質量%である。
Crは、添加することによって、Al3Cr分散粒子の微細析出相が分布することにより、ろう付後の引張強度を向上させる効果を有している。0.01質量%未満では、上記効果が不十分である。一方、0.25質量%を超えると、鋳造時に粗大なAl3Cr金属間化合物を形成しやすくなり、加工性が低下するため、チューブ成形時に割れが発生しやすくなる。よって、Crの含有量は、0.01〜0.25質量%とする。Crの含有量のより好ましい範囲は0.02〜0.20質量%である。
Mgは、Siと共存させた場合、Mg2Si等の析出相を形成して、ろう付後のアルミニウム合金の引張強度を向上させる。0.05質量%未満ではこの効果が小さい。一方、0.50質量%を超えると、ろう付時にフラックスとMgがMgF2などの化合物を形成しやすいため、フラックス作用が不十分となりろう付性が大幅に低下する。よって、Mgの含有量は、0.05〜0.50質量%とする。Mgの含有量のより好ましい範囲は0.06〜0.48質量%である。
本発明の心材は、残部がAlと不可避的不純物よりなるアルミニウム合金から構成される。不可避的不純物としては、Fe、Sn、Ni、Zr、Cなどが考えられる。不可避的不純物は本発明の効果に影響を与えない程度の含有量であれば、含有することが許容される。例えば、Feであれば0.3質量%以下であることが好ましい。また、不可避的不純物の含有量の合計が、0.6質量%を超えないように制御することが好ましい。
本発明に係るブレージングシートでは、ろう材は片面あたりで厚さ10〜100μmとすることが好ましい。ろう材の厚さが10μm未満ではろうの絶対量が不足してろう付性が低下するおそれがある。一方、ろう材の厚さが100μmを超えると、ろうの流動量が過剰となって、一部が心材を侵食し、心材のエロージョンが発生するおそれがある。さらに好ましいろう材厚さは、10〜50μmである。なお、両面にろう材を備えたアルミニウム合金ブレージングシートとする場合は、それぞれの面におけるろう材が同じ成分のアルミニウム合金であっても異なるものであってもよい。
本発明に係るブレージングシートにおいては、前記の心材の一方の面に前記ろう材を備え、他方の面には犠牲陽極材をクラッドして、他方の面の側からの耐食性を向上させてもよい。熱交換器のチューブ材、ヘッダ材のような用途に用いる場合、冷却水側または外面側の耐食性向上を図る目的で、このような犠牲陽極材を備えたブレージングシートでろう付接合構造体を作製することができる。その場合、犠牲陽極材を備えた面を腐食環境側となるようにして部品を成形する。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、公知のクラッド材の製造方法によって製造される。以下にその一例を説明する。
まず、心材用アルミニウム合金、犠牲陽極層用アルミニウム合金、ろう材層用アルミニウム合金、そして必要に応じて犠牲陽極層側ろう材層用アルミニウム合金を、連続鋳造にて溶解、鋳造し、必要に応じて面削、均質化熱処理して、心材用鋳塊、犠牲陽極層用鋳塊、ろう材層用鋳塊、および犠牲陽極層側ろう材層用鋳塊を得る。犠牲陽極層用鋳塊、ろう材層用鋳塊および犠牲陽極層側ろう材層用鋳塊は、熱間圧延または切断によってそれぞれ所定厚さにして、犠牲陽極材、ろう材、および犠牲陽極層側ろう材を得る。
次に、心材用鋳塊を、ろう材と犠牲陽極材とで挟み、さらに必要に応じて犠牲陽極層側ろう材を犠牲陽極材の外側に配置して、重ね合わせ、400℃以上の温度で加熱した後、熱間圧延により圧着し、板材とする。その後、冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延を行うことにより所定の板厚とする。
ろう付接合構造体の製造方法として、以下にその一例を説明する。例えば、自動車に搭載されるコンデンサ等の熱交換器であれば、一般に、本発明のブレージングシートを用いて、流体通路を構成する偏平管状のチューブと板材をコルゲート成形したフィンとを交互に繰り返し重ねて組み合わせ、流体通路を集結させるように、板材をプレス成形したプレート(ヘッダ)にチューブを嵌合させて、組み立てた構造体とする。
これらのチューブ、プレートおよびフィンの少なくともいずれか一つに、本発明のアルミニウム合金からなる心材の少なくとも一方の面にろう材をクラッドしたブレージングシートを適用することができる。
<試験材No.1〜95の作製>
定法により、表1に示す化学成分を有するろう材(試験材No.1〜29、ろう材記号F1〜F29)を作製した。表2に示す化学成分を有する心材(試験材No.30〜48、心材記号C1〜C19)の鋳塊を鋳造し、均質化処理を施した後、所定の板厚に面削して心材を作製した。これらの作製した心材およびろう材を種々の組み合わせで、重ね合わせ、熱間圧延によりろう材/心材2層クラッド材を圧着圧延した後、冷間圧延、中間焼鈍、仕上圧延を行い、0.25mmtの板厚のクラッド材としてのブレージングシート供試材(試験材No.49〜95、クラッド材記号B1〜B47))を作製した。ろう材の厚さとしては、30μm、10μmの2種類を作製した。
試験方法;「アルミニウムブレージングハンドブック(改定版)」社団法人軽金属溶接構造協会、p131、図4.11記載のドロップ試験法に準拠して行った。
供試試料;50mm幅×100mmL×0.25mmt
評価方法;重量法
評価条件;窒素雰囲気下、600℃に5分間保持して、通常のろう付を行った。
流動係数K3の算出;K3=(4WB−WO)/(3WO×ろう材クラッド率)
ここで、WO;ろう付前のブレージングシートの質量、WB;ろう付後のブレージングシート下部1/4の質量、ろう材クラッド率;ブレージングシート全厚さに対するろう材厚さの比率、である。
流動係数K3の評価基準:K3;0.5以上のとき◎、K3;0.5未満で0.35以上のとき○、K3;0.35未満のとき×、と判定した。
試験方法;「アルミニウムブレージングハンドブック(改定版)」社団法人軽金属溶接構造協会、p133、図4.13(1)、(2)、(3)に記載のすき間充填性試験法に準拠して行った。
供試試料;下板;25mmW×60mmL×0.25mmt、上板;25mmW×55mmL×1.0mmt
評価方法;下板として、実施例、比較例の試験材を上面がろう材側となるようにして置く。上板として、1mmtのアルミニウム3003合金のO材を用いる。スペーサに2φSUSを用いた。フラックスを下板のろう材面側に5g/m2塗布した。
評価条件;窒素雰囲気下、600℃に5分間保持して、通常のろう付を行った。
ろう付性の評価:すきま充填長さFLを測定した。
すきま充填長さFLの評価基準:FL;30mm以上のとき◎、FL;30mm未満で25mm以上のとき○、FL;25mm未満のとき×、と判定した。
ろう付加熱方法;200mmL×150mmW×0.25mmtのサイズの各試験材を用いて、下記のろう付条件でドロップろう付試験を行い、ろう付加熱後に、室温に1週間保持した後、引張り試験を行った。
ろう付条件;窒素雰囲気下、600℃に5分保持して、通常のろう付を行った。
評価用試験片;JIS 5号試験片を用いた。
強度の評価基準;引張り強さが180MPa以上のとき◎◎、180MPa未満で160MPa以上のとき◎、160MPa未満で150MPa以上のとき○、150MPa未満のとき×、と判定した。
ろう付加熱方法;200mmL×150mmW×0.25mmtのサイズの各試験材を用いて、下記のろう付条件でドロップろう付試験を行い、ろう付加熱後に、室温に1週間保持した後、ろう材側耐食性評価試験に供した
ろう付条件;窒素雰囲気下、600℃に5分保持して、通常のろう付を行った。
ろう材側耐食性評価試験方法;腐食試験は、ろう材側を試験面とし、ろう材と反対側面をシールし、SWAAT ASTM G85-A3に準拠して、340h試験を行った。
評価方法;試験後腐食生成物を常法により除去し、腐食深さを焦点深度法により評価した。
ろう材側耐食性の評価基準:腐食深さ;30μm以下のとき◎、腐食深さ30μmを超え、70μm未満のとき○、70μm以上のとき×、と判定した。
Claims (3)
- Si:4.0〜13.0質量%、Sr:0.001〜0.050質量%、P:0.0001〜0.0090質量%を含有し、残部がAlと不可避的不純物よりなる合金から構成されるろう材
- 前記合金がさらに、Zn:1.5〜10.0質量%を含有することを特徴とする請求項1に記載のろう材。
- 心材の片面または両面に、請求項1または請求項2に記載のろう材を有するアルミニウム合金ブレージングシートであって、心材がSi:0.1〜1.0質量%、Cu:0.5〜1.2質量%、Mn:0.5〜2.0質量%を含有し、さらにTi:0.05〜0.25質量%、Cr:0.01〜0.25質量%、Mg:0.05〜0.50質量%のうちのいずれか1種以上を含有し、残部がAlと不可避的不純物よりなるアルミニウム合金から構成されることを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート。
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